説明

グランド型ピアノの大屋根支持装置

【課題】開放された大屋根に大屋根突揚げ棒を確実にロックすることができるとともに、そのロックおよび解除を簡単に行うことができるグランド型ピアノの大屋根支持装置を提供する。
【解決手段】基端部が側板7に回動自在に取り付けられ、開放された大屋根3を先端部11aで支持するための大屋根突揚げ棒11と、大屋根3の下面に固定され、大屋根3が大屋根突揚げ棒11に支持されるときに大屋根突揚げ棒11の先端部11aが係合する突揚げ棒受け具21と、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを突揚げ棒受け具21にロックするロック手段10と、を備えており、ロック手段10は、大屋根突揚げ棒11に出没自在に設けられ、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが突揚げ棒受け具21に係合したときに突出することにより、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを突揚げ棒受け具21に抜け止め状態にロックするロック爪12を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グランドピアノやグランド型の電子ピアノなどに適用され、ピアノ本体の上面に回動自在に取り付けられた大屋根を開放状態で支持するためのグランド型ピアノの大屋根支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の一般的な大屋根支持装置を備えたグランドピアノを示している。このグランドピアノ1は、前部に鍵盤2aを有するとともにフレームや響板、弦などを内蔵するピアノ本体2と、このピアノ本体2の最上部に設けられた大屋根3とを備えている。大屋根3は、一般にラワン合板などからなり、大屋根後4および大屋根前5で構成されている。大屋根後4は、低音側(左側)の奥行きが高音側(右側)のそれよりも長い所定形状に形成され、左端部において、前後2つの屋根角蝶番6、6を介して、ピアノ本体2の側面を構成する側板7の左部に回動自在に取り付けられている。また、大屋根後4の下面の所定位置には、大屋根3が開放された際に、後述する大屋根突揚げ棒11の先端部が当接した状態でこれを受ける突揚げ棒受け皿4aが固定されている。一方、大屋根前5は、平面形状が横長矩形状に形成されており、大屋根後4の前端部に、大屋根蝶番8を介して回動自在に取り付けられ、大屋根後4に対して折り畳み可能になっている。
【0003】
このように構成された大屋根3は、グランドピアノ1の非演奏時や保管時には、ピアノ本体2の内部機構を保護するために、図7(a)に示すように、水平な状態で閉鎖される。一方、演奏時には、演奏音を前方の演奏者側に直接、伝えるようにしたり、演奏音を大屋根後4の下面で反射させたりすることなどによって、より豊かな音量や響きを得るために、同図(b)に示すように、大屋根3が、大屋根突揚げ棒11で支持されることによって、右上がりに傾斜した状態で開放される。この大屋根突揚げ棒11は、所定の長さを有しており、基端部において、ピアノ本体2の側板7の右部に回動自在に取り付けられ、先端部が大屋根後4の突揚げ棒受け皿4aに当接した状態で、大屋根3を支持するようになっている。
【0004】
上記の突揚げ棒受け皿4aは、比較的浅く形成されているため、例えば地震が発生したり、ピアノの側を通った人が大屋根突揚げ棒11に誤ってつかえたりすると、大屋根突揚げ棒11が突揚げ棒受け皿4aからはずれることがあり、その場合には、開放されている大屋根3が閉鎖側に倒れてしまうおそれがある。このような事態を回避するため、開放された大屋根と、これを支持する大屋根突揚げ棒とを固定する大屋根支持装置として、特許文献1に開示されたものが知られている。
【0005】
この大屋根支持装置では、大孔部および小孔部が互いに連なるだるま穴状の凹部(以下それぞれ、「大孔凹部」および「小孔凹部」という)を有する受け部材が、上記の突揚げ棒受け皿4aの代わりに大屋根の下面に固定される一方、大屋根突揚げ棒の先端部に、大孔部の径よりも小さくかつ小孔部の径よりも大きい径を有する挿入部(以下「先端挿入部」という)が設けられている。この大屋根突揚げ棒で大屋根を支持する場合、まず、大屋根突揚げ棒の先端挿入部を、受け部材の大孔凹部に挿入する。そして、大屋根突揚げ棒を、その先端挿入部が小孔凹部側に移動するように押圧することにより、大屋根突揚げ棒の先端挿入部を小孔凹部に係合させる。この状態では、大屋根突揚げ棒は、その長さ方向において、受け部材に対して抜け止め状態にロックされる。これにより、上記の大屋根支持装置では、開放されている大屋根が閉鎖側に倒れるのを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−216928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の大屋根支持装置では、大屋根突揚げ棒の先端挿入部を、受け部材の大孔凹部に挿入しただけでも、大屋根を開放した状態に保持することが可能である。このため、例えば、大屋根突揚げ棒の先端挿入部を受け部材の小孔凹部に移動させることによるロックをし忘れた場合には、大屋根突揚げ棒の先端挿入部が、受け部材の大孔凹部に挿入されただけの状態になる。この状態では、前述したように、地震が発生した場合などに、大屋根突揚げ棒の先端挿入部が受け部材の大孔凹部から抜けることがあり、その場合には、開放された大屋根が閉鎖側に倒れるおそれがある。
【0008】
また、この大屋根支持装置では、大屋根を開放した状態に保持する場合、大屋根突揚げ棒の先端挿入部を、受け部材の小孔凹部によってロックするために、大屋根突揚げ棒の先端挿入部を、受け部材の大孔凹部に挿入した後、大屋根突揚げ棒を受け部材の小孔凹部側に押圧しなければならない。逆に、開放されている大屋根を閉鎖する場合、大屋根突揚げ棒のロックを解除するために、その先端挿入部を、受け部材の大孔凹部側に一旦、移動させてから、受け部材の大孔凹部から引き抜かなければならない。このように、上記の大屋根支持装置では、大屋根の開放および閉鎖操作を行う際の大屋根突揚げ棒のロックおよびその解除の操作が煩雑である。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、開放された大屋根に大屋根突揚げ棒を確実にロックすることができるとともに、そのロックおよび解除を簡単に行うことができるグランド型ピアノの大屋根支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ピアノ本体の側板の左部および右部の一方に回動自在に取り付けられた大屋根を、開放状態で支持するためのグランド型ピアノの大屋根支持装置であって、基端部が側板の左部および右部の他方に回動自在に取り付けられ、開放された大屋根を先端部で支持するための大屋根突揚げ棒と、大屋根の下面の所定位置に固定され、大屋根が大屋根突揚げ棒に支持されるときに大屋根突揚げ棒の先端部が係合する突揚げ棒受け具と、大屋根突揚げ棒の先端部を突揚げ棒受け具にロックするロック手段と、を備えており、ロック手段は、大屋根突揚げ棒および突揚げ棒受け具の一方に出没自在に設けられ、大屋根突揚げ棒の先端部が突揚げ棒受け具に係合したときに突出することにより、大屋根突揚げ棒の先端部を突揚げ棒受け具に抜け止め状態にロックするロック爪を有していることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、大屋根がピアノ本体の側板の左部および右部の一方に回動自在に取り付けられる一方、大屋根突揚げ棒の基端部が側板の左部および右部の他方に回動自在に取り付けられている。また、大屋根を開放状態で支持する場合、大屋根の下面の所定位置に固定された突揚げ棒受け具に大屋根突揚げ棒の先端部を係合させ、その先端部を、ロック手段により、突揚げ棒受け具にロックする。このロック手段は、大屋根突揚げ棒および突揚げ棒受け具の一方に出没自在に設けられたロック爪を有しており、大屋根突揚げ棒の先端部が突揚げ棒受け具に係合したときにロック爪が突出し、それにより、大屋根突揚げ棒の先端部を突揚げ棒受け具に抜け止め状態にロックする。このように、大屋根突揚げ棒の先端部を突揚げ棒受け具に係合させるだけで、突出したロック爪により、開放された大屋根に大屋根突揚げ棒を確実にかつ簡単にロックすることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のグランド型ピアノの大屋根支持装置において、ロック手段は、手動で操作されるロック解除操作部と、このロック解除操作部が操作されることにより、ロック爪を没入させることによってロック爪によるロックを解除するロック解除機構と、をさらに有していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ロック解除操作部を手動で操作することにより、ロック解除機構によってロック爪が没入され、それにより、ロック爪によるロックを簡単に解除することができる。したがって、大屋根突揚げ棒で開放状態に支持された大屋根を閉鎖する場合、ロック解除操作部を操作するだけで、ロック爪によるロックが解除され、その状態のまま、大屋根突揚げ棒の先端部を大屋根の突揚げ棒受け具から簡単に取り外すことができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のグランド型ピアノの大屋根支持装置において、ロック爪は、大屋根突揚げ棒の先端部に、その側面に対して出没自在に設けられており、突揚げ棒受け具は、大屋根突揚げ棒の先端部を挿入するための第1挿入凹部を有し、この第1挿入凹部は、大屋根側に設けられ、ロック爪が突出した状態の大屋根突揚げ棒の先端部を収容可能な大屋根側凹部と、この大屋根側凹部の大屋根と反対側に連なるように設けられ、ロック爪が没入した状態の大屋根突揚げ棒の先端部の挿脱を許容するとともに、ロック爪が突出した状態で大屋根側凹部に収容された大屋根突揚げ棒の先端部の取り外しを阻止するように構成された開口部と、を有しており、ロック爪は、大屋根突揚げ棒の先端部が、第1挿入凹部に挿入されるときに、開口部の縁部に当接し、その反力により、没入側に押圧されるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ロック爪が大屋根突揚げ棒の先端部の側面に出没自在に設けられ、突揚げ棒受け具の第1挿入凹部には、上記の大屋根側凹部および開口部が設けられている。大屋根突揚げ棒の先端部を突揚げ棒受け具の第1挿入凹部に挿入する場合、ロック爪が第1挿入凹部の開口部の縁部に当接し、その反力により、没入側に押圧される。そして、大屋根突揚げ棒の先端部は、開口部を通過し、ロック爪が突出した状態で、大屋根側凹部に収容される。これにより、大屋根突揚げ棒の先端部は、突出したロック爪によって、第1挿入凹部からの取り外しが阻止され、突揚げ棒受け具にロックされる。このように、大屋根突揚げ棒の先端部を第1挿入凹部に挿入するだけで、突揚げ棒受け具に簡単にロックすることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項2に記載のグランド型ピアノの大屋根支持装置において、突揚げ棒受け具は、大屋根突揚げ棒の先端部を挿入するための第2挿入凹部を有し、この第2挿入凹部は、挿入口と、この挿入口から大屋根の下面に沿って延びるとともに、挿入口と反対側の端部である突揚げ棒保持部において突揚げ棒の先端部を保持するための係合溝と、を有しており、ロック爪は、突揚げ棒受け具に、係合溝の側面に対して出没自在に設けられ、大屋根突揚げ棒の先端部が、挿入口から係合溝の突揚げ棒保持部へ移動するときに、先端部で押圧されることによって没入することにより、先端部の通過を許容するとともに、突出した状態にあるときに、突揚げ棒保持部に保持されている先端部の挿入口への移動を阻止するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、突揚げ棒受け具の第2挿入凹部が、上記の挿入口および係合溝を有しており、その係合溝の側面にロック爪が出没自在に設けられている。大屋根突揚げ棒を突揚げ棒受け具の第2挿入凹部に挿入する場合、挿入口を介して係合溝に挿入し、その係合溝の挿入口と反対側の端部である突揚げ棒保持部に移動させる。この場合、ロック爪は、大屋根突揚げ棒の先端部で押圧されることによって没入し、その先端部の突揚げ棒保持部への通過を許容する。一方、大屋根突揚げ棒の先端部が、係合溝の突揚げ棒保持部に保持されている場合、その先端部は、突出した状態にあるロック爪により、挿入口への移動が阻止される。つまり、大屋根突揚げ棒の先端部は、係合溝の突揚げ棒保持部に保持された状態で、突揚げ棒受け具にロックされる。以上のように、大屋根突揚げ棒の先端部を第2挿入凹部に挿入するだけで、突揚げ棒受け具に簡単にロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態による大屋根支持装置を適用したグランドピアノを示す斜視図であり、(a)は全体図、(b)は大屋根突揚げ棒の先端部と突揚げ棒受け具を示す拡大図である。
【図2】第1実施形態のロック装置を説明するための図であり、(a)はロック状態、(b)はロック解除状態を示す。
【図3】大屋根突揚げ棒の先端部を突揚げ棒受け具に挿入する手順を示す説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態による大屋根支持装置を適用したグランドピアノを示す斜視図であり、(a)は全体図、(b)は大屋根突揚げ棒の先端部と突揚げ棒受け具を示す拡大図である。
【図5】第2実施形態のロック装置を説明するための図であり、(a)はロック状態、(b)はロック解除状態を示す。
【図6】大屋根突揚げ棒の先端部を突揚げ棒受け具に挿入する手順を示す説明図である。
【図7】従来の一般的な大屋根支持装置を備えたグランドピアノを示す斜視図であり、(a)は大屋根を閉鎖した状態、(b)は大屋根を開放した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態による大屋根支持装置を適用したグランドピアノを示している。なお、以下の説明では、前述した図7に示す従来の一般的なグランドピアノと同じ構成部分については、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0020】
図1に示すように、このグランドピアノ1は、一般的なグランドピアノと同様、ピアノ本体2の前部に鍵盤2aを備えるとともに、その後方上部に、ピアノ本体2の上面を開閉する大屋根3を備えている。この大屋根3は、大屋根後4および大屋根前5で構成されており、大屋根後4が、ピアノ本体2の側板7の左部に、前後2つの屋根角蝶番6、6を介して、回動自在に取り付けられている。また、大屋根後4の下面の所定位置には、大屋根3を開放した状態で支持する際に、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが係合する突揚げ棒受け具21が固定されている。一方、大屋根突揚げ棒11は、所定の長さを有しており、基端部がピアノ本体2の側板7の右部に回動自在に取り付けられている。また、大屋根突揚げ棒11の先端部11aには、この先端部11aを突揚げ棒受け具21に抜け止め状態にロックするための2つのロック爪12、12が設けられている。
【0021】
図2は、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを突揚げ棒受け具21にロックするロック装置10(ロック手段)を模式的に示している。同図に示すように、大屋根突揚げ棒11の先端部11aには、前述したように、2つのロック爪12、12が設けられている。両ロック爪12、12は、大屋根突揚げ棒11の先端部11aに左右対称に配置され、その先端部11aの側面に対し出没自在に構成されている。
【0022】
具体的には、各ロック爪12は、平面形状が台形状に形成され、前端部の支点13を中心として、大屋根突揚げ棒11の先端部11aの側面から外方に突出する突出位置(図2(a)に示す位置)と、先端部11aに没入する没入位置(図2(b)に示す位置)との間で、回動自在に構成されている。また、ロック爪12は、大屋根突揚げ棒11の基端部側に向かって、先端部11aの側面から離れるように傾斜する傾斜面12aと、この傾斜面12aに連なり、先端部11aの側面とほぼ直交する係止面12bとを有している。
【0023】
また、大屋根突揚げ棒11には、両ロック爪12、12によるロックを解除する際に手動で操作される2つのロック解除ボタン14、14(ロック解除操作部)と、これらと両ロック爪12、12を連結するリンク機構15(ロック解除機構)が設けられている。両ロック解除ボタン14、14は、図1(a)に示すように、大屋根突揚げ棒11の長さ方向のほぼ中央に左右対称に配置されている。リンク機構15は、互いに交差し、支点15aを介して回動自在に支持された2つのリンクバー15b、15bを有しており、各リンクバー15bが、互いに対角線上に位置するロック爪12とロック解除ボタン14とを連結している。また、リンク機構15の両リンクバー15b、15b間には、支点15aよりもロック解除ボタン14側の所定位置に、圧縮ばねから成るばね16が取り付けられている。このばね16の付勢力により、両リンクバー15、15が互いに開く方向に付勢されており、それにより、両ロック解除ボタン14、14が外方に突出するように付勢されるとともに、両ロック爪12、12が突出位置側に回動するように付勢されている。
【0024】
一方、突揚げ棒受け具21は、自身を大屋根3(大屋根後4)の下面に取り付けるための取付け部22と、この取付け部22から突出し、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが挿入される断面円形の挿入凹部23(第1挿入凹部)とを有している。挿入凹部23は、大屋根3側に設けられ、所定の深さおよび径を有する大屋根側凹部24と、これに連なるとともに、大屋根側凹部24の径よりも小さい径を有する開口部25とで構成されている。大屋根側凹部24は、両ロック爪12、12が突出位置に位置した状態で、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、両ロック爪12、12を含めて収容可能なサイズに形成されている。一方、開口部25は、両ロック爪12、12が没入位置に位置した状態で、大屋根突揚げ棒11の先端部11aの挿脱を許容するサイズに形成されている。加えて、開口部25は、両ロック爪12、12が突出位置に位置した状態で、大屋根側凹部24に収容された大屋根突揚げ棒11の先端部11aの取り外しを阻止するサイズに形成されている。
【0025】
図3は、大屋根3を大屋根突揚げ棒11で開放状態に支持する場合において、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを突揚げ棒受け具21の挿入凹部23に挿入する手順を示している。同図(a)に示すように、大屋根3を支持する前の大屋根突揚げ棒11の先端部11aでは、両ロック爪12、12がいずれも突出位置に位置している。この状態から、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、突揚げ棒受け具21の挿入凹部23に挿入する。この場合、同図(b)に示すように、両ロック爪12、12は、それぞれの傾斜面12aが挿入凹部23の開口部25の縁部に当接し、その反力によって、ばね16の付勢力に抗して、没入位置側に回動する。そして、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを挿入凹部23の奥側にさらに挿入することにより、同図(c)に示すように、両ロック爪12、12が、大屋根側凹部24に到達し、ばね16の付勢力によって、突出位置側に回動する。
【0026】
このように、突出位置に位置する両ロック爪12、12が、挿入凹部23の大屋根側凹部24に収容された状態により、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが突揚げ棒受け具21に抜け止め状態にロックされる。つまり、この状態において、大屋根3および/または大屋根突揚げ棒11に対し、大屋根突揚げ棒11を突揚げ棒受け具21から引き抜く方向に力が作用しても、両ロック爪12、12の係止面12b、12bが、挿入凹部23の大屋根側凹部24と開口部25との境界部分の壁面に当接するので、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが挿入凹部23から抜けるのを、確実に阻止することができる。
【0027】
また、ロックされた大屋根突揚げ棒11の先端部11aを突揚げ棒受け具21から取り外す場合には、まず、図2(b)に示すように、両ロック解除ボタン14を、白抜き矢印で示すように押すことにより、両ロック爪12、12を没入位置側に回動させる。そして、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、突揚げ棒受け具21の挿入凹部23から引き抜く。このように、大屋根3を支持する大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、突揚げ棒受け具21から簡単に取り外すことができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、突揚げ棒受け具21の挿入凹部23に挿入するだけで、両ロック爪12、12により、突揚げ棒受け具21に確実にかつ簡単にロックすることができる。これにより、地震が発生した場合などでも、大屋根突揚げ棒11が突揚げ棒受け具21から抜けるのを確実に防止でき、それにより、開放されている大屋根3が閉鎖側に倒れるという事態を確実に回避することができる。また、開放されている大屋根3を閉鎖する場合、ロック解除ボタン14、14を押すだけで、両ロック爪12、12によるロックが解除されるので、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、大屋根3の突揚げ棒受け具21から簡単に取り外すことができる。以上のように、大屋根3の開放および閉鎖操作を行う際の大屋根突揚げ棒11のロックおよびその解除の操作を簡単に行うことができる。
【0029】
図4は、本発明の第2実施形態による大屋根支持装置を適用したグランドピアノを示している。本実施形態では、大屋根突揚げ棒11は、第1実施形態と異なり、一般的な大屋根突揚げ棒と同様のものであり、一方、大屋根3(大屋根後4)の下面に固定された突揚げ棒受け具31に、大屋根突揚げ棒11の先端部11aをロックするための2つのロック爪32、32が設けられている。
【0030】
図5は、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを突揚げ棒受け具31にロックするロック装置30(ロック手段)を模式的に示している。同図に示すように、突揚げ棒受け具31は、平面形状がU字状に形成され、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが挿入される挿入凹部33(第2挿入凹部)を有している。この挿入凹部33は、大屋根3の右方に開放する挿入口34と、この挿入口34から大屋根3の下面に沿って所定長さ延び、平面形状がU字状の係合溝35とを有している。挿入口34および係合溝35は、大屋根突揚げ棒11の先端部の直径よりも若干大きい幅を有しており、係合溝35の挿入口34と反対側の端部である突揚げ棒保持部35aに、突揚げ棒11の先端部11aが保持される。
【0031】
また、突揚げ棒受け具31には、前記2つのロック爪32、32が、係合溝35を間にして、互いに左右対称に配置されている。各ロック爪32は、平面形状が台形状に形成され、挿入口34寄りの支点36を中心として、係合溝35の側面から内方に突出する突出位置(図5(a)に示す位置)と、突揚げ棒受け具31に没入する没入位置(図5(b)に示す位置)との間で、回動自在に構成されている。また、ロック爪32は、傾斜面32aと、この傾斜面32aに連なり、係合溝35の側面とほぼ直交する係止面32bとを有している。
【0032】
さらに、突揚げ棒受け具31には、両ロック爪32、32によるロックを解除する際に手動で操作される2つのロック解除ピン37、37(ロック解除操作部、ロック解除機構)が設けられている。各ロック解除ピン37は、係合溝35の長さ方向に沿って延び、突揚げ棒受け具31の内部の端部が、対応するロック爪32の傾斜面32aに当接している。また、各ロック解除ピン37の所定位置には、互いに長さ方向に所定間隔を隔てた内側ストッパ37aおよび外側ストッパ37bが設けられている。つまり、各ロック解除ピン37は、両ストッパ37aおよび37b間の長さ分、長さ方向に移動自在に構成されている。
【0033】
また、突揚げ棒受け具31には、両ロック爪32、32を突出位置側に回動するように付勢する2つのばね38、38が設けられている。
【0034】
図6は、大屋根3を大屋根突揚げ棒11で開放状態に支持する場合において、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを突揚げ棒受け具31の挿入凹部33に挿入する手順を示している。同図(a)に示すように、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを挿入凹部33に挿入する前の突揚げ棒受け具31では、両ロック爪32、32がいずれも突出位置に位置している。この状態から、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、突揚げ棒受け具31の挿入凹部33に挿入する。具体的には、先端部11aを、挿入凹部33の挿入口34を介して、挿入凹部33の係合溝35に挿入する。この場合、同図(b)に示すように、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが、両ロック爪32、32の傾斜面32a、32aに当接し、それにより、両ロック爪32、32は、ばね38、38の付勢力に抗して押し広げられながら、各ロック爪32が没入位置側に回動する。そして、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、係合溝35の端部側にさらに挿入することにより、同図(c)に示すように、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが係合溝35の突揚げ棒保持部35aに到達するとともに、両ロック爪32、32が、ばね38、38の付勢力によって、元の突出位置に復帰回動する。
【0035】
このように、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが、突揚げ棒受け具31の挿入凹部33の突揚げ棒保持部35aに位置するとともに、その先端部11aの挿入口34側に、突出位置に位置する両ロック爪32、32が位置することにより、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが突揚げ棒受け具31に抜け止め状態にロックされる。つまり、この状態において、大屋根3および/または大屋根突揚げ棒11に対し、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを挿入凹部33の挿入口34側に移動させる方向に力が作用しても、先端部11aが、両ロック爪32、32の係止面32b、32bに当接し、挿入口34側への移動が阻止される。これにより、大屋根突揚げ棒11の先端部11aが、挿入口34を介して挿入凹部33から抜けるのを、確実に阻止することができる。
【0036】
また、ロックされた大屋根突揚げ棒11の先端部11aを突揚げ棒受け具31から取り外す場合には、図5(b)に示すように、両ロック解除ピン37、37の外側の端部(ロック解除操作部)を、白抜き矢印で示すように押すことにより、両ロック爪32、32を没入位置側に回動させる。そして、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、挿入口34側に移動させながら、挿入凹部33から引き抜く。このように、大屋根3を支持する大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、突揚げ棒受け具31から簡単に取り外すことができる。
【0037】
なお、ピアノ本体2の側板7に対する、大屋根3および大屋根突揚げ棒11の取付関係により、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを突揚げ棒受け具31の挿入凹部33から引き抜くためには、先端部11aを挿入凹部33の挿入口34側に若干、移動することが必要である。このため、突揚げ棒保持部35aに位置する大屋根突揚げ棒11の先端部11aは、突揚げ棒受け具31の突揚げ棒保持部35aから直接、引き抜かれることがなく、両ロック爪32、32によって、確実にロックされる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、突揚げ棒受け具31の挿入凹部33に挿入するだけで、両ロック爪32、32により、突揚げ棒受け具31に確実にかつ簡単にロックすることができる。これにより、前述した第1実施形態と同様、大屋根突揚げ棒11が突揚げ棒受け具31から抜けるのを確実に防止でき、それにより、開放されている大屋根3が閉鎖側に倒れるという事態を確実に回避することができる。また、開放されている大屋根3を閉鎖する場合、ロック解除ピン37、37を押すだけで、両ロック爪32、32によるロックが解除されるので、大屋根突揚げ棒11の先端部11aを、大屋根3の突揚げ棒受け具31から簡単に取り外すことができる。以上のように、本実施形態でも、第1実施形態と同様、大屋根3の開放および閉鎖操作を行う際の大屋根突揚げ棒11のロックおよびその解除の操作を簡単に行うことができる。
【0039】
なお、本発明は、説明した上記の各実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。各実施形態では、本発明の大屋根支持装置を適用したグランドピアノを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、開閉可能な大屋根を有する種々のピアノ、例えばグランド型の電子ピアノなどにも、もちろん適用可能である。また、各実施形態のロック装置10、30では、ロック爪12、32を左右対称に2つずつ設けたが、1つまたは3つ以上のロック爪によって、大屋根突揚げ棒11の先端部11aをロックするようにしてもよい。また、各実施形態では、大屋根突揚げ棒11を1本のみ例示したが、例えば、互いに長さの異なる複数の大屋根突揚げ棒を備えたピアノにおいて、各大屋根突揚げ棒に対応するように、ロック装置10、30を設けてもよい。
【0040】
さらに、各実施形態では、ロック爪12、32はいずれも、手動でロックが解除されるように構成したが、例えばモータやソレノイドなどの電気器具を用いて、ロック爪12、32を出没するように構成することも可能である。また、例えば、大屋根突揚げ棒11の先端部11aにおいて、その先端部11aが大屋根3によって押されたときに、ロック爪が突出し、再度押されたときにロック爪が没入するような適当な構成を用いて、ロック爪を出没させるようにすることも可能である。
【0041】
また、各実施形態で示したロック装置10、30の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 グランドピアノ
2 ピアノ本体
3 大屋根
7 側板
10 ロック装置(ロック手段)
11 大屋根突揚げ棒
11a 大屋根突揚げ棒の先端部
12 ロック爪
14 ロック解除ボタン(ロック解除操作部)
15 リンク機構(ロック解除機構)
21 突揚げ棒受け具
23 挿入凹部(第1挿入凹部)
24 大屋根側凹部
25 開口部
30 ロック装置(ロック手段)
31 突揚げ棒受け具
32 ロック爪
33 挿入凹部(第2挿入凹部)
34 挿入口
35 係合溝
35a 突揚げ棒保持部
37 ロック解除ピン(ロック解除操作部、ロック解除機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピアノ本体の側板の左部および右部の一方に回動自在に取り付けられた大屋根を、開放状態で支持するためのグランド型ピアノの大屋根支持装置であって、
基端部が前記側板の左部および右部の他方に回動自在に取り付けられ、開放された前記大屋根を先端部で支持するための大屋根突揚げ棒と、
前記大屋根の下面の所定位置に固定され、当該大屋根が前記大屋根突揚げ棒に支持されるときに当該大屋根突揚げ棒の先端部が係合する突揚げ棒受け具と、
前記大屋根突揚げ棒の先端部を前記突揚げ棒受け具にロックするロック手段と、
を備えており、
前記ロック手段は、前記大屋根突揚げ棒および前記突揚げ棒受け具の一方に出没自在に設けられ、前記大屋根突揚げ棒の先端部が前記突揚げ棒受け具に係合したときに突出することにより、前記大屋根突揚げ棒の先端部を前記突揚げ棒受け具に抜け止め状態にロックするロック爪を有していることを特徴とするグランド型ピアノの大屋根支持装置。
【請求項2】
前記ロック手段は、
手動で操作されるロック解除操作部と、
このロック解除操作部が操作されることにより、前記ロック爪を没入させることによって当該ロック爪によるロックを解除するロック解除機構と、
をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載のグランド型ピアノの大屋根支持装置。
【請求項3】
前記ロック爪は、前記大屋根突揚げ棒の先端部に、その側面に対して出没自在に設けられており、
前記突揚げ棒受け具は、前記大屋根突揚げ棒の先端部を挿入するための第1挿入凹部を有し、
この第1挿入凹部は、
前記大屋根側に設けられ、前記ロック爪が突出した状態の前記大屋根突揚げ棒の先端部を収容可能な大屋根側凹部と、
この大屋根側凹部の前記大屋根と反対側に連なるように設けられ、前記ロック爪が没入した状態の前記大屋根突揚げ棒の先端部の挿脱を許容するとともに、前記ロック爪が突出した状態で前記大屋根側凹部に収容された前記大屋根突揚げ棒の先端部の取り外しを阻止するように構成された開口部と、
を有しており、
前記ロック爪は、前記大屋根突揚げ棒の先端部が、前記第1挿入凹部に挿入されるときに、前記開口部の縁部に当接し、その反力により、没入側に押圧されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のグランド型ピアノの大屋根支持装置。
【請求項4】
前記突揚げ棒受け具は、前記大屋根突揚げ棒の先端部を挿入するための第2挿入凹部を有し、
この第2挿入凹部は、
挿入口と、
この挿入口から前記大屋根の下面に沿って延びるとともに、前記挿入口と反対側の端部である突揚げ棒保持部において前記突揚げ棒の先端部を保持するための係合溝と、
を有しており、
前記ロック爪は、前記突揚げ棒受け具に、前記係合溝の側面に対して出没自在に設けられ、前記大屋根突揚げ棒の先端部が、前記挿入口から前記係合溝の前記突揚げ棒保持部へ移動するときに、前記先端部で押圧されることによって没入することにより、前記先端部の通過を許容するとともに、突出した状態にあるときに、前記突揚げ棒保持部に保持されている前記先端部の前記挿入口への移動を阻止するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のグランド型ピアノの大屋根支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−208278(P2012−208278A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73238(P2011−73238)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)