説明

グリルシャッタ装置

【課題】可動フィンが全閉状態となることにより得られる効用の低下を抑制しつつ、必要な空気を車体内に取り入れることのできるグリルシャッタ装置を提供すること。
【解決手段】グリルシャッタ装置10は、その各可動フィン17が全閉状態にあるとき、当該各可動フィン17が、グリル開口部から流れ込む空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路23を形成するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリルシャッタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体前部のグリル開口部に設けられた可動フィンの開閉動作に基づいて、そのグリル開口部から車体内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
即ち、例えば、高速走行時、可動フィンを閉状態として車体内への空気の流入を制限することにより、その空力性能(例えば「Cd値」等)を向上させることができる。また、エンジン始動時には、そのラジエータに導入する流量を抑えることで、その暖気時間を短縮することができる。そして、エンジン温度が上昇傾向にある場合には、可動フィンを開状態としてエンジンルーム内に流れ込む流量を増やすことにより、そのエンジン温度を適切に管理することができる。
【0004】
また、このようなグリルシャッタ装置の多くは、並列に配置された複数の可動フィンを有している。そして、これら各可動フィンが全閉状態にあるときには、それぞれ、その先端(フィン先)が隣り合う列の可動フィンに重なり合うことにより、その車体内に流れ込む空気を効果的に遮断することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−139519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような高い遮断性能を有するが故に、例えば、システム故障時等、各可動フィンが全閉状態のまま固着した場合には、その車体内に流入する空気の流量が不足する可能性がある。その結果、エンジン等、その発熱部位の冷却性能が低下するおそれがあり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、可動フィンが全閉状態となることにより得られる効用の低下を抑制しつつ、必要な空気を車体内に取り入れることのできるグリルシャッタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車体前部のグリル開口部に設けられた可動フィンの開閉動作に基づいて、前記グリル開口部から前記車体内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置であって、前記可動フィンが全閉状態にあるとき、該可動フィンが前記グリル開口部から流れ込む空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路を形成することにより、前記全閉状態においても前記取入流路を介して前記車体内に空気を取り入れ可能としたこと、を要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、その全閉状態においても、取入流路を介して車体内に空気を取り入れることが可能になる。その結果、例えば、システム故障等により全閉状態のまま可動フィンの回動位置が固着した場合であっても、効率良く、エンジン等の発熱部位を冷却することができる。
【0010】
また、例えば、空力性能の向上等、可動フィンが全閉状態となることにより得られる効用を考慮した場合、積極的に空気を取り入れる必要性のない場合には、その取入流路を介した空気の流れを抑制することが望ましい。
【0011】
この点、上記のように取入流路の延伸方向を空気の流入方向に対して交差する方向とすることで、車両が走行することにより生ずる取入流路を経由した空気の流れを抑えて、グリル開口部から流れ込む空気の大部分を空力性能の向上に役立てることができる。そして、その取入流路から漏れるように流入する空気を利用して、車室内の発熱部位を冷却することができる。尚、より積極的に空気を取り入れる必要性がある場合には、更に、車体内に設けられたファン等を用いることによって、強制的に、その取入流路を経由した空気の流れを作り出すことも可能である。従って、上記構成によれば、可動フィンが全閉状態となることにより得られる効用の低下を抑制しつつ、必要な空気を車体内に取り入れることができるようになる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記取入流路は、前記空気の流入方向において、前記可動フィンの上流側及び下流側に重複して開口する領域を有していないこと、を要旨とする。
即ち、空気の流入方向と同一の方向(上流側)から取入流路を見た場合、当該取入流路を介して車体内が見えないようにする。このような構成とすることで、取入流路を介して直線的にグリル開口部から車体内に空気が流れ込むことを防止することができる。そして、これにより、その取入流路を介して車体内に取り入れる空気の流量を適切なものとすることができ、その結果、当該取入流路を形成することにより生ずる効用低下を抑えることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記可動フィンの閉動作を規制して、該可動フィンのフィン先に前記取入流路となる隙間を形成する規制手段を備えること、を要旨とする。
請求項4に記載の発明は、前記規制手段は、前記可動フィンに当接して前記閉動作を規制するストッパであること、を要旨とする。
【0014】
即ち、全閉状態にある可動フィンのフィン先は、グリル開口部から流れ込む空気の流入方向に交差するものとなる。従って、上記各構成によれば、容易且つ簡素な構成にて、その空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路を形成することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、並列に配置された複数の前記可動フィンを備え、前記各可動フィンは、その回動により前記開閉動作するとともに、該各可動フィンが前記全閉状態にあるとき、それぞれ隣り合う列の可動フィンとの間に前記取入流路を形成すること、を要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、並列に配置された複数の可動フィンを備える構成であれば、大きな変更を加えることなく、その全閉状態に対応する回動位置を規定するだけで、空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路を形成することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記各可動フィンは、それぞれ隣り合う列の可動フィンに対して前記流入方向にオフセットされた回動軸を有すること、を要旨とする。
請求項7に記載の発明は、前記各可動フィンは、前記各可動フィンが前記全閉状態にあるとき、そのフィン先が回動軸に対して前記流入方向にオフセットされた位置に配置されるように形成されること、を要旨とする。
【0018】
即ち、可動フィンの回動位置を全閉状態に対応する位置で保持するためには、その回動軸の上下にバランスよく空気が当たるようにすることが望ましい。この点、上記各構成によれば、その隣り合う各列の可動フィン間に取入流路を形成しつつ、空気の流入方向に対し、より大きな交差角度で各可動フィンを配置することができる。そして、これにより、回動軸の上下にバランスよく空気が当たるようになることで、取入流路を介して必要な空気を車体内に取り入れつつ、その全閉状態に対応する各可動フィンの回動位置を安定的に保持することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、車体前部のグリル開口部に設けられた可動フィンの開閉動作に基づいて、前記グリル開口部から前記車体内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置であって、前記可動フィンに貫通孔を形成することにより、前記可動フィンが全閉状態にあるときにおいても、前記貫通孔を介して前記車体内に前記空気を取り入れ可能としたこと、を要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、各可動フィンが全閉状態にある場合においても、貫通孔を介して車体内に空気を取り入れることができる。また、その取り入れ可能な空気の流量は、貫通孔の数及び開口形状、或いは内径や形成位置等によって自在に制御することができる。従って、これらの要素を適切に設定することにより、可動フィンが全閉状態となることにより得られる効用の低下を抑制しつつ、必要な空気を車体内に取り入れることができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、前記貫通孔は、前記可動フィンが全閉状態にあるとき、前記グリル開口部から流れ込む空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路を形成すること、を要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、効果的に、その車両が走行することにより生ずる貫通孔を経由した空気の流れを抑制することができる。これにより、貫通孔を介して車体内に取り入れる空気の流量を適切なものとすることができ、その結果、可動フィンに貫通孔を形成することにより生ずる効用低下を抑えることができる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、前記貫通孔は、前記可動フィンが全閉状態にあるとき、前記空気の流入方向において、前記可動フィンの上流側及び下流側に重複して開口する領域を有していないこと、を要旨とする。
【0024】
即ち、空気の流入方向と同一の方向(上流側)から貫通孔を見た場合、当該貫通孔を介して車体内が見えないようにする。このような構成とすることで、貫通孔を介して直線的にグリル開口部から車体内に空気が流れ込むことを防止することができる。これにより、その貫通孔を介して車体内に取り入れる空気の流量を適切なものとすることができ、その結果、当該貫通孔を形成することにより生ずる効用低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、可動フィンが全閉状態となることにより得られる効用の低下を抑制しつつ、必要な空気を車体内に取り入れることが可能なグリルシャッタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかるグリルシャッタ装置が搭載された車両の概略構成を示す模式図。
【図2】第1の実施形態におけるグリルシャッタ装置の斜視図。
【図3】第1の実施形態における各可動フィンの断面図。
【図4】第2の実施形態におけるグリルシャッタ装置の斜視図。
【図5】第2の実施形態における各可動フィンの断面図。
【図6】(a)(b)別例の可動フィンの形状を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す車両1において、車体2の内部に形成されたエンジンルーム3には、そのエンジン4を冷却するためのラジエータ5a及びエアコン用のコンデンサ5bが収容されている。また、車体2の前部(同図中、左側の端部)には、車両前方の外部空間と車体2の内部空間とを連通するグリル開口部7が形成されている。そして、上記ラジエータ5a及びコンデンサ5bは、このグリル開口部7からエンジンルーム3に流れ込む空気が当たるように、エンジン4の前方に配置されている。
【0028】
また、ラジエータ5a及びコンデンサ5bの後方(同図中、右側)には、ファン6が設けられている。そして、このファン6が回転することにより、効率良く、ラジエータ5a及びコンデンサ5bに空気が流れるようになっている。
【0029】
本実施形態では、グリル開口部7は、バンパー8の下方に形成されている。また、グリル開口部7の開口端7aには、その意匠面(ロアグリル)を構成するグリルパネル9が取着されている。そして、本実施形態の車両1は、そのグリル開口部7からエンジンルーム3内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置10を備えている。
【0030】
詳述すると、グリルシャッタ装置10は、車体2の下部構造体12に固定されることによりグリル開口部7から流れ込む空気の流路を形成する枠状のフレーム13と、このフレーム13の枠内に整列配置された複数の可動フィン17とを備えている。
【0031】
図2に示すように、フレーム13は、車体2の前方に開口するグリル開口部7に対応して、車体2の幅方向に延びる横長に形成されている。また、フレーム13の枠内における幅方向略中央部には、略柱状の外形を有するアクチュエータ部18が設けられている。そして、このアクチュエータ部18により区画された左右の開口部13A,13B内には、それぞれ、二列の可動フィン17が並列に配設されている。
【0032】
具体的には、各可動フィン17は、フレーム13の幅方向に延びる長尺略平板状のフィン部19を有している。また、各可動フィン17は、それぞれ、その対応するアクチュエータ部18の側面18a,18b及びこれに対向するフレーム13の内側面13a,13b間に掛け渡された回動軸20を有している。そして、アクチュエータ部18は、これらの各回動軸20を駆動することにより各可動フィン17を回動させることが可能となっている。
【0033】
即ち、図1及び図3に示すように、各可動フィン17は、回動軸20を中心として、そのフィン部19の先端(フィン先21)が円弧状の軌跡を描くように回動する。そして、グリル開口部7から流れ込む空気の流入方向に対してフィン部19が並行する状態となる方向(各図中、時計回り方向)に回動することにより開状態となり、その流入方向に対してフィン部19が交差する状態となる方向(各図中、反時計回り方向)に回動することにより閉状態となる。
【0034】
本実施形態のグリルシャッタ装置10は、このような各可動フィン17の回動をアクチュエータ部18により制御する。そして、その各可動フィン17の回動による開閉動作に基づいて、グリル開口部7からエンジンルーム3内に流れ込む空気の流量を制御することが可能となっている。
【0035】
また、図3に示すように、グリルシャッタ装置10は、各可動フィン17が全閉状態にあるとき、これら各可動フィン17が、当該各可動フィン17の上流側(同図中、左側)と下流側(同図中、右側)とを連通する取入流路23を形成するように構成されている。そして、これらの取入流路23を経由することにより、その全閉状態においても、エンジンルーム3内に空気を取り入れることが可能となっている。
【0036】
詳述すると、フレーム13の枠内(図2参照、各開口部13A,13B内)において、各可動フィン17は、閉方向に回動することにより、上下方向に隣り合う各列の可動フィン17のフィン先21が、その空気の流入方向において、互いに重複する位置となるように配列されている。また、これら各可動フィン17のうち、下側に配置された各可動フィン17Aのフィン先21には、各可動フィン17の閉方向への回動に基づいて、その上側に配置された各可動フィン17Bのフィン先21に当接するストッパ25が設けられている。
【0037】
具体的には、各ストッパ25は、各可動フィン17Aにおける上側のフィン先21bに設けられている。即ち、各可動フィン17が閉方向に回動する際、当該各可動フィン17における下側のフィン先21aは空気の流入方向に沿う方向(同図中、左側から右側に向かう方向)に移動し、上側のフィン先21bは、空気の流入方向とは逆向き(同図中、右側から左側に向かう方向)に移動する。従って、各可動フィン17が閉方向に回動することにより、各可動フィン17Aにおける上側のフィン先21bに設けられた各ストッパ25が、各可動フィン17Bにおける下側のフィン先21aに当接する。そして、本実施形態では、この各ストッパ25より各可動フィン17の閉動作が規制される位置が、当該各可動フィン17の全閉状態に対応する回動位置となっている。
【0038】
さらに詳述すると、各ストッパ25は、突起状の外形を有して各可動フィン17Aのフィン先21bと略直交する方向に突設されている。そして、これらの各ストッパ25が各可動フィン17Bのフィン先21aに当接することにより、その上下方向に隣り合う各列の可動フィン17A,17Bのフィン先21間に、取入流路23となる隙間X1が形成される。
【0039】
即ち、各可動フィン17が全閉状態にあるとき、そのフィン部19は、グリル開口部7から流れ込む空気の流入方向に対して交差するように配置される。従って、上記のように各可動フィン17A,17Bのフィン先21に隙間X1を設定することにより、これら上下方向に隣り合う各列の可動フィン17A,17B間に、その空気の流入方向に交差する取入流路23が形成される。
【0040】
また、下側に配置された各可動フィン17Aの回動軸20は、上側に配置された各可動フィン17Bの回動軸20に対して、その空気の流入方向下流側(同図中、右側)に配置されている。即ち、本実施形態では、各可動フィン17(17A,17B)は、それぞれ隣り合う列の可動フィン17に対して空気の流入方向にオフセットされた回動軸20を有している。そして、これにより、全閉状態においては、その上下方向に隣り合う各列の可動フィン17A,17B間に取入流路23を形成しつつ、空気の流入方向に対し、より大きな交差角度で各フィン部19を配置することが可能となっている。
【0041】
さらに、各可動フィン17が全閉状態にあるとき、下側に配置された各可動フィン17Aにおける下側のフィン先21aとフレーム13の内側面13cとの間にも、隙間X2が形成される。また、フレーム13の内側面13cには、これら各可動フィン17Aよりも後方、即ち空気の流入方向下流側(同図中、右側)に、全閉状態にある各可動フィン17Aに対して略並行する方向に延びる突部26が形成されている。そして、これらの各突部26と各可動フィン17Aのフィン先21aとの間にも、その空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路23が形成されるようになっている。
【0042】
また、これらの各取入流路23は、そのグリル開口部7から流れ込む空気の流入方向において、各可動フィン17の上流側(同図中、左側)及び下流側(同図中、右側)に重複して開口する領域を有していない。即ち、空気の流入方向と同一の方向(上流側)から各取入流路23を見た場合、当該各取入流路23を介してエンジンルーム3内が見えないようになっている。
【0043】
本実施形態の車両1では、エンジン4の冷却を強化する必要性が生じた場合、そのエンジンルーム3内に設けられたファン6が回転する(図1参照)。そして、各可動フィン17が全閉状態にある場合には、そのファン6の回転によって、強制的に、各取入流路23を経由した空気の流れを作り出すことにより、その必要な空気をグリル開口部7からエンジンルーム3内に取り入れることが可能となっている。
【0044】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)グリルシャッタ装置10は、その各可動フィン17が全閉状態にあるとき、当該各可動フィン17が、グリル開口部7から流れ込む空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路23を形成するように構成される。
【0045】
上記構成によれば、その全閉状態においても、各取入流路23を介してエンジンルーム3内に空気を取り入れることが可能になる。その結果、例えば、システム故障等により全閉状態のまま各可動フィン17の回動位置が固着した場合であっても、効率良く、エンジン等の発熱部位を冷却することができる。
【0046】
しかしながら、例えば、各可動フィン17が全閉状態となることにより得られる空力性能の向上は、各可動フィン17に遮られた空気が滞留することによりグリル開口部7の内圧が上昇し、新たな空気が流れ込まなくなることにより生ずるものである。従って、積極的に空気を取り入れる必要性のない場合には、その各取入流路23を経由したエンジンルーム3への空気の流れを抑制することが望ましい。
【0047】
この点、上記のように各取入流路23の延伸方向を空気の流入方向に対して交差する方向とすることで、車両1が走行することにより生ずる各取入流路23を経由した空気の流れを抑えて、そのグリル開口部7から流れ込む空気の大部分を空力性能の向上に役立てることができる。そして、その各取入流路23から漏れるように流入する空気を利用して、エンジンルーム3内の発熱部位を冷却することができる。尚、より積極的にエンジンルーム3内に空気を取り入れる必要性がある場合には、エンジンルーム3内に設けられたファン6を用いることにより、強制的に、各取入流路23を経由した空気の流れを作り出すことも可能である。従って、上記構成によれば、各可動フィン17が全閉状態となることにより得られる効用の低下を抑制しつつ、必要な空気をエンジンルーム3内に取り入れることができるようになる。
【0048】
(2)各取入流路23は、そのグリル開口部7から流れ込む空気の流入方向において、各可動フィン17の上流側及び下流側に重複して開口する領域を有しない。このような構成とすることで、各取入流路23を介して直線的にグリル開口部7からエンジンルーム3内に空気が流れ込むことを防止することができる。そして、これにより、各取入流路23を介してエンジンルーム3に取り入れる空気の流量を適切なものとすることができ、その結果、当該各取入流路23を形成することにより生ずる効用低下を抑えることができる。
【0049】
(3)各可動フィン17は、その閉動作、即ち閉方向への回動が規制されることにより、そのフィン先21が取入流路23となる隙間X1,X2を形成する。そして、この閉方向への回動が規制された位置が、その全閉状態に対応した回動位置となっている。
【0050】
即ち、全閉状態にある各可動フィン17のフィン部19(フィン先21)は、グリル開口部7から流れ込む空気の流入方向に交差するものとなる。従って、上記構成によれば、容易且つ簡素な構成にて、その空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路23を形成することができる。
【0051】
(4)各可動フィン17は、閉方向に回動することにより、上下方向に隣り合う各列の可動フィン17のフィン先21が、その空気の流入方向において、互いに重複する位置となるように配列されている。そして、これら各可動フィン17のうち、下側に配置された各可動フィン17Aのフィン先21には、各可動フィン17の閉方向への回動に基づいて、その上側に配置された各可動フィン17Bのフィン先21に当接するストッパ25が設けられる。
【0052】
上記構成によれば、構成簡素且つ確実に、各可動フィン17の閉動作を規制することができる。そして、そのストッパ25を介して向かい合うフィン先21間に取入流路23となる隙間X1を形成することができる。
【0053】
(5)各可動フィン17(17A,17B)は、それぞれ隣り合う列の可動フィン17に対して空気の流入方向にオフセットされた回動軸20を有する。
即ち、可動フィン17の回動位置を全閉状態に対応する位置で保持するためには、その回動軸20の上下にバランスよく空気が当たるようにすることが望ましい。この点、上記構成によれば、その上下に隣り合う各列の可動フィン17A,17B間に取入流路23を形成しつつ、空気の流入方向に対し、より大きな交差角度で各フィン部19を配置することが可能になる。これにより、回動軸20の上下にバランスよく空気が当たるようになり、その結果、各取入流路23を介して必要な空気をエンジンルーム3内に取り入れつつ、その全閉状態に対応する各可動フィン17の回動位置を安定的に保持することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0055】
図4に示すように、本実施形態のグリルシャッタ装置30は、上記第1の実施形態におけるグリルシャッタ装置10と同様、フレーム13の枠内に整列配置された複数の可動フィン37を備えている。
【0056】
具体的には、本実施形態のグリルシャッタ装置30において、そのフレーム13の枠内に形成された左右の開口部13A,13B内には、それぞれ、二列の可動フィン37が並列に配設されている。そして、このグリルシャッタ装置30もまた、これら各可動フィン37の回動による開閉動作に基づいて、そのグリル開口部7からエンジンルーム3内に流れ込む空気の流量を制御することが可能となっている。
【0057】
図5に示すように、本実施形態の各可動フィン37は、上記第1の実施形態の各可動フィン17とは異なり、その回動軸20が互いにオフセットされた位置に配置されていない(図3参照)。そして、これら各可動フィン37が全閉状態にある場合には、隣り合う各列の可動フィン37のフィン先21が重なり合うことによって、効果的に、そのグリル開口部7から流れ込む空気を遮断することが可能な構成となっている。
【0058】
また、図4及び図5に示すように、各可動フィン37には、そのフィン部39を厚み方向に貫通する複数の貫通孔42が形成されている。そして、各可動フィン37が全閉状態にある場合には、これらの各貫通孔42が、各可動フィン37の上流側(図5中、左側)と下流側(図5中、右側)とを連通する取入流路43を形成することにより、その全閉状態においても、エンジンルーム3内に空気を取り入れることが可能となっている。
【0059】
詳述すると、図4に示すように、各貫通孔42は、フィン部39の長手方向に延びる長孔状の開口形状を有している。尚、各可動フィン37には、そのフィン部39の長手方向に沿うように略均等間隔で形成された5つの各貫通孔42と組として、4列に整列配置された20個の貫通孔42が設けられている。
【0060】
また、図5に示すように、各貫通孔42は、各可動フィン37が全閉状態に対応する回動位置にあるとき、その上流側の開口部42aよりも下流側の開口部42bの方が上方(同図中、上側)に配置されるように、フィン部39を斜めに貫通するような形状を有している。そして、本実施形態では、これにより、各貫通孔42が、グリル開口部7から流れ込む空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路43を形成するようになっている。
【0061】
さらに、各貫通孔42は、その空気の流入方向において、各可動フィン37の上流側及び下流側に重複して開口する領域を有していない。即ち、空気の流入方向と同一の方向(上流側)から各貫通孔42を見た場合、当該各貫通孔42を介してエンジンルーム3内が見えないようになっている。そして、本実施形態では、これにより、これら各貫通孔42を介して直線的にグリル開口部7からエンジンルーム3内に空気が流れ込むことを防止する構成になっている。
【0062】
以上、本実施形態のグリルシャッタ装置30を採用することで、上記第1の実施形態におけるグリルシャッタ装置10と同様の効果を得ることができる。
即ち、各可動フィン37が全閉状態にある場合においても、各貫通孔42が形成する取入流路43を介してエンジンルーム3内に空気を取り入れることができる。また、各取入流路43の延伸方向を空気の流入方向に対して交差する方向とすることで、車両1が走行することにより生ずる各取入流路43を経由した空気の流れを抑えることができる。そして、各貫通孔42が、各可動フィン37の上流側及び下流側に重複して開口する領域を有しないことで、当該各貫通孔42(取入流路43)を介してエンジンルーム3に取り入れる空気の流量をより適切なものとすることができる。その結果、各可動フィン37が全閉状態となることにより得られる効用の低下を抑制しつつ、必要な空気をエンジンルーム3内に取り入れることができるようになる。
【0063】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、グリル開口部7から流れ込む空気は、車体2内に形成されたエンジンルーム3内に取り入れられることとした。しかし、これに限らず、各可動フィン17,37の開閉動作に基づいて、その流れ込む空気の流量を制御可能な車体2の内部空間であれば、その空気の取り入れ先は、エンジンルーム3でなくともよい。即ち、例えば、ラジエータ5aやコンデンサ5b等のような熱交換器の収容室等、グリル開口部7から流れ込む空気が導入される空間があればよく、車体の後部又は中央にエンジンが配置された車両、或いは電気自動車等、車室よりも前方の車体内空間にエンジンが搭載されていない車両に適用してもよい。
【0064】
・上記第1の実施形態では、各可動フィン17(17A,17B)は、それぞれ隣り合う列の可動フィン17に対して、その空気の流入方向にオフセットされた回動軸20を有することとした。しかし、これに限らず、全閉状態に対応する回動位置にあるとき、そのフィン先21が回動軸20に対して流入方向にオフセットされた位置に配置されるように、各可動フィンの形状を設計してもよい。
【0065】
例えば、図6(a)に示される可動フィン47は、回動軸20の軸方向からみてクランク状に折り曲げられたフィン部49を有している。また、図6(b)に示される可動フィン57は、同じく、回動軸20の軸方向からみて、湾曲して形成されたフィン部59を有している。そして、このような形状の可動フィン47,57を用いることにより、各回動軸20をオフセットした場合と同様、上下に隣り合う各列の可動フィン47,57間に取入流路23を形成しつつ、その空気の流入方向に対し、より大きな交差角度で各フィン部49,59を配置することができる。また、このような各可動フィン47,57の形状により回動軸20に対してフィン先21をオフセットする構成と、上記第1の実施形態に示されるようなオフセットされた回動軸20を有する構成とを組み合わせてもよい。これにより、その設計自由度を高めることができる。
【0066】
・上記各実施形態では、グリルシャッタ装置10,30は、その回動により開閉動作する複数の可動フィン17,37を備えることとした。しかし、これに限らず、その可動フィンについては、例えば、スライド式、或いは揺動式等、その他の態様で開閉動作するものであってもよい。
【0067】
・また、上記各実施形態では、アクチュエータ部18により区画されたフレーム13の各開口部13A,13B内に、それぞれ、二列の可動フィン17,37が並列に配設されることとした。しかし、各可動フィンの数は、必ずしもこれに限るものではない。即ち、例えば、三列以上の可動フィンを備える構成であってもよい。また、空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取り入れ流路を形成可能な構成であれば、各可動フィンが一列に配列されものでもよい。そして、一つの可動フィンの開閉動作により流量制御を行うものに適用してもよい。
【0068】
・さらに、アクチュエータ部18の配置や可動フィンの配列についても適宜変更してもよい。例えば、フレーム13の幅方向端部にアクチュエータ部を配置してもよい。また、上下方向に掛け渡された回動軸を有する等により、フレームの枠内において各可動フィンが縦型に配列される構成に具体化してもよい。
【0069】
・上記第1の実施形態では、各取入流路23は、そのグリル開口部7から流れ込む空気の流入方向において、各可動フィン17の上流側及び下流側に重複して開口する領域を有しないこととした。しかし、これに限らず、僅かに重複する領域が存在する構成であってもよい。即ち、車両1が走行することにより生ずる各取入流路23を経由した空気の流れを抑えて、そのエンジンルーム3に取り入れる空気の流量を適切なものとすることが可能であれば、空気の流入方向と同一の方向(上流側)から当該各取入流路23を介してエンジンルーム3内が見えるものであってもよい。
【0070】
・また、上記第2の実施形態においても、各貫通孔42は、その空気の流入方向において、各可動フィン37の上流側及び下流側に重複して開口する領域を有していないこととした。しかし、これについても、空気の流入方向と同一の方向(上流側)から各貫通孔42を介してエンジンルーム3内が見えるものであってもよい。
【0071】
・さらに、各貫通孔の延伸方向は、必ずしも空気の流入方向に対して交差する方向でなくともよい。そして、その数及び開口形状、或いは内径や形成位置等は適宜変更してもよい。即ち、各可動フィンに貫通孔を形成することで、全閉状態においても、その貫通孔を介して空気を取り入れることができる。そして、その取り入れ可能な空気の流量は、その貫通孔の数及び開口形状、或いは内径や形成位置等によって自在に制御することができる。従って、これらの要素を適切に設定することにより、可動フィンが全閉状態となることにより得られる効用の低下を抑制しつつ、必要な空気をエンジンルーム3内に取り入れることができるようになる。
【0072】
・上記第1の実施形態では、下側に配置された各可動フィン17Aのフィン先21bにストッパ25を設ける。そして、この規制手段としてのストッパ25が、上側に配置された各可動フィン17Bのフィン先21aに当接することにより、各可動フィン17の閉動作、即ち閉方向への回動が規制されることとした。しかし、これに限らず、各可動フィンの閉動作を規制して、そのフィン先に取り入れ流路となる隙間を形成可能な構成であれば、その規制手段の構成はどのようなものであってもよい。例えば、上側に配置された各可動フィン17Bのフィン先21aにストッパを設ける。或いは、フレーム13に設けられたストッパが何れかの可動フィン17に当接して、その閉動作を規制する等であってもよい。また、アクチュエータ部18の作動を通じて、制御的に、これら各可動フィン17の閉動作を規制する構成であってもよい。
【0073】
・上記第1の実施形態では、各可動フィン17が全閉状態にあるとき、下側に配置された各可動フィン17Aにおける下側のフィン先21aとフレーム13の内側面13cとの間にも、取入流路23となる隙間X2が形成されることとした。しかし、これに限らず、隣り合う各列の可動フィン17A,17Bのフィン先21間のみに取入流路23となる隙間X1が形成される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…車両、2…車体、3…エンジンルーム、4…エンジン、5a…ラジエータ、5b…コンデンサ、6…ファン、7…グリル開口部、7a…開口端、10,30…グリルシャッタ装置、13…フレーム、17(17A,17B),37,47,57…可動フィン、18…アクチュエータ部、19,39,49,59…フィン部、20…回動軸、21(21a,21b)…フィン先、23,43…取入流路、25…ストッパ、26…突部、42…貫通孔、X1,X2…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部のグリル開口部に設けられた可動フィンの開閉動作に基づいて、前記グリル開口部から前記車体内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置であって、
前記可動フィンが全閉状態にあるとき、該可動フィンが前記グリル開口部から流れ込む空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路を形成することにより、前記全閉状態においても前記取入流路を介して前記車体内に空気を取り入れ可能としたこと、
を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のグリルシャッタ装置において、
前記取入流路は、前記空気の流入方向において、前記可動フィンの上流側及び下流側に重複して開口する領域を有していないこと、を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のグリルシャッタ装置において、
前記可動フィンの閉動作を規制して、該可動フィンのフィン先に前記取入流路となる隙間を形成する規制手段を備えること、を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のグリルシャッタ装置において、
前記規制手段は、前記可動フィンに当接して前記閉動作を規制するストッパであること、を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のグリルシャッタ装置において、
並列に配置された複数の前記可動フィンを備え、
前記各可動フィンは、その回動により前記開閉動作するとともに、該各可動フィンが前記全閉状態にあるとき、それぞれ隣り合う列の可動フィンとの間に前記取入流路を形成すること、を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のグリルシャッタ装置において、
前記各可動フィンは、それぞれ隣り合う列の可動フィンに対して前記流入方向にオフセットされた回動軸を有すること、を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のグリルシャッタ装置において、
前記各可動フィンは、該各可動フィンが前記全閉状態にあるとき、そのフィン先が回動軸に対して前記流入方向にオフセットされた位置に配置されるように形成されること、
を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項8】
車体前部のグリル開口部に設けられた可動フィンの開閉動作に基づいて、前記グリル開口部から前記車体内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置であって、
前記可動フィンに貫通孔を形成することにより、前記可動フィンが全閉状態にあるときにおいても、前記貫通孔を介して前記車体内に前記空気を取り入れ可能としたこと、
を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のグリルシャッタ装置において、
前記貫通孔は、前記可動フィンが全閉状態にあるとき、前記グリル開口部から流れ込む空気の流入方向に対して交差する方向に延びる取入流路を形成すること、
を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のグリルシャッタ装置において、
前記貫通孔は、前記可動フィンが全閉状態にあるとき、前記空気の流入方向において、前記可動フィンの上流側及び下流側に重複して開口する領域を有していないこと、
を特徴とするグリルシャッタ装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−86630(P2013−86630A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228154(P2011−228154)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】