説明

グリオーマの腫瘍形成に関わる遺伝子

【課題】腫瘍、とりわけグリオーマ、特に多形神経膠芽腫(GBM)または退形成性オリゴデンドログリオーマにおける腫瘍形成を調節する遺伝子およびその産物を見出し、腫瘍、とりわけグリオーマ関連疾病の治療または予防に有用な組成物およびその方法の提供。
【解決手段】sox11遺伝子またはその産物を含む、グリオーマ関連疾病を治療または予防または予防するための医薬組成物、sox11遺伝子が導入された、あるいはsox11遺伝子の産物の作用を促進させる因子で処理された細胞。さらに、グリオーマ細胞培養条件下で、sox11遺伝子を発現している、あるいは発現する能力のあるグリオーマ細胞に候補物質を投与し、次いで前記細胞におけるsox11遺伝子またはその産物の存在または量を調べる工程を含む、グリオーマ関連疾病の治療または予防候補物質をスクリーニングする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍形成、とりわけグリオーマ細胞の腫瘍形成能を抑制するためのsox11遺伝子およびその産物の使用に関する。本発明はまた、sox11遺伝子およびその産物を含む、腫瘍、とりわけグリオーマ関連疾病を治療または予防のための医薬組成物、ならびに腫瘍、とりわけグリオーマ関連疾病を治療または予防するための細胞の製造方法などにも関する。
【背景技術】
【0002】
CSC(癌幹細胞ともいう)は、無制限に自己複製しながら、腫瘍のほとんどを形成する制限された増殖能を有する癌細胞を継続的に生成する(非特許文献1−4)。CSCは、組織特異的な幹細胞の一般的な特徴、CD133などの細胞表面マーカー、サイドポピュレーション(SP)および/または浮遊細胞塊形成アッセイを用いて、癌および癌細胞株から濃縮できることが示されている。しかしながら、腫瘍および癌細胞株に由来するCD133陰性細胞または非SP細胞が生体内に移植された場合に腫瘍を形成し得るという別の証拠がある(非特許文献5−7)。それゆえ、公知の方法を用いて本物のCSCを特徴付けできるかどうかはいまだ議論の余地がある。一方で、発癌遺伝子の過剰発現は、造血幹/前駆細胞の白血病幹細胞への形質転換を誘導して、少数の白血病幹細胞がインビボに移植されると白血病を形成することがわかっており(非特許文献8および9)、このことは、試験管内CSCモデルを用いてCSCの特徴付けが可能であることを示唆する。本発明者らは最近、同様の技術を用いて、p53遺伝子を欠失した神経幹細胞(NSC)を癌遺伝子HRasL61で形質転換することにより、マウスグリオーマ幹細胞(mGICともいう)株を樹立した(非特許文献10−16)。わずか10個のmGICが生体内で移植可能なGBMを形成することから、mGIC株はCSCを多く含むと考えられる。しかし、樹立されたGIC株を単一細胞培養した結果、細胞間において腫瘍形成能に有無が見られ、この原因は知られていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Reya, T. et al. Nature 414, 105-111 (2001)
【非特許文献2】Singh, S. K. et al. Oncogene 23, 7267-7273 (2004)
【非特許文献3】Kondo, T. Eur. J. Cancer 42, 1237-1242 (2006).
【非特許文献4】Vescovi, A. L. et al. Nat. Rev. Cancer 6, 425-364 (2006)
【非特許文献5】Mitsutake, N. et al. Endocrinology 148, 1797-1803 (2007)
【非特許文献6】Shmelkov, S. V. et al. J. Clin. Invest. 118, 2111-2120 (2008)
【非特許文献7】Wang, J. et al. Int. J. Cancer 122, 761-768 (2008)
【非特許文献8】Huntly, B. J. & Gilliland, D. G. Nat. Rev. Cancer 5, 311-321 (2005)
【非特許文献9】Krivtsov, A. V. & Armstrong, S. A. Nat. Rev. Cancer 7, 823-833 (2007)
【非特許文献10】Bizub, D. et al. Oncogene 3, 443-448 (1988)
【非特許文献11】Rasheed, B. K. et al. Cancer Res. 54, 1324-1330 (1994)
【非特許文献12】Reilly, K. M. et al. Nature Genet. 26, 109-113 (2000)
【非特許文献13】Bogler, O. et al. Glia 15, 308-327 (1995).
【非特許文献14】Jeuken, J. et al. Acta. Nurophathol. 114, 121-133 (2007)
【非特許文献15】Cancer Genome Atlas Research Network. Nature 455, 1061-1068 (2008)
【非特許文献16】Parsons, D. W. et al. Science 321, 1807-1812 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の解決課題は、腫瘍、とりわけグリオーマ、特に多形神経膠芽腫(GBM)または退形成性オリゴデンドログリオーマにおける腫瘍形成を調節する遺伝子およびその産物を見出し、腫瘍、とりわけグリオーマ関連疾病の治療または予防に資することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、転写因子であるSox11をコードする遺伝子をグリオーマ細胞に導入し、過剰発現させたところ、グリオーマ細胞の増殖が効果的に抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は:
(1)sox11遺伝子またはその産物を含む、グリオーマ関連疾病を治療または予防するための医薬組成物;
(2)sox11遺伝子の発現量を上昇させる、あるいはsox11遺伝子の産物の作用を促進させる因子;
(3)sox11遺伝子が導入された、あるいはsox11遺伝子の産物の作用を促進させる因子で処理された細胞;
(4)(2)記載の因子を含む、グリオーマ関連疾病を治療または予防するための医薬組成物;
(5)(3)記載の細胞を含む、グリオーマ関連疾病を治療または予防するための医薬組成物;
(6)さらに抗癌剤を含む、(1)、(4)または(5)のいずれかに記載の医薬組成物;
(7)グリオーマ関連疾病にかかっている患者から取り出されたグリオーマ細胞に、sox11遺伝子またはその産物、あるいは(2)記載の因子をコードする遺伝子を導入することを特徴とする、グリオーマ関連疾病治療または予防用細胞の製造方法;
(8)グリオーマ関連疾病の治療または予防候補物質をスクリーニングする方法であって、グリオーマ細胞培養条件下で、sox11遺伝子を発現している、あるいは発現する能力のあるグリオーマ細胞に候補物質を投与し、次いで前記細胞におけるsox11遺伝子またはその産物の存在または量を調べる工程を含む方法
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、腫瘍、とりわけグリオーマの増殖および腫瘍形成能を効果的に抑制することができるので、腫瘍、とりわけグリオーマ関連疾病を効果的に治療または予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、NSC−L61亜株、6B、8B、9Gおよび10Aを注入されたマウスの生存曲線を示す。
【図2】図2は、6B細胞に由来する腫瘍を有する脳の切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した図を示す。
【図3】図3は、NSC−L61亜株、6B、8B、9Gおよび10Aの増殖をMTTアッセイにより調べた図を示す。結果は3つの培養物の平均±SDを示す。
【図4】図4は、NSC−L61亜株、6B、8B、9Gおよび10Aにおける各種神経系列マーカー陽性細胞の割合を示す。3つの培養物の平均±SDとして示す。
【図5】図5は、腫瘍形成能のあるNSC−L61亜株(6Bと8B)と腫瘍形成能のない亜株(9Gと10A)において発現量の増加を示す遺伝子について、上位30個のプローブセットをクラスター解析により同定した結果を示す。左の30個の遺伝子名は、腫瘍形成能のあるNSC−L61亜株(6Bと8B)で発現量が増加したものである。右の30個の遺伝子名は、腫瘍形成能のない亜株(9Gと10A)で発現量が増加したものである。
【図6】図6は、NSC−L61亜株、6B、8B、9Gおよび10AにおけるSox11の発現をRT−PCRにより調べた結果を示す。
【図7】図7は、腫瘍形成能のあるNSC−L61亜株(6Bと8B)と腫瘍形成能のない亜株(9Gと10A)において上方調節される遺伝子の発現解析の結果を示す。全RNAを腫瘍形成能のある亜株6Bと8B、および腫瘍形成能のない亜株9Gと10Aから抽出し、どちらかの亜株で上方調節された少なくとも2回上位30個以内のプローブにランクされた選択遺伝子の発現をRT−PCRにより解析した。gapdhの発現は内部コントロールである。
【図8】図8は、NSC−L61亜株、6B、8B、9Gおよび10AにおけるSox11の免疫標識を示す。全ての核をヘキスト33342で対比染色した。
【図9】図9は、様々な種類のヒト原発性悪性グリオーマ、GBM、AA、AOAおよびAO、正常な脳(NB)およびhGICにおけるsox11の発現をRT−PCRを用いて調べた結果を示す。
【図10】図10は、原発性ヒトAOおよびGBM組織の試料をSox11およびヘマトキシリンにより染色した結果を示す。
【図11】図11は、原発性ヒトGBM組織および再発性腫瘍をSox11およびヘマトキシリンにより染色した結果を示す。
【図12】図12は、原発性GBMと再発性GBMにおけるSox11およびネスチンに対する免疫反応性を示す。原発性(左図)および再発性GBM(右図)をSox11およびネスチンで免疫染色した。全ての核をヘキスト33342で対比染色した。
【図13】図13は、コントロールベクターをトランスフェクトした細胞(点線)とsox11を発現する細胞(直線)の両方の増殖をMTTアッセイにより調べた結果を示す。結果は3つの培養物の平均±SDである。
【図14】図14は、NSC−L61およびhGICにおけるsox11の過剰発現がネスチンの発現を減少させることを示す。NSCL61、hGIC1およびhGIC2をハイグロマイシンのみをコードするコントロールベクターまたはsox11とハイグロマイシンをコードするsox11発現ベクターのどちらかでトランスフェクトし、10日間ハイグロマイシンで選別し、次いでネスチンで染色した。ヘキスト染色細胞中におけるマーカー陽性細胞の割合を示す。
【図15】図15は、NSC−L61およびhGICにおけるsox11の過剰発現がMAP2の発現を増加させることを示す。NSCL61、hGIC1およびhGIC2をハイグロマイシンのみをコードするコントロールベクターまたはsox11とハイグロマイシンをコードするsox11発現ベクターのどちらかでトランスフェクトし、10日間ハイグロマイシンで選別し、次いでMAP2で染色した。ヘキスト染色細胞中におけるマーカー陽性細胞の割合を示す。
【図16】図16は、コントロールベクターをトランスフェクトした細胞とsox11を発現する細胞の両方のコロニー形成能をソフトアガー中で調べた結果を示す。
【図17】図17は、コントロールベクターをトランスフェクトした細胞(点線)とsox11を発現する細胞(直線)を注入したマウスの生存曲線を示す。
【図18】図18は、sox11の強制発現がNSC−L61およびhGICにおける抗癌剤に対する感受性を増加させることを示す。NSCL61、hGICおよびsox11発現娘細胞を様々な濃度のエトポシド、テモゾロミドおよびタキソールで2日間培養した。生存細胞の割合はアッセイを用いて算出した。は、親細胞と比較したp<0.05を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、1の態様において、sox11遺伝子またはその産物を含む、腫瘍、とりわけグリオーマ関連疾病を治療または予防するための医薬組成物を提供する。本発明により治療または予防されうる疾病は、腫瘍細胞がsox11を発現、あるいはsox11を発現する可能性のあるものであればよく、好ましくはグリオーマ関連疾病である。本発明において、「グリオーマ関連疾病」とは、神経膠細胞の性質を有する腫瘍の総称である。本発明におけるグリオーマ関連疾病は、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ等の動物あるいは鳥類のごとく動物、好ましくはヒトにおけるものであり、多形神経膠芽腫(以下、GBMともいう)、アストロサイトーマ(星細胞腫ともいう)、髄芽腫、脳室上位腫、オリゴデンドログリオーマ(乏突起膠腫ともいう)、脈絡叢乳頭腫、特に、退形成性アストロサイトーマ、退形成性オリゴデンドロアストロサイトーマ、退形成性オリゴデンドログリオーマ、などが例示されるが、これらの疾病に限らない。
【0010】
本発明のsox11遺伝子は、SRY型のHMGボックスを有する転写因子Sox11タンパク質をコードする遺伝子である。それゆえ、前記Sox11タンパク質は、細胞の核内において、特定のDNA配列に結合して下流因子の遺伝子の発現や転写を調節することを特徴とする。本明細書において、「soxll遺伝子」は、Sox11タンパク質のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドをいい、好ましくは、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド;配列番号:1に示すアミノ酸配列において、1または数個、例えば、1〜9個、好ましくは、1〜5個、1〜3個、さらに好ましくは1〜2個、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド;配列番号:1に示すアミノ酸配列と50%以上の相同性、好ましくは60%以上、70%以上、80%以上の相同性、より好ましくは85%以上、90%以上の相同性、さらに好ましくは93%、95%、97%、あるいは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド;あるいは上記アミノ酸配列のフラグメントを有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであってもよい。ここで、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、同一のアミノ酸を示す異なるヌクレオチド配列、いわゆる縮重コドンを含むものである。アミノ酸配列の相同性は、FASTA、BLASTなどの一般的な配列分析用ツールを用いて測定することができる。すなわち、本明細書においては、上述のごときsox11遺伝子の変異体もまた、sox11遺伝子に包含されるものとする。さらに、本発明のsoxll遺伝子は、soxll遺伝子と同等の性質を有するものであって、配列番号:1に示すアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(配列番号:2)を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。本明細書における同等の性質とは、sox11遺伝子として同等の生物学的、化学的、および物理学的特性を有することをいう。加えて、本発明において、soxll遺伝子は、ヒト由来のものであるが、例えば、マウス、ラット、ウシ、ネコなどの他の動物に由来するものであっても、これらの動物種におけるsox11遺伝子は、本明細書におけるsox11遺伝子に包含されうる。特に、本発明におけるマウスSox11タンパク質のアミノ酸配列を配列番号:3に示す。この場合においても、ヒトsox11遺伝子と同様に、上述のごとく変異を有する変異体もマウスsox11遺伝子に包含されるものとする。
【0011】
本発明において、前記ハイブリダイズさせる条件は、J. Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition", 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressの記載に従って、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイズの条件は、低ストリンジェントな条件であってもよいが、好ましくは高ストリンジェントな条件である。低ストリンジェントな条件とは、上記文献に従ってハイブリダイズさせた後の洗浄において、例えば42℃、0.1×SSC、0.1% SDSの条件であり、好ましくは50℃、0.1×SSC、0.1% SDSの条件である。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、5×SSCおよび0.1% SDSの条件などを含む。ただし、当業者であればこれらの要素を適宜選択することで同様の条件を実現することができる。
【0012】
本発明のsox11遺伝子の産物は、上述のごときsox11遺伝子のポリヌクレオチドから転写・合成されたものであればいかなるものをも含み、例えば、転写されたRNAを含んでもよく、さらに該RNAから合成されたポリペプチドもしくはそのフラグメントを含んでもよい。例えば、本発明のsox11遺伝子の産物は、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよく、あるいは配列番号:1に示すアミノ酸配列において、1または数個、例えば、1〜9個、好ましくは、1〜5個、1〜3個、さらに好ましくは1〜2個、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列;配列番号:1に示すアミノ酸配列と50%以上の相同性、好ましくは60%以上、70%以上、80%以上の相同性、より好ましくは85%以上、90%以上の相同性、さらに好ましくは93%、95%、97%、あるいは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列;ならびに上記アミノ酸配列のフラグメントを有するポリペプチドであってもよい。
【0013】
本発明は、別の態様において、sox11遺伝子の発現量を上昇させる因子を提供する。ここで、sox11遺伝子の発現量を上昇させるとは、インビボまたはインビトロにおいて、内在的または外因的に、soxll遺伝子を発現させるか、導入することによりsox11遺伝子の発現量を通常より高めることをいう。それゆえ、sox11遺伝子の発現量を上昇させる因子は、sox11遺伝子の発現量を上昇させるものであればいかなるものであってもよく、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、それらのフラグメントなどであってもよい。sox11遺伝子の発現量を上昇させる因子がポリヌクレオチド、ポリペプチド、それらのフラグメントである場合に、安定性や利便性などのためのヌクレオチド配列や修飾物質がN末端やC末端などに結合されていてもよい。また、sox11遺伝子の発現量を上昇させる因子がポリヌクレオチドである場合には、上記ポリヌクレオチドもしくはそのフラグメントが公知のベクター、特に発現ベクターに組み込まれているものであってもよい。かかる因子により、インビトロもしくはインビボにおいてsox11遺伝子の発現量を外因的に上昇させることが可能である。
【0014】
sox11遺伝子の発現量を上昇させる因子はまた、sox11遺伝子の発現量を上昇させる上流因子であってもよい。かかる上流因子は、sox11遺伝子のエンハンサーやプロモーターのごとき調節因子に結合することによりsox11遺伝子の発現を上昇させることができるものが好ましい。それゆえ、本発明の因子には、例えば、soxll遺伝子の発現を調節することが公知であるNeuroDおよびMath3などが含まれるが、これらだけに限定されない(Bergsland, M., et al Genes Dev. 20:3475-3486)。また、Sox11タンパク質は、転写因子であることから、様々な分泌因子やさらなる転写因子などをコードする遺伝子のエンハンサーやプロモーターのごとき制御・調節領域に結合し、それらの発現を調節すると考えられる。例えば、dnfa5の発現を上方調節、逆にfgf5およびplagl1の発現を下方調節する(Allerstorfer, S. et al., Oncogene. 27:4180-4190、Kim, M.S. et al., J.Hum/Genet. 51:652-64)。したがって、本発明のsox11遺伝子の発現量を上昇させる因子には、Fgf5、dnfa5およびplagl1のごとき下流因子も含まれてもよいが、これらだけに限定されない。さらに、本発明のsox11遺伝子の発現量を上昇させる因子は、NeuroD、Math3、Fgf5、dnfa5、plagl1のごときsox11遺伝子の上流および下流因子の作用を促進する因子も含まれてよい。かかる因子により、インビトロもしくはインビボにおいてsox11遺伝子の発現量を内在的に上昇させることができる。加えて、本発明のsox11遺伝子の発現量を上昇させる因子は、sox11遺伝子の発現量を上昇させるような化学物質、薬剤、サイトカイン、およびそれらの類似物質であってもよいが、これらだけに限定されない。また、本発明のsox11遺伝子の発現量を上昇させる因子は天然物質、合成物質のいずれであってもよい。本発明のsox11遺伝子の発現量を上昇させる因子はリポソームなどに包含されていてもよい。
【0015】
本発明の因子はまた、sox11遺伝子の産物の作用を促進する因子であってもよい。ここで、sox11遺伝子の産物の作用を促進するとは、sox11遺伝子からの産物の転写因子としての機能を高めることをいう。それゆえ、sox11遺伝子の産物の作用を促進する因子は、上述のごときsoxll遺伝子の発現量を上昇させる因子を含むが、sox11遺伝子の産物の転写因子としての機能を高めるものであればいかなる因子であってもよい。sox11遺伝子の産物の作用を促進する因子は、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、それらのフラグメントなどであってもよい。例えば、本発明のsox11遺伝子の産物の作用を促進する因子は、配列番号:1および配列番号:3に示すSoxllタンパク質のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはそのフラグメントを含むものであってもよい。本発明のsox11遺伝子の産物の作用を促進する因子は、かかるポリペプチドまたはそのフラグメントに、安定性や利便性などのためのアミノ酸配列を有するペプチドや修飾物質などがN末端やC末端に結合されていてもよい。さらに、本発明のsox11遺伝子の産物の作用を促進する因子はリポソームなどの中に包含されていてもよい。
【0016】
本発明は、さらなる別の態様において、sox11遺伝子が導入された、あるいはsox11の産物の作用を促進させる因子で処理された細胞を提供する。かかる本発明の細胞は、腫瘍形成、とりわけグリオーマにおける腫瘍形成能を抑制することができることを特徴とする。細胞へのsox11遺伝子の導入は公知の手段・方法にて行うことができ、例えば、ベクターによる方法、細胞融合、エレクトロポレーション、遺伝子銃、リポフェクション、塩酸カルシウム共沈法、マイクロインジェクション法などの一般的な方法を用いることができる。sox11の産物の作用を促進させる因子での細胞の処理もまた公知の手段・方法にて行うことができ、例えば、かかる因子を含む培地にて細胞を培養してもよく、あるいは該因子をマイクロインジェクションにて細胞に導入してもよい。当業者は、細胞の種類、因子の種類などに応じてこれらの方法を適宜選択して用いることができる。sox11を導入される細胞、あるいは上記因子で処理される細胞はいかなる細胞であってもよい。好ましくは、細胞は、哺乳動物、好ましくはヒトのグリオーマ細胞であり、より好ましくは、GBMもしくは退形成性オリゴデンドログリオーマ細胞である。
【0017】
本発明は、別の態様において、腫瘍、とりわけグリオーマ関連疾病を治療または予防するための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、有効成分としてsox11遺伝子またはその産物、sox11遺伝子の発現量を上昇させる因子、sox11遺伝子の産物の作用を促進させる因子、sox11遺伝子が導入された細胞、あるいはsox11の産物の作用を促進させる因子で処理された細胞を含む。加えて、本発明の医薬組成物は、前記有効成分以外に、担体や賦形剤などの成分を含有してもよい。本発明の医薬組成物はいかなる投与経路にても投与することができる。非経口投与には注射(例えば筋肉注射、皮内、腫瘍内、静脈内、又は皮下、又は直接注射)、輸液、経皮投与等を用いることができ、局所投与であっても全身投与であってもよい。あるいは本発明の医薬組成物を経口投与してもよい。経口投与剤形は公知であり、錠剤、顆粒、液剤等がある。本発明に使用することができる担体や賦形剤は、投与形態および剤形に応じて当業者が適宜選択することができる。非経口投与用処方には、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を担体または賦形剤として用いてもよく、必要に応じて殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を添加して調製してもよい。経口投与用処方には、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等を担体または賦形剤として用いてもよく、必要に応じて結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を配合することもできる。これらの剤形は、溶解、撹拌、混合、粉砕、打錠、乾燥などの公知の手法を用いて製造することができる。
【0018】
本発明の医薬組成物はまた、上記有効成分と一緒に公知の抗癌剤を含んでもよい。本発明の医薬組成物に使用されうる抗癌剤としては、エトポシド、テモゾロミド、タキソール、シスプラチンなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。また、本発明の医薬組成物と従来の抗癌療法、例えば放射線治療や化学療法などを併用してもよい。
【0019】
本発明の医薬組成物は、sox11遺伝子を発現する、あるいはsox11遺伝子を発現する可能性のある細胞から生じる腫瘍であればいかなる腫瘍にも適用することができ、好ましくはグリオーマ関連疾病に適用される。例えば、GBM、アストロサイトーマ、髄芽腫、脳室上位腫、オリゴデンドログリオーマ、脈絡叢乳頭腫、退形成性アストロサイトーマ、退形成性オリゴデンドロアストロサイトーマおよび退形成性オリゴデンドログリオーマなどのグリオーマに適用することができるが、これらの腫瘍に限定されない。
【0020】
本発明の医薬組成物の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的、併用される抗癌剤または抗癌療法、ならびに動物種、患者の年齢、体重、症状によって適宜決定されうる。有効量の投与量は種々の条件によって変動するが、例えば、公知の抗癌剤の用量を参照などして、医師により決定されうる。
【0021】
本発明は、さらなる別の態様において、sox11遺伝子またはその産物、sox11遺伝子の発現量を上昇させる因子、sox11の産物の作用を促進させる因子、sox11遺伝子が導入された細胞、あるいはsox11の産物の作用を促進させる因子で処理された細胞を患者に投与することを特徴とする、グリオーマ関連疾病の治療または予防方法を提供する。本発明の方法により治療または予防されるグリオーマは、上述のとおりである。
【0022】
本発明はもう1つの態様において、グリオーマ関連疾病の治療または予防のための医薬の製造のための、sox11遺伝子またはその産物、sox11遺伝子の発現量を上昇させる因子、sox11の産物の作用を促進させる因子、sox11遺伝子が導入された細胞、あるいはsox11の産物の作用を促進させる因子で処理された細胞の使用を提供する。さらなる態様において、本発明は、グリオーマ関連疾病を治療または予防するために使用される、sox11遺伝子またはその産物、sox11遺伝子の発現量を上昇させる因子、sox11の産物の作用を促進させる因子、sox11遺伝子が導入された細胞、あるいはsox11の産物の作用を促進させる因子で処理された細胞を提供する。
【0023】
本発明は、さらに別の態様において、グリオーマ関連疾病にかかっている患者から取り出されたグリオーマ細胞に、sox11遺伝子またはその産物、sox11遺伝子の発現量を上昇させる因子、sox11遺伝子の産物の作用を促進させる因子、sox11遺伝子が導入された細胞、あるいはsox11遺伝子の産物の作用を促進させる因子を導入することを特徴とする、グリオーマ関連疾病治療または予防用細胞の製造方法を提供する。本発明の方法を適用される患者は、好ましくはヒトであり、より好ましくは、グリオーマに関連する疾病にかかっているヒトである。本発明において、患者から細胞を取り出す方法は、皮膚切開、外科的手術などの方法があり、当業者が適宜選択することができる。細胞にsox11遺伝子またはその産物あるいは上記因子を導入する方法は公知であり、特に限定されないが、ベクターによる方法、細胞融合、エレクトロポレーション、遺伝子銃、リポフェクション、塩酸カルシウム共沈法、マイクロインジェクション法などの方法、あるいはこれらの因子との共培養などがある。この製造方法により得られた細胞では、Sox11遺伝子またはその産物の作用・活性がもとの細胞よりも上昇している。かかる好ましい細胞の例は、sox11遺伝子を過剰発現するものである。また、本発明の細胞の製造方法において、自己のグリオーマ細胞を用いることは、この製造方法により得られたグリオーマ関連疾病医療用の組み換え細胞製剤を投与する際に、適合性の面から有利である。
【0024】
本発明は、別の態様において、グリオーマにおいて細胞増殖が抑制または促進された細胞を判別する方法を提供する。かかる方法は、sox11遺伝子またはその産物の存在または量を調べる工程を含むことを特徴とする。本発明において、sox11遺伝子またはその産物の存在または量を調べるために、当業者間で一般的な手法を用いてもよい。例えば、in situ ハイブリダイゼーション法、ノ−ザンブロット法、ドットブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、PCR法、RT−PCR法などのポリヌクレオチドの検出法を含んでよい。また、例えば、免疫染色法、蛍光抗体法、免疫沈降法、ウェスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、ELISA法、ツーハイブリッドシステムなどの免疫学的なタンパク質の検出方法を行ってもよいが、これら以外の方法であってもよい。前記判別方法は、上記手法により正常部位または正常な時期と比較して、soxll遺伝子またはその産物が高いレベルまたは低いレベルで検出される細胞を、それぞれ増殖が抑制または促進されたと判別することができる。
【0025】
本発明は、さらなる別の態様において、sox11遺伝子またはその産物の存在または量を調べるための手段を必須構成要素とする、グリオーマにおいて細胞増殖が抑制または促進された細胞を判別するキットを提供する。本発明のキットは、上記の方法を含むものとし、例えば、上記方法に用いる反応容器、細胞の取得手段等を含んでいてもよい。一般的には、キットには取扱説明書を添付する。本発明のキットを用いて、迅速かつ適切にグリオーマ細胞の腫瘍形成能の大小または有無を判別することができる。
【0026】
本発明の判別方法またはキットは、グリオーマを除去または治療した後、すなわち予後において、グリオーマの腫瘍形成能を判別するためにも使用することができる。
【0027】
本発明は、別の態様において、グリオーマ関連疾病の治療または予防に対する効果を有する候補物質をスクリーニングする方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、sox11遺伝子またはその産物の存在または量をマーカーとすることを特徴とする。本発明のスクリーニング方法は、例えば、培養条件下で、sox11遺伝子を発現している、あるいは発現する能力のあるグリオーマ細胞に候補物質を投与し、次いでこれらの細胞におけるsox11遺伝子またはその産物の存在または量を調べ、sox11遺伝子の発現を促進する候補物質を選択することであってもよい。それゆえ、この方法で選択された物質は、グリオーマの治療または予防に効果を有し、医薬組成物として用いることができる。sox11遺伝子またはその産物の存在または量を調べる方法は、上述のごとき手法であってもよい。
【0028】
次に、下記の実施例に用いた主な材料および方法を示すが、本発明を限定するものではない。
【0029】
動物および試薬類
動物を、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の変異マウス開発チームおよび日本チャールズ・リバー株式会社から入手した。全てのマウス実験は、理研CDB動物実験委員会によって承認されたプロトコルに従って実施した。化学薬品および成長因子は、特に記載される場合を除き、SigmaおよびPeprotechからそれぞれ購入した。
【0030】
ベクターの構築
全長マウスおよびヒトsox11を、マウスNSC cDNAおよびヒト胎児脳cDNAライブラリー(Clontech)から、RT−PCRおよびPhusionポリメラーゼ(FINNZYME, Espoo, Finland)を用いて製造業者の使用説明書に従って増幅し、pDriveベクター(QIAGEN)にクローニングした。ヌクレオチド配列を、BigDye Terminatorキットバージョン3.1(Applied Biosystems)およびABIシークエンサーモデル3130xl(Applied Biosystems)を用いて確認した。ヒトおよびマウスsox11 cDNAを、pcDNA3.1−hygベクター(Invitrogen)に挿入し、各々pcDNA3.1−hyg−hsox11およびpcDNA3.1−hyg−msox11を得た。以下のオリゴヌクレオチドDNAプライマーを合成した:全長ヒトsox11については、5’プライマーを5’−AGCTAGCGCCACCATGGTGCAGCAGGCGGAGAG−3’(配列番号:5)とし、3’プライマーを5’−TGTCGACTCAATATGTGAACACCAGGTCG−3’(配列番号:6)とした。全長マウスsox11については、5’プライマーを5’−AGCTAGCGCCACCATGGTGCAGCAGGCCGAGAGC−3’(配列番号:7)とし、3’プライマーを5’−TGGTACCTCAATACGTGAACACCAGGTC−3’(配列番号:8)とした。
【0031】
ヌードマウスの脳への頭蓋内細胞移植
マウスおよびヒトGICの詳細な性質の決定は他で報告する。Sox11を発現するGIC細胞およびそれらの親細胞を5μlの培地中で懸濁し、前もって10%のペントバルビタールで麻酔をかけておいた5〜8週齢の雌のヌードマウスの脳中に注入した。注入部位の定位座標をラムダから2mm前方、矢状縫合から2mm側方、5mmの深部とした。
【0032】
脳の固定および組織病理
解剖したマウス脳を、4%パラホルムアルデヒド中に4℃で一晩固定した。固定後、PBS中に12〜18%のスクロースを用いて脳を凍結保護し、Tissue−Tek OCT化合物(Miles, Elkhart,IN)中に包埋した。大脳皮質から冠状切片(10μm厚)を調製し、一般的な技術を用いてヘマトキシリン−エオシン(H&E)で染色した。
【0033】
細胞培養
マウスNSC−L61およびヒトGICを、以前に記載したとおり、試薬、bFGF(10ng/ml)およびEGF(10ng/ml)を添加したDMEM/F12(GIBCO,BRL)中で培養した(Kondo, T. & Raff, M. Genes Dev. 18, 2963-2972 (2004))。免疫染色では、腫瘍細胞塊を、ポリ−D−リジン(PDL,15μg/ml)およびフィブロネクチン(1μg/ml、Invitrogen)でコーティングした8ウェルチャンバースライド(Nunc)上で培養した。
【0034】
トランスフェクション
NSC−L61およびhGICのトランスフェクションを、Nucleofectorを用いて製造業者の使用説明書に従って行った(AMAXA)。簡単に説明すると、2×10個の細胞を、10μgのベクターを含むマウスNSC Nucleofector溶液(100μl)に懸濁し、次いでNucleofector装置を用いてトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を最適培地で培養した。
【0035】
免疫染色
免疫染色を、以前に記載したとおりに行った(Kondo, T. & Raff, M. Science 289, 1754-1757 (2000))。以下の抗体を用いて抗原を検出した:ラット抗ネスチン(1:1000;BD Pharmingen、1:200;ヒト細胞にはChemicon)、マウス抗MAP2(a+b)(1:200;Abcam)、ラット抗GFP(1:1000;Nacalai Tesque, Japan)およびウサギ抗ヒトSox11(1:50;SIGMA)。これらの抗体を、ヤギ抗ラットIgG−A488(1:400;Molecular Probes)、ヤギ抗ウサギIgG−Cy3(1:400;Jackson ImmunoResearch)、ヤギ抗マウスIgG−A488(1:400;Molecular probes)を用いて検出した。核を可視化するために、DAPI(1μg/ml)で細胞を対比染色した。
【0036】
増殖アッセイ
2000個の細胞を、96ウェルプレートの各ウェルで100μlの培地中において培養した。細胞増殖を調べるために、MTTアッセイを以下のとおり行った。10マイクロリットルのMTT(5mg/ml、Nacalai Tesque, Japan)を、インビトロで0、2または3、および4日目に各ウェルに添加した。これらの細胞を4時間インキュベートし、培地を100μlのDMSOに交換し、細胞を解離させ、マイクロプレートリーダー(Bio-Rad)で570nmにおける吸収スペクトルを用いて細胞増殖を定量化した。抗癌薬、エトポシド、テモゾロミドおよびタキソールの効果を調べるために、5000個の細胞を、96ウェルプレートにおいて様々な濃度の薬物を含む100μlの培地中において培養した。2日後、MTTアッセイを上述のごとく行った。
【0037】
ソフトアガーアッセイ
本発明者らは、細胞が足場非依存的に増殖できるかどうかを調べるために、ソフトアガーアッセイを行った。Sox11を発現するNSC−L61、Sox11を発現するhGICおよびそれらの親細胞を、最適培地中で作製した0.3%トップアガーに懸濁し、同じ培地で作製した0.6%ボトムアガーの上に層状にした。トップアガーが重合した後、培地を添加し、細胞を3日毎に培地交換しながら20日間培養した。
【0038】
RT−PCR
RT−PCRを以前に記載したとおりに行った(Kondo, T. & Raff, M. EMBO J. 19, 1998-2007 (2000))。サイクルパラメータを、94℃で20秒、58℃で30秒、72℃で45秒の35サイクルとした。gapdhについては、94℃で15秒、53℃で30秒および72℃で90秒の22サイクルとした。以下のオリゴヌクレオチドDNAプライマーを合成した。T−ボックス20(tbx20)については、5’プライマーを5’−TAGTCCTGATGGACATCGTCC−3’(配列番号:9)とし、3’プライマーを5’−CCTCTCAATGTCAGTGAGCCT−3’(配列番号:10)とした。アネキシンA8(anxa8)については、5’プライマーを5’−CCATGAAGGGCTTAGGAACCA−3’(配列番号:11)とし、3’プライマーを5’−CTCTCTGCAAAGTAGCTGTGG−3’(配列番号:12)とした。カテプシンH(ctsh)については、5’プライマーを5’−GGAACCACACATTTAAAATGGC−3’(配列番号:13)とし、3’プライマーを5’−ATGTACTCGAAGGCCTGGCT−3’(配列番号:14)とした。ALXホメオボックス1(alx1)については、5’プライマーを5’−TTGGTTTCAAAATCGAAGGGCC−3’(配列番号:15)とし、3’プライマーを5’−GCGATACTGGAAGACCTCCTT−3’(配列番号:16)とした。sox11については、5’プライマーを5’−GATGAAGACGACGACGAAGAT−3’(配列番号:17)とし、3’プライマーを5’−AATTCAAGCTCAGGTCGAACAT−3’(配列番号:18)とした。熱ショック22kDaタンパク質8(hspb8)については、5’プライマーを5’−GATGGCTTTGGCATGGACCC−3’(配列番号:19)とし、3’プライマーを5’−GTTGTTGAAGCTGCTCTCTCC−3’(配列番号:10)とした。ニューロンPASドメインタンパク質3(npas3)については、5’プライマーを5’−GTGATTCACATAACAGGCCGG−3’(配列番号:11)とし、3’プライマーを5’−CATGGGTGTGTCCTTGTACTC−3’(配列番号:12)とした。溶質輸送体ファミリー2メンバー3(slc2a3)については、5’プライマーを5’−CAGCAGCTCTCTGGGATCAA−3’(配列番号:13)とし、3’プライマーを5’−ACAATAAACCAGGGAATGGGG−3’(配列番号:14)とした。微小管結合タンパク質2(map2)については、5’プライマーを5’−GACAACATCAAATACCAGCCTA−3’(配列番号:15)とし、3’−プライマーを5’−AGCCAAAGTGGCAAGCTGAGG−3’(配列番号:16)とした。CAPアデニル酸シクラーゼ結合タンパク質(cap2)については、5’プライマーを5’−CGCTCAGCTTTATTTGCCCA−3’(配列番号:17)とし、3’プライマーを5’−GTTGATCACTTCCACAATGCC−3’(配列番号:18)とした。gapdhのプライマーは以前に記載したとおりにした(Kondo, T. Setoguchi, T. & Taga, T. Natl. Acad. Sci. USA 101, 781-786 (2004))。
【0039】
マイクロアレイハイブリダイゼーションおよびデータ処理
5μgの全RNAを、One−Cycle標的標識手順(Affymetrix, Santa Clara, CA)を用いて、インビトロ転写(IVT)によりビオチンで標識した。次いで、cRNAを断片化し、製造業者の使用説明書に従って、GeneChipマウスゲノム430 2.0アレイ(Affymetrix)とハイブリダイズさせた。マイクロアレイ画像データをGeneChip Scanner3000(Affymetrix)を用いて処理し、CELデータを作成した。次に、このCELデータを、複数のデータベースを同時に標準化し、処理する能力を搭載するdChipソフトウェアによる解析にかけた。データをプログラムのデフォルト設定に従って各グループ内で標準化した。統計的検定を、2および3サンプル比較に対して各々、eBayes法およびANOVAにより試した(Smyth, G.K. Stat. Appl. Genet. Mol. Biol. 3; article3 (2004))。q値は、「偽陽性率(FDR)」と呼ばれる量の拡張であり、これを調べて、有意性のゲノムワイド検定に対する有意性を評価した。FDR<0.1である。
【0040】
統計分析
GraphPad Prismバージョン4ソフトウェアを用い、カプラン・マイヤー法によって、有意性について生存データを分析した(p値はlog−rank検定を用いて算出した)。
【0041】
ヒト脳腫瘍
11種のGBM、5種の退形成性アストロサイトーマ、5種の退形成性オリゴデンドログリオーマ、3種の退形成性オリゴアストロサイトーマおよび2種のGSC、GSC1およびGSC2を、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターおよび熊本大学医学研究科の研究ガイドラインに従って使用した。GSCの詳細な性質の決定は他で報告する(Takezakiら、未公開データ)。ポリ(A)+RNAを、QuickPrep mRNA精製キット(GE Healthcare)を用いてグリオーマ細胞塊から調製し、cDNAを転写第一鎖cDNA合成キット(Roche)を用いて合成した。パラフィン包埋した腫瘍を6μmの厚さで切片にした。Sox11染色については、抗原を、製造業者の使用説明書に従ってHistoVT One(Nacalai Tesque, Japan)により賦活化した。内在性ペルオキシダーゼ活性を、2%Hを室温で15分間アプライすることにより不活化させた。次いで、切片をTPBS中の5%スキムミルクと室温で30分間前処理し、抗Sox11抗体(1:50)で室温において2時間免疫染色し、vectastain elite ABCキット(Vector laboratory)およびジアミノベンジジン(Vector laboratory)を用いて可視化した。
【0042】
以下に実施例を示して本発明を具体的かつ詳細に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。
【実施例1】
【0043】
CSCは、無制限に自己複製しながら、腫瘍のほとんどを形成する制限された増殖能を有する癌細胞を継続的に生成する(Reya, T. et al. Nature 414, 105-111 (2001)、Singh, S. K. et al. Oncogene 23, 7267-7273 (2004)、Kondo, T. Eur. J. Cancer 42, 1237-1242 (2006)、およびVescovi, A. L. et al. Nat. Rev. Cancer 6, 425-364 (2006))。CSCは、組織特異的な幹細胞の一般的な特徴、CD133などの細胞表面マーカー、サイドポピュレーション(SP)および/または浮遊球形成アッセイを用いて、癌および癌細胞株から濃縮できることが示されている。しかしながら、腫瘍および癌細胞株に由来するCD133陰性細胞または非SP細胞のいずれかがインビボに移植された場合においても腫瘍を形成し得るという別の証拠がある(Mitsutake, N. et al. Endocrinology 148, 1797-1803 (2007)、Shmelkov, S. V. et al. J. Clin. Invest. 118, 2111-2120 (2008)、およびWang, J. et al. Int. J. Cancer 122, 761-768 (2008))。それゆえ、公知の方法を用いて本物のCSCを特徴付けできるかどうかはいまだ議論の余地がある。一方で、発癌遺伝子の過剰発現は、造血幹/前駆細胞の白血病幹細胞への形質転換を誘導して、少数の白血病幹細胞がインビボに移植されると白血病を形成することがわかっており(Huntly, B. J. & Gilliland, D. G. Nat. Rev. Cancer 5, 311-321 (2005)およびKrivtsov, A. V. & Armstrong, S. A. Nat. Rev. Cancer 7, 823-833 (2007))、このことは、試験管内CSCモデルを用いてCSCの特徴付けが可能であることを示唆する。本発明者らは最近、同様の技術を用いて、p53遺伝子を欠失した神経幹細胞(NSC)を癌遺伝子HRasL61で形質転換することにより、マウスGIC株、NSC−L61を樹立した(Bizub, D. et al. Oncogene 3, 443-448 (1988)、Rasheed, B. K. et al. Cancer Res. 54, 1324-1330 (1994)、Reilly, K. M. et al. Nature Genet. 26, 109-113 (2000)、Bogler, O. et al. Glia 15, 308-327 (1995)、Jeuken, J. et al. Acta. Nurophathol. 114, 121-133 (2007)、Cancer Genome Atlas Research Network. Nature 455, 1061-1068 (2008)、およびParsons, D. W. et al. Science 321, 1807-1812 (2008))。わずか10個のNSC−L61細胞をインビボに移植した場合であっても、それらは自己複製し、2ヶ月以内に移植可能なGBMを形成した。このことは、NSC−L61がCSCを多く含むことを示唆している。NSC−L61がGICおよび非GICの両方からなることから、GICの遺伝子発現プロファイルを非GICのものと比較することにより、真のCSCを特徴付けし、悪性グリオーマに対する新規な治療または予防の標的を同定することが可能である。本発明者らは、この可能性を検証するために、限界希釈アッセイを行い、24種のNSC−L61亜株を樹立した。
【0044】
全ての単一クローンは増殖し、癌遺伝子HRasL61を発現していたが(非GIC亜株、9Gおよび10Aをネガティブコントロールとして用いた)、これらの亜株の腫瘍形成能を調べるために、本発明者らが各クローン細胞をそれぞれ1000個ずつヌードマウスの脳(n=3)に注入した結果、わずか2種の亜株、6Bおよび8BのみがGBMを形成することを見出した(図1および2参照)。本発明者らは、腫瘍形成能のある亜株が腫瘍形成能のない亜株に比べゆっくり増殖することをMTTアッセイ法により確認した(図3参照)。本発明者らはまた、両亜株を、NSCマーカーであるネスチンとSox2、グリアマーカーであるA2B5とグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)、ならびにニューロンマーカーである微小管結合タンパク質2(MAP2)について免疫標識した。図4に示されるように、GIC亜株、6Bと8Bは、主にNSCマーカーおよびグリアマーカーを発現していたが、MAP2を発現していなかった。対照的に、非GIC亜株、9Gおよび10Aは、MAP2を発現する一方で、NSCマーカーおよびグリアマーカーの両方の発現を喪失した。これらのデータから、GIC亜株はNSCおよびグリア細胞の特徴を保持するが、非GIC亜株は神経細胞に運命付けられていることが示唆された。
【0045】
本発明者らは、DNAマイクロアレイ分析により、GICと非GIC亜株の間で生じる遺伝子発現の変化の特徴付けを行った。GIC亜株では547個の遺伝子が上方調節される一方で、非GIC亜株では402個の遺伝子が上方調節されることを見出した(図5参照)。次いで、GICおよび非GIC亜株で上方調節された遺伝子に対する上位30個のプローブセットにより少なくとも2回ランク付けされたいくつかの遺伝子の発現パターンを確認した(図7参照)。候補遺伝子の中で、以下の理由により非GIC亜株においてその発現量が増加したSox11転写因子に着目した(図6および8参照)。Sox11は、神経特異的な塩基性へリックス−ループ−へリックス(bHLH)タンパク質、Math3およびニューロゲニン2(Ngn2)の下流因子であり、運命付けられたニューロン前駆細胞で発現されているが、NSCでは発現されない(Uwanogho, D. et al. Mech. Dev. 49, 23-36 (1995)、Hargrave, M. et al. Dev. Dyn. 210, 79-86 (1997)、およびBergsland, M. et al. Genes Dev. 20, 3475-3486 (2006))。第2に、sox11の過剰発現は、増殖している神経前駆細胞に神経マーカー、MAP2およびβ−IIIチューブリンの発現を誘導する(Bergsland, M. et al. Genes Dev. 20, 3475-3486 (2006))。このことは、非GIC亜株がmap2のmRNAを発現し(図7参照)、MAP2について標識される(図4参照)という本明細書中のデータと一致する。最後に、ドミナントネガティブ型Sox11の過剰発現は神経分化を妨げる(Bergsland, M. et al. Genes Dev. 20, 3475-3486 (2006))。これらのことから、Sox11はGICを神経へ分化誘導する事により、腫瘍形成能を抑制していると示唆された。
【0046】
複数の証拠から、悪性腫瘍は少数のCSCと、分化マーカーを発現する多数の非CSCからなることが示唆されている。本発明者らは、ヒト悪性グリオーマであるGBM、退形成性アストロサイトーマ(AA)、退形成性オリゴデンドロサイトーマ(AOA)および退形成性オリゴデンドログリオーマ(AO)がsox11のmRNAを発現し(図9参照)、原発性のAOおよびGBM組織の切片がSox11(図10)とMAP2(データ図示せず)について免疫標識されることを確認した。次いで、ヒトGICにおけるSox11発現を調べるために、以前に示したとおり、原発性のAOとGBM組織にそれぞれ由来する2種のヒトGIC株、hGIC1およびhGIC2を樹立した(Singh, S. K. et al. Cancer Res. 63, 5821-5828 (2003)およびYuan, X. et al. Oncogene 23, 9392-400 (2004).)。これらの細胞株は、細胞増殖因子を含む無血清培地中で浮遊細胞塊として増殖でき、わずか10個の細胞がインビボで移植されると、悪性グリオーマを形成できる。さらに、限界希釈アッセイにより樹立されたhGIC亜株(10個のクローン中10個)は全て、インビボで腫瘍形成能を保持した。これらのデータは、本発明者らのhGIC株がCSCを多く含むことを示唆する(Takezakiら、未公開データ)。本発明者らは、これらのhGIC株がsox11発現を喪失していることを見出した(図9参照)。さらに、移植されたhGICは、Sox11について陰性であったが、少数の細胞はSox11についてしばしば標識されていた(データ示さず)。すなわち、これらのデータは、真のGICがSox11について陰性であることを示す。
【0047】
再発性腫瘍は、原発性腫瘍より抗癌剤に対して耐性であることが多いことから、再発性腫瘍が原発性腫瘍より多くのCSCを含んでいることが示唆される。本発明者らは、原発性GBMにおけるSox11発現を再発性GBMのSox11発現と比較し(n=5)、再発性GBMにおいてSox11発現が著しく低下することを見出した(図11参照)。また、再発性GBMはネスチンについて陽性であるが、MAP2免疫反応性を喪失していることも見出した(図12参照)。従って、マウス異種移植モデルで知見したように、再発性GBMがGICからなるものである可能性が高いといえる。
【0048】
mGIC亜株およびhGICの両方がSox11の発現を喪失しているという知見から、sox11の過剰発現がグリオーマ形成を抑制できるかどうかを調べた。本発明者らは、sox11の過剰発現がNSC−L61およびhGICの細胞増殖を妨げることを知見した。そこで、sox11を発現する細胞の増殖を定量化するために、BrdU取り込みアッセイを行った。図13に示されるように、sox11を発現する細胞はその親細胞よりもゆっくりと増殖した。また、sox11の過剰発現がネスチンの発現を阻害し(図14参照)、MAP2の発現量を増加させること(図15参照)も見出した。これらのことは、Sox11が神経分化に関連することと一致した(Uwanogho, D. et al. Mech. Dev. 49, 23-36 (1995)、Hargrave, M. et al. Dev. Dyn. 210, 79-86 (1997)、およびBergsland, M. et al. Genes Dev. 20, 3475-3486 (2006))。次に、sox11を発現するNSC−L61およびhGICの腫瘍形成能を調べるために、まず、ソフトアガー中でコロニー形成アッセイを行った。図16に示されるように、sox−11を発現する細胞はコロニー形成能を失っていた。次いで、100個のsox−11を発現するNSC−L61とhGICをヌードマウスの脳に移植した。NSC−L61とhGICを移植された全てのマウス(各実験n=5)がGBMを形成し、45日までに死亡する一方、sox11を発現する細胞(各々NSC−L61、hGIC1およびhGIC2)を注入されたほとんどのマウス(4/5、4/5および5/5)は60日より長期にわたって生存した。これらのデータから、sox11の過剰発現は、神経分化を誘導することにより、NSC−L61およびhGICの腫瘍形成を阻止できることが示された。
【0049】
CSCは抗癌剤に耐性であるが、一方で、非CSC、すなわち運命付けされた/分化した癌細胞は、これらの薬剤に感受性を示す証拠が多くなってきた(Eramo, A. et al. Cell Death Differ. 13, 1238-1241 (2006)およびLiu, G. et al. Mol. Cancer 5, 67 (2006))。そこで、上述のとおり、sox11の過剰発現がNSC−L61とhGICの非腫瘍形成性神経細胞への分化を誘導したことから、sox11発現がその薬剤感受性を増加させるかどうかを試験した。Sox11を発現する細胞およびその親細胞を、様々な濃度の従来の化学療法薬、エトポシド、テモゾロミドおよびタキソールとともに2日間培養し、それらの生存をMTTアッセイにより調べた。sox11を発現するNSC−L61およびhGICがその親細胞よりもエトポシドとタキソールの両方に感受性である一方、sox11の過剰発現はテモゾロミドに対して感受性を増加させないことを見出した(図18参照)。従って、これらの結果は、Sox11誘導の神経分化がNSC−L61とhGICを抗癌剤に感受性にすることを示すものであった。以上の実験よりsox11誘導と従来の抗癌剤との組み合わせは悪性グリオーマを効果的に排除しうることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、腫瘍形成、とりわけグリオーマにおける腫瘍形成能を抑制する因子、および該因子を用いた腫瘍の医薬組成物などを提供する。そのため、腫瘍の治療または予防のための医薬品の分野ならびにその関連分野において利用可能である。
【配列表フリーテキスト】
【0051】
SEQ ID NO:5: 5' primer for human sox11
SEQ ID NO:6: 3' primer for human sox11
SEQ ID NO:7: 5' primer for mouse sox11
SEQ ID NO:8: 3' primer for mouse sox11
SEQ ID NO:9: 5' primer for tbx20
SEQ ID NO:10: 3' primer for tbx20
SEQ ID NO:11: 5' primer for anxa8
SEQ ID NO:12: 3' primer for anxa8
SEQ ID NO:13: 5' primer for ctsh
SEQ ID NO:14: 3' primer for ctsh
SEQ ID NO:15: 5' primer for alx1
SEQ ID NO:16: 3' primer for alx1
SEQ ID NO:17: 5' primer for sox11
SEQ ID NO:18: 3' primer for sox11
SEQ ID NO:19: 5' primer for hspb8
SEQ ID NO:20: 3' primer for hspb8
SEQ ID NO:21: 5' primer for npas3
SEQ ID NO:22: 3' primer for npas3
SEQ ID NO:23: 5' primer for slc2a3
SEQ ID NO:24: 3' primer for slc2a3
SEQ ID NO:25: 5' primer for map2
SEQ ID NO:26: 3' primer for map2
SEQ ID NO:27: 5' primer for cap2
SEQ ID NO:28: 3' primer for cap2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
sox11遺伝子またはその産物を含む、グリオーマ関連疾病を治療または予防するための医薬組成物。
【請求項2】
sox11遺伝子の発現量を上昇させる、あるいはsox11の産物の作用を促進させる因子。
【請求項3】
sox11遺伝子が導入された、あるいはsox11の産物の作用を促進させる因子で処理された細胞。
【請求項4】
請求項2記載の因子を含む、グリオーマ関連疾病を治療または予防するための医薬組成物。
【請求項5】
請求項3記載の細胞を含む、グリオーマ関連疾病を治療または予防するための医薬組成物。
【請求項6】
さらに抗癌剤を含む、請求項1、4または5のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
グリオーマ関連疾病にかかっている患者から取り出されたグリオーマ細胞にsox11遺伝子またはその産物、あるいは請求項2記載の因子をコードする遺伝子を導入することを特徴とする、グリオーマ関連疾病治療または予防用細胞の製造方法。
【請求項8】
グリオーマ関連疾病の治療または予防候補物質をスクリーニングする方法であって、グリオーマ細胞培養条件下で、sox11遺伝子を発現している、あるいは発現する能力のあるグリオーマ細胞に候補物質を投与し、次いで前記細胞におけるsox11遺伝子またはその産物の存在または量を調べる工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−241711(P2010−241711A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90224(P2009−90224)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】