説明

グリシン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を含む粉末ならびにメチルグリシン−N,N−二酢酸三ナトリウム塩粉末の調製方法

グリシン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体および/あるいはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を含む、結晶化度が30%以上である粉末を調製するための方法であって、前記グリシン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体および/あるいは前記グルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を水溶液の総重量に基づいて20質量%〜60質量%の濃度範囲で含む水溶液から開始し、前記水溶液は、回転する内部構造物を有するエバポレータ(ただし、前記回転する内部構造物は、エバポレータの内壁に対する距離がエバポレータの直径の1%以下で配置される)で第1の工程において濃縮され、固形物濃度が結晶スラリーの総重量に基づいて60質量%〜85質量%の範囲にある結晶スラリーを得、かつ、第2の工程において、前記結晶スラリーがペーストバンカーおよびその後、薄膜接触乾燥機において熟成させられ、前記ペーストバンカーおよび前記薄膜接触乾燥機における滞留時間が合計で15分以上である方法が提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリシン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を含む粉末ならびにメチルグリシン−N,N−二酢酸三ナトリウム塩粉末を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリシン−N,N−二酢酸の誘導体は、アルカリ土類金属イオンおよび重金属イオンに対する錯化特性を有しており、幅広い産業分野において、例えば、洗剤産業および清浄剤産業において、または、金属表面の処理などにおいて使用される。多くの用途において、これらの活性成分は、例えば錠剤形態に変換される混合物や食器洗浄機用錠剤のように、他の固形物を共に有する固形物として使用される。このような粉末の調製がこの場合には主に水溶液から行わるが、このことは、それに対応して複雑かつ不経済である大規模な結晶化方法(蒸発結晶化および冷却結晶化)につながる。これは、非対称な分子形状がその結晶化を大いに妨げるからである。
【0003】
結果的に、これらの粉末は、工業的にはほとんどの場合、噴霧乾燥設備で製造されるが、これは、非晶質割合が大きい固形物をもたらす。このことは、非常に吸湿性の挙動、ならびに、不良な貯蔵性さらには加工性(例えば、錠剤化プレス機などにおける加工性)につながり、このことは、安息香酸の添加に対する洗剤用の原料の後処理によって補われる(米国特許第3,932,316号を参照のこと)。
【0004】
欧州特許出願公開EP−A0845456号には、増大した結晶化度を有する上記錯化剤の粉末を調製するための方法が記載されている。具体的には、この方法では、水分割合が10%〜30%の範囲にある出発物が使用され、かつ、好ましくは結晶化種が加えられる。この方法は、主として結晶性の粉末をもたらすが、調製中に生じる粘性かつペースト様の相のために、結晶変態への確実な変換に貢献するための複雑なミキサー・ニーダー装置の使用を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,932,316号
【特許文献2】欧州特許出願公開EP−A0845456号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、増大した結晶化度を有する上記錯化剤の粉末を提供するための技術的より簡便な方法を提供することが本発明の目的の1つである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その解決策が、グリシン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を含む、結晶化度が30%以上である粉末を調製するための方法であって、グリシン−N,N−二酢酸の前記1種以上の誘導体および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の前記1種以上の誘導体を水溶液の総質量に基づいて20質量%〜60質量%の濃度範囲で含む水溶液から開始し、
前記水溶液が、回転する内部構造物を有するエバポレータ(ただし、前記回転する内部構造物は、エバポレータの内壁に対する距離がエバポレータの直径の1%以下で配置される)で第1の工程において濃縮されて、固形物濃度が結晶スラリーの総質量に基づいて60質量%〜85質量%の範囲にある結晶スラリーを得、かつ、
第2の工程において、前記結晶スラリーがペーストバンカーおよびその後は薄膜接触乾燥機において熟成させられ、前記ペーストバンカーおよび前記薄膜接触乾燥機における滞留時間が合計で15分以上である方法にある。
【0008】
上記方法は、グリシン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を、好ましくは、下記では省略形でMGDAとして示されるメチルグリシン−N,N−二酢酸の1種以上のアルカリ金属塩を溶液の総質量に基づいて約20質量%〜60質量%の範囲における総濃度で含む水溶液から始まる。
【0009】
高純度のグリシン−N,N−二酢酸またはグルタミン−N,N−二酢酸の誘導体を使用することが好ましい。合成に由来する副生成物は、できる限り低い割合で存在すべきであり、特に、2−(カルボキシメチルアミノ)プロピオン酸二ナトリウム塩の割合は2%未満、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩は0.5%未満、イミノ二酢酸二ナトリウム塩は2%未満、かつ、水酸化ナトリウムは2%未満であるべきである。特に、使用される出発物質は、それぞれの場合において乾燥物に基づいて84%以上の純度でのグリシン−N,N−二酢酸および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の上記1種以上の誘導体を含む水溶液である。
【0010】
下記式:
【0011】
【化1】

の対応する2−アルキルグリシンもしくは2−アルケニルグリシンまたは2−アルキルグリシンニトリルもしくは2−アルケニルグリシンニトリルまたは二重グリシン、
あるいは下記式:
【0012】
【化2】

で表される二重グリシンニトリルをホルムアルデヒドおよびシアン化水素またはアルカリ金属シアン化物と反応し、あるいは、イミノ二酢酸またはイミノジアセトニトリルを式OHC−A−CHOの対応するモノアルデヒドまたはジアルデヒドおよびシアン化水素またはアルカリ金属シアン化物と反応し、その後、なおニトリル基が存在するならば、ニトリル基を加水分解してカルボキシル基を得ることによって調製されている、グリシン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体および/あるいはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を使用することが好ましい。
【0013】
上記水溶液は好ましくは、20℃〜90℃の間の範囲における温度で使用される。
【0014】
グリシン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を含む上記水溶液を、第1の工程において、回転する内部構造物を有するエバポレータに導入し、このエバポレータで、上記水溶液は、固形物濃度が60質量%〜85質量%の範囲にある結晶スラリーまで濃縮される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転する内部構造物は、エバポレータの直径の1%以下である非常に小さい距離でエバポレータの内壁表面をかする。回転する内部構造物と、エバポレータの内壁との間の非常に小さい距離は、エバポレータの内壁表面の液膜における大きい剪断速度をもたらす。結果として、固有の結晶種形成が開始される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1に従って得られる粉末についてのX線粉末回折図である。
【図2】図2は、実施例2に従って得られる粉末についてのX線粉末回折図である。
【図3】図3は、実施例3に従って得られる粉末についてのX線粉末回折図である。
【図4】図4は、実施例4に従って得られる粉末についてのX線粉末回折図である。
【図5】図5は、実施例5に従って得られる粉末についてのX線粉末回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1つの好ましい実施形態において、回転する内部構造物は、回転する内部構造物がエバポレータの内壁表面をこするように配置される。
【0018】
第1の工程における蒸発が、具体的には、50℃〜140℃の間での温度範囲で、好ましくは80℃〜110℃の間での温度範囲で、かつ、0.1bar(絶対)〜4bar(絶対)の間での圧力範囲で、好ましくは0.8bar(絶対)〜1.2bar(絶対)の間での圧力範囲で行われる。第1の工程における高い温度は、具体的には、熱キャリアが循環するジャケットの形成とともに使用される蒸発装置の壁を加熱することによって保証される。
【0019】
第1の工程において使用されるエバポレータは好ましくはSambay(登録商標)エバポレータである。Sambay(登録商標)エバポレータは、可動ワイパーブレードが配置される中心のコアパイプを有する特別な薄膜エバポレータである。遠心力の結果として、可動ワイパーブレードがエバポレータの加熱された壁に押し付けられる。ワイパーブレードのタイプを変えることによって、従って、接触圧を変えることによって、このエバポレータは多くの問題に最適に適合させることができる。低いローター速度では、このエバポレータは、同時に非常に少ない排出量のために、大きい蒸発比を可能にしており、析出物を形成する製造物の処理のために主に適する。Sambay(登録商標)エバポレータは約35000mPasまでの粘度で作動する。
【0020】
第1の工程の後で得られる結晶スラリーはその後、この結晶スラリーを、少なくとも15分の十分な滞留時間、好ましくは15分〜1時間の間での十分な滞留時間、そうでなければ、15分〜3時間の間での十分な滞留時間をもたらす好適な装置に通すことによって熟成させられる。
【0021】
このために、第1の工程からの結晶スラリーは最初に、ペースト様の結晶スラリーを十分に混合するための撹拌部を好ましくは備えるペーストバンカーに通される。加えて、平均粒子直径が200μm以下である微細粉末画分を、好ましくは、ペーストバンカーに導入される物質の総重量に基づいて50%までの割合で、ペーストバンカーに導入し、結晶スラリーと混合し得る。結果として、方法全体で生じる微粒子画分をこの時点で利用し得る。
【0022】
必要に応じて混合された微細粉末を伴う結晶スラリーはその後、薄膜接触乾燥機に通され、その薄膜接触乾燥機にて、約0.5分から20分までの接触時間、具体的には約10分の接触時間中、約60℃〜140℃の範囲における温度で、薄膜接触乾燥機からの製造物出口においてMGDAの一水和物または二水和物の結晶変態を主に有する粉末が得られるように固形物混合物の水分含有量が調節される。
【0023】
使用される薄膜接触乾燥機は、例えば、様々な製造者から得られる高速パドル乾燥機であり、例えば、Vomm社製のTurbodryer、Buss社製の水平薄膜乾燥機、3V Cogeim社製の短経路エバポレータ、または、VRV社製の水平遠心乾燥機リアクターである。
【0024】
薄膜接触乾燥機から得られる製造物は、既知の乾燥方法、例えば、噴霧乾燥法またはミキサー・ニーダー(mixer−kneader)方法によって調製される粉末と比較して、より良好な流動性、より低い吸湿性およびより良好な安定性によって特徴づけられる。
【0025】
本発明はまた、回折角2θ(°)において下記の表で示されるd値(オングストローム)を有する第1の結晶変態:
【0026】
【表1】

および/または、粉末回折図において、それぞれの回折角2θ(°)でのd値(オングストローム)が、下記の表と一致する第2の結晶変態:
【0027】
【表2】

を含む、結晶化度が30%以上であるメチルグリシン−N,N−二酢酸三ナトリウム塩粉末を提供する。
【0028】
本発明を、実施例および図面を参照することによって下記により詳しく例示する。
【実施例】
【0029】
実施例1(比較例) 噴霧乾燥法
固形物含有量が40%であるMGDAの水溶液の60kg/hの定量的流れをプレート熱交換器エバポレータ(加熱面積、1.7m2)において蒸発させて59%の固形物含有量にし、分離容器において分離した。蒸発を分離器において152℃の壁面温度(蒸気加熱)および2.5bar(絶対)の圧力で行う。
蒸発処理された溶液を、ギアポンプを使用して約128℃の温度で下流のピストン・メンブラン・ポンプに計量して送りこみ、シングル・マテリアル・ジェットを使用して噴霧搭の中に噴霧した。
噴霧搭は直径が800mmであり、長さが12mであった。噴霧搭を1400kg/hの空気量および160℃のガス入口温度により稼働した。製造物出口温度は127℃であり、乾燥製造物の固形物含有量は94.1%であった。製造物を(直接には噴霧搭および下流側フィルターでの)2点排出により取り出した。
この方法で調製される製造物は流動可能な粉末であった。嵩密度は529kg/m3であった。X線構造分析は、製造物が非晶質であることを示す。
このサンプルの貯蔵挙動をデシケーター試験で評価した。これに関し、3gのサンプルを、144時間の期間にわたって20℃および76%の相対的大気湿度でのデシケーターにおいて、覆いのない秤量カップに入れられて貯蔵する。その後、サンプルの質量増加を確認し、サンプルの流動性を評価する。質量増加は27.1%であり、サンプルは溶解し始めていた。すなわち、サンプルは湿っており、もはや流動性を有していなかった。
【0030】
実施例2(比較例) ミキサー・ニーダー方法
固形物含有量が40%であるMGDAの水溶液の20.5kg/hの定量的流れをプレート熱交換器(加熱面積、1.7m2)において予熱して80℃の溶液温度にし、ギアポンプを使用して、List社製のCRP(登録商標)25Conticontact乾燥機に計量して送った。
List接触乾燥機は、170*280mmの内部大きさ、31リットルの容積、1.3m2の加熱面積を有する二軸装置であり、これを蒸気を用いて174℃の壁面温度に加熱した。2つの軸を30回転/分および24回転/分の速度で稼働した。この接触乾燥機において、製造物を92%の固形物含有量に乾燥した。
この方法で調製される製造物は、非常に容易に流動しやすい顆粒であった。嵩密度は約650kg/m3であった。X線粉末回折図は、製造物が非晶質部分および結晶性部分を有することを示す。上記で記載される分析に対応する結晶化度が30%である。
サンプルの貯蔵挙動が、実施例1で記載されるように確認された。質量増加が22.7%であり、サンプルはわずかに塊があった。すなわち、サンプルはもはや流動性を有しておらず、しかし、秤量カップを軽くたたくことによって再び流動可能な状態に変えることができた。
【0031】
実施例3(比較例) ミキサー・ニーダー方法
固形物含有量が40%であるMGDAの水溶液の32kg/hの定量的流れをプレート熱交換器エバポレータ(加熱面積、1.7m2)において蒸発させて61.8%の固形物含有量にし、ギアポンプを使用して、圧力保持バルブを介して、List社製のDTB(登録商標)25Conti接触乾燥機に計量して送った。蒸発は、分離容器において、エバポレータでの142℃の壁面温度および2.5bar(絶対)の圧力で行われた。
List DTB25Conti接触乾燥機は、170mmの内径、30リットルの容積および1.2m2の加熱面積を有する単軸装置である。これを蒸気を用いて186℃の壁面温度に加熱した。軸を16回転/分の速度で稼働した。この接触乾燥機において、製造物を88.1%の固形物含有量に乾燥した。
この方法で調製される製造物は、非常に容易に流動し得る顆粒であった。嵩密度が約600kg/m3であった。X線粉末回折図は、製造物が非晶質部分および結晶性部分を有することを示す。上記で記載される分析に対応する結晶化度が27%である。
実施例の貯蔵挙動を、実施例1で記載されるように確認した。質量増加は21.7%であり、サンプルはわずかに塊があった。すなわち、サンプルはもはや流動性を有しておらず、しかし、秤量カップを軽くたたくことによって再び流動可能な状態に変えることができた。
【0032】
実施例4(発明例)
固形物含有量が45.8%であるMGDAの水溶液の3.3kg/hの定量的流れを実験室用Sambay(登録商標)エバポレータ(加熱面積、0.046m2)において蒸発させて65.9%の固形物含有量にした。蒸発を大気圧において205℃の壁面温度で行った。
蒸発処理した溶液を、8リットルの容積を有する計量バンカーにおいて約100℃の温度で回収し、撹拌しながら冷却した。製造物を計量スクリューを用いてこの計量バンカーから、高速回転接触乾燥機中に移送した。
この接触乾燥機は134mmの直径および0.166m2の加熱面積を有し、これを蒸気を用いて184℃の壁面温度に加熱した。接触乾燥機を276回転/分の速度で稼働した。この接触乾燥機において、製造物を65.9%の固形物含有量から91.6%の固形物含有量まで乾燥した。
この方法で調製される製造物は、容易に流動し得る顆粒であった。嵩密度は548kg/m3であった。X線粉末回折図は、製造物が結晶性であることを示す。上記で記載される分析に対応する結晶化度は39%である。
サンプルの貯蔵挙動を、実施例1で記載されるように確認した。質量増加は20.3%であり、サンプルは依然として、最初の秤量の期間中と同じくらい流動可能であった。
【0033】
実施例5(発明例)
固形物含有量が45.5%であるMGDAの水溶液の3.2kg/hの定量的流れを実験室用Sambay(登録商標)エバポレータ(加熱面積、0.046m2)において蒸発させて約69%の固形物含有量にした。蒸発は0.5barの減圧において120℃の壁面温度で行った。
蒸発処理された溶液を、8リットルの容積を有する計量バンカーにおいて約80℃の温度で回収し、撹拌しながら冷却した。製造物を計量スクリューを用いてこの計量バンカーから、高速回転接触乾燥機の中に移送した。
この接触乾燥機は134mmの直径および0.166m2の加熱面積を有し、これを蒸気を用いて120℃の壁面温度に加熱した。接触乾燥機を275回転/分の速度で稼働した。この接触乾燥機において、製造物を69%の固形物含有量から88%の固形物含有量まで乾燥した。
この方法で調製される製造物は、容易に流動し得る顆粒であった。嵩密度は555kg/m3であった。X線粉末回折図は、製造物が結晶性であることを示す。上記で記載される分析に対応する結晶化度は58%の変態1である。
サンプルの貯蔵挙動を、実施例1で記載されるように確認した。質量増加は18%であり、サンプルは依然として、最初の秤量の期間中と同じくらい流動可能であった。
【0034】
図1〜図5は、実施例1〜5に従って得られる粉末についてのX線粉末回折図を示し、本発明による方法によって得られる粉末についての増大した結晶化度を示す(図4および図5)。
【0035】
これらの図において、回折角2θ(°)は横座標に示され、測定された強度(カウント数(パルス数)(無次元))は縦座標に示される。
【0036】
X線粉末回折計測定を、Bruker AXS(Karlsruhe)社製のD8 Advance(登録商標)回折計で行った。Cu−Kα線を用いた反射において、一次側および二次側での可変ダイアフラム調節とともに測定した。測定範囲は2°〜80°の2θであり、ステップ幅は0.01°であり、角度ステップあたりの測定時間は3.6秒であった。
【0037】
結晶化度は、通常通り、結晶性相の表面割合および非晶質相の表面割合を求め、これらを使用して、結晶化度(CD)を、非晶質相の面積(Ia)および結晶性相の面積(Ic)からなる総面積に対する結晶性相の面積(Ic)の比率として計算することによって、公知の様式でX線粉末回折図から確認した:
CD=Ic/(Ic+Ia
【0038】
結晶化度の決定を、具体的にはソフトウエアプログラムを使用して、例えば、Bruker AXS社製のソフトウエアTOPAS(登録商標)を使用して行うことができる。
【0039】
これについて、最初、非晶質サンプルを測定し、その線形経過(linear course)を6つの各線形をもとにプロファイルフィット(profile fit)で適合させる。その後、これらの線形の線位置およびそれらの半値幅を定め、これらの値を「非晶質相」として保存する。
【0040】
結晶化度が求められる予定の被測定サンプルについては、その後、結晶性相の表面割合および非晶質相の表面割合を求め、結晶化度CDは上記で示される式に従ってそれらから計算される。
【0041】
非晶質相は、上記で規定されるように使用される。
【0042】
結晶性相を同様に、非晶質相と類似してその個々の線位置により定義することができ、または、下記の格子定数を、いわゆる(hkl)相(a=33.63、b=11.36およびc=6.20、ならびに、空間群Pbcm)として参照することによって定義することができ、この場合、格子パラメーターは、自由に精緻化できる変数である。バックグランドが1次の多項式として近似される。
【0043】
プログラムTOPAS(登録商標)により、最適な適合が、測定された回折図と、非晶質相および結晶性相からなる理論的回折図との間で計算される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリシン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を含む、結晶化度が30%以上である粉末を調製するための方法であって、
前記グリシン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体および/あるいは前記グルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を水溶液の総質量に基づいて20質量%〜60質量%の濃度範囲で含む水溶液から開始し、
前記水溶液は、回転する内部構造物を有するエバポレータ(ただし、前記回転する内部構造物は、エバポレータの内壁に対する距離がエバポレータの直径の1%以下で配置される)で第1の工程において濃縮され、固形物濃度が結晶スラリーの総重量に基づいて60質量%〜85質量%の範囲にある結晶スラリーを得、かつ
第2の工程において、前記結晶スラリーがペーストバンカーにおいて、およびその後、薄膜接触乾燥機において熟成させられ、前記ペーストバンカーおよび前記薄膜接触乾燥機における滞留時間が合計で15分以上であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記回転する内部構造物が前記エバポレータの内壁表面をこする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メチルグリシン−N,N−二酢酸の1種以上のアルカリ金属塩がグリシン−N,N−二酢酸の誘導体として使用される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液が、それぞれの場合において乾燥物に基づいて84質量%以上の純度での前記グリシン−N,N−二酢酸および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記グリシン−N,N−二酢酸および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体が、下記式:
【化1】

の対応する2−アルキルグリシンもしくは2−アルケニルグリシンまたは2−アルキルグリシンニトリルもしくは2−アルケニルグリシンニトリルまたは二重グリシン、
あるいは下記式:
【化2】

で表される二重グリシンニトリルをホルムアルデヒドおよびシアン化水素またはアルカリ金属シアン化物と反応し、あるいは
イミノ二酢酸またはイミノジアセトニトリルを式:OHC−A−CHOの対応するモノアルデヒドまたはジアルデヒドおよびシアン化水素またはアルカリ金属シアン化物と反応し、
その後、なお存在するニトリル基を加水分解し、カルボキシル基を得ることによって調製される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記グリシン−N,N−二酢酸および/またはグルタミン−N,N−二酢酸の1種以上の誘導体を含む水溶液が、前記回転する内部構造物を有するエバポレータに20℃〜90℃の間の範囲における温度で導入される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記回転する内部構造物を有するエバポレータが、Sambay(登録商標)エバポレータである請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ペーストバンカーおよび前記薄膜接触乾燥機における滞留時間の総和が合計で15分〜1時間の範囲にあり、好ましくは15分〜3時間の範囲にある請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記回転する内部構造物を有するエバポレータが、50℃〜140℃の範囲における温度で、好ましくは80℃〜110℃の範囲における温度で、かつ、0.1bar(絶対)〜4bar(絶対)の範囲における圧力で、好ましくは0.8bar(絶対)〜1.2bar(絶対)の圧力で運転される請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の工程からの前記結晶スラリーに加えて、結晶スラリーおよび微細粉末の総質量に基づいて50質量%以下の、平均粒子サイズが200μm以下である微細粉末が、前記ペーストバンカーに加えられる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記薄膜接触乾燥機が60℃〜140℃の間の範囲における温度で運転される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
下記の表に示される回折角2θ(°)におけるd値(オングストローム)を有する第1の結晶性変態:
【表1】

および/または、X線粉末回折図において、それぞれの回折角2θ(°)におけるd値(オングストローム)が、下記表と一致する第2の結晶性変態:
【表2】

を含むことを特徴とする結晶化度が30%以上であるメチルグリシン−N,N−二酢酸三ナトリウム塩粉末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−527426(P2012−527426A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511271(P2012−511271)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056856
【国際公開番号】WO2010/133618
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】