説明

グリセリンの処理方法

【課題】グリセリン、例えば、バイオディーゼル燃料を製造する工程から副生するグリセリンを有効に処理する方法を提供すること。
【解決手段】グリセリン、消化発酵汚泥、および、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を嫌気条件下で発酵処理することを含む、グリセリンの処理方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリンの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気発酵菌叢の1種である消化発酵汚泥は、既存のメタン発酵プラントの発酵廃液である。嫌気発酵菌叢では、大別すると、加水分解菌、酸生成菌、メタン生成菌が強固な共生関係を築いており、この共生関係のなかでは、有用な中間物質が生成されている。そのため、嫌気発酵を人為的に制御することにより、多種多様な資源・エネルギーを回収できる可能性がある。
【0003】
嫌気発酵の主流の1つはメタン発酵である。メタン発酵では、多糖類、タンパク質、脂質から構成されるバイオマスが加水分解され、複数のステップを経て最終的に酢酸、二酸化炭素からメタンが生成される。このとき、水素などの有用な中間物質が生成されるが、微生物間の複雑な共生関係に阻まれ、途中のステップから有用物質を取り出すことは困難である。
【0004】
一方、石油の代替燃料の一つとして、廃食用油を原料とするバイオディーゼル燃料が注目されている。しかし、バイオディーゼル燃料製造時にアルカリ触媒を用いるため、強アルカリ性グリセリンが10%程度副生する。このグリセリンの処理には、中和、脱塩、蒸留、洗浄などのコストがかかるため、廃グリセリンの処理が問題となっている。
【0005】
例えば、特許文献1には、廃グリセリンを、嫌気性発酵条件下で動物糞を主とする畜産関連廃棄物と混合し、水素を生成する方法が開示されている。また、特許文献2には、グリセリンを含有する有機性廃棄物に、固形物含有有機性廃棄物を混合してメタン発酵させる方法が開示されている。
【0006】
このように、従来の方法では、グリセリンに固形物を含有する廃棄物を混合して処理を行う場合が多く、固形物を含有する廃棄物を必要とすることがある。また、メタンや水素を得た後に、残存する固形物等を処理する必要がある場合もある。
【0007】
したがって、グリセリンを単独で処理する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−98239号公報
【特許文献2】特開2005−279411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、グリセリン、例えば、バイオディーゼル燃料を製造する工程から副生するグリセリンを有効に処理する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、グリセリンを消化発酵汚泥を用いて嫌気発酵処理する方法について鋭意研究の結果、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖をグリセリンと消化発酵汚泥とを含む混合液に添加することによって有効にグリセリンが処理できることを見いだしたものである。
【0011】
即ち本発明は、グリセリン、消化発酵汚泥、および、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を嫌気条件下で発酵処理することを含む、グリセリンの処理方法を提供する。
【0012】
本発明において、グリセリンの濃度は、好ましくは混合液中4〜8(v/v)%であり、さらに好ましくは、混合液中6(v/v)%である。また、糖濃度は、好ましくは、混合液中0.3〜30ppmであり、さらに好ましくは0.3〜3ppmである。
【0013】
本発明において、グリセリンおよび消化発酵汚泥に対して、グルコース、ガラクトースおよびマンノースからなる群から選択される1種以上の糖を混合すると、発酵処理により気相に水素が生成する。一方、グリセリンおよび消化発酵汚泥に対して、アラビノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を混合すると、発酵処理により気相にメタンが生成する。
【0014】
ここで、「水素が生成する」とは同時にメタン発生が起こることを排除するものではなく、「メタンが生成する」とは同様に同時に水素発生が起こることを排除するものではない。
【0015】
本発明の方法によると、発酵処理により液相に1,3−プロパンジオールが生成する。
【0016】
さらに本発明は、グリセリン、消化発酵汚泥、および、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を嫌気条件下で発酵処理することを含む、グリセリンの処理方法において、糖の種類を変化させることにより、気相中のメタン発生量と水素発生量とを制御する方法を提供する。
【0017】
本発明において用いるグリセリンはアルカリ性であってもよく、グリセリンはバイオディーゼル燃料の製造時に副生する強アルカリ性廃グリセリンであってもよい。
【0018】
さらに本発明のグリセリンの処理方法は、連続プロセスにて発酵処理を行うことも可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によると、グリセリンを固形物を含有する廃棄物を必要とすることなく処理することができ、残存する固形物等を処理する必要がない。また、グリセリンの処理の結果、水素、メタン、1,3−プロパンジオール等の工業上有用な物質が生産される。さらに、添加する糖の種類を調節することによって、グリセリンからの水素またはメタンの生産を調節することが可能である。また、工業的に副生する廃グリセリンを簡便な方法で処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施例において用いた実験容器を模式的に示す。
【図2】図2は、消化発酵汚泥およびグリセリンのみを含む混合液を嫌気発酵させた場合のグリセリンの消費を示す。
【図3】図3は、消化発酵汚泥およびグリセリンに加えて、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸を等モルで混合して含む糖混合水溶液を含む混合液を嫌気発酵させた場合に生じる液相成分および気相成分の分析結果を示す。
【図4】図4は、消化発酵汚泥およびグリセリンに加えて、グルコース、ガラクトースまたはマンノースのいずれかを含む混合液を嫌気発酵させた場合に生じる気相成分の分析結果を示す。
【図5】図5は、消化発酵汚泥およびグリセリンに加えて、ガラクツロン酸またはアラビノースのいずれかを含む混合液を嫌気発酵させた場合に生じる気相成分の分析結果を示す。
【図6】図6は、本発明のグリセリンの処理方法を連続的に行う場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、グリセリン、消化発酵汚泥、および、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を嫌気条件下で発酵処理することを含む、グリセリンの処理方法を提供する。
【0022】
すなわち、実施例に示すように、グリセリンと消化発酵汚泥のみからなる発酵液を嫌気条件下で発酵処理に供した場合、グリセリンは分解されなかったが、グリセリン、消化発酵汚泥に加えて、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を添加することにより、グリセリンが嫌気発酵により分解処理されることが判明した。
【0023】
本明細書および特許請求の範囲において、「グリセリン」とは、グリセリンを主成分として含む液であれば特に限定されず、市販のグリセリン(グリセロール)またはその水溶液であってもよいし、グリセリンを主に含む産業廃液であってもよい。グリセリンの濃度について言及する場合は、本発明において用いる混合液中の、混合液全体積あたりの、化学物質としてのグリセリンの体積、即ち体積/体積(v/v)濃度を用いる。「グリセリン」のpHも特に限定されず、中性のものでもアルカリ性のものでもよい。例えば、グリセリンは、バイオディーゼル燃料の製造時に副生する強アルカリ性廃グリセリンであってもよい。
【0024】
本発明の方法に用いるグリセリンの濃度は、混合液中4〜8(v/v)%であるのが好ましく、より好ましくは混合液中6(v/v)%である。
【0025】
本明細書および特許請求の範囲において、「消化発酵汚泥」とは、既存のメタン発酵プラントの発酵廃液であれば特に限定されず、いずれの由来のものであってもよい。例えば、消化発酵汚泥としては、京都府八木町のメタン発酵プラントの発酵排液を、液肥の名称で市販されているものを用いることができる。消化発酵汚泥を使用する場合はあらかじめ、内生の基質を消費させてメタン発生を沈静化(枯渇化)させ、消化発酵汚泥を初期化することにより、本発明の方法に使用可能か確認することができる。消化発酵汚泥が初期化されたかどうか、すなわち、内生の基質が完全に消費されたかどうかは、例えば、酢酸をモデル基質として消化発酵汚泥に添加し、理論量のメタンおよび二酸化炭素が発生することを確認することにより判定することができる。
【0026】
消化発酵汚泥の使用量については、本発明の方法は通常の嫌気発酵槽へ極微量の糖を投与するだけで実施可能であるので、実験室でのリアクター容積(mlオーダー)から実プロセス(m3オーダー)容積まで適用可能である。
【0027】
本発明の方法において用いる発酵槽は特に限定されない。本発明の方法は通常の嫌気発酵槽へ極微量の中性糖を投与するだけで実施可能であるので、発酵槽は、消化発酵汚泥、廃グリセリンに耐えうる材質(実験室ではガラス、プラスチック容器、実プロセスではステンレス槽)であれば、新たに設備を交換する必要がない。また、発酵槽の容量が非常に大きくなっても(1000 m3オーダー)、投与する糖はその100分の1以下でよいので、既存の嫌気発酵槽に対する特別な構造変化を導入させるものではない。
【0028】
本発明の方法においては、グリセリンおよび消化発酵汚泥に加えて、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を用いる。かかる「混合液」は、グリセリン、消化発酵汚泥および上記の糖の他に、混入しうる他の物質を含んでいてもよく、pHは7程度のものが好ましい。
【0029】
本発明の方法によると、上記のグリセリンおよび消化発酵汚泥に加えて、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を、嫌気条件下で発酵処理する。ここで、「嫌気条件」とは、酸素が実質的に存在しない条件をいい、例えば、発酵槽内の空気を窒素および/または二酸化炭素により置換することにより作り出される。
【0030】
本発明において、「発酵処理」とは、上記のグリセリンおよび消化発酵汚泥に加えて、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を、嫌気条件下で培養することをいい、培養条件としては、特に限定されないが、培養温度37℃、培養期間7〜14日を用いることができる。培養は、静置培養であってもよいし、振盪培養であってもよい。
【0031】
本発明によると、グリセリンおよび消化発酵汚泥に加えてグルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を嫌気条件下で発酵処理することにより、グリセリンが有効に分解処理される。
【0032】
本発明の方法に用いる糖濃度は、混合液中0.3〜30ppmであるのが好ましく、より好ましくは混合液中0.3〜3ppmである。本発明によると、かかる微量の糖が、グリセリンの発酵促進因子として作用する。
【0033】
本発明の方法において、糖として、グルコース、ガラクトースおよびマンノースからなる群から選択される1種以上を、例えば、3ppmの濃度にて用いると、発酵処理により気相に水素が生成する。一方、糖として、アラビノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上を、例えば、3ppmの濃度にて用いると、発酵処理により気相にメタンが生成する。
【0034】
また、本発明の方法によると用いる糖の種類に拘わらず、発酵処理により液相に1,3−プロパンジオールが生成する。
【0035】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「水素が生成する」、「メタンが生成する」とは、水素のみまたはメタンのみが生成することを意味するのではなく、水素とメタンが共に生成することを排除するものではない。「水素が生成する」という場合は、メタン発酵よりも水素発酵が優先して起こることをいい、「メタンが生成する」という場合は、水素発酵よりもメタン発酵が優先して起こることをいう。また、「1,3−プロパンジオールが生成する」という表現も、液相に1,3−プロパンジオールのみが生成することを意味するのではなく、その他の生成物、例えば、有機酸が生成することを排除するものではない。
【0036】
本発明によると、グリセリン、消化発酵汚泥およびグルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を嫌気条件下で発酵処理することを含む、グリセリンから、水素および/またはメタン、および、1,3−プロパンジオールを生産する方法が提供される。
【0037】
かかる方法により生産される、水素はクリーンな燃料として有用であり、メタンはバイオ燃料として有用である。一方、1,3−プロパンジオールは、ポリエステルの原料であるポリトリメチレンテレフタレートの原料などとして工業的に有用である。気相に生じた水素は、水素分離膜、例えば、住友精化株式会社製のH2-PSAを用いることにより気相から分離することができる。
【0038】
また、本発明によると、上記の糖の種類を変化させることにより、気相中のメタン発生量と水素発生量とを制御することが可能である。例えば、上記のように、糖としてグルコース、ガラクトースおよびマンノースからなる群から選択される1種以上を用いると、水素が生成し、アラビノースおよびガラクツロン酸から選択される1種以上を用いると、メタンが生成する傾向がある。
【0039】
なお、本発明の方法はバッチ式方法で行ってもよいが、連続プロセスにて発酵処理を行うことも可能である。バッチ式方法については以下の実施例に記載のように行うことができる。連続プロセスについては、例えば、図6に模式的に示すようにして行うことができる。
【0040】
図6を参照すると、まず、第1仕込みにおいてグリセリン、消化発酵汚泥およびグルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を仕込み、第1発酵過程において、嫌気条件下で、例えば37℃で、4日間発酵処理する。次いで、第1発酵過程後に得られた混合液を遠心分離し、上清を回収する(回収過程)。次に、消化発酵汚泥のみを遠心分離して得た上清をオートクレーブにより滅菌した液を、回収過程からの遠心分離後の沈殿に加えて第2発酵過程において嫌気条件下で例えば37℃で、8日間発酵処理することにより、菌を初期化する。次いで、第2発酵過程後に得られた混合液を遠心分離し、上清を回収する。遠心分離後の沈殿に対して、第2仕込みにおいて、第1仕込みと同様に、グリセリン、消化発酵汚泥およびグルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を仕込み、第1発酵過程と同様に第3発酵過程に供する。以下同様にして本発明の方法を連続プロセスにより行うことができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例によって本発明をさらに説明するが本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]
図1に示す実験容器を用いて以下の実験を行った。実験容器は、容量22ml、ヘッドスペースが17mlであり、酸素を透過しないブチルゴムで密栓したものであり、気相成分を窒素100%のガスで置換した。発酵産物のガスをガスクロマトグラフ(Shimadzu社製GC-8A)で測定した。その際、窒素を内部標準として発酵ガス量を定量した。
【0043】
実験容器にグリセリン溶液1ml、消化発酵汚泥4mlを投入し、計5mlの溶液中でグリセリン終濃度が6.0(v/v)%となるように調整した。消化発酵汚泥としては、京都府八木町のメタン発酵プラントの発酵排液を、液肥の名称で市販されているものを購入した発酵液を用いた。なお、購入した発酵液は、2、3ヶ月静置して、内生のメタン生成を鎮静化して初期化した後実験に使用した。なお、逐次、モデル基質(酢酸)を用いて盲検を実施し、初期化状態を確認して実験に用いた。
【0044】
このように消化発酵汚泥にグリセリンを6.0(v/v)の濃度となるように添加した溶液を37℃で8日間嫌気状態で発酵させた。
【0045】
結果を図2に示す。図2から理解されるように、糖を添加せず、グリセリンと消化発酵汚泥だけからなる混合液を嫌気発酵させた場合、グリセリンは分解されなかった。
【0046】
[実施例2]
実施例1と同様の実験容器を用い、グリセリン溶液1ml、消化発酵汚泥4mlを投入し、計5mlの溶液中でグリセリン終濃度が6.0(v/v)%となるように調整した混合液に対して、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノース、およびガラクツロン酸を等モルで混合した糖混合水溶液をそれぞれの終濃度が発酵容器内で3ppmとなるように添加した。
【0047】
このように消化発酵汚泥にグリセリンを6.0(v/v)の濃度、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノース、およびガラクツロン酸を等モルで混合した糖混合水溶液をそれぞれの終濃度が3ppmとなるように添加した溶液を、37℃で9日間嫌気状態で発酵させた。
【0048】
結果を図3に示す。図3から理解されるように、消化発酵汚泥、グリセリンおよび糖混合液を含む混合液を嫌気発酵させると、液相中のグリセリンが消費され、1,3−プロパンジオールおよび有機酸が液相に生成した。また、気相には水素およびメタンが生成した。このように、微量の糖混合物の添加によりグリセリンの分解が促進され、培養7日目にはグリセリン分解率は82%に達した。また、培養9日目には、1,3−プロパンジオールの収率は0.18kg/kgグリセリンであった。
【0049】
実施例2により、糖類が嫌気発酵の制御因子として関与していることが示唆された。
【0050】
[実施例3]
実施例1と同様の実験容器を用い、グリセリン溶液1ml、消化発酵汚泥4mlを投入し、計5mlの溶液中でグリセリン終濃度が6.0(v/v)%となるように調整した混合液に対して、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノース、またはガラクツロン酸を単独で終濃度が発酵容器内で3ppmとなるように添加した。この溶液を37℃で15日間嫌気状態で発酵させた。
【0051】
結果を図4および図5に示す。図4から理解されるように、消化発酵汚泥、グリセリンに加えて、グルコース、ガラクトースまたはマンノースを添加した混合液を嫌気発酵させると、メタン発酵の他に水素発酵も独立して発現することが判明した。一方、図5から理解されるように、消化発酵汚泥、グリセリンに加えて、ガラクツロン酸またはアラビノースを添加した混合液を嫌気発酵させると、ほぼメタン生成のみが促進された。このように、添加する糖の種類によって、グリセリンが消費され、気相に水素またはメタンが生成することが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン、消化発酵汚泥、および、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上の糖を含む混合液を嫌気条件下で発酵処理することを含む、グリセリンの処理方法。
【請求項2】
グリセリンの濃度が、混合液中4〜8(v/v)%である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
糖濃度が、混合液中0.3〜30ppmである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
糖が、グルコース、ガラクトースおよびマンノースからなる群から選択される1種以上であり、発酵処理により気相に水素が生成する請求項1から3いずれかに記載の方法。
【請求項5】
糖が、アラビノースおよびガラクツロン酸からなる群から選択される1種以上であり、発酵処理により気相にメタンが生成する請求項1から3いずれかに記載の方法。
【請求項6】
発酵処理により液相に1,3−プロパンジオールが生成する、請求項1〜5いずれかに記載の方法。
【請求項7】
糖の種類を変化させることにより、気相中のメタン発生量と水素発生量とを制御する、請求項1〜6いずれかに記載の方法。
【請求項8】
グリセリンがアルカリ性である請求項1〜7いずれかに記載の方法。
【請求項9】
グリセリンがバイオディーゼル燃料の製造時に副生する強アルカリ性廃グリセリンである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
連続プロセスにて発酵処理を行う請求項1〜9いずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−39975(P2012−39975A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186025(P2010−186025)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】