説明

グリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法

【課題】難分離性混合物であるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルと、グリコールジ−tert−ブチルエーテルとの混合物を分離する方法を提供する。
【解決手段】前記分離方法は、下記の一般式1で表されるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよび下記の一般式2で表されるグリコールジ−tert−ブチルエーテルを含む反応混合物を親油性抽出剤および親水性抽出剤を用いて分離することを特徴とする。




(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜4の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法に係り、さらに詳しくは、難分離性混合物であるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの混合物を親水性抽出剤および親油性抽出剤を用いた抽出工程により分離する、グリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリコールを原料として用いて、主生産物であるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルを生産した後、副生産物であるグリコールジ−tert−ブチルエーテルおよび前記グリコールモノ−tert−ブチルエーテルを分離するためには、反応後に分離および精製工程が行われることを余儀なくされる。しかしながら、グリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの混合物は難分離性混合物であるため、分離が極めて困難である。中国特許1065655A号明細書には、グリコールジ−tert−ブチルエーテルが水と一緒に約98℃において共沸蒸留が可能であることが開示されているが、前記水との共沸蒸留方法は多量の水を必要とするため蒸留にかかるユーティリティコストおよびエネルギーの消耗が甚だしく、これは、製品のコストアップにつながるため好ましくない。
【0003】
米国特許第5,552,024号明細書には、ジプロピレングリコールtert−ブチルエーテルを不純物から精製するために、ジプロピレングリコールなどのグリコール抽出剤を用いる抽出蒸留工程が開示されている。また、グリコールアルキルエーテル類を合成する方法に関する特許(米国特許第4,345,102号公報、米国特許第6,730,815号公報など)は多数あるが、親水性抽出剤および親油性抽出剤を用いた抽出工程により難分離性混合物であるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよびグリコールジ−tert−ブチルエーテルを分離する方法については未だ知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、分離工程が単純であり、しかも、抽出剤を再使用することができて経済性に富んでいる、グリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、下記の一般式1で表されるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよび下記の一般式2で表されるグリコールジ−tert−ブチルエーテルを含む反応混合物を親油性抽出剤および親水性抽出剤を用いて分離することを特徴とする、グリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法を提供する。
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜4の整数である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法は、親水性抽出剤および親油性抽出剤を使用することにより、相対的に単純な工程(抽出および蒸留)により、共沸点が存在して通常の蒸留工程では分離し難い難分離性混合物であるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとを分離することができ、分離工程の運転エネルギーが節減され、しかも、混合物の分離後に前記親水性抽出剤および親油性抽出剤を再使用することができるので経済性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳述する。
【0011】
本発明に係るグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法は、下記の一般式1で表されるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよび下記の一般式2で表されるグリコールジ−tert−ブチルエーテルを含む反応混合物を親油性抽出剤および親水性抽出剤を用いて分離することを特徴とするものであり、例えば、上記の一般式1で表されるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよび上記の一般式2で表されるグリコールジ−tert−ブチルエーテルを含む反応混合物を多段抽出塔に投入するステップと、前記多段抽出塔の下部に親油性抽出剤を投入し、前記多段抽出塔の上部に親水性抽出剤を投入した後、例えば、10〜60℃の温度および常圧(1atm)〜15バールの圧力の条件下で前記多段抽出塔を運転するステップと、前記多段抽出塔の塔底部から前記グリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよび親水性抽出剤を含む親水性化合物層を得、前記多段抽出塔の塔頂部から前記グリコールジ−tert−ブチルエーテルおよび親油性抽出剤を含む親油性化合物層を得るステップと、を含む。
【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜4の整数である。
【0014】
本発明に用いられる反応混合物は、前記グリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよびグリコールジ−tert−ブチルエーテルを含む難分離性混合物であり、下記の一般式3で表されるグリコール化合物および反応原料であるイソブテンを含む炭素数4の炭化水素混合物(C4炭化水素混合物)、例えば、イソブテンおよびイソブタン、n−ブタン、1−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、これらの混合物などを酸性触媒、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂の存在下で反応させて得たものを使用することができる。前記強酸性陽イオン交換樹脂、好ましくは、強酸性であって、スルホン酸基(SOH)を有する、水に不溶性の強酸性陽イオン交換樹脂を使用することができ、具体的には、スチレン−スルホン酸型陽イオン交換樹脂、フェノール−スルホン酸型陽イオン交換樹脂、これらの架橋結合体、スルホン化石炭、スルホン化アスファルトなどを使用することができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0015】
【化5】

式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜4の整数である。
【0016】
上記の一般式3で表されるグリコール化合物は、例えば、nが0であり、且つ、Rが水素原子(H)である場合にはエチレングリコールであり、nが0であり、且つ、Rが炭素数1のアルキル基(メチル基)である場合にはプロピレングリコールであり、nが1であり、且つ、RおよびRが炭素数1のアルキル基である場合にはジプロピレングリコールであり、nが2であり、且つ、RおよびRが水素原子である場合にはトリエチレングリコールであり、nが2であり、且つ、RおよびRが炭素数1のアルキル基である場合にはトリプロピレングリコールであるが、本発明はこれらに限定されない。それぞれのグリコール化合物は、前記反応により、それぞれのグリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよびグリコールジ−tert−ブチルエーテルを含む反応混合物を製造することができ、本発明に係る分離方法を適用することができる。なお、前記反応により得られた反応混合物は、前記グリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの難分離性混合物に加えて、未反応の上記の一般式3で表されるグリコール化合物、反応後の残渣であるC4(炭素数4)炭化水素混合物などを含むことができる。
【0017】
本発明に用いられる親油性抽出剤は、前記反応混合物から、前記グリコールジ−tert−ブチルエーテルなどの親油性化合物を抽出して、親油性化合物層(有機層)を形成することができるものであり、通常の親油性抽出剤を使用することができ、例えば、炭素数2〜16、好ましくは、炭素数2〜10、さらに好ましくは、炭素数3〜8の炭化水素化合物を使用することができる。また、前記反応混合物に含まれるC4炭化水素混合物と同じ炭化水素化合物を親油性抽出剤として使用した方が、親油性抽出剤を回収および再循環する工程にとって好ましい。前記親油性抽出剤の具体例としては、エチレン、プロピレン、n−ブタン、イソブタン、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、n−ペンタンなどのペンタン類、1−ペンテンなどのペンテン類、n−ヘキサンなどのヘキサン類、1−ヘキセンなどのヘキセン類など炭素数2〜16の炭化水素化合物が挙げられ、前記炭化水素化合物を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。前記親油性抽出剤の炭素数が2未満であれば、前記グリコールジ−tert−ブチルエーテルを抽出することができず、前記親油性抽出剤の炭素数が16を超えると、親油性抽出剤の粘度が上がって抽出効率が低下し、沸点が上がって分離および回収が困難になる虞がある。
【0018】
本発明に用いられる親水性抽出剤は、前記反応混合物から、前記グリコールモノ−tert−ブチルエーテルなどの親水性化合物を抽出して、親水性化合物層(水層)を形成することができるものであり、通常の親水性抽出剤を使用することができ、例えば、水、炭素数1〜8、好ましくは、炭素数2〜6のアルコール類、炭素数1〜10、好ましくは、炭素数2〜8のグリコール類、これらの混合物などを使用することができる。前記炭素数1〜8のアルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノールなどが挙げられ、前記炭素数2〜10のグリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0019】
本発明に用いられる多段抽出塔は、通常の多段(例えば、2〜30段)抽出塔、例えば、向流多段式液/液抽出装置などを使用することができ、前記反応混合物を生成する反応器の圧力によるが、10〜60℃、好ましくは、20〜40℃の温度および常圧(1atm)〜15バール、好ましくは、常圧〜12バール、さらに好ましくは、2〜10バールの圧力の条件下で運転される。前記多段抽出塔の運転温度が10℃未満であれば、冷媒の投入によりエネルギーが消耗されるという欠点があり、60℃を超えると、はやり熱源供給によるエネルギー投入に起因して製造コストが上がるという欠点がある。前記多段抽出塔の運転圧力が常圧未満であれば、減圧に必要となる工場設備に投資しなければならないという欠点があり、15バールを超えると、これに見合う高価な材質を使用しなければならないという欠点がある。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態(反応混合物1に含まれている反応後の残渣であるC4炭化水素混合物と同じ炭化水素化合物を親油性抽出剤2として使用し、親水性抽出剤3としてグリコール類を除く、水、炭素数1〜8のアルコール類またはこれらの混合物を使用する場合)に係るグリコールモノ−tert−ブチルエーテル8とグリコールジ−tert−ブチルエーテル6との分離方法を説明するための図(工程概略図)である。以下、添付図面に基づき、本発明をさらに具体的に説明する。
【0021】
図1に示すように、グリコールジ−tert−ブチルエーテル6、グリコールモノ−tert−ブチルエーテル8、未反応の上記の一般式3で表されるグリコール化合物9および反応後の残渣であるC4(炭素数4)炭化水素混合物10を含む反応混合物1を多段抽出塔20に供給した後、多段抽出塔20の下部に親油性抽出剤2を供給し、多段抽出塔20の上部に親水性抽出剤3を供給すれば、親油性抽出剤2はグリコールジ−tert−ブチルエーテル6などの親油性物質と一緒に親油性化合物層(有機層)5を形成して多段抽出塔20の下部から上部に移動し、親水性抽出剤3はグリコールモノ−tert−ブチルエーテル8などの親水性物質と一緒に親水性化合物層(水層)4を形成して多段抽出塔20の上部から下部に移動する。このとき、多段抽出塔20の水層4と有機層5との間の界面は、多段抽出塔20の上方または下方に形成可能であり、抽出剤の投入量および運転条件などによって界面形成を効率よく調節することができる。前記界面が多段抽出塔20の上方に位置する場合は、水層4がメインの状態において親油性抽出剤2が親油性物質を抽出して上部に移動する場合に相当し、界面が下方に位置する場合は、有機層5がメインの状態において親水性抽出剤3が親水性物質を抽出して下部に移動する場合に相当する。このように、前記条件下で多段抽出塔20を運転して、前記多段抽出塔20の塔底部から前記親水性化合物層(水層)4を得、前記多段抽出塔20の塔頂部から前記親油性化合物層(有機層)5を得ることにより、親水性化合物層4および親油性化合物層5の形で前記グリコールモノ−tert−ブチルエーテル8およびグリコールジ−tert−ブチルエーテル6を分離することができる。
【0022】
前記多段抽出塔20の塔底部から得られた親水性化合物層(水層)4および多段抽出塔20の塔頂部から得られた親油性化合物層(有機層)5は、前記親水性化合物層4を第1の多段蒸留塔40において蒸留して前記グリコールモノ−tert−ブチルエーテル8および親水性抽出剤3を分離し、分離された親水性抽出剤3を前記多段抽出塔20の上部に再循環させるステップおよび前記親油性化合物層5を第2の多段蒸留塔30において蒸留して前記グリコールジ−tert−ブチルエーテル6および親油性抽出剤2を分離し、分離された親油性抽出剤2を前記多段抽出塔の下部に再循環させるステップを経て、それぞれ前記グリコールモノ−tert−ブチルエーテル8と親水性抽出剤3、および前記グリコールジ−tert−ブチルエーテル6と親油性抽出剤2に分離・精製される。
【0023】
本発明に用いられる第1の多段蒸留塔40は、通常の多段蒸留塔、例えば、5〜50段の蒸留塔であり、第1の多段蒸留塔40の塔頂部、熱交換器60および第1の貯溜タンク42に親水性抽出剤3が回収されて多段抽出塔20に再循環され、これと同時に、第1の多段蒸留塔40の塔底部に親水性抽出剤3を除く残りの物質、すなわち、グリコールモノ−tert−ブチルエーテル8および未反応の上記の一般式3で表されるグリコール化合物(未反応のグリコール化合物)9が排出される。前記第1の多段蒸留塔40の塔頂部の温度は、与えられた圧力条件下における親水性抽出剤3の沸点であり、例えば、親水性抽出剤3として水を単独で使用し、前記多段抽出塔20の運転圧力が0.1バールである場合に前記塔頂部の温度は約45℃であり、前記多段抽出塔20の運転圧力が常圧である場合に100℃である。なお、前記第1の多段蒸留塔40の塔底部の温度は、与えられた圧力条件下におけるグリコールモノ−tert−ブチルエーテル8と未反応のグリコール化合物9との混合物7の沸点である。
さらに、本発明に係る分離方法は、前記第1の多段蒸留塔40の塔底部から排出された混合物7、すなわち、前記親水性化合物層4から分離されたグリコールモノ−tert−ブチルエーテル8を、第3の多段蒸留塔50において蒸留して、前記未反応のグリコール化合物9を分離することにより、グリコールモノ−tert−ブチルエーテル8を精製するステップをさらに含んでいてもよい。前記第3の多段蒸留塔50としては、通常の多段蒸留塔、例えば、5〜50段の蒸留塔を使用することができ、第3の多段蒸留塔50の塔頂部、熱交換器60および第3の貯溜タンク52からグリコールモノ−tert−ブチルエーテル8が排出され、これと同時に、第3の多段蒸留塔50の塔底部に未反応グリコール化合物9などが排出される。前記第3の多段蒸留塔50は、0.05〜0.5バール、好ましくは、0.08〜0.2バールの圧力下で運転される。前記第3の多段蒸留塔50の塔頂部の温度は、与えられた圧力条件下におけるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルの沸点であり、前記第3の多段蒸留塔50の塔底部の温度は、与えられた圧力条件下におけるグリコール化合物9の沸点である。前記第3の多段蒸留塔50の運転圧力が0.05バール未満であれば、圧力を合わせるための高価な装備および設備投資費用がかかるため経済的ではなく、0.5バールを超えると必要以上の多量のエネルギーが投入される虞がある。
【0024】
本発明に用いられる第2の多段蒸留塔30は、通常の多段蒸留塔、例えば、5〜50段の蒸留塔であり、第2の多段蒸留塔30の塔頂部、熱交換器60および第2の貯溜タンク32に親油性抽出剤2が回収されて多段抽出塔20に再循環される。図1に中、C4炭化水素混合物10は、再循環される量を除く親油性抽出剤2と、反応混合物1の反応後の残渣であるC4炭化水素混合物10とを含むものであり、他の用途に用いられるために回収可能である。また、第2の多段蒸留塔30の塔底部には、前記C4炭化水素混合物10を除く残りの物質、すなわち、グリコールジ−tert−ブチルエーテル6が排出される。前記第2の多段蒸留塔30は、前記親油性抽出剤2の種類に応じて、第2の多段蒸留塔30の塔頂部の運転圧力が異なり、例えば、炭素数4以下の抽出剤を使用する場合、約4バールの圧力下で運転され、炭素数5〜8の抽出剤を使用する場合、常圧(1atm)下で運転され、炭素数9以上の抽出剤を使用する場合、減圧蒸留で運転される。前記第2の多段蒸留塔30の塔頂部の温度は、与えられた塔頂部の圧力条件下における親油性抽出剤2の沸点であり、前記第2の多段蒸留塔30の塔底部の温度は、与えられた塔底部の圧力条件(例えば、常圧〜2バール)下におけるグリコールジ−tert−ブチルエーテルの沸点である。
【実施例】
【0025】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0026】
[実施例1]ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルとジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離
図1の多段抽出塔20、第1、第2および第3の多段蒸留塔30、40、50などを用いて、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(DETB)84.99重量%およびジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル(DDBE)15.01重量%を含む下記表1の反応混合物1を分離した。このときに得られる反応混合物1(ストリーム1)、親油性抽出剤2(ストリーム2)、親水性抽出剤3(ストリーム3)、親水性化合物層4(ストリーム4)、親油性化合物層5(ストリーム5)、グリコールジ−tert−ブチルエーテル6(ストリーム6)、グリコールモノ−tert−ブチルエーテル8と未反応のグリコール化合物9との混合物7(ストリーム7)、グリコールモノ−tert−ブチルエーテル8(ストリーム8)、未反応のグリコール化合物9(ストリーム9)およびC4炭化水素混合物10(ストリーム10)の物質樹脂(単位:kg/hr)、温度および圧力を下記表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
[実施例2]ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルとジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離
ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(DETB)67重量%およびジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル(DDBE)33重量%を含む反応混合物1を使用し、親油性抽出剤2としてヘキサンを使用し、親水性抽出剤3として水を使用し、ヘキサンの流量を反応性化合物1に含まれているジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル(DDBE)の流量と同量にし、水の流量を反応性化合物1に含まれているジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(DETB)の流量と同量にした以外は、実施例1の方法と同様にして、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(DETB)およびジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル(DDBE)を分離した。このとき、多段抽出塔20の塔底部に得られる親水性化合物層4の水を除くジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(DETB)の濃度は99.88重量%であり、多段抽出塔20の塔頂部から蒸留塔30を介して得られるジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル(DDBE)の濃度は98.39重量%であった。
【0029】
前記実施例1および2から明らかなように、本発明に係るグリコールモノ−tert−ブチルエーテル8とグリコールジ−tert−ブチルエーテル6との分離方法は、親油性抽出剤2および親水性抽出剤3を使用することにより、相対的に単純な工程(抽出および蒸留)により難分離性混合物であるグリコールモノ−tert−ブチルエーテル8とグリコールジ−tert−ブチルエーテル6とを分離することができる。なお、工程が単純化されて分離工程の運転エネルギーが節減され、混合物の分離後に、前記親油性抽出剤2および親水性3は再使用可能であることが確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式1で表されるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよび下記の一般式2で表されるグリコールジ−tert−ブチルエーテルを含む反応混合物を親油性抽出剤および親水性抽出剤を用いて分離することを特徴とする、グリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法。
【化1】

【化2】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜4の整数である。)
【請求項2】
上記の一般式1で表されるグリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよび上記の一般式2で表されるグリコールジ−tert−ブチルエーテルを含む反応混合物を多段抽出塔に投入するステップと、
前記多段抽出塔の下部に親油性抽出剤を投入し、前記多段抽出塔の上部に親水性抽出剤を投入した後、前記多段抽出塔を運転するステップと、
前記多段抽出塔の塔底部から前記グリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよび親水性抽出剤を含む親水性化合物層を得、前記多段抽出塔の塔頂部から前記グリコールジ−tert−ブチルエーテルおよび親油性抽出剤を含む親油性化合物層を得るステップと、
を含む、請求項1に記載のグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法。
【請求項3】
前記親油性抽出剤は、炭素数2〜16の炭化水素化合物およびこれらの混合物よりなる群からから選ばれるものであり、前記親水性抽出剤は、水、炭素数1〜8のアルコール類、炭素数1〜10のグリコール類およびこれらの混合物よりなる群からから選ばれるものである、請求項1又は2に記載のグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法。
【請求項4】
前記多段抽出塔の運転は、10〜60℃の温度および常圧1atm〜15バールの圧力の条件下で行われる、請求項2又は3に記載のグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法。
【請求項5】
前記親水性化合物層を第1の多段蒸留塔において蒸留して前記グリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよび親水性抽出剤を分離し、分離された親水性抽出剤を前記多段抽出塔の上部に再循環させるステップと、
前記親油性化合物層を第2の多段蒸留塔において蒸留して前記グリコールジ−tert−ブチルエーテルおよび親油性抽出剤を分離し、分離された親油性抽出剤を前記多段抽出塔の下部に再循環させるステップと、
をさらに含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載のグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法。
【請求項6】
前記親水性化合物層から分離されたグリコールモノ−tert−ブチルエーテルを第3の多段蒸留塔において蒸留してグリコールモノ−tert−ブチルエーテルを精製するステップ
をさらに含む、請求項5に記載のグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法。
【請求項7】
前記反応混合物は、下記の一般式3で表されるグリコール化合物と、イソブテンを含む炭素数4の炭化水素混合物(C4炭化水素混合物)とを酸性触媒の存在下で反応させて得るものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のグリコールモノ−tert−ブチルエーテルとグリコールジ−tert−ブチルエーテルとの分離方法。
【化3】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜4の整数である。)

【図1】
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【公開番号】特開2012−1540(P2012−1540A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129360(P2011−129360)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(511140655)テリム インダストリアル カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】DAELIM INDUSTRIAL CO., LTD.
【Fターム(参考)】