説明

グリルシャッタ装置

【課題】シャッタ機構による流量制御の効用を確保しつつ、複数の熱交換器を安定して機能させることのできるグリルシャッタ装置を提供すること。
【解決手段】グリルシャッタ装置10は、エンジン用のラジエータ5及びハイブリッドシステム用のラジエータ6を備える車両において、グリル開口部から流れ込む空気をシャッタ機構11を迂回してエンジンルーム内に取り入れるとともに特定の熱交換器としてのラジエータ6に誘導可能な迂回取入口21を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリルシャッタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体前部のグリル開口部に設けられたシャッタ機構の開閉動作に基づいて、そのグリル開口部からエンジンルーム内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
即ち、例えば、高速走行時、シャッタ機構を閉状態としてエンジンルーム内への空気の流入を制限することにより、その空力性能(例えば「Cd値」等)を向上させることができる。また、エンジン始動時には、そのラジエータに導入する流量を抑えることで、その暖気時間を短縮することができる。そして、エンジン温度が上昇傾向にある場合には、シャッタ機構を開状態としてエンジンルーム内に流れ込む流量を増やすことにより、そのエンジン温度を適切に管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−139519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常、エンジンルーム内には、例えば、エアコンのコンデンサ等、様々な熱交換器が設けられている。そして、これらの熱交換器もまた、上記のようなエンジン用のラジエータと同様、そのグリル開口部から流れ込む空気が当たることで、その機能が担保されている。
【0006】
しかしながら、これらの各熱交換器が必要とする空気流量、及びその変化のタイミングは、必ずしも一様ではない。例えば、エンジン及びモータの駆動力を利用する所謂ハイブリット車両では、その電力供給系(例えば、インバータ等)に急峻な温度変化が生じやすい。このため、そのハイブリッドシステム用のラジエータに当たる空気流量が不足するおそれがある等、従来のグリルシャッタ装置では、複数の熱交換器を安定的に機能させることが難しいという問題があり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、シャッタ機構による流量制御の効用を確保しつつ、複数の熱交換器を安定して機能させることのできるグリルシャッタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車体前部のグリル開口部に設けられたシャッタ機構の開閉動作に基づいて、前記グリル開口部から前記車体内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置であって、前記グリル開口部から流れ込む空気を前記シャッタ機構を迂回して前記車体内に取り入れるとともに該車体内に設けられた特定の熱交換器に誘導可能な迂回取入口を有すること、を要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、シャッタ機構の作動状態に依らず、安定的に、そのグリル開口部から流れ込む空気を特定の熱交換器に導くことができる。その結果、空力性能の向上等といったシャッタ機構の開閉動作による流量制御の効用を確保しつつ、その特定の熱交換器を安定して機能させることができる。例えば、ハイブリッドシステム用のラジエータが必要とする空気流量は、車両の走行状態に応じて大きく変動する傾向がある。従って、このような車両においては、そのハイブリッドシステム用のラジエータを「特定の熱交換器」とすることで、より顕著な効果を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記迂回取入口は、前記シャッタ機構の周縁部に設けられること、を要旨とする。
即ち、シャッタ機構による流量制御の効用を考慮して、そのグリル開口部内におけるシャッタ機構の配置を決定する。そして、そのシャッタ機構の周縁部に迂回取入口を配置することで、当該迂回取入口を設けることにより生ずる流量制御の効用低下を抑えつつ、効率良く、車体内に空気を取り入れることができる。
【0011】
例えば、空力性能の向上を考慮した場合、シャッタ機構は、その最も多くの空気が流入する部分に配置することが好ましい。この点を踏まえ、車体前方に開口するグリル開口部において、その開口領域の中央部分にシャッタ機構を設ける。そして、そのシャッタ機構の周縁部に迂回取入口を設けることで、空力性能の低下を抑えつつ、効率よく、グリル開口部から流れ込む空気を車体内に取り入れることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記迂回取入口は、前記車体の幅方向において前記シャッタ機構の側方に設けられること、を要旨とする。
即ち、大型の車両用熱交換器は、多くの場合、車体の幅方向に延びる横長の形状を有している。そのため、複数の熱交換器を車体内に収容する場合には、これらの熱交換器が上下方向に配置される可能性が高い。この点、上記構成によれば、何れの熱交換器に対しても、その迂回取入口から取り入れた空気を導くことができる。そして、この汎用性を活かして様々な車両に搭載することができる。
【0013】
また、熱交換器が収容される車体内空間の幅方向中央部には、例えば、エンジンやその補機類等、多くの収容物が配置されている。このため、グリル開口部の幅方向中央部分から車体内に空気を取り入れるよりも、その幅方向の側方部分から空気を取り入れた方が乱流になりにくい。従って、上記構成によれば、より効果的に空力性能の低下を抑えることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記迂回取入口は、前記シャッタ機構の上方又は下方の少なくとも何れかに設けられること、を要旨とする。
上記構成によれば、複数の熱交換器が上下方向に配置された車両において、その特定の熱交換器に対し、より近い位置に迂回取入口を配置することができる。その結果、効率よく、その特定の熱交換器に空気を誘導することができる。また、その誘導する空気を熱交換器の幅方向中央部分に集めやすい。そして、これにより、効果的に熱交換器を機能させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記迂回取入口には、前記特定の熱交換器に前記空気を誘導する誘導フィンが設けられること、を要旨とする。
上記構成によれば、簡素な構成にて、その迂回取入口から取り入れた空気を特定の熱交換器に誘導することができる。また、その配置や形状等といった誘導フィンの設定を変更するだけで、その車室内に取り入れる空気の誘導方向を変えることができる。その結果、熱交換器の配置が異なる様々な車両について、容易且つ簡便に対応することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シャッタ機構による流量制御の効用を確保しつつ、複数の熱交換器を安定して機能させることが可能なグリルシャッタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかるグリルシャッタ装置が搭載された車両の概略構成を示す模式図。
【図2】第1の実施形態におけるグリルシャッタ装置の正面図。
【図3】第1の実施形態におけるグリルシャッタ装置及びそのラジエータとの関係を示す斜視図。
【図4】グリル開口部内に設けられたシャッタ機構(主取入口)と迂回取入口との位置関係を模式的に示す説明図。
【図5】第1の実施形態における迂回取入口及び誘導フィンのA−A断面図。
【図6】第1の実施形態における迂回取入口及び誘導フィンのB−B断面図。
【図7】第2の実施形態におけるグリルシャッタ装置の正面図。
【図8】第2の実施形態におけるグリルシャッタ装置及びそのラジエータとの関係を示す斜視図。
【図9】第2の実施形態における迂回取入口及び誘導フィンのC−C断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す車両1において、車体2の内部に形成されたエンジンルーム3には、そのエンジン4を冷却するための熱交換器として、ラジエータ5が収容されている。また、本実施形態の車両1は、走行状態に応じてモータ(図示略)を駆動源とする所謂ハイブリッド車両として構成されている。そして、エンジンルーム3内には、そのハイブリッドシステム(主に電力供給系)を冷却するための熱交換器として、ラジエータ6が収容されている。
【0019】
また、車体2の前部(同図中、左側の端部)には、車両前方の外部空間と車体2の内部空間とを連通するグリル開口部7が形成されている。具体的には、グリル開口部7は、バンパー8の下方に形成されている。そして、グリル開口部7の開口端7aには、その意匠面(ロアグリル)を構成するグリルパネル9が取着されている。
【0020】
上記各ラジエータ5,6は、このグリル開口部7からエンジンルーム3に流れ込む空気が当たるように、エンジン4の前方に配置されている。具体的には、これらの各ラジエータ5,6は、車体2の幅方向に延びる横長の形状を有してエンジンルーム3の幅方向中央部分に配置されている。そして、本実施形態の車両1は、そのグリル開口部7からエンジンルーム3内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置10を備えている。
【0021】
詳述すると、グリルシャッタ装置10は、車体2の下部構造体12に固定されることによりグリル開口部7から流れ込む空気の流路を形成する枠状のフレーム13と、このフレーム13の枠内に設けられたシャッタ機構11とを備えている。
【0022】
図2〜図4に示すように、フレーム13は、車体2の前方に開口するグリル開口部7の開口領域α(図4参照)に対応して、車体2の幅方向(図2及び図4中、左右方向)に延びる横長に形成されている。また、フレーム13の枠内には、その長手方向(幅方向)に延びる横長の主取入口15が形成されている。具体的には、主取入口15は、フレーム13の幅方向略中央部に形成されている。そして、シャッタ機構11は、この主取入口15内に整列配置された複数の可動フィン17と、これらの各可動フィン17を駆動するアクチュエータ18とにより構成されている。
【0023】
さらに詳述すると、図2及び図3に示すように、アクチュエータ18は、略柱状の外形を有して主取入口15の幅方向略中央部に設けられている。そして、このアクチュエータ18により区画された左右の開口部15A,15B内には、それぞれ、二列の可動フィン17が配設されている。
【0024】
具体的には、各可動フィン17は、主取入口15の幅方向に延びる長尺略平板状のフィン部19を有している。また、各可動フィン17は、それぞれ、その対応するアクチュエータ18の側面18a,18b及びこれに対向する主取入口15の内側面15a,15b間に掛け渡された回動軸20を有している。そして、アクチュエータ18は、これらの各回動軸20を駆動することにより各可動フィン17を回動させることが可能となっている。
【0025】
即ち、本実施形態のシャッタ機構11は、グリル開口部7から流れ込む空気の流入方向に対してフィン部19が並行する状態となる方向(図1参照、時計回り方向)に各可動フィン17が回動することにより開状態となる。また、空気の流入方向に対してフィン部19が交差する状態となる方向(図1参照、反時計回り方向)に各可動フィン17が回動することにより閉状態となる。そして、各可動フィン17が全閉状態に対応する回動位置にある場合には、その隣り合う各可動フィン17の先端(フィン部19のフィン先)が重なり合うことで、主取入口15を閉塞することが可能になっている。
【0026】
本実施形態のグリルシャッタ装置10は、このような各可動フィン17の回動をアクチュエータ18により制御する。そして、その各可動フィン17の回動によるシャッタ機構11の開閉動作に基づいて、グリル開口部7からエンジンルーム3内に流れ込む空気の流量を制御することが可能となっている。
【0027】
また、グリルシャッタ装置10は、上記シャッタ機構11を迂回して、そのグリル開口部7から流れ込む空気をエンジンルーム3内に取り入れることが可能な迂回取入口21を有している。そして、本実施形態の車両1は、この迂回取入口21から取り入れた空気を上記ラジエータ6に導くことで、シャッタ機構11の作動状態に依らず、安定的に、そのハイブリッドシステムを冷却することが可能になっている。
【0028】
詳述すると、迂回取入口21は、フレーム13の枠内における主取入口15の幅方向両側に設けられている。また、エンジンルーム3内において、ハイブリッドシステム用のラジエータ6は、エンジン4用のラジエータ5の上方に設けられている。そして、各迂回取入口21には、当該各迂回取入口21から取り入れた空気をハイブリッドシステム用のラジエータ6に誘導する複数の誘導フィン23が設けられている。
【0029】
図5及び図6に示すように、各誘導フィン23は、略板状の外形を有している。また、各迂回取入口21において、各誘導フィン23は、上下方向に略均等間隔で整列配置されている。そして、各誘導フィン23は、各迂回取入口21に流入する空気の流れを制御するためのフィン面23aを有している。
【0030】
具体的には、図5に示すように、フィン面23aは、空気の流入方向(同図中、左側から右側に向かう方向)に沿って、車体2の上下方向(同図中、上下方向)、下側から上側に向かって傾斜するように形成されている。そして、図6に示すように、フィン面23aは、更に、その空気の流入方向(同図中、下側から上側に向かう方向)に沿って、車体2の幅方向(同図中、左右方向)、その側方から中央に向かって傾斜するように形成されている。
【0031】
即ち、各迂回取入口21に流入した空気は、各誘導フィン23のフィン面23aに沿うようにして各迂回取入口21を通過する。そして、これにより、当該各迂回取入口21からエンジンルーム3内に取り入れられた空気がハイブリッドシステム用のラジエータ6に誘導される。
【0032】
また、これらの各迂回取入口21は、そのグリル開口部7から流れ込む空気の流入方向において、各誘導フィン23の上流側及び下流側に重複して開口する領域を有していない。換言すると、空気の流入方向と同一の方向から各迂回取入口21を見た場合、各誘導フィン23の隙間からエンジンルーム3内が見えないようになっている。そして、本実施形態では、これにより、各迂回取入口21を介して直線的にグリル開口部7からエンジンルーム3内に空気が流れ込むことを防止する構成になっている。
【0033】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)迂回取入口21を設けることで、シャッタ機構11の作動状態に依らず、安定的に、そのグリル開口部7から流れ込む空気をハイブリッドシステム用のラジエータ6に導くことができる。その結果、空力性能の向上等といったシャッタ機構11の開閉動作による流量制御の効用を確保しつつ、その熱交換に必要な空気流量が大きく変動するラジエータ6を安定して機能させることができる。
【0034】
(2)また、シャッタ機構11による流量制御の効用を考慮して、そのグリル開口部7内におけるシャッタ機構11の配置を決定する。そして、そのシャッタ機構11の周縁部に迂回取入口21を配置することで、当該迂回取入口21を設けることにより生ずるシャッタ機構11を用いた流量制御の効用低下を抑えることができる。
【0035】
例えば、空力性能の向上を考慮した場合、シャッタ機構11は、最も多くの空気が流入する部分に配置することが好ましい。この点を踏まえ、車体2の前方に開口するグリル開口部7において、その開口領域αの中央部分にシャッタ機構11を設ける(図4参照)。即ち、グリル開口部7内に、その開口領域αに対応した枠形状を有するフレーム13を設けるとともに、その幅方向略中央部に形成された主取入口15内にシャッタ機構11を設ける。そして、この主取入口15の幅方向両側に迂回取入口21を設けることにより、その空力性能の低下を抑えつつ、効率良く、グリル開口部7から流れ込む空気をエンジンルーム3内に取り入れることができる。
【0036】
(3)特に、エンジンルーム3の幅方向中央部には、例えばエンジン4やその補機類等、多くの収容物が配置されている。このため、グリル開口部7の幅方向中央部分からエンジンルーム3内に空気を取り入れるよりも、その幅方向の側方部分から空気を取り入れた方が乱流になりにくい。従って、上記のようにシャッタ機構11の側方(幅方向両側)に迂回取入口21を設ける構成とすることで、より効果的に空力性能の低下を抑えることができる。
【0037】
また、上記ラジエータ5,6のような大型の車両用熱交換器は、多くの場合、車体2の幅方向に延びる横長の形状を有している。このため、エンジンルーム3内においては、複数の熱交換器が上下方向に配置される可能性が高い。この点、上記構成によれば、上下何れの熱交換器に対しても、その迂回取入口21から取り入れた空気を導くことができる。例えば、上記実施形態の車両1における配置とは反対に、ハイブリッドシステム用のラジエータ6がエンジン4用のラジエータ5の下方に配置された車両についても、僅かな変更を加えるだけで容易に対応することができる。そして、この汎用性を活かして様々な車両に搭載することができる。
【0038】
(4)迂回取入口21には、複数の誘導フィン23が設けられる。これにより、簡素な構成にて、その迂回取入口21から取り入れた空気をハイブリッドシステム用のラジエータ6に誘導することができる。また、その配置や形状等といった各誘導フィン23の設定を変更するだけで、そのエンジンルーム3内に取り入れる空気の誘導方向を変えることができる。その結果、上記のように各ラジエータ5,6の配置が逆転した車両についても容易且つ簡便に対応することができる。
【0039】
(5)各迂回取入口21は、そのグリル開口部7から流れ込む空気の流入方向において、各誘導フィン23の上流側及び下流側に重複して開口する領域を有しない。これにより、各迂回取入口21を介して直線的にグリル開口部7からエンジンルーム3内に空気が流れ込むことを防止することができる。その結果、これら各迂回取入口21を介してエンジンルーム3に取り入れられる空気流量を適切なものとして、その空力性能の低下を抑えることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0041】
図7及び図8に示すように、本実施形態のグリルシャッタ装置30は、フレーム33の前面33aと一体に形成されたグリルパネル34を備えている。即ち、このグリルシャッタ装置30は、グリル開口部7の開口端7aに取着される(図1参照)。また、主取入口35を構成する左右の開口部35A,35B内には、それぞれ三列の可動フィン37が設けられている。そして、本実施形態のシャッタ機構31もまた、上記第1の実施形態のシャッタ機構11と同様、これら各可動フィン37の回動に基づいて開閉動作するようになっている。
【0042】
また、本実施形態では、シャッタ機構31が設けられた主取入口35の幅方向両側は、封止パネル39により閉塞された非開口部となっている。そして、迂回取入口41は、フレーム33の下方に設けられている。
【0043】
詳述すると、このグリルシャッタ装置30が搭載される車両において、ハイブリッドシステム用のラジエータ6は、エンジン用のラジエータ5の下方に配置されている。そして、迂回取入口41は、このハイブリッドシステム用のラジエータ6に対応する位置に設けられている。
【0044】
具体的には、迂回取入口41は、フレーム33の幅方向(図7参照、左右方向)、即ち車体2の幅方向に沿って延びる横長の枠形状を有している。そして、迂回取入口41には、複数の誘導フィン43が設けられている。
【0045】
さらに詳述すると、各誘導フィン43は、迂回取入口41の幅方向に沿うように整列配置されている。また、図9に示すように、各誘導フィン43は、それぞれ、その空気の流入方向(同図中、下側から上側に向かう方向)に沿って、車体2の幅方向(同図中、左右方向)、側方から中央側に向かって傾斜するフィン面43aを有している。そして、本実施形態では、迂回取入口41の幅方向において、その中央部から離間した位置にある誘導フィン43ほど、そのフィン面43aの傾斜が大きくなるように設定されている。
【0046】
即ち、迂回取入口41に流入した空気は、各誘導フィン43のフィン面43aに沿うようにして各迂回取入口41を通過する。そして、これにより、当該各迂回取入口41から取り入れた空気を効率よくハイブリッドシステム用のラジエータ6に誘導することが可能となっている。
【0047】
以上、本実施形態のグリルシャッタ装置30を採用することで、上記第1の実施形態におけるグリルシャッタ装置10と同様の効果を得ることができる。そして、その特定の熱交換器であるハイブリッドシステム用のラジエータ6に対して、より近い位置に迂回取入口41が配置されることで、効率よく、当該ラジエータ6に空気を誘導することができる。
【0048】
さらに、迂回取入口41の幅方向において、その中央部から離間した位置にある誘導フィン43ほど、そのフィン面43aの傾斜が大きくなるように設定することにより、その誘導する空気をラジエータ6の幅方向中央部分に集めることができる。その結果、より効果的にラジエータ6を機能させることができる。
【0049】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、グリルシャッタ装置10,30は、エンジン用のラジエータ5及びハイブリッドシステム用のラジエータ6を備える車両に搭載される。そして、そのグリル開口部7から流れ込む空気をシャッタ機構11,31を迂回してエンジンルーム3内に取り入れるとともに特定の熱交換器としてのラジエータ6に誘導可能な迂回取入口21,41を備えることとした。
【0050】
しかし、これに限らず、車体内に複数の熱交換器を有する車両において、その何れかの熱交換器を「特定の熱交換器」とする。そして、グリル開口部から流れ込む空気をシャッタ機構を迂回して車体内に取り入れるとともに特定の熱交換器に誘導可能な迂回取入口を備える構成であればよい。即ち、ハイブリッドシステム用のラジエータ以外の熱交換器を「特定の熱交換器」としてもよく、また、その種類を問わず複数の熱交換器を「特定の熱交換器」としてもよい。
【0051】
・さらに、熱交換器が配置される車体の内部空間は、必ずしもエンジンルームでなくともよい。即ち、その熱交換器がグリル開口部から空気を取り入れ可能な車体の内部空間に配置されていればよく、例えば、車体の後部又は中央にエンジンが配置された車両、或いは電気自動車等に適用してもよい。
【0052】
・上記各実施形態では、迂回取入口21,41に複数の誘導フィン23,43を設けることにより、当該迂回取入口21,41からエンジンルーム3内に取り入れた空気を特定の熱交換器としてのラジエータ6に導くこととした。しかし、これに限らず、迂回取入口の後方に、当該迂回取入口から取り入れた空気を誘導するための誘導路(ダクト)を形成してもよい。
【0053】
・また、上記各実施形態では、各誘導フィン23,43におけるフィン面23a,43aの傾斜により、その迂回取入口21,41からエンジンルーム3内に取り入れた空気を誘導することとした。しかし、これに限らず、各誘導フィン23,43や迂回取入口21,41の内壁面に突起や凹部を形成することにより、その空気の流れを制御する構成としてもよい。
【0054】
・上記各実施形態では、シャッタ機構11,31は、各可動フィン17,37の回動に基づいて開閉動作することとした。しかし、これに限らず、シャッタ機構の形態については、このような所謂回動式の他、例えば、所謂スライド式、或いはその可動体が揺動するもの等であってもよい。
【0055】
・また、上記第1の実施形態では、主取入口15の幅方向略中央部にアクチュエータ18が設けられ、これにより区画された左右の開口部15A,15B内に、それぞれ、二列の可動フィン17が配設されることとした。また、上記第2の実施形態では、その各開口部35A,35B内に、それぞれ、三列の可動フィン37が配設されることとした。しかし、各可動フィン及びアクチュエータの配置は、必ずしもこれに限るものではない。例えば、主取入口の幅方向端部にアクチュエータを配置してもよい。また、各可動フィンの本数や配列を変更してもよく、例えば、各可動フィンが主取入口の上下方向に掛け渡された回動軸を有する等によって、縦型に配列される構成に具体化してもよい。
【0056】
・上記第1の実施形態では、シャッタ機構11が設けられた主取入口15の幅方向両側にそれぞれ迂回取入口21を設け、上記第2の実施形態では、同じくシャッタ機構31が設けられた主取入口35の下方に迂回取入口41を設けることとした。しかし、これに限らず、例えば、上記第1の実施形態のように、ハイブリッドシステム用のラジエータ6がエンジン4用のラジエータの上方に配置された車両に搭載されるものについては、主取入口の上方に迂回取入口を設けてもよい。また、主取入口の幅方向において、その側方の何れか一方に迂回取入口が設けられる構成であってもよい。そして、主取入口の幅方向及び上下方向の各位置を組み合わせて迂回取入口を配置する構成としてもよい。即ち、迂回取入口は、シャッタ機構の周縁部に設けることが好ましく、その周縁部の何れに配置するかについては、適宜変更してもよい。但し、これは、シャッタ機構から離間した位置に迂回取入口が設けられた構成を否定するのではない。そして、このような構成としても一定の効果を得ることができる。
【0057】
・上記第1の実施形態では、各迂回取入口21は、そのグリル開口部7から流れ込む空気の流入方向において、各誘導フィン23の上流側及び下流側に重複して開口する領域を有しないこととした。しかし、これに限らず、各誘導フィン23の上流側及び下流側に重複して開口する領域を有する、即ち空気の流入方向と同一の方向から各迂回取入口21を見た場合、その隙間からエンジンルーム3内が見えるように各誘導フィン23を配置してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…車両、2…車体、3…エンジンルーム、4…エンジン、5,6…ラジエータ、7…グリル開口部、7a…開口端、α…開口領域、9,34…グリルパネル、10,30…グリルシャッタ装置、11,31…シャッタ機構、13,33…フレーム、15,35…主取入口、17,37…可動フィン、18…アクチュエータ、21,41…迂回取入口、23,43…誘導フィン、23a,43a…フィン面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部のグリル開口部に設けられたシャッタ機構の開閉動作に基づいて、前記グリル開口部から前記車体内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置であって、
前記グリル開口部から流れ込む空気を前記シャッタ機構を迂回して前記車体内に取り入れるとともに該車体内に設けられた特定の熱交換器に誘導可能な迂回取入口を有すること、を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のグリルシャッタ装置において、
前記迂回取入口は、前記シャッタ機構の周縁部に設けられること、
を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のグリルシャッタ装置において、
前記迂回取入口は、前記車体の幅方向において前記シャッタ機構の側方に設けられること、を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のグリルシャッタ装置において、
前記迂回取入口は、前記シャッタ機構の上方又は下方の少なくとも何れかに設けられること、を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のグリルシャッタ装置において、
前記迂回取入口には、前記特定の熱交換器に前記空気を誘導する誘導フィンが設けられること、を特徴とするグリルシャッタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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