グラフェンフィルムの製造方法、およびグラフェンフィルムを備える導電性フィルム
【課題】本発明は、CVD−転写法においてグラフェンフィルムを高い確実性をもって低コストで製造できる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
(A)基板として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さが100〜600nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板の表面に炭素源を供給して、当該基板の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルムを形成させる工程と
を備えるグラフェンフィルムの製造方法。
【解決手段】
(A)基板として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さが100〜600nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板の表面に炭素源を供給して、当該基板の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルムを形成させる工程と
を備えるグラフェンフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンフィルムの製造方法、およびグラフェンフィルムを備える導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、炭素原子の同素体の一つであり、蜂の巣状の6角形格子に充填されたsp2結合炭素原子からなる平面シート状の物質である。
グラフェンは、その極めて高い電子移動度、極めて低い可視光線吸収度、および極めて高い機械的強度(例えば、極めて高いヤング率)等により、新たな透明電極材料等として高い注目を集めている物質である。
狭義には、グラフェンは、一層のグラフェン層から構成される物質であるが、少数のグラフェン層から構成される物質もまた、広義に、グラフェンと称される場合がある。
従来、グラフェンの製造方法として、いくつかの種類の方法が提案されている。
なかでも、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition: CVD)によって触媒金属基板上にグラフェンを合成し、得られたグラフェン層を任意の基材上に転写する方法(本明細書中、この方法をCVD−転写法と称する。)が、実用的な方法として期待されている。
このようなCVD−転写法は、大面積のグラフェンフィルムを任意の基材上に配置できる点で優れている。
ここで、グラフェンの大面積合成および連続合成を低コストで行うためには、ロール・ツー・ロール方式による合成が望ましいので、基板として、巻取りおよび巻き出しが可能な金属箔を用いることが効果的である。
例えば、非特許文献1では、銅箔上にグラフェンフィルムを形成させ、ロール・ツー・ロール法で、当該グラフェンフィルムの表面上にグラフェンフィルムを保持するための支持フィルムを接着し、エッチング液を用いて基板を除去し、支持フィルムに保持されたグラフェンフィルムを目的の基材へと移し、および支持フィルムを除去することによって、30インチのグラフェンフィルムを製造したことが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Sukang Baeら, Nature Nanotechnology, 2010年, 5, p.574−578
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らの検討では、CVD−転写法によるグラフェンフィルム製造においては、しばしば、金属箔上のグラフェンフィルムを支持フィルムに保持できず、その結果、グラフェンフィルムを製造できないことがあった。
従って、本発明は、CVD−転写法においてグラフェンフィルムを高い確実性をもって低コストで製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、グラフェンフィルムの製造が失敗する原因として、考えられる様々な原因を検討した結果、金属箔の、走査型電子顕微鏡では判別できない微小な表面粗さにおける定量的な違いによって、グラフェンフィルムの製造が成否の違いが生じていることを突き止め、この新たな発見に基づき、更なる研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、次の項1〜11の製造方法、および項12の導電フィルムに関する。
【0007】
項1.
(A)基板として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さが100〜600nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板の表面に炭素源を供給して、当該基板の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルムを形成させる工程と
を備えるグラフェンフィルムの製造方法。
項2.
(A)基板として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の算術平均山高さが20〜120nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板の表面に炭素源を供給して、当該基板の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルムを形成させる工程と
を備えるグラフェンフィルムの製造方法。
項3.
更に(C)前記グラフェンフィルムの上に支持フィルムを形成または貼付する工程と、
(D)前記基板を除去する工程と
を備える前記項1または2に記載の製造方法。
項4.
前記金属箔の100μm×100μmの正方形表面領域における算術平均面粗さ(Ra)が5〜100nmである項1に記載の製造方法。
項5.
前記金属箔が圧延箔であることを特徴とする前記項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
項6.
前記金属箔が銅箔であることを特徴とする前記項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
項7.
前記金属箔の厚さが15〜40μmの範囲内であることを特徴とする前記項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
項8.
前記化学気相成長が熱化学気相成長であることを特徴とする前記項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
項9.
前記化学気相成長が大気圧下での化学気相成長であることを特徴とする前記項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
項10.
前記炭素源がメタノールであることを特徴とする前記項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
項11.
前記支持フィルムがPMMAフィルムまたはPVAフィルムであることを特徴とする前記項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
項12.
プラスチックフィルムと、
当該プラスチックフィルム上に配置された前記項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたグラフェンフィルムと
を備える導電フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、CVD−転写法においてグラフェンフィルムを高い確実性をもって低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の製造方法、および本発明の導電フィルムの製造方法の概要を説明する図である。
【図2】実施例1〜3で製造したグラフェンフィルムのラマン散乱分光のグラフである。
【図3】実施例3で用いた銅箔の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】比較例1で用いた銅箔の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1で用いた銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像である。
【図6】実施例2で用いた銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像である。
【図7】実施例3で用いた銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像である。
【図8】比較例1で用いた銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像である。
【図9】比較例2で用いた銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中、「グラフェン」は、特に記載の無い限り、1層のグラフェンおよび複数層(例、2〜20層)のグラフェンの両方を包含する。また、「グラフェン」は、その部分によって層の数が異なっていてもよい。
【0011】
<グラフェンフィルムの製造方法>
以下、図1を参照しながら、本発明の製造方法を説明する。
本発明のグラフェンフィルムの製造方法は、少なくとも
(A)基板1として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さ(Rps)が100〜600nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板1の表面に炭素源を供給して、当該基板1の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルム2を形成させる工程とを備える。
本発明のグラフェンフィルムの製造方法は、所望により、更に、
(C)前記グラフェンフィルム2の上に支持フィルム3を形成または貼付する工程と、
(D)前記基板1を除去する工程と
を備える。
【0012】
[工程(A)]
工程(A)では、基板1として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さが100〜600nmの範囲内である金属箔を選択する。
【0013】
本明細書で用いられるパラメータである、基準表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さ(本明細書中、記号「Rps」で表す場合がある。)は、面粗さを表すパラメータである。これは、JIS B 0601:2001において定義される、線粗さを表すパラメータである「基準長さにおける粗さ曲線の最大山高さ(Rp)」を2次元に拡張したパラメータである。
Rpsは、指定された基準表面領域で、最も高い山頂の高さであり、「山」は、JIS B 0601:2001において定義される平均線を求める方法に準じて求めた平均面より上側の部分として定義される。
本明細書中、「100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さ」を記号「Rps(100)」で表す場合がある。
「Rps」(Rps(100)を包含する)は、市販の走査型プローブ顕微鏡(株式会社島津製作所、SPM−9700、またはその同等品)および市販の走査型プローブ顕微鏡用マイクロカンチレバー(オリンパス社、OMCL−AC200TS、またはその同等品)を用いて、所定のダイナミックモードで測定領域をX軸Y軸方向に二次元で走査して得た一連の測定点の測定結果から算出される。
【0014】
基板1として、Rps(100)が100〜600nmの範囲内である金属箔を選択して使用することにより、CVD−転写法によって、グラフェンフィルム2を高い確実性をもって製造可能になる。Rps(100)は、好ましくは100〜500nmの範囲内であり、より好ましくは300nm〜500nmの範囲内である。
【0015】
化学気相成長によって、グラフェンフィルム2を、支持フィルム3が保持できるように金属箔の表面に形成させるためには、Rps(100)が600nm以下である必要がある。
このことは、Rps(100)が600nmを超えると、基板1表面上におけるグラフェンの成長が阻害されること(すなわち、グラフェンフィルムの形成が不十分であること)、および後記で説明する樹脂液の塗布による支持フィルム3の形成時に、均質な支持フィルムが形成されにくくなるので、後記で説明する基板1である金属箔の溶解時にグラフェンフィルム2が支持フィルム3から剥離しやすくなることに起因すると推測される。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
一方、Rps(100)が100nm未満であるためには、金属箔の表面に電解研磨等の特殊な表面処理を施す必要があり、コスト面で不利である。また、この電解研磨により、金属箔の表面に過剰な酸化膜が生じる場合があり、当該過剰な酸化膜は、グラフェン形成を阻害する恐れがあるので、好ましくない。
【0016】
金属箔のRps(100)は、通常、金属箔の表面の1箇所で測定すれば足りるが、グラフェンフィルム2をより高い確実性をもって製造することを可能にするためには、金属箔の表面の複数箇所(例えば、10cm間隔)でRps(100)を測定し、その全ての測定箇所でRps(100)が前記数値範囲内である金属箔を選択して使用することが好ましい。あるいは、Rps(100)が前記数値範囲外である部分を除いて金属箔を使用してもよい。このような場合もまた、本発明の製造方法の範囲内である。
【0017】
別法として、基板1として、Rps(100)が100〜600nmの範囲内である金属箔を選択することに換えて、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の算術平均山高さが20〜120nmの範囲内である金属箔を選択することができる。
【0018】
本明細書で用いられるパラメータである、基準表面領域における表面粗さ曲面の算術平均山高さ(本明細書中、記号「Rhs」で表す場合がある。)もまた、面粗さを表すパラメータであり、Rpsにおける前記「山」の高さの平均である。
Rhsは、指定された基準表面領域の幅をw、奥行きをd、山高さをh(x,y)で表したとき、次式によって求められる。
【数1】
【0019】
本明細書中、「100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さ」を記号「Rhs(100)」で表す場合がある。
【0020】
基板1として、Rhs(100)が20〜120nmの範囲内である金属箔を選択して使用することにより、CVD−転写法によって、グラフェンフィルム2を高い確実性をもって製造可能になる。Rhs(100)は、好ましくは40〜100nmの範囲内であり、より好ましくは50nm〜80nmの範囲内である。
【0021】
化学気相成長によって、グラフェンフィルム2を、支持フィルム3が保持できるように金属箔の表面に形成させるためには、Rhs(100)が120nm以下である必要がある。
このことは、Rhs(100)が120nmを超えると、基板1表面上におけるグラフェンの成長が阻害されること(すなわち、グラフェンフィルムの形成が不十分であること)、および後記で説明する樹脂液の塗布による支持フィルム3の形成時に、均質な支持フィルムが形成されにくくなるので、後記で説明する基板1である金属箔の溶解時にグラフェンフィルム2が支持フィルム3から剥離しやすくなることに起因すると推測される。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
一方、Rhs(100)が20nm未満であるためには、金属箔の表面に電解研磨等の特殊な表面処理を施す必要があり、コスト面で不利である。また、この電解研磨により、金属箔の表面に過剰な酸化膜が生じる場合があり、当該過剰な酸化膜は、グラフェン形成を阻害する恐れがあるので、好ましくない。
【0022】
Rps(100)が前記数値範囲内であり、かつRhs(100)が前記数値範囲内であることが好ましい。
【0023】
Rps(100)および/またはRhs(100)が前記数値範囲内であることが推定される場合は、必ずしも、Rps(100)および/またはRhs(100)を実際に測定する必要はない。このような場合としては、例えば、Rps(100)および/またはRhs(100)が前記数値範囲内であることが確認された金属箔と実質的に同一の製造方法で製造された金属箔を選択して用いること、およびRps(100)および/またはRhs(100)以外の表面粗さを表すパラメーターの値からRps(100)および/またはRhs(100)が前記数値範囲内であることが推定できる金属箔を選択して用いることが挙げられる。このような場合もまた、本発明の製造方法の範囲内である。
このようなパラメーターとしては、例えば、JIS B 0601:2001において定義される、線粗さを表すパラメータである「基準長さにおける粗さ曲線の最大高さ(Rz)」を2次元に拡張したパラメータが挙げられる。本明細書中、このパラメーターを記号「Rzs」で表す。Rzsは、最大山高さであるRpsに対応する最大谷深さをRvsで表した場合、RpsとRvsとの和に等しい。本明細書中、「100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大高さ」を記号「Rzs(100)」で表す場合がある。
例えば、Rzs(100)が50〜1200nmである場合、Rps(100)が100〜600nmの範囲内であることが推測される。
【0024】
本発明で使用されるために選択される金属箔は、その100μm×100μmの正方形表面領域における算術平均面粗さが20〜100nmであることが好ましい。
本明細書で用いられるパラメータである、基準表面領域における表面粗さ曲面の算術平均面粗さ(本明細書中、記号「Ras」で表す場合がある。)もまた、面粗さを表すパラメータである。
Rasは、指定された基準表面領域の幅をw、奥行きをd、表面の高さをf(x,y)で表したとき、次式によって求められる。
【数2】
本明細書中、「100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の算術平均面粗さ」を記号「Ras(100)」で表す場合がある。
金属箔のRas(100)は、通常、金属箔の表面の1箇所で測定すれば足りるが、グラフェンフィルムをより高い確実性をもって製造することを可能にするためには、金属箔の表面の複数箇所(例えば、10cm間隔)でRas(100)を測定し、全ての測定箇所でRas(100)が前記数値範囲内であることが好ましい。
【0025】
本発明は、製造方法および製造条件により金属箔の表面構造が異なり、CVD−転写法にてグラフェンを合成する際には、特定の表面構造を有する金属箔を用いることによりグラフェンの形成が有利になるという知見に基づく。
電解箔は電気メッキまたは無電解メッキにより製造される。メッキ時の電位はミクロ的に大きな分布を持つので、表面の凹凸が大きくなりやすく、また部分的に毛羽立った表面構造になりやすい。
一方、圧延箔は厚い金属をプレスロールに何度も通すことにより、平滑性を高めつつ、薄膜化される。しかし、ローラーによる表面の傷や細かい筋状の凹凸ができやすい。
このように、電解箔でも圧延箔でも表面に凹凸を有するが、その凹凸の性質は異なり、本発明で使用される金属箔は、圧延箔であることが好ましい。
【0026】
本発明で使用される金属箔の厚さは、15〜40μmの範囲内であることが好ましい。
金属箔の厚さが40μmを超えると、金属箔の除去のためのエッチング時間が長くなり、生産性が悪くなる。一方、金属箔の厚さが15μm未満であると、金属箔が破断しやすくなり、本発明の製造方法への使用に適さない。
【0027】
本発明で使用される金属箔は、化学気相成長によるグラフェンフィルム2の形成を可能にする基板である必要がある。このような金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、ニッケル、コバルト、鉄、白金、金、アルミニウム、クロム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ロジウム、ケイ素、タンタル、チタン、タングステン、ウラン、バナジウム、ジルコニウム、およびこれらの合金が挙げられる。なかでも、より好ましくは、例えば、銅、ニッケルであり、特に好ましくは、例えば、銅である。すなわち、本発明で使用される金属箔としては、特に好ましくは、例えば、銅箔である。
【0028】
[工程(B)]
工程(B)では、前記基板1の表面に炭素源を供給して、当該基板1の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルム2を形成させる。
【0029】
前記基板1表面への炭素源の供給は、例えば、チャンバ内に基板1を置き、当該チャンバ内に炭素源を気体として供給することによって実施される。
【0030】
本発明で使用される炭素源としては、例えば、メタン、エタン、エチレン、メタノール、エタノール、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、およびこれらの混合物が挙げられる。なかでも、好ましくは、例えば、メタノールである。
【0031】
炭素源は、水素ガスとともに供給されてもよい。
また、炭素源は、ヘリウム、アルゴン、窒素のようなキャリアガス(不活性ガスまたは希ガス)とともに供給されてもよい。
炭素源がメタノール等のように常温で液体である場合、例えば、液体の炭素源中にキャリアガスを通気させること(バブリング)炭素源をチャンバ内に供給することができる。
炭素源の供給速度は、反応空間の広さ等によって異なるが、例えば、液体の炭素源中に希ガスを通気させること(バブリング)によって炭素源を内径46mmφのチャンバ内に供給する場合、通常、0.5〜3L/分である。
【0032】
化学気相成長としては、熱化学気相成長、プラズマ気相成長、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
熱化学気相成長では、基板1である金属箔の存在下で、所定の温度で所定の時間、炭素源を熱処理することによって、金属箔の表面上でグラフェンが合成され、グラフェンフィルム2が形成される。
この温度は、通常600〜1500℃、好ましくは800〜1200℃、より好ましくは900〜1000℃である。
この時間は、炭素源供給速度、および反応空間の広さ等によって異なるが、通常数秒〜数時間、好ましくは1〜10分間である。
プラズマ気相成長では、基板1である金属箔の存在下で、炭素源を含む気体をプラズマ化することによって、金属箔の表面上でグラフェンが合成され、グラフェンフィルム2が形成される。炭素源のプラズマ化は、例えば、直流、交流、高周波、マイクロ波等の放電によって行われる。
本発明における化学気相成長としては、熱化学気相成長が好ましい。
【0033】
本発明における化学気相成長は、真空下での化学気相成長であっても、大気圧下での化学気相成長であってもよい。一般に真空下での化学気相成長のほうが、得られるフィルムの品質が高い傾向があるが、一方、大気圧下での化学気相成長には、装置の選択の自由度が高く、グラフェン製造に要する時間が短いという利点がある。本発明の方法によれば、化学気相成長を大気圧下でも好適に進行させることができるので、大気圧下での化学気相成長が好ましい。
【0034】
炭素源供給後、金属箔を冷却する。冷却は、自然冷却(例、10〜20℃低下/20分)を採用してもよく、急速冷却(例、100〜500℃低下/10秒)を採用してもよい。特に基板としてニッケル箔を用いる場合、急速冷却により、グラフェンフィルムの質が向上することが期待できる。
【0035】
[工程(C)]
工程(C)では、前記グラフェンフィルム2の上に支持フィルム3を形成または貼付する。
支持フィルム3は、工程(D)での基板1の除去時にもグラフェンフィルム2を保持できる必要がある。
当該工程は、例えば、前記グラフェンフィルム2の上に市販の高接着易剥離テープ(例、セルファ(商品名)、積水化学工業)を貼付すること、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)もしくはポリビニルアルコール(PVA)等の樹脂の有機溶媒溶液(例、アセトン溶液)もしくは溶融物などの樹脂液を前記グラフェンフィルム2の上に塗布し、前記有機溶媒を蒸発させるかあるいは樹脂を固化させて、このような樹脂のフィルムを形成させることによって、実施できる。
本発明で用いられる支持フィルム3としては、例えば、PMMAフィルム、またはPVAフィルムが好ましい。
支持フィルム3の厚さは、グラフェンフィルム2を保持できる限り、特に限定されないが、通常100nm〜1mm程度である。
【0036】
[工程(D)]
工程(D)では、基板1を除去する。
基板1の除去は、例えば、湿式エッチング法によって行うことができる。
湿式エッチング法によるエッチングは、基板1、グラフェンフィルム2、および支持フィルム3からなる積層体をエッチング液に浸漬することによって実施できる。
エッチング液としては、例えば、フッ化水素(HF)溶液、硝酸第二鉄(Fe(No3)3)水溶液、および塩化第二鉄(FeCl3)水溶液が挙げられる。
浸漬時間は、基板1が除去できる時間に設定すればよく、エッチング液の種類等によって異なるが、通常1時間〜1日程度である。
【0037】
エッチング液は、所望により、水洗等によって除去される。
【0038】
このようにして得られるグラフェンフィルム2は、これに接着している支持フィルム3を取り除いて、太陽電池、またはタッチパネル等の透明電極として好適に使用される。支持フィルム3の除去は、支持フィルム3の種類に応じて適当な方法を選択して行えばよい。
【0039】
なお、工程(A)および(B)によって得られる、グラフェンフィルム2を表面に形成させた基板1において、当該基板1である金属箔を適宜エッチングすることにより、エッチング後の金属箔を電極として利用することもできる。
当該エッチングは、ドライエッチング法またはウェットエッチング法等の公知の方法を用いて行えばよい。
【0040】
<導電フィルム>
本発明の導電フィルムは、プラスチックフィルム4と、
当該プラスチックフィルム上に配置された、前記の本発明の製造方法で製造されるグラフェンフィルム2と
を備える。
本発明で用いられるプラスチックフィルム4としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、およびポリイミドフィルムが挙げられる。
【0041】
以下、図1を参照しながら、本発明の導電フィルムの製造方法を説明する。
本発明の導電フィルムは、例えば、前記の方法で製造されるグラフェンフィルムと支持フィルム3からなる積層体のグラフェンフィルム2の上に、プラスチックフィルム4を直接または接着剤(例、エポキシ接着剤)を用いて接着し、その後、これに接着している支持フィルム3を取り除くことによって製造することができる。支持フィルム3の除去は、支持フィルム3の種類に応じて適当な方法を選択して行えばよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例および比較例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、各銅箔の表面粗さは、走査型プローブ顕微鏡(株式会社島津製作所、SPM−9700)のダイナミックモードにより100μ×100μmの領域および10μm×10μmの領域の測定結果から得た原子間力顕微鏡分析の映像化画像により観察した。この際、カンチレバーはオリンパス社製OMCL−AC200TSを用いた。
以下の実施例および比較例において、走査型電子顕微鏡による各銅箔表面の観察は、電界放射型走査電子顕微鏡(株式会社日本電子、JSM-6700F)を用いた。
【0043】
実施例1
長さ1m、内径46mmφの石英管の中央に幅40cmの管状電気炉を配置した石英管を反応炉として用いて、反応炉内の中央部に銅箔を載せた磁性皿を配置した。基板として、表1の圧延銅箔を4cm×3cmに切断したものを用いた。図5に圧延銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像を示す。
H2:Ar(体積比)=3:97の雰囲気ガスにて石英管内を十分に置換した後、管状電気炉が配置されている石英管内の中央部を950℃まで加熱した。その後、雰囲気ガスにてメタノールをバブリングすることにより、雰囲気ガスとともにメタノールを石英管内に5分間導入した。雰囲気ガス量は1L/分であった。その後、石英管の外側から取り出し棒を挿入し、銅箔を載せた磁性皿に引っかけ、磁性皿を石英管内の中央部(加熱領域)から発熱した管状電気炉から十分に離れた石英管の一端(未加熱領域)へ移動させることで急速に室温まで冷却し、試料(炭素物質が付着した銅箔)を載せた磁性皿を取り出した。
磁性皿から試料を取り上げ、試料の裏面(磁性皿側)を銅箔保護するための熱剥離シートに貼り付けた。次いで、試料の表面(熱剥離シートが貼り付けられた面とは反対側)に2wt% ポリメチルメタクリレート−アセトン溶液、続いて5wt% ポリメチルメタクリレート−アセトン溶液をそれぞれスピンコートにて塗布し、溶液を乾燥させて支持フィルムを形成した。
熱剥離シートが貼り付けられた試料をホットプレートに載せることにより、熱剥離シートを試料から剥離した。
1Mの硝酸第二鉄水溶液に試料の裏面を接触させることにより、銅箔を溶解した。銅箔の溶解後、試料の裏面を水浴で洗浄し、石英基板によりすくい取った。試料乾燥後、アセトンにより支持フィルムを溶解し、水洗・乾燥後、ラマン散乱分光によりグラフェン薄膜を評価した。グラフェンに特徴的なG−bandと2D−bandが確認できた。
【0044】
実施例2
基板として、表1の圧延銅箔(図6にその表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像を示す。)を用いた以外は実施例1と同様にした。ラマン散乱分光の結果よりグラフェンに特徴的なG−bandと2D−bandが確認できた。
【0045】
実施例3
基板として、表1の圧延銅箔(図3に圧延銅箔の走査型電子顕微鏡写真を、図7にその表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像を示す。)を用いた以外は実施例1と同様にした。ラマン散乱分光の結果よりグラフェンに特徴的なG−bandと2D−bandが確認できた。
【0046】
比較例1
基板として、表1の電解銅箔(図4にその走査型電子顕微鏡写真を、図8にその表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像を示す。)を用いた以外は実施例1と同様にした。銅箔を溶解した際に炭素物質が支持フィルムより剥離した。グラフェンの剥離は、剥離片を肉眼で観察することによって確認した。
【0047】
比較例2
基板として、表1の電解銅箔(図9にその表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像を示す。)を用いた以外は実施例1と同様にした。銅箔を溶解した際に炭素物質が支持フィルムより剥離した。グラフェンの剥離は、剥離片を肉眼で観察することによって確認した。
【0048】
【表1】
【符号の説明】
【0049】
1 基板
2 グラフェンフィルム
3 支持フィルム
4 プラスチックフィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンフィルムの製造方法、およびグラフェンフィルムを備える導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、炭素原子の同素体の一つであり、蜂の巣状の6角形格子に充填されたsp2結合炭素原子からなる平面シート状の物質である。
グラフェンは、その極めて高い電子移動度、極めて低い可視光線吸収度、および極めて高い機械的強度(例えば、極めて高いヤング率)等により、新たな透明電極材料等として高い注目を集めている物質である。
狭義には、グラフェンは、一層のグラフェン層から構成される物質であるが、少数のグラフェン層から構成される物質もまた、広義に、グラフェンと称される場合がある。
従来、グラフェンの製造方法として、いくつかの種類の方法が提案されている。
なかでも、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition: CVD)によって触媒金属基板上にグラフェンを合成し、得られたグラフェン層を任意の基材上に転写する方法(本明細書中、この方法をCVD−転写法と称する。)が、実用的な方法として期待されている。
このようなCVD−転写法は、大面積のグラフェンフィルムを任意の基材上に配置できる点で優れている。
ここで、グラフェンの大面積合成および連続合成を低コストで行うためには、ロール・ツー・ロール方式による合成が望ましいので、基板として、巻取りおよび巻き出しが可能な金属箔を用いることが効果的である。
例えば、非特許文献1では、銅箔上にグラフェンフィルムを形成させ、ロール・ツー・ロール法で、当該グラフェンフィルムの表面上にグラフェンフィルムを保持するための支持フィルムを接着し、エッチング液を用いて基板を除去し、支持フィルムに保持されたグラフェンフィルムを目的の基材へと移し、および支持フィルムを除去することによって、30インチのグラフェンフィルムを製造したことが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Sukang Baeら, Nature Nanotechnology, 2010年, 5, p.574−578
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らの検討では、CVD−転写法によるグラフェンフィルム製造においては、しばしば、金属箔上のグラフェンフィルムを支持フィルムに保持できず、その結果、グラフェンフィルムを製造できないことがあった。
従って、本発明は、CVD−転写法においてグラフェンフィルムを高い確実性をもって低コストで製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、グラフェンフィルムの製造が失敗する原因として、考えられる様々な原因を検討した結果、金属箔の、走査型電子顕微鏡では判別できない微小な表面粗さにおける定量的な違いによって、グラフェンフィルムの製造が成否の違いが生じていることを突き止め、この新たな発見に基づき、更なる研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、次の項1〜11の製造方法、および項12の導電フィルムに関する。
【0007】
項1.
(A)基板として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さが100〜600nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板の表面に炭素源を供給して、当該基板の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルムを形成させる工程と
を備えるグラフェンフィルムの製造方法。
項2.
(A)基板として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の算術平均山高さが20〜120nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板の表面に炭素源を供給して、当該基板の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルムを形成させる工程と
を備えるグラフェンフィルムの製造方法。
項3.
更に(C)前記グラフェンフィルムの上に支持フィルムを形成または貼付する工程と、
(D)前記基板を除去する工程と
を備える前記項1または2に記載の製造方法。
項4.
前記金属箔の100μm×100μmの正方形表面領域における算術平均面粗さ(Ra)が5〜100nmである項1に記載の製造方法。
項5.
前記金属箔が圧延箔であることを特徴とする前記項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
項6.
前記金属箔が銅箔であることを特徴とする前記項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
項7.
前記金属箔の厚さが15〜40μmの範囲内であることを特徴とする前記項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
項8.
前記化学気相成長が熱化学気相成長であることを特徴とする前記項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
項9.
前記化学気相成長が大気圧下での化学気相成長であることを特徴とする前記項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
項10.
前記炭素源がメタノールであることを特徴とする前記項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
項11.
前記支持フィルムがPMMAフィルムまたはPVAフィルムであることを特徴とする前記項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
項12.
プラスチックフィルムと、
当該プラスチックフィルム上に配置された前記項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたグラフェンフィルムと
を備える導電フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、CVD−転写法においてグラフェンフィルムを高い確実性をもって低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の製造方法、および本発明の導電フィルムの製造方法の概要を説明する図である。
【図2】実施例1〜3で製造したグラフェンフィルムのラマン散乱分光のグラフである。
【図3】実施例3で用いた銅箔の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】比較例1で用いた銅箔の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1で用いた銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像である。
【図6】実施例2で用いた銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像である。
【図7】実施例3で用いた銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像である。
【図8】比較例1で用いた銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像である。
【図9】比較例2で用いた銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中、「グラフェン」は、特に記載の無い限り、1層のグラフェンおよび複数層(例、2〜20層)のグラフェンの両方を包含する。また、「グラフェン」は、その部分によって層の数が異なっていてもよい。
【0011】
<グラフェンフィルムの製造方法>
以下、図1を参照しながら、本発明の製造方法を説明する。
本発明のグラフェンフィルムの製造方法は、少なくとも
(A)基板1として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さ(Rps)が100〜600nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板1の表面に炭素源を供給して、当該基板1の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルム2を形成させる工程とを備える。
本発明のグラフェンフィルムの製造方法は、所望により、更に、
(C)前記グラフェンフィルム2の上に支持フィルム3を形成または貼付する工程と、
(D)前記基板1を除去する工程と
を備える。
【0012】
[工程(A)]
工程(A)では、基板1として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さが100〜600nmの範囲内である金属箔を選択する。
【0013】
本明細書で用いられるパラメータである、基準表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さ(本明細書中、記号「Rps」で表す場合がある。)は、面粗さを表すパラメータである。これは、JIS B 0601:2001において定義される、線粗さを表すパラメータである「基準長さにおける粗さ曲線の最大山高さ(Rp)」を2次元に拡張したパラメータである。
Rpsは、指定された基準表面領域で、最も高い山頂の高さであり、「山」は、JIS B 0601:2001において定義される平均線を求める方法に準じて求めた平均面より上側の部分として定義される。
本明細書中、「100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さ」を記号「Rps(100)」で表す場合がある。
「Rps」(Rps(100)を包含する)は、市販の走査型プローブ顕微鏡(株式会社島津製作所、SPM−9700、またはその同等品)および市販の走査型プローブ顕微鏡用マイクロカンチレバー(オリンパス社、OMCL−AC200TS、またはその同等品)を用いて、所定のダイナミックモードで測定領域をX軸Y軸方向に二次元で走査して得た一連の測定点の測定結果から算出される。
【0014】
基板1として、Rps(100)が100〜600nmの範囲内である金属箔を選択して使用することにより、CVD−転写法によって、グラフェンフィルム2を高い確実性をもって製造可能になる。Rps(100)は、好ましくは100〜500nmの範囲内であり、より好ましくは300nm〜500nmの範囲内である。
【0015】
化学気相成長によって、グラフェンフィルム2を、支持フィルム3が保持できるように金属箔の表面に形成させるためには、Rps(100)が600nm以下である必要がある。
このことは、Rps(100)が600nmを超えると、基板1表面上におけるグラフェンの成長が阻害されること(すなわち、グラフェンフィルムの形成が不十分であること)、および後記で説明する樹脂液の塗布による支持フィルム3の形成時に、均質な支持フィルムが形成されにくくなるので、後記で説明する基板1である金属箔の溶解時にグラフェンフィルム2が支持フィルム3から剥離しやすくなることに起因すると推測される。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
一方、Rps(100)が100nm未満であるためには、金属箔の表面に電解研磨等の特殊な表面処理を施す必要があり、コスト面で不利である。また、この電解研磨により、金属箔の表面に過剰な酸化膜が生じる場合があり、当該過剰な酸化膜は、グラフェン形成を阻害する恐れがあるので、好ましくない。
【0016】
金属箔のRps(100)は、通常、金属箔の表面の1箇所で測定すれば足りるが、グラフェンフィルム2をより高い確実性をもって製造することを可能にするためには、金属箔の表面の複数箇所(例えば、10cm間隔)でRps(100)を測定し、その全ての測定箇所でRps(100)が前記数値範囲内である金属箔を選択して使用することが好ましい。あるいは、Rps(100)が前記数値範囲外である部分を除いて金属箔を使用してもよい。このような場合もまた、本発明の製造方法の範囲内である。
【0017】
別法として、基板1として、Rps(100)が100〜600nmの範囲内である金属箔を選択することに換えて、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の算術平均山高さが20〜120nmの範囲内である金属箔を選択することができる。
【0018】
本明細書で用いられるパラメータである、基準表面領域における表面粗さ曲面の算術平均山高さ(本明細書中、記号「Rhs」で表す場合がある。)もまた、面粗さを表すパラメータであり、Rpsにおける前記「山」の高さの平均である。
Rhsは、指定された基準表面領域の幅をw、奥行きをd、山高さをh(x,y)で表したとき、次式によって求められる。
【数1】
【0019】
本明細書中、「100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さ」を記号「Rhs(100)」で表す場合がある。
【0020】
基板1として、Rhs(100)が20〜120nmの範囲内である金属箔を選択して使用することにより、CVD−転写法によって、グラフェンフィルム2を高い確実性をもって製造可能になる。Rhs(100)は、好ましくは40〜100nmの範囲内であり、より好ましくは50nm〜80nmの範囲内である。
【0021】
化学気相成長によって、グラフェンフィルム2を、支持フィルム3が保持できるように金属箔の表面に形成させるためには、Rhs(100)が120nm以下である必要がある。
このことは、Rhs(100)が120nmを超えると、基板1表面上におけるグラフェンの成長が阻害されること(すなわち、グラフェンフィルムの形成が不十分であること)、および後記で説明する樹脂液の塗布による支持フィルム3の形成時に、均質な支持フィルムが形成されにくくなるので、後記で説明する基板1である金属箔の溶解時にグラフェンフィルム2が支持フィルム3から剥離しやすくなることに起因すると推測される。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
一方、Rhs(100)が20nm未満であるためには、金属箔の表面に電解研磨等の特殊な表面処理を施す必要があり、コスト面で不利である。また、この電解研磨により、金属箔の表面に過剰な酸化膜が生じる場合があり、当該過剰な酸化膜は、グラフェン形成を阻害する恐れがあるので、好ましくない。
【0022】
Rps(100)が前記数値範囲内であり、かつRhs(100)が前記数値範囲内であることが好ましい。
【0023】
Rps(100)および/またはRhs(100)が前記数値範囲内であることが推定される場合は、必ずしも、Rps(100)および/またはRhs(100)を実際に測定する必要はない。このような場合としては、例えば、Rps(100)および/またはRhs(100)が前記数値範囲内であることが確認された金属箔と実質的に同一の製造方法で製造された金属箔を選択して用いること、およびRps(100)および/またはRhs(100)以外の表面粗さを表すパラメーターの値からRps(100)および/またはRhs(100)が前記数値範囲内であることが推定できる金属箔を選択して用いることが挙げられる。このような場合もまた、本発明の製造方法の範囲内である。
このようなパラメーターとしては、例えば、JIS B 0601:2001において定義される、線粗さを表すパラメータである「基準長さにおける粗さ曲線の最大高さ(Rz)」を2次元に拡張したパラメータが挙げられる。本明細書中、このパラメーターを記号「Rzs」で表す。Rzsは、最大山高さであるRpsに対応する最大谷深さをRvsで表した場合、RpsとRvsとの和に等しい。本明細書中、「100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大高さ」を記号「Rzs(100)」で表す場合がある。
例えば、Rzs(100)が50〜1200nmである場合、Rps(100)が100〜600nmの範囲内であることが推測される。
【0024】
本発明で使用されるために選択される金属箔は、その100μm×100μmの正方形表面領域における算術平均面粗さが20〜100nmであることが好ましい。
本明細書で用いられるパラメータである、基準表面領域における表面粗さ曲面の算術平均面粗さ(本明細書中、記号「Ras」で表す場合がある。)もまた、面粗さを表すパラメータである。
Rasは、指定された基準表面領域の幅をw、奥行きをd、表面の高さをf(x,y)で表したとき、次式によって求められる。
【数2】
本明細書中、「100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の算術平均面粗さ」を記号「Ras(100)」で表す場合がある。
金属箔のRas(100)は、通常、金属箔の表面の1箇所で測定すれば足りるが、グラフェンフィルムをより高い確実性をもって製造することを可能にするためには、金属箔の表面の複数箇所(例えば、10cm間隔)でRas(100)を測定し、全ての測定箇所でRas(100)が前記数値範囲内であることが好ましい。
【0025】
本発明は、製造方法および製造条件により金属箔の表面構造が異なり、CVD−転写法にてグラフェンを合成する際には、特定の表面構造を有する金属箔を用いることによりグラフェンの形成が有利になるという知見に基づく。
電解箔は電気メッキまたは無電解メッキにより製造される。メッキ時の電位はミクロ的に大きな分布を持つので、表面の凹凸が大きくなりやすく、また部分的に毛羽立った表面構造になりやすい。
一方、圧延箔は厚い金属をプレスロールに何度も通すことにより、平滑性を高めつつ、薄膜化される。しかし、ローラーによる表面の傷や細かい筋状の凹凸ができやすい。
このように、電解箔でも圧延箔でも表面に凹凸を有するが、その凹凸の性質は異なり、本発明で使用される金属箔は、圧延箔であることが好ましい。
【0026】
本発明で使用される金属箔の厚さは、15〜40μmの範囲内であることが好ましい。
金属箔の厚さが40μmを超えると、金属箔の除去のためのエッチング時間が長くなり、生産性が悪くなる。一方、金属箔の厚さが15μm未満であると、金属箔が破断しやすくなり、本発明の製造方法への使用に適さない。
【0027】
本発明で使用される金属箔は、化学気相成長によるグラフェンフィルム2の形成を可能にする基板である必要がある。このような金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、ニッケル、コバルト、鉄、白金、金、アルミニウム、クロム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ロジウム、ケイ素、タンタル、チタン、タングステン、ウラン、バナジウム、ジルコニウム、およびこれらの合金が挙げられる。なかでも、より好ましくは、例えば、銅、ニッケルであり、特に好ましくは、例えば、銅である。すなわち、本発明で使用される金属箔としては、特に好ましくは、例えば、銅箔である。
【0028】
[工程(B)]
工程(B)では、前記基板1の表面に炭素源を供給して、当該基板1の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルム2を形成させる。
【0029】
前記基板1表面への炭素源の供給は、例えば、チャンバ内に基板1を置き、当該チャンバ内に炭素源を気体として供給することによって実施される。
【0030】
本発明で使用される炭素源としては、例えば、メタン、エタン、エチレン、メタノール、エタノール、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、およびこれらの混合物が挙げられる。なかでも、好ましくは、例えば、メタノールである。
【0031】
炭素源は、水素ガスとともに供給されてもよい。
また、炭素源は、ヘリウム、アルゴン、窒素のようなキャリアガス(不活性ガスまたは希ガス)とともに供給されてもよい。
炭素源がメタノール等のように常温で液体である場合、例えば、液体の炭素源中にキャリアガスを通気させること(バブリング)炭素源をチャンバ内に供給することができる。
炭素源の供給速度は、反応空間の広さ等によって異なるが、例えば、液体の炭素源中に希ガスを通気させること(バブリング)によって炭素源を内径46mmφのチャンバ内に供給する場合、通常、0.5〜3L/分である。
【0032】
化学気相成長としては、熱化学気相成長、プラズマ気相成長、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
熱化学気相成長では、基板1である金属箔の存在下で、所定の温度で所定の時間、炭素源を熱処理することによって、金属箔の表面上でグラフェンが合成され、グラフェンフィルム2が形成される。
この温度は、通常600〜1500℃、好ましくは800〜1200℃、より好ましくは900〜1000℃である。
この時間は、炭素源供給速度、および反応空間の広さ等によって異なるが、通常数秒〜数時間、好ましくは1〜10分間である。
プラズマ気相成長では、基板1である金属箔の存在下で、炭素源を含む気体をプラズマ化することによって、金属箔の表面上でグラフェンが合成され、グラフェンフィルム2が形成される。炭素源のプラズマ化は、例えば、直流、交流、高周波、マイクロ波等の放電によって行われる。
本発明における化学気相成長としては、熱化学気相成長が好ましい。
【0033】
本発明における化学気相成長は、真空下での化学気相成長であっても、大気圧下での化学気相成長であってもよい。一般に真空下での化学気相成長のほうが、得られるフィルムの品質が高い傾向があるが、一方、大気圧下での化学気相成長には、装置の選択の自由度が高く、グラフェン製造に要する時間が短いという利点がある。本発明の方法によれば、化学気相成長を大気圧下でも好適に進行させることができるので、大気圧下での化学気相成長が好ましい。
【0034】
炭素源供給後、金属箔を冷却する。冷却は、自然冷却(例、10〜20℃低下/20分)を採用してもよく、急速冷却(例、100〜500℃低下/10秒)を採用してもよい。特に基板としてニッケル箔を用いる場合、急速冷却により、グラフェンフィルムの質が向上することが期待できる。
【0035】
[工程(C)]
工程(C)では、前記グラフェンフィルム2の上に支持フィルム3を形成または貼付する。
支持フィルム3は、工程(D)での基板1の除去時にもグラフェンフィルム2を保持できる必要がある。
当該工程は、例えば、前記グラフェンフィルム2の上に市販の高接着易剥離テープ(例、セルファ(商品名)、積水化学工業)を貼付すること、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)もしくはポリビニルアルコール(PVA)等の樹脂の有機溶媒溶液(例、アセトン溶液)もしくは溶融物などの樹脂液を前記グラフェンフィルム2の上に塗布し、前記有機溶媒を蒸発させるかあるいは樹脂を固化させて、このような樹脂のフィルムを形成させることによって、実施できる。
本発明で用いられる支持フィルム3としては、例えば、PMMAフィルム、またはPVAフィルムが好ましい。
支持フィルム3の厚さは、グラフェンフィルム2を保持できる限り、特に限定されないが、通常100nm〜1mm程度である。
【0036】
[工程(D)]
工程(D)では、基板1を除去する。
基板1の除去は、例えば、湿式エッチング法によって行うことができる。
湿式エッチング法によるエッチングは、基板1、グラフェンフィルム2、および支持フィルム3からなる積層体をエッチング液に浸漬することによって実施できる。
エッチング液としては、例えば、フッ化水素(HF)溶液、硝酸第二鉄(Fe(No3)3)水溶液、および塩化第二鉄(FeCl3)水溶液が挙げられる。
浸漬時間は、基板1が除去できる時間に設定すればよく、エッチング液の種類等によって異なるが、通常1時間〜1日程度である。
【0037】
エッチング液は、所望により、水洗等によって除去される。
【0038】
このようにして得られるグラフェンフィルム2は、これに接着している支持フィルム3を取り除いて、太陽電池、またはタッチパネル等の透明電極として好適に使用される。支持フィルム3の除去は、支持フィルム3の種類に応じて適当な方法を選択して行えばよい。
【0039】
なお、工程(A)および(B)によって得られる、グラフェンフィルム2を表面に形成させた基板1において、当該基板1である金属箔を適宜エッチングすることにより、エッチング後の金属箔を電極として利用することもできる。
当該エッチングは、ドライエッチング法またはウェットエッチング法等の公知の方法を用いて行えばよい。
【0040】
<導電フィルム>
本発明の導電フィルムは、プラスチックフィルム4と、
当該プラスチックフィルム上に配置された、前記の本発明の製造方法で製造されるグラフェンフィルム2と
を備える。
本発明で用いられるプラスチックフィルム4としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、およびポリイミドフィルムが挙げられる。
【0041】
以下、図1を参照しながら、本発明の導電フィルムの製造方法を説明する。
本発明の導電フィルムは、例えば、前記の方法で製造されるグラフェンフィルムと支持フィルム3からなる積層体のグラフェンフィルム2の上に、プラスチックフィルム4を直接または接着剤(例、エポキシ接着剤)を用いて接着し、その後、これに接着している支持フィルム3を取り除くことによって製造することができる。支持フィルム3の除去は、支持フィルム3の種類に応じて適当な方法を選択して行えばよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例および比較例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、各銅箔の表面粗さは、走査型プローブ顕微鏡(株式会社島津製作所、SPM−9700)のダイナミックモードにより100μ×100μmの領域および10μm×10μmの領域の測定結果から得た原子間力顕微鏡分析の映像化画像により観察した。この際、カンチレバーはオリンパス社製OMCL−AC200TSを用いた。
以下の実施例および比較例において、走査型電子顕微鏡による各銅箔表面の観察は、電界放射型走査電子顕微鏡(株式会社日本電子、JSM-6700F)を用いた。
【0043】
実施例1
長さ1m、内径46mmφの石英管の中央に幅40cmの管状電気炉を配置した石英管を反応炉として用いて、反応炉内の中央部に銅箔を載せた磁性皿を配置した。基板として、表1の圧延銅箔を4cm×3cmに切断したものを用いた。図5に圧延銅箔の表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像を示す。
H2:Ar(体積比)=3:97の雰囲気ガスにて石英管内を十分に置換した後、管状電気炉が配置されている石英管内の中央部を950℃まで加熱した。その後、雰囲気ガスにてメタノールをバブリングすることにより、雰囲気ガスとともにメタノールを石英管内に5分間導入した。雰囲気ガス量は1L/分であった。その後、石英管の外側から取り出し棒を挿入し、銅箔を載せた磁性皿に引っかけ、磁性皿を石英管内の中央部(加熱領域)から発熱した管状電気炉から十分に離れた石英管の一端(未加熱領域)へ移動させることで急速に室温まで冷却し、試料(炭素物質が付着した銅箔)を載せた磁性皿を取り出した。
磁性皿から試料を取り上げ、試料の裏面(磁性皿側)を銅箔保護するための熱剥離シートに貼り付けた。次いで、試料の表面(熱剥離シートが貼り付けられた面とは反対側)に2wt% ポリメチルメタクリレート−アセトン溶液、続いて5wt% ポリメチルメタクリレート−アセトン溶液をそれぞれスピンコートにて塗布し、溶液を乾燥させて支持フィルムを形成した。
熱剥離シートが貼り付けられた試料をホットプレートに載せることにより、熱剥離シートを試料から剥離した。
1Mの硝酸第二鉄水溶液に試料の裏面を接触させることにより、銅箔を溶解した。銅箔の溶解後、試料の裏面を水浴で洗浄し、石英基板によりすくい取った。試料乾燥後、アセトンにより支持フィルムを溶解し、水洗・乾燥後、ラマン散乱分光によりグラフェン薄膜を評価した。グラフェンに特徴的なG−bandと2D−bandが確認できた。
【0044】
実施例2
基板として、表1の圧延銅箔(図6にその表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像を示す。)を用いた以外は実施例1と同様にした。ラマン散乱分光の結果よりグラフェンに特徴的なG−bandと2D−bandが確認できた。
【0045】
実施例3
基板として、表1の圧延銅箔(図3に圧延銅箔の走査型電子顕微鏡写真を、図7にその表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像を示す。)を用いた以外は実施例1と同様にした。ラマン散乱分光の結果よりグラフェンに特徴的なG−bandと2D−bandが確認できた。
【0046】
比較例1
基板として、表1の電解銅箔(図4にその走査型電子顕微鏡写真を、図8にその表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像を示す。)を用いた以外は実施例1と同様にした。銅箔を溶解した際に炭素物質が支持フィルムより剥離した。グラフェンの剥離は、剥離片を肉眼で観察することによって確認した。
【0047】
比較例2
基板として、表1の電解銅箔(図9にその表面の原子間力顕微鏡分析の映像化画像を示す。)を用いた以外は実施例1と同様にした。銅箔を溶解した際に炭素物質が支持フィルムより剥離した。グラフェンの剥離は、剥離片を肉眼で観察することによって確認した。
【0048】
【表1】
【符号の説明】
【0049】
1 基板
2 グラフェンフィルム
3 支持フィルム
4 プラスチックフィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)基板として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さが100〜600nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板の表面に炭素源を供給して、当該基板の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルムを形成させる工程と
を備えるグラフェンフィルムの製造方法。
【請求項2】
(A)基板として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の算術平均山高さが20〜120nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板の表面に炭素源を供給して、当該基板の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルムを形成させる工程と
を備えるグラフェンフィルムの製造方法。
【請求項3】
更に(C)前記グラフェンフィルムの上に支持フィルムを形成または貼付する工程と、
(D)前記基板を除去する工程と
を備える請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属箔の100μm×100μmの正方形表面領域における算術平均面粗さ(Ra)が5〜100nmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属箔が圧延箔であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記金属箔が銅箔であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記金属箔の厚さが15〜40μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記化学気相成長が熱化学気相成長であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記化学気相成長が大気圧下での化学気相成長であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記炭素源がメタノールであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記支持フィルムがPMMAフィルムまたはPVAフィルムであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
プラスチックフィルムと、
当該プラスチックフィルム上に配置された請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたグラフェンフィルムと
を備える導電フィルム。
【請求項1】
(A)基板として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の最大山高さが100〜600nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板の表面に炭素源を供給して、当該基板の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルムを形成させる工程と
を備えるグラフェンフィルムの製造方法。
【請求項2】
(A)基板として、100μm×100μmの正方形表面領域における表面粗さ曲面の算術平均山高さが20〜120nmの範囲内である金属箔を選択する工程と、
(B)前記基板の表面に炭素源を供給して、当該基板の表面に化学気相成長によってグラフェンフィルムを形成させる工程と
を備えるグラフェンフィルムの製造方法。
【請求項3】
更に(C)前記グラフェンフィルムの上に支持フィルムを形成または貼付する工程と、
(D)前記基板を除去する工程と
を備える請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属箔の100μm×100μmの正方形表面領域における算術平均面粗さ(Ra)が5〜100nmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属箔が圧延箔であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記金属箔が銅箔であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記金属箔の厚さが15〜40μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記化学気相成長が熱化学気相成長であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記化学気相成長が大気圧下での化学気相成長であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記炭素源がメタノールであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記支持フィルムがPMMAフィルムまたはPVAフィルムであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
プラスチックフィルムと、
当該プラスチックフィルム上に配置された請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたグラフェンフィルムと
を備える導電フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−43820(P2013−43820A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185090(P2011−185090)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(591158335)積水ナノコートテクノロジー株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(591158335)積水ナノコートテクノロジー株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
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