説明

グラフト化ポリエチレンと耐衝撃性または結晶性ポリスチレンとをベースにした凝集破断性バインダー

【課題】グラフト化ポリエチレンと耐衝撃性または結晶性ポリスチレンとをベースにした凝集破断を示すバインダー。
【解決方法】グラフト化されたポリエチレン(PE)とグラフト化またはグラフト化されていない耐衝撃性または結晶性ポリスチレン(PS)とを含み、必要に応じてグラフト化されていないPEをさらに含む混合物からなるバインダー。上記グラフト化されたPEは2種のPEの共グラフト化で得るのが好ましい。このバインダーは公共建築(CEW)、特にアルミパネル、多層管で使用され、包装材料分野でも使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバインダー(結合剤)に関するものである。
本発明は特に、グラフト化されたポリエチレン(PE)とグラフト化されたまたはされていない耐衝撃性または結晶性ポリスチレン(PS)とを含み、必要に応じてさらにグラフト化されていないPEを含む混合物からなるバインダーに関するものである。上記のグラフト化されたPEは共グラフト化された2種のPEから成るのが好ましい。
本発明のバインダーは主として公共建築物(CEW)の多層構造物、特にアルミパネル、多層管の製造で使用されるが、包装材料分野でも使用できる。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には下記(a)〜(d)を主成分とする組成物が記載されている:
(a)ポリエチレン=20〜60重量部、
(b)無水マレイン酸をグラフトしたポリエチレン=10〜30重量部、
(c)耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)=10〜25重量部、
(d)エチレンプロピレンジエン(EPDM) 10〜25重量部。
【特許文献1】米国特許第6,855,432号明細書
【0003】
このバインダーは多層構造物の金属基板層をポリマー層に結合させるのに用いられる。下記特許文献2には下記の(a)〜(c)から成る共押出しバインダーが記載されている。
(a)メタロセン触媒で得られるPE(A1)80〜20重量%と、メタロセンではないLLDPEポリエチレン(A2)20〜80重量%との混合物(A1)+(A2)にグラフトモノマーが共グラフトされたPE混合物から成るポリマー(A)=10〜35重量%、
(b)SBSブロックコポリマー=40〜60重量%、
(c)メタロセン触媒を用いて作られたLLDPEまたはPE=20〜35重量%。
【特許文献2】欧州特許第1,400,566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的問題は、多層構造物の水中での老化(エージング)に対して経時安定性を有しかつ高い剥離強度を有する凝集破断を示すバインダーを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のバインダーは下記の(1)〜(3)から成る(ただし、エラストマーを除く)(比率はバインダーの全重量に対する比率):
(1)PE(A)または少なくとも2種のポリエチレンとの混合物PE(A1)とPE(A2):10〜79%、好ましくは15〜70%、さらに好ましくは10〜60重量%(ここで、PE(A1)は上記混合物PE(A1)+PE(A2)の重量に対して95〜5重量%の、PE(A2)はPE(A1)+PE(A2)の重量に対して5〜95重量%、PE(A1)はPE(A2)とは異なり、PE(A)がグラフト化されているか、混合物PE(A1)+PE(A2)がグラフト化または共グラフト化されている)
(2)グラフト化またはグラフト化されていない耐衝撃性PS(B)またはグラフト化またはグラフト化されていない結晶性PS(B):バインダーの全重量に対して21〜50%、好ましくは21〜30%、さらに好ましくは25〜30%、
(3)グラフト化されていないPE(C):0〜70%、好ましくは0〜60%。
(ただし、PE(A)または上記混合物PE(A1)+PE(A2)および任意成分のPS(B)をさらに含む混合物はそれぞれ別個にグラフト化されるか、同一グラフト化段階で一緒に共グラフト化され、PE(A)はPE(C)とは異なる)。
【0006】
すなわち、本発明の対象は、エラストマーを除く下記を含むバインダーにある(比率はバインダーの全重量に対する%):
(1)密度が0.870〜0.910g/cm3のVLDPEであるPE(A)または少なくとも2種のポリエチレンPE(A1)とPE(A2)との混合物:10〜79%(ここで、PE(A2)は密度が0.870〜0.910g/cm3のVLDPEであり、PE(A1)とは異なり、PE(A)がグラフト化されているか、上記混合物PE(A1)+PE(A2)がグラフト化または共グラフト化されており、PE(A)、PE(A1)またはPE(A2)はPEのホモポリマーおよび少なくとも51%のエチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル-1-ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、1−トリアコンテンおよびこれらの混合物の中から選択されるα−オレフィンコモノマーとのコポリマーの中から選択される)
(2)グラフト化またはグラフト化されていない耐衝撃性PS(B)またはグラフト化またはグラフト化されていない結晶性PS(B):21〜50%、
(3)チーグラ−ナッタ触媒を用いて得られるグラフト化されていないPE(C):0〜70%。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一つの実施例のバインダーは下記(1)〜(3)を含む:
(1)PE(A)または少なくとも2種のポリエチレンとの混合物PE(A1)+PE(A2):15〜70%、
(2)グラフト化またはグラフト化されていない結晶性または耐衝撃性PS(B):21〜30%、
(3)チーグラ−ナッタ触媒を用いて得られるグラフト化されていないPE(C):0〜60%。
【0008】
本発明の一つの実施例のバインダーではPE(A1)がLLDPE、LDPEおよびPEmの中から選択される。
本発明の一つの実施例のバインダーではPE(C)が密度が0.910〜0.935g/cm3のLLDPEである。
本発明の一つの実施例のバインダーではグラフトモノマーとして無水マレイン酸がグラフト化されるポリマーにグラフトされる。
本発明の一つの実施例のバインダーではグラフトモノマーの量がグラフト化ポリマーの0.01〜10重量%である。
【0009】
本発明の別の対象は、アルミ層/バインダー層/PE層を含む多層構造物での本発明バインダーの使用にある。
本発明の一つの実施例では上記使用はPE層がLDPE層である。
本発明の一つの実施例では上記使用はPE層が難燃剤を含む。
【0010】
PE(A)は超低密度ポリエチレン(VLDPE)であるか、少なくとも一種のVLDPEを含む混合物のいずれかであり、この場合、PE(A)は少なくとも2種のPEの混合物PE(A1)とPE(A2)で、この混合物中のPE(A2)はVLDPEであり、PE(A1)はVLDPE以外のPEである。VLDPEの密度は0.870〜0.910g/cm3である。
【0011】
ポリエチレン(A)または少なくとも2種のポリエチレンの混合物PE(A1)+PE(A2)において、「ポリエチレン」とはエチレンのホモポリマーか、エチレンを少なくとも51%、好ましくは75%(モルベース)含むコポリマーを意味する。コモノマーとしてはαオレフィン、好ましくは3〜30個の炭素原子を有するαオレフィンを挙げることができ、例としてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル-1-ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセンおよび1−トリアコンテンが挙げられる。これらのαオレフィンは単独または2種類以上の混合物で使用できる。
【0012】
上記のポリエチレン(A)または少なくとも2種のPEの混合物PE(A1)+PE(A2)から下記化合物は除外される:
(1)不飽和カルボン酸エステル、例えばアルキル基が24個以下の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート(アルキルアクリレートまたはメタクリレートの例としてはメチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる)
(2)飽和カルボン酸ビニルエステル、例えば酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニル等、
(3)ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン。
【0013】
ポリエチレン(A)または少なくとも2種のPEの混合物PE(A1)+PE(A2)のMFI(190℃、2.16kgでの粘度指数)は0.1〜1000g/10分であるのが有利である。
ポリエチレンPE(A1)の例としては下記を挙げることができる:
(1)低密度ポリエチレン(LDPE)
(2)直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)
(3)メタロセン触媒を用いて得られるポリエチレン(PEm)、すなわち、ジルコニウムまたはチタンとこの金属に結合した2つの環状アルキル分子とで構成されるモノサイト触媒の存在下でエチレンとαオレフィン(例えばプロピレン、ブテン、ヘキセンまたはオクテン)とを共重合して得られるポリマー。メタロセン触媒は一般に金属に結合した2つのシクロペンタジエン環で構成される。この触媒は共触媒または活性剤としてのアルミノオキサン、好ましくはメチルアルミノオキサン(MAO)と一緒に用いられることが多い。シクロペンタジエンが結合する金属としてハフニウムを用いることもできる。他のメタロセンはIVA、VAおよびVIA族の遷移金属を含むことができる。ランタニド系列の金属を用いることもできる。
【0014】
(A)はPE(A1)とPE(A2)との混合物が好ましく、PE(A2)とは異なる。この混合物は密度が0.910〜0.935g/cm3のPE(A1)と、密度が0.870〜0.910g/cm3のPE(A2)とから成る。PE(A1)はLLDPEで、PE(A2)はVLDPEであるのが有利である。
【0015】
グラフト化されていないPE(C)はチーグラ−ナッタ触媒を用いて得られるポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマーで、メタロセン触媒を用いて得られるPEは除く。
上記コモノマーとしては下記(1)〜(4)を挙げることができる:
(1)α−オレフィン、好ましくは3〜30個の炭素原子を有するα−オレフィン(例としてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル-1-ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセンおよび1−トリアコンテンが挙げられ、これらのα−オレフィンは単独または2種類以上の混合物で使用できる)
(2)不飽和カルボン酸のエステル、例えばアルキル基が24個以下の炭素原子を含むアルキル(メタ)アクリレート(アルキルアクリレートまたはメタクリレートの例としては特にメチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレート、および、60重量%以下、好ましくは2〜40重量%のアルキル(メタ)アクリレートを含むことができるエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーが挙げられる)
(3)飽和カルボン酸ビニルエステル、例えば酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニル等
(4)ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン。
ポリエチレンは上記コモノマーの複数を含むことができる。
【0016】
エチレンのコポリマーは少なくとも51%(モルベースで)、好ましくは75%のエチレンを含むのが有利である。エチレンのコポリマーの密度は0.86〜0.98g/cm3にすることができ、MFI(190℃、2.16kgでの粘度指数)は0.1〜1000g/10分であるのが有利である。
ポリエチレンの例としては下記を挙げることができる:
(1)低密度ポリエチレン(LDPE)
(2)直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)
(3)超低密度ポリエチレン(VLDPE)
ポリエチレンはLLDPEであるのが有利である。
【0017】
ポリスチレン(B)は耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)または結晶性ポリスチレン(polyethylene crystal)である。スチレンエラストマーは除かれる。
HIPSはASTM D−1238の条件G(200℃、5000g)で測定したメルトフローインデックスが約0.5〜12g/10分、好ましくは1〜6g/10分、さらに好ましくは2〜4g/10分で、密度は1.04〜1.05である。このHIPSは例えばダウ(Dow)社から製品番号スチロン(Styron)457および484(耐衝撃性PS)または製品番号スチロン(Styron)634および637(結晶性PS)で市販のPS、または、トタルペトロケミカル(Total Petrochemical)社から製品番号8350、7240、4241、3450(耐衝撃性PS)または製品番号1160、1340、1450N(結晶性PS)で市販のPSである。
【0018】
予めグラフト化された耐衝撃性PSまたは予めグラフト化された結晶性PSを用いても本発明の範囲を逸脱するものではない。PE(A1)+PE(A2)+PS(B)の「ワンポット」共グラフト化、すなわち、一段階で同時にグラフトを行うこともできる。
【0019】
グラフトモノマーは不飽和カルボン酸である。不飽和カルボン酸の官能性誘導体を用いても本発明の範囲を逸脱するものではない。不飽和カルボン酸は2〜20個の炭素原子を含むもので、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が挙げられる。これらの酸の官能性誘導体には例えば不飽和カルボン酸の無水物、エステル誘導体、アミド誘導体、イミド誘導体および金属塩(アルカリ金属塩等)がある。
【0020】
特に好ましいグラフトモノマーは4〜10個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸とその誘導体、特にその無水物である。これらのグラフトモノマーの例としてはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリル琥珀酸、4−シクロヘキシ‐1,2−ジカルボン酸、4−メチルシクロヘキシ−4−エン‐1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]へプト‐5−エン‐2,3−ジカルボン酸、x−メチルビシクロ[2,2,1]へプト‐5−エン‐2,3−ジカルボン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリル琥珀酸、4-シクロヘキシ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、4−メチレンシクロヘキシ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]へプト‐5−エン−2,3−ジカルボン酸およびx−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−5−エン−2,2−ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0021】
その他のグラフト化モノマーの例としては不飽和カルボン酸のC1−C8アルキルエステルまたはグリシジルエステル誘導体、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、モノエチルマレエート、ジエチルマレエート、モノエチルフマレート、ジメチルフマレート、モノメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、不飽和カルボン酸アミド誘導体、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸N−モノエチルアミド、マレイン酸N,N−ジエチルアミド、マレイン酸N-モノブチルアミド、マレイン酸N,N−ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸N-モノエチルアミド、フマル酸N,N−ジエチルアミド、フマル酸N-モノブチルアミド、フマル酸N,N−ジブチルアミド、不飽和カルボン酸のイミド誘導体、例えばマレイミド、N−ブチルマレイミドおよびN−フェニルマレイミド、不飽和カルボン酸金属塩、例えばソジウムアクリレート、ソジウムメタクリレート、ポタシウムアクリレートおよびポタシウムメタクリレートが挙げられる。無水マレイン酸(MAH)が好ましい。
【0022】
グラフトモノマーのグラフト化は公知の種々の方法を用いて行うことができる。例えば、単軸または二軸押出機の供給ホッパにポリオレフィンを例えば顆粒の形で供給し、押出機の第1帯域でポリオレフィンを加熱溶融し、第2帯域でポリオレフィン溶融物中に反応物を導入してグラフト反応を行うことができる。
【0023】
グラフト化は例えば溶媒の存在下または非存在下で、ラジカル開始剤を用いるか、用いずに、ポリマーを高温すなわち約150℃〜約300℃に加熱することで実施できる。この反応に適当な溶媒はベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クメン等である。上記反応物の導入領域は十分に長くし且つ反応物が良好に分散し、ラジカル開始剤の熱分解ができるだけ起きないように十分に低温度にするのが好ましい。
【0024】
いわゆるグラフト反応は押出機の第3帯域でラジカル開始剤が完全に分解する温度で行う。押出ヘッドから溶融物が出る前に脱気帯域を設けて、開始剤の分解で生じた生成物と未反応グラフトモノマーを例えば真空脱気する。グラフト化されたポリオレフィンは押出機の出口で例えば粒状レースの形で冷却空気で冷却した後に回収される。
(グラフトモノマー)/(グラフト化されたポリマー)の重量比は一般に0.1〜5、好ましくは0.15〜2.5である。
【0025】
ラジカル開始剤は過酸化物、過酸、過酸エステルまたはパーアセタールの中から選択できる。これらはグラフトすべきポリオレフィンに対して一般に0.01〜0.5重量%の比率で用いられる。使用可能な適当なラジカル開始剤はtert-ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、ジ−tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシ、ジクミルペルオキシド(DICUP)、1,3−ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシドおよびメチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)およびα,α’−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(Y1490)である。
【0026】
ラジカル開始剤は液体状態のグラフトモノマー中に溶解し、溶融状態のポリオレフィン中に例えば定量ポンプを用いて導入するのが好ましい。
グラフト化モノマーの量はFTIR分光分析法でコハク酸基を定量して求める。
こうして得られるグラフト変性されたポリマー中のグラフトモノマーの量は適当に選択できるが、好ましくはグラフト化後のポリマーに対して0.01〜10重量%、好ましくは0.5〜2重量%にする。
グラフト化された熱可塑性ポリマーのメルトフローインデックスは0.1〜15g/10分(190℃、2.16kgで測定)、好ましくは0.4〜5g/10分である。融点は80〜130℃である。
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0027】
[表1][表2]には実施例および比較例の組成物を示す。
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
サンプル1〜7の構造は、Alu(350μm)/バインダー(35μm)/PE(30μm)/バインダー(35μm)/Alu(350μm)で、各サンプル1〜7のバインダー組成物は実施例/比較例1〜7に記載のものである(表1、2参照)。
サンプル1〜7は下記のようにして製造した:
(1)Collin(登録商標)共押出機で、35μmのバインダーと15μmの低密度ポリエチレン(LDPE)とから成る2層フィルムを押し出す。
(2)Alu(350μm)/バインダー(35μm)/PE(30μm)/バインダー(35μm)/Alu(350μm)からなる構造物を170℃、3MPaで5分間プレスした後、空気冷却する。この時の時間をt0とする。
(3)剥離強度を測定する(引張り速度50mm/分、角度180°)。
(4)AF(接着破断)およびCF(凝集破断)で定義される破断タイプを評価する。
(5)結果は[表3]に示してある。
【0030】
【表3】

【0031】
上記定義のt0での測定後に下記の種々の条件下で剥離強度を測定した。測定値は[表4]に示してある。
【表4】

【0032】
本発明バインダー組成物は水中での老化後の剥離強度が優れたレベルに維持されるということが分かる。
本発明の配合物を用いることによってアルミニウムに対して高い接着性を得ることができ、その剥離特性は凝集破断性であり、剥離強度は水中で老化した後にで経時的安定に維持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)〜(3)から成るバインダー(ただし、エラストマーを除く)(比率はバインダーの全重量に対する重量%):
(1)密度が0.870〜0.910g/cm3のVLDPEであるPE(A)または少なくとも2種のポリエチレンPE(A1)とPE(A2)との混合物:10〜79%(ここで、PE(A2)は密度が0.870〜0.910g/cm3のVLDPEで、PE(A1)とは異なり、PE(A)がラフト化されているか、PE(A1)とPE(A2)との混合物がグラフト化または共グラフト化されており、PE(A)、PE(A1)またはPE(A2)は下記の群の中から選択される:PEのホモポリマーおよび少なくとも51重量%のエチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル-1-ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、1−トリアコンテンおよびこれらの混合物の中から選択されるα−オレフィンのコモノマーとコポリマー)
(2)グラフト化またはグラフト化されていない耐衝撃性PS(B)またはグラフト化またはグラフト化されていない結晶性PS(B):21〜50%、
(3)チーグラ−ナッタ触媒を用いて得られるグラフト化されていないPE(C):0〜70%。
【請求項2】
下記(1)〜(3)からなる請求項1に記載のバインダー:
(1)PE(A)または少なくとも2種のポリエチレンの混合物PE(A1)とPE(A2):15〜70%、
(2)グラフト化またはグラフト化されていない結晶性または耐衝撃性PS(B):21〜30%、
(3)チーグラ−ナッタ触媒を用いて得られるグラフト化されていないPE(C):0〜60%。
【請求項3】
PE(A1)がLLDPE、LDPEおよびPEmの中から選択される請求項1または2に記載のバインダー。
【請求項4】
PE(A1)がLLDPEである請求項3に記載のバインダー。
【請求項5】
PE(C)がLDPE、LLDPEおよびVLDPEの中から選択される請求項2〜4のいずれか一項に記載のバインダー。
【請求項6】
PE(C)がLLDPEである請求項5に記載のバインダー。
【請求項7】
グラフト化ポリマーが、2〜20個の炭素原子を有する不飽和カルボン酸およびその誘導体と4〜10個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸およびその誘導体の中から選択されるグラフトモノマーによってグラフト化されたものである請求項1〜6のいずれか一項に記載のバインダー。
【請求項8】
グラフトモノマーが無水マレイン酸である請求項7に記載のバインダー。
【請求項9】
グラフトモノマーの量がグラフト化されたポリマーの0.01〜10重量%である請求項7または8に記載のバインダー。
【請求項10】
アルミニウム層/バインダー層/PE層を含む多層構造物での請求項1〜9のいずれか一項に記載のバインダーの使用。
【請求項11】
PE層がLDPE層である請求項10に記載の使用。
【請求項12】
PE層が難燃剤を含む請求項10または11に記載の使用。

【公開番号】特開2007−191714(P2007−191714A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4420(P2007−4420)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】