説明

グリセロールまたはグリセリンからアクロレインを調製する方法

本発明は、グリセロールまたはグリセリンからアクロレインを調製する方法であって、少なくとも、a)ジルコニウムと、ニオブ、タンタルおよびバナジウムから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物;b)酸化ジルコニウム、ならびに、ニオブ、タンタルおよびバナジウムから選択される少なくとも1つの金属Mの酸化物;c)酸化ケイ素、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、チタン、バナジウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物;d)酸化ケイ素、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、バナジウムおよびチタンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物;e)酸化チタン、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、チタン、バナジウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物;f)酸化チタン、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、チタン、バナジウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物から成る触媒の存在下で前記グリセロールまたはグリセリンを脱水することを含む方法に関する。前記方法は、アクロレインから、3−(メチルチオ)プロピオン(MMP)アルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリル(HMTBN)、メチオニンおよびそれらのアナログを製造するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、グリセロールまたはグリセリンの脱水によりアクロレインを作製するための触媒方法、およびそのような方法の応用に関する。
【0002】
グリセロールとは、精製されたまたは精製されていない、好ましくはバイオマスに由来したグリセロール、特に高度に精製されたまたは部分的に精製されたグリセロールを意味する。精製されたグリセロールは、グリセリンの蒸留により得られ、98%以上の純度を有する。精製されていないまたは部分的にのみ精製されたグリセロールは、後述されるように、例えばトリグリセリドのエステル転移反応に由来する場合、メタノール溶液中に存在してよい。グリセリンとは、特に、植物性油および/または動物性油の加水分解に由来した、天然起源のグリセリン、または、多少精製された若しくは精練された若しくはそうでなければ未加工の、石油に由来する合成起源のグリセリンを意味する。例として、未加工のグリセリンは80〜85%の間に含まれる滴定濃度を有する。したがって、次に説明において、主に、バイオマスに由来するグリセロールまたはグリセリンの転換に言及されるが、本発明は、当然そこに制限されず、その利益は、それらの起源およびそれらの純度の程度にかかわらず、全てのグリセロールおよびグリセリンに及ぶ。
【0003】
化石エネルギーの漸進的な消耗は、産業に対し、燃料を製造するためのバイオマスに由来する再生可能原料の使用の構想をもたらす。この文脈において、バイオディーゼルは植物性油または動物性油から製造された燃料である。
【0004】
この生成物は、明白に好ましいCOバランスのために、化石エネルギーと比較して、グリーンの観点から利益がある。Diester(登録商標)(またはMEVO、植物油およびメチルエステル)は、油性の液体、特にパーム、菜種およびヒマワリ植物油に存在するトリグリセリドのメタノールによるエステル転移反応により作られるバイオディーゼルである。このエステル転移反応は、熟考された方法によれば、diester(登録商標)1メートルトンあたりおよそ100kgのグリセロールを共生産する。使用される原料、ケーキの非脂質部分は、主として飼料に利用される。
【0005】
このバイオディーゼルは使用され、ディーゼルオイルと混合される。近い将来に適用されると考えられる欧州指令2001/77/ECおよび2003/30/ECでは、ディーゼルオイルに対して2010年に7%、2015年までに10%のdiester(登録商標)の導入が予定されている。バイオディーゼルの生成量におけるこの実質的増加は、数百から数千トン/年に匹敵する有意な量のグリセロールを作り出すだろう。
【0006】
グリセロールの約1500の使用が既に記録されており、とりわけ、以下のように、多くの様々な製剤中にそれは存在している:
−製薬における加湿剤(坐薬およびシロップ中)または美容学においる加湿剤(保湿クリーム、グリセリン石鹸、練り歯磨き中)、
−食品産業における溶媒、
−化学工業における可塑剤または潤滑剤。
【0007】
これらの適用は、バイオディーゼルと共生産されるグリセロールの量の吸収には明らかに不十分であることが証明され、進歩はしているものの、従来のグリセロール市場(石鹸、製薬、…)では、そのような余剰を吸収することはできないだろう。したがって、非常に大量のグリセロールの価値を増大させ得る新たな用途の発見は重大である。
【0008】
これを考慮して、近年、多くの販路が研究されており(M. Pagliaro et al, Angew. Chem..Int. Ed. (2007) 46, 4434-4440 並びに M. Pagliaro, M Rossi: The Future of Glycerol, RSC Publishing, Cambridge (2008))、特に、価値の付与のために、以下の6つの経路が研究されている:
−ポリエステルおよびポリウレタンの合成におけるベースモノマーとして特に使用される、1,3−プロパンジオールおよび1,2−プロパンジオールへの転換、
−潤滑剤の化学のためのモノエステルへの転換、
−乳化剤、食品添加物として使用されるポリグリセロールへの転換、
−(脱水による)アクロレインへの、および(脱水および酸化による)アクリル酸への転換、
−飼料の添加物としての直接的な価値の付与。
【0009】
アクロレインおよびアクリル酸は、モリブデンおよび/またはビスマスの酸化物に基づいた触媒の存在下、空気からの酸素によるプロピレンの気相にける制御された酸化により伝統的に使用される。そのように得られたアクロレインは、アクリル酸を製造するための二段法に直接組み込むか、または合成中間体として使用してよい。したがって、これらの両方のモノマーの生産は、実質的に石油カットの水蒸気分解または触媒分解により製造されるプロピレンに密接に関連する。
【0010】
最も単純な不飽和アルデヒドの1つであるアクロレインの市場およびアクリル酸の市場は巨大である。これは、これらのモノマーが、多くの市販される製品の組成に入るためである。
【0011】
さらに、その構造に起因して高度に反応的な化合物であるアクロレインは、多くの用途が見出され、特に合成中間体としての用途が見出されている。それは、最もとりわけ、D,L−メチオニンおよびそのヒドロキシルアナログ誘導体である2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸(HMTBA)の合成に入る鍵となる中間体として使用される。それらは、動物(家禽、ブタ、反芻動物、魚、…)に不可欠な食品サプリメントの組成物に入るため、これらの食品添加物は非常に使用されている。幾つかの場合に、予定された原料を多様化することによる既存の産業ユニットの生産設備を増大し、または保証できることが有益かもしれない。それゆえ、プロピレンである、石油に由来するこの供給源に対する依存性を低下させつつ、アクロレイン生産力を増大できることは、最も特に興味深いだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、グリセロールへの転換および対応するアクロレイン選択性の時間に対する進展を示す。
【図2】図2は、本発明に係る触媒Aにて得られた、気流下の再生の前後における、グリセロールへの転換およびアクロレイン選択性を示す。
【図3】図3は、時間に対するグリセロールへの転換およびこの転換のアクロレイン選択性の比較を示す。
【図4】図4は、気流下の再生の前後における、本発明に係る触媒A’において得られたグリセロールへの転換およびアクロレイン選択性を示す。
【発明の詳細な説明】
【0013】
本発明の目的は、頑丈で、活性があり、選択的で、再生可能な触媒であって、それによって、以下の反応により、特にバイオマスに由来するグリセロールまたはグリセリンからアクロレインが直接製造され得る触媒の応用に存する:
HO−CH−CH(OH)−CH−OH→CH=CH−CHO+2HO。
【0014】
この代替案により、プロピレン石油資源に依存しない、他の再生可能原料からのアクロレインを合成する競合的な方法が可能となる。
【0015】
この可能性は、メチオニンまたはそのアナログ、例えばそのヒドロキシルアナログ(HMTBA)をバイオマスから直接合成するために特に有利である。
【0016】
したがって、本発明は、さらに、アクロレインからの、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(MMP)、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリル(HMTBN)、メチオニンおよびそのアナログ、例えば2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸(HMTBA)、HMTBAのエステル、例えばイソプロピルエステル、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸の合成に対するこの反応の応用に関する。
【0017】
メチオニン、HMTBAおよび後者のエステル並びにアナログは、動物栄養およびそれらの産業的合成プロセスに使用され、アクロレインは、一般にプロパンおよび/またはプロピレンの酸化により得られる。水の存在下における空気によるプロピレンの酸化によるアクロレインへの製造は部分的であり、生産されるアクロレインに基づく原料生成物は、未反応のプロピレンおよびプロパン、水および酸化反応の副産物、特に酸、アルデヒドおよびアルコールをさらに含む。
【0018】
グリセロール(グリセリンとも呼ばれる)は長い間アクロレインの供給源として知られてきた(熱的形質転換)。それは、特に全ての動物または植物の油および脂肪において、エステル(トリグリセリド)の形態にて天然で広く見つかる製品であり、十分な量で利用できる開始試薬であり、その側面から産業において利用されてもよい。実際、280℃を超える温度に上昇させると、グリセロールは分解し、アクロレインが得られることが既知である。この弱い選択性の反応は、完全な酸化生成物、CO、COに加えてアセトアルデヒド、ヒドロキシアセトンを含む多くの副産物の形成を伴う。したがって、この資源の不必要な消耗の回避、および複雑なアクロレイン精製工程によりエネルギーを消費するその後の分離を避ける目的で、グリセロールをアクロレインに転換するための反応を制御することが不可欠である。さらに、これらの不純物、主として芳香性の誘導体は、しばしば、触媒を徐々に毒するコークスの、触媒の表面における形成の原因となる;再び良好な触媒活性を示すように触媒を再生することがしばしば必要である。
【0019】
多くの学術的および産業的研究者がこの反応を研究してきた。特に、反応媒質としての超臨界水の使用が熟考された。工業スケールの超臨界的な溶媒の使用は、超高圧下で作動するオートクレーブを必要とする特に重い構造基盤のために、連続工程にとって難しいままである。他方、動作する、選択的で、頑丈な触媒システムが同定されれば、連続的プロセスまたはバッチプロセスの設定が熟考されるかもしれない。
【0020】
この化学的代替についての興味の増大に関して、液相または気相における連続的プロセスまたはバッチプロセスのために使用できる、担持されたリン−またはシリコ−タングステンヘテロポリ酸、混合された酸化物およびゼオライトに基づく触媒システムの使用に関する莫大な数の研究が文献にて示されている。
【0021】
したがって、文献WOA−2006087083およびWOA−2006087084には、分子酸素の存在下で、並びに、ゼオライト、Nafion(登録商標)、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、タンタル、シリコンから選択される金属の酸化物であって、硫酸塩、ホウ酸塩、タングステン酸塩、ケイ酸塩および燐酸基の形態における酸官能基に浸透したものから選択される強酸触媒の存在下で、気相におけるアクロレインへのグリセロールの触媒作用的脱水のための方法が開示されている。
【0022】
文献WOA−2007132926は、シリコンと、Al、FeおよびGaから好ましくは選択される元素とを含む、MFIまたはBEA構造型のゼオライトといった酸性結晶状メタロシリケートから選択される触媒の存在下で、グリセロールをアクロレインに変換する方法を開示している。
【0023】
既知の方法と比較して、本発明によれば、初期グリセロールの完全な転換を可能にしつつ、再生が非常に容易であり且つ長寿命を有する触媒の存在下において、グリセロールの触媒作用的脱水により、グリセロールまたはグリセリンからアクロレインを製造するための方法が提供される。本発明の著者は、この触媒が、酸化ジルコニウムに基づくこと、且つ、少なくとも:
a)ジルコニウムと、ニオブ、タンタルおよびバナジウムから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物、
b)ジルコニウムの酸化物、ならびに、ニオブ、タンタルおよびバナジウムから選択される少なくとも1つの金属Mの酸化物、
c)酸化ケイ素、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、チタン、バナジウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物、
d)酸化ケイ素、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、バナジウムおよびチタンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物、
e)酸化チタン、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、チタン、バナジウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物、
f)酸化チタン、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、チタン、バナジウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物
に含まれることを発見した。
【0024】
したがって、本発明は、上に定義されるような触媒の存在下において、グリセロールまたはグリセリンからアクロレインを得る方法、およびグリセロールまたはグリセリンをアクロレインに転換するためのこの触媒の使用に関する。本発明の触媒は、アクロレインへのグリセロールまたはグリセリンの制御された転換、すなわちアクリル酸までの転換を促進しないことを可能にする。この目的のために、本発明の好ましい触媒は、それを構成するその他の酸化物の各々に比べて、酸化モリブデンおよび/または酸化銅を主要な重量比で含まない。
【0025】
このため、本発明は、グリセロールまたはグリセリンをアクロレインに転換するための、上に定義される触媒a)、b)、c)、d)、e)およびf)の少なくとも何れか1つの使用に関する。
【0026】
触媒は様々な方法(共沈、熱水的な合成等)にて作製してよい。有効な手順は、Kantcheva et.al., Catalysis Communications (2008), 9(5), p874-879、特許FR2907444およびFR2907445に記載されている。
【0027】
上に定義される触媒は、さらに、下記の優先的な特徴を、単独にてまたは組み合わせにて満たしてよい:
−触媒a)−f)が、先に定義された酸化物および混合酸化物のみから成る、
−前記触媒a)からf)の少なくとも1つの前記酸化物(混合型または非混合型の何れでもよい)が、担持されている、
−Zr/Zr以外、すなわちSi、TiおよびMから選択される前記触媒a)−f)のその他の構成元素の合計のモル比は、0.5から200であり、より好都合には1から100である。
【0028】
先に述べるように、本発明の触媒は、容易に再生できる利益、脱水の収率またはアクロレイン選択性に影響しない利益を有する。
【0029】
本発明に係る反応は、気相または液相において適用してよく、好ましくは気相において適用してよい。反応が気相において行なわれる場合、異なるプロセス技術、すなわち固定層プロセス、流動層プロセスまたは循環型流動層によるプロセスを用いてもよい。最初の2つのプロセスにおいて、固定層または流動層において、触媒の再生は触媒反応から分離してよい。例えば、それは、空気における燃焼のような従来の再生方法で、または分子酸素を含むガス混合物により、ex situで達成してよい。本発明の方法によれば、再生が達成される温度および圧力は、プロセスの反応条件に近いため、再生はin situで達成してもよい。
【0030】
液相プロセスに関して、その反応は、固体触媒上の液相における反応のための従来の反応器において達成してもよいが、さらに、グリセロール(290℃)およびアクロレイン(53℃)の沸点間の著しい差異を考慮して触媒蒸留型の反応器において達成してもよい。液相におけるプロセスは、生成されたアクロレインの連続蒸留を可能にする相対的に低い温度で実行してよく、それによって、アクロレイン分解の逐次反応を制限することができる。気相における反応の実験条件は、好ましくは1から10バールの圧力、250から400℃の温度である。液相において、その反応は、150から350℃および3から70バールの圧力で動く。
【0031】
本発明の方法の他の利点は、出発原料としてのグリセロールまたはグリセリンの形態は、純粋もしくは部分的に精製された形態であってよく、または溶液中、特に水溶液中であってもよいことに存する。有利に、グリセロールの水溶液が使用される。水溶液中において、グリセロールの濃度は、好ましくは少なくとも1%であり、最良の場合、それは、反応器中において、10重量%から50重量%であり、および好ましくは15重量%から30重量%である。生成されたアクロレインと変換されていないグリセロールとの間におけるグリセロールエーテルまたはアセタール化反応の形成のように、アクロレイン収率に負担をかける寄生性の反応を回避するために、グリセロール濃度はあまり高くあるべきでない。さらに、グリセロールの蒸発により誘導される取り消し(redhibitory)エネルギーコストのために、グリセロール溶液を希釈しすぎてはならない。すべての場合において、関連する反応により作られた水を部分的にまたは完全に再利用することにより、溶液のグリセロール濃度を調節するのは簡単である。反応器に供給されるグリセロールの流れを蒸発する目的で、合成の範囲におけるエネルギー最適化は、反応の出力における熱を回収しやすい。
【0032】
本発明の他の目的は、上記方法により得られるアクロレインから、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(MMP)、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリル(HMTBN)、メチオニン、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸(HMTBA)、後者のエステル、特にイソプロピルエステルおよび2−オキソ−4−メチルチオブタン酸(KMB)を作成する方法である。管理されたプロピレンの酸化によりアクロレインを作る従来方式と比較して、前述の方法に従って製造されたアクロレインは、それらの量およびそれらの性質の両観点で、伝統的方法のものと異なる不純物を含んでよい。考慮された使用に従って、アクリル酸またはメチオニンもしくはそのヒドロキシルアナログの合成、アクロレインの精製は、当業者に既知の技術に従って考慮されてよい。
【0033】
したがって、一旦、アクロレインが本発明に従って得られると、または精製後、それは、メチルメルカプタン(MSH)との反応により、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(またはMMP)が製造される。続く工程において、MMPは、シアン化水素酸と接触され、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブチロニトリル(HMTBN)が製造される。HMTBNの合成後、様々な反応工程により、メチオニン、そのヒドロキシルアナログ(HMTBA)、後者のエステルまたはその酸素のアナログ(KMB)がもたらされる。アクロレインの合成からのこれらの工程はすべて当業者に周知である。
【0034】
以下に、本発明の範囲を限定することなく、以下の例および図によって、本発明をより詳細に記述し、例証する。
【0035】
図1は、グリセロールへの転換および対応するアクロレイン選択性の時間に対する進展を示す。触媒A、B、CおよびDの各々は、それぞれ例1、7、8および9に記述される;触媒AおよびBは本発明の触媒であり、触媒CおよびDは先行技術に係る触媒である。それぞれの点に示された時間は、1時間のトラッピングに対応するサンプリングの終わりの時間である。アクロレイン転換および選択性に使用された反応条件および算定方法は後述する。
【0036】
この図は、以下の説明により読み取られ、具体化される:
−触媒A(□)、B(△)、C(◇)またはD(○)におけるグリセロールへの転換、
−触媒A(■)、B(▲)、C(◇)またはD(●)におけるアクロレイン選択性。
【0037】
図2は、本発明に係る触媒Aにて得られた、気流下の再生の前後における、グリセロールへの転換およびアクロレイン選択性を示す。
【0038】
この図は、以下の説明により読み取られ、具体化される:
−新鮮な触媒(△)および再生した触媒(▲)によるグリセロールへの転換、
−新鮮な触媒(□)および再生した触媒(■)によるアクロレイン選択性。
【0039】
図3は、グリセロールへの転換およびこの転換のアクロレイン選択性の時間に対する比較を示す。触媒A’、CおよびDのそれぞれは、例2、8および9に記載されている;触媒A’は本発明の触媒であり、触媒CおよびDは先行技術に係る触媒である。
【0040】
この図は、以下の説明により読み取られ、具体化される:
−触媒A’(◆)、D(●)またはC(△)によるグリセロールへの転換、
−触媒A’(■)、D(×)またはC(▲)によるアクロレイン選択性。
【0041】
図4は、本発明に係る触媒A’にて得られた、気流下の再生の前後における、グリセロールへの転換およびアクロレイン選択性を示す。
【0042】
この図は、以下の説明により読み取られ、具体化される:
−新鮮な触媒(△)および再生した触媒(▲)によるグリセロールへの転換、
−新鮮な触媒(□)および再生した触媒(■)によるアクロレイン選択性。
【0043】
転換およびアクロレイン選択性を算出するための反応条件および方法は後述する。
【0044】
グリセロールの脱水のための反応は、直径18mmの固定層を有するまっすぐな反応器において、大気圧下にて、記述される触媒において行なわれる。反応器は、触媒を300℃の反応温度に維持できるオーブンに配置する。反応器に充填される触媒の容量は4.5mLであり、これは、約1.8cmのベッドの高さを与える。反応器に、流速3.77g/hで、20重量%のグリセロールを有する水溶液が供給される。水溶液を、75mL/最小の窒素流速が存在において、C.E.M(Controlled Evaporator Mixer) Bronkhorst(登録商標)エバポレーターによって蒸発させる。グリセロール/水/窒素のモルの相対的比率は2.3/46.3/51.4である。計算された接触時間は、約1.9s、すなわち1930h−1のGHSVである。接触時間は以下のように定義される:
接触時間=触媒体積×Patm/(全モル流速×温度×R)、
ここで、Patm=101,325Pa、温度=25℃および全モル流速=グリセロールのモル流速+水のモル流速+不活性ガスのモル流速である。
【0045】
反応後、2つのシステムの凝縮が使用され、生成物を濃縮する。例10、11、12、16、17および18を、一続きに取り付けた3つのトラップのシステムにより得た。第1のトラップは既知量の水を含んでおり、砕かれた氷により冷却される。その他の2つのトラップはエタノールを含んでおり、クライオスタットにより−25℃に冷却される。例13、14および15は、既知量の水を含んでおり、砕かれた氷により冷却される単純なトラップにより得られた。トラッピング期間は1時間であり、供給量はトラップの変化の間、中断されない。
【0046】
形成された生成物を、クロマトグラフィーにより分析し、それぞれのサンプルについて2つの分析を行う:
−反応の主産物を、FID検出器を備えたShimadzu2014クロマトグラフによるキャピラリーカラム(Nukol、30mx0.53mm)のガスクロマトグラフィーにより分析する。この分析にて定量された生成物は次のとおりである:アクロレイン、アセトアルデヒド、アセトン、プロピオンアルデヒド、ヒドロキシプロパノン、酢酸、アリルアルコールおよびフェノール;
−残りのグリセロールは、FID検出器およびキャピラリーカラム(CarbowaxまたはZBwax、30mx0.32mm)を備えたHewlett Packardクロマトグラフによるガスクロマトグラフィーにより定量する。
【0047】
グリセロール転換、アクロレイン選択性および種々の生成物の収率は次の通りに定義される:
グリセロール転換(%)=100×(1−残ったグリセロールのモル数/導入されたグリセロールのモル数)
アクロレイン選択性(%)=100×(生成したアクロレインのモル数/未反応のグリセロールのモル数)
Xの収率(%)=K×100×生成したXのモル数/導入されたグリセロールのモル数
ここにおいて、Xがアクロレイン、アセトン、ヒドロキシプロパノン、プロパノールまたはアリルアルコールである場合、K=1;X=アセトアルデヒドまたは酢酸である場合、K=2/3、およびX=フェノールである場合、K=2。
【0048】
例1:触媒Aの作製および特徴付け
ジルコニウムおよびニオブの酸化物型の本発明に係る触媒は、ジルコニウム酸化物水和物およびシュウ酸鉄アンモニウム(ammonium oxalate−niobiate)、(NH)(CNbO.xHO(Aldrich、99.99%)から作製する。ジルコニウム酸化物水和物は、pH=8.8において、オキソ硝酸ジルコニウム(zirconium oxonitrate)ZrO(NO.xHO(Aldrich、99%)の溶液および28%アンモニア溶液の共沈殿により作製される。
【0049】
濃縮されたHNOでpH〜0.5に酸性化し、45℃に加熱した変更水に、シュウ酸鉄アンモニウムを溶解する。室温に戻した後、水酸化ジルコニウム水和物を3:1のモル比のZrO/Nbに添加する。ジルコニウム酸化物水和物の水和度は、熱重量分析(TGA)により予め測定する。24時間撹拌した後、混合物をろ過し、固体を600℃で気流下で焼成する。この触媒の比表面積は40m/gである。固体の比表面積は、BET(Brunauer EmmetおよびTeller)の方法により、−196℃でMicromeriticsASAP2020装置にて測定した。固体は、5x10−5mbarsの真空において3時間、300℃で前もって脱着する。種々の作製した固体のニオブおよびジルコニアの含有量は、ICP−OES(誘導結合プラズマ発光分析)により決定した。これらの分析から計算された触媒AのZr/Nbモル比は、9.3である。
【0050】
例2:触媒A’の作製および特徴付け
ジルコニウムおよびニオブの酸化物型の本発明に係る触媒は、Kantcheva. et. Al, Catalysis Communications (2009), 9(5), p874-879に記載の方法にしたがって、ジルコニウム酸化物水和物の含浸により作製した。
【0051】
ジルコニウム酸化物水和物は、オキソ硝酸ジルコニウムZrO(NO.xHO(Aldrich、99%)の溶液および28%アンモニア溶液の共沈殿により作製した。Nb(V)、(NH)(CNbO.xHO(Aldrich、99.99%)の前駆体を、50℃に加熱し、濃縮されたHNOによりpH〜0.5に酸性化した35%の過酸化水素溶液(Sigma Aldrich)に撹拌しながら添加した。H/シュウ酸モル比は13/1である。溶液は50℃で1時間間加熱し、その後、室温まで冷却した。次に、ZrO:Nb比率を6:1に維持しながら、ジルコニウム酸化物水和物をさらに添加する。ジルコニウム酸化物水和物の水和度は、熱重量分析(TGA)により決定される。混合物は24時間、室温で撹拌し続け、その後、液相をT<70℃で減圧下で蒸発させる。得られた固体は600℃で気流下で焼成させる。
【0052】
この触媒の比表面積は51m/gである。固体の比表面積は、BET(Brunauer EmmetおよびTeller)の方法により、−196℃でMicromeriticsASAP2020装置にて測定した。固体は、5x10−5mbarsの真空において3時間、300℃で前もって脱着する。得られた固体のニオブおよびジルコニウムの含有量はICP−OESにより決定した。この固体のZr/Nbモル比は3.3である。
【0053】
例3:触媒Eの作製および特徴付け
ジルコニウムおよびニオブの酸化物型の本発明に係る触媒は、Kantcheva. et. Al, Catalysis Communications (2009), 9(5), p874-879に記載の方法にしたがって、ジルコニウム酸化物水和物の混合されたアンモニウムおよびシュウ酸ニオブを含む溶液による含浸により作製した。
【0054】
Nb(V)、(NH)(CNbO.xHO(Aldrich、99.99%)の前駆体を、濃縮されたHNOによりpH〜0.5に酸性化し、且つ50℃に加熱した35%の過酸化水素溶液(Sigma Aldrich)に撹拌しながら添加した。H/シュウ酸モル比は13/1である。溶液は50℃で1時間間加熱し、その後、室温まで冷却した。次に、ZrO:Nb比率を6:1に維持しながら、オキソ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO)s.xHO(Aldrich、99%)の溶液と28%アンモニア溶液との共沈殿により予め作製したジルコニウム酸化物水和物を添加する。混合物は24時間、室温で撹拌し続け、その後、液相をT<70℃で減圧下で蒸発させる。得られた固体は600℃で気流下で焼成させる。
【0055】
触媒Aと同様の方法で決定したこの触媒の比表面積は39m/gである。得られた固体のニオブおよびジルコニウムの含有量はICP−OESにより決定した。この固体のモル比Zr/Nbは3.7である。
【0056】
例4:触媒Fの作製および特徴付け
ジルコニウム、ニオブおよびバナジウムの酸化物型の本発明に係る触媒を作製する。バナジウム前駆体は、以下の方法に従って、NHVO(Sigma, ACS Reagent 99.7%)から作製した。
【0057】
メタバナジン酸アンモニウムを、シュウ酸(Aldrich、99%)を含む9%過酸化水素溶液に溶解した。シュウ酸/導入されたNHVOのモル比は1.3である。室温での1時間の撹拌の後、溶液を減圧下で蒸発させる:青色固体が得られる。この化合物の酸化バナジウム含有量は熱重量分析で決定する。
【0058】
バナジウム前駆体、ニオブおよびアンモニウムの混合したオキシレート(oxylate)(NH)CNbO.xHO(Aldrich、99.99%)および例1に記載の通りに作製したジルコニウム酸化物水和物を、Zr/Nb/Vモル比72/22/3.2の濃縮されたHNO(pH<0.5)により酸性化された水溶液に添加する。24時間の撹拌後、反応媒質をろ過し、固体を600℃で気流下で焼成させる。触媒Aと同様の方法で決定したこの触媒の比表面積は48m/gである。得られた固体のニオブ、バナジウムおよびジルコニウムの含有量は、ICP−OESにより決定した。この触媒のZr/Nb/Vモル組成は、90.4/8.4/1.2である。
【0059】
例5:触媒Gの作製および特徴付け
シリカでドープされたタングステン化ジルコニア(tungstated zirconia)型の本発明に係る触媒を作製する。この固体の作製は3つの工程を含む。第1工程は、pH=8.8におけるオキソ硝酸ジルコニウムZrO(NO.xHO(Aldrich、99%)の溶液と29%アンモニア溶液との共沈殿による、水酸化ジルコニウム水和物の合成である。第2の工程は、Nahas et.al (Journal of Catalysis 247 (2007), p51-60)に記述される手順にしたがった、ケイ素の種による水酸化ジルコニウム水和物の安定化から成る。水酸化ジルコニウム水和物は、pHが11に調節されたアンモニア溶液を含むガラスフラスコに入れられる。その混合物は72時間還流され、その後、ろ過され、変更された水で洗浄される。最後の工程は、過酸化水素に溶解されたタングステン酸HWO(Aldrich99%)と水酸化ジルコニウとの交換である。タングステン酸は60℃で35%の過酸化水素溶液に溶解される。溶液のタングステン酸濃度は0.04Mである。その後、タングステン酸溶液は室温に冷却され、シリカでドープされた水酸化ジルコニウムがゆっくり添加される。得られた固体はろ過され、次に、650℃で空気において焼成される。この比表面積は40m/gである。固体のニオブ、シリコンおよびジルコニウムの含有量はICP−OESにより決定した。この触媒のW/Si/Zrモル組成は4.7/1.4/93.9である。
【0060】
例6:触媒Hの合成
触媒Hは例1に記載された合成方法に従って作製する。硝酸溶液のpHは、触媒Hの場合にわずかにより酸性である(pH<0.1)。得られた固体は、57m/gの比表面積および11.8のZr/Nbモル比を有する。
【0061】
例7:触媒Bの作製および特徴付け
本発明に係る触媒ZrTiSiWを、特許FR2907445Aに記載された方法にしたがってRhodiaにより作製した。触媒Aと同様の方法で決定したこの触媒の比表面積は105m/gである。この触媒の酸化物の重量組成は、54%のZrO、35%のTiO、7.5%のSiOおよび3.5%のWOである。
【0062】
例8:触媒Cの作製および特徴付け(先行技術に係る比較触媒)
触媒Cは、Daiichi Kigensoにより合成されたタングステン化ジルコニア(89.5%ZrO−10.5%WO)(サプライヤー照会番号:Z−1104)である。触媒Aと同様の方法で決定したこの触媒の比表面積は77m/gである。
【0063】
例9:触媒Dの作製および特徴付け(先行技術に係る比較触媒)
触媒DはZeochem(ZEOcat PZ−2/5OH)により提供されるH−ZSM−5ゼオライトである。触媒Aと同様の方法で決定したこの触媒の比表面積は406m/gである。
【0064】
例10:グリセロールのアクロレインへの触媒作用的脱水:触媒A、B、CおよびDの評価
表1は、6時間の反応において触媒A、B、CおよびDで得られた性能を示す。
【表1】

【0065】
この表は、等しい触媒体積により、触媒AおよびB(本発明に係る)のみが、グリセロールの完全な転換を可能としたことを示している。さらに、本発明の触媒により、触媒Aについて70%および触媒Bについて80%のアクロレイン収率にて、6時間に既に顕著であり、50時間にて確実である、よりよいアクロレイン選択性を得ることが可能である。
【0066】
触媒AおよびBは、それゆえ、先行技術に係る触媒と比較して、より活性が高く、より選択的である。
【0067】
例11:グリセロールのアクロレインへの触媒作用的脱水:触媒A、B、CおよびDの性能における時間依存的変化
例4と同一の条件下で得られた、触媒A、B、CおよびDの性能の時間変化が図1に示される。
【0068】
触媒AおよびB(本発明)は、24時間未満以内に強く非活性化される先行技術の触媒CおよびDと異なり、数日間にわたって、一定のアクロレイン選択性および高いグリセロール転換を維持する。
【0069】
本発明の触媒AおよびBは、先行技術における最良の触媒と比較して、より活性があり、よりアクロレイン選択的であるが、さらに、時間に対してより安定している。
【0070】
例12:触媒Aの再生
143時間後、300℃の反応混合物において、本発明に係る触媒Aを、450℃の気流下(気流速度:51mL/分)で、2時間、再生する。再生後、再生前と同一の操作条件下で、触媒を試験する。
【0071】
得られた結果は、図2に示される。450℃の空気における再生は、触媒Aの、活性およびその初期収率の回復を可能にした。本発明に係る触媒Aは、それゆえ、短い時間で、活性および選択性を喪失することなく再生可能である。触媒Aは、活性があり且つ選択的であるだけでなく、完全に且つ容易に再生可能である。
【0072】
例13:グリセロールのアクロレインへの触媒作用的脱水:触媒A’、DおよびCの触媒特性の比較
表2は、5時間の反応で、触媒A、BおよびCにより、300℃で得られた性能を示す。
【表2】

【0073】
この表は、等しい量の触媒で、単に触媒A’(本発明に係る)のみが、グリセロールの完全な転換を可能にすることを示す。さらに、触媒A’により、よりよいアクロレイン選択性を得ることが可能である。触媒A’は、それゆえ、先行技術に係る触媒と比較して、より活性が高く、より選択的である。
【0074】
例14:グリセロールのアクロレインへの触媒作用的脱水:触媒A’、DおよびCの性能における時間依存的変化
触媒A’、DおよびCの性能の時間に対する変化が図3に示される。
【0075】
触媒A’(本発明)は、24時間未満以内に強く非活性化される先行技術の触媒DおよびCと違い、反応の流れにおいて1週間にわたって準一定のアクロレイン選択性および高いグリセロール転換を維持する。
【0076】
本発明の触媒A’は、したがって、先行技術の最良の触媒と比較して、より活性があり、よりアクロレイン選択性が高く、時間に対する安定性がより高い。
【0077】
例15:触媒A’の再生
183時間後、反応混合物において、本発明に係る触媒A’を、450℃の気流下(気流の速度:51mL/分)で、1時間再生した。再生後、再生前と同一の操作条件下で、触媒を試験した。
【0078】
得られた結果は、図4に示される。
【0079】
450℃の空気における再生は、触媒A’の活性および初期収率を回復することを可能にする。本発明に係る触媒A’は、それゆえ、短い時間で、活性および選択性を喪失することなく再生可能である。触媒A’は、活性があり且つ選択的であるだけでなく、完全に且つ容易に再生可能である。
【0080】
例16:グリセロールのアクロレインへの触媒作用的脱水:触媒EおよびFの評価(本発明に係る)
表3に、得られた触媒EおよびFの性能を示す。
【表3】

【0081】
例17:グリセロールのアクロレインへの触媒作用的脱水:触媒Gの評価(本発明に係る)
表4に、触媒の性能を示す。
【表4】

【0082】
例18:触媒Hによる非純粋グリセロールからのアクロレインの取得
触媒Hの性能を、82重量%のタイターを有する未加工の産業的グリセリンの溶液にて評価した。このグリセリンは、15重量%を超えるメタノールを含むという特徴を有する。以前の例のように、反応器中の触媒量は4.5mLであり、窒素流速は74.5mL/分であり、反応温度は300℃である。20重量%のグリセリンを含む水溶液の流速は3.77g/hである。グリセロール/水/窒素のモルの相対的比率は1.9/46.5/51.6である。得られた結果は、表5に示される。
【表5】

【0083】
有意な量のメタノールの存在は、本発明の触媒の性能を低下させない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロールまたはグリセリンからアクロレインを調製する方法であって、前記グリセロールまたはグリセリンの脱水が、少なくとも、
a)ジルコニウムと、ニオブ、タンタルおよびバナジウムから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物;
b)酸化ジルコニウム、ならびに、ニオブ、タンタルおよびバナジウムから選択される少なくとも1つの金属Mの酸化物;
c)酸化ケイ素、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、チタン、バナジウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物;
d)酸化ケイ素、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、バナジウムおよびチタンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物;
e)酸化チタン、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、チタン、バナジウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物;
f)酸化チタン、ならびに、ジルコニウムと、タングステン、セリウム、マンガン、ニオブ、タンタル、チタン、バナジウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物
に含まれる酸化ジルコニウム系触媒の存在下で達成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記触媒は、少なくともa)ジルコニウムと少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物並びにb)酸化ジルコニウムおよび少なくとも1つの金属Mの酸化物に含まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒a)からf)の前記酸化物の少なくとも1つは担持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(Zr/前記元素Siと前記元素TiとZr以外の前記元素Mとの合計)のモル比が0.5から200であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記モル比が1から100であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記グリセロールが少なくとも1重量%の濃度で水溶液中に存在することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶液の前記グリセロールの濃度は10重量%から50重量%であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が再生されることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
アクロレインから、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒドMMP、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルHMTBN、メチオニン、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸HMTBA、後者のエステル、または2−オキソ−メチルチオブタン酸KMBを製造する方法であって、前記アクロレインが請求項1から8の何れか1項に記載の方法によって得られることを特徴とする方法。
【請求項10】
水和反応が気相中で行われることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
脱水反応が、固定層、流動層または循環型流動層を備えた反応器中で行われることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
脱水反応が液相中で行われることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
グリセロールまたはグリセリンをアクロレインに転換するための、請求項1から5および任意に8の何れか1項において定義される触媒a)、b)、c)、d)、e)およびf)の少なくとも1つに含まれる触媒の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−512236(P2012−512236A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541561(P2011−541561)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052577
【国際公開番号】WO2010/076510
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(507200961)アディッソ・フランス・エス.エー.エス. (12)
【氏名又は名称原語表記】ADISSEO FRANCE S.A.S.
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】