説明

グリコシド結合含有化合物中の糖の分離方法、糖分離システム、糖分離用試薬キット、糖分離用標準化試料、および、評価システム

本発明のインフロー化学反応システム(A)は、糖タンパク質を含む試料溶液を、サンプル注入装置(4)から、連続的にアルカリ溶液(1)が流れる反応チューブ(7)に導入する。試料溶液とアルカリ溶液(2)の混合溶液が恒温槽(6)に達すると、グリコシド結合の切断反応が進行し、糖タンパク質から糖鎖が分離される。この糖鎖を含む溶液中のアルカリは、イオン交換カラム(12)によって除去され、糖鎖(14)画分のみをサンプルチューブ(13)に捕集することができる。インフロー化学反応システム(A)における反応時間は、分単位であり、従来の方法よりも反応時間が大幅に短縮される。これにより、迅速、簡便、かつ高精度にグリコシド結合を切断し、グリコシド結合含有化合物から糖を分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えば、生理活動において極めて多彩かつ重要な役割を担っている糖タンパク質などのグリコシド結合含有化合物中の糖の分離方法およびそれに用いる糖分離システム、糖分離用試薬キット、糖分離用標準化試料、並びに、評価システムに関するものである。
【背景技術】
糖タンパク質、プロテオグリカンあるいは糖脂質などの複合糖質は、多様な糖鎖がタンパク質や脂質に結合して生成する重要な生体物質群である。これらの複合糖質の一群である糖タンパク質は、血清型糖タンパク質およびムチン型糖タンパク質に大別される。
アルブミンを除く血清中のタンパク質の大部分は、タンパク質中のAsn−X−Ser/Thr残基のAsnにN−結合を介して糖質が結合している。このため、この種の結合様式をもつ糖タンパク質は、血清型糖タンパク質やN結合型糖タンパク質と呼ばれる。そして、N結合型糖タンパク質に結合する糖鎖はN結合型糖鎖と呼ばれる。
一方、唾液腺や顎下線などの腺組織から分泌される粘液や胃、小腸などの消化管内表面の粘膜組織の主成分であるタンパク質は、Ser/ThrにO−結合を介して糖質が結合している。このため、この種の結合様式をもつ糖タンパク質は、ムチン型糖タンパク質やO結合型糖タンパク質と呼ばれる。そして、O結合型糖タンパク質に結合する糖鎖はO結合型糖鎖と呼ばれる。
生体内には、例えば、IgG、IgEのようにN−結合型糖鎖を含むもの、顎下腺ムチンのようにO−結合型糖鎖のみを含むもの、そしてエリスロポエチンのようにN−結合型およびO−結合型糖鎖の両方を含むものなど、多様な糖タンパク質が存在する。
これらの糖タンパク質の生体内における機能には、例えばIgGにおけるタンパク質の立体構造保持、ムチンにおける生体異物からの防御、エリスロポエチンにおける血中消失速度の調節、アシアロ糖タンパク質の肝臓への取り込みと代謝などがあり、生理活動において極めて多彩かつ重要な役割を担っている。また、これらの糖鎖は、細胞膜表面や細胞間マトリックス中に広く分布し、生体情報ネットワークの中枢的な役割の一端を担っていると考えられているが、その詳細については不明な点が多い。
このように、糖タンパク質の糖鎖は多彩な機能を果たしているが、その機能を解明するためには、糖タンパク質に結合している糖鎖をタンパク質から切り離し、切り離された糖鎖を分離後、その構造を解析しなければならない。糖鎖の分離ならびに構造解析法としては、最近の分析機器の発展ならびに構造解析法の進歩が目覚しく、高速液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動法などの高性能分離手段によって、糖タンパク質に由来する糖鎖を分離することができる。そして、分離した糖鎖は、マトリックス支援レーザーデソープション時間飛行型質量分析法やエレクトロスプレー質量分析法による分子量測定、ならびにフラグメントイオン解析による配列決定、さらに高磁場核磁気共鳴法などにより構造解析を行うことが比較的容易となった。
このように、糖タンパク質から切り離された糖鎖は、分析に必要な量を得ることが困難な場合が多いなど、いくつかの問題を抱えてはいるものの、最新の分析機器を駆使することによりその構造解析のために多くの手法が提供されている。
しかしながら、糖タンパク質から糖鎖を切り離す方法については、現在に至るまで、多くの研究者によって簡便な方法の開発が続けられているが、簡便な方法は開発されておらず、未だ糖鎖分析において熟練と時間を要する工程となっている。そして、糖鎖を切り離す工程が、糖鎖分析の律速段階となっている。
例えば、アスパラギンに結合しているN−結合型糖タンパク質からN−結合型糖鎖を切り離す方法として、化学的方法および酵素法が主に用いられる。
具体的には、最も広く用いられる化学的方法として、ヒドラジン分解法がある。ヒドラジン分解法は、対象の糖タンパク質を無水ヒドラジンに溶かし、高温(100℃以上)で長時間加熱して糖鎖を切り離す方法である。ところが、周知のごとく無水ヒドラジンは、猛毒かつ易爆発性であり、極めて慎重な取り扱いを要する。ヒドラジンを用いて糖タンパク質から糖鎖を切り離す方法として、いくつかの方法が知られているが、いずれも3〜24時間高温反応を行った後、ヒドラジン留去、糖鎖中のアミノ糖のアミノ基の再アセチル化とその後処理などの複数工程を必要とし、全工程が終了するまでに少なくとも2日以上(48時間以上)を要する。
N−結合型糖タンパク質からN−結合型糖鎖を切り離す別の方法である酵素法は、糖タンパク質をあらかじめトリプシンなどのプロテアーゼで消化して得られた糖ペプチドを基質として、フラボバクテリウム属の微生物に見出されたN−グリカナーゼFあるいはアーモンド種子中に見出されたN−グリコアミダーゼAを使用して糖鎖を切り離す方法である。酵素法は、ヒドラジン分解法と異なり安全であるが、酵素を使用する方法であるので熟練を有し、さらには通常酵素反応に一昼夜以上(24時間以上)を必要とする。また、N−グリコシダーゼFについてはリコンビナント製品が市販されているものの非常に高価であり、通常微量スケール(ミリグラム以下)で反応を行わざるを得ない。さらに大きな問題として、酵素のタンパク質としての分子サイズが原因で、糖タンパク質に結合している糖鎖によっては、糖タンパク質から糖鎖が切り離されにくいか、あるいは全く切れ離されない場合がある。酵素の作用が糖タンパク質によって差があるという欠点は、細胞や体液などに直接酵素反応を行うことが不可能であることを意味する。
一方、糖タンパク質中のセリンあるいは、スレオニンの水酸基を介して結合しているO−結合型糖タンパク質から糖鎖を切り離す方法は、化学的方法のみが行われており、酵素法については行われていない。これは、O−結合型糖鎖が8種類のコア構造を持つために、これらのすべての構造を認識して切断できる広いスペクトラムをもつ酵素が現在に至っても見出されていないためである。
したがって、O−結合型糖タンパク質からO−結合型糖鎖を切り離すためには、もっぱらアルカリ分解を利用する方法が採用される。すなわち、この方法は、O−結合型糖鎖とSerまたはThr間の結合がアルカリによって開裂しやすい性質を利用して、O−結合型糖タンパク質を、アルカリの高濃度水溶液に溶かし、長時間(通常48時間以上)インキュベートすることにより糖鎖を切断する方法である。アルカリ水溶液としては通常0.1M〜0.5M水酸化ナトリウム水溶液が使用されるが、高濃度であるため、糖タンパク質から切り離された糖鎖が1位のヘミアセタール基に基づいてβ−脱離反応を受け分解してしまうという致命的な問題を抱えている。
そこで、この問題を解決するために、アルカリ分解による方法では、アルカリ溶液に還元剤(例えばNaBH4)を加えて、糖鎖の切り離し反応が行われる。しかしこの方法では、生成する糖鎖の還元末端が、ヘミアセタール構造ではなく、糖アルコールとなるために、後処理が極めて煩雑である。さらに、糖アルコールは、高感度分析を行うために必要となる蛍光性物質あるいは紫外線吸収気をもつ試薬で標識できないという欠点もある。このため、アルカリ分解による方法の変法として、ヒドラジン分解法も最近よく使用されるが、やはり反応およびその後処理に長時間を要し、さらに易爆発性の試薬を使わなければならないため、汎用性に乏しい。
最近、O−結合型糖タンパク質から効率よく還元末端をそのままの形でO−結合型糖鎖を切り離す方法として、アンモニアにより糖鎖を切り離す方法(Huang,Y.;Mechref,Y.;Novotny,M.V.,2001,Microscale nonreductive release of O−linked glycans for subsequent analysis through MALDI mass spectrometry and capillary electrophoresis.,Anal.Chem.,vol 73,6063−6069.)や、O−結合型糖タンパク質をカラムに吸着させて、O−結合型糖鎖を切り離す方法(Karlson,N.G.;Packer,N.H.,2002,Analysis of O−linked reducing oligosaccharides released by an in−line flow system.,Anal.Biochem.,vol 305,173−185.)が報告されている。
しかし、上記従来のいずれの方法も、切り離されたO−結合型糖鎖が、β−脱離反応を起こしてしまうので、さらに糖鎖が分解するのを防ぐために、緩和な条件下で長時間反応を行わざるを得ないという問題点を有している。このため、多数検体を扱わなければならない臨床分析やハイスループット分析が必要なプロテオームあるいはプロテオミクス解析への適用に大きな障害となる。
このように、糖鎖の機能解明が進まなかったのは、糖鎖を構成する単糖がそれぞれ4〜5カ所の水酸基を有し、その構造が極めて多様なこともあるが、複合糖質から糖鎖を切り離す簡便かつ迅速な方法が見出されていないことが最大の理由である。特に、糖タンパク質は、分子量が数万〜数十万に及ぶタンパク質と糖鎖の複合体であり過去30年にもわたって優れた糖鎖の切り離し法が模索されてきたが、現在に至っても汎用的な優れた方法は見出されていない。
したがって、簡便かつ短時間、しかも安全に糖タンパク質から糖鎖を分離する方法が切望されている。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡便かつ短時間でグリコシド結合を切断して効率的に糖を分離できる糖の分離方法、そのような分離方法を臨床分析やハイスループット解析が必要なプロテオームまたはプロテオミクス解析を行うための糖分離システム、糖分離用試薬キット、糖分離用標準化試料、並びに糖の評価方法および評価システムを提供することにある。
【発明の開示】
本発明者は、鋭意に検討した結果、フローインジェクション分析法を応用し、流路内を流しながら、アルカリ溶液と糖タンパク質などの糖含有化合物を含む試料溶液とを接触させれば、従来よりも反応時間を飛躍的に短縮し、しかも反応に用いる試薬の量を最小限に抑えることができ、環境にも配慮された分子内のグリコシド結合を切断できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の糖の分離方法は、グリコシド結合含有化合物を含む試料溶液のグリコシド結合を切断し、試料溶液から糖を分離する糖の分離方法であって、流路内を連続して流動するアルカリ溶液に試料溶液を導入し、流路内を流動させながらアルカリ溶液と試料溶液とを混合することを特徴としている。
すなわち、本発明の糖の分離方法は、フローインジェクション分析法(Flow Injection Analysis:以下FIA法と略す)を利用して、アルカリ溶液とグリコシド結合を有する化合物を含む試料溶液とを流路中に流しながら反応させるものである。
FIA法とは、内径0.5〜1.0mm程度のチューブ等に分析試料溶液を注入し、この試料溶液流れに反応試薬を混合・反応させた後、吸光光度法・蛍光光度法等によって分析対象物を検出する方法である。また、FIA法は、ISOやJISK0126にも規定されている。現在、FIA法は、主として、土壌、上下水、工業排水中の無機有害物質を分析する方法として利用されている。
しかしながら、本発明の糖の分離方法のように、グリコシド結合含有化合物から糖を分離する方法に、FIA法が適用された例は知られていない。
上記の発明によれば、流路内に試料溶液を導入すると、流路内を流れながらグリコシド結合含有化合物を含む試料溶液とアルカリ溶液とが接触する。すなわち、試料溶液中に含まれるグリコシド結合含有化合物のグリコシド結合を切断する反応は、流路内を流れながら進行する。これにより、試料溶液から糖を分離する反応時間を、分単位に短縮することができる。従来用いられる糖タンパク質から糖鎖を分離する反応(酵素法、アルカリ分解法)の所要時間は、日単位(一昼夜以上)であったので、本発明の糖の分離方法によれば、その反応時間を飛躍的に短縮することができる。
また、従来のアルカリ分解法では、分離した糖鎖の分解を防ぐために、還元剤を使用するので、分離された糖は糖アルコールであった。このため、糖アルコールの単離が困難であった。これに対して、上記の発明によれば、還元剤を使用しないので、グリコシド結合含有化合物中の糖は、ケトースまたはアルドースとして分離できる。このため、容易に糖を単離することができる。
さらに、上記の発明によれば、FIA法を応用しているので、FIA法の効果が最大限に得られる。すなわち、1)操作が簡単、2)迅速な処理、3)高精度な分析、4)コスト削減、などの効果も得られる。
本発明の糖の分離方法は、特に、グリコシド結合含有化合物分子内における糖と糖以外のグリコシド結合を、短時間で効率的に切断し、糖を分離するのに好適である。
上記グリコシド結合含有化合物は、複合糖質、とりわけ糖タンパク質であることが好ましい。糖タンパク質は、N結合型またはO結合型糖タンパク質に分類されるが、本発明はいずれの糖タンパク質にも適用可能である。
糖タンパク質や糖脂質などの複合糖質は、生体高分子(バイオポリマー)であり、細胞間の認識、酵素活性の調節、ホルモン様活性の発現など、種々の機能を有している。これらの機能は、複合糖質中の糖鎖が重要な役割を担っていると考えられている。また、細胞表面に存在する糖鎖は、ガン化に伴い構造が変化するので、正常細胞とガン細胞とを区別するための重要なマーカーとなる。糖鎖の機能についてはまだ知られていないことも多いため、複合糖質から糖鎖を分離しその機能を解明する研究が精力的に行われている。ところが、従来、複合糖質から糖鎖を分離する方法として用いられる酵素法やアルカリ分解法は、反応時間が極めて長い(日単位)ため、多くの試料を短時間で分析することができない。
本発明の糖の分離方法は、反応時間が極めて短時間(分単位)であるので、多数の試料にも容易に対応できる。このため、本発明の糖の分離方法を用いて複合糖質中の糖鎖を分離し、その構造や機能を解析するスピードが飛躍的に向上する。その結果、新規医薬品の開発、各種疾病マーカーなどの発見、臨床分析やハイスループット分析が必要なプロテオーム解析への応用が大いに期待できる。
上記アルカリ溶液と試料溶液とを混合した溶液を30〜150℃に加温した後、30℃未満に冷却することは好ましい。
上記試料溶液とアルカリ溶液とを接触させる温度が高すぎると分離した糖の分解反応が進行し、温度が低すぎるとグリコシド結合を切断する時間が長くなる。
上記の発明によれば、グリコシド結合をアルカリ溶液によって切断する反応を30〜150℃で行った後、反応溶液を30℃未満に冷却することによって分離した糖の分解反応を防ぐことができる。これにより、より短時間かつ効率的に試料溶液中のグリコシド結合を切断し、糖を単離することができる。
本発明の糖の分離方法では、試料溶液とアルカリ溶液とを流路内に流しながら、グリコシド結合を切断して試料溶液から糖を分離する。つまり、分離した糖の溶液には、アルカリ溶液が含まれる。
したがって、試料溶液とアルカリ溶液とを混合した溶液、すなわち分離した糖の溶液から、アルカリを除去することは好ましい。これにより、分離した糖の分解を防ぐことができ、グリコシド結合含有化合物に含まれる糖を溶液として単離することができる。
本発明の糖の分離方法では、試料溶液から分離した糖を標識化することが好ましい。すなわち、分離した糖を標識化した誘導体に導くことが好ましい。
試料溶液に含まれる複合糖質の種類にもよるが、分離した糖の溶液は、通常、1種以上の糖を含んでいる。したがって、例えば、構造が未知の糖の構造を決定するには、複数の糖(糖鎖を含む)を含む、分離した糖の溶液から、各糖を分離することが好ましい。前述のように、本発明の糖の分離方法によって分離された糖は、ヘミアセタール構造を形成できる、ケトースまたはアルドースである。このため、分離された糖は、例えば、アミノ基を含有する化合物と容易に反応し、標識化した糖誘導体に容易に導くことができる。
このようにして標識化した糖誘導体は、容易に検出することができるので、高感度分析が可能となる。さらに、試料溶液をスケールアップした場合にも対応可能であり、これまで困難であった糖鎖の調製などに利用できる。なお、「糖鎖の調製」とは、例えば、多量の試料溶液を用い、この試料溶液に含まれる糖鎖を単離することを示している。前述のように、本発明の糖の分離方法では、分離した糖の分解反応を防げるため、試料溶液の量に関わらず、効率的な糖鎖の調製が可能である。すなわち、試料溶液から効率よく糖鎖を取り出すことができる。これにより、例えば、疾患に関与する糖鎖の調製や、その糖鎖の構造解析などが可能となり、疾患のメカニズムの解明や、それによる新薬の開発に役立てることができる。
本発明の糖分離システムは、グリコシド結合含有化合物を含む試料溶液とアルカリ溶液とを流動させる細管と、細管にアルカリ溶液を連続的に供給するアルカリ溶液供給手段と、細管に試料溶液を導入する導入手段と、細管を流動する溶液の温度を制御する温度制御手段と、細管から流出した溶液に含まれるアルカリを除去する除去手段とを備えていることを特徴としている。
本発明の糖分離システムは、FIA法を応用したものである。すなわち、アルカリ溶液供給手段によってアルカリ溶液を細管内に連続して流しておき、細管の途中に設けた試料溶液導入手段から一定量の試料溶液を、アルカリ溶液の流れの中に導入する。
その結果、試料溶液は、アルカリ溶液の流れによって細管を流動しながら拡散して、アルカリ溶液と混合され、グリコシド結合の切断反応が進行する。そして、グリコシド結合の切断反応を容易に進行させるために、温度制御手段が、細管を流れる試料溶液とアルカリ溶液との混合溶液を加温する。これにより、短時間でグリコシド結合が切断される。
さらに、温度制御手段を通過した細管は、温度制御手段による加熱状態から解放され、直ちに冷却される。これにより、切断された糖のアルカリによる分解反応を防ぐことができる。また、切断された糖を含む溶液に含まれるアルカリ溶液は、除去手段によって取り除かれる。これにより、確実に、アルカリによる糖の分解反応を防ぐことができ、切断された糖のみを含む溶液として単離することができる。
このように、本発明の糖分離システムは、試料溶液およびアルカリ溶液の細管への供給(送液)、細管への試料溶液の導入、試料溶液とアルカリ溶液との混合・反応をインライン方式で行う。
本発明の糖分離システムは、さらに、細管から流出した溶液中の糖を検出する検出手段を備えていることが好ましい。上記の発明によれば、除去手段の上流に備えられた検出手段が、細管から流出した溶液中の糖を検出する。これにより、糖を含む溶液のみを、後続する除去手段に送ることができ、除去手段を通過した溶液を、アルカリ溶液を含まない糖のみを含む溶液として単離できる。また、除去手段がアルカリ溶液によって劣化するのを防ぐこともできる。
また、上記細管の内径は0.1mm〜2mmであり、かつ、温度制御手段によって加熱される細管の長さは1〜20mであることは好ましい。これにより、グリコシド結合の切断反応を短時間で行うことができると共に、アルカリによる糖の分解反応も防ぐことができ、より効率よく試料溶液から糖を分離することができる。
本発明の糖分離用試薬キット(糖分離用の試薬セット)は、本発明に係る糖の分離方法、または糖分離システムに用いる糖分離用試薬キットであって、試料溶液を調製するための調製試薬と、所定濃度のアルカリ溶液とを含んでいることを特徴としている。
これにより、この試薬キットにグリコシド結合含有化合物を添加するだけで、試料溶液を調製することができる。したがって、本発明に係る糖の分離方法および糖分離システムを利用して、より短時間で試料溶液から糖を分離することができる。さらに、糖分離用試薬キットは、所定濃度のアルカリ溶液も含んでいるので、糖の分離方法および糖分離システムを、同一条件で実施することができる。
なお、上記「調製試薬」とは、試料溶液を調製するために使用する試薬であって、これには、試料溶液を調製するための溶液などの固体および液体試薬はもちろん、試料溶液に導入する気体、さらには、例えば、血液や尿などの生体試料から試料溶液を調製するために用いるカラムなどの装置も包含するものとする。
本発明の糖分離用標準化試料は、本発明に係る糖の分離方法、または糖分離システムに使用するための糖分離用標準化試料であって、糖構造が既知のグリコシド結合含有化合物からなるものである。
上記糖分離用標準化試料は、糖構造が既知のグリコシド結合含有化合物からなるものである。例えば、ウシ顎下線ムチン、フェツイン、ツバメの巣、赤血球グリコホリンなどの糖タンパク質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質などの糖脂質といった、糖鎖構造が既知の複合糖質、化学的に合成した糖含有化合物、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
これにより、糖構造が未知の試料溶液から糖を分離した結果と、糖分離用標準化試料から糖を分離した結果とを比較することによって、試料溶液に含まれる糖の構造を推定することができる。
この糖分離用標準化試料が、糖分離用試薬キットに含まれることは好ましい。これにより、糖構造が未知の試料溶液の分離結果と、糖分離用標準化試料の分離結果とを、同一条件で比較することができるので、より信頼性高く、試料溶液に含まれる糖の構造を推定することができる。
このように、本発明にかかる糖分離用試薬キットおよび糖分離用標準化試料を、糖の分離方法や糖分離システムに使用することによって、糖の構造解析を短時間で行うことができる。また、試料溶液中の糖の分離からその糖の構造解析までを、連続的に実施することができる。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明にかかるインフロー化学反応システムの概略構成を示す構成図である。
図2(a)図2(b)は、図1のインフロー化学反応システムを使用し、温度と恒温槽内の反応チューブの長さとを変化させてウシ顎下腺ムチンからの糖鎖を切り離した結果を示す図であり、反応チューブの長さが1.5mの結果を示す図である。
図3(a)図3(b)は、図1のインフロー化学反応システムを使用し、温度と恒温槽内の反応チューブの長さとを変化させてウシ顎下腺ムチンからの糖鎖を切り離した結果を示す図であり、反応チューブの長さが3mの結果を示す図である。
図4(a)図4(b)は、図1のインフロー化学反応システムを使用し、温度と恒温槽内の反応チューブの長さとを変化させてウシ顎下腺ムチンからの糖鎖を切り離した結果を示す図であり、反応チューブの長さが5mの結果を示す図である。
図5(a)図5(b)は、図1のインフロー化学反応システムを使用し、温度と恒温槽内の反応チューブの長さとを変化させてウシ顎下腺ムチンからの糖鎖を切り離した結果を示す図であり、反応チューブの長さが10mの結果を示す図である。
図6は、図1のインフロー化学反応システムを使用してウシ顎下腺ムチンから切り離された糖鎖のMALDI−TOF MSのスペクトルである。
図7は、ウシ顎下腺ムチンに含まれる主な糖鎖と、図6のMALDI−TOF MSの結果を示す図である。
図8は、図1のインフロー化学反応システムを使用してウシ顎下腺ムチンから切り離された糖鎖をHPLCによって分析した結果を示す図である。
図9は、実施例2において、図1のインフロー化学反応システムを使用してHela細胞およびU937細胞から切り離されたO結合型糖鎖を、分析した結果を示すグラフである。
なお、各図面の各符号は、A:インフロー化学反応システム(糖分離システム),1:アルカリ溶液,2:不活性ガスボンベ,3:ポンプ(アルカリ溶液供給手段),4:サンプル注入装置(サンプル導入手段),5:混合装置,6:恒温槽(温度制御手段),7:反応チューブ(細管・流路),8:検出器(検出手段),9:記録部,10a・10b:切換バルブ,11a・11b:廃棄部,12:イオン交換カラム(除去手段),13:サンプルチューブ,14:糖鎖(糖)である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施の一形態について、図1に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の糖タンパク質から糖鎖を切り離す方法は、流路内を流動させながらグリコシド結合含有化合物を含む試料溶液とアルカリ溶液とを接触させることにより、グリコシド結合含有化合物中のグリコシド結合を分解し、試料溶液から効率よく糖を分離する方法である。
ここで、上記「グリコシド結合含有化合物」とは、分子内に糖とグリコシド結合した部分構造を有する化合物を示している。このグリコシド結合含有化合物としては、糖にペプチド、タンパク質または脂質、または塩基が結合した複合糖質、すなわち、糖タンパク質、糖脂質、核酸などを挙げることができる。なお、上記グリコシド結合含有化合物中の糖は、単糖であってもよいし、オリゴ糖または多糖といった糖鎖を形成するものであってもよい。
グリコシド結合は、例えば、糖の還元末端(すなわち、アノマー水酸基)と、糖またはそれ以外の化合物の官能基(水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、チオール基(−SH))との脱水縮合によって形成される。また、上記水酸基、アミノ基、チオール基は、アルドースまたはケトースとアセタールを形成しうる官能基ということもできる。したがって、上記グリコシド結合含有化合物は、1以上のO−グリコシド結合、N−グリコシド結合、またはS−グリコシド結合を含有する化合物と言い換えることもできる。
以下の説明では、グリコシド結合含有化合物が糖タンパク質であり、糖タンパク質に含まれる糖鎖を分離する方法を例に挙げて説明する。
最初に、本発明にかかる糖タンパク質中の糖鎖を分離する方法の原理について説明する。
従来、糖タンパク質から糖鎖を切り離す方法としては、主にアルカリ分解法が使用されている。しかし、アルカリ分解法では、切り離された糖鎖が、アルカリによりさらに分解を受けるため、その分解反応をできるだけ防ぐために緩和な条件で反応を行わなければならなかった。
アルカリ分解法による糖鎖を切り離す方法では、下記式(1)および(2)に示すように、2段階の反応が進行する。

従来のアルカリ分解法では、式(2)に示すような、糖鎖の分解反応(例えば、β−脱離反応)を抑制するために、還元剤存在下で分解反応が行われる。その結果、糖鎖の還元末端も還元剤により還元され、最終的に得られる糖鎖は、糖アルコールとして得られる。すなわち、最終的に得られる糖鎖は、アルドースまたはケトースのカルボニル基が還元された糖アルコールとして得られる。つまり、最終的な糖鎖は、ヘミアセタール構造を形成できない直鎖状の糖アルコールであるので、アルカリ分解法では後処理が非常に煩雑なものとなってしまう。
そこで、本願発明者は、式(1)のグリコシド結合の切断反応のみを行い、式(2)の分解反応が進行する前に、式(1)において切り離された糖鎖を反応系から分離することができれば、糖鎖を効率よく得ることができると考え、そのようなインフロー化学反応システムを発明するに至った。
このインフロー化学反応システムは、高温で式(1)の反応を一気に行い、式(2)の反応が進行する前に、糖鎖を反応系から分離するものである。これにより、反応時間が大幅に短縮される。
図1は、インフロー化学反応システム(糖鎖の分離装置・糖分離システム)Aの概略構成を示す図である。このシステムの基本構成は、アルカリ溶液1を反応チューブ7に連続的に送液するためのポンプ(アルカリ溶液供給手段)3、サンプル注入部(試料溶液導入手段)4、恒温槽(温度制御手段)6、反応チューブ(細管・流路)7、検出器8、切換えバルブ10a・10b、およびイオン交換カラム(除去手段)である。
アルカリ溶液1は、不活性ガスボンベ2からチッ素やアルゴンなどの不活性気体で満たされており、ポンプ3により一定流速でシステム内を流れるようになっている。
ポンプ3の後続にはサンプル注入部4が配置され、糖タンパク質を含む試料溶液は、ここから反応チューブ7内を一定流速で連続的に流れるアルカリ溶液に導入される。サンプル注入部4から試料溶液が注入されると、混合装置5は所定時間、試料溶液とアルカリ溶液とを混合する。そして、その混合溶液が、恒温槽6に供給される。そして、混合溶液は、恒温槽6によって一定温度に保持される。糖タンパク質から糖鎖を切り離す反応は、恒温槽6内で起こる。つまり、混合溶液は、一定の温度で、糖タンパク質のグリコシド結合を切断して糖鎖を分離しながら恒温槽6中の反応チューブ7を進行する。
なお、糖タンパク質の種類によっても異なるが、グリコシド結合が切断される反応速度は、恒温槽6を加熱しなければ非常に遅く、ほとんどの糖鎖は分離されないとみなすことができる。
恒温槽6を通過すると、反応チューブ7が恒温槽6の加熱から解放されて室温に戻り、反応チューブ7の混合溶液が急激に冷却される。このため、恒温槽6を通過後の反応チューブ7では、グリコシド結合が切断される反応速度は、無視できる程度まで低下する。さらに、恒温槽6での反応時間は非常に短いので、分離された糖鎖のβ脱離反応もほとんど無視できる。
このように、インフロー化学反応システムAは、試料溶液とアルカリ溶液とを、恒温槽6で短時間加熱することにより、式(1)のみを効率的に進行させることができる。これにより、糖鎖を分離する時間は、分単位となり、従来よりも大幅に短縮できる。
インフロー化学反応システムAでは、ポンプ3によって一定流速でアルカリ溶液が流れているため、サンプル注入部4から導入された試料溶液が恒温槽6から溶出してくる時間を容易に計算できる。さらに、恒温槽6を通過した反応チューブ7から溶出した混合溶液は、検出器8でモニターし、切り離された糖鎖が溶出する時間に、バルブ10aをWaste(廃棄部)11a側からイオン交換カラム12側へ切り換える。こうして、糖鎖を含む混合溶液だけを陽イオン交換樹脂を充填したイオン交換カラム12に通過させる。これにより、糖鎖を含む混合溶液中のアルカリを除去することができ、糖鎖14をサンプルチューブ13に捕集することができる。なお、イオン交換カラム12とバルブ10bとの間に、別の検出器8を設ければ、その検出器8でモニターしながらバルブ10bを切り換えることによって、確実に糖鎖14を含む溶液のみをサンプルチューブ13に捕集できる。
いま仮に、30℃で48時間かかり、10℃について反応速度が2倍になる糖の分離反応を、インフロー化学反応システムAを用いて90℃で行ったとすれば、反応速度は温度の累乗で増加すると考えられるので、90℃での反応速度は、30℃の反応速度の64倍になる。
後述する実施例に示す通り、10mの反応チューブ7を備えたインフロー化学反応システムAを用いて、ウシ顎下腺ムチンから糖鎖を分離すると、極めて効率よくO結合型糖鎖を切り離すことができる。この実施例では、糖鎖の分離は、3分間(180秒)で恒温槽6内を通過することにより完了する。したがって、従来のアルカリ分解反応で必要とされる反応時間48時間と比較すると、本発明では、実に1/1000に達する反応時間の短縮が可能となった。90℃の恒温槽6中の反応チューブ7から混合溶液が溶出すると、反応チューブ7は極めて細いチューブ(内径0.3mm)であるので、反応温度は直ちに室温に戻る。さらにアルカリ溶液を除去(脱塩)するために、イオン交換カラム12(容量1mL)を通すので、O−結合型糖鎖14を効率よくサンプルチューブ13に回収できる。
なお、例えば、糖タンパク質中の糖と糖とのグリコシド結合が切断される反応速度は、タンパク質と糖とのグリコシド結合が切断される反応速度よりも、非常に遅いので、サンプルチューブ13に回収される糖鎖14は、糖が切断されない。すなわち、試料溶液に含まれる糖鎖の構造は維持される。このようにして、糖タンパク質を含む試料溶液から糖鎖を、極めて短時間かつ効率よく分離し、分離した糖鎖を効率よく捕集することができる。
以上のように、インフロー化学反応システムAでは、アルカリ溶液1が連続的に一定速度で流れる反応チューブ7内に、糖タンパク質を含む試料溶液を添加する。その結果、糖タンパク質中の糖鎖は、一定温度に保持された恒温槽6内の反応チューブ7内で切り離される。試料溶液とアルカリ溶液1との混合溶液が恒温槽6から流出する時間は極めて短時間(通常3分以内)であるので、恒温槽6の外部に溶出される溶出液を、イオン交換カラム12に通すことにより、溶出液からアルカリを除去できる。すなわち、イオン交換カラム12は、試料溶液から糖鎖を分離した後の、後処理装置ともいえる。
このように、インフロー化学反応システムAは、試料溶液から、簡便かつ迅速に、しかも効率よく糖を分離することができる極めて有用なシステムである。したがって、未知または既知の糖鎖の1次配列を決定する糖鎖自動シーケンサーとしても利用できる。
さらに、インフロー化学反応システムAではすべての操作をインライン反応系で実施するので、従来の方法で必要とされる中和、脱塩などの後処理を必要としない。また、インフロー化学反応システムAは、オートサンプラーおよびフラクションコレクターを使用することにより、ハイスループット化を容易に達成することができる。
また、従来の方法と異なり還元剤を使用しないので、サンプルチューブ13に捕集した糖鎖14はアルドースまたはケトースであり、ヘミアセタール構造を形成できる。したがって、分離した糖鎖14は、容易に標識化し、糖誘導体に導くことができるので、高感度検出にも対応できる。それゆえ、サンプルチューブ13に複数種類の糖鎖誘導体が含まれていても、例えばHPLCなどによって糖鎖誘導体を分離できる。そして、分離した各糖鎖誘導体の解析を容易に行うことができる。解析技術は非常に発達しているので、例えば、質量分析、NMR、HPLC、などによって、糖鎖の解析を行うことができる。これにより、糖鎖の1次配列の決定など、糖鎖の構造解析を行うことができる。
標識化の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、蛍光物質、酵素類、放射性同位元素、発光性物質、紫外吸収物質、スピンラベル化剤、などを糖に結合させればよい。これにより、分離した糖の溶液に、不純物が存在する場合や複数の糖を含む場合であっても、その溶液から標識化した糖を分離することができる。
標識化するための試薬としては、アミノ基を含有する化合物、例えば、3−アミノ安息香酸、などのアミノベンゼン誘導体、2−アミノベンゼン誘導体、アミノナフタレン誘導体、APTS(9−アミノピレン−1、4、6トリスルフォネート)などを使用することができる。これにより、高感度で糖誘導体を検出できるので、分離した糖の溶液から、標識化した糖誘導体を、分離することができる。
さらに、別途、各種糖を標識化してそれぞれの糖を分離したデータを蓄積し標準データを作成すれば、結合している糖が不明の試料溶液であっても、標準データと試料溶液の分離データとを比較することにより、試料溶液中に含まれる糖の構造を推定することもできる。例えば、標識化した糖誘導体をHPLCによって分離した標準データを作成すれば、同条件で分離した試料溶液の保持時間によって、糖の構造を推定することができる。また、標識化した糖誘導体を質量分析、NMR解析などを組み合わせることによって、糖の構造解析を行うことができる。
なお、図1のインフロー化学反応システムAでは、例えば、以下の点を変更してもよい。
アルカリ溶液は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物のような無機アルカリ類、アンモニア、トリエチルアミンなどの含窒素化合物のような有機アルカリ類を用いることができる。
アルカリ溶液が低濃度であると糖タンパク質から糖鎖が分離される反応速度が遅くなり、反応時間が長くなる。一方、アルカリ溶液が低濃度であると、分離された糖鎖の分解反応の反応速度が速くなり、糖鎖が分解しやすくなる。このため、アルカリ溶液の濃度は、0.05〜2.0Mであることが好ましく、0.1〜0.5Mであることがより好ましい。これにより、短時間で糖タンパク質から糖鎖を切り離すことができ、かつ、切り離した糖鎖の分解も防ぐことができる。
恒温槽6内のスペースを有効利用するために、反応チューブ7は螺旋状となっているが、反応チューブ7の形状は特に限定されるものではない。
また、ポンプ3の流速は、反応チューブ7の長さや直径によって適宜設定すればよく特に限定されるものではない。通常、流速は、0.05〜5mLとすることが好ましく、0.1〜1.0mLとすることがより好ましい。これにより、一定の速度で反応チューブ7に試料となる糖タンパク質とアルカリ溶液とを導入し、糖鎖を分離することができる。
恒温槽6の温度が低すぎると、糖タンパク質から糖鎖が分離される反応速度が遅くなり、反応時間が長くなる。一方、恒温槽6の温度が高すぎると、分離された糖鎖の分解反応の反応速度が速くなり、糖鎖が分解しやすくなる。このため、恒温槽6の温度は、室温〜150℃の範囲に保てばよい。このうち、好ましくは30〜100℃、より好ましくは70〜90℃に保つとよい。これにより、短時間で糖タンパク質から糖鎖を切り離すことができ、かつ、切り離した糖鎖の分解も防ぐことができる。
反応チューブ7の内径は、大きすぎると恒温槽6で加熱したときに反応チューブ7を流れる糖タンパク質とアルカリ溶液との混合溶液の温度を一定にすることができず、また恒温槽6から出たときに混合溶液をすぐに冷却できなくなる。その結果、糖鎖の分離反応の進行が遅くなったり、糖鎖の分解反応の進行が速くなったりする。そこで、反応チューブ7の内径は、小さいことが好ましい。具体的には、その内径は、0.05mm〜2mmとすることが好ましく、0.1mm〜0.5mmとすることがより好ましい。これにより、上記混合溶液の加熱および冷却にムラが生じないので、糖鎖の分離反応が効率よく進行し、分離した糖鎖の分解を防ぐことができる。
また、反応チューブ7の長さは、長すぎると恒温槽6での加熱時間が長くなり、反応チューブ7の途中で糖鎖の分離反応が終了し、糖鎖の分解反応が進行する。また、その長さが短すぎると、糖鎖の分離反応が完全に終了せず、未反応の糖タンパク質が残る。このため、特に限定されるものではないが、恒温槽6の内部の反応チューブ7の長さは、1m〜20mであることが好ましく、3m〜10mがより好ましい。これにより、糖鎖の分離反応が効率よく進行し、分離した糖鎖の分解を防ぐことができる。
反応チューブ7の素材は、例えば、テフロン(登録商標)など、アルカリ溶液に対して安定な素材であれば特に限定されるものではない。
図1のインフロー化学反応システムAでは、混合装置5によって、所定時間、試料となる糖タンパク質溶液とアルカリ溶液とを混合した後、恒温槽6の反応チューブ7に混合溶液を導入しているが、予め試料溶液をアルカリ溶液とを混合した混合溶液を、サンプル注入器4から導入する構成としてもよい。この場合、混合装置5は不要となる。
イオン交換カラム12を、イオン透析膜やイオン交換膜あるいは電気脱塩装置などに交換すれば、容易にスケールアップすることが可能であり、さらに時間を短縮して糖鎖を回収することができる。さらに、イオン交換カラム12の後続にフラクションコレクターを設置することにより、全自動型の糖分離システムを構成できる。
イオン交換カラム12の下流または上流に、ある糖鎖を抗原とする抗体を固定化した抗体カラムを設け、その抗体カラムに細管からの流出溶液を通せば、試料溶液中にその抗原となる糖鎖が含まれるか否かを判定することができる。すなわち、試料溶液中の存在する糖鎖抗原を検出することができる。さらに、抗体カラムを洗浄して、抗原−抗体結合を切断すれば、抗体に結合した抗原を単離することもできる。
なお、以上の説明では、糖タンパク質から糖鎖を切り離す方法について説明したが、分子内にグリコシド結合を有する糖含有化合物であれば、どのような化合物からも糖(糖鎖)を分離することができる。
このように、インフロー化学反応装置Aを用いて糖タンパク質を含む試料溶液から糖鎖を分離すると、糖鎖の分離速度が劇的にスピードアップし、かつ、反応効率の格段の向上を図ることができる。具体的には、インフロー化学反応装置Aを用いれば、従来、一昼夜以上糖鎖の切り離しに必要であった反応時間が、3分以内に短縮できる。すなわち、反応にかかる操作を500倍以上簡素化できる。さらに、本発明では、還元剤を使用しないので、還元末端を容易に標識化して糖誘導体に導くことができ、高感度分析への適用できる。さらに、この誘導体は、医薬品原料に使用できる可能性がある。
また、少なくとも試料溶液を調製するための調製試薬と、所定濃度のアルカリ溶液とをキット化し、糖分離用試薬キットとすることは好ましい。
これにより、この試薬キットにグリコシド結合含有化合物を添加するだけで、試料溶液を調製することができ、さらに、インフロー化学反応装置Aを常に同一条件で実施することができる。なお、糖分離用試薬キットには、さらに検出感度や、容易に糖を分離するための各種試薬を含んでいてもよい。
また、糖構造が既知のグリコシド結合含有化合物、例えば、後述の実施例のウシ顎下線ムチンなどのを糖分離用標準化試料とすることは好ましい。
これにより、糖構造が未知の試料溶液から糖を分離した結果と、糖分離用標準化試料から糖を分離した結果との各種スペクトルデータを比較することによって、試料溶液に含まれる糖の構造を推定することができる。
この糖分離用標準化試料が、糖分離用試薬キットに含まれることはより好ましい。これにより、同一条件で、糖構造が未知の試料溶液の分離結果と、糖分離用標準化試料の分離結果とを比較することができるので、より信頼性高く、試料溶液に含まれる糖の構造を推定することができる。
このように、本発明にかかる糖分離用試薬キットおよび糖分離用標準化試料を、糖の分離方法や糖分離システムに使用することによって、糖の構造解析を短時間で行うことができる。また、試料溶液中の糖の分離からその糖の構造解析までを、連続的に実施することができる。
本発明の糖分離システム(本システム)、および、糖の分離方法は以下の利点を有しており、有用性が極めて高い。
本システムにより、従来長時間(日単位)を要していた糖タンパク質からの糖鎖の分離時間が、大幅に短縮される。すなわち、従来少なくとも1昼夜以上かかっていた糖タンパク質からの糖鎖の分離を、分単位で実施できる。
複合糖質の機能に関する研究は、特に日米欧の各国で、国家的なプロジェクトとして、熾烈な研究争いが繰り広げられている。複合糖質の機能解析では、主に、複合糖質の精製(単離);複合糖質からの糖鎖の切り離し;糖鎖の分析;が必要となる。このうち、特に、糖鎖の切り離しに関する技術の開発は遅れており、複合糖質解析の律速段階となっている。本システムは、従来よりも極めて短時間(500倍以上)で、糖鎖の切り離すことが可能であるため、有用性が極めて高い。
本システムは、インライン反応装置を利用して、アルカリ溶液(反応試薬)をポンプで送液しながら、複合糖質を含む試料溶液を注入し、試料溶液から糖鎖を切り離すものである。従って、複合糖質などを含む試料をカラムに吸着させた後、カラムにアルカリ溶液を流して反応させる従来の方法とは異なる。
本システムにより、糖タンパク質性化合物(例えば糖タンパク質性医薬品など)の品質評価を容易に行うことができる。また、糖タンパク質性バイオ医薬品の開発、糖鎖関連化合物の品質評価および臨床検査法への応用、糖鎖関連新規医薬品の開発などに貢献する。すなわち、本システムまたは糖の分離方法は、試料を評価する評価システムまたは評価方法として換言することもできる。ここで、「試料を評価」とは、例えば、試料中の糖鎖の分離結果に基づいて、試料に含まれる糖の種類や含有量の同定(推定);試料の由来細胞の同定(推定);正常細胞と疾病状態の細胞とに含まれる糖鎖の比較に基づく糖鎖の疾病への関与の推定;臨床検査;などを示す。すなわち、上記評価システムまたは評価方法によれば、例えば、糖や試料の品質評価、正常細胞と疾病状態の細胞との糖鎖の存在比の違い、疾病を発症しているか否かなどを評価できる。その結果、糖鎖の存在比の違いから糖鎖と疾病との関係を明らかにし、疾病メカニズムの解明や新薬の開発、および臨床検査などに応用できる。また、上記評価システムまたは評価方法は、血清や組織抽出液などの生体試料に存在する複合糖質の糖鎖の変化を追跡する臨床分析などへも適用可能である。
なお、上記糖の評価システム(または評価方法)では、試料中に含まれる糖の存在比に基づいて、試料を評価することが好ましい。後述の実施例のように、試料に含まれる糖鎖の種類が略同じである場合もある。このため、糖の種類だけでは、試料の評価(試料の同定)を行うことが困難な場合も生じる。そこで、試料に含まれる糖の含有量の比率(複数の糖の存在比)試料を評価することにより、信頼性の高い評価を行うことが可能となる。
また、本システムを糖の評価システムとして利用する場合には、前述した試薬キットおよび標準化試料も利用することによって、短時間での評価が可能となる。
また、本システムは、動物試料から、合成が困難な糖鎖を迅速に調製し、新規糖鎖含有医薬品の原料の製造方法にも適用できる。
また、本システムは、O結合型糖タンパク質のみならず、N結合型糖タンパク質から糖鎖を分離することができる。このため、1台の装置でどのような糖鎖の解析も行うことができ、従来の装置に代わる有用なシステムとなる。
また、本システムは、フローインジェクション系で糖鎖を分離し、反応時間も短いので、使用試薬の使用量を大幅に減少することができる。すなわち、また、本システムは、使用試薬にかかるコストを削減し、環境へも配慮した極めて有用な発明といえる。
また、本システムは、糖鎖異常に基づく病態検査や臨床検査産業において、全く新しい分野が開拓される可能性がある。また、本システムでは、これまで日常分析への適用が困難であった糖鎖分析を極めて容易に行えるようになり、例えば、ガンや炎症などの糖転移酵素の質的あるいは量的変化に伴う、血液や尿中糖鎖の分析やガン細胞や炎症組織における糖鎖の変化の追跡により、全く新しい臨床化学分野への展開が期待できる。
さらに、また、本システムは、これらの糖鎖の変化の追跡により糖鎖合成に関連する糖転移酵素や糖加水分解酵素の消長や糖鎖を認識するタンパク質(受容体)の制御に基づく新薬の開発への適用が期待できる。
また、本システムによって新しい機能を有する糖鎖の構造が明らかとなれば、その糖鎖に対する抗体は、抗体医薬や、その糖鎖の検出やスクリーニングに利用できる可能性が極めて高い。
糖転移酵素や糖加水分解酵素の変動は、遺伝的な要因も否定できず、最近欧米では糖鎖が関与する先天的な代謝異常症の研究が精力的に行われている。本発明は出生前診断などの研究を含めたこれらの研究の進展にも大きな貢献を果たすことが期待され、人類の健康と福祉に果たす寄与は極めて大きいと考えられる。
また、本システムは、インフロー化学反応装置を使うため、適当な透析膜やイオン交換膜あるいは電気脱塩装置などを反応恒温槽の後ろに配置することにより容易にスケールアップすることが可能である。これにより、入手しやすいタンパク質(例えば卵白アルブミン、卵黄IgYやウシ顎下ムチン、ブタ胃粘膜ムチンなど)を原料として、インフロー化学反応装置Aによる糖鎖切り離し反応を連続的に行うことにより、従来入手が困難であった糖タンパク質由来の糖鎖を大量に調製することが可能となる。得られた糖鎖はタンパク質性医薬品の高機能化の材料として期待できる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。
〔実施例1〕(ウシ顎下腺ムチンの糖鎖の分離)
ウシ顎下腺ムチンは、生化学用試薬として市販されている代表的なムチン型タンパク質であり、図7に示すような多彩な糖鎖を含む。ウシ顎下腺ムチン(0.1mg)の水溶液(10μL)を、図1に示すインフロー化学反応システムを用いてアルカリ分解した。なお、このシステムでは、流速0.5ml/分で、0.5M水酸化リチウム水溶液をアルカリ溶液とした。イオン交換樹脂の小カラムにより捕集された反応溶液を分子量10000cut offの限外ろ過膜を通して得られるろ過溶液(低分子側、オリゴ糖を含む)中に存在するシアル酸を指標として、アルカリ分解におけるインフロー化学反応装置の効率(反応チューブ長、反応温度)を調べた結果を図2(a)〜図5(b)に示す。なお、図2(a)〜図5(b)では、限外ろ過膜を通して得られるろ過溶液を下層、限外ろ過膜の洗浄液(限外ろ過膜を通らなかった反応溶液)を上層とした。そして、各層の蛍光度の測定結果から、各層に含まれる糖鎖の含有量を算出した。
図4および5に示す通り、ウシ顎下腺ムチンの場合、反応チューブ長5mで反応温度90℃あるいは反応チューブ長10mで反応温度80℃とした場合に、最も効率よくムチンから糖鎖を分離できた。
捕集された回収液を減圧乾燥後、3−アミノ安息香酸誘導体として標識し、HPLCおよびマトリックス支援レーザー脱離イオン化時間飛行型質量分析装置(MALDI−TOF MS)により分析した。MALDI−TOF MSの結果を図6に示す。また、図7にウシ顎下腺中に見出される主なオリゴ糖の3−アミノ安息香酸誘導体(図7では3−AB)の理論分子量(構造式の下の分子量)と予測分子イオン([M+H])およびナトリウムが付加した分子イオン([M+Na])のリストを示したが、インフロー化学反応システムを用いて得られた糖鎖混合物のMALDI−TOF MS(Flow system Aの欄)ではこれらの予測されたイオン類が明瞭に観察された。なお、図7において、「standard」の欄には、従来法によって分離した糖鎖の分子量を示した。
さらに、糖鎖の3−アミノ安息香酸誘導体をHPLCにより分析した結果を図8に示す。図に示す通り、ムチン糖タンパク質から糖が効率よく切り離され糖鎖の還元末端を利用して標識化した糖鎖誘導体にできること、さらに誘導体を分離できることが示された。つまり、本実施例で得られる糖鎖は、ヘミアセタール構造を有したまま得られていることが確認された。なお、HPLCの分析条件は、カラム(ODS(4.6 X 150mm))溶離液(0.1M酢酸アンモニウム緩衝液(pH6.0)のアセトニトリルによる直線的濃度勾配溶出(2%−18%))、流速(1ml/min)、検出(蛍光検出(励起波長305nm、蛍光波長405nm))で行った。
〔実施例2〕(Hela細胞およびU937細胞に含まれる糖鎖の分離)
培養されたHela細胞(ヒト子宮頚癌)およびU937細胞(ヒト組織性リンパ腫)、それぞれ約100万細胞を、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で数回洗浄し、培養液に由来する成分を取り除いた。その後、この細胞をホモジェナイズ後、定法に従い、糖タンパク質を含む膜分画(細胞膜表面に存在する糖タンパク質などの複合糖質)を集めた。次に、この膜分画に界面活性剤(NP−40)を含むリン酸緩衝液(50μL)を加えて可溶化した後、遠心分離した。次に、遠心分離後の上澄液(50μL)を、実施例1と略同様にして、図1に示すインフロー化学反応システムを用いて、糖タンパク質の糖鎖をアルカリ分解した。なお、このシステムでは、流速0.5ml/分、0.5M水酸化リチウム水溶液、反応チューブの長さを2.5m、反応温度(恒温層の温度)を70℃とした。
アルカリ分解後に回収された反応液に含まれるO−結合型糖鎖を、0.5M3−アミノ安息香酸誘導体として標識し、過剰の試薬をゲルろ過によって除去した後、HPLCにより糖鎖を分析した。なお、HPLCの分析条件は、ポリマー型アミノカラム(昭和電工社製;4.0 X 250mm),溶離液(5%酢酸−2%トリエチルアミン−10%アセトニトリル混合溶媒),流速(1.0ml/min),検出(蛍光検出(励起波長 350nm、蛍光波長 425nm))によって、グラジエント法による分析を行った。
図9に示すように、両細胞の膜分画をインライン法による糖タンパク質のアルカリ分解後に得られた糖鎖を、蛍光標識して、アミノカラムで、O−結合型糖鎖を分析した結果のグラフである。同図に示すように、両細胞間で、主要な糖鎖は比較的一致しているが、糖鎖の比率は異なっている。従って、細胞に含まれる糖鎖および種類が同じであっても、その糖鎖の存在比率に基づいて、細胞の評価が可能である。
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用の可能性】
以上のように、本発明によれば、これまで一昼夜以上の時間が必要であった糖タンパク質からの糖鎖の分離を、分単位に短縮することができる。それゆえ、前述したような多くの利点を有しており、ポストゲノムにおけるプロテオーム解析あるいはプロテオミクスに必須となる糖鎖解析の大幅な合理化および省力化を可能とすると共に、高精度解析も可能となる。
【図1】





【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコシド結合含有化合物を含む試料溶液のグリコシド結合を切断し、試料溶液から糖を分離する糖の分離方法であって、
流路内を連続して流動するアルカリ溶液に試料溶液を導入し、流路内を流動させながらアルカリ溶液と試料溶液とを混合することを特徴とする糖の分離方法。
【請求項2】
上記グリコシド結合含有化合物は、複合糖質であることを特徴とする請求の範囲の範囲1に記載の糖の分離方法。
【請求項3】
上記グリコシド結合含有化合物は、糖タンパク質であることを特徴とする請求の範囲1または2に記載の糖の分離方法。
【請求項4】
上記アルカリ溶液と試料溶液とを混合した溶液を30〜150℃に加温した後、30℃未満に冷却することを特徴とする請求の範囲1〜3のいずれか1項に記載の糖の分離方法。
【請求項5】
試料溶液とアルカリ溶液とを含む混合した溶液からアルカリを除去することを特徴とする請求の範囲1〜4のいずれか1項に記載の糖の分離方法。
【請求項6】
上記試料溶液から分離した糖を、標識化することを特徴とする請求の範囲1〜5のいずれか1項に記載の糖の分離方法。
【請求項7】
グリコシド結合含有化合物を含む試料溶液とアルカリ溶液とを流動させる細管と、細管にアルカリ溶液を連続的に供給するアルカリ溶液供給手段と、細管に試料溶液を導入する導入手段と、細管を流動する溶液の温度を制御する温度制御手段と、細管から流出した溶液に含まれるアルカリを除去する除去手段とを備えていることを特徴とする糖含有化合物から糖を分離する糖分離システム。
【請求項8】
上記試料溶液とアルカリ溶液とを細管内に流動させながら、試料溶液中の糖を分離することを特徴とする糖分離システム。
【請求項9】
さらに、細管から流出した溶液中の糖を検出する検出手段を備えていることを特徴とする請求の範囲7または8に記載の糖分離システム。
【請求項10】
上記細管の内径は0.1mm〜2mmであり、かつ、温度制御手段によって加温される細管の長さは1〜20mであることを特徴とする請求の範囲7、8または9に記載の糖分離システム。
【請求項11】
請求の範囲1〜6のいずれか1項に記載の糖の分離方法、または、請求の範囲7〜10のいずれか1項に記載の糖分離システムに用いる糖分離用試薬キットであって、
試料溶液を調製するための調製試薬と、所定濃度のアルカリ溶液とを含んでいることを特徴とする糖分離用試薬キット。
【請求項12】
請求の範囲1〜6のいずれか1項に記載の糖の分離方法、または、請求の範囲7〜10のいずれか1項に記載の糖分離システムに使用するための糖分離用標準化試料であって、
糖構造が既知のグリコシド結合含有化合物からなることを特徴とする糖分離用標準化試料。
【請求項13】
請求の範囲1〜6のいずれか1項に記載の糖の分離方法、または、請求の範囲7〜10のいずれか1項に記載の糖分離システムを用いて、試料を評価することを特徴とする評価システム。
【請求項14】
試料中に含まれる糖の存在比に基づいて、試料を評価することを特徴とする請求の範囲13に記載の糖の評価システム。

【国際公開番号】WO2004/077048
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502815(P2005−502815)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000508
【国際出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】