説明

グリセロール分岐のポリエチレングリコール−ヒト成長ホルモン結合体、それらの製造方法及び使用方法

本発明は、グリセロール分岐のPEGを用いたヒト成長ホルモン(hGH)のPEG化に関する。本発明はまた、hGHをPEG化する方法に関する。さらに、本発明は、PEG化したhGHを含む医薬組成物に関する。更なる態様は、成長障害及び発達障害の治療のためのPEG化したhGHの使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2004年8月31日に出願された米国仮出願シリアル第60/605,945号に対する合衆国法典第35巻第119条による優先権を主張し、本明細書に記載されているかのように参照により全体として本明細書中に援用される。
【0002】
発明の分野
[001]本発明は、ヒト成長ホルモン(hGH)の化学的及び/又は生理学的な性質を変化させることができるhGHのPEG化に関する。PEG化したhGH結合体は、血漿中の停留期間の増加、浄化率の減少、安定性の改善、抗原性の減少、PEG化異種性の減少、又はそれらの組み合わせを有することができる。本発明はまた、hGHを修飾するための方法に関する。さらに、本発明は、修飾したhGHを含む医薬組成物に関する。更なる態様は、成長障害及び発達障害を治療するための修飾したhGHの使用である。
【0003】
発明の背景
[002]天然のヒト成長因子(hGH)は、2つのジスルフィドブリッジによって架橋された191個のアミノ酸の1本鎖を含むタンパク質であって、その単量体の形態は分子量22kDaを有する。ヒトGHは、脳下垂体によって分泌され、組換え遺伝子工学によって生産することもできる。hGHは、成長可能な全身の組織における成長を引き起こすであろう。hGHは、ヒトの成長段階における成長促進だけでなく、正常な身体組成、同化、及び脂質代謝の維持においても有用な役割を果たす(K.Barneis.及びU.Keller,Baillieres Clin.Endocrinlo.Metab.10:337(1996))。
【0004】
[003]組換えhGHは、数年間で商業的に利用可能となってきた。2つのタイプの治療として有効な組換えhGH調合剤は、市場に出回っている:認証されたもの、例えば、ゲノトロピン(Genotropin)(商標)、又はニュートロピン(Nutropin)(商標)、及びN末端で追加のメチオニン残基を有する類似体、例えば、ソマトノーム(Somatonorm)(商標)。hGHは、成長ホルモン欠損(GHD)又はターナー症候群としても言及される下垂体機能低下性小人症を患っている患者における線形成長を刺激するために使用されるが、妊娠期間の短縮(SGA)によって生まれた小児における成長障害の長期治療、プラダー−ウィリー症候群(PWS)、慢性腎不全(CRI)、AIDS消耗症、及び加齢の治療を含む他の適応症もまた指示されている。成人のGH欠損(aGHD)患者は、種々の問題、例えば、脂肪塊の増加、脂肪のない体及び細胞外液の減少、並びに骨ミネラル密度の減少、脂質の代謝異常、そして、心臓血管機能不全を含む身体組成における特徴的な変化を有する。これらの問題の多くは、hGH代謝治療によって改善される(J.Verhelst J and R.Abs.Drugs.;62:2399(2002))。
【0005】
[004]成長ホルモン(GH)の主要な生物学的効果は、幼若動物における成長、及び高齢動物における組織維持を促進することである。影響を受ける臓器系は、骨格、結合組織、筋肉、並びに肝臓、腸及び腎臓のような内臓を含む。成長ホルモンは、標的細胞の膜上の特異的受容体との相互作用を介してそれらの効果を発揮する。hGHは、胎盤性ラクトゲン、プロラクチン、並びに他の遺伝性及び種による変異体又は成長ホルモンを含むホモロガスなホルモンのファミリーのメンバーである(Nicoll,C.S.ら(1986)Endocrine Reviews 7:169)。hGHは、幅広い種特異性を提示し、クローン化した体形成受容体(Leung,D.W.ら[1987]Nature 330;357)又はプロラクチン受容体(Boutin,J.M.ら[1988]Cell;53:69)に結合するという点において、これらの中では異常である。hGHに関してクローニングされた遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)において分泌型で発現される(Chang,C.N.ら[1987]Gene 55:189)、及びそのDNA及びアミノ酸配列が報告されている(Goeddelら[1979]Nature 281:544;Grayら[1985]Gene 39:247)。
【0006】
[005]ヒト成長ホルモン(hGH)は、正常なヒトの成長及び発達の制御の大半において関与する。この下垂体ホルモンは、特に、線形成長(体形成)、授乳、マクロファージの活性化、インスリン様及び糖尿病誘発性の効果を含む数多くの生物学的効果を提示する(Chawla,R.K.(1983)Ann.Rev.Med.34,519;Edwards,C.K.ら(1988)Science 239,769;Thomer,M.O.ら(1988)J.Clin.Invest.81:745)。小児における成長ホルモン欠損は、小人症へと導き、hGHの外因性投与によって10年以上首尾よく治療されている。
【0007】
[006]成人並びに小児において、hGHは、窒素保持の増加及び骨格筋成長の刺激、並びに体脂肪の可動によって正常な身体組成を維持する。内臓の脂肪組織は、特にhGHに反応性である。脂肪分解の増加に加えて、hGHは、体脂肪貯蔵にトリグリセリドの取り込みを減少する。IGF−1(インスリン様増殖因子−1)及びIGFBP3(インスリン様増殖因子結合タンパク質3)の血清濃度はhGHによって増加する。
【0008】
[007]hGHは、とりわけ、窒素、リン、カリウム、カルシウムの保持により強力なタンパク質同化剤である。脳下垂体を摘出したラットのGHを用いた処置は、ラットの成長速度の少なくとも一部を回復することができる。Mooreら、Endocrinology 122:2920−2926(1988)。中でも、下垂体機能低下(GH欠損)患者における最も顕著な効果は、身長の増大に起因する骨−成長−皿−軟骨の線形成長の加速である。Kaplan,Growth Disorders in Childre and Adolescents(Springfield,IL:Charles C.Thoma,1964)。
【0009】
[008]hGHは、種々の動物モデルにおいて、線形骨成長、授乳、マクロファージの活性化、インスリン様及び糖尿病誘発性の効果、及びその他を含む種々の生理学的及び代謝効果を引き起こす(R.K.Chawlaら、Annu.Rev.Med.34:519(1983);O.G.P.Isakssonら、Annu.Ref.Physol.47、483(1985);C.K.Edwardsら、Science 239,769(1988);M.O.Thomer及びM.L.Vance,J.Clin.Invest.82:745(1988);J.P.Hughes及びH.G.Friesen,Ann.Rev.Physiol.47:469(1985))。とりわけ閉経後の女性において、GH分泌は年齢とともに下降することが報告されている。Millardら,Neurobiol.Aging,11:229−235(1990);Takahashiら,Neuoendocrinology M,L6−137−142(1987)。Rudmanら,J.Clin.Invest.,67:1361−1369(1981)及びBlackman,Endocrinology and Aging,16:981(1987)も参照されたい。さらに、線形な体重の減少、脂肪組織塊の拡大、及び皮膚の薄層化を含むいくつかの加齢の兆候が、1週間に3回のGH処置によって減少することができたという報告がある。例えば、Rudmanら,N.Eng.J.Med.,323:1−6(1990)、及びDr.Vanceによる同じような雑誌刊行物(pp.52−54)の付随する記事を参照されたい。これらの生物学的効果は、hGH及び特異的な細胞の受容体との間の相互作用から誘導される。2種の異なったヒトの受容体、hGH肝臓受容体(D.W.Leungら,Nature 330:537(197))及びヒトのプロラクチン受容体(J.M.Boutinら,Mol.Endocrinology.3:1455(1989))がクローニングされている。しかしながら、ヒト胎盤性ラクトゲン受容体を含む他のものであるらしい(M.Freemark,M.Comer,G.Komer,及びS.Handwerger,Endocrinol.120:1865(1987))。これらのホモロガスな受容体は、グリコシル化した細胞外ホルモン結合ドメイン、1つの膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含有し、配列及び大きさにおいてかなり異なっている。1又はそれより多くの受容体は、hGHに対する生理学的な応答において決定的な役割を果たすと想定されている。
【0010】
[009]体内に投与された生理学的に活性なタンパク質は、体内での高い浄化率により短い期間だけ生理学的な活性を示すことができる。さらに、これらのタンパク質の相対的な疎水性は、それらの安定性及び/又は可溶性を制限するかもしれない。
【0011】
[0010]浄化率の減少、安定性の改善又は治療用タンパク質の抗原性の廃止を目的として、いくつかの方法が提案されており、ここで、このタンパク質は、水溶性ポリマーで化学的に修飾されている。この種の化学的修飾は、タンパク質の骨格それ自体との物理な接触からタンパク質分解酵素を効果的に遮断することができ、つまり、分解を防ぐことができる。ある種の水溶性ポリマーの化学的付着は、分子の疎水性容積の増加により、効果的に腎臓による浄化を減少することができる。追加の利点は、ある環境下で治療用タンパク質の安定性及び循環時間の増加、可溶性の増加、及び免疫原性の減少を含む。ポリ(アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレングリコール)(PEG)は、治療用タンパク質生産物の製造において使用されているような化学的部分の1つである(動詞「PEG化する」は少なくとも1つのPEG分子を付着することを意味する)。ポリ(エチレングリコール)の結合は、タンパク質分解から保護することが示され(Sadaら,J.Fermentation Bioengineering 71:137−139(1991)、及びある種のポリ(エチレングリコール)部分の付着方法が利用可能である。1979年12月18日に発行された米国特許第4,179,337号(Davisら、非免疫原性ポリペプチド);及び1977年1月11日に発行された米国特許第4,002,531号(Royer、ポリエチレングリコールを有する酵素の修飾及びそれによって製造された生産物)を参照されたい。概説については、Abuchowskiら、Enzymes as Drugs.(J.S.Holcerberg及びJ.Robers編集、pp.367−383(1981))を参照されたい。
【0012】
[0011]他の水溶性ポリマー、例えば、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(−1,3−ジオキソラン)、ポリ(−1,3,6−トリオキサン)、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリ−アミノ酸(ホモポリマー又はランダム共重合体のいずれか)が使用されている。
【0013】
[0012]ポリ(エチレングリコール)については、様々な方法が、ポリ(エチレングリコール)分子をタンパク質に付着させるために使用されている、一般的に、ポリ(エチレングリコール)分子は、タンパク質に見られえる反応基を介してタンパク質に連結させる。リジン残基又はN末端のアミノ基は、このような付着にとって好都合である。例えば、Royer(米国特許第4,002,531号、上述)は、還元アルキル化が、酵素へのポリ(エチレングリコール)分子の付着に使用したことを言及している。Chamowら(Bioconjugate Chem.5:133−140(1994))は、還元アルキル化を介してモノメトキシポリ(エチレングリコール)無水物を用いたCD4の免疫接着の修飾を報告する。米国特許第5,824,784号は、還元アルキル化の条件で、N末端を含むG−CSFのPEG化を示す。
【0014】
[0013]WO93/00109は、3日以上の期間、持続的であり有効な血漿のGH濃度を維持することを含む、哺乳類又は鳥類のGH応答組織を刺激するための方法に関する。このような血漿濃度を達成する1つの方法は、PEG(ポリエチレングリコール)のような高分子物質に連結したGHの使用によってなされることが記載される。高分子物質への連結は、半減期の改善に帰着することが記載される。PEG化したヒト成長ホルモンは、WO93/00109に報告されており、記述されるように腎臓ろ過による分離された70Kより大きな分子量の流体力学的容積を達成するために、mPEGアルデヒド−5000及びmPEG N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(mPEG−NHS−5000)を用いている(Knauf,M.J.ら,J.Biol.Chem.263:15064−15070,1988)。mPEG−NHSの使用は、hGHの複合的にPEG化された形態の不均一な混合物に帰着した。WO93/00109はまた、システインhGH変形体をPEG化するためにmPEG−マレイミドの使用を開示する。
【0015】
[0014]WO99/03887は、PEG化されるシステイン変形の成長ホルモンを開示する。BT−005と称され、この結合体は、成長ホルモン欠損ラットにおける体重増加の刺激により効果的であり、hGHより長い半減期を有すると主張される。
【0016】
[0015]PEG化したヒト成長ホルモンはまた、Clarkらに報告されており、カルボキシメチル化PEGのスクシンイミジルエステルを用いている(Journal of Biological Chemistry 271:21969−21977,1996)。Clarkらは、第1級アミンに選択的に結合するmPEG−NHS−5000を用いてサイズを増加したhGHの誘導体を記載する。PEG修飾レベルの増加は、その受容体のアフィニティーを減少させ、細胞を基礎としたアッセイにおいてEC50を1500倍まで増加させた。Olsonら(Polymer Preprints 38:568−569,1997)は、複合的にPEG化されたhGH種を達成するためにN−ヒドロkシスクシンイミド(NHS)PEG及びスクシンイミジルプロピオン酸(SPA)PEGの使用を開示する。
【0017】
[0016]WO94/20069は、肺への輸送のための製剤の一部としてPEG化したhGHを開示する。
[0017]米国特許第4,179,337号は、生理学的に活性な非免疫原性であり、水溶性ポリペプチド結合体を得るために酵素とホルモンをPEG化する方法を開示する。GHは、PEG化されるホルモンの一例として記載される。
【0018】
[0018]EP48064A2は、ソマトトロピンにおける誘導した又は天然に存在するシステイン残基のPEG化を開示する。EP458064A2は、さらに、野生型のウシソマトトロピンの102−112残基に位置されていると言われるオメガループと呼ばれるループにおける2つのシステイン残基の導入に言及し、より具体的には、EP458064A2は、ウシソマトトロピンの102と112番号の残基のそれぞれSerからCys及びTyrからCysへの置換を開示する。
【0019】
[0019]WO95/11987は、親分子に存在するか又は部位特異的突然変異によって誘導したいずれかのシステイン残基のチオ基へのPEGの付着を示唆する。WO95/11987は、プロテアーゼのネキシン−1のPEG化に関するが、しかしながら、hGH及び他のタンパク質の一般的なPEG化は同様に示唆される。
【0020】
[0020]WO99/03887は、例えば、25位のセリンをシステイン残基で置換し、導入したシステイン残基にPEGを結合することによって修飾した成長ホルモンを開示する。
【0021】
[0021]WO00/42175は、PEGの付着のための遊離のシステイン残基を含有するタンパク質を作製する方法に関する。WO00/42175は、下記のhGHの突然変異タンパク質:T3C、S144C及びT148C、並びにそれらのシステインPEG化を開示する。
【0022】
[0022]WO97/11178(並びに米国特許第5,849,535号、米国特許第6,004,931号、及び米国特許第6,022,711号)は、hGHのアゴニスト又はアンタゴニストとしてのGH変異体の使用に関する。WO97/11178はまたリジンPEG化を含むhGHのPEG化、及びリジンの導入又は置換(例えば、K168A及びK172R)を開示する。WO97/11178はまた、置換G120Kを開示する。
【0023】
[0023]WO03/044056は、リジン分岐の40K PEGアルデヒドhGH結合体を含む様々なPEG化hGH種を開示する。
[0024]US2004/0127417は、リジン分岐したPEGブチルアルデヒドhGH結合体を開示する。
【0024】
[0025]WO04/46222、US2005/0058620、JP08−059818、JP11−228685、及びJP2000−001541は、グリセロール骨格の1位での第一炭素で反応基を有し、2及び3位でポリアルキレングリコールを有するポリアルキレングリコール誘導体を開示する。
【0025】
[0026]rhGHの目下の投与は、長期間毎日であり、したがって、投与頻度の低下が非常に望ましいであろう。より長期の循環半減期を有するhGh分子は、必要な投与数を減少し、付随した治療効果の増加を伴って、より最適な治療用hGHレベルを提供するであろう。
【0026】
[0027]PEG化hGHを含むhGHの長続きする形態を開発する多くの試みにもかかわらず、実行可能な商業的生産物となるために適した特性を有するPEG化したhGH分子に対して未だに満たされていない必要性がある。本発明は、hGHのN末端のフェニルアラニンで主に付着した1つのPEGを有するPEG−hGH結合体を提供し、他のPEG−hGH結合体を上回った利点を提供する。mPEGアルデヒド−5000又はmPEG N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(mPEG−NHS−5000)を用いたα−又はε−アミノ部位(hGHのN−末端及び9個のリジン)での複数の低分子量(5Kd)PEGの付着がWO93/00109、Clarkら(Journal of Biological Chemistry 271:21969−21977,1996)、及びOlsonら(Polymer Preprints 38:568−569,1997)に記載されている。これは、不均一な集団の原因となる。例として、9個のリジンを有するhGHは、10個のPEGが付着したいくつかの分子、9個付着した分子、8個付着した分子、7個付着した分子、6個付着した分子、5個付着した分子、4個付着した分子、3個付着した分子、2個付着した分子、1個付着した分子、及び0個付着した分子を有する。そして、7個付着した分子の中には、PEGは、異なる分子上の同じ位置に結合しなくてもよい。得られたこの不均一性は、結合、精製及び特徴付けを困難、高価及び再生不可能なものにする治療用生産物を開発する場合の欠点となる。別のアプローチ(WO00/42175)は、PEGの付着に対して遊離のシステイン残基を含有するhGH変異体を使用することである。しかしながら、このアプローチは、非天然のhGH変異体に帰着し、また、システインのいくつか又は全てに付着したPEGを有する不均一なPEG化産物に帰着する誤って対をなしたジスルフィド結合を有する間違って折り畳まれたタンパク質に導く可能性がある。複数の部位に付着した複数のPEGを有することは、PEGと種々の部位との間の結合の安定性が低下した分子へと導くかもしれず、異なる比率で分離することができるようになる。これは、不正確な投与に帰着する製造物の薬物動態を正確に予測することを困難にする。不均一な製造物はまた、治療薬に関して規制許可を得ることに無用な問題を引き起こす。
したがって、1つの部位で結合した1つのPEGを有するPEG化したhGH分子を有することが期待されるであろう。
【発明の開示】
【0027】
発明の開示
[0028]本発明は、グリセロール分岐のポリ(エチレングリコール)部分を用いてPEG化したhGHに関し、限定されないが、浄化率の減少、血漿停留期間の増加、安定性の増加、溶解性の減少、及び抗原性の減少から選択される少なくとも1つの化学的又は生理学的性質を有してもよい。このように、より詳細には下記に記載するように、本発明は、グリセロール分岐のポリ(エチレングリコール)分子を用いてhGHを化学的に修飾することに関する多くの側面を有する。
【0028】
[0029]本発明はまた、限定されないが、a)グリセロール骨格の安定性の増加、b)受容体結合の増加、c)費用の低下、d)N−末端の結合選択性の増加、e)溶解性の増加、f)免疫原性の減少、g)結合体の安定性の増加、h)製造可能性の増加、及びi)タンパク質分解の減少を含む、リジンを基礎とした分岐のPEGヒト成長ホルモン結合体と比べて1又はそれより多くの改善された性質を有してもよい。
【0029】
[0030]本発明は、PEG化したhGHを製造する方法に関する。特に、本発明は、グリセロール分岐のPEGを用いてPEG化したhGHを製造する方法に関する。
【0030】
[0031]本発明はまた、PEG化したhGHを単独で、又は別の治療薬とともに含む組成物に関する。本発明はまた、GH治療が有用である障害及び/又は疾患の予防及び/又は治療における本発明のPEG化したhGHの単独又は別の治療薬を併用した使用に関する。
【0031】
発明の詳細な説明
[0041]本発明は、グリセロール分岐のポリエチレングリコール−ヒト成長ホルモン結合体に関する。特定の側面において、グリセロール分岐のポリエチレングリコール誘導体は、hGH結合体を作製するために、アルデヒド反応基、及び、場合により、ポリエチレングリコール及びグリセロール骨格の1位の第一炭素での反応性官能基との間のリンカーを有し、WO04/46222又はUS2005/0058620(参照により援用される)に記載した2−及び3−位でポリアルキレングリコール鎖を有する。リンカーは、共有結合であれが、特に限定されないが、好ましくは、アルキレン基及びエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、炭酸結合、又は第2級アミノ基を含有するアルキレン基を含む。好ましいアルキレン基は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、イソブチレンン基、ペンタメチレン基、及びヘキサメチレン基を含む。
【0032】
[0042]本発明の特定の態様において、式:
【化1】

(式中、
nは、60〜75の間の整数であり;
mは、450〜460の間の整数であり;
Rは、ヒト成長ホルモンポリペプチドである)
で表される構造を有するヒト成長ホルモン−PEG結合体である。
【0033】
[0043]特別な態様において、nは、約64〜約72の間の整数である。
[0044]特別の態様において、(CH2CH2O)n部分は、約2.6〜約3.5Kdの間の平均分子量を有し、具体的には、平均分子量は約3Kdである。
【0034】
[0045]特別の態様において、各々の(CH2CH2O)n部分は、約17.6〜約22Kdの間の兵権分子量を有し、具体的には、平均分子量は約20Kdである。
[0046]特別の態様において、各々の(CH2CH2O)n部分は、約3Kdの平均分子量を有し、各々の(CH2CH2O)m部分は、約20Kdの平均分子量を有する。
【0035】
[0047]用語「約」は、PEG部分の分子量と関連して使用される場合、ポリエチレングリコールの製造において、ある分子は、規定の分子量より多いと計量され、ある分子は少ないと計量されるであろうし、そして、規定の分子量は、平均分子量を意味する。ポリ(エチレングリコール)のようなポリマーと関連したある程度の多分散性があることが理解される。低い多分散性を有するPEGを使用することが好ましい。特定の態様において、末端のポリマーのヒドロキシル末端基の1つは、メチル基に変換され又はキャップされる。本明細書中で使用されるとき、用語「mPEG」は、メチル基で1端をキャップされたPEGを意味する。mPEGは、構造的には、
CH3O−(CH2CH2O)n−H
のように表すことができる。
【0036】
[0048]用語「ヒト成長ホルモンポリペプチド」、「hGHポリペプチド」又は「hGHタンパク質」は、本明細書中で使用されるとき、成長段階、及び正常な身体組織、同化、及び脂質代謝の維持において成長を促進することによって特徴付けられる全てのhGHポリペプチドを包含する。好ましくは、用語「hGHポリペプチド」は、配列番号1のhGHポリペプチドを意味する。
【0037】
[0049]本発明のhGHポリペプチドは、任意の適した方法で調製することができる。このようなhGHポリペプチド及びその断片は、天然供給源から精製され、化学的に合成され、インビトロ翻訳技術若しくはhGH cDNAを発現することができる組換え細胞における発現を含む組換え技術、又はこれらの方法の組み合わせによって、当業者に既知の手法を用いて製造することができる(例えば、タンパク質を精製する様々な方法については、“Method in Enzymology,Academic Press,1993”;タンパク質の化学合成については、Creighton,(1983)Proteins:Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman & Co.2ndEd.,T.E.,New York;及び、Hunkapillerら(1984)Nature.310(5973):105−11、及び組換え技術については、Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology,ed.,Elsevier Press,NYを参照されたい。これらの開示は参照により全体として援用される)。本発明のポリペプチドは、好ましくは単離した形態で提供され、部分的に又は好ましくは実質的に精製されていてもよい。
【0038】
[0050]本発明の特定の態様は、ヒト成長ホルモン−PEG結合体であり、ここで、80%以上、より好ましくは81%以上、より好ましくは82%以上、より好ましくは83%以上、より好ましくは84%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは86%以上、より好ましくは87%以上、より好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、そして、より好ましくは98%以上のポリエチレングリコールが、配列番号1のヒト成長ホルモンのアミノ末端のフェニルアラニンに結合する。
【0039】
[0051]本発明の別の態様は、場合により医薬として許容される希釈剤、担体又はアジュバント中のN末端でPEG化したhGHの実質的に均一な調製物であり、前記調製物は、本質的に、N末端以外の部位でPEG化したhGHがないものである。用語「実質的に均一な調製物」は、80%以上、より好ましくは81%以上、より好ましくは82%以上、より好ましくは83%以上、より好ましくは84%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは86%以上、より好ましくは87%以上、より好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、そして、より好ましくは98%以上がモノPEG化されている調製物を意味する。
【0040】
[0052]本発明の一態様において、第2級アミン連結は、hGHポリペプチドのN末端の第一のα−アミノ基とグリセロール分岐鎖のPEGアルデヒドとの間で、Chamowら,Bioconjugate Chem.5:133−140(1994)、米国特許第4,002,531号、WO90/05534、及び米国特許第5,824,784号に記載されるような還元アルキル化によって、NaCNBH3、NaBH3、ピリジンボラン等のような適した還元剤を用いて形成される。グリセロール分岐のPEGアルデヒドは、hGHポリペプチドと共にインキュベートし、シッフ塩基形成を介したアミノ基へのPEG部分の付加に帰着する。これらの連結は、還元剤を用いた還元によって安定な第2級アミンへと変換される。
【0041】
【化2】

【0042】
[0053]結合反応は、「PEG化反応」を意味し、過剰なモル濃度のポリマーを含む溶液中で、ポリマーがタンパク質に付着するであろうことは関係なく、歴史的に実行した。しかしながら、このような一般的な手法は、典型的には、十分な生物活性を保持しながら、非抗原性ポリマーに生物活性なタンパク質を結合するのに十分であることがわかっている。hGH生物活性を維持する1つの方法は、ポリマーカップリング過程において、受容体結合部位(又は複数)と関連したhGHの反応基の結合を実質的に避けることである。本発明の別の側面は、保持した活性の高レベルを維持するhGHにポリ(エチレングリコール)を結合する方法を提供することである。
【0043】
[0054]共有結合を介した化学修飾は、生物学的に活性な基質と活性化したポリ(エチレングリコール)との反応において一般的に採用される任意の適した条件下で実行することができる。結合反応は、hGHの不活化を避けるために相対的に穏やかな条件下で実行される。穏やかな条件は、反応溶液のpHを3〜10の範囲で、反応温度を約0℃〜37℃の範囲内で維持することを含む。hGH中の反応性アミノ酸残基が遊離アミノ基を有する場合には、上記の修飾は、好ましくは、リン酸、MES、クエン酸、酢酸、コハク酸又はHEPESを含む適した緩衝剤(pH4〜10)、1〜48時間、4℃〜37℃の非制限的リストで実行される。PEGアルデヒドのような試薬を用いたN末端のアミノ基の標的において、pH4〜8が維持されることが好ましい。活性化したポリ(エチレングリコール)は、hGHの遊離アミノ基の数のモル量に対して、約0.01〜100倍、好ましくは約0.01−2.5倍で使用することができる。
【0044】
[0055]本明細書中に記載された反応条件は、結果としてかなり量の未修飾のhGHをもたらすが、未修飾のhGHは、追加の結合反応に対して将来のバッチにおいて容易にリサイクルすることができる。本発明の方法は、驚くべきことに非常に少ない、即ち、約20%未満、より好ましくは約10%未満の高分子量種、及びhGH当り1より大きい数のポリマー鎖を含有する種を生じる。これらの反応条件は、重合性結合反応に典型的に使用されるものとは対照的であるべきであり、活性化したポリマーは、標的に関して数倍過剰なモル濃度で存在する。
【0045】
[0056]本発明の結合反応は、初期には、反応混合物、即ち、モノ−PEG−hGH結合体、未反応のhGH、未反応のポリマー、及び約20%未満の高分子量種を含有するプールを提供する。高分子量種は、1より多くのポリマー鎖及び/又は重合したPEG−hGH種を含有する結合体を含む。未反応の種及び高分子量種を除去した後、主にモノ−PEG化hGH結合体を含有する組成物を回収する。結合体の大部分が1つのポリマー鎖を含むという事実が得られれば、結合体は実質的に均一である。これらの修飾したhGHは、標準的なFDC−P1細胞増殖アッセイ(Clarkら,Journal of Biological Chemistry 271:21969−21977,1996)、受容体結合アッセイ(米国特許第5,057,417号)、又は脳下垂体を摘出したラットの成長(Clarkら,Journal of Biological Chemistry 271:21969−21977,1996)を用いて測定した天然又は未修飾のhGHと関連した少なくとも約0.1%のインビトロの生物活性を有する。しかしながら、本発明の好ましい側面において、修飾したhGHは、約25%のインビトロの生物活性を有し、より好ましくは、修飾したhGHは、約50%のインビトロの生物活性を有し、より好ましくは、修飾したhGHは約75%のインビトロの生物活性を有し、そして、最も好ましくは、修飾したhGHは、同等の又は改善したインビトロの生物活性を有する。
【0046】
[0057]本発明の方法は、好ましくは、ポリマーとhGHの幾分制限した比を含む。つまり、hGH結合体は、ただ1つのポリマー鎖を含有する種に主に制限されることが見出された。さらに、ポリマーのhGH反応基への付着は、より高い過剰なモルのポリマーリンカーが使用される場合よりも実質的に少ないランダム的である。結合反応を停止した後、反応プール中の未修飾のhGHは、イオン交換若しくはサイズ排除クロマトグラフィー又は同様の分離手法を用いて将来の反応にリサイクルすることができる。
【0047】
[0058]ポリ(エチレングリセロール)修飾のhGHは、タンパク質の精製に使用される簡便な方法、例えば、透析、塩析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、ゲルクロマトグラフィー及び電気泳動によって反応混合物から精製することができる。イオン交換クロマトグラフィーは、未反応のポリ(エチレングリコール)及びhGHの除去に特に効果的である。本発明の更なる態様では、モノPEG化したhGH種は、高分子量種及び未修飾のhGHを除去するために反応混合物から単離される。分離は、約0.5〜10mg/mLのhGH−ポリマー結合体を含有する緩衝溶液中に混合した種を置くことによって達成される。適した溶液は、約4〜10のpHを有する。溶液は、好ましくは、KCl、NaCl、K2HPO4、KH2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、NaHCO3、NaBO4、CH3CO2H、及びNaOHから選択される1又はそれより多くの緩衝塩を含有する。
【0048】
[0059]反応緩衝に依存して、hGHポリマー結合体溶液は、任意の未反応のポリマーを除去するためにバッファー交換/限外ろ過をまず受けなければならないかもしれない。例えば、PEG−hGH結合体溶液は、低分子量カットオフ(10,000〜30,000ダルトン)メンブレンを通して限外ろ過して、存在すれば、未反応のポリマー、界面活性剤等のような最も望ましくない物質を除去することができる。
【0049】
[0060]所望の種を含有するプール中への結合体の分別は、好ましくは、イオン交換クロマトグラフィー媒体を用いて実行される。このような媒体は、幾分予測できるやり方で変化する、電荷の差異を介してPEG−hGH結合体を選択的に結合することができる。例えば、hGHの表面電荷は、タンパク質表面上の利用可能な帯電した基の数によって測定される。これらの帯電した基は、典型的には、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの潜在的な付着点として役立つ。したがって、hGH結合体は、選択的な単離を可能にする他の種とは異なった電荷を有するであろう。
【0050】
[0061]強力な極性陰イオン又は陽イオン交換レジン、例えば、それぞれ第4級アミン又はスルホプロピルレジンは、本発明の方法に使用される。陰イオン交換レジンが特に好ましい。本発明での使用に適した商業的に利用可能な陽イオン交換レジンの非制限的なリストは、SP−hitrap(登録商標)、SP Sepharose HP(登録商標)、及びSP Sepharose(登録商標)fast flowである。他の適した陽イオン交換レジン、例えば、S及びCMレジンもまた使用することができる。本発明での使用に適した商業的に利用可能な陰イオン交換レジンを含む陰イオン交換レジンの非制限的なリストは、Q−hitrap(登録商標)、Q Sepharose HP(登録商標)、及びQ Sepharose(登録商標)fast flowである。他の適した陰イオン交換レジン、例えば、DEAEレジンもまた使用することができる。
【0051】
[0062]例えば、陰イオン又は陽イオン交換レジンは、好ましくは、カラム中に詰められ、慣用的な手段によって平衡化される。ポリマー結合したhGHと同じpH及び浸透圧を有するバッファーが使用される。溶離バッファーは、好ましくは、KCl、NaCl、K2HPO4、KH2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、NaHCO3、NaBO4、及び(NH42CO3から選択される1又はそれより多くの塩を含有する。次に、結合体を含有する溶液は、カラム上に吸着され、未反応のポリマー及びある高分子量種は保持されない。充填が完了した時点で、溶離バッファーの塩濃度を増加した勾配フローがカラムに適用され、ポリアルキレンオキシド結合したhGHの所望の分画を溶離する。溶離したプールされた分画は、好ましくは、陽イオン又は陰イオン交換分離工程の後にポリマー結合体を均一にするために制限される。次に、任意の結合しないhGH種は、慣用的な手法によりカラムから後洗いし得る。必要に応じて、モノ及び複合的にPEG化したhGH種が、さらに、付加的なイオン交換クロマトグラフィー又はサイズ排除クロマトグラフィーを介して互いに分別することができる。
【0052】
[0063]塩濃度又はpHの増加の複数の等張的な工程を利用する手法もまた使用することができる。濃度増加の複数の等張な溶離工程は、ジ−、その後のモノ−hGH−ポリマー結合体の連続溶離に帰着するであろう。
【0053】
[0064]溶離のための温度範囲は、約4℃〜約25℃の間である。好ましくは、溶離は、約4℃〜約22℃の温度で実行される。例えば、PEG−hGH分画の溶離は、280nmでのUV吸収によって検出される。分画の回収は、単純時間溶出プロフィールを介して達成することができる。
【0054】
[0065]界面活性剤は、hGH部分でポリ(エチレングリコール)ポリマーを結合する方法で使用することができる。適した界面活性剤は、イオン性試薬、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。他のイオン性界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸リチウム、第4級アンモニウム化合物、タウロコール酸、カプリル酸、スルホン酸デカン等もまた使用することができる。非イオン性界面活性剤もまた使用することができる。例えば、ポリ(オキシエチレン)ソルビタン(Tween)、ポリ(オキシエチレン)エーテル(Triton)のような物質を使用することができる。またNeugebauer,A Guide to the Properties and Uses of Detergents in Biology and Biochemistry(1992)Calbiochem Corp.も参照されたい。本発明の方法で使用される界面活性剤の唯一の制限は、hGHの実質的に不可逆な変性を引き起こさず、及びポリマー結合を完全に阻害しない条件及び濃度でそれらが使用されることである。界面活性剤は、約0.01〜0.5%;好ましくは0.05〜0.5%;そして、最も好ましくは約0.075〜0.25%の量で反応混合物に存在する。界面活性剤の混合物もまた企図される。
【0055】
[0066]界面活性剤は、ポリマー結合過程で一時的に可逆性の保護システムを提供するものと考えられる。界面活性剤は、リジンを基礎とした又はアミノ末端を基礎とした結合を進行中に、選択的に抑止するポリマー合成に効果的であることが示されている。
【0056】
[0067]本発明のポリ(エチレングリコール)修飾したhGHは、より永続的な薬理学的効果を有し、インビボで長期の半減期におそらくは起因するかもしれない。
[0068]本発明の別の態様は、GH、好ましくはhGHの使用が有益となる疾患又は障害の予防及び/又は治療のための方法に関し、治療的に有効量の本発明のポリ(エチレングリコール)修飾したhGH又はそのアゴニスト変形体を単独で又は別の治療薬と併用して、それを必要とする患者に投与することを含む。本発明はまた、GH、好ましくはhGHの使用が有益となる疾患又は障害の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における本発明のポリ(エチレングリコール)修飾したhGH又はそのアゴニスト変形体の使用に関する。さらに、本発明はまた、GH、好ましくはhGHの使用が有益となる疾患又は障害の予防及び/又は治療のために本発明のポリ(エチレングリコール)修飾したhGH又はそのアゴニスト変形体を含む医薬組成物に関する。
【0057】
[0069]GHの使用が有益となる疾患又は障害には、限定されないが、成長ホルモン欠損症(GHD)、成人成長ホルモン欠損症(aGHD)、ターナー症候群、妊娠期間の短縮(SGA)によって生まれた小児における成長障害、プラダー・ウィリー症候群(PWS)、慢性腎不全(CRI)、AIDS消耗症、及び加齢、末期腎不全、嚢胞性線維症、勃起不全、HIVリポジストロフィー、線維筋痛、骨粗鬆症、記憶障害、うつ病、クローン病、骨形成異常、外傷性脳損傷、くも膜下出血、ヌーナン症候群、ダウン症候群、特発性小人症(ISS)、末期腎臓病(ESRD)、極低出生体重(VLBW)、骨髄系幹細胞救出、メタボリックシンドローム、グルココルチコイドミオパシー、小児のグルココルチコイド処置による小人症、及び早産児のための成長捕捉欠如が含まれる。
【0058】
[0070]本発明のより特定の態様は、本発明のポリ(エチレングリコール)修飾したhGH又はそのアゴニスト変形体は、GHD、aGHD、SGA、PWS、ターナー症候群及びCRIから成る群から選択される障害又は疾患の予防及び/又は治療において使用される。
【0059】
[0071]本発明の別のより特定の態様は、本発明のポリ(エチレングリコール)修飾したhGH又はそのアゴニスト変形体は、特発性小人症、極低出生体重、外傷性脳損傷、メタボリックシンドローム、及びヌーナン症候群から成る群から選択される障害又は疾患の予防及び/又は治療において使用される。
【0060】
[0072]本発明の別の態様は、本発明のポリ(エチレングリコール)修飾したhGHを単独で、又は別の治療薬と併用して、そして、少なくとも1つの医薬として許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物に関する。次に、本発明のポリ(エチレングリコール)修飾したhGHは、それらを患者に投与するために、医薬として許容される希釈剤、等張溶液を調製する試薬、pH調節剤等も含有する医薬品に調合することができる。
【0061】
[0073]上記医薬品は、治療目的に応じて、皮下、筋内、静脈、肺、皮内、又は経口的に投与することができる。投与量はまた、治療される患者の障害の種類や状態に基づき、通常、成人に対する注射では0.1mg〜5mgの間、及び経口投与では0.1mg〜50mgの間である。
【0062】
[0074]本明細書中で使用されるとき、本発明のポリ(エチレングリコール)修飾したhGH又はそのアゴニスト変形体は、別の治療薬と併用して使用することができる。本明細書中で使用されるとき、用語「同時投与」、「同時投与した」及び「併用して」は、化合物A及び1又はそれより多くの他の治療薬に言及して、下記を意味することが意図され、下記を意味し、そして下記を含む:
○A及び治療薬(又は複数)が単一の剤形に一緒に調合される場合、実質的に同時に患者にこのような成分が放出される、治療を必要とする患者へのこのような成分の併用剤の同時投与;
○A及び治療薬(又は複数)が、患者によって実質的に同時に取り上げられる別個の剤形中にそれぞれ分別して調合される場合、これらの成分が実質的に同時に患者に放出される、治療を必要とする患者へのこのような成分の併用剤の実質的に同時である投与;
○A及び治療薬(又は複数)が、各投与間の有意な時間間隔を設けて、患者によって連続的な時間で取り上げられる別個の剤形中にそれぞれ分別して調合される場合、これらの成分が実質的に異なった時間で患者に放出される、治療を必要とする患者へのこのような成分の逐次投与;そして、
○A及び治療薬(又は複数)が、制御された方法でこれらの成分を放出する単一の剤形に一緒に調合される場合、それらが患者によって同時及び/又は異なった時間で同時に、連続的に、及び/又は重複して投与される、治療を必要とする患者へのこのような成分の併用剤の逐次投与。
【0063】
[0075]A、医薬として許容されるそれらの塩及び/又はそれらの誘導形態を併用して使用することができる他の治療薬の適した例は、決して限定されることはなく、アロマターゼ阻害剤、例えばフォルメスタン、アタメスタン、ファドロゾール、レトロゾール、ボロゾール及びアナストロゾール;フィブリン酸誘導体(例えばフェノフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、ベザフィブラート及びシプロフィブラート)及びアシピモックスのようなニコチン酸誘導体を含む遊離脂肪酸制御因子;限定されないが、ビグアニド、例えばメトフォルミン、PPARガンマ−インスリン感作剤及びチアゾロデニオン、例えばトログリタゾン及びロシグリタゾン トログリタゾン、5−[[4−[3,4−ジヒドロ−6−ヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−]−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ]フェニル]メチル3−2,4−チアゾロリジンジオンV411(DIABII、Glaucanin)ピオグリタゾン(ACTOS、AD4833、U72107、U72107A、U72107E、ZACTOS)化学名:2,4−トリアゾリジンジオン、5−[[4−[2−(5−エチル−2−ピリジニル)エトキシ]フェニル]メチル]−、モノヒドロクロリド、(a/−);ロシグリタゾン(Avandia、BRL49653、BRL49653C)化学名:2,4チアゾリジンジオン、5−[[4−[2−(メチル−2−ピリジニルアミノ)エトキシ]フェニル]メチル];25ベキサロテン−オーラル(LGD1069オラール、タルグレチンオラール、タルグレチン、タルグレチンオーラルタルグレキシンオラール)化学名:4−[1−(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)エテニル]安息香酸;ZD2079(ICI D2079)化学名:(R)−N−[2−4−(カルボキシメチル)30フェノキシ)−N−(2−ヒドロキシ−2−フェネチル)アンモニウムクロリド:ネトグリタゾン(イサグリタゾン、MCC555、RWJ241947)(化学名:5−[6(2−フルオロベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]チアゾリジン−2,4−ジオン);INS(登録商標)(D−チロ−イノシトール)(化学名:D−1,2,3,4,5,6−ヘキサヒドロキシシクロヘキサン)、ON2344(DRF2593);デキシリポタム、化学名:5(R)−(1,2−ジチオラン−3−イル)ペンタロイック35酸;HQL975、化学名:3−[4−[2−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イル)エトキシ]フェニル]−2(S)−(プロピルアミノ)プロピオン酸;YM268、化学名:5,5’−メチレン−ビス(1,4−フェニレン)ビスメチレンビス(チアゾリジン−2,4−ジオン)を含む。
【0064】
開発中のIPPARアゴニストは、レグリタザール(JTT501、PNU182716、PNU716)(化学名:イソキサゾリジエン−3,5−ジオン、i4−[[4−(2−フェニル−5−メチル)−1,3−オキサゾリル]エトキシフェニル−4]メチル−、(4RS));I(RP297、化学名:10 5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−[4−(トリフルオロメチル)ベンジルベンズアミド;R119702(CI1037、CS011)化学名:(l−)−5−[4−(5−メトキシ−1H ベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリン−2,4−ジオン;ヒドロクロリド;15DRF2189、化学名:5−[[4−[2−(1−インドリル)エトキシ]フェニル]メチル]チアゾリジン−2,4−ジオン;コルチゾール合成阻害剤、例えばケトコナゾール、エコナゾール又はミコナゾール;成長ホルモン、例えばソマトロピン又はソマトノーム及びそれらの誘導体、例えばヒト成長ホルモン融合タンパク質、例えばアルブトロピン;ポリエチレングリコール成長ホルモン、例えばシステイン−PEG化成長ホルモン、BT005(Bolder BioTechnology Inc.);成長ホルモン分泌促進剤、例えばSM130686(Sumitomo)カプロモレリン(Pfizer)、メカセルミン(Fujisawa)、セエルモレリン(Salk Institute,Bio−Technology General)、ソマトレム、ソマオメジン(C Llorente;Pharmacia Corporation)エキサモレリン、タビモレリン;CP464709(Pfizer)、LY426410及びLY444711(Lilly);8−(アミノアルコキシイミノ)−8H−ジベンゾ[a,e]チアゾロ[4,5−c]シクロヘプテン(WO2002057241に開示される)、2−置換ジベンゾ[a,e]1,2,3−トリアゾロ[4,5−c][7]アヌレン−8−オン(WO2002056873に記載される)、成長ホルモン放出ペプチドGHRP−6及びGHRP−1(米国特許第4,411,890号、及び公報WO89/07110、WO89/07111に記載される)、B−HT920、ヘキサレリン及びGHRP−2(WO93/04081に記載される)、又は成長ホルモン放出ホルモン(GHRH、GRFとも称する)及びその類似体、IGF−1及びIGF−2及びそれらの誘導体、例えばソマトキン−インスリン様増殖因子−1及びその結合タンパク質、BP−3、アルファ−2−アドレナリン作動性アゴニスト、例えばクロニジン、キシラジン、デトミジン及びメデトミジン又はセロトニン5HTIDアゴニスト、例えばクロニジン、キシラジン、デトミジン及びメデトミジン又はセロトニン5HTIアゴニスト、例えばスミトリプタン、又はソマトスタチン及びその放出を阻害する試薬、例えばフィソスチブミン及びフィリドスチグミン、ThGRF1−44(Theratechnologies)を含むソマトメジン;L165166(Merck&Company);ジペプチド誘導体(WO9858947に記載される)、ジペプチジルペプチダーゼIVの阻害剤、例えばアミノ−アシルピロリジンニトリル(米国特許第6,521,644号、WO95/15309、及びWO98/19998に記載される);ベータ−アミノへテロ環式ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤、例えばUS20030100563及びWO2003082817に記載されるもの;成長ホルモン放出化合物(US20030055261、US20030040483、EP18072、EP83864、WO89/07110、WO89/01711、WO89/10933、WO88/9780、WO83/02272、WO91/18016、WO92/01711、WO93/04081、WO9514666,EP0923539、米国特許第5,206,235号、第5,283,241号、第5,284,841号、第5,310,737号、第5,317,017号、第5,374,721号、第5,430,144号、第5,434,261号、第5,438,136号、第5,494,919号、第5,494,920号、第5,492,916号、第5,536,716号、及び第5,578,593号、WO94/13696、WO94/19367、WO95/03289、WO95/03290、WO95/09633、WO95/11029、WO95/12598、WO95/13069、WO95/14666、WO95/16675、WO95/16692、WO95/17422、WO95/17423、WO95/34311、及びWO96/02530に記載される)、ピペリジン、ピロリジン及びヘキサヒドロ−1H−アゼピン(米国特許第5,804,578号、米国特許第5,783,582号、WO2004007468に記載される)、アミドスピロピペリジン、例えばWO0104119に開示されるもの、2−[(5,6−ジメチル−2−ベンゾイミダゾリル)アミノ]−4−ヒドロキシ−6−メチル−5−ピリミジン−酢酸(2)及び2−[(5,6−ジメチル−2−ベンゾイミダダゾイル)アミノ]−4−ヒドロキシ−6−メチル−5−ピリミジン酢酸、米国特許第6,329,383号に記載されるエチルエーテル、EP1155014に記載されるベンズイミダゾール、GRF関連類似性ペプチジル化合物、米国特許第4,411,890号のペプチド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、例えばWO0170228、WO0170227、WO0170228、WO0069433、WO0004013、WO995156、WO9951595、WO9951231−4、WO9941251−2、WO9921557、WO9921553に記載されるもの、及び6−アザインドール化合物(WO0053602、WO0053181、WO0053180、WO0053179、WO0053178、米億特許第6,288,078号に記載される)を含む2−アミノ−5−ピリミジン酢酸化合物;IGF−1分泌促進剤;インスリン様増殖因子−2(IGF−2又はソマトメジンA)及びIGF−2分泌促進剤;ミオスタチンアンタゴニスト、及び線維芽細胞増殖因子受容体−3(FGFR−3)チロシンキナーゼを阻害する化合物を含む。
【0065】
[0076]含まれる重合性物質はまた、好ましくは、室温で水溶性である。このようなポリマーの非制限的なリストは、ポリ(アルキレンオキシド)ホモポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)又はポリ(プロピレングリコール)、ポリ(オキシエチレン化ポリオール)、それらの共重合体、及びそれらのブロック共重合体を含み、ただし、ブロック共重合体の水溶性は維持されることが条件である。
【0066】
[0077]PEGを基礎としてポリマーの代替物として、効果的に非抗原性の物質、例えばデキストラン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(ビニルアルコール)、糖質を基礎としたポリマー等が使用することができる。確かに、これらの重合性物質のα−及びε−末端基の活性化は、ポリ(アルキレンオキシド)を変換するために使用されるのと同じようにして達成することができ、つまり、当業者に明確であろう。当業者は、前述のリストが、単なる例示であり、本明細書に記載された性質を有する全てのポリマーが企図されることを認識するであろう。本発明の目的のために、「効果的に非抗原性の」は、無毒性であり、哺乳動物において感知できる免疫原性応答を発揮しないものとして当該技術分野において理解される全ての物質を意味する。
【0067】
定義
[0078]下記は、本明細書中で互いに交換して使用される省略形と対応する意味のリストである。
【0068】
【表1】

【0069】
[0079]本明細書に引用した全ての刊行物、特許、及び特許出願の全内容は、各々が個々の公開、特許、又は特許出願が参照により取り込まれたものと具体的に及び個別的に指示されるように、参照により本明細書中に援用される。
【0070】
[0080]前述の発明は、明確な理解を目的として図解及び実施例の方法によって幾分詳細に記載してあるけれども、変更や修飾が本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに行うことができることを本発明の教示に照らして当業者に容易に明らかになるであろう。下記の実施例は、例示を目的とするだけで提供され、発明の範囲を制限することを意図とせず、上記の広い用語に記載されている。
【0071】
[0081]下記の実施例において、hGHは、配列番号1のものである。他のhGHポリペプチドはまた、その後の実施例に例示されるのと同じやり方でPEG化され得る。
【実施例】
【0072】
実施例
実施例1 グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGH
【化3】

{式中、
(CH2CH2O)nは、平均分子量:約3Kdを有し、各々の(CH2CH2O)mは、平均分子量:約20Kdを有する}
(GL3−400AL2)
【0073】
[0082]本実施例は、還元アルキル化によってN末端のモノPEG化したhGHの生成を示す。約43,000MWのグリセロール分岐のPEGアルデヒド試薬(GL3−400AL2 NOFコーポレーション)は、N末端の第1級アミンの相対的pKa値とリジン残基のε−アミノ位置の第1級アミンのpKa値における差異を生かすことによって、hGHのN末端に還元アルキル化を介して結合した。25mM MES(Sigma Chemical,St.Louis,MO)pH5.8又は20mM HEPES pH7.0に4、7又は10mg/mLで溶解したhGHタンパク質は、1.5:1、2:1、3.4:1、4:1又は5:1の相対的PEG:hGHのモル比を生じるために試薬の添加によってグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドと反応させた。反応物を最終濃度10mMまでピリジンボラン(Sigma Chemical,St.Louis,MO)の添加によって触媒した。反応は、暗所で4℃、16〜87時間で実行した。反応は、精製用に適したバッファー中に希釈することによって反応を停止さた。
【0074】
[0083]表1は、複数のPEG化した種、モノPEG化した結合体、反応していないhGH、及びpH5.8で63時間、1.5:1:1モル比で反応させたグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHの最終精製収率パーセントを示す。
【0075】
【表2】

【0076】
実施例2 PEG化したhGHの精製
[0084]
PEG化したhGH種は、1つのイオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%まで精製した(SEC分析 図1)。
【0077】
陰イオン交換クロマトグラフィー
[0085]PEG化hGH種は、1つの陰イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%まで精製した(SEC分析 図1)。陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて未修飾のhGH及び複合的にPEG化したhGH種からモノ−PEG化hGHを精製した。典型的なグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGH反応混合物(80又は1500mgのタンパク質)は、上記で記載されるように、25mM HEPES、pH7.3(バッファーA)で平衡化したQ−Sepharose Hitrapカラム(5mL)(Amersham Pharmacia Biothech,Piscataway,NJ)又はQ−Sepharoseカラム(26/20、70mLカラム体積)(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)上で精製した。反応混合物をバッファーAで7倍に希釈し、流速2.5mL/分でカラムに充填した。カラムをバッファーAの3〜10カラム体積で洗浄した。その後、種々のhGH種が、バッファーAの20カラム体積、及び0〜100mMのNaClの直線勾配でカラムから溶離した。溶離物は、吸光度280nm(A280)によって監視し、適切なサイズの分画を回収した。分画をPEG化の程度、例えば、モノ、ジ、トリ等についてプールした(実施例3で評価した)。次に、プールをCentriprep YM10濃縮器(Amicon,Technology Corporation,Northborough,MA)中で、又は希釈ろ過によって、0.5〜5mg/mLまで濃縮した。プールのタンパク質濃度は、0.78の減衰係数を用いてA280によって決定した。
【0078】
実施例3 生化学的な特徴付け
[0086]精製したPEG化したhGHプールは、非還元SDS−PAGE、非変性サイズ排除クロマトグラフィー、及びペプチドマッピングによって特徴付けた。
【0079】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)
[0087]グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドとhGHの反応混合物、陰イオン交換精製プール、及び最終精製した生産物は、非変性SEC−HPLCを用いて評価した。分析的な非変性SEC−HPLCは、カラムTSK G4000PWXL(Tosohaas)又はShodex KW−804(Waters Corp)を用いて、20mM リン酸塩 pH7.2、150mM NaCl、流速0.5mL/分(場合によっては、Superdex 200 7.8mm×30cm、Amersham Bioscience,Piscataway,NJ)で実行した。PEG化は、初期の保持時間のシフトに帰着するタンパク質の流体力学的体積を大いに増大させる。新種が、未反応のhGHと一緒にPEGアルデヒドhGH反応混合物に観察された。これらのPEG化した種及び非PEG化の種は、Q−Sepharoseクロマトグラフィー上で分別し、得られた精製したモノPEG−アルデヒドhGH種は、その後、非変性のSEC上で単一のピークとして溶離することが示された(>95%純度、図1)。Q−Sepharoseクロマトグラフィー工程は、モノPEG化したhGHから、遊離のPEG、hGH、及び複合的にPEG化したhGH種を効率的に分離した。
【0080】
SDS−PAGE
[0088]SDS−PAGEは、グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドとhGHとの反応及び精製した最終産物を評価するために使用した。SDS−PAGEは、1mmの厚さの10−NuPAGEゲル(Invitrogen,Carlsbad,CA)上で、還元及び非還元条件で実行し、Novex Colloidal Coomassi(商標)G−250染色キット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて染色した。
【0081】
N末端配列
[0089]自動化されたエドマン分解化学を用いて、NH2末端のタンパク質の配列を決定する。Applied Biosystems Model 494 Prociseシークエンサー(Perkin Elmer,Wllesley,MA)を分解のために使用した。それぞれのPTH−AA誘導体は、Perkin Elmer/Brownlee 2.1mm i.d.PTH−C18カラムを装備したAppliced Biosystems Model 140C PTHアナライザーを用いるオンライン様式でRP−HPLCによって同定される。
【0082】
ペプチドマッピング
[0090]トリプシン消化は、1mg/mLの濃度で行い、典型的には、消化物当たり25μgの物質を使用した。トリプシンは、トリプシンとPEG−hGHの比率が1:30(w/w)になるように添加した。このバッファーは、30mM、pH7.5で存在した。試料を室温で16±0.5時間インキュベートした。反応は、消化溶液1mL当たり1N HClの50μLの添加によって停止させた。自動サンプラーに試料を置く前に、試料を最終濃度の6.25%アセトニトリル中0.25mg/mlの濃度まで希釈した。アセトニトリルを初めに添加し(19.8%アセトニトリルになるまで)、穏やかに混合し、その後、水を最終体積(出発容積の4倍)まで添加した。余分の消化溶液を除去し、1週間は−20℃で保存してもよい。
【0083】
[0091]Waters Alliance 2695 HPLCシステムは、分析のために使用したが、他のシステムは同様の結果を生じるべきである。5μmの粒子を装填したAstec C−4重合性25cm×4.6mmカラムを使用した。実験は、周囲温度で試料当たり50μgのタンパク質を典型的な充填で行った。バッファーAは、水中0.1%のトリフルオロ酢酸であり;バッファーBは、アセトニトリル中0.085%のトリフルオロ酢酸であった。試料は、90分かけて0〜45%の直線勾配で溶離した。
【0084】
[0092]210と300nmの間で、データを回収するWaters 996 PDA検出器を用いてピークを検出した。
[0093]トリプシンマップは、2:1(PEG:hGH)のモル比で反応したhGH及びグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドについて行った(図2)。N末端のトリプシン断片は、T−1と称した。PEG化されていないhGHと比較した存在するT−1のパーセントは、99%を超えるPEG修飾がN−末端であり、残りがいくつかの可能なリジン残基の1つに明確に結合していることを示唆する。
【0085】
【表3】

【0086】
実施例4 インビトロの生物学
グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHによるヒト受容体を認識する能力は、結合体及びヒト成長ホルモン受容体(hGHR)(28kDa細胞外ドメイン)間の特異的な相互作用の評価に適したアッセイにおいて、Biacore 3000装置を用いて試験した。表面プラズモン共鳴(SRP)実験による結果は、下記の表3に示される。
【0087】
【表4】

【0088】
aa(結合速度)及びKd(解離速度)は、ΔRU=3000〜5000で、アミンカップリング化学を介してCM5チップ上に標識したヒト成長因子を結合しているタンパク質(28kDa、細胞外ドメイン)を用いてHEP−BESバッファー(0.01M Hepes、pH7.4、+0.15M NaCl、3mM EDTA、及び0.005% Surfactant P20)中、37℃で50μL/分の流速で測定した。Kaは、M-1-1として表され、Kdは、s-1として表され、両者は、1チップ上で少なくとも3回の測定の平均値±標準偏差である。データは、1:1の比でGHBP上の高アフィニティー部位1に対するhGH結合を測定ことを推測する。
【0089】
実施例5 薬力学試験
インビトロの有効性−11日のラットアッセイにおける有効性(体重増加、脛骨成長、血清BUN低下)
[0094]雌性Sprague−Dawleyラットは、Harlan Labsで脳下垂体を摘出され、4〜10日の期間、成長についてプレスクリーニングを行った。ラットを6個のグループに分けた。0日を開始として、対照ラットは、0.3mg/kgのhGH又はベヒクルのいずれかを連続11日間、皮下に毎日1回受けた。試験グループは、0日目と6日目に1.8mg/kgのグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHの1回(週に一度)投与を受けた。動物の体重は毎日計量した。図4は、それぞれの試験において体重増加におけるhGH及びグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHの効果を示す。
【0090】
[0095]図4に記載した試験によって表されたデータとhGH(対照)で処置したラットについての経時的に11日の成長試験プラス43K グリセロール分岐のPEGアルデヒドhGH結合体を用いる追加の成長試験とを併合すると、1.8mg/kgの結合体で週に一度処置した動物に関する平均的な体重増加は、毎日のhGH投与によって達成されたものの109%であった(累積3.3mg/kg)。
【0091】
ラット脛骨の長さ
[0096]11日の体重増加試験の動物は、11日目に屠殺され、左脛骨を取り出し、X線で観察し、骨の長さをカリパスを用いて測定した。図5は、グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHで処置した動物についての頚骨の長さの測定を示す。
【0092】
ラットBUNレベル
[0097]hGH処理後の代謝効果についての生物マーカーとして、血中尿素窒素レベルを第11日目の血液試料から測定した。図6は、hGH(毎日)処置及びグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGH(週に一度)処置が血中尿素窒素の有意な減少に帰着することを示す。
【0093】
ラットの体重増加の6日投与量増加の試験
[0098]脳下垂体を摘出したラットを種々の1回服用のグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHで処置し、その他は、hGHで毎日処置し、体重増加を6日間監視した。図7は、種々の処置グループについて得られた体重増加を示す。血液試料を指定した時間で採取し、血清IGF−1レベルをELISAによって測定した。平均±SEMをプロットした。グループ(n=6)は、測定値における一元配置分散分析を用いてIGF−1応答を計算するために使用し、そして、AUCd0−6(mg−hr/mL)値:20,040、22,958、28,129、及び37,839は、それぞれ、0.067、0.2、0.6、及び1.8mg/kg投与群について測定した。
【0094】
ラット体重増加の11日投与量増加の試験
[0099]二次試験では、動物は、1.8mg/kg又はそれより高い投与量、即ち、5.1mg/kgの43K グリセロール分岐のPEGアルデヒドhGH結合体のいずれかを用いて0日及び再度6日に処置した。表4は、ベヒクル又は毎日のhGH(0.3mg/kg/日)のいずれかの毎日(QD11)の投与に従って達成されるもの比較して、6日及び11日の投与量に関連した体重増加を示す。
【0095】
【表5】

【0096】
*P<0.05対ベヒクル、+P<0.05対hGH;0日から測定した平均プラス体重増加(g)
BW、体重;hGH、ヒト成長ホルモン
値は平均±SEM(平均の標準誤差)
カッコ内の値は0日からの変化を表す(平均±SEM)
【0097】
IGF−1試験
[00100]6日の体重増加試験の動物を使用した。血液試料を研究期間の種々の時間で採取し、血清IGF−1レベルを図8に示されるようにELISAにより測定した。ラットのIGF−1レベルは免疫アッセイキット(Diagnostic System Laboratories)によって監視した。
【0098】
実施例6 薬物動態試験
[00101]薬物動態試験は、正常な、カニューレを挿入されたSprague−Dawley雄性ラットで行った。グループ当り6匹のラットを用いて、hGH又はグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHの1.0mg/kgの1回の静脈投与又は1.8mg/kgの1回の皮膚ボーラスとして注入を行った。血液試料を関連するPKパラメータの評価のために必要に応じて0〜5日に渡って採取する。hGH及びグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGH血中レベルを免疫アッセイを用いて各サンプリング時に監視した。表4は、グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHのためのラットPKパラメータを示す。PEG化の効果は、このパラメータが結合体について6時間を超えるにつれて排除のために観察された半減期において明らかとなり、一方、同様の試験からのhGHについて報告されたデータは、1.35±0.2(Clark、同書)、0.77〜1.7(Jorgensenら、“Polyethylene glycol−conjugated proteins”、PSTT 1(8)、November 1998)、又は1時間(Genotropinn(登録商標)(PNU−180307)Investigator Brochure)として報告される。
【0099】
hGH免疫アッセイ
[00102]ラットの血漿におけるhGH及びグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHタンパク質の濃度レベルをhGH AutoDELFIAキット蛍光免疫アッセイ(Perkin−Elmer)を用いて測定した。
【0100】
【表6】

【0101】
血漿の薬物レベルとIGF−1応答との関係もまた、1回服用のグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGH(1.8mg/kg)を脳下垂体を摘出した雌性げっ歯類に皮下注射して包括的な試験において直接測定した。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】[0032]図1は、TSK G4000PWXLカラム上の精製したモノPEG化したグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGH反応産物の溶出プロフィールを示すサイズ排除HPLC追跡である。
【図2】[0033]図2は、hGH及びグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHのトリプシン様マップ解析のHPLC追跡である。上段パネルは、hGHのトリプシン様マップである。下段パネルは、グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHのトリプシン様マップである。T1は、N末端のトリプシン断片である。
【図3】[0034]図3は、ヒト成長ホルモンのアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図4】[0035]図4は、11日のラット体重増加アッセイにおけるグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHの有効性を示す。脳下垂体を摘出された雌性Sprague−Dawleyラットを4〜5週齢(85〜110g)でHarlan Labsから購入した。動物施設に入れ、動物を華氏80度の一定の室温で維持した。3日の環境順応後、基底の成長速度を確立するために4〜10日間毎日体重を測定した。0日で開始し、その後、対照群のラット(約100g)を約0.3mg/kg hGH(黒三角)、又はPBSベヒクル(●)の皮下注射を連続11日間、毎日一度受けた。グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGH試験群(黒四角)は、0日目と6日目に1.8mg/kgのグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHの1回投与を受けた。グループ当り6匹の動物であった。プロットした値は、平均体重±SEMを表す。
【図5】[0036]図5は、グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHに応答した11日の脛骨の成長を示す。動物は図4で処置したものであった。動物を11日の計量後に屠殺し、左の脛骨をX線撮影し、骨の長さをカリパスを用いて計測した。平均長±SEMをプロットする。アスタリスクは、対照グループからの有意差を示す(P<0.05)。グループ当り6匹であった。
【図6】[0037]図6は、グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHに応答した11日の血中尿素窒素を示す。血液試料を図4で処理した動物から採取した。血清を調製し、尿素窒素レベルを計測した。平均±SEMをプロットする(グループ当り6匹)。アスタリスクは、対照グループからの有意差を示す(P<0.05)。
【図7】[0038]図7は、グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHに対する6日の投与量増加の有効性試験を示す。この成長試験は、図4に記載したのと同じやり方で実行したが、グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHの多様な1回投与は0日でのみ投与し、試験は6日間行ったことを除く。対照グループは、6日間連続して、0.3mg/kg hGH(◆)又はPBSベヒクル(○)のいずれかを毎日1回の皮下注射を受けた。グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGH試験群は、0日にグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHの1回投与を受けた。グリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHの投与量は、1.8mg/kg(黒四角)、0・6mg/kg(X)、0.2mg/kg(+)、0.067mg/kg(黒三角)であった。グループ当り6匹の動物であった。
【図8】[0039]図8は、6日の有効性試験の血清IGF−1レベルを示す。動物を図7に記載したように処置した。血中試料をプロットした様々な時間で採取し、血清IGF−1レベルをELISAによって測定した。グループ(n=6)平均を使用して、測定した値に関する一元配置分散分析を用いてIGF−1応答を計算し、AUC d0−6(ng/mL*24時間)値:37,839、28,1292、22,958、及び20,040は、それぞれ1.8、0.6、0.2、及び0.067mg/kg投与グループについて測定した。
【図9】[0040]図9は、脳下垂体を切除した雌性ラットにグリセロール分岐の43kK PEGアルデヒドhGHの1回投与後のPK/PD評価を示す。血漿薬物レベル(a)又は血漿IGF−1応答(b)におけるグリセロール分岐の43K PEGアルデヒドhGHの1回の1.8mg/kg SC投与の効果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
【化1】

(式中、
nは、60〜75の間の整数であり;
mは、450〜460の間の整数であり;そして、
Rは、ヒト成長ホルモンである)
を有するポリエチレングリコール−ヒト成長ホルモン(PEG−hGH)結合体。
【請求項2】
前記(CH2CH2O)n部分が平均分子量:約3Kdを有し、そして、各々の(CH2CH2O)m部分が平均分子量:約20Kdを有する、請求項1に記載のPEG−hGH結合体。
【請求項3】
ヒト成長ホルモンが、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載のPEG−hGH結合体。
【請求項4】
PEGが、配列番号1のN末端のフェニルアラニンに結合している、請求項3に記載のPEG−hGH結合体。
【請求項5】
前記結合体が、モノPEG化されている、請求項4に記載のPEG−hGH結合体。
【請求項6】
少なくとも80%のPEGが、配列番号1のN末端のフェニルアラニンのアルファ−アミノ基に結合している、請求項4に記載のPEG−hGH結合体。
【請求項7】
少なくとも90%のPEGが、配列番号1のN末端のフェニルアラニンのアルファ−アミノ基に結合している、請求項5に記載のPEG−hGH結合体。
【請求項8】
少なくとも95%のPEGが、配列番号1のN末端のフェニルアラニンのアルファ−アミノ基に結合している、請求項5に記載のPEG−hGH結合体。
【請求項9】
少なくとも98%のPEGが、配列番号1のN末端のフェニルアラニンのアルファ−アミノ基に結合している、請求項5に記載のPEG−hGH結合体。
【請求項10】
治療的に有効量の請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9に記載のヒト成長ホルモン−PEG結合体を成長障害又は発達障害を患っている患者に投与することを含む、前記患者を治療する方法。
【請求項11】
前記成長障害又は発達障害が、成長ホルモン欠損症(GHD)、ターナー症候群、慢性腎不全、及び妊娠期間の短縮(SGA)から成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記成長障害又は発達障害が、勃起不全、HIVリポジストロフィー、線維筋痛、骨粗鬆症、記憶障害、うつ病、クローン病、骨形成異常、外傷性脳損傷、くも膜下出血、ヌーナン症候群、ダウン症候群、特発性小人症(ISS)、末期腎不全(ESRD)、極小出生時体重(VLBW)、骨髄系幹細胞救出、メタボリックシンドローム、グルココルチコイドミオパシー、小児のグルココルチコイド処置による小人症、及び早産児のための成長捕捉欠如から成る群から選択される、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−511610(P2008−511610A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529040(P2007−529040)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002939
【国際公開番号】WO2006/024953
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】