グラム陽性細菌由来細胞外ベシクル及びその用途
【課題】グラム陽性細菌に由来する細胞外ベシクル(extracellular vesicle、EV)を提供すること。
【解決手段】本発明は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病動物モデル、前記疾病動物モデルを介して疾病を予防又は治療することが可能な効果的な候補物質を選別する方法、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療することが可能なワクチン、及び細胞外ベシクルを用いてグラム陽性細菌が起こす疾病の原因因子を診断する方法などを提供する。
【解決手段】本発明は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病動物モデル、前記疾病動物モデルを介して疾病を予防又は治療することが可能な効果的な候補物質を選別する方法、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療することが可能なワクチン、及び細胞外ベシクルを用いてグラム陽性細菌が起こす疾病の原因因子を診断する方法などを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陽性細菌に由来する細胞外ベシクル(extracellular vesicle、EV)、及びこれを用いた疾病モデル、候補薬物探索方法、ワクチン、疾病の原因因子診断方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
グラム陽性細菌は、グラム染色の際に紫色に染色される特徴を有し、グラム陰性細菌と比較して細胞外膜(outer membrane)のない特徴を有する細菌であって、系統分類学的にファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)門、テネリクテス(Tenericutes)門がこれに該当する。ファーミキューテス門とアクチノバクテリア門は、両方とも細胞壁にペプチドグリカンが豊富であるが、前者は遺伝物質にG+C量が少なく、後者はG+C量が多いことを特徴とする。テネリクテス門は細胞壁がないことを特徴とする。
【0003】
ヒトに疾病を引き起こす病原菌の大部分はグラム陽性細菌と知られており、中でも、球状の細菌としてはストレプトコッカス(Streptococcus)とスタフィロコッカス(Staphylococcus)が代表的な病原菌であり、棒状の細菌としては胞子(spore)を形成しないコリネバクテリウム(Corynebacterium)とリステリア(Listeria)、胞子を形成するバシラス (Bacillus)とクロストリジウム(Clostridium)などが代表的な病原菌である。
【0004】
一方、グラム陰性細菌が分泌する細胞外ベシクルとグラム陰性細菌が引き起こす疾病との関連性が最近注目を浴びている(非特許文献1)。グラム陰性細菌から分泌される細胞外ベシクルは細胞外膜(outer membrane)から分泌するものと知られているが、グラム陽性細菌の場合には細胞外膜がなく、細胞膜が細胞壁に取り囲まれており、現在まで細胞外ベシクルを分泌し或いはグラム陽性細菌に由来する細胞外ベシクルが疾病を引き起こすということは知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kuehn, M. J., Kesty, N. C., Bacterial outer membrane vesicles and the host-pathogen interaction. Genes Dev. 2005, 19, 2645-2655
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、グラム陽性細から細胞外ベシクルを分離して製造する方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを実験動物に投与して疾病動物モデルを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、疾病動物モデル又は体外スクリーニングシステムを介して疾病を予防又は治療する効果的な候補物質を選別する方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いてグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療することが可能なワクチンを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いてグラム陽性細菌に対する感染を予防又は治療することが可能なワクチンを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、分離された細胞外ベシクルを用いてグラム陽性細菌が引き起こす疾病の原因因子を診断する方法を提供することにある。
本発明が解決しようとする技術的な課題は上述した課題に限定されず、上述していない別の課題は以下の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを提供する。
前記本発明の一具現例において、前記グラム陽性細菌はファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)をなす細菌であるが、これに限定されるものではない。
前記ファーミキューテス門は、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、及びリステリア(Listeria)を含むが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例において、前記グラム陽性細菌は、モリクテス(Mollicutes)綱(class)をなす細菌であるが、これに限定されるものではない。
前記モリクテス綱は、マイコプラズマ(Mycoplasma)を含むが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例において、前記グラム陽性細菌は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、枯草菌(Bacillus subtilis)などを含む。
前記本発明の別の具現例において、前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは、動物の体内に生息するグラム陽性細菌が分泌するものを含むが、これに限定されるものではない。前記細胞外ベシクルは動物の体内分泌物から分離することができ、前記動物の体内分泌物は皮膚洗浄液、鼻水、喀痰、大便、血液、小便、関節液、脳脊髄液、胸水、及び腹水などを含む。
前記本発明の別の具現例において、前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは周辺環境に生息するグラム陽性細菌が分泌するものを含み、前記周辺環境は室内空気、室外空気、土壌、及び海などを含む。
前記本発明の別の具現例において、前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは、グラム陽性細菌培養液から分泌されるものを含むが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例において、前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されるもの、及び人工的に分泌されるものを含む。
【0008】
本発明の第2側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルの製造方法を提供する。
前記本発明の一具現例において、前記製造方法は、グラム陽性細菌培養液を遠心分離して上澄液を収得する段階と、前記収得された上澄液を濾過する段階とを含む。
前記本発明の他の具現例において、前記製造方法は、グラム陽性細菌培養液を遠心分離して上澄液を収得する段階と、前記収得された上澄液を第1フィルターで濾過する段階と、前記濾過物を第2フィルターで濾過する段階と、収得された前記濾過物を超遠心分離して沈殿物を収得する段階とを含む。
前記本発明の別の具現例において、第1フィルターで濾過した後、その濾過物を濃縮する段階をさらに含むことができる。
前記本発明の別の具現例において、前記沈殿物を収得する段階に続いて、前記沈殿物を懸濁する段階をさらに含むことができる。
【0009】
本発明の第3側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病動物モデルを提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌及び細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の疾病は、局所疾患であって、アトピー皮膚炎などの皮膚疾患、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、気管支炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎、肺癌などの呼吸器疾患、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、胃癌、炎症性腸炎、大腸癌などの消化器疾患、膣炎、子宮頚部炎、子宮頚部癌などの生殖器疾患を含むが、これに限定されるものではない。
また、前記本発明の疾病は、全身疾患であって、敗血症、血栓/塞栓症、動脈硬化症、脳卒中、急性冠状動脈症候群、虚血性血管疾患などの血管疾患、糖尿病、肥満などの代謝疾患、肺気腫、急性呼吸不全症候群などの肺疾患、関節炎、骨粗しょう症などの骨関節疾患、痴呆、退行性脳疾患、うつ症などの脳神経疾患などを含むが、これに限定されるものではない。
前記本発明の一具現例において、前記動物はマウスでありうるが、これに限定されるものではない。
【0010】
本発明の第4側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを動物に投与することを特徴とする、疾病動物モデルの製造方法を提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌、細胞外ベシクル、及び疾病は前述と同じである。
前記本発明の投与は、皮膚投与、鼻腔投与、気道吸入、口腔投与、皮下投与、腹腔投与、血管投与、肛門投与などを含む。
【0011】
本発明の第5側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病動物モデルを用いてバイオマーカーを発掘する方法を提供する。
【0012】
本発明の第6側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた、疾病の予防又は治療に対する候補薬物の探索方法を提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌、細胞外ベシクル、及び疾病は前述と同じである。
前記本発明の一具現例において、前記探索方法は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを細胞に処理する段階を含むことができる。前記細胞は炎症細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、幹細胞などを含む。また、前記炎症細胞は単核球、好中球、好酸球、好塩球、及び単核球が組織から分化した細胞などを含み、前記幹細胞は骨髄組織又は脂肪組織に由来する細胞でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例において、前記探索方法は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルと共に候補物質を投与した後、炎症関連媒介体の水準を測定し或いは炎症関連シグナル伝達過程を評価する段階を含むことができる。
【0013】
本発明の第7側面は、グラム陽性細菌による感染を予防又は治療するために、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを含むワクチンを提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌及びグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記グラム陽性細菌による感染は皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症などでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例によれば、前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細胞に化学物質を処理することなどを含み、前記化学物質は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用することができ、前記変形は細胞外ベシクルに化学物質を処理することを含み、前記化学物質は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用し、或いは免疫補強剤を併用投与して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0014】
本発明の第8側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を予防又は治療するために、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを含むワクチンを提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌、細胞外ベシクル、疾病などは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細菌に化学物質を処理することなどを含み、前記化学物質は薬物を含む。
前記本発明の他の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用することができ、前記変形は細胞外ベシクルに化合物質を処理することを含み、前記化合物質は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記ワクチンは、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で、薬物を併用投与して使用し或いは免疫補強剤を併用投与して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0015】
本発明の第9側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを致死量未満で哺乳動物に投与する段階を含む、疾病に対する予防又は治療方法を提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌及びグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病を含む。
前記本発明のグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病は、アトピー皮膚炎などの皮膚疾患、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、気管支炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎、肺癌などの呼吸器疾患、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、胃癌、炎症性腸炎、大腸癌などの消化器疾患、膣炎、子宮頚部炎、子宮頚部癌などの生殖器疾患を含む局所疾患であるが、これに限定されるものではない。
本発明のグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病は、敗血症、血栓/塞栓症、動脈硬化症、脳卒中、急性冠状動脈症候群、虚血性血管疾患などの血管疾患、糖尿病、肥満などの代謝疾患、肺気腫、急性呼吸不全症候群などの肺疾患、関節炎、骨粗しょう症などの骨関節疾患、痴呆、退行性脳疾患、うつ症などの脳神経疾患などを含む全身疾患であるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例によれば、前記疾病はグラム陽性細菌による感染を含む。
前記本発明のグラム陽性細菌による感染は、皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症などでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記投与は皮下注射、皮膚塗抹、静脈注射、鼻腔投与、舌下投与、気道吸入、経口服用、肛門投与などを含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細菌に化学物質を処理すること、細胞外ベシクルに化学物質を処理することなどを含み、前記化学物質は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記投与は、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で、薬物を併用投与し或いは免疫補強剤を併用投与することができるが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の第10側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを応用して疾病の原因因子を診断する方法を提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌及び細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病を含む。グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病は前述と同じである。
前記本発明の他の具現例によれば、前記疾病はグラム陽性細菌による感染を含む。前記本発明のグラム陽性細菌による感染は、皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症などでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例において、前記応用はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに含まれた遺伝物質の塩基配列を分析することであり、前記遺伝物質は16S rRNAでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記応用は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに含まれたタンパク質を測定し、或いはグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに対する免疫反応を測定することでありうるが、これに限定されるものではない。前記免疫反応の測定は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに対する抗体を測定することでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記診断は、血液、喀痰、 鼻水、皮膚洗浄液、大便、小便、脳脊髄液、関節液、胸水、又は腹水などに由来する試料を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、体内で生息し或いは周辺環境に存在するグラム陽性細菌としてのブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が細胞外ベシクルを分泌し、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが、皮膚及び粘膜の炎症を特徴とする局所疾患だけでなく、 血液に吸収されて全身的な炎症反応を特徴とする敗血症、血液凝固による血栓/塞栓症などの全身疾患を誘発するという発見により、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病モデル、疾病を予防又は治療する候補薬物の探索技術、細胞外ベシクルを応用した疾病の予防或いは治療用ワクチン技術、及び疾病の原因因子を診断する方法などを提供する。
【0018】
具体的にグラム陽性細菌に由来する細胞外ベシクルを分離し、これを細胞に投与したときには炎症媒介体が分泌され、局所的に投与したときには皮膚又は粘膜に炎症が発生し、腹腔に投与したときには細胞外ベシクルが血管に流入して全身的な炎症反応を特徴とする敗血症と共に血液凝固による血栓/塞栓症などの疾病が発生するという事実を用いて、疾病動物モデル及び候補薬物を効率よく選別する探索方法を提供することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病モデル又は体外スクリーニングシステムを介して、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防又は治療することが可能な薬物を効率よく発掘することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体或いはこれを変形して投与して免疫反応を調節することにより、グラム陽性細菌による感染又はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防或いは治療するワクチンの開発に応用可能である。また、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを応用して、グラム陽性細菌の感染、又はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病の原因因子を診断する技術の開発が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】黄色ブドウ球菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す透過電子顕微鏡イメージである。
【図2】黄色ブドウ球菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す走査電子顕微鏡イメージである。
【図3】黄色ブドウ球菌で精製された細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡イメージ(a)と走査電子顕微鏡イメージ(b)である。
【図4】黄色ブドウ球菌で精製された細胞外ベシクルの粒度分析分布図である。
【図5】ブドウ球菌の全体細胞タンパク質(WC)、細胞壁タンパク質(CW)、膜タンパク質(MP)、細胞質タンパク質(CY)及び細胞外ベシクル(EV)タンパク質のクマシー染色SDS−PAGE結果を示す写真である。
【図6】表皮ブドウ球菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す透過電子顕微鏡イメージである。
【図7】表皮ブドウ球菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す走査電子顕微鏡イメージである。
【図8】表皮ブドウ球菌で精製された細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡イメージ(a)と走査電子顕微鏡イメージ(b)である。
【図9】表皮ブドウ球菌で精製された細胞外ベシクルの粒度分析分布図を示す結果である。
【図10】枯草菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す透過電子顕微鏡イメージである。
【図11】枯草菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す走査電子顕微鏡イメージである。
【図12】枯草菌で精製された細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡イメージ(a)と走査電子顕微鏡イメージ(b)である。
【図13】枯草菌で精製された細胞外ベシクルの粒度分析分布図を示す結果である。
【図14】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのプロテオーム分析結果であって、イン−ゲル分解方法で41個、イン−ソリューション分解方法で84個、中でも34個が2つの方法のいずれでも観察され、合計90個のタンパク質を同定したことを示すベンダイアグラムである。
【図15】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスマクロファージに処理したときに炎症性サイトカインとしてのTNF−αとIL−6の分泌量が増加することを示す結果である。
【図16】マウスの皮膚から得た線維芽細胞に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理したとき、様々なサイトカインを含む炎症性媒介体を生産する結果である。
【図17】マウスに黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理し、アトピー性皮膚炎に類似した症状を引き起こすようにする方法で週3回4週間処理し、48時間後に様々な指標を確認した。
【図18】図17によってマウスに黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理し、皮膚組織において表皮層の増殖(赤い円で表示された部分)と好酸球の浸潤(矢印のヘッド)など、アトピー性皮膚炎に類似する症状が起こったことを示す結果である。
【図19】図18に示した皮膚組織の症状を数値化した結果であって、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによって表皮の厚さや、浸潤した肥満細胞、好酸球の数などが増加することを示す。
【図20】図17によってマウスに黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、処理した皮膚組織に存在する炎症性サイトカインの量を測定した結果であって、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理するにつれて増加することを示す。
【図21】患者の患部洗浄液を濃縮させた後、ELISA法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに存在する抗原が存在することを示す結果である。
【図22】アトピー性皮膚炎を有する患者の血清において、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに対するIgEの量が正常対照群に比べて非常に増加していることを示す結果である。
【図23】マウスの気道に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを吸入させて先天免疫反応の様相を見るための方法を図式化したものである。
【図24】図23の方法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを吸入させたマウスの肺胞洗浄液に存在する炎症細胞の数と炎症性サイトカインIL−6の量が対照群に比べて増加したことを示す結果である。
【図25】マウスの気道に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを吸入させて後天免疫反応の様相を見るための方法を図式化したものである。
【図26】図25の方法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを吸入させたマウスの肺胞洗浄液に存在する炎症細胞の数とIL−17の量が対照群に比べて増加することにより、気道粘膜にTh17の後天免疫反応が誘導されたことを示す結果である。
【図27】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるマウスの死亡誘導を確認する実験プロトコルである。
【図28】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスに処理した後の生存率を示す結果である。
【図29】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルにより誘導される全身性炎症反応の指標の一つである低体温症を示す図である。
【図30】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる播種性血管内凝固症の動物モデルを確立するためのプロトコルである。
【図31】図30で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、摘出した肺組織のH&E染色結果である。
【図32】図30で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、血漿内D−dimerの増加を測定した結果である。
【図33】図30で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、血漿内血小板数の減少を測定した結果である。
【図34】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを用いて薬物候補物質を発掘する方法に対する模式図である。
【図35】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルとプロドラッグを同時にマウスマクロファージに処理し、培養液に存在するIL−6の量を細胞外ベシクルのみ単独で処理した陽性対照群の測定値を基準として百分率で示すグラフである。
【図36】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスの鼻腔に注入し、プロドラッグとしてのドキセピン(Doxepin)とハロペリドール(Haloperidol)を腹腔注入したときに気管支肺胞洗浄液内IL−6の分泌を測定した結果である。
【図37】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルがマウスの樹枝状細胞内にアップテイク(uptake)される蛍光顕微鏡イメージである。
【図38】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスの樹枝状細胞に処理したときにIL−12p40サイトカインの分泌が増加することを示す結果である。
【図39】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスの樹枝状細胞に処理したときに樹枝状細胞の表面のCD40とMHCIIの発現が増加することを示す結果である。
【図40】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが誘導する免疫反応の指標としての抗体を測定するプロトコルである。
【図41】図40の方法で得たマウス血清で細胞外ベシクル特異IgG抗体が増加した結果を示す図である。
【図42】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを予防ワクチンとしてマウスに投与した後、免疫学的指標を測定するプロトコルである。
【図43】図42の方法で得たマウス脾臓細胞でIFN−γとIL−17のサイトカインが増加することを示すグラフである。
【図44】マウスの皮膚をテープストリッピングした後、週3回ずつ4週間パッチの方法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを投与する方法を示す図である。
【図45】図42の方法でベシクルを処理した後、抗体の量を比較したとき、マウス血清内黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに対するIgG抗体(antibody)の量が対照群に比べて増加したことを示す。
【図46】図42の方法でベシクルを処理した後、脾臓細胞を黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルで刺激したとき、細胞外ベシクル特異的にTh1とTh17のサイトカインが増加したことを示す結果である。
【図47】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルとpolyI:Cを複合投与した後、ブドウ球菌細胞をチャレンジし、免疫反応指標を評価するプロトコルである。
【図48】図47の方法で得たマウス血清で細胞外ベシクル特異IgG抗体が増加した結果を示す図である。
【図49】図47の方法で得たマウス脾臓細胞でIFN−γとIL−17のサイトカインが増加することを示すグラフである。
【図50】マウスの咽喉に2つの用量の黄色ブドウ球菌を投与した後の生存率を示す。
【図51】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルとpolyI:Cとが組み合わせられたワクチンによって、ブドウ球菌由来肺炎モデルでマウスの生存率が増加することを示す。
【図52】マウスに腸球菌由来細胞外ベシクルを投与した後で得た血清でベシクル特異IgG抗体が増加したことを示すグラフである。
【図53】マウスに腸球菌由来細胞外ベシクルを処理した後で得た脾臓細胞でIFN−γサイトカインが増加することを示すグラフである。
【図54】細胞外ベシクル内の16S rRNAをRT−PCRで分析し、DNAをPCRで分析した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、「グラム陽性細菌」とは、細胞に外膜がない且つ細胞壁が厚い特徴を有するファーミキューテス門(Phylum Firmicutes)とアクチノバクテリア門(Phylum Actinobacteria)、細胞壁がないが、進化的にファーミキューテス門由来のモリクテス綱(Class Mollicutes)を含む意味であり、細胞壁のある細菌としてスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)などを含み、細胞壁がない細菌としてはマイコプラズマ(Mycoplasma)などを含む。
【0021】
本発明において、「体内」とは動物皮膚の表面、動物粘膜の内腔及び表面を含む意味であり、ここで、「粘膜」とは消化器、呼吸器、泌尿生殖器を含む意味であり、例えば、「消化器」とは口腔、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門、胆道、胆嚢、膵臓管などの内 腔及び表面を意味し、「呼吸器」とは結膜、鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、気管、気管支、細気管支、肺胞などの内腔及び表面を意味し、「泌尿生殖器」とは腎臓、尿管、膀胱、尿道、膣、子宮頚部、子宮などの内腔及び表面を意味するが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明において、「周辺環境」とは、前記の体内を除いた自然界を意味し、例えば、動物の体内を除いた室内空気、室外空気、土壌、海などを含むが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明において、「グラム陽性細菌由来細胞外ベシクル」とは、体内又は周辺環境に生息するグラム陽性細菌が自然的又は人工的に分泌するベシクルを含み、サイズが元来の細胞より小さいことを特徴とするが、これに限定されるものではない。
【0024】
グラム陽性細菌は、一般にグラム染色で紫色に染色される細菌であって、グラム陰性細菌と比較して細胞外膜がなく、細胞壁にペプチドグリカンの量が多いことを特徴とする。
【0025】
系統分類上、厚い細胞壁と遺伝物質にG+C量が低いことを特徴とするファーミキューテス門をなすグラム陽性細菌としては、球状(cocci)のスタフィロコッカス、ストレプトコッカス及びエンテロコッカスなどが代表的であり、棒状(rod)のバシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム、ノカルジア、クロストリジウム、ラクトバシラス及びリステリアなどが代表的である。
【0026】
細胞壁がないが、進化的にファーミキューテスに由来するモリクテス綱もグラム陽性細菌に含まれるが、中でもマイコプラズマが代表的な細菌である。
【0027】
ヒトで感染を引き起こす病原菌は、大部分がグラム陽性細菌であるが、例えばストレプトコッカス(Streptococcus)、スタフィロコッカス、コリネバクテリウム、リステリア、バシラス、クロストリジウムなどが代表的な病原菌である。
【0028】
1960年代に、電子顕微鏡を介してグラム陰性細菌が細胞外ベシクルを分泌するという事実が報告された。グラム陰性細菌由来細胞外ベシクルは、球状をし、リン脂質二重層からなっており、略20〜200nmのサイズを有する。グラム陰性細菌由来細胞外ベシクルは、LPSだけでなく、様々な外膜タンパク質(outer membrane protein)を持っている。最近、本発明者らは、腸内共生細菌としての大腸菌由来細胞外ベシクルが全身的に吸収されたとき、敗血症、血液凝固、肺気腫などの全身疾患を起こすという事実を解明した。
【0029】
グラム陰性細菌が分泌する細胞外ベシクルが主に細胞外膜に由来するという偏見に基づいて、グラム陽性細菌は、細胞外膜がなく、細胞膜が厚い細胞壁で取り囲まれているということから、グラム陽性細菌が細胞外ベシクルを分泌するという事実は知られていない。
【0030】
本発明者らは、球状のグラム陽性細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)が細胞外ベシクルを分泌することを見出し、電子顕微鏡上で略球状の形状をし、動的光散乱法で略10〜100nMのサイズを有することが分かった。
【0031】
また、本発明者らは、棒状のグラム陽性細菌としての枯草菌(Bacillus subtilis)が細胞外ベシクルを分泌することを発見し、電子顕微鏡上で略球状の形状を有し、動的光散乱法で略10〜100nMのサイズを有することが分かった。
【0032】
本発明者らは、イン−ゲル(in-gel)トリプシンタンパク質分解(tryptic digestion)方法とイン−ソリューション(in-solution)トリプシンタンパク質分解方法によって黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのプロテオーム分析を行ったが、イン−ゲル分解方法で41個のタンパク質が、イン−ソリューション分解方法で84個のタンパク質が同定された。イン−ゲル方法の結果のうち、35個のタンパク質がイン−ソリューション方法で同定したタンパク質と重なり合って合計90個の黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのタンパク質を見つけ出した。
【0033】
前記の方法で同定された黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルには、疾病に関連した様々なタンパク質が存在した。病原性(virulence)タンパク質として敗血症又は毒素ショック症候群(toxic shock syndrome)を起こすスーパー抗原(superantigen)としてのブドウ球菌エンテロトキシンQ(staphylococcus enterotoxin Q)、ブドウ球菌分泌抗原(staphylococcus secretory antigen)(ssaA1、ssaA2)などが存在した。また、赤血球を破壊し且つヘモグロビンを溶かすα−溶血素(alpha-hemolysin)とγ−溶血素(gamma-hemolysin)などの毒素も含まれていた。また、宿主組織内への細菌の浸潤と潜入に直接関与するプロテアーゼとしてのスタホパインA(staphopain A)と細胞外ECM及び血漿結合タンパク質(extracellular ECM and plasma binding protein)が存在した。また、血液凝固関連タンパク質としてはスタフィロコアグラーゼ(staphylocoagulase)やフォン・ヴィレブランド因子−結合タンパク質(von Willebrand factor-binding proteins)などが存在したが、このようなタンパク質は、血管内凝固を特徴とする敗血症、毒素ショック症候群(toxic shocks syndrome)などの発生だけでなく、動脈の血栓(thrombosis)形成による急性冠状動脈症候群(acute coronary syndrome)、脳卒中(stroke)、静脈の血栓形成による深部静脈血栓症(deep-vein thrombosis)、血栓が剥離しながら生ずる塞栓(thrombosis)により発生する肺動脈塞栓症(pulmonary embolism)などの疾病の病因に関与するタンパク質である。また、SbI(S.aureus IgG-binding protein)も存在したが、これは宿主免疫細胞の食作用(phagocytosis)を抑制して細菌の免疫回避機能を維持するうえ、上皮細胞(epidermal cell)におけるIL−18の発現を誘導し、血清(serum)内のIgE抗体を増加させて皮膚にアトピー皮膚炎を引き起こすことに関与することができる。
【0034】
プロテオーム分析によって黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに多様な疾病を引き起こすタンパク質が含まれているという事実に基づいて、体外で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスマクロファージに投与して炎症媒介体の分泌を評価した。その結果、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの濃度に比例して炎症媒介体としてのTNF−αとインターロイキン−6(IL−6)の分泌が誘導された。
【0035】
また、体外で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスの線維芽細胞に投与して炎症媒体体の分泌を評価したとき、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによって炎症媒介体としてのTNF(tumor necrosis factor)−α、IL−6だけでなく、TSLP(thymic stromal lymphopoietin)、エオタキシン(eotaxin)、MIP(macrophage inflammatory protein)−1αなどの分泌が誘導された。
【0036】
黄色ブドウ球菌は、皮膚に生息するが、特にアトピー皮膚炎患者の皮膚にはほぼ100%生息すると知られている。前記の体外実験結果に基づいて、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを皮膚に投与したとき、アトピー皮膚炎などの局所炎症を誘導することができるかを評価した。テープストリッピング(tape stripping)の後、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを週3回4週間投与したとき、アトピー患者から見られる炎症所見が観察された。また、アトピー皮膚炎患者の皮膚洗浄液から細胞外ベシクルを分離した後、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異抗体と反応させたとき、患者の洗浄液から分離した細胞外ベシクルに黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが存在することを確認した。また、アトピー皮膚炎患者の血清を分離した後、血清内黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異IgE抗体を測定したとき、正常人に比べてIgE抗体が有意に増加していた。前記結果より、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルがアトピー皮膚炎の発生又は悪化に重要な原因因子であることが自明である。
【0037】
黄色ブドウ球菌は、上気道粘膜などの体内だけでなく、空気中に生息するものと知られている。本発明者らは、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが呼吸器粘膜に作用して局所炎症を誘導するかを評価した。黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを1回鼻腔投与したとき、濃度に比例して気管支肺胞洗浄液に炎症細胞の数が増加し、Th17(17型ヘルパーT、type 17 helper T)細胞の分化に重要なIL−6の分泌も増加した。また、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを週2回3週間鼻腔投与したとき、気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の総数だけでなく、好中球の数が顕著に増加し、Th17細胞から分泌されるIL−17も有意に増加した。前記結果は、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが粘膜に作用し、IL−17を媒介とする好中球性炎症の発生に重要な原因因子であることを意味する。
【0038】
敗血症は、局所細菌感染の際に病原菌由来物質が血管に流入して全身的な炎症反応を引き起こす特徴を有する疾患である。本発明者らは、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを静脈注射して敗血症が誘導されるかを評価した。高用量の細胞外ベシクルを静脈注射したとき、約40%のマウスが死亡した。また、敗血症の指標である低体温症が、細胞外ベシクルを投与した場合に観察された。これは、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが血管に流入すると敗血症が発生することを意味する。
【0039】
上述したプロテオーム分析において、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに、血液凝固関連タンパク質が含まれていた。本発明者らは黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが血液凝固及びその結果として血栓が形成されるかを評価した。その結果、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを静脈注射、皮下注射、又は鼻腔投与した場合、血管内血液凝固の指標であるD−dimerの濃度が血清内で増加しており、他の指標である血小板の数が抹消血液内で減少していた。ベシクルによる血栓形成に関連し、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを静脈注射、皮下注射、又は鼻腔投与した場合、肺血管に血栓(thrombus)が観察された。前記結果は、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが血管に流入したとき、血管に血液凝固による血栓又は塞栓を誘導することができることを意味する。
【0040】
疾病を予防又は治療する薬物を開発するため、正確な原因物質を把握することは非常に重要である。たとえば、原因物質を体外から細胞に投与する過程で候補薬物を処理して効能を検証することができ、上述した動物モデルに候補薬物を投与して効能を検証することができる。本発明者らは、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療する薬物を開発するために、黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルを用いた候補薬物を選別する探索方法を確立し、これにより薬物を発掘した。すなわち、前記の探索方法で102種のプロドラッグのうち、19種の候補薬物を発掘し、上述の疾病動物モデルで効能を検証した。これは、本発明で開発した候補薬物探索方法を用いてグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を予防又は治療するための薬物を非常に効果的に発掘することができることを意味する。
【0041】
黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルは、多様なタンパク質と毒素(ブドウ球菌エンテロトキシンQ、K(Staphylococcal enterotoxin Q,K))などのタンパク質とLTA(lipoteichoic acid)とペプチドグリカンなどの免疫アジュバント(immune adjuvant)を含んでいる。本発明者らは、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが細菌感染予防及び治療のためのワクチンとして応用可能なのかを確認するためにマウス内の免疫学的指標を評価したとともに、細胞外ベシクルの効能を増加させるか副作用を減少させることが可能な方法を考案した。その結果、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルと合成dsRNAとしてのpolyI:C(polyinosinic-polycytidylic acid)を共に皮下注射したとき、マウス血清内の抗体(IgG)が増加し、脾臓細胞が分泌するサイトカインとしてのIFN(interferon)−γとIL−17が増加した。これは、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを皮下注射したときに抗体反応を誘導するうえ、Th1(1型ヘルパーT細胞、type 1 helper T cell)及びTh17免疫反応を効率よく誘導することができることを意味する。
【0042】
黄色ブドウ球菌による肺炎の発生に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を評価した。その結果、ベシクルワクチンを投与していない場合には肺炎で60%のマウスが死亡したが、ベシクルワクチンを投与した場合には肺炎による死亡が観察されなかった。これは、ベシクルワクチンを予め投与した場合に効率よく細菌感染を予防することができることを意味する。
【0043】
本発明によればブドウ球菌由来細胞外ベシクルにより各種疾病の発生が可能であることを前述した。これは、細胞外ベシクルが疾病の発生に重要な原因因子であることを意味する。疾病の原因因子を診断する方法を提供するために、細菌由来細胞外ベシクルに遺伝物質が存在するかを確認した結果、16S rRNA及びDNAが存在することをPCR技法で確認した。これは、感染部位又は患者の血液などから採取した細胞外ベシクルの遺伝物質の分析によって疾病の原因因子を効率よく診断することが可能な方法を提供する。
【0044】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。ところが、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるもので、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0045】
実施例1.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)細胞の電子顕微鏡観察
黄色ブドウ球菌(ATCC14458)をニュートリエントブロス(nutrient broth)で培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした後、培養液を10,000×gで20分間遠心分離した。沈殿した黄色ブドウ球菌細胞を2.5%グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)で2時間固定(fix)させ、1%四酸化オスミウム(osmium tetroxide)で1時間後固定(post-fix)させた後、エタノール(ethanol)で段階的脱水過程を経てエポキシ樹脂ブロック(epoxy resin)を作り、70nmの厚さに超薄切片を作った。細胞切片をグロー放電炭素コート銅グリッド(glow-discharged carbon-coated copper grid)に3分間吸着させた後、2%酢酸ウラニル(uranylacetate)とクエン酸鉛で染色(staining)した。JEM101(Jeol、Japan)透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で観察した。図1の透過電子顕微鏡イメージに示すように、黄色ブドウ球菌細胞の表面外にサイズ20〜100nmの細胞外ベシクルが分泌されることを分かる。
【0046】
走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)観察のために、上記と同様に培養した黄色ブドウ球菌を10,000×gで20分間遠心分離して沈澱させた後、2.5%グルタルアルデヒドロで1時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システム(HCP−2臨界点乾燥器(HCP−2 critical point dryer)、HITACH、Japan)を用いて臨界点乾燥(critical point drying)を行った。細菌サンプルを試料台(stub)にのせて白金(Pt)でコートした後、JSM−7401F(Jeol、Japan)走査電子顕微鏡で観察した。
【0047】
図2の走査電子顕微鏡イメージに示すように、黄色ブドウ球菌細胞の表面外に細胞外ベシクルが分泌されることが分かる。
【0048】
実施例2.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの製造
[一般的な細胞外ベシクル分離方法]
黄色ブドウ球菌を、3mLのニュートリエントブロスが入っている試験管に接種し、37℃で6時間培養した後、その5mLを500mLのニュートリエントブロスが入っている2Lの三角フラスコに移して37℃で4時間培養し、吸光度(600nm)値が1.0となるようにした。培養液を容量500mLの高速遠心分離チューブ(high speed centrifuge tube)に入れた後、4℃で10,000×gで2分間遠心分離を行った。細菌を除去した上澄液を、孔径0.45μmのメンブレインフィルター(membrane filter)を1回通過させた後、分子量100kDa以下のタンパク質を除去することが可能なメンブレインを装着したQuixstand systemを用いて25倍濃縮した。濃縮液を孔径0.22μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブ(ultracentrifuge tube)に入れて4℃で150,000×gで3時間超遠心分離(ultracetrifugation)した。沈殿物をPBS(phosphate buffered saline)で懸濁(resuspension)した後、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを得た。
【0049】
[プロテオーム分析のための細胞外ベシクル分離方法]
前記一般的な細胞外ベシクル分離方法と同様の方法で得られた濃縮液を、孔径0.22μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブに入れて4℃で150,000×gにて3時間超遠心分離した。沈殿物を50%Optiprep2.2mLで懸濁した後、容量5mLの超遠心分離チューブの底部に入れ、40%Optiprep2mLと10%Optiprep0.8mLを順次入れた。その後、200,000×gで2時間超遠心分離を行った。40%Optiprepと10%Optiprepとの間の層から細胞外ベシクルを得た。
【0050】
実施例3.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの特性
実施例2の方法によって黄色ブドウ球菌から分離した細胞外ベシクルをグロー放電炭素コート銅グリッドに3分間吸着させた。グリッドを蒸留水で洗浄した後、2%酢酸ウラニルで染色した。JEM101透過電子顕微鏡で観察した。
【0051】
図3aの透過電子顕微鏡イメージに示すように、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルは閉じた球状をしており、20〜100nmのサイズを有することが分かる。分離した細胞外ベシクルをカバーガラス(cover glass)に付けた後、2.5%グルタルアルデヒドで1時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システムを用いて臨界点乾燥を行った。細胞外ベシクルの付いたカバーグラスを試料台にのせて白金でコートした後、JSM−7401F走査電子顕微鏡で観察した。
【0052】
図3bの走査電子顕微鏡イメージに示すように、比較的均一なサイズ(20〜100nm)の円形の細胞外ベシクルが観察された。
【0053】
実施例2の方法によって黄色ブドウ球菌から分離した細胞外ベシクルを1μg/mLの濃度でPBS1mLに希釈した。細胞外ベシクルが入っているPBS1mLをキュベット(cuvette)に入れて動的光散乱粒度分析器で分析し、その結果を図4に示した。
【0054】
図4に示すように、細胞外ベシクルは、サイズが20〜100nmであり、平均サイズは28.3nmであった。
【0055】
全体細胞(whole cell)、細胞壁(cell wall)、膜(membrane)、細胞質(cytosol)のタンパク質は次の方法で得た。黄色ブドウ球菌を3mLのニュートリエントブロスで培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした後、10,000×gで20分間遠心分離して細胞沈殿物を得た。前記沈殿物に20μg/mLのリソスタフィンバッファ (lysostaphin)(Tris−EDTA)を入れて37℃で15分間処理した。超音波分解(sonication)方法で細胞を完全に粉砕させた後、8000×gで10分間遠心分離して不溶性物質(insoluble material)を除去し、上澄液を全体細胞タンパク質として使用した。プロトプラスト(protoplast)を形成するように黄色ブドウ球菌細胞沈殿物に20μg/mLのリソスタフィンバッファ(Tris−EDTA)と1.1Mのスクロース(sucrose)を入れて37℃で15分間処理した。10,000×gで20分間遠心分離した後、上澄液を細胞壁タンパク質として使用し、沈殿物は低張膨張液(hypotonic buffer)に溶かした後、さらに40,000×gで1時間超高速遠心分離した。上澄液から細胞質タンパク質を得、沈殿物はトリスバッファ(10mM Tris−HCl、pH8.0)に懸濁して膜タンパク質として使用した。分離された全体細胞、細胞壁、膜、細胞質タンパク質と実施例2で分離された細胞外ベシクルタンパク質をそれぞれ7μgずつ用意した後、5×ローディング染色剤(loading dye)(250mM Tris−HCl、10%SDS、0.5%ブロモフェノールブルー(bromophenol blue)、50%グリセロール(glycerol))を1×となるように入れ、100℃で10分間高温処理した。10%ポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel)を用意し、サンプルをロードした。80Vで2時間電気泳動した後、ゲル(gel)をクマシー(0.25%クマシーブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue))で2時間染色する。染色済みのゲルを脱染(destaining)溶液(メタノール:DDW:酢酸=5:4:1)で6時間反応させた。
【0056】
図5は黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのタンパク質パターンをクマシー染色法(Coomassie staining)によって全体細胞タンパク質(WC)、細胞壁タンパク質(CW)、膜タンパク質(MP)、細胞質タンパク質(CY)のパターンと比較した結果であって、特定タンパク質が細胞外ベシクル(EV)内に選別(sorting)されることが分かる。
【0057】
実施例4.表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)細胞の電子顕微鏡観察
表皮ブドウ球菌(ATCC12228)をニュートリエントブロスで培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした後、培養液を10,000×gで20分間遠心分離した。沈澱した表皮ブドウ球菌細胞を2.5%グルタルアルデヒドで2時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経てエポキシ樹脂ブロックを作り、70nmの厚さに超薄切片を作った。細胞切片をグロー放電炭素コート銅グリッドに3分間吸着させた後、2%酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色した。JEM101透過電子顕微鏡で観察した。図6の透過電子顕微鏡イメージから、表皮ブドウ球菌細胞の表面外にサイズ20〜100nmの細胞外ベシクルが分泌されることが分かる。
【0058】
走査電子顕微鏡観察のために、上記と同様に培養した表皮ブドウ球菌を10,000×gで20分間遠心分離して沈澱させた後、2.5%グルタルアルデヒドで1時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システムを用いて臨界点乾燥を行った。サンプルを試料台にのせて白金でコートした後、JSM−7401F走査顕微鏡で観察した。図7の走査電子顕微鏡イメージから、表皮ブドウ球菌細胞の表面外に細胞外ベシクルが分泌されることが分かる。
【0059】
実施例5.表皮ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの製造
表皮ブドウ球菌を3mLのニュートリエントブロスが入っている試験管に接種し、37℃で6時間培養した後、その中で5mLを500mLのニュートリエントブロスが入っている2Lの三角フラスコに移して37℃で4時間培養し、吸光度(600nm)値が1.0となるようにした。培養液を容量500mLの高速遠心分離チューブに入れた後、4℃、10,000×gで20分間遠心分離した。細菌を除去した上澄液を、孔径0.45μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、分子量100kDa以下のタンパク質を除去することが可能なメンブレインを装着したQuixstand systemを用いて25倍濃縮した。濃縮液を孔径0.22μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブに入れて4℃、150,000×gで3時間超遠心分離した。沈殿物をPBSで懸濁した後、表皮ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを得た。
【0060】
実施例6.表皮ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの特性
実施例5の方法によって表皮ブドウ球菌から分離した細胞外ベシクルをグロー放電炭素コート銅グリッドに3分間吸着させた。グリッドを蒸留水で洗浄した後、2%酢酸ウラニルで染色し、JEM101透過電子顕微鏡で観察した。
【0061】
図8aの透過電子顕微鏡イメージに示すように、表皮ブドウ球菌由来細胞外ベシクルは閉じた球状をしており、20〜100nmのサイズを有することが分かる。
【0062】
表皮ブドウ球菌から分離した細胞外ベシクルをカバーガラスに付けた後、2.5%グルタルアルデヒドで1時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システムを用いて臨界点乾燥を行った。細胞外ベシクルの付いたカバーガラスを試料台にのせて白金でコートした後、JSM−7401F走査電子顕微鏡で観察した。
【0063】
図8bの走査電子顕微鏡イメージに示すように、比較的均一なサイズ(20〜100nm)の円形の細胞外ベシクルが観察された。
【0064】
実施例5の方法によって表皮ブドウ球菌から分離した細胞外ベシクルを1μg/mLの濃度でPBS1mLに希釈した。細胞外ベシクルが入っているPBS1mLをキュベットに入れて動的光散乱粒度分析器で分析し、その結果を図9に示した。
【0065】
図9に示すように、細胞外ベシクルはサイズが20〜100nmであり、平均サイズは34nmであった。
【0066】
実施例7.枯草菌(Bacillus subtilis)細胞の電子顕微鏡観察
枯草菌(KCTC3729)をニュートリエントブロスで培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした後、培養液を6000×gで15分間遠心分離した。沈澱した枯草菌細胞を2.5%グルタルアルデヒドで2時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経てエポキシ樹脂ブロックを作り、70nmの厚さに超薄切片を作った。細胞切片をグロー放電炭素コート銅グリッドに3分間吸着させた後、2%酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色し、JEM101透過電子顕微鏡で観察した。
【0067】
図10の透過電子顕微鏡イメージに示すように、枯草菌細胞の表面外にサイズ20〜100nmの細胞外ベシクルが分泌されることが分かる。
【0068】
走査電子顕微鏡観察のために、上記と同様に培養した枯草菌を6,000×gで15分間遠心分離して沈澱させた後、2.5%グルタルアルデヒドで1時間固定させ、1%四酸化オスミニウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システムを用いて臨界点乾燥を行った。サンプルを試料台にのせて白金でコートした後、JSM−7401F走査電子顕微鏡で観察した。図11の走査電子顕微鏡イメージに示すように、枯草菌細胞の表面外に細胞外ベシクルが分泌されることが分かる。
【0069】
実施例8.枯草菌由来細胞外ベシクルの製造
枯草菌を3mLのニュートリエントブロスが入っている試験管に接種し、37℃で6時間培養した後、その中で5mLを500mLのニュートリエントブロスが入っている2Lの三角フラスコに移して37℃で4時間培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした。培養液を容量500mLの高速遠心分離チューブに入れた後、4℃で6000×gにて20分間遠心分離を行った。細菌を除去した上澄液を、孔径0.45μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、分子量100kDa以下のタンパク質を除去することが可能なメンブレインを装着したQuixstand systemを用いて25倍濃縮した。濃縮液を孔径0.22μmのメンブレインフィルターを通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブに入れて4℃で150,000×gにて3時間超遠心分離した。沈殿物をPBSで懸濁した後、枯草菌由来細胞外ベシクルを得た。
【0070】
実施例9.枯草菌由来細胞外ベシクルの特性
実施例8の方法によって枯草菌から分離した細胞外ベシクルをグロー放電炭素コート銅グリッドに3分間吸着させた。グリッドを蒸留水で洗浄した後、2%酢酸ウラニルで染色し、JEM101透過電子顕微鏡で観察した。
【0071】
図12aの透過電子顕微鏡イメージに示すように、枯草菌由来細胞外ベシクルは閉じた球状をしており、20〜200nmのサイズを有することが分かる。
【0072】
枯草菌から分離した細胞外ベシクルをカバーガラスに付けた後、2.5%グルタルアルデヒドで1時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システムを用いて臨界点乾燥を行った。細胞外ベシクルの付いたカバーガラスを試料台にのせて白金でコートした後、JSM−7401F走査電子顕微鏡で観察した。
【0073】
図12bの走査電子顕微鏡イメージに示すように、比較的均一なサイズ(20〜200nm)の円形の細胞外ベシクルが観察された。
【0074】
実施例8の方法によって枯草菌から分離した細胞外ベシクルを1μg/mLの濃度でPBS1mLに希釈した。細胞外ベシクルが入っているPBS1mLをキュベットに入れて動的光散乱粒度分析器で分析し、その結果を図13に示した。
【0075】
図13に示すように、細胞外ベシクルはサイズが20〜100nmであり、平均サイズは30nmであった。
【0076】
前記例らは、グラム陽性細菌の代表的な菌株としての黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、枯草菌などが生長過程で自然的に細胞外ベシクルを分泌することを最初に解明したものであり、細胞外ベシクルを分離製造して多様な特性を明らかにした実施例である。ところが、グラム陽性細菌に由来する細胞外ベシクルは、前記例で提示した細菌にのみ限定されるのではなく、全てのガラム陽性細菌に該当する。分離された細胞外ベシクルを用いた疾病動物モデルは、ヒトの疾病を引き起こす主要病原菌株としての黄色ブドウ球菌に焦点を合わせたが、これに限定されるものではない。
【0077】
実施例10.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのプロテオーム分析
[イン−ゲル(in-gel)トリプシンタンパク質分解(tryptic digestion)方法]
黄色ブドウ球菌から実施例2のプロテオーム分析のための方法で分離した細胞外ベシクル50μgに5×ローディング染色剤を1×となるように仕込み、100℃で10分間高温処理した。4〜20%ノベックストリス−グリシンゲル(Novex Tris-glycine gel)(Invitrogen)を準備し、サンプルをロードした。90Vで2時間電気泳動した後、ゲルコード染色剤(GelCode Blue Stain Reagent、Pierce)で染色した。ゲルを11個の同一サイズに切った後、13ng/μLのトリプシン(trypsin、Promega)を37℃で16時間処理してタンパク質を分解させた。
【0078】
[イン−ソリューション(in-solution)トリプシンタンパク質分解方法]
黄色ブドウ球菌から実施例2のプロテオーム分析のための方法で分離した細胞外ベシクル100μgにメタノール(methanol)をサンプルの4倍体積で入れて混ぜた後、9000×gで10秒間遠心分離した。その後、クロロホルム(chloroform)を同量の体積で入れて混ぜた後、さらに9000×gで10秒間遠心分離した。HPLC用の水をサンプルの3倍体積で入れて混ぜた後、16,000×gで1分30秒間遠心分離した。上澄液が2個の層からなると、上層のみを捨てた後、サンプル体積3倍のメタノールを入れて混ぜ、しかる後に、16,000×gで3分間遠心分離して沈殿物を得た。沈殿物を分解溶液(6M尿素(urea)、40mM重炭酸アンモニウム(ammonium bicarbonate))で懸濁した後、5mMのトリス(tris、2−カルボキシエチル(2-carbocyethyl))ホスフィンヒドロクロライド(phosphine hydrochloride)と常温で1時間還元させた。その後、サンプルに25mMのヨードアセトアミド(iodoacetamide)を入れて光を遮断した状態で常温で30分間反応し、タンパク質をアルキル化(alkylation)させた。最後に、5ng/μLのトリプシンを処理した後、37℃で16時間反応させた。分解されたペプチドはオフゲル分離システム(OFFGEL fractionators system、Agilent)を用いて分離した。まず、24cmのIPGストリップ(IPG strip、 pH3〜10)をIPG再水和(IPG-rehydration)バッファで再水和反応(rehydrate)させた。分解されたペプチドを2.8mLのオフゲル(off-gel)バッファに溶かし、その中で150μLを1レーン(lane)にロードした後、50μA、8000Vで47時間電流を流してペプチドをそれぞれの等電点(pI)によって分離した。分離の後に得たサンプルはC18 ZipTip(Millipore)を用いて脱塩(desalting)した。
【0079】
[ナノイオン化質量分析(Nano−LC−ESI−MS/MS)
イン−ゲル分解方法又はイン−ソリューション分解方法で、用意した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの分解ペプチドを、C18レジン(resin)が充填された微細毛細管カラム(microcapillary column)(75μm×12cm)にロードして次の方法で分離した:3〜30%バッファB70分;30〜40%バッファB5分;40〜90%バッファB20分;血流速度0.2μL/min(バッファA組成:0.1%ギ酸(formic acid)in H2O、バッファB組成:0.1%ギ酸(formic acid)in ACN)。溶離した(eluted)ペプチドはLTQ−イオン−トラップ(LTQ-ion-trap)質量分析器((Thermo Finnigan)を用いて分析した。イオン化電気スプレイ(electrospray)の電圧は2.0kVとし、35%の規格化衝突エネルギー(normalized collision energy)条件で質量分析(MS/MS)を行った。全てのスペクトル(spectra)はデータ依存性スキャン(data-dependent scan)で獲得した。LTQの媒介変数(parameter)はフルマススキャン(full MS scan)における5個の最大ピーク(most intense peak)を断片化(fragmentation)し、動的排除(dynamic exclusion)の繰り返し回数(repeat count)を1で、繰り返し時間(repeat duration)を30秒、動的排除時間(dynamic exclusion duration)を180秒、排除質量(exclusion mass)を±1.5Da、動的排除のリストサイズ(list size)を50に設定した。
【0080】
[データ分析]
既存にアミノ酸塩基配列が構築された9個の黄色ブドウ球菌データベースをtarget(フォワード、forward)とdecoy(リバースド、reversed)の塩基配列組み合わせで一つのNCBIのデータベースを作った。質量分析から出た全てのスペクトル(MS/MSスペクトル)を前記データベース及びSEQUESTエンジンツール(SEQUEST engine tool)を用いて探索した。同定したペプチドの仮陽性率(false-positive rate)は1%以下にし、最小唯一(unique)ペプチドが2つ以上マッチ(match)されたタンパク質のみを選別した。
【0081】
[結果]
プロテオーム分析の結果、図14に示すように、イン−ゲル分解方法で41個のタンパク質が、イン−ソリューション分解方法で84個のタンパクシツが同定された。イン−ゲル方法の結果のうち、35個のタンパク質がイン−ソリューション方法で同定したタンパク質と重なり合って合計90個の黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのタンパク質を見つけ出した。同定された90個のタンパク質は表1に示した。
【0082】
同定された細胞外ベシクルタンパク質の中には、疾病に関連した多様なタンパク質が存在した。病原性(virulence)タンパク質として、敗血症又は毒素ショック症候群(toxic shock syndrome)を起こすスーパー抗原(superantigen)であるブドウ球菌エンテロトキシンQ(staphylococcus enterotoxin Q)、ブドウ球菌分泌抗原(staphylococcus secretory antigen)ssaA1とssaA2が存在した。また、赤血球を破壊し且つヘモグロビンを溶かすα−溶血素(alpha-hemolysin)とγ−溶血素(gamma-hemolysin)などの毒素が観察された。また、宿主組織内への細菌の浸潤と潜入に直接関与するプロテアーゼ(protease)としてのスタホパインA(staphopain A)と細胞外ECM及び血漿結合タンパク質(extracellular ECM and plasma binding protein)が存在した。また、血液凝固関連タンパク質としてはスタフィロコアグラーゼ(staphylocoagulase)やフォン・ヴィレブランド因子−結合タンパク質(von Willebrand factor-binding proteins)などが存在したが、このようなタンパク質は、播種性血管内凝固を特徴とする敗血症、毒素ショック症候群(toxic shock syndrome)などの発生だけでなく、動脈の血栓(thrombosis)形成による急性冠状動脈症候群(acute coronary syndrome)、脳卒中(stroke)、静脈の血栓形成による深部静脈血栓症(deep-vein thrombosis)、血栓が剥離しながら生ずる塞栓(embolism)により発生する肺動脈塞栓症(pulmonary embolism)などの様々な血管の塞栓症の病因に関与する。また、IgG−結合タンパク質(IgG-binding protein)の一つであるSbIの場合、宿主免疫細胞の食作用(phagocytosis)を抑制して細菌の免疫回避機能を維持するうえ、上皮細胞(epidermal cell)におけるIL−18の発現を誘導し、血清(serum)内のIgE抗体を増加させてアトピー皮膚炎を引き起こすことに関与することができる。
【0083】
(表1)
黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのプロテオーム
【0084】
実施例11.体外における黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるマクロファージの先天免疫反応
マウスマクロファージ(RAW 264.7)を1×105となるように24ウェルプレートに接種した後、24時間培養した。PBSで1回洗浄した後、10% FBS/RPMI培地500μLを仕込み、それぞれ1、10、100、1000、10000ng/mLの濃度で実施例2の方法によって分離した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、15時間培養した。培養液を集めて4℃で500×gにて10分間遠心分離し、上澄液を取った後、さらに3000×gで20分間遠心分離し、上澄液を取った。分離された上澄液に入っているサイトカインの量をELISA(enzyme linked immunosorbant assay)法によって測定した。
【0085】
図15はサイトカインの量を示す結果であって、細胞外ベシクルの量に比例して炎症性サイトカインとしてのTNF−αとIL−6が増加することが分かる。これは黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルがマクロファージに作用して先天免疫反応によって宿主内で炎症を誘発することができることを意味する。
【0086】
実施例12.体外における黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる皮膚線維芽細胞の先天免疫反応
マウスの皮膚組織を採取して表皮を剥がした後、真皮部分を細かく切り、ここにトリプシンを処理してそれぞれの細胞に分離して皮膚線維芽細胞を得た。こうして得た線維芽細胞を24ウェルプレートに1×104個の細胞を接種した後、24時間培養した。培養された細胞のDMEM培地に1、10μg/mLの黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、24時間培養した。24時間の後、培養液を集めて細胞を遠心分離した後、上澄液を得、ELISA法で、上澄液に存在する炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−6)と後天免疫の分化に影響を与えるサイトカイン(TSLP)、ケモカイン(MIP−1α、エオタキシン(Eotaxin))の量を測定して図16に示した。
【0087】
図16は免疫及び炎症関連サイトカインの量が黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによって増加することを示す。これは、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが皮膚の線維芽細胞に作用して炎症性サイトカインを発生させ、免疫反応に作用する様々な免疫細胞を取り入れて炎症を引き起こすことができることを意味する。
【0088】
実施例13.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを用いたアトピー皮膚炎(atopic dermatitis)の動物モデル
マウス(SKH−HR1種、雌)の背にDurapore(3M)テープを4〜6回取り付けたり取り外したりすることを繰り返し行った。その後、2cm×2cm程度のガーゼをマウスの背にのせた後、100μLのPBSに溶けている0.1μg、5μg、10μgの黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをガーゼに処理した後、Tegaderm(3M)を用いてガーゼが離れないようにマウスの背に固定した。これを週3回4週間繰り返し行った。最終処理24時間後にマウスを安楽死させ、皮膚組織を摘出した(図17参照)。組織学的分析の結果、テープストリッピングの後に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを投与した場合、アトピー皮膚炎患者の皮膚組織から見られる特徴としての表皮層が厚くなっており、真皮層に浸潤した炎症細胞の中で好酸球と肥満細胞の浸潤を定量化したとき、生理食塩水を投与した場合に比べて細胞外ベシクルを投与した場合に上皮細胞層の肥厚(epidermal thickness)と好酸球(eosinophils)と肥満細胞(mast cells)の浸潤が確然に増加した(図18及び図19参照)。また、皮膚組織におけるアトピー皮膚炎の特徴的な免疫学的異常所見である2型ヘルパーT細胞(type 2 helper T cell、Th2細胞)免疫反応の発現様相を評価したとき、Th2細胞から分泌されるサイトカインとしてのIL−4とIL−5の濃度が細胞外ベシクルを投与した場合に増加し、これらのサイトカインによって誘導されるケモカイン(chemokine)としてのエオタキシン(eotaxin)の濃度も細胞外ベシクルを投与した場合に増加していた(図20参照)。
【0089】
実施例14.アトピー皮膚炎患者の皮膚洗浄液における黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの測定
アトピー皮膚炎患者の患部を滅菌食塩水で多数回洗浄し、40mLの洗浄液を集めた。洗浄液に存在する異物と細菌を除去するために、5000g、10,000gで遠心分離した後、上澄液を集めて0.45μm、0.22μmのフィルターで濾過した。濾過した洗浄液を100kDサイズの物質のみ濾過する道具(centriprep)を用いて1mLに濃縮させた。濃縮液(lavage fluid)の一部を保管し、残りは同体積の滅菌食塩水を添加して150,000gで超遠心分離して細胞外ベシクル(EV fraction)を得た。得られたlavage fluidとEV fractionに黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(SA_EV)が存在するかを確認するために、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに特異的な抗体を用いてELISA法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異タンパク質が存在するかを評価した。具体的に、まず黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの抗原に特異的な抗体を96ウェルプレートにコートした後、1%BSA(Bovine Serum Albumin)でブロッキング(blocking)し、得られた部分を2時間反応させた。2時間の後、Tween20が含有されたPBSを用いてウェルをよく洗浄し、ビオチン基を持っている黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル抗原に特異的な抗体を2時間処理した。その後、ストレプトアビジンに連結されたHRP(Horseradish peroxidase)を処理し、HRPと反応して光を発生させる基質(substrate)としてのBM−PODを処理した後、発生する光の量を測定してRLU値で表示した。
【0090】
図21は患者から得たlavage fluidにおける黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに存在する抗原が存在することを示す。また、lavage fluidから別にEV fractionのみを分離した結果より、アトピー皮膚炎患者の患部に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに存在する抗原が存在することを再び確認することができる。
【0091】
実施例15.アトピー皮膚炎患者の血清内における黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに対する特異抗体(IgE)の増加
0〜10才のアトピー皮膚炎患者群20名と多様な同年齢帯の正常対照群20名から血液を採取し、4℃で3500×gにて10分間遠心分離した後、上澄液としての血清を取った。
【0092】
図22は細胞外ベシクルに対するIgG1とIgE抗体をELISA法で測定した結果であって、正常対照群に比べてアトピー皮膚炎患者群において、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに特異的なIgE抗体が血清内に確然に増加していた。
【0093】
実施例16.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる気道粘膜のTh17炎症
マウスをケタミンとランプン(Rampun)の投与によって麻酔した後、1μg、10μgの黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを30μLの生理食塩水に混ぜてマウスの鼻を介して吸入させた。先天免疫反応に対する黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの影響を調べるために、24時間後に1mLの生理食塩水を用いてマウスの気管支肺胞洗浄液を収得し、炎症の度合いを確認した(図23参照)。炎症細胞の数とTh17の分化を誘導する炎症性サイトカインとしてのIL−6の量を測定した結果、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの量に比例して、気管支肺胞洗浄液に存在する炎症細胞(特に、好中球)の数とIL−6の量が増加した(図24参照)。これは黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルが気道粘膜にTh17関連炎症を誘導することができることを意味する。
【0094】
黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルによる後天免疫反応を調べるために、週2回3週間マウスの鼻を介して1μgの黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルを吸入させ、最終吸入24時間後に気管支肺胞洗浄液を得て炎症反応を確認した(図25参照)。
【0095】
図26から分かるように、気管支肺胞洗浄液に存在する炎症細胞が黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルを吸入させたグループで大きく増加し、主に好中球が浸潤することを確認した(図26a参照)。また、気管支肺胞洗浄液に存在するサイトカインの量から気道粘膜の免疫反応を確認した結果、Th17細胞から分泌されるサイトカインとしてのIL−17の量が黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを吸入させたグループで大きく増加したことを確認した(図26b参照)。
【0096】
前記結果は、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが反復的に気道を介して吸入されたとき、気道粘膜にTh17免疫反応による好中球性炎症が発生することを意味する。
【0097】
実施例17.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる敗血症
実施例2の方法で分離した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを15、25、50μgの量でそれぞれマウス(C57B6種、雄)3匹に血管注射(intervenous)して12時間ごとに死亡マウスの数を確認した(図27参照)。
【0098】
その結果、図28の生存(survival)グラフから分かるように、25μgと50μgの細胞外ベシクルをマウスに注入したときに生存率が66.6%に減少し、一定量以上の細胞外ベシクルによってマウスの死亡が誘導されることが分かる。
【0099】
図29はマウス(C57B6種、雄)に黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルを注射した後、12時間マウスの体温を測定した結果である。体温測定のために直腸体温計をマウスの肛門に注入して体温計のデジタル画面に表示された数値を2時間ごとに記録した。その結果、15、25、50μgの細胞外ベシクルによって全身性炎症反応(systemic inflammatory response syndrome、SIRS)の指標である体温が減少する低体温症が観察された。
【0100】
実施例18.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる血管内血液凝固及び血栓形成
マウス(C57B6種、雄)に実施例2の方法で分離した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル5μgを多様な経路を介して8時間間隔で3回投与し、6時間後にマウスを安楽させ、肺を摘出した(図30参照)。 生理食塩水(PBS)をマウスの尾に血管注射(Intravenous、I.V.)して陰性対照群として使用した。摘出した肺は細胞の核をヘマトキシリン(hematoxylin)で染色し(青色)、細胞質をエオシン(eosin)で染色する(赤色)H&E(Hematoxylin-Eosin)方法で染色した。
【0101】
図31はH&E染色結果を示すもので、細胞外ベシクルをマウスの尾に血管注射(intravenous、I.V.)した場合には静脈に血栓が生じ、皮下注射(subcutatneous、S.C.)した場合には血管周辺に炎症細胞の浸潤が観察され、鼻腔投与(intranasal、I.N.)した場合には肺血管に血栓が観察された。
【0102】
マウス血液内の播種性血管内凝固症の指標を測定するために、マウスの心臓から採取した血液を抗凝固剤としてのクエン酸ナトリウム(sodium citrate)と9:1の比率となるように混ぜて血漿(plasma)にした。図32は播種性血管内凝固症の指標であるD−dimerをD−dimer診断用キットを用いて測定した結果であって、全ての投与経路において対照群に比べて血漿内D−dimerの量が増加し、特に血管注射(I.V.)と皮下注射(S.C.)の際に血漿内D−dimerの増加量が高いことが分かった。また、播種性血管内凝固症の別の指標である血小板の減少を測定するために、血漿1μLを199μLの1%シュウ酸アンモニウム(ammonium oxalate)で希釈し、湿潤板で10分間反応させた後、血球計算器(hemacytometer)に10μLを入れ、血小板(platelet)の個数を測定してその結果を図33に示した。
【0103】
図33に示すように、全ての投与経路において、細胞外ベシクルを処理した群は対照群に比べて血小板の数が減少する血小板減少症(thrombocytopenia)現象が観察された。
【0104】
実施例19.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療候補薬物in vitroスクリーニングシステムの確立
前記実施例らに基づいて黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルにより誘導される炎症性サトカインが各種疾病に大きく関与することを確認した。これに基づいて炎症性サイトカインの分泌を抑制する物質を発掘することが可能なin vitroスクリーニングシステムを開発した。図34は黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる炎症性サイトカインの分泌を抑制する物質を発掘するための模式図であって、実施例2の方法で製造した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(1μg/mL)を単独で或いは薬物候補物質(10μM)と共に実施例11の方法で準備したマウスマクロファージ(RAW264.7)に処理した後、37℃のインキュベータで15時間培養した。15時間後に上澄液を取った後、4℃、500×gで10分間遠心分離し、しかる後に、4℃で3000×gにて20分間遠心分離を行った。分離された上澄液に入っている炎症性サイトカインとしてのIL−6の量をELISA法によって測定した。これはin vitroで黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルにより誘導されるIL−6の分泌を抑制する候補物質をスクリーニングする方法を確立したもので、これにより黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療候補薬物を提供することができる。
【0105】
実施例20.In vitroスクリーニングシステムで発掘したプロドラッグの体内効能検証
図35は実施例19の方法で102種のプロドラッグ[アセトアミノフェン(Acetaminophen)、アセチルシステイン(Acetylcysteine)、アロプリノール(Allopurinol)、塩酸アルプレノロール(Alprenolol HCl)、塩酸アミトリプチリン(Amitriptyline HCl)、アトロピン(Atropine)、ブレチリウムトシレート(Bretylium tosylate)、ブロモフェニラミン(Bromopheniramine)、ブデソニド(Budesonide)、塩酸ブスピロン(Buspirone HCl)、セフロキシム(Cefuroxime)、 抱水クロラール(Chloral hydrate)、塩酸クロルプロマジン(Chlorpromazine HCl)、シメチジン(Cimetidine)、塩酸クロミプラミン(Clomipramine HCl)、 クロトリマゾール(Clotrimazole)、シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、塩酸デシプラミン(Desipramine HCl)、ジクロフェナク(Diclofenac)、ジフルニサル(Diflunisal)、ジルチアゼム(Diltiazem)、塩酸ジフェンヒドラミン(Diphenhydramine HCl)、ジソピラミド(Disopyramide)、ジスルフィラム(Disulfiram)、D−マンニトール(D-Mannitol)、ドキセピン(Doxepin)、ドキシサイクリン水和物(Doxycycline hydrate)、コハク酸ドキシラミン(Doxylamine succinate)、塩化エドロホニウム(Edrophonium chloride)、マレイン酸エナラプリル(Enalapril maleate)、ファモチジン(Famotidine)、フェンブフェン(Fenbufen)、フェノフィブラート(Fenofibrate)、フェノプロフェンカルシウム塩水和物(Fenoprofen calcium salt hydrate)、フルナリジン二塩酸塩(Flunarizine dihydrochloride)、フルフェナジン二塩化物(Fluphenazine dichloride)、フルルビプロフェン(Flurbiprofen)、フロセミド(Furosemide)、ゲムフィブロジル(Gemfibrozil)、グリクラジド(Gliclazide)、グリピジド(Glipizide)、ハロペリドール(Haloperidol)、ヒドロクロロチアジド(Hydrochlorothiazide)、ヒドロフルメチアジド(Hydroflumethiazide)、塩酸ヒドロキシジン(Hydroxyzine HCl)、イブプロフェン(Ibuprofen)、塩酸イミプラミン(Imipramine HCl)
、インダパミド(Indapamide)、インドール−2カルボン酸(Indole-2-carboxylic acid)、 インドメタジン(Indomethacin)、イプラトロピウム(Ipratropium)、ケトプロフェン(Ketoprofen)、ケトロラックトリス塩(Ketorolac tris salt)、塩酸マプロチリン(Maprotiline HCl)、メクロフェナム酸(Meclofenamic acid)、メラトニン(Melatonin)、メトホルミン(Metformin)、塩酸メタピリレン(Methapyrilene HCl)、メチマゾール(Methimazole)、メトカルバモール(Methocarbamol)、塩酸メトクロプラミド(Metoclopramide HCl)、メトロニダゾール(Metronidazole)、ナブメトン(Nabumetone)、ナプロキセン(Naproxen)、臭化ネオスチグミン(Neostigmine Br)、ナイアシン(Niacin)、塩酸ニカルジピン(Nicardipine HCl)、ニフェジピン(Nifedipine)、ニトロフラントイン (Nitrofurantoin)、ニザチジン(Nizatidine)、ノルエチンドロン(Norethindrone)、ノルトリプチリン(Nortriptyline)、塩酸オルフェナドリン(Orphenadrine HCl)、オキシプチニン(Oxybutynin)、塩酸フェンフォルミン(Phenformin HCl)、フェニルブダゾン(Phenylbutazone)、フェニトイン(Phenytoin)、ピロキシカム(Piroxicam)、プレドニゾン(Prednisone)、プロベネシド(Probenecid)、塩酸プロプラノロール(Propranolol HCl)、臭化ピリドスチグミン(Pyridostigmine Br)、塩酸ラニチジン(Ranitidine HCl)、スピロノラクトン(Spironolactone)、スルファメト(Sulfameth)、スルピリド(Sulpiride)、テノキシカム(Tenoxicam)、テルフェナジン(Terfenadine)、テオフィリン(Theophylline)、塩酸チクロピジン(Ticlopidine HCl)、トラザミド(Tolazamide)、トラゾリン(Tolazoline)、トルブタミド(Tolbutamide)、トルフェナム酸(Tolfenamic acid)、塩酸トラマドール(Tramadol HCl)、トラニルシプロミン(Tranylcypromine)、塩酸トラゾドン(Trazodone HCl)、トリアムテレン(Triamterene)、トリクロルメチアジド(Trichlormethiazide)、塩酸トリペレナミン(Tripelennamine HCl)、ベラパミル(Verapamil)、ワルファリン(Warfarin)]を処理してIL−6の量を陽性対照群に対して50%未満に減少させる薬物候補物質19種[アセトアミノフェン(Acetaminophen)、塩酸アミトリプチリン(Amitriptyline HCl)、アトロピン(Atropine)、ブレチリウムトシレート(Bretylium tosylate)、ブロモフェニラミン(Bromopheniramine)、塩酸クロルプロマジン(Chlorpromazine HCl)、塩酸クロミプラミン(Clomipramine HCl)、シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、塩酸デシプラミン(Desipramine HCl)、ジスルフィラム(Disulfiram)、ドキセピン(Doxepin)、ドキシサイクリン水和物(Doxycycline hydrate)、コハク酸ドキシラミン(Doxylamine succinate)、ハロペリドール(Haloperidol)、塩酸イミプラミン(Imipramine HCl)、塩酸ニカルジピン(Nicardipine HCl)、ノルトリプチリン(Nortriptyline)、塩酸プロプラノロール(Propranolol HCl)、テノキシカム(Tenoxicam)]を発掘した結果である。
【0106】
図36は黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをC57BL/6マウス(雄、6週、グループ当たり4匹)に鼻腔で1μg注射して免疫反応を誘導したマウスモデルから、前記発掘したプロドラッグ(10mg/kg)を共に腹腔注射して12時間後に気管支肺胞洗浄液を得、気管支肺胞洗浄液内でIL−6の量をELISA法によって定量した結果である。In vitroスクリーニングシステムを介して発掘したドキセピン(Doxepin)がブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる気管支肺胞洗浄液IL−6の増加を抑制する効果があることを確認した。また、これをin vitroスクリーニングを介して発掘した他の薬物候補物質としてのハロペリドール(Haloperidol)と共に注射したとき、IL−6を減少させる効果が増大することを確認した。
【0107】
これにより実施例19で記述した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを用いたin vitro薬物スクリーニングシステムが有効であることを確認し、細胞外ベシクルにより誘導される各種疾病に有効な薬物を提示した。
【0108】
実施例21.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるin vitro免疫反応
実施例11で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスマクロファージ(RAW264.7)に処理したとき、Th17細胞への分化を誘導するIL−6の分泌が誘導されることにより、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが炎症細胞と作用して宿主内で免疫反応を誘発することができることが分かった。マウスの骨髄由来樹枝状細胞(Bone marrow-derived dendritic cell、BMDC)にDiI(1,1'-dioctadecyl-3,3,3',3'-tetramethylindocarbocyanine perchlorate)染色剤で標識した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理し、6時間後に蛍光顕微鏡で観察したときに樹枝状細胞がベシクルを細胞内に獲得することを確認した(図37参照)。
【0109】
また、細胞外ベシクルを樹枝状細胞に24時間処理した後、樹脂状細胞の培養液を集めてELISA法でサイトカインを測定した結果、Th1誘導サイトカインとしてのIL−12が増加し(図38参照)、樹枝状細胞の活性化標識であるCD40とMHCIIの発現が増加した(図39参照)。以上の結果は、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが抗原提示細胞に作用して後天免疫反応を増加させるうえ、T細胞のTh1及びTh17細胞への分化を誘導することを示唆する。
【0110】
実施例22.岐路ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの皮下注射によるベシクル特異抗体及びT細胞免疫反応
黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルワクチンによる抗体免疫反応を測定するために、マウス(C57B6種、雄)に実施例2の方法で分離した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル1、5、20μgを1週間隔で3回皮下注射によって投与し、1週目、2週目、3週目にマウスの目の血管から血液を一部採取した(図40参照)。採取した血液を常温で30分間凝固させ、4℃、3,500×gで10分間遠心分離した後、上澄液としての血清を取った。
【0111】
図41は血清における細胞外ベシクルに対する免疫反応の指標としてのIgG抗体をELISA法で測定した結果であって、2回投与後から用量に依存的にベシクルタンパク質に対する特異抗体形成が増加することを示す。これは細胞外ベシクルを2回以上皮下注射したとき、黄色ブドウ球菌又は菌由来の細胞外ベシクルに含有されたタンパク質に対する特異抗体が形成されることを意味する。
【0112】
ブドウ球菌由来ベシクルの3回投与によってベシクル特異T細胞免疫反応を評価するために、マウス(C57B6種、雄)に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル2、5、10μgを5日間隔で3回皮下注射によって投与し、最終接種24時間後、脾臓細胞から免疫反応を測定した(図42参照)。
【0113】
図43は細胞外ベシクルの投与によるT細胞免疫反応を測定するために、脾臓から免疫細胞を分離し、72時間体外で培養した後、培養上澄液におけるサイトカインを測定した結果であって、Th1細胞から分泌されるIFN−γとTh17細胞から分泌されるIL−17の分泌が細胞外ベシクル(10μg)を投与した群で有意に増加した。
【0114】
前記結果は、黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルを予防ワクチンとして投与したとき、体液性免疫反応であるIgG抗体の増加だけでなく、細菌に対する防御に重要なT細胞免疫反応からTh1及びTh17免疫反応が誘導され、黄色ブドウ球菌による感染と菌由来の細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0115】
実施例23.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル皮膚塗抹(パッチ、patch)投与によるベシクル特異抗体及びT細胞免疫反応
実施例13の方法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル5μgを4週間皮膚にパッチ(patch)投与して免疫反応を評価した(図44参照)。図45は黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの皮膚塗抹投与によるIgG抗体形成を示すもので、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異IgG抗体が、生理食塩水を投与した場合に比べて細胞外ベシクルを投与した場合に大きく増加した。
【0116】
細胞外ベシクルの投与によるT細胞免疫反応を測定するために、脾臓から免疫細胞を分離し、24時間黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル0.1μg/mLで体外で培養した後、培養上澄液におけるサイトカインの濃度を測定して図46に示した。
【0117】
図46に示すように、Th1細胞から分泌されるIFN−γとTh17細胞から分泌されるIL−17の分泌が、生理食塩水を投与した群に比べて黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを投与した群で大きく増加した。
【0118】
前記結果は、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの投与によって黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異的なTh1及びTh17細胞免疫反応が誘導されたものであって、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを皮膚塗抹投与したとき、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異タンパク質に対する抗体形成だけでなく、T細胞免疫反応を誘導することにより、黄色ブドウ球菌による感染と菌由来の細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防又は治療することができることを意味する。
【0119】
実施例24.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルと免疫アジュバント(polyI:C)の併合投与によるベシクル特異抗体及びT細胞免疫反応
マウス(C57B6種、雄)に実施例2の方法で分離した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル5μgを単独で或いは合成dsRNAとしてのpolyI:C(polyinosine-polycytidylic acid)20μgと組み合わせて1週間隔で3回腹腔注射で投与し、最終ワクチン注射後から7日目と9日目に黄色ブドウ球菌(2.4×108個)をマウスに腹腔注射して感染させた(図47参照)。採取した血液を常温で30分間凝固させ、4℃で3500×gにて10分間遠心分離した後、上澄液としての血清を取った。
【0120】
図48は血清における細胞外ベシクルに対する免疫反応の指標としてのIgG抗体をELISA法で測定した結果であって、細胞外ベシクルとpolyI:Cを腹腔で注射したとき、黄色ブドウ球菌又は菌由来の細胞外ベシクルに含有されたタンパク質に対する特異抗体が有意に形成されることを示す。
【0121】
また、黄色ブドウ球菌由来ベシクルとpolyI:Cの投与によってベシクル特異T細胞免疫反応を評価するために、マウスの脾臓から免疫細胞を分離した後、72時間体外で培養し、しかる後に、培養上澄液におけるサイトカインを測定した。その結果、Th1細胞から分泌されるIFN−γとTh17細胞から分泌されるIL−17の分泌が細胞外ベシクルとpolyI:Cを投与した群において顕著に増加した(図49参照)。
【0122】
前記結果は、黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルをpolyI:Cなどの免疫アジュバントと併合投与したとき、ベシクルワクチン単独で投与する場合に比べて、体液性免疫反応であるIgG抗体生成だけでなく、細菌に対する防御に重要なTh1及びTh17免疫反応を効率よく誘導し、黄色ブドウ球菌による感染と菌由来の細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0123】
実施例25.黄色ブドウ球菌による肺炎モデルにおける黄色ブドウ球菌由ベシクルワクチンとpolyI:Cの併合投与の効能
黄色ブドウ球菌による肺炎モデルを確立するために、4×108、2×108CFUの黄色ブドウ球菌をマウスの咽喉内に投与し、吸入させた後、生存率を確認した。その結果、24時間内に4×108CFUを投与したマウスは全て死亡したが、2×108CFUを投与したマウスの場合は40%の生存率を示した(図50参照)。
【0124】
上述した黄色ブドウ球菌による肺炎モデルにおけるベシクルワクチンの効果を確認するために、実施例23の方法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル5μgとpolyI:C20μgを腹腔で3回投与した後、2×108CFUの黄色ブドウ球菌を咽喉内に投与して吸入させ、生存率を確認した。その結果、ワクチンを投与したグループのマウスは24時間が経っても100%の生存率を示したが、ワクチンを投与していないマウスは40%の生存率を示した(図51参照)。
【0125】
前記結果は、黄色ブドウ球菌による肺炎の発生及びこれによる死亡をベシクルワクチンが非常に効率よく予防することができることを意味する。
【0126】
実施例26.腸球菌(Enterococcus faecalis)由来細胞外ベシクルの腹腔注射によるベシクル特異抗体及びT細胞免疫反応
マウス(C57B6種、雄)に実施例2の方法と同様に腸球菌から細胞外ベシクルを分離した。実施例22のように黄色ブドウ球菌の代わりに腸球菌由来細胞外ベシクルによる体内免疫反応を評価するために、腸球菌由来ベシクル5、10μgを1週間隔で2回腹腔注射で投与し、最終投与72時間後に免疫反応を評価した。
【0127】
抗体を測定するために採取した血液を常温で30分間凝固させ、4℃で3500×gにて10分間遠心分離した後、上澄液としての血清を取った。図52は血清における細胞外ベシクルに対する免疫反応の指標としてのIgG抗体をELISA法で測定した結果であって、これは細胞外ベシクルを2回以上腹腔投与したときに、腸球菌由来細胞外ベシクルに含有されたタンパク質に対する特異抗体が形成されることを示す。
【0128】
また、腸球菌由来細胞外ベシクルを投与した後、T細胞免疫反応を測定するために脾臓から免疫細胞を分離し、72時間体外で培養した後、培養上澄液におけるサイトカインを測定し、その結果を図53に示した。
【0129】
図53に示すように、Th1細胞から分泌されるIFN−γの分泌が細胞外ベシクル(10μg)を投与した群で有意に増加した。
【0130】
前記結果は、腸球菌細胞外ベシクルを予防ワクチンとして投与したとき、体液性免疫反応であるIgG抗体の増加だけでなく、細菌に対する防御に重要なT細胞免疫反応からTh1免疫反応が誘導され、黄色腸球菌による感染と菌由来の細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0131】
実施例27.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル内の16S rRNA及びDNAに対する遺伝型の分析
黄色ブドウ球菌及び黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(0.2、0.5、1.0μg)に対して黄色ブドウ球菌特異16S rRNAのプライマー(フォワード(forward):AGCTTGCTTCTCTGATGTTA、リバース(reverse):TTTCACTTTTGAACCATGCG)を用いて遺伝子の存在有無をPCR(Polymerase Chain Reaction)技術で確認した[95℃5分−(94℃30秒、46℃30秒、72℃20秒)×35サイクル−72℃7分−4℃]。同一条件で大腸菌(E.coli)細胞を対照陰性群として用いた。逆転写(reverse transcription)PCRとPCRの結果を2%アガロース(agarose)ゲルにかけて確認した結果を図54に示した。
【0132】
図54に示すように、120塩基対(base pair)からバンドを確認した。これは黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルにRNA及びDNAが存在することを意味する。
【0133】
前述した本発明の説明は例示のためのものである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想又は必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解することができるであろう。よって、上述した実施例は全ての面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いて疾病動物モデルを構築し、これを用いて、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防又は治療することが可能な薬物を効率よく発掘することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体又はこれを変形して投与して免疫反応を調節することにより、グラム陽性細菌による感染又はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防又は治療するワクチンの開発が可能であり、ひいてはグラム陽性細菌感染又はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病の原因因子を診断する技術の開発が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陽性細菌に由来する細胞外ベシクル(extracellular vesicle、EV)、及びこれを用いた疾病モデル、候補薬物探索方法、ワクチン、疾病の原因因子診断方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
グラム陽性細菌は、グラム染色の際に紫色に染色される特徴を有し、グラム陰性細菌と比較して細胞外膜(outer membrane)のない特徴を有する細菌であって、系統分類学的にファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)門、テネリクテス(Tenericutes)門がこれに該当する。ファーミキューテス門とアクチノバクテリア門は、両方とも細胞壁にペプチドグリカンが豊富であるが、前者は遺伝物質にG+C量が少なく、後者はG+C量が多いことを特徴とする。テネリクテス門は細胞壁がないことを特徴とする。
【0003】
ヒトに疾病を引き起こす病原菌の大部分はグラム陽性細菌と知られており、中でも、球状の細菌としてはストレプトコッカス(Streptococcus)とスタフィロコッカス(Staphylococcus)が代表的な病原菌であり、棒状の細菌としては胞子(spore)を形成しないコリネバクテリウム(Corynebacterium)とリステリア(Listeria)、胞子を形成するバシラス (Bacillus)とクロストリジウム(Clostridium)などが代表的な病原菌である。
【0004】
一方、グラム陰性細菌が分泌する細胞外ベシクルとグラム陰性細菌が引き起こす疾病との関連性が最近注目を浴びている(非特許文献1)。グラム陰性細菌から分泌される細胞外ベシクルは細胞外膜(outer membrane)から分泌するものと知られているが、グラム陽性細菌の場合には細胞外膜がなく、細胞膜が細胞壁に取り囲まれており、現在まで細胞外ベシクルを分泌し或いはグラム陽性細菌に由来する細胞外ベシクルが疾病を引き起こすということは知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kuehn, M. J., Kesty, N. C., Bacterial outer membrane vesicles and the host-pathogen interaction. Genes Dev. 2005, 19, 2645-2655
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、グラム陽性細から細胞外ベシクルを分離して製造する方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを実験動物に投与して疾病動物モデルを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、疾病動物モデル又は体外スクリーニングシステムを介して疾病を予防又は治療する効果的な候補物質を選別する方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いてグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療することが可能なワクチンを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いてグラム陽性細菌に対する感染を予防又は治療することが可能なワクチンを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、分離された細胞外ベシクルを用いてグラム陽性細菌が引き起こす疾病の原因因子を診断する方法を提供することにある。
本発明が解決しようとする技術的な課題は上述した課題に限定されず、上述していない別の課題は以下の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを提供する。
前記本発明の一具現例において、前記グラム陽性細菌はファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)をなす細菌であるが、これに限定されるものではない。
前記ファーミキューテス門は、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、及びリステリア(Listeria)を含むが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例において、前記グラム陽性細菌は、モリクテス(Mollicutes)綱(class)をなす細菌であるが、これに限定されるものではない。
前記モリクテス綱は、マイコプラズマ(Mycoplasma)を含むが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例において、前記グラム陽性細菌は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、枯草菌(Bacillus subtilis)などを含む。
前記本発明の別の具現例において、前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは、動物の体内に生息するグラム陽性細菌が分泌するものを含むが、これに限定されるものではない。前記細胞外ベシクルは動物の体内分泌物から分離することができ、前記動物の体内分泌物は皮膚洗浄液、鼻水、喀痰、大便、血液、小便、関節液、脳脊髄液、胸水、及び腹水などを含む。
前記本発明の別の具現例において、前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは周辺環境に生息するグラム陽性細菌が分泌するものを含み、前記周辺環境は室内空気、室外空気、土壌、及び海などを含む。
前記本発明の別の具現例において、前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは、グラム陽性細菌培養液から分泌されるものを含むが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例において、前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されるもの、及び人工的に分泌されるものを含む。
【0008】
本発明の第2側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルの製造方法を提供する。
前記本発明の一具現例において、前記製造方法は、グラム陽性細菌培養液を遠心分離して上澄液を収得する段階と、前記収得された上澄液を濾過する段階とを含む。
前記本発明の他の具現例において、前記製造方法は、グラム陽性細菌培養液を遠心分離して上澄液を収得する段階と、前記収得された上澄液を第1フィルターで濾過する段階と、前記濾過物を第2フィルターで濾過する段階と、収得された前記濾過物を超遠心分離して沈殿物を収得する段階とを含む。
前記本発明の別の具現例において、第1フィルターで濾過した後、その濾過物を濃縮する段階をさらに含むことができる。
前記本発明の別の具現例において、前記沈殿物を収得する段階に続いて、前記沈殿物を懸濁する段階をさらに含むことができる。
【0009】
本発明の第3側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病動物モデルを提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌及び細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の疾病は、局所疾患であって、アトピー皮膚炎などの皮膚疾患、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、気管支炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎、肺癌などの呼吸器疾患、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、胃癌、炎症性腸炎、大腸癌などの消化器疾患、膣炎、子宮頚部炎、子宮頚部癌などの生殖器疾患を含むが、これに限定されるものではない。
また、前記本発明の疾病は、全身疾患であって、敗血症、血栓/塞栓症、動脈硬化症、脳卒中、急性冠状動脈症候群、虚血性血管疾患などの血管疾患、糖尿病、肥満などの代謝疾患、肺気腫、急性呼吸不全症候群などの肺疾患、関節炎、骨粗しょう症などの骨関節疾患、痴呆、退行性脳疾患、うつ症などの脳神経疾患などを含むが、これに限定されるものではない。
前記本発明の一具現例において、前記動物はマウスでありうるが、これに限定されるものではない。
【0010】
本発明の第4側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを動物に投与することを特徴とする、疾病動物モデルの製造方法を提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌、細胞外ベシクル、及び疾病は前述と同じである。
前記本発明の投与は、皮膚投与、鼻腔投与、気道吸入、口腔投与、皮下投与、腹腔投与、血管投与、肛門投与などを含む。
【0011】
本発明の第5側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病動物モデルを用いてバイオマーカーを発掘する方法を提供する。
【0012】
本発明の第6側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた、疾病の予防又は治療に対する候補薬物の探索方法を提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌、細胞外ベシクル、及び疾病は前述と同じである。
前記本発明の一具現例において、前記探索方法は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを細胞に処理する段階を含むことができる。前記細胞は炎症細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、幹細胞などを含む。また、前記炎症細胞は単核球、好中球、好酸球、好塩球、及び単核球が組織から分化した細胞などを含み、前記幹細胞は骨髄組織又は脂肪組織に由来する細胞でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例において、前記探索方法は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルと共に候補物質を投与した後、炎症関連媒介体の水準を測定し或いは炎症関連シグナル伝達過程を評価する段階を含むことができる。
【0013】
本発明の第7側面は、グラム陽性細菌による感染を予防又は治療するために、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを含むワクチンを提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌及びグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記グラム陽性細菌による感染は皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症などでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例によれば、前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細胞に化学物質を処理することなどを含み、前記化学物質は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用することができ、前記変形は細胞外ベシクルに化学物質を処理することを含み、前記化学物質は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用し、或いは免疫補強剤を併用投与して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0014】
本発明の第8側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を予防又は治療するために、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを含むワクチンを提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌、細胞外ベシクル、疾病などは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細菌に化学物質を処理することなどを含み、前記化学物質は薬物を含む。
前記本発明の他の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用することができ、前記変形は細胞外ベシクルに化合物質を処理することを含み、前記化合物質は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記ワクチンは、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で、薬物を併用投与して使用し或いは免疫補強剤を併用投与して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0015】
本発明の第9側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを致死量未満で哺乳動物に投与する段階を含む、疾病に対する予防又は治療方法を提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌及びグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病を含む。
前記本発明のグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病は、アトピー皮膚炎などの皮膚疾患、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、気管支炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎、肺癌などの呼吸器疾患、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、胃癌、炎症性腸炎、大腸癌などの消化器疾患、膣炎、子宮頚部炎、子宮頚部癌などの生殖器疾患を含む局所疾患であるが、これに限定されるものではない。
本発明のグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病は、敗血症、血栓/塞栓症、動脈硬化症、脳卒中、急性冠状動脈症候群、虚血性血管疾患などの血管疾患、糖尿病、肥満などの代謝疾患、肺気腫、急性呼吸不全症候群などの肺疾患、関節炎、骨粗しょう症などの骨関節疾患、痴呆、退行性脳疾患、うつ症などの脳神経疾患などを含む全身疾患であるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例によれば、前記疾病はグラム陽性細菌による感染を含む。
前記本発明のグラム陽性細菌による感染は、皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症などでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記投与は皮下注射、皮膚塗抹、静脈注射、鼻腔投与、舌下投与、気道吸入、経口服用、肛門投与などを含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細菌に化学物質を処理すること、細胞外ベシクルに化学物質を処理することなどを含み、前記化学物質は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記投与は、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で、薬物を併用投与し或いは免疫補強剤を併用投与することができるが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の第10側面は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを応用して疾病の原因因子を診断する方法を提供する。
前記本発明のグラム陽性細菌及び細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病を含む。グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病は前述と同じである。
前記本発明の他の具現例によれば、前記疾病はグラム陽性細菌による感染を含む。前記本発明のグラム陽性細菌による感染は、皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症などでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例において、前記応用はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに含まれた遺伝物質の塩基配列を分析することであり、前記遺伝物質は16S rRNAでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記応用は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに含まれたタンパク質を測定し、或いはグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに対する免疫反応を測定することでありうるが、これに限定されるものではない。前記免疫反応の測定は、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに対する抗体を測定することでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記診断は、血液、喀痰、 鼻水、皮膚洗浄液、大便、小便、脳脊髄液、関節液、胸水、又は腹水などに由来する試料を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、体内で生息し或いは周辺環境に存在するグラム陽性細菌としてのブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が細胞外ベシクルを分泌し、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが、皮膚及び粘膜の炎症を特徴とする局所疾患だけでなく、 血液に吸収されて全身的な炎症反応を特徴とする敗血症、血液凝固による血栓/塞栓症などの全身疾患を誘発するという発見により、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病モデル、疾病を予防又は治療する候補薬物の探索技術、細胞外ベシクルを応用した疾病の予防或いは治療用ワクチン技術、及び疾病の原因因子を診断する方法などを提供する。
【0018】
具体的にグラム陽性細菌に由来する細胞外ベシクルを分離し、これを細胞に投与したときには炎症媒介体が分泌され、局所的に投与したときには皮膚又は粘膜に炎症が発生し、腹腔に投与したときには細胞外ベシクルが血管に流入して全身的な炎症反応を特徴とする敗血症と共に血液凝固による血栓/塞栓症などの疾病が発生するという事実を用いて、疾病動物モデル及び候補薬物を効率よく選別する探索方法を提供することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病モデル又は体外スクリーニングシステムを介して、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防又は治療することが可能な薬物を効率よく発掘することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体或いはこれを変形して投与して免疫反応を調節することにより、グラム陽性細菌による感染又はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防或いは治療するワクチンの開発に応用可能である。また、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを応用して、グラム陽性細菌の感染、又はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病の原因因子を診断する技術の開発が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】黄色ブドウ球菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す透過電子顕微鏡イメージである。
【図2】黄色ブドウ球菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す走査電子顕微鏡イメージである。
【図3】黄色ブドウ球菌で精製された細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡イメージ(a)と走査電子顕微鏡イメージ(b)である。
【図4】黄色ブドウ球菌で精製された細胞外ベシクルの粒度分析分布図である。
【図5】ブドウ球菌の全体細胞タンパク質(WC)、細胞壁タンパク質(CW)、膜タンパク質(MP)、細胞質タンパク質(CY)及び細胞外ベシクル(EV)タンパク質のクマシー染色SDS−PAGE結果を示す写真である。
【図6】表皮ブドウ球菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す透過電子顕微鏡イメージである。
【図7】表皮ブドウ球菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す走査電子顕微鏡イメージである。
【図8】表皮ブドウ球菌で精製された細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡イメージ(a)と走査電子顕微鏡イメージ(b)である。
【図9】表皮ブドウ球菌で精製された細胞外ベシクルの粒度分析分布図を示す結果である。
【図10】枯草菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す透過電子顕微鏡イメージである。
【図11】枯草菌で細胞外ベシクルが形成され、分泌されることを示す走査電子顕微鏡イメージである。
【図12】枯草菌で精製された細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡イメージ(a)と走査電子顕微鏡イメージ(b)である。
【図13】枯草菌で精製された細胞外ベシクルの粒度分析分布図を示す結果である。
【図14】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのプロテオーム分析結果であって、イン−ゲル分解方法で41個、イン−ソリューション分解方法で84個、中でも34個が2つの方法のいずれでも観察され、合計90個のタンパク質を同定したことを示すベンダイアグラムである。
【図15】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスマクロファージに処理したときに炎症性サイトカインとしてのTNF−αとIL−6の分泌量が増加することを示す結果である。
【図16】マウスの皮膚から得た線維芽細胞に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理したとき、様々なサイトカインを含む炎症性媒介体を生産する結果である。
【図17】マウスに黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理し、アトピー性皮膚炎に類似した症状を引き起こすようにする方法で週3回4週間処理し、48時間後に様々な指標を確認した。
【図18】図17によってマウスに黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理し、皮膚組織において表皮層の増殖(赤い円で表示された部分)と好酸球の浸潤(矢印のヘッド)など、アトピー性皮膚炎に類似する症状が起こったことを示す結果である。
【図19】図18に示した皮膚組織の症状を数値化した結果であって、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによって表皮の厚さや、浸潤した肥満細胞、好酸球の数などが増加することを示す。
【図20】図17によってマウスに黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、処理した皮膚組織に存在する炎症性サイトカインの量を測定した結果であって、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理するにつれて増加することを示す。
【図21】患者の患部洗浄液を濃縮させた後、ELISA法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに存在する抗原が存在することを示す結果である。
【図22】アトピー性皮膚炎を有する患者の血清において、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに対するIgEの量が正常対照群に比べて非常に増加していることを示す結果である。
【図23】マウスの気道に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを吸入させて先天免疫反応の様相を見るための方法を図式化したものである。
【図24】図23の方法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを吸入させたマウスの肺胞洗浄液に存在する炎症細胞の数と炎症性サイトカインIL−6の量が対照群に比べて増加したことを示す結果である。
【図25】マウスの気道に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを吸入させて後天免疫反応の様相を見るための方法を図式化したものである。
【図26】図25の方法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを吸入させたマウスの肺胞洗浄液に存在する炎症細胞の数とIL−17の量が対照群に比べて増加することにより、気道粘膜にTh17の後天免疫反応が誘導されたことを示す結果である。
【図27】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるマウスの死亡誘導を確認する実験プロトコルである。
【図28】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスに処理した後の生存率を示す結果である。
【図29】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルにより誘導される全身性炎症反応の指標の一つである低体温症を示す図である。
【図30】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる播種性血管内凝固症の動物モデルを確立するためのプロトコルである。
【図31】図30で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、摘出した肺組織のH&E染色結果である。
【図32】図30で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、血漿内D−dimerの増加を測定した結果である。
【図33】図30で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、血漿内血小板数の減少を測定した結果である。
【図34】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを用いて薬物候補物質を発掘する方法に対する模式図である。
【図35】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルとプロドラッグを同時にマウスマクロファージに処理し、培養液に存在するIL−6の量を細胞外ベシクルのみ単独で処理した陽性対照群の測定値を基準として百分率で示すグラフである。
【図36】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスの鼻腔に注入し、プロドラッグとしてのドキセピン(Doxepin)とハロペリドール(Haloperidol)を腹腔注入したときに気管支肺胞洗浄液内IL−6の分泌を測定した結果である。
【図37】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルがマウスの樹枝状細胞内にアップテイク(uptake)される蛍光顕微鏡イメージである。
【図38】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスの樹枝状細胞に処理したときにIL−12p40サイトカインの分泌が増加することを示す結果である。
【図39】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスの樹枝状細胞に処理したときに樹枝状細胞の表面のCD40とMHCIIの発現が増加することを示す結果である。
【図40】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが誘導する免疫反応の指標としての抗体を測定するプロトコルである。
【図41】図40の方法で得たマウス血清で細胞外ベシクル特異IgG抗体が増加した結果を示す図である。
【図42】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを予防ワクチンとしてマウスに投与した後、免疫学的指標を測定するプロトコルである。
【図43】図42の方法で得たマウス脾臓細胞でIFN−γとIL−17のサイトカインが増加することを示すグラフである。
【図44】マウスの皮膚をテープストリッピングした後、週3回ずつ4週間パッチの方法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを投与する方法を示す図である。
【図45】図42の方法でベシクルを処理した後、抗体の量を比較したとき、マウス血清内黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに対するIgG抗体(antibody)の量が対照群に比べて増加したことを示す。
【図46】図42の方法でベシクルを処理した後、脾臓細胞を黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルで刺激したとき、細胞外ベシクル特異的にTh1とTh17のサイトカインが増加したことを示す結果である。
【図47】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルとpolyI:Cを複合投与した後、ブドウ球菌細胞をチャレンジし、免疫反応指標を評価するプロトコルである。
【図48】図47の方法で得たマウス血清で細胞外ベシクル特異IgG抗体が増加した結果を示す図である。
【図49】図47の方法で得たマウス脾臓細胞でIFN−γとIL−17のサイトカインが増加することを示すグラフである。
【図50】マウスの咽喉に2つの用量の黄色ブドウ球菌を投与した後の生存率を示す。
【図51】黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルとpolyI:Cとが組み合わせられたワクチンによって、ブドウ球菌由来肺炎モデルでマウスの生存率が増加することを示す。
【図52】マウスに腸球菌由来細胞外ベシクルを投与した後で得た血清でベシクル特異IgG抗体が増加したことを示すグラフである。
【図53】マウスに腸球菌由来細胞外ベシクルを処理した後で得た脾臓細胞でIFN−γサイトカインが増加することを示すグラフである。
【図54】細胞外ベシクル内の16S rRNAをRT−PCRで分析し、DNAをPCRで分析した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、「グラム陽性細菌」とは、細胞に外膜がない且つ細胞壁が厚い特徴を有するファーミキューテス門(Phylum Firmicutes)とアクチノバクテリア門(Phylum Actinobacteria)、細胞壁がないが、進化的にファーミキューテス門由来のモリクテス綱(Class Mollicutes)を含む意味であり、細胞壁のある細菌としてスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)などを含み、細胞壁がない細菌としてはマイコプラズマ(Mycoplasma)などを含む。
【0021】
本発明において、「体内」とは動物皮膚の表面、動物粘膜の内腔及び表面を含む意味であり、ここで、「粘膜」とは消化器、呼吸器、泌尿生殖器を含む意味であり、例えば、「消化器」とは口腔、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門、胆道、胆嚢、膵臓管などの内 腔及び表面を意味し、「呼吸器」とは結膜、鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、気管、気管支、細気管支、肺胞などの内腔及び表面を意味し、「泌尿生殖器」とは腎臓、尿管、膀胱、尿道、膣、子宮頚部、子宮などの内腔及び表面を意味するが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明において、「周辺環境」とは、前記の体内を除いた自然界を意味し、例えば、動物の体内を除いた室内空気、室外空気、土壌、海などを含むが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明において、「グラム陽性細菌由来細胞外ベシクル」とは、体内又は周辺環境に生息するグラム陽性細菌が自然的又は人工的に分泌するベシクルを含み、サイズが元来の細胞より小さいことを特徴とするが、これに限定されるものではない。
【0024】
グラム陽性細菌は、一般にグラム染色で紫色に染色される細菌であって、グラム陰性細菌と比較して細胞外膜がなく、細胞壁にペプチドグリカンの量が多いことを特徴とする。
【0025】
系統分類上、厚い細胞壁と遺伝物質にG+C量が低いことを特徴とするファーミキューテス門をなすグラム陽性細菌としては、球状(cocci)のスタフィロコッカス、ストレプトコッカス及びエンテロコッカスなどが代表的であり、棒状(rod)のバシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム、ノカルジア、クロストリジウム、ラクトバシラス及びリステリアなどが代表的である。
【0026】
細胞壁がないが、進化的にファーミキューテスに由来するモリクテス綱もグラム陽性細菌に含まれるが、中でもマイコプラズマが代表的な細菌である。
【0027】
ヒトで感染を引き起こす病原菌は、大部分がグラム陽性細菌であるが、例えばストレプトコッカス(Streptococcus)、スタフィロコッカス、コリネバクテリウム、リステリア、バシラス、クロストリジウムなどが代表的な病原菌である。
【0028】
1960年代に、電子顕微鏡を介してグラム陰性細菌が細胞外ベシクルを分泌するという事実が報告された。グラム陰性細菌由来細胞外ベシクルは、球状をし、リン脂質二重層からなっており、略20〜200nmのサイズを有する。グラム陰性細菌由来細胞外ベシクルは、LPSだけでなく、様々な外膜タンパク質(outer membrane protein)を持っている。最近、本発明者らは、腸内共生細菌としての大腸菌由来細胞外ベシクルが全身的に吸収されたとき、敗血症、血液凝固、肺気腫などの全身疾患を起こすという事実を解明した。
【0029】
グラム陰性細菌が分泌する細胞外ベシクルが主に細胞外膜に由来するという偏見に基づいて、グラム陽性細菌は、細胞外膜がなく、細胞膜が厚い細胞壁で取り囲まれているということから、グラム陽性細菌が細胞外ベシクルを分泌するという事実は知られていない。
【0030】
本発明者らは、球状のグラム陽性細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)が細胞外ベシクルを分泌することを見出し、電子顕微鏡上で略球状の形状をし、動的光散乱法で略10〜100nMのサイズを有することが分かった。
【0031】
また、本発明者らは、棒状のグラム陽性細菌としての枯草菌(Bacillus subtilis)が細胞外ベシクルを分泌することを発見し、電子顕微鏡上で略球状の形状を有し、動的光散乱法で略10〜100nMのサイズを有することが分かった。
【0032】
本発明者らは、イン−ゲル(in-gel)トリプシンタンパク質分解(tryptic digestion)方法とイン−ソリューション(in-solution)トリプシンタンパク質分解方法によって黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのプロテオーム分析を行ったが、イン−ゲル分解方法で41個のタンパク質が、イン−ソリューション分解方法で84個のタンパク質が同定された。イン−ゲル方法の結果のうち、35個のタンパク質がイン−ソリューション方法で同定したタンパク質と重なり合って合計90個の黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのタンパク質を見つけ出した。
【0033】
前記の方法で同定された黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルには、疾病に関連した様々なタンパク質が存在した。病原性(virulence)タンパク質として敗血症又は毒素ショック症候群(toxic shock syndrome)を起こすスーパー抗原(superantigen)としてのブドウ球菌エンテロトキシンQ(staphylococcus enterotoxin Q)、ブドウ球菌分泌抗原(staphylococcus secretory antigen)(ssaA1、ssaA2)などが存在した。また、赤血球を破壊し且つヘモグロビンを溶かすα−溶血素(alpha-hemolysin)とγ−溶血素(gamma-hemolysin)などの毒素も含まれていた。また、宿主組織内への細菌の浸潤と潜入に直接関与するプロテアーゼとしてのスタホパインA(staphopain A)と細胞外ECM及び血漿結合タンパク質(extracellular ECM and plasma binding protein)が存在した。また、血液凝固関連タンパク質としてはスタフィロコアグラーゼ(staphylocoagulase)やフォン・ヴィレブランド因子−結合タンパク質(von Willebrand factor-binding proteins)などが存在したが、このようなタンパク質は、血管内凝固を特徴とする敗血症、毒素ショック症候群(toxic shocks syndrome)などの発生だけでなく、動脈の血栓(thrombosis)形成による急性冠状動脈症候群(acute coronary syndrome)、脳卒中(stroke)、静脈の血栓形成による深部静脈血栓症(deep-vein thrombosis)、血栓が剥離しながら生ずる塞栓(thrombosis)により発生する肺動脈塞栓症(pulmonary embolism)などの疾病の病因に関与するタンパク質である。また、SbI(S.aureus IgG-binding protein)も存在したが、これは宿主免疫細胞の食作用(phagocytosis)を抑制して細菌の免疫回避機能を維持するうえ、上皮細胞(epidermal cell)におけるIL−18の発現を誘導し、血清(serum)内のIgE抗体を増加させて皮膚にアトピー皮膚炎を引き起こすことに関与することができる。
【0034】
プロテオーム分析によって黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに多様な疾病を引き起こすタンパク質が含まれているという事実に基づいて、体外で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスマクロファージに投与して炎症媒介体の分泌を評価した。その結果、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの濃度に比例して炎症媒介体としてのTNF−αとインターロイキン−6(IL−6)の分泌が誘導された。
【0035】
また、体外で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスの線維芽細胞に投与して炎症媒体体の分泌を評価したとき、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによって炎症媒介体としてのTNF(tumor necrosis factor)−α、IL−6だけでなく、TSLP(thymic stromal lymphopoietin)、エオタキシン(eotaxin)、MIP(macrophage inflammatory protein)−1αなどの分泌が誘導された。
【0036】
黄色ブドウ球菌は、皮膚に生息するが、特にアトピー皮膚炎患者の皮膚にはほぼ100%生息すると知られている。前記の体外実験結果に基づいて、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを皮膚に投与したとき、アトピー皮膚炎などの局所炎症を誘導することができるかを評価した。テープストリッピング(tape stripping)の後、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを週3回4週間投与したとき、アトピー患者から見られる炎症所見が観察された。また、アトピー皮膚炎患者の皮膚洗浄液から細胞外ベシクルを分離した後、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異抗体と反応させたとき、患者の洗浄液から分離した細胞外ベシクルに黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが存在することを確認した。また、アトピー皮膚炎患者の血清を分離した後、血清内黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異IgE抗体を測定したとき、正常人に比べてIgE抗体が有意に増加していた。前記結果より、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルがアトピー皮膚炎の発生又は悪化に重要な原因因子であることが自明である。
【0037】
黄色ブドウ球菌は、上気道粘膜などの体内だけでなく、空気中に生息するものと知られている。本発明者らは、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが呼吸器粘膜に作用して局所炎症を誘導するかを評価した。黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを1回鼻腔投与したとき、濃度に比例して気管支肺胞洗浄液に炎症細胞の数が増加し、Th17(17型ヘルパーT、type 17 helper T)細胞の分化に重要なIL−6の分泌も増加した。また、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを週2回3週間鼻腔投与したとき、気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の総数だけでなく、好中球の数が顕著に増加し、Th17細胞から分泌されるIL−17も有意に増加した。前記結果は、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが粘膜に作用し、IL−17を媒介とする好中球性炎症の発生に重要な原因因子であることを意味する。
【0038】
敗血症は、局所細菌感染の際に病原菌由来物質が血管に流入して全身的な炎症反応を引き起こす特徴を有する疾患である。本発明者らは、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを静脈注射して敗血症が誘導されるかを評価した。高用量の細胞外ベシクルを静脈注射したとき、約40%のマウスが死亡した。また、敗血症の指標である低体温症が、細胞外ベシクルを投与した場合に観察された。これは、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが血管に流入すると敗血症が発生することを意味する。
【0039】
上述したプロテオーム分析において、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに、血液凝固関連タンパク質が含まれていた。本発明者らは黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが血液凝固及びその結果として血栓が形成されるかを評価した。その結果、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを静脈注射、皮下注射、又は鼻腔投与した場合、血管内血液凝固の指標であるD−dimerの濃度が血清内で増加しており、他の指標である血小板の数が抹消血液内で減少していた。ベシクルによる血栓形成に関連し、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを静脈注射、皮下注射、又は鼻腔投与した場合、肺血管に血栓(thrombus)が観察された。前記結果は、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが血管に流入したとき、血管に血液凝固による血栓又は塞栓を誘導することができることを意味する。
【0040】
疾病を予防又は治療する薬物を開発するため、正確な原因物質を把握することは非常に重要である。たとえば、原因物質を体外から細胞に投与する過程で候補薬物を処理して効能を検証することができ、上述した動物モデルに候補薬物を投与して効能を検証することができる。本発明者らは、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療する薬物を開発するために、黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルを用いた候補薬物を選別する探索方法を確立し、これにより薬物を発掘した。すなわち、前記の探索方法で102種のプロドラッグのうち、19種の候補薬物を発掘し、上述の疾病動物モデルで効能を検証した。これは、本発明で開発した候補薬物探索方法を用いてグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を予防又は治療するための薬物を非常に効果的に発掘することができることを意味する。
【0041】
黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルは、多様なタンパク質と毒素(ブドウ球菌エンテロトキシンQ、K(Staphylococcal enterotoxin Q,K))などのタンパク質とLTA(lipoteichoic acid)とペプチドグリカンなどの免疫アジュバント(immune adjuvant)を含んでいる。本発明者らは、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが細菌感染予防及び治療のためのワクチンとして応用可能なのかを確認するためにマウス内の免疫学的指標を評価したとともに、細胞外ベシクルの効能を増加させるか副作用を減少させることが可能な方法を考案した。その結果、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルと合成dsRNAとしてのpolyI:C(polyinosinic-polycytidylic acid)を共に皮下注射したとき、マウス血清内の抗体(IgG)が増加し、脾臓細胞が分泌するサイトカインとしてのIFN(interferon)−γとIL−17が増加した。これは、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを皮下注射したときに抗体反応を誘導するうえ、Th1(1型ヘルパーT細胞、type 1 helper T cell)及びTh17免疫反応を効率よく誘導することができることを意味する。
【0042】
黄色ブドウ球菌による肺炎の発生に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を評価した。その結果、ベシクルワクチンを投与していない場合には肺炎で60%のマウスが死亡したが、ベシクルワクチンを投与した場合には肺炎による死亡が観察されなかった。これは、ベシクルワクチンを予め投与した場合に効率よく細菌感染を予防することができることを意味する。
【0043】
本発明によればブドウ球菌由来細胞外ベシクルにより各種疾病の発生が可能であることを前述した。これは、細胞外ベシクルが疾病の発生に重要な原因因子であることを意味する。疾病の原因因子を診断する方法を提供するために、細菌由来細胞外ベシクルに遺伝物質が存在するかを確認した結果、16S rRNA及びDNAが存在することをPCR技法で確認した。これは、感染部位又は患者の血液などから採取した細胞外ベシクルの遺伝物質の分析によって疾病の原因因子を効率よく診断することが可能な方法を提供する。
【0044】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。ところが、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるもので、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0045】
実施例1.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)細胞の電子顕微鏡観察
黄色ブドウ球菌(ATCC14458)をニュートリエントブロス(nutrient broth)で培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした後、培養液を10,000×gで20分間遠心分離した。沈殿した黄色ブドウ球菌細胞を2.5%グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)で2時間固定(fix)させ、1%四酸化オスミウム(osmium tetroxide)で1時間後固定(post-fix)させた後、エタノール(ethanol)で段階的脱水過程を経てエポキシ樹脂ブロック(epoxy resin)を作り、70nmの厚さに超薄切片を作った。細胞切片をグロー放電炭素コート銅グリッド(glow-discharged carbon-coated copper grid)に3分間吸着させた後、2%酢酸ウラニル(uranylacetate)とクエン酸鉛で染色(staining)した。JEM101(Jeol、Japan)透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で観察した。図1の透過電子顕微鏡イメージに示すように、黄色ブドウ球菌細胞の表面外にサイズ20〜100nmの細胞外ベシクルが分泌されることを分かる。
【0046】
走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)観察のために、上記と同様に培養した黄色ブドウ球菌を10,000×gで20分間遠心分離して沈澱させた後、2.5%グルタルアルデヒドロで1時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システム(HCP−2臨界点乾燥器(HCP−2 critical point dryer)、HITACH、Japan)を用いて臨界点乾燥(critical point drying)を行った。細菌サンプルを試料台(stub)にのせて白金(Pt)でコートした後、JSM−7401F(Jeol、Japan)走査電子顕微鏡で観察した。
【0047】
図2の走査電子顕微鏡イメージに示すように、黄色ブドウ球菌細胞の表面外に細胞外ベシクルが分泌されることが分かる。
【0048】
実施例2.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの製造
[一般的な細胞外ベシクル分離方法]
黄色ブドウ球菌を、3mLのニュートリエントブロスが入っている試験管に接種し、37℃で6時間培養した後、その5mLを500mLのニュートリエントブロスが入っている2Lの三角フラスコに移して37℃で4時間培養し、吸光度(600nm)値が1.0となるようにした。培養液を容量500mLの高速遠心分離チューブ(high speed centrifuge tube)に入れた後、4℃で10,000×gで2分間遠心分離を行った。細菌を除去した上澄液を、孔径0.45μmのメンブレインフィルター(membrane filter)を1回通過させた後、分子量100kDa以下のタンパク質を除去することが可能なメンブレインを装着したQuixstand systemを用いて25倍濃縮した。濃縮液を孔径0.22μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブ(ultracentrifuge tube)に入れて4℃で150,000×gで3時間超遠心分離(ultracetrifugation)した。沈殿物をPBS(phosphate buffered saline)で懸濁(resuspension)した後、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを得た。
【0049】
[プロテオーム分析のための細胞外ベシクル分離方法]
前記一般的な細胞外ベシクル分離方法と同様の方法で得られた濃縮液を、孔径0.22μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブに入れて4℃で150,000×gにて3時間超遠心分離した。沈殿物を50%Optiprep2.2mLで懸濁した後、容量5mLの超遠心分離チューブの底部に入れ、40%Optiprep2mLと10%Optiprep0.8mLを順次入れた。その後、200,000×gで2時間超遠心分離を行った。40%Optiprepと10%Optiprepとの間の層から細胞外ベシクルを得た。
【0050】
実施例3.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの特性
実施例2の方法によって黄色ブドウ球菌から分離した細胞外ベシクルをグロー放電炭素コート銅グリッドに3分間吸着させた。グリッドを蒸留水で洗浄した後、2%酢酸ウラニルで染色した。JEM101透過電子顕微鏡で観察した。
【0051】
図3aの透過電子顕微鏡イメージに示すように、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルは閉じた球状をしており、20〜100nmのサイズを有することが分かる。分離した細胞外ベシクルをカバーガラス(cover glass)に付けた後、2.5%グルタルアルデヒドで1時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システムを用いて臨界点乾燥を行った。細胞外ベシクルの付いたカバーグラスを試料台にのせて白金でコートした後、JSM−7401F走査電子顕微鏡で観察した。
【0052】
図3bの走査電子顕微鏡イメージに示すように、比較的均一なサイズ(20〜100nm)の円形の細胞外ベシクルが観察された。
【0053】
実施例2の方法によって黄色ブドウ球菌から分離した細胞外ベシクルを1μg/mLの濃度でPBS1mLに希釈した。細胞外ベシクルが入っているPBS1mLをキュベット(cuvette)に入れて動的光散乱粒度分析器で分析し、その結果を図4に示した。
【0054】
図4に示すように、細胞外ベシクルは、サイズが20〜100nmであり、平均サイズは28.3nmであった。
【0055】
全体細胞(whole cell)、細胞壁(cell wall)、膜(membrane)、細胞質(cytosol)のタンパク質は次の方法で得た。黄色ブドウ球菌を3mLのニュートリエントブロスで培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした後、10,000×gで20分間遠心分離して細胞沈殿物を得た。前記沈殿物に20μg/mLのリソスタフィンバッファ (lysostaphin)(Tris−EDTA)を入れて37℃で15分間処理した。超音波分解(sonication)方法で細胞を完全に粉砕させた後、8000×gで10分間遠心分離して不溶性物質(insoluble material)を除去し、上澄液を全体細胞タンパク質として使用した。プロトプラスト(protoplast)を形成するように黄色ブドウ球菌細胞沈殿物に20μg/mLのリソスタフィンバッファ(Tris−EDTA)と1.1Mのスクロース(sucrose)を入れて37℃で15分間処理した。10,000×gで20分間遠心分離した後、上澄液を細胞壁タンパク質として使用し、沈殿物は低張膨張液(hypotonic buffer)に溶かした後、さらに40,000×gで1時間超高速遠心分離した。上澄液から細胞質タンパク質を得、沈殿物はトリスバッファ(10mM Tris−HCl、pH8.0)に懸濁して膜タンパク質として使用した。分離された全体細胞、細胞壁、膜、細胞質タンパク質と実施例2で分離された細胞外ベシクルタンパク質をそれぞれ7μgずつ用意した後、5×ローディング染色剤(loading dye)(250mM Tris−HCl、10%SDS、0.5%ブロモフェノールブルー(bromophenol blue)、50%グリセロール(glycerol))を1×となるように入れ、100℃で10分間高温処理した。10%ポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel)を用意し、サンプルをロードした。80Vで2時間電気泳動した後、ゲル(gel)をクマシー(0.25%クマシーブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue))で2時間染色する。染色済みのゲルを脱染(destaining)溶液(メタノール:DDW:酢酸=5:4:1)で6時間反応させた。
【0056】
図5は黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのタンパク質パターンをクマシー染色法(Coomassie staining)によって全体細胞タンパク質(WC)、細胞壁タンパク質(CW)、膜タンパク質(MP)、細胞質タンパク質(CY)のパターンと比較した結果であって、特定タンパク質が細胞外ベシクル(EV)内に選別(sorting)されることが分かる。
【0057】
実施例4.表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)細胞の電子顕微鏡観察
表皮ブドウ球菌(ATCC12228)をニュートリエントブロスで培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした後、培養液を10,000×gで20分間遠心分離した。沈澱した表皮ブドウ球菌細胞を2.5%グルタルアルデヒドで2時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経てエポキシ樹脂ブロックを作り、70nmの厚さに超薄切片を作った。細胞切片をグロー放電炭素コート銅グリッドに3分間吸着させた後、2%酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色した。JEM101透過電子顕微鏡で観察した。図6の透過電子顕微鏡イメージから、表皮ブドウ球菌細胞の表面外にサイズ20〜100nmの細胞外ベシクルが分泌されることが分かる。
【0058】
走査電子顕微鏡観察のために、上記と同様に培養した表皮ブドウ球菌を10,000×gで20分間遠心分離して沈澱させた後、2.5%グルタルアルデヒドで1時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システムを用いて臨界点乾燥を行った。サンプルを試料台にのせて白金でコートした後、JSM−7401F走査顕微鏡で観察した。図7の走査電子顕微鏡イメージから、表皮ブドウ球菌細胞の表面外に細胞外ベシクルが分泌されることが分かる。
【0059】
実施例5.表皮ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの製造
表皮ブドウ球菌を3mLのニュートリエントブロスが入っている試験管に接種し、37℃で6時間培養した後、その中で5mLを500mLのニュートリエントブロスが入っている2Lの三角フラスコに移して37℃で4時間培養し、吸光度(600nm)値が1.0となるようにした。培養液を容量500mLの高速遠心分離チューブに入れた後、4℃、10,000×gで20分間遠心分離した。細菌を除去した上澄液を、孔径0.45μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、分子量100kDa以下のタンパク質を除去することが可能なメンブレインを装着したQuixstand systemを用いて25倍濃縮した。濃縮液を孔径0.22μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブに入れて4℃、150,000×gで3時間超遠心分離した。沈殿物をPBSで懸濁した後、表皮ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを得た。
【0060】
実施例6.表皮ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの特性
実施例5の方法によって表皮ブドウ球菌から分離した細胞外ベシクルをグロー放電炭素コート銅グリッドに3分間吸着させた。グリッドを蒸留水で洗浄した後、2%酢酸ウラニルで染色し、JEM101透過電子顕微鏡で観察した。
【0061】
図8aの透過電子顕微鏡イメージに示すように、表皮ブドウ球菌由来細胞外ベシクルは閉じた球状をしており、20〜100nmのサイズを有することが分かる。
【0062】
表皮ブドウ球菌から分離した細胞外ベシクルをカバーガラスに付けた後、2.5%グルタルアルデヒドで1時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システムを用いて臨界点乾燥を行った。細胞外ベシクルの付いたカバーガラスを試料台にのせて白金でコートした後、JSM−7401F走査電子顕微鏡で観察した。
【0063】
図8bの走査電子顕微鏡イメージに示すように、比較的均一なサイズ(20〜100nm)の円形の細胞外ベシクルが観察された。
【0064】
実施例5の方法によって表皮ブドウ球菌から分離した細胞外ベシクルを1μg/mLの濃度でPBS1mLに希釈した。細胞外ベシクルが入っているPBS1mLをキュベットに入れて動的光散乱粒度分析器で分析し、その結果を図9に示した。
【0065】
図9に示すように、細胞外ベシクルはサイズが20〜100nmであり、平均サイズは34nmであった。
【0066】
実施例7.枯草菌(Bacillus subtilis)細胞の電子顕微鏡観察
枯草菌(KCTC3729)をニュートリエントブロスで培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした後、培養液を6000×gで15分間遠心分離した。沈澱した枯草菌細胞を2.5%グルタルアルデヒドで2時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経てエポキシ樹脂ブロックを作り、70nmの厚さに超薄切片を作った。細胞切片をグロー放電炭素コート銅グリッドに3分間吸着させた後、2%酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色し、JEM101透過電子顕微鏡で観察した。
【0067】
図10の透過電子顕微鏡イメージに示すように、枯草菌細胞の表面外にサイズ20〜100nmの細胞外ベシクルが分泌されることが分かる。
【0068】
走査電子顕微鏡観察のために、上記と同様に培養した枯草菌を6,000×gで15分間遠心分離して沈澱させた後、2.5%グルタルアルデヒドで1時間固定させ、1%四酸化オスミニウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システムを用いて臨界点乾燥を行った。サンプルを試料台にのせて白金でコートした後、JSM−7401F走査電子顕微鏡で観察した。図11の走査電子顕微鏡イメージに示すように、枯草菌細胞の表面外に細胞外ベシクルが分泌されることが分かる。
【0069】
実施例8.枯草菌由来細胞外ベシクルの製造
枯草菌を3mLのニュートリエントブロスが入っている試験管に接種し、37℃で6時間培養した後、その中で5mLを500mLのニュートリエントブロスが入っている2Lの三角フラスコに移して37℃で4時間培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした。培養液を容量500mLの高速遠心分離チューブに入れた後、4℃で6000×gにて20分間遠心分離を行った。細菌を除去した上澄液を、孔径0.45μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、分子量100kDa以下のタンパク質を除去することが可能なメンブレインを装着したQuixstand systemを用いて25倍濃縮した。濃縮液を孔径0.22μmのメンブレインフィルターを通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブに入れて4℃で150,000×gにて3時間超遠心分離した。沈殿物をPBSで懸濁した後、枯草菌由来細胞外ベシクルを得た。
【0070】
実施例9.枯草菌由来細胞外ベシクルの特性
実施例8の方法によって枯草菌から分離した細胞外ベシクルをグロー放電炭素コート銅グリッドに3分間吸着させた。グリッドを蒸留水で洗浄した後、2%酢酸ウラニルで染色し、JEM101透過電子顕微鏡で観察した。
【0071】
図12aの透過電子顕微鏡イメージに示すように、枯草菌由来細胞外ベシクルは閉じた球状をしており、20〜200nmのサイズを有することが分かる。
【0072】
枯草菌から分離した細胞外ベシクルをカバーガラスに付けた後、2.5%グルタルアルデヒドで1時間固定させ、1%四酸化オスミウムで1時間後固定させた後、エタノールで段階的脱水過程を経て、CO2システムを用いて臨界点乾燥を行った。細胞外ベシクルの付いたカバーガラスを試料台にのせて白金でコートした後、JSM−7401F走査電子顕微鏡で観察した。
【0073】
図12bの走査電子顕微鏡イメージに示すように、比較的均一なサイズ(20〜200nm)の円形の細胞外ベシクルが観察された。
【0074】
実施例8の方法によって枯草菌から分離した細胞外ベシクルを1μg/mLの濃度でPBS1mLに希釈した。細胞外ベシクルが入っているPBS1mLをキュベットに入れて動的光散乱粒度分析器で分析し、その結果を図13に示した。
【0075】
図13に示すように、細胞外ベシクルはサイズが20〜100nmであり、平均サイズは30nmであった。
【0076】
前記例らは、グラム陽性細菌の代表的な菌株としての黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、枯草菌などが生長過程で自然的に細胞外ベシクルを分泌することを最初に解明したものであり、細胞外ベシクルを分離製造して多様な特性を明らかにした実施例である。ところが、グラム陽性細菌に由来する細胞外ベシクルは、前記例で提示した細菌にのみ限定されるのではなく、全てのガラム陽性細菌に該当する。分離された細胞外ベシクルを用いた疾病動物モデルは、ヒトの疾病を引き起こす主要病原菌株としての黄色ブドウ球菌に焦点を合わせたが、これに限定されるものではない。
【0077】
実施例10.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのプロテオーム分析
[イン−ゲル(in-gel)トリプシンタンパク質分解(tryptic digestion)方法]
黄色ブドウ球菌から実施例2のプロテオーム分析のための方法で分離した細胞外ベシクル50μgに5×ローディング染色剤を1×となるように仕込み、100℃で10分間高温処理した。4〜20%ノベックストリス−グリシンゲル(Novex Tris-glycine gel)(Invitrogen)を準備し、サンプルをロードした。90Vで2時間電気泳動した後、ゲルコード染色剤(GelCode Blue Stain Reagent、Pierce)で染色した。ゲルを11個の同一サイズに切った後、13ng/μLのトリプシン(trypsin、Promega)を37℃で16時間処理してタンパク質を分解させた。
【0078】
[イン−ソリューション(in-solution)トリプシンタンパク質分解方法]
黄色ブドウ球菌から実施例2のプロテオーム分析のための方法で分離した細胞外ベシクル100μgにメタノール(methanol)をサンプルの4倍体積で入れて混ぜた後、9000×gで10秒間遠心分離した。その後、クロロホルム(chloroform)を同量の体積で入れて混ぜた後、さらに9000×gで10秒間遠心分離した。HPLC用の水をサンプルの3倍体積で入れて混ぜた後、16,000×gで1分30秒間遠心分離した。上澄液が2個の層からなると、上層のみを捨てた後、サンプル体積3倍のメタノールを入れて混ぜ、しかる後に、16,000×gで3分間遠心分離して沈殿物を得た。沈殿物を分解溶液(6M尿素(urea)、40mM重炭酸アンモニウム(ammonium bicarbonate))で懸濁した後、5mMのトリス(tris、2−カルボキシエチル(2-carbocyethyl))ホスフィンヒドロクロライド(phosphine hydrochloride)と常温で1時間還元させた。その後、サンプルに25mMのヨードアセトアミド(iodoacetamide)を入れて光を遮断した状態で常温で30分間反応し、タンパク質をアルキル化(alkylation)させた。最後に、5ng/μLのトリプシンを処理した後、37℃で16時間反応させた。分解されたペプチドはオフゲル分離システム(OFFGEL fractionators system、Agilent)を用いて分離した。まず、24cmのIPGストリップ(IPG strip、 pH3〜10)をIPG再水和(IPG-rehydration)バッファで再水和反応(rehydrate)させた。分解されたペプチドを2.8mLのオフゲル(off-gel)バッファに溶かし、その中で150μLを1レーン(lane)にロードした後、50μA、8000Vで47時間電流を流してペプチドをそれぞれの等電点(pI)によって分離した。分離の後に得たサンプルはC18 ZipTip(Millipore)を用いて脱塩(desalting)した。
【0079】
[ナノイオン化質量分析(Nano−LC−ESI−MS/MS)
イン−ゲル分解方法又はイン−ソリューション分解方法で、用意した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの分解ペプチドを、C18レジン(resin)が充填された微細毛細管カラム(microcapillary column)(75μm×12cm)にロードして次の方法で分離した:3〜30%バッファB70分;30〜40%バッファB5分;40〜90%バッファB20分;血流速度0.2μL/min(バッファA組成:0.1%ギ酸(formic acid)in H2O、バッファB組成:0.1%ギ酸(formic acid)in ACN)。溶離した(eluted)ペプチドはLTQ−イオン−トラップ(LTQ-ion-trap)質量分析器((Thermo Finnigan)を用いて分析した。イオン化電気スプレイ(electrospray)の電圧は2.0kVとし、35%の規格化衝突エネルギー(normalized collision energy)条件で質量分析(MS/MS)を行った。全てのスペクトル(spectra)はデータ依存性スキャン(data-dependent scan)で獲得した。LTQの媒介変数(parameter)はフルマススキャン(full MS scan)における5個の最大ピーク(most intense peak)を断片化(fragmentation)し、動的排除(dynamic exclusion)の繰り返し回数(repeat count)を1で、繰り返し時間(repeat duration)を30秒、動的排除時間(dynamic exclusion duration)を180秒、排除質量(exclusion mass)を±1.5Da、動的排除のリストサイズ(list size)を50に設定した。
【0080】
[データ分析]
既存にアミノ酸塩基配列が構築された9個の黄色ブドウ球菌データベースをtarget(フォワード、forward)とdecoy(リバースド、reversed)の塩基配列組み合わせで一つのNCBIのデータベースを作った。質量分析から出た全てのスペクトル(MS/MSスペクトル)を前記データベース及びSEQUESTエンジンツール(SEQUEST engine tool)を用いて探索した。同定したペプチドの仮陽性率(false-positive rate)は1%以下にし、最小唯一(unique)ペプチドが2つ以上マッチ(match)されたタンパク質のみを選別した。
【0081】
[結果]
プロテオーム分析の結果、図14に示すように、イン−ゲル分解方法で41個のタンパク質が、イン−ソリューション分解方法で84個のタンパクシツが同定された。イン−ゲル方法の結果のうち、35個のタンパク質がイン−ソリューション方法で同定したタンパク質と重なり合って合計90個の黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのタンパク質を見つけ出した。同定された90個のタンパク質は表1に示した。
【0082】
同定された細胞外ベシクルタンパク質の中には、疾病に関連した多様なタンパク質が存在した。病原性(virulence)タンパク質として、敗血症又は毒素ショック症候群(toxic shock syndrome)を起こすスーパー抗原(superantigen)であるブドウ球菌エンテロトキシンQ(staphylococcus enterotoxin Q)、ブドウ球菌分泌抗原(staphylococcus secretory antigen)ssaA1とssaA2が存在した。また、赤血球を破壊し且つヘモグロビンを溶かすα−溶血素(alpha-hemolysin)とγ−溶血素(gamma-hemolysin)などの毒素が観察された。また、宿主組織内への細菌の浸潤と潜入に直接関与するプロテアーゼ(protease)としてのスタホパインA(staphopain A)と細胞外ECM及び血漿結合タンパク質(extracellular ECM and plasma binding protein)が存在した。また、血液凝固関連タンパク質としてはスタフィロコアグラーゼ(staphylocoagulase)やフォン・ヴィレブランド因子−結合タンパク質(von Willebrand factor-binding proteins)などが存在したが、このようなタンパク質は、播種性血管内凝固を特徴とする敗血症、毒素ショック症候群(toxic shock syndrome)などの発生だけでなく、動脈の血栓(thrombosis)形成による急性冠状動脈症候群(acute coronary syndrome)、脳卒中(stroke)、静脈の血栓形成による深部静脈血栓症(deep-vein thrombosis)、血栓が剥離しながら生ずる塞栓(embolism)により発生する肺動脈塞栓症(pulmonary embolism)などの様々な血管の塞栓症の病因に関与する。また、IgG−結合タンパク質(IgG-binding protein)の一つであるSbIの場合、宿主免疫細胞の食作用(phagocytosis)を抑制して細菌の免疫回避機能を維持するうえ、上皮細胞(epidermal cell)におけるIL−18の発現を誘導し、血清(serum)内のIgE抗体を増加させてアトピー皮膚炎を引き起こすことに関与することができる。
【0083】
(表1)
黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのプロテオーム
【0084】
実施例11.体外における黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるマクロファージの先天免疫反応
マウスマクロファージ(RAW 264.7)を1×105となるように24ウェルプレートに接種した後、24時間培養した。PBSで1回洗浄した後、10% FBS/RPMI培地500μLを仕込み、それぞれ1、10、100、1000、10000ng/mLの濃度で実施例2の方法によって分離した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、15時間培養した。培養液を集めて4℃で500×gにて10分間遠心分離し、上澄液を取った後、さらに3000×gで20分間遠心分離し、上澄液を取った。分離された上澄液に入っているサイトカインの量をELISA(enzyme linked immunosorbant assay)法によって測定した。
【0085】
図15はサイトカインの量を示す結果であって、細胞外ベシクルの量に比例して炎症性サイトカインとしてのTNF−αとIL−6が増加することが分かる。これは黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルがマクロファージに作用して先天免疫反応によって宿主内で炎症を誘発することができることを意味する。
【0086】
実施例12.体外における黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる皮膚線維芽細胞の先天免疫反応
マウスの皮膚組織を採取して表皮を剥がした後、真皮部分を細かく切り、ここにトリプシンを処理してそれぞれの細胞に分離して皮膚線維芽細胞を得た。こうして得た線維芽細胞を24ウェルプレートに1×104個の細胞を接種した後、24時間培養した。培養された細胞のDMEM培地に1、10μg/mLの黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した後、24時間培養した。24時間の後、培養液を集めて細胞を遠心分離した後、上澄液を得、ELISA法で、上澄液に存在する炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−6)と後天免疫の分化に影響を与えるサイトカイン(TSLP)、ケモカイン(MIP−1α、エオタキシン(Eotaxin))の量を測定して図16に示した。
【0087】
図16は免疫及び炎症関連サイトカインの量が黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによって増加することを示す。これは、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが皮膚の線維芽細胞に作用して炎症性サイトカインを発生させ、免疫反応に作用する様々な免疫細胞を取り入れて炎症を引き起こすことができることを意味する。
【0088】
実施例13.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを用いたアトピー皮膚炎(atopic dermatitis)の動物モデル
マウス(SKH−HR1種、雌)の背にDurapore(3M)テープを4〜6回取り付けたり取り外したりすることを繰り返し行った。その後、2cm×2cm程度のガーゼをマウスの背にのせた後、100μLのPBSに溶けている0.1μg、5μg、10μgの黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをガーゼに処理した後、Tegaderm(3M)を用いてガーゼが離れないようにマウスの背に固定した。これを週3回4週間繰り返し行った。最終処理24時間後にマウスを安楽死させ、皮膚組織を摘出した(図17参照)。組織学的分析の結果、テープストリッピングの後に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを投与した場合、アトピー皮膚炎患者の皮膚組織から見られる特徴としての表皮層が厚くなっており、真皮層に浸潤した炎症細胞の中で好酸球と肥満細胞の浸潤を定量化したとき、生理食塩水を投与した場合に比べて細胞外ベシクルを投与した場合に上皮細胞層の肥厚(epidermal thickness)と好酸球(eosinophils)と肥満細胞(mast cells)の浸潤が確然に増加した(図18及び図19参照)。また、皮膚組織におけるアトピー皮膚炎の特徴的な免疫学的異常所見である2型ヘルパーT細胞(type 2 helper T cell、Th2細胞)免疫反応の発現様相を評価したとき、Th2細胞から分泌されるサイトカインとしてのIL−4とIL−5の濃度が細胞外ベシクルを投与した場合に増加し、これらのサイトカインによって誘導されるケモカイン(chemokine)としてのエオタキシン(eotaxin)の濃度も細胞外ベシクルを投与した場合に増加していた(図20参照)。
【0089】
実施例14.アトピー皮膚炎患者の皮膚洗浄液における黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの測定
アトピー皮膚炎患者の患部を滅菌食塩水で多数回洗浄し、40mLの洗浄液を集めた。洗浄液に存在する異物と細菌を除去するために、5000g、10,000gで遠心分離した後、上澄液を集めて0.45μm、0.22μmのフィルターで濾過した。濾過した洗浄液を100kDサイズの物質のみ濾過する道具(centriprep)を用いて1mLに濃縮させた。濃縮液(lavage fluid)の一部を保管し、残りは同体積の滅菌食塩水を添加して150,000gで超遠心分離して細胞外ベシクル(EV fraction)を得た。得られたlavage fluidとEV fractionに黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(SA_EV)が存在するかを確認するために、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに特異的な抗体を用いてELISA法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異タンパク質が存在するかを評価した。具体的に、まず黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの抗原に特異的な抗体を96ウェルプレートにコートした後、1%BSA(Bovine Serum Albumin)でブロッキング(blocking)し、得られた部分を2時間反応させた。2時間の後、Tween20が含有されたPBSを用いてウェルをよく洗浄し、ビオチン基を持っている黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル抗原に特異的な抗体を2時間処理した。その後、ストレプトアビジンに連結されたHRP(Horseradish peroxidase)を処理し、HRPと反応して光を発生させる基質(substrate)としてのBM−PODを処理した後、発生する光の量を測定してRLU値で表示した。
【0090】
図21は患者から得たlavage fluidにおける黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに存在する抗原が存在することを示す。また、lavage fluidから別にEV fractionのみを分離した結果より、アトピー皮膚炎患者の患部に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに存在する抗原が存在することを再び確認することができる。
【0091】
実施例15.アトピー皮膚炎患者の血清内における黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに対する特異抗体(IgE)の増加
0〜10才のアトピー皮膚炎患者群20名と多様な同年齢帯の正常対照群20名から血液を採取し、4℃で3500×gにて10分間遠心分離した後、上澄液としての血清を取った。
【0092】
図22は細胞外ベシクルに対するIgG1とIgE抗体をELISA法で測定した結果であって、正常対照群に比べてアトピー皮膚炎患者群において、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに特異的なIgE抗体が血清内に確然に増加していた。
【0093】
実施例16.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる気道粘膜のTh17炎症
マウスをケタミンとランプン(Rampun)の投与によって麻酔した後、1μg、10μgの黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを30μLの生理食塩水に混ぜてマウスの鼻を介して吸入させた。先天免疫反応に対する黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの影響を調べるために、24時間後に1mLの生理食塩水を用いてマウスの気管支肺胞洗浄液を収得し、炎症の度合いを確認した(図23参照)。炎症細胞の数とTh17の分化を誘導する炎症性サイトカインとしてのIL−6の量を測定した結果、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの量に比例して、気管支肺胞洗浄液に存在する炎症細胞(特に、好中球)の数とIL−6の量が増加した(図24参照)。これは黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルが気道粘膜にTh17関連炎症を誘導することができることを意味する。
【0094】
黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルによる後天免疫反応を調べるために、週2回3週間マウスの鼻を介して1μgの黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルを吸入させ、最終吸入24時間後に気管支肺胞洗浄液を得て炎症反応を確認した(図25参照)。
【0095】
図26から分かるように、気管支肺胞洗浄液に存在する炎症細胞が黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルを吸入させたグループで大きく増加し、主に好中球が浸潤することを確認した(図26a参照)。また、気管支肺胞洗浄液に存在するサイトカインの量から気道粘膜の免疫反応を確認した結果、Th17細胞から分泌されるサイトカインとしてのIL−17の量が黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを吸入させたグループで大きく増加したことを確認した(図26b参照)。
【0096】
前記結果は、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが反復的に気道を介して吸入されたとき、気道粘膜にTh17免疫反応による好中球性炎症が発生することを意味する。
【0097】
実施例17.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる敗血症
実施例2の方法で分離した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを15、25、50μgの量でそれぞれマウス(C57B6種、雄)3匹に血管注射(intervenous)して12時間ごとに死亡マウスの数を確認した(図27参照)。
【0098】
その結果、図28の生存(survival)グラフから分かるように、25μgと50μgの細胞外ベシクルをマウスに注入したときに生存率が66.6%に減少し、一定量以上の細胞外ベシクルによってマウスの死亡が誘導されることが分かる。
【0099】
図29はマウス(C57B6種、雄)に黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルを注射した後、12時間マウスの体温を測定した結果である。体温測定のために直腸体温計をマウスの肛門に注入して体温計のデジタル画面に表示された数値を2時間ごとに記録した。その結果、15、25、50μgの細胞外ベシクルによって全身性炎症反応(systemic inflammatory response syndrome、SIRS)の指標である体温が減少する低体温症が観察された。
【0100】
実施例18.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる血管内血液凝固及び血栓形成
マウス(C57B6種、雄)に実施例2の方法で分離した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル5μgを多様な経路を介して8時間間隔で3回投与し、6時間後にマウスを安楽させ、肺を摘出した(図30参照)。 生理食塩水(PBS)をマウスの尾に血管注射(Intravenous、I.V.)して陰性対照群として使用した。摘出した肺は細胞の核をヘマトキシリン(hematoxylin)で染色し(青色)、細胞質をエオシン(eosin)で染色する(赤色)H&E(Hematoxylin-Eosin)方法で染色した。
【0101】
図31はH&E染色結果を示すもので、細胞外ベシクルをマウスの尾に血管注射(intravenous、I.V.)した場合には静脈に血栓が生じ、皮下注射(subcutatneous、S.C.)した場合には血管周辺に炎症細胞の浸潤が観察され、鼻腔投与(intranasal、I.N.)した場合には肺血管に血栓が観察された。
【0102】
マウス血液内の播種性血管内凝固症の指標を測定するために、マウスの心臓から採取した血液を抗凝固剤としてのクエン酸ナトリウム(sodium citrate)と9:1の比率となるように混ぜて血漿(plasma)にした。図32は播種性血管内凝固症の指標であるD−dimerをD−dimer診断用キットを用いて測定した結果であって、全ての投与経路において対照群に比べて血漿内D−dimerの量が増加し、特に血管注射(I.V.)と皮下注射(S.C.)の際に血漿内D−dimerの増加量が高いことが分かった。また、播種性血管内凝固症の別の指標である血小板の減少を測定するために、血漿1μLを199μLの1%シュウ酸アンモニウム(ammonium oxalate)で希釈し、湿潤板で10分間反応させた後、血球計算器(hemacytometer)に10μLを入れ、血小板(platelet)の個数を測定してその結果を図33に示した。
【0103】
図33に示すように、全ての投与経路において、細胞外ベシクルを処理した群は対照群に比べて血小板の数が減少する血小板減少症(thrombocytopenia)現象が観察された。
【0104】
実施例19.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療候補薬物in vitroスクリーニングシステムの確立
前記実施例らに基づいて黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルにより誘導される炎症性サトカインが各種疾病に大きく関与することを確認した。これに基づいて炎症性サイトカインの分泌を抑制する物質を発掘することが可能なin vitroスクリーニングシステムを開発した。図34は黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる炎症性サイトカインの分泌を抑制する物質を発掘するための模式図であって、実施例2の方法で製造した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(1μg/mL)を単独で或いは薬物候補物質(10μM)と共に実施例11の方法で準備したマウスマクロファージ(RAW264.7)に処理した後、37℃のインキュベータで15時間培養した。15時間後に上澄液を取った後、4℃、500×gで10分間遠心分離し、しかる後に、4℃で3000×gにて20分間遠心分離を行った。分離された上澄液に入っている炎症性サイトカインとしてのIL−6の量をELISA法によって測定した。これはin vitroで黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルにより誘導されるIL−6の分泌を抑制する候補物質をスクリーニングする方法を確立したもので、これにより黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療候補薬物を提供することができる。
【0105】
実施例20.In vitroスクリーニングシステムで発掘したプロドラッグの体内効能検証
図35は実施例19の方法で102種のプロドラッグ[アセトアミノフェン(Acetaminophen)、アセチルシステイン(Acetylcysteine)、アロプリノール(Allopurinol)、塩酸アルプレノロール(Alprenolol HCl)、塩酸アミトリプチリン(Amitriptyline HCl)、アトロピン(Atropine)、ブレチリウムトシレート(Bretylium tosylate)、ブロモフェニラミン(Bromopheniramine)、ブデソニド(Budesonide)、塩酸ブスピロン(Buspirone HCl)、セフロキシム(Cefuroxime)、 抱水クロラール(Chloral hydrate)、塩酸クロルプロマジン(Chlorpromazine HCl)、シメチジン(Cimetidine)、塩酸クロミプラミン(Clomipramine HCl)、 クロトリマゾール(Clotrimazole)、シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、塩酸デシプラミン(Desipramine HCl)、ジクロフェナク(Diclofenac)、ジフルニサル(Diflunisal)、ジルチアゼム(Diltiazem)、塩酸ジフェンヒドラミン(Diphenhydramine HCl)、ジソピラミド(Disopyramide)、ジスルフィラム(Disulfiram)、D−マンニトール(D-Mannitol)、ドキセピン(Doxepin)、ドキシサイクリン水和物(Doxycycline hydrate)、コハク酸ドキシラミン(Doxylamine succinate)、塩化エドロホニウム(Edrophonium chloride)、マレイン酸エナラプリル(Enalapril maleate)、ファモチジン(Famotidine)、フェンブフェン(Fenbufen)、フェノフィブラート(Fenofibrate)、フェノプロフェンカルシウム塩水和物(Fenoprofen calcium salt hydrate)、フルナリジン二塩酸塩(Flunarizine dihydrochloride)、フルフェナジン二塩化物(Fluphenazine dichloride)、フルルビプロフェン(Flurbiprofen)、フロセミド(Furosemide)、ゲムフィブロジル(Gemfibrozil)、グリクラジド(Gliclazide)、グリピジド(Glipizide)、ハロペリドール(Haloperidol)、ヒドロクロロチアジド(Hydrochlorothiazide)、ヒドロフルメチアジド(Hydroflumethiazide)、塩酸ヒドロキシジン(Hydroxyzine HCl)、イブプロフェン(Ibuprofen)、塩酸イミプラミン(Imipramine HCl)
、インダパミド(Indapamide)、インドール−2カルボン酸(Indole-2-carboxylic acid)、 インドメタジン(Indomethacin)、イプラトロピウム(Ipratropium)、ケトプロフェン(Ketoprofen)、ケトロラックトリス塩(Ketorolac tris salt)、塩酸マプロチリン(Maprotiline HCl)、メクロフェナム酸(Meclofenamic acid)、メラトニン(Melatonin)、メトホルミン(Metformin)、塩酸メタピリレン(Methapyrilene HCl)、メチマゾール(Methimazole)、メトカルバモール(Methocarbamol)、塩酸メトクロプラミド(Metoclopramide HCl)、メトロニダゾール(Metronidazole)、ナブメトン(Nabumetone)、ナプロキセン(Naproxen)、臭化ネオスチグミン(Neostigmine Br)、ナイアシン(Niacin)、塩酸ニカルジピン(Nicardipine HCl)、ニフェジピン(Nifedipine)、ニトロフラントイン (Nitrofurantoin)、ニザチジン(Nizatidine)、ノルエチンドロン(Norethindrone)、ノルトリプチリン(Nortriptyline)、塩酸オルフェナドリン(Orphenadrine HCl)、オキシプチニン(Oxybutynin)、塩酸フェンフォルミン(Phenformin HCl)、フェニルブダゾン(Phenylbutazone)、フェニトイン(Phenytoin)、ピロキシカム(Piroxicam)、プレドニゾン(Prednisone)、プロベネシド(Probenecid)、塩酸プロプラノロール(Propranolol HCl)、臭化ピリドスチグミン(Pyridostigmine Br)、塩酸ラニチジン(Ranitidine HCl)、スピロノラクトン(Spironolactone)、スルファメト(Sulfameth)、スルピリド(Sulpiride)、テノキシカム(Tenoxicam)、テルフェナジン(Terfenadine)、テオフィリン(Theophylline)、塩酸チクロピジン(Ticlopidine HCl)、トラザミド(Tolazamide)、トラゾリン(Tolazoline)、トルブタミド(Tolbutamide)、トルフェナム酸(Tolfenamic acid)、塩酸トラマドール(Tramadol HCl)、トラニルシプロミン(Tranylcypromine)、塩酸トラゾドン(Trazodone HCl)、トリアムテレン(Triamterene)、トリクロルメチアジド(Trichlormethiazide)、塩酸トリペレナミン(Tripelennamine HCl)、ベラパミル(Verapamil)、ワルファリン(Warfarin)]を処理してIL−6の量を陽性対照群に対して50%未満に減少させる薬物候補物質19種[アセトアミノフェン(Acetaminophen)、塩酸アミトリプチリン(Amitriptyline HCl)、アトロピン(Atropine)、ブレチリウムトシレート(Bretylium tosylate)、ブロモフェニラミン(Bromopheniramine)、塩酸クロルプロマジン(Chlorpromazine HCl)、塩酸クロミプラミン(Clomipramine HCl)、シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、塩酸デシプラミン(Desipramine HCl)、ジスルフィラム(Disulfiram)、ドキセピン(Doxepin)、ドキシサイクリン水和物(Doxycycline hydrate)、コハク酸ドキシラミン(Doxylamine succinate)、ハロペリドール(Haloperidol)、塩酸イミプラミン(Imipramine HCl)、塩酸ニカルジピン(Nicardipine HCl)、ノルトリプチリン(Nortriptyline)、塩酸プロプラノロール(Propranolol HCl)、テノキシカム(Tenoxicam)]を発掘した結果である。
【0106】
図36は黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをC57BL/6マウス(雄、6週、グループ当たり4匹)に鼻腔で1μg注射して免疫反応を誘導したマウスモデルから、前記発掘したプロドラッグ(10mg/kg)を共に腹腔注射して12時間後に気管支肺胞洗浄液を得、気管支肺胞洗浄液内でIL−6の量をELISA法によって定量した結果である。In vitroスクリーニングシステムを介して発掘したドキセピン(Doxepin)がブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる気管支肺胞洗浄液IL−6の増加を抑制する効果があることを確認した。また、これをin vitroスクリーニングを介して発掘した他の薬物候補物質としてのハロペリドール(Haloperidol)と共に注射したとき、IL−6を減少させる効果が増大することを確認した。
【0107】
これにより実施例19で記述した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを用いたin vitro薬物スクリーニングシステムが有効であることを確認し、細胞外ベシクルにより誘導される各種疾病に有効な薬物を提示した。
【0108】
実施例21.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるin vitro免疫反応
実施例11で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスマクロファージ(RAW264.7)に処理したとき、Th17細胞への分化を誘導するIL−6の分泌が誘導されることにより、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが炎症細胞と作用して宿主内で免疫反応を誘発することができることが分かった。マウスの骨髄由来樹枝状細胞(Bone marrow-derived dendritic cell、BMDC)にDiI(1,1'-dioctadecyl-3,3,3',3'-tetramethylindocarbocyanine perchlorate)染色剤で標識した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理し、6時間後に蛍光顕微鏡で観察したときに樹枝状細胞がベシクルを細胞内に獲得することを確認した(図37参照)。
【0109】
また、細胞外ベシクルを樹枝状細胞に24時間処理した後、樹脂状細胞の培養液を集めてELISA法でサイトカインを測定した結果、Th1誘導サイトカインとしてのIL−12が増加し(図38参照)、樹枝状細胞の活性化標識であるCD40とMHCIIの発現が増加した(図39参照)。以上の結果は、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが抗原提示細胞に作用して後天免疫反応を増加させるうえ、T細胞のTh1及びTh17細胞への分化を誘導することを示唆する。
【0110】
実施例22.岐路ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの皮下注射によるベシクル特異抗体及びT細胞免疫反応
黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルワクチンによる抗体免疫反応を測定するために、マウス(C57B6種、雄)に実施例2の方法で分離した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル1、5、20μgを1週間隔で3回皮下注射によって投与し、1週目、2週目、3週目にマウスの目の血管から血液を一部採取した(図40参照)。採取した血液を常温で30分間凝固させ、4℃、3,500×gで10分間遠心分離した後、上澄液としての血清を取った。
【0111】
図41は血清における細胞外ベシクルに対する免疫反応の指標としてのIgG抗体をELISA法で測定した結果であって、2回投与後から用量に依存的にベシクルタンパク質に対する特異抗体形成が増加することを示す。これは細胞外ベシクルを2回以上皮下注射したとき、黄色ブドウ球菌又は菌由来の細胞外ベシクルに含有されたタンパク質に対する特異抗体が形成されることを意味する。
【0112】
ブドウ球菌由来ベシクルの3回投与によってベシクル特異T細胞免疫反応を評価するために、マウス(C57B6種、雄)に黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル2、5、10μgを5日間隔で3回皮下注射によって投与し、最終接種24時間後、脾臓細胞から免疫反応を測定した(図42参照)。
【0113】
図43は細胞外ベシクルの投与によるT細胞免疫反応を測定するために、脾臓から免疫細胞を分離し、72時間体外で培養した後、培養上澄液におけるサイトカインを測定した結果であって、Th1細胞から分泌されるIFN−γとTh17細胞から分泌されるIL−17の分泌が細胞外ベシクル(10μg)を投与した群で有意に増加した。
【0114】
前記結果は、黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルを予防ワクチンとして投与したとき、体液性免疫反応であるIgG抗体の増加だけでなく、細菌に対する防御に重要なT細胞免疫反応からTh1及びTh17免疫反応が誘導され、黄色ブドウ球菌による感染と菌由来の細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0115】
実施例23.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル皮膚塗抹(パッチ、patch)投与によるベシクル特異抗体及びT細胞免疫反応
実施例13の方法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル5μgを4週間皮膚にパッチ(patch)投与して免疫反応を評価した(図44参照)。図45は黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの皮膚塗抹投与によるIgG抗体形成を示すもので、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異IgG抗体が、生理食塩水を投与した場合に比べて細胞外ベシクルを投与した場合に大きく増加した。
【0116】
細胞外ベシクルの投与によるT細胞免疫反応を測定するために、脾臓から免疫細胞を分離し、24時間黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル0.1μg/mLで体外で培養した後、培養上澄液におけるサイトカインの濃度を測定して図46に示した。
【0117】
図46に示すように、Th1細胞から分泌されるIFN−γとTh17細胞から分泌されるIL−17の分泌が、生理食塩水を投与した群に比べて黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを投与した群で大きく増加した。
【0118】
前記結果は、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルの投与によって黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異的なTh1及びTh17細胞免疫反応が誘導されたものであって、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを皮膚塗抹投与したとき、黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル特異タンパク質に対する抗体形成だけでなく、T細胞免疫反応を誘導することにより、黄色ブドウ球菌による感染と菌由来の細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防又は治療することができることを意味する。
【0119】
実施例24.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルと免疫アジュバント(polyI:C)の併合投与によるベシクル特異抗体及びT細胞免疫反応
マウス(C57B6種、雄)に実施例2の方法で分離した黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル5μgを単独で或いは合成dsRNAとしてのpolyI:C(polyinosine-polycytidylic acid)20μgと組み合わせて1週間隔で3回腹腔注射で投与し、最終ワクチン注射後から7日目と9日目に黄色ブドウ球菌(2.4×108個)をマウスに腹腔注射して感染させた(図47参照)。採取した血液を常温で30分間凝固させ、4℃で3500×gにて10分間遠心分離した後、上澄液としての血清を取った。
【0120】
図48は血清における細胞外ベシクルに対する免疫反応の指標としてのIgG抗体をELISA法で測定した結果であって、細胞外ベシクルとpolyI:Cを腹腔で注射したとき、黄色ブドウ球菌又は菌由来の細胞外ベシクルに含有されたタンパク質に対する特異抗体が有意に形成されることを示す。
【0121】
また、黄色ブドウ球菌由来ベシクルとpolyI:Cの投与によってベシクル特異T細胞免疫反応を評価するために、マウスの脾臓から免疫細胞を分離した後、72時間体外で培養し、しかる後に、培養上澄液におけるサイトカインを測定した。その結果、Th1細胞から分泌されるIFN−γとTh17細胞から分泌されるIL−17の分泌が細胞外ベシクルとpolyI:Cを投与した群において顕著に増加した(図49参照)。
【0122】
前記結果は、黄色ブドウ球菌細胞外ベシクルをpolyI:Cなどの免疫アジュバントと併合投与したとき、ベシクルワクチン単独で投与する場合に比べて、体液性免疫反応であるIgG抗体生成だけでなく、細菌に対する防御に重要なTh1及びTh17免疫反応を効率よく誘導し、黄色ブドウ球菌による感染と菌由来の細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0123】
実施例25.黄色ブドウ球菌による肺炎モデルにおける黄色ブドウ球菌由ベシクルワクチンとpolyI:Cの併合投与の効能
黄色ブドウ球菌による肺炎モデルを確立するために、4×108、2×108CFUの黄色ブドウ球菌をマウスの咽喉内に投与し、吸入させた後、生存率を確認した。その結果、24時間内に4×108CFUを投与したマウスは全て死亡したが、2×108CFUを投与したマウスの場合は40%の生存率を示した(図50参照)。
【0124】
上述した黄色ブドウ球菌による肺炎モデルにおけるベシクルワクチンの効果を確認するために、実施例23の方法で黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル5μgとpolyI:C20μgを腹腔で3回投与した後、2×108CFUの黄色ブドウ球菌を咽喉内に投与して吸入させ、生存率を確認した。その結果、ワクチンを投与したグループのマウスは24時間が経っても100%の生存率を示したが、ワクチンを投与していないマウスは40%の生存率を示した(図51参照)。
【0125】
前記結果は、黄色ブドウ球菌による肺炎の発生及びこれによる死亡をベシクルワクチンが非常に効率よく予防することができることを意味する。
【0126】
実施例26.腸球菌(Enterococcus faecalis)由来細胞外ベシクルの腹腔注射によるベシクル特異抗体及びT細胞免疫反応
マウス(C57B6種、雄)に実施例2の方法と同様に腸球菌から細胞外ベシクルを分離した。実施例22のように黄色ブドウ球菌の代わりに腸球菌由来細胞外ベシクルによる体内免疫反応を評価するために、腸球菌由来ベシクル5、10μgを1週間隔で2回腹腔注射で投与し、最終投与72時間後に免疫反応を評価した。
【0127】
抗体を測定するために採取した血液を常温で30分間凝固させ、4℃で3500×gにて10分間遠心分離した後、上澄液としての血清を取った。図52は血清における細胞外ベシクルに対する免疫反応の指標としてのIgG抗体をELISA法で測定した結果であって、これは細胞外ベシクルを2回以上腹腔投与したときに、腸球菌由来細胞外ベシクルに含有されたタンパク質に対する特異抗体が形成されることを示す。
【0128】
また、腸球菌由来細胞外ベシクルを投与した後、T細胞免疫反応を測定するために脾臓から免疫細胞を分離し、72時間体外で培養した後、培養上澄液におけるサイトカインを測定し、その結果を図53に示した。
【0129】
図53に示すように、Th1細胞から分泌されるIFN−γの分泌が細胞外ベシクル(10μg)を投与した群で有意に増加した。
【0130】
前記結果は、腸球菌細胞外ベシクルを予防ワクチンとして投与したとき、体液性免疫反応であるIgG抗体の増加だけでなく、細菌に対する防御に重要なT細胞免疫反応からTh1免疫反応が誘導され、黄色腸球菌による感染と菌由来の細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0131】
実施例27.黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル内の16S rRNA及びDNAに対する遺伝型の分析
黄色ブドウ球菌及び黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(0.2、0.5、1.0μg)に対して黄色ブドウ球菌特異16S rRNAのプライマー(フォワード(forward):AGCTTGCTTCTCTGATGTTA、リバース(reverse):TTTCACTTTTGAACCATGCG)を用いて遺伝子の存在有無をPCR(Polymerase Chain Reaction)技術で確認した[95℃5分−(94℃30秒、46℃30秒、72℃20秒)×35サイクル−72℃7分−4℃]。同一条件で大腸菌(E.coli)細胞を対照陰性群として用いた。逆転写(reverse transcription)PCRとPCRの結果を2%アガロース(agarose)ゲルにかけて確認した結果を図54に示した。
【0132】
図54に示すように、120塩基対(base pair)からバンドを確認した。これは黄色ブドウ球菌由来細胞外ベシクルにRNA及びDNAが存在することを意味する。
【0133】
前述した本発明の説明は例示のためのものである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想又は必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解することができるであろう。よって、上述した実施例は全ての面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いて疾病動物モデルを構築し、これを用いて、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防又は治療することが可能な薬物を効率よく発掘することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体又はこれを変形して投与して免疫反応を調節することにより、グラム陽性細菌による感染又はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防又は治療するワクチンの開発が可能であり、ひいてはグラム陽性細菌感染又はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病の原因因子を診断する技術の開発が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクル。
【請求項2】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項3】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項4】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項5】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項6】
前記グラム陽性細菌がマイコプラズマ(Mycoplasma)である、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項7】
前記細胞外ベシクルは動物の体内分泌物から分離されたものである、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項8】
前記体内分泌物は皮膚洗浄液、鼻水、喀痰、大便、血液、小便、関節液、脳脊髄液、胸水、及び腹水よりなる群から選ばれるものである、請求項7に記載の細胞外ベシクル。
【請求項9】
前記細胞外ベシクルは周辺環境から分離されたものである、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項10】
前記周辺環境は室内空気、室外空気、土壌、及び海よりなる群から選ばれるものである、請求項9に記載の細胞外ベシクル。
【請求項11】
前記細胞外ベシクルは細菌培養液から分離されたものである、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項12】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されたもの、又は人工的に分泌されたものである、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項13】
グラム陽性細菌培養液を遠心分離して上澄液を収得する段階と、
前記収得された上澄液を濾過する段階とを含んでなる、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルの製造方法。
【請求項14】
(a)グラム陽性細菌培養液を遠心分離して上澄液を収得する段階と、
(b)前記収得された上澄液を第1フィルターで濾過する段階と、
(c)前記濾過物を第2フィルターで濾過する段階と、
(d)収得された前記濾過物を超遠心分離して沈殿物を収得する段階とを含んでなる、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルの製造方法。
【請求項15】
前記(b)段階に続いて、濾過物を濃縮する段階をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記(d)段階の後、前記沈殿物を懸濁する段階をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病動物モデル。
【請求項18】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項19】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項20】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項21】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項22】
前記グラム陽性細菌がマイコプラズマ(Mycoplasma)である、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項23】
前記細胞外ベシクルは動物の体内分泌物から分離されたものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項24】
前記体内分泌物は皮膚洗浄液、鼻水、喀痰、大便、血液、小便、関節液、脳脊髄液、胸水、及び腹水よりなる群から選ばれるものである、請求項23に記載の疾病動物モデル。
【請求項25】
前記細胞外ベシクルは周辺環境から分離されたものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項26】
前記周辺環境は室内空気、室外空気、土壌、及び海よりなる群から選ばれるものである、請求項25に記載の疾病動物モデル。
【請求項27】
前記細胞外ベシクルは細菌培養液から分離されたものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項28】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されたもの、又は人工的に分泌されたものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項29】
前記疾病は皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、血管疾患、代謝疾患、肺疾患、骨関節疾患、及び脳神経疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項30】
前記皮膚疾患がアトピー皮膚炎である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項31】
前記呼吸器疾患は鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、気管支炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎、及び肺癌よりなる群から選ばれるものである、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項32】
前記消化器疾患は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、胃癌、炎症性腸炎、及び大腸癌よりなる群から選ばれるものである、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項33】
前記生殖器疾患が膣炎、子宮頚部炎、又は子宮頚部癌である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項34】
前記血管疾患は敗血症、血栓/塞栓症、動脈硬化症、脳卒中、急性冠状動脈症候群、及び虚血性血管疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項35】
前記代謝疾患が糖尿病又は肥満である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項36】
前記肺疾患が肺気腫又は急性呼吸不全症候群である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項37】
前記骨関節疾患が関節炎又は骨粗しょう症である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項38】
前記脳神経疾患が痴呆、退行性脳疾患、又はうつ症である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項39】
前記疾病モデルがマウスである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項40】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを動物に投与することを特徴とする、疾病動物モデルの製造方法。
【請求項41】
前記投与は皮膚投与、鼻腔投与、気道吸入、口腔投与、皮下投与、腹腔投与、血管投与、及び肛門投与よりなる群から選ばれるものである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病動物モデルを用いてバイオマーカーを発掘する方法。
【請求項43】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病予防又は治療候補薬物探索方法。
【請求項44】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項43に記載の探索方法。
【請求項45】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項43に記載の探索方法。
【請求項46】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項43に記載の探索方法。
【請求項47】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項43に記載の探索方法。
【請求項48】
前記グラム陽性細菌がマイコプラズマ(Mycoplasma)である、請求項43に記載の探索方法。
【請求項49】
前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは動物の体内分泌物から分離されたものである、請求項43に記載の探索方法。
【請求項50】
前記体内分泌物は皮膚洗浄液、鼻水、喀痰、大便、血液、小便、関節液、脳脊髄液、胸水、及び腹水よりなる群から選ばれるものである、 請求項49に記載の探索方法。
【請求項51】
前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは周辺環境から分離されたものである、請求項43に記載の探索方法。
【請求項52】
前記周辺環境は室内空気、室外空気、土壌、及び海よりなる群から選ばれるものである、 請求項51に記載の探索方法。
【請求項53】
前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは細菌培養液から分離されたものである、 請求項43に記載の探索方法。
【請求項54】
前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは自然的に分泌されたもの、又は人工的に分泌されたものである、 請求項43に記載の探索方法。
【請求項55】
前記疾病は皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、血管疾患、代謝疾患、肺疾患、骨関節疾患、及び脳神経疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項43に記載の探索方法。
【請求項56】
前記皮膚疾患がアトピー皮膚炎である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項57】
前記消化器疾患は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、胃癌、炎症性腸炎、及び大腸癌よりなる群から選ばれるものである、請求項55に記載の探索方法。
【請求項58】
前記生殖器疾患が膣炎、子宮頚部炎、又は子宮頚部癌である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項59】
前記血管疾患は敗血症、血栓/塞栓症、動脈硬化症、脳卒中、急性冠状動脈症候群、及び虚血性血管疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項55に記載の探索方法。
【請求項60】
前記代謝疾患が糖尿病又は肥満である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項61】
前記肺疾患が肺気腫又は急性呼吸不全症候群である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項62】
前記骨関節疾患が関節炎又は骨粗しょう症である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項63】
前記脳神経疾患が痴呆、退行性脳疾患、又はうつ症である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項64】
前記方法はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを細胞に処理することを特徴とする、請求項43に記載の探索方法。
【請求項65】
前記細胞は炎症細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、幹細胞、及び線維芽細胞よりなる群から選ばれるものである、請求項64に記載の探索方法。
【請求項66】
前記幹細胞は骨髄組織又は脂肪組織に由来するものである、請求項65に記載の探索方法。
【請求項67】
前記方法は炎症媒介体を測定することを特徴とする、請求項43に記載の探索方法。
【請求項68】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを含む、グラム陽性細菌感染に対する予防又は治療用ワクチン。
【請求項69】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項68に記載のワクチン。
【請求項70】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項68記載のワクチン。
【請求項71】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項68に記載のワクチン。
【請求項72】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項68に記載のワクチン。
【請求項73】
前記グラム陽性細菌がマイコプラズマ(Mycoplasma)である、請求項68に記載のワクチン。
【請求項74】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用するものである、請求項68に記載のワクチン。
【請求項75】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項74に記載のワクチン。
【請求項76】
前記変形は細菌に化学物質を処理することである、請求項74に記載のワクチン。
【請求項77】
前記化学物質が薬物である、請求項76に記載のワクチン。
【請求項78】
前記変形は細胞外ベシクルに化学物質を処理することである、請求項74に記載のワクチン。
【請求項79】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用するものである、請求項68に記載のワクチン。
【請求項80】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与して使用するものである、請求項68に記載のワクチン。
【請求項81】
前記感染は皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症よりなる群から選ばれるものである、請求項68に記載のワクチン。
【請求項82】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを含む、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療用ワクチン。
【請求項83】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項82に記載のワクチン。
【請求項84】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項82に記載のワクチン。
【請求項85】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項82に記載のワクチン。
【請求項86】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項82に記載のワクチン。
【請求項87】
前記グラム陽性細菌がマイコプラズマ(Mycoplasma)である、請求項82に記載のワクチン。
【請求項88】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用するものである、請求項82に記載のワクチン。
【請求項89】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項88に記載のワクチン。
【請求項90】
前記変形は細菌に化学物質を処理することである、請求項88に記載のワクチン。
【請求項91】
前記化学物質が薬物である、請求項90に記載のワクチン。
【請求項92】
前記変形は細胞外ベシクルに化学物質を処理することである、請求項88に記載のワクチン。
【請求項93】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用するものである、請求項82に記載のワクチン。
【請求項94】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与して使用するものである、請求項82に記載のワクチン。
【請求項95】
前記疾病は皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、血管疾患、代謝疾患、肺疾患、骨関節疾患、及び脳神経疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項82に記載のワクチン。
【請求項96】
前記皮膚疾患がアトピー皮膚炎である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項97】
前記消化器疾患は、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、胃癌、炎症性腸炎、及び大腸癌よりなる群から選ばれるものである、請求項95に記載のワクチン。
【請求項98】
前記生殖器疾患が膣炎、子宮頚部炎、又は子宮頚部癌である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項99】
前記血管疾患は敗血症、血栓/塞栓症、動脈硬化症、脳卒中、急性冠状動脈症候群、及び虚血性血管疾よりなる群から選ばれるものである、請求項95に記載のワクチン。
【請求項100】
前記代謝疾患が糖尿病又は肥満である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項101】
前記肺疾患が肺気腫又は急性呼吸不全症候群である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項102】
前記骨関節疾患が関節炎又は骨粗しょう症である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項103】
前記脳神経疾患が痴呆、退行性脳疾患、又はうつ症である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項104】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを致死量未満で哺乳動物に投与する段階を含む、疾病に対する予防又は治療方法。
【請求項105】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記細胞外ベシクルはグラム陽性細菌培養液から分離されたものである、請求項104に記載の方法。
【請求項110】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されたもの、又は人工的に分泌されたものである、請求項104に記載の方法。
【請求項111】
前記細胞外ベシクルは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用するものである、請求項104に記載の方法。
【請求項112】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記変形は細菌に化学物質を処理することである、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記変形は細胞外ベシクルに化学物質を処理することである、請求項111に記載の方法。
【請求項115】
前記投与は効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用することである、請求項104に記載の方法。
【請求項116】
前記投与は効能を増加させるか副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与して使用することである、請求項104に記載の方法。
【請求項117】
前記疾病はグラム陽性細菌による皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症よりなる群から選ばれるものである、請求項104に記載の方法。
【請求項118】
前記疾病はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病である、請求項104に記載の方法。
【請求項119】
前記疾患は皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、血管疾患、代謝疾患、肺疾患、骨関節疾患、及び脳神経疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記投与は皮下注射、皮膚塗抹、静脈注射、鼻腔投与、舌下投与、気道吸入、経口服用、肛門投与、及び血管投与よりなる群から選ばれるものである、請求項104に記載の方法。
【請求項121】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いることを特徴とする、疾病の原因因子診断方法。
【請求項122】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項121記載の診断方法。
【請求項123】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項121に記載の診断方法。
【請求項124】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項121に記載の診断方法。
【請求項125】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項121に記載の診断方法。
【請求項126】
前記疾病はグラム陽性細菌による皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症よりなる群から選ばれるものである、請求項121に記載の診断方法。
【請求項127】
前記疾病は皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、血管疾患、代謝疾患、肺疾患、骨関節疾患、及び脳神経疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項121に記載の診断方法。
【請求項128】
前記方法はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに含まれた遺伝物質の塩基配列を分析することを特徴とする、請求項121診断方法。
【請求項129】
前記遺伝物質が16S rRNAである、請求項128に記載の診断方法。
【請求項130】
前記方法はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに含まれたタンパク質を測定することを特徴とする、請求項121に記載の診断方法。
【請求項131】
前記方法はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに対する免疫反応を測定することにより行われることを特徴とする、請求項121に記載の診断方法。
【請求項132】
前記免疫反応はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに対する抗体を測定することにより行われることを特徴とする、請求項131に記載の診断方法。
【請求項133】
前記診断は血液、喀痰、 鼻水、皮膚洗浄液、大便、小便、脳脊髄液、関節液、胸水、及び腹水なよりなる群から選ばれるものを用いて測定することである、請求項121に記載の診断方法。
【請求項1】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクル。
【請求項2】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項3】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項4】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項5】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項6】
前記グラム陽性細菌がマイコプラズマ(Mycoplasma)である、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項7】
前記細胞外ベシクルは動物の体内分泌物から分離されたものである、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項8】
前記体内分泌物は皮膚洗浄液、鼻水、喀痰、大便、血液、小便、関節液、脳脊髄液、胸水、及び腹水よりなる群から選ばれるものである、請求項7に記載の細胞外ベシクル。
【請求項9】
前記細胞外ベシクルは周辺環境から分離されたものである、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項10】
前記周辺環境は室内空気、室外空気、土壌、及び海よりなる群から選ばれるものである、請求項9に記載の細胞外ベシクル。
【請求項11】
前記細胞外ベシクルは細菌培養液から分離されたものである、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項12】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されたもの、又は人工的に分泌されたものである、請求項1に記載の細胞外ベシクル。
【請求項13】
グラム陽性細菌培養液を遠心分離して上澄液を収得する段階と、
前記収得された上澄液を濾過する段階とを含んでなる、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルの製造方法。
【請求項14】
(a)グラム陽性細菌培養液を遠心分離して上澄液を収得する段階と、
(b)前記収得された上澄液を第1フィルターで濾過する段階と、
(c)前記濾過物を第2フィルターで濾過する段階と、
(d)収得された前記濾過物を超遠心分離して沈殿物を収得する段階とを含んでなる、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルの製造方法。
【請求項15】
前記(b)段階に続いて、濾過物を濃縮する段階をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記(d)段階の後、前記沈殿物を懸濁する段階をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病動物モデル。
【請求項18】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項19】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項20】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項21】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項22】
前記グラム陽性細菌がマイコプラズマ(Mycoplasma)である、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項23】
前記細胞外ベシクルは動物の体内分泌物から分離されたものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項24】
前記体内分泌物は皮膚洗浄液、鼻水、喀痰、大便、血液、小便、関節液、脳脊髄液、胸水、及び腹水よりなる群から選ばれるものである、請求項23に記載の疾病動物モデル。
【請求項25】
前記細胞外ベシクルは周辺環境から分離されたものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項26】
前記周辺環境は室内空気、室外空気、土壌、及び海よりなる群から選ばれるものである、請求項25に記載の疾病動物モデル。
【請求項27】
前記細胞外ベシクルは細菌培養液から分離されたものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項28】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されたもの、又は人工的に分泌されたものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項29】
前記疾病は皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、血管疾患、代謝疾患、肺疾患、骨関節疾患、及び脳神経疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項30】
前記皮膚疾患がアトピー皮膚炎である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項31】
前記呼吸器疾患は鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、気管支炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎、及び肺癌よりなる群から選ばれるものである、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項32】
前記消化器疾患は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、胃癌、炎症性腸炎、及び大腸癌よりなる群から選ばれるものである、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項33】
前記生殖器疾患が膣炎、子宮頚部炎、又は子宮頚部癌である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項34】
前記血管疾患は敗血症、血栓/塞栓症、動脈硬化症、脳卒中、急性冠状動脈症候群、及び虚血性血管疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項35】
前記代謝疾患が糖尿病又は肥満である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項36】
前記肺疾患が肺気腫又は急性呼吸不全症候群である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項37】
前記骨関節疾患が関節炎又は骨粗しょう症である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項38】
前記脳神経疾患が痴呆、退行性脳疾患、又はうつ症である、請求項29に記載の疾病動物モデル。
【請求項39】
前記疾病モデルがマウスである、請求項17に記載の疾病動物モデル。
【請求項40】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを動物に投与することを特徴とする、疾病動物モデルの製造方法。
【請求項41】
前記投与は皮膚投与、鼻腔投与、気道吸入、口腔投与、皮下投与、腹腔投与、血管投与、及び肛門投与よりなる群から選ばれるものである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病動物モデルを用いてバイオマーカーを発掘する方法。
【請求項43】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病予防又は治療候補薬物探索方法。
【請求項44】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項43に記載の探索方法。
【請求項45】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項43に記載の探索方法。
【請求項46】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項43に記載の探索方法。
【請求項47】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項43に記載の探索方法。
【請求項48】
前記グラム陽性細菌がマイコプラズマ(Mycoplasma)である、請求項43に記載の探索方法。
【請求項49】
前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは動物の体内分泌物から分離されたものである、請求項43に記載の探索方法。
【請求項50】
前記体内分泌物は皮膚洗浄液、鼻水、喀痰、大便、血液、小便、関節液、脳脊髄液、胸水、及び腹水よりなる群から選ばれるものである、 請求項49に記載の探索方法。
【請求項51】
前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは周辺環境から分離されたものである、請求項43に記載の探索方法。
【請求項52】
前記周辺環境は室内空気、室外空気、土壌、及び海よりなる群から選ばれるものである、 請求項51に記載の探索方法。
【請求項53】
前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは細菌培養液から分離されたものである、 請求項43に記載の探索方法。
【請求項54】
前記グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルは自然的に分泌されたもの、又は人工的に分泌されたものである、 請求項43に記載の探索方法。
【請求項55】
前記疾病は皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、血管疾患、代謝疾患、肺疾患、骨関節疾患、及び脳神経疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項43に記載の探索方法。
【請求項56】
前記皮膚疾患がアトピー皮膚炎である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項57】
前記消化器疾患は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、胃癌、炎症性腸炎、及び大腸癌よりなる群から選ばれるものである、請求項55に記載の探索方法。
【請求項58】
前記生殖器疾患が膣炎、子宮頚部炎、又は子宮頚部癌である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項59】
前記血管疾患は敗血症、血栓/塞栓症、動脈硬化症、脳卒中、急性冠状動脈症候群、及び虚血性血管疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項55に記載の探索方法。
【請求項60】
前記代謝疾患が糖尿病又は肥満である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項61】
前記肺疾患が肺気腫又は急性呼吸不全症候群である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項62】
前記骨関節疾患が関節炎又は骨粗しょう症である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項63】
前記脳神経疾患が痴呆、退行性脳疾患、又はうつ症である、請求項55に記載の探索方法。
【請求項64】
前記方法はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを細胞に処理することを特徴とする、請求項43に記載の探索方法。
【請求項65】
前記細胞は炎症細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、幹細胞、及び線維芽細胞よりなる群から選ばれるものである、請求項64に記載の探索方法。
【請求項66】
前記幹細胞は骨髄組織又は脂肪組織に由来するものである、請求項65に記載の探索方法。
【請求項67】
前記方法は炎症媒介体を測定することを特徴とする、請求項43に記載の探索方法。
【請求項68】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを含む、グラム陽性細菌感染に対する予防又は治療用ワクチン。
【請求項69】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項68に記載のワクチン。
【請求項70】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項68記載のワクチン。
【請求項71】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項68に記載のワクチン。
【請求項72】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項68に記載のワクチン。
【請求項73】
前記グラム陽性細菌がマイコプラズマ(Mycoplasma)である、請求項68に記載のワクチン。
【請求項74】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用するものである、請求項68に記載のワクチン。
【請求項75】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項74に記載のワクチン。
【請求項76】
前記変形は細菌に化学物質を処理することである、請求項74に記載のワクチン。
【請求項77】
前記化学物質が薬物である、請求項76に記載のワクチン。
【請求項78】
前記変形は細胞外ベシクルに化学物質を処理することである、請求項74に記載のワクチン。
【請求項79】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用するものである、請求項68に記載のワクチン。
【請求項80】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与して使用するものである、請求項68に記載のワクチン。
【請求項81】
前記感染は皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症よりなる群から選ばれるものである、請求項68に記載のワクチン。
【請求項82】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを含む、グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療用ワクチン。
【請求項83】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項82に記載のワクチン。
【請求項84】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項82に記載のワクチン。
【請求項85】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項82に記載のワクチン。
【請求項86】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項82に記載のワクチン。
【請求項87】
前記グラム陽性細菌がマイコプラズマ(Mycoplasma)である、請求項82に記載のワクチン。
【請求項88】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用するものである、請求項82に記載のワクチン。
【請求項89】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項88に記載のワクチン。
【請求項90】
前記変形は細菌に化学物質を処理することである、請求項88に記載のワクチン。
【請求項91】
前記化学物質が薬物である、請求項90に記載のワクチン。
【請求項92】
前記変形は細胞外ベシクルに化学物質を処理することである、請求項88に記載のワクチン。
【請求項93】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用するものである、請求項82に記載のワクチン。
【請求項94】
前記ワクチンは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与して使用するものである、請求項82に記載のワクチン。
【請求項95】
前記疾病は皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、血管疾患、代謝疾患、肺疾患、骨関節疾患、及び脳神経疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項82に記載のワクチン。
【請求項96】
前記皮膚疾患がアトピー皮膚炎である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項97】
前記消化器疾患は、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、胃癌、炎症性腸炎、及び大腸癌よりなる群から選ばれるものである、請求項95に記載のワクチン。
【請求項98】
前記生殖器疾患が膣炎、子宮頚部炎、又は子宮頚部癌である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項99】
前記血管疾患は敗血症、血栓/塞栓症、動脈硬化症、脳卒中、急性冠状動脈症候群、及び虚血性血管疾よりなる群から選ばれるものである、請求項95に記載のワクチン。
【請求項100】
前記代謝疾患が糖尿病又は肥満である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項101】
前記肺疾患が肺気腫又は急性呼吸不全症候群である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項102】
前記骨関節疾患が関節炎又は骨粗しょう症である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項103】
前記脳神経疾患が痴呆、退行性脳疾患、又はうつ症である、請求項95に記載のワクチン。
【請求項104】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを致死量未満で哺乳動物に投与する段階を含む、疾病に対する予防又は治療方法。
【請求項105】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記細胞外ベシクルはグラム陽性細菌培養液から分離されたものである、請求項104に記載の方法。
【請求項110】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されたもの、又は人工的に分泌されたものである、請求項104に記載の方法。
【請求項111】
前記細胞外ベシクルは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で変形して使用するものである、請求項104に記載の方法。
【請求項112】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記変形は細菌に化学物質を処理することである、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記変形は細胞外ベシクルに化学物質を処理することである、請求項111に記載の方法。
【請求項115】
前記投与は効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用することである、請求項104に記載の方法。
【請求項116】
前記投与は効能を増加させるか副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与して使用することである、請求項104に記載の方法。
【請求項117】
前記疾病はグラム陽性細菌による皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症よりなる群から選ばれるものである、請求項104に記載の方法。
【請求項118】
前記疾病はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病である、請求項104に記載の方法。
【請求項119】
前記疾患は皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、血管疾患、代謝疾患、肺疾患、骨関節疾患、及び脳神経疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記投与は皮下注射、皮膚塗抹、静脈注射、鼻腔投与、舌下投与、気道吸入、経口服用、肛門投与、及び血管投与よりなる群から選ばれるものである、請求項104に記載の方法。
【請求項121】
グラム陽性細菌由来細胞外ベシクルを用いることを特徴とする、疾病の原因因子診断方法。
【請求項122】
前記グラム陽性細菌がファーミキューテス(Firmicutes)門(phylum)である、請求項121記載の診断方法。
【請求項123】
前記グラム陽性細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ノカルジア(Norcarida)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びリステリア(Listeria)よりなる群から選ばれるものである、請求項121に記載の診断方法。
【請求項124】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項121に記載の診断方法。
【請求項125】
前記グラム陽性細菌がモリクテス(Mollicutes)綱(class)である、請求項121に記載の診断方法。
【請求項126】
前記疾病はグラム陽性細菌による皮膚感染、呼吸器感染、泌尿生殖器感染、骨関節感染、中枢神経系感染、及び敗血症よりなる群から選ばれるものである、請求項121に記載の診断方法。
【請求項127】
前記疾病は皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、血管疾患、代謝疾患、肺疾患、骨関節疾患、及び脳神経疾患よりなる群から選ばれるものである、請求項121に記載の診断方法。
【請求項128】
前記方法はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに含まれた遺伝物質の塩基配列を分析することを特徴とする、請求項121診断方法。
【請求項129】
前記遺伝物質が16S rRNAである、請求項128に記載の診断方法。
【請求項130】
前記方法はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに含まれたタンパク質を測定することを特徴とする、請求項121に記載の診断方法。
【請求項131】
前記方法はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに対する免疫反応を測定することにより行われることを特徴とする、請求項121に記載の診断方法。
【請求項132】
前記免疫反応はグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルに対する抗体を測定することにより行われることを特徴とする、請求項131に記載の診断方法。
【請求項133】
前記診断は血液、喀痰、 鼻水、皮膚洗浄液、大便、小便、脳脊髄液、関節液、胸水、及び腹水なよりなる群から選ばれるものを用いて測定することである、請求項121に記載の診断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【公表番号】特表2013−503858(P2013−503858A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527815(P2012−527815)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005721
【国際公開番号】WO2011/027990
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512002884)イオン メディックス インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005721
【国際公開番号】WO2011/027990
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512002884)イオン メディックス インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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