説明

グリセロールレブリネートケタール類とその使用

本明細書の開示は、グリセロール並びにレブリン酸及びエステル類からのケタール化合物の調製と、それらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2005年11月22日に出願した米国仮特許出願第60/738,988号(題名は「グリセロールルブリネートケタール類とその使用」)の利益を主張し、その全体を本願に援用する。
【0002】
[技術分野]
本開示は、グリセロール及びレブリン酸及びエステル類からのケタール化合物の調製に関する。
【背景技術】
【0003】
界面活性剤、可塑剤、溶媒、及びポリマーなどの多くの公知の化学製品は、再生不能な、高価な、石油由来又は天然ガス由来の原料化合物から現在は製造されている。高い原材料コストと将来の供給の不確実性は、安価で再生可能なバイオマス由来原料から、かつ簡単な化学的方法によって作ることのできる界面活性剤、可塑剤、溶媒、及びポリマーの発見及び開発を必要としている。グリセロールは、バイオディーゼル製造の副生成物として、あるいは炭水化物の発酵によって、容易に利用可能である安価な再生可能な化合物である。レブリン(4-オキソペンタン)酸は、ヘキソース及びヘキソースを含む多糖類(例えば、セルロース、でんぷん、スクロースなど)の酸分解によって工業規模で製造される別の豊富な原料である。これらの2つの物質から製造される化学製品は、安価で、再生可能な消費製品及び工業製品に対するニーズを満たしうる。
【特許文献1】米国特許第5,028,667号明細書
【特許文献2】米国特許第5,292,859号明細書
【特許文献3】米国特許第5,095,098号明細書
【特許文献4】米国特許第5,210,108号明細書
【特許文献5】米国特許第4,333,800号明細書
【特許文献6】米国特許第4,205,157号明細書
【特許文献7】米国特許第4,208,527号明細書
【特許文献8】米国特許第5,028,667号明細書
【特許文献9】米国特許第5,208,297号明細書
【特許文献10】米国特許第5,202,413号明細書
【特許文献11】米国特許第5,342,969号明細書
【特許文献12】米国特許第5,565,545号明細書
【特許文献13】米国特許第6,828,272号明細書
【特許文献14】米国特許第4,133,800号明細書
【特許文献15】米国特許第4,208,527号明細書
【非特許文献1】J. Macromolecules (2001, 34, 8641-8648)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グリセロールレブリネートケタール類とその使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[まとめ]
本願は、グリセロールとレブリン酸もしくはその誘導体から調製されるケタール化合物を提供する。特定の態様においては、そのようなケタールは下記式:
【化1】

(式中、Rは水素、もしくはレブリネートフラグメントの炭素原子であり;Rは、ヒドロキシル、グリセロールの酸素原子、又はエステル化されたグリセロールフラグメントの酸素原子であり;pは整数である。)を有しうる。
この式の化合物は、グリセロール、又は下記式を有するグリセロール誘導体の反応を通して調製できる。
【化2】

上記式中、R及びRは独立して、水素;直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アリール、及びアリールアルキル;レブリン酸、レブリン酸エステル、アンジェリカラクトン(angelicalactone)、又はレブリン酸エステルのジアルキルケタール、からなる群から選択される。この反応は、酸触媒の存在下かつ反応混合物からの水の除去をもたらすために充分な条件下で実施されうる。
【0006】
別の態様においては、ケタール化合物は下記式を有しうる。
【化3】

式中、Rは水素又はカルボキシル基であり;R10はOR11、又はN(R12であり;R11及びR12は独立して、水素、又は直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルであり;pは整数である。この化合物は、一価アルコール又はカルボン酸エステルと結合されることができ、反応は塩基触媒の存在下で行うことができる。
【0007】
そのような反応から得られる生成物の例には以下のものが含まれる。
【化4】

式中、Rは水素;メチル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アリール、アラルキル、及びアルキルオキシアルキル、であり;Xは水素もしくは、
【化5】

から選択され、Rは、水素;直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アリール;アラルキル;及びアルキルオキシアルキルから選択される。いくつかの態様では、RがC〜C30の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アラルキル;及びアルキルオキシアルキルから選択されることが好ましい。別の態様では、Rが水素である場合には、反応生成物は塩として存在しうる。好適な塩には、アルカリ、アルカリ土類、アンモニア、及びアミンの塩が含まれる。
【0008】
別の態様では、下記式:
【化6】

(式中、Rは水素、又はカルボキシル残基であり;R10はOR11又はN(R12であり;R11及びR12は独立して、水素、又は直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルであり;pは整数である。)
を有する化合物を、エステル交換触媒の存在下で反応させることができる。
【0009】
そのような反応から得られる化合物の例には以下のものが含まれる。
【化7】

【0010】
さらなる態様では、以下の式を有する化合物が調製できる。
【化8】

(式中Rは、水素;メチル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アリール、アラルキル、及びアルキルオキシアルキル、であり;Yは以下の:
【化9】

からなる群から選択され、式中、R又はRのうち1つは水素であり、他方はC〜C30直鎖状アルキルであり;A又はBのうち1つは水素であり、他方はエステルであり;m及びnは独立して0〜20の整数であり、m+nの合計が8〜21の範囲である。
いくつかの態様では、RがC〜C30の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アラルキル;及びアルキルオキシアルキル、から選択されることが好ましい。
別の態様では、R又はRはC〜C30の直鎖状アルキル、又は好ましくはC〜C14の直鎖状アルキルである。特定の態様では、Rが水素である場合には、本化合物は塩として存在する。好適な塩には、アルカリ、アルカリ土類、アンモニア、及びアミンの塩が含まれうる。
【0011】
上の任意の化合物は、任意選択で、シス又はトランス配置のいずれかで単離又は調製することができる。いくつかの場合には、本化合物は、主にシス配置で、すなわち、ジオキソラン環に結合した、置換されたオキシメチレン残基が、カルボキシル基を有する側鎖の配置に対してシス配置にあることができる。好ましくは、本化合物は、シス配置のみで単離又は調製されることが好ましい。それに代わり、本化合物は、主にトランス配置で、すなわち、ジオキソラン環に結合した、置換されたオキシメチレン残基が、カルボキシル基を有する側鎖の配置に対してトランス配置にあることができる。上と同様に、本化合物は、トランス配置のみで単離又は調製されることが好ましい。
【0012】
また、本明細書では、以下の式:
【化10】

(式中、qは整数である。)
を有する単位を含むポリマー化合物を提供する。
【0013】
このポリマー及び上述した全ての化合物は、ベースポリマーと混合されて、可塑化されたポリマー組成物を形成することができる。ベースポリマーの例には、塩化ビニルポリマー、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリマー、ポリ(ラクテート)ポリマー、及びポリサッカライドポリマーが含まれうる。
【0014】
本発明の1つ以上の態様を以下の記載に示す。本発明のその他の特徴、目的、及び利点は、本記載及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0015】
[詳細な説明]
本開示は、レブリン酸のケトン基によるケタールの形成に基づいた一連のグリセロール誘導化合物を提供する。グリセロール-レブリネートケタール化合物は、約1モル当量のグリセロールを、約1モル当量のレブリン酸と、酸触媒の存在下、かつ水の除去を可能にする条件下(典型的には蒸留による)で、反応させることによって製造できる。この反応は、より少ない若しくはより多い量のレブリン酸を用いて実施することができるが、0.7と1.3の間のモル当量のレブリン酸を用いて行うことが好ましい。しかし、レブリン酸の量が少なすぎる場合は、多くのグリセリンが未反応で残る。代わって、レブリン酸の量が多すぎる場合は、グリセロールのジ及びトリレブリネートエステルが大量に形成され、それによってグリセロールとレブリネートの所望するケタール付加体の収量が低下する。
【0016】
1当量のグリセロールと1当量のレブリネートとの間の反応経過時に、2当量の水が生成する。水は簡便に蒸留によって、又は適切な不活性溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ベンゼンなどの存在下での共沸蒸留によって除去できる。約2当量の水が反応混合物から除去された場合、反応混合物は、下記式(I)を有する繰り返し単位を含むポリマー状のレブリネートグリセロールケタール付加体を主に含む。
【化11】

(式中、Rは水素、又はレブリネートフラグメントのカルボキシルの原子であり、Rはヒドロキシル、グリセロールの酸素原子、又はエステル化されたグリセロールフラグメントの酸素原子であり、pは整数である。)
【0017】
この生成物は、その他の化合物及び不純物の不存在下では、典型的にはその末端がレブリノリル基によって、及びグリセロールエステルフラグメントによって停止されたポリマーである。
【0018】
pの値は、多くの要因に左右され、どれだけ多くの水が除去されたか、反応剤の比率、酸触媒、及び水を除去するための用いた加熱条件の激しさに応じて大きく変動しうる。グリセロール及びレブリネートの純度も要因である。かなり不純物を含む工業等級のグリセロールとレブリネートは、pが典型的には1と10の間の範囲である付加体を与える。しかし、純粋なグリセロールとレブリネートを用いてさえ、顕著に30を超えるp値を有するポリマーを得ることは困難である。グリセロールとレブリネートとの間の直接の重縮合反応は、下記式(1’)(式中、Rは以下に示すように、γ-バレロラクトン誘導体によって示される)のポリマーの形成によって安定しないことが発見されている。
【化12】

【0019】
充分に長時間加熱した場合は、化合物(1’)はゆっくりとレブリノイル末端ポリマーに再変換し、それによってさらなるポリマー成長が可能になる。しかし、工業的な目的においては、そのような長い反応時間に頼ることは実用的あるいは必要ではなく、この重縮合反応は、水の理論量の約70〜95%が集められたときに停止されることが好ましい。得られるポリマーは、1つより多いヒドロキシル基でエステル化されたグリセロールフラグメントを含み、そのようなフラグメントはここではポリマーが分岐する点又は繰り返し単位が反転する点として認められ、ここで繰り返し単位は式(1)である。
【0020】
反応の条件の激しさに応じて、いくらかのエーテル結合形成(これはジグリセリルフラグメントをもたらす)、又はグリセロールからのヒドロキシル基のいくらかの脱離(アクロレインを形成する)が起こりうる。レブリネートからのいくらかのアンジェリカラクトンの形成が起こることも可能性があり、この生成物は単離して再利用できる。典型的には、工業等級のグリセロールとレブリネートから調製したグリセロールとレブリネートのポリマー状付加体は、微量の未同定の副生成物によって、淡黄褐色から無色に近い蜂蜜に似た外観をもつ、非常に粘稠な、半透明もしくは透明な液体である。しかし、これらの副生物の存在下でも、式(1)の繰り返し単位を含む最終ポリマー付加体は、化合物及び様々な中間体の調製において有用であることが本発明において発見された。
【0021】
フリーのレブリン酸同様に、一価アルカノールのレブリン酸エステル、β及びγ-アンジェリカラクトン類、及び4,4-ジアルコキシペンタノエートエステル(これは一価アルカノールとレブリン酸ケタールとのエステルである)も、式(1)の繰り返し単位を含むグリセロールレブリネートケタール化合物の合成を実施するために適している。これらのレブリン酸誘導体の任意のものが、実質的に純粋な形態で又は混合物として、グリセロールレブリネートケタール化合物の合成に用いることができる。混合物は、ある量のフリーのレブリン酸とともに上記化合物のいずれかを含むことができる。レブリン酸誘導体の混合物を用いてグリセロールレブリネートケタール化合物を作る場合、これらの化合物の約1モル当量を、1モル当量のグリセロール当たり用いることが好ましい。
【0022】
同様に、グリセロールレブリネートケタール化合物の合成において、グリセロールのいくらか又は全てを、下記式(2)のグリセロールケタール又はアセタールで置き換えることができる。
【化13】

式中、R及びRはそれぞれ独立して、水素;直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アリール;又はアラルキルから選択される。好ましくは、R及びRは両方が水素であることはない。
【0023】
簡単なC〜C直鎖状又は分岐状のアルカン酸との、グリセロールのモノ、ジ、及びトリエステルも、グリセロールに代えて、あるいはグリセロールとの混合物で用いることができる。グリセロールのモノレブリネートエステルも、出発原料として適している。
【0024】
式(1)の繰り返し単位を含む、グリセロールの縮合ポリマーグリセロールレブリネートケタール付加体の合成は、グリセロールとレブリン酸(これらは完全に混和性の化合物である)を用いて行うことができる。工業的実施のためには、グリセロールとレブリン酸は無水である必要はなく、したがって、様々な量の水を含んでいてもよい。しかし、これらの出発物質は、装置の低い効率での使用をもたらすほど過剰な量の水を含まないことが好ましい。典型的には、約10%以下の水分量しか有しないグリセロール及びレブリン酸が好ましい。
【0025】
式(1)の繰り返し単位を含むポリマー状レブリネート-グリセロールケタール付加体の合成は、典型的には、適切な酸触媒の存在を必要とする。そのような触媒の非限定的な例には、硫酸、塩酸、ホウフッ化水素酸、臭化水素酸などの無機強酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸などが含まれる。プロトン化されたスルホン酸基を含む様々な樹脂も、反応終了後に容易に回収しうるので有用である。酸の例には、ルイス酸も含まれる。例えば、三フッ化ホウ素、及びBFジエチルエーテラートに例示されるBFの様々な錯体。シリカ、酸性アルミナ、チタニア、ジルコニア、様々な酸性クレー、及び混合アルミニウムマグネシウム酸化物が使用できる。無機酸、スルホン酸、又はルイス酸誘導体を含む活性炭誘導体も使用できる。当業者は、本明細書に記載した方法に用いられる触媒組成物とその量の部分について、多くの変法を実施することができる。触媒の量と種類は、本反応に用いるエポキシドとグリセロール又はグリセロール誘導体の具体的化学組成に左右され、当業者が容易に確立することができる。しかし、合成に用いる装置に最小限の又は無視できる腐食の影響しか与えず、低い揮発性、低い毒性、及び環境への低い影響しかもたず、あるいは容易に無害の化合物に中和されうる、低コスト触媒を用いることが好ましい。硫酸は一つのそのような好ましい触媒である。グリセロールとレブリン酸との縮合反応は触媒なしで行うこともできるが、工業的目的には、これらの反応条件は一般に実施するには遅すぎる。式(1)の繰り返し単位を含む化合物の工業的な量を製造するためには、この縮合を、触媒と、過度な時間の浪費なしに反応混合物から水を除去するために充分に高い温度とを用いて促進することが好ましい。この縮合反応は、任意選択で、水の除去を容易にし、かつ変色した副生成物の形成を最小にするために、減圧下で行うこともできる。
【0026】
式(1)のケタールフラグメントを含む、グリセロールとレブリネートとの付加体は、グリセロールとレブリネートの誘導体を生成させるために、さらに化学反応をうけさせることもできる。
【0027】
〔アルコールとのエステル交換〕
式(1)の繰り返し単位を含むポリマー化合物が、一価アルコールを用いたエステル交換条件下で処理された場合に、生成物が得られる。典型的には、そのような反応は、塩基、例えば、アルカリもしくはアルカリ土類水酸化物もしくはアルコキシドの存在下でアルコールを用いて行なわれる。触媒は、可溶性又は不溶性の形態で用いることができる。多くのエステル交換塩基触媒が当技術分野で公知であり、本明細書の開示は特定の触媒の使用に限定されない。
【0028】
そのようなエステル交換反応は、下記式(3)を有するヒドロキシエステル化合物のシス及びトランス立体異性体の混合物の形成をもたらしうる。
【化14】

式中、Rは、直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、アリール、アラルキル、又はアルキルオキシアルキルである。
【0029】
式(3)のヒドロキシエステルを作るための典型的方法は、過剰のアルコールの使用を含み、これは塩基触媒の中和後、蒸留によって除去される。アルコールとのエステル交換反応は、典型的には、少量のフリーのグリセロールの形成をももたらすが、これはアルコールに非混和性の液体として、ヒドロキシエステル(3)、レブリン酸のエステル、及びエステル交換反応に用いたROHアルコールのアルコール性溶液から容易に分離できる。後者の化合物は、式(3)のヒドロキシエステルから、蒸留(典型的には減圧下で)によって容易に分離でき、所望に応じて、式(1)の繰り返し単位を含むグリセロール-レブリネートケタール高分子付加体の合成において再使用できる。
【0030】
式(3)の化合物のシス及びトランス異性体は、当分野で公知の通常の蒸留装置、例えば、充分な数のプレートをもつ蒸留塔、下降薄膜型蒸留塔などを使用しての蒸留によって互いから容易に分離できることを発見した。好ましくは、式(3)の化合物のシス及びトランス異性体を分離するための蒸留は、減圧下で、かつエステル交換触媒が比較的存在しないもとで行うことが好ましい。後の条件は、式(3)の化合物の重合、並びに充分な真空度の維持を困難にするおそれのあるフリーのアルコールROHの形成を最小化するので有利である。しかし、蒸留は、エステル交換反応を完全に除去することなく実施でき、すべての蒸留されなかったオリゴマーは回収され、上に記載した塩基触媒反応によって式(3)の化合物の調製のために再使用できる。
【0031】
式(1)の繰り返し単位を含むグリセロールとレブリネートのケタールエステルコポリマーのアルカリによるエステル交換反応は、式(1)の化合物(これはグリセロールと、アルコールROHとのレブリネートのエステルとの1,2-ケタールである)のシス及びトランス異性体を多く含む反応生成物の混合物を生成することも発見した。エステル化されたレブリネートの1,3-グリセロールケタールのわずかな無視できる微量のものしか、そのような生成物混合物中には存在しない。
【0032】
〔カルボン酸エステルとのエステル交換〕
関連する態様において、塩基存在下でのエステル交換は、アルコールに代えてカルボン酸とアルカノールとのエステルを用いる点を除いて、アルコールを用いたエステル交換について上述した条件と類似の条件下で実施される。この場合には、式(4)のグリセロールレブリネートケタールのカルボン酸エステルの立体異性体が形成される。
【0033】
【化15】

式中、Rは直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、アリール、アラルキル、又はアルキルオキシアルキルであり、Rは水素であるか又は直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、アリール、アラルキル、アルキルオキシアルキル、又はオキシアルキルである。
【0034】
カルボン酸エステルでのエステル交換を用いた化合物(4)の合成は、典型的には、少量のレブリネートエステル、グリセロール、カルボン酸RCOOHのグリセロールモノ、ジ、及びトリエステル、並びに様々な量の式(3)の化合物の形成も伴う。式(3)の化合物の量は、上述した式(1)の繰り返し単位の構造中で特定されるpの値に大きく左右され、より小さなpの値を有するポリマー性ケタール付加体は、式(4)の化合物に対し、式(3)の化合物のより多い相対量を生じる傾向がある。カルボン酸エステルを用いて塩基で触媒されたエステル交換による反応生成物は、典型的には蒸留によって分離及び精製される。
【0035】
〔ポリマー性グリセロールルブリネートケタール付加体の解重合性エステル交換〕
別の態様における、下記式(1a)の単位を含むグリセロールルブリネートケタール付加体を含むポリマー:
【化16】

(式中、Rは水素又はカルボキシル残基であり;R10はOR11、又はN(R12であり;R11及びR12は独立して、水素、又は直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルであり;pは整数である。)
いくつかの態様では、OR11は一価又は多価アルコールのフラグメントでありうる。式(1a)の単位を含む化合物はエステル交換反応を受けて、解重合を起こし、これは下記式(5)を有し、ここでは「セゲトライド(segetolide)」(「作物畑のラクトン」)と名付けた、グリセロールとレブリネートのビシクロラクトン-ケタール付加体の形成をもたらす。
【0036】
【化17】

7-メチル-3,8,10-トリオキサビシクロ[5.2.1]デカ-4-オン。
【0037】
さらなる態様はセゲトライド(5)の環状ダイマーの提供を含む。そのような環状ダイマー(ここでは「ビス-セゲトライド」と名付けた)は、下記式(5a)を有する環状ビスラクトン(ジオライド)ビスケタールである。
【0038】
【化18】

【0039】
典型的には、そのような解重合性エステル交換反応は、実質的に無水の反応条件下で、かつ酸又は塩基触媒の存在下で行われる。それに代えて、エステル化又はエステル交換反応を触媒するための、当分野で公知の多くの他の触媒(例えば、様々なポリエステルの合成の分野で公知のもの)の1つ以上を用いてもよい。式(1a)の繰り返し単位を含むポリマーの解重合による式(5)及び/又は(5a)の化合物の合成のための触媒の多くの例が、ポリエステル合成の分野で発見できる。そのような触媒及びそれらの使用方法の記載は、例えば、米国特許第4,333,800号、同4,205,157号、同4,208,527号、同5,028,667号、同5,095,098号、同5,210,108号、同5,208,297号、同5,202,413号、同5,292,859号、同5,342,969号、同5,565,545号、及び同6,828,272号明細書中に見出すことができる。
【0040】
そのような条件下で、式(5)及び/又は(5a)の環状ケタールラクトンは、相互に、ポリマー化合物と、及び式(1a)の単位を含む様々なオリゴマーと、平衡にある。充分な温度下、典型的には160〜300℃の範囲で、かつ好ましくは減圧下で、式(5)及び(5a)のケタールラクトンを含む気相が形成される。式(5)及び(5a)の化合物は、典型的には、減圧下での蒸留によって反応混合物から分離され、かつ、所望する場合は蒸留によって互いに分離される。式(5)及び(5a)の化合物のさらなる精製は、繰り返しの蒸留によって、あるいは高効率の蒸留カラムを用いることによって達成できる。蒸留の温度及び圧力を調節することによって、困難なく、式(5a)の化合物を実質的に含まない式(5)の化合物を得ることができ、なぜならこれら2つの化合物は沸点に大きな違いがあるからである。式(5)及び/又は(5a)の実質的に純粋な化合物の調製において、有効なエステル交換触媒が存在する場合には、これら化合物は平衡状態になり、これら2つの化合物の混合物、並びに下記式(1b)の単位のシス異性体を含む様々な量のポリマーを形成しうる。
【0041】
【化19】

式中、Rは水素又はカルボキシル残基であり;R10はOR11、又はN(R12であり;R11及びR12は独立して水素、又は直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルであり;pは整数である。いくつかの態様では、OR11は一価又は多価アルコールのフラグメントでありうる。
【0042】
解重合が、触媒の存在下で、式(1)のシス及びトランス単位のほぼ等量をもつ混合物を含むポリマーを用いて行う場合は、式(1)のシス及びトランス単位を含むポリマー性付加体の量のほぼ半分が、式(5)の化合物に変換されうる。未蒸留のポリマー性付加体の残りは、主に、あるいは排他的に、下記式(1c)のトランスの立体化学を有する式(1)の単位からなる。
【0043】
【化20】

式中、Rは水素又はカルボキシル残基であり;R10はOR11、又はN(R12であり;R11及びR12は独立して水素、又は直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルであり;pは整数である。いくつかの態様では、OR11は一価又は多価アルコールのフラグメントでありうる。
【0044】
トランスケタールをシス及びトランスケタールの混合物に再平衡化することを可能にする有効量の酸触媒が存在しないで行われる、式(1a)の単位を含むポリマーの解重合の間に、式(5)及び(5a)の化合物は式(1b)の単位のシス異性体からのみ形成される。
【0045】
一般に、生成されうる式(5)及び(5a)の化合物の生成物の量は、解重合に用いられるポリマー中の式(1b)の豊富なシスフラグメントによって制限される。
【0046】
式(1)の単位を含むポリマーの解重合が酸触媒の存在下で行われる場合には、上記単位のシス及びトランス異性体の両方が平衡になり、したがって、シス及びトランス単位の両方は、式(5)及び/又は(5a)の化合物に変換されうる。しかし、解重合反応を行うために酸触媒を用いる場合は、反応の温度は、グリセロールのアクロレインへの過剰な分解と、グリセリルエーテルの形成を避けるために120〜130℃を超えることを許さないことが好ましい。
【0047】
式(5)及び/又は(5a)の化合物が蒸留によって実質的に除去された後に、得られる解重合生成物は、典型的には、主にあるいは排他的に式(1c)のトランスフラグメントを含む有用なポリマーである。そのようなものは、例えば、塩基の存在下で過剰のアルコール又はエステルによるトランスエステル化を用いることによってさらに変換されうる。そのような条件下で、したがって、式(3a)及び(4a)の化合物のトランス異性体を主に又は排他的に含む式(3)及び(4)の化合物がそれぞれ調製される。
【化21】

【0048】
同様に、式(5)及び/又は(5a)のビシクロラクトンケタール化合物は、アルコール又はヒドロキシエステル(3b)及びジエステル(4b)を用いた、塩基が触媒するトランスエステル化によって容易に変換される。
【化22】

【0049】
式(3)、(4)、(5)、及び(5a)のレブリン酸エステルのグリセロールケタール誘導体、並びにその分離された個別のシス及びトランス立体異性体(3a)、(3b)、(4a)、及び(4b)は、疎水性化合物(例えば、脂肪、オイル、グリース、ワックス、ワニス)及び多くの親水性化合物の両方の様々なものに対する優れた溶媒である。式(3)の化合物(Rは、C〜C低級アルキルである)は、広い範囲の濃度で水と混和性である。したがって、これらの化合物は、脱グリース剤、塗料希釈剤、塗料除去剤などの用途における様々な配合物の一部として、あるいは配合された接着剤の一部として有用である。通常の環境条件下でのそれらのかなり遅い蒸発(これは、適切な長さのR及びR基を選択することによって制御できる)のために、及び低く好ましいあるいはごく僅かな臭気のために、これらの化合物は、様々なラテックス塗料及びコーティング材中の凝集溶媒としても有用であり、その場合それらは典型的な溶媒、例えば、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート又はジイソブチレート、ケトン、及び芳香族炭化水素に加えて又はそれに代えて配合に入れることができる。
【0050】
化合物(3)及び(4)並びにそれらの任意の別個もしくは混合された立体異性体も、様々なポリマー、例えば、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクテート)、及びポリサッカライドでの可塑剤として有用であることが発見されている。
【0051】
ポリ(塩化ビニル)ポリマー、PVC、は、塩化ビニルのホモポリマー又はコポリマーである。様々な重合度、架橋性の、多くのPVC化合物、及びコポリマー組成物が当分野では公知であり、工業的に生産されている。
【0052】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)、PHA、は、3-ヒドロキシアルカン酸のポリエステルホモポリマー又はコポリマーである。好ましくは、PHAは、3〜18の炭素原子を有する直鎖状の3-ヒドロキシアルカン酸フラグメントから構成される。ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、PHB、は生物学的に、例えば、様々な微生物によって産生されるホモポリマーである。純粋なPHBポリマーは、狭い範囲の加工温度を有する脆いポリマーであり、その融点からわずか20〜30℃上の温度で容易に分解する。
【0053】
ポリ(ラクテート)、又はポリ(ラクチド)、PLA、は、様々な立体化学の乳酸の繰り返し単位を含む公知のポリエステルホモポリマーである。
【0054】
ポリサッカライドは、グリコシル結合で連結されたヘキソース又はペントースフラグメントを含む、直鎖状又は分岐状の、ホモポリマー及びコポリマーである。ポリサッカライドは、アシルアミド基、硫酸エステル基、カルボン酸エステル基、アルキル及びヒドロキシアルキルエーテル基などの様々な追加の基を任意選択で含んでいてもよい。そのような追加の基は自然源に由来するポリサッカライド中に存在してもよく、あるいは人工的に導入することもできる(すなわち、セルロースのアシル化による)。ポリサッカライドの例には、セルロース及びデンプンのアシル化誘導体並びに天然もしくはアシル化されたキチン及びペクチンが含まれる。
【0055】
可塑剤は、上述したポリマーの1種以上を含むベース組成物に、ポリマー組成物のガラス転移温度を低くする目的で添加される化合物であり、それによって組成物をより柔軟にし、かつ加工(例えば溶融押出もしくは溶融成形による)されやすくする。可塑剤は、典型的には、様々な有効濃度で、且つ用いるポリマー及びコンパウンドされたポリマー配合物の所望の特性に応じて用いられ、可塑剤は可塑化されていないポリマーの1から80質量%の間の濃度で用いることができる。用いるポリマー及び可塑剤に応じて、可塑剤は、コンパウンドされたポリマーの物理的及び機械的特性のその他の変化、並びに、様々なガス、水、水蒸気、又は有機化合物に対する透過性に関するコンパウンドされたポリマーのバリア特性の変化を付与することができる。1種以上の異なる可塑剤が、押出可能もしくは成型可能なポリマー組成物の調製のための追加の化合物とともに、様々なブレンド物中に用いることができることも理解される。そのような追加の化合物には、様々な無機及び有機フィラー化合物、木材粉、強化用繊維、染料、顔料、安定化剤、潤滑剤、抗菌添加剤などが含まれる。
【0056】
可塑剤は、典型的には、ポリマーと、ポリマーの融点の上又は下の温度で混合することによって混合される。可塑剤は、任意成分である揮発性溶媒の助けを借りて導入することもできる。ポリマー組成物に可塑剤化合物を導入するための技術の多くの変形が当分野で公知である。
【0057】
可塑剤としての使用のためには、式(3)及び(4)の化合物は、R及びRがC〜C23の直鎖状もしくは分岐状アルキル(好ましくはC〜C12)である化合物から選択されることが好ましい。R及びRの具体的選択は、可塑化のために選択したポリマーと、目的とする特性及び用途に左右される。
【0058】
式(3)、(4)、及び(5a)のグリセロールケタールレブリン酸付加体は、PVC、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ラクテート)、及び様々なポリサッカライドポリマーのための可塑剤化合物として有用である。式(3)、(4)、及び(5a)の化合物は、広い範囲の濃度にわたってこれらのポリマーと相容性である。式(4)及び(5a)の化合物はPVCの可塑化に好ましく、なぜなら、かなりの量のフリーの水酸基をもつ可塑剤は、通常、PVC樹脂の安定性の問題によって、コンパウンドされたPVC樹脂中では一般に好ましくないからである。これらの付加体の合成に用いた反応剤中の様々なR及びR残基を選択することによって、最良の可塑化特性及び最良の相溶性に関してだけでなく、得られるポリマーのバリア特性、例えば、水分、ガス、溶媒、水浸出、及び臭気に対する透過性ならびに染色保持性に関しても、可塑剤の特性を微調整することもできる。所望の特性に応じて、式(3)、(4)、及び(5a)の化合物は様々な濃度、典型的には、可塑化されたポリマー組成物の5から80質量%の間の様々な濃度で用いることができる。しかし、実用には、ガラス転移点の顕著な低下を達成し、それにより、有用なポリマー組成物を得るためには、5〜25質量%の可塑剤を備えることで充分である。可塑剤化合物(3)、(4)、及び(5a)は、別個の化合物として、もしくは混合物として使用することができ、混合物には、当分野で公知のその他の可塑剤、例えば芳香族及び脂肪族ジカルボン酸エステル、エポキシ化トリグリセリドなどを含む混合物が包含される。
【0059】
〔式3〜5のモノマーからの、ポリマー性グリセロールレブリネートケタール化合物の合成〕
【0060】
式(5)の化合物と、式(3)及び(4)の化合物(定義されたシス又はトランス立体化学をもつ化合物を含めて)、例えば、(3a)、(3b)、(4a)、(4b)は、さらに重合されて下記式(6):
【化23】

(式中、qは整数である。)
の単位を少なくとも1つ有するグリセロールとレブリネートの様々なコポリマー組成物を提供することができる。
【0061】
式(5)及び(5a)の環状ケタールラクトン化合物は、開環リビング重合条件下での重合に用いるために特に適している。そのような条件は当分野で周知であり、様々なプラスチック及び繊維の製造における様々な用途に適した高分子量の溶融加工可能ポリマーを生成することが知られている。例えば、米国特許第5,028,667号、同5,292,859号、同5,095,098号、同5,210,108号明細書は、様々なラクトン類及びその混合物のリビング重合を行うために適した触媒と使用方法の記載を含んでいる。同様に、J. Macromolecules (2001, 34, 8641-8648)は、ジオキサン類を重合するための条件及び触媒の記載を含んでいる。これらの条件及び触媒は式(5)及び/又は(5a)の化合物の重合又は共重合に有用であり、式(1b)のシス単位を含む、グリセロールとレブリネートの完全な交互ケタール-エステルコポリマーを生成する。そのようなポリマーは、実質的に無色の形態で得ることができ且つ様々な形状に、溶融による加工、押出、キャスティング、及びロール加工することができる、澄んだ熱可塑性の透明なポリマーである。
【0062】
式(6)の単位を含むポリマーの合成はリビング重合に限られない。ヒドロキシエステル(3)及びジエステル(4)は、適切な触媒の存在下での重縮合反応によって、式(6)の少なくとも1つの単位を含む有用なポリマーに変換することもできる。重縮合による様々なポリエステルの合成の技術は古く、適切な触媒の多くの例が知られている。ポリエステルの合成のための多くの公知の触媒が、式(6)の少なくとも1つの単位を含むポリマーを製造するために使用できることが発見されている。適切な触媒の非限定的な例には、アルカリ及び遷移金属アルコキシド、酸化ゲルマニウム、アルカリ金属アルコキシド、ナトリウム、及び酸が含まれる。さらなる例には、様々なチタンのアルコキシド及び錫(II)オクタノエートが含まれる。触媒及びそれらの使用方法のその他の記載は、例えば、米国特許第4,133,800号、同4,205,157号、同4,208,527号、同5,028,667号、同5,095,098号、同5,210,108号、同5,208,297号、同5,202,413号、同5,292,859号、同5,342,969号、同5,565,545号、同6,828,727号明細書、及びそれらに引用された参考文献に見ることができる。
【0063】
定義されたシス及びトランス立体化学をもつ化合物、例えば(3a)、(3b)、(4a)、(4b)を含めた式(3)及び(4)の化合物は、典型的には、有効量の重縮合触媒の存在下で、かつ蒸留によってアルコール(ROH)又はエステル(RCOOR)の除去を可能にする条件下で重合される。これらの化合物の重合のためには、ROHアルコールが一級又は二級アルコールであることが好ましく(但し必須ではない)、かつ、重縮合時に生成する式RCOORのエステル及び/又はアルコールROHが、式(3)、(4)、及び/又は(5)のモノマーの沸点よりも充分に低い沸点をもち、それによって、形成されるポリマーの集まりから容易に除去できることも好ましい。
【0064】
重合反応は、不活性溶媒の存在下、又はニート(すなわち希釈しない)の形態で行うことができる。溶媒の好ましい非限定的な例は、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及びエーテル類である。
【0065】
得られるポリマーの特性は、重合度及びそれらの合成に用いるモノマーの立体化学に応じて異なる。
【0066】
式(6)の単位を含む、グリセロール及びレブリネートのエステルケタールポリマーは、様々なポリマーとのポリマー性可塑剤として有用である。例えば、これらのポリマーは、PVC、ポリエステル(例えば、PHA、PHB、及びPLAなど)、及びアシル化セルロースなどのポリサッカライドを可塑化するために用いられる。これらのポリマーの可塑化のためには、グリセロールのエステルケタールポリマーを、典型的には、最も高い融点をもつ成分を溶融又は軟化させるのに充分に高い温度で、かつ好ましくは(可塑化されたポリマーのいかなる分解も最小化するために)不活性雰囲気下で、可塑化されていないポリマーとブレンドする。これらの化合物を用いた可塑化は、溶媒の助けを借りて達成することもでき、溶媒は、典型的には均一なブレンド物が得られた後で除去される。可塑化された組成物は、その他の添加剤、例えば、安定化剤、無機及び有機のフィラー、強化繊維、顔料、染料などを含んでもよい。式(6)のエステル-ケタールの繰り返し単位を有するポリマーを含む可塑化された組成物は、PVC、PHA、PHB、PLA、及びポリサッカライドの他の公知の可塑化された組成物から様々な消費製品及び工業製品を生産するために典型的に使用されている、フィルム、繊維、チューブ、パイプ、及び様々な形状のその他の目的物にキャスト又は成型又は押し出すことができる。
【0067】
〔グリセロールレブリネートケタール化合物と、ノルマルα-オレフィンのエポキシドとの反応〕
【0068】
別の態様では、式(3)の化合物はエポキシドと反応させられる。好ましくは、式(3)の化合物はエステルであり、フリーの酸又は塩ではない。このエポキシドは、ノルマルα-オレフィン(NAO)のエポキシド、又はエポキシ化された不飽和脂肪酸エステルである。
【0069】
反応生成物の最初の組は、式(3)の化合物とNAOエポキシドとの反応によって形成できる。得られる生成物は、下記式(7)を有する。
【0070】
【化24】

【0071】
式(7)中、Rは、直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、アリール、アラルキル、又はアルキルオキシアルキルであり、R又はRの1つは水素であり、他方はC〜C30の直鎖状アルキルである。好ましくは、C〜C14直鎖状アルキルである。
【0072】
式(7)の化合物は、下記式(8)を有するNAOの1,2-エポキシドから調製される。
【0073】
【化25】

【0074】
式(8)中、RはC〜C30の直鎖状アルキルであり、好ましくは、C〜C14の直鎖状アルキルである。
【0075】
式(8)の化合物を、酸触媒及び任意選択により不活性共溶媒の存在下で、式(3)の化合物と反応させる。
【0076】
典型的には、エポキシドと式(3)の化合物とを反応させるための触媒には、当分野で公知の様々な酸が含まれる。そのような条件は、一般的に、式(3)の化合物と、エポキシ化した不飽和脂肪酸エステルとの反応に適用可能である。そのような触媒の非限定的な例には、硫酸、塩酸、ホウフッ化水素酸、臭化水素酸などの無機強酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸などが含まれる。プロトン化したスルホン酸基を含む様々な樹脂も、反応の終了後にそれらが容易に回収できるために有用である。酸の例にはルイス酸も含まれる。例えば、三フッ化ホウ素及びBFの様々な錯体、例えば、BFジエチルエーテラート、も有用である。その他のルイス酸の例には、無水のSnCl、SnCl、TiCl、AlCl、シリカ、酸性アルミナ、チタニア、ジルコニア、様々な酸性クレー、混合アルミナもしくはマグネシウム酸化物などが含まれる。無機酸、スルホン酸、又はルイス酸誘導体を含む活性炭誘導体も使用できる。
【0077】
本開示は特定の触媒又は触媒の量に限られない。当業者は、本明細書に記載した調製において用いる触媒組成物とその量の部分について多くの変形を実施できる。高温は、より反応性の低い触媒しか用いずに反応を加速するために使うことができるが、反応混合物の温度は多くのグリセリルエーテル生成物を作ることを成し遂げるために決定的に重要ではなく、なぜなら、より活性の小さな触媒を用いてさえ、反応はなお進行して所望の化合物を生成するからである。触媒の量及び種類は、反応に用いるエポキシドの具体的な化学組成と式(3)の化合物の化学組成とに左右され、当業者によって容易に確立されうる。
【0078】
エポキシドとの反応は、反応条件下で不活性な共溶媒の(場合により)存在下で実施することができ、共溶媒は典型的には反応の最後に蒸留によって除去される。典型的には、充分な量の共溶媒又は反応剤、例えば、式(3)の化合物、を用いてエーテル結合形成を介してのエポキシドの架橋を最少化することが望ましい。適切な共溶媒の非限定的な例には、飽和炭化水素、エーテル、及びポリエーテルが含まれる。典型的には、全ての過剰な溶媒及び未反応出発物質が、反応の終了後に、標準圧又は減圧での蒸留によって除去される。蒸留の前に、触媒を中和、あるいはそうでなければ除去することも好ましい。
【0079】
式(3)の化合物はNAOエポキシドの非常に良い溶媒であるので、エポキシドと式(3)のグリセロール誘導体との間の反応も、後者の化合物の過剰下、典型的には2〜20倍のモル過剰で、都合よく行うことができる。不十分に過剰な化合物(3)を用いた場合、エポキシドと式(3)の化合物とのオリゴマーポリエーテル付加体が形成される。
【0080】
式(7)の化合物は、下記式(7a)を有するカルボン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩に、鹸化によってさらに変換される。
【0081】
【化26】

【0082】
鹸化は、典型的には、充分な量のアルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物又は炭酸塩の存在下で水又は水-アルコール混合物中で、かつ、例えば減圧下での蒸留によって過剰な式(3)の化合物及び/又は共溶媒の除去の後に行われる。式(7a)の化合物の塩は、水溶液で、又は水及び全ての揮発性の共溶媒の蒸発の後、実質的に無水のニートの形態で貯蔵され且つ使用できる。
【0083】
〔グリセロールレブリネートケタール化合物と、不飽和脂肪酸エステルのエポキシドとの反応〕
【0084】
別の化合物の組が、式(3)の化合物と、不飽和脂肪酸エステルのエポキシドとの反応を用いることによって本明細書において提供される。好ましくは、式(3)の化合物はエステルであり、フリーの酸又は塩ではない。これらのエポキシドは、式(8)のNAOエポキシドから式(7)の化合物を作るための上述した方法に実質的に類似した方法で調製される。
【0085】
不飽和脂肪酸は、10〜24の炭素原子と少なくとも1つの二重結合を有する直鎖状モノカルボン酸を意味する。二重結合(複数の場合)は、互いに共役又は非共役であるがアレン配置にはない任意の位置であってよく、二重結合の全ては独立してシス又はトランスであることができる。不飽和脂肪酸は、1〜3の二重結合を有することが好ましい。脂肪酸は、例えば、様々な植物油、魚油、及びパーム油のトリグリセリド中などにみられる、様々な不飽和及び飽和脂肪酸の混合物から構成されうる。
【0086】
不飽和脂肪酸のエステルは、上述した脂肪酸と一価又は多価アルコールとのエステルを意味する。
【0087】
一価アルコールは、1〜12の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の一級又は二級アルカノール又はアルコキシアルカノールである。アルカノールの好ましい例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、イソアミルアルコール、2-エチルヘキサノールである。好ましいアルコキシアルカノールは、3〜12の炭素原子を有する一級又は二級アルコールであり、1〜8の炭素原子を有する直鎖状、分岐状、又は環状のアルコキシ基がヒドロキシル基の隣接(ビシナル)位置に配置されている。そのようなアルコキシアルカノールは、典型的には、アルカノールによるアルキルオキシランの開環によって誘導される。アルコキシアルカノールのその他の適切な例は、フルフラールの水素化によって容易に得られるテトラヒドロフルフリルアルコールである。最も好ましいものは、それらの入手性、価格、及びそれらのエステルの満足すべき安定性により、一価アルコールである。
【0088】
多価アルコールは、1〜6のヒドロキシル基を有する直鎖状又は分岐状のポリヒドロキシル化アルカンである。典型的な例は、エチレングリコール、プロピレン-1,2及び1,3-ジオール、ブチレングリコール異性体類、グリセロール、1,2,4-トリヒドロキシブタン、ペンタエリスリトール、キシリトール、リビトール、ソルビトール、マンニトール、及びガラクチトールである。多価アルコールは、任意選択で1つ以上のエーテル結合を含んでいることもでき、そのような多価アルコールの適切な例は、イソソルビッド、ソルビタン異性体類、及びジグリセロールである。
【0089】
多価アルコールの実質的に全てのヒドロキシル基が、不飽和脂肪酸基でエステル化されていることが好ましい。工業的な実施においては、完全なエステル化を達成することは実際的ではないだろうということが理解される。また、工業的な実施において、混合された脂肪酸組成物が用いられる場合には、脂肪酸基の必ずしも全てが不飽和であることはできず、いくらかの完全に飽和の脂肪酸基が存在しうることも理解される。実際に、典型的な植物油(例えば、大豆油、亜麻仁油、カノーラ油、サフラワー油、ヒマワリ油、コーン油、ひまし油、それらのブレンド物など)のトリグリセリド中に存在するような不飽和及び飽和の脂肪酸エステルの混合物を用いることが価格優位性をもつ。しかし、その混合された脂肪酸エステルが、主として不飽和脂肪酸エステルを含むことが好ましい。モノ不飽和脂肪酸エステルの高い含有量を有する脂肪酸エステル、例えば、高オレインカノーラ油に存在する組成物、を用いることも好ましい。10-ウンデシレン酸のエステルも好ましい。その他の好ましい出発物質は、植物油(例えば、様々なバイオディーゼル燃料の工業生産に通常用いられる、大豆油、カノーラ油、及びその他の不飽和トリグリセリド)のエステル交換によって誘導される脂肪酸メチルエステルの混合物である。
【0090】
様々な不飽和脂肪酸エステルは、任意選択で、ブレンド、混合、部分的水素化、あるいは二重結合の位置又は立体化学の変更のための異性化をされることができる。
【0091】
エポキシ化不飽和脂肪酸エステルは、その不飽和脂肪酸エステルの少なくとも1つの二重結合がエポキシ基に酸化されていることを意味する。そのような酸化は当分野では周知であり、例えば、過酸化水素及びカルボン酸(例えばホルメート又はアセテート)を用いることによって、あるいはハロヒドリン法によって、工業規模で容易に行うことができる。しかしながら、不飽和脂肪酸エステル中に存在する過半数の又は全ての二重結合のエポキシ化が達成されることが好ましい。実際には、エポキシ化脂肪酸エステルは、エポキシドの加水分解又は転位から、及び脂肪酸鎖の架橋から生じるかなりの量の副生物を含みうる。少量のエポキシ化副生物及びエポキシド分解副生物を含むエポキシ化脂肪酸エステルの使用は、完全に本明細書の開示の範囲内である。
【0092】
モノ不飽和脂肪酸エステルのエポキシドと式(3)の化合物から誘導されるエーテルは、下記式(9)を有する。
【0093】
【化27】

【0094】
式(9)中、Rは、直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、アリール、アラルキル、又はアルキルオキシアルキルであり、A又はBのうち1つはHであり、他方はエステル化されたカルボキシルであり、n及びmはそれぞれが0〜20の値を有する整数であり、m+nの合計の値が8〜21の範囲である。
【0095】
互いに近接した位置にあるエポキシ基(複数)を有する、不飽和脂肪酸エステルのビスエポキシド又はトリスエポキシドを用いる場合は、分子内エポキシ開環反応が起こり、それぞれが同一の脂肪酸炭素鎖の2つの炭素原子を連結している1つ以上のエーテル結合の形成をもたらす。典型的には、そのようなエーテル結合は、テトラヒドロフラン(より多い)とテトラヒドロピラン(より少ない)環の形成をもたらし、そのことにより、式(3)の化合物に由来するペンダントエーテル基を含む不飽和脂肪酸エステルの酸素化誘導体の立体異性体の複雑な混合物が形成される。
【0096】
例えば、メチレン基によって分離された2つの二重結合を有するジ不飽和脂肪酸から誘導されたビスエポキシドからのそのような界面活性剤生成物の代表的異性体は、下記式(10a)及び(10b)を有する。
【0097】
【化28】

【0098】
式(10a)及び(10b)の化合物は、典型的には混合物として形成され、混合物はその他の付加体、例えば、式(3)の化合物の別の分子とのそれぞれのエポキシ基の開環で生じるジ(グリセリルレブリネートケタール)エーテル付加体も含み、2つの水酸基と2つのペンダントエーテル(グリセリルレブリネートケタール)基とを含む酸素化された脂肪酸誘導体をもたらす。
【0099】
好ましくは、上記のエポキシ化された脂肪酸エステルのエーテル付加体は、触媒の存在下における式(3)の化合物の反応と、続いて、減圧下での蒸留による全ての過剰な式(3)の化合物と全ての共溶媒の除去によって形成される。
【0100】
あるいは、エポキシ化された不飽和脂肪酸エステルと式(3)の化合物との付加体は、エポキシ化されたトリグリセリドを、触媒の存在下で式(3)の化合物で処理することによって調製できる。そのような代替の態様では、トリグリセリドポリオール化合物が形成される。これらの化合物は、フリーの二級ヒドロキシル基と、脂肪酸鎖に結合した(グリセリルレブリネートケタールエステル)エーテルペンダント基とを有する。任意選択で、エーテル結合はそのような付加体中に存在してもよく、エーテル結合は1つの脂肪酸鎖の2つの炭素原子を連結し(それによってテトラヒドロフラン又はテトラヒドロピラン環を形成する)、又は2つの異なる脂肪酸鎖の2つの炭素原子を連結することができる。
【0101】
エポキシ化されたトリグリセリドとグリセロールの(又はケタール/アセタールで保護されたグリセロールの)そのような付加体は、典型的には、当分野で公知のエポキシ化された大豆油、亜麻仁油などから調製される。これらの付加体が、式(9)、(10a)、及び(10b)の化合物を製造するために有用であることを本明細書中に記載している。式(9)、(10a)、及び(10b)の化合物へのトリグリセリド付加体の変換は、触媒量の塩基の存在下で、一価アルカノールとのエステル交換反応によって達成できる。適切な塩基の非限定的な例は、アルカリもしくはアルカリ土類金属の水酸化物、又はアルカリ金属及びアルカノールのアルコキシドである。
【0102】
化合物(3)とヒドロキシル化脂肪酸エステルとの上記エーテル付加体のカルボキシル基は、鹸化をさらにうけて、塩(典型的には、下記式(11)、(12a)、及び(12b)を有するジカルボン酸化合物の、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、又はアミン塩)を与えることができる。
【0103】
【化29】

【0104】
上記式中、E又はDの1つは水素であり、他方はカルボキシルである。あるいは、式(11)(12a)、及び(12b)の塩化合物は、式(3)の化合物とエポキシ化トリグリセリドとの付加体の直接の鹸化によって得られる。
【0105】
式(7a)、(11)、(12a)、及び(12b)の化合物のカルボキシル基、又は式(7)、(9)、(10a)、及び(10b)の化合物のカルボキシル基は、一級又は二級のアルキルアミン又はアミノアルコールでアミド化することもできる。
【0106】
式(7a)、(11)、(12a)、及び(12b)のカルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミンもしくはアンモニウム塩、及びアミドは、様々な配合物中で用いることができる有用なイオン性のマイルドな界面活性剤である。
【0107】
式(7a)、(11)、(12a)、及び(12b)のカルボン酸から誘導される界面活性剤は、広い範囲のpH(例えば、pH4〜pH13)において、冷たい及び熱い水溶液中で安定である。これらの界面活性剤、乳化、及びミセル形成特性は、溶液中のアルカリ土類金属イオンの存在によって悪影響を受けない。このことは、これらを、硬水中での使用を目的とする配合物において有用なものにする。
【0108】
これらの化合物は単独で、又は、洗浄用、皿洗い用、洗濯用、化粧用、及びパーソナルケア用製品、グリース除去剤などに用いられる、製剤の基礎となる組成物を構成するその他の界面活性剤、溶媒、グリコール、ポリオール、香料、着色剤、生物学的活性添加剤、生物学的不活性添加剤、酵素、及び湿潤剤と様々に組み合わせて用いることができる。式(7a)、(11)、(12a)、及び(12b)のカルボン酸から誘導される化合物の界面活性化合物としての使用のための有効濃度は、配合の目的とする用途に左右され、当業者が実験によって簡単に確立することができる。これらの化合物の有効濃度は、典型的には、配合した製品の0.001%〜100%の範囲である。
【0109】
式(7)、(9a)、(10a)、及び(10b)の化合物、及び式(3)の化合物とエポキシ化トリグリセリドとの付加体は、PVC、ポリエステル類、例えば、PHA、PHB、PLA、及びポリサッカライドのための可塑剤として有用であることも見出している。
【0110】
〔グリセロールレブリネートケタールとその他のモノマーのコポリマー〕
【0111】
別の態様では、式(3)、(4)、(5)、及び(5a)を有する化合物から選択されるグリセロールケタールモノマー及びそれらの立体異性体は、当分野で公知の様々なその他のモノマーとのコポリマーの合成に用いることができる。式(1a)のケタール繰り返し単位を含むコポリマーは、広範囲の物理特性をもち、かつ、式(3)、(4)、(5)、及び(5a)のモノマーと、様々な多価アルコール、ジ及びトリカルボン酸、ヒドロキシ酸、及び環状エステルから選択される1種以上の化合物との縮合又はエステル交換反応によって調製できる。
【0112】
有用な多価アルコールの非限定的な例には、2〜20の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルカンの二価アルコール、グリセロール、ジグリセロール、イソソルビッド、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエーテル類、例えば、ヒドロキシル末端のポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)など、が含まれる。
【0113】
好適なジカルボン酸の例には、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、フタル酸異性体類、トリメリット酸、クエン酸、イタコン酸、ナフタレンジカルボン酸の異性体類の、フリーの酸、低級アルキルエステル、又は酸無水物のいずれも含まれる。
【0114】
ヒドロキシ酸及びそのエステルの例は、コポリマーとしても使用でき、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、及び3-ヒドロキシアルカン酸を含むことができる。
【0115】
ヒドロキシ酸は、トリグリセリドを含めた、脂肪酸のヒドロキシル化誘導体及びそのエステルによってさらに例示できる。当分野で公知の多価ヒドロキシル誘導体を含めたそのようなヒドロキシル化された脂肪酸エステルは、例えば、エポキシ化脂肪酸エステルを、水酸基を有する1種以上の化合物と反応させることによって得られ、このとき1つ以上のオキシラン基がエポキシド開環反応を受ける。
【0116】
好適なヒドロキシ酸は、ヒドロキシル化された芳香族カルボン酸、例えば、ヒドロキシル化された安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸、桂皮酸、フェルラ酸などによってさらに例示されうる。
【0117】
ラクチド、グリコリド、1,4-ジオキサン-2-オン類、アルキル化された1,4-ジオキサン-2-オン類、ε-カプロラクトン、及び1,4-ジオキセパン-2-オン類が、環状エステルの好適な非限定的例である。
【0118】
式(1a)の繰り返し単位を含むグリセロールレブリネートケタールのコポリマーを作るためのその他の好適なコモノマーの中には、式(7)、(9)、(10a)、(10b)の化合物、ならびに下記式(7b)の化合物も含まれる。
【0119】
【化30】

【0120】
式(7b)中、Rは、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル又はアルケニル、アリール、アラルキル、又はアルキルオキシアルキルであり、R又はRの1つはHであり、かつ他方は水素又はC〜C30直鎖状アルキルである。
【0121】
式(7b)の化合物で、6つの炭素原子より短い直鎖状アルキルを有する化合物は、化合物(7)の調製のために上述した方法と実質的に同様の方法で、式(3)の化合物を、相当する直鎖状アルキルエポキシドと反応させることによって調製することができる。式(3)の化合物と揮発性エポキシド、例えばプロピレンオキシド及びエチレンオキシドとの反応のための条件は、加圧下で反応を行うことを含む。
【0122】
式(3)、(4)、(5)、及び(5a)のモノマーと、多価アルコール、ジ及びトリカルボン酸、ヒドロキシ酸、及び環状エステルから選択される1種以上の化合物とからのコポリマーの調製は、式(1a)の繰り返し単位を含むホモポリマーの調製について上述した触媒の1種以上と条件を用いることによって行うことができる。得られるコポリマーは、ヒドロキシル又はエステル化されたカルボキシルのいずれかが末端となりうる。ポリマーは、線状、分岐状、スター状、又は架橋されていることができ、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、又はそれらの任意の組み合わせでありうる。
【0123】
特に興味があり且つ有用なものは、式(1a)の繰り返し単位を含むヒドロキシル末端ポリマー及びコポリマーである。そのような化合物は、広範囲に変わる特性をもつポリウレタンポリマーを作るために有用であることが発見されている。
【0124】
多くのポリウレタンポリマーとそれらの調製の方法が当分野で公知である。ポリウレタンポリマーは、特に工業的に有用な化合物である。それらには多数の用途があり、なぜなら、得られるポリマーの最終的な特性が、用いる活性水素モノマー(典型的にはポリヒドロキシル化合物)とイソシアネートの選択によって、かつ、完成したポリマー製品を調製するために用いられる条件を選択することによって、大きく影響を受けうるからである。
【0125】
式(6)の繰り返し単位を含むポリマーの多くは、ポリウレタンポリマーを作るために有用である。ポリウレタン合成に使用するためには、式(6)の繰り返し単位を含むポリマーは、ヒドロキシル末端の形態で調製することができ、その場合、代表的ポリマー構造当たり平均で、2つ以上のヒドロキシル基が存在する。これは、典型的には、式(3)、(4)、(5)、(5a)の化合物の立体異性体から選択される少なくとも1種のモノマーを用いて、2つ以上のヒドロキシル基を有するコポリマー多価アルコールの充分な量の存在下で重合反応を行うことによって行うことができ、重合生成物は500Daを超え、より好ましくは1000Daを超える平均分子量を有することが好ましく、かつ2つ以上のヒドロキシル基を有する。式(6)の単位を含む得られる重合生成物は、線状、分岐状、架橋、又はスター形状のポリマーであることができる。式(6)の単位を含む1種以上のそのような重合生成物は、次に、2つ以上のイソシアネート基を有する1種以上のイソシアネート化合物との反応において、ポリオール化合物として用いることができる。多くの好適なイソシアネート化合物が、ポリウレタン合成の分野で公知である。イソシアネート化合物の非限定的な例には、ジイソシアネート化合物、例えば、トリレンジイソシアネート異性体類、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)などが含まれる。イソシアネート化合物のさらなる非限定的な例には、ポリイソシアネート化合物が含まれ、上記ジイソシアネート化合物の1種を多価アルコール又は多価アミンと反応させることによって得ることができる。適切なポリイソシアネート化合物の非限定的な例には、式(6)の繰り返し単位を含む多価アルコール生成物の1種以上を、その水酸基とイソシアネート基との間の反応を起こさせるために充分な条件下で反応させる事によって得られる1種以上のジイソシアネート化合物の付加体も含まれる。そのようなポリイソシアネート化合物は、様々な脂肪族及び/又は芳香族ジイソシアネートの適当量を、式(6)の繰り返し単位を含む多価アルコールと混合し、かつ加熱及び/又は反応を促進するために充分な触媒を用いることによって反応を起こすことで得ることができることを見出している。ポリイソシアネート化合物を作るために適した典型的触媒の非限定的な例には、ジブチル錫ジラウレート、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO(商標), TED)などが含まれる。式(6)の単位を含む多価アルコールからポリイソシアネート化合物を作る反応は、不活性溶媒の存在下で行うことができ、溶媒は任意選択で反応の最後に蒸留によって除去してもよい。
【0126】
式(6)の繰り返し単位を含む多価アルコールの1種以上は、次に、代表的分子1分子当たり2つ以上のイソシアネート基を有する1種以上のイソシアネート化合物と反応させられ、それによって代表的ポリマー分子1分子当たり、式(6)の単位1つ以上を含むポリウレタンポリマーをもたらす。
【0127】
そのような反応は、ポリウレタン合成の分野での反応に通常知られている条件下で容易に起こり、その分野で公知の1種以上の触媒の使用及び/又は昇温することを含む。典型的触媒の非限定的な代表例には、ジブチル錫ジラウレート及びDABCOが含まれる。昇温は、所望するポリウレタンポリマーの生成を加速し、典型的には、30から160℃の間の温度が、反応を開始し且つ促進するために充分である。この反応は、特定した範囲外の温度で行うこともできるが、より低い温度では反応は非常に遅くなるおそれがあり、一方で、より高い温度では、副反応と部分的なポリマーの分解が生じうる。一般に、式(6)の繰り返し単位を含むポリウレタンポリマーの調製は発熱反応であり、追加の加熱なしにうまくいく。式(6)の繰り返し単位を含むポリウレタンポリマーの合成は、実質的に無水条件下で行われることが好ましい。少量の水が存在する場合は、生成物は典型的にはウレタンと尿素結合の両方を含む発泡(フォーム)ポリマーである。発泡ポリマーが望まれる場合は、当分野で公知の1以上の不活性プロペラント化合物(発泡剤)を用いて反応が実施される。
【0128】
したがって、当分野で公知のポリウレタンポリマーと実質的に同様な方法で、式(6)の単位を含む様々なポリウレタンポリマーが調製され、多量のポリウレタン製品の生産に用いることができる。式(6)の単位を含むポリウレタンポリマーは、固体又は粘稠な液体であり、剛性又は柔軟であり、それらは熱硬化性又は熱可塑性ポリマーとして調製できる。具体的なポリマー組成物に応じて、それらは、完成されたポリマー製品を生産するために必要な様々な形状にキャスト、押出、あるいは成形されうる。式(6)の単位を含むポリウレタンポリマーは、当分野で公知の様々な添加剤、例えば、有機又は無機フィラー、顔料、安定化剤、抗酸化剤、及び潤滑剤などを含むことができる。
【0129】
本明細書に開示したポリウレタンポリマーは、得られるポリマーの重量の主要部分を提供するための低コストの再生可能なモノマーを用いて作られており、それにより、再生が可能ではない石油又は石炭由来のモノマーを主に又は排他的に使用して作られる当分野で公知のポリウレタンと比較した場合に、コスト優位性を提供する。
【0130】
式(6)の単位を含むポリウレタンポリマーは、モノマーレベルでリサイクル可能でもある。そのように望む場合は、それらの有用な寿命の最後で、式(6)の単位を含むポリウレタンポリマーをエステル交換反応によって処理して、ポリマーの分解及び式(3)、(4)、(5)、及び(5a)の1種以上のモノマーの形成をさせることができ、これは回収され、精製され、かつ再使用されうる。
【実施例】
【0131】
〔実施例1〕
98%純度のレブリン酸 36g、99%純度のグリセロール 28g、濃硫酸 0.08ml、及びn-ヘプタン 60mlを、ディーン-スタークアダプターを備えた丸底フラスコ中で撹拌した。全体を、オイルバス中で加熱することによって還流させ、約36時間の間、すなわち約11mlの水がアダプターのトラップに集まるまで還流させた。反応混合物を、0.2gの炭酸カルシウムの添加によって中和した。ヘプタンを除去し、反応混合物を冷却し、式(1)の構造的繰り返し単位を有する化合物を含んだ非常に粘稠で淡褐色の蜂蜜状のポリマー付加体 53.2gが得られた。
【0132】
〔実施例2〕
実施例1で調製したポリマー付加体20.3gを、0.4gのナトリウムメトキシドを含む80mlのメタノールに溶かした。得られた溶液を室温で撹拌し、少量の遊離グリセロールが反応フラスコの底及び壁に分離した。反応液をガラス繊維の栓を通して濾過し、2gの無水リン酸二水素カリウムとともに30分間激しく撹拌することで中和し、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)100mlで希釈し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。この溶液をつぎに濾過した。MTBEと過剰のメタノールを減圧下で除去し、23.1gの透明な淡黄色の実質的に無臭の液体が得られ、これをガスクロマトグラフィーマススペクトル(GC−MS)で分析した。この液体は、メチルレブリネート約15%と、式(14)を有する化合物の立体異性体約82%とを含むことがわかった。
【0133】
【化31】

【0134】
式(14)の化合物の立体異性体は、ほぼ同様の積分面積を有する、GCクロマトグラム上の2つの部分的に分離可能なピークとして検出された。このピークは、以下の代表的なマススペクトルを有する。
約15.06分の保持時間で溶出される化合物のマススペクトルは以下のとおりである。
【0135】
【化32】

【0136】
約15.24分の保持時間で溶出される化合物のマススペクトルは以下のとおりである。
【0137】
【化33】

【0138】
得られた生成物の液体混合物は、下記式(15)のジグリセリルレブリネートケタールジメチルエステルの立体異性体類を約3%含むこともわかった。
【0139】
【化34】

【0140】
〔実施例3〕
実施例1で得られた反応生成物5gを、20mlの酢酸エチル及び0.2gのカリウムt-ブトキシドと混合した。全体を約45分間撹拌し、ポリマー状出発原料の完全な溶解が観察された。この反応混合物を、2gの無水リン酸二水素カリウムとともに約1時間撹拌することによって中和し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、過剰な酢酸エチルを減圧下で蒸発させた。得られた油状の透明な淡黄色液体(6.2g)をGC−MSで分析し、約14%のエチルレブリネート、約25%の下記式(16)のヒドロキシエステル異性体、及び約55%の下記式(17)のジエステルの立体異性体類を含むことがわかった。
【0141】
【化35】

【0142】
【化36】

【0143】
少量の下記化合物(18)の立体異性体も存在していた。
【0144】
【化37】

【0145】
〔実施例4〕
実施例1に従って調製したポリマー付加体5gと、カリウムt-ブトキシド0.2gを、真空下(1mm)にて120〜125℃で撹拌し(2時間)、約1mlの透明な留出物が集まった。この留出物をGC−MSで分析し、式(5)のラクトンケタールを主に含むことがわかった。式(5)の化合物は、以下に示す代表的な電子イオン化マススペクトルを有する。
【0146】
【化38】

【0147】
〔実施例5〕
実施例2で得られた式(14)のヒドロキシエステル10mlを、GC−MSで試験してエチルレブリネートが実質的に除去されるまで、真空下(6mm)で撹拌しながら加熱した(80℃、4時間)。得られた液体を94%純度のデセン-1,2-オキシド(Vicolox(登録商標)10ブランド、Arkema Group)2gと混合し、エポキシドの完全な溶解が室温で観察された。三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラート0.025mlを、撹拌した反応混合物に導入し、発熱反応が観察され、温度が約50℃まで短時間で上昇した。この反応混合物を20分間撹拌し、一部をGC−MS分析のために採取した。分析は、下記式(19a)及び(19b)のヒドロキシエステルケタール化合物のいくつかの立体異性体へ、エポキシドが完全に変換されたことを示した。
【0148】
【化39】

【0149】
〔実施例6〕
合成は、実施例5に準拠して行った。ただし、85%純度のオクタデセン-1,2-エポキシド2gを用いた。得られた反応生成物は、下記式(20a)及び(20b)を有していた。
【0150】
【化40】

【0151】
〔実施例7〜8〕
実施例5及び6の反応混合物から過剰な溶媒を減圧下(0.5mm、150℃)で蒸発させて、化合物(19a)、(19b)(実施例7)、又は化合物(20a)、(20b)(実施例8)の希釈されていない混合物を得た。得られた生成物混合物に10mlの水を添加し、わずかに過剰の0.1N NaOH水溶液でエステルを鹸化して、対応するナトリウム塩を水溶液で得た。これらの溶液は、乳化性及び界面活性をもっており、それらの特性は、1g/Lの塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの存在によって影響を受けない。
【0152】
〔実施例9〕
レブリン酸(98%純度、697.3g)、グリセロール(99%純度、554.2g)、濃硫酸(0.25g)、及び撹拌棒を、秤量した2リットル丸底蒸発用フラスコに入れ、4℃に冷却した効率的な垂直式冷却器を備えたロータリーエバポレーターで100rpmで回転させるようにセッティングし、6mmの最終真空度をもたらしうる真空ポンプを使用して真空を適用した。フラスコを回転させ、かつ80℃の初期設定温度のオイルバスを使用して加熱した。水の急速な蒸留が観察された。受け用フラスコ中に約130mlの水が集められた後、バスの温度を115℃に上げ、15分当たり約1mL未満まで蒸留速度が低下するまで水の蒸留を続けた。次にバス温を150℃まで上げ、反応混合物を0.2mm真空下で1時間加熱した。次に反応を止め、反応生成物の温度を室温と平衡させた。得られた重合生成物(1054.3g)は室温で、粘稠な淡黄色のべたつきのあるシロップ状の液体であり、冷水には事実上溶けなかった。
【0153】
次に、無水炭酸水素ナトリウム2gを添加し、6mmの真空を適用しながら、100℃にて2時間、ロータリーエバポレーターでフラスコに内容物を撹拌することによって触媒を中和した。中和した反応生成物は室温に冷やし、全ての不溶性の無機化合物を沈殿させた。得られた粘稠な液状コポリマーは室温で貯蔵し、以下の実施例において、デカンテーション又は濾過した形態で使用した。
【0154】
得られた生成物は、主に、式(1)の繰り返し単位を含むポリマーだった。
【0155】
〔実施例10〕
レブリン酸(98%純度、696.1g)、グリセロール(99.5%純度、607.5g)、濃硫酸(1.0g)、及び撹拌棒を、秤量した2リットル丸底蒸発用フラスコに入れ、4℃に冷却した効率的な垂直式冷却器を備えたロータリーエバポレーターで100rpmで回転させるようにセッティングし、6mmの最終真空度をもたらしうる真空ポンプを使用して真空を適用した。フラスコを回転させ、かつ80℃の初期設定温度のオイルバスを使用して加熱した。水の急速な蒸留が観察された。受け用フラスコ中に約110mlの水が集められた後、バスの温度を110℃に上げ、60分当たり約1mL未満まで蒸留速度が低下するまで水の蒸留を続けた(これに約5時間かかった)。次に反応を止め、反応生成物の温度を室温と平衡させた。得られた重合生成物(1087g)は室温で、粘稠な事実上無色のべたつきのあるシロップ状の液体であり、冷水に難溶性だった。
得られた生成物は、主に、式(1)の繰り返し単位を含むポリマーだった。
【0156】
〔実施例11〕
レブリン酸(98%純度、700.1g)、グリセロール(99.0%純度、607.4g)、濃硫酸(0.4g)、及び撹拌棒を、秤量した2リットル丸底蒸発用フラスコに入れ、4℃に冷却した効率的な垂直式冷却器を備えたロータリーエバポレーターで100rpmで回転させるようにセッティングし、6mmの最終真空度をもたらしうる真空ポンプを使用して真空を適用した。フラスコを回転させ、かつ80℃の初期設定温度のオイルバスを使用して加熱した。水の急速な蒸留が観察された。受け用フラスコ中に約130mlの水が集められた後、バスの温度を105℃に上げ、水の蒸留が事実上止まるまで水の蒸留を続けた(これに約6時間かかった)。次に反応を止め、反応生成物の温度を室温と平衡させた。得られた重合生成物(1097g)は室温で、粘稠な事実上無色のべたつきのあるシロップ状の液体であり、冷水に難溶性だった。
得られた生成物は、主に、式(1)の繰り返し単位を含むポリマーだった。
【0157】
〔実施例12〕
1.05モルのトリアセチルグリセロール、2.1モルのグリセロール、1.96モルのソルケタール(Solketal; 2,2-dimethyl-1,3-dioxolane-4-methanol)、2.65モルのエチルレブリネート、1.7モルのレブリン酸、0.4モルのα-アンゲリカラクトン(angelica lactone)、及び0.2mlの濃硫酸を、水冷冷却器を備えた丸底フラスコ中で、磁気式撹拌をし、かつ窒素下で100〜105℃に加熱した。アセトン、エタノール、水、酢酸、及び酢酸エチルの蒸留が見られた。蒸留が事実上止まるまで、撹拌しながらの加熱を続けた(約16時間)。得られた粘稠で透明で淡黄色の液体を2Lの蒸発用フラスコに注ぎ、全体をロータリーエバポレーターで、6mmの最終真空度をもたらしうる真空ポンプを使用して減圧において、110〜115℃に加熱した。水及び揮発物の蒸留が止まった後(約6時間)、得られた粘稠な重合生成物(939g)を室温まで冷却した。
得られた生成物は、主に、式(I)の繰り返し単位を含むポリマーだった。
【0158】
〔実施例13〕
1.02モルのグリセロール、2.95モルのレブリン酸、及び0.2mlの濃硫酸を、水の蒸留が事実上止まるまで、6mmの最終真空度をもたらしうる真空ポンプを使用して減圧下で、80〜90℃にロータリーエバポレーターで加熱した。得られた生成物(385g)は、主に、トリレブリノイルグリセリロールと1,2-ジレブリノリルグリセロールを含むエステル生成物の混合物だった。
【0159】
〔実施例14〕
出発反応混合物が実施例13に従って調製したグリセリルエステルの混合物40.2gを追加して含むこと以外は、実施例11に従って合成を行った。得られた生成物(1139g)は、式(1)の繰り返し単位を含むグリセロール分岐ポリマーだった。
【0160】
〔実施例15〕
実施例14に従って調製したエステルの追加量が82.2gだった以外は、実施例14に従って合成を行った。得られたポリマー(1226g)は、式(1)の繰り返し単位を含むグリセロール分岐ポリマーだった。
【0161】
〔実施例16〕
実施例11に従って調製した式(1)の繰り返し単位を含むポリマー生成物1021gを、6gのナトリウムメトキシドを含む1.2リットルのメタノール溶液を含む撹拌している反応器中に(1時間かけて)ゆっくり注いだ。室温で8時間撹拌した後、反応器の内容物を集め、ロータリーエバポレーターを使用して減圧下でメタノールを蒸発させた。得られた黄橙色の液体を分液ロートに移し、0.8Lのtert-ブチルメチルエーテルと完全に混合した。その内容物は4時間静置し、2層に分離させた。主にグリセロール、化合物(3)(式中RはHである)のナトリウム塩、及び少量のレブリン酸ナトリウムを含む下層は捨て、上層はロータリーエバポレーターを使用してtert-ブチルメチルエーテルを留去した。得られた淡黄色液体(992g)をGC−MSで分析して、12%のメチルレブリネート、シス及びトランス異性体のほぼ等量の混合物として約80%の式(3)の化合物(Rはメチルである)、並びに少量の式(5)の化合物及び式(21)と(22)を有する化合物の立体異性体(各約1%)を含むことがわかった。
【0162】
【化41】

【0163】
得られた式(3)の化合物の立体異性体混合物は、減圧下でメチルレブリネートを除去することによってさらに精製し、次に、0.5〜1ミリバールの真空と130℃に設定した温度において、落下膜式カラムを用いる蒸留によってさらに精製した。残った未蒸留化合物21及び22を集め、0.2%のナトリウムメトキシドを含むメタノールで処理して、メチルレブリネートと式(3)の化合物の20:80混合物を得た。
【0164】
〔実施例17〕
メタノールに代えてエタノールを反応で用い、出発ポリマー生成物(732g)を実施例12に従って調製したこと以外は、実施例16に従って反応を行った。得られた生成物はGC−MSで分析して、約9%のエチルレブリネートと、シス及びトランス異性体のほぼ等量の混合物として、88%の式(3)の化合物(Rはメチルである)を含むことがわかった。次に、式(3)の化合物は、減圧にてエチルレブリネートを留去することによってさらに精製した。
【0165】
〔実施例18〕
実施例9に従って調製したポリマー301.2gを、6グラムの水酸化ナトリウムを含む500mlのn-ブタノールとともに、室温で24時間撹拌した。得られた透明な黄色溶液は、減圧下にてロータリーエバポレーターで過剰なn-ブタノールを留去し、全体を分液ロート中で600mlのn-ヘプタンと混合した。主にグリセロールとレブリン酸ナトリウムと式(3)の化合物(RはHである)のナトリウム塩を含む下層を捨て、上層を、ペーパータオルを通して濾過した。得られた事実上無色の濾液は、ロータリーエバポレーターでヘプタンを留去して、透明な無色の液体(385g)を得て、これをGC−MSで分析した。この液体は、約24%のブチルレブリネートと、約73%の式(3)の化合物(Rはn-ブチルである)のシス及びトランス異性体の1:1混合物を含むことがわかった。
次に、化合物(3)は、減圧にてブチルレブリネートを留去することによってさらに精製した。
【0166】
〔実施例19〜23〕
実施例16に従って調製した、式(3)の化合物(Rはメチルである)の1.2:1のシス/トランス異性体混合物(96%純度、蒸留によって精製した)5gを、20mlの以下のそれぞれに溶かした:
(19)約0.2%w/wのナトリウムエトキシドを含む無水エタノール
(20)約0.2%w/wのナトリウムn-ブトキシドを含む無水n-ブタノール
(21)約0.4%のナトリウムイソブトキシドを含む無水イソブタノール
(22)0.3%のナトリウム3-メチルブトキシドを含む無水イソアミルアルコール
(23)0.3%のナトリウム2-エチルヘキソキシドを含む2-エチルヘキセニルアルコール。
【0167】
溶液は、室温(26℃)で、磁気式撹拌によって12時間撹拌した。エステル交換反応の進行は、反応混合物の少量をGC−MSで分析することによって追跡した。式(3)のエステル[式中、Rは、エチル(実施例19)、n-ブチル(実施例20)、イソブチル(実施例21)、イソアミル(実施例22)、及び2-エチルヘキシル(実施例23)]の形成が観察された。この反応は、シス/トランス異性体比の有意な変化をもたらさなかった。エステル交換が完了した後、反応混合物は、微粉末化したリン酸二水素カリウムとともに8時間撹拌することによって中和し、濾過した。過剰のアルコールは減圧下で各サンプルから蒸留し、それによって希釈されていない形態(ニート)の式(3)の化合物を粘稠な液体として得た。このニート化合物は、94〜97%純度(シス/トランス異性体混合物として)だった。
【0168】
〔実施例24〕
式(3)の化合物(R=CH、シス/トランス異性体の1.05:1の混合物、減圧下での蒸留によって約97%の純度に精製したもの)2309gを、約90g/時間の速度で落下膜式蒸留カラムに供給した。この蒸留カラムを0.5〜0.8ミリバールの真空に保ち、ホットフィンガーを130℃に保った。780gの留出物を集め、この留出物は、化合物(3)のシス/トランス異性体の1.55:1混合物を含むことがわかった。カラムを通過した未蒸留物質(1508g)は、式(3)の化合物のシス/トランス異性体の0.81:1の混合物を含むことがわかった。この手順を、主にシス又はトランス異性体のいずれかを含む混合物を用いて別個に数回繰り返した。5回の蒸留後、式(3)の化合物の93%純度のシス異性体180gを含むサンプルを得た。また、式(3)の化合物の88%純度のシス異性体226gを含むサンプルを得た。残りの物質は、シス/トランス異性体を82:18〜24:76の範囲の比で含むいくつかの画分に分割した。この実施例で調製したヒドロキシエステルは、実際上純粋(99.5%超)であり、感知できる量のグリセロール、メチルレブリネート、又は式(6)の繰り返し単位を含むオリゴマーを含んでいなかった。
【0169】
〔実施例25〕
ナトリウムメトキシド(0.1g)を、51gの式(3)の化合物(R=CH、シス/トランス異性体の1.05:1混合物、99.7%純度)中に溶かし、磁気式撹拌機、垂直式空冷冷却器、側管付きアダプター、及び蒸留したメタノールを集めるためのフラスコを備えた丸底フラスコ中に入れた。メタノールの蒸留がもはや認められなくなるまで(約2時間)、全体を、窒素下で大気圧にて撹拌し且つ180〜200℃に加熱した。反応混合物は急速に非常に粘稠になった。得られた溶融ポリマー(約41g)をフラスコからビーカーに注ぎ、冷やした。生成したポリマー生成物は、65〜70℃の融点をもつ、式(6)の繰り返し単位を含む粘弾性的な熱可塑性ケタール-エステルポリマーだった。それはかなりの褐色の変色をしていた。
【0170】
〔実施例26〕
ナトリウムメトキシドに代えてチタン(IV)イソプロポキシド0.08gを用い、反応を220〜240℃で3時間行ったこと以外は、実施例25に従ってポリマー合成を行った。フラスコの内容物が粘稠になった。少量のポリマー試料をフラスコから取り出し、冷却し、t-ブチルメチルエーテルを用いて粉砕し、GC−MS分析によって出発原料及びオリゴマーの存在を測定した。ポリマーは事実上この溶媒に不溶だった。溶媒抽出物は、化合物(5)、(5a)、(21)、及び微量の下記式(23)のアクリルオリゴマーの立体異性体を含むことがわかった。
【0171】
【化42】

(式中、tは2〜4の値を有する整数であり、Rはメチルである。)
【0172】
次に、6mmの真空を適用し、温度を260〜280℃に約1時間上昇させた。反応混合物を真空下で約140℃に冷却し、次に、約24gの溶融ポリマーをフラスコからビーカーに注いだ。得られた生成物は、式(6)の繰り返し単位を含む、透明で事実上無色の粘弾性的な熱可塑性ポリマーだった。このポリマーは70〜75℃の範囲に融点をもっていた。フラスコ中に残るポリマー(15g)は、次の実施例で用いた。
【0173】
〔実施例27〕
[実施例27A]
12:88のシス/トランス異性体比をもつ式(3)の化合物46gを用いたこと以外は、実施例25に従ってポリマー合成を行った。得られた生成物(36g)は、式(6)の繰り返し単位を含む、透明で事実上無色の粘弾性的な熱可塑性ポリマーだった。それは85〜90℃の範囲に融点をもっていた。
【0174】
[実施例27B]
92:8のシス/トランス異性体比をもつ式(3)の化合物41gを用いたこと以外は、実施例25に従ってポリマー合成を行った。得られた生成物(29g)は、式(6)の繰り返し単位を含む、透明で事実上無色の粘弾性的な熱可塑性ポリマーだった。それは90〜95℃の範囲に融点をもっていた。
【0175】
〔実施例28〕
52:48のシス/トランス異性体比をもつ式(3)の化合物(Rはn-ブチルである)44gを用いたこと以外は、実施例25に従ってポリマー合成を行った。得られた生成物(26g)は、式(6)の繰り返し単位を含む、透明で事実上無色の粘弾性的な熱可塑性ポリマーだった。それは72〜77℃の範囲に融点をもっていた。
【0176】
〔実施例29〕
実施例24で調製したポリマー15gを、磁気式撹拌機、短路蒸留ヘッド、及び0.08mmの最終真空度をもたらしうるポンプを用いて真空下で280〜300℃に保ったオイルバス中の受け用フラスコを備えた丸底フラスコ中で加熱した。無色透明な液体の蒸留が認められ、約6.2gの留出物を、氷浴によって冷却された受け用フラスコ中に集めた。この液体をGC−MSによって分析して、約62%の式(5)の化合物と、約34%の式(5a)の化合物を含むことがわかった。
式(5a)の化合物は、以下に示す代表的な電子イオン化マススペクトルを有する。
【0177】
【化43】

【0178】
フラスコ中に残ったポリマーは、0.2%のナトリウムメトキシドを含むメタノール20mlを用いてエステル交換した。このメタノール溶液をGC−MSで分析し、式(3)の化合物(R=CH、約22:78のシス/トランス異性体比をもつ)の98%純度のサンプルを含むことがわかった。
【0179】
〔実施例30〕
実施例25に記載した条件にしたがって調製した式(6)の繰り返し単位をもつポリマー130.6gを丸底フラスコに入れ、0.3gの錫(II)2-エチルヘキサノエート触媒を添加した。このフラスコは磁気式撹拌機を備え、窒素でパージされ、約160℃に加熱して内容物を溶融し、触媒を溶かした。0.1mmの最終真空度をもたらしうるポンプを使用して真空を適用し、フラスコの温度は約280〜300℃に上昇させた。透明で淡黄色の液体の蒸留が認められ、留出物(58g)は、氷浴を使用して冷却した受け用フラスコ中に集めた。
この留出物を冷却し、GC−MSによって分析して、約57%の式(5a)の化合物と、40%の式(5a)の化合物を含むことがわかった。得られた化合物の混合物46gを、クノーブナーゲルタイプの装置を使用した減圧下での蒸留によって分離し、96%純度の式(5)の化合物22gを含む画分と、94%純度の式(5a)の化合物14gを含む画分が得られた。両方の化合物とも、無色で事実上無臭の液体として得られ、これは長時間静置した場合にワックス状固体に固化した。
フラスコ中に残ったポリマーは、0.2%のナトリウムメトキシドを含むメタノールを用いてトランスエステル化した。このメタノール溶液をGC−MSによって分析して、96%純度の式(3)の化合物(R=CH、約19:81のシス/トランス異性体の比をもつ)を含むことがわかった。
【0180】
〔実施例31〜32〕
式(5)の化合物又は式(5a)の化合物の1つ(2g)を、0.5%のナトリウムメトキシドを含むメタノール10mL中にそれぞれ溶かし、その溶液を室温で20分間撹拌した。得られた溶液は、それぞれGC−MSによって分析して、事実上純粋(99%超)な、式(3b)(R=CH)のシス異性体を含むことがわかった。
【0181】
〔実施例33〕
実施例30にしたがって調製した式(5)の化合物8.6gと錫(II)2-エチルヘキサノエート0.03gを、窒素下で撹拌しながら、180〜220℃に加熱した。反応混合物の内容物は粘稠になり、45分後、反応を停止し、フラスコの内容物を室温に冷却した。得られた生成物は、主にシス配置を有する式(6)の繰り返し単位を含むポリマー(8.3g)だった。このポリマーは、透明で事実上無色の粘弾性的な熱可塑性ポリマーであり、95〜100℃の範囲に融点をもつ。
【0182】
〔実施例34〜49〕
式(6)の繰り返し単位を含み且つヒドロキシル基で末端封止されたポリマー鎖末端2つ以上を有する線状又は分岐コポリマーを、純度99.4%の式(3)の化合物(R=CH、シス/トランス異性体の51:49混合物)0.1モルと、下記のうちの1つとを共重合させることによって調製した。
(34)0.011モルの1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン
(35)0.006モルの1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン
(36)0.010モルの1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン
(37)0.008モルのペンタエリスリトール
(39)0.006モルのグリセロール
(40)0.002モルのソルビトール
(41)0.003モルのキシリトール
(42)0.006モルのエリスリトール
(43)0.09モルの1,4-ブタンジオール
(44)0.012モルのジエチレングリコール
(45)0.013モルの1,3-プロパンジオール
(46)0.015モルのネオペンチルグリコール
(47)0.02モルの平均分子量1200Daのポリエチレングリコール
(48)実施例34と同様、加えて0.001モルのジメチルアジペート
(49)実施例37と同様、加えて0.002モルのジメチルテレフタレート。
【0183】
重合は、垂直冷却管と、受け用フラスコに接続した、側管をもつ蒸留ヘッドとを備えた丸底フラスコ中で行った。全ての反応は、触媒としてのチタンイソプロピレート(50mg)の存在下、窒素下で、220〜230℃に保ったオイルバス中で約3時間、反応混合物を撹拌し且つ加熱することによって(メタノールの蒸留が事実上停止するまで)行った。その後、バス温を約160℃に下げ、反応混合物を、6mmの最終真空度をもたらしうるポンプを使用して真空下で1時間撹拌した。得られた粘稠で透明で事実上無色の液体を室温に冷却し、次の使用のために貯蔵した。得られたポリマーの量は、メタノールの計算した(理論的)喪失とたかだか追加の4%質量の損失と釣り合った。調製したポリマーは室温で非常に粘稠な液体だった。
得られたポリマーは、線状コポリマー(実施例43〜47)又は分岐コポリマー(実施例34〜42,48、及び49)だった。式(6)の繰り返し単位を含むコポリマーは、ヒドロキシル基で末端封止された2つ以上のポリマー鎖末端をもっていた。
【0184】
〔実施例50〕
実施例9に従って調製した式(1)の繰り返し単位を含むポリマー10.1g、イソホロンジイソシアネート3.0g、ジブチル錫ジラウレート0.032gを、ドライボックス中で、ガラスの撹拌棒を用いて室温で一緒に完全に混合した。得られた溶液の粘度はしだいに増大した。次に、この反応混合物を、ときどきガラスの撹拌棒で撹拌しながら130℃に30分間加熱し、粘稠で熱可塑性の事実上無色で透明なポリマーの形成が認められた。次に、得られたポリマーの塊を室温に冷却し、固化させた。式(1)の繰り返し単位を含む、得られたポリウレタンポリマーは、弱いコールドフロー特性をもつ硬くて事実上透明なポリマーだった。15℃未満の温度では、それは脆かった。このポリマーは90〜95℃の範囲の融点をもち、溶融加工及び押出ができた。ポリマー特性のいかなる有意な低下も、4回の溶融/冷却サイクル後に認められなかった。このポリマーは水に不溶であり、通常の有機溶媒、例えば、炭化水素、エーテル、又はアルコールに事実上不溶だった。
【0185】
〔実施例51〕
イソホロンジイソシアネートの量を1.78gに増やしたこと以外は、実施例50にしたがって合成を行った。得られたポリマーは、常温で、粘稠で透明な接着剤のような熱可塑性生成物であり、紙、アルミホイル、並びにポリエチレン及びポリピロピレンなどの低エネルギー表面に対する良好な接着特性をもっていた。このポリマーは事実上、水に不溶性だった。
【0186】
〔実施例52〕
1.42gのヘキサメチレン1,6-ジイソシアネートをイソホロンジイソシアネートの代わりに用いた以外は、実施例50にしたがってポリウレタンポリマーの合成を行った。得られた熱いポリマーを室温に冷却し、24時間、開放空気中においた。そのような方法で得られた生成物は柔軟な泡状物(フォーム)だった。それは、式(I)の繰り返し単位を含む、完全に硬化したポリウレタンポリマーであり、その性質は時間と共に大きく変わることはなかった。このポリウレタンポリマーは、事実上無色(灰白色)の熱硬化性ポリマーであり、溶融押出によって首尾良く再加工することはできなかった。この生成物は、水、及び炭化水素、エーテル、アルコールなどの通常の有機溶媒に事実上溶けなかった。
【0187】
〔実施例53〕
1.46gのトリレンジイソシアネート(80:20異性体混合物)をイソホロンジイソシアネートの代わりに用いた以外は、実施例52にしたがってポリウレタンポリマーの合成を行った。生成物は硬い泡状物(フォーム)だった。それは、式(I)の繰り返し単位を含む、完全に硬化したポリウレタンポリマーであり、その性質は時間と共に大きく変わることはなかった。このポリウレタンポリマーは、黄色の熱硬化性ポリマーであり、溶融押出によって首尾良く再加工することはできなかった。この生成物は、水、及び炭化水素、エーテル、アルコールなどの通常の有機溶媒に事実上溶けなかった。
【0188】
〔実施例53〕
2.28gの4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)をトリレンジイソシアネートに代えて用いた以外は、実施例52にしたがってポリウレタンポリマーの合成を行った。生成物は実施例52で得られた生成物にその特性及び外観が似ている硬い泡状物(フォーム)だった。
【0189】
〔実施例54〕
実施例34にしたがって調製した分岐状のヒドロキシル末端ポリマー7.02g、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート2.03g、及び0.03gのDABCOを、ドライボックス中に置いたガラス瓶中で完全に混合した。急速な発熱反応が観察され、反応混合物の温度がすこしの間に95〜100℃に上昇した。反応混合物の中身が、気泡を実質的に含まない、透明でわずかに茶色がかった生成物に急速に(4分未満で)固化した。式(6)のフラグメントを含む、得られたポリウレタンポリマーは冷却し、瓶を割って瓶から取り出した。得られたポリウレタンポリマーは、メモリ特性をもつ、高度に架橋した粘弾性のポリマーだった。得られたポリマーは、水、及び炭化水素、エーテル、又はアルコールなどの通常の有機溶媒に事実上溶けなかった。この生成物は熱硬化性ポリマーであり、ポリマー特性を低下させることなく、溶融押出によって再加工することはできなかった。
【0190】
〔実施例55〕
7.08gの分岐状ヒドロキシル末端ポリマーを実施例48にしたがって調製し且つ出発物質として用いた以外は、実施例54にしたがって合成を行った。得られたポリウレタンは、それがより硬いゴム状のポリマーであったことを除いて、実施例54で得られたポリマーと非常に類似していた。
【0191】
〔実施例56〕
5.8gの94%純度のデセン-1.2-オキシドを、20.8gの式(3)の化合物(R=メチル、99.5%純度、51:49のシス/トランス異性体混合物)に溶かした。全体を室温で撹拌し、0.08gの三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラートを導入した。発熱反応が観察された。全体を1時間撹拌し、反応混合物を室温に冷却した。この液体をGC−MSで分析し、式(7)の化合物の異性体の混合物(一つはRがn-オクチルであり且つRが水素であり、Rが水素であり且つRがn-オクチルである)が含まれることがわかった。
【0192】
〔実施例57〜64〕
実施例56の反応を、以下のとおり、異なるエポキシドを用いて繰り返した。
(57)オクタデセン-1,2-オキシド 8.1g
(58)ヘキサデセン-1,2-オキシド 8.2g
(59)テトラデセン-1,2-オキシド 5.2g
(60)ドデセン-1,2-オキシド 5.6g
(61)ヘキセン-1,2-オキシド 4.6g
(62)ブテン-1,2-オキシド 4.8g
(63)プロピレン-1,2-オキシド 3.6g
(64)エチレンオキシド 2.2g
実施例63及び64の反応は加圧ガラス瓶中で行い、その他の反応は大気圧で行った。反応混合物をGC−MSで分析し、出発エポキシドの鎖長に対応するR及びRの組み合わせをもつ式(7)の化合物と、式(3)の未反応化合物とを含むことがわかった。
【0193】
〔実施例65〜73〕
実施例56〜64で得られた反応混合物のそれぞれの10gを、磁気式撹拌機、冷却器、及び受け用フラスコと連結したアダプターをもつ蒸留ヘッドを備えた丸底フラスコ中に入れた。0.08gのチタニウム(IV)イソプロポキシドと、0.5gのトリメチロールプロパンをそれぞれのフラスコに入れ、200〜220℃に設定したオイルバスを使用して、溶液を窒素下で加熱した。メタノールの蒸留が事実上止まった後、バスの温度を140〜160℃に下げ、6mmの最終真空度をもたらしうるポンプを使用して真空下で、撹拌を1時間続けた。得られたポリマー生成物の質量を測定して、それは完全なヒドロキシエステル重合によるメタノールの理論的喪失と釣り合う質量の減少が観測された。実施例56〜64で用いた出発エポキシド中の不活性な揮発性不純物の存在と釣り合う追加の質量損失も観察された。得られたポリマー生成物は室温に冷却し、窒素でパージし、室温で貯蔵した。ポリマー生成物は、室温で、非常に粘稠な無色もしくは淡黄色の透明もしくは半透明の液体だった。このポリマー生成物は、式(6)の繰り返し単位と下記式(24)の繰り返し単位とを含む、分岐したヒドロキシル末端のランダムコポリマーだった。
【0194】
【化44】

【0195】
この実施例で調製したコポリマーヒドロキシル末端化合物は、実施例50〜55に記載したものと実質的に同様の条件下で、剛性又は柔軟なポリウレタンを作るために適していることがわかった。
【0196】
〔実施例74〕
用いたエポキシドが10.2gの完全にエポキシ化した大豆油(Vicoflex(登録商標)7170、Arkema社)だったことを除いて、実施例56にしたがって反応を行った。
【0197】
〔実施例75〕
506.2gの完全にエポキシ化された大豆油(Vicoflex 7170ブランド、Arkema社)を2.1gのナトリウムメトキシドを含む無水メタノール溶液1Lと混合し、得られた混合物を室温(18℃)で6時間、磁気式撹拌を行った。時間にともなうエステル交換の進行を、ガスクロマトグラフィーで追跡した。エステル交換反応が実質的に完了したことが判明した後、この反応混合物を、12gの細かく粉砕した無水リン酸二水素カリウムの添加によって中和し、次にさらに夜通しの撹拌を続けた(12時間)。得られた混合物を濾過し、40℃に設定した水浴を備えたロータリーエバポレーターを使用して、減圧下でメタノールを蒸発させた。得られたオイルを1Lのヘキサンに溶かし、濾過し、ロータリーエバポレーターを使用してヘキサンを減圧下で除去した。それにより、弱いオイル臭をもつきれいな透明な生成物(485g)が得られ、GC−MSで分析した。TIC積分法を用いた場合、このオイルは、約9%のメチルヘキサンデカノエート、5%のメチルオクタデカノエート、42%のメチル9,10-エポキシ-9-オクタデセノエート、40%のメチル9,10,-12,13-ビスエポキシ-9,12-オクタデセノエート、及び少量のその他の飽和の及びエポキシ化された不飽和の脂肪酸類のエステルを含むことがわかった。
【0198】
〔実施例76〕
用いたエポキシドが、実施例75にしたがって調製したエポキシ化不飽和脂肪酸エステルの混合物8.2gだったことを除いて、実施例56にしたがって合成を行った。反応混合物をGC−MSによって分析し、式(9)、(10a)、(10b)を有する反応生成物、式(3)の未反応化合物、及び出発物質中のその量に釣り合う量のヘキサデカン酸及びオクタデカン酸のメチルエステル類を含むことがわかった。
【0199】
〔実施例77〕
実施例74で得られた反応生成物混合物0.4gを、0.5%のナトリウムメトキシドを含むメタノール4ml中にそれを溶かすことによってエステル交換し、全体を4時間、室温で撹拌した。反応混合物を、粉末化した0.32gの無水リン酸二水素カリウムとともに1時間撹拌することによって中和し、濾過し、GC−MSによって分析した。この生成物混合物は、実施例76で得たものと実際上同じであることがわかった。
【0200】
〔実施例78−79〕
実施例74又は76で得られた反応生成物混合物の1つの10gを、実施例65〜73の条件にしたがって処理した。得られた生成物は、式(1)の繰り返し単位を含む架橋コポリマー、及び式(9)、(10a)、及び(10b)の変性脂肪酸エステル誘導体に由来する断片(フラグメント)だった。得られたポリマーは、中程度の黄橙色に着色したゴム状の透明な熱硬化エラストマーだった。このポリマーは事実上、水、アセトン、メチルエチルケトン、炭化水素、エーテル類、及びエステル類に溶けなかった。
この実施例で得られたポリマーそれぞれの約0.2gを、実施例77に記載した条件にしたがった処理によって解重合した。解重合した生成物の得られた混合物のGC−MS分析は、この混合物が、ヘキサデカン酸及びオクタデカン酸のメチルエステル類の含有量が2%未満であったことを除いて、実施例76及び77で観察された組成と実質的に同様の組成を有することを示した。
【0201】
〔実施例80〕
(a)5.4倍スケールで、実施例74にしたがって反応を行った。粉末化したフッ化ナトリウム(1g)を添加して触媒を中和し、全体を室温で18時間撹拌し、濾過した。減圧下で過剰な化合物(3)を留去して、トリグリセリド1分子当たり約4.6個のヒドロキシル基を有する変性トリグリセリド付加体約61gを得た(中程度の黄橙色着色をもつ流動性の透明で粘稠な液体)。
(b)この生成物20.1gを、3.2gのヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート及び50mgのジブチルスズジラウレートと完全に混合し、この混合物を105℃で1時間硬化させた。得られたポリウレタンポリマーは、独立気泡で柔軟で完全に硬化した黄色フォーム(熱硬化したポリマー)だった。
【0202】
〔実施例81〕
(a)フッ化ナトリウムの添加を省略したことを除き、実施例80にしたがって変性トリグリセリド合成を行った。得られた生成物は、約4500Daの分子量をもつ部分的に架橋した付加体だった。
(b)この生成物19.3gを、1.3gのヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート及び50mgのジブチルスズジラウレートと完全に混合し、この混合物を105℃で1時間硬化させた。得られたポリウレタンポリマーは、実施例80で得られたものと非常に類似した特性をもつ、独立気泡で柔軟で黄色の完全に硬化したフォーム(熱硬化したポリマー)だった。
【0203】
〔実施例82〜83〕
実施例80及び81で得られたポリウレタンフォームを、実施例77にしたがって解重合した。得られた生成物混合物は、式(3)の化合物の存在(式(3)の化合物は、この実施例の生成物中に、少ない量(2〜3)%でしか存在しない)を除いて、実施例76及び77で観察されたものと実質的に同様であることがわかった。
【0204】
〔実施例84〕
実施例36にしたがって調製した分岐ヒドロキシル末端コポリマー5.1gを、8gのトリレンジイソシアネート(80:20の異性体混合物)中に溶かし、0.02gのジブチルスズジラウレートを添加した。全体を、激しく撹拌しながら、窒素下で85〜90℃に加熱し、過剰のトリレンジイソシアネートを減圧下で蒸発させた。得られたポリマー生成物(7.3g)は、式(6)の繰り返し単位を含むイソシアネート末端の分岐ポリマー(ポリイソシアネート)である。この生成物は、粘稠な黄色透明液体だった。
【0205】
〔実施例85−86〕
ヘキサメチレンジイソシアネートに代えて、実施例84で得られたポリイソシアネートポリマー2.6gを用いて合成を行った他は、実施例80及び81にしたがってポリウレタンフォームの合成を行った。得られたポリウレタンフォームは、それらがより硬かった事以外は、実施例80及び81で得られたフォームに、その特性において類似していた。
【0206】
〔実施例87−88〕
以下のうちの1つ:
(実施例87)実施例80(a)にしたがって調製した変性トリグリセリド15.6g、又は、
(実施例88)実施例76にしたがって調製した脂肪酸エステル付加体15.1gを、式(3)の過剰な化合物の蒸留に続いて、0.05%のp-トルエンスルホン酸を含むメタノール100ml中で還流させ、エステル交換反応を行った。この溶液を、メチルレブリネート及びメチル4,4’-ジメトキシペンタノエートについて、GC−MSで追跡した。反応が完了したと思われた後(約6時間)、両方の溶液を100mgの炭酸水素ナトリウムで中和し、濾過し、減圧下でメタノールを留去して、1-グリセリルエーテル変性脂肪酸エステル類の混合物を得た(油状液体として)。
【0207】
このグリセリルエーテル付加体を次に0.2gのチタンイソプロピレートと混合し、内容物が粘稠になるまで(約3時間)、撹拌しながら、6mmの減圧下で95〜100℃に加熱し、約3500Daの分子量をもつ高度に分岐又は架橋したポリエステル-ポリエーテル化合物を得た。
【0208】
得られた架橋ポリマーのそれぞれの一部5gを、0.5mlのメチルエチルケトン及び0.3gのトリレンジイソシアネートと混合し、0.01gのジブチルスズジラウレートを添加した。この混合物をそれぞれ完全に撹拌し、100℃に設定した真空オーブン中に置き、大気圧で約15分インキュベートし、次に最終的に6mm真空度をもたらしうるポンプを使用して減圧を適用した。反応混合物を次に100℃で2時間、6mmの真空度に放置し、次に、冷却して大気圧にした。得られたポリウレタンは、約0.22g/cmの密度をもつ、発泡剤で発泡した準剛性(semi-rigid)フォームだった。
【0209】
〔実施例89〕
39.8%アセチル含量とM約30000をもつセルロースアセテートポリマー(Sigma-Aldrichカタログ番号18,095-5)30gを、50gの式(3)の化合物(R=メチル、99.5%純度、51/49のシス/トランスの異性体混合物)と混合し、0.2gのチタニウムイソプロピレートを添加した。全体を撹拌し、大気圧の窒素下で160〜180℃に6時間加熱し、次に1mmの減圧下で加熱して式(3)の未反応化合物を除去した。得られたポリマー(42g)は、セルロースポリマー骨格と式(6)の繰り返し単位を含むペンダント基をもつ、水に不溶性のポリヒドロキシル化グラフトポリマーだった。このポリマーは、事実上水に溶けない、透明で寒天状のゲルだった。
【0210】
〔実施例90〕
実施例56〜67及び76で調製した、エポキシド付加体を含む反応生成物混合物から、それぞれ減圧下での蒸留によって、過剰な式(3)のヒドロキシエステル化合物を留去した。得られた生成物それぞれの3.2〜3.3gを、10mlの1M水酸化ナトリウムを用いて85〜90℃で2時間激しく撹拌することによって鹸化した。過剰な塩基を、塩酸水溶液でpH8〜9に中和し、その溶液を水で希釈して15mlの最終体積に希釈した。式(3)の化合物と様々なエポキシドとの付加体の鹸化されたもののナトリウム塩の溶液は、次に、1:1のヘキサン-水エマルション形成試験を用い、カルシウム又はマグネシウムイオンの存在下及び不存在下におけるそのようなエマルションの安定性を評価することによって、それらの界面活性特性を試験した(エマルション試験においては、1%CaCl又は1%MgClの最終濃度を用いた)。加えて、鹸化した化合物は、pH3でのヘキサン-水エマルション試験でも試験を行い、非鹸化化合物もpH7でのそれらの界面活性剤特性について試験をした。全てのエマルション試験は室温で行った。
【0211】
実施例76及び実施例56〜60のエポキシド付加体の鹸化によって得られた化合物の塩類は、安定なヘキサン-水エマルションを形成し且つ保つことができる良好な界面活性剤であり、それらの界面活性剤特性は、カルシウム又はマグネシウムイオンの存在によって悪影響を受けないことがわかった。酸性のpHでは、実施例76及び実施例56〜60の化合物の特性も満足できるものであることを発見した。実施例56〜60の非鹸化化合物は、「油中水」型乳化剤であることを発見した。
【0212】
〔実施例91〕
式(6)のフラグメントを含む、可塑化されたポリマー組成物及びポリマー化合物の様々なブレンド物を、以下のポリマーの1つを用いて、溶融混合及び押出法によって調製した。
(a)PVC、ポリ(塩化ビニル)粉末(平均分子量Mn 約55,000、平均Mw 97,000、固有粘度 0.92、相対粘度 2.23、供給者 Sigma-Aldrich Company, カタログNo.34,677-2)
(b)PHB、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、(天然起源、Tm 172℃、Sigma-AldrichカタログNo.36,350-2)
(c)AC、39.8%のアセチル含有量とMn 約30,000をもつセルロースアセテートポリマー(Sigma-Aldrichカタログ No. 18,095-5)
(d)PLA(L-ポリラクチド、固有粘度0.90-1.20、平均Mw 10,000-150,000、Tg 48.5℃、Sigma-Aldrich Companyから供給されるもの、カタログNo. 53,117-0)
【0213】
可塑化され且つブレンドされた組成物は、冷たい成分をプレミックスすることによって5gスケールで調製した。得られた混合物のそれぞれを、予め清浄にしたDeca Microcompounder (Deca Instruments)の小型二軸スクリュー混合押出機のチャンバーに、窒素下で個別に供給し、このとき、混合チャンバーは最も高い融点をもつ成分の溶融温度よりも5〜10℃上に加熱し、モーター速度は100rpmに設定した。試料は約5分間混合し、得られた溶融物は次に柔軟な棒(直径3mm)として混合チャンバーから押し出し、これは直ちに空気中で室温に冷却した。
【0214】
可塑剤とポリマーブレンドは、本開示の少なくとも1種の化合物を、得られる組成物の5、10、25、及び50重量%で含むいくつかの濃度で試験した。
【0215】
ガラス転移温度データ(示差走査熱量計による)と可塑剤浸出データを、満足できる相溶性と許容可能な低レベルのポリマー組成物成分の浸出を示した押出成形棒から切った可塑化された試料を用いて収集した。
【0216】
PHB、PLA、及びACのうち1つを含むポリマーブレンドは、実施例26〜28、33、50、51、65〜73、89で調製したポリマー化合物と広い濃度範囲で相溶性であることがわかった。そのようなブレンドは、可塑化されていないPHB、PLA、及びACと比較して、顕著に低下したガラス転移温度によって示されるように、顕著に可塑化された。同じ化合物群は、PVCとの限定された相容性(たかだか10%)をもち、可塑化されたPVCのガラス転移温度を約15〜30℃低下させることも発見した。
【0217】
PHB、PLA、ACポリマーはまた、実施例34〜49で調製した化合物で、並びに式(5)、(5a)の化合物で、並びに式(3)及び(4)の化合物で、RがHである場合を除いて、首尾良く可塑化される。
【0218】
試験した化合物の中では、PVCポリマーは、実施例80(a)、81(a)、57〜61、76(蒸留によって過剰な化合物3の除去後)にしたがって調製した化合物、式(5a)の化合物、並びに式(3)及び(4)の化合物(ここで、R及びRの両方は、C〜Cの直鎖又は分岐アルキルである)で、最も首尾良く可塑化された。
【0219】
〔実施例92〕
実施例52で得られた式(6)の繰り返し単位を含むポリウレタンポリマー2.1gを、完全な溶解が観察されるまで、0.5%のナトリウムエトキシドを含む無水エタノール15ml中で室温にて撹拌した(約5時間)。得られた溶液を、粉末化したリン酸二水素カリウムとともに1時間撹拌することによって中和し、エタノールを減圧下で留去した。残留物をtert-ブチルメチルエーテルに溶かし、濾過した。濾液をGC−MSで分析し、95%純度の式(3)の化合物(R=Et、シス/トランス異性体混合物)を含むことがわかった。tert-ブチルメチルエーテルは減圧下で蒸発させ、式(3)のニート化合物約1.52gを得た。
【0220】
〔実施例93〕
ポリウレタンポリマーが、実施例54で調製したポリマー2.3gであり、0.3%のナトリウムn-ブトキシドを含むn-ブタノールを用いたことを除いて、実施例92にしたがって反応を行った。得られた希釈していない(ニート)モノマー(1.78g)は、式(3)の97%純度の化合物だった(R=n-Bu、シス/トランス異性体混合物)。
【0221】
開示した多くの態様を記載している。しかし、様々な変形が、本開示の精神及び範囲から離れることなくなされうることが理解されよう。したがって、その他の態様も本願の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】

(式中、Rは水素;メチル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アリール、アラルキル、及びアルキルオキシアルキル、であり;
Xは、水素もしくは、
【化2】

から選択され、
式中、Rは、水素;直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アリール;アラルキル;及びアルキルオキシアルキル、から選択される。)
を有する化合物又はその塩。
【請求項2】
下記式:
【化3】

(式中Rは、水素;メチル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アリール、アラルキル、及びアルキルオキシアルキル、であり;
Yは以下の:
【化4A】

【化4B】

からなる群から選択され、
式中、R又はRのうち1つは水素であり、他方はC〜C30直鎖状アルキルであり;
A又はBのうち1つは水素であり、他方はエステルであり;
m及びnは独立して0〜20の整数であり、m+nの合計が8〜21の範囲である。)
の化合物又はその塩。
【請求項3】
がC〜C30の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アラルキル;及びアルキルオキシアルキルから選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
又はRの1つがC〜C30の直鎖状アルキルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
又はRの1つがC〜C14の直鎖状アルキルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
ジオキソラン環に結合した、置換されたオキシメチレン残基が、カルボキシル基を有する側鎖の配置に対して主にシス配置である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
ジオキソラン環に結合した、置換されたオキシメチレン残基が、カルボキシル基を有する側鎖の配置に対して主にトランス配置である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項8】
ジオキソラン環に結合した、置換されたオキシメチレン残基が、カルボキシル基を有する側鎖の配置に対してシス配置のみである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項9】
ジオキソラン環に結合した、置換されたオキシメチレン残基が、カルボキシル基を有する側鎖の配置に対してトランス配置のみである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項10】
が水素である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項11】
アルカリ、アルカリ土類、アンモニア、又はアミンの塩である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
下記式:
【化5】

を有する化合物。
【請求項13】
下記式:
【化6】

を有する化合物。
【請求項14】
下記式:
【化7】

(式中、
は水素、もしくはレブリネートフラグメントの炭素原子であり;
は、ヒドロキシル、グリセロールの酸素原子、又はエステル化されたグリセロールフラグメントの酸素原子であり;
pは1〜100の整数である。)
を有する化合物の調製方法であって、以下のステップ:
a) グリセロール、又は下記式:
【化8】

(式中、
及びRは独立して、水素;直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル;直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニル;アリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。)
の化合物を準備するステップ;
b) レブリン酸、レブリン酸エステル、アンジェリカラクトン、又はレブリン酸エステルのジアルキルケタール、を準備するステップ;及び
c) 酸触媒の存在下かつ反応混合物からの水の除去をもたらすために充分な条件下で、a)及びb)の化合物の間の反応を行うステップ、
を含む方法。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物の調製方法であって、以下のステップ:
a) 下記式:
【化9】

(式中、
は水素又はカルボキシル残基であり;
10はOR11、又はN(R12であり;
11及びR12は独立して、水素、又は直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルであり;
pは整数である。)
を有する化合物を準備するステップ;
b) 一価アルコール又はカルボン酸エステルを準備するステップ;
c) 塩基触媒の存在下で、a)及びb)の化合物の間の反応を行うステップ、
を含む方法。
【請求項16】
請求項12又は13に記載の化合物の調製方法であって、以下のステップ:
a) 下記式:
【化10】

(式中、
は水素、又はカルボキシル残基であり;
10はOR11又はN(R12であり;
11及びR12は独立して、水素、又は直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキルであり;
pは整数である。)
を有する化合物を準備するステップ;及び
b) エステル交換触媒の存在下で反応を行うステップ、
を含む方法。
【請求項17】
蒸留によって生成物を分離するステップをさらに含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
下記式:
【化11】

(式中、qは整数である。)
を有する単位を含むポリマー。
【請求項19】
前記ポリマーがポリウレタンを含む、請求項18に記載のポリマー。
【請求項20】
前記ポリマーが、請求項2に記載された化合物の1種以上から誘導される単位をさらに含む、請求項18に記載のポリマー。
【請求項21】
a) ベースポリマー;及び
b) 請求項1、2、12、13、及び18のいずれか一項に記載の化合物
を含む可塑化されたポリマー組成物。
【請求項22】
前記ベースポリマーが、塩化ビニルポリマー、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリマー、ポリ(ラクテート)ポリマー、及びポリサッカライドポリマーからなる群から選択される、請求項21に記載の可塑化されたポリマー組成物。

【公表番号】特表2009−519901(P2009−519901A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542439(P2008−542439)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/045200
【国際公開番号】WO2007/062118
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508152412)アロマジェン・コーポレーション (2)
【出願人】(308039757)
【Fターム(参考)】