説明

グランドパツキンの接触状態測定装置

【目的】 目的とする多重反射回数後のエコーを正確に捉えることができ、グランドパッキンの接触応力測定の信頼性を向上させることができるグランドパッキンの接触状態測定装置を提供することにある。
【構成】 表示装置の波形表示領域のほぼ中央部に目的とする多重反射エコーだけを表示するようにしているので、ゲート設定対象となる多重反射波を間違えることがない。また、エコー受信信号を直接A/D変換してデータ処理することにより対象となる多重反射エコーが簡単に抽出できるので、マニュアル処理でのゲート設定作業が不要になり、より信頼性の高い状態で多重反射波エコーについての測定が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、グランドパッキン接触状態測定装置に関し、詳しくは、超音波の多重反射エコーのレベルを測定してグランドパッキンの接触面での反射率を計測し、この反射率からグランドパッキンの締付状態を測定するような超音波測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】グランドパッキンの接触面での超音波の多重反射エコーのレベルを測定してグランドパッキンの締付状態を測定する、このような技術を出願人は、特願平2−320686号の特許出願に開示している。それは、グランドパッキンを使用したバルブやシリンダと同一のモデルを製作してこのモデルにより歪みゲージで接触圧力を測定し、それぞれの接触圧力に対するグランドパッキンの接触面での超音波の反射率について所定の回数多重反射した後の多重反射エコーのレベルを測定することで得られるものである。そして、次にこのときこのモデルにより得られるグランドパッキンの接触面での多重反射エコーのレベルと接触圧力との関係の測定データ用いて、このモデルに対応する実際に使用されているバルブやシリンダのグランドパッキンに対して現在の多重反射エコーのレベルを測定することにより実際に使用されているバルブやシリンダにおけるグランドパッキンの接触圧力を求めるものである。
【0003】その測定にあたっては、初期条件として与える測定時間軸の長さを、目的とする多重反射エコーまでの伝搬時間より若干、余裕のある時間に設定する。そして、ゲートを目的とする多重反射エコーの位置にかけて目的とする多重反射エコーの最大エコー高さ(ピーク値)とビーム路程(そこまでの時間値)とを受信電圧値と路程カウンタの時間カウント値により得て、それをマイクロプロセッサ(MPU)等で取込んでデータ処理することで接触圧力等の測定データを算出している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この測定に際して設定されるべきゲートの位置は、ディスプレイ上に多数表示された多重反射エコーから選択されることになる。図4は、測定に際してゲート21を設定する場合の多重反射エコーB1〜B9 の表示状態を示すものである。なお、図中、22は、目的とする反射回数に対応した多重反射エコー(B9 )であり、23は送信波Tの波形の一部を示す。このようにグランドパッキンの締付状態を測定する場合には、ある回数反射した後の多重反射エコーを扱うために、図示するように、ディスプレイの画面20には数多く多重反射エコーB1 〜B9が出現して非常に見難い。そこで、目的とする多重反射回数後の多重反射エコーB9 を読み違える危険性が高く、測定条件と実際にゲートにより抽出されるエコーとが相違して測定の信頼性が低下する欠点がある。この発明の目的は、このような問題点を解決するものであって、目的とする多重反射回数後のエコーを正確に捉えることができ、グランドパッキンの接触応力測定の信頼性を向上させることができるグランドパッキンの接触状態測定装置を提供することにある。
【0005】このような目的を達成するためのこの発明のグランドパッキンの接触状態測定装置の特徴は、被検体の音速,肉厚,測定対象となる所定の多重反射回数とに基づき、所定回数反射後の多重反射エコーの発生までの伝搬時間を算出し、この伝搬時間に従って所定回数反射後の多重反射エコーを表示装置の画面上の波形表示領域のほぼ中央部に表示するものである。
【0006】
【作用】このように表示装置の波形表示領域のほぼ中央部に目的とする多重反射波だけを表示するようにすることで、ゲート設定対象となる多重反射エコーを間違えることがない。また、エコー受信信号を直接A/D変換してデータ処理することにより対象となる多重反射エコーが簡単に抽出できるので、マニュアル処理でのゲート設定作業が不要になり、より信頼性の高い状態で多重反射波エコーについての測定が可能になる。
【0007】
【実施例】図1は、この発明のグランドパッキンの接触状態測定装置のブロック図であり、図2は、そのN回目の多重反射波の表示状態の説明図、図3は、その反射率等の測定状態の全体的な処理のフローチャートである。図1において、10は、グランドパッキン接触状態測定装置であって、1は、その探傷器部である。この探傷器部1は、パルサー・レシーバ等から構成され、マイクロプロセッサ(MPU)5からの制御信号に応じて送信端子11からプローブ16にパルス信号を送り、プローブ16からエコー受信信号を受信端子12で受けてそれをそのレシーバで増幅し、アナログ信号としてA/D変換回路2に出力する。なお、後述するようにレシーバのゲイン(増幅率)は、MPU5からの制御信号により増減調整可能である。
【0008】A/D変換回路2は、MPU5からの制御信号に応じて探傷器部1から得られるグランドパッキン17とバルブやシリンダ等の円筒の被検体18の内周面との接触面19からの多重反射エコーBi (被検体18の底面エコーに相当)に対するエコー受信信号(RF信号、あるいはこれを検波したビデオ信号)を、例えば、20MHz程度の高い周波数でサンプリングし、そのデジタル値を波形データメモリ3に順次送出する。
【0009】波形データメモリ3は、表示画面に表示される測定データ数のn倍(nは2以上の整数)以上の所定の測定データ数、例えば、4000点程度を記憶する記憶容量を有していて、A/D変換回路2によりサンプリングされたデジタル値のデータを順次そのアドレスを更新(インクリメント)しながら記憶していく。そして、A/D変換回路2によりサンプリングされたデータ数が所定の最終アドレスまで記憶されるとMPU5にサンプリング終了信号を送出する。これにより波形データメモリ3には画像として表示される測定データ数の2倍以上(例えば、測定データ数を200点とすると前記の4000点は、20倍)の所定のサンプリング数の測定データがデジタル値で各アドレス対応に順次記憶されることになる。このとき各アドレスの測定データは、A/D変換回路2のサンプリング周期を単位とした時間の関数として記憶されている。
【0010】MPU5は、波形データメモリ3からサンプリング終了信号を受けるとA/D変換回路2のサンプリング処理を停止してバス13を介して波形データメモリ3から測定データを採取してAスコープ画像の表示データを生成する。生成した表示データは、RAM6の画像メモリ領域(後述する画像メモリ部61)に記憶され、それが表示装置(CRT)8に転送されて表示装置8により、生成した表示データに応じたAスコープ画像が表示される。
【0011】4は、ゲインダイヤル,カーソルダイヤル,表示位置指定つまみ,シートキー等とを有する操作パネルであって、バス13に接続されている。MPU5は、この回路からバス13を介してダイヤルにより設定される設定値及び各種のキー入力信号を受ける。ゲインダイヤルにより探傷器部1に対するゲイン設定値(調整値)が入力されると、MPU5は、探傷器部1のレシーバ(その高周波増幅器)のゲインを制御し、ゲインダイヤルにより入力されたゲイン設定値に対応するゲインになるようにレシーバのゲインを設定する。
【0012】6は、RAMであって、バス13に接続され、A/D変換されたエコー受信信号についてのデジタルの表示データと外部からロードされた各種のアプリケーション処理プログラムと入力キーにより指定された探傷モードを示すフラグ等の各種の情報や種々のデータが格納される。RAM6には、画像表示データをビット展開して記憶する画像メモリ部61と波形データメモリ3からデータを採取する条件を決める採取条件パラメータ等記憶領域62、そして測定データ等記憶領域63とが設けられている。
【0013】7は、ROMであり、これにはMPU5が実行するAスコープ画像演算処理プログラム71のほか、多重反射波処理プログラム72、正規化ゲイン設定プログラム73、反射率算出プログラム74、公差判定プログラム75、そして各種の基本プログラムが記憶されている。表示装置8は、Aスコープ画像等のほか、各種の測定値を表示し、内部にビデオメモリインタフェースとビデオメモリ、ビデオメモリの情報を読出してビデオ信号を発生するビデオメモリコントローラ等を有していて、ビデオメモリインタフェースを介してバス13に接続されている。
【0014】ここで、Aスコープ画像演算処理プログラム71は、通常は波形データメモリ3から測定データ採取終了を受けたMPU5により起動され、データ採取条件記憶領域62に記憶されている条件に従って波形データメモリ3のアドレスをアクセスして表示データを生成し、それを画像メモリ部61に記憶する処理をする。これにより所定の測定データが表示装置8の画面上に表示される。
【0015】また、採取条件パラメータ等記憶領域62に記憶されている情報は、測定初期条件として操作パネル4から入力されるバルブやシリンダ等の被検体18の内部での音速、被検体18の肉厚、使用する多重反射波の反射回数、その他測定に必要な測定条件を決めるパラメータなどである。そして、さらにここでは、波形データメモリ3の測定データを読出す先頭アドレス及び最終アドレス、そしてこれらの間のアドレスに記憶されている波形データメモリ3の測定データをどのような順序で採取するのか条件、例えば、数アドレスおきに採取するのか、採取したデータからいくつの平均値を採って表示データとするのか、複数の測定データのうちの最高値をもって表示データとするのか、というなパラメータ情報が記憶されている。
【0016】多重反射波処理プログラム72は、多重反射エコー測定の機能キーが入力された時点で起動されてMPU5により実行され、操作パネル4から入力された多重反射波の反射回数と音速、肉厚とを採取条件パラメータ等記憶領域62を参照して得て、まず、目的の多重反射エコーまでの伝搬時間tを算出する。この目的の多重反射エコーまでの伝搬時間tは、入力された反射回数をNとし、音速V、肉厚Tとすると、t=2NT/Vにより算出される。多重反射波処理プログラム72は、目的の多重反射エコーについて、波形データメモリ3における読出し開始点のアドレスを求めるために、その読出し開始時点tsをts=T(2N−1)/Vにより算出する。そして、これに対応する時間位置のアドレスを始点アドレスAs として求める。さらに、その表示データの終点の時点teをte=T(2N+1)/Vにより算出して、これに対応する時間位置のアドレスを終点アドレスAe として求める。そして、ここで求められた始点,終点のアドレスAs ,Ae の値を採取条件パラメータ等記憶領域62に記憶する。なお、この始点,終点のアドレスAs ,Ae の算出により結果としてAスコープ画像演算処理プログラム71により表示される多重反射エコーの測定データ表示の時間軸較正が行われることになる。この後、多重反射波処理プログラム72は、採取条件パラメータ等記憶領域62に記憶されているパラメータに従ってグランドパッキン17によりパッキングされたバルブやシリンダ等の被検体18に対して超音波測定を処理開始し、波形データメモリ3に測定データを記憶させる。その後、Aスコープ画像演算処理プログラム71が次に起動される。
【0017】Aスコープ画像演算処理プログラム71は、MPU5により実行され、波形データメモリ3に記憶された測定データについて表示装置8の表示画面におけるAスコープ像の路程を表示する側(時間軸)の全表示画素数を基準にして採取条件パラメータ等記憶領域62に記憶されたパラメータに従って、まず測定データの採取数を決定する。例えば、路程に対応する表示である表示装置8の横方向の測定データ表示画素数のうち路程表示として割当てられている画素が200画素であるとすれば、波形データメモリ3から表示データとして採取される測定データは200個である。なお、2画素を1測定データに割当てればその半分の100個でよい。そこで、ここでは、波形データメモリ3から採取するデータ数を200個として以下説明する。
【0018】Aスコープ画像演算処理プログラム71は、どのような測定データ200個を波形データメモリ3から採取するかを示すパラメータを演算して生成する。すなわち、Aスコープ画像演算処理プログラム71が採取する200個のデータは、先の始点,終点のアドレスAs ,Ae があるときにはこれにより、これらが記憶されていないときには操作パネル4から入力された表示開始位置と表示終了位置のデータと採取条件とに基づきAスコープ画像演算処理プログラム71の処理により決定される。それは、まず、先の始点,終点のアドレスAs ,Ae があるときにはこれにより、そうでないときには表示開始位置と表示終了位置とのそれぞれに対応する波形データメモリ3のアドレスに基づいて、それらの間にある測定データ数を算出して、それが200以上のときには、その数Mに対してm=M/200により決定される数値mに応じて、例えば、m=3のとき、あるいは、2.5 ≦m<3.5 のときには、3個おきにデータを採取するパラメータを生成する。このようなパラメータを先の始点,終点のアドレスAs ,Ae があるときにはこれらに対応して採取条件パラメータ等記憶領域62に記憶する。また、そうでないときには、先の割出した表示開始位置及び表示終了位置のアドレスとともに採取条件パラメータ等記憶領域62に記憶する。また、採取条件として平均値が指定されているときには、3個ごとの測定データをグループとして扱い、それらの平均値を算出するようなパラメータが設定される。また、最大値を採取するときにはグループのうちの最大値が選択されるパラメータが設定される。一方、表示開始位置と表示終了位置を含めその間にある測定データの総数が200個以下のときには200個になるように補間したデータを生成するパラメータを生成して採取条件パラメータ等記憶領域62に記憶する。
【0019】その結果、多重反射エコー測定の機能キーが入力されているときには、Aスコープ画像演算処理プログラム71は、先の始点,終点のアドレスAs ,Ae に従って測定画像として指定された多重反射エコーの画像が表示画像の表示開始位置から表示終了位置までのデータを画面一杯(波形表示領域があるときにはその領域一杯)に、そのエコー位置が中央になるような200点の表示データを生成する。そのための200個のデータをパラメータに従って表示画面の路程側の画素数に対応して波形データメモリ3から採取して画像メモリ部61に転送する処理をする。このとき表示される画像は、図2R>2の(a)に示すような画像となり、Bn で示すようなエコーが接触面19の多重反射エコーとして得られる。なお、8aは、表示装置8の画面であり、横方向のX軸が時間軸であり、縦方向のY軸がエコーレベル(%)である。
【0020】このような表示を行うことにより目的の多重反射エコーBn のみしか画面上に表示されないためにゲート等を設定する際の対象を誤ることはない。なお、この実施例では、後述する処理から理解できるように、エコー受信信号をそのままA/D変換してデータ処理を行っているので、ゲートを設定しなくても多重反射エコーBn のエコーレベルや路程の測定値を容易に得ることができる。
【0021】正規化ゲイン設定プログラム73は、多重反射エコーBn に対してゲート設定作業をすることなく反射率を得るために、多重反射エコーBn の値を正規化する測定ゲインを自動的に設定する処理プログラムである。このプログラムは、200個のデータが波形データメモリ3から採取されて画像メモリ部61に転送され、先の多重反射エコーBn が表示された後にAスコープ画像演算処理プログラム71により起動される。これが起動され、MPU5により実行されると、多重反射エコーBn のレベルが所定の基準値になるように被検体18に対する測定が繰り返され、図2(a)の点線で表示されるように自動的に探傷器部1のレシーバのゲインが設定がされる。
【0022】これは、最初の測定で測定値として得られた多重反射エコーBnがあらかじめ定められた一定値(例えば、レベル100%)になるように探傷器部1のレシーバのゲインを自動調整するものであって、測定データ等記憶領域63に記録されている基準レベル値(ここではそれが表示装置8の画面上において100%のレベルに対応)に従ってゲインを調整(MPU5の制御により順次レシーバに対する制御値を増減させてゲイン調整)して多重反射エコーBn のエコーレベルを100%のレベルにするゲインにし、これを測定時のレシーバのゲインとして設定する。なお、これは、オペレータの操作によるゲイン設定により調整されてもよい。
【0023】その結果として図2の(a)に示すように、多重反射エコーBnのレベルが正規化ゲイン設定プログラム73の実行あるいはオペレータのゲインコントロール操作に応じて増減して、100%になるような値に探傷器部1のレシーバのゲインが設定される。この後、このプログラムは反射率算出プログラム74を起動する。なお、正規化ゲイン設定プログラム73は、レシーバのゲインを一度設定すると、次に多重反射エコー測定の機能キーが入力されるまではこのプログラムは起動されない。したがって、ここで設定されたゲインは測定が終了するまで変更されない。
【0024】反射率算出プログラム74は、測定の第1回目は正規化ゲイン設定プログラム73により起動され、測定の第2回目以降は先の多重反射エコーBn が表示された後にAスコープ画像演算処理プログラム71により起動される。このプログラムがMPU5により実行されると、MPU5は、測定により得られた多重反射エコーBn のエコーレベルと伝搬時間(路程)とを波形データメモリ3のデータを参照して算出し、それらを測定データ等記憶領域63に記憶し、さらに、正規化した値に対してあらかじめ設けられている算出基準値との比が採られて反射率が算出される。なお、この反射率は、正規化されて測定された多重反射エコーB1からBn (図4R>4B1 〜B9 参照)までの隣接するのエコーの差を採り、さらにそれらの平均値を取ってそれを反射率として測定データ等記憶領域63に記憶してもよい。この後、公差判定プログラム75がこのプログラムにより起動される。
【0025】公差判定プログラム75は、MPU5により実行され、MPU5は、これにより先の反射率算出プログラム74の処理で測定データ等記憶領域63に記憶された今回の測定で得られた多重反射エコーBn のピーク値および路程のいずれかが基準として記憶されているピーク値および路程に対して一定値以上の差があるか否かを判定し、一定以上の差があるときにエラーとして、このエラーを測定データ等記憶領域63に記憶されているそのデータに対応してフラグとして記録し、警報器を駆動する処理をする。
【0026】次に、全体的な動作について図3に従って説明すると、まず、ステップ101において、装置を探傷モードに設定するための初期設定を行うイニシャル処理をする。ステップ102において、被検体18での音速V,肉厚T,そして多重反射回数N、公差の基準値、測定間隔、測定時間、測定回数等を操作パネル4から入力する。
【0027】次のステップ103において、キー入力待ちループに入り、ここで、多重反射エコー測定の機能キーが操作パネル4から入力されると、ステップ104で多重反射エコー測定のモードに設定されて、多重反射波処理プログラム72がMPU5により実行されて測定データ表示の時間軸の較正が行われる。これにより表示装置8に表示される多重反射エコーの時間軸が図2の(b)に示すようにT2N/Vを中心としてT(2N−1)/VからT(2N−1)/Vまでとなる。その結果、図示するようにN回目の多重反射エコーBn みが表示される。次のステップ105,ステップ106では、正規化ゲイン設定プログラム73が起動され、測定が繰り返されてオートゲイン調整がなされ、探傷器部1のレシーバのゲインが設定されて多重反射エコーBn のレベルが100%になるような測定条件(ゲイン)に正規化される。
【0028】次のステップ107で反射率算出プログラム74が起動されて、そのときの多重反射エコーBn のエコー高さとビーム路程と反射率とがメモリ6の測定データ等記憶領域63に記憶される。そして、ステップ108では公差判定プログラム75が起動されて多重反射エコーBn のエコーレベルと路程とがともに公差の範囲内にあるか否かの判定が行われ、その範囲内であれば、ステップ109で測定終了か否かの判定が入力された測定回数Mと比較することでなされ、測定が終了していなければ、ステップ110で測定回数Mを更新して次の測定処理に移り、ステップ107へと戻り、測定回数M回分の測定が終了した後にステップ111でその結果の出力を行う。一方、ステップ108の判定で公差範囲内になければ、ステップ112で警報器が駆動されてステップ109へと移行する。なお、この場合に公差範囲内にない測定値については測定データ等記憶領域63に記憶されたフラグに応じてステップ111においてマークが付けられてデータが出力される。
【0029】以上説明してきたが、実施例では、表示装置の画面の中央に多重反射波のエコーBnを表示しているが、これは、1つ表示するだけであるので、ほぼ中央に表示されればよく、表示する位置は、波形表示領域として画面上に割り当てがある場合には、そのほぼ中央であればよい。実施例では、エコー受信信号をA/D変換して波形データメモリに記憶したデータに従って各測定値を得ているが、これは、エコー受信信号の各ピーク値と路程とをピーク検出回路とカウンタとにより検出してもよく、この後にそれぞれのデータをA/D変換してMPUで処理し、メモリに記憶しておき、これらのデータに基づいて多重反射エコーのピーク値や路程等の測定値を得るようにしてもよい。
【0030】実施例では、波形データメモリは、A/D変換回路とMPUとの間に挿入しているが、MPUの処理速度が高速であれば、A/D変換回路のデータをMPUで一旦受けて、波形データメモリに転送して測定データを採取するようにすることもできる。また、実施例では、路程に対応する側の1画素を1測定データ分の時間に対応させて表示させているが、n画素を1測定データに対応させて表示してもよいことはもちろんである。
【0031】
【発明の効果】以上の説明から理解できるように、この発明にあっては、表示装置の波形表示領域のほぼ中央部に目的とする多重反射エコーだけを表示するようにしているので、ゲート設定対象となる多重反射波を間違えることがない。また、エコー受信信号を直接A/D変換してデータ処理することにより対象となる多重反射エコーが簡単に抽出できるので、マニュアル処理でのゲート設定作業が不要になり、より信頼性の高い状態で多重反射波エコーについての測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、この発明のグランドパッキンの接触状態測定装置のブロック図である。
【図2】 図2は、そのN回目の多重反射波の表示状態の説明図である。
【図3】 図3は、その反射率等の測定状態の全体的な処理のフローチャートである。
【図4】 図4は、先行技術における測定に際してゲートを設定する場合の多重反射エコーの表示状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1…超音波探傷器部、2…A/D変換回路、3…波形データメモリ、4…操作パネル、5…マイクロプロセッサ(MPU)、6…RAM、10…グランドパッキン接触状態測定装置、61…画像メモリ部、62…採取条件パラメータ等記憶領域、63…測定データ等記憶領域、71…Aスコープ画像演算処理プログラム、72…多重反射波の表示処理プログラム、73…正規化ゲイン設定プログラム、74…反射率算出プログラム、75…公差判定プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 グランドパッキンを有する被検体に対して前記グランドパッキンとの接触面からの超音波の多重反射波のうち所定回数反射後の多重反射エコーのピーク値と路程とを得てグランドパッキンの接触状態を測定する超音波測定装置において、前記被検体の音速,肉厚,前記所定回数とに基づき、前記所定回数反射後の多重反射エコーの発生までの伝搬時間を算出し、この伝搬時間に従って前記所定回数反射後の多重反射エコーを表示装置の画面上の波形表示領域のほぼ中央部に表示することを特徴とするグランドパッキンの接触状態測定装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−113378
【公開日】平成5年(1993)5月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−301091
【出願日】平成3年(1991)10月21日
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000102245)ウツエバルブ株式会社 (2)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)