説明

グラフト重合体粒子の製造方法、該製造方法で得られるグラフト重合体粒子、ならびに制電性樹脂組成物およびその製造方法

【課題】制電性に優れかつ、従来の制電性樹脂組成物よりも強度に優れる制電性樹脂組成物を提供することが可能な、グラフト重合体粒子を製造する方法および該製法により得られるグラフト重合体粒子を提供する。
【解決手段】グラフト重合体粒子の製造方法は、アクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体を重合し、ゴム状幹重合体を得る工程(A)と、ゴム状幹重合体の存在下で、少なくとも前記アクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、アルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体とを重合し、多段型ゴム状幹重合体を得る工程(B)と、前記多段型ゴム状幹重合体に、エチレン系不飽和単量体をグラフト重合し、グラフト重合体粒子を得る工程(C)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト重合体粒子の製造方法、該製造方法で得られるグラフト重合体粒子、制電性樹脂組成物、その製造方法および該組成物から形成される成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱可塑性樹脂成形体は、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野において使用されている。しかしながら、熱可塑性樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂の多くは電気絶縁性であり、精密な電気・電子制御装置を備えた各種機器において、発生する静電気が熱可塑性樹脂に帯電することにより、電気・電子制御装置の誤作動が起こるという問題があった。
【0003】
帯電による問題を解決する方法として、熱可塑性樹脂に制電性を付与する方法が知られている。一般的に熱可塑性樹脂に制電性を付与する方法としては以下の(i)〜(iii)の方法が挙げられる。
(i)界面活性剤等の帯電防止剤と熱可塑性樹脂とを混練し、該混練物を用いる方法。(ii)カーボンブラック等の導電性付与剤と熱可塑性樹脂とを混練し、該混練物を用いる方法。(iii)導電性付与剤を含有する導電層を塗布または蒸着により熱可塑性樹脂成形体表面上に形成する方法。
【0004】
(i)の方法は、永久的な帯電防止には充分でなく、水洗、摩擦等の手段によって表面に存在する帯電防止剤が除去されてしまうと制電効果が失われる恐れがあり、また、時間の経過とともに帯電防止剤が表面にブリードしてゴミまたはホコリの粘着の原因となり、その結果、成形体の透明性を損なうなどの問題があった。
【0005】
(ii)の方法は、導電性付与剤としてカーボンブラックを含有させると、透明な成形体が得られないという問題があった。
(iii)の方法は、複雑な形状の成形体へ適用することが困難であり、また、成形体表面上の導電層が剥がれやすいため、洗浄・磨耗等により制電効果が徐々に失われ、永久的な帯電防止は困難であった。
【0006】
上記問題を解決した制電性樹脂組成物として、本出願人は、乳化重合に用いる乳化剤としてカルボン酸系界面活性剤を使用して得られたアルキレンオキサイド基を有するゴム状幹重合体にエチレン系不飽和単量体をグラフト重合したグラフト共重合体、熱可塑性樹脂、および特定のアニオン系界面活性剤を配合してなる永久制電性の優れた制電性樹脂組成物を既に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
上記グラフト共重合体は優れた制電性を有するばかりでなく、透明でかつ湿度依存性が低く、しかも成型性にも優れており、該グラフト共重合体を含む制電性樹脂組成物は、射出成型法、押出成形法、圧縮成型法、真空成形法等に幅広く適用できるものである。しかしながら、上記グラフト共重合体を含む制電性樹脂組成物は、強度の観点から更なる改善が求められていた。
【0008】
また、制電性を有するグラフト共重合体として、プラスチック幹重合体に、アルキレンオキサイド基を有するモノマー等をグラフト重合し、さらに、エチレン系不飽和単量体をグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を、本出願人は既に提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
上記グラフト共重合体は、ゴム含有量を低減した場合であっても、優れた制電性を有する共重合体である。しかしながら、上記グラフト共重合体は、強度の観点から、更なる改善が求められていた。
【0010】
なお、種粒子にビニル系単量体Aと、特定の有機過酸化物と、重合開始剤とを吸収させ、次いで重合させることにより、有機過酸化物含有種粒子を得る第1の工程と、該有機過酸化物含有微粒子にビニル系単量体Bとを吸収させ、次いで重合させることにより単分散粒子を得る第2の工程を有する単分散微粒子の製造方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
特許文献3の〔0030〕段落、〔0034〕段落および実施例より、前記第1の工程および第2の工程は実質的に懸濁重合により行われる。また、特許文献3の〔0011〕段落には、発明の効果として、5μm以下のビニル系単量体由来の小粒子の生成を抑制することが可能であることが開示されている。さらに、特許文献3の実施例に記載された、単分散微粒子のモード径は、5.3〜7.7μmであり、特許文献3に記載の単分散微粒子の粒子径は大きい。このため特許文献3に記載の単分散微粒子と、他の樹脂とを材料として得られた成形体は、透明性に劣ることが推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開WO2000/27917パンフレット
【特許文献2】特公昭63−12884号公報
【特許文献3】特開2009−29965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、制電性に優れかつ、従来の制電性樹脂組成物よりも強度に優れる制電性樹脂組成物を提供することが可能な、グラフト重合体粒子を製造する方法および該製法により得られるグラフト重合体粒子を提供することを目的とする。
【0014】
また、制電性に優れ、かつ、従来の制電性樹脂組成物よりも強度に優れる、前記グラフト重合体粒子を含む制電性樹脂組成物、該組成物の製造方法および、前記グラフト重合体粒子または、制電性樹脂組成物から形成される成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の製造方法で得られたグラフト重合体粒子を含有する制電性樹脂組成物は、制電性に優れるだけでなく、従来の制電性樹脂組成物よりも優れた強度を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明のグラフト重合体粒子の製造方法は、少なくとも下記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体を重合し、ゴム状幹重合体を得る工程(A)と、ゴム状幹重合体の存在下で、少なくとも下記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、下記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体とを重合し、多段型ゴム状幹重合体を得る工程(B)と、前記多段型ゴム状幹重合体に、エチレン系不飽和単量体をグラフト重合し、グラフト重合体粒子を得る工程(C)とを有することを特徴とする。
【0017】
【化1】

(式(I)中、Rは炭素数2〜18の炭化水素基を示す。)
【0018】
【化2】

(式(II)中、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、mおよびnは、4≦m+n≦500を満たす整数である。)
前記工程(A)に用いる、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)が50質量%以上であることが好ましい。
【0019】
前記ゴム状幹重合体のガラス転移温度(Tg)が−120〜15℃であることが好ましい。
前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体が、エチレン系不飽和結合を分子内に一つあるいは二つ有することが好ましい。
【0020】
前記工程(A)に用いる、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をαとし、前記工程(B)に用いる、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の、前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をβとした際に、α>βであることが好ましい。
【0021】
前記工程(A)において、下記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体を、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたり、0〜20質量%用いることが好ましい。
【0022】
【化3】

(式(II)中、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、mおよびnは、4≦m+n≦500を満たす整数である。)
前記工程(A)に用いる、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をα’とし、前記工程(B)に用いる、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の、前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をβ’とした際に、α’<β’であることが好ましい。
【0023】
前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたり、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の使用量が40〜90質量%であり、式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の使用量が5〜40質量%であることが好ましい。
【0024】
前記工程(A)に用いる単量体、前記工程(B)に用いる単量体、および前記工程(C)に用いる単量体の合計100質量部あたり、前記工程(A)に用いる単量体が、5〜40質量部であり、前記工程(B)に用いる単量体が、20〜60質量部であり、前記工程(C)に用いる単量体が、10〜70質量部であることが好ましい。
【0025】
本発明のグラフト重合体粒子は、前記グラフト重合体粒子の製造方法により得られ、該粒子は制電性を有する。
本発明の制電性樹脂組成物は、前記グラフト重合体粒子を含有することを特徴とする。
【0026】
本発明の制電性樹脂組成物は、さらに熱可塑性樹脂を含有していてもよく、界面活性剤を含有していてもよい。
本発明の制電性樹脂組成物の一態様としては、前記グラフト重合体粒子5〜99質量部および熱可塑性樹脂1〜95質量部(ただし、グラフト重合体粒子および熱可塑性樹脂の合計を100質量部とする)を含有する態様が挙げられる。該態様においては、さらに界面活性剤0.01〜5質量部を含有することが好ましい。
【0027】
本発明の制電性樹脂組成物の別の態様としては、前記グラフト重合体粒子100質量部および界面活性剤0.01〜5質量部を含有する態様が挙げられる。
本発明の制電性樹脂組成物は、JIS:K7110に準拠して測定されるアイゾット(Izod)強度が3.0〜150kJ/m2であることが好ましい。
【0028】
本発明の成形体は、前記グラフト重合体粒子または、前記制電性樹脂組成物から形成される。
本発明のシートは、前記グラフト重合体粒子または、前記制電性樹脂組成物から形成される。
【0029】
本発明の制電性樹脂組成物の製造方法としては例えば、前記グラフト重合体粒子5〜99質量部および熱可塑性樹脂1〜95質量部(ただし、グラフト重合体粒子および熱可塑性樹脂の合計を100質量部とする)を混合する工程を有する方法、前記グラフト重合体粒子5〜99質量部、熱可塑性樹脂1〜95質量部および界面活性剤0.01〜5質量部(ただし、グラフト重合体粒子および熱可塑性樹脂の合計を100質量部とする)を混合する工程を有する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のグラフト重合体粒子の製造方法により得られるグラフト重合体粒子を含む、制電性樹脂組成物は、制電性に優れるだけでなく、従来の制電性樹脂組成物と比べ強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に本発明について具体的に説明する。
〔グラフト重合体粒子の製造方法〕
本発明のグラフト重合体粒子の製造方法は、少なくとも下記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体を重合し、ゴム状幹重合体を得る工程(A)と、ゴム状幹重合体の存在下で、少なくとも下記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、下記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体とを重合し、多段型ゴム状幹重合体を得る工程(B)と、前記多段型ゴム状幹重合体に、エチレン系不飽和単量体をグラフト重合し、グラフト重合体粒子を得る工程(C)とを有することを特徴とする。
【0032】
【化4】

(式(I)中、Rは炭素数2〜18の炭化水素基を示す。)
【0033】
【化5】

(式(II)中、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、mおよびnは、4≦m+n≦500を満たす整数である。)
以下、本発明のグラフト重合体粒子の製造方法における、用いる原料や、各工程について詳述する。
【0034】
(式(I)で表わされるアクリル酸エステル)
下記式(I)で表わされるアクリル酸エステルについて説明する。
【0035】
【化6】

(式(I)中、Rは炭素数2〜18の炭化水素基を示す。)
前記式(I)中、Rは炭素数2〜18の炭化水素基であり、好ましくは炭素数4〜8の炭化水素基である。前記炭化水素基は、飽和炭化水素基でもよく、不飽和炭化水素基でもよい。このような炭化水素基の具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。
【0036】
前記式(I)で表わされるアクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニルまたはアクリル酸デシルが挙げられる。前記式(I)で表わされるアクリル酸エステルは、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。前記式(I)で表わされるアクリル酸エステル単量体を使用すると、ゴム状幹重合体が耐熱性および耐候性に優れかつ、ガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向があり好ましい。
【0037】
(共役ジエン)
共役ジエンとしては、特に限定はないが、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン等が挙げられ、1,3−ブタジエンが好ましい。共役ジエンとしては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0038】
なお、後述する工程(A)においては、前述の式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体以外の単量体をさらに用いて、前述の式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と共重合を行うことが好ましい。
【0039】
式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体以外の単量体としては、式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体、架橋剤、その他の単量体が挙げられる。
【0040】
(式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体)
式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体としては、その分子中に下記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖を有し、かつエチレン系不飽和結合を有する単量体であればよい。式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖を有し、かつエチレン系不飽和結合を有する単量体としては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0041】
式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖を有する単量体を用いると、グラフト重合体粒子を含む制電性樹脂組成物の制電性に優れるため好ましい。
【0042】
【化7】

(式(II)中、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、mおよびnは、4≦m+n≦500を満たす整数である。)
【0043】
式(II)中、R2、R3の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。すなわち、式(II)中に、エチレンオキサイド基を有することが好ましい。また、式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド基が4個以上連続する、エチレンオキサイドブロックを有することがより好ましい。
【0044】
式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体が有する、エチレン系不飽和結合の数としては、特に限定はないが、エチレン系不飽和結合を分子内に一つあるいは二つ有することが好ましい。
【0045】
式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体として、エチレン系不飽和結合を二つ以上有する単量体を用いると、エチレン系不飽和結合を一つ有する単量体を用いた場合と比べて、グラフト重合体粒子を製造する際に発生する排水中の化学的酸素要求量(COD)を低減することができる。
【0046】
式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体が、エチレン系不飽和結合を分子内に一つ有する単量体である場合には、アルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体としては、下記式(III)または(IV)で表される単量体であることが好ましい。
【0047】
【化8】

(式(III)中、R1は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、フェニル基、−SO3Y、−SO2Y、−PO32、または下記式(a)で表わされる基を示し、Yは水素原子またはアルカリ金属を示し、R2、R3、mおよびnは、式(II)におけるR2、R3、mおよびnとそれぞれ同義である。)
【0048】
【化9】

(式(a)中、R4は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R5、R6、R7は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜9のアルキル基を示し、Yは水素原子またはアルカリ金属を示す。)
【0049】
【化10】

(式(IV)中、Zは水素原子、炭素数1〜40のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基または下記式(b)で表わされる基を示し、R2、R3、mおよびnは、式(II)におけるR2、R3、mおよびnとそれぞれ同義であり、R1およびXは、式(III)におけるR1およびXとそれぞれ同義である。)
【0050】
【化11】

(式(b)中、R8およびR9は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、pおよびqは、4≦p+q≦500を満たす整数であり、Xは式(III)におけるXと同義である。)
【0051】
前記式(b)中、R8、R9の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。すなわち、式(b)中に、エチレンオキサイド基を有することが好ましい。また、式(b)で表わされるアルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド基が4個以上連続する、エチレンオキサイドブロックを有することがより好ましい。
【0052】
式(III)、式(IV)で表わされる単量体の中でも、上述の式(II)と同様に、R2、R3の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。また、式(III)、式(IV)で表わされる単量体は、エチレンオキサイド基が4個以上連続する、エチレンオキサイドブロックを有することがより好ましい。
【0053】
式(II)、(III)および(IV)において、m+n、すなわちアルキレンオキサイド鎖が有するアルキレンオキサイド基の数は、4≦m+n≦500を満たす整数であり、6≦m+n≦50を満たす整数であることが好ましく、9≦m+n≦50を満たす整数であることがより好ましい。m+nが、4以上である場合には、グラフト重合体粒子を含有する制電性樹脂組成物の制電性に優れるため好ましい。また、m+nが500以下である場合には、式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の水等の溶媒への溶解性および重合性に優れるため好ましい。
【0054】
また、式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体として、前記式(III)で表わされる単量体と、式(IV)で表わされる単量体とを比べると、制電性樹脂組成物から形成される成形体の熱安定性の観点から、式(III)で表わされる単量体を用いることが好ましい。
【0055】
前記式(III)で表わされる単量体としては例えば、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートと、アクリレートとの両方を意味する。
【0056】
式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体が、エチレン系不飽和結合を分子内に二つ有する単量体である場合には、式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体としては、下記式(V)または(VI)で表される単量体であることが好ましい。
【0057】
【化12】

(式(V)中、R10およびR11は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2、R3、mおよびnは、式(II)におけるR2、R3、mおよびnとそれぞれ同義である。)
【0058】
【化13】

(式(VI)中、R12は、炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R13は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2、R3、mおよびnは、式(II)におけるR2、R3、mおよびnとそれぞれ同義であり、R10は、式(V)におけるR10と同義である。)
【0059】
式(V)、式(VI)で表わされる単量体の中でも、上述の式(II)と同様に、R2、R3の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。また、式(V)、式(VI)で表わされる単量体は、エチレンオキサイド基が4個以上連続する、エチレンオキサイドブロックを有することがより好ましい。
【0060】
式(V)および(VI)において、m+n、すなわちアルキレンオキサイド鎖が有するアルキレンオキサイド基の数は、4≦m+n≦500を満たす整数であり、6≦m+n≦50を満たす整数であることが好ましく、9≦m+n≦50を満たす整数であることがより好ましい。m+nが、4以上である場合には、グラフト重合体粒子を含有する制電性樹脂組成物の制電性に優れるため好ましい。また、m+nが500以下である場合には、式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の水等の溶媒への溶解性に優れ、かつ重合性に優れるため好ましい。
【0061】
また、式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体として、前記式(V)で表わされる単量体と、式(VI)で表わされる単量体とを比べると、重合性の観点から、式(V)で表わされる単量体を用いることが好ましい。
【0062】
(架橋剤)
架橋剤としては、例えばビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基等のエチレン系不飽和結合を2個以上有する多官能性不飽和単量体を使用することができる。前記架橋剤は1種単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
なお、本発明において、エチレン系不飽和結合が共役した単量体は、架橋剤には含めない。すなわち、共役ジエンは架橋剤には含めない。また、前述の式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体も架橋剤には含めない。
【0064】
架橋剤として用いることが可能な、多官能性不飽和単量体の具体例としては、アクリル酸アリル、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3―ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3―ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼンもしくはその誘導体、ジビニルナフタレンもしくはその誘導体、ジアリルフタレートもしくはその誘導体が挙げられる。これらの多官能性不飽和単量体の中でも、ジビニルベンゼンもしくはその誘導体、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリルが好ましい。
【0065】
(その他の単量体)
その他の単量体としては、例えばメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、不飽和ニトリル、芳香族ビニル、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、2−ヒドロキシエチルメタクリル酸エステル、ダイアセトンアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イタコン酸、イタコン酸アルキルエステル、イソブテン、2−アシッドホスフォキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスフォキシピロピルメタクリレート、スチレンスルホン酸ナトリウム等の単量体を用いることができる。前記その他の単量体は1種単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0066】
前記芳香族ビニルとしては、スチレン、ビニルナフタレン、2−イソプロピルナフタレン等が挙げられる。特にその他の単量体として、スチレンを用いることでゴム状幹重合体や多段型ゴム状幹重合体の屈折率を調整することができる。スチレンを用いた場合には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の屈折率と、ゴム状幹重合体や多段型ゴム状幹重合体の屈折率とがほぼ同様になるように調整することもできる。スチレンは廉価な単量体であり、ゴム状幹重合体や多段型ゴム状幹重合体の屈折率調整のために用いることが好ましい。PMMAの屈折率とほぼ同様になるように調製されたゴム状幹重合体や多段型ゴム状幹重合体を用いると、本発明のグラフト重合体粒子を、PMMAに混合することにより得られた制電性樹脂組成物は、両者の屈折率がほぼ同様であるため、透明性に優れる。
【0067】
<工程(A)>
本発明のグラフト重合体粒子の製造方法における、工程(A)とは、少なくとも前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体を重合し、ゴム状幹重合体を得る工程である。
【0068】
工程(A)においては、必須の単量体として、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体を用いるが、それ以外の単量体としては特に限定はなく、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体、架橋剤、その他の単量体を適宜用いることが好ましい。
【0069】
前記工程(A)に用いる、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)が50質量%以上であることが好ましい。すなわち工程(A)では、単量体として、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体のみを用いるか、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体に加えて、50質量%以下の範囲内でそれ以外の単量体を用いることが好ましい。前記範囲内では、グラフト重合体粒子を含む、制電性樹脂組成物の強度が特に優れるため好ましい。
【0070】
前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたり、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の使用量が0〜20質量%であることが好ましく、0〜15質量%であることがより好ましい。
【0071】
前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたり、前記架橋剤の使用量が0〜2質量%であることが好ましく、0〜1.5質量%であることがより好ましい。
また、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたり、前記その他の単量体の使用量が0〜40質量%であることが好ましい。
【0072】
前記範囲内では、グラフト重合体粒子を含む、制電性樹脂組成物の強度が特に優れるため好ましい。
工程(A)としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の様々な重合法を用いることが可能である。グラフト重合体粒子を、ナノサイズで効率よく製造する観点から、工程(A)は、乳化重合により、少なくとも前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体を重合し、ゴム状幹重合体を得る工程であることが好ましい。
【0073】
乳化重合としては、例えば重合用乳化剤の存在下で、従来公知の方法で行うことができる。工程(A)は必要に応じて、添加剤を使用することができる。
工程(A)としては、例えば、重合用乳化剤、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体、および水、必要に応じて、それ以外の単量体(前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体、架橋剤、その他の単量体)および添加剤を、反応容器に仕込み、乳化重合を行い、ゴム状幹重合体を得る工程が挙げられる。
【0074】
前記乳化重合を行う際の温度としては、通常0〜100℃であり、20〜90℃であることが好ましく、30〜80℃であることがより好ましい。温度が前記範囲であると温度制御のためのエネルギー消費を少なくすることができるので好ましい。
【0075】
重合用乳化剤の使用量は、工程(A)に用いる単量体を100質量%とすると、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲であることがより好ましい。
【0076】
なお、工程(A)に用いる単量体とは、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体、および必要に応じて用いられるそれ以外の単量体(前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体、架橋剤、その他の単量体)を示す。
【0077】
水の使用量は、工程(A)で用いる単量体を100質量%とすると、50〜9900質量%の範囲であることが好ましく、100〜1900質量%の範囲であることがより好ましい。
【0078】
このような量比で、工程(A)を行うと、乳化重合の際、ゴム状幹重合体の析出を低減することができ、また発熱を制御することができる点で好ましい。
なお、工程(A)を乳化重合により行うと、ゴム状幹重合体は該重合体のラテックスとして得られる。ゴム状幹重合体のラテックスは、通常はラテックスのまま工程(B)に用いられる。
【0079】
なお、別の態様としては、ゴム状幹重合体のラテックスからゴム状幹重合体を分離した後に、該重合体を工程(B)に用いてもよい。
なお、ゴム状幹重合体のラテックスの平均粒子径、すなわちゴム状幹重合体の平均粒子径は、20〜500nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。
以下工程(A)で用いる単量体以外の各成分について説明する。
【0080】
(重合用乳化剤)
重合用乳化剤としては特に限定はなく、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸(ジ)ナトリウム、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸(ジ)カリウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸(ジ)ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸(ジ)カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
これらの重合用乳化剤は他の工程(例えば工程(B)、(C))において使用してもよい。
【0081】
(添加剤)
上記以外に工程(A)で使用することが可能な添加剤としては、ラジカル重合開始剤、pH緩衝剤、連鎖移動剤などが挙げられる。これらの添加剤は他の工程(例えば工程(B)、(C))において使用してもよい。
【0082】
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。これらの中でも反応条件が穏やかであることから、レドックス系開始剤を用いることが好ましく、特にエチレンジアミンテトラ酢酸鉄、ホルムアルデヒドスルホキシレートおよびt−ブチルハイドロパーオキサイドを組み合わせた開始剤を用いることが好ましい。
【0083】
pH緩衝剤としては、ピロリン酸4ナトリウム、ピロリン酸2水素2ナトリウムなどが用いられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタンなどが挙げられる。連鎖移動剤の具体例としては、ノルマルオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタンが挙げられる。
【0084】
(ゴム状幹重合体)
工程(A)によりゴム状幹重合体が得られる。
なお、ゴム状とは、該重合体が室温(23℃)でゴム状態を示すことを意味し、該重合体のTgが室温(23℃)以下であることを意味する。
【0085】
工程(A)で得られたゴム状幹重合体を用いて後述の工程(B)および(C)を行うことにより、本発明の製造方法により得られるグラフト重合体粒子を含有する制電性樹脂組成物が、従来の制電性樹脂組成物と比べて強度に優れる。
【0086】
ゴム状幹重合体としては、ガラス転移温度(Tg)が−120〜15℃であることが好ましく、−120〜10℃であることがより好ましい。
なお、本発明において、ガラス転移温度とは、JIS:K7121に準拠した示差走査熱量測定(DSC)により求まるガラス転移温度である。
【0087】
<工程(B)>
本発明のグラフト重合体粒子の製造方法における、工程(B)とは、ゴム状幹重合体の存在下で、少なくとも前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体とを重合し、多段型ゴム状幹重合体を得る工程である。
【0088】
工程(B)は、ゴム状幹重合体の存在下で行われるが、該ゴム状幹重合体としては、前述のゴム状幹重合体が用いられる。
前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体としては、前述の式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体が用いられる。
【0089】
また、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体としては、前述の前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体が用いられる。
【0090】
また、工程(B)においては、前述の式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体とを用いるが、それ以外の単量体をさらに用いてもよい。
【0091】
式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体、および前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体以外の単量体としては、架橋剤、その他の単量体が挙げられる。
【0092】
架橋剤およびその他の単量体としては、前述のゴム状幹重合体を得るための単量体として記載した架橋剤およびその他の単量体が用いられる。
すなわち、工程(B)においては、必須の単量体として、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体、および前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体を用いるが、それ以外の単量体(前記架橋剤、その他の単量体)を適宜用いることが好ましい。
【0093】
前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたり、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の使用量が40〜90質量%であることが好ましく、45〜85質量%であることがより好ましい。前記範囲内では、グラフト重合体粒子を含む、制電性樹脂組成物の強度と制電性とのバランスに優れるため好ましい。
【0094】
前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたり、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の使用量が5〜40質量%であることが好ましく、8〜35質量%であることがより好ましい。前記範囲内では、グラフト重合体粒子を含む、制電性樹脂組成物の強度と制電性とのバランスに優れるため好ましい。
【0095】
前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたり、前記架橋剤の使用量が0〜2質量%であることが好ましく、0〜1.5質量%であることがより好ましい。
また、前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたり、前記その他の単量体の使用量が0〜40質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。
【0096】
本発明のグラフト重合体粒子の製造方法においては、前記工程(A)に用いる、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をαとし、前記工程(B)に用いる、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の、前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をβとした際に、α>βであることが好ましい。すなわち、工程(A)に用いる単量体の中で、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の占める割合は、工程(B)に用いる単量体の中で、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の占める割合よりも大きいことが好ましい。α>βであると、得られるグラフト重合体粒子の弾力性が向上する傾向があり、制電性樹脂組成物の強度が向上するため好ましい。
【0097】
また、本発明のグラフト重合体粒子の製造方法においては、前記工程(A)に用いる、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をα’とし、前記工程(B)に用いる、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の、前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をβ’とした際に、α’<β’であることが好ましい。すなわち、工程(A)に用いる単量体の中で、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の占める割合は、工程(B)に用いる単量体の中で、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の占める割合よりも小さいことが好ましい。α’<β’であると、制電性樹脂組成物の制電性が向上するため好ましい。
【0098】
なお、工程(B)に用いる単量体とは、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体とに加え、必要に応じて用いられるそれ以外の単量体(前記架橋剤、その他の単量体)を示す。
【0099】
工程(B)としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の様々な重合法を用いることが可能である。グラフト重合体粒子をナノサイズで効率よく製造する観点から、工程(B)は、乳化重合により、ゴム状幹重合体の存在下で、少なくとも前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体とを重合し、多段型ゴム状幹重合体を得る工程であることが好ましい。
【0100】
すなわち、工程(B)は、重合用乳化剤およびゴム状幹重合体の存在下で、少なくとも下記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体を乳化重合し、多段型ゴム状幹重合体のラテックスを得る工程であることが好ましい。
【0101】
工程(B)は、原料低減の観点から、工程(A)を行うことにより得られるゴム状幹重合体のラテックス、少なくとも下記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体、必要に応じて、それ以外の単量体(前記架橋剤、その他の単量体)、水、添加剤、重合用乳化剤を混合し、乳化重合を行い、多段型ゴム状幹重合体を得る工程であることが好ましい。
【0102】
なお、ゴム状幹重合体のラテックスとは、前記工程(A)を行った際に得られるゴム状幹重合体、工程(A)に用いた重合用乳化剤、水等を含んでいる。このため、工程(A)を行うことにより得られるゴム状幹重合体のラテックスと、少なくとも下記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、アルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体とを混合して、工程(B)を行う際には、あらたに重合用乳化剤、水、添加剤を混合することは必須の要件ではなく、任意に行うことができる。なお、反応時間を短縮する観点から、ラジカル重合開始剤については、工程(B)を行う際に、新たに用いることが好ましい。
【0103】
なお、工程(B)で用いることが可能な、重合用乳化剤および添加剤としては、前述の工程(A)で記載した重合用乳化剤および添加剤が用いられる。
前記乳化重合を行う際の温度としては、通常0〜100℃であり、20〜90℃であることが好ましく、30〜80℃であることがより好ましい。温度が前記範囲であると温度制御のためのエネルギー消費を少なくすることができるので好ましい。
【0104】
重合用乳化剤の使用量は、工程(B)に用いる単量体を100質量%とすると、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることがより好ましい。なお、重合用乳化剤の使用量とは、工程(A)を行うことにより得られるゴム状幹重合体のラテックスを工程(B)に用いる場合には、該ラテックス中に含まれる重合用乳化剤および必要に応じて新たに添加される重合用乳化剤の合計量を示す。
【0105】
なお、工程(B)を乳化重合により行うと、多段型ゴム状幹重合体は該重合体のラテックスとして得られる。多段型ゴム状幹重合体のラテックスは、通常ラテックスのまま工程(C)に用いられる。
【0106】
なお、多段型ゴム状幹重合体のラテックスの平均粒子径、すなわち多段型ゴム状幹重合体の平均粒子径は、30〜550nmであることが好ましく、40〜250nmであることがより好ましい。
【0107】
<工程(C)>
本発明のグラフト重合体粒子の製造方法における、工程(C)とは、前記多段型ゴム状幹重合体に、エチレン系不飽和単量体をグラフト重合し、グラフト重合体粒子を得る工程である。
【0108】
工程(C)は、原料低減の観点から、工程(B)を行うことにより得られる多段型ゴム状幹重合体のラテックス、エチレン系不飽和単量体、必要に応じて水、添加剤、重合用乳化剤を混合し、乳化重合を行い、グラフト重合体粒子を得る工程であることが好ましい。
【0109】
なお、多段型ゴム状幹重合体のラテックスとは、前記工程(B)を行った際に得られる多段型ゴム状幹重合体、工程(B)に用いた重合用乳化剤、水等を含んでいる。このため、工程(B)を行うことにより得られる多段型ゴム状幹重合体のラテックスと、エチレン系不飽和単量体とを混合して、工程(C)を行う際には、あらたに重合用乳化剤、水、添加剤を混合することは必須の要件ではなく、任意に行うことができる。なお、反応時間を短縮する観点から、ラジカル重合開始剤については、工程(C)を行う際に、新たに用いることが好ましい。
【0110】
なお、工程(C)で用いることが可能な、重合用乳化剤および添加剤としては、前述の工程(A)で記載した重合用乳化剤および添加剤が用いられる。
前記グラフト重合の温度は、通常0〜100℃であり、20〜90℃であることが好ましく、30〜80℃であることがより好ましい。
【0111】
重合用乳化剤の使用量は、工程(C)に用いる単量体を100質量%とすると、0.01〜12質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜10質量%の範囲であることがより好ましい。なお、重合用乳化剤の使用量とは、工程(B)を行うことにより得られる多段型ゴム状幹重合体のラテックスを工程(C)に用いる場合には、該ラテックス中に含まれる乳化剤および必要に応じて新たに添加される重合用乳化剤の合計量を示す。
【0112】
なお、本発明のグラフト重合体粒子の製造方法は、前記工程(A)に用いる単量体、前記工程(B)に用いる単量体、および前記工程(C)に用いる単量体の合計100質量部あたり、前記工程(A)に用いる単量体が、5〜40質量部であり、前記工程(B)に用いる単量体が、20〜60質量部であり、前記工程(C)に用いる単量体が、10〜70質量部であることが好ましく、前記工程(A)に用いる単量体が、10〜35質量部であり、前記工程(B)に用いる単量体が、25〜55質量部であり、前記工程(C)に用いる単量体が、15〜65質量部であることがより好ましい。
【0113】
前記範囲内では、グラフト重合体粒子を含む制電性組成物が強度および制電性に優れるため好ましい。
なお、工程(C)を乳化重合により行うと、グラフト重合体粒子は、該重合体粒子のラテックスとして得られる。例えば後述の工程(D)を行うことにより、グラフト重合体粒子のラテックスから、グラフト重合体粒子を分離することができる。
【0114】
なお、グラフト重合体粒子のラテックスの平均粒子径、すなわちグラフト重合体粒子の平均粒子径は、35〜600nmであることが好ましく、45〜300nmであることがより好ましい。
【0115】
前記工程(B)で得られた多段型ゴム状幹重合体にグラフト重合させるエチレン系不飽和単量体は、後述する熱可塑性樹脂との相溶性を高めることが可能な単量体であれば、公知の単量体を用いることができる。
【0116】
エチレン系不飽和単量体の具体例としては、スチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、酢酸ビニル、不飽和ニトリル、芳香族ビニル、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル、ジアセトンアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イタコン酸、イタコン酸アルキルエステル、イソブテン、2−アッシドホスフォキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アッシドホスフォキシプロピルメタクリレート、スチレンスルホン酸ナトリウムを挙げられる。これらの単量体は1種単独でも2種以上組み合わせても用いることができる。
【0117】
前記メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。前記不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。また、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0118】
これらのエチレン系不飽和単量体の中でも、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが好ましい。これらのエチレン系不飽和単量体を用いることにより、グラフト重合体粒子を含む制電性組成物が強度および制電性に優れるため好ましい。
【0119】
工程(C)を行うことにより、グラフト重合体粒子を得ることができるが、前述のように工程(C)では、通常グラフト重合体粒子は、該重合体粒子のラテックスとして得られる。グラフト重合体粒子のラテックスからグラフト重合体粒子を分離する方法としては特に限定はないが、例えば後述の工程(D)によって分離することができる。
【0120】
<工程(D)>
工程(D)は、前記工程(C)で得られた、グラフト重合体粒子のラテックスを塩析処理することにより、グラフト重合体粒子を得る工程である。
【0121】
ここで塩析処理とは、グラフト重合体粒子のラテックスに、塩化カルシウムなどの無機塩類を添加し、グラフト重合体粒子を凝析させることをいう。無機塩類の添加量は、凝析後に脱水して得られるろ液において、未凝析の重合体粒子に起因する白濁が観察されなくなる量を目安として適宜、決定される。ここで脱水とは、グラフト重合体粒子のラテックスを塩析処理して得られるものを、例えば、吸引ろ過等のろ過により、グラフト重合体粒子とろ液とに分離することをいう。
【0122】
工程(D)としては、例えば、前記工程(C)で得られたグラフト重合体粒子のラテックス中に、塩化カルシウム水溶液を添加することによって、グラフト重合体粒子を凝析させる工程が挙げられる。
【0123】
塩析処理の温度は、0〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。
また、グラフト重合体粒子のラテックスからグラフト重合体粒子を分離する方法としては、工程(D)以外の工程によって行ってもよく、工程(D)以外の工程としては、例えば前記工程(C)で得られた、グラフト重合体粒子のラテックスを酸析処理することにより、グラフト重合体粒子を得る工程が挙げられる。また、必要に応じて、塩析処理および酸析処理の両方の処理を行ってもよい。
【0124】
〔グラフト重合体粒子〕
本発明のグラフト重合体粒子は、上述の製造方法で得られることを特徴としている。
本発明のグラフト重合体粒子の構造は、多段型ゴム状幹重合体をコアとし、工程(C)で用いたエチレン系不飽和単量体に由来する重合体(重合体鎖)がシェルとなる、コア・シェル構造を有すると推定される。また、多段型ゴム状幹重合体は、ゴム状幹重合体をコアとし、工程(B)で用いた単量体に由来する重合体(重合体鎖)がシェルとなっていることが好ましい。
【0125】
本発明のグラフト重合体粒子を含有する制電性樹脂組成物は、従来の制電性樹脂組成物と比べて強度に優れるため好ましい。
本発明のグラフト重合体粒子は、制電性を有しているため、制電性樹脂として用いることができる。
【0126】
〔制電性樹脂組成物〕
本発明の制電性樹脂組成物は、前述のグラフト重合体粒子を含有することを特徴とする。
【0127】
本発明の制電性樹脂組成物は、グラフト重合体粒子を含有していればよく、それ以外の成分としては特に限定はない。
本発明の制電性樹脂組成物としては、以下の第一〜四の態様を例示することができる。制電性樹脂組成物の第一の態様としては、前述のグラフト重合体粒子および任意の添加剤を含有する制電性樹脂組成物が挙げられる。制電性樹脂組成物の第二の態様としては、前述のグラフト重合体粒子、該グラフト重合体粒子以外の熱可塑性樹脂、および任意の添加剤を含有する制電性樹脂組成物が挙げられる。制電性樹脂組成物の第三の態様としては、前述のグラフト重合体粒子、該グラフト重合体粒子以外の熱可塑性樹脂、界面活性剤、および任意の添加剤を含有する制電性樹脂組成物が挙げられる。制電性樹脂組成物の第四の態様としては、前述のグラフト重合体粒子、界面活性剤、および任意の添加剤を含有し、前記グラフト重合体粒子以外の熱可塑性樹脂を含有しない態様が挙げられる。
【0128】
本発明の制電性樹脂組成物は、界面活性剤を含有すると制電性が向上するため好ましい。
前記熱可塑性樹脂は、前記グラフト重合体粒子と相溶性の良い熱可塑性樹脂であれば特に制限されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂、ゴム強化スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、各種の熱可塑性エラストマー、液晶ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0129】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、芳香族ビニルポリマー、ニトリル樹脂、ポリメチルメタクリレートおよびその共重合体、ABS樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、弗素系樹脂が特に好ましい。
【0130】
前記界面活性剤としては、特に制限されるものではないが、アニオン系界面活性剤であることが好ましい。
アニオン系界面活性剤としては、公知のアニオン系界面活性剤を使用することができ、特に限定されない。アニオン系界面活性剤の具体例としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、コハク酸エステルスルホン酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、脂肪酸塩、脂肪族アルコール硫酸エステル塩が挙げられる。これらのアニオン系界面活性剤の中でも、成形時において分解または飛散等によって発生すると考えられる成形体のくもりまたは変色の抑制、ならびに得られる制電性樹脂組成物における制電性の低下防止という観点から、JIS:K7120に定める熱重量減少開始温度(以下「Tng」とも記す。)が250℃以上のアニオン系界面活性剤を使用するのが好ましい。このようなアニオン系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩が挙げられる。より具体的には、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム(Tng=460℃)、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム(Tng=435℃)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Tng=430℃)、ドデシルベンゼンスルホン酸ルビジウム(Tng=430℃)、ドデシルベンゼンスルホン酸セシウム(Tng=425℃)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(Tng=425℃)、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム(Tng=430℃)、ビストリフルオロメタンスルホンイミド塩等を挙げることができる。
【0131】
本発明の制電性樹脂組成物が第二および第三の態様の場合、グラフト重合体粒子の含有量は、グラフト重合体粒子および熱可塑性樹脂の合計を100質量部とすると、5〜99質量部であることが好ましく、5〜70質量部であることがより好ましく、5〜50質量部であることが特に好ましく、熱可塑性樹脂の含有量は、1〜95質量部であることが好ましく、30〜95質量部であることがより好ましく、50〜95質量部であることが特に好ましい。このような含有割合とすると、成形性、機械的特性および制電性とのバランスの点で好ましい。
【0132】
本発明の制電性樹脂組成物が第三の態様の場合、前記界面活性剤の含有量は、前記グラフト重合体粒子および前記熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜4質量部であることがより好ましく、0.1〜3質量部であることが特に好ましい。
【0133】
本発明の制電性樹脂組成物が第四の態様の場合、前記界面活性剤の含有量は、前記グラフト重合体粒子100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜4質量部であることがより好ましく、0.1〜3質量部であることが特に好ましい。
【0134】
前記界面活性剤の含有量が0.01質量部未満であると、制電性付与効果が小さくなる傾向があり、一方、5質量部を超えると、成形体表面へのブリードアウト等の問題が発生しやすくなる。
【0135】
本発明の制電性樹脂組成物は、上記成分(熱可塑性樹脂、界面活性剤)以外にも、必要に応じて紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、充填剤、染顔料などの添加剤を加えることができる。これらの添加剤の添加は、前記グラフト重合体粒子の重合時、前記グラフト重合体粒子と熱可塑性樹脂等との混合時、制電性樹脂組成物の成形時などの何れでもよい。
【0136】
また、本発明の制電性樹脂組成物は、有機溶媒に分散させて塗布型あるいはフィルム成形性の分散液とすることもできる。有機溶媒として、好ましくはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム等の含塩素化合物類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素化合物類が良い。また2種類以上の溶媒を混合して使用しても良い。
【0137】
分散液の濃度は特に限定されないが、分散液中の固形分濃度が、5〜60質量%、更には5〜30質量%であることが好ましい。
本発明の制電性樹脂組成物は制電性に優れる。本発明の制電性樹脂組成物は以下のような体積抵抗率および表面抵抗率を有することが好ましい。制電性樹脂組成物の体積抵抗率および表面抵抗率は、JIS:K6911に準じて、実施例に記載の方法で測定する。
【0138】
本発明の制電性樹脂組成物の体積抵抗率(JIS:K6911準拠)は、通常1×106〜1×1010Ωmであり、好ましくは1×106〜5×109Ωmであり、より好ましくは1×106〜3×109Ωmであり、特に好ましくは1×106Ωm以上1×109Ωm未満である。制電性樹脂組成物の体積抵抗率の下限は、通常1×106Ωmである。成形体の制電性が優れる体積抵抗率の範囲と、成形体の制電性は制電性樹脂組成物の体積抵抗率と相関があり、一般的に体積抵抗率が1×1010Ωm以下であれば成形体の制電性は優れており、1×109Ωm未満であれば成形体の制電性は特に優れている。
【0139】
また、本発明の制電性樹脂組成物の表面抵抗率(JIS:K6911準拠)は、通常1×106Ω/□以上1×1013Ω/□未満であり、好ましくは1×106以上1×1012Ω/□以下であり、特に好ましくは1×106Ω/□以上5×1011Ω/□未満である。制電性樹脂組成物の表面抵抗率の下限は、通常1×106Ω/□である。成形体の制電性は制電性樹脂組成物の表面抵抗率と相関があり、一般的に表面抵抗率が1×1012Ω/□以下であれば成形体の制電性は優れており、5×1011Ω/□未満であれば成形体の制電性は特に優れている。
【0140】
本発明の制電性樹脂組成物は強度に優れる。本発明の制電性樹脂組成物は以下のようなアイゾット(Izod)強度を有することが好ましい。制電性樹脂組成物のIzod強度は、JIS:K7110に準じて、実施例に記載の方法で測定する。
【0141】
本発明の制電性樹脂組成物のIzod強度(JIS:K7110準拠)は、好ましくは3.0〜150kJ/m2であり、より好ましくは3.5〜150kJ/m2であり、より好ましくは4.0〜150kJ/m2である。
【0142】
このようなIzod強度を有する制電性樹脂組成物は、該組成物から形成される成形体が強度に優れるため好ましい。
本発明の制電性樹脂組成物は、射出成型法、押出成形法、プレス成形法、圧縮成型法あるいは真空成形法等の通常の加工方法により、シート、フィルム、管、繊維、異形成形体、二色成形体等の任意の成形体に加工可能である。また該組成物が分散した有機溶媒分散液を使用して、刷毛塗り法、スプレー法、キャスト法、ロール法、あるいはスピン法等の通常の塗工方法により、任意の成形体表面に塗装可能である。
【0143】
〔制電性樹脂組成物の製造方法〕
本発明の制電性樹脂組成物の製造方法は、前述のグラフト重合体粒子を含有する制電性樹脂組成物が得られる製造方法であれば、特に限定されない。
【0144】
制電性樹脂組成物が前記第一の態様である場合、グラフト重合体粒子および任意の添加剤を混合する工程を有する製造方法が挙げられる。制電性樹脂組成物が前記第二の態様である場合、グラフト重合体粒子、熱可塑性樹脂および任意の添加剤を混合する工程を有する製造方法が挙げられる。制電性樹脂組成物が前記第三の態様である場合、グラフト重合体粒子、熱可塑性樹脂、界面活性剤および任意の添加剤を混合する工程を有する製造方法が挙げられる。制電性樹脂組成物が前記第四の態様である場合、熱可塑性樹脂を混合せず、グラフト重合体粒子、界面活性剤および任意の添加剤を混合する工程を有する製造方法が挙げられる。
【0145】
第二および第三の態様の制電性樹脂組成物を製造する場合、前記グラフト重合体粒子および前記熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、前記グラフト重合体粒子が、5〜99質量部であることが好ましく、5〜70質量部であることがより好ましく、5〜50質量部であることが特に好ましく、前記熱可塑性樹脂が、1〜95質量部であることが好ましく、30〜95質量部であることがより好ましく、50〜95質量部であることが特に好ましい。
【0146】
第三の態様の制電性樹脂組成物を製造する場合、前記グラフト重合体粒子および前記熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、前記界面活性剤を、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜4質量部、特に好ましくは0.1〜3質量部用いる。
【0147】
第四の態様の制電性樹脂組成物を製造する場合、前記グラフト重合体粒子100質量部に対して、前記界面活性剤を、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜4質量部、特に好ましくは0.1〜3質量部用いる。
このような製造方法により得られる制電性樹脂組成物は、制電特性の点で好ましい。
【0148】
〔成形体〕
本発明の成形体は、前記グラフト重合体粒子や、前記制電性樹脂組成物から形成される。該成形体は、後述する各種用途における部材等を構成することができる。
【0149】
本発明の成形体としては、前記グラフト重合体粒子や、前記制電性樹脂組成物から形成されるシート、フィルム、管、繊維、異形成形体、二色成形体等が挙げられる。中でも、前記グラフト重合体粒子や、前記制電性樹脂組成物から形成されるシートおよび、該シートを二次成形することにより得られる成形体が後述する各種用途に好適に用いることができる。
【0150】
本発明のシートは、OHPシート代替が可能な、印刷用シートとして好適に用いることができる。なお、OHPシートの代替として用いる印刷用シートとは、光を透過させて、そのシート表面の描写物をスクリーンに表示することが可能なシートである。
【0151】
このような印刷用シートとしては、厚さが、通常は50〜5000μmであり、好ましくは100〜700μmである。
また、このような印刷用シートは、光線透過率が85%以上(JIS:K7105準拠)であることが好ましく、電気的特性そして、通常は1×106〜1×1010Ωmの体積抵抗率と、1×106Ω/□以上1×1013Ω/□未満の表面抵抗率を有する。
【0152】
このような印刷用シートを得るために用いられる、前記制電性樹脂組成物としては、前記第一〜四の態様の制電性樹脂組成物を用いることができ、前記第三の態様の制電性樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0153】
なお、前記制電性樹脂組成物を用いたシートの製造方法としては、特に限定はないが、前記制電性樹脂組成物を、溶融押出成形法により、シート状に成形する方法が挙げられる。
【0154】
溶融押出成形としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ギヤポンプ等を用いて、溶融し、溶融状態の制電性樹脂組成物をTダイ等から押出すことにより、シートを製造する方法が挙げられる。なお、Tダイに代えて、マルチマニホールドダイ等を用いることにより、多層構造のシートとして、本発明のシートを製造してもよい。前記溶融は通常は100〜450℃で行われ、120〜430℃で行われることが好ましい。
【0155】
〔用途〕
本発明の前記グラフト重合体粒子や、前記制電性樹脂組成物は、エレクトロニクス製品、光学製品、家電製品、OA機器製品、半導体製造装置関連製品、フォトリソグラフィー関連製品、液晶・PDP・関連製品等の製造に用いることができる。
【0156】
本発明の成形体は、前記製品を構成する部材等に用いることができる。
上記製品の具体例としては、フォトリソグラフィーの原回路図を担うレチクル(Reticles)を保護するペリクル(Pellicles)からなるフォトマスクの防塵カバー、カラーフィルターケース、ウエハキャリア、ウエハカセット、トートビン、ウエハーボート、ICチップトレー、ICチップキャリア、IC搬送チューブ、ICカード、テープ、リールパッキング、各種ケース、保存用トレー、保存用ビン、軸受や搬送ローラー等の搬送装置部品、磁気カードリーダー、記録装置用転写ロール、転写ベルト、現像ロール、記録装置用転写ドラム、印刷用シート媒体(OHPシート代替等)、プリント回路基板カセット、ブッシュ、紙及び紙幣搬送部品、紙送りレール、フォントカートリッジ、インクリボンキャニスター、ガイドビン、トレー、ローラー、ギア、スプロケット、コンピュータ用ハウジング、モデムハウジング、モニターハウジング、CD−ROMハウジング、プリンターハウジング、コネクター、コンピュータースロット、携帯電話部品、ベーガー、各種摺動材、内装材、アンダーフード、電子電気機器ハウジング、ガスタンクキャップ、燃料フィルター、燃料ラインコネクター、燃料ラインクリップ、燃料タンク、機器ビージル、ドアハンドル、各種部品、電線及び電力ケーブル被覆材、電線支持体、電波吸収体、床材、カーペット、防虫シート、パレット、靴底、テープ、ブラシ、送風ファンなどが挙げられる。
【0157】
中でも、電気・電子機器等のハウジング(例えば、ハードディスクドライブ搬送パッケージング等)や収納容器の製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0158】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、本実施例において、「部」は、「質量部」意味する。
【0159】
(1)ラテックスの粒子径
ラテックスの平均粒子径は、Beckmann-Coulter社製、商品名コールターN4型粒子径測定機で測定した。
【0160】
(2)体積抵抗率および表面抵抗率
各実施例、比較例で作成した、体積抵抗率および表面抵抗率測定用サンプルを用いた。
JIS:K6911に準拠して、体積抵抗率および表面抵抗率測定用サンプルを温度23℃、湿度45%RHで3日間調湿して、極超絶縁計(東亜電波工業製、商品名SM−10E)で体積抵抗率(Ωm)および表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
成形体の制電性は材料組成物の体積抵抗率(Ωm)と相関があり、ここでは体積抵抗率が1010Ωm以下であれば、成形体は制電性に優れていると判定した。
【0161】
(3)Izod強度
各実施例、比較例で作成した、Izod強度測定用サンプルを用いた。
JIS:K7110に準拠して、Izod強度測定用サンプルを温度23℃、湿度50%RHで3日間調湿した後、振り子式衝撃試験機(東洋精機製)でIzod強度を測定した。ここではIzod強度が3.0kJ/m2以上であれば、Izod強度に優れていると判断した。
【0162】
〔実施例1〕
攪拌機、温度計、圧力計が装備された反応容器に、ゴム状幹重合体を得るための、一段目の反応(工程(A))の原料として、
アクリル酸ブチル 20.00部、
スチレン 4.95部、
メタクリル酸アリル 0,05部、
エチレンジアミンテトラ酢酸鉄(III)塩 0.005部、
ピロリン酸4ナトリウム 0.05部、
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.05部、
ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム 1.20部、
脱イオン水 280部、
を仕込み、窒素置換後さらに
ホルムアルデヒドスルホキシレート 0.04部、
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.04部、
を添加し、50℃で二時間攪拌した。
収率99%以上で、平均粒子径70nmのゴム状幹重合体のラテックスが得られた。
【0163】
上記ゴム状幹重合体のラテックス(固形分として25部)に、
多段型ゴム状幹重合体を得るための、二段目の反応(工程(B))の原料として、
アクリル酸ブチル 26.95部、
スチレン 5.45部、
メタクリル酸アリル 0.04部、
ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキサイド基が平均23個連なった、エチレンオキサイド鎖を有する) 7.60部、
ホルムアルデヒドスルホキシレート 0.06部、
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.06部、
脱イオン水 85部、
を添加し、50℃で二時間攪拌した。
収率99%以上で、平均粒子径86nmの多段型ゴム状幹重合体のラテックスが得られた。
【0164】
上記多段型ゴム状幹重合体のラテックス(固形分として65部)に、
グラフト重合体粒子を得るための、三段目の反応(工程(C))の原料として、
メタクリル酸メチル 33.15部、
アクリル酸ブチル 1.50部、
ノルマルオクチルメルカプタン 0.35部、
ホルムアルデヒドスルホキシレート 0.01部、
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.01部、
を添加して、窒素置換し、50℃で二時間グラフト共重合を行った。
収率99%以上で、平均粒子径102nmのグラフト重合体粒子のラテックスが得られた。
【0165】
このラテックスを70℃に加温した後、70℃の塩化カルシウム水溶液(濃度1重量%)500部に添加し、グラフト重合体粒子を析出させた。グラフト重合体粒子を、脱水洗浄した後、棚段式乾燥機を用いて60℃で15時間乾燥することにより、白色粉末のグラフト重合体粒子が得られた。
なお、前記収率とは、供給した単量体を100質量%とした際の、反応した単量体の量を示す。
【0166】
<体積抵抗率および表面抵抗率測定用サンプルの製造>
前記グラフト重合体粒子50部に、メタクリル樹脂(住友化学製、商品名スミペックスEX)50部と、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム1.0部とをヘンシェルミキサーにて混合した。次に混合して得られた粉末をシリンダー径20φの、異方向回転の平行二軸押出機(東洋精機製、商品名ラボプラストミル)でペレット化した。
【0167】
得られたペレットを射出成形機(東芝機械製、IS−80EPN)に平板金型(100L×100W×3t(mm))を取り付け、シリンダー温度220℃、金型温度40℃で成形し、成形体を得た。
【0168】
前記成形体を切削し、体積抵抗率および表面抵抗率測定用サンプル(50L×50W×3t(mm))を得た。
得られたサンプルは、体積抵抗率9×108Ωmを示し、表面抵抗率3×1011Ω/□を示した。
【0169】
<Izod強度測定用サンプルの製造>
前記体積抵抗率および表面抵抗率測定用サンプルを製造する際と同様の方法により成形体を得た。
【0170】
前記成形体を切削し、Izod強度測定用試験片(80L×10W×3t(mm))を得た。
前記Izod強度測定用試験片に、ノッチ半径r=0.25mmで深さ2mmのノッチを入れ、Izod強度測定用サンプルを得た。
得られたIzod強度測定用サンプルは、Izod強度4.2kJ/m2を示した。
【0171】
〔実施例2〜3〕
単量体の量を表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様に行った。
【0172】
〔比較例1、2〕
単量体の量を表1に示す量に変え、一段目の反応の次に、三段目の反応を行った以外は、実施例1と同様に行った。
【0173】
表1に、一段目〜三段目に用いた単量体および連鎖移動剤(ノルマルオクチルメルカプタン)の量(質量部)、α、β、α’、β’および、グラフト重合体粒子を含む制電性樹脂組成物の物性を示す。
【0174】
【表1】

表1中、
BAはアクリル酸ブチル、
STはスチレン、
M1はメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド基が平均23個連なった、エチレンオキサイド鎖を有する)、
D1はポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキサイド基が平均23個連なった、エチレンオキサイド鎖を有する)、
ALMAはメタクリル酸アリル、
MMAは、メタクリル酸メチル、
nOMはノルマルオクチルメルカプタン、
を示す。
【0175】
また、表1中αは、一段目に用いるアクリル酸ブチルの、一段目に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)であり、
βは、二段目に用いるアクリル酸ブチルの、二段目に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)であり、
α’は、一段目に用いるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の、一段目に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)であり、
β’は、二段目に用いるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、またはポリエチレングリコールジメタクリレート)の、二段目に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)である。
【0176】
また、表1に記載した通り、一段目のゴム状幹重合体のラテックスを減圧乾燥することにより得られたゴム状幹重合体の、JIS:K7121に準拠して測定したガラス転移温度(Tg)は、実施例1〜3が−40℃であり、比較例1、2が−38℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体を重合し、ゴム状幹重合体を得る工程(A)と、
ゴム状幹重合体の存在下で、少なくとも下記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、下記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体とを重合し、多段型ゴム状幹重合体を得る工程(B)と、
前記多段型ゴム状幹重合体に、エチレン系不飽和単量体をグラフト重合し、グラフト重合体粒子を得る工程(C)とを有することを特徴とするグラフト重合体粒子の製造方法。
【化1】

(式(I)中、Rは炭素数2〜18の炭化水素基を示す。)
【化2】

(式(II)中、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、mおよびnは、4≦m+n≦500を満たす整数である。)
【請求項2】
前記工程(A)に用いる、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)が50質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のグラフト重合体粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ゴム状幹重合体のガラス転移温度(Tg)が−120〜15℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のグラフト重合体粒子の製造方法。
【請求項4】
前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体が、エチレン系不飽和結合を分子内に一つあるいは二つ有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のグラフト重合体粒子の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A)に用いる、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をαとし、
前記工程(B)に用いる、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の、前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をβとした際に、α>βであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のグラフト重合体粒子の製造方法。
【請求項6】
前記工程(A)において、下記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体を、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたり、0〜20質量%用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のグラフト重合体粒子の製造方法。
【化3】

(式(II)中、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、mおよびnは、4≦m+n≦500を満たす整数である。)
【請求項7】
前記工程(A)に用いる、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の、前記工程(A)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をα’とし、
前記工程(B)に用いる、前記式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の、前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたりの使用量(質量%)をβ’とした際に、α’<β’であることを特徴とする請求項6に記載のグラフト重合体粒子の製造方法。
【請求項8】
前記工程(B)に用いる単量体100質量%あたり、前記式(I)で表されるアクリル酸エステルおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体の使用量が40〜90質量%であり、式(II)で表わされるアルキレンオキサイド鎖およびエチレン系不飽和結合を有する単量体の使用量が5〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のグラフト重合体粒子の製造方法。
【請求項9】
前記工程(A)に用いる単量体、前記工程(B)に用いる単量体、および前記工程(C)に用いる単量体の合計100質量部あたり、
前記工程(A)に用いる単量体が、5〜40質量部であり、
前記工程(B)に用いる単量体が、20〜60質量部であり、
前記工程(C)に用いる単量体が、10〜70質量部であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のグラフト重合体粒子の製造方法。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法により得られるグラフト重合体粒子。
【請求項11】
請求項10に記載のグラフト重合体粒子を含有することを特徴とする制電性樹脂組成物。
【請求項12】
さらに熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項11に記載の制電性樹脂組成物。
【請求項13】
さらに界面活性剤を含有することを特徴とする請求項11または12に記載の制電性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項10に記載のグラフト重合体粒子5〜99質量部および熱可塑性樹脂1〜95質量部(ただし、グラフト重合体粒子および熱可塑性樹脂の合計を100質量部とする)を含有することを特徴とする制電性樹脂組成物。
【請求項15】
さらに界面活性剤0.01〜5質量部を含有することを特徴とする請求項14に記載の制電性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項10に記載のグラフト重合体粒子100質量部および界面活性剤0.01〜5質量部を含有することを特徴とする制電性樹脂組成物。
【請求項17】
JIS:K7110に準拠して測定されるアイゾット(Izod)強度が3.0〜150kJ/m2であることを特徴とする請求項11〜16のいずれか一項に記載の制電性樹脂組成物。
【請求項18】
請求項10に記載のグラフト重合体粒子または、請求項11〜17のいずれか一項に記載の制電性樹脂組成物から形成される成形体。
【請求項19】
請求項10に記載のグラフト重合体粒子または、請求項11〜17のいずれか一項に記載の制電性樹脂組成物から形成されるシート。
【請求項20】
請求項10に記載のグラフト重合体粒子5〜99質量部および熱可塑性樹脂1〜95質量部(ただし、グラフト重合体粒子および熱可塑性樹脂の合計を100質量部とする)を混合する工程を有することを特徴とする制電性樹脂組成物の製造方法。
【請求項21】
請求項10に記載のグラフト重合体粒子5〜99質量部、熱可塑性樹脂1〜95質量部および界面活性剤0.01〜5質量部(ただし、グラフト重合体粒子および熱可塑性樹脂の合計を100質量部とする)を混合する工程を有することを特徴とする制電性樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−57928(P2011−57928A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211827(P2009−211827)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】