説明

グリコールアルデヒドとアミノ化剤との反応

本発明は、グリコールアルデヒドとアミノ化剤とを水素及び触媒の存在下で反応させる方法であって、前記触媒が、触媒前駆体の還元によって又は不動態化された触媒の還元によって活性化される前記方法において、前記反応を、溶剤の存在下で行い、かつグリコールアルデヒドを前記活性化された触媒と接触させることを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコールアルデヒドとアミノ化剤との反応に関する。
【0002】
ヒドロキシ置換されたアルデヒドとアミノ化剤、例えばアンモニアとを反応させることは、技術水準から公知である。
【0003】
Houben/Weyl,Methoden der organischen Chemie,第XI/1巻、第4版、Georg Thieme出版、シュトゥットガルト、1957年、第602〜648頁から、ニッケル触媒又はコバルト触媒、とりわけそのラネー金属の形態の前記触媒並びに白金族の触媒は、ヒドロキシ置換されたアルデヒドもしくはケトンの水素化アミノ化のために公知である。
【0004】
US4,153,581号は、Fe、Zn及び/又はZrを含有する特定のCo/Cu触媒によってアルコール、アルデヒド又はケトンをアミノ化することに関する一方で、US4,152,353号は、Fe、Zn及び/又はZrを含有する特定のNi/Cu触媒によってアルコール、アルデヒド又はケトンをアミノ化することに関する。
【0005】
WO03/076386号A及びEP1431271号A1は、触媒活性物質が22〜40質量%(もしくは22〜45質量%)のジルコニウムの酸素含有の化合物と、1〜30質量%の銅の酸素含有の化合物と、それぞれ15〜50質量%(もしくは5〜50質量%)のニッケル及びコバルトの酸素含有の化合物とを含有する触媒を使用した、アルコールもしくはアルデヒド又はケトン及び窒素化合物からのアミンの製造方法を記載している。
【0006】
5つの特許出願(WO−A−2008/006750号、WO−A−2008/006748号、WO−A−2008/006752号、WO−A−2008/006749号、WO−A−2008/006754号)は、規定のドープされた二酸化ジルコニウム含有の、銅含有の及びニッケル含有の触媒並びに該触媒を、第一級もしくは第二級のアルコール、アルデヒド及び/又はケトンと水素及びアンモニア、第一級もしくは第二級のアミンとを反応させることによってアミンを製造する方法において用いる使用に関する。
【0007】
上述の出願に記載される触媒は、10〜50質量%のCoを含有する。
【0008】
DE−A−2118283号は、第二級のもしくは第三級の脂肪族のもしくは脂環式のアミンの製造方法であって、脂肪族のもしくは脂環式のカルボニル化合物をPd/Ag固定床触媒を使用しつつアンモニアと反応させることによって行う前記製造方法に関する。担体材料は、特にSiO2である。
【0009】
EP−A2−312253号は、N−置換されたアミンをアルコール又はアルデヒドから製造する際に特定の銅触媒を用いる使用を記載している。
【0010】
DE3609978号A1において、ヒドロキシアミンのヒドロキシカルボニル化合物からの製造方法が記載され、またグリコールアルデヒドも一般的に包含されている。その際、2段階法において、カルボニル化合物をまずアミノ化剤と反応させてから、第二工程で、得られたイミンを水素を用いて水素化して相応のアミンとする。
【0011】
上述の参考資料では、たしかに一般的に、アルデヒド、とりわけヒドロキシ置換されたアルデヒドの反応もともに考慮されているが、グリコールアルデヒドの反応は明示的に開示されていない。
【0012】
US6,534,441号は、ニッケル/レニウム触媒を使用した低級脂肪族アルカン誘導体の還元的アミノ化のための方法を記載している。考えられる使用物質として、詳細な説明にグリコールアルデヒドが挙げられている。ニッケル/レニウム触媒は、アルミノケイ酸塩触媒担体をニッケル塩及びレニウム塩の溶液で含浸させることによって製造される。引き続き、こうして得られた触媒のか焼を行うことができる。ニッケルとレニウムとの質量比は、1:1〜200:1の範囲にある。その使用の前に、か焼された触媒は活性化もしくは還元することができる。アルカン誘導体の反応は、一般に、125〜350℃の範囲で、約25〜350バールの圧力で行われる。該反応は、一般に連続的に行われる。該反応における溶剤の使用は、挙げられていない。
【0013】
独国特許出願DE−A1−4400591号においては、アミノアルコールの製造方法であって、ヒドロキシカルボニル化合物と水素及びアミノ化剤とを、0〜300℃の温度で、1〜400バールの圧力で、50〜100質量%のルテニウムを含有する触媒上で反応させることによって行う製造方法が記載されている。該反応は、不活性溶剤の不在下もしくは存在下で実施できる。考えられる使用物質として、とりわけグリコールアルデヒドが挙げられている。DE−A1−4400591号からは、同様に、ヒドロキシアルデヒドのアミノ化が変色した生成物をもたらすことがうかがえる。DE−A1−4400591号は、従って、貴金属であるルテニウムを高濃度で含む触媒の使用を教示している。
【0014】
ヒドロキシアルカナールをアンモニア及び水素の存在下にニッケルもしくはコバルトを含む触媒の存在下で反応させてジアミンを得ることは、US6,147,261号に開示されている。ヒドロキシアルカナールを相応のジアミンへと反応させることは、一段階反応で、140〜180℃の温度で、かつ少なくとも35バールの圧力で行うことができる。3−ヒドロキシ−プロピオンアルデヒドの反応は、二段階反応でも行うことができ、その際、第一の反応段階では、3−アミノプロパノールが形成され、それは、後続の第二の段階で反応されて、プロピレンジアミンとなる。第一の段階は、50℃を上回る温度、好ましくは100〜150℃の温度と、35バールを上回る圧力で行われる。第二の段階は、140〜200℃の温度で行われる。第一の段階において、3−アミノプロパノールの収率は、最大で84%である。ヒドロキシプロパナールの転化率は、本質的に定量的である。該反応は、任意に、溶剤の存在下で、例えば水又は高級炭化水素の存在下で実施することができる。該触媒は、その使用前に活性化されず又は還元されない。
【0015】
US6,147,261号においては、ヒドロキシプロピオンアルデヒドが非常に反応性が高く、オリゴマー化及び重合の傾向にあることが教示されている。ヒドロキシプロピオアルデヒドとアンモニアとの反応は、従って好ましくは溶剤の存在下で行われる。
【0016】
US6,147,261号、DE−A1−4400591号及びUS6,534,441号においては、確かに、アミノ化剤との反応において使用物質としてグリコールアルデヒドを使用することが挙げられているが、実施例に裏付けられた具体的な反応は、記載されていなかった。
【0017】
高級同族体に対して、グリコールアルデヒドは、二量体の、この場合には2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの、その熱力学的安定性に基づき好ましくは形成される6員環化合物の形成の傾向がなおもより高い。ここで、グリコールアルデヒドは、固体状態ではもっぱら二量体形で存在する(A.Beeby,D.B.H.Mohammed,J.R.Sodeau,J.Am.Chem.Soc.,109(1987)m 857−861)。非水性の溶液では、グリコールアルデヒドは、同様に少量でのみモノマーとして存在する(6%未満)。主成分は、5員環及び6員環の二量体からなる平衡混合物である(上記引用文中)。水溶液においては、グリコールアルデヒドは、主として水和物の形(約70%)で、かつ二量体の形(約26%)で存在する。約4%だけのグリコールアルデヒドだけが、平衡混合物中でモノマーの形で存在する(上記引用文中)。従って、モノマーのグリコールアルデヒドのアミノ化されるべきアルデヒド官能は溶液中で副次的にのみ存在する。更に、CH酸性化合物としてグリコールアルデヒドの場合に、より高級の糖アルコールへのアルドール縮合において非常に高い重合傾向があり、その際、強く変色した生成物が生じ、目的生成物の収率は大きく低減される。
【0018】
従って、本発明の課題は、グリコールアルデヒドの高い転化率を可能にし、かつ生成物、特にエタノールアミン(MEOA)及びエチレンジアミン(EDA)の形成を高い収率及び選択性で可能にする、グリコールアルデヒドのアミノ化のための方法を開発することにあった。特に、副生成物であるピペラジンの形成は低減されるべきである。それというのも、これは、MEOAもしくはEDAから困難にのみ分離でき、かつ多くの用途で好ましくない作用をもたらすからである。さらに、反応生成物は高い純度で生ずるべきである。この目的は、方法の原料費を下げるために十分に貴金属を含まない触媒を使用できる前提条件下で達成されるべきである。貴金属含有の触媒の使用は、すなわち、方法の経済性に作用をもたらす触媒使用コストの大きな増大をもたらす。将来的に、原料の劇的な削減が考えられるので、貴金属の価格が一層更に高まることを待ち構えることができる。
【0019】
更に、該触媒は、長い寿命を保証するために、高い機械的なかつ化学的な安定性を有するべきである。本発明の更なる課題は、できる限り少量の金属、例えばスケルトン触媒の場合のアルミニウム又はリチウムなどのアルカリ性助触媒しか触媒から溶出しないことにある。それというのも、そのことは、触媒の安定性の低下及び触媒の失活をもたらすからである。溶出されたアルミニウムから塩基性条件下で形成するアルミン酸塩は、固体残留物として、閉塞及び堆積をもたらし、有用生成物の分解をもたらすことがある。
【0020】
前記課題は、グリコールアルデヒドとアミノ化剤とを水素及び触媒の存在下で反応させる方法であって、前記触媒が、触媒前駆体の還元によって又は不動態化された触媒の還元によって活性化される前記方法において、前記反応を、溶剤の存在下で行い、かつグリコールアルデヒドを前記活性化された触媒と接触させることを特徴とする方法によって解決された。
【0021】
本発明による方法では、グリコールアルデヒドが使用される。グリコールアルデヒドは、市販されており、かつ例えばエチレングリコールの酸化によって製造することができる(例えばJP3246248号及びJP3279342号を参照)。グリコールアルデヒドは、好ましくはホルムアルデヒドと一酸化炭素及び水素との反応によって合成され、例えばUS2009012333号、US2008081931号、US2007249871号、EP1697291号、US4503260号及びUS4322568号に記載されている。
【0022】
更なる出発物質としては、本発明による方法ではアミノ化剤が使用される。
【0023】
水素の存在下でのアルコール、アルデヒドもしくはケトンの水素化アミノ化に際してのアミノ化剤として、アンモニアも、第一級もしくは第二級の、脂肪族もしくは脂環式の又は芳香族のアミンを使用することができる。
【0024】
アミノ化剤は、好ましくは、式I
【化1】

[式中、
1、R2は、水素(H)、アルキル、例えばC1〜C20−アルキル、シクロアルキル、例えばC3〜C12−シクロアルキル、アルコキシアルキル、例えばC2〜C30−アルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルキル、例えばC3〜C30−ジアルキルアミノアルキル、アリール、アラルキル、例えばC7〜C20−アラルキル及びアルキルアリール、例えばC7〜C20−アルキルアリール、又は一緒になって−(CH2j−X−(CH2k−であり、
Xは、CH2、CHR3、酸素(O)、硫黄(S)もしくはNR3であり、
3は、水素(H)、アルキル、例えばC1〜C4−アルキル、アルキルフェニル、例えばC7〜C40−アルキルフェニルであり、
j、kは、1〜4の整数である]の窒素化合物である。
【0025】
特に好ましくは、アンモニア並びに以下のモノアルキルアミン及びジアルキルアミンをアミノ化剤として使用できる:モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、ジ−s−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ペンチルアミン、s−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、s−ヘキシルアミン、イソヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジン、ピペリジン、モルホリン及びピロリジン。特に好ましいアミノ化剤は、アンモニア並びにモノメチルアミン及びジメチルアミンである。殊に好ましくは、アンモニアがアミノ化剤として使用される。
【0026】
更なる使用物質として、水素が本発明による方法で使用される。
【0027】
水素は、一般に工業的に純粋に使用される。水素は、また、水素含有ガスの形で、すなわち他の不活性ガス、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンもしくは二酸化炭素と混合して使用することもできる。水素含有ガスとしては、例えばリフォーマー排ガス、ラフィネート化ガスなどを、これらのガスが使用される触媒についての触媒毒、例えばCOなどを含まない場合にかつその限りにおいて使用できる。しかしながら、好ましくは、純粋な水素もしくは本質的に純粋な水素が、本方法で使用される。例えば99質量%超の水素の含量を有する水素、有利には99.9質量%超の水素の含量を有する水素、特に有利には99.99質量%超の水素の含量を有する水素、特に99.999質量%超の水素の含量を有する水素が使用される。
【0028】
グリコールアルデヒドとアミノ化剤との水素の存在下での反応は、本発明によれば溶剤中で行われる。
【0029】
溶剤としては、還元条件下で不活性にはたらき、反応出発物質及び反応生成物について十分な溶解性を有するあらゆる溶剤を使用できる。好適な溶剤は、水、エーテル、例えばメチル−t−ブチルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン又はテトラヒドロフラン(THF)である。溶剤としては、上述の溶剤の好適な混合物も該当する。
【0030】
特に好ましい溶剤は、THF及び水である。特に好ましい溶剤としては、グリコールアルデヒドとアミノ化剤との本発明による反応の反応生成物も該当する。
【0031】
本発明による方法は、触媒の存在下で行われる。該触媒は、原則的に、ニッケル、コバルト、鉄、銅、クロム、マンガン、銅、モリブデン、タングステン及び/又は元素の周期表(2007年6月22日のIUPAC版の周期表)の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の他の金属を含有してよい。
【0032】
好ましくは、銅、コバルト及び/又はニッケルを含有する触媒が使用される。
【0033】
上述の触媒は、通常は、助触媒(Promotor)、例えばクロム、鉄、コバルト、マンガン、モリブデン、チタン、スズ、アルカリ金属群の金属、アルカリ土類金属群の金属及び/又はリンでドープされていてよい。
【0034】
好ましい一実施形態においては、該触媒は、触媒中の金属原子の全数に対して、25モル%未満の、好ましくは10モル%未満の、特に好ましくは1モル%未満の、特に有利には0.4モル%未満の、殊に有利には0.1モル%未満の貴金属原子を有する。貴金属という概念とは、本発明の範囲において、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金及び水銀からなる群から選択される金属を指す。
【0035】
触媒中に存在する金属原子の数は、元素分析の公知の方法、例えば原子吸光分析(AAS)、原子発光分析(AES)、X線蛍光分析(RFA)又はICP−OES(誘導結合プラズマ発光分光分析)によって測定することができる。
【0036】
本発明による方法において、いわゆる触媒前駆体の還元によって製造される触媒が使用される。触媒前駆体は、1もしくはそれより多くの触媒活性成分と、場合により担体材料とを含有する活性材料を含有する。
【0037】
触媒活性成分は、上述の金属の酸素含有化合物であり、例えば金属酸化物もしくは水酸化物、例えばCoO、NiO、CuO及び/又はそれらの混合酸化物である。本願の範囲においては、触媒活性成分という概念は、上述の酸素含有金属化合物のために使用されるが、これらの酸素含有化合物がそれ自体既に触媒活性であることを含むものではない。触媒活性成分は、一般に、還元を行った後にはじめて、本発明による反応における触媒活性を有する。該触媒前駆体は、公知の方法によって、例えば沈降、沈積もしくは含浸によって製造できる。
【0038】
好ましい一実施態様においては、担体材料の浸漬(例えば含浸)によって製造された触媒前駆体(浸漬された触媒前駆体)が本発明による方法では使用される。含浸で使用される担体材料は、例えば粉末もしくは成形体、例えばストランド、タブレット、球状物もしくは環状物の形で使用することができる。流動床反応器に適した担体材料は、好ましくは噴霧乾燥によって得られる。担体材料としては、例えば、炭素、例えばグラファイト、カーボンブラック及び/又は活性炭、アルミニウム酸化物(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、カイもしくはそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩又はこれらの混合物が該当する。
【0039】
上述の担体材料の浸漬は、通常の方法(A.B.Stiles,Catalyst Manufacture−Laboratory and Commercial Preperations,Marcel Dekker,New York,1983)によって、例えば1もしくはそれより多くの浸漬段階での金属塩溶液の塗布によって実施できる。金属塩としては、一般に、相応の触媒活性成分又はドープ元素の硝酸塩、酢酸塩又は塩化物、例えばCo硝酸塩もしくはCo塩化物が該当する。引き続き、浸漬された担体材料は、一般に乾燥され、場合によりか焼される。
【0040】
浸漬は、また、いわゆる"初期湿潤(incipient wetness)"法に従って、担体材料を、その吸水能に相応して最大ないし飽和にまで浸漬溶液で湿潤させて行ってもよい。しかしながら、その浸漬は、上澄み溶液においても行われうる。
【0041】
多段階の浸漬法の場合に、個々の浸漬工程の間で乾燥させ、場合によりか焼させることが適切である。多段階の浸漬は、好ましくは、該担体材料により多量の金属量を加えるべき場合に使用されるべきである。
【0042】
該担体材料への複数の金属成分の塗布のために、その浸漬は、全ての金属塩で同時に又は個々の金属塩の任意の順序で順次に行うことができる。
【0043】
更なる好ましい一実施態様においては、触媒前駆体は、全てのその成分の一緒の沈降(混合沈降)によって製造される。そのためには、一般に、相応の活性成分、ドープ元素の可溶性化合物及び場合により担体材料の可溶性化合物に、液体中で、熱中及び撹拌下で、沈殿が完了するまで沈殿剤を加える。
【0044】
液体としては、一般に、水が使用される。活性成分の可溶性化合物としては、通常は、相応の金属塩、例えば上述の金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩又は塩化物が該当する。
【0045】
担体材料の可溶性の化合物としては、一般に、Ti、Al、Zr、Siなどの水溶性の化合物、例えばこれらの元素の水溶性の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩もしくは塩化物が使用される。ドープ元素の可溶性化合物としては、一般に、ドープ元素の水溶性化合物、例えば前記元素の水溶性の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩又は塩化物が使用される。
【0046】
触媒前駆体は、更に、沈積によって製造することができる。沈積とは、難溶性もしくは不溶性の担体材料を液体中に懸濁させ、引き続き相応の金属酸化物の可溶性化合物、例えば可溶性金属塩を添加し、次いでそれを沈降剤の添加によって懸濁された担体上に沈積させる製造方法を意味する(例えばEP−A2−1106600号の第4頁及びA.B.Stiles,Catalyst Manufacture,Marcel Dekker,Inc.,1983,第15頁に記載される)。難溶性もしくは不溶性の担体材料としては、例えば、炭素化合物、例えばグラファイト、カーボンブラック及び/又は活性炭、アルミニウム酸化物(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、カイもしくはそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩又はこれらの混合物が該当する。該担体材料は、一般に粉末もしくは破片として存在する。担体材料が懸濁される液体としては、通常は、水が使用される。
【0047】
可溶性化合物としては、活性成分もしくはドープ元素の上述の可溶性化合物が該当する。
【0048】
通常は、沈降反応に際して、可溶性化合物は、沈降剤の添加によって、難溶性もしくは不溶性の塩基性塩として沈降される。沈降剤としては、好ましくは、アルカリ液、特に鉱塩基、例えばアルカリ金属塩基が使用される。沈降剤のための例は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムもしくは水酸化カリウムである。
【0049】
沈降剤としては、アンモニウム塩、例えばアンモニウムハロゲン化物、アンモニウム炭酸塩、アンモニウム水酸化物又はアンモニウムカルボン酸塩を使用してもよい。
【0050】
沈降反応は、例えば20〜100℃、特に30〜90℃、殊に50〜70℃の温度で実施できる。
【0051】
その沈降反応で得られる沈殿物は、一般に、化学的に不均一であり、一般に、使用される金属の酸化物、酸化物水和物、水酸化物、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩の混合物を含有する。該沈殿物の濾過可能性については、それらが熟成された場合に、すなわち沈降のいくらかの時間後でもなおも、場合により熱中もしくは空気の導通下に放置した場合に適切に見なされることがある。この沈降法により得られる沈殿物は、通常は、それらを洗浄し、乾燥させ、か焼し、そしてコンディショニングされることで加工される。
【0052】
洗浄後に、該沈降物は、一般に80〜200℃で、好ましくは100〜150℃で乾燥され、引き続きか焼される。
【0053】
か焼は、一般に、300〜800℃の温度で、好ましくは350〜600℃の温度で、特に450〜550℃の温度で実施される。
【0054】
か焼の後に、沈降反応によって得られた粉末状触媒前駆体は、通常はコンディショニングされる。
【0055】
該コンディショニングは、例えば、沈降触媒を粉砕によって規定の粒度に調整することによって行うことができる。粉砕後に、沈降反応によって得られた触媒前駆体を、成形助剤、例えばグラファイトもしくはステアリン酸と混合し、更に成形体へと加工することができる。
【0056】
形状付与の通常の方法は、例えばウールマン[ウールマンの工業化学事典電子版2000年,"触媒反応及び触媒(Catalysis and Catalysts)",第28頁〜32頁]において、かつErtl他[Ertl,Knoezinger,Weitkamp,不均一系触媒反応のハンドブック、VCH ヴァインハイム,1997年,第98頁以降]によって記載されている。上述の文献箇所に記載されるように、形状付与の方法によって、成形体は、あらゆる立体形状で、例えば円形、角形、短冊形などで、例えばストランド、タブレット、造粒物、球状物、円柱物もしくは粒状物の形で得ることができる。形状付与の通常の方法は、例えば押出成形、タブレット化、すなわち機械的圧縮もしくはペレット化、すなわち環状運動及び/又は回転運動による圧密化である。
【0057】
コンディショニングもしくは形状付与の後に、一般に熱処理が行われる。熱処理における温度は、通常は、か焼における温度に相当する。
【0058】
沈降反応によって得られた触媒前駆体は、触媒活性成分を、その酸素含有の化合物の混合物の形で、すなわち特に酸化物、混合酸化物及び/又は水酸化物として含有する。こうして製造された触媒前駆体は、そのままで貯蔵することができる。
【0059】
特に好ましいのは、触媒前駆体、例えば
EP−A−0636409号に開示される酸化物混合物であって、水素による還元の前に、CoOとして計算して55〜98質量%のCoと、H3PO4として計算して0.2〜15質量%のリンと、MnO2として計算して0.2〜15質量%のマンガンと、M2O(M=アルカリ金属)として計算して0.2〜5.0質量%のアルカリ金属とを含有する酸化物混合物、又は
EP−A−0742045号に開示される酸化物混合物であって、水素による還元の前に、CoOとして計算して55〜98質量%のCoと、H3PO4として計算して0.2〜15質量%のリンと、MnO2として計算して0.2〜15質量%のマンガンと、M2O(M=アルカリ金属)として計算して0.05〜5質量%のアルカリ金属とを含有する酸化物混合物、又は
EP−A−696572号に開示される酸化物混合物であって、水素による還元の前に、20〜85質量%のZrO2と、CuOとして計算して1〜30質量%の銅の酸素含有化合物と、NiOとして計算して30〜70質量%のニッケルの酸素含有化合物と、MoO3として計算して0.1〜5質量%のモリブデンの酸素含有化合物と、Al23もしくはMnO2として計算して0〜10質量%のアルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物とを含有する酸化物混合物、上記引用文中に第8頁に開示される組成31.5質量%のZrO2と、50質量%のNiOと、17質量%のCuOと、1.5質量%のMoO3とを有する触媒、又は
EP−A−963975号に開示される酸化物混合物であって、酸素による還元の前に、22〜40質量%のZrO2と、CuOとして計算して1〜30質量%の銅の酸素含有化合物と、NiOとして計算して15〜50質量%のニッケルの酸素含有化合物と(その際、Ni:Cuのモル比は1より高い)、CoOとして計算して15〜50質量%のコバルトの酸素含有化合物と、Al23もしくはMnO2として計算して0〜10質量%のアルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物とを含有し、モリブデンの酸素含有化合物を含有しない酸化物混合物、例えば上記引用文中に第17頁に開示される組成ZrO2として計算して33質量%のZrと、NiOとして計算して28質量%のNiと、CuOとして計算して11質量%のCuと、CoOとして計算して28質量%のCoとを有する触媒A
である。
【0060】
本発明による方法で使用される触媒は、上記のように含浸もしくは沈殿によって製造された触媒前駆体を、か焼もしくはコンディショニングの後に還元することによって得られる。
【0061】
乾燥した、一般に粉末状の触媒前駆体の還元は、高められた温度において可動式のもしくは非可動式の還元炉中で行うことができる。
【0062】
還元剤としては、通常は、水素又は水素含有ガスが使用される。
【0063】
水素は、一般に工業的に純粋に使用される。水素は、また、水素含有ガスの形で、すなわち他の不活性ガス、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンもしくは二酸化炭素と混合して使用することもできる。水素流は、場合により新たな水素と混合して、かつ場合により凝縮によって水素を除去した後に、循環ガスとして還元中に返送することもできる。
【0064】
触媒前駆体の還元は、好ましくは、触媒成形体が固定床として配置される反応器中で行われる。特に好ましくは、触媒前駆体の完全は、グリコールアルデヒドとアミノ化剤との後続の反応が行われるのと同じ反応器中で行われる。更に、触媒前駆体の還元は、流動層反応器中で流動層中で行うことができる。
【0065】
触媒前駆体の還元は、一般に50〜600℃、特に100〜500℃、特に有利には150〜450℃の還元温度で行われる。
【0066】
水素分圧は、一般に、1〜300バール、特に1〜200バール、特に有利には1〜100バールであり、その際、圧力の表示は、ここと以下では、絶対的に測定された圧力を指す。還元の期間は、好ましくは1〜20時間、特に有利には5〜15時間である。
【0067】
還元の間に、生じた反応水を排出するために、及び/又は例えば反応器をより迅速に加熱しうるために、及び/又は還元の間に熱をより良好に排出するために、溶剤を供給することができる。該溶剤は、ここでは、超臨界で供給してもよい。好適な溶剤は、先に記載した溶剤を使用できる。好ましい溶剤は、水、エーテル、例えばメチル−t−ブチルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン又はテトラヒドロフランである。特に有利であるのは水又はテトラヒドロフランである。好適な溶剤としては、同様に好適な混合物が該当する。
【0068】
触媒前駆体の還元は、懸濁液において行ってもよく、例えば撹拌オートクレーブ中で行ってよい。その温度は、一般に、50〜300℃、特に100〜250℃、特に有利には120〜200℃の範囲にある。
【0069】
懸濁液での還元は、一般に、1〜300バールの、好ましくは10〜250バールの、特に有利には30〜200バールの水素分圧で行われる。溶剤としては、上述の溶剤が該当する。
【0070】
懸濁液での還元の期間は、好ましくは5〜20時間、特に有利には8〜15時間である。
【0071】
該触媒は、還元の後には、不活性条件下で取り扱うことができる。好ましくは、前記触媒は、窒素などの不活性ガス下で取り扱うことができ、かつ貯蔵でき、又は不活性な液体、例えばアルコール、水もしくは該触媒が使用される各反応の生成物の下で使用される。場合により、該触媒は、本来の反応の開始前に、その際、不活性液体を除去せねばならない。
【0072】
不活性物質のもとでの触媒の貯蔵は、触媒の簡単かつ安全な取り扱い及び貯蔵を可能にする。
【0073】
該触媒は、しかし還元後に、酸素含有ガス流、例えば空気又は空気と窒素との混合物と接触させることもできる。それによって、不動態化された触媒が得られる。不動態化された触媒は、一般に保護作用のある酸化物層を有する。この保護作用のある酸化物層によって、触媒の取り扱い及び貯蔵は容易になるので、例えば不動態化された触媒の反応器への取付は容易になる。
【0074】
本発明によれば、グリコールアルデヒドは、活性化された触媒と接触される。
【0075】
本発明によれば、触媒は、触媒前駆体の還元によって又は不動態化された触媒の還元によって活性化される。
【0076】
本発明の範囲においては、活性化された触媒は、触媒前駆体の還元によって製造され、かつ還元の間と還元の後に、グリコールアルデヒドとの接触まで不活性条件下で取り扱われる触媒である。
【0077】
本発明の範囲においては、活性化された触媒は、また、不動態化された触媒の還元によって製造され、かつ還元の間と還元の後に、グリコールアルデヒドとの接触まで不活性条件下で取り扱われる触媒である。
【0078】
かかる触媒において、金属は、部分的に還元された形で存在し、かかる触媒は、一般に保護作用のある酸化物層を有さない。触媒の活性化のための尺度は、還元度である。好ましい一実施形態においては、活性化された触媒の還元度は、30%以上、好ましくは50%以上、特に好ましくは75%以上、特に90%以上である。
【0079】
好ましい一実施形態においては、不動態化された触媒の還元によって製造された活性化された触媒は、活性化の後に、不動態化された触媒の還元度より少なくとも2%高い、好ましくは少なくとも3%高い、特に好ましくは少なくとも4%高い還元度を有する。
【0080】
還元度の測定は、一般に"温度プログラム還元"(TPR)によって行われる。
【0081】
温度プログラム還元は、触媒前駆体の試料を水素/不活性ガス流中で、単位時間当たりに一定の温度上昇をもって加熱することによって行われる。好ましくは、Monti及びBaikerの提案に基づく構造の装置が使用される[D.A.M.Monti,A.Baiker,"Temperatur−Programmed Reduction.Parametric Sensitivity and Estimation of Kinetic Parameters"、J.Catal.83(1983)323−335]。
【0082】
この測定装置では、粉末状の試料は、緩い充填物として2つのガラスウールプラグの間でU型形状のガラス管中に充填される。そのU字管は、セラミック製の管形炉内に存在する。試料は、TPR装置中に取り付けた後に、それをアルゴン流中で200℃まで加熱し、そこで30分間保持することによってまず乾燥される。引き続き、50℃に冷却される。試料を、5K/分の加熱ランプで50℃から650℃の最終温度にまで加熱する。試料温度は、前記充填物の近くの熱電対スリーブ内で測定し、2秒の間隔で記録する。前記のU字管を通じて、10%の水素を有する水素/アルゴン流を通す。排ガス中の水素含量を、熱伝導率検出器を用いて測定する。水素消費量を、温度に依存して記録する。積分によって、調査された温度間隔における全H2消費量が測定される。そのH2消費量から、還元度RGは、以下の式:
RG=100%−100%*[(触媒試料の測定された水素消費量(TPR測定による))/(完全酸化物触媒の理論上の水素消費量であって、試料の金属含有率と反応化学量論とに基づいて計算される量)]に従って計算することができる。
【0083】
理論的な水素消費量の計算に際して、Ni、Cu及びCoをNiO、CuO及びCoOとして存在し、かつ上述の助触媒が還元されずに存在すると想定する。還元度の計算に際して、すなわち通常は、TPR測定の条件下で相応の金属にまで還元される金属酸化物のみを考慮する。例えばZrO2は、TPR測定の条件下で還元されないので、Zr含量は、還元度の測定に際して考慮されない。
【0084】
触媒の活性化は、触媒前駆体の還元によって行われる。触媒前駆体の還元は、既に先に記載した。
【0085】
触媒の活性化は、不動態化された触媒の還元によっても行うことができる。不動態化された触媒の還元は、上記のように、不動態化された触媒を水素又は水素含有ガスで処理することによって行うことができる。還元条件は、一般に、触媒前駆体の還元に際して使用される還元条件に相当する。活性化によって、一般に、保護作用のある不動態化層が破棄される。
【0086】
活性化された触媒は、その活性化のための還元の間及び後に不活性条件下で取り扱わねばならない。
【0087】
好ましくは、活性化された触媒は、窒素などの不活性ガス下で、又は不活性な液体、例えばアルコール、水もしくは該触媒が使用される各反応の生成物の下で使用され、取り扱われ、かつ貯蔵される。場合により、活性化された触媒は、本来の反応の開始前に、その際、不活性液体を除去せねばならない。
【0088】
本発明によれば、グリコールアルデヒドは、活性化された触媒と接触される。
【0089】
本発明によれば、活性化された触媒は、接触するまで、活性化の間及び後に不活性条件下で取り扱われる。好ましくは、また、グリコールアルデヒドと活性化された触媒との接触は、不活性条件下で、特に好ましくは水素又は水素含有ガスの存在下で行われる。
【0090】
好ましい一実施形態においては、活性化された触媒とグリコールアルデヒドとは、事前に既に触媒の活性化が行われた反応器で接触される。本発明によれば、活性化された触媒は、接触するまで、活性化の間及び後に不活性条件下で、好ましくは水素又は水素含有ガスの存在下で取り扱われる。選択的に、活性化された触媒は、その活性化の後に、窒素又は別の好適な不活性ガスの存在下で貯蔵することができる。このために、一般に、水素流中の不活性ガスの割合は、活性化の後に徐々に高まる。好ましくは、グリコールアルデヒドの配量は、また不活性条件下で、好ましくは水素又は不活性ガスの存在下で行われる。更なる好ましい一実施形態においては、活性化された触媒は、活性化の後で不活性液体と接触される。好ましくは、活性化された触媒と不活性液体との接触は、不活性液体を活性化された触媒に計量供給することによって行われる。好ましくは、本発明によるグリコールアルデヒドの反応は、触媒の活性化も行われたのと同じ反応器中で行われる。
【0091】
しかしながら、該触媒は、また、不活性液体と一緒に、グリコールアルデヒドとの接触が行われる反応器中に移送することができる。グリコールアルデヒドは、既に初充填物として反応器中に存在していてよいが、触媒の移送後にそれを反応器中に計量供給してもよい。好ましくは、活性化された触媒とグリコールアルデヒドとの接触は、不活性条件下で、特に好ましくは水素又は不活性ガスの存在下で行われる。
【0092】
本発明による方法において、グリコールアルデヒドは、アミノ化剤と、水素及び溶剤の存在下で反応される。
【0093】
該溶剤は、反応混合物の全質量に対してそれぞれ、5〜95質量%、好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%の割合で使用でき、その際、該反応混合物の全質量は、該方法で使用される出発物質(グリコールアルデヒド及びアミノ化剤)及び溶剤の質量の合計からである。
【0094】
アミノ化剤と使用されるグリコールアルデヒドとの比率は、通常は、1:100〜100:1の範囲、好ましくは1:1〜50:1の範囲、特に好ましくは1:1〜45:1の範囲にある。
【0095】
該反応は、通常は、1〜500バールの、好ましくは10〜350バールの、特に好ましくは50〜300バールの、殊に好ましくは80〜220バールの圧力で行われる。圧力保持もしくは圧力制御は、一般に水素の配量を介して行われる。
【0096】
グリコールアルデヒドとアミノ化剤との反応は、一般に、15〜350℃の、好ましくは50〜250℃の、特に好ましくは80〜220℃の温度で行われる。
【0097】
特に好ましい一実施形態においては、アミノ化剤と使用されるグリコールアルデヒドとの比率は、好ましくは1:100〜100:1、特に好ましくは1:1〜50:1、殊に好ましくは1:1〜45:1である。前記の特に好ましい実施形態においては、圧力は、好ましくは1〜200バール、特に好ましくは10〜150バール、殊に好ましくは50〜120バールであり、かつ温度は、好ましくは20〜300℃、特に好ましくは50〜250℃、殊には80〜120℃である。前記の特定の実施形態においては、グリコールアルデヒドの反応に際して、一般に、MEOAは、高い選択性及び収率で形成される。
【0098】
特に好ましい更なる一実施形態においては、アミノ化剤と使用されるグリコールアルデヒドとの比率は、好ましくは1:100〜100:1、特に好ましくは1:1〜50:1、殊に好ましくは1:1〜45:1である。前記の特に好ましい実施形態においては、圧力は、好ましくは100〜300バール、特に好ましくは150〜250バール、殊に好ましくは180〜220バールであり、かつ温度は、好ましくは20〜300℃、特に好ましくは50〜250℃、殊には160〜220℃である。前記の特定の実施形態においては、グリコールアルデヒドの反応に際して、一般に、EDAは、高い選択性及び収率で形成される。
【0099】
本発明による方法は、連続的に、断続的に又は半連続的に実施することができる。
【0100】
典型的な反応器は、例えば高圧撹拌槽反応器(Hochdruck−Ruehrkessel−Reaktor)、オートクレーブ、固定床反応器、流動層反応器、移動床、循環式流動層、塩浴反応器、反応器としてのプレート型熱交換器、複数の段を有する棚段反応器であって該棚段の間で熱交換もしくは部分流の排出/供給があるかもしくはない反応器、半径流反応器もしくは軸流反応器として考えられる形態では、連続撹拌される槽、気泡塔反応器などであり、その際、所望の反応条件(例えば温度、圧力及び滞留時間)に適した反応器がそれぞれ使用される。
【0101】
好ましくは、本発明による方法は、高圧撹拌槽反応器、固定床反応器又は流動層反応器中で実施される。特に好ましい一実施形態においては、本発明による方法は、1もしくは複数の固定床反応器中で実施される。更なる特に好ましい一実施形態においては、グリコールアルデヒドの反応は、高圧撹拌槽反応器中で行われる。
【0102】
グリコールアルデヒド及びアミノ化剤は、反応器の反応帯域中に、例えば事前混合した反応物流として一緒に入れることができ又は個別に入れることができる。個別に添加する場合には、グリコールアルデヒド及びアミノ化剤は、同時に、時間をずらして又は連続して反応器の反応帯域中に入れることができる。
【0103】
滞留時間は、本発明による方法では、断続的な方法で実施する場合には、一般に、15分〜72時間、好ましくは60分〜24時間、特に好ましくは2時間〜10時間である。
【0104】
好ましい連続的な方法での実施においては、触媒負荷量は、一般に、0.01kgのグリコールアルデヒド/kgの触媒/時間〜3.0kgのグリコールアルデヒド/kgの触媒/時間、好ましくは0.05kgのグリコールアルデヒド/kgの触媒/時間〜2.0kgのグリコールアルデヒド/kgの触媒/時間、特に好ましくは0.1kgのグリコールアルデヒド/kgの触媒/時間〜1.5kgのグリコールアルデヒド/kgの触媒/時間である。
【0105】
本発明による反応に引き続いて、所望の生成物の単離は、当業者に公知の方法によって、例えば蒸留によって行うことができる。
【0106】
本発明の利点は、グリコールアルデヒドの反応方法を開発できたこと、高い転化率のグリコールアルデヒドと、高い収率及び選択性での生成物、特にMEOA及び/又はEDAの形成が可能となることにある。更に、不所望な副生成物であるピペラジンの形成が低減される。さらに、該反応生成物は高い純度で生ずる。これらの目的は、本発明による方法において、極めて十分に貴金属を含まない触媒を使用できるという前提のもと達成された。従って、該方法の物質コストは低減できる。貴金属含有の触媒の使用は、すなわち、方法の経済性に作用をもたらす触媒使用コストの大きな増大をもたらす。将来的に、原料の劇的な削減が考えられるので、貴金属の価格が一層更に高まることを待ち構えることができる。
【0107】
更に、本発明による方法での触媒は、高い機械的及び化学的な安定性を有するので、長い寿命を達成することができる。
【0108】
本発明による方法を、以下に挙げる実施例をもとにより詳細に説明する。
【0109】
触媒前駆体の製造:
触媒前駆体a)
硝酸ニッケルと、硝酸銅と、酢酸ジルコニウムとからなり、4.48質量%(NiOとして計算した)のNiと、1.52質量%(CuOとして計算した)のCuと、2.82質量%(ZrO2として計算した)のZrとを含有する水溶液を、同時に1つの撹拌容器内で一定流において20%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて70℃の温度で、ガラス電極で測定したpH値7.0を保持するように沈殿させる。得られた懸濁液を濾過し、そして濾過ケークを完全脱塩水で、濾液の導電率が約20μSとなるまで洗浄する。次いで、まだ湿っている濾過ケーク中に、以下に示す酸化物混合物が得られるまでヘプタモリブデン酸アンモニウムを混加する。次いで、該濾過ケークを150℃の温度で乾燥棚においてもしくは噴霧乾燥機において乾燥させる。こうして得られた水酸化物−炭酸塩−混合物を、ここで430〜460℃の温度で4時間の時間にわたり熱処理する。こうして製造された触媒前駆体は、以下の組成を有する:50質量%のNiO、17質量%のCuO、1.5質量%のMoO3及び31.5質量%のZrO2。該触媒を、3質量%のグラファイトと混合し、成形してタブレットにした。
【0110】
触媒前駆体(b)の製造:
硝酸ニッケルと、硝酸コバルトと、硝酸銅と、酢酸ジルコニウムとからなり、2.39質量%のNiOと、2.39質量%のCoOと、0.94質量%のCuOと、2.82質量%のZrO2とを含有する水溶液を、同時に1つの撹拌容器内で一定流において20%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて70℃の温度で、ガラス電極で測定したpH値7.0を保持するように沈殿させた。得られた懸濁液を濾過し、そして濾過ケークを完全脱塩水で、濾液の導電率が約20μSとなるまで洗浄した。次いで、該濾過ケークを150℃の温度で乾燥棚においてもしくは噴霧乾燥機において乾燥させた。こうして得られた水酸化物−炭酸塩−混合物を、ここで450〜500℃の温度で4時間の時間にわたり熱処理した。こうして製造された触媒前駆体は、以下の組成を有していた:28質量%のNiO、28質量%のCoO、11質量%のCuO及び33質量%のZrO2。該触媒前駆体を、3質量%のグラファイトと混合し、成形してタブレットにした。
【0111】
触媒前駆体(c)の製造:
硝酸コバルト、硝酸マンガン及びリン酸を水に溶かすことによって、10質量%のコバルトと、0.55質量%のマンガンと、0.45質量%のH3PO4とを含有する溶液を製造した。20%の炭酸ナトリウム溶液を添加することによって、50℃の温度で沈殿させた。生じた沈殿物を、洗水中にナトリウム又は硝酸塩がもはや検出できなくなるまで洗浄した。こうして得られた固体を、水とともにかき混ぜ、噴霧塔中で噴霧する(入口温度=550℃)。噴霧物を、500℃で乾燥させ、粉砕し、押出機中で4mmの直径のストランドに成形した。そのストランドを、100〜120℃で乾燥させ、引き続き650℃で1時間、次いで850℃で3時間にわたって、か焼した。こうして製造された触媒前駆体は、90.4質量%のコバルトと、5.1質量%のマンガンと、0.3質量%のナトリウムと、3.1質量%のリンとを含有していた。
【0112】
触媒前駆体(d)の製造:
触媒前駆体(d)の製造は、EP−A−1317959号の実施例1Aに従って行ったが、塩化鉄(III)を使用しなかった。
【0113】
触媒(e)の製造:
触媒(e)としては、Engelhardt社(Engelhardt Co.Iselin、ニュージャージー)の市販されているNi−1404を使用した。この触媒は、Ni及びNiO並びにアルミニウム酸化物及びケイ素酸化物からなる。該触媒は、既にその製造元によって還元された形及び不動態化された形で提供され、粉末状で使用された。
【0114】
触媒前駆体の還元及び不動態化
酸化物タブレット(触媒前駆体(a)及び(b))もしくはストランド(触媒前駆体(c))もしくは粉末(触媒前駆体(d))を還元した。還元は、触媒前駆体に応じて250〜500℃の範囲で実施し、その際、加熱速度は、3℃/分であった。まず、50分間にわたりN2中10%のH2で還元させ、引き続き20分間にわたりN2中25%のH2で還元させ、次いで10分間にわたりN2中50%のH2で還元させ、次いで10分間にわたりN2中75%のH2で還元させ、そして最後に3時間にわたり100%のH2で還元させた。%の表記は、それぞれ体積%である。還元された触媒の不動態化は、室温で希釈された空気(最大で5体積%のO2含有率を有するN2中の空気)において実施した。
【0115】
グリコールアルデヒドの反応:
実施例1〜12:
マグネット結合型の撹拌機を備えた電気加熱式の160mLオートクレーブ(Hastelloy)において、3gの市販の二量体のグリコールアルデヒド(モノマーとして計算して50ミリモル)を、その都度の溶剤中に供した(20ml)。引き続き、不活性ガス雰囲気下で、第1表に示される量の活性化された触媒を、10mlのTHF中に懸濁して添加した。
【0116】
不動態化された触媒は、オートクレーブに入れる前に以下のように活性化した:
実施例1〜3において、不動態化された触媒は、280℃で10時間にわたり1バールの水素分圧で還元した。
【0117】
還元度は、全ての場合において30%を上回った。
【0118】
実施例4〜11において、不動態化された触媒は、280℃で10時間にわたり1バールの水素分圧で還元した。
【0119】
還元度は、全ての場合において30%を上回った。
【0120】
実施例12において、不動態化された触媒は活性化しなかった(比較例)。
【0121】
引き続き、アンモニアを、第1表に示されるモル比(アンモニア:モノマーのグリコールアルデヒド)に相応して計量供給し、そして該混合物を100℃に加熱した。この温度に達したら、示された反応圧が達成されるほどの水素を圧入した。反応の間に、その圧力を水素の更なる供給によって保持し、消費量を測定した。全ての場合に、100℃及びその都度の圧力で8時間にわたり撹拌した。転化率は、水素消費量を用いて近似的に測定した。8時間後の反応排出物から触媒を濾別し、そこにメタノールを加え、GC(面積パーセント)により分析した。100%との差は、同定されない副成分である。
【0122】
実施例13〜16:
マグネット結合型の撹拌機を備えた電気加熱式の160mLオートクレーブ(Hastelloy)において、3gの市販の二量体のグリコールアルデヒド(モノマーとして計算して50ミリモル)を、20mlのTHF中に供した。500μl(0.47g)のジエチレングリコールジメチルエーテルを内部標準として添加した。引き続き、不活性ガス雰囲気下で、0.5gの触媒を、10mlのTHF中に懸濁して添加した。
【0123】
実施例14及び16の場合に、不動態化された触媒を、それぞれ反応器への添加前に、水素を用いて250℃で10時間にわたり1バールの水素分圧で活性化した。還元度を第2表に示す。
【0124】
実施例13及び15において、不動態化された触媒を、反応器への添加前に活性化しなかった。
【0125】
引き続き、30gのアンモニアを、35:1のモル比(アンモニア:モノマーのグリコールアルデヒド)に応じて計量供給し、そして該混合物を100℃に加熱した。この温度に達したら、80バールの反応圧が達成されるほどの水素を圧入した。反応の間に、その圧力を水素の更なる供給によって保持し、消費量を測定した。該反応は、100℃及び800rpmで撹拌した。反応期間を第2表に示す。反応排出物から触媒を濾別し、そこにメタノールを加え、GC(面積パーセント)により分析した。更に、内部標準を用いて、挙げられた化合物の収率を測定した(第2表)。
【0126】
反応度の測定:
その測定は、Micrometitics RS 232型のAutochem II Chemisorptionアナライザ機器で記録した。評価ソフトウェアとして、Autochem II 2920プログラムを使用した。
【0127】
温度プログラム還元は、触媒前駆体の試料を水素/不活性ガス流中で、単位時間当たりに一定の温度上昇をもって加熱することによって行った。Monti及びBaikerの提案に基づく構造の装置を使用した[D.A.M.Monti,A.Baiker,"Temperatur−Programmed Reduction.Parametric Sensitivity and Estimation of Kinetic Parameters"、J.Catal.83(1983)323−335]。粉末状の試料を、緩い充填物として2つのガラスウールプラグの間でU型形状のガラス管中に充填した。そのU字管は、セラミック製の管形炉内に存在する。試料を、TPR装置中に取り付けた後に、それをアルゴン流中で200℃まで加熱し、そこで30分間保持することによってまず乾燥させた。引き続き、50℃に冷却した。試料を、5K/分の加熱ランプで50℃から650℃の最終温度にまで加熱した。試料温度は、前記充填物の近くの熱電対スリーブ内で測定し、2秒の間隔で記録した。前記のU字管を通じて、10%の水素を有する水素/アルゴン流を通した。排ガス中の水素含量を、熱伝導率検出器を用いて測定した。水素消費量を、温度に依存して記録した。積分によって、調査された温度間隔における全H2消費量を測定した。そのH2消費量から、還元度RGは、以下の式:
RG=100%−100%*[(触媒試料の測定された水素消費量(TPR測定による))/(完全酸化物触媒の理論上の水素消費量であって、試料の金属含有率と反応化学量論とに基づいて計算される量)]に従って計算された。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコールアルデヒドとアミノ化剤とを水素及び触媒の存在下で反応させる方法であって、前記触媒が、触媒前駆体の還元によって又は不動態化された触媒の還元によって活性化される前記方法において、前記反応を、溶剤の存在下で行い、かつグリコールアルデヒドを前記活性化された触媒と接触させることを特徴とする方法。
【請求項2】
触媒前駆体が、触媒活性成分として、元素の周期律表の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の金属の1種もしくは複数種の酸素含有の化合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒活性成分が、Ni、Co及び/又はCuの酸素含有化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用される触媒が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、インジウム、白金、金及び水銀からなる群から選択される0.4モル%未満の貴金属原子を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載方法。
【請求項5】
反応を15〜350℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
反応を10〜350バールの圧力で行うことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
溶剤がTHF又は水であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
活性化された触媒が、30%以上の還元度を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
不動態化された触媒の還元によって製造された活性化された触媒が、活性化の後に、前記不動態化された触媒の還元度を少なくとも2%上回る還元度を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
活性化された触媒が、還元の間及び還元の後に、グリコールアルデヒドとの接触まで不活性条件下で取り扱われる、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−514306(P2013−514306A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543688(P2012−543688)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069642
【国際公開番号】WO2011/082994
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】