説明

グリシン1トランスポーターの放射性標識阻害薬

本発明は、グリシン1トランスポーター機能性の標識化及び画像診断に有用な、グリシン1トランスポーター(GlyT1)に対する一般式(I)の新規な放射性標識阻害薬に関する。式中、Rは、イソプロポキシ又は2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシであり;そしてRは、放射性標識基:CH(ここで、放射性核種は、H又は11Cである)である。式(I)の放射性標識化合物は、グリシン1トランスポーター機能性の標識化及び分子画像診断用のPET(陽電子放出型断層撮影法(Positron Emission Tomography))の放射性トレーサーとして使用できることが見い出された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリシン1トランスポーター機能性の標識化及び画像診断に有用な、グリシン1トランスポーター(GlyT1)に対する一般式(I):
【0002】
【化1】


[式中、
は、イソプロポキシ又は2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシであり;そして
は、放射性標識基:CH(ここで、放射性核種は、H又は11Cである)である]で示される新規な放射性標識阻害薬に関する。
【0003】
式(I)の放射性標識化合物は、グリシン1トランスポーター機能性の標識化及び分子画像診断用のPET(陽電子放出型断層撮影法(Positron Emission Tomography))の放射性トレーサーとして使用できることが見い出された。分子画像法は、生物学的標的(例えば、分子プローブに結合するか又はこれを保持することができる、受容体、酵素、イオンチャネル又は任意の他の細胞成分)との分子プローブ(例えば、放射性トレーサー)の選択的及び特異的相互作用に基づき、これは、PET、核磁気共鳴法、近赤外吸収法又は他の方法により視覚化される。核医学画像様式であるPETは、所定臓器における生物学的標的の分布に関するか、又はこのような臓器若しくは細胞の代謝活性に関する重要な情報を、あるいは薬物がこのような臓器に入るか、生物学的標的に結合するか、及び/又は生物学的過程を調節する能力に関する重要な情報を提供する、三次元画像を生成させるのに理想的に適している。PETは、非侵襲的画像法であるため、疾患の病態生理学、並びにヒト及び動物における所定の分子標的又は細胞過程に及ぼす薬物の作用を研究するために使用することができる。所定の分子標的に特異的なPET放射性トレーサーが利用可能であれば、薬物開発及び薬物の作用機序の理解を促進することができる。更に、PET放射性トレーサーは、疾患の結果として起こる病態生理学的変化を立証することにより、疾患の診断を促進しうる。
【0004】
グリシントランスポーター阻害薬は、神経疾患及び神経精神疾患の処置に適している。関係する病態の大部分は、精神病、統合失調症(Armer RE and Miller DJ, Exp. Opin. Ther. Patents, 11(4): 563-572, 2001)、重症大鬱病のような精神性気分障害、精神病(急性躁病又は鬱病など)に合併するか、双極性障害に合併する気分障害、及び統合失調症に合併する気分障害(Pralong ET et al., Prog. Neurobiol., 67: 173-202, 2002)、自閉症(Carlsson ML, J. Neural Trans,. 105: 525-535, 1998)、認知症(加齢に伴う認知症及びアルツハイマー型の老年性認知症を包含する)のような認知障害、ヒトを包含する哺乳動物における記憶障害、注意欠陥障害並びに疼痛(Armer RE and Miller DJ, Exp. Opin. Ther. Patents, 11(4): 563-572, 2001)である。
【0005】
ヒトの脳は、相互に連絡する数百万のニューロンからなる複雑な臓器である。疾患に関する異常の理解は、有効な診断法及び新規な治療法の今後の開発への手掛かりである。ヒトにおける生化学的異常の研究は、創薬及び開発過程の本質的かつ不可欠な要素へと急速になってきている。伝統的には、新しい薬物の発見及び開発は、有望な候補化合物を選択するインビトロ手法に重点を置いて実施されており、続いてヒトへの投与の前に生きている動物で試験される。インビトロ系は、生物系の複雑さの一部分しか反映せず、そしてヒトの疾患のインビボ動物モデルは、しばしばヒトの病態の近似でしかないため、このプロセスの初期段階で生きているヒトにおける薬物−受容体相互作用を着実に理解することは、新規な治療法の効率的で時宜を得た発見及び開発を更に強化するのに大きな原動力となるだろうという認識が高まっている。近年、病態、疾患の経過及び薬物作用を評価するためにヒトの医用画像法が普及してきた。これらの画像の様式は、PET、MRI、CT、超音波、EEG、SPECTなどを包含する(British Medical Bulletin, 2003, 65, 169-177)。したがって非侵襲的な画像の様式、例えば、PETは、今後の薬物の開発のための掛け替えのないツールである。非侵襲的な核医学画像法は、種々の生体の生理学及び生化学に関する基本的及び診断的情報を得るために使用することができる。これらの手法は、このような生体に投与された放射性トレーサーから放射される放射線を検出できる高性能画像化装置の使用に依存する。得られる情報は再構成することにより、時間の関数として放射性トレーサーの分布を示す平面及び断層画像を提供することができる。放射性トレーサーの使用により、対象の構造、機能並びに最も重要には生理学及び生化学に関する情報を含有する画像を得ることができる。この情報の大半は、他の手段では得られない。これらの試験において使用される放射性トレーサーは、対象の生理学又は生化学に関する特定の情報の決定が可能な、明確なインビボ挙動をとるように設計される。現在、放射性トレーサーは、心臓機能、心筋血流、肺灌流、肝機能、脳血流、脳局所ブドウ糖及び酸素代謝に関する有用な情報を得るために利用できる(WO 2007/041025)。
【0006】
更には、
− PET画像法により、効率的かつ効果的な治療法の発見を強化するための、薬物開発の初期段階でのヒトの正常及び異常な神経化学の非侵襲的かつ定量的な分析法が提供される。
− トレーサー量の標識化合物により、新規な薬物の早期評価(生体分布試験;薬物投与計画を最適化するための受容体占有試験及び薬物作用の下流応答の特性決定)が可能になる。
− 非侵襲的手法を用いてヒトの疾患機序を理解することは、疾患の診断及び管理における及び新規な治療法の今後の開発と密接に結びついている。
【0007】
PETにおいて普通に使用される放射性核種は、11C、13N、15O又は18Fを包含する。原理上、親化合物と類似の全ての薬物を標識することが可能であるが、ヒトにおけるインビボの造影剤として適用できることが分かっているものは、ごくわずかである。11C、13N、15O及び18Fの放射能半減期は、それぞれ20、10、2及び110分である。このような短い半減期により、PETを用いてインビボの生物学的過程を調べるためのトレーサーとしてのこれらの使用には多くの利点がある。同日内の同一対象における反復試験が可能になる。PETは、明確に定義された化合物における薬物用量−酵素/受容体占有関係を決定するためのツールとしての使用が増えている。標的受容体又は酵素に特異的に結合するPET放射性トレーサーの使用により、以下:
− 脳内に入って標的部位に結合する、薬物の能力、
− 所定用量の薬物により生じる標的部位の占有の程度、
− 占有の経時変化、及び
− 問題の薬物の相対血漿中及び組織中動態
に関する情報が提供できる。
【0008】
占有試験は、試験中の候補薬物とは通常同一でないPET放射性トレーサーにより実施される(British Medical Bulletin, 2003, 65, 169-177)。
【0009】
本発明の目的は、グリシン1トランスポーターのインビボPET画像法用の新規な放射性トレーサーを見いだすことであった。得られる式(I)の放射性標識化合物は、ヒトにおけるグリシン1トランスポーターを視覚化するための造影剤として使用される可能性があることが見い出された。以下の放射性標識化合物は、本発明に包含される:
【0010】
【化2】

【0011】
本発明の更に別の実施態様は、GlyT1リガンドとして使用するため、GlyT1結合試験において使用するため、及びPET放射性トレーサーとして使用するための、式(I)の化合物である。
【0012】
更には、本発明の化合物は、哺乳動物の脳内のGlyT1の画像診断に使用することができる。
【0013】
本発明は、GlyT1トランスポーターの画像診断方法であって、哺乳動物に有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法を含み、そして哺乳動物組織におけるGlyT1機能性の検出方法であって、このような検出を必要とする哺乳動物に有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法を含む。
【0014】
本発明の目的は、哺乳動物の脳内のGlyT1の画像診断用医薬の製造のための式(I)の化合物の使用並びに式(I)の化合物及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物である。
【0015】
GlyT1トランスポーター阻害薬は、病気(これらは、精神病、疼痛、記憶及び学習の機能障害、統合失調症、認知症並びに認知過程に障害がある他の疾患(注意欠陥障害又はアルツハイマー病など)である)の処置に有用である。好ましい適応症は、統合失調症である。
【0016】
統合失調症は、妄想、幻覚、思考障害及び精神病のような一過性の陽性症状、並びに感情の平板化、注意障害及び社会的ひきこもりのような持続性の陰性症状、並びに認知障害を特徴とする、進行性の破壊的な神経疾患である。
【0017】
この非放射性標識化合物は、先行技術において知られており、そしてWO 2006/082001にGlyT1トランスポーター阻害薬として報告されている。
【0018】
スキーム1は、Rが放射性標識基である、式(I)の化合物への合成経路を表す:
【0019】
【化3】

【0020】
式(II)の化合物は、炭酸セシウムのような塩基と、及び式(III)の試薬と反応させる(ここで、Rは、H又は11Cから選択される放射性核種を含有する基であり、そしてXは、ヨウ素のような脱離基である)。[H]ヨウ化メチルのような式(III)の試薬は公知であり、そして[11C]ヨウ化メチルは、Larsen, P., Ulin, J., Dahlstrom, K. J. Label. Compds. Radiopharm. 37, 73-75, 1995により公知であって調製される。
【0021】
スキーム2は、Rが(S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシである、式(II)の化合物の合成のための合成経路を表す。
【0022】
【化4】

【0023】
中間体酸(IV)は、市販のオルト−フルオロ安息香酸と(S)−1,1,1−トリフルオロ−プロパン−2−オール(CAS: 3539-97-7)との水素化ナトリウムのような塩基の存在下でジオキサンのような溶媒中での反応により調製することができる。アミド(VI)が得られる酸(IV)と既知のイソインドリン(V)とのカップリング(WO 2006/082001)は、TBTUのようなカップリング試薬及びジイソプロピルエチルアミンのような塩基の存在下でDMFのような溶媒中で達成できる。スルホニルクロリド中間体(VII)が得られる(VI)のクロロスルホニル化は、クロロスルホン酸の存在下でジクロロエタンのような溶媒中で行うことができる。スルフィン酸(II)への(VII)の還元は、還元剤として亜硫酸ナトリウムを使用してDMF及び水のような溶媒中で達成できる。
【0024】
スキーム3は、Rがイソプロポキシである、式(II)の化合物の合成のための合成経路を表す。
【0025】
【化5】

【0026】
中間体(IX)は、酸(VIII)(WO 2005/014563)と市販のアルキル化剤:(ヨードメチル)トリメチルシランとの、リチウムジイソプロピルアミドのような塩基及びTMEDAのような添加剤の存在下でTHFのような溶媒中での反応により調製することができる。アミド(X)が得られる酸(IX)と既知のイソインドリン(V)(WO 2006/082001)とのカップリングは、TBTUのようなカップリング試薬及びジイソプロピルエチルアミンのような塩基の存在下でDMFのような溶媒中で達成できる。スルフィン酸(II)への(X)の変換は、TBAFの存在下でTHFのような溶媒中で達成できる。
【0027】
略語
TBTU O−ベンゾトリアゾールイルテトラメチルイソウロニウムテトラフルオロボラート
DMF ジメチルホルムアミド
TBAF フッ化テトラブチルアンモニウム
THF テトラヒドロフラン
TMEDA テトラメチルエチレンジアミン
MTBE メチル−tert−ブチルエーテル
LDA リチウムジイソプロピルアミド
【0028】
上述のように、式(I)の放射性標識化合物は、グリシン1トランスポーター機能性の標識化及び分子画像診断用のPETリガンドとして使用できることが見い出された。
【0029】
対応する非標識化合物の[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン及び[(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン]は、それぞれ0.028及び0.014のIC50値(μM)でインビトロでGlyT1トランスポーターに作用する。試験方法は、WO 2006/082001に記載されている。
【0030】
ラット脳でのオートラジオグラフィー試験
H][5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン及び[H][(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン]の結合部位の分布を、ラット脳において調査した。
【0031】
これらの実験にはオスのWistarラットを使用した。ラットを殺処分した;その脳を素早く切除し、ドライアイス粉末中で凍結させた。10μm厚の矢状切片をCryostatで切り出し、接着性スライドガラスに解凍マウントした。脳切片は、最初にリンガー液(NaCl 120mM、KCl 5mM、CaCl 2mM、MgCl 1mM、トリス−HCl 50mM pH7.4)中で37℃で10分間インキュベートし、次に1nMの濃度で[H][5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン又は[H][(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン]のいずれかを含有する37℃のリンガー液中で60分間インキュベートした。放射性トレーサーの非特異結合(NSB)の評価には、更に別の群の切片を、10μMの濃度で放射性トレーサー及び対照GlyT1阻害薬のOrg 24598を含有するリンガー液と共にインキュベートした(37℃で60分間)。インキュベーション後、切片は、氷冷(4℃)リンガー液中で2×5分及び1×15分洗浄し、次に4℃の蒸留水に3回素早く浸した。スライドにマウントした脳切片は、冷気流下で乾燥させて、[H]−マイクロスケールと一緒にFujiイメージングプレートに5日間露光した。次にこのイメージングプレートは、FujiFilm高解像度プレートスキャナーで走査した。問題の脳領域に結合した放射性トレーサーの総量(TB)をMCID画像解析プログラムを用いて測定して、結合放射性トレーサー(fmol)/タンパク質(mg)として表した。GlyT1担体に特異的に結合した[H][5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンの量(SB)は、式:SB=TB−NSBにより算出した。
【0032】
得られた結果は、[H][5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン及び[H][(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン]の結合部位の分布が、GlyT1トランスポーターの既知の分布に対応することを示した[Cubelos B., Gimenez C., Zafra F., Cereb Cortex 15, 448-459, 2005; Zafra F., Aragon C., Olivares L., Danbolt NC, Gimenez C., Storm-Mathisen J., J Neuroscience. 15, 3952-69, 1995]。高密度の結合部位は、視床、脳幹、橋及び延髄並びに小脳において観測した。低密度は、線条体、皮質及び海馬において観測した。この放射性トレーサーと高濃度の特異的GlyT1阻害薬Org 24598又は他の特異的GlyT1阻害薬との同時インキュベーションは、ラット脳切片への[H][5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン及び[H][(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン]の両方の結合を完全に破壊し、両方の放射性トレーサーがGlyT1トランスポーターに結合することを裏付けた。
【0033】
ヒヒにおけるインビボPET試験
1) [11C]−[(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン]及び[11C]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンのPET画像法
後述の実験は、オスのヒヒ(アヌビスヒヒ(papio anubis))で実施した。ヒヒはPET試験前の12時間絶食させた。ヒヒは、初めに軽水準の麻酔を達成するために5〜7mg/kgの抑制用量でのKetamine塩酸塩の筋肉内投与により鎮静させ、次に0.3〜0.4mg/kg/時でのPropofolの静脈内持続注入を続けた(DIPRIVAN(登録商標)注入用乳剤)。循環容量は、等張性食塩水の注入により維持した。大腿動脈カテーテルを血液サンプリングのために挿入した。心拍数、ECG、血圧(Spacelabs Monitor, Issaquah, WA, 米国)及び酸素飽和度(Nellcor OxiMax(登録商標)N-600(商標)Pulse Oximeter, Pleasanton, CA, 米国)を包含する生理的バイタルサインは、試験の間中、連続してモニターした。ヒヒはECAT HRRT(登録商標)脳PETスキャナー(High Resolution Research Tomograph, CPS Innovations, Inc., Knoxville, TN)に入れた。ヒヒの頭部に、再現性ある固定用の頭部ホルダーにつながった熱可塑性マスクを取り付けた。減衰補正のために1mCi Cs−137点光源での6分の透過スキャンを最初に行った。[11C]−[(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン]及び[11C]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンは、1分のボーラス注射として静脈内投与した。PET走査及び動脈血サンプリングは、放射性トレーサー投与の開始時点から開始して、PET画像は、放射性トレーサーの投与後0〜90分で取得した。
【0034】
これらの画像試験の結果は、放射性トレーサーである[11C]−[(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン]及び[11C]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンの両方ともが、投与後20〜30分でのピーク取り込みと試験の残り時間にわたる緩やかな減少とを示す時間放射能曲線により、複数の脳領域に急速に取り込まれたことを示した。両方の放射性トレーサーの分布領域は、皮質領域と比較して、橋、脳幹、小脳、及び視床において蓄積がより高いというグリシントランスポーター1(GlyT1)の既知の分布を反映した(Cubelos B., Gimenez C., Zafra F., Cereb Cortex 15, 448-459, 2005)。
【0035】
2) 薬理学的抗原投与を伴うPET画像法
これらの実験では、GlyT1を含有することが知られている脳領域における[11C]−[(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン]及び[11C]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンの取り込みを遮断する、非標識GlyT1阻害薬の能力を試験した。[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン及び(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンの両方ともが選択的GlyT1阻害薬であるため、これらの化合物の一方である[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンを後述の実験のために選択した。
【0036】
各ヒヒに同日に放射性トレーサーの2回の連続投与を行った。1回目の放射性トレーサーの投与は、放射性トレーサーの基準取り込みを求めるために使用した。基準走査後、ヒヒに非標識[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン(遮断薬)の静脈内投与を行った。この遮断薬点滴は、(2回目の)放射性トレーサー注入の20分前に開始した。遮断薬は、最初に用量=0.2mg/kgで点滴した。10分後、試験の残り100分間0.5mg/kgを送達するように流量を変化させた。予備の薬物動態実験及びデータのモデル化は、この点滴の速度によって、PET走査の期間[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンが一定の血漿レベルになることを示した。
【0037】
冷[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン(選択的GlyT1阻害薬)での前処理は、放射性トレーサー[11C]−[(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン]及び[11C]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン両方の特異的取り込みを完全に遮断し、そして脳全体の放射活性の均質な分布をもたらした。これらの結果は、GlyT1トランスポーターに対する両方の放射性トレーサーの特異性を裏付け、そしてこれらのGlyT1トランスポーターへの結合が、GlyT1トランスポーターに結合する非標識薬物により減少させることができることを明白に示した。
【0038】
本発明の化合物は、中枢神経系の疾患、例えば、統合失調症、認知障害及びアルツハイマー病の診断の助けとなりうる診断ツールである。
【0039】
式(I)の化合物は、製剤の製造のために薬学的に不活性な無機又は有機担体と共に加工することができる。
【0040】
用量は、広い範囲内で変化させることができ、そして当然ながら各特定の症例における個々の要求に対応させる必要があろう。
【0041】
放射性標識インヒビターは、好ましくは静脈内投与される。
【0042】
注射液は、以下の組成を有することができる:
【0043】
【表1】

【0044】
以下の実施例は、本発明を説明するものであるが、その範囲を限定するものではない。
【0045】
実施例1
H−メチル]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン
【0046】
【化6】

【0047】
a) 工程1
2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−安息香酸
【0048】
【化7】


(S)−1,1,1−トリフルオロ−プロパン−2−オール(CAS: 3539-97-7)36.0g(316mmol)を、ジオキサン200ml中のNaH(pract., 60%)17.0g(425mmol)の冷(0〜5℃)懸濁液に加えた。この懸濁液を室温で0.5時間撹拌し、次に冷却(0〜5℃)して、ジオキサン100ml中の2−フルオロ−安息香酸20.0g(143mmol)の溶液を加えた。この混合物を室温で0.5時間、及び還流下で140時間撹拌した。この混合物を水800ml中に注ぎ入れ、MTBE 300mlで洗浄し、次いで塩酸でpH2まで酸性にして、生成物をMTBEで抽出した。溶媒を真空で濃縮して、残渣をエタノール/水から結晶化することにより、標題化合物27.3g(82%)を白色の固体として得た。MS(m/e):234.1[M]
【0049】
b) 工程2
[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−[2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン
【0050】
【化8】


DMF 9ml中の2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−安息香酸0.9g(3.8mmol)の溶液にアルゴン下室温で、TBTU 1.4g(4.2mmol)、N−エチルジイソプロピルアミン3.3ml(19.2mmol)及び最後に5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール(CAS: 905274-50-2)0.8g(3.8mmol)を加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空で除去した。残渣を酢酸エチルに溶解した。この溶液を水で2回及び飽和NaHCO溶液で2回洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過して真空で濃縮した。この粗油状物を、ヘプタンと酢酸エチルから生成する勾配で溶出する、シリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製することによって、標題化合物1.5g(93%)を黄色の油状物として得た。MS(m/e):420.2[M+H]
【0051】
c) 工程3
3−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−4−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−ベンゼンスルホニルクロリド
【0052】
【化9】


1,2−ジクロロエタン2ml中の[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−[2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン0.2g(0.47mmol)の溶液を、氷浴冷却下のクロロスルホン酸0.32ml(4.7mmol)に滴下により加えた。この混合物を室温で30分間、そして次に55℃で30分間撹拌した。この混合物を氷浴中で冷却して、水2mlの滴下によりクエンチした。この混合物をジクロロメタンで希釈した。有機層を分離して、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせたジクロロメタン抽出液をNaSOで乾燥し、濾過して真空で濃縮した。得られた泡状物を酢酸エチルと共に撹拌した。この固体を濾過した。濾液を飽和NaHCO溶液で2回洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過して真空で濃縮することにより、標題化合物0.12g(51%)を明黄色の泡状物として得た。MS(m/e):517.1[M]
【0053】
d) 工程4
3−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−4−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−ベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩
【0054】
【化10】


NaSO 1.15g(8.94mmol)及びNaHPO水和物1.70g(9.60mmol)を水13mlに溶解した。3−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−4−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−ベンゼンスルホニルクロリド2.40g(4.63mmol)のエタノール溶液を加えた。この反応混合物を35〜40℃で1時間撹拌し、そして次に室温で一晩撹拌した。Speedex 1.3gを加え、この反応混合物を濾過して、濾液から溶媒を留去した。粗生成物をクエン酸/NaCl水溶液で処理し、次にMTBE/THF(1:1)で抽出した。有機溶媒を留去して、残渣をMeOH/水(2:1)に溶解し、そしてNaHCO 800mg(9.52mmol)で処理した。Speedex 1gを加え、そしてこの反応混合物を濾過して真空で濃縮した。残渣は、逆相カラム(RP-18、水/メタノール)を用いるクロマトグラフィーにより精製することによって、標題化合物1.12g(48%)を白色の泡状物として得た。MS(m/e):484.3[M+H]
【0055】
e) 工程5
H−メチル]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン
【0056】
【化11】


LiI 0.16mg(1.2μmol)を、DMF 0.2ml中の[H]メチルノシラート50mCi(0.15mg、0.6μmol)の溶液に加えた。この反応混合物を閉じたバイアル中で20℃で3時間撹拌後、3−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−4−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−ベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩0.6mg(1.4μmol)及び炭酸セシウム1.0mg(3.1μmol)を加えて、20℃で2時間撹拌を続けた。この反応混合物を水及び食塩水で処理して、次に酢酸エチルで抽出した。有機溶媒の留去後、生じた粗生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル/ヘプタン(4:1))により精製することによって、トリチウム化標題化合物23.9mCi(48%)を74Ci/mmol(MS分析による)の比放射能で得た。放射性HPLC分析によって、放射化学純度は>99%を示した。
【0057】
実施例2
11C−メチル]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン
【0058】
【化12】


3−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−4−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−ベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩(1mg、2μmol)をジメチルホルムアミド100μLに溶解した。このバイアルを密閉した;この溶液を1分間振盪して、Bioscan AutoLoop System中に注入して、アルゴン(30mL/分)で5秒間フラッシュした。[11C]ヨウ化メチル(Larsen, P., Ulin, J., Dahlstrom, K. J. Label. Compds. Radiopharm. 37, 73-75, 1995により調製)を、ヘリウム流(30mL/分)でBioscan AutoLoop(Bioscan Inc, Washington, DC)中に移した。[11C]ヨウ化メチルは、AutoLoopに3.5分間捕捉させ、次に流れを停止させた。4.5分後、この反応混合物は、セミ分取HPLCに自動的に移して、以下のとおり処理した。生成物は、圧力リザーバーに集め、ここで水50mlで希釈し、次にWaters C-18 SepPak Plus(後述の分析及び分取HPLC条件を参照のこと)に装填した。精製された標題化合物を含有するSepPakは、生理食塩水10mlで洗浄し、次に生成物を無水エタノール1mlで溶出し、続いて生理食塩水10mlで滅菌用0.22ミクロンフィルターを通して、生理食塩水4mLを含有する無菌の発熱物質不含バイアルに入れた。
【0059】
HPLC条件:分析用:Onyx C18 4.6×100mm、35:65 MeCN:HO、TEA、pH7.2、流量3mL/分。 分取用:XTerra C18 5μ 19×100mm、40:60 MeCN:HO、0.1M ギ酸NH、流量18mL/分。
【0060】
実施例3
H−メチル]−(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン
【0061】
【化13】

【0062】
a) 工程1
2−イソプロポキシ−5−(2−トリメチルシラニル−エタンスルホニル)−安息香酸
【0063】
【化14】


THF 2.6ml中の2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−安息香酸(CAS: 845616-02-6)0.26g(1mmol)及びTMEDA 0.75ml(5mmol)の撹拌された−70℃懸濁液に、LDA溶液(ヘキサン中の1.6M n−ブチルリチウム溶液1.3ml(2.1mmol)及びTHF 2.5ml中のジイソプロピルアミン0.3ml(2.1mmol)から0℃で調製)を滴下により加えた。この明黄色の懸濁液を−70℃で30分間撹拌した。THF 0.5ml中の(ヨードメチル)トリメチルシラン0.19ml(1.3mmol)の溶液を5分かけて滴下により加えた。この黄色の懸濁液を−70℃で15分間撹拌し、次に室温まで温まるのを待った。この明黄色の溶液を室温で1時間撹拌し、次に食塩水5mlでクエンチした。この混合物を水5mlで希釈した。この混合物を真空で濃縮した。水層は、1N HClで慎重に酸性にして、ジクロロメタンで3回抽出した。合わせた抽出液をNaSOで乾燥し、濾過して真空で濃縮した。この粗生成物を、ヘプタン及び酢酸エチルから生成した勾配で溶出する、シリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することによって、標題化合物0.21g(63%)を黄色の油状物として得た。MS(m/e):343.0[M−H]
【0064】
b) 工程2
[2−イソプロポキシ−5−(2−トリメチルシラニル−エタンスルホニル)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン
【0065】
【化15】


実施例1、工程2の合成に記載された手順と同様に、5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール(CAS: 905274-50-2)及び2−イソプロポキシ−5−(2−トリメチルシラニル−エタンスルホニル)−安息香酸から標題化合物を調製した。MS(m/e):529.3[M]
【0066】
c) 工程3
4−イソプロポキシ−3−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−ベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩
【0067】
【化16】


[2−イソプロポキシ−5−(2−トリメチルシラニル−エタンスルホニル)−フェニル]−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン1.40g(2.64mmol)をTHF 14mlに溶解して、THF中のTBAFの1M溶液4.0ml(4.0mmol)で60℃で3.5時間処理した。この反応混合物をクエン酸/NaClの水溶液に注ぎ入れ、次にMTBE/THF(1:1)で抽出した。有機溶媒を留去し、残渣をMeOH/水(3:1)に溶解して、NaHCO 600mgで処理した。溶媒の留去後、残渣は、逆相カラム(RP-18、水/メタノール)のクロマトグラフィーにより精製することによって、標題化合物0.66g(55%)を白色の泡状物として得た。MS(m/e):430.2[M+H]
【0068】
d) 工程4
H−メチル]−(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン
【0069】
【化17】


LiI 0.16mg(1.2μmol)を、DMF 0.2ml中の[H]メチルノシラート50mCi(0.15mg、0.6μmol)の溶液に加えた。この反応混合物を閉じたバイアル中で20℃で3時間撹拌後、4−イソプロポキシ−3−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−ベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩0.6mg(1.3μmol)及び炭酸セシウム1.0mg(3.1μmol)を加えて、20℃で2時間撹拌を続けた。この反応混合物を水及び食塩水で処理して、次に酢酸エチルで抽出した。有機溶媒の留去後、生じた粗生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル/ヘプタン(4:1))により精製することによって、トリチウム化標題化合物29.2mCi(59%)を74Ci/mmol(MS分析による)の比放射能で得た。放射性HPLC分析によって、放射化学純度は>99%を示した。
【0070】
実施例4
11C−メチル]−(2−イソプロポキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン
【0071】
【化18】


実施例2の合成に記載された手順と同様に、4−イソプロポキシ−3−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−ベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩及び[11C]ヨウ化メチルから標題化合物を調製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化19】


[式中、
は、イソプロポキシ又は2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシであり;そして
は、放射性標識基:CH(ここで、放射性核種は、H又は11Cである)である]で示される放射性標識化合物。
【請求項2】
化合物が、式(I-A):
【化20】


で示される、請求項1に記載の式(I-A)の放射性標識化合物。
【請求項3】
化合物が、式(I-B):
【化21】


で示される、請求項1に記載の式(I-B)の放射性標識化合物。
【請求項4】
化合物が、式(I-C):
【化22】


で示される、請求項1に記載の式(I-C)の放射性標識化合物。
【請求項5】
化合物が、式(I-D):
【化23】


で示される、請求項1に記載の式(I-D)の放射性標識化合物。
【請求項6】
GlyT1トレーサーとして使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
GlyT1結合試験において使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
PETトレーサーとして使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
哺乳動物の脳内のGlyT1の画像診断に使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
GlyT1トランスポーターの画像診断方法であって、哺乳動物に有効量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項11】
哺乳動物組織におけるGlyT1機能性の検出方法であって、このような検出を必要とする哺乳動物に有効量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項12】
哺乳動物の脳内のGlyT1の画像診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む、医薬組成物。

【公表番号】特表2012−507486(P2012−507486A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533694(P2011−533694)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064033
【国際公開番号】WO2010/052143
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】