説明

グリース阻集器

【課題】油水分離機能を損なうことなく、臭気をグリース阻集器の外へ拡散させないグリース阻集器を提供することを目的とする。
【解決手段】排水流入部から流入する排水から残さを除去するゴミ除去室と、油水分離室と、封水室とを有するグリース阻集器本体と、前記封水室に設けられ、下流の排水流出口に連通するように設置されるトラップと、グリース阻集器本体を覆う蓋とを有するグリース阻集器において、前記蓋とグリース阻集器本体との間の空間と、前記トラップ内とを連通する排気路を設け、前記排気路の途中に排気ファンを設けて、前記グリース阻集器内の空気を強制吸引し、排水流出口に排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、業務用厨房等で使用されるグリース阻集器に関し、特に臭気がグリース阻集器の外に拡散しないものを提供する。
【背景技術】
【0002】
グリース阻集器は、本来、毎日のバスケット清掃、週に一度の浮上油清掃、月に一度の残さ清掃を行うことを想定した構造であるが、清掃を怠るなどの不適切な維持管理から、阻集器内の生ごみや油が腐敗したり、厨房から流された油脂や調味料、香辛料といった成分が排水に混じり、それ自身が悪臭発生の原因になったりすることもある。
【0003】
お湯を使うことの多い厨房では、グリース阻集器内は比較的温度が高く、臭気は、グリース阻集器の蓋部の隙間やグリース阻集器内へ流入する側溝やパイプを伝って厨房室内に漏れ出て拡散しやすい。グリース阻集器内の排水が低温であっても、グリース阻集器内と厨房室内の臭気濃度の差によって拡散効果で厨房室内へ漏れ出ていく。また、一般的に厨房室内は調理器具上のフード換気扇による換気量が多いため、厨房作業時間帯には臭気成分もある程度換気されて気にならないが、換気を止めると、グリース阻集器の蓋の隙間等から漏れた臭いによって厨房室内の臭気濃度が高くなり、例えば朝一番で厨房へ入ると臭気が鼻を突くということがある。
【0004】
こうした問題を解決するため従来は、グリース阻集器100に油分解性微生物101を投入して微生物への酸素供給のために阻集器底部に空気を吹きこみ(エアレーション102)、油を分解させて臭気を軽減したり(空気の代わりにオゾンを吹き込む場合もある)、芳香剤で臭いをマスキングしたり、といった対策が講じられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−230288
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、微生物を使用した油脂分解においては、グリース阻集器内での滞留時間が短いこともあり、油脂がほとんど分解されないことがあった。しかも微生物に酸素を供給するため槽内を曝気すると、グリース阻集器から厨房室内に臭気を拡散させる原因ともなり、攪拌された浮上油が排水と一緒に流れ出てしまうこともあった。
そこで本発明では、油水分離機能を損なうことなく、臭気を拡散させないグリース阻集器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段として、本発明は、排水流入部から流入する排水から残さを除去するゴミ除去室と、油水分離室と、封水室とを有するグリース阻集器本体と、前記封水室に設けられ、下流の排水流出口に連通するように設置されるトラップと、グリース阻集器本体を覆う蓋とを有するグリース阻集器において、前記蓋とグリース阻集器本体との間の空間と、前記トラップ内とを連通する排気路を設け、前記排気路の途中に排気ファンを設けて、前記グリース阻集器内の空気を強制吸引し、排水流出口に排気することを特徴とする。
【0008】
グリース阻集器内の空気を排気ファン強制排気して、排水口に排気することで、グリース阻集器内を負圧にし、臭気が室内に拡散することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施例に係るグリース阻集器の断面図である。
【図2】本発明の第二実施例に係る排気路の断面図である。
【図3】従来のグリース阻集器に係る図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0011】
図1は、本発明の第一実施例にかかるグリース阻集器1の断面図である。床排水用として厨房の中に側溝2が設けられ、排水は、その側溝2から、床下に埋め込まれた箱型のグリース阻集器本体3内へ流入する。図1では、側溝式のグリース阻集器1が示されており、グリース阻集器本体3はその上縁3aが、側溝2の底部2aの高さより下になるように床下に埋め込まれている。側溝2の上部には、床面4と同じ高さになるようにグレーチングなどの蓋5がはめられる。
【0012】
床下に埋め込まれた阻集器本体3は、その本体周囲をコンクリート6aで打設されるが、側溝2の高さ分深く埋めこまれた阻集器本体3の上空間も、側溝2から排水が流入する排水流入部7である開口を確保して、阻集器本体3の外壁に沿ってコンクリート6bを打設し、防水加工を施す。この時、図示しないかさ上げを用いても構わない。そして、グレーチング用の蓋5と同じ高さになるように、阻集器本体3上に受枠8が設けられ、蓋9がはめられる。
【0013】
阻集器本体3は、仕切板10、11によって、排水流入部7から流入するゴミを除去するバスケット12を設けたゴミ除去室13、水と油の比重差を利用して油脂分を浮上分離させる油水分離室14、下水管からの臭気や害虫等の侵入を防ぐための封水を確保するための封水室15に区画され、各室を仕切板10、11の下方で連通させた構成を有している。封水室15には、排水を下水管へ案内するための排水流出口16が設けられており、この排水流出口16にはT型のトラップ17が接続されている。
【0014】
図1では、側溝式のグリース阻集器が表されているが、これに限らず、パイプによる排水が採用されている場合(パイプ式)は、阻集器本体3に、排水パイプに嵌合する排水流入口を設ける。
【0015】
前記排水流入部7には、防臭弁18が設けられる。防臭弁18は、打設したコンクリート6bあるいはかさ上げに、排水流入部7開口を覆うように取り付けられる。防臭弁18の下部18aはフラップになっており、排水が流入時にはその圧力によって開き、排水が流れこまないときは排水流入部7を覆うように、蝶番18bによって調節されている。これによって臭気がグレーチング5の隙間から厨房等の室内に拡散するのを防止する。
【0016】
パイプ式の場合も同様に、排水流入口の径断面を覆うように防臭弁17が取り付ければよい。
【0017】
さらに、グリース阻集器本体3内を定期的に清掃するために、簡易に蓋9をとり外せるように、取手19が取り付けられている。グリース阻集器は厨房などの床下に埋め込まれるため、厨房を歩く人がつまずいたりしないようにこの取手は落し込みにするとよい。落し込み取手19は、蓋9に穴を空けて蓋下の空間に取手19を落としこむため、この穴から臭気が室内に拡散しないように、蓋9の内側のほぼ全面を覆うように図示しない防臭蓋を設けてもよく、あるいは落し込み取手19の一つ一つを覆うように、それぞれ個別に防臭蓋20を設けてもよい。
【0018】
さらに、グリース阻集器1の蓋9は複数の蓋を並列させて使用することが多く、蓋と蓋とのつなぎ目や受枠8との隙間から臭気が室内に拡散しないよう、蓋9同士のつなぎ目や受枠8との間には図示しないパッキンを取り付けてもよい。
【0019】
以上のように、グリース阻集器1から外に臭気が拡散しないように種々の対策を施すのであるが、小さな粒子である臭気成分は、目に見えない隙間をぬって拡散することが避けられないこともある。そこで、グリース阻集器の蓋9と阻集器本体3上との間に広がる空間S内の臭気を含んだ空気を強制吸引して、下水道に連通する排水流出口16に案内して排気させる排気路21を設ける。
【0020】
空間S内の空気を強制吸引する手段としてファン22を用いるのであるが、図1に示すように、ファン22はファン装置22aに収容されて、グリース阻集器1の外部に設けることができる。ファン装置22aは厨房の環境に応じて、床下に埋設してもよく、床上に設置してもよく、壁に取り付けてもよい。グリース阻集器本体3が浅い場合には、ファン装置22aを阻集器本体3内に設置してしまうと、排水がファン22にかかる恐れがあるが、本体3外部に設置することでそのリスクを回避できる。
【0021】
排気路21は、ファン装置22aを介して、吸引側通路23と排気側通路24を設け、吸引側通路23の一端である吸引口23aを空間S内に位置させて空間S内の空気を吸引させるとともに、トラップ17の取り外し可能な点検蓋17aに貫通固定させた案内管25の上端開口25aを空間S内に位置させて、前記上端開口25aと前記排気側通路24の他端口24aを接続させ、前記案内管25の下端の排気口25bを、トラップ17内の水面下に下方向きに位置させる。こうして空間S内の空気は、吸引側通路23、ファン装置22a内部、排気側通路24、案内管25からなる排気路21を経由して排水流出口16から下水道へ排気されることとなる。このとき、水面から案内管25の下端25bまでの深さは、SHASE−S(空気調和・衛生工学会規格)等で定められる基準以上の封水深を確保して悪臭や害虫等の侵入を防ぐ。
【0022】
ほかに、案内管25の下端の排気口25bから水中に排出される排気によって、封水室15内の排水が攪拌され、油水分離室14の浮遊油が再び排水に混合される場合には、案内管25の下端をJ字のように湾曲させて、排気口25bが水面下の比較的浅い場所で上向きになるようにしてもよい。この時も、水面から案内管25のJ字湾曲部の最下部との距離が前記規格等で定められた封水深を確保するようにする。
【0023】
また別に、排気側通路24内あるいは案内管25の内部に、上流に弾性付勢されて閉じるようにされた図示しない弁やボールを設け、上流からの排気に対しては下方に押し下げられて前記排気を許し、下流からの逆流に対してはこれを阻止する逆止弁を設けた場合には、排気口25bはトラップ17内の水面上に位置させることができる。
【0024】
排気側通路24内あるいは案内管25内に逆止弁を設けた場合、容器本体2が浅い場合など、排水中に排気することによって、油水分離機能に影響を受けやすいグリース阻集器においても、排気口21bから排気された排気が容器本体2内の排水を攪拌するのを防ぎ、かつ、臭気の拡散を防止できる。
【0025】
排気路21の一部を構成する吸引側通路23や排気側通路24は、ビニールホースなどのフレキシブルな素材を用い、案内管25は塩ビパイプを用いることができるが、これに限定されない。案内管25と当該案内管25に貫通されたトラップ17の点検蓋17aとの隙間にはシーリングを施し、臭気がグリース阻集器本体3の空間Sに再度漏れないようにする。
【0026】
図1では、トラップ17にT型のトラップ管が表されているが、これに限らず、P型やワン型でもよく、管でなく阻集器本体3の底面から立ち上がる隔壁であっても、同様に案内管25を設置することができる。
【0027】
ファン装置22aと同様に、排気路21の吸引側通路23や排気側通路24も床下や床上や壁上に設置することができる。吸引側通路23の吸気口23aや排気側通路24の他端口24aを空間S内へ連通させるために、蓋9あるいはコンクリート6bや図示しないかさ上げのいずれかの箇所を任意の方法で貫通して連通させるのであるが、その際には、貫通穴に防水・防臭のシーリングなどを施す。
【0028】
ファン22は、家庭用コンセント(100V)を用いる。臭気拡散防止のため、蓋9等の隙間などにパッキン等のシーリングを施したりすることにより、排気量を極力抑えることができ、汎用ファンでも十分に対応することができるため、特別な電気容量を必要とするコンセントを用意する必要がなく、設置が容易である。
【0029】
グリース阻集器1は通常、蓋9を取り外して、バスケット12のゴミや油水分離室14の油脂分を回収するなど、定期的な清掃・メンテナンスが必要とされるため、蓋9に吸引側通路23や排気側通路24が貫通されている場合には、蓋9の取り外しに不便が伴う。そこで、蓋9の外側に図示しない継手を介し、吸引側通路23や排気側通路24を蓋9の外部で取り外せるようにしてもよい。こうすれば、長い通路23・24をつけたまま蓋9の取り外しをしなくとも良くなり、作業の効率向上に寄与できる。
【0030】
図1に示す阻集器本体3は、仕切板10、11によってゴミ除去室13、油水分離室14、封水室15に仕切られているが、この形態に限定されないことはいうまでもない。油水分離室が封水室を兼ねていてもよく、油水分離室が複数あっても構わない。また、グリース阻集器1は、床下に埋設される形態に限らず、流し台の下などの床上に設置されるものであってもよい。
【0031】
次に、図2を用いて、本発明の第二実施例について説明する。なお、以下の説明では第一実施例と異なる点において説明し、第一実施例と重複する説明は省略する。
【0032】
第二実施例では、ファン26を含む排気路27をすべてグリース阻集器本体1内に設置する。排気路27は、ファン26を収容するファン装置26aの上部吸引側にグリース阻集器本体3内の空間Sの空気を吸引するための吸気口28を設けると共に、ファン装置26aの下部排気側にはトラップ17の点検口17bに嵌合される嵌合部29を設け、当該嵌合部29からトラップ17内の下方に延びる案内管30が設けられて、構成されている。
【0033】
図2に示すように、ファン装置26aは、トラップ17と同じ径の円筒形で、上部吸引側に設けられた吸気口28は、ファン装置26aより小径の円筒状に形成されて、上部開口からグリース阻集器本体3の空間S内の空気を吸引する。吸気口28の上方には、グリース阻集器本体3内の排水や清掃時の水がファン26にかかるのを防止する傘31を設けている。
【0034】
前記嵌合部29は、トラップ17の点検口17b内径に隙間なく嵌合されるように円筒形状を有し、内部は空洞で排気通路の一部を構成している。嵌合部29の底面から案内管30が下方へ延びて、下水道へ連通する排水流出口16へ排気を案内する。
【0035】
第二実施例のファン装置26aの形状は円筒形に限定されるものではなく、方形であっても構わない。また、吸気口28も円筒状の開口に限定されるものではなく、ファン装置26aに直接開口を設けたものでも構わない。嵌合部29も、トラップ17の点検口17bの内径でなく外径に嵌合させるタイプであっても構わないし、これら記述した形状に限定されない。
【0036】
第二実施例に係るファン装置26aを含む排気路27は、トラップ17から脱着可能に取り付けられ、清掃の際は、取り外してトラップ17内を掃除することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 グリース阻集器
2 側溝
3 グリース阻集器本体
4 床
5 側溝蓋
6a、6b コンクリート
7 排水流入部
8 受枠
9 蓋
10、11 仕切板
12 バスケット
13 ゴミ除去室
14 油水分離室
15 封水室
16 排水流出口
17 トラップ
18 防臭弁
19 取手
20 防臭蓋
21 排気路
22 ファン
22a ファン装置
23 吸引側通路
24 排気側通路
25 案内管



【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水流入部から流入する排水から残さを除去するゴミ除去室と、油水分離室と、封水室とを有するグリース阻集器本体と、前記封水室に設けられ、下流の排水流出口に連通するように設置されるトラップと、グリース阻集器本体を覆う蓋とを有するグリース阻集器において、
前記蓋とグリース阻集器本体との間の空間と、前記トラップ内とを連通する排気路を設け、前記排気路の途中に排気ファンを設けて、前記グリース阻集器内の空気を強制吸引し、排水流出口に排気することを特徴とするグリース阻集器。
【請求項2】
前記トラップ内に連通させた排気路の一端は、封水面下に位置するようにしたことを特徴とする請求項1記載のグリース阻集器。
【請求項3】
前記トラップ内に連通させた排気路の内部に逆止弁を設けたことを特徴とする請求項1記載のグリース阻集器。
【請求項4】
前記排気ファンは、グリース阻集器の外部に設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のグリース阻集器。
【請求項5】
前記排気ファンは、前記トラップの点検口に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のグリース阻集器。
【請求項6】
前記排水流入部に、防臭弁を取り付けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のグリース阻集器。
【請求項7】
前記蓋には、防臭蓋が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載のグリース阻集器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−104251(P2013−104251A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249955(P2011−249955)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(591059445)ホーコス株式会社 (39)
【Fターム(参考)】