説明

グランドパッキン及び粉体分散塗料の製造方法

【課題】軸との摩擦が大きくならず、耐久性の良好なグランドパッキン及びそれを装着した混練装置を用いて製造する粉体分散塗料の製造方法を提供する。
【解決手段】有機および/または、無機の繊維を編み糸として編み組みした紐状物に20℃で固形または液状の潤滑剤を含浸してなるグランドパッキンであって、前記潤滑剤中に、融点が75℃以上であって、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトンに対する溶解度が、いずれの溶剤においても10g/100g以下の潤滑剤を50重量%以上含むグランドパッキン並びに当該グランドパッキンを装着した混練装置を用いて製造する粉体分散塗料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グランドパッキン、特に、耐久性の良好なグランドパッキン、並びに当該グランドパッキンを装着した混練装置を用いる粉体分散塗料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、混練装置、ポンプ、攪拌機、バルブなどの各種流体機器の回転軸(以下、軸と称する)の軸封部などに用いられ、流体の漏れを防止するために使用するグランドパッキンとしては、石綿繊維やガラス繊維等の無機繊維を八編み、袋編み、格子編み等に編み組みして紐状にし、潤滑剤などを含浸させるか表面処理を行った、いわゆる編み組みパッキンが多く使用されている。
【0003】
また、近年においては、カーボン繊維あるいはパラ系芳香族ポリアミド繊維を素材とした編み組みパッキンも数多く生産されるようになり、グランドパッキンの耐熱性、耐薬品性さらに耐摩耗性等の特性も向上してきている(例えば、特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−346175号公報
【特許文献2】特開2001−208208号公報
【特許文献3】特開昭62−228758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、使用する有機溶剤に不溶性の粉体、例えば顔料、磁性粉、樹脂粒子などをバインダー樹脂(使用する有機溶剤に溶解性のバインダー樹脂)と有機溶剤とで練り合わせる混練装置においては、回転する混練軸を混練槽に固定している軸受け部に使用されている従来のグランドパッキンに含浸されている潤滑剤は、融点が低いため塗料中に溶け出し、グランドパッキンの潤滑効果が低下するため摩擦係数が上昇し、軸受け部に大きな力が加わる上に、発熱による温度上昇による潤滑成分の溶融後の流出や、有機溶剤がクランドパッキンに含浸されている潤滑剤を洗い流してしまうために、軸とグランドパッキンとの摩擦が大きくなってグランドパッキンが磨耗し易くなる、さらにはそれにより混練軸を回転するための負荷電流が上昇するという問題点があった。
【0006】
また、例えば顔料、磁性粉、樹脂粒子など使用する有機溶剤に不溶性の粉体をバインダー樹脂(使用する有機溶剤に溶解性のバインダー樹脂、以下単にバインダー樹脂と称することあり)と有機溶剤とで練り合わせる工程を経て製造される粉体分散塗料の製造においては練り合わせに使用する混練装置において、回転する混練軸を混練槽に固定している軸受け部に使用されているグランドパッキンにおいては、従来のグランドパッキンに含浸されている潤滑剤は、融点が低いため塗料中に溶け出し、グランドパッキンの潤滑効果が低下するため摩擦係数が上昇し、グランドパッキンの摩耗により生じる繊維の削れくずによる粉体分散塗料の汚染が生じやすくなり、グランドパッキンを頻繁に交換する必要が出てくるなど、粉体分散塗料の品質の低下、生産性(生産効率)の低下が問題になる。
【0007】
本発明では、高融点で有機溶剤に溶解しにくい潤滑剤を使うことでグランドパッキンに潤滑剤が残るため、グランドパッキンの摩擦上昇の問題が起こりにくくなり、耐久性の良好なグランドパッキンを提供すること、並びに、前記グランドパッキンを装着した混練装置を用いて製造する粉体分散塗料の汚染やグランドパッキンの頻繁な交換を必要としない混練装置の回転軸のメンテナンス性向上による生産性(生産効率)の良好な粉体分散塗料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、グランドパッキンに含浸させる潤滑剤について鋭意検討した結果、グランドパッキンを下記の構成にすれば、軸との摩擦が大きくならず、耐久性の良好なグランドパッキンを提供できること、並びに、前記グランドパッキンを装着した混練装置を用いて製造する粉体分散塗料の汚染やグランドパッキンの頻繁な交換を必要としない混練装置の回転軸のメンテナンス性向上による生産性(生産効率)の良好な粉体分散塗料の製造方法を提供できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明のグランドパッキンは、有機および/または、無機の繊維を編み糸として編み組みした紐状物に20℃で固形または液状の潤滑剤を含浸してなるグランドパッキンにおいて、前記潤滑剤中に、融点が75℃以上であって、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトンに対する溶解度が、いずれの溶剤においても10g/100g以下の潤滑剤を50重量%以上含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の粉体分散塗料の製造方法は、粉体とバインダー樹脂と前記バインダー樹脂の溶剤を含む粉体分散塗料を、上記記載のグランドパッキンを装着した混練装置を用いて混練することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本グランドパッキンの発明においては、有機および/または無機の繊維を編み糸として編み組みした紐状物に潤滑剤を含浸してなるグランドパッキンにおいて、前記固形または液状の潤滑剤中に、融点75℃以上で、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトンに対する溶解度が、いずれの溶剤においても10g/100g以下の潤滑剤を50重量%以上含むために、混練時に軸の温度が上がってもグランドパッキンに潤滑剤が残るため、グランドパッキンの軸との摩擦上昇の問題が起こりにくくなり、耐久性の良好なグランドパッキンを提供できる。粉体分散塗料の汚染やグランドパッキンの頻繁な交換を必要としないという効果を奏する。
【0012】
また、本発明の粉体分散塗料の製造方法は、粉体とバインダー樹脂と前記バインダー樹脂の溶剤を含む粉体分散塗料を、上記記載のグランドパッキンを装着した混練装置を用いて製造するので、高融点で有機溶剤に溶解しにくい潤滑剤を使うことでグランドパッキンに潤滑剤が残るため、グランドパッキンの摩擦上昇の問題が起こりにくくなり、グランドパッキンの摩耗により生じる繊維の削れくずによる粉体分散塗料の汚染やグランドパッキンの頻繁な交換を必要としない混練装置の回転軸のメンテナンス性向上(グランドパッキン交換頻度の低減)による生産性(生産効率)の良好な粉体分散塗料の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一例のグランドパッキンの構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の粉体分散塗料の製造方法の混練工程において用いる本発明のグランドパッキンを装着した混練装置の概略断面図である。
【図3】本発明の図2の混練装置の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
回転軸(以下、軸と称する)からの漏れを防止するために使用するグランドパッキンは、石綿繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維やポリテトラフルオロエチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維等の有機繊維、これらの繊維の2種以上の組み合わせを八編み、袋編み、格子編み等などで紐状に編み組みして強度を持たせ、潤滑剤などを含浸させるか表面処理を行って回転軸との摩擦を小さくした、いわゆる編み組みパッキンが多く使用されている。本発明においては、編み組みした紐状物としては、従来よりグランドパッキンに使用されている編み組みした紐状物であれば、素材や編組織に特に限定はなく、従来よりグランドパッキンに使用されている素材や編組織の紐状物のいずれも使用可能である。
【0015】
粉体分散塗料の製造において、粉体とバインダー樹脂と有機溶剤とを混練材料として練り合わせる混練工程で用いられる混練装置において、例えば、カーボンブラックとバインダー樹脂、有機溶剤とを混練する場合などは、混練材料にかなり大きなせん断力を加えるため、混練材料はかなり発熱する。従って混練槽の冷却ジャケットに冷水を流して混練材料が過大な高温に晒されるのを防いでいる。しかし、回転する混練軸を混練槽に固定している軸受け部は、このような冷却手段を設けることが困難で、また軸受け部の回転による摩擦熱の発生によりグランドパッキンは、かなりの高温に晒される。このため、グランドパッキンに含浸されている潤滑剤が溶融して、流出する場合がある。また、混練装置を長期間使用するうちに、混練材料中の有機溶剤が軸受け部に浸入して、グランドパッキンに含浸されている潤滑剤が溶解して流出して、粉体分散塗料に混入し、粉体分散塗料の品質を低下してしまう懸念もある。
【0016】
そこで、本発明のグランドパッキンに含浸させる潤滑剤としては、全体としては20℃で(すなわち常温で)固形または液状の潤滑剤であり、且つ、当該潤滑剤中に、その50重量%以上の潤滑剤が融点の高いものが含有されていることが必要である。前記融点の高い潤滑剤としては、融点を有しないものは含まないが、融点が75℃以上であることが必要で、90℃以上がより好ましく、100℃以上がもっとも好ましい。この潤滑剤の融点の上限は特に限定はないが、通常、175℃以下であることが好ましい。編み組みした紐状物に、潤滑剤を溶融して含浸させる場合に、あまりに融点が高すぎると、含浸途中で固化したりするので、扱いにくくなったり、含浸に長時間を要したり、充分な含浸量を得ることができにくくなるからである。
【0017】
前記融点の高い潤滑剤の融点が75℃以上であると、混練装置の通常の使用においては、グランドパッキンに含浸されているすべての潤滑剤が溶融してしまって、すべての潤滑剤が流出してしまうというようなことがなく、摩擦上昇の問題が起こりにくくなる。
【0018】
前記融点の高い潤滑剤の融点が75℃以上の潤滑剤が、用いる潤滑剤全体に対し50重量%以上含まれていることにより、前記融点の高い潤滑剤の融点が75℃より低いものしか含まれていない場合に比べて、回転軸との摺動熱で含浸された潤滑剤が大量に溶解流出しても、融点が75℃以上の潤滑剤がグランドパッキンの中に残るので、潤滑の維持、パッキンの性能維持が低下するのを防止できる。
【0019】
また、本発明で用いる前記融点の高い潤滑剤としては、有機溶剤に対する溶解度が小さいものを用いる必要がある。トルエン、テトラヒドロフラン、アセトンに対する溶解度が、いずれの溶剤においても10g/100g以下であることが好ましく、5g/100g以下であることがより好ましく、3g/100g以下であることがもっとも好ましい。
【0020】
トルエン、テトラヒドロフラン、アセトンに対する溶解度が、いずれの溶剤においても10g/100g以下であると、混練装置の通常の使用においては、混練の際に使用する混練対象物中の汎用の有機溶剤が軸受け部に浸入して、グランドパッキンに含浸されている潤滑剤が溶解して流出することを防止できる。
【0021】
トルエン、テトラヒドロフラン、アセトンに対する溶解度を基準に用いたが、有機溶剤として、無極性、極性非プロトン性、極性プロトン性の有機溶剤があるが、極性プロトン性の有機溶剤は、脂肪酸アミド類などの潤滑剤を溶解しないので、極性非プロトン性有機溶剤の代表例であるトルエン、極性非プロトン性有機溶剤の代表例であるテトラヒドロフラン、アセトンを基準とした。これらに対する溶解度が、いずれの溶剤においても10g/100g以下であると、混練装置の通常の使用においては、粉体分散塗料などの混練の際に使用する混練対象物中の汎用の有機溶剤が軸受け部に浸入して、グランドパッキンに含浸されている潤滑剤が溶解して流出することを防止できるからである。
【0022】
融点75℃以上で、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトンに対する溶解度が、いずれの溶剤においても10g/100g以下の潤滑剤としては、融点や有機溶剤に対する溶解度が上記の条件を満たす飽和脂肪酸アミド類、不飽和脂肪酸アミド類、これらの飽和脂肪酸アミド類、不飽和脂肪酸アミド類をホルムアルデヒドで縮合させたビスアミド類、炭素数20以上の飽和脂肪酸などが挙げられる。このうち、特に炭素数8〜22の飽和脂肪酸アミド類、炭素数18〜22の不飽和脂肪酸アミド類、炭素数13〜45のビスアミド類が好ましい。炭素数20以上の脂肪酸としては炭素数の上限は30以下が入手しやすいと言う点で好ましい。
【0023】
飽和脂肪酸アミド類としては、例えば、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミドなどが挙げられ、不飽和脂肪酸アミド類としては、例えば、エイコセン酸アミド、エルシン酸アミド、エライジン酸アミドなどが挙げられ、ビスアミド類としては、これらの飽和脂肪酸アミド類、不飽和脂肪酸アミド類をホルムアルデヒドで縮合させたビスアミド類が挙げられ、炭素数20以上の飽和脂肪酸としては、例えば、エイコサン酸、ベヘン酸、テトラコサン酸などが挙げられる。
【0024】
また、上記潤滑剤の他に、潤滑剤全量に対して50重量%以下であれば、必要、用途に応じて、従来公知の、パラフィン油、タービン油等の鉱油系潤滑剤、脂肪酸、脂肪酸エステルや、シリコーンオイル、ふっ素オイル等の半固形または液状の潤滑剤、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、黒鉛、窒化硼素等の固体潤滑剤、難燃剤等も用いることができる。
【0025】
グランドパッキンの形状は各種繊維を八編み、袋編み、格子編み等の従来公知の方法で編み組みして紐状物に形成される。通常、紐状物の長手方向に直角の断面形状が4角形のものが一般的である。用いられる繊維としては、石綿、ガラス繊維、炭素繊維、などの無機繊維やポリテトラフルオロエチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維が挙げられる。これらの繊維を単独あるいは組み合わせて用いることができる。
【0026】
かかる編み組みした紐状物に含浸される潤滑剤の量としては、潤滑剤全量で、潤滑剤も含めたグランドパッキン全重量に対し20〜60重量%程度が好ましい。
【0027】
図1は本発明で用いるグランドパッキンの構造を示す一実施形態例の概略斜視図であり、編み糸21を5本を束ねて中芯材22とし、その周囲を編み糸21を16本用いて、袋編みして断面略4角の紐状とし、これに潤滑剤を含浸させたグランドパッキンである。詳細は実施例1で説明した。本発明のグランドパッキンは、この態様のみに限定されるものではないことは前述したとおりである。
【0028】
次に、図2に粉体分散塗料の製造に用いる本発明のグランドパッキンを装着した混練装置の概略断面図を示した(但し、モーター5と変速機4は、外観略図で示している。)。図3に図2に示した混練装置の略点線Bで囲んだ部分の部分拡大概略図を示した。
【0029】
1が混練装置の混練槽、1aが混練槽の壁面、6が混練槽を冷却し、混練槽内の混練対象物の温度をコントロールするための冷却水用ジャケット、6aが冷却水用ジャケット内を流れる冷却水、2が混練するためのパドル(Paddle)(本態様では2つのパドルがある)、3がパドルを回転するための回転軸、5がモーター、4がモーターの回転を2つの回転軸に変速して伝達するための変速機、7が回転軸の回りを取り巻いている本発明のグランドパッキン、8がグランドパッキンを挿入するためのスタッフィングボックス(パッキン箱とも言う)、9がパッキン押さえ、10が締め付けボルトであり、このボルトを締め付けたり緩めることにより、パッキンの緩みを調整して、所望のシール能力、回転の時にかかる負荷(被混練物の種類や組成により、全く同一組成の潤滑剤を同一量含浸した同一のグランドパッキン、同一の混練装置で測定しても負荷が異なってくるので、通常、被混練物が混練槽に入っていない空転負荷電流を測定して負荷の目安にする)を調整する。したがって、通常、パッキンが磨耗して緩み、回転軸から漏液が生じるようになると、増し締めと称し、締め付けボルト10を所定のトルクになるよう締め付ける。締め付けても漏液が生じる場合などには、グランドパッキンの交換が必要になる。
【0030】
本発明では、回転軸との摩擦が大きくならず、耐久性の良好なグランドパッキンを提供できるとともに、混練装置の回転軸のメンテナンス性向上(グランドパッキンの締め付けボルトの増し締めが必要になるまでの、混練サイクル数の向上、グランドパッキンの交換頻度の低減)による生産性(生産効率)の改良された粉体分散塗料の製造方法を提供できる。
【0031】
本発明のグランドパッキンを装着した混練装置を用いて粉体分散塗料を製造する方法について説明する。粉体分散塗料の製造方法は、混練装置を用いた混練工程において、本発明のグランドパッキンを装着した混練装置を用いて混練することを特徴とするものである。必ずしも混練装置を用いた混練工程を必要としない粉体分散塗料も存在するが、本発明の粉体分散塗料の製造方法は、混練装置を用いた混練工程を必要とする粉体分散塗料の製造方法に適用される。
【0032】
粉体分散塗料に用いられる粉体としては、各種顔料(カーボンブラックも含めて各種無機顔料、有機顔料)、磁性粉、使用する溶剤に不溶な樹脂粉末、金属粉、酸化物粉などが挙げられる。無機顔料、有機顔料は特に限定されず公知の各種の顔料(例えば特開2010−13630号公報など参照)を用いることができる。磁性粉は磁気記録媒体などを製造する場合の磁性層に用いられる各種磁性粉(例えば、特開2007−73086号公報など参照)が挙げられる。使用する溶剤に不要な樹脂粉末としては、使用する溶剤の種類にもよるが、フッ素樹脂微粒子、エポキシ樹脂微粒子、フッ化カーボン粒子、ベンゾグアナミン粒子、アクリル−スチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子などが挙げられる。金属粉としては、金、銀、銅、鉄、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられる。酸化物粉としては、酸化鉄、酸化アルミ、シリカ、酸化チタン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0033】
粉体の粒子径は粉体の種類や、用途に応じて所望のものを用いればよく、特に限定するものではないが、数平均粒子径で10nm〜100μm程度のものである。
【0034】
バインダー樹脂としては、粉体分散塗料に用いられる各種の公知の樹脂を用いることができ、目的に応じて選定すればよい。用いる溶剤に可溶性であることが必要である。
【0035】
少数の具体例を挙げると、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂などの塩化ビニル系共重合体、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、前記樹脂(ポリウレタン樹脂を除く)の少なくとも1種とポリウレタン樹脂を組み合わせたものなど、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、スチレンブタジエン系共重合体、ポリアセタール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリエーテル樹脂、尿素樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系反応樹脂等の各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂やこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0036】
有機溶剤としては、用いるバインダー樹脂の溶剤で、塗料を基材に塗布後、蒸発などにより除去可能な有機溶剤であればよく、用いるバインダー樹脂の種類によって異なるが、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤、トルエンなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは混合して使用される。
【0037】
粉体、バインダー樹脂、有機溶剤の使用割合は、それぞれの目的、用途、採用する粉体、バインダー樹脂、有機溶剤の種類に応じて異なるので、一概に規定することはできないが、目安としては、粉体、バインダー樹脂、有機溶剤の使用割合は重量比で粉体5〜95、バインダー樹脂5〜95、有機溶剤5〜50の範囲が目安になる。
【0038】
粉体分散塗料には、上記のほか、必要に応じて各種添加剤を添加してもよく、例えば、分散剤、研磨剤、帯電防止剤、硬化剤、滑剤などが挙げられる。
【0039】
粉体、バインダー樹脂、有機溶剤その他必要に応じて適宜の添加剤を添加した混合物を本発明の混練装置で混練する場合の、混練槽は、使用する原料組成、目的とする粉体分散塗料の種類に応じて変るが、通常、混練槽はその外側から水冷により温度が調整される。(但し、図2や図3では、水冷部の図示を省略している。)。
【0040】
用いる混練装置としては、連続式2軸混練機や加圧混練機が挙げられる。
【0041】
連続式2軸混練機には、栗本鐵工所製のKEX−30、KEX−40、KEX−50、KEX−65、KEX−80、日本製鋼所製のTEX30aII、TEX44aII、TEX65aII、TEX77aII、TEX90aII、加圧式混練機には、株式会社モリヤマ製の(DS.DX20、55、75,110型)、株式会社トーシン製のTD20、TDS35、TDS55、TDS75、TDS110などを用いることができる。
【0042】
本発明の粉体分散塗料の製造は、粉体をバインダー樹脂、有機溶剤とともにせん断力を加えてペースト状に練り合わせる混練工程の前に必要に応じ、粉体前処理工程(粉体を解砕し、バインダー樹脂、有機溶剤と均一に混合する解砕・混合工程)などが設けられていてもよく、また、混練工程としては、上述のように粉体、バインダー樹脂、有機溶剤その他必要に応じて適宜の添加剤を添加した混合物を本発明の混練装置で混練するが、例えば、有機溶剤などは少なめにしてまず混練し、次いで更に有機溶剤、必要ならば滑剤等の適宜の添加剤などを加えて当該混練装置で希釈混練する場合も本発明の混練工程に含まれる。そして更にその後必要に応じ高速撹拌ディスパーなどにより均一化する撹拌・混合工程を設け、サンドミルなどのメディア型分散機で分散して仕上する分散工程が追加されてもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は、重量部である。
【0044】
[実施例1]
パラ系芳香族ポリアミド繊維(Dupon社製ケブラーT−976、繊度8250dtex(7500d)を撚り合わせて編み糸21を作製し、この編み糸21を5本を束ねて中芯材22とし、その周囲を前述した編み糸21を16本用いて、図1に示したように袋編みして9.5mm角(長さ方向に対し垂直な断面の1辺の長さが9.5mm)の紐状とし、これに潤滑剤としてオレイン酸アミド(OAMと略称。)を140℃で加熱溶融して含浸させてグランドパッキンを得た。潤滑剤の含浸量は得られたグランドパッキンの重量に対し49.5wt%であった。
【0045】
このグランドパッキンを市販のバッチ式混練装置(株式会社モリヤマ製“MS式加圧型ニーダ”DS3−20型:混練槽の有効混練容量4リットル、ニーダのモーター容量15kw)に、図2、図3で説明したような回転軸3外径90mmφを取り巻くようにスタッフィングボック8と回転軸3の間の各装着箇所ごとに前記グランドパッキン5本づつ積み重ねて装着し、締め付けボルト10により当初の締付けトルクが9Nmとなるよう締付けして実験用混練装置とした。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
表1に示した実験用粉体塗料成分(1)を上記バッチ式混練装置に投入して3時間混練を行なった後、表2に示した実験用塗料成分(2)を上記バッチ式混練装置に追加投入して希釈を行った。希釈後実験用粉体分散塗料を取り出した。これを1サイクルとして、20サイクル繰り返した。尚、混練温度(混練ペーストの温度)は65〜75℃(平均70℃)、パドル回転数30rpmで混練した。
【0049】
[実施例2〜6]
含浸させる潤滑剤を表3に示したものに変更した以外は、他の条件は実施例1と同様に実験を行なった。
【0050】
[実施例7]
含浸させる潤滑剤をステアリン酸アミド(SAM)/ステアリン酸ブチル(SB)=50/50(重量比)に変更した以外は、他の条件は実施例1と同様に実験を行なった。
【0051】
[実施例8]
含浸させる潤滑剤をステアリン酸アミド(SAM)/ステアリン酸ブチル(SB)=90/10(重量比)に変更した以外は、他の条件は実施例1と同様に実験を行なった。
【0052】
[比較例1〜3]
含浸させる潤滑剤を表4に示したものに変更した以外は、他の条件は実施例1と同様に実験を行なった。
【0053】
[比較例4]
含浸させる潤滑剤をステアリン酸アミド(SAM)/ステアリン酸ブチル(SB)=40/60重量比)に変更した以外は、他の条件は実施例1と同様に実験を行なった。
【0054】
各実施例、比較例において、次の評価を行なった。
<空転負荷電流>
グランドパッキンをバッチ式混練装置に装着した直後に、混練材料を投入せずに、実施例1と同条件で、バッチ式混練装置の回転軸を回転させて、そのときの負荷電流を測定し、グランドパッキンのすべり性を評価した。なお、実使用時の負荷電流は塗料組成や塗料混練状態により変化するので、混練材料を投入しない場合の空転負荷電流を測定したものである。
<回転軸漏液>
表1と表2で示した塗料成分の混練を繰り返した場合、希釈時に塗料が回転軸から漏液が始まり、増し締めが必要になるまでのサイクル数を見た。
20サイクル以上を◎、19〜15サイクルを○、14〜7サイクルを△、6サイクル以下を×とした。
【0055】
表3および表4に評価結果を示した。表3の「実」は実施例の略、表4の「比」は比較例の略である。
【0056】
【表3】

【0057】
OAM オレイン酸アミド CAM カプリル酸アミド
EAM エライジン酸アミド EA エイコサン酸
MAM ミリスチン酸アミド SB ステアリン酸ブチル
SAM ステアリン酸アミド
【0058】
【表4】

【0059】
PTAM パルミトレイン酸アミド SB ステアリン酸ブチル
SA ステアリン酸 SAM ステアリン酸アミド
MA ミリスチン酸
【0060】
<融点測定法>
ジェイ・サイエンス社製 融点測定装置 RFS-10を用いた。
カバーガラスに挟まれた粉体試料の溶融点を顕微鏡下で目視観察し,温度表示を記録する事で融点温度が求められる。
【0061】
融解前の微粉末試料は表面での乱反射により不透明であり、試料の外見が透明化し始めた温度を融点の下限点とし、融解しきった温度を上限点とし、その中間温度を融点とした。
【0062】
また急激に温度を上昇させると試料と温度計との間に温度勾配が発生して測定誤差を生じるため融点を計測する時点での加温は毎分1℃以下の上昇率で測定した。
【0063】
<溶解度測定法>
<1>溶剤500g+潤滑剤(予備試験による概略溶解度の5倍程度を添加)
<2>25℃にて緩やかに攪拌
<3>24hr放置後に遠心分離(20,000G 30min)にて上澄み液をサンプリング(10cc採取)
<4>高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて、上記サンプリングした試験材料の濃度を測定(μg/ml)、溶剤100g当の溶解量を計算し、溶解度(g/100g)とする。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のグランドパッキンは、混練装置の回転する混練軸を混練槽に固定している軸受け部に使用されているグランドパッキンとして有効に利用でき、特に有機溶剤が含まれる材料を混練する場合の混練装置のグランドパッキンとして有用である。
【0065】
また、本発明の粉体分散塗料の製造方法は、磁気記録媒体に使用される磁性層を形成するための磁性塗料、磁気記録媒体の磁性層が設けられる側とはベース基材を介して反対側(裏側)に設けられる磁気記録媒体のバックコート層用塗料も含む各種粉体分散塗料の製造に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 混練装置の混練槽
1a 混練槽の壁面
2 パドル(Paddle)
3 回転軸
4 変速機
5 モーター
6 冷却水用ジャケット
6a 冷却水
7 グランドパッキン
8 スタッフィングボックス(パッキン箱)
9 パッキン押さえ
10 締め付けボルト
21 編み糸
22 中心材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機および/または無機の繊維を編み糸として編み組みした紐状物に20℃で固形または液状の潤滑剤を含浸してなるグランドパッキンにおいて、
前記潤滑剤中に、融点が75℃以上であって、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトンに対する溶解度が、いずれの溶剤においても10g/100g以下の潤滑剤を50重量%以上含むことを特徴とするグランドパッキン。
【請求項2】
粉体とバインダー樹脂と前記バインダー樹脂の溶剤を含む粉体分散塗料を、請求項1に記載のグランドパッキンを装着した混練装置を用いて混練することを特徴とする粉体分散塗料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−158064(P2011−158064A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22157(P2010−22157)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】