説明

グリセロール含有配合物の無機材料の乾式粉砕助剤としての使用

【課題】無機物質の乾式粉砕助剤としてのグリセロール含有配合物の使用。
【解決手段】本発明は、グリセロールを含む配合物の比粉砕エネルギ低下させ且つ粉砕能力を増加させるための、ドロマイト、タルク、二酸化チタン、アルミナ、カオリンおよび炭酸カルシウムの中から選択される無機物質の乾式粉砕助剤としての使用にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機材料の乾式粉砕助剤としてのグリセロール含有配合物(formulus)の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日の化学工業の大きな課題は化石エネルギー源由来の材料に依存しない方法で製造できる製品を提供することである。このアプローチは京都議定書で規定された揮発性有機化合物(VOC)の量を減らすとうい戦略の一環であり、より一般的には「環境に優しい化学」の概念および持続可能な発展に関連するものである。
【0003】
無機産業は化学薬品を大量に消費する産業であり、無機物質に種々の変換(transformation)/改質/加工を行う段階で化学薬品が大量に用いられる。無機材料の乾式粉砕はそうした段階の一つを構成し、天然炭酸カルシウムはその多くの使用例の一つである。これはいわゆる最初の「粉砕」操作で得られ、この操作では粒子間の衝突または他の材料、例えば粉砕ボールとの衝突によって粒径が小さくなる。次に「選別」とよばれる第2段階で粒子を粒径に従って分別される。所望の微粉度に達しない粒子は粉砕機へ再導入する。
【0004】
粉砕は「粉砕助剤」とよばれる試薬の存在下で行われる。この粉砕助剤の役目は機械的粉砕作用を容易にすることにある。粉砕助剤は粉砕段階で導入され、選別段階でも見られる。これに関しては非特許文献1および非特許文献2に詳細に記載されている。
【0005】
添加剤に関する従来技術は多数ある。添加剤は3つの種類すなわち弱ブレンステッド酸、弱ブレンステッド塩基およびルイス塩基に分けることができる。弱ブレンステッド酸の第1グループにはギ酸、酢酸、乳酸、亜炭酸、アジピン酸、乳酸、脂肪酸、特にパルミチン酸およびステアリン酸が含まれ、さらにこれらの酸の塩、例えばリグニンスルホン酸塩も含まれる。これらに関する説明は特許文献1(国際特許第WO 2005/063399号公報)および特許文献2(フランス国特許第2 203 670号公報)に記載されている。
【0006】
第2グループは弱ブレンステッド塩基から成る。このグループには特にアルカノールアミン、例えば当業者に周知のTIPA(トリイソプロパノールアミン)およびTEA(トリエタノールアミン)が含まれる。これらに関しては特許文献3(欧州特許第0 510 890号公報)および特許文献4(英国特許第2 179 268号公報)を参照されたい。
【0007】
乾式粉砕助剤の第3グループを構成するルイス塩基にはアルコールが含まれ、これらはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールがある。例えば、特許文献5(国際特許第2002/081 573号公報)および特許文献6(米国特許第2003/019 399号明細書)には乾式粉砕助剤としてのジエチレングリコールの使用が記載されている(表1参照)。特許文献7(国際特許第2005/071 003号公報)にはエチレングリコールである多価アルコールが記載されている。特許文献8(国際特許第2005/026 252号公報)にはトリエタノールアミン、ポリプロピレングリコールまたはエチレングリコールの乾式粉砕助剤が記載されている。また、特許文献9(国際特許第2007/138410号公報)では低分子量のポリアルキレングリコールの使用を提案している。
【0008】
このグリコールベースの生成物は天然炭酸カルシウムの乾式粉砕で今日最もよく用いられているものであり、その中でもプロピレングリコール(またはモノプロピレングリコール)が最も広く用いられている。これらの添加剤は粉砕現象を容易にする効率および低コストで知られている。これに関しては上記特許文献9(国際特許第WO 2007/138410号公報)に記載されている。
【0009】
しかし、この化合物はVOCフリーではない。そのためこれらの添加剤を用いて粉砕された炭酸カルシウム自体もVOCを含む。これは粉砕助剤の一部が鉱物粒子の表面に固定/吸収されて残るためである。いかなる揮発性有機化合物も許容されないという規制がされた用途では、VOC含有量が炭酸カルシウムの使用に対する障壁となる。
【0010】
特許文献10(国際特許第WO 2006/132 762号公報)および特許文献11(国際特許第WO 2007/109 328号公報)には新規な乾式粉砕助剤が提案されていた。この粉砕助剤は多量に利用可能である再生可能な天然資源である植物油または動物油を変換(鹸化、エステル交換および脂肪酸合成)して得られる。これはVOCを含まない代替物であり、この代替物は環境の観点および天然資源保護の観点から極めて有利である。全て合成で得られるポリエチレン−グリコール(PEG)ではこれは不可能なことである。
【0011】
最後の2つの特許文献は基本的にセメントの乾式粉砕用のもので、これは最終粒径(メジアン径)が20〜100μmである。炭酸カルシウムの粒径は約1ミクロンであるので、これは「粗」粉砕プロセスである。従って、セメントの乾式粉砕に関する開示内容を炭酸カルシウムの乾式粉砕法に転用することは考えられない。すなわち、後者の目的は下限の超微粉砕(1μm)を達成することにあり、その粉砕には粉砕無機物質(Rumpf,1975)の1乾燥トン当たりセメントの約10倍のエネルギーを費やさなければならない。
【0012】
さらに、上記2つの特許文献ではグリセロール存在下での粉砕の「改良」と記載されているが、この改良が何から成るかは説明がなく、また、この「改良」が何を基準に改良されたのかを証明していない。さらに、どちらの特許文献にも発明を支持するテストが全く記載されていない。従って、特許請求された化合物の「技術的効果」は理解できない。
【0013】
特許文献12(米国特許第4,204,877号明細書)には、水硬セメントまたは「クリンカー」粉砕でのポリグリセロールの使用が記載されている、炭酸カルシウムに転用可能か否かは全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許第WO 2005/063399号
【特許文献2】フランス国特許第2 203 670号
【特許文献3】欧州特許第0 510 890号
【特許文献4】英国特許第2 179 268号
【特許文献5】国際特許第WO 2002/081 573号
【特許文献6】米国特許第2003/019 399号
【特許文献7】国際特許第WO 2005/071 003号
【特許文献8】国際特許第WO 2005/026 252号
【特許文献9】国際特許第WO 2007/138410号
【特許文献10】国際特許第WO 2006/132 762号
【特許文献11】国際特許第WO 2007/109 328号
【特許文献12】米国特許第4,204,877号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】炭酸カルシウム(Birkhauser Verlag,2001)
【非特許文献2】Beitrag zur Aufklarung der Wirkungsweise von Mahlhilfsmitteln(Freiberger Forschungshefte,VEB Deutscher Verlag fur Grundstoffindustrie, Leipzig, Germany, 1975)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者は無機物質、特に天然炭酸カルシウム用の乾式粉砕助剤の研究を続けた結果、グリセロールまたはポリグリセロールを含む配合物の使用が特に有利であるということを確認した。本発明配合物は所定粒度分布を得るための粉砕能力を増加させ且つ粉砕エネルギー(いわゆる粉砕エネルギーと分級エネルギー)の原単位を減少させるという点でプロピレングリコールより効果的である。
【0017】
炭酸カルシウムは径が小さいと、特に約1ミクロンの時には、材料の塑性変形と粉砕によって粒径を小さくするのに必要な分割(fracture)との間に競合が起こるということが当業者に公知である(非特許文献3参照)ので、本発明の新規な使用は驚くべきことである。
【非特許文献3】延性−脆性遷移の特徴決定のためのナノインデンテーション疲労試験の使用(欧州セラミック学会誌、(2009)、29(6),pp 1021-1028)
【0018】
分割 (fracture) は物質が「脆弱」であることが好ましいので、炭酸カルシウムを微粉砕しようとする当業者はその脆化を助ける添加剤を探すことになる。グリセロールは石灰岩の硬度を大幅に下げることが非特許文献4の[表1]に示されている。
【非特許文献4】湿潤による硬度の低減(著者R.W.Heinz and N.Street、技術注記、鉱山工学学会、6月、1964年、223〜224頁)
【0019】
さらに、グリセロールを使用した場合、グリセロールがCaOおよびCa(OH)2と反応しないということは同じぐらい予期し得ない利点なことである。この利点はそれが炭酸塩材料の表面に形成されるためと本発明者は考える。従って、本発明で用いる乾式粉砕剤は変色しない。事実、グリセロールを使用して粉砕した炭酸カルシウムの黄変は全く生じないか、最小限になる。それに対してモノプロピレングリコール(MPG)を用いて粉砕した場合には黄変が生じる。
【0020】
「比粉砕エネルギー (specific grinding energy)」は1トンの乾燥炭酸カルシウムの粉砕に必要なエネルギー(kWh)の総量を表す。「粉砕能力 (grinding capacity)」とは1時間当たりに粉砕される乾燥炭酸カルシウムの質量を意味する。これらの大きさはいずれも、本発明では炭酸カルシウムの乾式粉砕方法全体の「限界値」で決定される。すなわち、いわゆる粉砕段階とその後の選別段階の両方を取り入れて決定される。正確には、本発明の一つの独創的な観点は、無機物質の粉砕現象を見るときに見落とされることが多い粉砕段階を考慮する点である。
【0021】
「粒度分布 (granulometry)」とはMICROMERITICS(商標)社から市販のセディグラフ(Sedigraph、登録商標)5100装置で求めたメジアン径d50(μm)を意味する。比表面積(m2/g)は当業者に周知のBET法に従って測定する。
「乾式粉砕」とは、水分量を粉砕装置内の上記材料の10%(乾燥重量)以下にして粉砕装置内で粉砕することを本発明では意味する。
【0022】
従来技術、特に上記特許文献10(国際特許第WO 2006/132 762号)および上記特許文献11(国際特許第WO 2007/109 328号)には、グリセロールを含む配合物が、
(1)VOCを減らす必要性に対応した市販の対照例を構成するモノプロピレングリコール(MPG)またはポリエチレングリコール(PEG)と比較して、炭酸カルシウムの粉砕の有効性の点で、
(2)炭酸カルシウムの乾式粉砕で同量で用いた時に、
比粉砕エネルギーが減少し且つ粉砕能力が向上し(これらの大きさはいずれもいわゆる粉砕段階と選別段階の両方を考慮して決定される)、所定の約1μm(すなわち、セメントの乾式粉砕で得られるものよりはるかに小さいメジアン径d50)の粒度分布を得ることができる、とういことは開示も提案もない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の対象は、比粉砕エネルギーの低下および粉砕能力の増加させるための、下記(i)または(ii)、(iii)から成る配合物の、ドロマイト、タルク、二酸化チタン、アルミナ、カオリンおよび炭酸カルシウムの中から選択される無機物質の乾式粉砕助剤としての使用にある:
(i)水溶液または純粋な形のグリセロール、または
(ii)グリセロールと水溶液または純粋な形をした下記の一種または複数の化合物との組合せ:エチレングリコール、モノプロピレングリコール、トリエチレングリコール、無機酸または無機酸塩、ギ酸またはクエン酸またはギ酸塩またはクエン酸塩、有機ポリ酸または有機ポリ酸塩、アルカノールアミン、ポリ(エチレンイミン)、分子量(重量)が200g/モル〜20,000g/モル、好ましくは600g/モル〜6,000g/モルのポリアルキレングリコールポリマー、回転半径の二乗平均平方根が無機物質のモード半径以下である炭水化物、一種または複数のポリグリセロール、
(iii)水溶液または純粋な形をした一種または複数のポリグリセロール。
【発明を実施するための形態】
【0024】
「純粋な形」とは、その化合物を含む配合物が他の化合物を含まないことを意味する。
【0025】
本発明の使用の他の特徴は、1(無色)〜20(非常に暗い褐色)の段階で表されるガードナーDIN ISO4630/ASTM規格D 1544 68法に従って測定される乾式粉砕助剤のガードナー色指数が3以下である点にある。
本発明の使用により、粉砕生成物の黄変が防止でき、特に、TAPPI T452 ISO2470規格に従った初期白色度に対する白色度の変化が1%以下である粉砕生成物が得られる。
【0026】
本発明の使用は粉砕助剤の形態および種類に応じて下記の5つの変形例にすることができる:
第1変形例:純粋な形のグリセロール
第2変形例:水溶液配合物中のグリセロール
第3変形例:水溶液または純粋な形をした、グリセロールを上記(ii)に記載の化合物の少なくとも一種と組み合わせたもの、
第4変形例:純粋な形の少なくとも一種のポリグリセロール
第5変形例:水溶液配合物中の少なくとも一種のポリグリセロール。
【0027】
第1変形例の使用の特徴は上記配合物が純粋な形のグリセロールから成る点にある。
第2変形例の使用の特徴は上記配合物が水とグリセロールとから成る点にある。この第2変形例の使用ではさらに、上記配合物がその全重量に対して25〜95重量%、好ましくは45〜90重量%、さらに好ましくは75〜85重量%のグリセロールを含み、残部は水から成る点に特徴がある。
【0028】
第3変形例の使用の特徴は上記配合物が水溶液または純粋な形で、グリセロールと一種または複数の上記化合物とから成る点にある。この第3変形例でのさらに他の特徴は無機酸がリン酸である点にある。この第3変形例の使用では、無機塩がモノ−、ジ−またはトリ−アルカリ塩であり、好ましくは元素周期表のIまたはII族のカチオンの塩であることに特徴がある。この第3変形例の使用では、ギ酸またはクエン酸の上記塩がモノ−、ジ−またはトリ−アルカリ塩であり、好ましくは元素周期表のIまたはII族のカチオンの塩である点に特徴がある。
【0029】
第3変形例の使用のさらに他の特徴は、有機ポリ酸が式:COOH−(CH2n−COOH(ここで、nは0〜7の値を有する整数)を有するか、式:COOH−(CH2n−COOH(ここで、nは0〜7の値を有する整数)の有機ポリ酸のモノ−またはジ−アルカリ塩であるか、一種または複数の下記モノマー:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはイタコン酸、好ましくはシュウ酸、ピメリン酸またはアジピン酸の有機ポリ酸ポリマーの酸の形または元素周期表のI族またはII族の一種または複数のカチオンで部分的または完全に中和された形である点にある。
【0030】
第3変形例での使用でのさらに他の特徴は、アルカノールアミンが2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミンおよびトリ−イソ−プロパノールアミン(中和でもよい)の中から選択され、好ましくはそれらのギ酸またはクエン酸によってまたは有機ポリ酸塩によって中和された形の中から選択される点にある。
【0031】
第3変形例での使用でのさらに他の特徴は、ポリアルキレングリコールポリマーがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはエチレン−プロピレングリコールコポリマー(ランダムまたはブロック)である点にある。
第3変形例での使用でのさらに他の特徴は、回転半径の二乗平均平方根が無機物質のモード半径に等しいか、それ以下である炭水化物がグルコース、フルクトース、スクロース、澱粉またはセルロースであり、好ましくはスクロースである点にある。
【0032】
第3変形例での使用でのさらに他の特徴は、ポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される点にある。
【0033】
第3変形例での使用でのさらに他の特徴は、上記配合物がその全重量に対して20〜95重量%のグリセロール、1〜50重量%の上記化合物および0〜65重量%の水、好ましくは30〜90重量%のグリセロール、10〜45重量%の上記化合物および0〜60重量%の水、好ましくは35〜75重量%のグリセロール、30〜40重量%の上記化合物および5〜50重量%の水を含む点にある(ここで、グリセロール、上記化合物および水の重量パーセントの合計はいずれの場合も100%である)。
【0034】
第4変形例での使用のさらに他の特徴は、配合物が一種または複数の純粋な形のポリグリセロールから成る点にある。この第4変形例での使用のさらに他の特徴はポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される点にある。
【0035】
第5変形例での使用の特徴は上記配合物が水と一種または複数のポリグリセロールとから成る点にある。この第5変形例での使用のさらに他の特徴は上記配合物がその全重量に対して25〜95重量%、好ましくは45〜90重量%、さらに好ましくは75〜85重量%のポリグリセロールを含み、残部は水から成る点にある。
【0036】
第5変形例での使用のさらに他の特徴はポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される点にある。
【0037】
一般に、本発明の使用の特徴は上記無機物質の乾燥重量に対して100〜5,000ppm、好ましくは500〜3,000ppmのグリセロールまたはポリグリセロールを使用する点にある。
一般に、本発明の使用の特徴は無機物質1m2当たり0.1〜1mg、好ましくは0.2〜0.6mg(全乾燥当量)のグリセロールまたはポリグリセロール、と使用可能な化合物とを使用する点にある。
【0038】
一般に、本発明の使用では、セディグラフ(Sedigraph、登録商標)5100で測定した平均直径が0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmになるまで無機物質を粉砕する。
一般に、本発明の使用では、セディグラフ(Sedigraph、登録商標)5100で測定した直径が2μm以下の粒子の重量パーセントが20〜90%、好ましくは30〜60%になるまで無機物質を粉砕する。
一般に、本発明の使用では、無機物質が天然炭酸カルシウムである。
本発明は以下の実施例からより明確に理解できよう。しかし、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1
この実施例はカララ大理石である天然炭酸カルシウムの乾式粉砕に関するものである。粉砕はボールミルおよび分級機を備えた設備で行った。この実施例では、グリセロールを乾式粉砕剤として使用して、モノプロピレングリコールおよびポリエチレングリコールを使用した従来法の2つの粉砕助剤と比べて、製造能力(1時間当たりに粉砕される乾燥鉱物のトンで表記)と、加えた比粉砕エネルギーとが改良されることを説明する。
[表1]はハンマーミルで予備粉砕して得られる、粉砕機に供給する前の初期炭酸カルシウムの粒度分布である。
【0040】
【表1】

【0041】
カララ大理石を容量が5.7m3の円筒形ボールミルに導入し、平均径が16mmの8トンのCylpeb(登録商標)鉄粉砕ビーズを用いて粉砕して、下記材料を得た:
(1)メジアン径が1.8μm以下、
(2)55重量%の粒子は直径が2μm以下。
乾式粉砕は連続的に行う。
【0042】
粉砕材料を粉砕チャンバから出し、セレック(SELEX、登録商標)6S型の分級機に送る。その回転速度および空気流量をそれぞれ5,200回転/分および6,000m3/時に設定して、平均径が所定値以下の粒子分を選別した。この粒子分が最終製品を構成する。平均径がこの値より大きい残りの粒子分はボールミルへ再導入した。
【0043】
粉砕は選別機の供給量が常に4トン/時になり且つボールミルに注入される新しい製品の量がこの装置を出る選別済み製品の量と一致するように行った。
上記設備は設備を始動後に粉砕材料の量、粉砕能力および粉砕エネルギーが安定値になるまで運転し、その後に下記結果を記録した。
乾式粉砕助剤は、粉砕用に導入した新しい材料に対して一定量の粉砕助剤が維持されるように新しい材料が導入される所の領域で粉砕装置に導入した。
【0044】
【表2】

【0045】
「MPG」と記載した粉砕助剤は75(質量)%のモノプロピレングリコールを含む水溶液から成り、FLUKA(商標)社から入手した。
「EG」と記載した粉砕助剤はエチレングリコールから成り、FLUKA(商標)社から入手した。
「PEG」と記載した粉砕助剤は75(質量)%の分子量(重量)が600g/モルのポリエチレングリコールを含む水溶液から成り、FLUKA(商標)社から入手した。
「グリセロール」は75(質量)%のグリセロールを含む水溶液を意味する。
「グリセロール+H3PO4」は75(質量)%のグリセロール/リン酸混合物(質量で99/1)を含む水溶液を意味する。
各テストでは2,000ppmの活性化合物または2,667ppmの水溶液を用いた。
【0046】
ガードナー黄変指数はDIN ISO4630/ASTM規格D 1544 68に従って測定し、その値は1(無色)〜20(非常に暗い褐色)の段階で表される。値1〜2はほぼ無色を表し、値5は黄色5を表し、値11は褐色を表す。
他が全て同じ場合、粉砕助剤のガードナー黄変指数が低ければ低いほど粉砕後の炭酸カルシウムで観察される最終黄変度は高くなる。モノプロピレングリコールを用いたテスト1ではガードナー指数の値が極めて高いことが観察される。従って、黄変の問題に関する限り、他のテストで用いた粉砕助剤の方が好ましい。
【0047】
唯一の「許容可能な」粉砕助剤はテスト2、3、4に対応する助剤であるので、その性能を調べた。最良の結果はテスト3と4で得られる。すなわち、従来技術よりはるかに微細な粒子(d50値の減少)に対して製造能力が増加し、比粉砕エネルギーが減少する。
要約すると、本発明のポリマーのみが粉砕方法に関する以下の機能を満足させ且つ黄変の減少を可能にし、微細グレードの炭酸カルシウムを得ることができる:
(1)製造能力の改良、
(2)製造エネルギー(粉砕用だけでなく等級分け用)の削減。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比粉砕エネルギーの低下および粉砕能力の増加させるための、下記(i)または(ii)、(iii)から成る配合物の、ドロマイト、タルク、二酸化チタン、アルミナ、カオリンおよび炭酸カルシウムの中から選択される無機物質の乾式粉砕助剤としての使用:
(i)水溶液または純粋な形のグリセロール、または
(ii)グリセロールと水溶液または純粋な形をした下記の一種または複数の化合物との組合せ:エチレングリコール、モノプロピレングリコール、トリエチレングリコール、無機酸または無機酸塩、ギ酸またはクエン酸またはギ酸塩またはクエン酸塩、有機ポリ酸または有機ポリ酸塩、アルカノールアミン、ポリ(エチレンイミン)、分子量(重量)が200g/モル〜20,000g/モル、好ましくは600g/モル〜6,000g/モルのポリアルキレングリコールポリマー、回転半径の二乗平均平方根が無機物質のモード半径以下である炭水化物、一種または複数のポリグリセロール、
(iii)水溶液または純粋な形をした一種または複数のポリグリセロール。
【請求項2】
1(無色)〜20(非常に暗い褐色)の段階で表されるガードナーDIN ISO4630/ASTM規格D 1544 68法に従って測定される、乾式粉砕助剤のガードナー色指数の値が3以下である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記配合物が純粋な形のグリセロールから成る請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
上記配合物が水とグリセロールとから成る請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
上記配合物がその全重量に対して25〜95重量%、好ましくは45〜90重量%、さらに好ましくは75〜85重量%のグリセロールを含み、残部は水から成る請求項4に記載の使用。
【請求項6】
上記配合物が、水溶液または純粋な形をした、グリセロールと一種または複数のの上記化合物とから成る請求項1または2に記載の使用。
【請求項7】
無機酸がリン酸である請求項6に記載の使用。
【請求項8】
無機塩がモノ−、ジ−またはトリ−アルカリ塩、好ましくは元素周期律表のI族またはII族のカチオンの塩である請求項6に記載の使用。
【請求項9】
ギ酸またはクエン酸の塩がモノ−、ジ−またはトリ−アルカリ塩で、好ましくは元素周期表のI族またはII族のカチオンの塩である請求項6に記載の使用。
【請求項10】
有機ポリ酸が式:COOH−(CH2n−COOH(ここで、nは0〜7の整数)を有するか、式:COOH−(CH2n−COOH(ここで、nは0〜7の整数)の有機ポリ酸のモノ−またはジ−アルカリ塩であるか、一種または複数の下記モノマー:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはイタコン酸、好ましくはシュウ酸、ピメリン酸またはアジピン酸の有機ポリ酸ポリマーの酸の形または元素周期表のI族またはII族の一種または複数のカチオンで部分的または完全に中和された形である請求項6に記載の使用。
【請求項11】
アルカノールアミンが2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミンおよびトリ−イソ−プロパノールアミン(中和されていてもよい)の中から選択され、好ましくはギ酸またはクエン酸または請求項10に記載の有機ポリ酸塩によって中和された形の中から選択される請求項6に記載の使用。
【請求項12】
ポリアルキレングリコールポリマーがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはエチレン−プロピレングリのランダムまたはブロックコールコポリマーである請求項6に記載の使用。
【請求項13】
回転半径の二乗平均平方根が無機物質のモード半径以下である炭水化物がグルコース、フルクトース、スクロース、澱粉またはセルロースであり、好ましくはスクロースである請求項6に記載の使用。
【請求項14】
ポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される請求項6に記載の使用。
【請求項15】
上記配合物が全重量の20〜95重量%のグリセロール、1〜50重量%の上記化合物および0〜65重量%の水、好ましくは30〜90重量%のグリセロール、10〜45重量%の上記化合物および0〜60重量%の水、好ましくは35〜75重量%のグリセロール、30〜40重量%の上記化合物および5〜50重量%の水を含む(いずれの場合もグリセロール、上記化合物および水の重量パーセントの合計は100%)請求項6〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
上記配合物が一種または複数の純粋な形のポリグリセロールから成る請求項1または2に記載の使用。
【請求項17】
一種または複数のポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される請求項16に記載の使用。
【請求項18】
上記配合物が水と一種または複数のポリグリセロールとから成る請求項1または2に記載の使用。
【請求項19】
上記配合物が全重量の25〜95重量%、好ましくは45〜90重量%、さらに好ましくは75〜85重量%のポリグリセロールを含み、残部は水から成る請求項18に記載の使用。
【請求項20】
一種または複数のポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される請求項18または19に記載の使用。
【請求項21】
上記無機物質の乾燥重量に対して100〜5,000ppm、好ましくは500〜3,000ppmのグリセロールまたはポリグリセロールを使用する請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
無機物質1m2当たり、0.1〜1mg、好ましくは0.2〜0.6mg(全乾燥当量)の上記グリセロールまたは上記ポリグリセロールおよび考えられる全ての剤を使用する請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
セディグラフ(Sedigraph、登録商標)5100で測定した平均直径が0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmになるまで無機物質を粉砕する請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
セディグラフ(Sedigraph、登録商標)5100で測定した直径が2μm以下の粒子の重量パーセントが20〜90%、好ましくは30〜60%になるまで無機物質を粉砕する請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
無機物質が天然炭酸カルシウムである請求項1〜24のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2013−512774(P2013−512774A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542628(P2012−542628)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003074
【国際公開番号】WO2011/070416
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(398051154)コアテツクス・エス・アー・エス (35)
【Fターム(参考)】