説明

グリース組成物

【課題】 低粘度で、かつ高温下での低蒸発性に優れ、低温から高温までの広い温度範囲で長期間使用できるグリース組成物を提供する。
【解決手段】基油含有量がグリース組成物全量に対して40〜97質量%であり、かつ一般式(1)で表されるジエステル油を基油全量に対して30〜100質量%含有することを特徴とするグリース組成物。
R1−OCO−(R2)−COOR3 式(1)
(式中、R1およびR3は炭素数10〜12の炭化水素基であり、同一であっても、又は異なってもよく、R2は炭素数7〜9の炭化水素基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用熱交換器、エアコン、AV機器等の潤滑個所に適用でき、低蒸発性で低トルク性に優れたグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械装置の小型軽量化、機器の高性能化による回転の高速化が促進される中で、ベアリング、ギヤ等は高温下で使用される傾向にある。このような箇所に使用されるグリースでは基油が蒸発しやすい傾向にあり、基油の蒸発が進みすぎると、潤滑面への油分の供給が減少し、性能が低下してしまう。そのため、このようなグリースに用いられる基油は、蒸発特性(低蒸発性)のより一層の向上が望まれる。
一方で、冬場の寒冷地等の低温下においては、機械装置を円滑に始動すること、すなわちグリース中の基油を低粘度化することによる低トルク化が望まれる。
また、環境問題の観点から、工場、輸送事業者等はこれまで以上に電力・燃料消費量の削減が求められており、各種産業機械・自動車等に用いられるグリースにも省電力・省燃費効果が求められている。省電力・省燃費効果を得るための手段の一つとしても、基油の低粘度化が有効な方法である。
【0003】
ところで、一般に、基油の低蒸発性を改善しようとすると動粘度が高くなる傾向にあり、低トルク性を基油で改善しようとすると基油の動粘度は低くなる傾向にある。すなわち、相反する性能である低蒸発性と低トルク性の両性能をより一層向上させ、低温から高温までの広い温度範囲で長期間使用できるグリースが求められている。
この様な状況下において、低蒸発性と低トルク性の両性能が優れたグリースの開発を目的として、炭酸エステル油、ポリオールエステル油、ジエステル油といった合成油系基油を用いた、種々の試みがなされている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平1−308496号公報
【特許文献2】特開2001−72988号公報
【特許文献3】特開2001−3070号公報
【特許文献2】特開2003−327990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低温下での低トルク性、高温下での低蒸発性に優れ、低温から高温までの広い温度範囲で長期間使用できるグリース組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定構造のジエステル油が低粘度でありながら低蒸発性であることを見出し、これを基油として用いれば、高温下における低蒸発性と低温下における低トルク化や省電力効果が期待できるグリースが得られることを見出した。さらに、基油として特定量のエーテル油またはポリオールエステル油を混合することにより、熱酸化安定性を向上させることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、基油含有量がグリース組成物全量に対して40〜97質量%であり、かつ一般式(1)で表されるジエステル油を基油全量に対して30〜100質量%含有することを特徴とするグリース組成物を提供する。
R1−OCO−(R2)−COOR3 式(1)
(式中、R1およびR3は炭素数10〜12の炭化水素基であり、同一であっても、又は異なってもよく、R2は炭素数7〜9の2価の炭化水素基である。)
また、本発明は、上記グリース組成物において、一般式(1)のジエステル油に加えて、基油として40℃における動粘度が1〜40mm/sであるポリオールエステル油及びエーテル油からなる群から選ばれる一種類以上を基油全量に対して5〜70質量%含有するグリース組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記グリース組成物において、増ちょう剤としてリチウム石けん系増ちょう剤及び一般式(2)で表わされるN−置換テレフタラミン酸金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のグリース組成物を提供する。
【0009】
【化2】

(式中、R4は炭素数4〜22の炭化水素基であり、Mは周期律I族、II族、III族及びIV族の金属であり、zはMの価数と同一の値である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明のグリース組成物は、低粘度で、かつ高温下での低蒸発性に優れ、低温から高温までの広い温度範囲で長期間使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るグリース組成物について詳細に説明する。
<基油>
本発明のグリース組成物には、基油として、下記一般式(1)で表わされるジエステル油を含有する。
R1−OCO−(R2)−COOR3 式(1)
(式中、R1およびR3は炭素数10〜12の炭化水素基であり、同一でも異なってもよく、R2は炭素数7〜9の2価の炭化水素基である。)
【0012】
一般式(1)中のR1およびR3は同一でも異なってもよい炭素数10〜12の炭化水素基であり、好ましくは炭素数10の炭化水素基である。炭化水素基としては、脂肪族系炭化水素基、脂環式系炭化水素基、芳香族系炭化水素基などが挙げられ、これらのうち脂肪族系炭化水素基が好ましい。脂肪族系炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、また、飽和又は不飽和のいずれてあってもよいが、分岐状で飽和のものが好ましい。炭化水素基の具体例としては、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基などが挙げられる。
【0013】
一般式(1)中のR2は炭素数7〜9の2価の炭化水素基であり、好ましくは炭素数8の2価の炭化水素基である。2価の炭化水素基には、2価の脂肪族系炭化水素基、2価の脂環式系炭化水素基、2価の芳香族系炭化水素基などが挙げられ、これらのうち2価の脂肪族系炭化水素基が好ましい。2価の脂肪族系炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、また、飽和又は不飽和のいずれであってもよいが、直鎖状のアルキレン基が好ましい。具体的には、炭素数7〜9の直鎖アルキレン基である。R1およびR3の炭素数が少なすぎると蒸発性が悪くなり、大きすぎると粘度が高くなる傾向がある。R2の炭素数が少なすぎると蒸発性が悪くなり、大きすぎても蒸発性が悪くなる傾向にある。
一般式(1)のジエステル油は1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0014】
基油における一般式(1)のジエステル油の含有割合は、基油全量に対して30〜100質量%であるが、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。基油における一般式(1)のジエステル油の含有割合が基油全量に対して30質量%未満であると、低蒸発性と低トルク性を十分に向上させることができない。低蒸発性、低トルク性の性能だけを考えたときには、基油中の一般式(1)のジエステル油は多いほど好ましく、100質量%であることが最も好ましいが、熱酸化安定性向上のためには、後述のポリオールエステル油やエーテル油を含有させることが好ましい。
本発明のグリース組成物は、上記一般式(1)のジエステル油でも充分な性能を発揮するが、さらに熱酸化安定性が必要な場合には、下記のポリオールエステル油やエーテル油を配合することができる。ポリオールエステル油やエーテル油の配合量は、基油全体量に対して好ましくは5〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは5〜25質量%である。配合量を5質量%以上とすることで、熱酸化安定性の向上効果を得ることができるが、70質量%を超えると上記ジエステル油の効果を十分に得られないことがあり、好ましくない。
【0015】
ポリオールエステル油としては、炭素数4〜18の脂肪族カルボン酸と炭素数3〜20で3価または4価のネオペンチル型アルコールからなるネオペンチル型ポリオールエステルである。炭素数4〜18の脂肪族カルボン酸としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。炭素数3〜20で3価または4価のネオペンチル型アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、特にペンタエリスリトールが好ましい。脂肪族カルボン酸と多価アルコールの炭素数は、蒸発性の観点から炭素数は上記範囲より小さくない方が好ましく、低粘度の観点からは上記範囲より大きくないことが好ましい。
【0016】
また、このポリオールエステル油の40℃における動粘度は、低蒸発性のためには、1mm/s以上であることが好ましく、5mm/s以上がより好ましく、7mm/s以上が特に好ましい。一方、低粘度の観点からは、40mm/s以下が好ましく、35mm/s以下がより好ましく、30mm/s以下が特に好ましい。
【0017】
エーテル油としては、ポリフェニルエーテルが挙げられ、好ましくは一般式(3)で表されるジフェニルエーテルが用いられる。
【化3】

【0018】
(式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、水素原子又は炭素数1〜22の炭化水素基であり、R4〜R13のうち、少なくとも1つは炭素数8〜22の炭化水素基である。)
一般式(3)において、R4〜R13のうち、少なくとも1つは炭素数8〜22の炭化水素基であり、好ましくは炭素数8〜20の炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数12〜18の炭化水素基である。炭素数が少なすぎると増ちょう剤の分散性を悪くする傾向にある。また、炭素数が大きすぎると基油の低温流動性が悪くなる傾向にある。
【0019】
ここで、炭化水素基としては、脂肪族系炭化水素基、脂環式系炭化水素基、芳香族系炭化水素基などが挙げられ、これらのうち脂肪族系炭化水素基が好ましい。
また、このエーテル油の40℃における動粘度は、低蒸発性のためには、1mm/s以上であることが好ましく、5mm/s以上がより好ましく、7mm/s以上が特に好ましい。一方、低粘度の観点から、40mm/s以下が好ましく、35mm/s以下がより好ましく、30mm/s以下が特に好ましい。
【0020】
基油の配合量は、本発明グリース組成物全量に対し40〜97質量%であり、好ましくは50〜95質量%であり、特に好ましくは60〜90質量%である。基油が少なすぎると製品グリースの潤滑性が低下し、多すぎるとグリースにならずに適度なちょう度が得られない。
【0021】
<増ちょう剤>
本発明のグリース組成物に含まれる増ちょう剤としては、どのようなものを用いることもでき、例えば、リチウム石けん系増ちょう剤、複合リチウム石けん系増ちょう剤、ポリウレア及びN置換テレフタラミン酸金属塩又はこれらの混合系など種々の増ちょう剤を用いることができる。
リチウム石けん系増ちょう剤としては、リチウム−12−ヒドロキシステアレート等の水酸基を有する脂肪族カルボン酸リチウム塩、リチウムステアレート等の脂肪族カルボン酸リチウム塩またはそれらの混合物などが挙げられる。
複合体リチウム石けん系増ちょう剤としては、前述の水酸基を有する脂肪族カルボン酸リチウム塩と二塩基酸リチウム塩とのコンプレックス等が挙げられる。ここで、好適な二塩基酸としては、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0022】
N−置換テレフタラミン酸金属塩は、下記一般式(2)で表される。
【化4】

(式中、R4は炭素数4〜22の炭化水素基であり、Mは、金属であり、zはMの価数と同一である。)
【0023】
一般式(2)において、R4は炭素数4〜22の炭化水素基であり、その炭素数は好ましくは14〜20である。炭素数が少なすぎると増ちょう剤が基油に分散しにくく、基油が分離する傾向が生じる。また、炭素数が大きすぎるとせん断安定性が悪くなる傾向がある。R4の例としてはデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
一般式(2)中のMは、金属であるが、その例としては周期律I族、II族、III族及びIV族の金属、例えばリチウム、アルミニウム、鉛等が挙げられる。特に好ましいのはナトリウム、バリウム、リチウム、カリウムであり、中でもナトリウムが最も好ましい。
また、zはMの価数と同一である。
【0024】
ポリウレアとしては下記一般式(4)で示されるものが挙げられる。
【化5】

一般式(4)中、R15、R16、R17及びR18はそれぞれ炭素数1〜30の炭化水素基である。R15及びR18は、それぞれ脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はそれらの組み合わせであり、好ましい炭素数は1〜30であり、より好ましくは6〜18である。R16及びR17はそれぞれ1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基である。また、yは0〜3の整数であり、好ましくは0である。
増ちょう剤には上記に挙げた増ちょう剤を単独でも組み合わせても使用することができるが、特にリチウム石けん系増ちょう剤またはN−置換テレフタラミン酸金属塩を用いることにより、さらに低騒音性を向上させることができるため好ましい。
【0025】
増ちょう剤は、グリース組成物にちょう度を付与するものであり、配合量が少なすぎると、グリース状にならずに適度なちょう度が得られず、多すぎると、製品グリースの潤滑性が低下する傾向にある。適度なちょう度を付与すると共に、グリースとしての潤滑性を確保するため、本発明において使用される増ちょう剤の配合量はグリース組成物全量に対して3〜40質量%とし、好ましくは5〜20質量%である。
【0026】
<その他の添加剤>
本発明のグリース組成物は、必要に応じて、各種添加剤を適宜配合することができる。
添加剤としては、例えば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレートなどの金属系清浄剤;アルケニルこはく酸イミド、アルケニルこはく酸イミド硼酸化変性物、ベンジルアミン、アルキルポリアミンなどの分散剤、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのアルキルフェノール類、4,4´−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、n−オクタデシル−3−(4´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネートなどのフェノール系化合物、ナフチルアミン類やジアルキルジフェニルアミン類等の芳香族アミン化合物等の各種酸化防止剤;重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールのカルボン酸部分エステル等の各種錆止め剤;ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール等の各種腐食防止剤等が挙げられる。
また、これらの添加剤の配合量は、それぞれの添加剤による効果を発揮しつつ、本願効果であるグリース組成物の低蒸発性と低トルク性の低下を防ぐため、グリース組成物全量に対して0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.05〜8質量%の範囲内とする。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0028】
(実施例1〜5、比較例1〜6)
実施例及び比較例では、以下に示す*1〜*13成分を表1〜2に示した配合量(質量)の割合で含有させたグリースを調整した。
増ちょう剤のうち*3〜*5を用いる場合は、後述の方法により基油中において増ちょう剤の原料を反応させて増ちょう剤にした後、表中の配合量の割合になるよう基油と添加剤を混合し、結果として*1〜*13の各成分を含有するグリース組成物を調整した。
なお、グリース組成物は、*1〜*13の各成分を適宜混合し、ミル処理を行ってグリース中に増ちょう剤を均一に分散させ、調整した。
【0029】
*1:リチウム−12−ヒドロキシステアレート
耐熱容器に表中の各基油とリチウム−12−ヒドロキシステアレート(堺化学製;商品名;S7000H)を投入して加熱し、約200℃付近で溶解させ、基油を添加し、冷却した後、ミル処理を行うことによりリチウム−12−ヒドロキシステアレートの結晶を最適なものとし、基油中に混合分散させたグリースを調整した。
*2:リチウム−ステアレート
耐熱容器に表中の各基油とリチウム−ステアレート(堺化学製;商品名;S7000)を投入して加熱し、約200℃付近で溶解させ、基油を添加し、冷却した後、ミル処理を行うことによりリチウム−ステアレートの結晶を最適なものとし、基油中に混合分散させたグリースを調整した。
【0030】
*3:複合体リチウム石けん
耐熱容器に表中のエーテル油と12−ヒドロキシステアレートを投入し加熱する。次に、水酸化リチウム水溶液を約80℃付近で添加し、けん化反応によりリチウム−12−ヒドロキシステアレートを生成させる。さらに、約90℃付近で水酸化リチウムとアゼライン酸を加え約2時間反応させ、リチウムコンプレックス石けんを生成させる。その後、これを加熱し、半溶解させた後、ジエステル油を加えて急冷を行い、リチウム−12−ヒドロキシステアレート/アゼライン酸複合体石けんの結晶を最適なものとし、基油中に混合分散させたグリースを調整した。
【0031】
*4:N−置換テレフタラミン酸ナトリウム
耐熱容器に表中のエーテル油とN−オクタデシルテレフタラミン酸のメチルエステルを入れ、加熱溶解し、その後、100℃以下に冷却して50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、よく撹拌しながら徐々に加熱し、充分に鹸化を行い、鹸化終了後150℃においてさらに基油を加え最高温度180℃まで加熱し、その後60℃までジエステル油を加えて冷却してN−オクタデシルテレフタラミン酸ナトリウムを得た。
【0032】
*5:脂肪族ジウレア
耐熱容器に表中の各基油とジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートを投入し、加熱し、次に、オクチルアミンを約60℃付近で添加し、約40分間反応させ、その後、撹拌しながら170℃に加熱し、基油を添加し、冷却した後、ミル処理を行うことによりジウレアの結晶を最適なものとし、基油中に混合分散させたグリースを調整した。
【0033】
*6:ジエステル油A
一般式(1)において、R1およびR3がイソデシル基で、R2が直鎖で炭素数が8のアルキレン基であるジエステル、40℃動粘度:20.16mm/s。
*7:ジエステル油B
一般式(1)において、R1およびR3が2−エチルヘキシル基で、R2が直鎖で炭素数が8のアルキレン基であるジエステル、40℃動粘度:11.6mm/s。
*8:ジエステル油C
一般式(1)において、R1およびR3がイソデシル基で、R2が直鎖で炭素数が4のアルキレン基であるジエステル、40℃動粘度:14.2mm/s
【0034】
*9:ジエステル油D
一般式(1)において、R1およびR3がイソトリデシル基で、R2が直鎖で炭素数が4のアルキレン基であるジエステル、40℃動粘度:24mm/s
*10:ポリオールエステル油
ペンタエリスリトールにC8〜C10の脂肪族カルボン酸を付加させたポリオールエステル油、40℃動粘度:29.92mm/s
*11:エーテル油
一般式(3)で表されるジフェニルエーテル油のうち、R5〜R14の一つ以上に炭素数16の分岐状の炭化水素基が付加したもの、40℃動粘度:21.5mm/s
*12:PAO
40℃動粘度が17.32mm/sであるポリアルファオレフィン
*13:酸化防止剤
オクチル化フェニル−α−ナフチルアミン
【0035】
(測定方法)
(1)基油動粘度
JISK 2283に制定されている動粘度試験方法により、基油の40℃及び100℃動粘度(mm/s)を評価した。
(2)蒸発性
グリース組成物を金属板上に縦20mm、横50mm、厚さ2mmの薄膜として塗布し、金属板ごと120℃の空気浴中に168時間静置し、前後の質量減少量を蒸発量[質量%]とし、その結果を表中に併記した。
【0036】
(3)低トルク性
JIS K2200の低温トルク試験方法に準拠して行い、条件として、−40℃での起動トルク(mN・m)を求め、その結果を表中に併記した。
(4)音響特性(低騒音性)
軸受の音響特性を測定するのに一般的なアンデロンメータを用いて、低騒音性を測定した。アンデロンメータは、ベアリングの外輪を固定し、内輪を一定の速度で回転させたときに内部から外部に伝達半径方向の振動成分を取り出し、スピーカーより音として出す装置である。具体的には、アンデロンメータの軸受としてJIS呼び番号608のベアリングを用い、グリースを0.3g充填し、回転数1800rpm、スラスト荷重2kgfで一分間回転させたときのハイバンドのアンデロン値を測定することにより行った。
音響特性(低騒音性)は、アンデロン値が低いほど、良好な結果である。
評価は、アンデロン値1.5未満を目標とし、下記の基準に従って行った。
○:アンデロン値が1.5未満である。
△:アンデロン値が1.5以上、2.5未満である。
×:アンデロン値が2.5以上である。
【0037】
(5)熱酸化安定性
上記蒸発性試験前後におけるグリースの酸価を測定し、比較することにより行った。
酸価増加 = 試験後の酸価 − 試験前の酸価 と定義した。
熱酸化安定性は、酸価増加が少ないほど、良好な結果である。
評価は酸価増加0.3未満を目標とし、更に、熱酸化安定性を特に必要とする場合は0.2未満を目標とした。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油含有量がグリース組成物全量に対して40〜97質量%であり、かつ一般式(1)で表されるジエステル油を基油全量に対して30〜100質量%含有することを特徴とするグリース組成物。
R1−OCO−(R2)−COOR3 式(1)
(式中、R1およびR3は炭素数10〜12の炭化水素基であり、同一であっても、又は異なってもよく、R2は炭素数7〜9の2価の炭化水素基である。)
【請求項2】
一般式(1)のジエステル油に加えて、基油として40℃における動粘度が1〜40mm/sであるポリオールエステル油及びエーテル油からなる群から選ばれる一種類以上を基油全量に対して5〜70質量%含有する請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項3】
増ちょう剤としてリチウム石けん系増ちょう剤及び一般式(2)で表わされるN−置換テレフタラミン酸金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のグリース組成物。
【化1】

(式中、R4は炭素数4〜22の炭化水素基であり、Mは周期律I族、II族、III族及びIV族の金属であり、zはMの価数と同一の値である。)

【公開番号】特開2009−132754(P2009−132754A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307843(P2007−307843)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(398053147)コスモ石油ルブリカンツ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】