説明

グラフ表示制御装置およびプログラム

【課題】ユーザが拡大表示するべきか否かを判断する必要なく、グラフの特徴点をいつでも明確に表示することが可能になるグラフ表示制御装置を提供する。
【解決手段】ユーザ任意のグラフ式に応じたグラフがドットマトリクス型の表示画面に表示され、交点、極大点、極小点など、何れかの特徴点の求解が指示されると、指示された特徴点が演算されてポインタPにより表示されると共にその座標(X,Y)が表示される。そして、前記グラフの特徴点およびその直近(近傍)のグラフ表示ドットに対し、重なったり接触したりする他のグラフが有るか否かを条件として、当該特徴点付近のグラフ軌跡が不明確な表示か否かが判断される。この不明確な条件に当て嵌まった場合には、当該条件に当て嵌まらなくなるまで、ユーザ設定された拡大率により、前記特徴点を含むグラフが繰り返し拡大されて表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のグラフを共に表示させるためのグラフ表示制御装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、関数電卓等の電子式計算機のなかには、ユーザが入力した数式に対応するグラフを表示する機能を有する、いわゆるグラフ関数電卓と呼ばれるものが知られている。
【0003】
例えば、ユーザが入力キーを操作して関数式を入力し、グラフ描画を操作すると、グラフ関数電卓は直交座標軸とグラフを描画して表示する。そして、グラフの極大値・極小値、グラフ同士の交点など、特徴的な点(求解点)を求め、その位置や値を表示する機能(求解処理)が知られている。
【0004】
しかし、このようなグラフ関数電卓では、(1)画面が小さいこと、(2)ドットマトリクス表示などで解像度が低いことなどにより、求解点近傍の様子が正確に把握できないという問題があった。
【0005】
手動操作により拡大表示することはできるが、(1)面倒であり、(2)拡大表示することにより今度はグラフの一部のみが表示されて全体像が把握できないという問題があった。
【0006】
そこで、拡大前の元のグラフを保存したまま、指定した範囲だけを拡大表示し、また元のグラフを表示する機能を備えたグラフ関数電卓が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−259348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の拡大表示機能を備えたグラフ関数電卓は、ユーザが拡大表示するべきか否かを判断して操作しなければならず、依然として面倒な問題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、ユーザが拡大表示するべきか否かを判断する必要なく、グラフの特徴点をいつでも明確に表示することが可能になるグラフ表示制御装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のグラフ表示制御装置は、複数のグラフを表示するグラフ表示手段と、ユーザ操作に応じて前記グラフ表示手段により表示された任意のグラフ上の特徴点を算出する特徴点算出手段と、この特徴点算出手段により算出されたグラフ上の特徴点から予め設定された表示領域の範囲内に、前記グラフ表示手段により表示された他のグラフが存在するか否かを判断する表示判断手段と、この表示判断手段により前記グラフ上の特徴点から予め設定された表示領域の範囲内に他のグラフが存在すると判断された場合に、当該他のグラフが前記予め設定された表示領域の範囲内に存在しなくなる倍率で、前記グラフ表示手段により表示された複数のグラフを、前記特徴点を含んで拡大表示する拡大表示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載のグラフ表示制御装置は、前記請求項1に記載のグラフ表示制御装置において、前記グラフ表示手段は、ドットマトリクス型の表示駆動で構成され、前記表示判断手段は、前記特徴点算出手段により算出されたグラフ上の特徴点を含むドットから、予め設定されたドット数内に、前記グラフ表示手段により表示された他のグラフのドットが存在するか否かを判断する、ことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載のグラフ表示制御装置は、前記請求項1または請求項2に記載のグラフ表示制御装置において、前記拡大表示手段は、前記グラフ表示手段により表示された複数のグラフの表示と共に、前記特徴点を含んで拡大したグラフを別画面にして表示する、ことを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載のグラフ表示制御装置は、前記請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のグラフ表示制御装置において、前記拡大表示手段は、前記拡大表示する倍率も共に表示する、ことを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載のグラフ表示制御装置は、前記請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のグラフ表示制御装置において、前記特徴点算出手段により算出されたグラフ上の特徴点を、前記グラフ表示手段により表示されたグラフ上に識別して表示させ、当該特徴点の座標値も共に表示させる特徴点表示手段をさらに備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項6に記載のプログラムは、コンピュータを、複数のグラフを表示部に表示させるグラフ表示制御手段、ユーザ操作に応じて前記グラフ表示制御手段により表示された任意のグラフ上の特徴点を算出する特徴点算出手段、この特徴点算出手段により算出されたグラフ上の特徴点から予め設定された表示領域の範囲内に、前記グラフ表示制御手段により表示された他のグラフが存在するか否かを判断する表示判断手段、この表示判断手段により前記グラフ上の特徴点から予め設定された表示領域の範囲内に他のグラフが存在すると判断された場合に、当該他のグラフが前記予め設定された表示領域の範囲内に存在しなくなる倍率で、前記グラフ表示制御手段により表示された複数のグラフを、前記特徴点を含んで拡大して表示させる拡大表示制御手段、として機能させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ユーザが拡大表示するべきか否かを判断する必要なく、グラフの特徴点をいつでも明確に表示することが可能になるグラフ表示制御装置およびプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のグラフ表示制御装置の実施形態に係るグラフ関数電卓10の電子回路の構成を示すブロック図。
【図2】前記グラフ関数電卓10のグラフ表示処理を示すフローチャート。
【図3】前記グラフ関数電卓10のグラフ表示処理に伴うグラフ表示の具体例(その1)を示す図。
【図4】前記グラフ関数電卓10のグラフ表示処理に伴うグラフ表示の具体例(その2)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面により本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明のグラフ表示制御装置の実施形態に係るグラフ関数電卓10の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0020】
このグラフ関数電卓10は、コンピュータである制御部(CPU)11を備えている。
【0021】
制御部(CPU)11は、ROM(記憶領域)12に予め記憶されているシステムプログラム、あるいはメモリカードなどの外部記憶媒体13から記憶媒体読み書き部14を介してROM(フラッシュ)12に読み込まれた計算機制御プログラム、あるいは通信ネットワークN上のWebサーバ(プログラムサーバ)15から通信制御部16を介してダウンロードされ前記ROM(フラッシュ)12に読み込まれた計算機制御プログラムに従い、RAM17を作業領域として回路各部の動作を制御する。そして、前記ROM12に予め記憶されたシステムプログラムや計算機制御プログラムは、入力部18からの入力信号に応じて起動される。
【0022】
前記制御部(CPU)11には、前記ROM12、記憶媒体読み書き部14、通信制御部16、RAM17、入力部18が接続される他に、ドットマトリクス型の液晶表示部(LCD)19が接続される。
【0023】
ROM12には、本グラフ関数電卓10の全体の動作を司る計算機制御プログラムが予め記憶されると共に、ユーザ任意に入力される各種の関数を含む方程式や不等式などの種々の数式に応じた演算処理をして、その演算過程や演算結果を表示部19に表示させるための数式演算プログラム12a、ユーザ任意に入力される種々の数式に応じたグラフを表示部19に表示させるためのグラフ描画プログラム12b、このグラフ描画プログラム12bに従い表示部19に表示されたグラフ上の特徴点(求解点:交点、極大・極小点、変曲点など)を求める演算処理をして、その特徴点にポインタPを表示させたり同特徴点の座標値(X,Y)を表示させたりするための求解点表示プロクラム12c、および前記グラフ描画プログラム12bに従い表示部19に表示されたグラフ上の特徴点が、予め設定された後述する不明確表示の条件(例えば図2のS6,S7)に当て嵌まる場合に、当該グラフを自動的に拡大処理し、その特徴点近傍をウインドウ表示(例えば図3(C))させるためのクローズアップ表示プログラム12dなどが記憶される。
【0024】
入力部18には、本グラフ関数電卓10に搭載された各種の計算モードの機能を指定する際に操作される「各種機能キー」18a、各種の数値、文字、記号のデータを入力する際に操作される「数字・文字キー」18b、入力データの確定や演算の実行を指示する際に操作される「決定キー」18c、表示画面上のカーソルや項目などで示される入力位置を移動表示させたり、操作対象にしたグラフ上のポインタPを移動表示させたり、表示範囲をスクロール表示させたりする際に操作される「↑」「↓」「←」「→」の各カーソルキー18dなどが設けられる。
【0025】
また、前記入力部18としてはタッチパネル18Tも含まれる。このタッチパネル18Tは、表示部19の表示画面上に重ねて設けられ、ユーザによりタッチされた位置データを入力するための透明タブレットからなる。
【0026】
RAM17には、各種の演算処理に伴い制御部11に入出力される種々のデータを一時記憶するための作業領域(ワークメモリ)が確保される。グラフモードにおいて必要とされる作業領域としては、グラフ式データメモリ17a、グラフ描画データメモリ17b、拡大率設定データメモリ17c、拡大データ一次保存メモリ17dなどが確保される。
【0027】
グラフ式データメモリ17aには、ユーザ操作に応じて入力部18により入力されたグラフ式[Yn=fn(X)]が記憶される。
【0028】
グラフ描画データメモリ17bには、前記グラフ式[Yn=fn(X)]に応じて、表示部19に表示される直交座標上に表示させるべきグラフの描画データが、演算されたグラフ描画の座標(X,Y)に表示ドットの座標(Xd,Yd)を対応付けたデータとして記憶される。
【0029】
拡大率設定データメモリ17cには、前記グラフ描画データメモリ17bに記憶されたグラフの描画データを表示部19の表示画面に表示させる際の拡大率が、ユーザ操作に応じて設定された拡大率(例えば[×2])として記憶される。
【0030】
拡大データ一次保存メモリ17dには、前記拡大率設定データメモリ17cに記憶された拡大率に従い拡大処理された前記グラフの描画データが記憶される。
【0031】
次に、前記構成のグラフ関数電卓10によるグラフ表示機能について説明する。
【0032】
図2は、前記グラフ関数電卓10のグラフ表示処理を示すフローチャートである。
【0033】
図3は、前記グラフ関数電卓10のグラフ表示処理に伴うグラフ表示の具体例(その1)を示す図である。
【0034】
グラフ表示モードが起動されると、グラフの拡大表示のための拡大率をユーザ操作に応じて任意の拡大率に設定する、図示しない拡大率設定画面が表示部19に表示される。そして、この拡大率設定画面に従い、例えば拡大率[×2]が設定されると、当該拡大率の設定データはRAM17内の拡大率設定データメモリ17cに記憶される(ステップS1)。
【0035】
ユーザ操作に応じて入力部18から入力されたグラフ式(例えば「Y1=(X+2)/2」「Y2=X(X+1.9)(X+2.1)」)が、RAM17内のグラフ式データメモリ17aに記憶された状態で、「決定キー」18cの操作によりグラフの描画が指示されると、前記各グラフ式Y1,Y2に応じたグラフの描画データが予め設定された初期条件(例えば[−6.3≦X≦6.3,−3.1≦Y≦3.1])に従って生成され、グラフ描画データメモリ17bに記憶される。すると、図3(A)に示すように、前記グラフ描画データメモリ17bに記憶されたグラフ描画データに応じたグラフY1,Y2が、表示部19にグラフ表示画面Gとして表示される(ステップS2)。
【0036】
ここで、前記グラフ表示画面Gに表示されたグラフY1について、ユーザ操作により、当該グラフの特徴点(この場合「交点」)を求解するための命令が入力されると(ステップS3(Yes))、前記グラフの描画データに基づき、その特徴点「交点」を求解する演算処理が実行され、特徴点(求解点)があるか否か判断される(ステップS4)。
【0037】
この場合、前記グラフY1には、グラフY2との2つの「交点」が求められ、特徴点(求解点)があると判断される(ステップS4(Yes))。
【0038】
すると、求解されたグラフY1上の2つの特徴点「交点」のうち、図3(B)に示すように、X座標が最小となる特徴点「交点」にポインタPが表示され、当該特徴点「交点」の座標(X,Y)が表示される(ステップS5)。
【0039】
なお、図3(B)で示したグラフ表示画面G上の「ISECT」は、「交点」を意味する英単語“intersection”の略であり、グラフY1のグラフY2との「交点」が求解されたことを表示している。
【0040】
以下、計算上の座標(X,Y)に対応する表示上のドット座標を(Xd,Yd)とする。また、ドット座標(Xd,Yd)からX方向にaドット、Y方向にbドット移動したドット座標を(Xd+a,Yd+b)とする。
【0041】
ここで、前記求解されたグラフY1上のグラフY2との特徴点「交点」のドット座標を(Ad,f1(Ad))とした場合に、当該「交点」のドット座標(Ad,f1(Ad))からY軸方向の±1ドット以内に、他のグラフ(この場合はY2=f2(X))の描画データが存在するか否か判断される(ステップS6)。
【0042】
つまり、前記特徴点(求解点)に重なった、または当該特徴点(求解点)の上または下に接触した(引っ付いた)他のグラフが存在するか否か判断される。
【0043】
前記図3(A)(B)で示したグラフY1の特徴点(求解点)は、グラフY2との「交点」であるため、当該特徴点「交点」に重なったグラフY2があると判断される(ステップS6(Yes))。
【0044】
すると、前記グラフY1上の特徴点「交点」よりX方向に隣り合う当該グラフY1上のドット座標(Ad-1,f1(Ad-1))と(Ad+1,f1(Ad+1))とのそれぞれについて、Y軸方向の±1ドット以内に、前記ステップS6にて存在の判断された他のグラフ(この場合はY2=f2(X))の描画データがさらに存在するか否か判断される(ステップS7)。
【0045】
つまり、前記一方のグラフの特徴点(求解点)に重なった、または当該特徴点(求解点)の上または下に接触した(引っ付いた)他のグラフが、前記一方のグラフの特徴点(求解点)にX方向に1ドットずれて隣り合う当該グラフ上の表示ドットにおいても、さらに連続して重なったり、または上または下に接触したりしているか否かが判断される。
【0046】
ここでさらに、グラフY1の特徴点「交点」だけでなく、その特徴点に隣接する表示ドットにおいても、グラフY2の表示ドットが重なったり接触したりしていると判断された場合には(ステップS7(Yes))、不明確表示の条件に当て嵌まるとして、前記拡大率設定データメモリ17cに設定された拡大率[×2]により、前記グラフ描画データメモリ17bに記憶されたグラフY1,Y2の描画データが拡大処理され、拡大データ一次保存メモリ17dに記憶される(ステップS8)。
【0047】
すると、前記拡大データ一次保存メモリ17dに記憶された拡大率[×2]により拡大処理されたグラフ描画データについて、前記不明確表示の条件に当て嵌まるか否かが繰り返し判断される(ステップS8→S6,S7)。
【0048】
例えば前記図3(B)で示したグラフY1,Y2について、前記ステップS6〜S8に従ったグラフ描画データの拡大処理が繰り返し実行され、例えば6回目の拡大処理[×2(=64)]により拡大された際に、前記不明確表示の条件に当て嵌まらなくなったと判断された場合には(ステップS6(No)またはS7(No))、前記ステップS8にて拡大データ一次保存メモリ17dに記憶された拡大率[×64]であるグラフ描画データが読み出される。そして、図3(C)に示すように、特徴点(求解点)を中心にした一定の範囲を別ウインドウとし、倍率[×64]と共にクローズアップ画面Zとして表示される(ステップS9)。
【0049】
これにより、グラフY1の特徴点(求解点)であるグラフY2との「交点」付近が、どのようなグラフの軌跡になっているかを、当該グラフの全体像を把握できる状態のまま、自動で明確に表示させることができる。
【0050】
図4は、前記グラフ関数電卓10のグラフ表示処理に伴うグラフ表示の具体例(その2)を示す図である。
【0051】
グラフ表示モードの起動により表示部19に表示される拡大率設定画面に従い、ユーザ操作に応じて任意の拡大率(例えば[×2])が設定されると、当該拡大率の設定データはRAM17内の拡大率設定データメモリ17cに記憶される(ステップS1)。
【0052】
ユーザ操作に応じてグラフ式「Y1=(X+2)/2+0.1」「Y2=X(X+1.9)(X+2.1)」が入力され、RAM17内のグラフ式データメモリ17aに記憶された状態で、「決定キー」18cの操作によりグラフの描画が指示されると、前記各グラフ式Y1,Y2に応じたグラフの描画データが予め設定された初期条件[−6.3≦X≦6.3,−3.1≦Y≦3.1]に従って生成され、グラフ描画データメモリ17bに記憶される。すると、図4(A)に示すように、前記グラフ描画データメモリ17bに記憶されたグラフ描画データに応じたグラフY1,Y2が、表示部19にグラフ表示画面Gとして表示される(ステップS2)。
【0053】
ここで、前記グラフ表示画面Gに表示されたグラフY1について、ユーザ操作により、当該グラフの特徴点「極小点」を求解するための命令が入力されると(ステップS3(Yes))、前記グラフの描画データに基づき、その特徴点「極小点」を求解する演算処理が実行される。
【0054】
そして、前記命令された特徴点「極小点」が求められると(ステップS4(Yes))、図4(B)に示すように、グラフ表示画面GにおけるグラフY1上に当該特徴点「極小点」を示すポインタPが表示され、また当該特徴点「極小点」の座標(X,Y)が表示される(ステップS5)。
【0055】
なお、図4(B)で示したグラフ表示画面G上の「MIN」は、グラフY1の「極小点」が求解されたことを表示している。
【0056】
この際、前記図4(A)(B)で示した、標準倍率[×1]によるグラフ描画データでは、グラフY1の極小点に対応する表示ドットおよびそのX方向に前後する表示ドットが、グラフY2の表示ドットと連続的に重なったり接触したりして、求解された特徴点「極小点」付近のグラフの軌跡が不明確な状態となっている。
【0057】
このため、グラフY1の特徴点「極小点」に重なった、または当該特徴点「極小点」の上または下に接触した(引っ付いた)他のグラフY2が、前記グラフY1の特徴点「極小点」にX方向に1ドットずれて隣り合う当該グラフY1上の表示ドットにおいても、さらに連続して重なったり、または上または下に接触したりしていると判断される(ステップS6(Yes)→S7(Yes))。
【0058】
すると、前記拡大率設定データメモリ17cに設定された拡大率[×2]により、前記グラフ描画データメモリ17bに記憶されたグラフY1,Y2の描画データが拡大処理され、拡大データ一次保存メモリ17dに記憶される(ステップS8)。
【0059】
そして、前記拡大データ一次保存メモリ17dに記憶された拡大率[×2]により拡大処理されたグラフ描画データについて、前記不明確表示の条件に当て嵌まらなくなったと判断された場合には(ステップS6(No)またはS7(No))、当該拡大データ一次保存メモリ17dに記憶された拡大率[×2]であるグラフ描画データが読み出される。そして、図4(C)に示すように、特徴点「極小点」を中心にした一定の範囲を別ウインドウとし、倍率[×2]と共にクローズアップ画面Zとして表示される(ステップS9)。
【0060】
これにより、グラフY1の特徴点(求解点)である「極小点」付近が、どのようなグラフの軌跡になっているかを、当該グラフの全体像を把握できる状態のまま、自動で明確に表示させることができる。
【0061】
なお、入力部18における所定のキーを操作することで、図4(D)に示すように、前記クローズアップ画面ZにおけるグラフY1上のポインタPは消去される。
【0062】
したがって、前記構成のグラフ関数電卓10によるグラフ表示機能によれば、ユーザ任意のグラフ式に応じたグラフがドットマトリクス型の表示画面に表示され、交点、極大点、極小点など、何れかの特徴点の求解が指示されると、指示された特徴点が演算されてポインタPにより表示されると共にその座標(X,Y)が表示される。そして、前記グラフの特徴点およびその直近(近傍)のグラフ表示ドットに対し、重なったり接触したりする他のグラフが有るか否かを条件として、当該特徴点付近のグラフ軌跡が不明確な表示か否かが判断される。この不明確表示の条件に当て嵌まった場合には、当該条件に当て嵌まらなくなるまで、ユーザ設定された拡大率により、前記特徴点を含むグラフが繰り返し拡大されて表示される。
【0063】
このため、表示させたグラフ上の特徴点が、他のグラフの軌跡と近接していることにより不明確な表示となってしまう場合には、自動で明確に表示できる状態まで拡大処理されて表示されるようになる。
【0064】
そして、前記拡大処理されたグラフは、拡大前の元のグラフ表示画面G上にて別ウインドウにしたクローズアップ画面Zとしてその拡大倍率と共に表示されるので、前記グラフの特徴点(求解点)付近が、どのようなグラフの軌跡になっているかを、当該グラフの全体像を把握できる状態のままで、自動で明確に表示させることができる
また、前記グラフ上の求解された特徴点は、ポインタPにより識別されて表示されるので、当該特徴点がグラフ上の何処にあるかを容易且つ明確に知ることができる。
【0065】
なお、前記実施形態の図2のステップS6,S7を参照して説明したグラフ特徴点(求解点)の不明確表示を判断する条件では、求解されたグラフ特徴点の表示ドットとそれに隣り合う当該グラフの表示ドットについて、Y軸方向に±1ドットの範囲で他のグラフの表示ドットが存在するか否かを判断した。ここで、前記グラフ特徴点の近傍に他のグラフ軌跡が含まれるか否かを判断するためのY軸方向の範囲は、±1ドットに限定されるものでは勿論なく、例えばそれ以下またはそれ以上に設定することで、判断条件をより緩くまたはより厳しく設定してもよい。
【0066】
なお、前記実施形態において記載したグラフ関数電卓10による動作手法、すなわち、図2のフローチャートに示すグラフ表示処理などの各手法は、コンピュータに実行させることができるプログラムとして、メモリカード(ROMカード、RAMカード等)、磁気ディスク(フロッピディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の外部記憶媒体(13)に格納して配布することができる。そして、電子式計算機(10)のコンピュータ(11)は、この外部記憶媒体(13)に記憶されたプログラムを記憶装置(12)(17)に読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、前記実施形態において説明したグラフ特徴点付近の自動による拡大表示が可能なグラフ表示機能を実現し、前述した手法による同様の処理を実行することができる。
【0067】
また、前記各手法を実現するためのプログラムのデータは、プログラムコードの形態として通信ネットワーク(公衆回線)N上を伝送させることができ、この通信ネットワークNに接続された通信装置(16)によって前記プログラムデータを電子式計算機(10)のコンピュータ(11)に取り込み、前述したグラフ特徴点付近の自動による拡大表示が可能なグラフ表示機能を実現することもできる。
【0068】
なお、本願発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる形態にして組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0069】
10 …グラフ関数電卓(電子式計算機)
11 …制御部(CPU)
12 …ROM
12a…数式演算プログラム
12b…グラフ描画プログラム
12c…求解点表示プログラム
12d…クローズアップ表示プログラム
13 …外部記憶媒体
14 …記憶媒体読み書き部
15 …Webサーバ
16 …通信制御部
17 …RAM
17a…グラフ式データメモリ
17b…グラフ描画メモリ
17c…拡大率設定データメモリ
17d…拡大データ一次保存メモリ
18 …入力部
18a…「機能キー」
18b…「数字・文字キー」
18c…「決定キー」
18d…「カーソルキー」
18T…「タッチパネル」
19 …表示部
N …通信ネットワーク
G …グラフ表示画面
Z …ズームアップ画面
P …ポインタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のグラフを表示するグラフ表示手段と、
ユーザ操作に応じて前記グラフ表示手段により表示された任意のグラフ上の特徴点を算出する特徴点算出手段と、
この特徴点算出手段により算出されたグラフ上の特徴点から予め設定された表示領域の範囲内に、前記グラフ表示手段により表示された他のグラフが存在するか否かを判断する表示判断手段と、
この表示判断手段により前記グラフ上の特徴点から予め設定された表示領域の範囲内に他のグラフが存在すると判断された場合に、当該他のグラフが前記予め設定された表示領域の範囲内に存在しなくなる倍率で、前記グラフ表示手段により表示された複数のグラフを、前記特徴点を含んで拡大表示する拡大表示手段と、
を備えたことを特徴とするグラフ表示制御装置。
【請求項2】
前記グラフ表示手段は、ドットマトリクス型の表示駆動で構成され、
前記表示判断手段は、前記特徴点算出手段により算出されたグラフ上の特徴点を含むドットから、予め設定されたドット数内に、前記グラフ表示手段により表示された他のグラフのドットが存在するか否かを判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のグラフ表示制御装置。
【請求項3】
前記拡大表示手段は、前記グラフ表示手段により表示された複数のグラフの表示と共に、前記特徴点を含んで拡大したグラフを別画面にして表示する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグラフ表示制御装置。
【請求項4】
前記拡大表示手段は、前記拡大表示する倍率も共に表示する、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のグラフ表示制御装置。
【請求項5】
前記特徴点算出手段により算出されたグラフ上の特徴点を、前記グラフ表示手段により表示されたグラフ上に識別して表示させ、当該特徴点の座標値も共に表示させる特徴点表示手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のグラフ表示制御装置。
【請求項6】
コンピュータを、
複数のグラフを表示部に表示させるグラフ表示制御手段、
ユーザ操作に応じて前記グラフ表示制御手段により表示された任意のグラフ上の特徴点を算出する特徴点算出手段、
この特徴点算出手段により算出されたグラフ上の特徴点から予め設定された表示領域の範囲内に、前記グラフ表示制御手段により表示された他のグラフが存在するか否かを判断する表示判断手段、
この表示判断手段により前記グラフ上の特徴点から予め設定された表示領域の範囲内に他のグラフが存在すると判断された場合に、当該他のグラフが前記予め設定された表示領域の範囲内に存在しなくなる倍率で、前記グラフ表示制御手段により表示された複数のグラフを、前記特徴点を含んで拡大して表示させる拡大表示制御手段、
として機能させるようにしたプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−211281(P2010−211281A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53640(P2009−53640)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】