説明

グリセリンの脱水反応によってアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造するための触媒および方法

【課題】新規な脱水触媒を用いたアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する方法の提供。
【解決手段】多孔質チタニア担体に沈着させた少なくとも一つのヘテロポリ酸から成る触媒組成物。ヘテロポリ酸のプロトンが元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つのカチオンによって部分的に交換された少なくとも一種のヘテロポリ酸が、多孔質チタニア担体上に堆積されている触媒組成物。元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の中から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの溶液をチタニア担体に含浸し、得られた固体混合物を乾燥し、か焼し、必要な場合には、得られた固体混合物をヘテロポリ酸の溶液で第2回明細書の含浸し、乾燥し、か焼する触媒組成物の製造方法。上記触媒の存在下で実行されるグリセリンの脱水によるアクロレインおよびアクリル酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な脱水触媒、特に気相または液相のグリセリンの接触脱水によってアクロレインまたはアクリル酸を製造するための脱水触媒と、この触媒の製造方法と、この触媒を使用してアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
グリセリンは化石資源に依らないバイオ燃料をバイオ資源から生産するときに副産物として大量に得られ、グリセリンの新しい用途が開発されている。
【0003】
本出願人は、特許文献1(PCT/JP2009/057818号)および特許文献2(PCT/JP2009/057819)で、ヘテロポリ酸のプロトンの少なくとも一部を元素周期律表の第1族〜第16族の元素の中から選択された少なくとも一つのカチオンで少なくとも部分的に交換した化合物を主とする改良された脱水触媒を提案した。
【0004】
特許文献3(国際特許第WO2007−058221号公報)には固体酸触媒として使われるヘテロポリ酸の存在下で気相でのグリセリンの脱水反応によってアクロレインを生産する方法が開示されている。ヘテロポリ酸はタングステン、クロム、モリブデンのような第6族元素である。これらのヘテロポリ酸は二元細孔を有する酸化珪素担体に担持され、アクロレイン収率は86%である。このグリセリンの脱水反応は酸化反応気体なしで行なわれ、キャリヤーガスとして窒素流を使用するため、カーボンの沈着が著しく増加し、触媒の安定性、活性および選択性が時間の経過とともに劣化する。
【0005】
非特許文献1(Tsukuda et al.)、非特許文献2(Chai et al.)および非特許文献3(Chai et al.)にはシリカまたはジルコニアに担持したヘテロポリ酸がグリセリンの脱水触媒として有効であることが記載されている。
【0006】
しかし、工業的スケールで使用可能な高性能の触媒はない。
【0007】
特許文献3(国際特許第WO2007−058221号公報)には第6族元素(Cr、Mo、W)を含む触媒、特にAl、Si、TiまたはZrを含む担体に支持されていてもよいヘテロポリ酸から成る触媒を使用して多価アルコールを脱水する方法が記載されている。実施例はPW/Al23の場合のアクロレイン収率は70%、PW/ZrO2の場合は70%、SiW/SiO2の場合は87%であることを示しているが、変換率が8時間で100%から70%まで減少している。
【0008】
特許文献4(米国特許第2009054538号明細書)にはシリカ担体に支持したリンタングステン酸またはリンモリブデン酸から成る触媒組成物が開示されているが、この触媒を得られるアクロレインの収率は71%以上にはならない。
【0009】
特許文献5(米国特許第5,919,725号明細書)はシリカ、ジルコニアおよびチタニアの多孔質担体上に沈着させたヘテロポリ塩およびヘテロポリ酸塩から成る触媒が開示されている。しかし、この触媒は芳香族のアルキル化、例えばオレフィンを用いたフェノールのアルキル化で使用され、グリセリンの脱水に関する記載はない。
【0010】
特許文献6(米国特許第4,983,565号明細書)にはタングステン酸珪酸(tungstosilicic acid)またはモリブデン酸珪酸(molybdosilicic acid)またはこれらの塩から成る水溶液をチタニアのペレットに含浸し、さらに乾燥およびか焼して触媒組成物を製造する方法が記載されている。好ましい実施例では、この触媒組成物は予め形成したペレットを例えばタングステン酸珪酸またはモリブデン酸珪酸の水溶液中にチタニアペレットを浸して製造されるが、この特許には本発明で定義されるヘテロポリ酸のプロトンを元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つのカチオンで交換するという特徴は記載がない。さらに、この触媒は直鎖ポリエチレンポリアミンの製造に用いられ、グリセリンの脱水に関する言及はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】PCT/JP2009/057818
【特許文献2】PCT/JP2009/057819
【特許文献3】国際特許第WO2007−058221号公報
【特許文献4】米国特許第2009054538号明細書(BATTELLE)
【特許文献5】米国特許第5,919,725号明細書
【特許文献6】米国特許第4,983,565号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Tsukuda et al. "Production of acrolein from glycerol over silica-supported heteropoly acid" CATALYSIS COMMUNICATIONS, vol. 8, no. 9, 21 July 2007, pp 1349-1353
【非特許文献2】Chai et al., "Sustainable production of acrolein: gas phase dehydration of glycerol over 12-tungstophosphoric acid supported on ZrO2 and SiO2", GREEN CHEMISTRY, vol.10, 2008, pp.1087-1093,
【非特許文献3】Chai et al., "Sustainable production of acrolein: preparation and characterization of zirconia-supported 12-tungstophosphoric acid catalyst for gas phase dehydration of glycerol", APPLIED CATALYSIS A: GENERAL, vol. 353, 2009, pp.213-222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、新規な脱水触媒、特にグリセリンを気相または液相で接触脱水してアクロレインまたはアクリル酸を製造するための脱水触媒を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記触媒の製造方法と、その触媒を用いてアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する方法とを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、グリセリンすなわち石油に由来しない材料からクロレインおよびアクリル酸を高収率で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の対象は、多孔質チタニア担体上に担持させた少なくとも一種のヘテロポリ酸から成る触媒組成物にある。
【0015】
本発明の好ましい実施例では、本発明触媒組成物はヘテロポリ酸のプロトンが少なくとも部分的に元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つのカチオンで交換された少なくとも一種のヘテロポリ酸が多孔質チタニア担体上に沈着したものである。
【0016】
本発明の他の対象は、チタニア担体にヘテロポリ酸の溶液を含浸させ、乾燥し、か焼し、必要に応じて、得られた固体混合物に対して元素周期律表の第1族〜第族16に属する元素から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの溶液を第2回目の含浸を行い、乾燥し、か焼することから成る触媒組成物の製造方法にある。
【0017】
また、本発明触媒組成物は、チタニア担体を元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの溶液で含浸し、得られた固体混合物を乾燥し、か焼し、得られた固体混合物をヘテロポリ酸の溶液で第2回目の含浸を行い、得られた固体混合物を乾燥し、か焼する段階で製造できる。その変形例では、含浸とか焼の操作を各々使用することによって第1の含浸段階で2つ以上の異なる元素を含浸させることができる。また、本発明触媒組成物は含浸とか焼の複数のサイクルを有し、各含浸操作を元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素またはオニウムの溶液またはP、Si、W、Mo、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Tl、SnおよびPbの中から選択される一種以上の元素を含む溶液で行い、その少なくとも一つの含浸を酸前駆体を用いて実施する方法でも製造できる。
【0018】
本発明のさらに他の対象は、上記触媒の存在下でグリセリンの脱水を行ってアクロレインを製造する方法にある。
【0019】
本発明は下記の特徴(1)〜(21)を単独または組み合わせて有する:
(1) 多孔質チタニア担体が下記の式(I)で表される化合物での少なくとも部分的に被覆されている:
ab[X1cde]・nH2O (I)
(ここで、
Hは水素であり、
Aは水素を除く元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の中から選択される一つ以上のカチオンであり、
XはPまたはSiであり、
YはW、Mo、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Tl、SnおよびPbから成る群の中から選択される一つ以上の元素であり、
ZはW、Mo、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Tl、SnおよびPbから成る群の中から選択される一つ以上の元素であり、
a、b、c、dおよびnは下記の範囲を満たす数:
0≦a<9
0≦b≦9、好ましくは0<b≦9、
0<c≦12、
0≦d<12
0<c+d≦12、
n≧0
eは各元素の酸化度で決定まる数である)
(2) チタニア担体はルチルまたはアナターゼまたはアモルファスな酸化チタンから成る。
(3) チタニア担体の少なくとも80%はアナターゼから成る。
(4) チタニア担体は20〜120m2/gの比表面積を有する。
(5) カチオンは少なくとも一つのアルカリ金属陽イオンである。
(6) アルカリ金属はセシウムである。
(7) 上記化合物はW、MoおよびVから成る群の中から選択される少なくとも一つの元素を含む。
(8) 本発明の触媒組成物の製造方法では、一つの含浸を燐タングステン酸または燐タングステン酸塩の溶液で行う。
(9) 本発明の触媒組成物の製造方法では、一つの含浸をシリコタングステン酸またはシリコタングステン酸塩の溶液で行う。
(10) 本発明の触媒組成物の製造方法では、一つの含浸をセシウム塩の溶液で行う。
(11) 含浸は細孔容積含浸法または過剰溶液含浸法で実行される。
(12) 含浸を流動床または移動床で実行して、流動床型反応装置で使用可能な組成物を得る。
(13) か焼(カリシネーション)を空気、不活性ガスまたは酸素と不活性ガスの混合物の存在下またはH2のような還元性気体の存在下で実行する。
(14) か焼(カリシネーション)を150〜900℃の温度で、好ましくは350〜650℃の温度で0.5〜10時間実行する。
(15) 本発明触媒の存在下で実行されるグリセリンの脱水によるアクロレインの製造方法。
(16) 例えば国際特許第WO06/087083号公報または国際特許第WO06/114506号公報に記載の条件下で分子状酸素の存在下で実行されるアクロレインまたはアクリル酸の製造方法。
(17) 例えば国際特許第WO07/090990号および国際特許第WO07/090991号公報に記載のような従来法のプロピレンの酸化反応装置すなわち主としてクロレインを含み且つある程度の残留プロピレンを含むアクロレインまたはアクリル酸の製造方法で、この段階からの高温の気体を利用してプロピレンを含む気体の存在下でグリセリン脱水段階を実行する。
(18) アクロレインの製造方法をプレート熱交換器型反応装置または固定床式反応器または流動床型反応装置または循環流動床または移動床で行う。
(19) アクロレインをさらに酸化してアクリル酸を生産する。
(20) 上記のグリセリンの脱水によるアクロレインの製造方法の後に例えば国際特許第WO08/113927号公報に記載のアンモオキシデーションの第2段階を触媒の存在下で実行してアクロレインをアクリロニトリルにする。
(21) 触媒の存在下でのグリセリンの脱水によるアクロレインの製造方法が、例えば国際特許第WO08/087315号に記載の脱水段階から出た水および重質副生成物を分縮する中間の段階を有し、脱水段階からの水および重質副生成物を分縮する中間段階でグリセリンの脱水を0.1MPa〜0.5MPaの圧力下で実行する。
【発明の効果】
【0020】
本発明触媒は工業的に重要な下記の利点および効果を有する:
(1) アクロレインおよび/またはアクリル酸を高い収率で製造できる。
(2) 触媒の失活が少ない。
(3) 本発明触媒は支持体(または担体)を有しない触媒と比較して、より高い温度で再生できる。
(4) 本発明媒は非担持触媒の効果を維持する。すなわち、耐水性が著しく改善される。これに対して、材料として低濃度のグリセリンの水溶液を用いる過剰が水の存在下で実行される気相反応または反応媒体として水または低級アルコールを使用する液相での従来のヘテロポリ酸触媒はグリセリン脱水反応での触媒の劣化または失活が著しい。さらに、耐水性が改良されることによって、酸触媒を用いた時に観察される反応装置の腐食の問題も解決する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ヘテロポリ酸は公知のもので、ケギン型、ドーソン型およびアンダーソン型のような複数の構造を有し、一般に700〜8,500の高分子量を有する。ダイマーを形成する錯体もあり、それらダイマー錯体も本発明に含まれる。
【0022】
元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素はナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、プラチナ、銅、ニッケル、パラジウム、銀、金、亜鉛、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、錫、鉛、ビスマスおよびテルリウムにすることができる。ヘテロポリ酸のオニウム塩はアミン塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩にすることができる。
【0023】
モリブデンおよびタングステンのイオンは水中でオキソ酸を形成し、オキソ酸は重合してポリマーのポリオキソ酸(polyoxoacid)を形成する。この重合は同じ種類のオキソ酸だけでなく他の種類のオキソ酸とも起こる。ヘテロポリ酸は2種類以上のオキソ酸の縮合によって得られる多核構造を有するポリ酸である。中央のオキソ酸を形成する原子を「ヘテロ原子(hetero-atom)」とよび、重合で得られる上記中央オキソ酸を取り囲むオキソ酸を形成する原子を「ポリ原子(poly-atoms)」とよぶ。ヘテロ原子は珪素、リン、ヒ素、硫黄、鉄、コバルト、硼素、アルミニウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、セリウムおよびクロムにすることができる。これらの中でリンおよび珪素が好ましい。ポリ-原子はモリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブおよびタンタルにすることができる。これらの中でモリブデンおよびタングステンが好ましい。本発明のグリセリン脱水触媒を製造するのに使用されるヘテロポリ酸はタングスト燐酸、タングスト珪酸、ホスホモリブデン酸およびシリコモリブデン酸にすることができる。ヘテロポリ酸はリンまたは珪素から成るヘテロ原子を有する混合配位物(coordinate)にすることもでき、ポリ-原子はモリブデンとタングステンとの混合配位物またはタングステンとバナジウムの混合配位物またはバナジウムとモリブデンの混合配位物にすることができる。
【0024】
本発明の好ましい実施例では、本発明のグリセリン脱水触媒はヘテロポリ酸のプロトンの少なくとも一部をアルカリ金属の少なくとも一つのカチオンと交換した化合物から成る。
【0025】
グリセリンからアクロレインおよびアクリル酸を作るのに使われる本発明触媒組成物はW、MoおよびVから成る群の中から選択される少なくとも一つの元素を含むのが好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施例では、上記アルカリ金属はセシウムであるのが好ましく、ヘテロポリ酸のプロトンの少なくとも一部をセシウムで交換する。ヘテロポリ酸のプロトンの少なくとも一部をセシウムと交換し、ヘテロポリ酸の残りのプロトンの少なくとも一部を元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の中から選択される少なくとも一つのカチオンで少なくとも部分的に交換することができる。本発明のこのグリセリン脱水触媒組成物を使用するとアクロレインおよびアクリル酸をより高い収率で製造できる。ヘテロポリ酸に含まれるプロトンの一部をセシウムで交換することによって耐水性が増加し、その結果、本来は水に可溶性であるヘテロポリ酸と比較して、触媒寿命が改善される。
【0027】
交換するカチオンの無機質塩の水溶液の量は、加えるカチオンの電荷がヘテロポリアニオンの電荷に等しいかそれ以下となるように決定する。例えば、1+の電荷を有するカチオンを3-の電荷を有するヘテロポリアニオンに加えるときには、ヘテロポリアニオンに3当量以下のカチオンを加え、3+の電荷を有するカチオンに3-の電荷を有するヘテロポリアニオンに加える時にはヘテロポリアニオンの1当量以下のカチオンを加える。複数のカチオンを導入する時にはカチオンの全電荷がヘテロポリアニオンの電荷以下になるようにカチオンの量を決める。無機塩の水溶液の量またはプロトンと交換するカチオンの比率が過剰になると、触媒の活性が損なわれるか、アクロレインおよびアクリル酸の収率が低下するか、触媒寿命が短くなる。
【0028】
変形例では、本発明のグリセリン脱水触媒が、上記化合物の他に、元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の化合物をさらに含む。この元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の化合物は金属塩またはオニウム塩にすることができる。金属塩はテルリウム、白金、パラジウム、鉄、ジルコニウム、銅、セリウム、銀およびアルミニウムの塩にすることができる。オニウム塩はアミン塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩にすることができる。金属塩またはオニウム塩は金属またはオニウムの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、酸化物およびハロゲン化物のような材料から製造できるが、これらに限定されない。金属塩の比率は金属塩のまたはオニウム塩が上記化合物に対して0.0001〜60重量%、好ましくは0.001〜30重量%である。
【0029】
最も好ましいグリセリンの脱水触媒として、下記一般式(I)で表される組成物を多孔質チタニア上に沈着させたものを挙げることができる:
ab[X1cde]・nH2O (I)
(ここで、
Hは水素であり、
Aは水素を除く元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の中から選択される少なくとも一つのカチオンであり、
XはPまたはSiであり、
YはW、Mo、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Tl、SnおよびPbから成る群の中から選択される少なくとも一つの元素であり、
ZはW、Mo、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Tl、SnおよびPbから成る群の中から選択される少なくとも一つの元素であり、
a、b、c、dおよびnは下記の範囲を満たす数:
0≦a<9
0≦b≦9、好ましくは0<b≦9、
0<c≦12、
0≦d<12
0<c+d≦12、
n≧0
eは各元素の酸化度で決定まる正の数である)
【0030】
本発明では、上記化合物がチタニア担体または支持体上に沈着される(担持触媒)。本明細書では担体または支持体は同じ意味を有する。
【0031】
式(I)で表される上記化合物の量は担体の重量に対して5〜99.9重量%、好ましくは5〜90重量%である。
【0032】
上記触媒は任意の形状を有することができ、顆粒、粉末またはモノリスにすることができるが、気相反応の場合には触媒をモノリス、球、ペレット、円筒、中空円筒、棒状等にすることができ、必要に応じて成形助剤を加えることができ、補助剤を用いて触媒を担体と一緒に上記形状に成形することもできる。成形した触媒の寸法は例えば固定床用には1〜10mm、流動床用には1mm以下にする。
アクロレインを製造するための流動層式反応器の場合には、平均粒度分布が40〜300μmの間、好しくは60〜150μmの間にある粉末が好ましい。
【0033】
本発明触媒組成物は担体を元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの溶液とヘテロポリ酸の溶液とをこの順番または逆の順番で順次含浸させて製造することができる。また、本発明触媒は担体をヘテロポリ酸の溶液と元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの溶液で順次含浸して製造できる。各含浸後には固形物を下記のように乾燥しか焼することができる。含浸は細孔容積含浸(pore volume impregnation)法または過剰溶液含浸(excess solution impregnation)法の公知の方法で実行できる。
【0034】
また、触媒組成物をスプレー乾燥する噴霧乾燥法で製造することもできる。
【0035】
本明細書で「焼成(firing)」または「か焼(calcination)」という用語は同じ意味で使う。
【0036】
本発明触媒組成物は、予め成形されたペレットまたは多孔質チタニア担体を含浸して製造できる。例えば、チタニア担体を元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの水溶液で含浸する。次いで、得られた固体混合物を乾燥し、か焼する。本発明では、得られた固体混合物に対してヘテロポリ酸の溶液で第2回目の含浸をし、得られた固体混合物を乾燥し、か焼して目的触媒を得ることもできる。
【0037】
元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの溶液は金属またはオニウムのハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩または硫酸塩の水溶液にすることができる。
【0038】
あるいは、本発明触媒組成物はまず最初にチタニア担体にヘテロポリ酸の溶液を含浸して製造することができる。例えばヘテロポリ酸の水溶液をまず最初に製造する。ヘテロポリ酸の水溶液が製造されたら、吸着水および結晶水の形でヘテロポリ酸中に含まれる水の一部または全部を減圧または加熱乾燥下に除去するのが好ましい。次いで、得られた固体混合物を乾燥し、か焼する。得られた含浸済み担体に対して元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つの金属の溶液で第2回目の含浸を行い、乾燥およびか焼して目的触媒を得る。
【0039】
また、本発明触媒組成物を含浸とか焼のサイクルを複数回繰り返す方法で製造することもできる。この場合には、各含浸で元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの溶液か、P、Si、W、Mo、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Tl、Sn、Pbから成る群の中から選択される一つ以上の元素を含む溶液で含浸を行い、少なくとも一つの含浸は酸の前駆体で行う。変形例では最初にチタニア粉末にPWまたはCsを加え、それから乾燥およびか焼操作なしにCsまたはPWを連続的に加えることで本発明触媒組成物を製造することができる。
【0040】
含浸は室温(約20℃)で実行できるが、希望する場合には約100℃〜約150℃の高い温度を使うこともできる。この処理は好ましくは攪拌下にチタニア担体の気孔中に水溶液が通るに十分な約0.1〜約5時間連続して行うことができる。元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの水溶液の量はチタニア担体が完全に侵入できる量を使用しなければならない。
【0041】
含浸段階の終わりに処理済みチタニア担体から過剰な水溶液を蒸発させるか、乾燥器中で乾燥させて水溶液から除去することができる。
【0042】
本発明の触媒組成物の結合の正確な種類は完全には理解されていない。
【0043】
グリセリン脱水で使用される本発明触媒は無水物または水和物でもよい。すなわちか焼し、真空乾燥で前処理した後に使用することができるが、前処理なしに使用することもできる。
【0044】
か焼は一般に空気中または窒素、ヘリウムおよびアルゴンのような不活性ガス下または空気と不活性ガスの混合ガス下で行うが、還元ガス、例えば水素ガスまたは水素と不活性ガスの混合ガス下で、マッフル炉、ロータリーキルン、流動床炉等の炉中で実施できる。炉の種類は特に制限されない。か焼をグリセリンの脱水反応で使用する反応管中で実施することもできる。焼成温度は一般に150〜900℃、好ましくは200〜800℃、より好ましくは350〜650℃である。この焼成温度は各触媒に対してルーチン実験で決定できる。900℃以上の温度は避けなければならない。か焼は一般に0.5〜10時間続ける。
【0045】
本発明のグリセリンの脱水反応は気相または液相で実行できるが、気相が好ましい。気相反応は各種の反応装置、例えば固定床、流動床、循環流動床および移動床で実行できるが、固定床または流動床が好ましい。触媒の再生は反応装置外で行うことができる。触媒再生のための反応装置系から取り出した時には触媒を空気または酸素含有気体で燃やす。液相反応の場合には、液体反応用の固体触媒で一般的な反応装置を使うことができる。グリセリンの沸点(290℃)とアクロレインおよびアクリル酸の沸点との間に大きな違いがあるので、反応を比較的低温度で行い、アクロレインを連続的に外へ留出するのが好ましい。
【0046】
グリセリンの脱水によってアクロレインおよびアクリル酸を気相で製造するための反応温度は200℃〜450℃の温度にするのが好ましい。この温度が200℃未満ではグリセリンの重合および炭化のためと反応生成物がグリセリンの沸点より高くなるため、触媒寿命が短くなる。逆に温度が450℃を越えると、並発反応および逐次反応が増加分するためアクロレインおよびアクリル酸の選択性が低下する。従って、より好ましい反応温度は250℃〜350℃である。圧力は特に制限されないが、好ましくは5気圧以下、好ましくは3気圧以下にする。高圧下ではガス化させたグリセリンが再液化し、高圧力によってカーボンの沈着が促進され、触媒寿命が短くなる。
【0047】
材料ガスのフィード速度は空間速度GHSVで500〜10,000h-1であるのが好ましい。GHSVが500h-1未満になると逐次反応のために選択性か低下する。逆にGHSVが10,000h-1を越えると変換率が低下する。
【0048】
液相反応の反応温度は150〜350℃が好ましい。低温度下では変換率は改善されるが選択性が損なわれる。反応圧力は特に制限されないが、必要に応じて反応を3気圧〜70気圧の圧力条件下で実施することもできる。
【0049】
材料のグリセリンはグリセリン水溶液の形で簡単に利用できる。グリセリン水溶液の濃度は5重量%〜90重量%、好ましくは10重量%〜50重量%である。グリセリンの濃度が高過ぎるとグリセリン・エーテルができたり、得られたアクロレインまたはアクリル酸と材料グリセリンとの間に望ましくない反応が生じる等の問題が起こり、また、グリセリンをガス化するのに必要な温度が増加する。
【0050】
以下、本発明をいくつかの実施例でさらに詳細に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例では%はモル%を意味する。
【実施例】
【0051】
実施例1
CsPW/TiO2
15gのCsCO3を水に溶かして7.6%の炭酸セシウムを含む水溶液を得る。得られた炭酸セシウム水溶液の10.2gをアナターゼ型TiO2ペレット(Norpro Saint GobainのST31119)を35〜48メッシュまで粉砕して得た25gのTiO2粉末上へスプレーした。得られた粉末を110℃で2時間乾燥し窒素雰囲気下で300℃で3時間か焼してCs/TiO2を得た。
7.0gのタングスト燐酸を11.1gの脱イオン水に溶かしてタングスト燐酸水溶液を得る。得られたタングストリン酸の38.8%水溶液を15gの上記Cs/TiO2上へスプレーした。得られた粉末を100℃で一夜乾燥し、窒素雰囲気下で400℃で3時間か焼して20%のセシウム・タングスト燐酸塩を支持したチタニア担体を得る。このチタニア担体を篩にかけて35〜48メッシュの粒度を得る。
【0052】
この触媒を大気圧で運転される固定床式反応器で固定床で評価した。すなわち、上記で得られた触媒粉末の7ccを石英反応管(直径16mm)に充填した。グリセリン水溶液(濃度は28重量%)を窒素(4.9NL/hr)および酸素(1.2NL/hr)と一緒に26.9g/hrの流速で280℃の蒸発器に供給してグリセリンをガス化し、得られたガス化したグリセリンを上記固定化触媒ベッドに通した。固定化触媒ベッドは275℃の温度に加熱した。 フィード気体は下記のモル%組成物を有る:グリセリン:酸素:窒素:水=5.7:3.9:14.1:76.1。GHSVは4,530h-1であった。
【0053】
生成物を凝縮器で凝縮し、回収した生成物をガスクロマトグラフ(HP6890Agilent、FFAPカラム、FID検出器、CP4900 Varian、SilicaplotおよびMolecular Sieve 5Å、TCD検出器)で定量分析した。生成物の比率はガスクロマトグラフの結果からファクター修正して生成物の絶対量を求め、材料の変換率(%)(グリセリンの変換率)、目的物質の選択率(アクロレインおよびアクリル酸の選択率)および目的物質の収率(アクロレインおよびアクリル酸の収率)を計算した。材料の変換率(%)、目的物質の選択率および目的物質の収率は下記の式で求めた:
材料の変換(%)=(反応した材料のモル数/供給した材料のモル数)×100
目的物質の選択率(%)=(得られた目的物質のモル数/供給した材料のモル数)×100
目的物質の収率(%)=(得られた目的物質のモル数/供給材料のモル数)×100。
得られた結果は[表1]に示した。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例2
CsPW/TiO2
10gのタングスト燐を150mlの脱イオン水に溶かしてグスト燐酸水溶液を得る。アナターゼ型TiO2ペレット(Norpro Saint Gobain、ST31119、BET比表面積39 m2/g)を300〜500メッシュまで粉砕し、110℃で一晩乾燥して得たTiO2粉末の19.7gを上記で得たタングスト燐酸水溶液に加え、室温で2時間攪拌した。2.26gの48.5%CsOH水溶液を10mlの脱イオン水に希釈し得られたCsOH水溶液を上記のングスト燐酸とTiO2のホワイト・スラリーに滴下し、ホワイト・スラリーを攪拌した。得られたスラリーを回転乾燥機を用いて60℃で蒸発させ、得られた粉末を120℃で10時間乾燥した後、空気中で500℃で3時間か焼して、30%のタングスト燐酸のCs塩を担持したチタニア担体を得た。得られた粉末をプレスでペレットにし、そのCsPW/TiO2ペレットを粉砕して9〜12メッシュの粒度に篩分けした。
【0056】
この触媒を大気圧で運転される固定床式反応器で固定床で評価した。すなわち、上記で得られた触媒粉末の10ccを石英反応管(直径10cc)に充填した。グリセリン水溶液(濃度は30重量%)を窒素(3.7のNL/hr)および酸素(1.0のNL/hr)と一緒に21g/hrの流速で300℃の蒸発器に供給してグリセリンをガス化し、得られたガス化したグリセリンを上記固定化触媒ベッドに通した。固定化触媒ベッドは300℃の温度に加熱した。 フィード気体は下記のモル%組成物を有る:グリセリン:酸素:窒素:水=6.3:4.0:14.9:74.8。GHSVは2445h-1であった。
生成物の回収方法、分析方法および計算は実施例と同じ方法である。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例3
HPW/TiO2
2.7gのタングスト燐酸(Aldrich)を8.5gの脱イオン水に溶かしてタングスト燐酸水溶液を得る。アナターゼ型TiO2ペレット(Norpro Saint Gobain、ST31119、BET比表面積39 m2/g)を35〜48メッシュまで粉砕し、110℃で2時間乾燥して得たTiO2粉末の15.4g上に上記で得たタングスト燐酸水溶液の7.6gをスプレーした。得られた粉末を110℃で2時間乾燥した後、窒素雰囲気下で300℃で3時間か焼した。得られた粉末を100℃で一晩乾燥した後、窒素雰囲気下で500℃3時間か焼して10%のタングスト燐酸を担持したチタニア担体を得た。このチタニア担体を35〜48メッシュの粒度に篩別した。そのBET比表面積は35m2/gである。
生成物の回収方法、分析方法および計算は実施例と同じ方法である。
【0059】
【表3】

【0060】
実施例4
HSiW/TiO2
3.0gのタングスト珪酸(Aldrich)を11.1gの脱イオン水に溶かしてタングスト珪酸水溶液を得た。アナターゼ型TiO2ペレット(Norpro Saint Gobain、ST31119)を35〜48メッシュに粉砕して得たTiO2粉末の25g上に上記で得られた水溶液の11.8gをスプレーした。得られた粉末を110℃で2時間乾燥し、窒素雰囲気下で300℃で3時間か焼した。得られた粉末を100で一晩乾燥した後、窒素雰囲気下で625℃で3時間か焼して10%のシリコタングステン酸を担持したチタニア担体を得た。このチタニア担体を篩別して35〜48メッシュの粒度にした。
生成物の回収方法、分析方法および計算は実施例と同じ方法である。
【0061】
【表4】

【0062】
上記実施例は、本発明の担体触媒は本出願人の先の出願であるPCT/JP2009/057818およびPCT/JP2009/057819に記載の利点を失わずに、担体のない触媒と比較して触媒の失活が少なく、より高温度での再生ができるということを示している。
【0063】
実施例5および比較例6〜8
Norpro Saint Gobainの酸化硅素SS61138(251m2/g)およびSS61137(161m2/g)とNorpro Saint Gobainの酸化アルミニウムSA6578を用いて、実施例3と同じ方法で酸化硅素またはアルミナ上にタングスト燐酸を担持させた。
得られた触媒は[表5]に示す条件下で実施例3の触媒と一緒にテストした。
【0064】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質チタニア担体上に担持された、ヘテロポリ酸のプロトンの一部が元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の中から選択される少なくとも一つのカチオンと交換された少なくとも一種のヘテロポリ酸から成る触媒組成物。
【請求項2】
多孔質チタニア担体の少なくとも一部が下記式(I)で表される化合物で被覆されている請求項1に記載の触媒組成物:
ab[X1cde]・nH2O (I)
(ここで、
Hは水素であり、
Aは水素を除く元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の中から選択される一つ以上のカチオンであり、
XはPまたはSiであり、
YはW、Mo、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Tl、SnおよびPbから成る群の中から選択される一つ以上の元素であり、
ZはW、Mo、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Tl、SnおよびPbから成る群の中から選択される一つ以上の元素であり、
a、b、c、dおよびnは下記の範囲を満たす数:
0≦a<9
0≦b≦9、好ましくは0<b≦9、
0<c≦12、
0≦d<12
n≧0
eは各元素の酸化度で決定まる数である)
【請求項3】
上記チタニア担体がルチルまたはアナターゼまたはアモルファスな酸化チタンから成る請求項1または2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
上記記チタニア担体の少なくとも80%がアナターゼから成る請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
上記カチオンが少なくとも一つのアルカリ金属陽イオンである請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
上記アルカリ金属がセシウムである請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
上記化合物がW、MoおよびVから成る群の中から選択される少なくとも一つの元素を含む請求項2〜5のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の中から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの溶液をチタニア担体に含浸し、得られた固体混合物を乾燥し、か焼し、必要な場合には得られた固体混合物をヘテロポリ酸の溶液で第2回明細書の含浸し、乾燥し、か焼することを特徴とする触媒組成物の製造方法。
【請求項9】
ヘテロポリ酸の溶液をチタニア担体に含浸し、得られた固体混合物を乾燥し、か焼し、必要に応じて、得られた含浸担体を元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の中から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの溶液で第2回目の含浸を行い、得られた固体混合物を乾燥し、か焼することを特徴とする触媒組成物の製造方法。
【請求項10】
複数回の含浸およびか焼のサイクルで触媒組成物を製造する方法において、各含浸を元素周期律表の第1族〜第16族に属する元素の中から選択される少なくとも一つの金属またはオニウムの溶液か、P、Si、W、Mo、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Tl、Sn、Pbからなる群の中から選択される一つまたは複数の元素を含む溶液を用いて行い、少なくとも一つの含浸を酸前駆体で行うことを特徴とする方法。
【請求項11】
一つの含浸を燐タングステン酸(phosphotungstic acid)または燐タングステン酸塩の溶液を用いて行う請求項8〜10のいずれか一項に記載の触媒組成物の製造方法。
【請求項12】
一つの含浸をシリコタングステン酸(silicotungstic acid)またはシリコタングステン酸塩の溶液を用いて行う請求項8〜10のいずれか一項に記載の触媒組成物の製造方法。
【請求項13】
一つの含浸をセシウム塩溶液を用いて行う請求項8〜10のいずれか一項に記載の触媒組成物の製造方法。
【請求項14】
含浸を細孔容積含浸(pore volume impregnation)法または過剰溶液含浸(excess solution impregnation)法を用いて実行する請求項8〜13のいずれか一項に記載の触媒組成物の製造方法。
【請求項15】
か焼(calicination)を空気、不活性ガスまたは酸素と不活性ガスの混合物の雰囲気下または還元性ガスの存在下で実行する請求項8〜13のいずれか一項に記載の触媒組成物の製造方法。
【請求項16】
か焼(calicination)を150〜900℃の温度で0.5〜10時間行う請求項8〜15のいずれか一項に記載の触媒組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒または請求項8〜16のいずれか一項に記載の方法で製造された触媒の存在下で実行するグリセリンの脱水によるアクロレインの製造方法。
【請求項18】
グリセリンの脱水を分子状酸素の存在下で行う請求項17に記載の方法。
【請求項19】
グリセリンの脱水をプロピレンを含む気体の存在下で行う請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
プレート熱交換器型反応装置または固定床反応装置または流動床型反応装置または循環流動床または移動床で実行する請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
得られたアクロレインをさらに酸化してアクリル酸を製造する請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
第2段階でアンモオキシデーションによってアクロレインをアクリロニトリルにする請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
脱水段階で生じる水および重質副生成物を部分凝縮する中間段階をさらに有する請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
多孔質チタニア担体上に沈着させた少なくとも一種のヘテロポリ酸から成る触媒組成物。
【請求項25】
グリセリンの脱水によってアクロレインまたはアクリル酸を製造するための請求項24に記載の触媒。
【請求項26】
グリセリンの脱水によるアアクロレインまたはクリル酸製造での請求項25に記載の触媒の使用。

【公開番号】特開2013−40179(P2013−40179A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202968(P2012−202968)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2012−529412(P2012−529412)の分割
【原出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】