説明

グラフ編集型シミュレーション装置、グラフ編集型シミュレーションプログラム、及びプラント維持管理システム

【課題】プラントの運転負荷パターンを画面にグラフ表示して運転条件の変更による省エネ効果をリアルタイムに評価すること。
【解決手段】検索エンジン部102が、操作部11からシミュレーションを希望する日を含む特定の検索条件が入力された場合、運転履歴データベース130から検索条件を満足する運転負荷パターンを検索し、グラフ編集処理部103が、検索された運転負荷パターンを評価するデータ毎にベースグラフに編集し、ベースグラフを含む画面情報を生成して表示し、シミュレーション処理部106が、操作部11から画面情報に含まれる運転条件の変更指示が入力された場合、変更された運転条件に従ってプラント機器の動作をシミュレーションする。そして、グラフ編集処理部103は、シミュレーション処理部106のシミュレーションの結果に基づいて、ベースグラフの内容を更新し、更新されたベースグラフを含む画面情報を生成して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの運転負荷パターンを画面にグラフ表示して運転条件の変更による省エネ効果をリアルタイムに評価可能な、グラフ編集型シミュレーション装置、グラフ編集型シミュレーションプログラム、及びプラント維持管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラントの維持管理を目的として、プラント運転のメカニズム、プラント機器の性能や役割等を数式化したモデルをコンピュータに演算(シミュレーション)させ、演算結果に基づいてプラントの特性を解析し、発生し得る問題を事前に解決、訓練、又は評価する試みがなされるようになった。
【0003】
このようなシミュレーションシステムとして、特許文献1には、収集されたプラントデータから評価用の基準値を計算し、評価用の基準値に基づいて変動を評価してプラントの異常を検知する技術が開示されている。特許文献2には、プラント運転の現在の傾向と過去の傾向との比較、検討を容易に行うことができるように、両者のトレンドグラフを将来予測と共に重ね合わせ表示する技術が開示されている。特許文献3には、システム構成要素のひとつをシステム性能に影響を与えるボトルネックとし、性能に対する影響度を決定して対象変数に対する性能感度を解析する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−60110号公報
【特許文献2】特開2000−10620号公報
【特許文献3】特開2004−21600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プラント維持管理システムにおいて、省エネ運転を実現するためになされることは、機器の効率化や速度制御方式への代替が主であり比較的高価である。これに対して、従来のシミュレーションシステムは、機器の仕様や構成を変更することによりどの程度の省エネ効果が期待できるかを提示するだけの、いわゆる積み上げ方式によるものである。このため、従来のシミュレーションシステムによれば、目標を達成するためにはシミュレーションを繰り返し実行する必要があった。
【0006】
一方、過去データから需要を予測し、運転負荷パターンをシミュレーションする方法もある。しかしながら、このような方法では、運転条件の設定により結果がバッチ処理で出力されるため、何度か目標を定め、条件を再設定する操作を繰り返すことによって、最適な運転パターンが決まる。このため、このような方法によれば、最適な運転パターンが決まるまでに相当の時間を要し、操作上の手間も必要であると共に、シミュレーション結果を表示する画面の視認性が悪い。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、プラントの運転負荷パターンを画面にグラフ表示して運転条件の変更による省エネ効果をリアルタイムに評価可能な、グラフ編集型シミュレーション装置、グラフ編集型シミュレーションプログラム、及びプラント維持管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るグラフ編集型シミュレーション装置は、各種操作情報を入力する操作部と、プラント機器の過去の運転負荷パターンが所定期間分蓄積された運転履歴データベースと、前記操作部からシミュレーションを希望する日を含む特定の検索条件が入力された場合、前記運転履歴データベースから検索条件を満足する運転負荷パターンを検索する検索エンジン部と、前記検索エンジン部によって検索された運転負荷パターンを評価するデータ毎にベースグラフに編集し、前記ベースグラフを含む画面情報を生成して表示するグラフ編集処理部と、前記操作部から前記画面情報に含まれる運転条件の変更指示が入力された場合、変更された運転条件に従ってプラント機器の動作をシミュレーションするシミュレーション処理部と、を備え、前記グラフ編集処理部は、前記シミュレーション処理部のシミュレーションの結果に基づいて、前記ベースグラフの内容を更新し、更新されたベースグラフを含む画面情報を生成して表示する。
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るグラフ編集型シミュレーションプログラムは、シミュレーションを希望する日を含む特定の検索条件が入力された場合、プラント機器の過去の運転負荷パターンが所定期間分蓄積された運転履歴データベースから検索条件を満足する運転負荷パターンを検索する検索処理と、前記検索処理によって検索された運転負荷パターンを評価するデータ毎にベースグラフに編集し、前記ベースグラフを含む画面情報を生成して表示するグラフ編集処理と、前記画面情報に含まれる運転条件の変更指示が入力された場合、変更された運転条件に従ってプラント機器の動作をシミュレーションするシミュレーション処理と、をコンピュータに実行させ、前記グラフ編集処理は、前記シミュレーション処理のシミュレーションの結果に基づいて、前記ベースグラフの内容を更新し、更新されたベースグラフを含む画面情報を生成して表示する処理を含む。
【0010】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るプラント維持管理システムは、機場毎に設置される水槽設備を含むプラント機器と、電気通信回線を介して前記プラント機器に接続され、該プラント設備を統合管理する監視サーバと、本発明に係るグラフ編集型シミュレーション装置とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るグラフ編集型シミュレーション装置、グラフ編集型シミュレーションプログラム、及びプラント維持管理システムによれば、プラントの運転負荷パターンを画面にグラフ表示して運転条件の変更による省エネ効果をリアルタイムに評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるグラフ編集型シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す運転履歴DBのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】図3は、図1に示すグラフ編集型シミュレーション装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、検索画面の一例を示す図である。
【図5】図5は、検索結果の一例を示す図である。
【図6】図6は、ポンプ運転シミュレーション表示画面の一例を示す図である。
【図7】図7は、ポンプ運転状況表示画面の一例を示す図である。
【図8】図8は、ポンプ運転シミュレーション表示画面の一例を示す図である。
【図9】図9は、ポンプ運転シミュレーション表示画面の一例を示す図である。
【図10】図10は、ポンプ運転状況表示画面の一例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態であるプラント維持管理システムの構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態であるプラント維持管理システムの水槽設備の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるグラフ編集型シミュレーション装置の構成及び動作について説明する。
【0014】
〔グラフ編集型シミュレーション装置の構成〕
図1は、本発明の一実施形態であるグラフ編集型シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明の一実施形態であるグラフ編集型シミュレーション装置1は、PC(Personal Computer)やワークステーション等の情報処理装置によって構成され、制御部10、操作部11、表示部12、及び記憶部13を主な構成要素として備えている。
【0015】
制御部10は、記憶部13に格納されているコンピュータプログラムに基づいて処理を実行するCPU等の演算処理装置であり、コンピュータプログラムに記述された手順に従って後述する処理を実行する。すなわち、制御部10は、記憶部13に格納されているOS(オペレーティングシステム)や本発明に係るグラフ編集型シミュレーションプログラムを含むアプリケーションプログラム等のコンピュータプログラムから命令コードを順次読み込んで処理を実行する。
【0016】
操作部11は、例えば、電源キー、通話キー、数字キー、文字キー、方向キー、決定キー、発信キー、ファンクションキー等、各種の機能が割り当てられたキー、あるいはマウス等のポインティングデバイスを有している。操作部11は、これらのキー、あるいはマウスがユーザによって操作された場合に、その操作内容に対応する信号を発生し、これをユーザの指示として制御部10に出力する。
【0017】
表示部12は、多数の画素(複数色の発光素子の組み合わせ)を縦横に配して構成される、例えばLCD(Liquid Crystal Display Device)や有機EL(Electro-Luminescence)を用いて構成される。表示部12は、制御部10により生成され、記憶部13の所定の領域(VRAM領域)に描画された表示対象データに応じた画像を表示する。
【0018】
記憶部13は、上記したコンピュータプログラムの他に各種データを記憶する。例えば、記憶部13には、過去の運転負荷パターンが所定期間分蓄積される運転履歴DB(Data Base)130等のデータが所定の領域に割り当てられ格納される。運転履歴DB130のデータ構造の一例を図2に示す。図2に示されるように、運転履歴DB130には、日付、曜日毎の、天気、平均気温、最高気温、最低気温、場所、年間流入水量、月間流入水量、日間平均流入水量等の各データフィールドで構成される運転負荷パターンが格納されている。運転履歴DB130は、グラフ編集型シミュレーション支援装置1が内蔵する記憶部13に構築してもよいが、ネットワーク接続される図示しないDBサーバに構築されるDBを使用してもよい。記憶部13は、例えば、不揮発性の記憶デバイス(不揮発性半導体メモリ、ハードディスク装置、光ディスク装置等)やランダムアクセス可能な記憶デバイス(例えばSRAM、DRAM)等によって構成される。
【0019】
制御部10は、シミュレーションを希望する日を含む特定の検索条件が入力されたときに、運転履歴DB130を検索して得られる運転負荷パターンを評価に必要なパラメータ毎にベースグラフに編集し、ベースグラフを含む画面情報を生成して表示すると共に、画面情報に含まれる運転条件の変更指示があったときに、シミュレーションを行いベースグラフの内容を変更するグラフ編集型シミュレーションプログラムを実行する。
【0020】
制御部10が実行するグラフ編集型シミュレーションプログラムが有する構造は、主制御部100と、検索条件入力取得部101と、検索エンジン部102と、グラフ編集処理部103と、描画・表示制御部104と、変更入力取得部105と、シミュレーション処理部106と、計測情報取得部107と、ニューラルネットワーク処理部108と、省エネ評価部109、とに機能展開される。
【0021】
検索条件入力取得部101は、操作部11が操作されることによりシミュレーションを希望する日を含む特定の検索条件を取り込み、検索エンジン部102へ出力する。検索エンジン部102は、検索条件入力取得部101から転送された特定の検索条件に基づき、記憶部13の一部領域に構築された運転履歴DB130を検索し、その結果をグラフ編集処理部103に転送する。
【0022】
グラフ編集処理部103は、検索エンジン部102により検索出力された過去の類似運転パターンをグラフに編集して描画・表示制御部104へ出力する。描画・表示処理部104は、グラフ編集処理部103により生成されるグラフ等からなる画面情報を図示しないVRAM(Video RAM)領域に描画し、表示部12の表示タイミングに同期してその画面情報を読み出して表示部12に表示する。グラフ編集処理部103により生成される画面情報の中には、後述するように、運転条件の変更を行うときに操作部11によりドラッグ操作されるポンプ運転状況画面が含まれる。このポンプ運転状況画面では、ドラッグ操作を容易にするために、運転ポンプが1台毎に正方形状のアイコンで表示されている。グラフ編集処理部103は、このベースグラフを表示するにあたり、プラントにおける電力量、流入水量、水位、危険水位、のうちの少なくとも一つ、又はその組み合わせを時間軸上に表現する。
【0023】
変更入力取得部105は、操作部11のドラッグ&ドロップ操作により表示画面情報に含まれる運転条件の変更指示を検知してシミュレーション処理部106によるシミュレーションを起動する。シミュレーション処理部106は、検索エンジン部102により検索された過去の類似した運転負荷パターンに基づき、検索条件にマッチする、例えば、プラントにおける電力量、流入水量、水位、危険水位(以下、パラメータという)を、例えば、回帰分析や共分散構造分析という重解析等の統計的手法により定量的に予測演算する機能を有する。運転条件の変更指示があった場合、グラフ編集処理部103は、シミュレーション処理部106によるシミュレーションの結果に基づき、先に表示部12に表示されたベースグラフの内容を更新する。
【0024】
計測情報取得部107は、運転履歴DB130からプラント内の実計測情報を取得してニューラルネットワーク処理部108へ供給する。ニューラルネットワーク処理部108は、シミュレーション処理部106によるシミュレーションの結果を計測情報取得部107経由で取得した実計測情報に基づき学習し、補正してグラフ編集処理部103へ供給する機能を有する。
【0025】
省エネ評価部109は、操作部11によるドラッグ&ドロップ操作により、ポンプ運転台数を減じたときの省電力量と、高水位運転したときの省電力量とを合算して省エネ期待量を計算する機能を有し、ここで計算された省エネ期待値は必要に応じて描画・表示制御部105へ転送され、表示部12に表示される。
【0026】
主制御部100は、制御部10が、シミュレーションを希望する日を含む特定の検索条件が入力されたときに、運転履歴DB130を検索して得られる運転負荷パターンを評価に必要なパラメータ毎にシミュレーションし、そのシミュレーション結果をパラメータ毎にベースグラフに編集し、ベースグラフを含む画面情報を生成して表示すると共に、画面情報に含まれる運転条件の変更指示があったときに、シミュレーションを行いベースグラフの内容を変更する機能を実現するために、上記した検索条件入力取得部101、検索エンジン部102、グラフ編集処理部103、描画・表示処理部104、変更入力取得部105、シミュレーション処理部106、計測情報取得部107、ニューラルネットワーク処理部108、省エネ評価部109のシーケンス制御を行う。
【0027】
制御部10において、各ブロック間の接続は、実際のハードウエア構成における各構成要素間の物理的な接続関係を示すものではなく、各ブロック間の主な信号の流れを示すものである。
【0028】
〔グラフ編集型シミュレーション装置の動作〕
次に、図3のフローチャートを参照しながら、本発明の一実施形態であるグラフ編集型シミュレーション装置1の動作について詳細に説明する。ここでは、プラントの運転負荷パターンとして、図12に示す下水処理場の水槽設備400に設置される3基の原水ポンプ401の運転負荷パターンを例示して説明する。
【0029】
3基の原水ポンプ401の運転負荷パターンを評価する際は、始めに、オペレータが、操作部11を操作することにより、図4に示すような検索画面G1に、沈砂池の場所,検索対象期間(開始終了月日),曜日,タイプ(平日,休日,週明けの種別),天候と気温,前日の天候と気温、及び汚水の流入量を検索条件として入力し、検索実行ボタンB1をクリック操作する。検索実行ボタンB1がクリック操作されると、制御部10は、操作部11による検索要求ありと判断し(ステップS101“YES”)、検索条件入力取得部101がこの検索条件を取り込み(ステップS102)、検索エンジン部102へ供給する。
【0030】
これを受けて検索エンジン部102では、記憶部13に構築された運転履歴DB130を検索することにより(ステップS103)、対象日に近い運転負荷パターンがあれば(ステップS104“YES”)、そのうちの最も近い過去データを読み出してグラフ編集処理部103に出力する。より具体的には、検索エンジン部102は、図5に示すように、検索条件に一致する運転負荷パターンの一覧を示す表示画面G2を表示する。そして、オペレータが表示画面G2の中から所望の運転負荷パターンを選択し、シミュレーションボタンB3をクリック操作すると、グラフ編集処理部103が、選択された運転負荷パターンを用いて図6に示すポンプ運転シミュレーション表示画面G3及び図7に示すポンプ運転状況表示画面G4を生成し、描画・表示制御部104を介して表示部12に表示する(ステップS105)。図6に示されるように、ポンプ運転シミュレーション表示画面G3は、プラントにおける汚水の流入量,吐出量,危険水位,水位,電力量等のパラメータの組み合せが時間軸上に展開され画面情報として表示される。図7に示されるように、ポンプ運転状況表示画面G4は、ポンプ運転台数が時間軸上に展開され画面情報として表示される。なお、検索画面G1中の流入量予測ボタンB2がクリック操作された場合、検索エンジン部102は、検索された各運転負荷パターンにおける汚水の流入量を予測し、予測された流入量が検索条件において指定された汚水の流入量の条件を満たす運転負荷パターンを選択する。
【0031】
オペレータは、操作部11を操作することによって図6に示すポンプ運転シミュレーション表示画面G3及び図7に示すポンプ運転状況表示画面G4における編集部内の情報を変更操作することで、運転条件の変更による運転負荷パターンのシミュレーションが可能である。すなわち、図8に示されるように、オペレータがドラッグ操作により、ポンプ運転シミュレーション表示画面G5の編集部の領域R1における汚水の吐出量を図6に示す状態から低下させると(ステップS106“YES”)、変更入力取得部105は、これを検知することにより、シミュレーション処理部106による運転負荷パターンのシミュレーション処理を起動する。その結果、図8に示されるように、表示部の領域R2における汚水の吐出量及び水位がそれぞれ低下及び上昇し、表示部の領域R3における電力量が低下するようにグラフの内容が変化する。これは、シミュレーション処理部106よる予測演算の結果であり、グラフ編集処理部103は、シュレーション処理部106から取得したシミュレーション結果をグラフに再編集する。グラフ編集処理部103は、画面情報を更新して描画・表示制御部104へ出力することにより、表示部12に、図8に示すポンプ運転シミュレーション表示画面G5を表示する。なお、汚水の吐出量が変更操作された場合、シミュレーション処理部106は、汚水の吐出量の変更に伴う汚水の水位の変化量を算出し、汚水の水位に対応するポンプの吐出量を読み出し、読み出されたポンプの吐出量に対応するポンプの電力量を読み出し、読み出されたポンプの吐出量から変更された吐出量に必要なポンプの運転台数を算出し、ポンプの吐出量の合計値から汚水の吐出量及び汚水の水位の変化量を再計算する。
【0032】
また、図10に示されるように、オペレータがドラッグ操作により、ポンプ運転状況表示画面7の編集部内の領域R4におけるポンプの運転台数を増やして夜間電力を活用してポンプの負荷を分散させると(ステップS106“YES”)、変更入力取得部105は、これを検知することにより、シミュレーション処理部106による運転負荷パターンのシミュレーション処理を起動する。その結果、図9に示されるように、ポンプ運転シミュレーション表示画面G6の表示部の領域R5における電力量が低下するようにグラフの内容が変化する。これは、シミュレーション処理部106よる予測演算の結果であり、グラフ編集処理部103は、シュレーション処理部106から取得したシミュレーション結果をグラフに再編集する。グラフ編集処理部103は、画面情報を更新して描画・表示制御部104へ出力することにより、表示部12に、図9に示すポンプ運転シミュレーション表示画面G6を表示する。
【0033】
また、図10に示されるように、オペレータがドラッグ操作により、ポンプ運転状況表示画面7の編集部内の領域R6におけるポンプの運転台数を調整してポンプの負荷分散運転による契約電力の引き下げ及び高水位運転によるポンプ効率の引き上げを行うと(ステップS106“YES”)、変更入力取得部105は、これを検知することにより、シミュレーション処理部106による運転パターンのシミュレーション処理を起動する。その結果、図9に示されるように、ポンプ運転シミュレーション表示画面G6の表示部の領域R7における汚水の水位及び電力量がそれぞれ上昇及び低下するようにグラフの内容が変化する。これは、シミュレーション処理部106よる予測演算の結果であり、グラフ編集処理部103は、シュレーション処理部106から取得したシミュレーション結果をグラフに再編集する。グラフ編集処理部103は、画面情報を更新して描画・表示制御部104へ出力することにより、表示部12に、図9に示すポンプ運転シミュレーション表示画面G6を表示する。
【0034】
なお、図6に示すポンプ運転シミュレーション表示画面G3内のニューラルネットワークメニューM1がONに設定されている場合、ニュートラルネットワーク処理部108は、シミュレーション処理部106によるシミュレーションの結果を計測情報取得部107経由で取得した実計測情報に基づき学習し、補正してグラフ編集処理部103へ供給する(ステップS108)。グラフ編集処理部103では、補正されたシミュレーション結果をグラフデータに再編集することにより画面情報を更新して描画・表示制御部104へ出力することにより、表示部12にグラフを含む画面が表示される。
【0035】
このように、ドラッグ&ドロップ操作により運転条件を変更することで、関係する他のグラフ線もシミュレーションにより同時にリアルタイムに変化するため、目標を再設定するための手間が省け、かつ、グラフで運転負荷パターンが表示されるため視認性が向上する。このように、オペレータは、ポンプ台数減運転によりどの時刻まで高水位運転が可能であるかが見た目で判断でき、ポンプの運転台数を減らした時間の省電力と高水位転した省電力との合算が省エネ期待量として理解することができる。
【0036】
なお、省エネ評価部109では、操作部11によるドラッグ操作により、ポンプ運転台数を減じたときの省電力量と、高水位運転したときの省電力量とを合算して省エネ期待量を計算し、ここで計算された省エネ期待値は描画・表示制御部105へ転送され、表示部12に表示される(ステップS109)。このように、省エネ評価部109で省エネ期待量が自動計算され必要に応じて表示部12に表示されるため、運転と省エネ効果との目視評価のための手間を省くことができる。
【0037】
本発明の実施形態に係るグラフ編集型シミュレーション装置1によれば、画面情報に含まれる運転条件の変更指示があったときに、シミュレーションの結果を取得してベースグラフの内容を変更することで、運転条件の変更によるシミュレーションの結果が他の関係するグラフ線と共に同時にリアルタイムに表示されるため、シミュレーションの結果が出るまでの時間が短縮され、目標再設定のための操作上の手間も省け、視認性も向上する。
【0038】
また、ニューラルネットワークによりシミュレーションの結果が最適化されるため、評価結果の信頼性が向上し、更に、ドラッグ操作により、ポンプ運転台数を減じたときの省電力量と、高水位運転したときの省電力量とを合算して省エネ期待量を計算して表示することにより、評価のための手間を省くことができる。
【0039】
なお、本発明のグラフ編集型シミュレーションプログラムは、プラント機器の運転負荷パターンを画面上にグラフで表示して省エネ効果を評価するグラフ編集型シミュレーション装置のコンピュータ上で実行されるグラフ編集型シミュレーションプログラムであって、例えば、図3のフローチャートに示されるように、シミュレーションを希望する日を含む特定の検索条件が入力されたときに、過去の運転負荷パターンが所定期間分蓄積された運転履歴データベースを検索する検索処理(ステップS101〜S103)と、前記検索処理により得られる運転負荷パターンを評価に必要なパラメータ毎にベースグラフに編集し、前記ベースグラフを含む画面情報を生成して表示すると共に、前記画面情報に含まれる運転条件の変更指示があったときにシミュレーションを行い、前記シミュレーションの結果に基づき前記表示されたベースグラフの内容を更新して表示するグラフ編集処理(ステップS104〜S109)と、を実行させるものである。
【0040】
(プラント維持管理システム)
図11は、本発明の一実施形態であるグラフ編集型シミュレーション装置1をプラント維持管理システム200に適用した場合のシステム構成の一例を示した図である。産業用プロセスとして、例えば、給水システムを例示すると、機場には、水槽設備である設備#1、#2等の複数設備が設置されている。各設備には、水位センサやバルブ調節器等の、所謂、現場機器が含まれ、これら現場機器は、設備毎に割り当てられた通信装置と称されるデータ収集装置301〜304と1対1に通信可能に接続される。この接続は、RS485等のシリアルデータ通信路により接続される。
【0041】
各現場機器での測定データは、監視装置210、212に送信するのとは別に、上記した通信装置301〜304にも送信される。全ての通信装置301〜304は、本発明の一実施形態であるグラフ編集型シミュレーション装置1とも通信可能に接続され、この接続は、例えば、イーサネット(登録商標)等によるLAN(Local Area Network)接続による。通信装置301〜304にバッファリングされた測定データを含む運転データは、LAN経由で不図示のDBサーバにファイル形式で蓄積される。グラフ編集型シミュレーション装置1は、このDBサーバに蓄積された運転履歴を参照してプラントの運転状況をシミュレーションし、ここでシミュレーションされた内容は、必要に応じてLAN200経由で、クライアント端末202、204や中央監視サーバ206により適宜アクセスされる。このプラント維持管理システム200によれば、運転条件の変更が機場毎に設置された水槽設備を含むプラント機器毎にリアルタイムに反映されるため、プラント全体の評価にかける負担が軽減され、維持管理が容易になる。
【0042】
なお、クライアント端末202、204に、本発明のグラフ編集型シミュレーションプログラムをインストールして、プラント機器の各運転負荷パターンを画面上にグラフで表示して省エネ効果を評価しても良い。
【0043】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
1 グラフ編集型シミュレーション装置
10 制御部
11 操作部
12 表示部
13 記憶部
14 センサ等
100 主制御部
101 検索条件入力取得部
102 検索エンジン部
103 グラフ編集処理部
104 描画・表示制御部
105 変更入力取得部
106 シミュレーション処理部
107 計測情報取得部
108 ニューラルネットワーク処理部
109 省エネ評価部
130 運転履歴DB
200 プラント維持管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種操作情報を入力する操作部と、
プラント機器の過去の運転負荷パターンが所定期間分蓄積された運転履歴データベースと、
前記操作部からシミュレーションを希望する日を含む特定の検索条件が入力された場合、前記運転履歴データベースから検索条件を満足する運転負荷パターンを検索する検索エンジン部と、
前記検索エンジン部によって検索された運転負荷パターンを評価するデータ毎にベースグラフに編集し、前記ベースグラフを含む画面情報を生成して表示するグラフ編集処理部と、
前記操作部から前記画面情報に含まれる運転条件の変更指示が入力された場合、変更された運転条件に従ってプラント機器の動作をシミュレーションするシミュレーション処理部と、
を備え、
前記グラフ編集処理部は、前記シミュレーション処理部のシミュレーションの結果に基づいて、前記ベースグラフの内容を更新し、更新されたベースグラフを含む画面情報を生成して表示すること
を特徴とするグラフ編集型シミュレーション装置。
【請求項2】
前記シミュレーション処理部のシミュレーションの結果を、外部から取得した前記プラントの実計測情報に基づいて学習、補正し、補正されたシミュレーションの結果を前記グラフ編集処理部へ供給するニューラルネットワーク部を備えることを特徴とする請求項1に記載のグラフ編集型シミュレーション装置。
【請求項3】
前記グラフ編集処理部により生成される画面情報の中には、前記運転条件の変更を行うときに前記操作部によりドラッグ操作されるポンプ運転台数パターンが含まれ、前記グラフ編集処理部は、前記ベースグラフを表示するにあたり、前記プラントにおける電力量、流入水量、水位、及び危険水位のうちの少なくとも一つ、又はその組み合わせを前記パラメータとして時間軸上に表現することを特徴とする請求項1又は2に記載のグラフ編集型シミュレーション装置。
【請求項4】
前記操作部によるドラッグ操作により、前記ポンプ運転台数を減じたときの省電力量と、高水位運転したときの省電力量とを合算して省エネ期待量を計算し、前記表示部に表示する省エネ評価部を備えたことを特徴とする請求項3に記載のグラフ編集型シミュレーション装置。
【請求項5】
シミュレーションを希望する日を含む特定の検索条件が入力された場合、プラント機器の過去の運転負荷パターンが所定期間分蓄積された運転履歴データベースから検索条件を満足する運転負荷パターンを検索する検索処理と、
前記検索処理によって検索された運転負荷パターンを評価するデータ毎にベースグラフに編集し、前記ベースグラフを含む画面情報を生成して表示するグラフ編集処理と、
前記画面情報に含まれる運転条件の変更指示が入力された場合、変更された運転条件に従ってプラント機器の動作をシミュレーションするシミュレーション処理と、
をコンピュータに実行させ、
前記グラフ編集処理は、前記シミュレーション処理のシミュレーションの結果に基づいて、前記ベースグラフの内容を更新し、更新されたベースグラフを含む画面情報を生成して表示する処理を含むこと
を特徴とするグラフ編集型シミュレーションプログラム。
【請求項6】
機場毎に設置される水槽設備を含むプラント機器と、電気通信回線を介して前記プラント機器に接続され、該プラント設備を統合管理する監視サーバと、請求項1〜4のうち、いずれか1項に記載のグラフ編集型シミュレーション装置とを備えることを特徴とするプラント維持管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−222002(P2011−222002A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64887(P2011−64887)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】