説明

グリセリンからのアミンの製造方法

本発明は、グリセリンと、水素及びアンモニア、第一級アミン及び第二級アミンの群から選択されるアミノ化剤とを、触媒の存在下で、100℃〜400℃の温度及び0.01〜40MPa(0.1〜400バール)の圧力で反応させることによってアミンを製造する方法に関する。好ましくは、再生原料を基礎とするグリセリンが使用される。該触媒は、好ましくは、元素の周期律表の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の金属の1種の金属もしくは複数種の金属又は1種もしくは複数種の酸素含有化合物を含有する。本発明は、更に、該反応生成物を、セメント製造もしくはコンクリート製造における添加剤として、並びに別の使用分野で用いる使用に関する。本発明の更なる対象は、化合物の1,2,3−トリアミノプロパン、2−アミノメチル−6−メチル−ピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン及び2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリンからのアミンの製造方法並びにその使用に関する。更に、本発明は、1,2,3−トリアミノプロパン、2−アミノメチル−6−メチルピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン及び2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジン並びにグリセリンの還元的アミノ化によるそれらの製造に関する。
【0002】
工業的に重要なアミノアルカノール類、例えばエタノールアミン及びイソプロパノールアミン並びにそれらの後続生成物、例えばエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン及びピペラジンの大工業的な製造方法は、一般に、C2−合成構成単位もしくはC3−合成構成単位としてエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドから出発する。
【0003】
このように、エタノールアミン及びイソプロパノールアミンの合成は、アンモニアとエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドとの反応によって行われる。更なる生成物として、この反応に際して、相応のジアルカノールアミン及びトリアルカノールアミンも得られる。モノアルカノールアミンとジ−及びトリアルカノールアミンとの比率は、アンモニアとアルキレンオキシドとの使用量によって調節することができる。より高い割合のトリアルカノールアミンを得るために、モノ−及びジアルカノールアミンを反応器へと返送することができる。
【0004】
更なる反応段階において、こうして得られたモノアルカノールアミンを、水素及びアンモニアを反応させることによってエチレンジアミンもしくは1,2−プロピレンジアミンへと更に転化させることができる。
【0005】
1,3−ジアミノプロパンは、大工業的に、アンモニアとアクリルニトリルとを反応させ、引き続き水素化を行うことによって得られ、その際、アクリルニトリルは、一般に、大工業的に、C3−構成単位であるプロペンのアンモ酸化によって製造される。
【0006】
上述したエテンあるいはプロペンを基礎とする石油化学的な導入物質に替わる原料ソースとしては、再生原料を基礎とする原料に、より高い重点が置かれること思われる。
【0007】
その場合に、今後、脂肪鹸化とバイオディーゼル生産において生ずるグリセリンがますます高い重要性を獲得すると思われる。
【0008】
既に市販されているグリセリンベースのアミンは、いわゆるポリエーテルアミンである。ポリアルキレンジオールもしくは−トリオールのアミノ化によるポリエーテルアミンの合成は、例えばFischer他の総説(A.Fischer,T.Mallat,A.Baiker,Catalysis Today,37(1997),167−189)において記載されている。ポリアルキレントリオールは、例えばエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドとグリセリンとの反応によって得ることができる。
【0009】
更に、セリノール(2−アミノ−1,3−プロパンジオール)もしくはセリンを、グリセリンの酸化に引き続いての還元的アミノ化によって合成することは知られている(H.Kimura,K.Tsuto,Journal of the American Oil Chemist Society,70(1993),1027−1030)。
【0010】
上述の文献源に記載される変法においては、グリセリンはまず2,3−ジヒドロプロピオン酸(グリセリン酸)酸化され、引き続き水素とアンモニアの存在下で、炭素に担持されたパラジウム及びルテニウムの混合物からなる触媒系上でDL−セリンへと還元的アミノ化される。
【0011】
第二の変法においては、グリセリンはジヒドロキシアセトンまでのみ酸化され、引き続き前記のように、還元的アミノ化反応においてセリノール(2−アミノ−1,3−プロパンジオール)へと転化され、次いで更にセリンへと酸化される。開示によれば、Pd触媒もしくはRu触媒上での還元的アミノ化の条件下では、セリンもしくはセリノールは、脱水素反応及び脱カルボニル化反応によって、分解生成物であるグリシンもしくはモノエタノールアミンを形成することがある。
【0012】
本発明の課題は、グリセリンを、アミンの製造のためのソースとして用いることであった。原料のグリセリンを最適に活用しうるために、重要な工業用アミンもグリセリンを基礎とする特殊のアミン並びにピペラジン誘導体をも得ることを可能にする方法を提供すべきであった。
【0013】
工業用アミンとは、通常は、石油化学的な原料を基礎として得られる斯かるアミン、例えばモノアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、i−プロピルアミンもしくはn−プロピルアミン、ジアミン、例えばエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミンもしくは1,3−プロパンジアミン、アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、2−アミノプロパン−1−オールもしくは1−アミノプロパン−2−オール又はピペラジンを指す。
【0014】
グリセリンを基礎とする特殊のアミンは、グリセリンの少なくとも1つのOH基が、第一級アミノ基、第二級アミノ基もしくは第三級アミノ基によって置換されていることを特徴とするアミン、例えば1,2,3−トリアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、1,2−ジアミノプロパン−3−オール、1−アミノ−プロパンジオールもしくは2−アミノプロパンジオールである。これらの化合物は、多数の官能性を有するので、従って、有機化合物、例えば植物保護剤、医薬品、安定剤などの合成における重要な中間物質となりうる。
【0015】
ピペラジンの誘導体(ピペラジン誘導体)、例えば2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2−アミノメチル−5−メチルピペラジン及び2−アミノメチル−6−メチルピペラジンは、同様に、重要な合成構成単位となりうる。
【0016】
グリセリンの上述の化合物への転化は、できる限り少ない投資費用に保つために、僅かな反応段階しか含まないことが望ましい。加えて、方法条件、例えば圧力及び温度、反応時間、触媒負荷量、アミノ化剤とグリセリンとのモル比の変動などの方法条件の簡単に行われる調整によっても、使用される触媒の選択によっても、反応排出物の組成を所定の範囲内で調節でき、従って工業用アミン、グリセリンを基礎とする特殊のアミン又はピペラジン誘導体に関する売買の変動により良好に応えられることが望ましい。
【0017】
本発明により、グリセリンと、水素及びアンモニア、第一級アミン及び第二級アミンの群から選択されるアミノ化剤とを、触媒の存在下で、100℃〜400℃の温度及び0.01〜40MPa(0.1〜400バール)の圧力で反応させることによってアミンを製造する方法が見出された。
【0018】
グリセリンと、水素及びアンモニア、第一級アミン及び第二級アミンからなる群から選択されるアミノ化剤とを反応させることは、以下に、グリセリンの還元的アミノ化と呼ぶか、又は単に短く、還元的アミノ化と呼ぶ。
【0019】
出発物質として、該反応においては、グリセリンと、水素と、アンモニア、第一級アミン及び第二級アミンからなる群から選択されるアミノ化剤とが使用される。
【0020】
グリセリンは、通常は、脂肪及び油を、脂肪酸(脂肪鹸化)もしくは脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)へと変換するに際して副生成物として生ずる。脂肪及び油からのグリセリンの製造は、例えばウールマン(ウールマンの工業化学事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry),グリセロール(Glycerol),第4.1章(Kapitel 4.1) "脂肪及び油からのグリセロール(Glycerol from Fat and Oils)",Wiley−VCH出版,電子版,2007年)において記載されている。
【0021】
グリセリンは、また、石油化学的な出発物であるプロパンから出発して製造することもできる。グリセリンのプロペンからの合成に関する概説は、同様にウールマン(ウールマンの工業化学事典,グリセロール,第4.1章 "プロペンからの合成(Synthesis from Propene)",Wiley−VCH出版,電子版,2007年)において行われている。
【0022】
本発明による方法に関しては、一般に、グリセリンがどのような製造様式で得られたかは重要ではない。植物、動物もしくは石油化学を基礎とするグリセリンも、本発明による方法のための出発物質として適している。
【0023】
特に好ましくは、再生原料を基礎とするグリセリン、例えば脂肪鹸化もしくはバイオディーゼル産生からの副生成物として生ずるグリセリンが使用される。
【0024】
グリセリンは、様々な品質で、例えば粗製品質として、工業用品質として、もしくは医薬品用品質で入手できる。
【0025】
粗製品質で入手できるグリセリンは、通常は、バイオディーゼル産生に際して生ずる。バイオディーゼル産生のために、植物油及び脂肪であって1つのグリセリン分子がそれぞれ3つの脂肪酸分子で鹸化されているものが、通常は、触媒添加(NaOHもしくはナトリウムメチレート)下での加熱により、メタノールとエステル交換されて、脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)となる。カップリング生成物としてグリセリンが生ずる。副生成物は、脂肪酸のナトリウム塩(セッケン)である。グリセリンとセッケンとメタノールと触媒と水との水性混合物は、一般に、物理的に、親油性の脂肪酸メチルエステルから分離される。塩酸による酸性化によって、脂肪酸及び塩化ナトリウムが生ずる。粗製グリセリン及び脂肪酸は、一般に相分離によって分離される。メタノールの除去は、蒸留により行われる。
【0026】
粗製グリセリンは、一般に、5〜30質量%、通常は10〜15質量%の含水率、0.1〜10質量%、通常は5〜7質量%の塩含有率、及び1質量%未満、通常は0.1〜0.5質量%のメタノール含有率を有する。
【0027】
工業用品質もしくは医薬品用品質のグリセリンは、一般に、塩含有率及び色数を低下させるために、1種もしくは複数種の段階で蒸留によって精製される。
【0028】
工業用品質のグリセリンは、様々なグリセリン含有率で入手できる(例えば99.8%又はノーベルテストによる99.5%を有するグリセリン)。
【0029】
医薬品用品質のグリセリン(例えば、欧州薬局方(Ph.Eur.)、米国薬局方(U.S.P.)、日本薬局方)の場合に、規定の副成分の含有率及び物理的パラメータの点で、厳格な規格限界を遵守せねばならない。医薬品用品質のグリセリンの場合に、グリセリン含有率は、通常は、99%より高い、例えば99.5%もしくは99.8%である。
【0030】
好ましくは、本発明による方法において、工業用品質もしくは医薬品用品質のグリセリンであって少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%のグリセリン含有率を有するグリセリンが使用される。使用されるグリセリンは、通常は澄明かつ淡色であり、かつ一般に100APHA未満の、好ましくは50APHA未満の、特に好ましくは20APHA未満の色数を有する。
【0031】
使用されるグリセリンの塩含有率は、通常は、0.1質量%未満、好ましくは0.05質量%未満である。使用されるグリセリンは水も含有してよく、その際、その含水率は、一般に、50質量%以下、好ましくは20質量%未満、特に好ましくは5質量%未満であることが望ましい。グリセリンは、また硫黄含有成分を含有してもよい。一般に、これらの含水率、色数及びグリセリン含有率に関する品質要求は、殆どの市販されている工業用の及び医薬品用のグリセリン品質によって満たされる。
【0032】
粗製グリセリンを使用する場合に、可能性としては、より高い塩含有率に基づいて反応器中に不所望な沈着が起こることがあり、かつより高い副生成物の含有率に基づいて本発明によるアミンがより強く変色することがある。粗製グリセリンが該方法で使用されるべき場合には、できれば、その都度の使用目的に適した生成物を得るために、反応器の頻繁な洗浄もしくは反応排出物の精製などの措置を採らねばならない。
【0033】
更なる導入物質として、水素が該方法で使用される。
【0034】
アミノ化剤は、アンモニア、第一級アミン及び第二級アミンからなる群から選択される。
【0035】
アンモニアと同様に、第一級もしくは第二級のアミンをアミノ化剤として使用することができる。
【0036】
例えば、以下のモノアルキルアミン及びジアルキルアミンをアミノ化剤として使用できる:メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、ジ−s−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ペンチルアミン、s−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、s−ヘキシルアミン、イソヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジン、ピペリジン、モルホリン及びピロリジン。
【0037】
しかしながら、好ましくは、大工業的に使用可能で廉価なアミノ化剤、例えばアンモニア、メチルアミン又はジエチルアミンが使用される。
【0038】
特に好ましくは、アンモニアがアミノ化剤として使用される。
【0039】
場合により、該方法には水を添加することができる。
【0040】
本発明による方法で使用される触媒は、元素の周期律表(2007年6月22日のIUPAC版の周期律表、http:www.iupac.org/reports/periodic_table/IUPAC_Periodic_Table−22Jun07b.pdf)の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の1種もしくは複数種の金属を含有する。斯かる金属のための例は、Cu、Co、Ni及び/又はFe、並びに貴金属、例えばRh、Ir、Ru、Pt、Pd並びにReである。
【0041】
上述の金属は、金属網状物もしくは格子物の形で使用することができる。
【0042】
好ましい一実施態様においては、該金属は、本発明による方法において、ラネーによるスポンジ触媒(Schwammkatalysator)もしくは骨格触媒の形で使用される。特に好ましくは、ラネーによるニッケル触媒及び/又はコバルト触媒が使用される。
【0043】
ラネーによるニッケル触媒もしくはコバルト触媒の製造は、通常は、アルミニウム−ニッケル合金もしくはアルミニウム−コバルト合金を濃縮苛性ソーダで処理することによって行われ、その際、アルミニウムは溶脱され、金属製のニッケルスポンジもしくはコバルトスポンジが生ずる。ラネーによる触媒の製造は、例えば不均一系触媒反応のハンドブック(Handbook of Heterogeneous Catalysis)(M.S.Wainright著の不均一系触媒反応のハンドブック(G.Ertl,H.Knoezinger,J.Weitkamp編)),第1巻(Vol.1),Wiley−VCH,ヴァインハイム,ドイツ 1997年,第64頁以降)に記載されている。斯かる触媒は、例えばRaney(登録商標)触媒としてGrace社から販売されており、又はSponge Metal(登録商標)触媒としてJohnson Mattheyから販売されている。
【0044】
本発明による方法で使用できる触媒は、また、いわゆる触媒前駆体の還元によって製造することもできる。
【0045】
触媒前駆体は、1種もしくは複数種の触媒活性成分と、場合により担持材料とを含有する活性材料を含有する。
【0046】
該触媒活性成分は、元素の周期律表(2007年6月22日のIUPAC版の周期律表)の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の金属の酸素含有化合物、例えばそれらの金属酸化物もしくは水酸化物(場合により例)、例えばCoO、NiO、Mn34、CuO、RuO(OH)x及び/又はそれらの混合酸化物、例えばLiCoO2である。
【0047】
活性材料の質量は、担持材料の質量と、触媒活性成分の質量とからの合計である。
【0048】
該方法で使用される触媒前駆体は、活性材料の他に、付形剤(Verformungsmittel)、例えばグラファイト、リン酸もしくは他の加工助剤を含有してよい。
【0049】
該方法で使用される触媒前駆体は、更に、1種もしくは複数種のドープ元素(酸化段階0)又は周期律表の第1族ないし第14族から選択されるそれらの無機もしくは有機の化合物を含有してよい。斯かる元素もしくはそれらの化合物の例は、遷移金属、例えばMnもしくはマンガン酸化物、Reもしくはレニウム酸化物、Crもしくはクロム酸化物、Moもしくはモリブデン酸化物、Wもしくはタングステン酸化物、Taもしくはタンタル酸化物、Nbもしくはニオブ酸化物あるいはニオブシュウ酸塩、V又はバナジウム酸化物もしくはピロリン酸バナジル、亜鉛もしくは亜鉛酸化物、銀もしくは銀酸化物、ランタノイド、例えばCeもしくはCeO2又はPrもしくはPr23、アルカリ金属酸化物、例えばK2O、アルカリ金属炭酸塩、例えばNa2CO3及びK2CO3、アルカリ土類金属酸化物、例えばSrO、アルカリ土類金属炭酸塩、例えばMgCO3、CaCO3、BaCO3、リン酸無水物及びホウ素酸化物(B23)である。
【0050】
本発明による方法において、触媒前駆体は、好ましくは、触媒活性物質のみからなる、場合により触媒が成形体として使用される場合には付形助剤(例えばグラファイトもしくはステアリン酸など)及び場合により1種もしくは複数種のドープ元素からなるが、更に他の触媒活性の混和物を含有しない触媒前駆体の形で使用される。この関連においては、担持材料が、触媒活性材料に属するものと見なされる。
【0051】
以下に示される組成は、その後続の熱処理(一般にか焼である)の後で、かつその水素による還元の前の触媒前駆体の組成に対するものである。
【0052】
触媒前駆体の全質量に対する活性材料の割合は、一般に、70質量%以上、好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは90〜99質量%、特に92〜98質量%である。
【0053】
好ましい一実施態様においては、触媒前駆体の活性材料は、担持材料を含有しない。
【0054】
担持材料を含有しない触媒前駆体の活性材料は、好ましくは、CoO、NiO、Mn34、CuO、RuO(OH)x及びLiCoO2からなる群から選択される1種もしくは複数種の活性成分を含有する。特に好ましくは、担持材料を含有しない触媒前駆体の活性材料は、NiO及び/又はCoOを含有する。
【0055】
斯かる触媒前駆体は、例えば
出願番号PCT/EP2007/052013を有する特許出願に開示される触媒であり、前記触媒は、水素での還元前にa)コバルト及びb)アルカリ金属族、アルカリ土類金属族、希土類の族の1種もしくは複数種の元素もしくは亜鉛又はそれらの混合物を含有し、その際、元素a)及びb)は、少なくとも部分的にその混合酸化物、例えばLiCoO2の形で存在し、又は
EP−A−0636409に開示された触媒であり、その触媒活性材料は、水素による還元前に、55〜98質量%のCo(CoOとして計算)、0.2〜15質量%のリン(H3PO4として計算)、0.2〜15質量%のマンガン(MnO2として計算)及び0.2〜15質量%のアルカリ金属(M2O(M=アルカリ金属)として計算)を含有し、又は
EP−A−0742045に開示された触媒であり、その触媒活性材料は、水素による還元前に、55〜98質量%のCo(CoOとして計算)、0.2〜15質量%のリン(H3PO4として計算)、0.2〜15質量%のマンガン(MnO2として計算)及び0.05〜5質量%のアルカリ金属(M2O(M=アルカリ金属)として計算)を含有する。
【0056】
更なる一実施態様において、活性材料は、触媒活性成分の他に、担持材料を含有する。
【0057】
担持材料を含有する触媒前駆体は、1種もしくは複数種の触媒活性成分、好ましくはCoO、NiO、Mn34及び/又はRh、Ru及び/又はIrの酸素含有化合物を含有してよい。
【0058】
特に好ましくは、担持材料を含有する触媒前駆体の活性材料は、NiO及び/又はCoOを含有する。
【0059】
担持材料としては、好ましくは、炭素、例えばグラファイト、カーボンブラック及び/又は活性炭、アルミニウム酸化物(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、カイもしくはそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩など並びにこれらの担持材料からなる混合物が使用される。
【0060】
担持材料上の活性材料の割合は、選択された製造方法に応じて広い範囲にわたって変動しうる。
【0061】
浸漬(含浸)によって製造される触媒前駆体の場合には、担持材料上の活性材料の割合は、一般に、50質量%より高く、好ましくは75質量%より高く、特に好ましくは85質量%より高い。
【0062】
混合沈降もしくは沈積(Auffaellung)などの沈降法によって製造される触媒前駆体の場合には、担持材料上の活性材料の割合は、一般に、10〜90質量%の範囲、好ましくは15〜80質量%の範囲、特に好ましくは20〜70質量%の範囲である。
【0063】
沈降反応によって得られる斯かる触媒前駆体は、例えば
EP−A−696572に開示される触媒であり、その触媒活性材料は、水素による還元の前に20〜85質量%のZrO2、1〜30質量%の銅の酸素含有化合物(CuOとして計算)、30〜70質量%のニッケルの酸素含有化合物(NiOとして計算)、0.1〜5質量%のモリブデンの酸素含有化合物(MoO3として計算)及び0〜10質量%のアルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物(Al23もしくはMnO2として計算)を含有し、例えば引用文中第8頁に開示される31.5質量%のZrO2、50質量%のNiO、17質量%のCuO及び1.5質量%のMoO3の組成を有する触媒であり、
EP−A−963975に開示される触媒であり、その触媒活性材料は、水素による還元の前に22〜40質量%のZrO2、1〜30質量%の銅の酸素含有化合物(CuOとして計算)、15〜50質量%のニッケルの酸素含有化合物(NiOとして計算)、その際、Ni:Cuのモル比は1より大であり、15〜50質量%のコバルトの酸素含有化合物(CoOとして計算)、0〜10質量%のアルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物(Al23もしくはMnO2として計算)を含有し、モリブデンの酸素含有化合物を含有せず、例えば引用文中第17頁に開示される33質量%のZr(ZrO2として計算)、28質量%のNi(NiOとして計算)、11質量%のCu(CuOとして計算)及び28質量%のCo(CoOとして計算)の組成を有する触媒Aであり、
DE−A−2445303に開示される銅含有の触媒、例えばその実施例1に開示される銅含有の沈降触媒であり、前記触媒は、硝酸銅と硝酸アルミニウムの溶液を重炭酸ナトリウムで処理し、引き続き沈殿物を洗浄、乾燥及び熱処理することによって製造され、約53質量%のCuO及び約47質量%のAl23の組成を有し、又は
WO96/36589に開示される触媒、特にIr、Ru及び/又はRhを含有し、かつ担持材料として活性炭を含有する触媒である。
【0064】
該触媒前駆体は、公知の方法によって、例えば沈降、沈積、含浸によって製造できる。
【0065】
好ましい一実施態様においては、担持材料の浸漬(例えば含浸)によって製造された触媒前駆体(浸漬された触媒前駆体)が本発明による方法では使用される。
【0066】
含浸で使用される担持材料は、例えば粉末もしくは成形体、例えばストランド、タブレット、球状物もしくは環状物の形で使用することができる。流動床反応器に適した担持材料は、好ましくは噴霧乾燥によって得られる。
【0067】
担持材料としては、例えば、炭素、例えばグラファイト、カーボンブラック及び/又は活性炭、アルミニウム酸化物(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、カイもしくはそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩又はこれらの混合物が該当する。
【0068】
上述の担持材料の浸漬は、通常の方法(A.B.Stiles,Catalyst Manufacture−Laboratory and Commercial Preperations,Marcel Dekker,New York,1983)によって、例えば1種もしくは複数種の浸漬段階での金属塩溶液の塗布によって実施できる。金属塩としては、一般に、水溶性の金属塩、例えば上述の元素の硝酸塩、酢酸塩もしくは塩化物が該当する。引き続き、浸漬された担持材料は、一般に乾燥され、場合によりか焼される。
【0069】
浸漬は、また、いわゆる"初期湿潤(incipient wetness)"法に従って、担持材料を、その吸水能に相応して最大ないし飽和にまで浸漬溶液で湿潤させて行ってもよい。しかしながら、その浸漬は、上澄み溶液においても行われうる。
【0070】
多段階の浸漬法の場合に、個々の浸漬工程の間で乾燥させ、場合によりか焼させることが適切である。多段階の浸漬は、好ましくは、該担持材料により多量の金属量を加えるべき場合に使用されるべきである。
【0071】
該担持材料への複数種の金属成分の塗布のために、その浸漬は、全ての金属塩で同時に又は個々の金属塩の任意の順序で順次に行うことができる。
【0072】
更なる好ましい一実施態様においては、触媒前駆体は、全てのその成分の一緒の沈降(混合沈降)によって製造される。そのためには、一般に、相応の金属酸化物の可溶性の金属塩と、場合により担体材料の可溶性の化合物が、液体中で熱中及び撹拌下で、沈降が完全になるまでの間、沈降剤と混合される。液体としては、一般に、水が使用される。
【0073】
相応の金属酸化物の可溶性の金属塩としては、通常は、元素の周期律表(2007年6月22日のIUPAC版の周期律表)の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の金属の相応の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩もしくは塩化物が該当する。斯かる金属のための例は、Cu、Co、Ni及び/又はFe、並びに貴金属、例えばRh、Ir、Ru、Pt、Pd並びにReである。
【0074】
担持材料の水溶性の化合物としては、一般に、Al、Zr、Siなどの水溶性の化合物、例えばこれらの元素の水溶性の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩もしくは塩化物が使用される。
【0075】
触媒前駆体は、更に、沈積によって製造することができる。沈積とは、難溶性もしくは不溶性の担持材料を液体中に懸濁させ、引き続き相応の金属酸化物の可溶性金属塩を添加し、次いでそれを沈降剤の添加によって懸濁された担体上に沈積させる製造方法を意味する(例えばEP−A2−1106600号の第4頁及びA.B.Stiles,Catalyst Manufacture,Marcel Dekker,Inc.,1983,第15頁に記載される)。
【0076】
難溶性もしくは不溶性の担持材料としては、例えば、炭素化合物、例えばグラファイト、カーボンブラック及び/又は活性炭、アルミニウム酸化物(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、カイもしくはそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩又はこれらの混合物が該当する。
【0077】
該担持材料は、一般に粉末もしくは破片として存在する。
【0078】
担持材料が懸濁される液体としては、通常は、水が使用される。
【0079】
相応の金属酸化物の可溶性の金属塩としては、一般に、元素の周期律表(2007年6月22日のIUPAC版の周期律表)の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の金属の相応の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩もしくは塩化物が該当する。斯かる金属のための例は、Cu、Co、Ni及び/又はFe、並びに貴金属、例えばRh、Ir、Ru、Pt、Pd及びReである。
【0080】
沈降反応に際して、一般に、使用される可溶性の金属塩の種類は重要ではない。この方法では主として塩の水溶性が問題となるので、前記の比較的に高濃縮された塩溶液の製造のために必要となる良好なその水溶性が基準となる。個々の成分の塩の選択に際して、もちろん、不所望な沈降を引き起こすか又は錯形成によって沈降を阻害もしくは抑制するという妨害をもたらさない係るアニオンとの塩のみが選択されることは当然のものと見なされる。
【0081】
通常は、沈降反応に際して、可溶性化合物は、沈降剤の添加によって、難溶性もしくは不溶性の塩基性塩として沈降される。沈降剤としては、好ましくは、アルカリ液、特に鉱塩基、例えばアルカリ金属塩基が使用される。沈降剤のための例は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムもしくは水酸化カリウムである。
【0082】
沈降剤としては、アンモニウム塩、例えばアンモニウムハロゲン化物、アンモニウム炭酸塩、アンモニウム水酸化物又はアンモニウムカルボン酸塩を使用してもよい。
【0083】
沈降反応は、例えば20〜100℃、特に30〜90℃、殊に50〜70℃の温度で実施できる。
【0084】
その沈降反応で得られる沈殿物は、一般に、化学的に不均一であり、一般に、使用される金属の酸化物、酸化物水和物、水酸化物、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩の混合物を含有する。該沈殿物の濾過可能性については、それらが熟成された場合に、すなわち沈降のいくらかの時間後でもなおも、場合により熱中もしくは空気の導通下に放置した場合に適切に見なされることがある。
【0085】
この沈降法により得られる沈殿物は、通常は、それらを洗浄し、乾燥させ、か焼し、そしてコンディショニングされることで加工される。
【0086】
洗浄後に、該沈降物は、一般に80〜200℃で、好ましくは100〜150℃で乾燥され、引き続きか焼される。
【0087】
か焼は、一般に、300〜800℃の温度で、好ましくは400〜600℃の温度で、特に450〜550℃の温度で実施される。
【0088】
か焼の後に、沈降反応によって得られた触媒前駆体は、通常はコンディショニングされる。
【0089】
該コンディショニングは、例えば、沈降触媒を粉砕によって規定の粒度に調整することによって行うことができる。粉砕後に、沈降反応によって得られた触媒前駆体を、成形助剤、例えばグラファイトもしくはステアリン酸と混合し、更に成形体へと加工することができる。
【0090】
形状付与の通常の方法は、例えばウールマン[ウールマンの工業化学事典電子版2000年,"触媒反応及び触媒(Catalysis and Catalysts)",第28頁〜32頁]において、かつErtl他[Ertl,Knoezinger,Weitkamp,不均一系触媒反応のハンドブック、VCH ヴァインハイム,1997年,第98頁以降]によって記載されている。
【0091】
上述の文献箇所に記載されるように、形状付与の方法によって、成形体は、あらゆる立体形状で、例えば円形、角形、短冊形などで、例えばストランド、タブレット、造粒物、球状物、円柱物もしくは粒状物の形で得ることができる。形状付与の通常の方法は、例えば押出成形、タブレット化、すなわち機械的圧縮もしくはペレット化、すなわち環状運動及び/又は回転運動による圧密化である。
【0092】
コンディショニングもしくは形状付与の後に、一般に熱処理が行われる。熱処理における温度は、通常は、か焼における温度に相当する。
【0093】
沈降反応によって得られた触媒前駆体は、触媒活性成分を、その酸素含有の化合物の混合物の形で、すなわち特に酸化物、混合酸化物及び/又は水酸化物として含有する。こうして製造された触媒前駆体は、そのままで貯蔵することができる。
【0094】
グリセリンの還元的アミノ化のための触媒として使用する前に、前記のように含浸もしくは沈降によって得られた触媒前駆体は、一般に、か焼もしくはコンディショニングの後に、水素での処理によって事前還元される。
【0095】
事前還元のために、該触媒前駆体は、まず150〜200℃で、12〜20時間の時間にわたり、窒素−酸素−雰囲気に晒され、引き続きなおも約24時間まで、200〜400℃で水素雰囲気中で処理される。この事前還元に際して、触媒前駆体中に存在する酸素含有の金属化合物の一部は相応の金属に還元されるので、これらは異なる種類の酸素化合物と一緒に触媒の活性形で存在する。
【0096】
好ましい一実施態様においては、触媒前駆体の事前還元は、グリセリンの還元的アミノ化が引き続き行われるのと同じ反応器中で行われる。
【0097】
こうして形成された触媒は、事前還元の後に、窒素などの不活性ガス下で取り扱うことができ、かつ貯蔵でき、又は不活性な液体、例えばアルコール、水もしくは該触媒が使用される各反応の生成物の下で使用される。該触媒は、予備還元後には、しかしながら酸素を含有するガス流、例えば空気もしくは空気と窒素との混合物によって不動態化され、すなわち酸化物保護層が設けられる。
【0098】
触媒前駆体の事前還元によって得られる触媒の不活性物質下での成層もしくは該触媒の不動態化は、該触媒の単純かつ安全な取り扱い及び貯蔵を可能にする。場合により、次いで、該触媒から、本来の反応の前にその不活性な液体を除去せねばならず、あるいは不動態化層は、例えば水素もしくは水素含有ガスでの処理によって取り除かねばならない。
【0099】
該触媒からは、ヒドロアミノ化の開始前に、その不活性な液体もしくは不動態化層を取り除くことができる。それは、例えば該触媒を水素もしくは水素含有ガスで処理することによって行われる。好ましくは、該ヒドロアミノ化は、触媒の処理の直後に、該触媒の水素もしくは水素含有ガスでの処理も行われたのと同じ反応器中で行われる。
【0100】
しかしながら、触媒前駆体は、また事前還元しなくても該方法で使用することができ、その際、該前駆体は次いで還元的アミノ化の条件下に反応器中に存在する水素によって還元され、一般に触媒はその場で形成される。
【0101】
還元的アミノ化は、例えば撹拌オートクレーブ、気泡塔、循環反応器、例えばジェットループ(Strahlschlaufe)又は固定床反応器中で実施することができる。
【0102】
本発明による方法は、断続的にもしくは好ましくは連続的に実施することができる。
【0103】
グリセリンの還元的アミノ化は、液相中でもしくは気相中で実施することができる。好ましくは、グリセリンの還元的アミノ化は、液相中で実施される。
【0104】
断続的な還元的アミノ化の場合には、通常は、グリセリンの懸濁液と触媒が反応器に装入される。高い転化率及び高い選択性を保証するために、グリセリン及び触媒の水及びアミノ化剤との懸濁液は、一般に、例えばオートクレーブ中のタービン撹拌機によって良く混合しなければならない。懸濁された触媒材料は、慣用技術によって導入でき、そして再び分離することができる(沈殿、遠心分離、脱水濾過、クロスフロー濾過)。該触媒は、一回もしくは複数回使用することができる。触媒濃度は、それぞれグリセリン及び触媒からなる懸濁液の全質量に対して、有利には0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜40質量%、特に好ましくは1〜30質量%、特に5〜20質量%である。平均触媒粒度は、有利には0.001〜1mmの範囲にあり、好ましくは0.005〜0.5mmの範囲にあり、特に0.01〜0.25mmの範囲にある。場合により、出発物質の希釈は、グリセリンが良好な可溶性を有する好適な不活性溶剤、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドンを用いて行うことができる。
【0105】
連続的な還元的アミノ化の場合には、通常は、グリセリンは、水素及びアミノ化剤(アンモニアもしくはアミン)を含めて、(好ましくは外部から)加熱された固定床反応器中に存在することが好ましい触媒上に導かれる。
【0106】
液相中での該方法の実施に際して、トリクル方式も可能であり、またアップフロー方式(Sumpffahrweise)も可能である。
【0107】
触媒負荷量は、一般に、0.05〜5、好ましくは0.1〜2、特に好ましくは0.2〜0.6kg(グリセリン))/リットル(触媒(非タッピング容量))・時間の範囲にある。
【0108】
液相中での該方法の実施に際して、圧力は、一般に5〜40MPa(50〜400バール)、好ましくは10〜30MPa、特に好ましくは15〜25MPaである。
【0109】
温度は、一般に、100〜400℃、好ましくは150〜300℃、特に好ましくは180〜250℃である。
【0110】
場合により、出発物質の希釈は、グリセリンが良好な可溶性を有する好適な不活性溶剤、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドンを用いて行うことができる。
【0111】
気相中での該方法の実施に際して、気体状出発物質(グリセリンとアミノ化剤)は、通常は、蒸発のために十分に大きく選択されたガス流において、水素の存在下で触媒へと導かれる。
【0112】
気相中での該方法の実施に際して、圧力は、一般に0.01〜40MPa(0.1〜400バール)、好ましくは0.1〜10MPa、特に好ましくは0.1〜5MPaである。
【0113】
温度は、一般に、100〜400℃、好ましくは150〜300℃、特に好ましくは180〜250℃である。
【0114】
例えばEP−A2−1318128号(BASF AG)もしくはFR−A−2603276号(フランス国営石油研究所)に記載されるように、連続的な懸濁方式を使用することもできる。
【0115】
反応物を、反応容器への供給前に既に、特に好ましくは反応温度にまで加熱していることが好適である。
【0116】
アミノ化剤は、それぞれグリセリンに対して、好ましくは、0.90倍〜250倍のモル量で、特に好ましくは、1.0倍〜100倍のモル量で、特に、1.0倍〜10倍のモル量で使用される。
【0117】
特に、アンモニアは、一般に、グリセリン1モルあたりに、1.5倍〜250倍の、好ましくは2倍〜100倍の、特に2倍〜10倍のモル過剰で使用される。より大過剰のアンモニアも第一級もしくは第二級のアミンも可能である。
【0118】
更に、本発明による方法において水を使用することができる。水は、例えば、グリセリン水溶液の形で、グリセリンと一緒にプロセスに供給することができるが、他の出発物質とは別に、反応器に別個に供給することもできる。
【0119】
通常は、水とグリセリンとのモル比は、10:1未満、好ましくは8:1未満である。
【0120】
特定の一実施態様においては、付加的な水をプロセスに供給しない。
【0121】
水素は、反応へと、1モルのグリセリン当たりに、一般に5〜400lの量で、好ましくは150〜600lの量で供給され、その際、リットルの表記は、それぞれ標準状態に換算されたものである(S.T.P.)。
【0122】
液相での該方法の実施に際しても、気相での該方法の実施に際しても、より高い温度及びより高い全圧力の使用が可能である。所定の温度で、アミノ化剤、グリセリン及び形成された反応生成物並びに場合により併用される溶剤の分圧の合計から生ずる反応容器内の圧力は、適宜、水素の圧入によって所望の反応圧へと高められる。
【0123】
液相での該方法の連続的な実施に際しても、気相での該方法の連続的な実施に際しても、過剰なアミノ化剤を循環において水素と一緒に供給することができる。
【0124】
触媒が固定床として配置されている場合に、反応の選択性のためには、触媒成形体を反応器内で不活性充填体と混合すること、いわば"希釈"することが好ましいことがある。斯かる触媒調製物における充填体の割合は、20〜80容量部、特に30〜60容量部、殊に40〜50容量部であってよい。
【0125】
反応の過程で形成された反応水(それぞれ転化されたアルコール基1モル当たり1モル)は、一般に、転化度、反応速度、選択性及び触媒寿命に対して妨げとなる作用を示さず、かつそれゆえ適切には反応生成物の後処理に際して初めて、例えば蒸留もしくは抽出によりこれから除去される。
【0126】
本発明による方法によって、アミンは、グリセリンと、水素と、アンモニア、第一級アミン及び第二級アミンの群から選択されるアミノ化剤とから製造することができる。
【0127】
アミノ化剤としてアンモニアを使用する場合に、一般に、反応排出物は、
メチルアミン、エチルアミン、i−プロピルアミン及びn−プロピルアミンからなる群から選択される1種もしくは複数種のモノアミン、及び/又は
エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン及び1,3−プロパンジアミンからなる群から選択される1種もしくは複数種のジアミン、及び/又は
モノエタノールアミン、2−アミノプロパン−1−オール及び1−アミノプロパン−2−オール、好ましくは2−アミノプロパン−1−オールからなる群から選択される1種もしくは複数種のアルカノールアミン、及び/又は
1,2,3−トリアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、1,2−ジアミノプロパン−3−オール、1−アミノプロパンジオール及び2−アミノプロパンジオール、好ましくは1,2,3−トリアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン−3−オール及び2−アミノプロパンジオールからなる群から選択される1種もしくは複数種のグリセリンに類似の特殊アミン、及び/又は
ピペラジン、及び/又は
2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2−アミノメチル−5−メチルピペラジン及び2−アミノメチル−6−メチルピペラジン、好ましくは2−アミノメチル−6−メチルピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン及び2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジンからなる群から選択される1種もしくは複数種のピペラジン誘導体
を含有する。
【0128】
グリセリンに類似の特殊アミンという用語は、グリセリンの少なくとも1つのヒドロキシル基が、第一級アミノ基、第二級アミノ基もしくは第三級アミノ基によって置換されていることを特徴とする斯かるアミンを表す。
【0129】
アンモニアがアミノ化剤として使用される場合に、グリセリンの1つのヒドロキシル基は第一級アミノ基によって置換される。第一級アミン、例えばメチルアミンがアミノ化剤として使用される場合に、グリセリンの1つのヒドロキシル基は、第二級アミノ基、例えばアミノメチルによって置換される。
【0130】
第二級アミン、例えばジメチルアミンがアミノ化剤として使用される場合に、グリセリンの1つのヒドロキシル基は、第三級アミノ基、例えばアミノジメチルによって置換される。
【0131】
反応排出物の組成は、グリセリン転化率、反応温度並びに触媒の組成によって影響されることがある。
【0132】
例えば、使用される触媒の組成は、反応排出物中のアミンの組成に影響することがある。
【0133】
本発明による方法の特定の一実施態様においては、触媒として、Ni及び/又はCoを含有する触媒、例えばラネーによるニッケル触媒もしくはコバルト触媒又は触媒前駆体の還元によって得られた触媒であってその活性物質が水素での還元の前に触媒活性成分としてNiO及び/又はCoOを含有する触媒が使用される。斯かる触媒は、一般に、高い活性を有し、かつ特にアルカノールアミン、ジアミン、グリセリンを基礎とする特殊のアミン及び/又はピペラジン誘導体の形成を促進する。
【0134】
触媒前駆体の還元によって製造される触媒の場合には、特に触媒活性成分のNiOの存在は、グリセリン類似の特殊のアミンの形成を促進する。
【0135】
また、触媒としてCu含有触媒を使用する一実施態様も好ましい。Cu含有触媒の使用によって、通常は、反応排出物中のより高い割合のピペラジン誘導体及び/又はジアミンがもたらされる。
【0136】
同様に好ましい一実施態様において、元素の周期律表の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の第5周期の1種の金属もしくは複数種の金属、好ましくはRu及び/又はRhを含有する触媒が、本発明による方法で使用される。斯かる触媒の使用によって、一般に好ましくは、アミノ化剤としてアンモニアを使用した場合に、モノアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン及び/又はイソプロピルアミンの形成がもたらされる。
【0137】
更なる好ましい一実施態様において、活性金属としてNiもしくはCoを有するラネーによるスポンジ触媒が、本発明による方法において使用される。活性金属としてNiもしくはCoを有するラネーによるスポンジ触媒は、一般に、非環式ジアミンもしくはグリセリン類似の特殊のアミンの形成を促進する。これらの触媒は特に高い活性を有するので、低い温度もしくは短い反応時間でさえも、アミノ化剤としてアンモニアを使用した場合に、高い収率のグリセリン類似の特殊のアミンもしくは工業的に重要なアミン、例えばプロパンジアミン及びエチレンジアミンが得られる。
【0138】
更なる好ましい一実施態様は、Irを含有する触媒を本発明による方法で使用することに関する。Irを含有する触媒は、一般に、より高い割合のグリセリン類似の特殊のアミンをもたらす。
【0139】
また、反応温度によって反応排出物の組成に影響を及ぼすことも可能である。
【0140】
このように、例えば同じ転化率で、より低い反応温度の場合に、一般に、グリセリンを基礎とする特殊のアミン及び非環式アミン、例えばジアミン及びアルカノールアミンの形成が促進される。
【0141】
該反応をより高い反応温度で同じ転化率まで実施した場合に、一般に、ピペラジンもしくはピペラジン誘導体が環化反応によって形成される。より高い反応温度の場合に、同じ転化率で、一般に、脱アミノ化反応が増大する。例えば、アミノメチルピペラジンからピペラジンが形成されるか、又はエチレンジアミンからモノエチルアミンが形成される。
【0142】
反応排出物の組成は、更に、グリセリン転化率によって影響されうる。
【0143】
こうして、高い転化率で、使用される触媒とは無関係に、一般に、官能性の数が低下することが確認される(脱官能化)。すなわち、例えばジアミンもしくはモノアミンがトリアミンから形成されるか、又はメチルピペラジンがアミノメチルピペラジンから形成される。
【0144】
更に、高いグリセリン転化率で、環化の増加と、それに伴ってピペラジンもしくはピペラジン誘導体の形成が確認される。高いグリセリン転化率、例えば80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは99%以上のグリセリン転化率は、一般に、高い割合の環状アミン、例えばピペラジン及び/又はピペラジン誘導体を有する反応排出物の形成を促進する。
【0145】
中程度のグリセリン転化率、例えば30〜80%、好ましくは40〜70%、特に好ましくは50〜60%のグリセリン転化率は、一般に、グリセリン類似の特殊のアミンの形成を促進する。
【0146】
該グリセリン転化率は、一連のプロセスパラメータ、例えば圧力、温度、アミノ化剤、特にアンモニアとグリセリンとのモル比、並びに反応時間もしくは滞留時間によって影響されうる。
【0147】
グリセリン転化率(Uグリセリン)は、当業者にはガスクロマトグラフィー分析によって通常通りに確認でき、かつ通常は以下のように示される:
Uグリセリン=(F%グリセリン,始まり−F%グリセリン,終わり)/F%グリセリン,始まり
前記式中、F%グリセリン,始まり及びF%グリセリン,終わりは、反応の始まりもしくは終わり、あるいは反応器の入口もしくは出口で測定された、ガスクロマトグラフィーによって調査されたグリセリンシグナル下の面積パーセントである。
【0148】
高いグリセリン転化率、例えば80〜100%は、例えば温度の上昇もしくはアミノ化剤、特にアンモニアとグリセリンとのモル比の増加によって達成できる。例えば、高いグリセリン転化率は、一般に200〜400℃、好ましくは220〜350℃の温度範囲で達成できる。通常は、アミノ化剤、特にアンモニアとグリセリンとのモル比は、高いグリセリン転化率の達成のためには、5:1〜250:1、好ましくは10:1〜150:1の範囲にある。
【0149】
連続的な方法の場合には、より高いグリセリン転化率は、触媒負荷量の低下によってもたらすことができる。高いグリセリン転化率は、一般に、1リットルの触媒(非タッピング容量)及び1時間当たり0.05〜0.6kgのグリセリン、好ましくは1リットルの触媒(非タッピング容量)及び1時間当たり0.05〜0.2kgのグリセリンの範囲での触媒負荷に際して達成される。更に、高いグリセリン転化率は、断続的な方法の場合に、滞留時間の増加もしくは触媒濃度の上昇によってもたらすことができる。通常は、高いグリセリン転化率は、16〜72時間の滞留時間で、好ましくは20〜48時間の滞留時間で、特に好ましくは24〜32時間の滞留時間で達成され、その際、該滞留時間は、触媒濃度に依存して、高いグリセリン転化率を達成するために、より短くてもより長くてもよい。
【0150】
中程度のグリセリン転化率、例えば30〜80%は、例えば温度の低下もしくはアンモニアとグリセリンとのモル比の低下によって達成できる。
【0151】
中程度のグリセリン転化率は、例えば、一般に、150〜300℃、好ましくは150〜220℃の範囲で達成できる。通常は、アミノ化剤、特にアンモニアとグリセリンとのモル比は、高い転化率の達成のためには、1:1〜100:1、好ましくは2.5:1〜50:1の範囲にある。
【0152】
連続的な方法の場合には、グリセリン転化率の低下は、触媒負荷量の増加によってもたらすことができる。中程度のグリセリン転化率は、一般に、1リットルの触媒(非タッピング容量)及び1時間当たり0.1〜1.2kgのグリセリン、好ましくは1リットルの触媒(非タッピング容量)及び1時間当たり0.2〜0.6kgのグリセリンの範囲での触媒負荷に際して達成される。
【0153】
断続的な方法の場合には、グリセリン転化率は、滞留時間の短縮もしくは触媒濃度の低下によって低減させることができる。中程度のグリセリン転化率は、一般に、5〜20時間の、好ましくは10〜16時間の滞留時間において達成され、その際、該滞留時間は、触媒濃度に依存して、中程度のグリセリン転化率を達成するために、より短くてもより長くてもよい。
【0154】
特に好ましい一実施態様においては、Ni及び/又はCoを含有する触媒が使用され、かつ中程度のグリセリン転化率、例えば30〜80%の、好ましくは40〜70%の、特に好ましくは50〜60%のグリセリン転化率が生じる。
【0155】
中程度のグリセリン転化率は、通常は、前記のようにして生じうる。
【0156】
中程度のグリセリン転化率で、かつニッケル含有の及び/又はコバルト含有の触媒が使用される場合に、一般に、好ましくはグリセリンを基礎とする特殊のアミンが高い割合で形成される。
【0157】
この方法の特定の実施態様によって得られた反応排出物は、形成されたアミンの全質量に対して、一般に5質量%より多い、好ましくは10質量%より多いグリセリン類似の特殊のアミンの割合を含有する。特に、前記の方法の実施態様によって製造された反応排出物は、アミノ化剤としてアンモニアを使用した場合に1,2,3−トリアミノプロパンを含有する。
【0158】
殊に好ましい一実施態様においては、Ir含有の触媒が使用され、かつ中程度のグリセリン転化率が生じる。
【0159】
中程度のグリセリン転化率、例えば30〜80%の調整は、一般に上述のようにして達成できる。
【0160】
この方法の特定の実施態様によって得られた反応排出物は、形成されたアミンの全質量に対して、一般に5質量%より多い、好ましくは10質量%より多いグリセリン類似の特殊のアミンの割合を含有する。
【0161】
更なる好ましい一実施態様においては、Ni及び/又はCoを含有する触媒の使用に際して、高いグリセリン転化率、例えば80%より高い、好ましくは90%より高い、特に好ましくは99%より高い転化率が生じる。高いグリセリン転化率は、例えば前記のようにして生じうる。
【0162】
前記の方法の特定の実施態様によって得られた反応排出物は、形成されたアミンの全質量に対して、一般に10質量%より多い、好ましくは20質量%〜80質量%の、特に好ましくは30〜70質量%のピペラジン及び/又はピペラジン誘導体の割合を含有する。
【0163】
更なる好ましい一実施態様においては、第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の第5周期の1種もしくは複数種の金属を含有する触媒が使用され、高いグリセリン転化率が生じる。高いグリセリン転化率、例えば80%より高い転化率の調整は、一般に上述のようにして達成できる。この方法の特定の実施態様によって得られた反応排出物は、形成されたアミンの全質量に対して、一般に30質量%より多いモノアミンの割合を含有する。
【0164】
殊に好ましい一実施態様においては、Ni含有の及び/又はCo含有の触媒は、150〜220℃の温度範囲で使用される。前記の好ましい実施態様においては、高いグリセリン転化率、例えば80%より高い、好ましくは90%より高い、特に好ましくは99%より高い転化率は、例えば触媒負荷量を低下させるかもしくは滞留時間を高めることで調整される。より特定の実施態様は、上述の実施態様とは、高いグリセリン転化率でNi含有の及び/又はCo含有の触媒の使用下で、高いグリセリンを220〜350℃の代わりに150〜220℃の範囲の温度で調整するという点で異なっている。
【0165】
前記のより特定の実施態様の連続的な変法において、触媒負荷量は、一般に、1リットルの触媒(非タッピング容量)及び1時間当たり0.05〜0.6kgのグリセリン、好ましくは1リットルの触媒(非タッピング容量)及び1時間当たり0.05〜0.2kgのグリセリンの範囲である。
【0166】
前記のより特定の実施態様の断続的な変法において、高いグリセリン転化率は、一般に、滞留時間の延長によって、又は触媒濃度の増大によって達成することができる。通常は、前記の滞留時間は、前記の特に好ましい実施態様においては、20時間より長い、好ましくは24時間より長い、特に好ましくは30時間より長い滞留時間であり、その際、該滞留時間は、触媒濃度に依存して、より短くてもより長くてもよい。
【0167】
通常は、アミノ化剤、特にアンモニアとグリセリンとのモル比は、高いグリセリン転化率の達成のためには、前記のより特定の実施態様においては、5:1〜250:1、好ましくは10:1〜150:1の範囲にある。
【0168】
前記の方法のより特定の実施態様によって得られた反応排出物は、アミンの全質量に対して、10質量%より多い、好ましくは20質量%〜80質量%の、特に好ましくは30〜70質量%のジアミノプロパン、ジアミノプロパノール及びトリアミノプロパンの割合を含有する。
【0169】
該反応排出物は、一般に、本発明により製造されたアミン並びに水、アミノ化剤、水及び場合により未反応のグリセリンを含有する。
【0170】
該反応排出物から、それを適宜減圧させることにより、過剰のアミノ化剤及び水素が除去される。過剰のアミノ化剤及び水素は、好ましくは再び反応領域へと返送される。
【0171】
アミノ化剤と水素の分離後に、こうして得られた反応排出物は一般に後処理される。
【0172】
一般に、反応排出物は脱水される。それというのも、水及びアミンは共沸混合物を形成でき、それが該反応排出物の個々のアミンの蒸留による分離を困難にするからである。
【0173】
含水の反応排出物の脱水は、通常は水性反応排出物と苛性ソーダ液とを接触させることによって行われる。苛性ソーダ液の濃度は、通常は20〜80%、好ましくは30〜70%、特に好ましくは40〜60%である。
【0174】
添加された苛性ソーダ液と反応排出物との容量比は、通常は、0.5:1〜2:1、好ましくは1:1である。反応排出物と苛性ソーダ液との接触は、苛性ソーダ液の供給によって、事前にグリセリンの還元的アミノ化を実施した反応用反応器において行うことができる。連続的な反応実施の場合に、苛性ソーダ液を、連続流として反応器排出物に計量供給してよい。しかし、苛性ソーダ液を、また、蒸留塔において向流で、蒸気状の反応排出物と、抽出蒸留の意味において接触させてもよい。抽出蒸留のための方法は、例えばGB−A−1,102,370号もしくはEP−A−1312600号に記載されている。
【0175】
好ましい変法において、反応排出物は、例えば中程度の転化率に調整される場合に脱水される。それというのも、グリセリンは、通常、水相と一緒に、形成されたアミンから、一般に完全にもしくはほぼ完全に分離できるからである。
【0176】
反応排出物の分離は、蒸留もしくは精留、液体抽出もしくは結晶化によって実施でき、その際、該分離は、1もしくは複数の段階で実施でき、その際、該段階の数は、一般に、反応排出物中に存在する成分の数に依存する。
【0177】
反応排出物は、異なるアミン成分の混合物を含有するフラクションで、又は1種のアミン成分のみを含有するフラクションで分離することができる。
【0178】
例えば、まず、1種より多いアミン成分を含有するフラクションでの分離を行ってよい。これらのフラクションは、後に、例えば精留(Feindestillation)によって、個別の化合物もしくは成分へと分離することができる。
【0179】
未反応のグリセリンは、本プロセスに返送することができる。
【0180】
反応排出物の後処理において得られた1もしくは複数種のアミンを含有するフラクションは、例えばコンクリート及び/又はセメントの製造に際しての添加剤として使用することができる。斯かるフラクションは、例えば0〜5質量%のジアミン、例えば1,2−ジアミノプロパン;5〜20質量%のピペラジン誘導体、例えば2−メチルピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン、3,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2−アミノメチル−6−メチルピペラジン、3−アミノメチル−5−メチルピペラジン及び/又は3−アミノメチル−6−メチルピペラジン;10〜30質量%のグリセリン類似の特殊のアミン、例えば1,2,3−トリアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン−3−オール及び/又は1,3−ジアミノプロパン−2−オール及び20〜45質量%のグリセリンを含有する。
【0181】
更に、斯かるフラクションは、15〜30質量%の水と、他の成分、例えばモノアミン、ジアミン、ピペラジン、ピペラジン誘導体及び/又はアルカノールアミンを含有してよい。
【0182】
本発明により得られるアミン、例えばモノアミンであって、メチルアミン、エチルアミン、i−プロピルアミン及びn−プロピルアミン、又はジアミン、例えばエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン及び1,3−プロパンジアミン、又はアルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、2−アミノプロパン−1−オール及び1−アミノプロパン−2−オール、又はグリセリン類似の特殊のアミン、例えば1,2,3−トリアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、1,2−ジアミノプロパン−3−オール、1−アミノプロパンジオール及び2−アミノプロパンジオール、又はピペラジン、又はピペラジン誘導体、例えば2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2−アミノメチル−5−メチルピペラジン及び2−アミノメチル−6−メチルピペラジンからなる群から選択されるアミンは、界面活性剤、薬剤及び植物保護剤、安定剤、光保護剤、ポリマーの製造のための合成構成単位として、エポキシ樹脂のための硬化剤として、ポリウレタンのための触媒として、第四級アンモニウム化合物、可塑剤、腐食防止剤、合成樹脂、イオン交換体、テキスタイル助剤、染料、加硫促進剤及び/又は乳化剤の製造のための中間体として使用することができる。
【0183】
更に、本発明は、一般式(I)
【化1】

の化合物1,2,3−トリアミノプロパン、一般式(II)
【化2】

の化合物2−アミノメチル−6−メチルピペラジン、及び一般式(III)もしくは(IV)
【化3】

の化合物2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジンもしくは2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジンに関する。
【0184】
1,2,3−トリアミノプロパンは、好ましくは、グリセリンのアンモニアによる、Ir含有の触媒もしくはNi含有の及び/又はコバルト含有の触媒の使用下での還元的アミノ化によって、中程度のグリセリン転化率で得られる。中程度のグリセリン転化率は、上記の様式で調整することができる。
【0185】
更なる好ましい一実施態様においては、1,2,3−トリアミノプロパンは、Ni含有の及び/又はCo含有の触媒を使用することによって、高いグリセリン転化率で、150〜220℃の温度範囲において、前記のようにして得られる。
【0186】
2−アミノメチル−6−メチルピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン又は2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジンは、好ましくは、グリセリンのアンモニアによる、Ni含有の及び/又はコバルト含有の触媒又はCu含有の触媒の使用下での還元的アミノ化によって、高いグリセリン転化率で得られる。高いグリセリン転化率は、上記の様式で調整することができる。
【0187】
本発明の利点は、グリセリンが、アミンの製造源として、アミンの製造のために効果的に有効に利用されることにある。原料のグリセリンを最適に活用するために、重要な工業用アミンもグリセリンを基礎とする特殊のアミン並びにピペラジン誘導体をも得ることを可能にする方法が提供される。
【0188】
グリセリンの転化は、僅かな反応工程しか含まない。例えば圧力及び温度などのプロセス条件の簡単に実施できる調整と、触媒の選択とによって、反応排出物の組成は、売買の変動に柔軟に反応しうるために、所定の範囲内で調節することができる。
【0189】
この方法によって、従来は石油化学的な出発物質から製造していた重要な工業用アミン、例えばモノアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、i−プロピルアミン又はn−プロピルアミン、ジアミン、例えばエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン又は1,3−プロパンジアミン、アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、2−アミノプロパン−1−オール又は1−アミノプロパン−2−オール、又はピペラジンを得ることができる。しかし、グリセリンを基礎とする新規の特殊のアミンも得られる。斯かるアミンは、グリセリンの少なくとも1つのOH基が、第一級アミノ基、第二級アミノ基もしくは第三級アミノ基によって置換されていることを特徴とし、それらは例えば1,2,3−トリアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、1,2−ジアミノプロパン−3−オール、1−アミノプロパンジオール又は2−アミノプロパンジオールである。これらの化合物は、多数の官能性を有するので、従って、有機化合物、例えば植物保護剤、医薬品、安定剤などの合成における重要な中間物質となりうる。
【0190】
更に、ピペラジンの誘導体(ピペラジン誘導体)、例えば2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2−アミノメチル−5−メチルピペラジン又は2−アミノメチル−6−メチルピペラジンが得られ、それらは、同様に、重要な合成構成単位となりうる。
【0191】
本発明による方法を、以下の実施例に基づき詳説する。
【0192】
実施例1〜10:
一般的な作業規定:
高圧オートクレーブに、5gの粉末状の触媒、15gのグリセリン(Riedel−de−Haen社製のグリセリンpuriss.99.0−101.0%(医薬用品質(欧州薬局方)))及び水を入れた。反応器を、不活性化させ、アンモニアを添加した。不活性ガスを水素と交換し、引き続き水素圧20バールに加圧した。撹拌しながら該反応器を2時間以内で最終温度へと加熱し、前記温度に達した後に、圧力を水素の200バールへの加圧によって高めた。圧力を、全反応時間の間に一定に前記値で保持した。48時間の反応時間後に、反応器を室温に冷却し、そして室温でゆっくりと減圧した。脱ガスされた反応器内容物を分析した。化合物の含有率を、ガスクロマトグラフィー(条件:キャピラリーカラムRTX5 Amin 30m、フィルム厚1.5マイクロメートル、直径0.32mm、方法:5分間60℃、次いで7℃/分で280℃に加熱、そして280℃で20分間加熱)によって面積パーセント(F%)として出した。この場合に、面積パーセントは、水素シグナルを除いた測定されたシグナルの下の全面積を指す。示されたグリセリン転化率は、反応の開始前と反応の終わりで出された面積パーセントを指す。
【0193】
実施例1:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒としては、ラネーによるニッケル触媒を使用した。22.5gの水及び90gのアンモニアを使用した。最終温度は、200℃であった。種々の反応時間後にサンプルを採取した。32時間後に、ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:8%;1,2−プロピレンジアミン:22%;ピペラジン:2%;2−メチルピペラジン:13%;2,6−ジメチルピペラジン:11%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:21%;1,2,3−トリアミノプロパン:2%
が生じた。グリセリン転化率は、91%であった。
【0194】
48時間後のガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:1%;1,2−プロピレンジアミン:17%;ピペラジン:3%;2−メチルピペラジン:25%;2,6−ジメチルピペラジン:31%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:4%;1,2,3−トリアミノプロパン:0%
が生じた。グリセリン転化率は、約100%であった。
【0195】
実施例2:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒として、ラネーによるコバルト(Grace Davison社のRaney(登録商標)2724)を使用した。11.25gの水及び90gのアンモニアを使用した。最終温度は、200℃であった。種々の反応時間後にサンプルを採取した。
【0196】
16時間後に、ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:5%;1,2−プロピレンジアミン:22%;ピペラジン:3%;2−メチルピペラジン:17%;2,6−ジメチルピペラジン:11%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:8%;1,2,3−トリアミノプロパン:0%
が生じた。
【0197】
48時間後に、ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:0%;1,2−プロピレンジアミン:2%;ピペラジン:1%;2−メチルピペラジン:12%;2,6−ジメチルピペラジン:37%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:6%;1,2,3−トリアミノプロパン:0%
が生じた。グリセリン転化率は、約100%であった。
【0198】
実施例3:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒として、触媒活性物質が水素での還元前に、13質量%のCu(CuOとして計算して)、28質量%のNi(NiOとして計算して)、28質量%のCo(CoOとして計算して)及び31質量%のZr(ZrO2として計算して)であった触媒前駆体から事前の還元によって得られた触媒を使用した。触媒前駆体の事前の還元は、純粋な水素雰囲気下で280℃の温度で20時間行った。
【0199】
22.5gの水及び90gのアンモニアを使用した。最終温度は、200℃であった。
【0200】
ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:1%;1,2−プロピレンジアミン:17%;ピペラジン:6%;2−メチルピペラジン:37%;2,6−ジメチルピペラジン:27%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:7%;1,2,3−トリアミノプロパン:0%
が生じた。グリセリン転化率は、約100%であった。
【0201】
実施例4:
その製造は、実施例3と同様に行ったが、反応において22.5gの水の代わりに11.25gだけを使用した。
【0202】
ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:8%;1,2−プロピレンジアミン:36%;ピペラジン:0%;2−メチルピペラジン:3%;2,6−ジメチルピペラジン:15%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:3%;1,2,3−トリアミノプロパン:0%
が生じた。グリセリン転化率は、約100%であった。
【0203】
実施例5:
その製造は、実施例3と同様にして実施したが、反応時間は、48時間の代わりに38時間だけであった。
【0204】
ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:2%;1,2−プロピレンジアミン:16%;ピペラジン:0%;2−メチルピペラジン:2%;2,6−ジメチルピペラジン:3%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:10%;1,2,3−トリアミノプロパン:13%
が生じた。グリセリン転化率は、約77%であった。
【0205】
実施例6:
その製造は、実施例3と同様にして実施したが、反応温度は、200℃の代わりに240℃だった。
【0206】
ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:3%;1,2−プロピレンジアミン:27%;ピペラジン:3%;2−メチルピペラジン:19%;2,6−ジメチルピペラジン:20%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:5%;1,2,3−トリアミノプロパン:0%
が生じた。グリセリン転化率は、約100%であった。
【0207】
実施例7:
その製造は、実施例3と同様にして実施したが、反応温度は、200℃の代わりに190℃であり、かつ使用したアンモニア量は、90gの代わりに78gであった。
【0208】
ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:0%;1,2−プロピレンジアミン:17%;ピペラジン:1%;2−メチルピペラジン:16%;2,6−ジメチルピペラジン:33%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:5%;1,2,3−トリアミノプロパン:0%
が生じた。グリセリン転化率は、約100%であった。
【0209】
実施例8:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒として、触媒活性物質が水素での還元前に、50質量%のNi(NiOとして計算して)、18質量%のCu(CuOとして計算して)、2質量%のMo(MoO3として計算して)及び30質量%のZr(ZrO2として計算して)を含有していた触媒前駆体から事前の還元によって得られた触媒を使用した。
【0210】
触媒前駆体の事前の還元は、純粋な水素雰囲気下で280℃の温度で12時間行った。
【0211】
水を使用せず、78gのアンモニアを使用した。最終温度は、190℃であった。
【0212】
ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:5%;1,2−プロピレンジアミン:29%;ピペラジン:1%;2−メチルピペラジン:9%;2,6−ジメチルピペラジン:7%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:7%;1,2,3−トリアミノプロパン:0%
が生じた。グリセリン転化率は、約89%であった。
【0213】
実施例9:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒として、触媒活性物質が水素での還元前に、85質量%のCo(CoOとして計算して)及び5質量%のMn(Mn34として計算して)を含有していた触媒前駆体から事前の還元によって得られた触媒を使用した。
【0214】
触媒前駆体の事前の還元は、純粋な水素雰囲気下で280℃の温度で12時間行った。11.25gの水及び90gのアンモニアを使用した。最終温度は、200℃であった。
【0215】
ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:3%;1,2−プロピレンジアミン:12%;ピペラジン:0%;2−メチルピペラジン:1%;2,6−ジメチルピペラジン:0%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:1%;1,2,3−トリアミノプロパン:0%;2−アミノプロパノール:10%
が生じた。グリセリン転化率は、約41%であった。
【0216】
実施例10:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒として、触媒活性物質が水素での還元前に、39質量%のCu(CuOとして計算した)及び30質量%のCr(Cr23として計算した)を含有していた触媒前駆体から事前の還元によって得られた触媒を使用した。触媒前駆体の事前の還元は、純粋な水素雰囲気下で280℃の温度で20時間行った。
【0217】
水を使用せず、78gのアンモニアを使用した。最終温度は、200℃であった。
【0218】
ガスクロマトグラフィー分析により以下の組成:
エチレンジアミン:5%;1,2−プロピレンジアミン:30%;ピペラジン:2%;2−メチルピペラジン:10%;2,6−ジメチルピペラジン:15%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:4%;1,2,3−トリアミノプロパン:0%
が生じた。グリセリン転化率は、約83%であった。
【0219】
実施例11〜16:
一般的な作業規定:
高圧オートクレーブに、0.5gの粉末状の触媒、4.8gのグリセリン(Riedel−de−Haen社製のグリセリンpuriss.99.0−101.0%(医薬用品質(欧州薬局方)))及び6.5gの水を入れた。反応器を、不活性化させ、アンモニアを添加した。不活性ガスを水素と交換し、引き続き水素圧50バールに加圧した。撹拌しながら該反応器を2時間以内で250℃へと加熱し、前記温度に達した後に、圧力を水素の300バールへの加圧によって高めた。圧力を、全反応時間の間に一定に前記値で保持した。24時間の反応時間後に、反応器を室温に冷却し、そして室温でゆっくりと減圧した。脱ガスされた反応器内容物を分析した。化合物の含有率を、ガスクロマトグラフィー(条件:キャピラリーカラムRTX5 Amin 30m、フィルム厚1.5マイクロメートル、直径0.32mm、方法:5分間60℃、次いで7℃/分で280℃に加熱、そして280℃で20分間加熱)によって面積パーセント(F%)として出した。この場合に、面積パーセントは、水素シグナルを除いた測定されたシグナルの下の全面積を指す。示されたグリセリン転化率は、反応の開始前と反応の終わりで出された面積パーセントを指す。
【0220】
実施例11:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒として、触媒活性物質が水素での還元前に、13質量%のCu(CuOとして計算して)、28質量%のNi(NiOとして計算して)、28質量%のCo(CoOとして計算して)及び31質量%のZr(ZrO2として計算して)を含有していた触媒前駆体から事前の還元によって得られた触媒を使用した。触媒前駆体の事前の還元は、純粋な水素雰囲気下で280℃の温度で20時間行った。
【0221】
ガスクロマトグラフィー分析によって以下の組成:
メチルアミン:4%;エチルアミン:9%;イソプロピルアミン:5%;n−プロピルアミン:6%;ピペラジン:3%;2−メチルピペラジン:9%;1−アミノプロパン−2−オール及び2−アミノ−1−オール:3%;1,2−プロパンジアミン:8%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:5%
が生じた。グリセリン転化率は、約100%であった。
【0222】
実施例12:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒として、触媒活性物質がLiCoO2からなっていた触媒前駆体から事前の還元によって得られた触媒を使用した。触媒前駆体の事前の還元は、純粋な水素雰囲気下で300℃の温度で20時間行った。
【0223】
ガスクロマトグラフィー分析によって以下の組成:
メチルアミン:0%;エチルアミン:1%;イソプロピルアミン:1%;n−プロピルアミン:1%;ピペラジン:2%;2−メチルピペラジン:17%;1−アミノプロパン−2−オール及び2−アミノ−1−オール:4%;1,2−プロパンジアミン:6%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:1%
が生じた。グリセリン転化率は、約90%であった。
【0224】
実施例13:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒として、触媒活性物質がRuO(OH)xからなっからなっていた触媒前駆体から事前の還元によって得られた触媒を使用した。ガスクロマトグラフィー分析によって以下の組成:
メチルアミン:10%;エチルアミン:16%;イソプロピルアミン:12%;n−プロピルアミン:16%;ピペラジン:0%;2−メチルピペラジン:0%;1−アミノプロパン−2−オール及び2−アミノ−1−オール:0%;1,2−プロパンジアミン:0%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:0%
が生じた。グリセリン転化率は、約100%であった。
【0225】
実施例14:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒として、活性炭上に5質量%のイリジウムを含有する触媒を使用した。
【0226】
ガスクロマトグラフィー分析によって以下の組成:
メチルアミン:0%;エチルアミン:0%;イソプロピルアミン:0%;n−プロピルアミン:0%;ピペラジン:2%;2−メチルピペラジン:6%;1−アミノプロパン−2−オール及び2−アミノ−1−オール:15%;1,2−プロパンジアミン:2%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:10%
が生じた。グリセリン転化率は、約100%であった。
【0227】
実施例15:
その製造は、一般的な作業規定に記載されるようにして行った。触媒として、活性炭上に5質量%のロジウムを含有する触媒を使用した。
【0228】
ガスクロマトグラフィー分析によって以下の組成:
メチルアミン:4%;エチルアミン:14%;イソプロピルアミン:20%;n−プロピルアミン:27%;ピペラジン:0%;2−メチルピペラジン:0%;1−アミノプロパン−2−オール及び2−アミノ−1−オール:0%;1,2−プロパンジアミン:0%;1,2−ジアミノプロパン−3−オール:0%
が生じた。グリセリン転化率は、約100%であった。
【0229】
実施例16〜29:
一般的な作業規定:
1リットルの触媒前駆体を、1,2−管形反応器中に、それぞれ100mlのV2A型の6mmの直径を有するスチールリングの間に充填した。触媒前駆体として、触媒活性物質が、50質量%のNi(NiOとして計算して)、18質量%のCu(CuOとして計算して)、2質量%のMo(MoO3として計算して)及び30質量%のZr(ZrO2として計算して)を含有していた触媒前駆体を使用した。該触媒前駆体を、280℃の温度及び200Nl/h(Nl:標準リットル;h:時間)の水素供給量で12時間加熱し、引き続き200Nl/hの水素供給で280℃で24時間還元させた。連続的に、グリセリン(Cognis社の99.8%の医薬品質)、アンモニア及び水素を、第1表に示される量でトリクル方式で反応器に導通させた。
【0230】
反応器圧力は、200バールであった。反応器出口での伝熱油の温度は、第1表に示されている。
【0231】
ガスクロマトグラフィーによって分離されたピペラジン誘導体の構造を、質量分析法によって確認した:
2−アミノメチルピペラジン

【0232】
2−アミノメチル−5−メチル−ピペラジン

【0233】
2−アミノメチル−5−メチル−ピペラジン

【0234】
2−アミノメチル−6−メチル−ピペラジン

【0235】
2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン

【0236】
実施例29からの反応器排出物5080gを、50%の苛性ソーダ液で脱水した。苛性ソーダ液と反応器排出物との容量比は、1:1であった。水相と有機相への分離を行った。グリセリンを、水相と一緒に分離した。有機相(3351g)を蒸留した。塔として、直径50mmを有する1mの塔であって、3mmのV2A型のネットリングで充填された塔を使用した。理論段数は、20であった。圧力を200ミリバールから1ミリバールへと低下させ、底部温度は86℃から194℃へと高めた。反応混合物を、異なるフラクションに分解した。底部残留物は、755gであった。
【0237】
移行する生成物の順序は、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン−3−オール、引き続き、アミノメチル−メチル−ピペラジンの種々の異性体であった。幾つかのフラクション(525g)の精留によって、180gの1,2,3−トリアミノプロパンが92%の純度で提供された。1,2,3−トリアミノプロパンの分子構造を、高解像度の質量分析法並びにNMRによって確認した。
【0238】
実施例30〜32:
一般的な作業規定:
4リットルの触媒前駆体を、5リットルの管形反応器中に、それぞれ500mlのV2A型の6mmの直径を有するスチールリングの間に充填した。触媒前駆体として、触媒活性物質が、13質量%のCu(CuOとして計算して)、28質量%のNi(NiOとして計算して)、28質量%のCo(CoOとして計算して)及び31質量%のZr(ZrO2として計算して)を含有していた触媒前駆体を使用した。該触媒前駆体を、200Nl/hの水素供給で280℃の温度に12時間加熱し、引き続き200Nl/hの水素供給で280℃で24時間還元させた。
【0239】
連続的に、グリセリン、アンモニア及び水素を、第2表に示される量でトリクル方式で上方から反応器に導通させた。反応器圧力は、200バールであった。反応器出口での伝熱油の温度は、第2表に示されている。
【0240】
化合物の含有率を、ガスクロマトグラフィー(条件:キャピラリーカラムRTX5 Amin 30m、フィルム厚1.5マイクロメートル、直径0.32mm、方法:5分間60℃、次いで7℃/分で280℃に加熱、そして280℃で20分間加熱)によって面積パーセント(F%)として出した。この場合に、面積パーセントは、水素シグナルを除いた測定されたシグナルの下の全面積を指す。
【0241】
示されたグリセリン転化率は、反応の開始前と反応の終わりで出された面積パーセントを指し、それは同様に第2表に示されている。
【0242】
実施例32からの排出物の一部を、塔(直径50mmを有する1mの塔であって、3mmのV2A型のネットリングで充填された塔であり、その理論段数は20であった)を有する蒸留装置中で10時間にわたり120℃の底部温度及び常圧で還流下に沸騰させた。その際、アンモニアは、20ppmの残留含有率にまで減損された。該混合物の含水率は23%であった(カール・フィッシャー滴定)。アミン価は、通常の誘導体化法に従って滴定的に測定した。第一級アミン価は、228mg KOH/gであり、第二級アミン価は、317mg KOH/gであり、かつ第三級アミン価は、16mg KOH/gであった。それは、561mg KOH/gの全アミン価に相当する。該混合物は、セメント製造における添加剤として使用された。
【0243】
【表1】

【0244】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンと、水素及びアンモニア、第一級アミン及び第二級アミンの群から選択されるアミノ化剤とを、触媒の存在下で、100℃〜400℃の温度及び0.01〜40MPa(0.1〜400バール)の圧力で反応させることによってアミンを製造する方法。
【請求項2】
グリセリンが、再生原料を基礎とするグリセリンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒が、元素の周期律表の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の金属の1種もしくは複数種の金属又は1種もしくは複数種の酸素含有化合物を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
触媒が、NiもしくはNiO及び/又はCoもしくはCoOを含有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、CuもしくはCuOを含有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
触媒が、元素の周期律表の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の第5周期の1種もしくは複数種の金属を含有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
触媒が、Ni及び/又はCoを含有するラネーによるスポンジ触媒であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
触媒が、Irを含有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
グリセリン転化率が、30〜80%の範囲にあることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
触媒負荷量が、1リットルの触媒(非タッピング容量)及び1時間当たり0.1〜1.2kgのグリセリンの範囲であり、かつ温度が、150〜220℃の範囲であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
グリセリン転化率が、80〜100%の範囲にあることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
触媒負荷量が、1リットルの触媒(非タッピング容量)及び1時間当たり0.05〜0.6kgのグリセリンの範囲であり、かつ温度が、220〜350℃の範囲であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
温度が、150〜220℃の範囲にあることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
反応排出物を、蒸留により後処理することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
反応排出物を、蒸留による後処理前に脱水することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
反応排出物を、アミノ化剤の蒸留による分離の後に、1000ppm未満のアミノ化剤含有率を有することを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
アミノ化剤としてアンモニアを使用することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項16又は17により得られる反応排出物を、セメント製造もしくはコンクリート製造における添加剤として用いる使用。
【請求項19】
請求項17により得られる1,2,3−トリアミノプロパン。
【請求項20】
請求項17に記載により得られる2−アミノメチル−6−メチルピペラジン。
【請求項21】
請求項17により得られる2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン。
【請求項22】
請求項17により得られる2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジン。
【請求項23】
メチルアミン、エチルアミン、i−プロピルアミン及びn−プロピルアミンからなる群から選択される1種もしくは複数種のモノアミン、及び/又は
エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン及び1,3−プロパンジアミンからなる群から選択される1種もしくは複数種のジアミン、及び/又は
モノエタノールアミン、2−アミノプロパン−1−オール及び1−アミノプロパン−2−オールからなる群から選択される1種もしくは複数種のアルカノールアミン、及び/又は
1,2,3−トリアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、1,2−ジアミノプロパン−3−オール、1−アミノプロパンジオール及び2−アミノプロパンジオールからなる群から選択される1種もしくは複数種のグリセリンに類似の特殊アミン、及び/又は
ピペラジン、及び/又は
2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2−アミノメチル−5−メチルピペラジン及び2−アミノメチル−6−メチルピペラジンからなる群から選択される1種もしくは複数種のピペラジン誘導体
を含有する反応排出物が得られることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
反応排出物が、2−アミノ−プロパン−1−オール、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン−3−オール、2−アミノプロパンジオール、2−アミノメチル−6−メチル−ピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン及び2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジンからなる群から選択される少なくとも1種のアミンを含有することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
請求項17により得られるメチルアミン、エチルアミン、i−プロピルアミン及びn−プロピルアミンからなる群から選択されるモノアミン、又はエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン及び1,3−プロパンジアミンからなる群から選択されるジアミン、又はモノエタノールアミン、2−アミノプロパン−1−オール及び1−アミノプロパン−2−オールからなる群から選択されるアルカノールアミン、又は1,2,3−トリアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、1,2−ジアミノプロパン−3−オール、1−アミノプロパンジオール及び2−アミノプロパンジオールからなる群から選択されるグリセリン類似の特殊のアミン、又はピペラジン、又は2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2,6−ビス(アミノメチル)ピペラジン、2−アミノメチル−5−メチルピペラジン及び2−アミノメチル−6−メチルピペラジンからなる群から選択されるピペラジン誘導体を、界面活性剤、薬剤及び植物保護剤、安定剤、光保護剤、ポリマーの製造のための合成構成単位として、エポキシ樹脂のための硬化剤として、ポリウレタンのための触媒として、第四級アンモニウム化合物、可塑剤、腐食防止剤、合成樹脂、イオン交換体、テキスタイル助剤、染料、加硫促進剤及び/又は乳化剤の製造のための中間体として用いる使用。

【公表番号】特表2010−536913(P2010−536913A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522307(P2010−522307)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060741
【国際公開番号】WO2009/027248
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】