説明

グリルシャッタ装置

【課題】軸受部への水滴の入り込みを防止して可動フィンの円滑な開閉動作を担保することのできるグリルシャッタ装置を提供すること。
【解決手段】各可動フィン14は、長尺略平板状のフィン部19と、同フィン部19の幅方向両端に設けられた回動軸20,21とを備える。各回動軸20,21は、空気の流路FP内に配置される露出部30,31を有するとともに、これら各露出部30,31には、径方向外側に延びる環状のフランジ32が設けられる。そして、各露出部30,31の前方には、空気の流入方向に対して交差する方向に延びるカバー33が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリルシャッタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体前部のグリル開口部に設けられた可動フィンの開閉動作に基づいて、そのグリル開口部から車体内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
即ち、例えば、高速走行時、可動フィンを閉状態として車体内への空気の流入を制限することにより、その空力性能(例えば「Cd値」等)を向上させることができる。また、エンジン始動時には、そのラジエータに導入する流量を抑えることで、その暖気時間を短縮することができる。そして、エンジン温度が上昇傾向にある場合には、可動フィンを開状態としてエンジンルーム内に流れ込む流量を増やすことにより、そのエンジン温度を適切に管理することができる。
【0004】
また、グリルシャッタ装置を構成する可動フィンの多くは、回動自在に支承された回動軸を有している。そして、その回動軸の回動に基づいて開閉動作するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−139519号公報
【特許文献2】特開2007−1503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、グリル開口部内に流入する空気の流れには、雨や霧等の水滴が含まれる。このため、従来の構成では、その可動フィンに付着した水滴が回動軸を伝って軸受部に入り込む可能性がある。また、可動フィンが円滑に動作するためには、そのフィン部の両端に一定のクリアランス(隙間)を設定する必要がある。しかしながら、この隙間に流れ込む空気が軸受部に当たることで、その空気の流れに含まれる水滴が当該軸受部に入り込む可能性がある。そして、その水滴に含まれる埃等の異物、或いはその水滴の凍結等によって、回動軸の円滑な回動が妨げられるおそれがあり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、軸受部への水滴の入り込みを防止して可動フィンの円滑な開閉動作を担保することのできるグリルシャッタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、回動自在に支承された回動軸を有して車体前部のグリル開口部に設けられた可動フィンの開閉動作に基づいて、前記グリル開口部から前記車体内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置であって、前記回動軸は、前記空気の流路内に配置される露出部を有し、前記露出部には、径方向外側に突出する第1遮蔽壁が設けられるとともに、前記空気の流入方向における前記露出部の前方には、前記流入方向と交差する方向に延びる第2遮蔽壁が設けられること、を要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、回動軸を介した水滴の移動を第1遮蔽壁が遮ることにより、可動フィンに付着した水滴が回動軸を伝って軸受部に入り込むことを防ぐことができる。また、グリル開口部から流れ込む空気を第2遮蔽壁が遮ることで、その空気の流れに含まれる水滴が回動軸の露出部に付着することを防ぐことができる。更に、互いの延伸方向が交差する第1遮蔽壁及び第2遮蔽壁によって、入り組んだ空間を有する所謂迷路構造が形成される。そして、この迷路構造により、その空気の流れに含まれる水滴が軸受部に当たらないようにすることができる。その結果、軸受部への水滴の入り込みを防止して可動フィンの円滑な開閉動作を担保することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、軸方向に離間して設けられた複数の前記第1遮蔽壁を備えること、を要旨とする。
上記構成によれば、より効果的に、回動軸を介した水滴の移動を遮ることができる。更に、寸法誤差や可動フィンの軸方向移動等により、軸受部近傍の第1遮蔽壁がその軸受部に接触してしまう状態となった場合にも、その接触した第1遮蔽壁がストッパとなって可動フィンの軸方向移動を規制することにより、その他の第1遮蔽壁は有効に機能する。その結果、より確実に、軸受部への水滴の入り込みを防止することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記可動フィンは、前記回動軸から偏心した位置に設けられたフィン部を有するとともに、前記回動軸が可動フィンの開状態に対応する回動位置にあるとき、前記フィン部が前記回動軸の軸心よりも重力方向下側に配置されるようにしたこと、を要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、フィン部に付着した水滴が当該フィン部から回動軸に移動し難くなる。その結果、より効果的に、軸受部への水滴の入り込みを防止することができる。
請求項4に記載の発明は、前記可動フィンのフィン部には、前記回動軸の軸線方向に対して交差する方向に延びる溝が形成されること、を要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、各溝内の水滴が重力や風圧等によってフィン部の幅方向端部から中央側に向かって流れるように各溝の延設方向を設定することで、フィン部に付着した水滴を回動軸の近傍から遠ざけることができる。これにより、回動軸を介した水滴の移動を抑えることができ、その結果、より効果的に、各軸受部への水滴の入り込みを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軸受部への水滴の入り込みを防止して可動フィンの円滑な開閉動作を担保することが可能なグリルシャッタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかるグリルシャッタ装置が搭載された車両の概略構成を示す模式図。
【図2】グリルシャッタ装置の斜視図。
【図3】可動フィンの平面図。
【図4】可動フィンの回動軸及びその軸受部を示す断面図。
【図5】可動フィンの断面図。
【図6】可動フィンが開状態にある場合のグリルシャッタ装置の正面図。
【図7】回動軸に設けられたフランジの別例を示す断面図。
【図8】回動軸の前方に設けられたカバーの別例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す車両1において、車体2の内部に形成されたエンジンルーム3には、そのエンジン4を冷却するためのラジエータ5a及びエアコン用のコンデンサ5bが収容されている。また、車体2の前部(同図中、左側の端部)には、車両前方の外部空間と車体2の内部空間とを連通するグリル開口部7が形成されている。そして、上記ラジエータ5a及びコンデンサ5bは、このグリル開口部7からエンジンルーム3に流れ込む空気が当たるように、エンジン4の前方に配置されている。
【0017】
また、ラジエータ5a及びコンデンサ5bの後方(同図中、右側)には、ファン6が設けられている。そして、このファン6が回転することにより、効率良く、ラジエータ5a及びコンデンサ5bに空気が流れるようになっている。
【0018】
本実施形態では、グリル開口部7は、バンパー8の下方に形成されている。また、グリル開口部7の開口端7aには、その意匠面(ロアグリル)を構成するグリルパネル9が取着されている。そして、本実施形態の車両1は、そのグリル開口部7からエンジンルーム3内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置10を備えている。
【0019】
詳述すると、グリルシャッタ装置10は、車体2の下部構造体12に固定されることによりグリル開口部7から流れ込む空気の流路FPを形成する枠状のフレーム13と、このフレーム13の枠内に整列配置された複数の可動フィン14とを備えている。
【0020】
図2に示すように、フレーム13は、車体2の前方に開口するグリル開口部7に対応して、車体2の幅方向に延びる横長に形成されている。また、フレーム13の枠内における幅方向略中央部には、略柱状の外形を有するアクチュエータ部15が設けられている。そして、このアクチュエータ部15により区画された左右の開口部13A,13B内には、それぞれ、二列の可動フィン14が並列に配設されている。
【0021】
図3に示すように、各可動フィン14は、フレーム13の幅方向に延びる長尺略平板状のフィン部19を有している。また、フィン部19の幅方向両端には、それぞれ、その幅方向外側に向かって延びる回動軸20,21が同軸に設けられている。具体的には、フィン部19の幅方向両端には、それぞれ、略円板状の接続部22が形成されており、各回動軸20,21は、これら各接続部22の中心部に設けられている。そして、図2及び図4に示すように、各可動フィン14は、これらの各回動軸20,21が、それぞれ、その対応するアクチュエータ部15の両側面16及びこれに対向するフレーム13の内側面17に設けられた軸受部23,24に軸支されることにより、回動可能に各開口部13A,13B内に設けられている。
【0022】
具体的には、図4に示すように、アクチュエータ部15側の各軸受部23は、それぞれ、アクチュエータ部15の両側面16に設けられた孔25により構成されている。また、フレーム13側の各軸受部24は、それぞれ、フレーム13の内側面17に設けられた穴26により構成されている。そして、各可動フィン14は、その回動軸20,21が、それぞれ、その対応する孔25及び穴26に挿入されることにより、これら回動軸20,21を回動中心として回動自在に支承されている。
【0023】
尚、アクチュエータ部15の内部には、孔27を有する板状部28が設けられている。また、回動軸20の先端20aには、軸方向に離間して配置された一対のフランジ29a,29bが設けられている。そして、本実施形態では、回動軸20の先端20aが孔27内に挿入されるとともに、その各フランジ29a,29bが板状部28を挟み込むことにより、各可動フィン14の軸方向移動が規制されるようになっている。
【0024】
また、各回動軸20,21は、それぞれ、上記フレーム13が形成する空気の流路FP内に配置される部分(露出部30,31)を有している。即ち、各回動軸20の軸受部23が設けられたアクチュエータ部15の両側面16とフィン部19との間、及び各回動軸21の軸受部24が設けられたフレーム13の内側面17とフィン部19との間には、一定のクリアランス(隙間)が設定されている。そして、本実施形態では、これより、フレーム13及びアクチュエータ部15に干渉することなく、各可動フィン14が円滑に回動できるようになっている。
【0025】
アクチュエータ部15は、このようにして各軸受部23,24に支承された各回動軸20を駆動することにより当該各回動軸20と一体に各可動フィン14を回動させる。即ち、各可動フィン14は、グリル開口部7から流れ込む空気の流入方向に対してフィン部19が並行する状態となる方向(図1参照、時計回り方向)に回動することにより開状態となる。そして、その流入方向に対してフィン部19が交差する状態となる方向(同図参照、反時計回り方向)に回動することにより閉状態となる。
【0026】
本実施形態のグリルシャッタ装置10は、このような各可動フィン14の回動をアクチュエータ部15により制御する。そして、その各可動フィン14の回動による開閉動作に基づいて、グリル開口部7からエンジンルーム3内に流れ込む空気の流量を制御することが可能となっている。
【0027】
(軸受部の防水構造)
次に、本実施形態における軸受部の防水構造について説明する。
図3及び図4に示すように、各回動軸20,21には、それぞれ、軸方向に離間して配置された複数のフランジ32が設けられている。具体的には、各フランジ32は、フレーム13が形成する空気の流路FP内に配置される各回動軸20,21の露出部30,31に、それぞれ、2つずつ形成されている。そして、各フランジ32は、露出部30,31の全周に亘って径方向外側に突出する略円環板状に形成されている。
【0028】
また、図2及び図4に示すように、フレーム13の枠内には、その空気の流入方向における各回動軸20,21の露出部30,31の前方に配置されることにより、グリル開口部7から流れ込む空気を遮るカバー33が形成されている。
【0029】
具体的には、回動軸20側(図4中、右側の回動軸)の露出部30の前方には、アクチュエータ部15の両側面16に設けられた略平板状の各カバー33aが配置されている。また、回動軸21側(図4中、左側の回動軸)の露出部31の前方には、フレーム13の内側面17に設けられた略平板状の各カバー33cが配置されている。そして、これらの各カバー33a,33cは、それぞれ、その空気の流入方向(図4中、下側から上側に向かう方向)と交差するように、フレーム13の上下方向(車体2の上下方向)に延設されている(図2参照)。
【0030】
さらに、フィン部19の幅方向両端には、切欠き35が形成されている。そして、各カバー33a,33cは、各回動軸20,21の軸線方向に延設されることにより、その一部がこれらの各切欠き35内に配置されている。
【0031】
即ち、フィン部19から各軸受部23,24へと各回動軸20,21を伝う水滴は、露出部30,31に設けられた第1遮蔽壁としての各フランジ32によって、その移動が遮られる。また、グリル開口部7から流れ込む空気を第2遮蔽壁としての各カバー33(33a,33c)が遮ることで、露出部30,31には、その空気の流れに含まれる水滴が付着しない。さらに、空気の流入方向に交差する方向に延びる各カバー33(33a,33c)は、各回動軸20,21の径方向外側に突出する各フランジ32に対しても交差する位置関係にある。このため、互いの延伸方向が交差するこれらの各フランジ32及び各カバー33(33a,33c)によって、入り組んだ空間を有する所謂迷路構造(ラビリンス構造)が形成される。そして、本実施形態では、この迷路構造により、その流入する空気の流れに含まれる水滴が各軸受部23,24に当たらないようになっている。
【0032】
また、図5に示すように、各可動フィン14において、フィン部19は、その各回動軸20,21から偏心した位置に設けられている。具体的には、各回動軸20,21は、その軸心P0が円板状をなす接続部22の中心部に位置するのに対し、フィン部19は、当該接続部22の周縁部分に設けられている。そして、図6に示すように、各可動フィン14は、その回動軸20,21が当該各可動フィン14の開状態に対応する回動位置にあるとき、フィン部19が各回動軸20,21の軸心P0よりも重力方向下側(同図中、下側)に配置されるようになっている。
【0033】
さらに、図2〜図4に示すように、各可動フィン14のフィン部19には、その上面19aに、空気の流入方向に対して交差する複数の溝37が形成されている。
具体的には、これらの溝37は、フィン部19の幅方向両端近傍に形成されている。また、本実施形態では、各可動フィン14は、全開状態においても、空気の流入方向上流側(図3中、下側)に配置されるフィン先(フィン部19の先端)19bが、その流入方向上流側(図3中、上側)に配置されるフィン先19cよりも重力方向下側(図6参照、同図中、下側)に配置されるようになっている。尚、本実施形態のグリルシャッタ装置10は、走行風の影響が小さな低車速時において、各可動フィン14が開状態となるように構成されている。そして、各溝37は、当該各溝37内の水滴が、重力によってフィン部19の幅方向端部から中央側に向かって流れるように、空気の流入方向に対して斜交する方向に延設されている。
【0034】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)各可動フィン14は、長尺略平板状のフィン部19と、同フィン部19の幅方向両端に設けられた回動軸20,21とを備える。各回動軸20,21は、空気の流路FP内に配置される露出部30,31を有するとともに、これら各露出部30,31には、径方向外側に延びる環状のフランジ32が設けられる。そして、各露出部30,31の前方には、空気の流入方向に対して交差する方向に延びるカバー33が形成される。
【0035】
上記構成によれば、第1遮蔽壁としてのフランジ32が、各回動軸20,21を介した水滴の移動を遮ることにより、フィン部19に付着した水滴が各回動軸20,21を伝って各軸受部23,24に入り込むことを防ぐことができる。また、第2遮蔽壁としての各カバー33が、グリル開口部7から流れ込む空気を遮ることで、その空気の流れに含まれる水滴が露出部30,31に付着することを防ぐことができる。更に、互いの延伸方向が交差するこれらのフランジ32及び各カバー33によって、入り組んだ空間を有する所謂迷路構造が形成される。そして、この迷路構造により、その流入する空気の流れに含まれる水滴が各軸受部23,24に当たらないようにすることができる。その結果、各軸受部23,24への水滴の入り込みを防止して各可動フィン14の円滑な開閉動作を担保することができる。
【0036】
(2)各露出部30,31には、それぞれ、軸方向に離間して配置された複数(2つ)のフランジ32が設けられる。このような構成とすることで、より効果的に、各回動軸20,21を介した水滴の移動を遮ることができる。更に、寸法誤差や各可動フィン14の軸方向移動等により、軸受部23,24側のフランジ32が同軸受部23,24に接触してしまう状態となった場合にも、その外側(軸受側)のフランジ32がストッパとなって可動フィンの軸方向移動を規制することで、その内側(フィン部側)のフランジ32は、遮蔽壁として有効に機能する。その結果、より確実に、各軸受部23,24への水滴の入り込みを防止することができる。
【0037】
(3)各可動フィン14において、フィン部19は、その各回動軸20,21から偏心した位置に設けられる。そして、各可動フィン14は、その回動軸20,21が当該各可動フィン14の開状態に対応する回動位置にあるとき、フィン部19が各回動軸20,21の軸心P0よりも重力方向下側に配置されるように構成される。
【0038】
上記構成によれば、フィン部19に付着した水滴が当該フィン部19から各回動軸20,21に移動し難くなる。その結果、より効果的に、各軸受部23,24への水滴の入り込みを防止することができる。
【0039】
(4)各可動フィン14のフィン部19には、その上面19aに、空気の流入方向に対して交差する複数の溝37が形成される。そして、各溝37は、当該各溝37内の水滴が、重力によってフィン部19の幅方向端部から中央側に向かって流れるように、空気の流入方向に対して斜交する方向に延設される。
【0040】
上記構成によれば、フィン部19に付着した水滴を各回動軸20,21の近傍から遠ざけることができる。これにより、各回動軸20,21を介した水滴の移動を抑えることができ、その結果、より効果的に、各軸受部23,24への水滴の入り込みを防止することができる。
【0041】
(5)フィン部19の幅方向両端には、切欠き35が形成される。そして、各カバー33は、各回動軸20,21の軸線方向に延設されることにより、その一部がこれらの各切欠き35内に配置される。
【0042】
このように、各回動軸20,21の軸線に沿って各カバー33をフィン部19と重複する位置まで延設することにより、より効果的に、各露出部30,31の前方における空気の流れを遮ることができる。その結果、フィン部の幅方向両端に設定された隙間に流れ込む空気の流量を低減することができる。
【0043】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、グリル開口部7から流れ込む空気は、車体2内に形成されたエンジンルーム3内に取り入れられることとした。しかし、これに限らず、各可動フィン14の開閉動作に基づいて、その流れ込む空気の流量を制御可能な車体2の内部空間であれば、その空気の取り入れ先は、エンジンルーム3でなくともよい。即ち、例えば、ラジエータ5aやコンデンサ5b等のような熱交換器の収容室等、グリル開口部7から流れ込む空気が導入される空間があればよく、車体の後部又は中央にエンジンが配置された車両、或いは電気自動車等、車室よりも前方の車体内空間にエンジンが搭載されていない車両に適用してもよい。
【0044】
・上記実施形態では、アクチュエータ部15の両側面16に設けられた孔25及びフレーム13の内側面17間に設けられた穴26に対して、可動フィン14の各回動軸20,21を挿入することにより、その各軸受部23,24が構成されることとした。しかし、これに限らず、その回動軸の軸受部として、その他の型式のすべり軸受や転がり軸受を用いる構成に具体化してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、各可動フィン14は、回動軸20,21を回動中心としてフィン部19が一体に回動することとした。しかし、これに限らず、特許文献1に示される例のように、その回動軸は必ずしも可動フィンの回動中心にならなくともよい。即ち、回動自在に支承された回動軸を有し、当該回動軸の回動により開閉動作する可動フィンを有するものであれば、その可動フィン自体の開閉動作は揺動やスライド等によるものであってもよい。
【0046】
・また、上記各実施形態では、アクチュエータ部15により区画されたフレーム13の各開口部13A,13B内に、それぞれ、二列の可動フィン14が並列に配設されることとした。しかし、各可動フィンの数は、必ずしもこれに限るものではない。即ち、例えば、三列以上の可動フィンを備える構成であってもよい。また、各可動フィンが一列に配列されものでもよい。そして、一つの可動フィンの開閉動作により流量制御を行うものに適用してもよい。
【0047】
・さらに、アクチュエータ部15の配置や可動フィンの配列についても適宜変更してもよい。例えば、フレーム13の幅方向端部にアクチュエータ部を配置してもよい。また、上下方向に掛け渡された回動軸を有する等により、フレームの枠内において各可動フィンが縦型に配列される構成に具体化してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、各回動軸20,21の露出部30,31には、第1遮蔽壁として、円環板状のフランジ32が設けられることとした。しかし、これに限らず、第1遮蔽壁の形状については、各回動軸20,21を介した水滴の移動を遮ることが可能であればよく、例えば、図7に示される回動軸41のように、傘状のフランジ42を備える構成としてもよい。また、軸方向からみた場合の第1遮蔽壁の外形についても、円形には限らない。尚、各回動軸20,21を介した水滴の移動を遮るためには、全周に亘って径方向外側に突出する環形状であることが望ましいが、重力の影響や複数の第1遮蔽壁間の配置等によって、その遮蔽性が担保されるのであれば、必ずしもこれに限るものではない。
【0049】
・また、上記実施形態では、フランジ32の数を「2つ」としたが、第1遮蔽壁の数については、一つでも3つ以上であってよい。尚、上述のような軸受部23,24との接触を考慮するならば、2つ以上であることが好ましいが、別途、ストッパを設ける等、その他の構成により軸受部23,24との接触を回避することにより、その第1遮蔽壁を一つにする構成としてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、アクチュエータ部15側の回動軸20及びフレーム13側の回動軸21の全てについて、それぞれ、対応する各フランジ32及びカバー33を設けることとした。しかし、これに限らず、一部の回動軸については、このような第1遮蔽壁及び第2遮蔽壁に対応する部材が設けられていない構成に具体化してもよい。例えば、グリルシャッタ装置10を構成するフレーム13の横幅がグリル開口部7の横幅よりも十分に広い場合、その幅方向両端に位置するフレーム13側の各軸受部24近傍には、グリル開口部7内に流入する空気、及びその流れに含まれる水滴が当たり難くなる。従って、このような構成では、これら各軸受部24に支承された回動軸21については、その各フランジ32及びカバー33を廃止してもよい場合があり得る。
【0051】
・上記実施形態では、各回動軸20,21の露出部30,31の前方には、それぞれ、第2遮蔽壁として、略平板状のカバー33(33a,33c)を配置することとした。しかし、第2遮蔽壁の形状は、必ずしもこれに限るものではなく、空気の流入方向と交差する方向に延設された部分を有してグリル開口部7から流れ込む空気を遮ることが可能であれば、例えば、湾曲板状等、適宜変更してもよい。
【0052】
・また、上記実施形態では、カバー33aは、アクチュエータ部15の両側面16に設けられ、カバー33cは、フレーム13の内側面17に設けられることとした。しかし、第2遮蔽壁を設ける(又は固定する)箇所については、必ずしもこれに限るものではなく、例えば、可動フィンが第2遮蔽壁に相当する部位を備える構成としてよい。
【0053】
・さらに、上記実施形態では、フィン部19の幅方向両端には、切欠き35が形成される。そして、各カバー33は、その一部がこれらの各切欠き35内に配置されるように、各回動軸20,21の軸線に沿ってフィン部19と重複する位置まで延設されることとした。しかし、これに限らず、フィン部19は、露出部30,31の前方に配置されて、当該各露出部30,31の前方における空気の流れを遮ることが可能であればよい。即ち、フィン部に切欠きを形成しなくともよく、また、第2遮蔽壁がフィン部と重複しなくともよい。尚、このような第2遮蔽壁の機能としては、少なくとも、その回動軸における第1遮蔽壁よりも軸受部側の部分について、その流入する空気の流れに含まれる水滴の付着を防止可能であることが好ましい。そして、より好ましくは、その露出部全体について水滴の付着を防止可能であればよい。
【0054】
・また、図8に示すように、第2遮蔽壁を構成するカバー43に、回動軸21側に延びる補助壁44を形成する。そして、この補助壁44が第1遮蔽壁としての各フランジ32に挟まれるように、各可動フィン14を配置する構成としてもよい。このような構成とすることにより、第1遮蔽壁及び第2遮蔽壁により構成される迷路構造が、より複雑なものとなる。その結果、より効果的に、その流入する空気の流れに含まれる水滴が各軸受部23,24に当たらないようにすることができる。尚、補助壁44は複数設けてもよく、また、各フランジ32に挟まれるような配置でなくともよい。
【0055】
・上記実施形態では、フィン部19の上面19aに形成された各溝37は、当該各溝37内の水滴が、重力によってフィン部19の幅方向端部から中央側に向かって流れるように、空気の流入方向に対して斜交する方向に延設されることとした。しかし、これら空気の流入方向に対する各溝37の延設方向については、必ずしも、図2〜図4に示されるものに限らず、可動フィンが開動作する場合におけるフィン部の傾斜、或いは走行風の状態等によって、適宜変更してもよい。即ち、例えば、走行風の影響を考慮するならば、その風圧によりフィン部19の幅方向端部から中央側に向かって水滴が流れるように、各溝37の傾きを設定するとよい。
【0056】
・また、フィン部の上面に空気の流入方向と交差する方向に延びる複数の突条を形成する。そして、これら各突条の間を上記実施形態における溝37と同様の「水滴が流れる溝」とする構成としてもよい。
【0057】
・さらに、本発明は、フィン部の上面に溝が形成されていない構成、及びフィン部が回動軸から偏心した位置に配置されていない構成に具体化してもよい。このような構成としても、その第1遮蔽壁及び第2遮蔽壁によって、一定の効果を得ることができる。
【0058】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記第2遮蔽壁は、前記フィン部と重複する位置まで前記回動軸の軸線方向に延設されること、を特徴とする。これにより、より効果的に、露出部の前方における空気の流れを遮ることができる。その結果、フィン部の幅方向両端に設定された隙間に流れ込む空気の流量を低減することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…車両、2…車体、3…エンジンルーム、4…エンジン、7…グリル開口部、10…グリルシャッタ装置、13…フレーム、13A,13B…開口部、14…可動フィン、15…アクチュエータ部、16…側面、17…内側面、19…フィン部、19a…上面、19b,19c…フィン先、20,21,41…回動軸、22…接続部、23,24…軸受部、25…孔、26…穴、30,31…露出部、32,42…フランジ、33(33a,33c),43…カバー、37…溝、44…補助壁、FP…流路、P0…軸心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動自在に支承された回動軸を有して車体前部のグリル開口部に設けられた可動フィンの開閉動作に基づいて、前記グリル開口部から前記車体内に流れ込む空気の流量を制御可能なグリルシャッタ装置であって、
前記回動軸は、前記空気の流路内に配置される露出部を有し、
前記露出部には、径方向外側に突出する第1遮蔽壁が設けられるとともに、
前記空気の流入方向における前記露出部の前方には、前記流入方向と交差する方向に延びる第2遮蔽壁が設けられること、を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のグリルシャッタ装置において、
軸方向に離間して設けられた複数の前記第1遮蔽壁を備えること、
を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のグリルシャッタ装置において、
前記可動フィンは、前記回動軸から偏心した位置に設けられたフィン部を有するとともに、前記回動軸が可動フィンの開状態に対応する回動位置にあるとき、前記フィン部が前記回動軸の軸心よりも重力方向下側に配置されるようにしたこと、
を特徴とするグリルシャッタ装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のグリルシャッタ装置において、
前記可動フィンのフィン部には、前記回動軸の軸線方向に対して交差する方向に延びる溝が形成されること、を特徴とするグリルシャッタ装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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