グラフトポリマーパターン形成方法、導電性パターン形成方法及び有機EL表示装置

【課題】種々の機能性材料を付着させうる高解像度のグラフトパターンの形成が可能であり、基板とグラフトポリマーとの密着性に優れたグラフトポリマーパターン形成方法及びそれを用いた基板との密着性に優れ、基板との界面における凹凸が小さい金属膜を形成しうる導電性パターン形成方法を提供する。
【解決手段】(a)基板上に感光性レジストパターンを形成する工程、(b)該基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始剤を付与する工程、(c)感光性レジストパターンを剥離する工程、及び、(d)基板表面に、全面にわたり二重結合を有する化合物を接触させ、全面にエネルギーを付与して、光重合開始剤を付与した領域にグラフトポリマーを形成させる工程、を含む、グラフトポリマーパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフトポリマーパターン形成方法、該方法を適用した導電性パターン形成方法及びそれにより得られた導電性パターンを配線として有する有機EL表示装置に関し、特に、プリント配線基板、ガラス基板配線、有機EL用配線などに有用な導電性パターン形成方法及び該方法により得られた配線を有する有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の導電性パターン形成方法としては、主に「サブトラクティブ法」、「セミアディティブ法」、「フルアディティブ法」による金属パターン形成方法が知られている。
サブトラクティブ法とは、基板上に形成された金属の層に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層に像様露光し、現像してレジスト像を形成し、ついで、金属をエッチングして導電性パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。この手法で使用される金属基板は、基板と金属層との密着性を持たせるために基板界面を凹凸処理してアンカー効果により密着性を発現させていた。その結果、出来上がる導電性パターンの基板界面部が凹凸になってしまい、電気配線として使用する際、高周波特性が悪くなるという問題点があった。更に、金属基板を形成する際、基板を凹凸処理するため、クロム酸などの強酸で基板を処理するという煩雑な工程が必要であるいという問題点があった。
【0003】
この問題を解決する為に、基板表面にラジカル重合性化合物をグラフトして表面改質を行うことで、基板の凹凸を最小限にとどめ、かつ、基板の処理工程を簡易にする方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。しかし、この手法で作製した金属基板をサブトラクティブ法によりパターン化しても、サブトラクティブ法に特有の問題点がある。それは、サブトラクティブ法により高細線幅の金属パターンを形成するためには、レジストパターンの線幅よりもエッチング後の線幅が細くなる、いわゆるオーバーエッチング法が有効である。しかしながら、オーバーエッチング法により、微細導電性パターンを直接形成しようとすると、線のにじみやかすれ、断線等が発生しやすくなり、良好な微細導電性パターンを形成するという観点からは、30μm以下の導電性パターンの形成は難しい。また、パターン部以外のエリアに存在する導電性膜をエッチング処理によって除去するため無駄が多く、また、そのエッチング処理によって生じる金属廃液の処理に費用がかかるなど、環境、価格面でも問題があった。
【0004】
前記問題を解決するために、セミアディティブ法と呼ばれる導電性パターン形成手法が提案されている。セミアディティブ法とは、基板上にメッキ等により薄くCr等の下地基板層を形成し、該下地金属層上にレジストパターンを形成する。続いて、レジストパターン以外の領域の下地金属層上にメッキによりCu等の金属層を形成した後、レジストパターンを除去する事により配線パターンを形成する。更に、該配線パターンをマスクとして下地金属層をエッチングし、レジストパターン以外の領域に導電性パターンを形成する手法である。この手法は、エッチングレスの手法であるために30μm以下の細線パターンの形成が容易であり、メッキにより必要な部分にのみ金属を析出させるため環境、価格面でも有効である。しかしながら、この手法では、基板と導電性パターンの密着性を持たせるために基板表面を凹凸処理する必要があり、その結果、出来上がる導電性パターンの基板界面部が凹凸になってしまい、電気配線として使用する際、高周波特性が悪くなるという問題点があった。
【0005】
また、フルアディティブ法と呼ばれる導電性パターン形成手法も提案がなされている。フルアディティブ法とは、基板上にレジストパターンを形成し、レジストパターン以外の領域をメッキにより金属を析出させ、その後にレジストパターンを除去する。この手法も、エッチングレスの手法であるために30μm以下の細線パターンの形成が容易であるが、セミアディティブ法と同様の問題点を有しており、細線パターンが形成でき、基板界面の凹凸が少なく、エッチング廃液の少ない、新たな導電性パターン形成手法が望まれていた。
【特許文献1】特開昭58−196238号明細書。
【非特許文献1】Advanced Materials 2000年 20号 1481−1494。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術的問題点を考慮してなされた本発明の目的は、種々の機能性材料を付着させうる高解像度のグラフトパターンの形成が可能であり、且つ、基板界面の凹凸が少ない場合でも基板とグラフトポリマーとの密着性に優れたグラフトポリマーパターンを形成しうるグラフトポリマーパターン形成方法を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、エッチング工程を行うことなく微細な導電性パターンの形成が可能であり、且つ、基板界面の凹凸が少ない場合でも基板と導電性膜との密着性に優れた導電性パターンを形成しうる導電性パターン形成方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、このような基板と導電性膜との密着性に優れた導電性パターンを配線として有する低電圧・高効率・高寿命な有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、グラフトポリマーパターンを形成するに際して、グラフトポリマー形成の起点となる重合開始剤を、レジストを用いてパターン状に基材に付与することで、シャープなグラフトポリマーパターンを形成しうること、さらには、そのグラフトポリマーとして、無電解メッキ触媒またはその前駆体を有するものを用い、そこに無電解メッキを行うことで、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の構成は以下の通りである。
<1> (a)基板上に感光性レジストパターンを形成する工程、(b)該基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始剤を付与する工程、(c)感光性レジストパターンを剥離する工程、及び、(d)基板表面に、全面にわたり二重結合を有する化合物を接触させ、全面にエネルギーを付与して、光重合開始剤を付与した領域にグラフトポリマーを形成させる工程、を含む、グラフトポリマーパターン形成方法。
<2> 前記(a)基板上に感光性レジストパターンを形成する工程の前又は後に、基板表面を活性化する処理を行うことを特徴とする<1>に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<3> 前記光重合開始剤が、分子内に光重合開始基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする<1>又は<2>に記載のグラフトポリマーパターン形成方法及び導電性パターン形成方法。
【0009】
<4> 前記光重合開始剤が、分子内に基板結合基と光重合開始基を有する高分子光重合開始剤であることを特徴とする<1>又は<2>に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<5> 前記(b)該基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始剤を付与する工程が、基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始能を有さないシランカップリング剤と光重合開始剤とを順次反応させてなる光重合開始層を形成する工程であることを特徴とする<1>又は<2>に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<6> 前記シランカップリング剤と反応させる光重合開始剤が、高分子光重合開始剤であることを特徴とする<5>に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<7> 前記基材がSiO,SiON,ITOを有していてもよいエポキシ樹脂、ポリイミド、ガラス、PET、PENである<1>乃至<6>のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<8> 前記グラフトポリマーパターンの厚みが、0.01〜2μmである<1>乃至<6>のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<9> 前記二重結合を有する化合物が、重合性基を有するモノマー、重合性基を有するマクロマー、及び、二重結合を有する高分子化合物からなる群より選択される1種以上の化合物である<1>乃至<6>のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【0010】
<10> (a)基板上に感光性レジストパターンを形成する工程、(b)該基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始剤を付与する工程、(c)感光性レジストパターンを剥離する工程、(d’)基板表面に、全面にわたり二重結合を有する化合物と無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物とを接触させ、全面にエネルギーを付与して、光重合開始剤を付与した領域にグラフトポリマーを形成させる工程、(e)該グラフトポリマーパターンに無電解めっき触媒またはその前駆体を付与する工程、及び、(f)無電解めっきを行い、グラフトポリマーパターン形成領域に導電性パターンを形成する工程を実施することを特徴とする導電性パターン形成方法。
<11> 前記(b)該基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始剤を付与する工程が、基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始能を有さないシランカップリング剤と光重合開始剤とを順次反応させてなる光重合開始層を形成する工程であることを特徴とする<10>に記載の導電性パターン形成方法。
【0011】
<12> 前記<10>又は<11>に記載の導電性パターン形成方法にて作製した導線を備えることを特徴とする有機EL表示装置。
<13> 絶縁基板上に、画素電極配線、及び、<10>又は<11>に記載の導電性パターン形成方法により作製された補助配線を備えることを特徴とする有機EL表示装置。
【0012】
本発明のグラフトポリマーパターン形成方法によれば、基材表面の所望のパターンのみに重合開始剤が付与され、それを起点として高精細のグラフトポリマーパターンを形成することができる。
なお、本発明において「全面」とは、パターンを形成するのに必要な全領域を指し、例えば、「基板の全面」と称する場合、パターン形成を必要としない領域、例えば、基板の縁部分などは必ずしもここで言う「全面」に含まれない場合がある。
また、本発明の導電性パターン形成方法は、グラフトポリマーパターン領域に、選択的に無電解メッキまたはその前駆体を付与し、続いて無電解メッキを行うため、従来のレジストパターンを用いたエッチング処理によるパターン形成方法と比較して、高解像度の導電性パターンを容易に得ることができる。また、エッチング廃液がでないといった利点をも奏する。
【0013】
このような導電性パターン形成方法を用いて作製された導電性パターン部及び非導電性パターン部(配線がないところ)の基板表面は、粗化処理を施していないため、基板表面の凹凸が最小限に留められ、且つ、導電性パターン部分の基板表面とグラフトポリマーとが直接結合しているため、形成された導電性膜と基板との密着性が高いものと考えられる。
さらに、表示素子作製においても本発明の効果は顕著であり、有機EL表示素子を例に挙げて説明する。
【0014】
本発明においては、光重合開始剤をパターン状に形成することが可能であるため、図1に示すように、画素電極ITO上の必要な箇所のみに光重合開始層を形成しうる。このため、有機EL素子の導電性パターン非形成領域における光重合開始剤の存在に起因する物性変化などの影響を最小限に低減することが可能となる。
例えば、有機EL表示装置の補助配線を本発明の導電性パターン形成方法で作製することにより、画素電極ITO上に直接有機EL素子の作製が可能となり、また画素電極配線と補助配線とのコンタクトも直接接続が可能となることによって、低電圧・高効率・高寿命な有機EL素子の作製が可能となり、画素電極配線と補助配線とのコンタクト抵抗も減少させることも可能となり、本発明によれば、高効率・高寿命な有機EL表示装置を低コストで提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、種々の機能性材料を付着させうる高解像度のグラフトパターンの形成が可能であり、且つ、基板界面の凹凸が少ない場合でも基板とグラフトポリマーとの密着性に優れたグラフトポリマーパターンを形成しうるグラフトポリマーパターン形成方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、エッチング工程を行うことなく微細な導電性パターンの形成が可能であり、且つ、基板界面の凹凸が少ない場合でも基板と導電性膜との密着性に優れた導電性パターンを形成しうる導電性パターン形成方法を提供することができる。
この方法により形成された導電性パターンは、基板界面の凹凸が少ない場合にも、基板と導電性膜との密着性に優れるという効果を奏する。
また、本発明によれば、このような基板と導電性膜との密着性に優れた前記本発明の導電性パターン形成方法によって得られた導電性パターンを配線として有することで、低電圧・高効率・高寿命な有機EL表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のグラフトポリマーパターン形成方法は、(a)基板上に感光性レジストパターンを形成する工程(レジストパターン形成工程)、(b)該基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始剤を付与する工程(開始剤付与工程)、(c)感光性レジストパターンを剥離する工程(レジスト剥離工程)、及び、(d)基板表面に、全面にわたり二重結合を有する化合物を接触させ、全面にエネルギーを付与して、光重合開始剤を付与した領域にグラフトポリマーを形成させる工程(グラフトポリマー形成工程)、を含むことを特徴とする。
以下、各工程を順次説明する。
【0017】
<(a)レジストパターン形成工程>
基材表面にレジストパターンを形成するために、感光性レジストが用いられる。本工程に使用しうる感光性レジストとしては、光硬化型のネガレジスト、又は、露光により溶解する光溶解型のポジレジストが挙げられる。
感光性レジストとしては、1.感光性ドライフイルムレジスト(DFR)、2.液状レジスト、3.ED(電着)レジストを使用することができる。これらはそれぞれ特徴がある。即ち、1.感光性ドライフィルムレジスト(DFR)は、乾式で用いることができるので取り扱いが簡便である。2.液状レジストは、レジストとして薄い膜厚とすることができるので解像度の良いパターンを作ることができる。3.ED(電着)レジストは、レジストとして薄い膜厚とすることができるので解像度の良いパターンを作ることができ、且つ、塗布面の凹凸への追従性が良く、密着性に優れている。使用する感光性レジストは、これらの特徴を加味して、目的に応じて適宜選択すればよい。
上記の各感光性レジストを用いる場合、基板上へのレジストの配置は以下のごとく行なう。
【0018】
(1.感光性ドライフィルムを使用する場合)
感光性ドライフィルムは、一般的にポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムにはさまれたサンドイッチ構造をしており、ラミネータで保護膜であるポリエチレンフィルムを剥がしながら基材表面に熱ロールで圧着する。
感光性ドライフィルムレジストは、その処方、製膜方法、積層方法については、特願2005−103677明細書、段落番号〔0192〕乃至〔0372〕に詳細に記載され、これらの記載は本発明にも同様に適用することができる。
【0019】
(2.液状レジストを使用する場合)
液状レジストは、基材表面に塗布し、乾燥することでレジストを形成する。
塗布方法は、公知の方法を適用すればよく、スプレーコート、ロールコート、カーテンコート、ディップコートなどが挙げられる。両面同時に塗布するには、このうちロールコート、ディップコートが両面同時にコート可能であり、好ましい。
液状レジストについては、特願2005−188722明細書、段落番号〔0199〕乃至〔0219〕に詳細に記載され、これらの記載は本発明にも適用することができる。
【0020】
(3.ED(電着)レジストを使用する場合)
EDレジストは感光性レジスト材料を、微細な粒子にして水に懸濁させコロイドとしたものであり、粒子が電荷を帯びているので、導体層に電圧を与えると電気泳動により、導体層上にレジストが析出し、導体上でコロイドは相互に結合し膜状となり、このような方法により塗布することができる。
【0021】
前記各方法で通常は、基材表面の全面にわたり感光性レジスト膜が形成される。なお、ハンドリング性向上などを目的とし、基材の周縁部にレジストが形成されない領域を設ける場合、本発明においては、形成を必要とする領域の全面にわたりレジスト膜が形成されているときは「基材表面の全面にレジスト膜が形成される」と称することがある。
次いで、感光性レジスト膜にパターン露光、さらに、現像を行なうことで、レジストパターンが形成される。
パターン露光は、前記した方法によりレジスト膜を表面に設けてなる基材を、マスクフィルムまたは乾板と密着させて、使用しているレジストの感光領域の光で露光する。マスクフィルムを用いる場合には、真空の焼き枠で密着させてから露光をする。
露光源に関しては、パターン幅が100μm程度あるいはそれ以上である場合には点光源を用いることができる。パターン幅が100μm以下のパターンを形成する場合には、平行光源を用いることが好ましい。
【0022】
露光手段としては、ArFエキシマレーザーステッパー露光など、露光波長が150nm〜450nmの範囲に含まれるものであればいずれの露光手段を適用してもよく、特に好ましい露光手段としては、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーのようなステッパー露光可能な露光手段、低圧水銀灯、高圧水銀灯のようなUV発生装置、蛍光灯ランプ、レーザー、LED等上記波長の範囲に発光波長や輝線のある光源を用いた露光手段などが挙げられる。
【0023】
露光後の現像は、常法により、基材に現像液を適用することで行うことができる。使用される現像液としては、光硬化型のネガレジストならば未露光部(未硬化部)を、露光により溶解性が向上する光溶解型のポジレジストならば露光部(溶解性向上部)を溶かすことができる現像液であればいずれのものを使用してもよいが、一般的には、有機溶剤、アルカリ性水溶液などが使用され、環境負荷低減の観点からは、アルカリ性水溶液を使用することが好ましい。
現像により、基材表面にパターン状のレジスト膜が形成される。
なお、この(a)工程の前又は後に基材表面を活性化する処理を、所望により実施することができる。基材表面活性化処理としては、UVオゾン処理や、ピランハ液(硫酸/30%過酸化水素=1/1vol混合液)に浸漬させる処理が挙げられる。
【0024】
<(b)開始剤付与工程>
表面にレジストパターンが形成された基材表面に光重合開始剤が付与される。ここで用いられる光重合開始剤は公知のものを任意に使用することができるが、基材との密着性の観点から、基材との密着性を向上させる官能基を有するものを用いること、基材との密着性を向上させる化合物と光重合開始剤とを併用させることが好ましい。
【0025】
基材との密着性を向上させる官能基を有するものとしては、分子内に光重合開始基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
分子内に光重合開始基を有するシランカップリング剤としては、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(以下、単に、重合開始部位と称する。)と基板結合部位とを有する化合物が挙げられる。この化合物について、基板結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)のモデルを用いて詳細に説明すれば、一般に、重合開始部位(Y)は、光、特に紫外線により開裂しうる単結合を含む構造である。
この光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリー転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断されることになる。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。
【0026】
また、これらの光により開裂しうる単結合を含む重合開始部位(Y)は、グラフトポリマー生成工程におけるグラフト重合の起点となることから、光により開裂しうる単結合が開裂すると、その開裂反応によりラジカルを発生させる機能を有する。このように、光により開裂しうる単結合を有し、かつ、ラジカルを発生可能な重合開始部位(Y)の構造としては、以下に挙げる基を含む構造が挙げられる。
芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基、などが挙げられる。
このような重合開始部位(Y)は、露光により開裂して、ラジカルが発生すると、そのラジカル周辺に重合可能な化合物が存在する場合には、このラジカルがグラフト重合反応の起点として機能し、所望のグラフトポリマーを生成することができる。
【0027】
また、基板結合部位(Q)としては、エポキシ樹脂基板表面に存在する官能基Zと反応して結合しうる反応性基で構成され、その反応性基としては、具体的には、以下に示すような基が挙げられる。
【0028】
【化1】

【0029】
重合開始部位(Y)と、基板結合部位(Q)と、は直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及びイオウからなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられ、具体的には、例えば、飽和炭素基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基、等が挙げられる。また、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、等が挙げられる。
【0030】
基板結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)の具体例〔例示化合物1〜例示化合物18〕を、開裂部と共に以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではなく、例えば、公知のシランカップリング剤であって、分子内に前記した光により開裂しうる単結合を含むものなども好適に使用しうる。
【0031】
【化2】

【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
本発明における、感光性レジストパターンの非形成領域(以下、適宜、非パターン部と称する)に光重合開始剤を付与する工程は、このような化合物(Q−Y)を非パターン部表面に結合させる工程である。
例示された如き化合物(Q−Y)を非パターン部表面に存在する官能基に結合させる方法としては、化合物(Q−Y)を、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液を基板表面に塗布する方法、又は、溶液又は分散液中に基板を浸漬する方法などを適用すればよい。このとき、溶液中又は分散液の化合物(Q−Y)の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、0℃〜100℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
【0036】
次に、基材との密着性を向上させる化合物と光重合開始剤とを反応させて光重合開始剤を用いて光重合開始剤を付与する方法について述べる。
この方法は、光重合開始能を有さないシランカップリング剤、即ち、基材との密着性を向上させる化合物をまず基材と反応させ、その後、光重合開始剤を反応させて光重合開始剤を基材表面に付与する方法である。
光重合開始能を有さないシランカップリング剤としては、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を用いることができる。
これらのシランカップリング剤と反応させる光重合開始剤は、高分子光重合開始剤であることが好ましい。高分子光重合開始剤としては、例えば、下記化合物(a)〜(l)を挙げることができる。なお、ここで用いられる高分子光重合開始剤としては、引き続き実施されるグラフトポリマー形成工程におけるグラフト重合性の観点から、その分子量が10000以上の化合物が好ましく、分子量が30000〜100000の範囲である化合物がより好ましい。
なお、下記高分子光重合開始剤を示す一般式(a)〜(l)中、x、yは、モル分率を表し、x+y=100(x≠0、y≠0)である。
【0037】
基板結合基と光重合開始基を有する高分子光重合開始剤としては、下記化合物(a)〜(l)を挙げることができる。下記化合物(a)〜(l)は、エポキシ基が基材結合部位の機能を有しているので、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)やアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)などのシラン化合物を用いなくても基板と結合させることができる。
【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
このような高分子光重合開始剤とアミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)に代表される光重合開始基を有しないシランカップリング剤とを併用する場合、基材表面にまずシランカップリング剤を付与し、その後、高分子光重合開始剤を付与することが好ましい。基材表面への適用量としては、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、シランカップリング剤が単分子層を形成できる範囲であることが好ましく、光重合開始剤は、0.01〜5g/mの範囲であることが好ましい。
このような、第2の態様では、シランカップリング剤と高分子光重合開始剤とを逐次、パターン非形成領域に付与することで、光重合開始剤を非パターン部表面に結合させることができる。
これらをパターン非形成領域表面に存在する官能基に結合させる方法としては、シランカップリング剤及び光重合開始剤、好ましくは、高分子光重合開始剤を、それぞれ、トルエン、ヘキサン、アセトン、MEKなどの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液を基板表面に塗布する方法を適用すればよい。
基材とシランカップリング剤の反応条件は、前記分子内に光重合開始基を有するシランカップリング剤を付与する場合と同様の条件を適用することができる。シランカップリング剤と光重合開始剤の反応条件は、以下の通りである。溶液中又は分散液中の光重合開始剤の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜20質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、20℃〜200℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
この光重合開始剤の導入条件は、第3の態様すなわち、シランカップリング剤を用いず、基板結合基と光重合開始基を有する高分子光重合開始剤を直接基材と反応させる場合にも同様に適用することができる。
【0042】
<(c)レジスト剥離工程>
レジスト剥離は、剥離液をスプレーして行うことができる。剥離液はレジストの種類により異なるが、一般的にはレジストを膨潤させる溶剤、または、溶液をスプレーにより拭きつけ、レジストを膨潤させて剥離する。
ここで用いるレジスト剥離用の溶剤としては、アルカリ水溶液、アルカノールアミン類などが挙げられ、溶液としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。なかでも好ましくは、アルカリ水溶液である。
この工程により、レジスト膜を剥離することで、レジスト膜が形成されていた部分は基材表面が露出し、レジスト膜の非形成部分のみに光重合開始剤がパターン状に付与された基材が得られる。
【0043】
<(d)グラフトポリマーパターン形成工程>
(d)工程における該グラフトポリマーパターンの形成工程では、基板表面全面にわたり、二重結合を有する化合物(重合性化合物)を接触させ、紫外線等のエネルギーを付与する。エネルギー付与されると、光重合開始剤がパターン状に付与された領域のみに、表面と直接結合したグラフトポリマーパターンが形成される。
なお、ここで二重結合を有する化合物(重合性化合物)とともに無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を付与するか、或いは、分子内に重合性不飽和二重結合と無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基の双方を有する化合物を付与することで、得られたグラフトポリマーパターンは、無電解めっき触媒またはその前駆体が相互作用により吸着することで、後述する導電性パターンの形成に有用となる〔(d’)工程〕。
以下にグラフトポリマーパターンの形成方法について、詳細に説明する。
〔表面グラフト形成方法〕
本発明の導電性パターン形成方法では、光重合開始剤のパターンを有する基板表面全面に、二重結合を有する化合物を塗布し、紫外線照射によりエネルギーを付与して、光重合開始剤のパターン表面と直接結合するグラフトポリマーを生成させる。
【0044】
〔重合性化合物〕
基板表面に塗布される重合性化合物としては、重合性基を有するモノマー、マクロマー、あるいは二重結合を有する高分子化合物のいずれも用いることができる。これらの化合物は公知のものを任意に使用することができる。これらのうち、本発明において特に有用な化合物は重合性基を有し、かつ極性官能基を有する化合物である。
この極性官能基により、形成されたグラフトポリマーに、親水性或いは無電解めっき触媒(前駆体)との相互作用性などの特性を付与することができる。極性官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミド基、などの親水性基を挙げることができる。
【0045】
(重合性モノマー)
基板表面に接触させる二重結合を有するモノマーとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、スチレン、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n−ブチル(メタ)アクリル酸エステルなど炭素数1〜24までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0046】
本発明においては、基板表面に接触させる重合性化合物として、モノマーのみならず、マクロマー、ポリマーも好ましく使用することができる。本発明に用いうる二重結合を有するマクロマーは、前記モノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。本態様に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。これらのマクロモノマーのうち有用な重量平均分子量は250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
【0047】
本発明において基板表面に接触されうる二重結合を有する高分子化合物とは、重合性基として、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーを指し、このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、側鎖に重合性基を有するものがより好ましい。
二重結合を有する高分子化合物は重合性基のほかにも、前記したようにカルボキシル基などの、極性基、或いは、表面に導入しようとする機能性材料と相互作用性可能な官能基を有することが好ましい。
重合性基を有する高分子化合物の有用な重量平均分子量は500〜50万の範囲で、特に好ましい範囲は1000〜5万の範囲である。
【0048】
基板表面に塗布される重合性化合物として、末端のみならず、側鎖に複数の重合性基を有するマクロマー、ポリマーを用いることで、グラフト生成密度が向上し、均一で高密度のグラフトが生成される。このため、このような表面グラフト材料に無電解めっき触媒或いはその前駆体を付着する際にも、付着密度が向上し、優れためっき受容性領域を得ることができる。マクロマーやポリマーを二重結合化合物として用いる場合には、重合性基が高密度に存在することから、重合開始剤を共存させたり、高エネルギーの電子線を用いる公知の方法を用いてグラフト生成すると、先に述べたホモポリマーの生成が著しく、また、形成されたホモポリマーの除去性もより低下することから、このような二重結合化合物を用いた場合に、本発明の効果が著しいことがわかる。
【0049】
また、製造方法の観点からは、ポリマーを用いて塗布法により二重結合化合物を基板表面に接触させる場合には、均一な厚みの高分子塗布膜が容易に形成され、モノマー塗布の場合に必要とする塗布液保護用カバーが不要となり、二重結合化合物を任意の厚みで均一に接触させることが可能となるため、形成されるグラフトポリマーの均一性が向上し、製造適性に優れるという利点をも有するものである。このような理由から、大面積、或いは大量の製造においては、二重結合を有するポリマー(高分子化合物)を用いることが製造適性上特に有用である。
【0050】
このような重合性基と相互作用性基とを有する高分子化合物の合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0051】
なお、本発明においてii)のグラフトポリマー合成方法に用いうる相互作用性基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが使用できる。
【0052】
【化9】

【0053】
上記相互作用性基を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、二重結合前駆体を有するモノマーとしては2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
【0054】
【化10】

【0055】
更に、相互作用性基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、不飽和基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により二重結合を導入する方法については、例えば、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
【0056】
〔表面グラフト重合〕
基板表面に生成されるグラフトポリマー(表面グラフトポリマー)は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて作製される。
グラフト重合とは高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法であり、特に活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。
本発明では、上記で説明した、光重合開始剤のパターンを有する基板表面全面に二重結合を有する化合物を接触させ、エネルギーを付与することで、光重合開始剤パターンから活性点を発生させ、この活性点と該化合物の重合性基とが反応し、表面グラフト重合反応が引き起こされる。
【0057】
光重合開始剤のパターンを有する基板表面全面に、二重結合を有する化合物を接触させる方法としては、基板ごと二重結合を有する化合物を含有する液状の組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率、さらには、形成された回路への影響を考慮すれば、該二重結合を有する化合物をエポキシ基板表面にそのまま塗布するか、或いは、それを主成分として含有する組成物を塗布して、表面に二重結合を有する化合物を含有する層を形成することにより行うことが好ましい。
【0058】
この接触に際しては、ホモポリマーの所望されない生成を抑制する観点から、重合開始能を有する化合物の非存在下で行われることが好ましい。即ち、接触が上記二重結合を有する化合物単体で行われる場合には、当然他の化合物が共存しないことになるが、上記二重結合を有する化合物を溶剤に溶解するか、分散媒中に分散させて接触させる場合、その二重結合を有する化合物を含有する組成物中には、重合開始剤などの重合反応に関与しうる他の化合物を含まないことを要する。
従って、浸漬法及び塗布法のいずれであっても、用いられる二重結合化合物含有組成物は、好ましくは、主成分として二重結合を有する化合物及び溶媒又は分散媒のみからなる組成物であり、他の化合物を含む場合であっても、所望により塗布性や面状性などの液体組成物の物性の向上を目的とした界面活性剤などに限ることが好ましい。塗布法を用いる場合でも、塗布後、乾燥により溶剤を除去した後露光を行うことが好ましい。
【0059】
上記二重結合を有する化合物を含有する組成物に使用する溶剤は、主成分である重合性基や相互作用性基を有する化合物、親水性モノマーなどを溶解或いは分散することが可能であれば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
【0060】
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0061】
基板表面に組成物を液状のまま接触させてグラフトポリマー生成を行う場合には、任意に行うことができるが、塗布法により基材表面に組成物を適用する場合の塗布量としては、充分な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/mが好ましく、特に0.5〜5g/mが好ましい。
【0062】
〔エネルギー付与〕
光重合開始剤パターン表面に活性点を発生させ、グラフトを生成させるためのエネルギー付与方法としては、紫外線の照射や、γ線、電子線などの放射線照射等を用いることができる。例えば、UVランプ、ブラックライトなどによる光照射が可能である。
光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。また、g線、i線、Deep−UV光も使用される。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0063】
露光後に溶媒による洗浄、例えば水による洗浄が行われ未反応の二重結合化合物が除去されてグラフトポリマーパターンが形成される。本発明の方法では所望されないホモポリマーの形成がなく、不純物は簡易な洗浄により容易に除去され、露光条件に応じた高精細なグラフトポリマーパターンが形成される。
形成されるグラフト膜は、膜厚が0.01〜2.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.3〜1.0g/mがさらに好ましく、最も好ましくは、0.5〜1.0g/mの範囲である。
このようにして、任意の基材表面に所望のパターンで、基材表面に強固に結合し、且つ、運動性に優れたグラフトポリマーを形成することができる。このようなグラフトポリマーはそれが有する極性官能基などに起因して、種々の機能性材料を付着させることができ、機能性のパターンを有する材料の製造に有用である。
また、このようなグラフトポリマーパターン形成領域は、極性基、或いは無電解めっき触媒(前駆体)との相互作用性基を有することで、後述する無電解めっきを行う場合に優れためっき受容性を有する領域となる。
【0064】
前記、本発明のグラフトポリマーパターン形成方法の(d)工程において、二重結合を有する化合物(重合性化合物)とともに無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を付与するか、或いは、分子内に重合性不飽和二重結合と無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基の双方を有する化合物を付与して得られたグラフトポリマーパターンを形成する(d’)工程を行って、無電解めっき触媒またはその前駆体が相互作用する官能基をもつグラフトポリマーを形成し、引き続き、このグラフトポリマー形成領域に導電性材料を付与することで導電性パターンを形成することができる。
以下に、前記(a)乃至(c)工程の後、(d)工程に代えて(d’)工程を行うことができるが、この導電性パターン形成において、(a)乃至(d’)工程に引き続いて行われる、本発明の導電性パターン形成方法に必須の工程である(e)グラフトポリマーパターンに無電解めっき触媒またはその前駆体を付与する工程、及び、(f)無電解めっき工程について説明する。
【0065】
<導電性パターン形成工程>
<(e)無電解めっき触媒付与工程、(f)無電解めっき工程>
本発明の導電性パターン形成方法における、(e)工程では、グラフトポリマーに無電解めっき触媒またはその前駆体を付与し、(f)工程では、無電解めっきを行い、導電性パターンを形成する。
基板表面にグラフトポリマーが形成されると、グラフトポリマー形成領域がめっき受容性領域となる。このため、本工程では、グラフトポリマー形成領域に選択的に無電解めっきを施すことで、導電性パターンを形成する。
本工程で実施されるめっき処理は、銅めっき、ニッケルめっき等、金属の種類は特に限定されることなく、通常公知の無電解めっきを適用することができる。
無電解めっき処理を施す方法としては、具体的には、グラフトポリマー鎖の存在領域(グラフトパターン)に無電解めっき触媒またはその前駆体を付与し、その後、無電解めっきを行い、パターン状に金属膜を形成する方法が挙げられる。
【0066】
<無電解めっき触媒>
本工程において用いられる無電解めっき触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を前記グラフトパターン上(相互作用性領域)に固定する手法としては、例えば、グラフトパターン上のこれら無電解めっき触媒(前駆体)と相互作用する官能基(相互作用性基)と、相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、相互作用性領域に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの電荷は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように電荷を調節した金属コロイドを、グラフトパターンが有する相互作用性基と相互作用させることで、グラフトパターン上に選択的に金属コロイド(無電解めっき触媒)を吸着させることができる。
【0067】
<無電解めっき触媒前駆体>
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解めっき触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒である金属イオンは、基材へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0068】
実際、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でグラフトパターンに付与して相互作用させる。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して、金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
【0069】
無電解めっき触媒である金属コロイド、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩をグラフトパターン上に付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をグラフトパターンが存在する基板表面に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトパターンを有する基板を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、前記グラフトパターン形成領域の相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、または、双極性−イオン相互作用を利用して金属イオンを吸着させること、或いは、相互作用性領域に金属イオンを含浸させることができる。これら吸着或いは含浸を十分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0070】
次に、グラフトポリマー形成領域に無電解めっき触媒(前駆体)が吸着された基板に無電解めっきを行うことで、前工程により得られたグラフトパターン上に該パターンにしたがった高密度の金属膜が形成され、導電性パターンが得られる。その結果、形成された金属パターンは、優れた導電性と密着性が得られる。
【0071】
<無電解めっき>
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、前記無電解めっき触媒がパターン状に付与された基板を水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0072】
また、無電解めっき触媒がパターン状に付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体がグラフトパターンに吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な無電解めっき触媒前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬する。この場合には、無電解めっき浴中において前駆体の還元と、それに引き続いて無電解めっきが行われる。この態様に用いられる無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0073】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
【0074】
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCu(SO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0075】
このようにして形成される金属膜の膜厚は、めっき浴の金属塩または金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、以下において「部」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」を表す。
(実施例1)
<レジストパターン形成工程>
下記エポキシ樹脂組成物を、厚さ128μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン500H)上に、乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布し、170℃で、30分乾燥させ、エポキシ樹脂基板Aを得た。
このエポキシ樹脂基板Aの平均粗さ(Rz)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、0.2μmであった。
【0077】
(エポキシ樹脂組成物)
(A)エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、エピコート806、
エポキシ当量167) 16.7質量部
(B)アミノトリアジンノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製
フェノライトLA7052、不揮発分62質量%、
不揮発分のフェノール性水酸基当量120) 6.6質量部
(C)フェノキシ樹脂(不揮発分40質量%、東都化成(株)、FX293)
30.5質量部
(D)2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬工業製) 0.18質量部
(E)シクロヘキサノン(和光純薬工業製) 23質量部
【0078】
エポキシ樹脂基板Aに、ドライフイルムレジスト(VANX HL−020:富士写真フイルム製)をラミネートし(120℃、線速1分/m、0.5Pa)、得られた膜に、ミカサ社製UV露光機で、線幅と空間の巾がL/S=5μm/25μmのパターン(パターンA)、L/S=10μm/20μmのパターン(パターンB)、L/S=10mm/10mmのパターン(パターンC)を露光した。露光後、1%NaCO浴で現像し、レジストパターンを形成した。
【0079】
<光重合開始剤パターン形成工程>
次いで、先に、基板結合部位と重合開始部位とを有する化合物として挙げた前記例示化合物6の脱水トルエン1質量%溶液を、300rpmで5秒、その後750rpmで20秒の条件でスピンコートした。塗布後、100℃で2分間乾燥した。次いで、レジストを
により剥離し、光重合開始剤のパターンを有する基板を得た。
【0080】
<グラフトポリマーパターン形成工程>
〔二重結合を有する高分子化合物の塗布〕
前記のようにして得られた基板表面に二重結合性化合物としてアクリル基とカルボキシル基とを有する、側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1、下記合成例により得る)を含む水溶液を、300rpmで5秒、その後750rpmで20秒の条件でスピンコートした。塗布後、80℃で5分間乾燥した。
【0081】
重合性基を有する化合物(グラフト前駆体ポリマーの塗布)
<塗布液組成物1>
・側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1) 3.1g
・水 24.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.3g
【0082】
(側鎖に重合性基を有する親水性ポリマー(P−1)の合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25、000)18gを、ジメチルアセトアミド(DMAC)300gに溶解し、そこに、ハイドロキノン0.41gと、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gと、ジブチルチンジラウレート0.25gと、を添加し、65℃、4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。その後、1mol/l(1N)の水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルを加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄して、側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー18.4g(P−1)を得た。
【0083】
〔露光によるグラフトポリマーの生成〕
このようにして得られた基板表面に以下の条件で全面にエネルギーを付与し、光照射後、支持体をイオン交換水でよく洗浄した。その後,5wt%重曹水に5分間浸漬した後,水洗し、エポキシ樹脂基板にグラフトポリマーがパターン状に形成された材料を得た。
エネルギー付与は、アルゴン雰囲気下で、1500W高圧水銀灯(UVX−02516S1LP01,ウシオ電気(株)製,254nmにおける光強度38mW/cm)を使用し、1分間全面に照射することにより実施した。
【0084】
<導電性パターン形成方法>
(無電解めっき)
得られた基板を、硝酸銀(和光純薬製)1質量%の水溶液に1分浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記組成の無電解めっき浴にて、40℃で50分間無電解めっきを行った。
【0085】
<無電解めっき浴の組成>
・蒸留水 86mL
・ATSアドカッパーIW−A 5ml
・ATSアドカッパーIW−M 8ml
・ATSアドカッパーIW−C 1ml
・NaOH 0.22g
・2,2’−ビピリジル 0.2mg
無電解めっき浴のpH:12.67
【0086】
(実施例2)
<レジストパターン形成工程>
ガラス基板上に、ドライフイルムレジスト(VANX HL−020:富士写真フイルム製)をラミネートし(120℃、線速1分/m、0.5Pa)、得られた膜に、ミカサ社製UV露光機で、線幅と空間の巾がL/S=5μm/25μmのパターン(パターンA)、L/S=10μm/20μmのパターン(パターンB)、L/S=10mm/10mmのパターン(パターンC)を露光した。露光後、1%NaCO浴で現像し、レジストパターンを形成した。
<光重合開始剤パターン形成工程>
次いで、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)の脱水トルエン1質量%溶液を、300rpmで5秒、その後750rpmで20秒の条件でスピンコートした。塗布後、100℃で30分間乾燥した。次いで、高分子光重合開始剤(a)のMEK20質量%溶液を、1500rpmで30秒の条件でスピンコートした。次いで、170℃で60分間乾燥した。次いで、レジストを剥離し、高分子光重合開始剤(a)のパターンを有する基板を得た。
このような基板を用いた他は、グラフトポリマーパターン形成工程及び導電性パターン形成工程を、実施例1と同様にして実施し、導電性パターンを得た。
【0087】
(実施例3)
実施例2において用いたガラス基板の上に、膜厚約200nmのSiOをCVD法で付けた基板を用いた以外は実施例2と同様にして導電性パターンを得た。
(実施例4)
実施例2のレジストパターン形成工程の前に、ガラス基板をUVオゾンクリーナーで10分間処理(基材活性化処理)した以外は実施例2と同様にして導電性パターンを得た。
(実施例5)
実施例2の光重合開始剤パターン形成工程の前に、ガラス基板をUVオゾンクリーナーで10分間処理(基材活性化処理)した以外は実施例2と同様にして導電性パターンを得た。
【0088】
(実施例6)
実施例2のガラス基板の代わりに、膜厚約200nmのSiONを有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)を用いた以外は実施例2と同様にして導電性パターンを得た。
(実施例7)
実施例4のガラス基板の代わりに、膜厚約200nmのSiONを有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)を用いた以外は、実施例4と同様にして導電性パターンを得た。
(実施例8)
実施例5のガラス基板の代わりに、膜厚約200nmのSiONを有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)を用いた以外は実施例5と同様にして導電性パターンを得た。
実施例2から実施例8に使用した基板の平均粗さ(Rz)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、いずれも0.1μm以下であった。
【0089】
このようにして得られた実施例1〜実施例8の導電性パターンについて膜厚、剥離強度及び表面抵抗値を測定した。
剥離強度は碁盤目テープ剥離試験を行った。その結果、いずれの導電性パターンも全く剥離することはなかった。
膜厚は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
表面抵抗値は、JISK7194に準拠し、表面抵抗計(ロレスタ−EP、型番MCP−T360、三菱化学社(株)社製)を用いて四探針法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜実施例8の本発明の製造方法を用いて得た導電性パターン形成方法は、エッチングを含まないプロセスであり、表面平滑性の高い基板上に、剥離強度および導電性に優れた導電性パターンを形成することができることが確認された。なお、膜厚、表面抵抗値ともに、導電性パターンのL/Sサイズに関わらず同一の値を示した。
【0092】
(実施例9)
<画素電極配線付き基板作製工程>
膜厚約200nmのSiONを有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)上に公知の技術を用いてITO(150nm)からなる画素電極配線の形成・パターニングを行った。具体的には、(1)スパッタITO成膜→(2)レジスト塗布→(3)マスク露光→(4)現像→(5)ウエットエッチング→(6)レジスト剥離、以上の6工程を行うことにより、所定の位置にITOからなる画素電極配線を形成した画素電極配線付き基板を作製した。
【0093】
<補助配線作製工程>
画素電極配線付き基板上に実施例8に記載の導電性パターン形成方法にて補助配線を形成した。即ち、絶縁基板12上に画素配線電極14を有し、該画素配線電極14表面の所定領域に光重合開始層16を形成し、その表面に無電解メッキ触媒等との相互作用性官能基を有するグラフトポリマー層18を形成し、そこに無電解メッキ及び電解メッキを行って形成した補助配線20をもつ、図1に示す如き断面を有する配線を形成した。図1において、形成された補助配線20の側端部と画素配線電極14とが接する領域が両者のコンタクト部26となる
【0094】
<有機EL素子作製工程>
補助配線20を形成した画素電極配線14付き基板12上の画素領域部に2TNATA(膜厚140nm)からなる正孔注入層、NPD(膜厚10nm)からなる正孔輸送層、t(na)py1wt%ドープしたAlq(膜厚30nm)からなる発光層、Alq(膜厚20nm)からなる電子輸送層を順次シャドウマスクを用いて真空蒸着により形成した。有機膜22上にLiF(膜厚0.5nm)からなる電子注入層、Al(膜厚200nm)からなる陰極24をシャドウマスクにて真空蒸着により形成した。図1において、画素配線電極14表面に有機層22及び陰極24が積層されてなる領域が有機EL素子における画素領域28となる。
【0095】
<封止工程>
最後に有機膜成膜エリア全体を覆うように封止用フイルムをラミネートすることにより、有機EL素子の封止を行った。
以上により、絶縁基板12表面の所定領域に画素電極配線14と、有機層22とを有し、該画素電極配線14の所定領域上に補助配線20を、有機層22上の所定領域に陰極24を有する、図2の概略構成図に示すような有機EL表示装置10を作製した。この有機EL表示装置は、良好な緑発光の表示特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の導電性パターンを用いて作製した有機EL表示装置の補助回路の一態様を示す断面図である。
【図2】本発明の有機EL表示装置の一態様を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0097】
10 有機EL表示装置
12 絶縁基板
14 画素電極配線
20 補助配線
22 有機層
24 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板上に感光性レジストパターンを形成する工程、(b)該基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始剤を付与する工程、(c)感光性レジストパターンを剥離する工程、及び、(d)基板表面に、全面にわたり二重結合を有する化合物を接触させ、全面にエネルギーを付与して、光重合開始剤を付与した領域にグラフトポリマーを形成させる工程、を含む、グラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項2】
前記(a)基板上に感光性レジストパターンを形成する工程の前又は後に、基板表面を活性化する処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項3】
前記光重合開始剤が、分子内に光重合開始基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項4】
前記光重合開始剤が、分子内に基板結合基と光重合開始基を有する高分子光重合開始剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項5】
前記(b)該基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始剤を付与する工程が、基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始能を有さないシランカップリング剤と光重合開始剤とを順次反応させてなる光重合開始層を形成する工程であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項6】
前記シランカップリング剤と反応させる光重合開始剤が、高分子光重合開始剤であることを特徴とする請求項5に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項7】
(a)基板上に感光性レジストパターンを形成する工程、(b)該基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始剤を付与する工程、(c)感光性レジストパターンを剥離する工程、(d’)基板表面に、全面にわたり二重結合を有する化合物と無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物とを接触させ、全面にエネルギーを付与して、光重合開始剤を付与した領域にグラフトポリマーを形成させる工程、(e)該グラフトポリマーパターンに無電解めっき触媒またはその前駆体を付与する工程、及び、(f)無電解めっきを行い、グラフトポリマーパターン形成領域に導電性パターンを形成する工程を実施することを特徴とする導電性パターン形成方法。
【請求項8】
前記(b)該基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始剤を付与する工程が、基板上の感光性レジストパターンの非形成領域に光重合開始能を有さないシランカップリング剤と光重合開始剤とを順次反応させてなる光重合開始層を形成する工程であることを特徴とする請求項7に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項9】
前記請求項7又は請求項8に記載の導電性パターン形成方法にて作製した導線を備えることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項10】
絶縁基板上に、画素電極配線、及び、請求項7又は請求項8に記載の導電性パターン形成方法により作製された補助配線を備えることを特徴とする有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−83200(P2008−83200A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260971(P2006−260971)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】