グラフト化ポリカーボネート樹脂の製造方法


【目的】 光ディスク、光学用レンズ等の光学用成形材料、ポリマーブレンドにおける相溶化剤、接着剤、塗料、等として有用な、グラフト化されたポリカーボネート樹脂の工業的な製法を提供する。
【構成】 ラジカル重合性不飽和末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の水懸濁液に、ビニル単量体とラジカル重合開始剤を加えて水性懸濁液を生成させ、該懸濁液をラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない温度に加熱してビニル単量体及びラジカル重合開始剤をポリカーボネート樹脂に含浸させ、次いで温度を重合開始剤が実質的に分解する温度に上昇してグラフト反応させるグラフト化ポリカーボネート樹脂の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ラジカル重合性の不飽和末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂とビニル単量体をグラフト化重合させて得られる、透明性や流動性に優れたポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。本発明により得られるポリカーボネート樹脂は光ディスク、光学用レンズのような光学的な用途、ポリマーブレンドにおける相溶化剤、接着剤、塗料として有用な組成物を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、光学用透明成形品の材料としては、アクリル樹脂が透明性、流動性が良く複屈折が小さい等の特性を有するため光学用透明成形品の材料として知られている (特開昭56-131654 号他) 。しかし、アクリル樹脂は実用上耐熱性が約70℃と低く、耐衝撃性も低く、水分により反りを生じやすいという欠点がある。上記の欠点をなくす為、粘度平均分子量が15,000〜18,000のポリカーボネート樹脂をディスクやレンズ等の成形材料として用いること (特開昭58-180553)が検討されているが、なお流動性が不十分である等の欠点を有し、その使用には限界がある。
【0003】ポリカーボネート樹脂の流動性を改善するために、ポリカーボネート樹脂にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体等のビニル系樹脂を溶融ブレンドする方法があるが、非相溶性のために分散粒子径を1μm以下にすることは困難であり、光学的に不均一になる。ビニル系モノマーをポリカーボネート樹脂の溶剤として使用して塊状グラフト重合させる方法(特開昭63-196612)もあり、この方法では 0.2μm以下の粒子分散が達成されるが、溶剤の使用量が多くコスト的に不利である。
【0004】
【発明が解決すべき課題】上記した状況に鑑み、本発明は光学用材料として有用なグラフト化ポリカーボネート樹脂を工業的に有利な方法で得る製造方法を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明はこれらの課題を解決したものであり、工業的に製造し得るグラフト化ポリカーボネート樹脂の製造方法を提供するものである。すなわち本発明は、ラジカル重合性不飽和末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の水懸濁液に、ポリカーボネート樹脂 100重量部当たり5〜200 重量部のビニル単量体と、当該ビニル単量体 100重量部当たり0.01〜5重量部のラジカル重合開始剤を加えて水性懸濁液を生成させ、該水性懸濁液をラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱してビニル単量体及びラジカル重合開始剤をポリカーボネート樹脂に含浸させ、次いでラジカル重合開始剤の分解が開始する温度まで上昇させてグラフト反応を進行させてグラフト化ポリカーボネート樹脂を得る方法、および上記グラフト化反応により得られた生成物を 200〜350 ℃の温度で溶融混練してグラフト化反応を行うグラフト化ポリカーボネート樹脂組の製法に関するものである。
【0006】以下、本発明の構成について説明する。本発明のラジカル重合性不飽和末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の製法は、分子量調節剤若しくは末端停止剤として、不飽和二重結合を有する一官能化合物を、又はこれと従来の末端停止剤とを併用して用いる他は従来の芳香族ポリカーボネート樹脂と同様の方法、すなわち、界面重合法、ピリジン法、クロロホーメート法等の溶液法で製造されるものであり、粘度平均分子量2 ,000〜100,000 好ましくは5,000 〜50,000、特に6,000 〜30,000のものである。
【0007】上記反応後ポリカーボネート樹脂溶液からポリカーボネート樹脂を固形化してポリカーボネート樹脂固形物が回収されるが、この回収する方法には、ポリカーボネート樹脂溶液に貧溶媒を添加して沈殿化する方法、ポリカーボネート樹脂溶液から溶媒を留去して濃縮し、粉状体とする方法、ポリカーボネート樹脂溶液に貧溶媒を添加し、加熱下の温水中に該混合物を添加し温水中に懸濁させて溶媒及び貧溶媒を留去して固形化して水スラリー液を生成させつつ固形化過程の液を湿式粉砕機に循環し粉砕する方法等の種々の方法があるが、本発明においてはポリカーボネート樹脂の水懸濁液として、ポリカーボネート樹脂の水スラリー液をそのまま用いるのが、合理的であり好ましい。
【0008】本発明のポリカーボネート樹脂の製造に使用する二価フェノール系化合物として好ましいものは、具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ-3,5- ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンが例示される。
【0009】また、ポリカーボネート樹脂にラジカル重合性不飽和末端基を導入するために使用される不飽和二重結合を有する一官能性化合物としては、オイゲノール、イソオイゲノール、オルソアリルフェノール、p−ヒドロキシけい皮酸メチル、イソプロペニルフェノール、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニルマレイミド、ヒドロキシ安息香酸アリルエステル又は安息香酸メチルアリルエステルなどの不飽和基を有するフェノール類や2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、等のメタクリレート置換体、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、2-ペンテン酸、3-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、9-デセン酸、9-ウンデセン酸などの不飽和カルボン酸; アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、ソルビン酸クロライド、アリルアルコールクロロホーメート、イソプロペニルフェノールクロロホーメート又はヒドロキシスチレンクロロホーメートなどの酸クロライド又はクロロホーメート等が例示される。
【0010】これらの化合物のうちフェノール置換体が特に好適である。またこれらの化合物は従来の末端停止剤と併用してもよいものであり、上記した二価フェノール系化合物に対して、通常、1〜25モル%、好ましくは 1.5〜10モル%の範囲で使用される。
【0011】ポリカーボネート樹脂の従来の末端停止剤としては、フェノール、炭素数1〜8のアルキルフェノール、炭素数1〜18のアルキルエステル置換フェノール、ハロゲン化アルキル置換フェノール、クミルフェノール等のフェノール類が例示される。
【0012】本発明のラジカル重合性不飽和末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の製造において、導入する不飽和末端基の反応性を勘案して従来から使用されている末端停止剤を併用し、導入する不飽和末端基の割合を変えてグラフト化率を制御することができる。従来の末端停止剤の使用量は、ラジカル重合性不飽和末端基を導入するための不飽和二重結合を有する一官能性化合物1モルに対して0〜30モル、好ましくは0〜15モルである。
【0013】本発明のラジカル重合性不飽和末端基を有するポリカーボネート樹脂は、上記の成分を必須として製造するものであるが、分岐化剤を上記の二価フェノール系化合物に対して0.01〜3 モル%、特に 0.1〜1.0 モル%の範囲で併用して分岐化ポリカーボネート樹脂とすることもできる。このような分岐化剤としては、フロログリシン、2,6-ジメチル-2,4,6- トリ (4-ヒドロキシフェニル) ヘプテン−3、4,6-ジメチル-2,4,6- トリ (4-ヒドロキシフェニル) ヘプテン−2、1,3,5-トリ (2-ヒドロキシフェニル) ベンゾール、1,1,1-トリ (4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス (2-ヒドロキシ-5- メチルベンジル)-4-メチルフェノール、α, α',α"-トリ (4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼンなどで例示されるポリヒドロキシ化合物、及び3,3-ビス (4-ヒドロキシアリール) オキシインドール(=イサチンビスフェノール) 、5-クロルイサチン、5,7-ブロムイサチン、5-ブロムイサチンなどが例示される。
【0014】本発明のラジカル重合性不飽和末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の形状は、粒径 0.1〜5mm 程度の粉状又はペレット状であることが好ましい。粒径が過度に大きいと懸濁液中での分散が困難であるばかりでなく、ビニル単量体等の含浸時間が長くなる欠点がある。
【0015】本発明におけるビニル単量体は水中において安定なものであり、水に不溶でかつ水との親和性の低いものが好ましい。例えばビニル芳香族単量体、置換マレイミド、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、グリシジルメタクリレート及びビニルエステル単量体からなる群から選ばれる一種又は二種以上が用いられる。ビニル芳香族単量体としては、スチレン; o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α- メチルスチレン、o-ブチルスチレン、p-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン等で例示されるアルキル置換スチレン; クロロスチレン、ブロモスチレン等で例示されるハロゲン化スチレンがあげられ、置換マレイミドとしては、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミドなどが挙げられ、フマル酸エステルとしては、たとえばフマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジイソプロピルなどが挙げられ、マレイン酸エステルとしては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピルなどが挙げられる。また (メタ) アクリル酸エステル単量体としては例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等で例示される (メタ) アクリル酸アルキルエステルがあげられる。ビニル単量体としてはスチレン、置換スチレンが好ましい。ビニル単量体の使用量はポリカーボネート樹脂 100重量部に対して5〜200 重量部、好ましくは50〜150 重量部である。
【0016】本発明においてはビニル単量体の分子量調節剤を用いることができる。好適な分子量調節剤としては有機イオウ化合物があげられ、有機イオウ化合物としては、例えば炭素数1〜30の脂肪族又は芳香族化合物、具体的にはn-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタンn-オクタデシルメルカプタン等で例示される脂肪族メルカプタン; 芳香族メルカプタン、チオグリコール酸とそのエステル、エチレンチオグリコール酸とそのエステル、エチレンチオグリコール等を挙げることができる。分子量調節剤の使用量はビニル単量体 100重量部に対して0.0001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
【0017】ラジカル重合開始剤は10時間の半減期を得るための分解温度が40〜90℃、好ましくは60〜80℃のものである。ここに10時間半減期温度はベンゼン 1L 中にラジカル重合開始剤を 0.1モル添加し、ある温度で10時間経過した時の分解率が50%となる温度である。ラジカル重合開始剤としては例えばジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ-n- プロピルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジ (2-エトキシエチル) ペルオキシジカーボネート、ジ (メトキシイソプロピル) ペルオキシジカーボネート、ジ (2-エチルヘキシル) ペルオキシジカーボネート、t-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、ジ (3-メチル-3- メトキシブチル) ペルオキシジカーボネート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ヘキシルペルオキシネオヘキサノエート、t-ブチルペルオキシネオヘキサノエート、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、クミルペルオキシオクトエート、アセチルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2- エチルヘキサノエート、m-トルオイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ビス (t-ブチルペルオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン等をあげることができる。ラジカル重合開始剤の使用量はビニル単量体100 重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.5 〜3 重量%である。
【0018】本発明においては、ラジカル重合性不飽和末端基を有するポリカーボネート樹脂、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を水媒体中に懸濁させ、水性懸濁液をラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない温度で加熱してビニル単量体及びラジカル重合開始剤をポリカーボネート樹脂に含浸させ、次いで昇温してグラフト化反応を行う。使用される不飽和末端基を有するポリカーボネート樹脂の末端基の種類、ビニル単量体の種類、ラジカル重合開始剤の種類等の反応成分の種類および、反応条件によっては、水性懸濁液下でのグラフト化反応が不充分な場合があり、グラフト化反応終了後の反応生成物を200 〜350 ℃で溶融混練を行いグラフト化を完結させることができる。
【0019】本発明において、水媒体には懸濁剤、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、その他の水溶性重合体;リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、その他の難水溶性無機物質; を適宜使用することができる。水性懸濁液中のポリカーボネート樹脂等の反応成分の濃度は任意であるが、通常、水 100重量部に対して反応成分5〜100 重量部である。
【0020】本発明においては、ポリカーボネート樹脂へのビニル単量体及びラジカル重合開始剤の含浸は、できるだけ高温で行うのが好ましいが、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない温度で行う必要がある。含浸時にラジカル重合開始剤が分解すると、反応前に部分的に反応が進行しグラフト化ポリカーボネートが不均一なものとなるので、含浸時の温度は通常、使用するラジカル重合開始剤の10時間半減温度より、5℃以上低い温度が好ましい。
【0021】本発明においては、上記含浸操作を行ったのち、次いで水性懸濁液の温度をラジカル重合開始剤の分解が開始する温度まで徐々に昇温してグラフト化反応を進る。グラフト反応においてはラジカル重合開始剤が少なくとも50%以上分解し、かつビニル単量体の転化率が少なくとも50%以上になる温度と時間を保持する。この場合、ビニル単量体の転化率が90%以上となるような条件を設定するのがより好ましい。ラジカル重合開始剤の残存量は初期仕込み量に対し通常、5〜50重量%である。グラフト反応後、固液分離し、グラフト化ポリカーボネート樹脂を回収する。得られたグラフト化ポリカーボネート樹脂は必要に応じ、水、熱水等で洗浄し、乾燥する。
【0022】このようにして得られるグラフト化ポリカーボネート樹脂は一部未反応のラジカル重合性不飽和末端およびビニル単量体が残存している場合があるので、上記の反応生成物を200 〜350 ℃の温度で溶融混練してグラフト化反応を完結させることが好ましい。溶融混練はバッチ、連続のどちらも可能である。溶融混練は上記の温度で実施すればよく、具体的な装置としては例えば、バンバリーミキサー、押出機、射出成形機、等があげられる。溶融混練中に一部の未反応モノマーを減圧蒸留回収することも可能である。この際、水中で不安定または水との親和性の高いビニル単量体、例えば無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、N-フェニルマレイミド、等を溶融混練することもできる。この場合には、これらの成分を予め混合し、所定時間保持して熟成させ、均一に分散させて置くのが好ましい。又、溶融混練に際し通常のポリカーボネート樹脂、あるいはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂等を加え、該グラフトポリマーを相溶化剤として用いてポリマーアロイ化することも可能である。
【0023】通常のポリカーボネート樹脂にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂(スチレン−アクリロニトリル共重合体)、無水マレイン酸−スチレン共重合体等のビニル系樹脂を従来の方法でブレンドした場合、非相性のために分散粒子径を1μm 以下にすることは困難であるが、本発明によれば、相分散が格段に向上し、光学的な均一性も向上する。
【0024】従って、本発明のグラフト化ポリカーボネート樹脂は、種々の用途に使用することができる。例えば、ビニル単量体としてスチレンを用いた場合には光学用ポリカーボネート樹脂成形材料として特に好適であり、スチレン又は (メタ) アクリロニトリルを用いた場合には相溶化剤、ポリカーボネート樹脂の表面塗布用のプライマーとして有用である。本発明のグラフト化ポリカーボネート樹脂組成物を樹脂の相溶化剤として用いることによりミクロ分散されたポリマーアロイ、例えば、ポリカーボネート樹脂─スチレングラフト化ポリカーボネート樹脂組成物─スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリカーボネート樹脂─アクリロニトリルグラフト化ポリカーボネート樹脂組成物─ポリメチルメタクリレート、等のポリマーアロイを得ることができる。
【0025】
【実施例】
実施例1水酸化ナトリウム 3.4kgを水4.2 L に溶解し、20℃に保ちながら、2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル) プロパン (=BPA) 6.6kg 、ハイドロサルファイト 8g を溶解した。これにメチレンクロライド 28 L を加えて攪拌しつつ、p-イソプロペニルフェノール 250g を加え、ついでホスゲン 3.3kgを60分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、激しく攪拌して反応液を乳化させ、乳化後、8gのトリエチルアミンを加え約1時間攪拌を続け重合させた。重合液を、水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和した後、洗液のpHが中性となるまで水洗を繰り返した後、イソプロパノールを 35 L 加えて、重合物を沈殿させた。沈殿物を濾過し、その後、真空乾燥することにより、白色粉末状のポリカーボネート樹脂を得た。このポリカーボネートの粘度を測定した結果、粘度平均分子量(Mv)は 16,000であった。該末端不飽和ポリカーボネート樹脂の粉末 500g を内容積 5L のステンレス製オートクレーブに入れ、純水2500mLを加えた。別にラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド (10時間半減温度74℃) 2.5gとスチレンモノマー200g及び分子量調節剤としてn-ドデシルメルカプタン 0.2g を加えた。オートクレーブの温度を60〜65℃に保ち、2時間攪拌してラジカル重合開始剤及びスチレン、n-ドデシルメルカプタンを末端不飽和ポリカーボネート樹脂粉末に含浸させた。さらに温度を80℃に上げ、7時間攪拌を続けた。この時点でのラジカル重合開始剤の分解率は78%に達した。又、スチレンモノマーの転化率は60%であった。懸濁液からポリマー粉末を分離し、熱水で洗浄した後、水をよく振り切った。このときの含水率は8重量%であった。この湿潤した粉末を、軸径30mm L/D=32のベント式二軸押出機に供給し、樹脂温度を 280℃として押出した。得られたペレットは透明であり実質的にスチレンモノマーは存在しなかった。このペレットを射出成形し厚さ3mmの円板を作成した。この円板の全光線透過率/ヘィズ(T/H)を日本電色工業製色差計1001DPで測定した結果、T/Hは87.5% /4.5% であった。また、日本電子製透過型電子顕微鏡JEM−2000FXを用いて相分散を測定した。試料は、ペレットからReichert-Jung 製ウルトラカットNを用い0.5 × 0.5mm、厚さ 0.1μm の試料片をRuO4で染色して測定用試料片とした。( 以下も同様にした)(倍率:10,000 倍) その結果分散粒子径は0.2 〜1.0 μm で、図面1に見られるように良好な分散状態を示しており、相溶性が良いことがわかる。
【0026】実施例2水酸化ナトリウム 4.0kgを水4.2 L に溶解し、20℃に保ちながら、2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル) プロパン (=BPA) 7.3kg 、ハイドロサルファイト 8g を溶解した。これにメチレンクロライド 28 L を加えて攪拌しつつ、ホスゲン 4.4kgを60分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、アクリル酸 460g 、テトラブチルアンモニウムブロマイド 73gを添加し、激しく攪拌して反応液を乳化させ、乳化20分後、8gのトリエチルアミンを加え約1時間攪拌を続け重合させた。重合液を、水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和した後、洗液のpHが中性となるまで水洗を繰り返した後、イソプロパノールを 35 L 加えて、重合物を沈殿させた。沈殿物を濾過し、その後、真空乾燥することにより、白色粉末状のポリカーボネート樹脂を得た。このポリカーボネートの粘度を測定した結果、粘度平均分子量(Mv)は 16,000であった。該末端不飽和ポリカーボネート樹脂の粉末 500g を内容積 5L のステンレス製オートクレーブに入れ、純水2500mLを加えた。別にラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド (10時間半減温度74℃) 2.5g及びメチルメタクリレート150gを加えた。オートクレーブの温度を60℃に保ち、2時間攪拌してラジカル重合開始剤及びメチルメタクリレートを末端不飽和ポリカーボネート樹脂粉末に含浸させた。さらに温度を80℃に上げ、4時間攪拌を続けた。この時点でのラジカル重合開始剤の分解率は75%に達した。又、メチルメタクリレートモノマーの転化率は68%であった。懸濁液からポリマー粉末を分離し、熱水で洗浄した後、水をよく振り切った。このときの含水率は8重量%であった。この湿潤した粉末を、実施例1に使用したと同様なベント式二軸押出機に供給し、樹脂温度を 250℃として押出し透明なペレットを得た。このペレットには、実質的にスチレンモノマーは存在しなかった。このペレットを射出成形し厚さ3mmの円板を作成した。この円板の全光線透過率/ヘィズ(T/H)を実施例1と同様にして測定した結果、T/Hは87.7% /4.7% であった。また実施例1と同様にして、相分散を測定した結果分散粒子径は0.2 〜0.7 μm で良好な分散状態を示している。
【0027】実施例3末端不飽和基導入用の一官能性化合物としてp-イソプロペニルフェノール25g、および末端停止剤としてp-tert.-ブチルフェノール225gを加えた以外は実施例1と同様にして不飽和末端基を有するポリカーボネート樹脂を得た。このポリカーボネート樹脂の粘度を測定した結果、粘度平均分子量(Mv)は17,000であった。このポリカーボネート樹脂の粉末 500g を内容積5Lのステンレス製オートクレーブに入れ、純水2500mLを加えた。別にラジカル重合開始剤としてtert.-ブチルベンジルオキシ-2- エチルヘキサート (10時間半減温度72.5℃)10gとスチレンモノマー500gおよび分子量調節剤としてn-オクチルメルカプタン 0.2g を加えた。オートクレーブの温度を60〜65℃に保持し2時間攪拌してカジカル重合開始剤、スチレンモノマーおよびn-オクチルメルカプタンをポリカーボネート樹脂に含浸させた。次いで温度を90℃に昇温し5時間攪拌を継続してグラフト化反応を行わせた。反応終了のスチレンモノマーの転化率は90%以上であょた。懸濁液からポリマー粉末を分離し熱水で洗浄した後、窒素下100℃で10時間乾燥させ、960gの粉末を得た。この粉末を実施例1に使用したと同様なベント式二軸押出機に供給し、樹脂温度を 280℃として押出した。得られたペレットは透明であり、実質的にスチレンモノマーは存在しなかった。このペレットを実施例1と同様に射出成形し厚さ3mmの円板を作成し、全光線透過率/ヘィズ(T/H)を測定した結果、T/Hは88.0% /2.0% であった。また、実施例1におけると同様にして相分散を測定した結果分散粒子径は0.2 〜0.5 μm で、図2に見られるように良好な分散状態を示しており、相溶性が良いことが分かる。
【0028】実施例4末端不飽和基導入用の一官能性化合物としてオイゲノール 306g を使用した以外は実施例1と同様にして末端不飽和基を有するホリカーボネート樹脂を得た。このポリカーボネート樹脂の粘度を測定した結果、粘度平均分子量(Mv)は15,000であった。このポリカーボネート樹脂の粉末 500g を内容積5Lのステンレス製オートクレーブに入れ、純水2500mLを加えた。別にラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド(10 時間半減温度74℃)10gとスチレンモノマー500gおよび分子量調節剤としてn-ドデシルメルカプタン 0.2g を加えた。オートクレーブの温度を60〜65℃に保持し2時間攪拌してカジカル重合開始剤、スチレンモノマーおよびn-ドデシルメルカプタンをポリカーボネート樹脂に含浸させた。次いで温度を90℃に昇温し5時間攪拌を継続してグラフト化反応を行わせた。反応終了のスチレンモノマーの転化率は90%以上であょた。実施例3と同様に処理して懸濁液からポリマー粉末970gを得た。この粉末を実施例1に使用したと同様なベント式二軸押出機に供給し、樹脂温度を 240℃として押出した。得られたペレットは透明であり、実質的にスチレンモノマーは存在しなかった。このペレットを実施例1と同様に射出成形し厚さ3mmの円板を作成し、全光線透過率/ヘィズ(T/H)を測定した結果、T/Hは88.0% /1.9% であった。また、相分散を測定した結果分散粒子径は0.2 〜0.7 μm で良好な分散状態を示している。
【0029】実施例5末端不飽和基導入用の一官能性化合物として、o−アリルフェノール250gを使用した以外は実施例1と同様にして末端不飽和基を有するホリカーボネート樹脂を得た。このポリカーボネート樹脂の粘度を測定した結果、粘度平均分子量(Mv)は15,000であった。このポリカーボネート樹脂の粉末 500g を内容積5Lのステンレス製オートクレーブに入れ、純水2500mLを加えた。別にラジカル重合開始剤としてクミルペルオキシオクトエート(10 時間半減温度65.1℃)10gとスチレンモノマー500gおよび分子量調節剤として n−ドデシルメルカプタン 0.2g を加えた。オートクレーブの温度を60〜65℃に保持し2時間攪拌してカジカル重合開始剤、スチレンモノマーおよびn-ドデシルメルカプタンをポリカーボネート樹脂に含浸させた。次いで温度を90℃に昇温し5時間攪拌を継続してグラフト化反応を行わせた。反応終了のスチレンモノマーの転化率は90%以上であょた。実施例3と同様に処理して懸濁液からポリマー粉末960gを得た。この粉末を実施例1に使用したと同様なベント式二軸押出機に供給し、樹脂温度を 240℃として押出した。得られたペレットは透明であり、実質的にスチレンモノマーは存在しなかった。このペレットを実施例1と同様に射出成形し厚さ3mmの円板を作成し、全光線透過率/ヘィズ(T/H)を測定した結果、T/Hは87.8% /2.3% であった。また、相分散を測定した結果分散粒子径は0.2 〜0.8 μm で良好な分散状態を示している。
【0030】実施例6末端不飽和基導入用の一官能性化合物としてオイゲノール306g を使用した以外は実施例1と同様にして末端不飽和基を有するポリカーボネート樹脂を得た。このポリカーボネート樹脂の粘度を測定した結果、粘度平均分子量(Mv)は17,000であった。このポリカーボネート樹脂の粉末 500g を内容積5Lのステンレス製オートクレーブに入れ、純水2500mLを加えた。別にラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド(10 時間半減温度74℃)10gとスチレンモノマー500gおよびN-シクロヘキシルマレイミド100g、分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタン 0.2g を加えた。オートクレーブの温度を60〜65℃に保持し2時間攪拌してカジカル重合開始剤、スチレンモノマー、N-シクロヘキシルマレイミドおよびn-ドデシルメルカプタンをポリカーボネート樹脂に含浸させた。次いで温度を90℃に昇温し5時間攪拌を継続してグラフト化反応を行わせた。反応終了のスチレンモノマーおよびN-シクロヘキシルマレイミドの転化率は90%以上であった。次いで実施例3と同様に処理して懸濁液からポリマー粉末1046gを得た。この粉末を実施例1に使用したと同様なベント式二軸押出機に供給し、樹脂温度を 240℃として押出した。得られたペレットは透明であり、実質的にスチレンモノマーは存在しなかった。このペレットを実施例1と同様に射出成形し厚さ3mmの円板を作成し、全光線透過率/ヘィズ(T/H)を測定した結果、T/Hは87.0% /2.0% であった。また、日本電子製透過型電子顕微鏡JEM−2000FXを用いて相分散を測定した結果分散粒子径は0.2 〜0.8 μm で良好な分散状態を示している。
【0031】比較例1市販の一般のポリカーボネート樹脂 (三菱ガス化学株式会社製、商品名ユーピロン H-4000)1Kgと、ポリスチレン (三菱モンサント化成株式会社製、商品名ダイヤレックス H H 102) 1Kgとを、タンブラー型ミキサーで混合した後、この混合粉末を実施例1に使用したと同様なベント式二軸押出機に供給し、樹脂温度を240℃として押出し、ペレットを得た。これを実施例1と同様に射出成形して厚さ3mmの円板を作成した。この円板の全光線透過率/ヘィズ(T/H)を測定した結果、T/Hは87.3% /54.9%であった。また、日本電子製透過型電子顕微鏡JEM−2000FXを用いて、実施例1と同様にして試料を作成し、相分散を測定した結果オイル状に分散しており分散相は図3に見られるように極めて不均一であることが分かる。
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、光ディスク、光学用レンズ等の成形材料、ポリマーブレンドにおける相溶化剤、接着剤、塗料、等として有用な、グラフト化されたポリカーボネート樹脂を得ることができる。さらに本発明の方法によればグラフト化ポリカーボネート樹脂を工業的に有利な方法で容易に得ることができるので極めて意義あるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法(実施例1)により得られたグラフト化ポリカーボネート樹脂の分散粒子の構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】 本発明の方法(実施例3)により得られたグラフト化ポリカーボネート樹脂の分散粒子の構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】 市販の通常のポリカーボネート樹脂とポリスチレンとを溶融混練したもの(比較例1)の分散粒子の構造を示す電子顕微鏡写真である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】 ラジカル重合性の不飽和末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の水懸濁液に、ポリカーボネート樹脂 100重量部当たり5〜200 重量部のビニル単量体と、当該ビニル単量体 100重量部当たり0.01〜5重量部のラジカル重合開始剤を加えて水性懸濁液を生成させ、該水性懸濁液をラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱してビニル単量体及びラジカル重合開始剤をポリカーボネート樹脂に含浸させ、次いでラジカル重合開始剤の分解が開始する温度まで上昇させてグラフト反応を行うことを特徴とするグラフト化ポリカーボネート樹脂の製造方法
【請求項2】 ビニル単量体と共に分子量調節剤として有機イオウ化合物をビニル単量体 100重量部に対して0.0001〜5重量部用いる請求項1記載の製造方法
【請求項3】 分子量調節剤が炭素数1〜30の脂肪族又は芳香族化合物である請求項1記載の製造方法
【請求項4】 ビニル単量体がビニル芳香族単量体、アクリル酸エステル単量体、メタアクリル酸エステル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びビニルエステル単量体からなる群から選ばれる一種又は二種以上である請求項1記載の組成物
【請求項5】 ビニル単量体がスチレン又は置換スチレンである請求項1記載の組成物
【請求項6】 ラジカル重合性の不飽和末端基を有するポリカーボネート樹脂が、末端にイソプロペニルフェノール、オイゲノール、オルソアリルフェノール、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを有するポリカーボネート樹脂である請求項第1項記載の製造方法
【請求項7】 ラジカル重合性の不飽和末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の水懸濁液に、ポリカーボネート樹脂 100重量部当たり5〜200 重量部のビニル単量体と、当該ビニル単量体 100重量部当たり0.01〜5重量部のラジカル重合開始剤を加えて水性懸濁液を生成させ、該水性懸濁液をラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱してビニル単量体及びラジカル重合開始剤をポリカーボネート樹脂に含浸させ、次いでラジカル重合開始剤の分解が開始する温度まで上昇させてグラフト反応させた後、固液分離し、該グラフト化反応生成物を 200〜350 ℃の温度で溶融混練することを特徴とするグラフト化ポリカーボネート樹脂の製造方法


【図1】


【図2】


【図3】


【公開番号】特開平6−41258
【公開日】平成6年(1994)2月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−181856
【出願日】平成4年(1992)6月16日
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社