説明

グラム陽性菌由来の表面固定化タンパク質を同定するためのバイオインフォマティクス法及びそれによって得られるタンパク質

【課題】グラム陽性菌、例えばエンテロコッカス属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属及びバシラス属細菌由来のMSCRAMM(登録商標)様の特徴を有するタンパク質を同定し且つ単離するバイオインフォマティクス法であって、グラム陽性菌によって引き起こされる感染症を予防及び治療する方法に利用できるバイオインフォマティクス法を提供する。
【解決手段】アミノ酸配列情報から、C末端領域に推定上のLPXTG細胞壁選別シグナルを有し且つ前記タンパク質及び該LPXTG固定化細胞壁タンパク質を有するMSCRAMM(登録商標)タンパク質と別の構造類似性を有するタンパク質を同定する方法。同定し且つ単離されるMSCRAMM(登録商標)タンパク質及びその免疫原性領域を使用する、グラム陽性菌感染症の診断、予防及び治療に有用な抗体を産生。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2002年9月13日付けで出願された米国仮出願第60/410,303号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、微生物学、分子生物学及び免疫学の分野に関し、さらに詳しくはMSCRAMM(登録商標)として知られている表面固定化タンパク質(surface-anchored protein)に関し、また免疫グロブリン(Ig)様折りたたみ領域を含む潜在的(potential)タンパク質由来の構造的特徴を検出することにより認識可能な細胞壁選別シグナルを有するグラム陽性菌由来の推定上のMSCRAMM(登録商標)タンパク質、すなわち細胞外マトリックス分子に結合できるタンパク質及び該タンパク質をコードする遺伝子を同定するバイオインフォマティクス法に関する。さらにまた、本発明は、かかるタンパク質を認識する抗体、例えばポリクロナール抗体及びモノクロナール抗体、並びにモノクロナール抗体をコードする核酸を用いて形質転換された宿主細胞に関し、またヒト及び動物のグラム陽性菌感染症の診断、治療又は予防におけるかかる抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒト及び動物において無数の感染症を引き起こす可能性があることから、医薬及び疫学の分野で重要になっている多数のグラム陽性菌が存在する。一つのこのようなグラム陽性菌、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)は、哺乳動物の腸内の共生菌叢に属する。グラム陽性菌はまた、細菌性心内膜炎の病原因物質として長い間知られている(Murray、1990年)。この10年間で、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)は、典型的に抗生物質療法を受けている入院患者において感染症を引き起こす日和見性院内病原体としてますます出現している。この細菌の臨床株は、最も一般的に使用されている抗生物質に対して多数の後天的及び内因的に進化させた耐性メカニズムを宿す場合が多く、腸内球菌感染症の治療を困難にしている(Murray、1990年、1999年) (Tailor、1993年)(Huycke、1998年)。多くの抗生物質耐性遺伝子は、可動遺伝要素、例えば小プラスミド及びトランスポゾンにある(Paulsen、2003年)。これは、この生物から他の細菌種への耐性決定因子の遺伝的伝達、例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対するバンコマイシン耐性について最近文書化された伝達について懸念を生じている(CDC、2002年)。抑制することが難しい感染症を一般に引き起こすさらに別のグラム陽性菌、例えばエンテロコッカス属の中の別の細菌、例えばエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、並びにストレプトコッカス属の細菌、例えばストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)及び肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ブドウ球菌(Staphylococcus)属の細菌、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)、並びにバシラス属の細菌、例えば炭疽菌(Bacillus anthracis)が知られいてる。
【0004】
哺乳動物組織に接着することができることが、微生物感染の定着及び開始の重要なステップである。しかし、微生物接着に関する多数の未知の因子に照らして、グラム陽性菌の比較的知られていない接着メカニズムについて研究し、得られた情報を利用して代替抗菌療法を開発するための手段を提供する挑戦が相変わらずある。このような療法の開発への1つの侵入(inroad)は、上皮細胞及び内皮細胞の下部の、主としてコラーゲンやその他の糖タンパク質からなる複雑で、動的で且つ多機能な構造であるヒト細胞外マトリックスの存在である。外部環境に対する最も外側の層として、それは病原性 細菌のための主要な接着標的及び入り口である(Foster及びHook、1998年)(Westerlund及びKorhonen、1993年)。ECM成分に特異的に結合する多数の細菌性付着因子が分子レベルで特定されている。まとめてMSCRAMM(登録商標)タンパク質(微生物表面成分認識接着性マトリックス分子)と呼ばれるグラム陽性菌由来の一群の関連細胞表面タンパク質は、ECMの主要な成分、例えばコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、フィブリノーゲン、ケラチン、ビトロネクチン及び骨シアロタンパク質に結合する(Patti、1994年) (Foster及びHook、1998年) (Tung、2000年)(O'Brien、2002年)。MSCRAMM(登録商標)タンパク質は、典型的には細胞質膜を横切るSec-依存性輸送用のN末端シグナル配列と、その後に続くほとんどの場合に結合活性を示すN末端Aドメインと、MSCRAMM(登録商標)タンパク質を結合する一群のフィブロネクチンにおいてフィブロネクチン結合を付与する反復Bドメインとからなるモザイクタンパク質である(Johら、1994年)。細菌細胞壁に対する共有結合は、細胞壁橋架け(spanning)ドメインが前にあり且つ後ろに疎水性貫膜領域があり、そして最後に正に帯電したアミノ酸残基の短い配列からなる細胞質ゾル尾部があるC末端に配置されたLPxTGモチーフによって媒介される(Schneewindら、1995年)(Mazmanianら、2001年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いずれにしても、抗生物質耐性細菌株の発生を増やす可能性なしに効率的且つ効果的な方法で種々様々な細菌感染症に対応する新規な手段を開発するためには、感染症の分野において未だ個々の問題がある。さらにまた、特に入院患者において細菌株一般及び抗生物質耐性株一般によって引き起こされる潜在的な問題に照らして、抗生物質を使用せずに且つ抗生物質耐性菌株が発生する可能性を増大させることなく、このような感染症を抑える方法を開発することがますます重要である。従って、グラム陽性菌によって引き起こされる感染症を特定し、治療し且つ予防するための新規な手段を開発し且つこのような細菌由来の新規なMSCRAMM(登録商標)タンパク質であってグラム陽性菌による感染症の伝播を治療及び予防するための新規な方法をもたらす抗体を生じさせるであろう新規なMSCRAMM(登録商標)タンパク質を開発することが極めて望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
従って、本発明の目的は、グラム陽性菌により生じる感染症を治療又は予防する方法に利用できるグラム陽性菌由来のMSCRAMM(登録商標)タンパク質を同定し且つ単離するバイオインフォマティクス方法を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、本発明のバイオインフォマティクス法を使用して得られるタンパク質を同定し且つ単離すること、及びその中の有効な抗原性ドメイン、例えばAドメインを同定すること、並びにグラム陽性菌により生じる感染症を治療又は予防する方法においてこれらのドメインを利用することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、本発明のバイオインフォマティクス法を使用して単離され且つ同定されるタンパク質及び抗原性ドメインを利用して、これらのタンパク質及び抗原性領域を認識できる抗体であって、従ってグラム陽性菌によって引き起こされる病気及び感染症を診断、治療又は予防するのに有用であり得る抗体を生じさせることにある。
【0009】
さらにまた、本発明の目的は、慣用の抗生物質療法の代替法として使用でき、従ってグラム陽性菌によって引き起こされる感染症を治療又は予防する安全且つ有効な方法を提供することができる本発明のバイオインフォマティクス法を使用して同定及び単離されるタンパク質及び抗原性ドメインを利用するワクチン、キット及び別の治療法を提供することにある。
【0010】
これらの目的及びその他の目的は、グラム陽性菌、例えばエンテロコッカス属、ブドウ球菌属、ストレプトコッカス属及びバシラス属の細菌の中から、多数のその他の細菌の中から、グラム陽性菌によって引き起こされる感染症を予防及び治療する方法に利用することができるMSCRAMM(登録商標)様の特徴を有するタンパク質を同定するバイオインフォマティクアプローチを利用する本発明によって提供される。特に、この方法は、推定上のC末端LPXTG(配列番号:1)細胞壁選別シグナルと、LPXTG固定化細胞壁タンパク質を有するMSCRAMM(登録商標)タンパク質の構造類似性とを有するタンパク質を探索することを伴う。特に、本発明は、例えば免疫グロブリン様折りたたみを採用する(adopt)領域の位置を確認するすることによって、MSCRAMM(登録商標)タンパク質、すなわち細胞外マトリックス分子に結合することができるタンパク質を同定し且つ単離する方法を提供し、且つこれらのタンパク質をコードする本方法で同定される核酸由来のこれらのタンパク質の組換え製造を包含する。これらのIg折りたたみ含有領域は、同じサイズ及びIg型折りたたみの1〜4個のドメインからなる免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)の解明された(solved)結晶構造(〜50−500 aa)に対する幾つかの連続し且つ重複する一致(match)からなる。相同性Ig折りたたみ領域は、フィブロネクチン及びその他のIgSFタンパク質に認められるような“糸に通したビーズ(beads-in-a-string)”配置の連続モジュールを示す(Leahy、1996年)(Sharma、1999年)(Hamburger、1999年)(Luo、2000年)。例えば、Ig折りたたみサブドメイン(N2及びN3)の縦列反復は、ClfAのフィブリノーゲン結合ドメインの結晶構造に認められる。ClfA及び同様の構造のClfBの全長Aドメインは、追加のN末端サブドメインN1からなる(Deivanayagam、2002年)(Perkins、2001年)。配列及び二次構造類似性に基づいて、類似のサブドメイン組織はまた、別のMSCRAMM(登録商標)タンパク質、例えばFnbpA、FnbpB、Ace及びSdrタンパク質中にも期待される。CNA最小コラーゲン結合性ドメインの解明された結晶構造は、単一のIg型サブドメイン(N2)からなり(Symersky、1997年)且つC末端反復ドメインB1及びB2それぞれはIg折りたたみサブドメインの縦列反復からなる(Deivanayagam、2000年)。同様のモジュール構造が、B3及びB4反復中に期待される。
【0011】
本発明に従って、主要な細胞外マトリックスタンパク質に結合することができる新規なMSCRAMM(登録商標)様タンパク質表面固定化タンパク質は、グラム陽性菌、例えばエンテロコッカス属、ストレプトコッカス属、ブドウ球菌属及びバシラス属のグラム陽性菌から得られ、このようなタンパク質は、(i)ClfA及びCNAの解明されたIg折りたたみ結晶構造並びに別のMSCRAMM(登録商標)タンパク質の予測された三次構造に構造的に相同性であり、(ii)Ig折りたたみタンパク質に認められるような類似のβ−シートに富む二次構造を共有し且つ(iii)分泌シグナル、反復を後ろに伴う非反復ドメイン、及びC末端細胞壁固定ドメインと同様の構成を有することを特徴とする。また、本発明の方法によって同定されるタンパク質の結合は、これらが種々の細胞外マトリックス(ECM)分子、例えばタンパク質及びその他の成分を標的とし且つ結合することを確認した。例えば、3種類の単離タンパク質の3個はECMタンパク質に結合し;2個はフィブリノーゲンに結合し且つ少なくとも1個はコラーゲン及びラミニンに結合する。また、本発明のタンパク質は、ほとんどの分離株に存在することが明らかにされており、感染中に生体内で発現される。
【0012】
従って、本発明に従って、MSCRAMM(登録商標)タンパク質ファミリーの一般的な特徴であると思われる多数のIg折りたたみ単位のモジュール構造を同定し且つ単離する方法が提供される。MSCRAMM(登録商標)タンパク質のN-サブドメインの長さは、典型的には〜150 aaであり、また本発明によって同定されるタンパク質、例えば以下に挙げたタンパク質は、そのAドメインに4個以上のIg折りたたみサブドメインを収容している。
【0013】
これらの態様並びに開示された発明の精神及び範囲に入る別法及び改変は、本明細書及び/又は本明細書で引用した参考文献から当業者には容易に明らかになるであろう。これらの参考文献の全部が、参考として組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な説明
【図1】本発明に従って同定された種々のMSCRAMM(登録商標)タンパク質を表す図であり、該タンパク質の種々の領域及びこれらの免疫グロブリン様領域を例示する図である。
【0015】
【図2】本発明のLPXTG含有タンパク質の大腸菌発現及び精製Aドメインのクーマシー染色SDS-PAGEを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい態様の詳細な説明
本発明に従って、グラム陽性菌、例えばエンテロコッカス属、ブドウ球菌属、ストレプトコッカス属及びバシラス属のような属からの細菌由来のタンパク質、特にMSCRAMM(登録商標)様の特徴を有するタンパク質を同定し且つ単離し、同定され且つ分離されたタンパク質を利用して抗体を生じさせ且つグラム陽性菌によって引き起こされる感染症を診断、治療又は予防するバイオインフォマティクス法が提供される。一般的に、この方法は、推定上のC末端LPXTG(配列番号:1)細胞壁選別シグナル及び/又はLPXTG含有細胞壁固定化タンパク質を有するMSCRAMM(登録商標)タンパク質(微生物表面成分認識接着性マトリックス分子)に対する別の構造類似物を用いてタンパク質を探索することを伴う。好ましい態様において、本発明は、MSCRAMM(登録商標)タンパク質、すなわち宿主細胞の細胞外マトリックス分子、例えばタンパク質、炭水化物及びその他の成分に結合する表面タンパク質〔但し、これらの配置されたタンパク質は免疫グロブリン様折りたたみを採用する(adopt)領域を含有する〕を同定し且つ単離する方法を提供する。これらのIg折りたたみ含有領域は、同じサイズ及びIg型折りたたみの1〜4個のドメインからなる免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)の解明された結晶構造(〜50−500 aa)に対する幾つかの連続し且つ重複する一致(match)からなる。相同性Ig折りたたみ領域は、フィブロネクチン及びその他のIgSFタンパク質に認められるような“糸に通したビーズ(beads-in-a-string)”配置の連続モジュールを示す(Leahy、1996年)(Sharma、1999年)(Hamburger、1999年)(Luo、2000年)。例えば、Ig折りたたみサブドメイン(N2及びN3)の縦列反復は、ClfAのフィブリノーゲン結合ドメインの結晶構造に認められる。ClfA及び同様の構造のClfBの全長Aドメインは、追加のN末端サブドメイン、N1からなる(Deivanayagam、2002年)(Perkins、2001年)。配列及び二次構造類似性に基づいて、類似のサブドメイン組織はまた、別のMSCRAMM(登録商標)タンパク質、例えばFnbpA、FnbpB、Ace及びSdrタンパク質中に期待される。CNA最小コラーゲン結合性ドメインの解明された 結晶構造は、単一のIg型サブドメイン(N2)からなり(Symersky、1997年)且つC末端反復ドメインB1及びB2それぞれは、Ig折りたたみサブドメインの縦列反復からなる(Deivanayagam、2000年)。同様のモジュール構造は、B3及びB4反復中に期待される。
【0017】
本発明に従って、新規なMSCRAMM(登録商標)様タンパク質表面固定化タンパク質は、グラム陽性菌、例えばエンテロコッカス属、ストレプトコッカス属、ブドウ球菌属及びバシラス属のグラム陽性菌から得られ、このようなタンパク質は、(i)ClfA及びCNAの解明されたIg折りたたみ結晶構造並びに別のMSCRAMM(登録商標)タンパク質の予測された三次構造に構造的に相同性であり、(ii)Ig折りたたみタンパク質に認められるような同様のβ−シートに富む二次構造を共有し且つ(iii)分泌シグナル、後ろに反復を伴う非反復ドメイン、及びC末端細胞壁固定ドメインと同様の構成を有することを特徴とする。また、本発明の方法によって同定されるタンパク質の結合は、これらが種々の細胞外マトリックス分子を標的とし且つ結合することを確認した。例えば、単離タンパク質の3個はECMタンパク質に結合し;2個はフィブリノーゲンに結合し且つ少なくとも1個はコラーゲン及びラミニンに結合する。また、本発明のタンパク質は、ほとんどの分離株に存在することが明らかにされており、感染中に生体内で発現される。
【0018】
本発明に従って、MSCRAMM(登録商標)タンパク質ファミリーの一般的な特徴を有する多数のIg折りたたみ単位のモジュール構造を同定し且つ単離する方法が提供される。MSCRAMM(登録商標)タンパク質のN-サブドメインの長さは、典型的には〜150 aaであり、また本発明によって同定されるタンパク質、例えば以下に挙げたタンパク質は、そのAドメインに4個以上のIg折りたたみサブドメインを収容している。本発明のMSCRAMM(登録商標)タンパク質及びこれらのAドメインの分離及びこれらに結合することができる抗体の産生又は病気を診断、治療又は予防する方法における使用は、米国特許第6,288,214号;第6,177,084号;第6,008,241号;第6,086,895号;第5,980,908号;第5,866,541号;第5,851,794号;第5,840,846号;第5,789,549号;第5,770,702号;第5,652,217号;第5,648,240号;第5,571,514号;第5,440,014号;第5,416,021号及び第5,320,951号公報;並びに国際公開第WO 00/68242号明細書に記載されているような別のMSCRAMM(登録商標)タンパク質を用いて記載されているものと同様である。前記の参考文献の全部は、本明細書に参考文献として組み込まれる。
【0019】
本発明に従って、グラム陽性菌の1個又はそれ以上の表面固定化MSCRAMM(登録商標)タンパク質ファミリーの特徴的なモジュール構造を同定し且つ分離するために、推定上のLPXTG含有タンパク質中に免疫グロブリン様(すなわちIg様)折りたたみの位置を確認すする工程を含む一連の工程が採用される。この方法は、グラム陽性菌種由来の配列情報、例えばアミノ酸配列及び/又は核酸配列を含む現在知られているデータベースと共に使用でき且つLPXTG(配列番号:1)モチーフ有するタンパク質の位置を確認し、次いで配列情報を再調査し、分析して以下に記載のMSCRAMM(登録商標)と個々の構造類似性を有するタンパク質を選別する工程を含む。
【0020】
本発明の一般的な方法において、該方法の最初の部分は、1種又はそれ以上のグラム陽性菌に関する配列情報を含むデータベースを検索して、グラム陽性菌の注釈付きゲノム中の細胞壁固定化タンパク質に含まれるLPXTG(配列番号:1)モチーフを含有するこれらのタンパク質の位置を確認すべきである。これは、最初に、例えば配列決定センター、例えばTIGR、NCBlなどの多数のウエブサイトから関心事の1種又はそれ以上のグラム陽性菌由来のアミノ酸配列の全ゲノムを得ることによって行われる。好ましい方法において、これらの配列は、ダウンロードして、電子メモリーに保存した後に、ローカルシリコングラフィックスマシン(SGI)又はその他の適当なコンピューター装置で同定工程を実施することができる。好ましい方法において、この保存情報は、例えばNCBlから得られるプログラムフォーム“atdb”を使用することによってローカル検索可能データベースを作成するのに使用され、またこのような検索可能データベースは、SGIにローカルインストールされる。
【0021】
LPXTGモチーフは、保存配列情報から多数の適当なプログラムにより同定される。例えば、これらのLPXTGモチーフ含有タンパク質は、PHI-blastを使用して同定することができる。PHI-blastはNCBlから得られ、再度SGI又はその他の適当なコンピューター装置にローカルインストール及び保存できる。PHI-blastサーチは、縮重LPXTGパターン L-P-X-[TSA]-[GANS](Xは任意のアミノ酸である)を使用する。PHI-blastの正確な鋳型(テンプレート)は、個々の生物に応じて変化させることができるが、いずれの場合にも、この装置はLPXTGモチーフを同定する方法を含む。それぞれの生物については、配列相同性を有していないブドウ球菌の少なくとも2個の公知の細胞壁固定化タンパク質及び利用できる場合には標的生物由来の公知の細胞壁固定化タンパク質を使用することが好ましい。
【0022】
LPXTG含有タンパク質はPHI-blastのような適当なシステムを使用して同定され、得られ、これらのタンパク質はMSCRAMM(登録商標)の特性を有するLPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質の典型的な特徴を有するタンパク質を選択するためにさらに分析される。好ましい方法において、これらの特徴は、一般にN末端にシグナルペプチド、C末端の近くにあるLPXTGモチーフ、その後に続く疎水性貫膜セグメント、及びC末端に数個の正帯電残基を含むであろう。これらは下記のようにして行われる:
シグナルペプチドは、任意の適当な同定方法、例えば“Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites” Henrik Nielsen、Jacob Engelbrecht、Soren Brunak及びGunnar von Heijne、Protein Engineering 10, 1-6 (1997)、(参考文献として本明細書に組み込まれる)に記載の方法を使用して同定し得る。本方法において、本発明者らにとって好ましいシステムは http://www.cbs.dtu.dk/services/Signal/ のシグナルP予測サーバーであるが、別の類似のシグナルペプチド同定方法も使用し得る。LPXTGモチーフの位置及びC末端の正帯電アミノ酸残基の決定は配列の目視検査を使用して達成されるが、データベースを使用してこれらの特徴の存在を調べてもよい。
【0023】
好ましい態様において、LPXTGモチーフの後の疎水性貫膜セグメントはまた、このような領域を予測できる慣用のプログラムを使用して位置を確認してもよい。一つのこのようなシステムの例は、貫膜セグメントの予測に使用できるhttp://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM-2.0/でインターネットで利用できるTMHMMサーバーである。しかし、多数の別の適当な予測サーバーが、インターネットで又は保存したコンピュータプログラムで、例えばhttp://www.ch.embnet.ora/software/TMPRED form.htmlで利用できるT-Mpred、http://www.sbc.su.se/~miklos/DAS/で利用できるDASシステム及びhttp://www.enzim.hu/hmmtop/で利用できるHMMTOPで利用できる。
【0024】
前記の操作に従うことによって、前記の特徴を含む推定上のLPXTG含有配列を、MSCRAMM(登録商標)タンパク質、すなわち細胞外マトリックス成分を結合できる能力を有する可能性が高いものとして選択することができる。これらの最初の工程に従って、このようにして同定されるLPXTG含有タンパク質は、結局、推定上のタンパク質又はそのAドメインを発現し且つこのタンパク質又はそのドメインが細胞外マトリックス成分に結合するか否かを決定することによって確認されるように、少なくとも約90%の時間でMSCRAMM(登録商標)タンパク質であることが分かることが意図される。これは、当該技術で常用され且つ十分に当業者の能力の範囲にあるであろう簡単な結合アッセイによって行われる。さらに、最初に位置が確認される又は前記のシグナルペプチド/C末端/貫膜同定特徴を使用してさらに選択されるLPXTG含有配列は、グラム陽性菌由来のMSCRAMM(登録商標)タンパク質の免疫グロブリン様折りたたみ特徴の存在を確認するために、以下に示すようにしてさらに分析することができる。
【0025】
同様に、このような方法において、LPXTG含有細胞壁タンパク質はまた、注釈付きゲノムヌクレオチドデータベース、例えば
http://www.tigr.org/tigr-scripts/CMR2/CMRHomePage.spl のTIGRウエブサイト(総合微生物資源)に置かれている注釈付きゲノムヌクレオチドデータベースを使用しても位置を確認し得る。これらのデータベースについて、用語“LPXTG”又は“細胞壁”を使用して、関心事のゲノム中の細胞壁固定化タンパク質として注釈付けられているようなタンパク質を検索するのに使用し得る。
【0026】
最後に、LPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質はまた、グラム陽性菌の注釈が付かないヌクレオチドゲノムにおいて同定し得る。この場合に、ゲノム配列は、配列決定センターのウエブサイトから得られ、また該配列は、適当ならば、ローカルシリコングラフィックスマシン(SGI)などのコンピューターメモリーに保存してもよい。遺伝子予測は、TIGR製のGlimmer 2.0のようなプログラムを使用して実施し得、これは個々の生物又は特徴に適合させるために所望するように部分変更し得るUNIX Cシェルスクリプトにより促進することができる。好ましい方法において、予測された遺伝子は、適当な翻訳プログラム、好ましくは大量の配列を翻訳できる翻訳プログラムを使用してアミノ酸配列に翻訳される。最後に、翻訳されたアミノ酸配列は、前記のような検索可能なデータベースにローカルにフォーマットされ、以下に記載のようにして別の分析に供される。
【0027】
本発明の好ましい方法において、諸工程を実施し、それによって推定上のLPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質中の免疫グロブリン様(Ig様)折りたたみを予測し、同定することができる。本発明に従って、推定上のLPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質のアミノ酸配列は、次いでMSCRAMM(登録商標)タンパク質の特徴を示すIg様折りたたみの存在を調べるために分析される。これは、多数の方法で、例えば(http://www.sbg.bio.ic.ac.uk/~3dpssm/)で利用できるウエブサーバー3D-PSSMを使用して入手し得るような折りたたみ認識ソフトウエアを使用して推定上のMSCRAMM(登録商標)を処理することにより行われる。折りたたみ予測の別の方法は、本明細書に参考として組み込まれる Kelley LA、MacCallum RM & Sternberg MJE. Enhanced Genome Annotation using Structural Profiles in the Progam 3D-PSSM. J Mol Biol. 2000 Jun 2; 299(2): 499-520で論じられている。この方法を使用すると、3D-PSSMのアウトプットは、公知且つ公表されたMSCRAMM(登録商標)として類似の3D構造を採用する供試配列の可能性を示す確率E値を与える。本発明に従って、公表されたIg様折りたたみ構造に対してE値<0.25を有するタンパク質は、予測されたIg様折りたたみを含有すると考えられ、このようなタンパク質は、本発明にに従って有用なMSCRAMM(登録商標)タンパク質、すなわち宿主細胞の細胞外マトリックス上の付着因子分子を認識するタンパク質として同定される。
【0028】
本発明はこのようにして実施され、それによりこのようなグラム陽性菌、例えばエンテロコッカス属、ストレプトコッカス属、ブドウ球菌属及びバシラス属のグラム陽性菌由来のMSCRAMM(登録商標)様の特徴を有するタンパク質及びAドメインを同定し且つ生成する。好ましい方法において、前記のようにして同定されたタンパク質又はその抗原性Aドメインは、本明細書に記載ようにして発現させ、精製し且つ特定し得る。
【0029】
従って、本発明に従って、バイオインフォマティクスアプローチは、グラム陽性菌の中からMSCRAMM(登録商標)様特徴をもつタンパク質を同定するのに使用され、これらの予測されたタンパク質がMSCRAMM様特徴をもつことが明らかにされた。エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)を使用する一つのこのような場合において、推定上のC末端LPxTG細胞壁選別シグナルを有する42個のタンパク質がエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)ゲノムにおいて同定された。本方法に従って、これらのタンパク質は前記の方法でIg様折りたたみの存在を調べるために分析された。本方法に基づいて、9個のタンパク質が免疫グロブリン様折りたたみを採用する(adopt)領域を含むことが認められた。これらの9個のタンパク質についてのIg折りたたみ含有領域は、図1に示され、これは免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)の解明された結晶構造(〜150−500 aa)に対する幾つかの連続し且つ重複した一致(match)からなり、同じサイズ及びIg型の折りたたみの1〜4個のドメインからなる。相同性のIg折りたたみ領域は、腸球菌タンパク質の大部分をカバーし得、しかもフィブロネクチンやその他のIgSFタンパク質に認められる同様の“糸に通したビーズ(beads-in-a-string)”配置の連続モジュールを示し得る。
【0030】
これらのタンパク質のAドメインのさらなる発現、精製及び分析を行った。図2に示すように、8個のタンパク質のA領域は、SDS-PAGEゲルで予期されたように移動したN末端His6標識融合タンパク質として発現し、これに対してEF1091はサイズで約160 kDaのバンドを示した;予測された113 kDaよりも大きいサイズの分子であった。おそらくは比較的大きなサイズに起因すると思われるある種の分解がタンパク質EF1091、EF1824、EF0089及びEF3023で認められた。それにもかかわらず、これらのタンパク質は>95%の純度であると評価された。EF1824の推定上のグルコシルヒドロラーゼドメイン(アミノ酸42−819)(これは、前記タンパク質の残部から別々にクローン化され、発現された)(図 1)は大腸菌細胞質の不溶性画分に認められた。従って、別の発現されたタンパク質について採用された在来の(native)、非変性条件下で金属アフィニティークロマトグラフィーによる精製は、実行できなかった。精製されたタンパク質は、さらにMaldi-TOF質量分析により特定された。SDS-PAGEで異常な移動を伴うEF1091を含めて9個のタンパク質全部が、アミノ酸配列から算出される分子量(表1)とよく一致したピークを示し、従ってフルサイズのタンパク質が後翻訳処理を伴わずに生成していたことが示される。
【0031】
二次構造予測及びCD測定(表2)は、腸球菌タンパク質におけるIg折りたたみモジュール構造の発見を支持する。両方の方法は、類似した高い割合のβ-シート(〜50%)とコイル、並びに少量のαらせん、MSCRAMM(登録商標)タンパク質及びIgSF全般に認められるような同じ状態を示す。EF1824及びEF3023における多量のαらせんはおそらくは、Ig折りたたみを有するその比較的短い予測された領域を反映し、且つ残りのタンパク質がMSCRAMM(登録商標)タンパク質と構造的により離れていることを示唆していると思われる。
【0032】
表1.分子サイズ分析

【0033】
表2.二次構造要素の概要

【0034】
EF1099(Ace)の他に、EF1269の一次配列は、明らかにMSCRAMM(登録商標)タンパク質ファミリーと関連している。Aceと同様に、それは2つのサブドメインの間に保存TYTDYVDモチーフと連結性チロシン残基を含む相同性N2及びN3サブドメインを有する。また、N1の欠如はAceに似ている。しかし、これらの配列の残りはほとんど相同性を共有しない。EF1269のAドメインは、フィブリノーゲン結合ClfA、ClfB、SdrG、及びそれほどではないにせよFnbpA及びFnbpBのように類似のN2及びN3サブドメインから作られているが、フィブリノーゲンを結合することができない。この点において、EF1269は、N2及びN3サブドメインを含有するSdrD及びSdrEに似ているが、それについてのリガンドはまだ見出されない。これは、EF1269 N2及びN3サブドメインの最も高い類似性はSdrE(同一性26%)の対応領域にあるという本発明者らの知見によって増強される。さらに、C末端EF1269配列の残部を作り上げる低い保存(同一性20%)を有する2つの推定上の反復(95及び109 aa)は、SdrE(EF1269の375〜531 aaにわたって25%の同一性)のB反復との関連を示す。タンパク質EF1091、EF0089、EF1092、EF2224及びEF1093は、腸球菌及びブドウ球菌付着因子に対する高い配列同一性を欠くことから、前記のMSCRAMM(登録商標)タンパク質の単なる相同分子種ではない。しかし、これらのタンパク質は、類似の構造構成及びMSCRAMM(登録商標)タンパク質のような類似の予測された折りたたみを有する多数のβ-シートに富む二次構造を共有する。2つの残りのタンパク質EF1824及びEF3023は、公知の酵素、グルコシルヒドロラーゼ及びヒアルロナンリアーゼそれぞれに関連した大きな領域を有し、これらの領域をMSCRAMM(登録商標)タンパク質と区別する。ヒアルロニダーゼ活性は、感染中のヒアルロナン含有組織における細菌侵入及び伝播について重要であり及び/又はヒトの腸内での共生寿命(commensal life)中の細菌栄養におそらくは寄与するであろう。EF1824及びEF3023の大きな推定上の触媒ドメインは、MSCRAMM(登録商標)タンパク質に対するこれらの領域の前記の構造無関係性とよく一致する。
【0035】
主要ECMタンパク質に対する結合をスクリーニングすると、本発明者らはMSCRAMM(登録商標)タンパク質EF0089、EF1091、EF1092、EF1093及びEF2224の4つについてリガンドを認めた。エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)における2個以上のフィブリノーゲン結合MSCRAMM(登録商標)タンパク質の存在は、4種類のフィブリノーゲン結合MSCRAMM(登録商標)タンパク質ClfA、ClfB、FnbpA及びFnbpBが記載されている関連ブドウ球菌における知見と一致する(McDevittら、1994年)(Ni Eidhinら、1998年)(Wannら、2000年)(Davisら、2001年;Hartfordら、2001年)。EF0089及びEF2224は、その長さ全体ににわたってMSCRAMM(登録商標)タンパク質との強い構造類似性:モジュールIg折りたたみサブドメインを形成することが予測される類似の一次組織及び相同性β-シートに富む二次構造を有する。公知のフィブリノーゲン結合付着因子との比較的低い配列同一性は、リガンド結合についての新規な適合を意味し得る。本発明者らの初期の結果は、EF2224がフィブリノーゲンのα鎖及びβ鎖に結合し、従ってClfBに類似していることを示唆する(Ni Eidhinら、1998年)。哺乳動物の組織表面は、細菌接着について多数の可能なリガンドを発現する。ここで、本発明者らはI型、III型及びIV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン及びビトロネクチンに対する結合を評価した。
【0036】
本発明に従って、PCR法を使用して、本発明を使用して同定し、分離したタンパク質からAドメインを増幅し得る。PCRオリゴヌクレオチド、例えば下記の表3のオリゴヌクレオチドを使用して、EF0089、EF1091、EF1092、EF1093、EF1099、EF1269、EF1824、EF2224及びEF3023由来のAドメインをエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)V583又はエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)EF1(EF1099)ゲノムDNAから増幅し、大腸菌発現ベクターPQE-30(Qiagen製)にサブクローンニングした。適当なpQE-30系組立て体を含む(haroboring)大腸菌M15(pREP4)培養液の1リットル培養液を、一夜培養液から初期2%接種物を用いてOD600=0.6まで増殖させた。0.4mMイソプロピル-β-d-チアガラクトシド(IPTG)を用いて2〜3時間誘導した後に、細胞を遠心分離により回収し、10 mM Tris-Cl、100 mM NaCl(pH7.9)に再懸濁し、次いで−80℃で保存した。
【0037】
前記細胞を溶解し、発現タンパク質を放出させるために、細胞をフレンチプレスに1200 PSIの設定したゲージ圧を用いて2回通して、20,000 PSIの推定内部細胞圧を与えた。細胞溶解液を165,000×gのRCFmaxで遠心分離し、上清を0.45□mフィルターを通して濾過した。容量を10 mM Tris-Cl、100 mM NaCl(pH7.9)で15mlに調節し、これと同じ緩衝液に溶解した0.2Mイミダゾールを加えて、非特異結合を最小限にするためにイミダゾール濃度を6.5mMまで増大させた。FPLC装置(Pharmacia製)に連結し且つ予め10mM Tris-Cl、100mM NaCl(pH7.9)で平衡化しておいたニッケルアフィニティークロマトグラフィーカラム(HiTrap chelating、Pharmacia製)に試料を充填した。結合タンパク質を、10 mM Tris-Cl、100mM NaCl(pH7.9)に溶解した0〜100mMイミダゾールの直線勾配を用いて100〜200mlにわたって溶出した。タンパク質含有画分をSDS-PAGEで分析し(図2)、25mM Tris-Cl、1mM EDTA(pH6.5〜9)に対して透析し(精製したタンパク質のplに応じて)、その後に得られた試料をさらに精製するためにイオン交換カラム(HiTrap Q、Pharmacia製)に加えた。結合タンパク質を、25mM Tris-Cl、1mM EDTA(pH6.5〜9)に溶解した0〜0.5M NaClの直線勾配を用いて100mlにわたって溶出した。最後に、タンパク質試料をPBSに対して広範囲にわたって透析し、そして+4℃で保存した。
【0038】
別法として、EF1091、EF1092及びEF1093を振盪フラスコ又はバイオリアクター中で発現させ、細胞を遠心分離により回収し、得られた細胞ペーストを−80℃で凍結した。細胞を、1×PBS(10mLの緩衝液/1g細胞ペースト)中に10,000 psiでミクロフルイダイザーに2回通すことによって溶解した。溶解細胞を17,000rpmで30分間遠心分離して細胞砕片を除去した。上清を、0.1M NiCl2を充填した5-mL HiTrap Chelating(Pharmacia製)カラムに通した。充填後に、カラムをカラムの5倍容の10mM Tris(pH8.0)、100mM NaCl(緩衝液A)で洗浄した。タンパク質を、10mM Tris(pH8.0)、100mM NaCl、5OOmMイミダゾール(緩衝液B)を0〜100%の濃度勾配で使用して溶出した。タンパク質含有画分を1×PBS中に透析した。
【0039】
MSCRAMM(登録商標)をコードする9種類の腸球菌遺伝子が、表3に要約したようにエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)株の中に偏在する。9種類の遺伝子のうちの2種類は、全ての菌株に100%保存された。予測されたコード化タンパク質触媒ドメイン及び比較的低い割合のMSCRAMM(登録商標)様タンパク質の特徴を有する2個の遺伝子EF1824及びEF3023が、それぞれ16/30株及び23/30株に存在した。そのそれぞれの遺伝子によってコードされた9種類の腸球菌は感染個体中で高められた力価を示し、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)感染中に生体内での発現を示唆した。これらのタンパク質は菌株中で高分布を有するが、誘導された抗原応答には明らかに差があった;タンパク質EF1091、EF1092、EF1093及びEF2224は、最も高い力価を示した。これは、生理学的条件における異なる発現レベルによるか又は高免疫原性表面エピトープ、従って強い免疫応答によるものであり得る。興味深いことには、最も高い力価を有する3種類のタンパク質(EF1091、EF1092及びEF1093)は、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)ゲノム中の推定上のオペロンとしてまとめられる。前記オペロンは、2つのプロモーター共通領域及び1つのリボソーム結合部位が前にあり、従ってこれらのタンパク質は同時翻訳されると思われる。次の遺伝子下流のEF1094は、推定上のLPxTGトランスペプチダーゼ ソルターゼをコードし、またEF1099(Ace)は緊密に連結される。MCSRAMM(登録商標)様タンパク質のこのクラスター及び推定上のソルターゼが感染プロセスにおいてどんな役割を有し得るかは、今の段階では未だわからない。
【0040】
表3.この研究で使用した合成オリゴヌクレオチド

【0041】
エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)における幾つかのMSCRAMM(登録商標)様タンパク質、例えばフィブリノーゲンを結合する2種類並びに前記のコラーゲン及びラミニン結合Aceの存在は、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)が、ECM付着因子の武器庫(armory)を有することによってブドウ球菌及びその他のグラム陽性球菌と似ていることを示唆する。抗生物質療法の導入以来、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)は、宿主組織を侵し且つ感染症を引き起こすことができる有害共生生物から細線を交差させることができる日和見病原体として出現する傾向が増大しつつあることを明らかにしている。付着因子のレパートリーは、感染しやすいヒト宿主の種々のヒト組織型に定着し、伝播するための適合性を高め得る。
【0042】
従って、本発明は、グラム陽性菌由来の新規なMSCRAMM(登録商標)様タンパク質表面固定化タンパク質であって、(i) ClfA及びCNAの解明されたIg折りたたみ結晶構造及びその他のMSCRAMM(登録商標)タンパク質の予測された三次構造に構造的に相同性であり、(ii)Ig折りたたみタンパク質に認められるような類似のβ-シートに富む二次構造を共有することができ且つ(iii)分泌シグナル、後に反復を伴う非反復ドメイン及びC末端細胞壁固定ドメインを有する類似構成を有するグラム陽性菌由来の新規なMSCRAMM(登録商標)様タンパク質表面固定化タンパク質の同定及び最終的生成を可能にする。また、これらのタンパク質は、主要なECMタンパク質、例えばフィブリノーゲン、コラーゲン及びラミニンに結合し得、また種々のグラム陽性菌種由来のタンパク質における類似性により、これらのタンパク質は、交差反応性である抗体であって且つ種々のグラム陽性菌種に認められる類似タンパク質に結合することができる抗体を提供し得る。従って、さらに以下に記載するように、このような抗体は、種々様々な感染症を同時に診断又は抑制するのに有用であり得る。
【0043】
本発明の方法を使用して同定し且つ単離されるタンパク質のほかに、特に、本発明は、本発明の方法を使用して得られるMSCRAMM(登録商標)様タンパク質から又はこれらのタンパク質由来のAドメインのような抗原領域から抗体の産生を意図する。“抗体”とは、抗原〔例えば、Fab又はF(ab´)2断片〕を認識し且つポリクロナール又はモノクロナール型であることができる完全な抗体分子又はその断片を意味し、また本発明の抗体は、本発明のMSCRAMM(登録商標)タンパク質及び/又は前記タンパク質、例えばこれらのAドメイン由来の特異抗原エピトープを認識できるであろう。従って、これらの抗体は、グラム陽性菌由来の感染症を診断、監視、治療又は予防する方法に有効であろう。“エピトープ”とは、抗体分子との免疫化学結合に関与する抗原決定基を意味する。エピトープは、通常はタンパク質分子の化学的に活性な表面群(例えば、アミノ酸類及び場合によっては糖側鎖)の中に存在し且つ特異的三次元構造特性及び特異的帯電特性を有する。本発明のタンパク質、又は本明細書に記載のエピトープ及びペプチドに関して、このような用語はまた1個又はそれ以上のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加により天然産タンパク質又は組換えタンパク質と異なるが、全タンパク質に対して生じた抗原によって認識される能力を保持するタンパク質及びペプチドを包含すると理解される。その例は、完全抗原又はその免疫活性断片の担体/抗原融合ポリペプチドであり、その場合に前記抗原又は断片は、担体ポリペプチド内に埋め込まれることができるし又は担体ポリペプチドにいずれかの端部に連結されることができる。
【0044】
従って、本発明に従って、単離離及び/又は精製された抗体は、本発明のグラム陽性MSCRAMM(登録商標)タンパク質から又は本明細書に記載のタンパク質由来のAドメイン由来のエピトープペプチド配列のような特定のエピトープから産生させることができる。これらの抗体は、モノクロナール又はポリクロナールであってもよいし、また当該技術で周知であるようにかかる抗体を生じさせるのに適した方法を使用して産生させてもよい。発明による抗体は、宿主細胞の細胞外マトリックス成分に対するグラム陽性菌の結合を阻害するのに特に有用であり、またグラム陽性菌の感染症を診断、治療又は予防するのに特に有用である。
【0045】
例えば、ポリクロナール抗体に関して、これらの抗体は、この場合に宿主から回収できるポリクロナール抗体を産生させることを目的として、一般的に単離及び/又は精製又は組換え生成タンパク質(又はこれらの免疫原活性ペプチド又はエピトープ)を適当な宿主に注射することを含む多数の方法を使用して産生させ得る。例えば、本発明に従って、単離及び精製されたMSCRAMM(登録商標)タンパク質又はそのAドメインは、ウサギに注射してこのタンパク質を認識するポリクロナール抗血清を生成させ得る。
【0046】
また、本発明に従うモノクロナール抗体は、当業者によって容易に理解されるように、適当なハイブリドーマを使用して生成させ得る。好ましい方法において、本発明のタンパク質は、前記のバイオインフォマティクス法を使用して初めて同定され、単離される。次に、該タンパク質は、当該技術において普通に知られている多数の適当な方法で単離及び/又は精製されるか、又は該タンパク質は配列決定した後に、モノクロナール法で使用されるタンパク質は、当該技術において普通に使用されるような組換え手段で生成され、次いで使用のために精製される。一つの適当な精製方法において、本発明の細胞壁タンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)法及びウエスタンブロット法、並びに本明細書で論じた方法を含む慣用の方法を使用して単離され、検査される。一つの適当な方法において、モノクロナール抗体は、前記のようにして単離され、精製されたタンパク質から、該タンパク質をアジュバントと混合し、得られた混合物をBALB/cマウスに注射することによって産生される。
【0047】
免疫化方法は、最初の注射(完全フロイントアジュバントを使用して)、その後の3週間の間隔での2回の追加免疫注射(不完全フロイントアジュバントを用いて)、及び融合の3日前のアジュバントなしでの1回の最終追加免疫注射(注射は全て皮下注射であった)からなっていた。ハイブリドーマ産生については、マウスを犠牲にし、その脾臓を脾臓を無菌で取り出した。抗体分泌細胞を、分離し、ポリエチレングリコールの滴加を使用して骨髄腫細胞(NS1)と混合した。融合後に、細胞を選択培地(ビタミン追加DMEM/HAT)に希釈し、低い濃度でマルチウエル組織培養皿に塗布した。得られた融合から組織上清を、ELISA法(マイクロタイタープレートのウエルを被覆するために全2-ME抽出物を使用して)及び免疫ブロット法の両方で選別した。これらの陽性ウエルからの細胞を増殖させ、1個の細胞を限界希釈によりクローン化し、上清をELISA法及び免疫ブロット法の両方による1回又はそれ以上の選別に供した。陽性クローンを同定し、モノクロナール抗体をハイブリドーマ上清として回収した。
【0048】
本発明に従って、本発明のバイオインフォマティクス法を使用して得られるタンパク質及び/又はそのエピトープ及び活性領域、例えばAドメインを認識し、結合することができる抗体を生成させ、このような抗体を以下に詳細に記載するような多数の診断及び治療用途で利用できる。
【0049】
ワクチン、ヒト化抗体及びアジュバント
本発明の分離抗体、又は前記の分離タンパク質又はエピトープは、以下にさらに記載するように、細菌感染症に対する能動及び受動免疫用ワクチンの開発に利用し得る。能動ワクチンの場合、該ワクチンは、免疫原量の本発明のタンパク質又はその活性領域あるいは前記のエピトープを提供することによって調製され、従って本発明による活性ワクチンは免疫原量のタンパク質又はペプチドを含有し、このようなワクチンを必要とするヒト又は動物に投与されるであろう。該ワクチンはまた、ワクチン技術で知られ且つ常用されている適当な製薬学的に許容し得るビヒクル、賦形剤又は担体を含有し得る。前記のように、本発明に従って使用すべき抗原の“免疫原量”とは、毒性がないが、所望の予防又は治療効果が生じるように免疫原応答が宿主中で引き起こされるような薬剤の十分な量を意味することを意図する。従って、必要とされる抗原の正確な量は、患者の種、年齢、及び全身状態、治療される病気の重症度、使用される具体的な担体又はアジュバント並びにその投与方法などに応じて患者から患者に変化するであろう。同様に、このような抗原ワクチン組成物の“免疫原量”は、具体的な状況に基づいて変化し、適当な免疫原量は、常用の実験だけを使用して当業者によってそれぞれの用途で決定される。その用量は、前記組成物が投与される個人に合わせて調節されるべきであり且つ個人の年齢、体重及び代謝と共に変化するであろう。
【0050】
また、医薬組成物として患者に投与されるか又は医療器具又は重合体バイオマテリアルを生体外及び生体内で被覆するのに使用される場合には、本発明の抗体はまた、これらの抗体が宿主細胞に付着するグラム陽性菌の能力を妨害し且つ感染の伝播を制限することができ得ることから、有用であり得る。
【0051】
また、抗体は、ある場合には、投与される患者においてあまり免疫原性でないように、必要に応じて変性させ得る。例えば、患者がヒトである場合には、抗体は、例えばJones et al., Nature 321:522-525 (1986) 又はTempest et al, Biotechnology 9:266-273 (1991)に記載のように、ハイブリドーマ由来の抗体の相補性決定領域をヒトモノクロナール抗体に移植すること“ヒト化”させてもよいし、又は例えば、Padlan, Molecular Imm. 28:489-498 (1991)に記載のようにして、相同性のヒトフレームワーク対応物を模倣するために免疫グロブリン可変部の表面暴露ネズミフレームワーク残基を変化させることによって“上張り(veneer)”してもよい。これらの参考文献は、本明細書に参考として組み込まれる。さらにまた、ある状況下では、この組成物の感染症を抑制又は防止する能力をさらに高めるように投与される場合には、本発明のモノクロナール抗体を適当な抗生物質と組み合わせることが望ましいものであり得る。
【0052】
好ましい態様において、前記抗体はまたグラム陽性菌感染症を治療又は予防するのに適した抗体を提供するのに有用である受動ワクチンとして使用し得る。当業者によって認められるように、ワクチンは、多数の適当な方法で、例えば非経口(すなわち、筋肉内、皮内又は皮下)投与又は鼻咽頭(すなわち、鼻内)投与により投与するために包装し得る。一つのこのような方法は、前記ワクチンを筋肉内に、例えば三角筋に注射する場合であるが、具体的な投与方法は、扱う細菌感染症の性質及び患者の状態に左右されるであろう。前記ワクチンは、投与を促進させるために製薬学的に許容し得るビヒクル、担体又は賦形剤と組み合わせることが好ましく、前記担体は通常は、防腐剤を含有するか又は含有しない水又は緩衝生理食塩水である。前記ワクチンは投与時に再懸濁させるために凍結乾燥させてもよいし又は溶液状であってもよい。
【0053】
本発明による抗体組成物の投与に好ましい用量は、用量が細菌感染症を予防又は治療するのに有効である量であり、この量が感染症の性質及び患者の状態に応じて大きく変化することは容易に認められるであろう。本発明に従って使用されるべき抗体又は医薬の“有効量”は、所望の予防又は治療効果が生じるような前記薬剤の無毒性であるが十分な量を意味する。従って、必要とされる抗体又は個々の薬剤の正確な量は、患者の種、年齢及び全身状態、治療される病気の重症度、使用される具体的な担体又はアジュバント並びにその投与方法などに応じて患者から患者まで変化するであろう。従って、具体的な抗体組成物の“有効量”は、個々の状況に基づいて変化し、適切な有効量は、常用の実験だけを使用して当業者によって施用のそれぞれの場合で決定し得る。用量は、組成物が投与される個人に合わせて調節されるべきであり且つ個人の年齢、体重及び代謝と共に変化するであろう。組成物は、追加成分として安定剤又は製薬学的に許容し得る防腐剤、例えばチメロサール〔エチル(2-メルカプトベンゾエート-S)水銀ナトリウム塩〕(Sigma Chemical Company製、ミズリー州センロルイス所在)を含有し得る。
【0054】
また、本発明の抗体組成物及び前記のワクチンはまた、適当なアジュバントと共に前記複合体に対する免疫原応答を高めるのに有効な量で投与し得る。例えば、適当なアジュバントとしては、ヒトに広く使用されるミョウバン(リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム)、及びその他のアジュバント、例えばサポニン及びその精製成分Quil A、フロイント完全アジュバント、並びに獣医用途に使用されるその他のアジュバントを挙げ得る。さらに別の化学的に定義される調剤、例えばムラミルジペプチド、モノホスホリル脂質A、リン脂質複合体、例えば Goodman-Snitkoff et at., J. Immunol. 147:410-415 (1991) に記載され且つ本明細書に参考として組み込まれるもの、並びにMiller et al., J. Exp. Med. 176:1739-1744 (1992) に記載され且つ本明細書に参考として組み込まれるプロ手尾リポソーム内の複合体のカプセル化物、Novasome(商標)脂質小胞(Micro Vescular Systems Inc.製、ニューハンプシャー州ナッシュア所在)のような脂質小胞への前記タンパク質のカプセル化物も有用であり得る。
【0055】
医薬組成物
当業者によって認められるように、本発明の同定され且つ単離されたタンパク質及びこれに対する抗体であって該タンパク質を認識し、結合できる抗体は、グラム陽性菌感染症、例えばエンテロコッカス属、ストレプトコッカス属、ブドウ球菌属などによって引き起こされるグラム陽性菌感染症を治療又は予防することを目的としてヒト又は動物患者に投与するのに適した医薬組成物に形成し得る。前記に定義し且つ記載したような本発明のタンパク質又は抗体を含有する医薬組成物は、この技術で常用される適当な製薬ビヒクル、賦形剤又は担体、例えば食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、その他の医薬化合物及びこれらの組合せと組み合わせて製剤化し得る。当業者が認めるように、使用する具体的なビヒクル、賦形剤又は担体は、患者及び患者の状態に応じて変化するであろうし、また種々の投与方法が当業者によって認められるように本発明の組成物に適するであろう。本明細書に開示される医薬組成物の適当な投与方法は、局所、経口、肛門、膣、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内及び皮内投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
局所投与については、組成物は、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、点滴剤(例えば点眼薬及び点耳薬)、又は溶液(例えばうがい薬)の形に製剤化し得る。創傷包帯、縫合剤及びエアロゾールには、前記組成物を含浸させ得る。前記組成物は、慣用の添加剤、防腐剤、浸透を促進させるための溶媒、及び皮膚軟化剤を含有し得る。また、局所製剤は、慣用の担体、例えばクリーム又は軟膏基剤、エタノール、あるいはオレイルアルコールを含有し得る。
【0057】
組成物の別の形、並びに本発明の別の細菌表面タンパク質及びペプチド並びにこれらに対する抗体に関する組成物、方法及び施用に関するその他の情報は、MSCRAMM(登録商標)に関するその他の特許文献、例えば米国特許第6,288,214号公報(Hookら)(本明細書に参考として組み込まれる)に認められるであろう。
【0058】
また、本発明に従って生成される組成物は、適当なアジュバントと共に患者の免疫応答を高めるのに有効な量で投与し得る。例えば、適当なアジュバントとしては、ヒトに広く使用されるミョウバン(リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム)及びその他のアジュバント、例えばサポニン及びその精製成分Quii A、フロイント完全アジュバント、RIBIアジュバント、並びに研究及び獣医学用途で使用されるその他のアジュバントを挙げ得る、また、さらに別の化学的に定義される調剤、例えばムラミルジペプチド、モノホスホリル脂質A、リン脂質複合体、例えばGoodman-Snitkoff et al., J. Immunol., 147:410-415 (1991) によって記載され且つ本明細書に参考として組み込まれるリン脂質複合体、Miller et al., J. Exp. Med., 176:1739-1744 (1992) によって記載され且つ本明細書に参考として組み込まれるプロテオリポソーム内の複合体のカプセル化物、及びNovasome(商標)脂質小胞(Micro Vescular Systems Inc.製、ニューハンプシャー州ナッシュア所在)のような脂質小胞中の前記タンパク質のカプセル化物も有用であり得る。
【0059】
いずれにしても、本発明の組成物は、このように、グラム陽性菌による結合相互作用を妨害、調節又は阻害するのに有用であろう。従って、本発明は、グラム陽性菌感染症予防又は治療する組成物及び方法の開発において、並びに宿主細胞に対する細菌の結合及び伝播の阻害において具体的な利用可能性を有するであろう。
【0060】
方法
感染症の発見及び診断
本発明に従って、前記のような本発明のバイオインフォマティクス法によって得られるタンパク質、エピトープ及びペプチド並びにこのようなタンパク質、エピトープ及び/又はペプチドを認識する抗体を使用することによってグラム陽性菌による感染症を同定し且つ診断する方法が提供される。本発明に従って、前記の発明の抗体はこのような感染症を診断するキットに使用し得、またこのようなキットは当該技術で一般的に知られており且つ本発明の抗体に結合する関心事の抗原又は微生物を検出するのに常用される種類のものであり得る。
【0061】
これらの診断キットは、一般に本発明の抗体を、当業者に容易に理解されるような該抗体による結合を検出するのに適した手段と共に含有する。例えば、抗体の結合を検出するための手段は、前記抗体に連結される検出可能な標識を含有し得る。この場合に、これらのキットは、1種又はそれ以上のグラム陽性菌に感染していると疑われる試料、例えば個体から、例えば血液、唾液、尿、脳脊髄液、尿生殖器路、組織、骨、筋肉、軟骨又は皮膚から採取される試料を得、且つ該試料に本明細書に記載の抗体の1種又はそれ以上を導入するグラム陽性菌感染症の存在を検出するための診断方法に使用できる。この場合に、抗体の導入後に、試料中の抗原又は微生物による結合があったか否かを、慣用の手段によって、例えば適当な標識によって又は前記抗体が固体支持体に結合され且つこの結合が試料中の標識抗原又は微生物の存在を反映するアッセイによって調べられる。
【0062】
抗体又は抗原の量を監視する方法
本発明に従って、本発明の別の使用はグラム陽性菌抗原、又は該抗原を認識する抗体の量を、前記の抗原又は抗体を含有すると疑われるヒト又は動物患者において監視することにあり得ることも意図される。好ましい方法において、これは、ヒト又は動物患者から生物学的試料を最初に得ることによって実施し得、また生物学的試料としては、例えばヒト又は動物患者の血液、血清、唾液、組織、骨、筋肉、軟骨又は皮膚から得られる、感染症について日常的に監視される適当な試料が挙げられる。次に、試料には、(1)グラム陽性菌に対するヒト又は動物患者の抗体の量を監視する場合には、このような抗体を結合するであろうタンパク質又はそのAドメインの決定可能な量を導入するか;又は(2)細菌感染のレベルを監視することが望まれる場合には、前記試料に、前記のようなタンパク質に対する抗体の測定可能な量を導入する。この方法における次の工程は、試料中の抗原及び抗体が、十分な時間及び条件の後に、結合を達成でき、試料中に見出されるグラム陽性菌の量又は濃度を反映するであろう抗原−抗体結合又はこれに対する抗体の量を調べることができるようなものである。所望の方法においては、量は入院又は治療期間中のようなグラム陽性菌感染症の進行/寛解を追跡するように規則正しい時間(例えば、時間毎、日毎など)で監視し得る。
【0063】
感染症を検出及び診断するためのアッセイ
本発明に従って、体液(例えば、血液、血清、血漿、唾液、尿、脳脊髄液、生殖器路)又はその他の生物学的物質(例えば、組織、骨、筋肉、軟骨又は皮膚)に存在するグラム陽性菌の検出は、グラム陽性菌によって引き起こされる急性又は慢性の感染症の診断方法を構成することができる。前記の抗体は数種のグラム陽性菌に認められるエピトープを認識することができることから、これらの抗体は、種々様々なグラム陽性菌及び病状の診断を可能にするアッセイに使用できる。モノクロナール抗体又はポリクロナール抗体は、アッセイで使用でき、且つ前記に挙げたようなモノクロナール抗体の場合に使用できる。このアッセイを使用することにより同定される検出抗原は、多数の慣用の手段、例えばウェスタンブロット試験及びその他の同様の試験により検出することができる。
【0064】
本発明のアッセイに関して、これらのアッセイは、本発明の抗体を標識された形で使用し得るし、また標識抗体の周知の方法の全てが、例えば限定されることなく酵素複合体、色素、放射性アイソトープ、蛍光又は粒状標識、例えばリポソーム、ラテックス、ポリスチレン及びコロイド金属又は非金属を用いた直接標識が意図される。多数の抗体アッセイシステム、例えば抗原捕捉サンドイッチアッセイもまた、本発明の範囲に入る。また、標識されたタンパク質を必要とする競合免疫アッセイ又は血清抗体を検出するために標識されたタンパク質を使用するアッセイもまた、本発明の診断アッセイの意図される形である。溶液中で生じる診断アッセイの他に、固定化抗体又はタンパク質を伴うアッセイも本発明の範囲内にあるとみなされる(例えば、Miles et al., Lancet 2: 492, 1968; Berry et al., J. Virol. Met., 34: 91-100, 1991; Engvall et al., G. Immunochemistry, 8: 871, 1971, Tom, Liposomes and Immunology, Elsevier/North Holland, New York, N.Y., 1980; Gribnau et al., J. of Chromatogr., 376: 175-89, 1986 及び本明細書で引用される全ての参考文献参照)。本発明で使用することができる標識の種類の例としては、酵素、放射性アイソトープ、蛍光化合物、化学発光化合物、生物発光化合物、微粒子及び金属キレートが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、モノクロナール又はポリクロナール抗体(あるいは抗原)に結合するその他の適当な標識を知っているであろうし、又は常用の実験を使用することによって上記のものを確認することができるであろう。また、モノクロナール又はポリクロナール抗体(あるいは抗原)に対するこれらの標識の結合は、当業者により普通に知られている標準的な方法を使用して達成することができる。
【0065】
本発明のアッセイ試薬(一般に、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体又は抗原)を検出可能に標識できる方法の一つは、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体又は抗原を酵素に連結することによる。この酵素は、後でその基質に暴露されると、例えば分光分析手段又は蛍光分析手段により検出することができる化学的部分を生成するような方法で基質と次々に反応するであろう。本発明の試薬を検出可能に標識するのに使用できる酵素の例としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-V-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-VI-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0066】
本発明の検出可能に標識された試薬の存在はまた、該試薬をガンマカウンター又はシンチレーションカウンターの使用のような手段で調べることができる放射線アイソトープで前記試薬を標識することによって検出することができる。本発明の目的に特に有用なアイソトープは、3H、125I、32P、35S、14C、51Cr、36Cl、57Co、58Co、59Fe及び75Seである。モノクロナール又はポリクロナール抗体を蛍光化合物で標識することによって、本発明の検出可能に標識された試薬の結合を検出することも可能である。蛍光標識された試薬を適当な波長の光に暴露すると、その存在は色素の蛍光により検出することができる。最も普通に使用される蛍光標識化合物の中に、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド及びフルオレスカミンがある。また、本発明の試薬は、それを化学発光化合物にカップリングさせることによって検出可能に標識することができる。この場合に、化学発光標識試薬の存在は、化学反応の経過中に生じる発光の存在を検出することによって調べられる。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、theromatic アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びシュウ酸エステルである。同様に、生物発光化合物を、本発明の試薬を標識するのに使用し得る。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を大きくする生物学的系において認められる化学発光の種類である。生物発光試薬の存在は、発光の存在を検出することによって調べられる。標識の目的に重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンである。
【0067】
本発明と同時に使用するとより大きな感度をもたらし得る別の方法は、本発明のモノクロナール抗体又はポリクロナール抗体を低分子量ハプテンに連結することからなる。この場合には、ハプテンが第二の反応によって特異的に検出される。例えば、このようにビオチン(アビジンと反応する)又はジニトロフェノール、ピリドキサール及びフルオレスカミン(特異的抗ハプテン抗体と反応する)のようなハプテンを使用することが一般的である。検出可能な未だ知られていない量のグラム陽性抗原を含有する生物学的試料をアッセイで使用することができる。標準的には、該試料は、液体、例えば尿、唾液、脳脊髄液、血液、血清などであるか、あるいは固体又は半固体、例えば組織、糞便などであることが好ましい。
【0068】
本発明の診断アッセイとしては、かかるアッセイのキット形態が挙げられる。このキットは、場合によって固定化できる前記の抗体(全タンパク質又はAドメインのような活性な免疫反応性断片又はその免疫原性類縁体に対して生じる)、及び生物学的試料を調製し、分析を行うのに必要な試薬及び装置、例えば防腐剤、無毒性緩衝液のような反応媒体、マイクロタイタープレート、ミクロピペットなどを含む。前記試薬(Ab類及び/又は抗原)は凍結乾燥又は凍結保存することができる。前記のように、アッセイフォーマットに応じて、抗体を標識できるし又はキットはさらに体液及び組織中のグラム陽性菌に対する抗体の検出を可能にするように関連エピトープを含有する標識されたタンパク質、断片又はその類縁体を含有することができる。類縁体とは、1個又はそれ以上のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加によりその天然に産するもの又は組換え対応物と異なっていてもよいが、全タンパク質に対して生じる抗体によって認識される能力を保持するタンパク質又はペプチドを意味する。その例は、全抗原又はその免疫反応性断片の担体/抗原融合ポリペプチドであり、この場合に抗原又は断片は担体ポリペプチド内に埋め込むことができるし又は担体ポリペプチドのいずれかの端部に連結することができる。従って、本発明による抗体はかかる類縁体も認識し得る。キットフォームに組み込むことができる免疫アッセイの種類は多い。発明の抗体を利用できる免疫アッセイの幾つかの典型的な例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)及びイムノメトリックアッセイ(immunometric assay)、又はサンドイッチイムノアッセイである。
【0069】
“イムノメトリックアッセイ”又は“サンドイッチイムノアッセイ”とは、同時サンドイッチ、フォワード(forward)サンドイッチ及びリバース(reverese)サンドイッチイムノアッセイを包含することを意味する。これらの用語は、当業者によりよく理解される。当業者には、本発明のモノクロナール抗体、ポリクロナール抗体及び/又は抗原が現在知られているか又は将来開発されるかもしれないイムノアッセイの別の変法及び形に有用であろうということが認められるであろう。これらは、本発明の範囲に含まれることが意図される。フォワードサンドイッチイムノアッセイでは、試料を最初に抗原に対するモノクロナール又はポリクロナール抗体(1種又は複数)を含有する固相免疫吸着剤と共にインキュベートする。インキュベーションは、試料中の抗原を固相中の固定化抗体に結合させるのに十分な時間続けられる。最初のインキュベーション後に、固相免疫吸着剤をインキュベーション混合物から分離し、洗浄して過剰の抗原と、試料中に存在し得るその他の妨害物質、例えば非特異的結合性タンパク質とを除去する。その後に、固定化抗体に結合された抗原を含有する固相免疫吸着剤を、可溶性の標識抗体(1種又は複数)と共に第二の時間インキュベートする。第二のインキュベートの後に、別の洗浄を行って、結合されなかった標識抗体を固相免疫吸着剤から除去し且つ非特異的に結合された標識抗体(1種又は複数)を除去する。次いで、固相免疫吸着剤に結合された標識抗体(1種又は複数)を検出し且つ検出された標識抗体の量を元の試料中に存在する抗原の量の直接尺度として役立てる。
【0070】
別法として、免疫吸着剤複合体と会合しない標識抗体も検出することができ、この場合にその尺度は試料中の抗原の量に反比例する。フォワードサンドイッチアッセイは、例えば米国特許第3,867,517号;第4,012,294号及び第4,376,110号公報(これらは本明細書に参考として組み込まれる)に記載されている。フォワードイムノメトリックアッセイの実施において、この方法は、さらに詳しくは:(a) 先ず、試料と、固相結合抗体(1種又は複数)との混合物を形成し、該混合物を、試料中の抗原を固相結合抗体(1種又は複数)に結合させるのに十分な時間及び条件下でインキュベートし、(b)工程(a)のインキュベーションの後に、前記混合物に検出可能に標識した抗体(1種又は複数)を加え、新たに得られた混合物を、標識抗体を固相免疫吸着剤上の抗原−抗体複合体に結合させるのに十分な時間及び条件下でインキュベートし;(c)工程(b)のインキュベーションの後に、 混合物から固相免疫吸着剤を分離し;そして(d)固相免疫吸着剤上の抗原−抗体複合体に結合された1種又は複数の標識抗体を検出するか、又は前記抗原−抗体複合体と会合しなかった抗体を検出することからなり得る。
【0071】
リバースサンドイッチアッセイでは、試料を最初に標識抗体(1種又は複数)と共にインキュベートし、その後にこれに多数の固定化抗体を含有する固相免疫吸着剤を加え、第二のインキュベーションを行う。フォワードサンドイッチアッセイの最初の洗浄工程は必要でないが、洗浄は第二のインキュベーションの後に行われる。リバースサンドイッチアッセイは、例えば、米国特許第4,098,876号及び第4,376,110号公報に記載されている。リバースイムノメトリックアッセイの実施において、この方法は、さらに詳しくは:(a) 先ず、試料と可溶性の検出可能標識抗体との混合物を、試料中の抗原を標識抗体に結合させるのに十分な時間及び条件下で形成し、(b)工程(a)のインキュベーションの後の、前記混合物に固相結合抗体を加え、新たに得られた混合物を、標識抗体に結合された抗原を固相抗体に結合させるのに十分な時間及び条件下でインキュベートし;(c)工程(b)のインキュベーションの後に、インキュベーション混合物から固相免疫吸着剤を分離し;そして(d)固相免疫吸着剤に結合された標識抗体を検出するか、又は固相免疫吸着剤と会合しなかった標識抗体を検出することからなり得る。
【0072】
同時サンドイッチアッセイでは、試料、表面に多数の固定化抗体を有する免疫吸着剤及び標識された可溶性抗体(1種又は複数)を、一度のインキュベーション工程で同時にインキュベートする。同時アッセイは、一回のインキュベーションを必要とするだけであり、洗浄工程を含まない。同時アッセイの使用が非常に好ましい。この種のアッセイは、取り扱い易さ、等質性、再現性、並びにアッセイの直線性及び高精度をもたらす。抗原、固定化抗体を有する固相免疫吸着剤及び標識可溶性抗体(1種又は複数)を含有する試料を、抗原を固定化抗体及び可溶性抗体(1種及び複数)に結合させるのに十分な条件及び時間でインキュベートする。一般的に、できる限り多くの抗原を結合するのに十分なインキュベーション条件を提供することが望ましい。その理由は、これにより標識抗体の固相に対する結合が最大になり、それによってシグナルが増大するからである。時間及び温度の典型的な条件は、45℃で2時間又は37℃で12時間である。抗原は、典型的には固定化抗体に結合するよりも迅速に標識抗体に結合する。その理由は、標識抗体が溶液状であるのに対して、固定化抗体は固相支持体に結合されているからである。このために、標識抗体は固定化抗体よりも低い濃度で使用し得且つ標識抗体について高特異活性を用いることも好ましい。例えば、標識抗体はアッセイ当たり約1〜50ngの濃度で使用し得、これに対して固定化抗体は抗体当たりのアッセイ当たり10〜500ngの濃度を有し得る。標識抗体は、例えば抗体の分子当たり1個の放射性ヨウ素、又は抗体の分子当たり2個以上の多い放射性ヨウ素を有する特異活性を有し得る。
【0073】
もちろん、標識抗体及び固定化抗体の特異濃度、インキュベーションの温度及び時間並びにその他のアッセイ条件は、種々の因子、例えば試料中の抗原の濃度、試料の性質などに応じて変化させ得る。当業者は、常用実験を用いることによりそれぞれの測定について操作及び最適アッセイ条件を決定することができるであろう。
【0074】
多価抗原を含有する試料に関する同時イムノメトリックアッセイの実施において、この方法は、さらに詳しくは:(a)試料を、固相結合抗体及び可溶性の標識抗体(1種又は複数)と一緒に含有する混合物を同時に形成し;(b)工程(a)で形成された混合物を、試料中の抗原を固定化抗体及び標識抗体の両方と結合させるのに十分な時間及び条件下でインキュベートし;(c)インキュベーション後にインキュベーション混合物から固相免疫吸着剤を分離し;且つ(d)固相免疫吸着剤に結合された標識抗体を検出するか又は固相免疫吸着剤に会合されなかった標識抗体を検出することからなり得る。洗浄、攪拌、振盪濾過などのその他の工程を、勿論、個々の状況に慣用又は不可欠であるようにアッセイに付加し得る。
【0075】
用いられている多数の固相免疫吸着剤及び本発明に使用できる多数の固相免疫吸着剤が存在する、周知の免疫吸着剤としては、ニトロセルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、デキストラン、ナイロン及びその他の物質;かかる物質から形成されるか又はかかる物質で被覆されたチューブ、ビーズ及びマイクロタイタープレートなどが挙げられる。固定化抗体は、アミド又はエステル連鎖による共有結合のような方法によって又は吸収によって固相免疫吸着剤に共有結合的に又は物理的に結合することができる。当業者は、多数のその他の適当な固相免疫吸着剤及びその表面に抗体を固定化する方法を知っているであろうし、又は常用実験だけを使用してそれ自体確認することができるであろう。
【0076】
キット
前記のように、本発明に従って、前記の本発明の抗体は、キットに使用してグラム陽性菌感染症を診断し得る。このような診断キットは当該技術では周知であり、一般的には本発明の抗体に結合するであろうエピトープ又はタンパク質の存在を調べるのに適するように調製されるであろう。これらの診断キットは、一般に本発明の抗体を、当業者に容易に理解されるような抗体による結合を検出するのに適した手段と一緒に含むであろう。例えば、抗体の結合を検出するための手段は、前記の抗体に結合される検出可能な標識からなり得る。この場合に、これらのキットは、診断方法に使用して、細菌感染症の存在を検出することができる。この場合に、このような感染症を有すると疑われる生物学的試料、例えば個体から、例えば血液、唾液、尿、脳脊髄液、生殖器路、組織、骨、筋肉、軟骨又は皮膚から採取される試料を得、該試料に、本明細書に挙げたような1種又はそれ以上の抗体を導入し、次いで 試料中のかかる微生物の存在を示すであろう抗体が試料に結合するか否かを調べる。
【0077】
また、前記のように、これらのキットはまた、ヒト又は動物患者の血清中の抗体又は細菌性抗原の量を監視する方法に有用であり得る。抗原の量を監視することが望まれる場合には、キットは、前記のような本発明による抗体を、該抗体に対する結合の量を調べる手段と共に含有するであろう。試料中のグラム陽性菌に対する抗体の量を測定することが望まれる場合には、キットは前記のような単離されたタンパク質又はエピトープ(例えば、Aドメイン)を、試料中に存在する抗体に対するこれらの抗原の結合を検出する手段と共に含有することが好ましい。
【0078】
感染症の治療及び感染症からの保護
本発明に従って、グラム陽性菌によって引き起こされる感染症を予防又は治療する方法であって、かかる治療を必要とするヒト又は動物患者に有効量の前記の抗体を該感染症を治療又は予防するのに有効な量で投与することからなるグラム陽性菌によって引き起こされる感染症を予防又は治療する方法が提供される。従って、本発明に従って、前記の慣用の方法(例えば、局所、非経口、筋肉内など)での有効量の本発明の抗体の投与は、このようにしてヒト又は動物患者の細菌感染症を治療又は予防する極めて有効な方法を提供する。前記のように、有効量とは、細菌の接着を防止するか又はかかる生物が宿主細胞に結合及び定着するのを阻害するのに十分な量であり、従ってかかる感染症の治療又は予防に有用である使用量、例えば抗体力価を意味する。また、これらの抗体はまた、多数のその他のメカニズム、例えば伝染性微生物の直接殺滅、オプソニン作用の増大、形態学的変遷の阻害などによる保護効果を示し、従って有効量の抗体は保護効果を達成する手段が得られる量を包含するであろう。当業者により認められるように、感染症を治療又は予防するのに有効であるのに必要な抗体力価のレベルは、患者の性質及び状態及び/又は事前に存在する感染症の重症度に応じて変化するであろう。
【0079】
免疫応答の誘発
本発明に従って、ヒト又は動物に前記のバイオインフォマティクス法を使用して分離されたタンパク質、又はこのようなタンパク質の組換え生成体、又は前記の免疫原性断片、領域又はエピトープの免疫有効量を投与して免疫原応答を誘発することからなるヒト又は動物において免疫原反応を誘発する方法が提供される。前記のように、免疫原反応を得るために本発明に従って使用される抗原の“免疫原量”とは、免疫原応答が宿主で誘発され所望の予防又は治療効果が生じるような薬剤の無毒であるが十分な量を意味することを意図する。従って、かかる応答を誘発させるのに必要な単離タンパク質の正確な量は、患者の種、年齢、全身状態、治療される病気の重症度、使用される個々の担体又はアジュバント及びその投与の様式などに応じて変化するであろう。本発明はまた、前記のタンパク質及びエピトープを認識する抗体を産生する方法を意図し、またモノクロナール及びポリクロナール抗体を産生するのに適した方法は上記に詳しく説明される。
【0080】
被覆デバイス
本発明に従って、前記の抗体及び組成物はまた、ある種の医療機器及び補綴器具などのその他の移植材料に関する細菌感染症を治療するか又は該感染症の発生から保護するのに利用し得る。本明細書に記載の抗体及び/又は組成物を用いて都合よく被覆し得る医療機器又は高分子生体材料としては、針、縫合糸、代替心臓弁、心臓補助装置、ハード及びソフトコンタクトレンズ、眼内レンズ(前眼房又は後眼房)、その他のインプラント、例えば角膜インレー、人工角膜、血管ステント、エピケラトファリア・デバイス(epikeratophalia device)、緑内障シャント、網膜ステープル、強膜バックル、歯科補綴材、甲状腺形成デバイス(thyroplastic device)、咽頭形成デバイス(laryngoplastic devices)、血管移殖片、軟及び硬組織補綴材、例えば(以下に限定されないが)ポンプ、電気装置、例えば刺激装置及び記録装置、聴覚プロテーゼ、ペースメーカー、人工喉頭、歯科インプラント、乳房インプラント、ペニスインプラント、脳顔面頭蓋腱、人工関節、腱、靭帯、半月及び円板、人工骨、人工臓器、例えば人工膵臓、人工心臓、義肢、及び心臓弁;ステント、ワイヤー、ガイドワイヤー、静脈内及び中心静脈カテーテル、レーザー及びバルーン血管形成装置、血管及び心臓機器(チューブ、カテーテル、バルーン)、心室補助装置、血液透析要素、血液酸素付加装置、尿道/尿管/尿機器(フォーリーカテーテル、ステント、チューブ及びバルーン)、気道カテーテル(気管内及び気管開口チューブ及びカフ)、経腸栄養チューブ(例えば経鼻胃チューブ、胃内チューブ及び空腸チューブ)、創傷ドレナージチューブ、胸膜腔、腹膜腔、頭蓋腔及び心膜腔などの体腔のドレン排出を行うのに使用されるチューブ、血液バッグ、試験管、血液採取管、バキュテイナー、注射器、針、ピペット、ピペットチップ、及び血液チューブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書で使用する“被覆された”又は“被覆する”という用語は、前記の抗体又は組成物を、前記の装置、機器又はデバイスの表面、好ましくは感染症、例えばグラム陽性菌によって引き起こされる感染症に暴露される外面に塗布することを意味することが当業者には理解されるであろう。前記の装置、機器又はデバイスの表面は、タンパク質、抗体又は活性断片で完全に被覆される必要はない。
【0082】
前記のように、本発明の抗体あるいはその活性部分又は断片はまた、感染症の原因である細菌と哺乳動物宿主との間の物理的相互作用を妨害するのに有用であり得、しかもまた 細胞外マトリックスタンパク質、フィブリノーゲン、コラーゲン、ラミニンなどに接着する細菌の能力を妨害するのにも有用であり得る。従って、本発明の抗体は、患者の治療及び細菌感染症の防止又は減少の両方に有用であり得るし、あるいは住居内医療装置及び人工装具においてこれらを使用するのに安全にするためにこのような生物の感染及び伝播を減らす又は撲滅するために有用であり得る。
【0083】
要約すれば、前記の本発明の抗体は、ヒト及び動物患者においてグラム陽性菌による感染症を検出、治療又は予防するのに、あるいはかかる生物によって引き起こされ得る医療機器及び補綴材の感染症を防止又は減らすのに極めて有用であり得る。特に、本発明は、早産新生児、AIDS及び衰弱癌患者のような高感受性群において且つ骨髄移植後に特に頻繁に起こり且つ重い高感受性群においてこのような感染症を治療又は防止するのに重要である。
【実施例】
【0084】
以下の実施例を、本発明の好ましい態様を例証するために提供する。以下の実施例に記載された技法は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者らによって知見された技法を表し、従って本発明を実施するための好ましい形式をなしているとみなし得ることは、当業者によって認められるべきである。しかし、当業者には、本発明に照らして、記載されている特定の態様において多数の改変を行うことができ、さらに本発明の精神から乖離することなく同様又は類似の結果を得ることができることが認められる。
【0085】
実施例
実施例1: グラム陽性菌由来のMSCRAMM(登録商標)タンパク質の同定方法並びに該タンパク質のAドメインの発現及び精製
A.グラム陽性菌の注釈付きゲノム中のLPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質の検索
1.配列決定センターのウェブサイトから、関心事の完全ゲノム配列の複数のアミノ酸配列を得る。これらの配列をローカルシリコングラフィックスマシン(SGI)に保存する。
【0086】
2.ローカルサーチ可能データベースを、NCBIから得られるプログラムフォーマットdbを使用して構築し、SGIにローカルインストールする。
3.LPXTGモチーフ含有タンパク質を、NCBIから得られ且つSGIにローカルインストールされるPHI-blastを使用して同定する。PHI-blast検索は、縮重LPXTGパターンL-P-X-[TSA]-[GANS](Xは任意のアミノ酸である)を使用する。PHI-blastのテンプレートは個々の生物に応じて変化する。それぞれの生物について、配列相同性をもたないブドウ球菌の2つの公知の細胞壁固定化タンパク質を使用し、また入手できない場合には個々の生物から公知の細胞壁固定化タンパク質を使用した。
4.PHI-blastから得られたLPXTG含有タンパク質を分析して、LPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質の典型的な特徴:N末端にシグナルペプチド、後に疎水性貫膜セグメントが続くC末端の近くにあるLPXTGモチーフ、及びC末端の数個の正帯電残基を含有するタンパク質を選択する。これらは以下に記載のようにして行う:
シグナルペプチド: 本発明者らはhttp://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/のシグナルP予測サーバーを使用する。この方法は、“Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites”. Henrik Nielsen, Jacob Engelbrecht Soren Brunak and Gunnar von Heijne, Protein Engineering, 10, 1-6 (1997) に記載されている。
LPXTGモチーフの位置: 配列の目視検査
LPXTGモチーフの後の疎水性貫膜セグメント: 本発明者らは貫膜セグメントの予測にhttp://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM-2.0/のTMHMMサーバーを使用する。幾つかの別の予測ウェブサーバーも使用でき、その中にhttp://www.ch.embnet.org/software/TMPRED form.htmlのTMpred、http://www.sbc.su.se/~miklos/DAS/のDAS及びhttp://www.enzim.hu/hmmtop/ のHMMTOPがある。
C末端の正帯電残基: 目視検査
5.前記の特徴を含有する配列は、推定上のLPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質である。
6.用語“LPXTG”又は“細胞壁”を使用して、ウェブサイトTIGR(総合微生物資源、http://www.tigr.org/tigr-scripts/CMR2/CMRHomePage.spl)で関心事のゲノム配列に細胞壁固定化タンパク質として注釈されているタンパク質を検索した。
【0087】
B.グラム陽性菌の注釈なしゲノム内のLPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質の検索
1.配列決定センターのウェブサイトから、複数のゲノム配列を得る。これらの配列をローカルシリコングラフィックスマシン(SGI)に保存する。
2.TIGRから得られるプログラム Glimmer 2.0を使用して遺伝子予測する。これは社内で書かれたUNIX Cシェルスクリプトで促進される。
3.予測遺伝子を、社内で書かれた翻訳プログラムを使用してアミノ酸配列に翻訳する。このプログラムは大量の配列を翻訳することができる。
4.翻訳されたアミノ酸配列を、Section A.2におけるように検索可能データベースにローカルフォーマットする。その後の分析はSection A.3-5に記載の通りである。
【0088】
C.推定上のLPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質中の免疫グロブリン様(Ig様) 折りたたみの予測
推定上のLPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質のアミノ酸配列を、折りたたみ認識ウェブサーバー3D-PSSM(http://www.sbg.bio.ic.ac.uk/~3dpssm/)に供する。予測の方法は、Kelley LA, MacCallum RM & Sternberg MJE. Enhanced Genome Annotation using Structural Profiles in the Programm 3D-PSSM. J Mol Biol. 2000 Jun 2; 299(2): 499-520に記載されている。
【0089】
3D-PSSMのアウトプットは、公表された構造として類似の3D構造を採用する提供配列の確度を示す確率E値を与える。
【0090】
公表されたIg様折りたたみ構造に対して<0.25のE値を有するタンパク質は、予測されたIg様折りたたみを含有するとみなされる。これらはタンパク質MSCRAMM(登録商標)タンパク質とみなされるべきである。
【0091】
従って、本発明に従って、バイオインフォマティクアプローチを使用して、グラム陽性菌の中から、特にエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcuz faecalis)の中からMSCRAMM(登録商標)様の特徴を有するタンパク質を同定した。推定上のC末端LPxTG細胞壁選別シグナルを有する42個のタンパク質が、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)ゲノム配列において同定された。次いで、本発明者らは、LPxTG-固定化腸球菌タンパク質の中からMSCRAMM(登録商標)タンパク質に対する構造類似性を探した。9個のタンパク質が、免疫グロブリン様折りたたみを採用する領域を含有すると予測された。図1のIg折りたたみ含有領域は、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)の解明された結晶構造(〜150−500 aa)に対する幾つかの連続し且つ重複する一致(match)からなり、同じサイズ及びIg型折りたたみの1〜4ドメインからなる。相同性のIg折りたたみ領域は、前記腸球菌タンパク質の大部分をカバーし且つフィブロネクチン及びその他のIgSFタンパク質に認められる類似の“糸に通したビーズ(beads-in-a-string)”配置の連続モジュールを示し得る(Leahy、1996年)(Sharma、1999年)(Hamburger、1999年)(Luo、2000年)。Ig折りたたみサブドメイン(N2及びN3)の縦列反復は、ClfAのフィブリノーゲン結合ドメインの結晶構造に認められる。ClfA及び類似構造ClfBの全長Aドメインは、付加N末端サブドメイン、N1 からなる(Deivanayagam、2002年)(Perkins、2001年)。配列及び二次構造の類似性に基づいて、類似サブドメイン組織が別のMSCRAMM(登録商標)タンパク質、例えばFnbpA、FnbpB、Ace及びSdrタンパク質中に期待される。CNA最小コラーゲン結合性メインの解明された結晶構造は単一のIg型サブドメイン(N2)からなり(Symersky、1997年)、またC末端反復ドメインB1及びB2それぞれはIg折りたたみサブドメインの縦列反復からなる(Deivanayagam、2000年)。同様のモジュール構造がB3及びB4反復中に期待される。従って、多数のIg折りたたみ単位のモジュール構造は、MSCRAMM(登録商標)タンパク質ファミリーの一般的特徴と思われる。MSCRAMM(登録商標)タンパク質のN−サブドメインの長さは、典型的には、EF1091及びEF0089の大きなサイズのAドメインがこれらのAドメインの3個以上のIg折りたたみサブドメインを収容できることを示唆する〜150 aaである。
【0092】
実施例3.組換え腸球菌MSCRAMM(登録商標)タンパク質断片の発現及び精製
本発明の有用性をさらに特徴付けるために、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)由来のEF1091、EF1092及びEF1093タンパク質のAドメイン並びにエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)由来のEfae 2926、Efae 2925及びEfae 2924タンパク質Aドメインをクローン化し、発現させ且つ精製した。また、EF1824を大きなサイズのタンパク質であるという理由から2つのセグメント、EF1824AI(aa 43-819)及びEF1824AII(aa 820-1829)にクローン化した。EF1824AIは大腸菌細胞質に不溶性であり、アッセイから除外された。結合され且つ下線を付された配列は、クローン化された推定上のAドメインを表す。
【0093】
EF1824AI:アミノ酸残基43−819(配列番号:2)

【0094】
EF1824AI:アミノ酸残基820−1829(配列番号:3)

【0095】
EF0089A:アミノ酸残基36−1143(配列番号:4)

【0096】
EF3023A:アミノ酸残基26−1024(配列番号:5)

【0097】
EF2224A:アミノ酸残基31−771(配列番号:6)

【0098】
EF1269A:アミノ酸残基27−596(配列番号:7)

【0099】
EF1091:ヌクレオチド配列(配列番号:8)


【0100】
EF1091:アミノ酸残基63−1067(配列番号:9)

【0101】
EF1092:核酸配列(配列番号:10)

【0102】
EF1092:アミノ酸残基28−438(配列番号:11)

【0103】
EF1093(V583):ヌクレオチド配列(配列番号:12)

【0104】
EF1093:アミノ酸残基33−592(配列番号:13)

【0105】
Efae2926:ヌクレオチド配列(配列番号:14)



【0106】
Efae2926:アミノ酸残基57−734(配列番号:15)

【0107】
Efae2925:ヌクレオチド配列(配列番号:16)

【0108】
Efae2925:アミノ酸残基30−429(配列番号:17)

【0109】
Efae2924:ヌクレオチド配列(配列番号:18)

【0110】
Efae2924:アミノ酸残基55−588(配列番号:19)

【0111】
タンパク質の発現及び精製
PCR(PCR反応に使用したオリゴヌクレオチドを表3に示す)を使用して、EF0089、EF1091、EF1092、EF1093、EF1099、EF1269、EF1824、EF2224及びEF3023由来のAドメインをエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis) V583又はエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis) EF1(EF1099)ゲノムDNAから増幅し、大腸菌発現ベクターPQE-30(Qiagen製)にサブクローン化した。
【0112】
適当なpQE-30ベースの組立て体を含有する大腸菌M15(pREP4)培養物の1リットル培養物を、一夜培養物由来の初期2%接種物を用いてOD600=0.6まで増殖させた。0.4mMイソプロピル-β-d-チオガラクトシド(IPTG)を用いて2〜3時間誘導した後に、細胞を遠心分離により回収し、10mM Tris-Cl、100mM NaCl、pH 7.9に再懸濁し、そして−80℃で保存した。
【0113】
細胞を溶解し、発現されたタンパク質を放出させるために、細胞を1200 PSIに設定したゲージ圧でフレンチプレスに2回通して、20,000 PSの推定内部細胞圧を得た。得られた溶菌液を、165,000×gのRCFmaxで遠心分離し、上清を0.45□mフィルターに通して濾過した。容量を10mM Tris-Cl、100mM NaCl、pH7.9を用いて15mlに調節し、同じ緩衝液に溶解した0.2Mイミダゾールを加えて、非特異結合を最小にするためにイミダゾール濃度を6.5mMに上げた。試料を、FPLC装置(Pharmacia製)に連結し且つ予め10mM Tris-Cl、100mM NaCl、pH 7.9で平衡化したたニッケルアフィニティークロマトグラフィーカラム(HiTrap chelating、Pharmacia製)に装填した。結合されたタンパク質を、100〜200mlにわたって10mM Tris-Cl、100mM NaCl、pH7.9に溶解した0〜100mMイミダゾールの直線濃度勾配で溶出した。タンパク質含有画分をSDS-PAGEで分析し(図2)、25mM Tris-Cl、1mM EDTA、pH6.5-9(精製されたタンパク質のpiに応じて)に対して透析し、その後にさらに精製するために、得られた試料をイオン交換カラム(HiTrap Q、Pharmacia製)に加えた。結合されたタンパク質を、100mlにわたって25mM Tris-Cl、1mM EDTA、pH6.5-9に溶解した0-0.5M NaClの直線濃度勾配で溶出した。最後に、タンパク質試料をPBSに対して広範囲にわたって透析し、そして+4℃で保存した。
【0114】
また、EF1091、EF1092及びEF1093を振盪フラスコ又はバイオリアクターで発現させ、細胞を遠心分離により収集し、得られた細胞ペースト−80℃で凍結させた。細胞を、ミクロフルイダイザーに10,000 psiで2回通して1×PBS(10mLの緩衝液/1gの細胞ペースト)に溶解した。溶解した細胞を17,000rpmで30分間遠沈して細胞砕片を除去した。上清を、0.1M NiClを装填した5mL HiTrap Chelating (Pharmacia製) カラムに通した。装填後に、カラムを、カラム容量の5倍容の10mM Tris、pH8.0、100mM NaCl(緩衝液A)で洗浄した。タンパク質を、10mM Tris、pH8.0、100mM NaCl、500mMイミダゾール(緩衝液B)を0〜100%の濃度勾配で使用して溶出した。タンパク質含有画分を1×PBSに透析した。
【0115】
実施例3.エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)及びエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)PCR分析に共通のMSCRAMM(登録商標)遺伝子
前記の配列のフランキング領域用のプライマーを使用して、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)株由来のゲノムDNA 1μgを増幅した。表1の5種類のエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)株からのPCR生成物を配列決定し、TIGRデータベース配列と比較した。腸球菌MSCRAMM(登録商標)Aドメイン遺伝子生成物を増幅するのに使用したプライマーを以下に示す。
【0116】

【0117】
腸球菌MSCRAMM(登録商標)タンパク質同士の相同性
NCBI検索エンジンを用いて上記のAA配列を使用してblastp検索を行った。見い出されたそれぞれの推定上の相同体について、得られたアクセッション番号を示す。%同一性及び類似性の両方は、照会配列に厳密に一致するAAの%を示し、これに対して類似性はマッチング計算における同類AA変化を含む。
【0118】
表4.エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)MSCRAMM(登録商標)タンパク質のエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)相同体の比較

【0119】
それぞれのエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)MSCRAMM(登録商標)タンパク質由来の“A”ドメインアミノ酸配列を、blastp(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BL-AST/)検索のクエリーとして使用した。示した結果は、NCBIコンピューターで記録した。同一性は、対象配列とクエリー配列との間の厳密な一致(match)として算出され、これに対して類似性はまた同じ位置の配列に同類変化を含む。
【0120】
実施例4.MSCRAMM(登録商標)タンパク質であると予測された追加のグラム陽性アミノ酸配列
予測された免疫グロブリン様折りたたみを含有するLPXTGモチーフ含有細胞壁固定化タンパク質のリスト。それぞれのゲノム配列についての配列決定センターを、括弧内に示す。ブドウ球菌及び表皮ブドウ球菌由来のCNAの配列を除く全ての配列は、TIGRウェブサイト(www.tigr.org)、総合微生物資源セクションから得ることができる。表皮ブドウ球菌RP64Aゲノム配列は注釈が付かない。しかし、前記に挙げた表皮ブドウ球菌タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチドのコーディネート(coordinate)はTIGRウェブサイトにより得ることができる。
【0121】
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae) TIGR4(TIGR)
SP0462
SP0463
SP0464

エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis) V583 (TIGR)
EF2224
EF1099
EF1092
EF3023
EF1269
EF0089
EF1824
EF1091
EF1093
EF1075
EF1074
EF1651

ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans) UA159(オクラホマ大学)
SMU.610
SMU.987
SMU.63c

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) N315(順天堂大学)
SA2447
SA2290
SA2291
SA2423
SA0742
SA0519
SA0520
SA0521

炭疽菌(Bacillus anthracis) Ames(TIGR)
BA0871
BA5258
【0122】
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)株 PR62A(TIGR)(配列番号:20)

【0123】

【0124】

【0125】







【0126】


【0127】
実施例5.3種類の代表的な腸球菌MSCRAMM(登録商標)タンパク質を使用した抗体産生のための免疫化方法
精製EF1091、EF1092及びEF1093タンパク質を使用して1パネルのネズミ抗体を産生させた。手短に言えば、一群のBalb/Cマウスを、溶液状でるか又は表5に以下に記載のようにアジュバントと混合したタンパク質1〜10mgの一連の皮下免疫処置を施した:
表5.免疫処置スキーム
慣用の注射 日 量(μg) 経路 アジュバント
一次 0 5 皮下 FCA
追加#1 14 1 腹腔内 RIBI
追加#2 28 1 腹腔内 RIBI
追加#3 42 1 腹腔内 RIBI

犠牲時に、血清を採取し、MSCRAMM(登録商標)タンパク質ACE、EF1091、EF1092及びEF1093に対してELISAアッセイで力価測定した(表6)。
【0128】
血清ELISA
Immulon 2-HB高タンパク質結合96ウエルプレートを、EF1091、EF1092又はEF1093の精製Aドメイン100ng/ウエルで被覆し、2〜8℃で一夜インキュベートした。プレートを、Skatron Skanwasherプレートウォシャーを使用してPBS/0.5%Tween 20で4回洗浄し(350μl/ウエル)、次いで及び1%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液200μl/ウエルを用いて室温で1〜2時間ブロックした。インキュベーションの後に、プレートを上記のようにして洗浄し、96ウエルのプレートのB〜H列のそれぞれのウエルに100μlの1×PBS、0.05%Tween 20、0.1%BSA緩衝液を加えた。次いで、陰性対照血清(免疫前Balb/C血清)及び超免疫試料を1×PBS、0.05% Tween 20、0.1%BSA緩衝液に1:100希釈した。200μlの陰性対照血清を、96ウエルのプレートのウエルA1及びA2に二重反復試験として加え、またそれぞれの希釈超免疫試験血清200μlをウエルA3〜A12に二重反復試験として加えた。2倍連続希釈をH列を最後とするプレートで行い、残りの100μlを廃棄した。プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを前記のようにして再度洗浄し、次いで二次抗体溶液、ヤギ抗マウスIgG(全分子)−AP複合体 (Sigma Cat. A-5153)の1:5000希釈液をそれぞれのウエルに加え(100μl/ウエル)、そして1時間インキュベートした。インキュベーション後に、プレートをPBS/0.5%Tween 20(350μ/ウエル)を用いて4回洗浄した。発色溶液、すなわち1Mジエタノールアミン、pH9.8、0.5mM MgCl2に溶解した1mg/mlの4-ニトロフェニルリン酸(pNPP)を、それぞれのウエルに加え(100μl/ウエルl)、プレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、それぞれのウエルの吸光度(A405nm)を、Spectra MAX 190 プレート読み取り装置(Molecular Devices Corp.製、カリフォルニア州サニベール所在)を使用して測定した。データをソフトウエアSOFTmax Pro v.3.1.2.(Molecular Devices Corp.製、カリフォルニア州サニベール所在)を使用して分析した。陰性対照血清の吸光度の2倍であった超免疫血清の希釈液を、超免疫血清試料の力価として使用した。
【0129】
表6.犠牲時の抗体力価

【0130】
実施例6.エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)MSCRAMM(登録商標)タンパク質に対する抗体反応性
Balb/cマウスから誘導した(実施例3に記載のようにして)抗血清を使用して、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)株の表面で自然に(natively)発現したEF1091、EF1092又はEF1093を同定した。
【0131】
フローサイトメトリー(流動細胞計測法)分析 − 全細胞染色
細菌試料(表7)を採取し、洗浄し、次いでウサギIgG (50mg/ml)でブロックした後にポリクロナール抗血清又は免疫前血清(対照)と共に1:2000に希釈でインキュベートした。血清と共にインキュベートした後に、細菌細胞を、検出抗体として働くヤギ-F(ab´)2-抗-マウス-F(ab´)2-FITC と共にインキュベートした。抗体を標識した後に、細菌細胞 をFACScaliberフローサイトメーターにより吸引して、蛍光発光を分析した(励起:488、発光:570)。それぞれの菌株について、10,000個のイベント(event)を集め、測定した。
【0132】
表7.エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)及びエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)の全細胞染色

【0133】
EF1091、EF1092及びEF1093に対してマウスで生じさせたポリクロナール抗血清が、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)株及びエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)の表面で発現された天然タンパク質を認識することがフローサイトメトリー(流動細胞計測法)研究で明らかにされた(表7)。
【0134】
実施例7.モノクロナール抗体産生についての免疫処置方法
モノクロナール抗体(mAb)を産生させ、特定することを目的に、方法を策定して高親和性であり、細胞外マトリックスタンパク質(ECM)の結合を中断し且つ制限することができ且つ生体内で治療効果を実証するmAbをEF1091、EF 1092及びEF 1093に対して産生させた。大腸菌で発現させ且つ精製したEF1091、EF1092及びEF1093 タンパク質を使用して、1パネルのネズミモノクロナール抗体を産生させた。手短に言えば、一群のBalb/C又はSJLマウスを、溶液状の又は表8に以下に記載のようにアジュバントと混合したタンパク質1〜10□gの一連の皮下免疫処置を施した:
表8.免疫処置スキーム
RIMMS注射 日 量(μg) 経路 アジュバント
#1 0 5 皮下 FCA/RIBI
#2 2 1 皮下 FCA/RIBI
#3 4 1 皮下 FCA/RIBI
#4 7 1 皮下 FCA/RIBI
#5 9 1 皮下 FCA/RIBI

慣用の注射 日 量(μg) 経路 アジュバント
一次 0 5 皮下 FCA
追加#1 14 1 腹腔内 RIBI
追加#2 28 1 腹腔内 RIBI
追加#3 42 1 腹腔内 RIBI

犠牲時(RIMMS)に又は追加免疫後7日目に(慣用)、血清を採取し、MSCRAMM又は全細胞〔エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)及び/又はエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)〕の免疫処置に対してELISAアッセイで力価測定した。
【0135】
最終追加免疫3日後に、脾臓又はリンパ節を取り出し、単一細胞懸濁物にほぐし、リンパ球を収集した。次いで、リンパ球をP3X63Ag8.653骨髄腫細胞株(ATCC #CRL-1580)に融合した。細胞融合、その後の平板培養及び栄養補給を、Current Protocols in Immunology (Chapter 2、Unit 2.)の「Production of Monoclonal Antibodies protocol」に従って行った。
【0136】
実施例8.抗EF1091モノクロナール抗体のスクリーニング及び選別
EF1091融合から生じたクローンを、特異的抗EF1091抗体産生について標準ELISAアッセイを使用して選別した。陽性クローンを拡大し、さらにフローサイトメトリーによる全細菌細胞結合アッセイ及びBiacore分析によるEF1091結合における活性について試験した(表9)。
【0137】
ELISA分析
Immulon 2-HB高タンパク質結合96ウエルプレート(Dynex製)を、1μg/ウエルの1×PBS、pH7.4溶解rEF1091で被覆し、室温で2時間インキュベートした。複数のELISAにおいて洗浄工程は全て、1×PBS、0.05%Tween-20洗浄緩衝液を用いて3回行った。プレートを洗浄し、1%BSA溶液を用いて室温で1時間ブロックし、その後にハイブリドーマ上清試料をウエルに加えた。プレートを試料及び関連がある対照、例えば媒体単独と共に室温で1時間インキュベートし、洗浄し、次いで1×PBS、0.05%Tween-20、0.1%BSAに1:5000希釈したヤギ抗-マウスIgG-AP (Sigma製) を二次試薬として使用した。プレートを、4-ニトロフェニルリン酸(pNPP)(Sigma製)の1mg/ml溶液を加え、次いで37℃で30分間インキュベートすることによって発色させた。吸光度を、405nmでSpectraMax 190 Plate Reader (Molecular Devices Corp.製)を使用して読み取った。OD405≧バックグラウンドよりも3倍(媒体単独、〜0.1 OD)を有していた抗体上清を陽性とみなした。
【0138】
Biacore分析
分析全体を通じて、流量を10ml/minで一定のままであった。EF1091注入の前に、試験抗体をチップにRAM−Fc結合によって吸着させた。時間0で、EF1091を30mg/mlの濃度で、チップ上に3分間注入し、次いで2分間解離させた。分析のこの相は、mAb/EF1091相互作用の相対結合及び解離速度を測定した。
【0139】
フローサイトメトリー 分析
細菌試料を収集し、洗浄し、次いで2mg/ml濃度のmAb又はPBS単独(対照)と共にインキュベートし、その後にウサギIgG (50 mg/ml)を用いてブロックした。抗体と共にインキュベートした後に、細菌細胞を、検出抗体として働くヤギ-F(ab´)2-抗-マウス-F(ab´)2-FlTCと共にインキュベートした。抗体を標識した後に、細菌細胞をFACScaliberフローサイトメーターにより吸引して、蛍光発光を分析した(励起:488、発光:570)。それぞれの細菌株について、10,000個のイベント(event)を集め、測定した。
【0140】
表9.ハイブリドーマ上清の代表例

【0141】
実施例9.細胞外マトリックス (ECM)タンパク質に対する腸球菌MSCRAIVIIVI(登録商標)タンパク質の結合
エンテロコッカス属細菌から発現されるこれらのMSCRAMMが結合する潜在的(potential)細胞外マトリックスタンパク質を理解することは、治療への示唆と共に極めて生物学的に重要である。
【0142】
ELISAに基づく細胞外マトリックスリガンドのスクリーニング
組換えタンパク質EF1091、EF1092及びEF1093 (表10) の細胞外マトリックス分子との結合活性を調べるために、96ウエルCostarマイクロタイタープレート(Corning製)の二重のウエルを、100μLの1×PBS、pH7.4(Gibco製)に溶解したヒトコラーゲンI型、II型、III型、IV型、V型又はVI型(Rockland Immunochemicals製)、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、プラスミノーゲン、ビトロネクチン(Sigma製)あるいはエラスチン(CalBiochem)の2μgを用いて4℃で一夜被覆した。ウエルを、0.05%Tween 20を含有する1×PBS、pH7.4(1×PBST)で4回洗浄した。次いで、ウエルをBSA in 1×PBS、pH7.4に溶解したBSAの1%(w/v)溶液で1時間ブロックし、次いで1×PBSTで4回洗浄した。次に、0.1%BSAを含有する1×PBST(1×PBST-BSA)100μlに溶解した組換えタンパク質5μgを、それぞれのウエルに加えた。前記タンパク質と共に室温で1時間インキュベートした後に、ウエルを1×PBSTで4回洗浄し、次いでそれぞれの組換えタンパク質に対して生じたマウス ポリクロナール 抗血清100□Lをそれぞれのウエルに1×PBST-BSAに1:2000の希釈率で加えた。抗血清と共に室温で1時間インキュベートした後に、ウエルを1×PBSTで4回洗浄した。最後に、ヤギ抗マウスIgG−アルカリ性ホスファターゼ複合体(Sigma製) を1×PBST-BSAで1:2000希釈し、次いで100μLをそれぞれのウエルに加えた。このインキュベーションを室温で1時間行い、次いでウエルを1×PBSTで4回洗浄した。それぞれのウエルに100μLの1mg/mL pNP溶液 (Sigma 104錠剤)を加え、室温で30分間インキュベートすることによって、アルカリ性ホスファターゼを発色させた。発色は、それぞれのウエルに50μLの2M NaOHを加えることによって停止させた。405nm (A405)での吸光度を、SpectraMax 190 (Molecular Devices製) を使用して測定した。得られたシグナルがバックグラウンドよりも2.5倍を越えて大きい場合には、反応性を陽性として記録した。
【0143】
また、ECMの諸成分に結合するEF0089及びEF2224(表10)を、100□l PBSに又はコラーゲンの場合には3%酢酸に溶解したそれぞれのECMタンパク質(ヒトラミニン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、I型、III型及びIV型コラーゲン)1□gをマイクロプレートウエル(96ウエル、4HBX、Thermo Labsystems製、マサチューセッツマサツ州フランクリン所在)に4℃で一夜固体化することによって試験した。プレートを1回PBSで洗浄し、次いでPBSに溶解した1%BSAで1時間ブロックした。ブロッキング緩衝液に溶解した5及び10□M濃度の精製His-標識タンパク質50□lを加え、次いで周囲温度で2時間インキュベートした。プレートをPBSに溶解した0.05%Tween 20で3回洗浄し、次いでブロッキング緩衝液に溶解したHiss-標識モノクロナール抗体(Amersham Biosciences Corp.製、ニュージャージー州ピスカタウエイ所在)の1:3000希釈液と共に2時間インキュベートした。3回洗浄後に、各ウエルに、ブロッキング緩衝液に溶解したアルカリ性ホスファターゼ複合抗マウス抗体の1:3000希釈液を加え、2時間インキュベートした。最後に、0.1M NaHCO3 、1mM MgCl2 、pH9.8に溶解したニトロブルーテトラゾリウム(NBT)及び5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸(BCIP)シグナルを用いてシグナルを検出した。405nmで吸光度を、ELISA読取装置で測定した。
【0144】
表10.ECMタンパク質を認識するMSCRAMM(登録商標)タンパク質

【0145】
実施例10.エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)に感染した患者からの血清はMSCRAMM(登録商標)タンパク質に対する抗体を高められた濃度で含有する
前記のエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)に感染したいるか又は感染していない入院患者から採取した腸球菌タンパク質に対する抗体の存在を、若干の変更を加えた(Arduino et al., 1994)(Nallapareddy et al., 2000b)に記載のELISA アッセイで試験した(表11)。手短に言えば、100μlのPBSに溶解したそれぞれの精製腸球菌タンパク質20ngをマイクロプレート(96ウエル、4HBX、Thermo Labsystems製、マサチューセッツマサツ州フランクリン所在)に4℃で一夜塗布した。プレートを、1%BSA、0.01%Tween20を用いて周囲温度で1時間ブロックし、次いでブロッキング緩衝液に溶解した血清1μlを加えた。それぞれの血清を、:100から1:6400までの連続希釈液を用いて三重反復して試験した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートし、次いでPBSに溶解した0.01%Tween 20で3回洗浄した。セイヨウワサビペルオキシダーゼ複合抗ヒトIgGの1:3000希釈液100μlを加え、2時間インキュベートした。3回洗浄した後に、0.1Mクエン酸塩−酢酸塩緩衝液、pH6.0中でH2O2の存在下で3,3´,5,5´-テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて周囲温度で15分間シグナルを検出した。2M H2SO4を用いて反応を停止させ、次いで450nmで吸光度を記録した。適当な対照からA450nm値を差し引くことによって力価を測定した。血清力価についてカットオフレベルを調べるために、前のエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)に感染していない健常者から得た4種の追加の対照血清をアッセイした。それぞれの対照血清について平均A450nm値の合計及び2回の標準偏差を陽性力価についてカットオフとして挙げた。
【0146】
表11

【0147】
前記の説明で挙げた以下の参考文献は、その全体が本明細書で説明されたものとして組み込まれる:
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外マトリックス分子に結合するグラム陽性菌由来のLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質の同定方法であって、配列情報のデータベースを検索してC末端領域にLPXTGモチーフを有するグラム陽性菌由来の推定上のタンパク質配列を同定し、同定された配列を分析して1個又はそれ以上のIg様折りたたみ領域の存在を調べ、次いで前記の推定上のタンパク質配列を、この配列が細胞外マトリックス分子に結合するLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質の1個又はそれ以上のIg様折りたたみ領域を有する場合に、細胞外マトリックス分子に結合するLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質として明確に同定することからなる、細胞外マトリックス分子に結合するグラム陽性菌由来のLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質の同定方法。
【請求項2】
グラム陽性菌がエンテロコッカス属、連鎖球菌属、ブドウ球菌属及びバシラス属からなる群の中から選択される属由来のものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グラム陽性菌がエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)及び炭疽菌(Bacillus anthracis)からなる群の中から選択される種由来のものである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
推定上のLPXTG含有タンパク質配列のIg様折りたたみが、該タンパク質の配列を、細胞外マトリックス分子に結合する公知のLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質のIg様折りたたみの配列と比較することによって調べられるものである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
推定上のLPXTG含有タンパク質が、配列の比較に基づいた確率値を使用して公知のLPXTG含有タンパク質と比較されるものであり且つ推定上のLPXTG含有タンパク質が、確率値が<0.25である場合に、細胞外マトリックス分子に結合するLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質として同定されるものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
細胞外マトリックス分子に結合するグラム陽性菌由来のLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質の同定方法であって、配列情報のデータベースを検索してC末端領域にLPXTGモチーフを有するグラム陽性菌由来の推定上のタンパク質配列を同定し、同定された配列を分析して、該配列がN末端にシグナルペプチドを有し、疎水性貫膜セグメントを伴うC末端の近くにLPXTGモチーフを有し且つC末端に数個の正帯電残基を有するか否かを調べ、次いで前記の推定上のタンパク質配列を、該配列がN末端にシグナルペプチドを有し、疎水性貫膜セグメントを伴うC末端の近くにLPXTGモチーフを有し且つC末端に数個の正帯電残基を有する場合に、細胞外マトリックス分子に結合するLPXTG含有の細胞壁固定化表面タンパク質として明確に同定することからなる、細胞外マトリックス分子に結合するグラム陽性菌由来のLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質の同定方法。
【請求項7】
請求項の方法により同定された単離タンパク質。
【請求項8】
請求項に記載のタンパク質の単離Aドメイン。
【請求項9】
請求項に記載のタンパク質に結合することができる単離抗体。
【請求項10】
請求項に記載のタンパク質をコードする単離核酸配列。
【請求項11】
配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:19、配列番号:20〜24からなる群の中から選択されるアミノ酸配列及び前記配列のAドメインを有するグラム陽性菌由来の単離LPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質又は前記タンパク質由来のAドメイン。
【請求項12】
請求項11に記載のタンパク質をコードする単離核酸配列。
【請求項13】
配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16及び配列番号:18からなる群の中から選択される核酸配列又はその縮重を有するグラム陽性菌由来のLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質又は該タンパク質由来のAドメインをコードする単離核酸。
【請求項14】
請求項11に記載のタンパク質に結合することができる単離抗体。
【請求項15】
抗体がモノクロナール抗体である請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
一本鎖抗体、キメラ抗体、ネズミ抗体、ヒト化抗体及びヒトモノクロナール抗体からなる群の中から選択される請求項14に記載の抗体。
【請求項17】
前記抗体がヒト又は動物においてグラム陽性菌感染症を治療又は予防するものである請求項14に記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体がヒト又は動物において非経口投与、経口投与、鼻腔内投与、皮下投与、エアゾール投与又は静脈内投与に適したものである請求項14に記載の抗体。
【請求項19】
請求項14に記載の抗体を含有する単離抗血清。
【請求項20】
請求項14に記載の抗体と、該抗体による結合を検出するための手段とからなる診断キット。
【請求項21】
前記の結合の検出手段が前記抗体に連結される検出可能標識からなるものである請求項20に記載の診断キット。
【請求項22】
ヒト又は動物患者に有効量の請求項14に記載の抗体を投与することからなるグラム陽性菌の感染症の治療又は予防方法。
【請求項23】
有効量の請求項14に記載の抗体と、製薬学的に許容し得るビヒクル、担体又は賦形剤とを含有してなる医薬組成物。
【請求項24】
免疫原有効量の、細胞外マトリックス分子に結合するグラム陽性菌由来のLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質の単離Aドメインと、製薬学的に許容し得るビヒクル、担体又は賦形剤とを含有してなる医薬組成物。
【請求項25】
免疫原有効量の請求項11に記載のタンパク質又はペプチドと、製薬学的に許容し得るビヒクル、担体又は賦形剤とを含有してなる医薬組成物。
【請求項26】
ヒト又は動物患者に有効量の請求項14に記載の抗体を投与することからなるグラム陽性菌の感染症の治療又は予防方法。
【請求項27】
グラム陽性菌によって引き起こされる感染症の診断方法であって、かかる感染症を有すると疑われる生物材料の試料に請求項14に記載の抗体を導入し、次いで前記抗体が前記試料中の抗原に結合するか否かを調べることからなるグラム陽性菌によって引き起こされる感染症の診断方法。
【請求項28】
ヒト又は動物に免疫有効量の、細胞外マトリックス分子に結合するグラム陽性菌由来のLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質の単離Aドメインを投与することからなるヒト又は動物における免疫原性反応の誘発方法。
【請求項29】
免疫原有効量の、細胞外マトリックス分子に結合するグラム陽性菌由来のLPXTG含有細胞壁固定化表面タンパク質の単離Aドメインと、製薬学的に許容し得るビヒクル、担体又は賦形剤とを含有してなるワクチン。
【請求項30】
グラム陽性菌由来の抗原を含有すると疑われる生物試料中のグラム陽性菌由来の抗原の存在のアッセイ方法であって、(a)前記試料を、固相免疫吸着剤に結合された固相固定化抗体か又は可溶性標識抗体の形の請求項14に記載の抗体のいずれかと同時に含有する混合物を形成し;(b)工程(a)で形成された混合物を、試料中の抗原を前記の固定化抗体又は前記の標識抗体に結合させるのに十分な時間及び条件下でインキュベートし;次いで(c)固相免疫吸着剤に結合された標識抗体を検出するか又は標識可溶性抗体を検出することからなるグラム陽性菌由来の抗原を含有すると疑われる生物試料中のグラム陽性菌由来の抗原の存在のアッセイ方法。
【請求項31】
さらに洗浄、攪拌、振盪又は濾過工程を含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
グラム陽性菌抗原を有すると疑われるヒト又は動物患者におけるグラム陽性菌抗原の量の監視方法であって、(a)前記のヒト又は動物患者から生物試料を採取し;(b)前記の試料に測定可能量の請求項14に記載の抗体を導入し;(c)該試料を、抗体と組み合わせた際に前記の抗原と抗体とを結合させるのに十分な時間及び条件下でインキュベートし;次いで(d)該試料中に存在するグラム陽性菌抗原の量を示す抗原−抗体結合の量を測定することによって試料中の抗原の量を監視することからなるグラム陽性菌抗原を有すると疑われるヒト又は動物患者にグラム陽性菌抗原の量の監視方法。
【請求項33】
免疫原有効量の請求項11に記載のタンパク質と、製薬学的に許容し得るビヒクル、担体又は賦形剤とを含有してなる医薬組成物。
【請求項34】
グラム陽性菌によって引き起こされる感染症の診断方法であって、請求項11に記載のタンパク質をかかる感染症を有すると疑われる生物材料の試料に導入し且つ前記抗体が前記試料中の抗体に結合するか否かを調べることからなるグラム陽性菌によって引き起こされる感染症の診断方法。
【請求項35】
ヒト又は動物に免疫有効量の請求項11に記載のタンパク質を投与することからなるヒト又は動物における免疫原性反応の誘発方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−142230(P2010−142230A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286834(P2009−286834)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【分割の表示】特願2004−536258(P2004−536258)の分割
【原出願日】平成15年9月15日(2003.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(505092474)
【出願人】(505092485)インヒビテックス,インコーポレイテッド (1)
【出願人】(505092496)ザ ユーエービー リサーチ ファンデイション (1)
【Fターム(参考)】