説明

グリッドカソードをシリコンウエハの前面に形成する方法

金属ペーストをシリコンウエハに前面グリッド電極パターンとして塗布して焼成し、種グリッドカソードを形成する工程と、次に、シリコンウエハをLIP法にかける工程とによるシリコンウエハの前面のグリッドカソードの製造方法であって、金属ペーストが、有機ビヒクルと、(a)ニッケル、銅および銀からなる群から選択される少なくとも1種の導電性金属粉末90〜98重量%と、(b)PbO 47.5〜64.3重量%、SiO2 23.8〜32.2重量%、Al23 3.9〜5.4重量%、TiO2 2.8〜3.8重量%およびB23 6.9〜9.3重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1種のガラスフリット0.25〜8重量%とを含む無機含有量とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッドカソードをシリコンウエハの前面に形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
p型ベースを有する従来の太陽電池構造は、典型的には電池の前面または照明される面にある負電極と、裏面にある正電極とを有する。半導体本体のp−n接合に向かう適切な波長の放射線は、その本体内に電子−正孔対を生成させるための外部エネルギーの供給源として作用することは公知である。p−n接合に存在する電位差のために、正孔および電子は接合を反対方向に横断し、それによって、電力を外部回路に送出することが可能な電流の流れを発生させる。大抵の太陽電池は、金属化されている、すなわち導電性である金属接点を設けられている、シリコンウエハの形態である。
【0003】
現在使用されている大抵の発電用太陽電池は、シリコン太陽電池である。特にその電極は、金属ペーストからスクリーン印刷などの方法を使用して製造される。
【0004】
シリコン太陽電池の製造は典型的に、リン(P)等の熱拡散によって逆導電型のn型拡散層が上に形成されるシリコンウエハの形態のp型シリコン基板から始める。オキシ塩化リン(POCl3)が気体リン拡散源として一般に使用され、他の液体源はリン酸等である。特定の修正が一切ない場合、拡散層は、シリコン基板の全表面の上に形成される。p型ドーパントの濃度がn型ドーパントの濃度に等しいところでp−n接合が形成され、照明される面の近くにp−n接合がある従来の電池は、0.05〜0.5μmの接合深さを有する。
【0005】
この拡散層の形成後、過剰な表面ガラスがフッ化水素酸などの酸によるエッチングによって表面の残部から除去される。
【0006】
次に、TiOx、SiOx、TiOx/SiOx、または、特に、SiNxまたはSi34のARC層(反射防止コーティング層)が、例えば、プラズマCVD(化学蒸着)などの方法によって0.05〜0.1μmの厚さまでn型拡散層上に形成される。
【0007】
p型ベースを有する従来の太陽電池構造は、典型的には電池の前面のグリッド負電極と、裏面の正電極とを有する。グリッド電極は典型的に、電池の前面のARC層上に前面銀ペースト(前部電極を形成する銀ペースト)をスクリーン印刷して乾燥させることによって適用される。前面グリッド電極は典型的に、(i)細い平行な指線(コレクタライン)と(ii)指線と直角に交わる2つの母線とを含むいわゆるHパターンとしてスクリーン印刷される。さらに、裏面銀または銀/アルミニウムペーストおよびアルミニウムペーストがスクリーン印刷され(または何か他の適用方法)、続いて基板の裏面上で連続的に乾燥される。通常、裏面銀または銀/アルミニウムペーストは、まず、相互接続線(前もってはんだ付けされた銅リボン)をはんだ付けするために用意された2つの平行な母線としてまたは矩形(タブ)として、シリコンウエハの裏面上にスクリーン印刷される。次に、アルミニウムペーストは、裏面銀または銀/アルミニウムの上にわずかに重なるように無被覆領域に印刷される。アルミニウムペーストが印刷された後に銀または銀/アルミニウムペーストが印刷される場合もある。次に、焼成は典型的に、1〜5分間ベルト炉内で行なわれ、ウエハは700〜900℃の範囲のピーク温度に達する。前部グリッド電極および後部電極を連続的に焼成するかまたは同時に焼成することができる。
【0008】
アルミニウムペーストは一般にシリコンウエハの裏面上にスクリーン印刷され、乾燥される。ウエハは、アルミニウムの融点を超える温度で焼成されてアルミニウム−シリコン溶融体を形成し、続いて、冷却段階の間、アルミニウムをドープされているシリコンのエピタキシャル成長層が形成される。この層は一般に裏面電界(BSF)層と呼ばれる。アルミニウムペーストは、乾燥された状態から焼成することによってアルミニウム後部電極に変換させられる。裏面銀または銀/アルミニウムペーストは同時に焼成され、銀または銀/アルミニウム後部電極になる。焼成の間、裏面アルミニウムと裏面銀または銀/アルミニウムとの境界は合金状態となる上、電気接続される。一つにはp+層を形成することが必要なために、アルミニウム電極は後部電極の大部分の領域を占める。銀または銀/アルミニウム後部電極が裏面の一部の上に(しばしば幅2〜6mmの母線として)電極として形成され、前もってはんだ付けされた銅リボン等によって太陽電池を相互接続する。さらに、前面グリッド電極として印刷された前面銀ペーストが焼結し、焼成の間にARC層にわたって浸透し、それによってn型層と電気的に接触することができる。このタイプの方法は一般に「ファイアリングスルー(firing through)」と呼ばれる。
【0009】
上記タイプのシリコン太陽電池の電気効率は、導電性銀を前面グリッド電極上に堆積するいわゆるLIP(光誘導めっき)法を使用することによって増加され得る。LIP法の間、前面グリッド電極は、銀で電気めっきされる種電極として作用する。A.Metteet al.“Increasing the Efficiency of Screen−Printed Silicon Solar Cells by Light−Induced Silver Plating”,Photovoltaic Energy Conversion,Conference Record of the 2006 IEEE 4th World Conferenceon Volume1,May 2006,pages 1056−1059を参照のこと。LIP法の間、前面種グリッドカソードを提供されたシリコン太陽電池は、LIP浴に、すなわち、カソードに堆積可能な形態で銀を含有する水浴に浸漬される。電池の前面が照明され、前面に生じた負電位によって銀が種グリッドカソード上に堆積する。同時に電池の裏面が外部電源に接続され、シリコンウエハの前面の照明下で生じた正電位を補償するために電圧バイアスが印加され、アルミニウム層の溶解を防ぐ。銀の犠牲電極がアノードによって外部電源に接続され、堆積プロセスによってLIP浴で消費された銀をLIP浴に補充する。
【0010】
種グリッドカソードを適用および焼成して銀をLIPによってその上に堆積することによって製造された前面グリッドカソードを提供されたシリコン太陽電池の電気効率は、種グリッドカソードを適用するために用いられた導電性金属ペーストが、特定の組成を有するガラスフリットを含有する時にさらに改良され得ることが現在は見出されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、p型領域、n型領域、p−n接合および前面上にARC層を有するシリコンウエハの前記前面上のグリッドカソードの製造方法に関し、この方法は、
(1)ARC層をその前面上に有するシリコンウエハを提供する工程と、
(2)シリコンウエハの前面上のARC層上に金属ペーストを前面グリッド電極パターンとして適用(塗布)して乾燥させる工程と、
(3)金属ペーストを焼成して種グリッドカソードを形成する工程と、
(4)種グリッドカソードを提供された(設けた)シリコンウエハをLIP法にかけることによって銀を種グリッドカソード上に堆積させる工程とを含み、
金属ペーストが、有機ビヒクルと、(a)ニッケル、銅および銀からなる群から選択される少なくとも1種の導電性金属粉末90〜98重量%と、(b)PbO 47.5〜64.3重量%、SiO2 23.8〜32.2重量%、Al23 3.9〜5.4重量%、TiO2 2.8〜3.8重量%およびB23 6.9〜9.3重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1種のガラスフリット0.25〜8重量%とを含む無機含有量とを含む。
【0012】
本明細書および請求項において用語「種グリッドカソード」および「グリッドカソード」は、方法工程(3)の終了時に得られた種グリッドカソードと方法工程(4)の終了時に得られたグリッドカソード、すなわち本発明の方法によって製造されたグリッドカソードとを明確に区別するために用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の方法の工程(1)において、ARC層をその前面上に有するシリコンウエハが提供される。シリコンウエハは、シリコン太陽電池の製造のために通常使用されている従来の単結晶または多結晶シリコンウエハであり、p型領域、n型領域およびp−n接合を有する。シリコンウエハは、例えばTiOx、SiOx、TiOx/SiOxまたは、特に、SiNxまたはSi34のARC層をその前面に有する。このようなシリコンウエハは当業者に公知であり、簡潔にするために「背景技術」の欄が参照される。シリコンウエハは、従来の裏面金属化、すなわち、「背景技術」の欄に記載されたように裏面アルミニウムペーストおよび裏面銀または裏面銀/アルミニウムペーストを既に提供されていてもよい。裏面金属ペースト(裏面アルミニウムペーストを含める)の適用は、工程(3)において前面種グリッドカソードが完成される前または後に行なわれてもよい。優先的に、裏面金属ペースト(裏面アルミニウムペーストを含める)は、方法工程(4)が行なわれる前に適用および焼成される。裏面金属ペースト(裏面アルミニウムペーストを含む)は、個々に焼成されるかまたは同時に焼成されるか、もしくは工程(2)においてARC層上に適用された前面金属ペーストと同時に焼成されてもよい。
【0014】
本発明の方法の工程(2)において金属ペーストは、前面グリッド電極パターンとしてシリコンウエハの前面のARC層上に適用される。
【0015】
金属ペーストは、ファイアスルー(fire−through)能力を有する厚膜導電性組成物であり、すなわち、それは、ARC層にわたって焼成し、シリコン基板の表面との電気的接触を形成する。
【0016】
金属ペーストは、有機ビヒクルと、(a)ニッケル、銅および銀からなる群から選択される少なくとも1種の導電性金属粉末90〜98重量%と、(b)PbO 47.5〜64.3重量%、SiO2 23.8〜32.2重量%、Al23 3.9〜5.4重量%、TiO2 2.8〜3.8重量%およびB23 6.9〜9.3重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1種のガラスフリット0.25〜8重量%とを含む無機含有量とを含む。
【0017】
金属ペーストは有機ビヒクルを含む。多種多様な不活性粘稠材料を有機ビヒクルとして使用することができる。有機ビヒクルは、粒状構成成分(導電性金属粉末、ガラスフリット、場合により存在している他の粒状無機成分)が十分な安定度をもって分散性である有機ビヒクルであってもよい。有機ビヒクルの性質、特に、レオロジー性質は、金属ペーストに良好な適用性、すなわち、不溶性固形分の安定な分散、適用のための適切な粘度およびチキソトロピー、シリコンウエハ前面のARC層のおよびペースト固形分の適切な湿潤性、良好な乾燥速度、および良好な焼成性質などを与えるような性質であってもよい。金属ペーストにおいて使用された有機ビヒクルは、非水性不活性液体であってもよい。有機ビヒクルは有機溶剤または有機溶剤の混合物であってもよい。一実施形態において、有機ビヒクルは有機溶剤中の有機ポリマーの溶液であってもよい。様々な有機ビヒクルのいずれを使用することもでき、増粘剤、安定剤および/または他の一般的な添加剤を含有してもしなくてもよい。一実施形態において、有機ビヒクルの構成成分として使用されたポリマーは、エチルセルロースであってもよい。単独でまたは組み合わせて使用されてもよいポリマーの他の例には、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、フェノール樹脂および低級アルコールのポリ(メタ)アクリレートなどがある。適した有機溶剤の例は、エステルアルコールおよびアルファ-またはベータ-テルピネオールなどのテルペン、または他の溶剤、例えばケロシン(kerosene)、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ヘキシレングリコールおよび高沸点アルコールなどとのそれらの混合物を含む。さらに、金属ペーストの適用後の急速な硬化を促進するための揮発性有機溶剤が有機ビヒクル中に含有されてもよい。これらと他の溶剤との様々な組み合わせを調合して、所望の粘度および揮発性の要件を得ることができる。
【0018】
金属ペースト中の有機ビヒクルの、無機含有量(無機成分;導電性金属粉末+ガラスフリット+場合により存在している他の無機添加剤)に対する比は、金属ペーストの適用方法および使用された有機ビヒクルの種類に依存しており、それは変化し得る。通常、金属ペーストは、無機成分40〜95重量%と有機ビヒクル5〜60重量%とを含有する。
【0019】
金属ペーストの無機含有量は、(a)ニッケル、銅および銀からなる群から選択される少なくとも1種の導電性金属粉末90〜98重量%と、(b)PbO 47.5〜64.3重量%、SiO2 23.8〜32.2重量%、Al23 3.9〜5.4重量%、TiO2 2.8〜3.8重量%およびB23 6.9〜9.3重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1種のガラスフリット0.25〜8重量%とを含む。
【0020】
一実施形態において、金属ペーストの無機含有量は、(a)ニッケル、銅および銀からなる群から選択される少なくとも1種の導電性金属粉末92〜98重量%と、(b)PbO 47.5〜64.3重量%、SiO2 23.8〜32.2重量%、Al23 3.9〜5.4重量%、TiO2 2.8〜3.8重量%およびB23 6.9〜9.3重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1種のガラスフリット1.5〜4重量%とを含む。
【0021】
金属ペーストの無機含有量は成分(a)および(b)以外のさらなる無機成分を含むことが可能であり、それらは成分(a)および(b)の重量パーセントから計算することができる。このような他の無機成分の例は、固体無機酸化物または金属ペーストの焼成の間に固体無機酸化物を形成することができる化合物を含む。前記固体無機酸化物の例には、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、 酸化カルシウムおよび酸化リチウムなどがある。一般的には、金属ペーストの無機含有量は、PbO 47.5〜64.3重量%、SiO2 23.8〜32.2重量%、Al23 3.9〜5.4重量%、TiO2 2.8〜3.8重量%およびB23 6.9〜9.3重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1種のガラスフリット以外の他のガラスフリットを含まない。
【0022】
金属ペーストは、銀、銅およびニッケルからなる群から選択される少なくとも1種の導電性金属粉末を含む。銀粉末が好ましい。金属または銀粉末はコートされていなくてもよく、または界面活性剤で少なくとも部分的にコートされてもよい。界面活性剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、カプリン酸、ミリスチン酸およびリノール酸およびそれらの塩、例えば、アンモニウム、ナトリウムまたはカリウム塩から選択されてもよいが、それらに限定されない。
【0023】
導電性金属粉末または、特に、銀粉末の平均粒度は、例えば、0.2〜5μmの範囲である。
【0024】
本明細書および請求項において用語「平均粒度」が用いられる。これは、レーザー散乱によって定量された平均粒径(d50)を意味する。平均粒度に関連して本明細書および請求項においてなされた全ての記載は、金属ペースト中に存在する関連材料の平均粒度に関する。
【0025】
一般的には金属ペーストは、銀、銅、およびニッケルからなる群から選択される少なくとも1種の導電性金属粉末だけを含む。しかしながら、銀、銅およびニッケルからなる群から選択される導電性金属の少ない割合を1種または複数種の他の粒状金属で置き換えることが可能である。このような他の粒状金属の比率は、例えば、金属ペーストに含有された粒状金属の合計に基づいて0〜10重量%である。
【0026】
既に記載されたように、金属ペーストは、少なくとも1種のガラスフリットを無機バインダーとして含む。1種または複数種のガラスフリットは、PbO 47.5〜64.3重量%、SiO2 23.8〜32.2重量%、Al23 3.9〜5.4重量%、TiO2 2.8〜3.8重量%およびB23 6.9〜9.3重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される。一実施形態において、1種または複数種のガラスフリットは、PbO 50.3〜61.5重量%、SiO2 25.2〜30.8重量%、Al23 4.2〜5.2重量%、TiO2 3.0〜3.6重量%およびB23 7.3〜8.9重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される。別の実施形態において、1種または複数種のガラスフリットは、PbO 53.1〜58.7重量%、SiO2 26.6〜29.4重量%、Al23 4.5〜4.9重量%、TiO2 3.1〜3.5重量%およびB23 7.7〜8.5重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される。PbO、SiO2、Al23、TiO2およびB23の重量パーセントから計算できるように、後者は必ずしも合計100重量%にならない。しかしながら、一実施形態において、PbO、SiO2、Al23、TiO2およびB23の重量パーセントの合計は100重量%である。PbO、SiO2、Al23、TiO2およびB23の重量パーセントが合計100重量%にならない場合、足りない重量%は、特に、1種または複数種の他の酸化物によって与えられてもよい。
【0027】
少なくとも1種のガラスフリットの平均粒度は、例えば、0.5〜4μmの範囲である。
【0028】
ガラスフリットの製造は公知であり、例えば、ガラスの構成成分を構成成分の酸化物の形態で一緒に溶融する工程と、このような溶融組成物を水に流し込んでフリットを形成する工程とを有する。該当技術分野に公知であるように、加熱は、溶融体が完全に液体になり均質になる時間、例えば、0.5〜1.5時間、例えば1300〜1450℃のピーク温度まで行なわれてもよい。
【0029】
水または不活性低粘度、低沸点有機液体を用いてボールミル内でガラスを粉砕して、フリットの粒度を低減させ、実質的に均一なサイズのフリットを得てもよい。次いで、それを水または前記有機液体中に沈降させて細粒を分離してもよく、細粒を含有する上澄み液を除去してもよい。分級の他の方法も同様に用いてもよい。
【0030】
金属ペーストは粘性組成物であり、導電性金属粉末およびガラスフリットおよび他の場合により存在している固体無機成分を有機ビヒクルと機械的に混合することによって製造されてもよい。一実施形態において、製造法において強力混合、従来のロール練りと同等の分散技術を用いてもよく、ロール練りまたは他の混合技術も用いることができる。
【0031】
金属ペーストはそのままで使用することができ、または例えば、付加的な有機溶剤を添加することによって希釈してもよい。したがって、金属ペーストの全ての他の構成成分の重量パーセンテージを減少させてもよい。
【0032】
本発明の方法の工程(2)において、金属ペーストが前面グリッド電極パターンとしてシリコンウエハの前面のARC層上に適用される。金属ペースト適用方法の例には、ペンによる書き込みおよび印刷方法、例えば、ジェット印刷、ステンシル印刷およびスクリーン印刷などがある。前面グリッド電極は、(i)細い平行な指線と(ii)指線と直角に交わる2つ以上の平行な母線とを含んでもよい。一実施形態において、グリッドパターンは、2つの平行な母線を有するHパターンである。平行な指線の互いの距離が例えば2〜5mm、乾燥層厚さが例えば3〜30μmおよび幅が例えば40〜200μmであってもよい。母線の乾燥層厚さが例えば10〜50μmおよび幅が例えば1〜3mmであってもよい。
【0033】
適用後に、金属ペーストは例えば1〜100分間乾燥され、シリコンウエハは100〜300℃の範囲のピーク温度に達する。乾燥は、例えば、ベルト式、回転式または固定式乾燥装置、特に、IR(赤外線)ベルト式乾燥装置を利用して行なわれてもよい。
【0034】
本発明の方法の工程(3)において、乾燥された金属ペーストを焼成して種グリッドカソードを形成する。工程(3)の焼成は、例えば1〜5分間行なわれてもよく、シリコンウエハは、700〜900℃の範囲のピーク温度に達する。焼成は、例えば単一または多領域ベルト炉、特に、多領域IRベルト炉を利用して実施されてもよい。焼成は不活性ガス雰囲気中でまたは酸素の存在下で、例えば、空気の存在下で行なわれてもよい。焼成の間に、不揮発性有機材料を含有する有機物および乾燥の間に蒸発されなかった有機部分は、除去されてもよく、すなわち燃焼および/または炭化されてもよく、特に、燃焼されてもよい。焼成の間に除去された有機物は、有機溶剤、場合により存在している有機ポリマー、場合により存在している有機添加剤の他、場合により存在している金属−有機化合物の有機部分を含有する。焼成の間にさらなる工程、すなわち、ガラスフリットを導電性金属粉末と共に焼結することが行なわれる。金属ペーストがARC層をエッチし、ファイアスルーし、シリコン基板との電気的接触を形成する。
【0035】
既に記載されたように、焼成は、シリコンウエハに適用された裏面金属ペーストと一緒にいわゆる同時焼成として行なわれてもよい。
【0036】
本発明の方法の工程(3)においてそのように形成された種グリッドカソードは導電性であり、後続の方法工程(4)を首尾よく行なうことを可能することができる。すなわち、種グリッドカソードは、方法工程(4)の間に銀を電気めっきされて前面グリッドカソードを形成することができる。
【0037】
本発明の方法の工程(4)において、種グリッドカソードを提供されたシリコンウエハをLIP法にかけ、それによって銀を種グリッドカソード上に堆積させる。最後に、シリコンウエハをLIP浴に浸漬し、種グリッドカソードをその上に有する浸漬されたシリコンウエハの前面が照明される。外部電源へのシリコンウエハの裏面の接続およびLIP浴の銀含有量を一定に保つために取られた処置に関して、「背景技術」の欄を参照する。LIP浴は、カソードに堆積可能な形態で銀を含有する水浴である。典型的に、LIP浴は、例えば8〜11、特に、9〜10.5の範囲のアルカリ性のpH(従来のpH計を利用して測定される)を有する。例えば、ハロゲンまたは蛍光ランプが照明目的で使用されてもよい。所望の量の銀がLIP浴から種グリッドカソード上に堆積されるまで、すなわちグリッドカソードが形成されるまで、照明が行なわれる。本発明の方法のこの工程(4)の間に、銀の堆積によって、工程(3)において得られたグリッドの増大がもたらされる。例えば、平行な指線と指線と直角に交わる2つ以上の平行な母線とを含むグリッドの場合、指線の層厚さは、例えば5〜30μm増加してもよく、それらの幅は例えば10〜100μm増加してもよく、母線の層厚さは例えば5〜30μm増加してもよい。母線の幅の増大は、それらの初めの幅が例えば1〜3mmであるとすると、言及する価値はない。
【0038】
LIP法が終了した後、前面グリッドカソードを提供されたシリコンウエハをLIP浴から取り出し、水で洗浄してLIP浴残留物を除去し、乾燥させる。
【0039】
本発明の方法によって製造された前面グリッドカソードを提供されたシリコン太陽電池の電気効率の前述のさらなる改良は、LIP法の工程(4)を実施することの単なる結果ではない。理論に縛られずに、そして十分詳細には調査されていないが、前面種グリッドカソードの適用のために使用された金属ペーストに含有されたガラスフリットの組成が手掛かりであると考えられる。前記ガラスフリット組成物は、LIP法の工程(4)における銀の堆積とガラスの溶解とのバランスの良い比率を可能にし、良好な導電率およびシリコン基板との接触抵抗の低い、同程度に密度の高い構造を有するグリッドカソードを形成する結果をもたらすと考えられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型領域、n型領域、p−n接合および前面にARC層を有するシリコンウエハの前記前面でのグリッドカソードの製造方法であって、
(1)前面にARC層を有するシリコンウエハを提供する工程と、
(2)前記シリコンウエハの前記前面の前記ARC層に金属ペーストを前面グリッド電極パターンとして塗布して乾燥させる工程と、
(3)前記金属ペーストを焼成して種グリッドカソードを形成する工程と、
(4)前記種グリッドカソードを設けた前記シリコンウエハをLIP法にかけることによって前記種グリッドカソード上に銀を堆積させる工程とを含み、
前記金属ペーストが、有機ビヒクルと、(a)ニッケル、銅および銀からなる群から選択される少なくとも1種の導電性金属粉末90〜98重量%と、(b)PbO 47.5〜64.3重量%、SiO2 23.8〜32.2重量%、Al23 3.9〜5.4重量%、TiO2 2.8〜3.8重量%およびB23 6.9〜9.3重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1種のガラスフリット0.25〜8重量%とを含む無機含有量とを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種のガラスフリットが、PbO 50.3〜61.5重量%、SiO2 25.2〜30.8重量%、Al23 4.2〜5.2重量%、TiO2 3.0〜3.6重量%およびB23 7.3〜8.9重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のガラスフリットが、PbO 53.1〜58.7重量%、SiO2 26.6〜29.4重量%、Al23 4.5〜4.9重量%、TiO2 3.1〜3.5重量%およびB23 7.7〜8.5重量%を含有するガラスフリットからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PbO、SiO2、Al23、TiO2およびB23の重量パーセントの合計が100重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記無機含有量が(a)前記少なくとも1種の導電性金属粉末92〜98重量%と(b)前記少なくとも1種のガラスフリット1.5〜4重量%とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の導電性金属粉末が銀粉末である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属ペーストが無機成分40〜95重量%と有機ビヒクル5〜60重量%とを含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属ペーストが、ペンによる書き込み、ジェット印刷、ステンシル印刷およびスクリーン印刷からなる群から選択される方法によって塗布される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記前面グリッド電極パターンが(i)細い平行な指線と(ii)前記指線と直角に交わる2つ以上の平行な母線とを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記LIP法が、前記シリコンウエハをLIP浴に浸漬する工程と、前記種グリッドカソードをその上に有する前記浸漬されたシリコンウエハの前記前面を照明する工程とを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記LIP浴が、8〜11のpHを有すると共にカソードに堆積可能な形態で銀を含有する水浴である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法によって製造された前面グリッドカソード。
【請求項13】
ARC層をその前面に有するシリコンウエハと請求項12に記載の前面グリッドカソードとを含む、シリコン太陽電池。

【公表番号】特表2012−531752(P2012−531752A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517820(P2012−517820)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/040147
【国際公開番号】WO2010/151862
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】