説明

グリコシル化抗体

【課題】ルイスY抗原を認識する親モノクローナル抗体から誘導されるモノクローナル抗体またはその誘導体若しくはフラグメントを提供する。
【解決手段】該モノクローナル抗体またはその誘導体若しくはフラグメントのFc領域若しくはFc領域等価物において二分化混成型N−グリコシル化パターンを有し、該抗体が少なくとも10倍増加したADCC活性と少なくとも10%減少したCDC活性を有することを特徴とする。該抗体二分化N-アセチルグルコサミン基を有するヒト型化抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二分化された複合型タイプN―グリコシル化パターンを有し、増加したADCC活性および減少したCDC活性を呈する新しいN―グリコシル化抗体または誘導体に関する。
本発明は、ガンの治療のための薬物の調製のための抗体の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は、上皮性細胞の場合には固体の細胞集塊の形成に至る、阻止を受けない細胞増殖のため、形成される。良好な腫瘍組織の場合には、当然細胞増殖は制限され、そして、二次腫瘍または転移は発生しない。しかしながら、ガン疾患において悪性腫瘍形態が形成され、そして、進行しているステージにおいて、二次腫瘍および転移が発生する。最もしばしば、ガンは上皮性腫瘍を有する形態で発生する。そして、中でも、胸部、胃、腸、膵臓、肺、前立腺および卵巣に関する。
【0003】
ガンは、広範囲にわたる疾患であって、多くの場合致命的である。ガンの治療法は、通常、固形腫瘍の除去、および転移をそれぞれ予防し、減らすとされる更なる処理を含む。手術の他に、標準的治療には、化学療法および放射線療法が含まれる。しばしば高度の副作用を含む広範囲の治療にもかかわらず、処理の成功は、不十分である。腸ガンの再発率は、ほぼ45%である。転移性上皮ガンは、ほとんど不治であると考えられる。従って、ガン患者の治療で、転移を予防し、その形成を減らすことは、それぞれ重要である。
【0004】
腫瘍細胞は体液および他の器官の原発腫瘍から播種され得る。これらの播種された腫瘍細胞は、休眠状態にあることがあり、化学療法(放射線療法)によっては攻撃されない。そのような治療中の患者は、治癒された状態にあるようである。しかしながら、それらが「微小残存病変」として記述される、成長しおよび転移する細胞になる場合、休止中の腫瘍細胞には転移の可能性がある。免疫療法は、革新的で可能性のあるガン患者の治療を構成する。能動的、更には受動的な免疫療法は、免疫系をサポートするために認められた手段である。
【0005】
人間の適応免疫系は、2つの必須成分(液性のおよび細胞免疫)から成る。適応免疫反応は、部分的にB-およびT-リンパ球のクローン選択に基づいて、原則として免疫学的記憶の蓄積だけでなくいかなる所望の抗原の認識をも可能とする。適応免疫系のこれらの特徴は、通常、予防接種において有用に述べられている。
【0006】
各B細胞は、定義済みの結合特異性を有する抗体を生産する。この抗体は、それを生じているB細胞の膜における特異的受容体としても存在する。外来物と認識された抗原に対する液性の免疫反応は、B細胞の選択的な活性化に基づいていて、そのB細胞がそれぞれの抗原のエピトープと結合することができるこの種の抗体を生産する。B細胞分化の経過におけるDNA再編成が、抗体多様性のために決定的な役割を演じている。
【0007】
免疫系に干渉するいくつかの考えられる方法がある。
1. 受動的な抗体療法:
治療目的のために、生物のある機能のために必要なその生物の抗体を供給するのが可能である。この種の適用は受動的な免疫療法と呼ばれていて、例えばガンの免疫療法〔グレニーとジョンソン(Glennie M.J. and Johnson P.W.M.), Immunol.Today (2000), 21:403〕、中毒〔シポーとゴイフォン(Chippaux J.P. and Goyffon M.), Toxicon (1998), 36:823; サボローとシェルマン(Sabouraud A, Scherrmann JM.), Therapie (1994), 49:41〕、感染症〔カサデボールとシャーフ(Casadevall A and Scharff M.D.), Clin.Infect.Dis. (1995), 21:150〕等さまざまな医療適用において用いられる。これらの場合、適切に免疫された動物に由来した、または免疫グロブリン遺伝子の不死化を介してさまざまな生物学的若しくは分子生物学的技術(例えばハイブリドーマ技術、バクテリオファージ-ディスプレイテクニック、その他)によって細胞から回収されることができる抗体が、用いられ得る。
【0008】
2.能動的免疫
免疫系を調整するために、抗原による免疫化を用いることができる。抗原は、抗体が結合することができる分子、分子複合体または全部の有機体である。すべての抗原が、免疫反応を誘発するというわけではない、すなわち、すべての抗原が、免疫原であるというわけではない。ある種の小分子は免疫系(ハプテン)によって記録されず、そのようなより小さい分子は、適切な形態で免疫系に提出されることができ、そして、このように、免疫原にされる。この種の方法は、免疫原の分子(いわゆるキャリア分子)に対するハプテンの結合である。能動的免疫法のために、欧州特許1140168号にて説明したように、抗体製剤もまた用いることができる。
【0009】
腫瘍細胞は正常細胞とほとんど同じであって、特異抗体が失われているため、それらが免疫系によって攻撃されるのは限られた範囲である。多くの研究は、腫瘍特異性抗体の調製のため、適切な目標の識別(すなわち標的抗原)の方向を目指している。ガンの治療のための免疫療法は、特異的抗体の直接の投与による受動的な治療か、免疫系を刺激して、生体内で特異抗体を生成するための適切な抗原、即ち標的を用いる能動的なワクチン接種のいずれかよりなる。
【0010】
比較的特異的に腫瘍細胞を破壊する1つのアプローチは、腫瘍関連抗原(TAA)に向けられる抗体を用いる受動的な免疫療法である〔グレニーおよびジョンソン(Glennie M.J. and Johnson P.W.M., Immunology Today (2000), 21;403-410;スコットとウェルト(Scott A.M. and Welt S.), Curr. Opin. Immunol. (1997), 9:717〕。
特定のTAAは、ガンの予防および/または治療のための免疫療法薬の開発に関連した「標的」として定義される。TAAは、好ましくは腫瘍細胞の細胞膜上に発現される構造であり、このことにより非悪性組織と比較して区別を可能とする。そして、このように、特異的抗体の診断および治療的な使用の標的として見ることができる。
【0011】
さまざまなTAAの発見および続く特徴づけの過程で、それらがしばしばガン細胞のための重要な機能を有することが分かった。それらによって変性細胞が悪性表現型(例えば増加した接着能力または成長因子のさらなる取り込み)に特有の特性を有することができる。そして、それは転移を確立することにとって非常に重要である。しかしながら、この種の抗原は、特定の段階で、それらがこれらの細胞の通常機能の原因となる正常細胞に、非常によく発現されることもある。これの例は、上皮起源の複数の腫瘍上に現れ、また上皮組織の胎児の発育の間、重要な役割を演ずる炭水化物抗原のルイスYである。肺ガンのこの抗原の発現が好適でない予後と関係していることを示された。ルイスY陽性のガン細胞には明らかにより高い転移の可能性があるからである〔ミヤケ等(Miyake M. et al.), N.Eng.J.Med., 327 (1992). 14〕。
【0012】
欧州特許0528767号には、上皮ガンの処理のためのヒト化抗ルイスY抗体の使用が、記載されている。更に周知の腫瘍関連の炭水化物構造の中で、例えば、多くの種類の上皮ガンにおいて高度に発現される、ルイス抗原のすべてがある。それらの一つはシアル化ルイスx構造の他ルイスx-、ルイスb-、およびルイスy-構造である。他の炭水化物抗原は、グロボH-構造、KH1、Tn抗原、TF抗原、α-1,3-ガラクトシル・エピトープである〔Curr. Pharmaceutical Design (2000) 6:485; ゴログリイとカストロノフ(Gollogly L. and Castronovo.), Neoplasma (1996),43:285〕。
【0013】
他のTAAは、特にガン細胞によって高度に発現されたタンパク質である〔例えば、CEA、TAG―72、MUC1、葉酸結合タンパクA―33、CA125、EpCAM、HER―2/neu、PSA、MART等;Sem.Cancer Biol. (1995); 6:321〕。関連するTAAは、しばしば、成長細胞(例えば胎児の組織やまた腫瘍組織)に数多く存在する、上皮性細胞の表面抗原である。TAAに対する抗体の直接の治療的な使用は、受動的な免疫療法に基づく;すなわち、特異的な抗体が適切な量においてガン患者に全身的に投与され、免疫療法効果を有する。この種の薬剤の生物学的半減期は、それらの構造に依存して、制限を受ける。従って、それは、反復投与を行うことが必要である。しかしながら異種間の抗体(例えばマウスのモノクローナル抗体、MABs)を使用すると、可能な治療的な効果の効力を中和し、危険な副作用(アナフィラキシー反応)の原因となり得る、望まれていない免疫反応に至ることが起こり得る。従って、この種の免疫療法薬は、限られた時間の間のみ投与することができる。
【0014】
抗体の異種構造を減らし、例えばキメラ抗体もしくはヒト型化抗体でもってヒト型構造を導入することにより、耐性を良好にできる。また、特異的なヒト抗体を産生するシステムもまた開発されている。このように、従来技術によれば、特定の細胞株、有機体またはトランスジェニック動物は、ヒト抗体を産生することができる。
にもかかわらず、ヒト型化抗体の場合であっても、多量の抗体の適用が副作用を導き得ることがしばしば報告され、その副作用はしばしば用量依存的である。これらの副作用は、下痢、熱、冷え、気管支痙攣(即時型アレルギー性反応、ITAR)等であることがある。
【0015】
抗体がさまざまな機構によってその治療的な効果を達成することはよく知られている。それらは、アポトーシスまたはプログラム細胞死を生じる際に直接的効果を及ぼし得る。それらは成長因子受容体をブロックし、腫瘍細胞の増殖を効果的に抑えることができる。モノクローナル抗体産生細胞においては、抗イディオタイプ抗体の産生をもたらし得る。
間接的効果には、細胞傷害性を有する細胞(例えば単球およびマクロファージ)を補充することが含まれる。抗体によって媒介されるこの種の殺細胞作用は抗体依存性の、細胞の介在する細胞傷害作用(ADCC)と呼ばれている。モノクローナル抗体もまた補体と結合して直接的な細胞傷害作用をもたらし、補体依存性細胞傷害作用(CDC)として知られている。そして、ADCC(抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用)においては、モノクローナル抗体のFcフラグメントは、単球、マクロファージ、顆粒白血球およびナチュラルキラー細胞で見られるFc受容体と結合する。これらの細胞は、次々に結合した腫瘍細胞をのみ込んで、それを破壊する。ナチュラルキラー細胞は細胞死に至らしめるサイトカインを分泌し、そして、それらもB細胞を補充する。
【0016】
CDC(補体依存性細胞傷害作用)においては、モノクローナル抗体は、受容体と結合して、補体系を先導していて、別名「補体カスケード」として知られている。その結末は、細胞膜の中に文字通り穴を作って細胞溶解と細胞死を引き起こす膜侵襲複合体である。ADCCおよびCDC活性を高めて抗体を産生する方法は既に記載がある。〔スブラチ等(Sburlati et al.), 1998, Biotechnol. Prog., 14, 189-192;シンカワ等(Shinkawa T et al.), 2003, J.Biol.Chem., 278, 3466-3473〕。
【0017】
抗体によって媒介されるCDC活性が抗体療法の部分的に重篤な副作用につながり得るることが示された。例えば、キメラ抗CD20抗体による治療が中程度から重篤な副作用をもたらし、それが補体活性化によると議論されていることがコルク等(Kolk et al.)により記載された〔British J.Haematol., 2001, 115, 807-811〕。副作用の重篤度が補体活性化のレベルと相関することが示された。特に多数の循環腫瘍細胞を有する患者では、これらの副作用は、生命に脅威となることがあり得る。補体依存性細胞障害による増加した毒性は、補体活性化が強化されるときには、慎重に検討すべきであることを示唆した。
補体活性化によって誘発される負の副作用に関して、他の抗体(OKT3)の研究は、これらの観察をサポートした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、これらの望まない副作用を回避する抗体療法の提供について大きな要求がある。本発明の目的は、その特性を改良した抗体を提供することである。本発明によれば、この目的は、請求項の主題によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者等はルイスY抗原を認識する親のモノクローナル抗体に由来するモノクローナル抗体、またはその誘導体若しくはフラグメントを生成させた。そして、前記抗体、またはその誘導体若しくはフラグメントのFc領域に対するFc領域またはFc領域均等物が、二分化された複合型タイプN―グリコシル化パターンを有しそして、前記抗体がADCCを少なくとも10倍増加させ、そして、CDC活性を少なくとも10%減らしたことを示すという点が特徴である。
【0020】
ルイスY抗原に向けられた親のモノクローナル抗体は、ヒト化軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常部、ヒト化重鎖可変領域およびヒト重鎖定常部からなる抗体である。ここでヒト化軽鎖可変領域は図1に示すアミノ酸配列を有し、そして、ヒト化重鎖可変領域は図2に示すアミノ酸配列を有する。この種の抗体は、欧州特許0528767号に記載されている。
本発明による抗体は優先して、親の抗体の重鎖可変領域および重鎖定常領域のアミノ酸配列を少なくとも含む。最も好ましくは、本発明抗体のアミノ酸配列は親の抗体と同一である。好ましくは、本発明抗体はルイスY抗原に向けられている。
親の抗体の臨床有効性はヒトIgG1分子のFc部分の生物活性に関連していて、それは抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)および補体依存性細胞傷害作用(CDC)を誘発する際のその効率で決定される。特にADCC機能はFc部分のグリコシル化に依存し、そして、それは顆粒白血球および単球上のFcγRIIIと相互作用する〔ライフリ等(Lifely et al.), 1995, Glycobiology, 5(8), 813-822〕。
【0021】
血清IgGのFc領域で通常見られるオリゴ糖は複合二分岐型で、末端のシアル酸および二分化N−アセチルグルコサミンが低次で末端のガラクトシル化と核のフコシル化の程度が多様である〔ルンドとタカハシ(Lund and Takahashi), 1996, J.Immunol., 157, 4963-9〕。FcγR結合には、保存されたFc領域のAsn297に共有結合したオリゴ糖の存在が必要であり、またオリゴ糖の構造について敏感である。ハムスターまたはマウス細胞株で発現しているIgG′は通常、非常に類似したグリコシル化構造を有するが、血清IgGで少量見られる二分化N−アセチルグルコサミン(GlcNac)を欠く。
【0022】
本発明による抗体のADCC活性は親抗体のADCC活性と比較して、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは、少なくとも25倍のADCC活性であって、さらに好ましくは少なくとも40倍の増加したADCC活性、好ましくは少なくとも60倍の増加したADCC活性、最も好ましくは少なくとも100倍の増加したADCC活性である。
【0023】
本発明抗体のADCC細胞溶解活性は、6本のルイス―Y陽性標的ガン細胞株(SKBR5、SKBR3、LoVo、MCF7、OVCAR3およびKatoIII)を使用して親抗体と比較して測定することができる。
本発明によれば、抗体、またはその誘導体若しくはフラグメントは、親抗体のCDC活性に比較して少なくとも10%減少、または少なくとも20%減少、または少なくとも40%減少したCDC活性を有している。
本発明の抗体、またはその誘導体若しくはフラグメントは、核フコシル化を含むこともあれば含まないこともある。それはマウス抗体、キメラ抗体、ヒトまたはヒト型化抗体であり得るが、好ましくはヒト型化抗体である。より好ましい態様では、該抗体はIgG、またはそのフラグメント若しくは誘導体であり、好ましくはIgG1またはそのフラグメント若しくは誘導体である。さらなる態様においては、本発明の抗体は、ヒト免疫IgGのFc領域と等価な領域を含む融合タンパク質である。
【0024】
従ってある側面では、請求に係る発明は薬学的に許容される担体または希釈液中に本発明の抗体を含む薬学的製剤をも目的としている。
さらにはこの抗体の薬剤としての使用も請求している。
該薬剤は患者における腫瘍細胞、特に、固形ガン、例えば腫瘍または上皮起源の播種性腫瘍細胞の成長を低下させ若しくは阻害するための治療若しくは予防的薬物として用いることができる。さらに本発明の抗体は微小残存病変の治療にも用いることができる。
ここで使用する術語は、特に定義のない限り当該分野で一般に使用されるのと同様に用いられる。
「抗体」の語は、抗体、抗体の誘導体またはそのフラグメントを含む。抗体のフラグメント中には抗体の相同体や機能等価物があり、Fc領域またはFc領域との相同領域または少なくともその一部とともに、免疫グロブリンの結合領域またはこの結合領域を模倣したペプチドを含む任意のポリペプチドが包含される。免疫グロブリンの結合領域またはその等価物を含み、別のポリペプチドと融合したキメラ分子が包含される。例示的な抗体分子は無傷の免疫グロブリン分子であり、パラトープを含む免疫グロブリン分子の部分であって、Fab、Fab′、F(ab′)、FcおよびF(V)として知られる部分が含まれる。
【0025】
ここでは、本発明の抗体は任意の細胞系をカバーし、該抗体を発現するように修飾できる宿主細胞中で発現することができる。発明の範囲内で、「細胞」の語は、個々の細胞、組織、器官、昆虫細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞、混成細胞、初代細胞、連続細胞株、幹細胞および/または、例えば本発明のグリコシル化抗体を発現するリコンビナント細胞のような遺伝操作細胞、等の培養を意味する。
好ましくはその細胞は動物細胞であり、より好ましくは哺乳類の細胞である。これらは例えば、BSC―1細胞、LLC―MK電池、CV―1細胞、CHO細胞、コス細胞、ネズミの細胞、ヒト細胞、HeLa細胞、293の細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MDOK細胞、CRFK細胞、RAF細胞、TCMK細胞、LLC―PK細胞、PK15細胞、WI―38細胞、MRC―5細胞、T―FLY細胞、BHK細胞、SP2/0、NS0細胞またはその誘導体が可能である。
【0026】
発明に係る抗体の二分化混成型N−アセチルグルコサミンは糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ、例えば残基を追加するβ(1,4)-N-アセチルグルコサミルトランスフェラーゼ(GlcNAcトランスフェラーゼIII、Gnt−III)により産生される。そのGnt−IIIは既にクローン化されている〔ミヨシ等(Miyoshi et al.), 1995, J.Biol.Chem., 270:28311-28315〕。これはFc部分に二分化N−アセチルグルコサミン基を有する抗体をもたらす。本発明抗体のFc部分のグリコシル化は、当業者によく知られた技術で改められる。例としてはスブラチ等(Sburlati et al.), 1998, Biotechnol.Prog., 14, 189-192または米国特許6,602,684号に記載された方法がある。細胞は二分化N−アセチルグルコサミン基を有する複雑なN-結合オリゴ糖を増加させるGnt−III活性を発現することができる。抗体産生に用いる多くの細胞株はGnt−III酵素を持たないが、例えば、YOミエローマ細胞やBリンパ球のようにGnt−III酵素を自然に有している細胞も存在する。
【0027】
例えばミスマッチ修復系変換のような突然変異技術を用いて宿主細胞のグリコシル化パターンを変化させることもできる(WO 04/09782、WO 04/24871)。
また欧州特許1176195号には、発明抗体のFc部分のグリコシル化パターンを改めるさらなる技術が記述されている。
ここで用いられる抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)の語は、キラー細胞、天然キラー細胞、活性化マクロファージ等のエフェクター細胞表面に存在するFc受容体と抗体のFc領域との結合を介しエフェクター細胞を活性化して、腫瘍細胞等に損傷を与える任意の作用をいう。ADCC活性の増加した抗体は当業者に知られた任意の適切な方法で決定することができる。一般に認められた方法を実施例に記載している。
【0028】
増加したADCCは、標的細胞の最大量の半数を溶解するのに必要な抗体濃度を示すED50抗体濃度の減少として測定される、増加した溶解能力で測定することができる
補体依存性細胞傷害作用(CDC)の語は、補体活性化と結合による直接の細胞傷害作用として定義される。抗体は細胞表面でその標的、例えば腫瘍細胞と結合し、「補体カスケード」としても知られる補体系を起動させて、文字通り細胞膜に穴をあけて細胞の溶解と死をもたらす膜攻撃複合体を与える。CDC活性の低下した抗体は当業者に知られた任意の適切な方法で決定することができる。一般に認められた方法を実施例に記載している。
低下したCDC活性は、標的細胞の最大量の半数を溶解することのできるED50抗体濃度の増加として定義される。
【0029】
N-結合オリゴ糖の核フコシル化はGlc-Nac基に隣接するAsnにα-1,6結合したフコースの存在を意味する。
発明抗体のルイスy抗原に対する結合活性は親抗体と比べて少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは100%である。
発明のグリコシル化抗体の軽鎖定常部の構築は親抗体と同様である。
驚くべきことに本発明のN−結合抗体グリコシル化パターンはまた、親抗体と比べて見られるオリゴ糖構造の量が減少したため、高い相同性も示した。このため、新たに産生された抗体はバッチ間のバリエーションが少なくなり、より安定で均一な抗体調製が入手されるというより好ましい効果がもたらされた。
【0030】
可能な処理目的は腫瘍細胞、即ち、腫瘍組織または転移、特に播種性腫瘍細胞との効果的な結合と低減である。血液、骨髄又は組織中で検出される腫瘍細胞または微小転移の数をそれぞれ有意に減少させる。転移形成を抑制し、少なくともその成長を遅らせる。こうして、特異的標的化免疫療法により、患者の無再発寿命、そして総生存期間が延長され得る。
本発明の使用の範囲内において、特に患者の腫瘍細胞成長を抑制し、阻止する上で血液透析もまた可能である。
腫瘍細胞のグリコシル化受容体全てに結合するためには、通常、患者一人当たり少なくとも50 mg/dose、好ましくは少なくとも100 mg/dose、最も好ましくは200 mg/doseの高用量が投与される。最大用量は抗体、ヒト型化抗体、およびヒト抗体の各最大耐性の許容性に依存する。患者一人当たり最大用量1 g、またはある例では最大2 gの治療が極めて有効かもしれない。
【0031】
驚くべきことに本発明においては増加したADCC活性のため、治療および/または予防目的で適用される抗体量の軽減が可能で、少ない用量であってもなお有効な治療効果がもたらされることが示された。増加したADCC活性のため適用される抗体量は、親抗体の用量計画と比して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも50%軽減することができる。
或いは、本発明の抗体は非常に高用量で適用することもできる。これは、本発明の抗体は個々に副作用を引き起こすことが知られているCDC活性が低下しているという事実に基づくものである。従って、能動的免疫療法の目的で抗体を適用した結果、既に副作用を患っている危険な患者においては特に、この驚くべき性質は非常に有利となり得る。
【0032】
用いられる抗体の半減期に従い、治療は好ましくは一定期間内で繰り返され、これは通常3日から30日の間である。抗体を特に修飾することでこの半減期を最大数ヶ月に増加させてそれによって治療期間を延長することが可能である。本発明で用いられる薬物は好ましくは適切に製剤化して提供される。好ましくは薬学的に許容される担体を用いた製剤である。後者は例えば補助的薬剤、緩衝液、塩および保存剤を含む。好ましくは、あらかじめ調製された注入液が提供される。抗体は比較的安定なので、抗体またはその誘導体に基づく薬剤は貯蔵に安定な溶液として、またはあらかじめ調製された形態の製剤として市場に出せるという実質上の利益がある。前者は好ましくは冷蔵庫温度から室温で安定に保存できる製剤である。しかしながら、本発明で使用される薬物はまた、必要時に解凍若しくはもどされる凍結若しくは凍結乾燥製剤として提供される。
【0033】
該薬剤の有効物質濃度はその耐性に依存する。ヒト型化抗体に基づく耐性の特に好ましい製剤はさらに希釈することなく高濃度で直接患者に投与することができる。0.1%から10%、好ましくは1 %から5%の範囲における好ましい濃度で投与体積および相当する注入時間を短く保つことができる。通常、薬物は静脈内投与(i.v.)される。しかしながら、他の非経口または粘膜投与も選択できて、活性物質を全身的、または腫瘍若しくは転移部位に局所的に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ヒト化軽鎖可変領域の配列である。
【図2】ヒト化重鎖可変領域の配列である。配列1または2を使用できる。
【図3】IGN311wtと比較したIGN312 GlycoIの結合活性分析である。
【図4】SKBR細胞を標的として用いたCDC分析の結果である。
【図5】SKBR3、Ovcar3、KatoIIIおよびA421細胞を用いた、IGN312 GlycoIのADCC溶解実験結果である。
【図6】二分化複合型N−グリコシル化抗体の模式図である。N−アセチルグルコサミンは□、マンノースは○、ガラクトースは楕円で表される。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0035】
略号
SEC−HPLC:サイズ排除クロマトグラフィーHPLC
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動
ADCC:抗体依存性細胞傷害
CDC:補体依存性細胞性細胞傷害作用
IGN311:ヒト化モノクローナル抗ルイス-Y抗体
IGN312:糖操作ヒト化モノクローナル抗ルイス-Y抗体(IGN311と同じ特異性を有する)
ELISA:酵素結合免疫吸着検定法
【0036】
方法
SDS−PAGE
精製した発現生成物の完全性、サイズおよび潜在性分解産物をSDS−PAGEで分析した。試料を4 x NuPAGE SDS試料緩衝液で希釈して85℃で10分間インキュベートした。ノーベックスの電気泳動ユニット(50分間、200Vおよび125mV)のノーベックスNuPAGE、4-12% ビス-トリスゲル(インビトロジェン)上に10μlを負荷した。ゲルは製造元(インビトロジェン)のマニュアルに従って銀染色した。
IEF(等電点電気泳動)
アイソフォームの分布、分解および潜在的脱アミド化体をIEFで分析した。ノーベックスのIEF試料バファー(インビトロジェン)で希釈後、ノーベックスIEF、pH3−10のゲル上に負荷し、製造元のマニュアルに従って分離を行った。ゲルは銀染色を行った。
【0037】
IGN311に特異的な抗イディオタイプ抗体に基づくELISA
モノクローナル抗イディオタイプ抗体MMA383で被覆したミクロチタープレート中で抗体試料の連続希釈をインキュベートすることにより、発現生成物の結合活性を特異的なサンドイッチELIZAで分析した。3%FCSでブロッキングして洗浄した後に、ヤギの抗ヒトIgG+A+M/パーオキシダーゼ・コンジュゲート(Zymed社、カリフォルニア州)とインキュベートし、o-フェニレンジアミン/過酸化水素で展開して結合した発現生成物を決定した。測定は492 nm/620 nmでELISAリ−ダーを用いて行った。光学密度の測定値を抗体濃度(ng/ml)の対数についてプロットし、シグモイド型四パラメータ近似により解析した。EC50値を計算して定量化に用いた。
【0038】
CDC
標的細胞として、ルイスY抗原陽性SKBR5乳ガン・細胞株を使用し、51Cr放出アッセイで補体媒介溶解作用を試験した。標的細胞を100 μCiの51Crと1時間インキュベートし培地で2回洗浄して、ボランティア提供者の補体血清と分析試料の連続希釈(100 ng/mlから50 μg/ml)とともに、ウェル当たり20 x 10個の細胞密度で96ウェルのミクロチタープレート上に播いた。試験プレートをCOインキュベータ中37℃で1時間インキュベートした。上澄を集めて放出された51Crをカウントした。培地のみおよび洗浄液(SDS)のみの代表的な試料をそれぞれインキュベートして自発的放出量(Sr)および最大放出量(Mr)の値を測定した。補体介在細胞傷害作用を細胞溶解のパーセント 100x(Cs―Sr)/(Mr―Sr)として計算した。細胞溶解のパーセントを抗体濃度(ng/ml)の対数についてプロットし、シグモイド型四パラメータ近似により解析した。EC50値を計算して定量化に用いた。
【0039】
ADCC
標的細胞として異なるルイスY抗原陽性ガン細胞・細胞株(SKBR3、KatoIII およびOvcar3)を使用し、51Cr放出アッセイで補体介在溶解作用を試験した。標的細胞を100 μCiの51Crと1時間インキュベートし培地で2回洗浄して、ウェル当たり25 X 10個の細胞密度で96ウェルのミクロチタープレート上に播いた。分析抗体試料の連続希釈(100 pg/mlから1 μg/ml)とともに、エフェクター細胞を新しく調製してE:T=40:1の比で標的細胞に加えた。COインキュベータ中37℃で18時間インキュベートした後、細胞上澄を集めて放出された51Crをカウントした(Cs)。培地のみおよび洗浄液(SDS)のみの代表的な試料をそれぞれインキュベートして自発的放出量(Sr)および最大放出量(Mr)の値を測定した。細胞傷害作用を細胞溶解のパーセント 100x(Cs―Sr)/(Mr―Sr)として計算した。細胞溶解のパーセントを抗体濃度(ng/ml)の対数についてプロットし、シグモイド型四パラメータ近似により解析した。EC50値を計算して定量化に用いた。
【0040】
グリコシルトランスフェラーゼGnt−IIIを発現させ、抗体の生物活性を増強するために抗体産生細胞株を遺伝子的に修飾した。その修飾はスブラチ等(Sburlati et al, Biotechnol.Prog., 1998, 14, 189-192)または米国特許6,602,684号に記載された技術に従った。
最初にIGN311の重鎖および軽鎖遺伝子を単離し、発現ベクターにクローン化してEBNA細胞に一過性にトランスフェクトした。Gnt−IIIトランスフェラーゼ発現遺伝子をコトランスフェクトしてIGN312という新しい抗体を作製した。対照の野生型抗体IGN311wtは、Gnt−III発現遺伝子のコトランスフェクトなしで同一の発現ベクターおよびホストを用いて発現させた。両方の発現生成物は同じプロテインA依存下流プロセスを用いて精製した。発現生成物はSDS−PAGE、IEFおよび標的抗体特異的サンドイッチELISAで特徴付けした。分解生成物は検出されず、重鎖および軽鎖の組み立ての他、糖操作抗体の標的親和性もGnt−III発現により影響されなかった。
【0041】
結果
グリコシル化抗体(IGN312)の分析
SDS−PAGE分析を用いて糖操作発現生成物IGN312(IGN312 Glyco I)をIGN311wtと比較した。非還元的条件下では両方のタンパク質は、非修飾のIgG分子量から予測される150 kDa近辺の領域に全く同一のバンドを示した。還元的条件下ではIgGの重鎖および軽鎖にそれぞれ対応する、50 kDaおよび25 kDaの付近にタンパク質のバンドが染色された。発現生成物に相違点は認められなかった。分解生成物および凝集生成物は検出されなかった。IGN311の糖操作体は損傷のない、正しい集合IgGであった。
【0042】
IGN312とIGN311wtの比較
等電点電気泳動分析は、pI7.8と8.3の間に全く同一のバンド分布を示した。異なるpIの四つのタンパク質バンドが異なる量で視覚化された。
Figure 3は、IGN311wt(灰色の曲線)と比較したIGN312 Glyco I(黒色の曲線)の結合活性分析を示す。一連のデータはシグモイド型四パラメータ近似により解析した。
糖操作体の抗体特異性を抗イディオタイプ結合ELISAにおける抗原結合活性により分析した。Figure 4には、希釈曲線をグラフに示す。曲線はすべて同型で重ね合わせが可能であった。シグモイド型近似とED50の評価の比較により、同一の主張が可能である。一連のデータのシグモイド型四パラメータ近似結果を表1に示す。IGN311wtの標準化は非常に近似した値を示した。親和性の有意な変化は認められず、糖操作体の抗原結合は原体、即ち、非糖操作体の領域内で維持された。
【0043】
【表1】

【0044】
三つの異なるルイスY陽性腫瘍細胞株を標的細胞としてin vitroでエフェクター機能の分析を試験した。標的となるグリコシル化パターンLe-Yの発現はIGN311wtを検出抗体として用いるFACS分析により溶解実験前に調べた。SKBR3は最も強力なLe-Yの発現を示し、次いでOvcar3、最後にKatoIIIが続いた(相乗平均蛍光、SKBR3:1803、Ovcar3:361,KatoIII:55)。A421はそのLe-Y陽性を失って、我々の実験では陰性対照細胞株として用いた。細胞傷害作用と補体活性化を介して糖操作抗体の溶解可能性を分析した。
【0045】
Figure4にはSKBR5細胞を標的として用いるCDC分析結果を示す。一連のデータはシグモイド型四パラメータ近似(Table2)により解析した。ED50で評価を行い、溶解可能性はIGN311wtの活性を元に標準化した。補体の活性化を介したIGN312 Glyco Iの溶解可能性は約44%減少と思われた。Figure4はSKBR5標的細胞上のCDC分析(クロムの放出)を示す。IGN312 Glyco I(黒色の曲線)およびのIGN311wt(灰色の曲線)の補体依存性細胞傷害作用を比較した。一連のデータは近似させた(シグモイド型四パラメータ近似)。
【0046】
【表2】

【0047】
SKBR3、Ovcar3、KatoIII、およびA421細胞を用いて、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を介するIGN312の溶解可能性分析を行った。結果をFigure4に示す。一連のデータはシグモイド型四パラメータモデルで近似した。IGN311wtの活性を元にする標準化とEC50の評価により、ADCCを介する溶解活性を計算した。結果をTable3に記載する。IGN311wtと比較して、IGN312 Glyco Iの溶解活性はすべての場合において6倍から14倍、有意に増強された。FACS分析(相乗平均蛍光、SKBR3:1803、Ovcar3:361,KatoIII:55)で測定されたルイスY抗原密度と、増強された細胞傷害作用の間には直接の相関は認められなかった。予想の通り、A421は全く溶解しなかった。
【0048】
【表3】

【0049】
Figure5は、SKBR3、Ovcar3、KatoIII、およびA421細胞を用い、IGN312 Glyco IのADCC溶解実験結果を示す。
議論および結論
この試験で示されるデータは、IgG1抗体のADCC活性を増強させ、糖操作でCDC容量を低下させることが可能であることを示す。本試験は、産業上発現された細胞株のグリコシル化器の遺伝子操作が過剰発現した抗体のエフェクター機能を修飾し微妙に調節する上で極めて興味深い道具であることを示した。抗体依存性の細胞傷害作用はこの原理に基づいて少なくとも20倍有意に増加させ得る。マンノシル化混成オリゴサッカリド構造の量は減少した補体活性化と並行して増加した。
Gnt−IIIトランスフェラーゼの均衡した安定な発現レベルは、従って、溶解活性を増強させた糖操作治療用抗体の発生に必須の要件である。安定なIGN312発現細胞株に基づく製造工程の確立は、最後にこの「新世代抗体」の効率を臨床的に比較するための次の重大な段階となろう。
【実施例2】
【0050】
親抗体IGN311の播種性腫瘍細胞の溶解−臨床報告
投与期間と用量
これは多治療の用量増加試験である。患者すべてに1日目および15日目にIGN311を与えた。評価対象たり得る最初の被験者三人に50 mgのIGN311を注入し、評価対象たり得る次の被験者三人に100 mgのIGN311を注入し、そして評価対象たり得る最後の被験者三人に200 mgのIGN311を注入した。
IGN311は2時間かけて静脈内にゆっくりと注入した。
被験者は治験中、ビスホスホネートおよびホルモン治療を除いてその他のガンの治療(例えば、化学療法、放射線、免疫療法、その他IGN311以外の治験薬)を全く受けなかった。
【0051】
末梢血中の播種性腫瘍細胞の評価
試料採取
注入開始前の1日目と15日目、そして43日目に血液試料を採取した。血液試料(約28ml)を単一の静脈穿刺(前肘部血管またはその他実験者が判断した適切な部位より)により抗凝血採血管〔Vacutainer(登録商標)チューブ、EDTAを含む〕に採取した。針を皮膚に貫通した際に集められた上皮細胞と血液試料との汚染を避けるために、最初の血液3mlは別のVacutainer(登録商標)に集めて廃棄した。腫瘍細胞富裕化手順は2時間以内に進行させた。
【0052】
腫瘍細胞の富裕化
冷却した末梢血25 mlを、多孔性障壁の下部にある分離媒体を乱さないようにOncoQuick(登録商標)の上区画に静かに満たし、4℃、1600 x g で20分間遠心分離した。遠心分離の後、上部の血漿(黄/褐色)および下部の分離媒体(青色)の間にある、腫瘍細胞を含む中間相を集めて新たな50 mlの遠心分離管に移して洗浄した。細胞ペレットを洗浄バファー4 ml中に再懸濁し遠心分離して顕微鏡スライド上に載せた。
結果
IGN311を用いた治療により患者中に検出される腫瘍細胞の数が減少することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
該モノクローナル抗体またはその誘導体若しくはフラグメントのFc領域若しくはFc領域等価物において二分化混成型N−グリコシル化パターンを有し、該抗体が少なくとも10倍増加したADCC活性と少なくとも10%減少したCDC活性を有することを特徴とする、ルイスY抗原を認識する親モノクローナル抗体から誘導されるモノクローナル抗体またはその誘導体若しくはフラグメント。
【請求項2】
ADCC活性が少なくとも20倍増加したことを特徴とする、請求項1の抗体。
【請求項3】
ADCC活性が少なくとも25倍増加したことを特徴とする、請求項1の抗体。
【請求項4】
ADCC活性が少なくとも40倍増加したことを特徴とする、請求項1の抗体。
【請求項5】
ADCC活性が少なくとも60倍増加したことを特徴とする、請求項1の抗体。
【請求項6】
CDC活性が少なくとも20%減少したことを特徴とする、請求項1の抗体。
【請求項7】
CDC活性が少なくとも40%減少したことを特徴とする、請求項1の抗体。
【請求項8】
二分化N-アセチルグルコサミン基を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれかの抗体。
【請求項9】
該抗体が核フコシル化を含まないことを特徴とする、請求項1から8のいずれかの抗体。
【請求項10】
ヒト型化抗体であることを特徴とする、請求項1から9のいずれかの抗体。
【請求項11】
IgGまたはそのフラグメント若しくは誘導体である、請求項1から10のいずれかの抗体。
【請求項12】
IgG1またはそのフラグメント若しくは誘導体である、請求項11の抗体。
【請求項13】
薬学的に許容される担体または希釈剤中に、請求項1から12のいずれかの抗体を含む薬学的製剤。
【請求項14】
請求項1から12のいずれかの抗体の薬物としての使用。
【請求項15】
患者の腫瘍細胞の成長をそれぞれ抑制しまたは阻止する、予防的および/または治療的処置のための薬剤の製造における、請求項1から12のいずれかの抗体に基づく調製物の使用。
【請求項16】
固形ガンの治療のための薬剤の製造における、請求項1から12のいずれかの使用。
【請求項17】
上皮起源の固形ガンの治療のための、請求項15の使用。
【請求項18】
微小残存病変の治療のための、請求項15の使用。
【請求項19】
受動的免疫療法のための、請求項14の使用。
【請求項20】
該抗体が少なくとも50mg/doseの用量で用いられることを特徴とする、請求項1から12のいずれかの使用。
【請求項21】
該抗体が少なくとも100mg/doseの用量で用いられることを特徴とする、請求項1から12のいずれかの使用。
【請求項22】
該抗体が少なくとも200mg/doseの用量で用いられることを特徴とする、請求項1から12のいずれかの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−67106(P2012−67106A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−227299(P2011−227299)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2007−520672(P2007−520672)の分割
【原出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(506047949)グリーンオヴェイション・バイオテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】GREENOVATION BIOTECH GMBH
【出願人】(510218766)メリディアーン・バイオファーマシューティカルズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Meridian Biopharmaceuticals GmbH
【Fターム(参考)】