説明

グリセロール誘導体で修飾された化合物

本発明は、例えば薬剤キャリアーを製造するための表面修飾剤等として有用な化合物またはその塩、およびそれらを含有する微粒子等を提供することを目的として、両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質を、式(1)


(式中、Rは該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質または該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質とR−Xとを結合させるためのスペーサーと反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基を表し、nは3以上の整数を表し、Xはn個の


を有することが可能な残基を表す)で表されるグリセロール誘導体で直接もしくは該スペーサーを介して修飾された化合物またはその塩、およびそれらを含有する微粒子等を提供する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えば薬剤キャリアーを製造するための表面修飾剤等として有用な、両親媒性物質または疎水性物質がグリセロール誘導体で修飾された化合物またはその塩、およびそれらを含有する微粒子等に関する。
【背景技術】
従来、生体内に投与された薬剤を必要な組織へ、必要な量で、必要なときに送達させるドラッグデリバリーシステムとして、例えばリポソーム、エマルション、ミセル、微粒子結晶、マイクロカプセル、マイクロスフェアー等の微粒子を薬剤キャリアーとして用いる方法が知られている。
例えばリポソームは、抗腫瘍剤や抗炎症剤等の薬剤キャリアーとして使用されているが、リポソームを静脈内に投与すると、例えば肺、肝臓、脾臓等に捕捉され、速やかに血中から消失することが知られている。そのため、標的部位が肺、肝臓、脾臓以外の部位である場合、例えば腫瘍または炎症部位に、薬剤を効率よく到達させることが困難である。そこで例えばポリエチレングリコール(PEG)でリポソームを化学修飾することにより、リポソームの血中滞留性を高める等の様々な試みがなされている。例えば、表面がPEG誘導体を含有する表面修飾剤で修飾されたリポソーム(PEG修飾リポソーム)では、非常に高いリポソームの血中滞留性が得られることが知られている(例えば特許第2667051号明細書、特公平7−20857号公報、特許第2948246号明細書等参照)。また、ポリグリセリン誘導体を含有する表面修飾剤で修飾されたリポソーム(ポリグリセリン修飾リポソーム)でも、リポソームの血中滞留性が高まることが知られている(例えば特開平6−228012号公報参照)。
しかし、PEG修飾リポソームの薬剤キャリアーとしての使用には、いくつかの課題がある。例えばPEG修飾リポソームは、薬剤を腫瘍まで効率よく到達させるが、リポソーム表面に存在するPEGの立体障害が大きいため、薬剤と腫瘍細胞との相互作用が抑制され、腫瘍細胞内への薬剤の効率的な移行が妨げられることが知られている[バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta),2002年,1558巻,p.1−13参照]。また、PEG修飾リポソームを反復投与すると、血中滞留性が低下することが知られている[ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(Journal of Controlled Release),2003年,88巻,p.35−42及びジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピュティクス(Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics),2000年,292巻,p.1071−1079参照]。さらに、PEG修飾リポソームにモノクローナル抗体を組み込んだリポソームでは、PEGが抗体の細胞認識能を阻害することが知られており、PEG修飾リポソームによる能動的ターゲッティングには課題がある[バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta),1991年,1062巻,p.142−148参照]。また、PEGがリポソームの脂質に組み込まれることによりリポソーム膜の安定性が低下し、リポソームに内包された薬剤が漏出しやすくなることも考えられる。
一方、ポリグリセリン修飾リポソームは、PEG修飾リポソームに代わる血中滞留性リポソームを目指したものであるが、その血中滞留性は、未修飾のリポソームの2倍程度であり十分とは言えない。
これらのことから、PEG修飾リポソームに代わる新規な薬剤キャリアーが望まれている。
【発明の開示】
本発明の目的は、例えば薬剤キャリアーを製造するための表面修飾剤等として有用な、両親媒性物質または疎水性物質がグリセロール誘導体で修飾された化合物またはその塩、およびそれらを含有する微粒子等を提供することにある。なお、本発明における表面修飾剤とは、薬剤キャリアー(例えば微粒子)の構成成分の1つであり、該キャリアーの表面部に構造の一部または全部が、微キャリアーから外方向に伸びてなるように含有する化合物またはその化合物を含有する組成物のことである。
本発明は以下の(1)〜(28)に関する。
(1)両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質が式(1)

(式中、Rは該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質または該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質とR−Xとを結合させるためのスペーサーと反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基を表し、nは3以上の整数を表し、Xはn個の

を有することが可能な残基を表す)で表されるグリセロール誘導体で直接もしくは該スペーサーを介して修飾された化合物またはその塩。
(2)nが2(式中、mは2以上の整数を表す)である前記(1)記載の化合物またはその塩。
(3)Xが1以上の直列的分岐構造を有する前記(1)または(2)記載の化合物またはその塩。
(4)Xが1個以上(n−1)個以下の

または

(式中、Y、YおよびYはそれぞれ独立して、単結合、あるいは置換もしくは非置換のアルキレン、カルボニル、置換もしくは非置換のイミノ、O、S、スルホニルおよびスルフィニルからなる群より選ばれる一つまたは同一もしくは異なった複数の任意の組み合わせを表し、Y、YおよびYが複数存在するとき、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)で表される構造を含有する前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
(5)Xが1個以上(n−1)個以下の

で表される構造を含有する前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
(6)Xが1個以上(n−1)個以下の

で表される構造を含有する前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
(7)Xが1個以上(n−1)個以下の

で表される構造を含有する前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
(8)Xが1個以上(n−1)個以下の

で表される構造を含有する前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
(9)Rが、両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質または該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質とR−Xとを結合させるためのスペーサー中のカルボキシ、アミノ、水酸基、メルカプト、ホルミル、硫酸残基、リン酸残基、ホスホン酸残基およびそれらの部分構造からなる群より選ばれる基との反応性を有する基または該反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基である前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
(10)Rが、カルボン酸活性エステル残基、カーボネート、マレイミド、メルカプト、ホルミル、トレシル、イソシアナート、酸無水物残基、酸ハロゲン化物残基、ビニルスルホニル、ヒドラジド、アミノ、水酸基、ハロゲン、カルボキシ、ビニルおよびホスホノからなる群より選ばれる基を含有する残基である前記(1)〜(8)のいずれかに記載の化合物またはその塩。
(11)前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を少なくとも二つ含有する混合物。
(12)両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質が脂質類またはその誘導体である前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
(13)式(2)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
(14)式(3)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
(15)式(4)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
(16)式(5)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
(17)式(6)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
(18)式(7)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
(19)式(8)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
(20)式(9)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
(21)式(10)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
(22)RおよびRがエチレンである前記(13)〜(21)のいずれかに記載の化合物またはその塩。
(23)両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質が、該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質または該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質とR−Xとを結合させるためのスペーサーと反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基および1個以上の

を有するグリセロール誘導体で直接もしくは該スペーサーを介して修飾された化合物またはその塩を含有する微粒子。
(24)前記(1)〜(22)のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有する微粒子。
(25)微粒子がリポソーム、脂肪乳剤、エマルション、ミセルおよび微粒子結晶からなる群より選ばれる微粒子である前記(23)または(24)記載の微粒子。
(26)両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質が、該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質または該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質とR−Xとを結合させるためのスペーサーと反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基および1個以上の

を有するグリセロール誘導体で直接もしくは該スペーサーを介して修飾された化合物またはその塩を含有する微粒子の表面修飾剤。
(27)前記(1)〜(22)のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有する微粒子の表面修飾剤。
(28)微粒子がリポソーム、脂肪乳剤、エマルション、ミセルおよび微粒子結晶からなる群より選ばれる微粒子である前記(26)または(27)記載の表面修飾剤。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明において、
(i)両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質と反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基および1個以上の

を有するグリセロール誘導体(以下、グリセロール誘導体(I)と称する)としては、その構造中に、該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質と反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基および1個以上の

を有するものであればいずれでもよいが、例えば式(1)

(式中、Rは該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質と反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基を表し、nは3以上の整数を表し、Xはn個の

を有することが可能な残基を表す)で表されるグリセロール誘導体(以下、グリセロール誘導体(1)と称する)等があげられる。
式(1)において、Xは、Rおよびn個の

と結合することができる基であれば、特に限定されることはないが、1以上の直列的分岐構造を有することが好ましい。ここで、直列的分岐構造とは、2つ以上に分岐した分岐鎖の少なくとも1つの分岐鎖が、さらに2つ以上分岐し、これが繰り返される構造を意味する。中でも、2つ以上に分岐した分岐鎖のそれぞれが、さらに2つ以上に分岐し、これが繰り返される構造が好ましい。さらに、それぞれの分岐数は2であるのが好ましい。
分岐構造としては、

または

(式中、Y、YおよびYはそれぞれ前記と同義である)が好ましく、中でも

で表されるグリセロールユニット、

または

がより好ましい。これら分岐構造の式(1)における含有数は、特に限定されることはないが、1個以上(n−1)個以下が好ましく、nが2である場合は中でも1個以上(2−2)個以下がより好ましい。
さらに、式(1)において、Xが1個以上(n−1)個以下の、nが2である場合は1個以上(2−2)個以下の

で表される構造を含有するグリセロール誘導体も好ましい。
、YおよびYの定義のうち、アルキレンとしては、例えば炭素数1〜8の、直鎖状、分岐状または環状のアルキレン、より具体的にはメチレン、エチレン、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイル、ヘキサン−1,6−ジイル、ヘプタン−1,7−ジイル、オクタン−1,8−ジイル、ノナン−1,8−ジイル、デカン−1,9−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,2−ジイル、シクロペンタン−1,2−ジイル、シクロヘキサン−1,2−ジイル、シクロペンタン−1,2−ジイル、シクロオクタン−1,2−ジイル等があげられる。
置換アルキレンにおける置換基としては、例えば同一または異なって、置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン原子、低級アルキル、不飽和炭化水素基、アリール、低級アルコキシ、水酸基、オキソ、カルボキシ、アシル、アロイル、アミノ、ニトロ、シアノ、複素環基等があげられる。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子があげられる。低級アルキルおよび低級アルコキシの低級アルキル部分としては、例えば炭素数1〜8の、直鎖状または分岐状のアルキル、より具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等があげられる。不飽和炭化水素基としては、例えば炭素数1〜8の、直鎖状、分岐状または環状の不飽和炭化水素基、より具体的にはビニル、アリル、1−プロペニル、メタクリル、2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ヘキセニル、1,3−ペンタジエニル、1,3−ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、プロパルギル、ペンチニル等のアルケニルおよびアルキニルがあげられる。アリールとしては、例えば炭素数6〜14のアリール、より具体的にはフェニル、ナフチル、アントラニル等があげられる。アシルとしては、例えば炭素数1〜8の、直鎖状、分岐状または環状のアシル、より具体的にはアセチル、プロピオニル等があげられる。アロイルとしては、例えばベンゾイル等があげられる。複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子の少なくとも一つを含有する3〜8員環の複素環基等があげられ、より具体的にはフリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、トリアジニル、インドリル、キノリル、プリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル等があげられる。
置換イミノにおける置換基としては、例えば低級アルキル、アリール、アラルキル等があげられる。
ここで、アラルキルとしては、例えば炭素数7〜13のアラルキル、より具体的にはベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、ナフチルメチル等があげられる。低級アルキルおよびアリールはそれぞれ前記と同義である。
式(1)において、Rは両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質と反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基であり、Rの部分構造である反応性を有する基は、両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質中のカルボキシ、アミノ、水酸基、メルカプト、ホルミル、硫酸残基(スルホニル、スルフェニル、スルフィニル等)、リン酸残基(ホスホノ、ホスホノイル、ホスホナト、ヒドロキシオキシドホスホリル、ヒドロヒドロキシホスホリル、ホスフィノイル、ヒドロキシホスホリル、ホスホリル等)、ホスホン酸残基(ジヒドロキシホスファニル、ヒドロキシオキシドホスファニル、ヒドロキシホスファニル、ヒドロキシホスファンジイル、ホスフィナト等)等またはそれらの部分構造と反応することが可能であればいかなる基でもよい。
両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質と反応性を有する基として、好ましくは、カルボン酸活性エステル残基、カーボネート、マレイミド、メルカプト、ホルミル、トレシル、イソシアナート、酸無水物残基、酸ハロゲン化物残基、ビニルスルホニル、ヒドラジド、アミノ、ハロゲン等があげられる。
両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質と反応性を有する基に変換可能な基として、好ましくは、水酸基、カルボキシ、アミノ、メルカプト、ホルミル、ビニル、ホスホノ、ハロゲン等があげられる。
カルボン酸活性エステル残基におけるカルボン酸活性エステルとしては、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基等を有するエステルが好ましく、具体的にはN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、p−ニトロフェニルエステル、チオフェニルエステル、2,3,5−トリクロロフェニルエステル、2,4,6−トリクロロフェニルエステル、2,4,5−トリクロロフェニルエステル、ペンタクロロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシフタルイミドエステル等があげられる。
酸無水物残基における酸無水物としては、具体的にはカルボン酸の無水物等があげられる。
酸ハロゲン化物残基としては、具体的にはカルボニルクロライド、カルボニルブロマイド、カルボニルアイオダイド、カルボニルフルオライド等があげられる。
Rの反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基以外の部分は、該反応性を阻害しない基であれば特に限定されず、任意の基であってよく、具体的には、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換の不飽和炭化水素基、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアルコキシ、水酸基、カルボニル、カルボキシ、置換もしくは非置換のアシル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のアミノ、置換もしくは非置換のイミノ、ニトロ、シアノ、O、S、スルフィニル、スルホニル、置換もしくは非置換の複素環基等からなる群より選ばれる一つまたは同一もしくは異なった複数の任意の組み合わせ等を含有することができる。中でも、置換もしくは非置換のアルキレン、カルボニル、置換もしくは非置換のイミノ、OおよびSからなる群より選ばれる一つまたは同一もしくは異なった複数の任意の組み合わせを含有するものが好ましい。
Rのアルキルおよびアルコキシのアルキル部分としては、例えば炭素数1〜8の、直鎖状、分岐状または環状のアルキル、より具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等があげられる。
ハロゲン原子、不飽和炭化水素基、アルキレン、アリール、アシル、アロイルおよび複素環基は、それぞれ前記Y、YおよびYの定義において記載されているハロゲン原子、不飽和炭化水素基、アルキレン、アリール、アシル、アロイルおよび複素環基と同義である。
置換アルキル、置換不飽和炭化水素基、置換アルキレン、置換アリール、置換アルコキシ、置換アシル、置換アロイルおよび置換複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって、置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン原子、アルキル、不飽和炭化水素基、アリール、アルコキシ、水酸基、オキソ、カルボキシ、アシル、アロイル、アミノ、ニトロ、シアノ、複素環基等があげられ、ハロゲン原子、アルキル、不飽和炭化水素基、アリール、アルコキシ、アシル、アロイルおよび複素環基はそれぞれ前記と同義である。
置換イミノにおける置換基としては、例えばアルキル、不飽和炭化水素基、アリール、アルコキシ、アシル、アロイル、アミノ、複素環基等があげられ、置換アミノにおける置換基としては、例えば同一または異なって、置換数1〜2の、より具体的にはアルキル、不飽和炭化水素基、アリール、アルコキシ、アシル、アロイル、アミノ、複素環基等があげられ、アルキル、不飽和炭化水素基、アリール、アルコキシ、アシル、アロイルおよび複素環基はそれぞれ前記と同義である。
式(1)において、nは3以上の整数であれば特に限定されることはないが、好ましくは2(式中、mは前記と同義である)、さらに好ましくは4〜1024(2〜216)である。
グリセロール誘導体(1)は、その分子量が特に限定されることはないが、好ましくは100〜1,000,000、さらに好ましくは1,000〜100,000の分子量を有する。
グリセロール誘導体(1)において、代表的な具体例として、下記式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)、(1E)、(1F)、(1G)等で表されるグリセロール誘導体があげられる。




グリセロール誘導体(I)は、通常の有機合成法で知られている反応[日本化学会編,”有機合成I〜IV”,実験化学講座19〜22,丸善,1992年等]を組み合わせて製造することができる。例えば、グリセロール誘導体(1)は、以下の一般的な製造方法により得ることができる。

[式中、R、Xおよびnはそれぞれ前記と同義であり、Halはハロゲン原子を表し、Rは水素原子に変換可能な基を表し、RはRに変換可能な基を表し、R

(式中、Rは前記と同義である)と置換可能な基を表す]
ハロゲン原子は前記と同義である。
水素原子に変換可能な基としては、例えば置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の脂環式複素環基、置換もしくは非置換のシリル、置換もしくは非置換のアシル、置換もしくは非置換のアロイル等があげられ、中でもベンジル等が好ましい。また、水素原子に変換可能な基は、1つのグリセロール単位中の2つのRが一緒になって形成される例えば置換もしくは非置換のアルキレン等であってもよく、中でもプロパン−2,2−ジイル、フェニルメチレン等が好ましい。
低級アルキルとしては、例えば炭素数1〜8の、直鎖状または分岐状のアルキル、より具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等があげられる。
脂環式複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む3〜8員の単環性脂環式複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂環式複素環基等があげられ、より具体的にはテトラヒドロピリジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペリジニル、パーヒドロアゼピニル、パーヒドロアゾシニル、モルホリノ、モルホリニル、チオモルホリノ、チオモルホリニル、ピペラジニル、ホモピペリジノ、ホモピペラジニル、ジオキソラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、インドリニル、イソインドリニル、2−ピロリニル、2−ピロリドニル、3−ピロリドニル、2−ピペリドニル、3−ピペリドニル、4−ピペリドニル、パーヒドロ−2−アゼピノニル、パーヒドロ−3−アゼピノニル、パーヒドロ−4−アゼピノニル、2−チアゾリドニル、4−チアゾリドニル、2−オキサゾリドニル、4−オキサゾリドニル、フタルイミド、グルタルイミド、ヒダントイニル、チアゾリジンジオニル、オキサゾリジンジオニル等があげられる。
アシルおよびアロイルは、それぞれ前記と同義である。
アルキレンとしては、例えば、メチレン、エチレン、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイル、ヘキサン−1,6−ジイル等があげられる。
置換低級アルキル、置換脂環式複素環基、置換シリル、置換アシルおよび置換アロイルの置換基としては、例えば同一または異なって、置換数1〜3の、より具体的には低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アラルキルオキシ等があげられる。更に置換低級アルキルの置換基は置換数1〜2のアリールであってもよく、アリールとしては例えばフェニル、ナフチル等があげられる。置換アリールの置換基は置換数1〜3の、より具体的には低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アラルキルオキシ等があげられる。ここで、低級アルキル、低級アルコキシおよび低級アルコキシ低級アルコキシの低級アルキル部分は、前記低級アルキルと同義であり、アラルキルオキシのアリール部分は、前記アリールと同義であり、アラルキルオキシのアルキレン部分は、例えば、メチレン、エチレン、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイル、ヘキサン−1,6−ジイル等があげられる。
置換アルキレンの置換基としては、例えば同一または異なって、置換数1〜3の、より具体的には低級アルキル、アリール、低級アルコキシ等があげられる。ここで、低級アルキル、低級アルコキシの低級アルキル部分は、前記低級アルキルと同義であり、アリールは、前記アリールと同義である。
Rに変換可能な基としては、Rに変換可能な基であれば特に限定されず、水素原子に変換可能な基の定義で記載したものと同様なものがあげられる。

(式中、Rは前記と同義である)と置換可能な基としては、

(式中、Rは前記と同義である)と置換可能な基であれば特に限定されないが、具体的には、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ、アルカノイルオキシ等があげられ、ハロゲン原子は前記と同義であり、アルコキシおよびアルカノイルオキシのアルキル部分は、前記アルキルと同義である。
化合物(c)は、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピフルオロヒドリン等のエピハロヒドリン(化合物(a))とR−OH(式中、Rは前記と同義である)を用い、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.),1992年,57巻,p.435、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.),1995年,38巻,10号,p.1673等に記載の方法に順じて得ることができる。また、化合物(c)は、グリセロール(化合物(b))1モルに対し、1〜10モルのR−Hal(式中、RおよびHalはそれぞれ前記と同義である)を用いて適当な塩基存在下で反応させた後に精製して得るか、または触媒量のBF・O(C存在下で2−メチル−1−ブテンと反応させて[テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.),1988年,29巻,p.2951]、選択的に第一アルコールの水酸基を保護するか、またはテトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.),2000年,41巻,p.6441、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.),1989年,54巻,p.1346、カナディアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Can.J.Chem.),1984年,62巻,p.241等に記載の方法に順じて得ることができる。さらに、化合物(c)は化合物(b)の第一アルコールの水酸基を、例えばグリーン(T.W.Greene),プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第三版(Protective Groups in Organic Synthesis,third edition),ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.),1999年等に記載の保護基の導入方法等に準じて保護することでも得られる。
化合物(a)と反応させるR−OHとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブチルアルコール、ベンジルアルコール等、種々のアルコール類が利用可能である。また、化合物(b)と反応させるR−HalのRとしては、ベンジル、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチル、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル、トリエチルシリル等の除去可能な残基が利用可能である。化合物(a)および(b)としては市販品を利用することができ、化合物(c)は前記の方法にしたがって合成して得られるか市販品として得ることもできる。
次いで、前記工程で得られた化合物(c)を、さらに化合物(a)と反応させるか、化合物(b)を

(式中、HalおよびRはそれぞれ前記と同義である)と反応させることによって、化合物(d)が得られる。
この反応工程を繰り返すことによって、Xが直列的分岐構造を有し、Xに化合物(c)残基がn個結合した化合物(e)を得ることができる。
また、前記の反応工程と、次の反応工程を組み合わせるか、および/または繰り返すことによって、Xが直列的分岐構造を有し、Xに化合物(c)残基がn個結合した化合物(e)を得ることもできる。

[式中、X、Rおよびnはそれぞれ前記と同義であり、R

(式中、Rは前記と同義である)、または

(式中、X、Rおよびnはそれぞれ前記と同義である)を表す]
化合物(j)は、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.1995年,38巻,p.1673等に記載の方法、または通常の有機合成法で知られている反応(日本化学会編,”有機合成I〜IV”,第4版実験化学講座,丸善,1992年,19〜22巻等)を組み合わせて得ることができる。
さらに、次の反応工程を組み合わせるか、および/または繰り返すことによっても、Xが直列的分岐構造を有し、Xに化合物(c)残基がn個結合した化合物(e)を得ることができる。

[式中、X、Rおよびnはそれぞれ前記と同義であり、R

(式中、Rは前記と同義である)、または

(式中、X、Rおよびnはそれぞれ前記と同義である)を表し、Rは、水素原子と置換可能な基を表す]
化合物(k)は、通常の有機合成法で知られている反応(日本化学会編,”有機合成I〜IV”,第4版実験化学講座,丸善,1992年,19〜22巻等]により得ることができる。
化合物(l)は、HOC−CH−NR−CH−COH骨格(Rは、水素原子と置換可能な基を表す)を有するリンカー(架橋剤)を用いて2つのアミンを2量化して得られ[トス(Toth,G,K)、ボトンド(Botond,P),シンセシス(Synthesis),1992年,p.361]、次いで化合物(m)は、化合物(l)を例えばグリーン(T.W.Greene),プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第三版(Protective Groups in Organic Synthesis,third edition),ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.),1999年等に記載のアミンの脱保護反応より得ることができる。
化合物(h)は、化合物(e)に存在するX末端の水酸基に通常の有機合成反応を利用して反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基Rを結合させるか、該水酸基を、反応性を有する残基に直接変換することで得ることができる。
一方、化合物(f)に、前記と同様にして合成した化合物(c)を反応させ、化合物(g)を得ることができる。化合物(f)と化合物(c)を反応させ、化合物(g)を得る方法としては、化合物(f)のRの部位と化合物(c)の置換反応、通常の有機合成法で知られている反応(日本化学会編,”有機合成I〜IV”,第4版実験化学講座,丸善,1992年,19〜22巻等]を組み合わせた方法等があげられる。化合物(g)のRを通常の有機合成反応を利用して反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基Rに変換することで、化合物(h)が得られる。化合物(f)としては市販の既知構造の化合物を利用することもできるし、通常の有機合成法で知られている反応[日本化学会編,”有機合成I〜IV”,第4版実験化学講座,丸善,1992年,19〜22巻等]を組み合わせて化合物(f)を調製することもできる。
化合物(h)を、通常の有機合成反応に用いられる保護基の除去反応[例えばグリーン(T.W.Greene),プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第三版(Protective Groups in Organic Synthesis,third edition),ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.),1999年等]に付して、Rを除去して、水素原子に置換することでグリセロール誘導体(1)が得られる。
また、これとは逆に、式(1)において、Xとは反対方向に−OH末端からグリセロールユニットを伸ばしていくことにより、グリセロール誘導体(1)を製造することも可能である。
各反応工程は適当な溶媒、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ピリジン、水、およびこれらの混合溶媒の中から任意に選択される溶媒中、−20〜150℃の間の温度で1時間〜数日間行われる。
各工程において得られる各化合物はそのままの純度で、または再結晶、溶媒抽出、シリカゲルクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー等の一般的な精製方法で任意の純度に精製して次の工程に使用され得る。
(ii)両親媒性物質としては、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴイド類、ステロール類、カチオン性脂質、アニオン性脂質等の脂質類、多価アルコールエステル型非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤等があげられる。
リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン(例えば大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)等)、ホスファチジルエタノールアミン(例えばジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)等)、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン等のグルセロリン脂質;スフィンゴミエリン、セラミドホスホエタノールアミン、セラミドホスホグリセロール、セラミドホスホグリセロリン酸等のスフィンゴリン脂質;グリセロホスホノ脂質;スフィンゴホスホノ脂質;天然レシチン(例えば卵黄レシチン、大豆レシチン等);水素添加リン脂質(例えば水素添加ホスファチジルコリン(HSPC)等)等の天然または合成のリン脂質等があげられる。
グリセロ糖脂質としては、例えばスルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等があげられる。
スフィンゴ糖脂質としては、例えばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等があげられる。
スフィンゴイド類としては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン、それらの誘導体等があげられる。該誘導体としては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン等の−NHを−NHCO(CHCH(式中、xは0〜18の整数を表し、中でも6、12または18が好ましい)に変換したもの等があげられる。
ステロール類としては、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴカステロール、フコステロール等があげられる。
カチオン性脂質としては、例えば1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパナミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、N−[2,3−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)、3β−[N−(N’N’−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)等があげられる。
アニオン性脂質としては、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール等があげられる。
多価アルコールエステル型非イオン界面活性剤としては、例えば脂肪酸モノグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリオキシソルビタンエステル、ショ糖脂肪酸エステル等があげられる。より具体的には、例えばオクチルグルコシド、ジギトニン、デカノイル−N−メチルグルカミド等があげられる。
陰イオン界面活性剤としては、例えばアシルサルコシン、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7〜22の脂肪酸ナトリウム等があげられる。より具体的には、例えばドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等があげられる。
陽イオン界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩、アシルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アミン誘導体等があげられる。より具体的には、例えば第一級アミン塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、N−アルキルポリアルキルポリアミン塩、脂肪酸ポリエチレンポリアミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルポリオキシエチレンアミン、N−アルキルアミノプロピルアミン、脂肪酸トリエタノールアミンエステル等があげられる。
両性界面活性剤としては、例えば3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸、N−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸等があげられる。
疎水性物質としては、例えば油性物質、疎水性ポリマー等があげられる。
油性物質としては、例えば流動パラフィン、植物油(大豆油等)、炭素数12〜30の脂肪酸エステル、ヒマシ油、ヒマシ油誘導体(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)、ラノリン、ラノリン誘導体、シリコン等があげられる。
疎水性ポリマーとしては、例えばポリアスパラギン酸、ポリ(β−ベンジルアスパルテート)、ポリ(γ−ベンジルグルタメート)、ポリ(β−アルキルアスパルテート)、ポリ(ラクチド)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(δ−バレロラクトン)、ポリ(γ−ブチロラクトン)、ポリ(β−ベンジルアスパルテート−コ−アスパラギン酸)、ポリ(γ−ベンジルグルタメート−コ−グルタミン酸)、ポリ(α−アミノ酸)等があげられる。
(iii)本発明の化合物は、前記両親媒性物質または疎水性物質(ii)がグリセロール誘導体(1)で、直接またはスペーサーを介して修飾されたもの(以下、化合物(1)と称する)であればいずれでもよいが、具体的な代表例としては、例えば前記式(2)〜(10)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(2)〜(19)と称する)等があげられる。
式(2)〜(10)の各基の定義において、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基としては、例えば直鎖状もしくは分岐状の炭素数12〜30の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のアシル基部分があげられ、具体的にはドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイル、エイコサノイル、ヘニコサノイル、ドコサノイル、トリコサノイル、テトラコサノイル、ヘキサコサノイル、トリアコンタノイル、4−ドデセノイル、9−ヘキサデセノイル、9−オクタデセノイル、11−エイコセノイル、13−ドコセノイル、15−テトラコセノイル、9,12−オクタデカジエノイル、11,14−エイコサジエノイル、9,12,15−オクタデカトリエノイル、11,14,17−エイコサトリエノイル、4,8,12,16−エイコサテトラエノイル、4,8,12,15,19−ドコサペンタエノイル、2−デカニルヘキサデカノイル、2−テトラデシルヘキサデカノイル、2−テトラデシルヘキサデセノイル、2−テトラデセニルヘキサデカノイル等があげられる。
アルカリ金属原子としては、例えばナトリウム、カリウム等があげられる。
炭素数1〜10のアルキレンとしては、例えば、メチレン、エチレン、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイル、ヘキサン−1,6−ジイル、ヘプタン−1,7−ジイル、オクタン−1,8−ジイル、ノナン−1,8−ジイル、デカン−1,9−ジイル等があげられる。
また、本発明の化合物としては、前記の他に例えばトリトン系界面活性剤中のPEG部位を、グリセロール誘導体(1)で修飾して置き換えたものや、トゥイーン系界面活性剤のPEG部位を、グリセロール誘導体(1)で修飾して置き換えたもの等があげられる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ステアリルアルコール混合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ジエタノールアミン、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル・ジステアリン酸ポリエチレングリコール混合物、ポリオキシチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル・アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム混合物、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル等のそれぞれのPEG部位を、グリセロール誘導体(1)で修飾して置き換えたもの等もあげられる。
化合物の塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、モルホリン付加塩、ピペリジン付加塩等があげられる。
(iv)グリセロール誘導体(1)による両親媒性物質または疎水性物質の修飾は、例えば、グリセロール誘導体(1)中の反応性を有する基と、両親媒性物質または疎水性物質の構造中のカルボキシ、アミノ、水酸基、メルカプト、ホルミル、硫酸残基(スルホニル、スルフェニル、スルフィニル等)、リン酸残基(ホスホノ、ホスホノイル、ホスホナト、ヒドロキシオキシドホスホリル、ヒドロヒドロキシホスホリル、ホスフィノイル、ヒドロキシホスホリル、ホスホリル等)、ホスホン酸残基(ジヒドロキシホスファニル、ヒドロキシオキシドホスファニル、ヒドロキシホスファニル、ヒドロキシホスファンジイル、ホスフィナト等)等またはそれらの部分構造とを直接またはスペーサーを介して結合させることにより行うことができる。
スペーサーとしては、グリセロール誘導体(1)および両親媒性物質もしくは疎水性物質のそれぞれの構造中の結合部位を結合することができればいずれでもよいが、例えば置換もしくは非置換のアルキレン(該アルキレンおよび該置換アルキレンにおける置換基はそれぞれ前記Y、YおよびYの定義において記載されているアルキレンおよび置換アルキレンにおける置換基と同義である)、カルボニル、置換もしくは非置換のイミノ(該置換イミノにおける置換基は前記と同義である)、OおよびSからなる群より選ばれる一つまたは同一もしくは異なった複数の任意の組み合わせからなる直鎖の連結基等があげられる。
これらのスペーサーは、例えば両親媒性物質または疎水性物質の構造中のカルボキシ、アミノ、水酸基、メルカプト、ホルミル、硫酸残基(スルホニル、スルフェニル、スルフィニル等)、リン酸残基(ホスホノ、ホスホノイル、ホスホナト、ヒドロキシオキシドホスホリル、ヒドロヒドロキシホスホリル、ホスフィノイル、ヒドロキシホスホリル、ホスホリル等)、ホスホン酸残基(ジヒドロキシホスファニル、ヒドロキシオキシドホスファニル、ヒドロキシホスファニル、ヒドロキシホスファンジイル、ホスフィナト等)等またはそれらの部分構造とエーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、エステル結合等を介して結合する。これらの結合は、通常のペプチド合成法[泉屋信夫、加藤哲夫、青柳東彦、脇道典,”ペプチド合成の基礎と実験”,丸善.1985年等]等を用いて行うことができる。
この場合、両親媒性物質または疎水性物質に予めスペーサーを導入することが望ましいが、修飾剤であるグリセロール誘導体(1)を予めスペーサーに結合させ、該グリセロール誘導体(1)と結合したスペーサーを前記の方法と同様にして両親媒性物質または疎水性物質に結合することもできる。
各工程において、各化合物はそのままの純度で、または再結晶、溶媒抽出、シリカゲルクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー等の一般的な精製方法で任意の純度に精製して次の工程に使用され得る。
また、これらグリセロール誘導体(1)は両親媒性物質または疎水性物質を修飾する化学修飾剤として使用されるが、グリセロール誘導体(1)の末端の水酸基の一部または全てが保護された−OR(式中、Rは前記と同義である)であるグリセロール誘導体の前駆体を化学修飾剤として、両親媒性物質または疎水性物質との反応に使用してもよい。この場合、該前駆体で両親媒性物質または疎水性物質を修飾した後、上述した化合物(h)の保護基の除去反応と同様にして、目的とする化合物(1)を得ることができる。
なお、本発明の化合物において、両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質は、一つまたは同一もしくは異なった複数の組み合わせからなるグリセロール誘導体(1)で修飾されており、好ましくは一つまたは同一の複数の組み合わせからなるグリセロール誘導体(1)で修飾されている。
本発明の化合物は、薬剤キャリアー(例えば、薬剤等を保持または内包することができる微粒子)を製造するための表面修飾剤として使用できる。また、本発明の化合物は薬剤キャリアーの構成成分としても使用することができ、薬剤キャリアーの製造性を改善する効果も有する。
(v)本発明の微粒子は、前記(ii)記載の両親媒性物質または疎水性物質がグリセロール誘導体(I)で、直接またはスペーサーを介して修飾された化合物(以下、化合物(I)と称する)またはその塩を含有し、含有される化合物(I)は異なった複数の組み合わせでもよい。該化合物(I)は、上述の化合物(1)の調製方法と同様の方法により得られる。
該微粒子は、さらに脂質類および/または界面活性剤を含有してもよく、その態様はいずれでもよいが、1nm〜1000μmの平均粒子径を有するものが好ましく、例えばリポソーム[MLV(Multilamellar Vesicles)等の多重層リポソーム、LUV(Large Unilamellar Vesicles)、SUV(Small Unilamellar Vesicles)等の一枚膜リポソーム等]、脂肪乳剤(マイクロカプセル、マイクロスフェアー等)、エマルション(リピッドエマルション、マイクロエマルション等)、ミセル(高分子ミセル、脂質ミセル等)、微粒子結晶(板状、柱状、針状、繊維状、球状、サイコロ状、プリズム状等の結晶)等があげら、好ましくはリポソームがあげられる。
微粒子に含有される脂質類としては、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴイド類、ステロール類、カチオン性脂質、アニオン性脂質、それらとポリエチレングリコールがエーテル結合(ポリエチレングリコール化)したもの等があげられ、中でも相転移温度が生体内温度(35〜37℃)より高いものが好ましく、中でもリン脂質および/またはポリエチレングリコール化リン脂質がより好ましい。
微粒子に含有される界面活性剤としては、例えば多価アルコールエステル型非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、それらとポリエチレングリコールがエーテル結合(ポリエチレングリコール化)したもの等があげられる。
リン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴイド類、ステロール類、カチオン性脂質、アニオン性脂質、多価アルコールエステル型非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤としては、それぞれ前記(ii)で例示したもの等があげられ、これらは単独でまたは組み合わせて用いられる。組み合わせて用いる場合、例えばリポソームおよび脂肪乳剤の場合、例えば水素添加大豆ホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールからなる群より選ばれる少なくとも二成分以上からなる脂質類、DSPC、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールからなる群より選ばれる少なくとも二成分以上からなる脂質類、卵黄ホスファチジルコリンおよびDOTAPからなる脂質類、卵黄ホスファチジルコリン、DOTAPおよびポリエチレングリコール化リン脂質からなる脂質類、卵黄ホスファチジルコリン、DOTAP、コレステロールおよびポリエチレングリコール化リン脂質からなる脂質類等が用いられる。エマルションおよびミセルの場合、好ましくはポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ナトリウム、ポリエチレン硬化ヒマシ油等が単独でまたは組み合わせて用いられる。
また、本発明の微粒子は、必要に応じて、例えば等張化剤、膜安定化剤、抗酸化剤、荷電物質等の添加剤を含有してもよい。等張化剤として、例えばグリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等があげられ、膜安定化剤としては、例えばコレステロール等のステロール類等があげられ、抗酸化剤としては、例えばトコフェロール、クエン酸、アスコルビン酸、システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等があげられ、荷電物質としては、例えばステアリルアミン、ジセチルホスフェート、ガングリオシド、DOTMA[プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシス・オブ・ユー・エス・エー(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A),1987年,84巻,p.7413−7417]、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)[プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシス・オブ・ユー・エス・エー(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A),1989年,86巻,p.6982−6986]、DMRIE、DORIE[メソッズ(Methods),1993年,5巻,p.67−75]、DC−Chol[バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochem.Biophys.Res.Commun.),1991年,179巻,p.280−285]等のカチオン脂質等があげられる。
本発明の微粒子は、一般的な既知の方法によって調製することができ、例えば上述の脂質類および/または界面活性剤と本発明の化合物とを、さらに必要に応じて前記添加剤とを、例えば、(1)例えばエタノール、エーテル等の溶媒に溶解させ、必要に応じて溶媒を留去した後、懸濁させる溶液を加えて分散、乳化または懸濁させるか、または(2)例えば懸濁させる溶液に直接、分散、乳化または懸濁させることにより得ることができる。また、一般的な既知の方法によって被修飾微粒子を調製し、該被修飾微粒子の調製液(分散、乳化または懸濁液)に、本発明の化合物の例えば粉末、水溶液またはエタノール溶液を添加し、一定時間放置、好ましくは膜の相転移温度以上に加熱し、次いで放冷することにより、本発明の微粒子を調製することもできる。
懸濁させる溶液としては、例えば蒸留水、酸性水溶液(塩酸、硫酸、酢酸等の水溶液)、アルカリ水溶液(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の水溶液)、緩衝液(リン酸緩衝液等)、生理食塩水、アミノ酸輸液等があげられる。
本発明の微粒子は、化合物(1)の

の少なくとも1つが微粒子表面から外方向に伸びてなる微粒子(以下、グリセロール誘導体修飾微粒子と称し、微粒子が例えばリポソーム等の場合は、同様にグリセロール誘導体修飾リポソーム等と称する)であることが好ましい。グリセロール誘導体修飾微粒子は、本発明の微粒子の調製において、本発明の化合物を表面修飾剤として使用することにより調製することができる。本発明の化合物の表面修飾剤としての使用とは、本発明の微粒子の調製する際に、本発明の微粒子の最外層部分に本発明の化合物が含有するように、本発明の化合物を用いることである。
本発明の微粒子は、具体的には、例えばリポソームは公知の調製方法に従って調製することができる。該調製方法としては、例えばバンガム(Bangham)らのリポソーム調製法[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.),1965年,13巻,p.238]、エタノール注入法[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.),1975年,66巻,p.621]、フレンチプレス法[フェブス・レターズ(FEBS Lett.),1979年,99巻,p.210]、凍結融解法[アーカイブス・バイオケミカル・アンド・バイオフィジックス(Arch.Biochem.Biophys.),1981年,212巻,p.186]、逆相蒸発法[プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシス・オブ・ユー・エス・エー(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A),1978年,75巻,p.4194]、pH勾配法(特許第2572554号明細書、特許第2659136号明細書等)等があげられる。
また、多価アルコールエステル型非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、多糖類またはその誘導体、ポリオキシエチレン誘導体等によるリポソームの表面改質も任意に行うことができ、これらの表面改質されたリポソームも本発明の微粒子に包含される[ラジック、マーティン(D.D.Lasic and F.Martin),ステルス・リポソームズ(Stealth Liposomes),アメリカ,シーアールシー・プレス・インク(CRC Press Inc.),1995年,p.93−102]。
リポソームの平均粒子径は、30〜3000nmであるのが好ましく、中でも50〜500nmであるのがより好ましく、さらに60〜200nmであるのが最も好ましい。リポソームの平均粒子径を調節する方法としては、エクストルージョン法やマントンゴウリン、マイクロフルイダイザー等を使用して大きな多重層リポソーム(MLV)を機械的に粉砕する方法[ミュラー、ベニータ、ボーム(R.H.Muller,S.Benita,B.Bohm),エマルション・アンド・ナノサスペンジョンズ・フォー・ザ・フォーミュレーション・オブ・ポアリー・ソリューブル・ドラッグズ(Emulsion and Nanosuspensions for the Formulation of Poorly Soluble Drugs),ドイツ,サイエンティフィック・パブリッシャーズ・スチュットガルト(Scientific Publishers Stuttgart),1998年,p.267−294参照]等があげられる。
本発明の微粒子がより高い血中滞留性等を有するためには、通常、化合物(I)またはその塩の該微粒子中の含有率が、約0.01〜50mol%であるのが好ましく、中でも0.1〜20mol%であるのがより好ましい。
さらに、前記で得られる微粒子に抗体等の蛋白質、糖類、糖脂質、アミノ酸、核酸、種々の低分子化合物、高分子化合物等の物質による修飾を行うこと、またこれらの物質を前記で得られる微粒子に含有させることもでき、これらで得られる微粒子も本発明の微粒子に包含される。例えば、ターゲッティングに応用するため、前記で得られる微粒子に対して、さらに抗体、蛋白質、ペプチド、脂肪酸類等による脂質膜表面修飾を行うこともでき[ラジック、マーティン(D.D.Lasic and F.Martin),ステルス・リポソームズ(Stealth Liposomes),アメリカ,シーアールシー・プレス・インク(CRC Press Inc.),1995年,p.93−102]、これら脂質膜表面修飾されたものも本発明の微粒子に包含される。
本発明の微粒子は、例えば薬剤等を保持または内包することができ、例えば血液成分等の生体成分(例えば血液、消化管等)中での薬剤の安定化、副作用の低減、腫瘍等の標的臓器への薬剤集積性の増大、経口や経粘膜での薬剤の吸収の改善等を目的とする製剤として使用できる。
本発明の微粒子を製剤として使用する場合、例えば保持または内包される薬剤はいずれでもよく、特に制限はないが、例えば抗腫瘍剤、造影剤、抗生物質、抗真菌剤、薬理学的活性を有する物質、生体成分等があげられる。
抗腫瘍剤としては、例えばアクチノマイシンD、マイトマイシンC、クロモマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ビノレルビン、ダウノルビシン、アクラルビシン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、メソトレキセート、5−Fu、テガフール、シタラビン、エノシタビン、アンシタビン、タキソール、タキソテーレ、シスプラチン、シトシンアラビノシド、イリノテカン、カンプトテシン、それらの誘導体等があげられる。
造影剤としては、例えばイオヘキサール、イオジキサノール、インドシアニングリーン、イオタラム酸ナトリウム等があげられる。
抗生物質としては、例えばミノサイクリン、テトラサイクリン、ピペラシリンナトリウム、トシル酸スルタミシリン、アモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、アスポシシリン、セフジニル、フロモキセフナトリウム、セフォチアム、セフカペンビボキシル、セファクロル、セフトレンピボシル、セファゾリンナトリウム、セファゾラン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、レボフロキサシン、トシル酸トスフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、アルベカシン、イセパマイシン、ジベカシン、アミカシン、ゲンタミシン、バンコマイシン、ホスホマイシン、それらの誘導体等があげられる。
抗真菌剤としては、例えばフルコナゾール、イトラコナゾール、テルビナフィン、アムホテリシンB、ミコナゾール、それらの誘導体等があげられる。
薬理学的活性を有する物質としては、例えばホルモン、酵素、蛋白、ペプチド、アミノ酸、核酸、遺伝子、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、siRNA(small interfering RNA)、ビタミン類、糖類、脂質、合成医薬品等があげられる。
生体成分としては、例えば血液成分等があげられる。
本発明の微粒子を製剤として使用する場合、上述の方法により調製した微粒子の懸濁液をそのまま注射剤の形態として用いるのが一般的であるが、例えば経口剤、点鼻剤、点眼剤、経皮剤、坐剤、吸入剤等の形態として加工し、使用することもできる。これらは、製剤学的に許容される希釈剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、水、生理食塩水、植物油可溶化剤、等張化剤、保存剤、抗酸化剤等を用いて常法により調製することができる。
例えば本発明の微粒子の懸濁液に乳糖等の賦形剤を加えて凍結乾燥させたり、グリセリン等の凍結保存剤を加えて凍結保存させたりして、これらを適当な賦形剤と共に常法に従って造粒、乾燥等に付し、例えばカプセル剤、錠剤、顆粒剤等の経口剤に加工すればよい。
次に、試験例により本発明の効果について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
試験例1:リポソームの平均粒子径
実施例5〜8および比較例1〜3でそれぞれ調製したリポソームの平均粒子径を電気泳動光散乱光度計(ELS)[A model ELS−800、Otsuka Electronics Ltd.(ELS−800、大塚電子製)]で測定した。
その結果を第1表に示す。なお2ロットあるものの平均粒子径は、1ロット目、2ロット目の順にその値を示す。

第1表から、実施例5〜8で調製された化合物(2)または(4)を含有するグリセロール誘導体修飾リポソームの平均粒子径は120nm前後であり、これらのリポソームがリポソームとして有用な大きさを有していることが判明した。
試験例2:薬剤の内包率
実施例5〜8および比較例1〜3でそれぞれ調製したリポソームの懸濁液(以下、リポソーム懸濁液Aという)を超遠心分離処理した(1時間、110,000×g、25℃)。リポソーム懸濁液Aおよび超遠心分離処理により得られた上清(以下、上清Aという)を、それぞれ2−プロパノールと水の混合溶媒(8/2(容量/容量))に溶解した。それぞれの溶液の497nmにおける吸光度を、分光光度計(U−3210、日立製作所製)を用いて測定することにより、リポソーム懸濁液Aおよび上清A中のドキソルビシンをそれぞれ定量した。また、リポソーム懸濁液Aとリン脂質濃度が同じで、かつドキソルビシンを含まないリポソーム懸濁液(以下、リポソーム懸濁液Bという)を調製し、リポソーム中のホスファチジルコリン(PC)による吸光度を前記と同様に測定した。それぞれのリポソーム懸濁液Aにおけるリポソームへのドキソルビシンの内包率は、下記式(1)により算出した。

A:リポソーム懸濁液Aの吸光度
B:リポソーム懸濁液Bの吸光度
C:上清Aの吸光度
ただし、比較例3では超遠心分離処理した後の上清にリポソームが残存していたため、下記式(2)で内包率を算出した。なお、リン脂質濃度はリン脂質C−テストワコー(和光純薬)を使用して測定した。

A:リポソーム懸濁液A中の吸光度
B:リポソーム懸濁液B中の吸光度
C:上清A中の吸光度
D:リポソーム懸濁液A中のリン脂質濃度
E:上清A中のリン脂質濃度
その結果を第2表に示す。なお2ロットあるものの内包率は、1ロット目、2ロット目の順にその値を示す。

第2表から、比較例3で調製されたPEG修飾リポソームにおけるドキソルビシンの内包率は低く、PEG−DSPEの含有率を上げると、リポソームの安定性が著しく低下し、ドキソルビシンが漏出することが判明した。一方、実施例5〜8で調製されたグリセロール誘導体修飾リポソームにおけるドキソルビシンの内包率は良好であり、これらリポソームは安定性良好なリポソームであることが判明した。つまり、本発明の化合物を含有するリポソームは、化合物(1)の含有率によらず、安定性を維持できると考えられる。
試験例3
実施例7および8ならびに比較例1〜3で調製したリポソーム懸濁液(投与薬液)をジエチルエーテル吸入麻酔下のCrj:CD(SD)IGSラット(体重200〜300g、1群3匹、なお2ロットあるものは、1ロット目を2匹に、2ロット目を1匹にそれぞれ投与した)に左尾静脈より投与した(投与量;ドキソルビシン0.35mg/kg)。ヘパリン処理した毛細管で経時的に右尾静脈より血液を採取し、遠心分離処理(5分間、8,000×g、4℃)により血漿を得て、以下の方法により血漿中のドキソルビシンを定量した。
前記で得られた血漿を0.075mol/L塩化水素含有2−プロパノール/水(9/1)混合溶液で10倍に希釈し、撹拌した。得られた希釈液を氷冷した後、遠心分離処理(10分間、12,000×g、4℃)し、分光蛍光光度計を用いて、得られた上清の励起波長500nmおよび蛍光波長550nmでの蛍光強度を測定した。また、前記血漿中のドキソルビシンの定量の場合と同様の方法により、リポソーム懸濁液を投与しないラットから採取した血漿で、投与薬液を200倍に希釈した後、蛍光強度を測定した。一方、別途ドキソルビシンの標準溶液を調製し、蛍光強度を測定することにより検量線を得た。検量線に基づいて血漿中および投与薬液中のドキソルビシン濃度をそれぞれ求め、体重250gのラットの血漿量を7.8mL[ファーマシューティカル・リサーチ(Pharmceutical Res.),1993年,10巻,p.1093−1095]として、投与したドキソルビシン量のうち血漿中に残存しているドキソルビシン量(%)を求めた。また、該血漿中ドキソルビシン量(%)−時間曲線から、0〜24時間における血漿中ドキソルビシン量(%)−時間曲線下面積AUC(AUC0−24hr)を台形法により求めた。比較例1で調製した未修飾リポソームを投与した場合のAUC0−24hr値を1として、その他の修飾リポソームを投与した場合のAUC0−24hr値を比較した。その結果を第3表に示す。

第3表から、実施例7および8で調製したグリセロール誘導体修飾リポソームを投与した場合は、比較例1で調製した未修飾リポソームを投与した場合と比べて、ドキソルビシンのAUC0−24hr値が非常に高いことが判明した。さらに実施例7および8で調製したグリセロール誘導体修飾リポソームを投与した場合は、比較例2および3で調製したPEG修飾リポソームを投与した場合と比べて、ドキソルビシンのAUC0−24hr値が高いことが判明した。このことから、ドキソルビシンの血漿中濃度推移を高く維持するうえで、PEG修飾リポソームよりグリセロール誘導体修飾リポソームの方が効果的であると考えられる。つまり、本発明の化合物を含有するリポソームを薬剤キャリアーとして使用することにより、薬剤の投与量を増加させることなくより強い薬効が得られることが予想され、例えば本発明の化合物を含有するリポソームを抗腫瘍剤の薬剤キャリアーとして使用した場合、腫瘍への薬剤の移行量が増加し、効果的な治療、副作用の低減等が可能になると考えられる。
また、比較例2および比較例3でそれぞれ調製したPEG−DSPEの含有率の異なるPEG修飾リポソームをそれぞれ投与した場合のドキソルビシンのAUC0−24hr値を比較すると、PEG−DSPEの含有率を変えてもドキソルビシンのAUC0−24hr値における変化はほとんどみられなかった。一方、実施例7および実施例8でそれぞれ調製した化合物(4)の含有率の異なるグリセロール誘導体修飾リポソームをそれぞれ投与した場合のドキソルビシンのAUC0−24hr値を比較すると、化合物(4)のグリセロール誘導体の含有率を変えるとドキソルビシンのAUC0−24hr値における増加がみられた。このことからも、PEG修飾リポソームと異なり、グリセロール誘導体修飾リポソームであれば、例えば血漿中濃度推移等、薬剤キャリアーとして求められる能力をさらに向上、改良させることが可能であると考えられる。
以下に、実施例および比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
化合物(2)の調製
反応スキームを以下に示す。反応スキーム中で、Bnはベンジル基、NHSはN−ヒドロキシスクシンイミド、DSPEはジステアロイルホスファチジルエタノールアミンをそれぞれ表す。

化合物2[2−アミノ−1,3−ビス(1,3−ジ−O−ベンジル−2−グリセロキシ)プロパン]を根本らの方法[ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.),1995年,38巻,p.1673]に従って調製した。化合物1(3.5g,15.0mmol)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液(50mL)に、室温でジイソプロピルエチルアミン(10.5mL,60.0mmol)、化合物2(19.8g,33.0mmol)のDMF溶液(20mL)およびベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフィン(PyBOP;15.6g,30.0mmol)を順次加えた後、同温度で15時間攪拌した。反応液を5%硫酸水素カリウム水溶液に注いだ後、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2)で精製し、淡黄色油状の化合物3(18.7g,収率89%)を得た。
H−NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):1.36(9H,s),3.40−3.81(32H,m),4.16(2H,m),4.48(16H,s),7.19−7.31(40H,m).
化合物3(2.0g,1.43mmol)のジクロロメタン溶液(45mL)に、室温でトリフルオロ酢酸(5mL)を注入した後、同温度で20時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、ジクロロメタンを用いて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、溶媒を減圧下で留去し、淡黄色油状の化合物4(1.19g,収率64%)を得た。
H−NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):1.75(1H,s),2.87(4H,s),3.47−3.81(28H,m),4.16(2H,m),4.48(16H,s),7.00(2H,d),7.19−7.31(40H,m).
化合物4(1.5g,1.16mmol)のピリジン溶液(2.0mL)に、室温で無水コハク酸(232mg,2.31mmol)をゆっくりと加えた後、100℃で1.5時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、2mol/L塩酸を加え、ジクロロメタンを用いて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:3)で精製し、淡黄色油状の化合物5(1.62g,収率100%)を得た。
H−NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):2.39(2H,m),2.56(2H,m),3.45−3.76(32H,m),4.09−4.21(2H,m),4.46(16H,s),6.87(1H,d),7.19−7.31(40H,m),8.02(1H,d).
化合物5(3.0g,2.15mmol)のテトラヒドロフラン溶液(45mL)に、室温でN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS:495mg,4.30mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC;886mg,4.30mmol)およびトリエチルアミン(0.24mL,1.72mmol)を順次加えた後、2時間還流した。反応液に5%硫酸水素カリウム水溶液を加えた後、ジクロロメタンを用いて抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:10)で精製し、淡黄色油状の化合物6(2.35g,収率79%)を得た。
H−NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):2.49(2H,t),2.67(4H,s),2.78(2H,t),3.40−3.78(32H,m),4.11−4.22(2H,m),4.48(16H,d),6.96(1H,d),7.19−7.31(40H,m),8.37(1H,d).
ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE;497mg,0.664mmol)をジクロロメタン(50mL)とメタノール(50mL)の混合溶媒に溶解し、化合物6(993mg,0.665mmol)のクロロホルム溶液(50mL)を添加した。反応混合物に、TEA(184μL)を含むジクロロメタン(50mL)を添加し、遮光およびアルゴン雰囲気下、室温で18時間攪拌した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=0:100,1:50,1:40,1:30,1:20,1:10,1:7.5,1:5を順次流した)で精製し、化合物7(1.032g,0.4857mmol,収率73.1%)を得た。
H−NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):0.85−0.90(6H,t),1.00−1.35(64H,m),2.20−2.24(2H,t),2.45−2.52(2H,m),3.30−3.92(32H,m),4.11−4.22(2H,m),4.44(16H,d),7.19−7.31(40H,m).
化合物7(1.032g,0.4857mmol)のメタノール溶液(50mL)に水素雰囲気下、室温でPd(OH)/C(Pd:20重量%含有,516mg)を加えた後、同温度で6時間攪拌した。反応液をフィルターで濾過した後、溶媒を減圧下で留去し、化合物8(603mg,収率88.3%)を得た。
H−NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):0.84−0.88(6H,t),1.10−1.40(64H,m),2.26−2.33(2H,m),2.55−2.63(2H,m),3.30−3.95(32H,m),4.14−4.23(2H,m).
FAB−MS:m/z1404.8([M−H],FAB
【実施例2】
化合物(4)の調製
反応スキームを以下に示す。反応スキーム中で、Bnはベンジル基、NHSはN−ヒドロキシスクシンイミド、DSPEはジステアロイルホスファチジルエタノールアミンをそれぞれ表す。

化合物4(624mg,0.48mmol)のDMF溶液(13mL)に化合物1(51mg,0.219mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.15mL,0.876mmol)およびPyBOP(228mg,0.428mmol)を室温で加え、同温度で48時間攪拌した。反応混合物を5%硫酸水素カリウム水溶液中に注いだ後、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。その後有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:酢酸=100:0.7)で精製し、黄色油状の化合物9(322mg,0.115mmol,収率53%)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ(ppm):7.32−7.17(80H,m),4.49−4.38(32H,m),4.15−4.06(4H,m),3.77−3.27(68H,m),1.32(9H,s),(CONHは明確に確認されず).
13C−NMR(CDCl,75MHz)δ(ppm):170.2(C×4,CONH),167.7(C×2,CON),155.4(C,OCN),138.2(C×16),128.3(CH×16),128.3(CH×16),127.7(CH×16),127.6(CH×16),127.6(CH×16),80.5(C),78.7(CH×8),73.2(CH×16),70.2(CH×16),68.9(CH×8),52.1(CH×2),51.9(CH×4),49.6(CH×4),28.2(CH×3).
化合物9(322mg,0.115mmol)のジクロロメタン溶液(48.32mL)にトリフルオロ酢酸(0.48mL)を室温で滴下した。同温度で24時間攪拌した後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去することにより白色油状の化合物10(310mg,0.115mmol,収率100%)を得た。本品は精製することなく次の反応に付した。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ(ppm):7.33−7.18(80H,m),4.50−4.39(32H,m),4.20−4.02(4H,m),3.94−3.28(68H,m),(NHは明確に確認されず),(CONHは明確に確認されず).
化合物10(190mg,0.071mmol)のピリジン溶液(3mL)に無水コハク酸(28mg,0.28mmol)、およびN,N−ジメチルアミノピリジン(4mg,0.036mmol)を室温で加え、50℃で5時間攪拌した。反応液を2mol/L塩酸水溶液に加えジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:酢酸=100:0.7)で精製して、白色油状の化合物11(150mg,0.054mmol,収率76%)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ(ppm):7.35−7.17(80H,m),4.50−4.39(32H,m),4.22−4.05(4H,m),4.02−3.27(68H,m),2.62−2.53(4H,m),(OHおよびCONHのいずれも明確に確認されず).
化合物11(150mg,0.054mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2mL)にNHS(12mg,0.11mmol)を室温で加え、同温度で15分間攪拌した後、EDC(21mg,0.11mmol)およびトリエチルアミン(7mL,0.043mmol)を室温で加え、30分間還流した。反応液を5%KHSO水溶液に加え、ジクロロメタンで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=20:1)で精製し、油状の化合物12(62mg,0.21mmol,収率40%)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ(ppm):7.39−7.18(80H,m),4.54−4.38(32H,m),4.23−4.07(4H,m),4.89−3.33(68H,m),2.77−2.69(4H,m),2.57−2.49(4H,m),(CONHは明確に確認されず).
13C−NMR(CDCl,75MHz)δ(ppm):172.1(C,CO−),170.4(C,CON),169.5(C×4,CONH),168.7(C×2,CON),168.1(C×2,CON),138.8(C×16),129.0(CH×16),129.0(CH×16),128.2(CH×16),128.0(CH×16),127.6(CH×16),79.3(CH×8),73.8(CH×16),70.5(CH×16),68.9(CH×8),52.1(CH×2),51.9(CH×4),50.4(CH×4),30.3(CH),30.2(CH),25.9(CH×2).
TOF−MS:精密質量分析(M)=2886,測定値(M+1)=2887.44
DSPE(39mg,0.052mmol)をジクロロメタン(10mL)とメタノール(5mL)の混合溶媒に溶解し、化合物12(150mg,0.052mmol)のクロロホルム溶液(5mL)およびTEA(4μL)を添加した。反応混合物を、遮光およびアルゴン雰囲気下、室温で18時間攪拌した。反応液に、さらにDSPE(20mg)を添加し、33℃で23時間攪拌した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=0:100,1:50,1:40,1:30,1:20,1:10,1:7.5,1:5を順次流した)で精製し、化合物13(42.4mg,0.0121mmol,収率23.3%)を得た。
H−NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):0.82−0.93(6H,t),1.10−1.35(64H,m),2.10−2.25(2H,m),3.50−3.65(68H,m),4.08−4.23(2H,m),4.43(32H,d),7.23−7.25(80H,m).
化合物13(42.4mg,0.0121mmol)のメタノール溶液(2.2mL)に水素雰囲気下、室温でPd(OH)/C(Pd:20重量%含有,22mg)を加えた後、同温度で7時間、30℃で17時間攪拌した。反応液にTHF(1mL)を添加し、30℃で6時間、40℃で21時間攪拌した後、さらに10%Pdカーボン粉末20mgを添加し、40℃で95.5時間攪拌した。反応液をフィルターで濾過した後、溶媒を減圧下で留去し、化合物14(17.2mg,収率68.7%)を得た。H−NMR(CDOD,300MHz)δ(ppm):0.75−0.85(6H,t),1.10−1.30(64H,m),3.20−3.52(68H,m).
TOF−MS:m/z 2076.2([M−H],ES
【実施例3】
化合物(5)の調製(第1法)
反応スキームを以下に示す。反応スキーム中で、Phはフェニル基、Tsはp−トルエンスルホニル基、NHSはN−ヒドロキシスクシンイミド、DSPEはジステアロイルホスファチジルエタノールアミンをそれぞれ表す。


化合物15を既知の方法[シンセシス(Synthesis),1998年,p.879−882]に従って調製した。化合物15(250.0mg,1.89mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(30.5mg,0.09mmol)、水酸化カリウム(93.7mg,1.42mmol)、水(0.04ml)の懸濁液を室温で激しく撹拌しながら、化合物16(43.8mg,0.47mmol)をゆっくり滴下した。この反応混合物を60℃で40時間撹拌した後、酢酸エチル(150ml)で希釈し、ろ過した。そのろ液を無水硫酸マグネシウム上で乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物15(130mg,52%回収)と化合物17(64.8mg,収率43%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):4.05−3.70(m,9H),3.65−3.45(m,4H),3.45−3.41(m,2H),2.63(br,1H),1.43(s,6H),1.41(s,6H)
13C−NMR(100MHz,CDCl):98.1(C×2),70.8(CH×2),69.8(CH×2),69.4(CH),62.3(CH×2),62.2(CH×2),23.9(CH×2),22.9(CH×2)
化合物17(1000mg,3.12mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(50.3mg,0.16mmol)、水酸化カリウム(154.5mg,2.34mmol)、水(0.4ml)の懸濁液を室温で激しく撹拌しながら、化合物16(72.2mg,0.78mmol)をゆっくり滴下した。この反応混合物を80℃で48時間撹拌した後、水を加え、懸濁液を塩化メチレン(80ml×5回)で抽出した。集めた有機層を無水炭酸カリウム上で乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物17(273.2mg,27%回収)と化合物18(414.6mg,収率76%)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz):4.05−3.35(m,35H),1.43(s,12H),1.40(s,12H)
13C−NMR(100MHz,CDCl):98.1(C×4),78.7(CH×2),71.9(CH×2),70.9(CH×4),69.6(CH),68.7(CH×2),68.6(CH×2),62.4(CH×2),62.4(CH×2),62.3(CH×2),62.3(CH×2),30.9(CH),29.6(CH),24.0(CH×2),24.0(CH),23.1(CH×2),23.0(CH
化合物18(1.85g,2.66mmol)のピリジン溶液(1ml)に室温で塩化p−トルエンスルホニル(1.01g,5.32mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(65.0mg,0.53mmol)を加え、16時間撹拌した。得られた反応液に酢酸エチルを加え、飽和硫酸銅水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウム上で乾燥後、減圧下濃縮し、化合物19を得た。得られた化合物19とアジ化ナトリウム(1.04g,16.0mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(85.8mg,0.27mmol)をDMF(5ml)に溶かし、その溶液を120℃で20時間撹拌した。得られた反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチル(×3回)で抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄後、炭酸カリウム上で乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物20(1.2048g,63%収率)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz):4.01−3.51(m,31H),3.48−3.40(m,4H),1.43(s,12H),1.41(s,12H)
化合物20(20.5mg,0.028mmol)の無水THF溶液(0.5ml)に水素化アルミニウムリチウム(2.2mg,0.057mmol)を0℃で加え、その懸濁液を室温で15時間撹拌した。得られた反応液に、0℃で酢酸エチルをゆっくり滴下した。水素ガスの発生が収まった時点で、水(0.1ml)を加え、ろ過した。ろ液を炭酸カリウム上で乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物21(7.8mg,40%収率)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz):4.02−3.50(m,31H),1.42(s,12H),1.40(s,12H)
化合物22のDMF溶液に、ジイソプロピルエチルアミン、化合物21のDMF溶液およびPyBOPを順次加えた後、攪拌する。反応液を5%硫酸水素カリウム水溶液に注いだ後、酢酸エチルを用いて抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過する。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物23を得る。
化合物23の水溶液に、室温で酸化リチウムをゆっくりと加えた後、攪拌する。反応液にジクロロメタンを用いて抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過する。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物24を得る。
化合物24のDMF溶液に、NHS、EDCおよびトリエチルアミンを順次加えた後、還流する。反応液に5%硫酸水素カリウム水溶液を加えた後、ジクロロメタンを用いて抽出する。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過する。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物25を得る。
得られた化合物25とDSPEを用い、実施例1における化合物6とDSPEとの反応と同様の反応を行うことにより化合物26が得られる。
化合物26を、酸性条件下、好ましくは弱酸性条件下で処理することにより化合物27が得られる。
【実施例4】
化合物(5)の調製(第2法)
反応スキームを以下に示す。反応スキーム中で、Phはフェニル基、Tsはp−トルエンスルホニル基、、NHSはN−ヒドロキシスクシンイミド、DSPEはジステアロイルホスファチジルエタノールアミンをそれぞれ表す。


化合物28を既知の方法[ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.),1995年,117巻,p.8757−8768]に従って調製した。化合物28(8.739g,48.5mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(0.773g,2.33mmol)、水酸化カリウム(2.304g,41.1mmol)、水(10ml)の懸濁液を室温で激しく撹拌しながら、化合物16(0.91ml,d=1.183g/l,11.6mmol)をゆっくり滴下し、80℃で40時間撹拌した。その後、水(200ml)を加え、その懸濁液を塩化メチレン(80ml×5回)で抽出した。集めた有機層を食塩水で洗浄後、無水炭酸カリウム上で乾燥後、減圧下濃縮し、その残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物28(4.803g,55%回収)と化合物29(2.939g,収率61%)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz):δ7.54−7.29(m,10H、芳香環),5.54(s,2H,[−CHO]−CHPh),4.40−3.96(m,9H,[CH]×4+HOCH−),3.77−3.67(m,4H,[CH]×2),3.39−337(m,2H,[CH−O−CH]×2),2.88−2.80(m,1H,−OH)
化合物29(1.844g,4.43mmol)と水素化ナトリウム(55%inミネラルオイルディスパージョンで0.145g,3.32mmol)のジオキサン(15ml)懸濁液を室温で激しく撹拌しながら、化合物16(0.087ml,1.11mmol)をゆっくり滴下した。この反応混合物を43時間、還流しながら撹拌した後、水(50ml)を加え、その懸濁液を塩化メチレン(50ml×3回)で抽出した。集めた有機層を食塩水で洗浄後、無水炭酸カリウム上で乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物29(1.106g,60%回収)と化合物30(181mg,収率18%)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz):δ7.70−7.28(m,20H,芳香環),5.48(s,4H,[−CHO]−CHPh),4.51−3.47(m,33H,[CH]×14,[CH]×4,−OH),3.32−3.30(m,3H,[CH]×3).
得られた化合物30を用い、実施例3における化合物18と同様の反応を行い、以下実施例3における化合物19〜24と同様に反応をおこなうことにより化合物36が得られる。
化合物36とDSPEを用い、実施例1における化合物6とDSPEとの反応と同様の反応を行うことにより化合物37が得られる。
化合物38を、実施例1における化合物7と同様にメタノール溶液で水素雰囲気下、室温でPd(OH)/Cで処理して化合物27が得られる。
参考例
化合物22の調製
反応スキームを以下に示す。反応スキーム中で、Bnはベンジル基を表す。

化合物38(1.00g,7.5mmol)のトルエン溶液(20ml)に室温で、p−トルエンスルホン酸・1水和物(1.80g,9.0mmol)、ベンジルアルコール(31ml,301mmol)を順次加えた後、20時間共沸脱水した。反応溶液にジエチルエーテルを加え冷却した。生じた沈殿物をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄した。塩化メチレン、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、塩化メチレンを用いて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、ろ過した後に溶媒を減圧下で留去し、化合物39を得た。
得られた化合物39のピリジン溶液(6ml)に室温で無水コハク酸(1125mg,11.25mmol)を加えた後、同温度で6時間攪拌した。反応溶液に1mol/L塩酸を加え、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、ろ過した後に溶媒を減圧下で留去し、化合物40を得た。
得られた化合物40のアセトン溶液(50ml)に室温で無水炭酸カリウム(2073mg,15mmol)、ジメチル硫酸(1895mg,15mmol)を順次加え、1時間還流した。反応溶液に5%硫酸水素カリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、ろ過した後に溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)を用いて精製し、化合物41(545.0mg,収率17%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):7.44−7.29(m,10H),5.22−5.12(m,4H),4.27−4.20(m,4H),3.68(s,3H),2.70−2.60(m,4H)
化合物41(535.8mg,1.25mmol)のメタノール溶液(5ml)に水素気流下、室温でPd(OH)/C(Pd:20wt%,25mg)を加えた後、同温度で2時間攪拌した。反応溶液を、セライト535を用いてろ過した後、溶媒を減圧下で留去し、化合物22(309.0mg,収率100%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDOD):4.34−4.05(m,4H),3.66(s,3H),2.72−2.52(m,4H)
【実施例5】
化合物(2)を含有するグリセロール誘導体修飾リポソーム(修飾率6.7mol%)の調製
水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)に、100mmol/Lクエン酸緩衝液(pH4.0)を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を70℃で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通した。得られた溶液に100mmol/Lクエン酸緩衝液を加え、HSPCの濃度が62.5mg/mLとなるように未修飾リポソーム懸濁液を調製した。ドキソルビシンの濃度が1.25mg/mLになるように、ドキソルビシンに該未修飾リポソーム懸濁液を添加した。1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、得られた懸濁液のpH値を7.4付近に調整した後、蒸留水を添加して、ドキソルビシン濃度を1mg/mLにした。得られた懸濁液を70℃で5分間加熱し、ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液を調製した。該ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液に、実施例1で得られた化合物(2)のエタノール溶液(エタノール量:ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液の1容量%)を、化合物(2)の含有量が目的とするグリセロール誘導体修飾リポソームの全脂質の6.7mol%となるように添加した。得られた懸濁液を70℃で2分間加熱し、化合物(2)を含有するグリセロール誘導体修飾リポソームを得た。本リポソームは2Lot調製した。
【実施例6】
化合物(2)を含有するグリセロール誘導体リポソーム(修飾率15mol%)の調製
HSPCに、100mmol/Lクエン酸緩衝液(pH4.0)を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を70℃で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通した。得られた溶液に100mmol/Lクエン酸緩衝液を加え、HSPCの濃度が62.5mg/mLとなるように未修飾リポソーム懸濁液を調製した。ドキソルビシンの濃度が1.25mg/mLになるように、ドキソルビシンに該未修飾リポソーム懸濁液を添加した。1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、得られた懸濁液のpH値を7.4付近に調整した後、蒸留水を添加して、ドキソルビシン濃度を1mg/mLにした。得られた懸濁液を70℃で5分間加熱し、ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液を調製した。該ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液に、実施例1で得られた化合物(2)のエタノール溶液(エタノール量:ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液の1容量%)を、化合物(2)の含有量が目的とするグリセロール誘導体修飾リポソームの全脂質の15mol%となるように添加した。得られた懸濁液を70℃で2分間加熱し、化合物(2)を含有するグリセロール誘導体修飾リポソームを得た。
【実施例7】
化合物(4)を含有するグリセロール誘導体リポソーム(修飾率6.7mol%)の調製
HSPCに、100mmol/Lクエン酸緩衝液(pH4.0)を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を70℃で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通した。得られた溶液に100mmol/Lクエン酸緩衝液を加え、HSPCの濃度が62.5mg/mLとなるように未修飾リポソーム懸濁液を調製した。ドキソルビシンの濃度が1.25mg/mLになるように、ドキソルビシンに該未修飾リポソーム懸濁液を添加した。1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、得られた懸濁液のpH値を7.4付近に調整した後、蒸留水を添加して、ドキソルビシン濃度を1mg/mLにした。得られた懸濁液を70℃で5分間加熱し、ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液を調製した。該ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液に、実施例2で得られた化合物(4)のエタノール溶液(エタノール量:ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液の1容量%)を、化合物(4)の含有量が目的とするグリセロール誘導体修飾リポソームの全脂質の6.7mol%となるように添加した。得られた懸濁液を70℃で2分間加熱し、化合物(4)を含有するグリセロール誘導体修飾リポソームを得た。
【実施例8】
化合物(4)を含有するグリセロール誘導体修飾リポソーム(修飾率15mol%)の調製
HSPCに、100mmol/Lクエン酸緩衝液(pH4.0)を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を70℃で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通した。得られた溶液に100mmol/Lクエン酸緩衝液を加え、HSPCの濃度が62.5mg/mLとなるように未修飾リポソーム懸濁液を調製した。ドキソルビシンの濃度が1.25mg/mLになるように、ドキソルビシンに該未修飾リポソーム懸濁液を添加した。1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、得られた懸濁液のpH値を7.4付近に調整した後、蒸留水を添加して、ドキソルビシン濃度を1mg/mLにした。得られた懸濁液を70℃で5分間加熱し、ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液を調製した。該ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液に、実施例2で得られた化合物(4)のエタノール溶液(エタノール量:ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液の1容量%)を、化合物(4)の含有量が目的とするグリセロール誘導体の全脂質の15mol%となるように添加した。得られた懸濁液を70℃で2分間加熱し、化合物(4)を含有するグリセロール誘導体修飾リポソームを得た。
比較例1 未修飾リポソームの調製
HSPCに、100mmol/Lクエン酸緩衝液(pH4.0)を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を70℃で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通した。得られた溶液に100mmol/Lクエン酸緩衝液を加え、HSPCの濃度が62.5mg/mLとなるように未修飾リポソーム懸濁液を調製した。ドキソルビシンの濃度が1.25mg/mLになるように、ドキソルビシンに該未修飾リポソーム懸濁液を添加した。1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、得られた懸濁液のpH値を7.4付近に調整した後、蒸留水を添加して、ドキソルビシン濃度を1mg/mLにした。得られた懸濁液を70℃で5分間加熱し、ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液を調製した。本リポソームは2Lot調製した。
比較例2 PEG修飾リポソーム(修飾率6.7mol%)の調製
HSPCに、100mmol/Lクエン酸緩衝液(pH4.0)を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を70℃で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通した。得られた溶液に100mmol/Lクエン酸緩衝液を加え、HSPCの濃度が62.5mg/mLとなるように未修飾リポソーム懸濁液を調製した。ドキソルビシンの濃度が1.25mg/mLになるように、ドキソルビシンに該未修飾リポソーム懸濁液を添加した。1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、得られた懸濁液のpH値を7.4付近に調整した後、蒸留水を添加して、ドキソルビシン濃度を1mg/mLにした。得られた懸濁液を70℃で5分間加熱し、ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液を調製した。該ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液に、PEG−DSPE(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ポリ(エチレングリコール)−2000];Avanti社製)のエタノール溶液(エタノール量:ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液の1容量%)を、PEG−DSPEの含有量が目的とするPEG修飾リポソームの全脂質の6.7mol%となるように添加した。得られた懸濁液を70℃で2分間加熱し、PEG修飾リポソームを得た。本リポソームは2Lot調製した。
比較例3 PEG修飾リポソーム(修飾率15mol%)の調製
HSPCに、100mmol/Lクエン酸緩衝液(pH4.0)を加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を70℃で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通した。得られた溶液に100mmol/Lクエン酸緩衝液を加え、HSPCの濃度が62.5mg/mLとなるように未修飾リポソーム懸濁液を調製した。ドキソルビシンの濃度が1.25mg/mLになるように、ドキソルビシンに該未修飾リポソーム懸濁液を添加した。1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、得られた懸濁液のpH値を7.4付近に調整した後、蒸留水を添加して、ドキソルビシン濃度を1mg/mLにした。得られた懸濁液を70℃で5分間加熱し、ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液を調製した。該ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液に、PEG−DSPE(Avanti社製)のエタノール溶液(エタノール量:ドキソルビシンを内包した未修飾リポソームの懸濁液の1容量%)を、PEG−DSPEの含有量が目的とするPEG修飾リポソームの全脂質の15mol%となるように添加した。得られた懸濁液を70℃で2分間加熱し、PEG修飾リポソームを得た。
【産業上の利用可能性】
本発明により、例えば薬剤キャリアーを製造するための表面修飾剤等として有用な、両親媒性物質または疎水性物質がグリセロール誘導体で修飾された化合物またはその塩、およびそれらを含有する微粒子等が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質が式(1)

(式中、Rは該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質または該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質とR−Xとを結合させるためのスペーサーと反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基を表し、nは3以上の整数を表し、Xはn個の

を有することが可能な残基を表す)で表されるグリセロール誘導体で直接もしくは該スペーサーを介して修飾された化合物またはその塩。
【請求項2】
nが2(式中、mは2以上の整数を表す)である請求の範囲1記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
Xが1以上の直列的分岐構造を有する請求の範囲1または2記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
Xが1個以上(n−1)個以下の

または

(式中、Y、YおよびYはそれぞれ独立して、単結合、あるいは置換もしくは非置換のアルキレン、カルボニル、置換もしくは非置換のイミノ、O、S、スルホニルおよびスルフィニルからなる群より選ばれる一つまたは同一もしくは異なった複数の任意の組み合わせを表し、Y、YおよびYが複数存在するとき、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)で表される構造を含有する請求の範囲1〜3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
Xが1個以上(n−1)個以下の

で表される構造を含有する請求の範囲1〜4のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
Xが1個以上(n−1)個以下の

で表される構造を含有する請求の範囲1〜5のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
Xが1個以上(n−1)個以下の

で表される構造を含有する請求の範囲1〜6のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
Xが1個以上(n−1)個以下の

で表される構造を含有する請求の範囲1〜7のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項9】
Rが、両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質または該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質とR−Xとを結合させるためのスペーサー中のカルボキシ、アミノ、水酸基、メルカプト、ホルミル、硫酸残基、リン酸残基、ホスホン酸残基およびそれらの部分構造からなる群より選ばれる基との反応性を有する基または該反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基である請求の範囲1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項10】
Rが、カルボン酸活性エステル残基、カーボネート、マレイミド、メルカプト、ホルミル、トレシル、イソシアナート、酸無水物残基、酸ハロゲン化物残基、ビニルスルホニル、ヒドラジド、アミノ、水酸基、ハロゲン、カルボキシ、ビニルおよびホスホノからなる群より選ばれる基を含有する残基である請求の範囲1〜8のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項11】
請求の範囲1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を少なくとも二つ含有する混合物。
【請求項12】
両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質が脂質類またはその誘導体である請求の範囲1〜11のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項13】
式(2)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
【請求項14】
式(3)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
【請求項15】
式(4)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
【請求項16】
式(5)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
【請求項17】
式(6)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
【請求項18】
式(7)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
【請求項19】
式(8)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
【請求項20】
式(9)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
【請求項21】
式(10)

(式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、RおよびRは同一または異なって水素原子、飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基を表し、RおよびRの少なくとも一方は飽和脂肪酸残基または不飽和脂肪酸残基であり、RおよびRは同一または異なって炭素数1〜10のアルキレンを表す)で表される化合物またはその塩。
【請求項22】
およびRがエチレンである請求の範囲13〜21のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項23】
両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質が、該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質または該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質とR−Xとを結合させるためのスペーサーと反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基および1個以上の

を有するグリセロール誘導体で直接もしくは該スペーサーを介して修飾された化合物またはその塩を含有する微粒子。
【請求項24】
請求の範囲1〜22のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有する微粒子。
【請求項25】
微粒子がリポソーム、脂肪乳剤、エマルション、ミセルおよび微粒子結晶からなる群より選ばれる微粒子である請求の範囲23または24記載の微粒子。
【請求項26】
両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質が、該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質または該両親媒性物質および疎水性物質からなる群より選ばれる被修飾物質とR−Xとを結合させるためのスペーサーと反応性を有する基または反応性を有する基に変換可能な基を含有する残基および1個以上の

を有するグリセロール誘導体で直接もしくは該スペーサーを介して修飾された化合物またはその塩を含有する微粒子の表面修飾剤。
【請求項27】
請求の範囲1〜22のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有する微粒子の表面修飾剤。
【請求項28】
微粒子がリポソーム、脂肪乳剤、エマルション、ミセルおよび微粒子結晶からなる群より選ばれる微粒子である請求の範囲26または27記載の表面修飾剤。

【国際公開番号】WO2005/023844
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513728(P2005−513728)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013187
【国際出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【出願人】(501103000)株式会社テクノネットワーク四国 (5)
【Fターム(参考)】