説明

グルカゴン受容体アンタゴニスト、並びにその調製及び治療への使用

本発明では式Iの新規な化合物又はその薬理学的に許容できる塩類(グルカゴン受容体アンタゴニスト又は逆アゴニスト活性を有する)、並びにかかる化合物の調製方法を開示する。他の実施形態として、本発明では式Iの化合物を含んでなる医薬組成物、並びにそれらを使用した糖尿病及び他のグルカゴンが関連する代謝異常などを治療する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)本願は、2005年11月17日に出願された米国仮特許出願第60/737627号の優先権を主張する。
【0002】
本発明はグルカゴン受容体のアンタゴニスト若しくは逆アゴニストである化合物、それを含む医薬品組成物、並びにヒト若しくは動物の身体の治療への、当該化合物及び組成物の使用に関する。本発明の化合物は、グルカゴン受容体への高い親和性及び選択的な結合を示すため、グルカゴン受容体の調節に反応した障害(例えば糖尿病及び他のグルカゴンに関連する代謝異常など)の治療において、有用である。
【背景技術】
【0003】
グルカゴンは、インシュリンと協同して血糖値の恒常性の調節に関与する、鍵となるホルモン物質である。グルカゴンは主に、血糖レベルが減少したとき、特定の細胞(これらの中で肝細胞が重要)を刺激してグルコースを放出させる機能を有する。グルカゴンは、血糖レベルが上昇した際にグルコースを取り込んで保持するように細胞を刺激するインシュリンとは反対の機能を果たす。グルカゴン及びインシュリンはペプチドホルモンであり、グルカゴンは膵臓のα小島細胞において、産生され、一方インシュリンはβ小島細胞において、産生される。グルカゴンはその受容体(7回膜貫通型のGタンパク質共役受容体ファミリーのグルカゴン−セクレチン分岐のメンバーである)と結合し、活性化させる機能を有する。該受容体は、アデニリルシクラーゼの第二メッセンジャー系を活性化させ、cAMP濃度の増加をもたらすことによりその機能を果たす。グルカゴン受容体又は該受容体の天然変異体は、in vivo並びにin vitroにおいても固有の構成的な活性(すなわちアゴニストの非存在下での活性)を有すると考えられる。逆アゴニストとして作用する化合物は、この活性を阻害できる。
【0004】
糖尿病は、グルコース代謝に関係する一般的な障害である。該疾患は高血糖症が特徴であるインシュリン依存型の1型糖尿病、又は非インシュリン依存性が特徴である2型糖尿病に分類できる。1型糖尿病に罹患している被験者は高血糖及び低インシュリン活性が特徴であり、インシュリン投与がこのタイプの疾患の従来の治療法である。しかしながら、一部の1型又は2型糖尿病患者では、絶対的又は相対的に高いグルカゴンレベルによって、高血糖状態となることが示されている。すなわち、健常の対照動物、並びに1型及び2型糖尿病のモデル動物で、選択的及び特異的な抗体により循環するグルカゴンを除去した結果、血糖レベルの減少が生じる。グルカゴン受容体を欠失(ホモ型)するマウスではグルコース耐性が増強される。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドによるグルカゴン受容体発現の阻害により、db/dbマウスの糖尿病の症状が改善される。これらの知見は、グルカゴンを抑制又はアンタゴナイズする作用が、糖尿病患者の高血糖症の従来の治療に有用であることを示唆するものである。グルカゴンの作用は、アンタゴニスト又は逆アゴニスト(すなわち、グルカゴン受容体が媒介する構造的な(又はグルカゴンにより誘発された)反応を抑制又は阻害する物質)の提供により抑制できる。
【0005】
幾つかの刊行物において、グルカゴンアンタゴニストとして作用するとされるペプチドが開示されている。ペプチドホルモンに対するペプチドアンタゴニストの作用は通常強力であるが、それらはin vivoで生体内の酵素により分解されて十分に分布しないため、経口的に使用できないことが一般に知られている。したがって、経口的に利用できるペプチドホルモンに対する非ペプチドアンタゴニストが通常は好ましい。
【0006】
近年多くの刊行物において、グルカゴン受容体上で作用する非ペプチド物質が報告されている。例えば、特許文献1及び2、並びに非特許文献1では各々、グルカゴン受容体アンタゴニスト活性を有する非ペプチド化合物を開示している。グルカゴンに関連する疾患の治療方法が数多く存在するにもかかわらず、現行の治療では幾つかの課題点が存在し、例えば特定の患者集団における不十分又は不完全な有効性、許容できない副作用及び逆作用などが挙げられる。
【特許文献1】国際公開第2004/002480号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/048109号パンフレット
【非特許文献1】Kurukulasuriyaら、“Biaryl amide glucagon receptor antagonists” Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,vol.14,no.9,pages 2047−2050,2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、グルカゴン受容体活性を調節して、グルカゴン受容体を調節することが有効である疾患を処理するための代替的若しくは改良された医薬品の使用に基づく、改良された治療方法に対するニーズが今なお存在する。本発明は、新規な化合物群がグルカゴン受容体に対する高い親和性、及び選択的、強力な阻害活性を有するという発見に基づき、従来技術に対する解決手段とするものである。本発明は特定の構造及びそれらの作用を特徴とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式Iで表される構造を有する化合物、
【化1】


(I)
又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。
式中、R1及びR2は独立に水素又はハロゲンであり、
R3は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)シクロアルキル基、−(C−C)アルキル−(C−C)シクロアルキル基又は−(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R4及びR5は独立に水素、−ハロゲン、−ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、−CN、−(C−C)アルコキシ基、−(C−C)アルケニル基又は−(C−C)アルキル基(任意に、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R6は水素、−ハロゲン、又は、
【化2】


であって、式中、ジグザク表記は親分子への結合位置を示し、
R7及びR8は独立に水素、−ハロゲン、−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)アルコキシル基、−(C−C)シクロアルキル基、−C(O)R10、−COOR10、−OC(O)R10、−OS(O)R10、−SR10、−S(O)R10、−S(O)R10又は−O(C−C)アルケニル基であり、
R9は独立に水素、ハロゲン、−CN−(C−C)シクロアルキル基、−C(O)R10、−COOR10、−OC(O)R10、−OS(O)R10、−SR10、−S(O)R10、−S(O)R10、又は−O(C−C)アルケニル基、−(C−C)アルコキシ基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)若しくは−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R10は各々独立に−水素又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
【0009】
本発明は、グルカゴン受容体アンタゴニスト又は逆アゴニストとして有用である化合物及び医薬組成物の提供に関する。本発明は更に、GLP−1受容体よりもグルカゴン受容体に選択的なアンタゴニスト又は逆アゴニストである化合物の提供に関する。本発明は、式I(又はその薬理学的に許容できる塩)、並びに薬理学的に許容できる担体、希釈剤若しくは賦形剤を含んでなる医薬組成物の提供に関する。本発明は更に、これらの化合物及び医薬組成物の使用、例えば糖尿病及びグルカゴン関連の代謝障害などの、グルカゴン受容体の変調に感受性の障害の治療への使用の提供に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
一実施態様では、本発明は本明細書に記載の式Iの化合物の提供に関する。本発明に記載の化合物の全てが有用であるが、具体的な化合物に関しては特に興味深く、また好適である。以下に好ましい化合物群を幾つか示す。また本明細書に記載のように、あるリスト中の各々を他のリストのものと組み合わせて更なる好ましい実施態様の群を構成してもよいことが理解できる。
【0011】
別の実施形態では、本発明は式Iの化合物の提供に関する。詳細には、式中、
R1及びR2は水素であり、
R3は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)シクロアルキル基、−(C−C)アルキル−(C−C)シクロアルキル基、又は−(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
R4及びR5は独立に水素、−ハロゲン、又は−(C−C)アルキル基(任意に、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
R6は
【化3】


であって、式中、ジグザク表記は親分子への結合位置を示し、
R7及びR8は独立に水素、−ハロゲン、−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)アルコキシル基であり、
R9は独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
【0012】
別の実施形態では、本発明は式Iの化合物の提供に関する。詳細には、式中、
R1及びR2は水素であり、
R3は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)シクロアルキル基、−(C−C)アルキル−(C−C)シクロアルキル基又は−(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R4及びR5は独立に水素、−ハロゲン、又は−CH(任意に、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R6は
【化4】


であって、式中、ジグザク表記は親分子への結合位置を示し、
R7及びR8は独立に水素、又はハロゲンであり、
R9は独立に−(C−C)アルキル基(任意に、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
【0013】
別の実施形態では、本発明は式Iの化合物の提供に関する。詳細には、式中、
R1及びR2は水素であり、
R3は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)シクロアルキル基、−(C−C)アルキル−(C−C)シクロアルキル基又は−(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R4及びR5は−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であって、その各々はR6が結合するフェニル環上のR6に隣接しする部位を占め、
R6は
【化5】


であって、式中、ジグザク表記は親分子への結合位置を示し、
R7及びR8は水素であり、
R9は独立に−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
【0014】
別の実施形態では、本発明は式Iの化合物の提供に関する。詳細には、式中、
R1及びR2は独立に水素又はハロゲンであり、
R3はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−メチルプロピル基、3−メチルブチル基、tert−ブチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、3−トリフルオロプロピル基、4−トリフルオロブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基であり、
R4及びR5は独立に水素、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、ペンチル基、イソプロポキシ基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、−CN、メトキシ基、ヒドロキシメチル基、4−メチルペンチルオキシ基又はペンチルオキシ基であり、
R7及びR8は独立に水素、フルオロ基、クロロ基、メチル基、エチル基、ペンチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、アセチル基、2−メチルプロピル基、メトキシ基、シクロヘキシル基又はトリフルオロメトキシ基であり、
R9は水素、ブロモ基、フルオロ基、メチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基又はイソプロピル基である。
【0015】
本発明の他の実施態様として、本明細書の上記の実施態様の各々を以下のような更に好ましい態様に限定したものを示す。具体的には、下記の好ましい態様の各々は、上記の実施態様を各々独立に組み合わせたものであり、その具体的な組合せにより他の実施態様が提供され、それは示される変動要素が好適な態様として更に限定されたものとなる。
【0016】
好ましくは、R1は水素である。
好ましくは、R1はフッ素である。
好ましくは、R1は塩素である。
好ましくは、R2は水素である。
好ましくは、R2はフッ素である。
好ましくは、R2は塩素である。
好ましくは、R1及びR2は水素である。
好ましくは、R1はフッ素であり、R2はフッ素である。
【0017】
好ましくは、R3は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
好ましくは、R14はエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、3−メチル−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−メチルプロピル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基又は4,4,4−トリフルオロブチル基である。
好ましくは、R14はイソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、3−メチル−ブチル基、ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−メチルプロピル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、3−トリフルオロプロピル基又は4,4,4−トリフルオロブチル基である。
好ましくは、R3はイソプロピル基、3−メチル−ブチル基、トリフルオロプロピル基又は4,4,4−トリフルオロブチル基である。
【0018】
好ましくは、R3は−(C−C)シクロアルキル基である。
好ましくは、R3はシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基である。
好ましくは、R3はシクロプロピル基である。
好ましくは、R3はシクロブチル基である。
好ましくは、R3はシクロペンチル基である。
好ましくは、R3はシクロヘキシル基である。
【0019】
好ましくは、R3は−(C−C)アルキル−(C−C)シクロアルキル基である。
好ましくは、R3は−(C−C)アルキル−(C−C)シクロアルキル基である。
好ましくは、R3は−(C−C)アルキル−シクロプロピル基である。
好ましくは、R3は−(C−C)アルキル−シクロブチル基である。
好ましくは、R3は−(C−C)アルキル−シクロペンチル基である。
好ましくは、R3は−(C−C)アルキルシクロヘキシル基である。
【0020】
好ましくは、R3は−(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
好ましくは、R3は−シクロプロピル−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
好ましくは、R3は−シクロブチル−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
好ましくは、R3は−シクロペンチル−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
好ましくは、R3は−シクロヘキシル−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
【0021】
好ましくは、R4は水素、−ハロゲン、−ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
好ましくは、R4は水素、−ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
好ましくは、R4は水素、−ハロゲン又は−CHである。
好ましくは、R4は水素である。
好ましくは、R4はフッ素、塩素又は臭素である。
好ましくは、R4は−CHである。
【0022】
好ましくは、R5は水素、−ハロゲン、−ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
好ましくは、R5は水素、−ハロゲン又は−(C−C)アルキル基(任意に、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
好ましくは、R5は水素、−ハロゲン、又は−CHである。
好ましくは、R5は水素である。
好ましくは、R5はフッ素、塩素又は臭素である。
好ましくは、R5は−CHである。
【0023】
好ましくは、R4及びR5は水素である。
好ましくは、R4はハロゲンであり、R5は水素である。
好ましくは、R4は水素であり、R5は−CHである。
好ましくは、R4及びR5は−CHである。
好ましくは、R4及びR5はCHであって、その各々はR6が結合するフェニル環上のR6に隣接する位置を占める。
【0024】
好ましくは、R6は水素である。
好ましくは、R6はCHである。
好ましくは、R6は
【化6】


であって、式中、ジグザク表記は親分子への結合位置を示す。
【0025】
好ましくは、R7は−ハロゲン、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)アルコキシル基、−(C−C)シクロアルキル基、−C(O)R10、−COOR10、−OC(O)R10、−OS(O)R10、−SR10、−S(O)R10、−S(O)R10又は−O(C−C)アルケニル基である。
好ましくは、R7は−ハロゲン、−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−(C−C)アルコキシル基である。
好ましくは、R8は水素又はハロゲンである。
好ましくは、R7は水素である。
【0026】
好ましくは、R8は−ハロゲン、−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)アルコキシル基、−(C−C)シクロアルキル、−C(O)R10、−COOR10、−OC(O)R10、−OS(O)R10、−SR10、−S(O)R10、−S(O)R10又は−O(C−C)アルケニル基である。
好ましくは、R8は−ハロゲン、−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−(C−C)アルコキシル基である。
好ましくは、R8は水素又はハロゲンである。
好ましくは、R8は水素である。
好ましくは、R7は水素であり、R8は水素である。
【0027】
好ましくは、R6は
【化7】


であり、式中、ジグザク表記は親分子への結合部位を示し、R7は水素であり、R8は水素である。
【0028】
好ましくは、R9は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
好ましくは、R9はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、3−メチル−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、3,3−ジメチルブチル基、2−メチルプロピル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、3−トリフルオロプロピル基又は4−トリフルオロブチル基である。
好ましくは、R9はイソプロピル基、tert−ブチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0029】
好ましくは、R6は
【化8】


であり、式中、ジグザク表記は親分子への結合位置を示し、R7は水素であり、R8は水素であり、R9はイソプロピル基、tertブチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0030】
好ましくは、R10は独立に−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
【0031】
本発明の他の実施形態としては、式Z1からZ6の化合物が挙げられる。本発明の他の実施形態は、本願明細書に記載されている全ての新規な中間調製物であり、それらは式Iの化合物、又はZ1からZ6に係るグルカゴン受容体アンタゴニスト又は逆アゴニストの調製にとり有用である。
【0032】
【表1】

グルカゴン受容体と相互作用するため、グルカゴン受容体との相互作用が有益である一般的な症状及び障害の治療において、本発明の化合物は有用である。これらの障害及び症状は「糖尿病性及びその他のグルカゴン関連の代謝異常」として本明細書にて定義する。当業者であれば「糖尿病及び他のグルカゴン関連の代謝異常」を、障害の病態生理学又は障害への恒常性反応のいずれにおける、グルカゴン受容体により媒介されるシグナリングに関連するものとして同定できる。このように、本発明の処理と関連した不必要な副作用の1つ以上を減少及び/又は除去する一方で、例えば内分泌系、中枢神経系、末梢神経系、心臓血管系、肺系及び胃腸系の疾患又は症状又は関連する徴候又は後遺症の予防、治療又は軽減するための該化合物の使用が考えられる。「糖尿病及び他のグルカゴン関連の代謝異常」としては、限定はされないが、糖尿病、高血糖症、高インシュリン症、β細胞休息、第1相応答の復元によるβ細胞機能の向上、食事の高血糖症、アポトーシス防止、空腹時血糖異常(IFG)、メタボリックシンドローム、低血糖症、高/低カリウム血症、正常化グルカゴン濃度、改善したLDL/HDL比率、間食の減少、摂食障害、体重減少、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)、糖尿病の結果としての肥満、成人の潜在的な自己免疫性糖尿病(LADA)、インスリン炎、小島移植、小児性糖尿病、妊娠糖尿病、遅発性糖尿病合併症、低/高蛋白尿、腎症、網膜症、神経障害、糖尿病による足潰瘍、グルカゴン投与による腸運動の低下、短小腸症候群、下痢止め、胃液分泌の増加、血流量減少、勃起障害、緑内障、手術後侵襲、虚血の後の血流の再潅流により生じる器官組織損傷の改善、虚血心傷害、心不全、うっ血性心不全、脳卒中、心筋梗塞、不整脈、早死、抗アポトーシス、創傷治癒、糖耐性(IGT)、インスリン抵抗性症候群、X症候群、1型糖尿病、2型糖尿病、高脂血症、異脂肪血症、過トリグリセリド血症、リポ蛋白過剰血症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化を含む動脈硬化症、グルカゴノーマ、急性膵炎、心臓血管疾患、高血圧、心臓肥大症、胃腸の障害、肥満、肥満の結果としての糖尿病、糖尿病性異脂肪血症などが挙げられる。
【0033】
更に本発明は式Iの化合物若しくはその薬理学的に許容できる塩、又は式Iの化合物若しくはその薬理学的に許容できる塩及び薬理学的に許容できる担体、希釈剤若しくは賦形剤を含んでなる医薬組成物の、グルカゴン受容体の阻害のための、哺乳類のグルカゴン受容体が媒介する細胞応答を阻害するための、哺乳類における血糖を減少させるための、過剰なグルカゴンに起因する疾患を処理するための、哺乳類における糖尿病及び他のグルカゴン関連代謝異常における、及び糖尿病、肥満、高血糖症、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、脳卒中、神経障害及び創傷治癒の治療のための使用に関する。すなわち本発明の使用及び方法には、式Iの化合物の予防及び治療的な投与が包含される。
【0034】
更に本発明は式Iの化合物若しくはその薬理学的に許容できる塩の、グルカゴン受容体を阻害する薬剤の製造のための、哺乳類におけるグルカゴン受容体が媒介する細胞反応を阻害する薬剤の製造のための、哺乳類における血糖レベルを減少させるための薬剤の製造のための、過剰なグルカゴンに起因する疾患を処理するための薬剤の製造のための、哺乳類における糖尿病及び他のグルカゴン関連代謝異常の治療用の薬剤の製造のための、及び糖尿病、肥満、高血糖症、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、脳卒中、神経障害の治療及び創傷の治療用薬剤の製造のための使用に関する。
【0035】
更に本発明は、哺乳類の過剰なグルカゴンから生じる症状の治療方法、哺乳類のグルカゴン受容体の阻害方法、哺乳類のグルカゴン受容体が媒介する細胞反応の阻害方法、哺乳類の血糖レベルの低下方法、哺乳類の糖尿病及び他のグルカゴン関連の代謝異常の治療方法、並びに糖尿病、肥満、高血糖症、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、脳卒中、神経障害の治療及び創傷治癒方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類に、式Iの化合物若しくはその薬理学的に許容できる塩、又は式Iの化合物若しくはその薬理学的に許容できる塩及び薬理学的に許容できる担体、希釈剤若しくは賦形剤を含んでなる医薬組成物を、グルカゴン受容体を阻害するのに十分な量で投与することを含んでなる方法の提供に関する。
【0036】
更に本発明は、グルカゴン受容体の阻害のための使用に適する、グルカゴン受容体が媒介する細胞反応の阻害のための使用に適する、哺乳類の血糖レベルの低下のための使用に適する、哺乳類の糖尿病性及び他のグルカゴン関連の代謝異常の治療のための使用に適する、糖尿病、肥満、高血糖症、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、脳卒中、神経障害の予防若しくは治療、並びに創傷治癒のための使用に適する、式Iの化合物若しくはその薬理学的に許容できる塩、並びに薬理学的に許容できる担体、希釈剤若しくは賦形剤を含んでなる医薬組成物に関する。
【0037】
本発明の化合物又は塩の使用により更に、グルカゴン受容体に欠陥を有する患者の同定するための診断薬、並びに、胃酸分泌を増加させ、グルカゴン投与による腸の低蠕動を好転させるための治療薬が提供される。本発明はまた、グルカゴンをアンタゴナイズする作用が有益である障害又は疾患の治療方法の提供に関し、当該方法は、有効量の本発明の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる。本発明の他の実施形態は、本発明の化合物を用いた、グルカゴンにより媒介されるあらゆる症状及び疾患を治療するための薬剤の調製方法の提供に関する。本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物を用いて血糖症の治療用の医薬組成物を調製する。本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物を用いて哺乳類の血糖値を低下させるための薬剤を調製する。本発明の化合物は絶食時及び食後段階の両方における血糖値を低下させる場合に有効である。本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物を用いてIGT治療用の医薬組成物を調製する。本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物を用いて2型糖尿病の治療用の医薬組成物を調製する。本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物を用いてIGTから2型糖尿病への進行を遅らせ、又は抑止するための医薬組成物を調製する。本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物を用いてインスリン非依存性2型糖尿病からインスリン依存性2型糖尿病への進行を遅らせ又は抑止するための医薬組成物を調製する。本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物を用いてI型糖尿病の治療用の医薬組成物を調製する。かかる治療は通常インスリン療法を伴う。本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物を用いて肥満治療用の医薬組成物を調製する。本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物を用いて脂質代謝疾患の治療用の医薬組成物を調製する。本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物を用いて食欲の制御又はエネルギー消費に関する疾患の治療用の医薬組成物を調製する。本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物による患者の治療は食餌療法及び/又は運動療法と組み合わされる。
【0038】
本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物は1つ以上の更なる活性物質と任意の適当な比率で組み合わせて投与される。このような活性物質は例えば抗糖尿病剤、抗肥満剤、抗高圧剤、糖尿病、又は糖尿病に関連した合併症の治療用薬剤及び肥満に関連した合併症の治療用薬剤から選択してもよい。以下にグループの組合せをいくつか列挙する。当然のことながら、以下に指定される薬剤の各々と他に指定される薬剤によって、組合せを増やしてもよい。
【0039】
本発明の更なる実施形態では、一種以上の抗糖尿病剤と併用して本発明の化合物を投与してもよい。
【0040】
適当な抗糖尿病剤にはインスリン、インスリンアナログ及び誘導体、(例えばNεB29−テトラデカノイルdes(B30)ヒトインスリン(欧州特許第792290号明細書(Novo Nordisk A/S)に開示)、AspB28ヒトインスリン(欧州特許第214826号明細書及び欧州特許第705275号明細書(Novo Nordisk A/S)に開示)、LysB28 ProB29ヒトインスリン(米国特許第5,504,188号明細書(Eli Lilly)に開示)、Lantus(登録商標)(欧州特許第368187号明細書(Aventis)に開示)が全て本明細書に援用される。)、GLP−1及びGLP−1誘導体(国際公開第98/08871号パンフレット(Novo Nordisk A/S)に開示、本明細書に援用される。)、その他、経口で活性のある血糖値低下剤などのインスリンアナログ及び誘導体が挙げられる。
【0041】
経口投与で有効な血糖降下剤としては、以下のものが包含される:イミダゾリン、スルホニルウレア、ビグアニド、メグリチニド、オキサジアゾリジンジオン、チアゾリジンジオン、インシュリン増感剤、インシュリン分泌促進物質(例えばグリメピリド)、α−グルコシダーゼ阻害剤、及びβ−細胞のATP依存性カリウムチャネルに作用する物質(例えば国際公開第97/26265、国際公開第99/03861及び国際公開第00/37474(Novo Nordisk A/S)(本明細書に援用される)において開示されるようなカリウムチャネル開放物質、又はミチグリニド、又はカリウムチャネルブロッカー(例えばBTS−67582、ナテグリニド)、グルカゴン拮抗剤(例えば国際公開第99/01423号及び国際公開第00/39088号(本明細書に援用される)、Novo Nordisk A/S及びAgouron Pharmaceuticals社)において開示される)、GLP−1アンタゴニスト、DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)阻害剤、PTPアーゼ(チロシンホスファターゼ)阻害剤、糖新生及び/又は糖原分解の刺激に関係する肝酵素阻害剤、グルコース取り込み調節因子(国際公開第00/58293号、国際公開第01/44216号、国際公開第01/83465号、国際公開第01/83478号、国際公開第01/85706号、国際公開第01/85707号及び国際公開第02/08209号(Hoffman−La Roche社)に開示されるもの、又は国際公開第03/00262号、国際公開第03/00267号及び国際公開第03/15774号(AstraZeneca社)(本明細書に援用される)において開示されるグルコキナーゼ(GK)の活性剤)、GSK−3(グリコゲン合成酵素キナーゼ−3)阻害剤、HMG CoA阻害剤(スタチン)などの抗脂質物質などの脂質代謝調節化合物、摂食を低下させる化合物、PPAR−α、PPAR−γ及びPPAR−δサブタイプを含むPPAR(ペルオキシソーム増殖剤で活性化する受容体)リガンド及びRXR(レチノイドX受容体)アゴニスト(例えばALRT−268、LG−1268又はLG−1069)。
【0042】
もう1つの実施形態では、本発明の化合物はインスリン又はNεB29−テトラデカノイルdes(B30)ヒトインスリン、AspB28ヒトインスリン、LysB28 ProB29ヒトインスリン、Lantus(登録商標)などのインスリンアナログ又は誘導体、又はこれらの1つ以上からなる混合製剤と併用して投与される。
【0043】
本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物はグリベンクラミド、グリピジド、トルブタマイド、クロロパミデム、トラザミド、グリメプリド、グリカジド及びグリブリドなどのスルホニル尿素と併用して投与される。
【0044】
本発明の別の実施形態では、本発明の化合物はビグアニド例えばメトルミンと併用して投与される。
【0045】
本発明の更に別の実施形態では、本発明の化合物はメグリチニド例えばレパグリニド又はナテグリニドと併用して投与される。
【0046】
本発明のなおもう1つの実施形態では、本発明の化合物はチアゾリジンジオンインスリン抵抗性改善薬例えばトログリタゾン、シグリタゾン、ピオリタゾン、ロシグリタゾン、イサグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、CS−011/CI−1037又はT174又は、本明細書に引用して組み込まれている国際公開第97/41097号パンフレット、国際公開第97/41119号パンフレット、国際公開第97/41120号パンフレット、国際公開第00/41121号パンフレット及び国際公開第98/45292号パンフレット(Dr. Reddy’s Research Foundation)に開示された化合物と併用して投与される。
【0047】
本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物は、例えばGI262570、YM−440、MCC−555、JTT−501、AR水素039242、KRP−197、GW−409544、CRE−16336、AR水素049020、LY510929、LY510929、MBX−102、CLX−0940、GW−501516などのインスリン抵抗性改善薬と、又は、ラガグリタザール(NN 622又は(−)DRF 2725)(Dr. Reddy’s Research Foundation)などの国際公開第99/19313号パンフレット、国際公開第00/50414号パンフレット、国際公開第00/63191号パンフレット、国際公開第00/63192号パンフレット、国際公開第00/63193号パンフレット及び本明細書に引用して組み込まれている国際公開第00/23425号パンフレット、国際公開第00/23415号パンフレット、国際公開第00/23451号パンフレット、国際公開第00/23445号パンフレット、国際公開第00/23417号パンフレット、国際公開第00/23416号パンフレット、国際公開第00/63153号パンフレット、国際公開第00/63196号パンフレット、国際公開第00/63209号パンフレット、国際公開第00/63190号パンフレット及び国際公開第00/63189号パンフレット(Novo Nordisk A/S)に開示される化合物と併用して投与してもよい。
【0048】
本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物はα−グルコシダーゼ阻害剤、例えばボグリボース、ミグリトール又はアカルボースと併用して投与される。
【0049】
本発明の別の実施形態では、本発明の化合物はβ−細胞のATP−依存性のカリウムチャネルに作用する薬剤、例えばトルブタマイド、グリベンクラミド、グリピジド、グリカジド、BTS−67582又はレパグリニドと併用して投与される。
【0050】
本発明の更に別の実施形態では、ナテグリニドと併用して本発明の化合物を投与してもよい。
【0051】
本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物は抗脂血薬又は抗高脂血薬、例えばコレスチラミン、コレスチポル、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ロバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、プロブコル、デキストロチロキシン、フェノフィブレート又はアトロバスチンと併用して投与される。
【0052】
本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物は食物摂取を低下する化合物と併用して投与される。
【0053】
本発明の別の実施形態では、本発明の化合物は一種以上の上記化合物と併用して、例えば、メトホルミンとグリブライドなどのスルホニル尿素、スルホニル尿素とアカルボース、ナテグリニドとメトホルミン、レパグリニドとメトホルミン、アカルボースとメトホルミン、スルホニル尿素、メトホルミンとトログリタゾン、インスリンとスルホニル尿素、インスリンとメトホルミン、インスリン、メトホルミン及びスルホニル尿素、インスリンとトログリタゾン、インスリンとロバスタチン等と併用して投与される。
【0054】
本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物は一種以上の抗肥満剤又は食欲調整剤と併用して投与されてもよい。そのような薬剤は、以下の物質からなる群から選択してもよい:CART(コカイン、アンフェタミンで制御される転写産物ペプチド)アゴニスト、NPY(神経ペプチドY)アンタゴニスト、MC4(メラノコルチン4)アゴニスト、MC3(メラノコルチン3)アゴニスト、オレキシンアンタゴニスト、TNF(腫瘍壊死因子)アゴニスト、CRF(副腎皮質刺激ホルモン放出因子)アゴニスト、CRF BP(副腎皮質刺激ホルモン放出因子結合タンパク質)アンタゴニスト、ウロコルチンアゴニスト、CL−316243、AJ−9677、GW−0604、LY362884、LY377267、などのβ3アドレナリン作動性アゴニスト又はAZ−40140 MSH(メラニン細胞刺激ホルモン)アンタゴニスト、CCK(コレシストキニン)アゴニスト、フルオキセチン、セロキサット又はシタロプラムなどのセロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み阻害薬、混合セロトニン及びノルアドレナリン作動性化合物、5HT(セロトニン)アゴニスト、ビンベシンアゴニスト、ゲラニンアンタゴニスト、成長ホルモン、プロラクチン又は胎盤性ラクトゲンなどの成長因子、成長ホルモン放出化合物、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト、UCP2又は3(脱共役タンパク質2又は3)モジュレーター(活性調節因子)、レプチンアゴニスト、DAアゴニスト(ブロモクリプチン、ドプレキシン)、リパーゼ/アミラーゼ阻害剤、PPAR(ペルオキシソーム増殖因子応答性受容体)モジュレーター(活性調節因子)、RXR(レチノイドX受容体)モジュレーター(活性調節因子)、TR βアゴニスト、AGRP(アグーチ関連タンパク質)阻害剤、H3ヒスタミンアンタゴニスト、オピオイドアンタゴニスト(ナルトレキソンなど)、エクセジン−4、GLP−1及び繊毛神経栄養因子(アクソキンなど)、及びカンナビド受容体アンタゴニスト例えばCB−1(リモナバントなど)、UCP2又は3(脱カップリングタンパク質2又は3)調節因子、レプチンアゴニスト、DAアゴニスト(ブロモクリプチン、ドプレキシン)、リパーゼ/アミラーゼ阻害剤、PPAR(ペルオキシソーム増殖剤により活性化される受容体)調節因子、RXR(レチノイドX受容体)調節因子、TRβアゴニスト、AGRP(アグーチ関連タンパク質)阻害剤、H3ヒスタミンアンタゴニスト、オピオイドアンタゴニスト(例えばナルトレキソン)、エキセンディン−4、GLP−1及びシリア線毛神経組織栄養因子(例えば軸畜牛)、カンナボイド受容体アンタゴニスト(例えばCB−1(例えばリモナバント)。他の実施形態では、抗肥満薬はデキサフェタミン又はアンフェタミンである。他の実施形態では、抗肥満薬はレプチンである。他の実施形態では、抗肥満薬はフェンフルラミン又はエクセフェンフルラミンである。更に他の実施形態では、抗肥満薬はシブトラミンである。更なる実施形態では、抗肥満薬はオルリスタットである。他の実施形態では、抗肥満薬はマジンドール又はフェンテルミンである。更に他の実施形態では、抗肥満薬はフェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、フルオキチン、ブプロピオン、トピラメート又はエコピパムである。
【0055】
更に、本発明の化合物を一種以上の血圧降下薬と併用して投与してもよい。血圧降下薬の例としては、アルプレノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、プロプラノロール及びメトプロロールなどのβ−ブロッカー、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル及びラミプルなどのSCE(アンギオテンシン変換酵素)阻害剤、ニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、ニモジピン、ジルチアゼム及びベラパミルなどのカルシウムチャネルブロッカー、並びにドキサゾシン、ウラピジル、プラゾシン及びテラゾシンなどのα−ブロッカーが挙げられる。更にRemington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995を参照してもよい。
【0056】
本発明の化合物はFAS阻害剤と併用して投与してもよい。本発明の化合物は又化学脱共役剤、ホルモン感受性リパーゼ阻害剤、イミダゾリン類、11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害剤、リポタンパク質リパーゼ活性化因子、AMPK活性化因子、免疫抑制薬、ニコチンアミド、ASIS、抗男性ホルモン、又はカルボキシペプチダーゼ阻害剤と併用して投与してもよい。
【0057】
当然のことながら、本明細書に記載の化合物は食餌及び/又は運動や、一種以上の上記化合物並びに任意に一種以上の他の活性物質との任意の適当な併用は本発明の範囲内にあるものと考える。
【0058】
本明細書に記載の化合物、組成物及び方法の記述に用いられる一般用語は通常の意味を有する。本明細書を通じて以下の用語は指摘された意味を有する。
【0059】
「GLP−1」とはグルカゴン様ペプチド1を意味する。用語「グルカゴン受容体」は特異的にグルカゴンと相互作用する1つ以上の受容体であって結果的に生体シグナルを生じさせるものを意味する。「GLP−1受容体」という用語は生体信号に結果としてなるために特にグルカゴンなどのペプチド1と対話する1つ以上の受容体を意味する。
【0060】
用語「グルカゴン受容体アンタゴニスト」とはグルカゴン応答によるcAMP産生を阻害する能力を有する本発明の化合物として定義される。用語「グルカゴン受容体逆アゴニスト」とはグルカゴン受容体の構成的な活性を阻害する能力を有する本発明の化合物として定義される。用語「選択的な」アンタゴニスト又は逆アゴニストはGLP−1受容体への親和性と比較したグルカゴン受容体へのより大きな親和性を有する化合物を意味する。
【0061】
本発明の文書の一般の式において、一般の化学用語はそれらの通常の意味を有する。例えば、例えば、「ハロゲン」又は「ハロ」はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。
【0062】
用語「アルキル」は特に指示されない限り、直鎖又は分枝した飽和構造の指定数の炭素原子を持つそれらアルキル基を指す。「(C−C)アルキル基」とは、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、イソプロピル基及びそれらの分枝形又は異性体形などの、1個〜3個の炭素原子を含んでなる基であり、任意に1個〜3個のハロゲン又は本明細書に列挙された実施形態に記載の指定された数の置換基で置換されていてもよい。「(C−C)アルキル基」とは、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基及びそれらの分枝形又は異性体形などの、1個〜6個の炭素原子を含んでなる基であり、任意に1個〜3個のハロゲン又は本明細書に列挙された実施形態に記載の指定された数の置換基で置換されていてもよい。「(C−C)アルキル基」とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及びそれらの分枝型若しくは異性体などの、1個〜8個の炭素原子数を含んでなり、任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい基を指す。
【0063】
用語「(C−C)シクロアルキル」は、3〜7個の炭素原子数の、1つ以上の環を含んでなる飽和若しくは部分的に飽和した炭素環のことを指す。(C−C)シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルを含むが、これに限定されるものではない。
【0064】
用語「(C−C)アルコキシル基」とは、1〜6個の炭素原子数のアルキル基であって、酸素原子の架橋によって、結合している基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基)のことを指す。用語「(C−C)アルコシキ」とは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基など、酸素原子の架橋で結合している、1〜7個の炭素原子数のアルキル基を指し、任意に3個のハロゲンで置換されてもよい。
【0065】
用語「(C−C)アルケニル基」とは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ビニル、アルキル、2−ブテニルなどの、その炭素鎖に沿って任意の場所において、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分枝構造の、2〜7個の炭素原子数の炭化水素鎖のことを指し、任意に本明細書に列挙される実施形態に記載されるハロゲン原子3個で置換されてもよい。
【0066】
本明細書に用いられる用語「任意に置換」又は「任意の置換体」は、基が1つ以上の特定の置換基で置換されるか又は置換されないことを意味する。基が1つ以上の特定の置換基で置換される場合、それらの置換基は同一でも異なってもよい。更に、用語「独立して」、「独立して〜である」及び「独立して選択される」が用いられる場合、それらの基は同一でも異なってもよい。上記の定義済み用語の幾つかは二回以上同じ構造式で使用されてもよく、各用語はその使用ごとに他の用語と独立に定められる。
【0067】
用語「患者」には、ヒト及びペット(イヌ及びネコ等)並びに家畜動物などの非ヒト動物が包含される。家畜動物は、食用生産のために飼育される動物である。家畜動物の例として、雌ウシ、雄ウシ、子ウシ、去勢した子ウシ、ヒツジ、バッファロー、バイソン、ヤギ、及びカモシカなどの反芻動物が挙げられる。家畜動物の他の例には、ブタ及びニワトリ、アヒル、七面鳥、並びにガチョウ等鳥類(家禽)が含まれる。家畜のなお他の例には養殖の魚類、貝類及び甲殻類が含まれる。ワニ、スイギュウ、及び走鳥類(例えば、エミュー、レア、又はダチョウ)等の食用生産に用いられる珍しい動物も包含される。治療を必要とする患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【0068】
用語「グルカゴン受容体が媒介する細胞応答」にはグルカゴン刺激又はグルカゴン受容体活性に対する哺乳動物細胞による種々の応答が包含される例えば、「グルカゴン受容体が媒介する細胞応答」には、これらに限定されないが、グルカゴン刺激又はグルカゴン受容体活性に応じた肝臓又は他の細胞からのグルコース放出が含まれる。当事者は、グルカゴン受容体活性が媒介する他の細胞の応答を、例えば上記細胞を有効用量のグルカゴンと接触させた後、応答性細胞の終末点における変化を観察することによって、容易に確認できる。
【0069】
本明細書に用いられる用語「治療」、「処置する」及び「治療する」はそれらの一般的に容認される意味を包含し、即ち、本明細書に記載の病気、疾患又は病理的状態の進行又は重症化を防止、阻害、抑制、緩和、改善、緩慢化、停止、遅延又は逆転するための患者の管理及び看護を含み、症状又は合併症の緩和又は軽減、又はその病気、疾患又は病理的状態の治癒又は排除を包含する。
【0070】
「組成物」とは医薬組成物を意味し、1つ以上の式Iの化合物を含む有効成分、並びに担体を構成する1つ以上の非有効成分を含んでなる医薬生成物が包含される。したがって、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物と薬理学的に許容できる担体を混合して調製される組成物が包含される。
【0071】
「組成物」とは医薬組成物を意味し、1つ以上の式Iの化合物を含む有効成分、並びに担体を構成する1つ以上の非有効成分を含んでなる医薬生成物が包含される。
【0072】
用語「ユニットドーズの形態」とは被験者及び他の非ヒト動物に対する単位の薬用量として適切な物理的に個別の単位を意味し、各単位は適当な医薬担体と提携して所望の治療効果を生じると計算された活性物質の所定量を含有する。
【0073】
本発明の化合物はキラルであってもよく、精製又は部分精製された任意の鏡像異性体も、又はラセミ体混合物も本発明の範囲内に包含されるものとする。更に、二重結合、又は完全又は部分飽和の環系、又は1つ以上の不斉中心、又は回転の制限された結合が分子内に存在する場合、ジアステレオマーが形成されうる。任意のジアステレオマーであっても、分離され、精製又は部分精製されたジアステレオマー又はそれらの混合物の場合、本発明の範囲内に含まれる。更に、本発明の化合物には異なる互変異性体状で存在する可能性があり、その化合物が形成し得る任意の互変異性体状も本発明の範囲内に含まれる。本発明には式Iの又互変異性体、鏡像異性体及び他の立体異性体が包含される。かかる変異は本発明の範囲内にあるものと考えられる。
【0074】
式Iの化合物は、ジアステレオマーの混合物として存在する場合、例えば適切な溶媒、例えばメタノール又は酢酸エチル又はそれらの混合液から分別結晶によって、鏡像異性体のジアステレオマー対に分離されうる。このようにして得られた鏡像異性体対は通常の手段により、例えば光学活性の酸を分割剤として用いて個々の立体異性体に分離することが可能である。別の方法として、式Iの化合物の何れかの鏡像異性体は、既知の立体配置の光学的に純粋な出発原料又は試薬を用いる立体特異的合成により、又は鏡像異性体特異的な合成により得ることが可能である。
【0075】
本明細書で用いられる用語「鏡像異性体富化」は、一方の鏡像異性体の量の、他方の鏡像異性体と比較しての増大を指す。達成された鏡像異性体富化を表現する簡便な方法は、鏡像異性体過剰率の概念、又は「ee」の概念であって、以下の式を用いて表される。
ee=(E−E)/(E+E)×100
【0076】
式中、Eは第1の鏡像異性体の量であり、Eは第2の鏡像異性体の量である。このようにして、二つの鏡像異性体の第一の比がラセミ体混合物に存在するように50:50であり、かつ、70:30の最終比を生じるに十分な鏡像異性体富化が達成される場合、第1の鏡像異性体に関する上記ee(鏡像異性体過剰率)は40%である。しかしながら、最終比が90:10である場合、第1の鏡像異性体に関する上記ee(鏡像異性体過剰率)は80%である。90%以上のeeが好ましく、95%以上のeeが最も好ましく、99%以上のeeが特に最も好ましい。鏡像異性体富化は当事者によりキラルカラムによるガスクロマトグラフィー又は高性能液体クロマトグラフィなどの標準の技法及び方法を使用して容易に決定される。鏡像異性体対の分離実施に必要な適切なキラルカラム、溶出液及び条件の選択は、当事者にとって十分に公知である。更に、式Iの化合物の特異的な立体異性体及び鏡像異性体は当事者によって、J.Jacquesら、「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」John Wiley and Sons、1981、及びE.L.ElielとS.H.Wilen,「Stereochemistry of Organic Compounds」(Wiley−Interscience 1994)、並びに1998年4月29日発行の欧州特許出願公開第838448号明細書に開示されたような周知の技法及び分離法を利用して調製できる。分離の例には、再結晶技法又はキラルクロマトグラフィーが含まれる。特に明記しない限り、「異性体1」として示される化合物は、キラル分離カラムから溶出される第1の異性体であり、「異性体2」は第2のそれである。
【0077】
また、本発明には本発明の化合物の薬理学的に許容できる塩が包含される。一般に、用語「薬理学的」は形容詞として用いられる場合、生体には実質的に無毒であることを意味する。例えば、本明細書に用いられる用語「薬理学的に許容できる塩」は式Iの化合物の塩を指し、この化合物は実質的に生体に対して無毒である。例えば、Berge,S.M,Bighley,L.D.及びMonkhouse,D.C.、「Pharmaceutical Salts,」、J.Pharm.Sci.,66:1,1977を参照のこと。薬学的に許容できる塩及びそれを調製するための一般法は公知技術である。例えばP.Stahlら、“Handbook Of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,”(VCHA/Wiley−VCH,2002)、Berge,S.M,Bighley,L.D.、及びMonkhouse,D.C.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,66:1,1977を参照のこと。
【0078】
本発明は又本発明の化合物のプロドラッグを含み、このプロドラッグは、投与すると代謝過程により化学的転換を受けて薬理学的に活性な物質となる。一般に、かかるプロドラッグは本発明の化合物の機能的誘導体であって、生体内で本発明の化合物に容易に転換可能である。適切なプロドラッグ誘導体の選択と調製のための通常の手順は、例えば、“Design of Prodrugs”,ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985に記載される。
【0079】
式Iの化合物は当事者により種々の手段に従って調製することができ、それらの幾つかを下記の工程と反応式において、説明する。式Iの化合物の生成必要な具体的な工程の順序は、合成しようとする具体的な化合物、出発物質及び置換基の相対的反応性などにより変化する。試薬又は出発物質は当事者であれば容易に入手でき、市販品でない材料の場合には、当事者に公知の通常用いられる標準的な工程に従い、下記の種々の工程及びスキームに沿って容易に合成できる。
【0080】
以下の反応式、調製、実施例及び手順は本発明の実施をより詳細に説明するために提供されるものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。当事者であれば、本発明の技術思想と範囲から逸脱することなく多様な改善を実施できることを認識するであろう。本明細書で言及される全ての刊行物は、本発明が属する分野の当事者のレベルを示す。
【0081】
反応式、調製、実施例及び手順における最適反応時間は、反応の進行を通常のクロマトグラフィによりモニターすることにより決定できる。更に、本発明の化学反応は、アルゴン又は特に窒素などの不活性雰囲気下で実施することが好ましい。溶媒の選択は、その使用する溶媒が進行中の反応に不活性で、かつ反応物質を十分に可溶化して所望の反応を実施するものである限り、通常問題とはならない。化合物は、その後の反応に供する前に分離・精製することが好ましい。化合物形成反応の間に反応溶液から化合物を析出させ、濾過して回収してもよいし、あるいは反応溶媒を抽出、蒸発又は流出させて除去してもよい。中間体及び式Iの最終産物は、必要に応じ、再結晶又はシリカゲル又はアルミナなどの固体支持体上のクロマトグラフィ等、通常の方法で更に精製してもよい。
【0082】
熟練した当業者は全ての置換基が全ての反応条件と適合するわけではないことを認識する。これらの化合物は合成の際、公知の方法により適切なタイミングで保護又は修飾してもよい。
【0083】
本明細書の反応式、調製、実施例及び工程に用いられる用語並びに略語は、特に指示されない限り通常の意味を有する。例えば、本願明細書では以下の用語はそれぞれ以下の意味を有する。「min」は分を指す。「h」又は「hr」は時間を指す。「TLC」は薄層クロマトグラフィを指す。「HPLC」は高速液体クロマトグラフィを指す。「R」は保持係数を指す。「R」は滞留時間を指す。「δ」はテトラメチルシランからのppmダウンフィールドを指す。「MS」は質量分析を指す。「MS(ES)」は電子スプレー質量分析を指す。「UV」は紫外線分光測定法を指す。「H NMR」は陽子核磁気共鳴分光測定法を指す。更に、「RT」は、室温を指す。「DEAD」は、ジエチルアゾジカルボキシレートを指す。「PPh」はトリフェニルホスフィンを指す。「ADDP」は1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジンを指す。「PBu」はトリブチルホスフィンを指す。「OTF」はトリフレートを指す。「LAH」は水素化アルミニウムリチウムを指す。「DIBAL−H」は、水素化ジイソブチルアルミニウムを指す。「KOtBu」は、カリウムt−ブトキシドを指す。「THF」はテトラヒドロフランを指す。「TBP」はトリブチルホシフィンを指す。「EDCI」は1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸を指す。「DMAP」はジメチルアミノピリジンを指す。「HNMe(OMe)」は、N,N,−ジメチルヒドロキシアミンを指す。「CDMT」は2−クロロ−4,6−ジメトキシ−[1,3,5]トリアジンを指す。「NMM」はN−メチルモルホリンを指す。「DCM」はジクロロメタンを指す。「DMSO」はジメチルスルホキシドを指す。「EtN」はトリエチルアミンを指す。「DMF」はジメチルホルムアミドを指す。式中の「Et」はエチル基を指し、例えばEtOはジエチルエーテルを指す。EtOAcは酢酸エチルを指す。「PyBOP」はブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを指す。「Me」はメチル基を指す(メタノールをMeOHのように表す)。「Pd/C」はカーボン上の10%パラジウムを指す。特に明記しない限り、異性体1はキラル分離において、溶出される第1異性体を指し、異性体2はキラル分離において、溶出される第2異性体を指す。
【0084】
一般反応式本発明の全ての化合物は、例えば以下の反応式、並びに下記調製例及び/又は実施例に記載の合成経路を経て化学的に調製できる。しかしながら、以下の説明は、いかなる形であれ本発明の範囲を限定するものではない。例えば、記載されている経路における各々の具体的な合成工程を異なる方式で組み合わせ、あるいは別の反応式中の工程と組み合わせて、式Iの化合物を別途調製してもよい。
【0085】
反応式I
【化9】

【0086】
反応式I(ステップA)において、式1の4−ニトロフェノールを、トリフルオロメタンスルホン酸エステルの中間の形成を経て、臭化物陰イオンで芳香族求核置換反応により式2の1−ブロモ−4−ニトロベンゼンに変換する。上記4−ニトロフェノールを1〜20時間、有機塩基(例えばピリジン)の存在下で0℃〜室温においてトリフルオロメタンスルホン酸無水物で処理し、式2のトリフレートを得る。抽出後、残余物を、DMSO又はDMFなどの高沸点の不活性溶剤中に溶解する(好ましくはDMF)。上記トリフレートを、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化セシウム、臭化ナトリウム又は臭化リチウムなどの臭化物アニオン(好ましくは臭化リチウム)の供給下で、150℃の温度で約8〜48時間処理し、式2の1−ブロモ−4−ニトロベンゼンを形成させる。
【0087】
反応式I(ステップB)において、式2の1−ブロモ−4−ニトロベンゼンを、スズキ反応を使用して式3のフェニルホウ素酸にカップリングし、式4のニトロビフェニルを形成させる。当業者であれば、アリールトリフレート及びフェニルホウ素酸を使用して、かかるスズキカップリング反応を多様な反応条件下で実施できると認識するであろう。好適な条件は、窒素雰囲気下でフッ化カリウムとテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを使用して反応させることである。不活性溶剤(例えばトルエン又はベンゼン及び水)中、40℃〜還流温度の反応温度で約4〜48時間反応を実施する。
【0088】
反応式I(ステップC)において、式4のニトロビフェニルを式4のビフェニルアミンに還元させる。当業者であればアルデヒドを還元する多くの方法を熟知しており、例えば“Comprehensive Organic Transformations”、VCH Publishers、1989、p528−536、R.C.Larock、のテキストに記載されている。ニトロ基の還元は、THF、酢酸エチル、メタノール又はエタノールなどの溶媒(好適にはエタノール)中で、5又は10%パラジウム/炭素を用いて実施する。反応液を、室温で約2〜24時間、水素雰囲気下に置く。反応式IIIに示すように式5のビフェニルアミンが更に合成され、式中、R6は、R7、R8及びR9で置換されてもよいフェニル基である。
【0089】
反応式II
【化10】

【0090】
反応式II(ステップA)において、式6の4−ホルミル−安息香酸メチルエステルを、グリニャール試薬(例えば臭化ヘキシルマグネシウム又は臭化イソブチルマグネシウム)と反応させ、式7の第2級アルコールに変化させる。
【0091】
反応式II(工程B)では、式7の第2級アルコールを式8のケトンに酸化する。当業者であれば、第2級アルコールを酸化する多数の方法を熟知している。かかる方法としては、限定されないが、過マンガン酸カリウム、酸化マンガン(IV)、四酸化ルテニウム、重クロム酸ピリジウム、Oxone(登録商標)、o−ヨード安息香酸、Dess−Martin periodinane、テトラプロピルアンモニウムペルルテナート(TPAP)などが挙げられる。好適な条件は、不活性溶剤(例えばジクロロメタン)中で、室温で約2〜48時間、ピリジニウムクロロクロム酸塩を使用して反応させることである。
【0092】
反応式III
【化11】

【0093】
反応式III(ステップ1)において、式5a(R6は上記で定義済)のアニリンを式8のケトンとカップリングし、式9の第2のアミンを形成させる。当業者であれば、水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド又はナトリウムシアノボロハイドライドなどの還元剤を用いた還元的アミノ化のための多くの方法が存在することを認識する。好適な反応条件では、不活性溶剤(例えばジクロロメタン)中において、塩化チタン(IV)を脱水素剤として使用する。出発原料が消費されるときに得られるイミンを、メタノール中のナトリウムシアノボロハイドライドで処理する。水酸化ナトリウム水溶液によって、反応系をアルカリ条件にし、酢酸エチルで抽出して式9のアミンを形成させる。
【0094】
反応式III(工程2)において、式9の化合物に含まれるエステル官能基を、無機塩基(例えばカリウム又は水酸化ナトリウム)を有する溶媒(例えばTHF、エタノール又はメタノール)において式10の安息香酸に加水分解する。塩基として水酸化ナトリウムを含有させたメタノールが好適な溶媒であり、0〜50℃で約2〜24時間反応させるのが好適である。塩酸水溶液を使用して一般の抽出技術を用いて生成物を分離できる。
【0095】
反応式III(工程3)では、式10の安息香酸をアシル化して式12のアミドを得る。当業者であれば、カルボン酸とアミンの間でのアミド結合形成に多数の反応条件を使用できると認識する。かかる方法は例えば“Comprehensive Organic Transformations”、VCH Publishers、1989、p972−976、R.C.Larockのテキストに記載されている。好適な条件は、触媒量の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)1、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)及び有機塩基(例えばジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミン)を使用し不活性溶剤(例えばジクロロメタン)中で反応させることである。活性エステルを、0℃〜還流温度、好ましくは室温で、約4〜48時間、溶媒中で式11のアミンと反応させる。
【0096】
反応式III(ステップ4)において、反応式III(ステップ2)で記載した反応条件を使用して式12のメチルエステルを式13の酸に加水分解する。
【実施例】
【0097】
本明細書に記載する実施例は本発明を例示するものであり、請求項に記載された本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。調製例及び実施例における化合物名は、ChemDrawを使用して導出した。1H NMRは、Varian 400 MHz分光計を用い、室温で記録した。
【0098】
1H−NMRは、満足なNMRスペクトルが試験対象の化合物に関して得られたことを示すものである。モノアイソトープによるマススペクトルデータは、エレクトロスプレーイオン化法(ESI又はES)を使用してAgilent G1956B MSD single quadrapole計測器を用いて得た。分析用薄層クロマトグラフィは、EM Reagentの0.25mmシリカゲル60−Fプレート上で実施した。視覚化は紫外線分析により実施した。全ての実施例は特に明記しない限りラセミ体に関するものである。
【0099】
(調製1)4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミン
(工程A):4’−tert−ブチル−4−ニトロ−ビフェニル
トルエン(20mL)の1−ブロモ−4−ニトロベンゼン(2.02g、10mmol)の溶液に、パラジウムテトラキス トリフェニルホスフィン(1.156g、1mmol)、4−t−ブチルフェニルホウ酸(3.56g、20mmol)及びフッ化カリウム(1.74g、30mmol)を添加した。反応液を3回窒素パージし、窒素雰囲気下で還流加熱した。還流温度で水(5mL)を反応液に添加し、反応液を窒素雰囲気下で還流した。反応液をHPLCによりモニターし、完了後、室温に冷却した。反応液を酢酸エチルで希釈し、セライト(登録商標)を添加し、更に水を添加した。次いでこの混合物をセライト(登録商標)のパッドで濾過した。溶液は分離漏斗に注入し、有機層を水及び塩水によって洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムを通じて乾燥し、濃縮した。得られた残余物をフラッシュカラムクロマトグラフィで酢酸エチル/ヘキサンで抽出して精製し、黄色の固体として生成物1.8gを得た。H−NMR。
【0100】
(工程B):4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミン
4’−tert−ブチル−4−ニトロ−ビフェニル(1.8g)のエタノール(20mL)中の溶液に、パラジウム(10%)/炭素(0.15g)を添加した。反応は、水素雰囲気下で30psiで加圧し、4時間撹拌した。次いでこの混合物をセライト(登録商標)のパッドで濾過した。0.1%TFA/水及びアセトニトリルを使用して逆相HPLCにより溶液を濃縮して精製し、白色固体として標題の化合物1.6gを得た。H−NMR。
【0101】
(調製2)4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミン
開始材料として1−ブロモ−4−ニトロベンゼン及び4’−トリフルオロメチルフェニルホウ酸を使用し、調製1で記載した一般法に従い標題化合物を調製した。H−NMR。
【0102】
(調製3)2,6−ジメチル−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミン
(工程A):2−ブロモ−1,3−ジメチル−5−ニトロベンゼン
2’6’−ジメチル−4−ニトロフェノール(3g、18mmol)、更にピリジン(3.6mL)をジクロロメタン(50mL)に添加した。溶液は0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(3.6mL)を20分以上にわたり滴下して添加した。反応液を0℃で3時間撹拌した。水(25mL)は、反作用を消滅させるために添加した。有機層を1N HCl(2×25ml)、水(2×25ml)、1N NaOH(2×25ml)、水(2×25ml)で抽出した。有機層をMgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた残余物をDMF(40mL)に溶解させ、更に臭化リチウム(4.7g、540mmol)を添加した。混合液を150℃で17時間還流加熱した。混合液を高真空下で濃縮した。残余物を水(60mL)及び酢酸エチル(60mL)と共に撹拌した。混合液を濾過し、有機層を分離し、MgSOで乾燥させた。有機層は、カラムクロマトグラフィに供し、酢酸エチル/ヘキサンで抽出して濃縮、精製し、黄色の固体として標題の化合物2.7gを得た。H−NMR。
【0103】
工程B:2,6−ジメチル−4−ニトロ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル
2−ブロモ−1,3−ジメチル−5−ニトロベンゼン(1g、4.3mmol)のトルエン(20mL)中の溶液に、パラジウムテトラキス トリフェニルホスフィン(0.5g、0.43mmol)、4−トリフルオロメチルフェニルホウ酸(1.65g、8.7mmol)及びフッ化カリウム(0.75g、12.9mmol)を添加した。反応液を3回窒素パージし、窒素雰囲気下で還流加熱した。還流温度で水(5mL)を反応液に添加し、反応液を窒素雰囲気下で還流させた。反応液をHPLCによりモニターし、完了後、室温に冷却した。反応液を酢酸エチルで希釈し、セライト(登録商標)を添加し、更に水を添加した。次いでこの混合物をセライト(登録商標)のパッドで濾過した。溶液を分離漏斗に注入し、有機層を水及び塩水によって洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた残余物をフラッシュカラムクロマトグラフィに供し、酢酸エチル/ヘキサンで抽出して精製し、黄色の固体としての標題の化合物0.68gを得た。H−NMR。
【0104】
工程C:2,6−ジメチル−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミン
2,6−ジメチル−4−ニトロ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル(0.68g)のエタノール(20mL)中の溶液に、10%のパラジウム/炭素(0.02g)を添加した。反応液を水素雰囲気下で30psiで加圧し、4時間撹拌した。次いでこの混合物をセライト(登録商標)のパッドで濾過した。溶液を0.1%TFA/水及びアセトニトリルを使用して逆相HPLCにより濃縮、精製し、標題の化合物0.63gを得た。H−NMR。
【0105】
(調製4)4−(3−メチル−ブチリル)−安息香酸 メチルエステル
工程A:4−(1−ヒドロキシ−3−メチル−ブチル)−安息香酸 メチルエステル(ラセミ体)
4−ホルミル−安息香酸メチルエステル(32.4g、147mmol)の無水THF(800mL)中の溶液を、窒素雰囲気下で撹拌しながら0℃に冷却した。臭化イソブチルマグネシウム(ジエチルエーテル中2.0M、110mL、221mmol)を10分以上かけて徐々に添加した。反応液を0℃で1時間撹拌し、次に室温に加温した。HPLCによって反応をモニターし、アルデヒドが完全に消費された後、1N HClで慎重に反応をクエンチした。反応液をジエチルエーテル及び水で希釈し、更に抽出した。有機相を水及び塩水で洗浄し、次に無水硫酸ナトリウムを通じて乾燥させた。溶液を濾過し、濃縮し、更に酢酸エチル/ヘキサンを使用したフラッシュカラムクロマトグラフィにて精製し、生成物12g(37%)を得た。
【0106】
工程B:4−(3−メチル−ブチリル)−安息香酸 メチルエステル
4−(1−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−安息香酸 メチルエステル(19.72g、88.78mmol)のジクロロメタン(300mL)中の溶液に、ピリジニウムクロロクロム酸塩(22.03g、97.65mmol)を添加した。混合液を室温で撹拌し、溶液が時間経過とともに黒色に変化した。HPLCによって反応をモニターした。完全に変換が行われた後、反応液をジクロロメタンで希釈し、シリカゲル(2重量%)を混合液に添加した。移動相としてジクロロメタンを使用したフラッシュカラムクロマトグラフィで混合液を精製し、生成物15.79g(72%)を得た。MS(ES):221.3(M+1)。
【0107】
(調製5)4−ヘキサノイル−安息香酸 メチルエステル
開始材料として4−ホルミルメチル安息香酸及び臭化ヘキシルマグネシウムを用い、調製4に記載した一般法により標題化合物を調製した。H−NMR。
【0108】
(実施例1)3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチル−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)
【化12】


工程A:4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチル−ブチル]−安息香酸 メチルエステル
4−(3−メチル−ブチリル)−安息香酸 メチルエステル(調製4)(440mg、2mmol)のジクロロメタン(30mL)中の溶液に、4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミン(調製1)(450mg、2mmol)及びトリエチルアミン(606mg、6mmol)を添加した。塩化チタン(IV)のジクロロメタン(1M、1mL)中の溶液を滴下して添加した。HPLCによって反応をモニターした。開始原料が消費された後、MeOH(5mL)中のナトリウムシアノボロハイドライド(377mg、6mmol)によって反応を慎重にクエンチし、2時間撹拌した。反応液を5N NaOHでpH=13に調整し、EtOAcにより抽出し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。得られる残余物をシリカゲルカラムクロマトグラフィでEtOAc/ヘキサンで溶出して精製し、標題の化合物718mgを得た。H−NMR。
【0109】
工程B:4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−安息香酸
4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−安息香酸 メチルエステル(718mg)をMeOH(10mL)中に添加し、更に5N NaOH(1mL)を添加した。反応液を4時間撹拌し、EtOAcで希釈し、HCl水溶液及び塩水で洗浄した。有機層をMgSOを通じて乾燥させ、濃縮しし、標題の化合物510mgを得た。次の工程で直接使用した。
【0110】
工程C:3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチル−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸 メチルエステル
4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−安息香酸(310mg、0.75mmol)のメチレンクロライド(7mL)中の混合液に、トリエチルアミン(0.31mL、2.24mmol)、DMAP(5.0mg)、3−アミノ−プロピオン酸 メチルエステル(156mg、1.12mmol)及びEDCI(431mg、2.24mmol)を室温で添加した。反応混合液を室温で一晩撹拌し、シリカゲルにロードし、0〜100%の酢酸エチル勾配/ヘキサンを使用して溶出し、白色固体として標題の化合物230mgを得た。H−NMR。
【0111】
工程D:3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸
3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸 メチルエステル(30mg)をMeOH(10mL)に添加し、更に5N NaOH(1mL)を添加した。反応液を4時間撹拌し、EtOAcで希釈し、HCl水溶液及び塩水で洗浄した。有機層をMgSOを通じて乾燥させ、濃縮し、標題の化合物16mgを得た。MS(ES):487.3[M+H]
【0112】
(実施例2)3−{4−[3−メチル−1−(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)
【化13】


開始材料として4−(3−メチル−ブチリル)−安息香酸 メチルエステル(調製4)及び4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミン(調整2)を用い、実施例1に記載の一般法に従い、標題化合物を調製した。MS(ES):499.2[M+H]
【0113】
(実施例3)3−{4−[1−(2,6−ジメチル−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチル−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)
【化14】


開始材料として4−(3−メチル−ブチリル)−安息香酸 メチルエステル(調製4)及び2,6−ジメチル−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミン(調製3)を用い、実施例1に記載した一般法に従い、標題化合物を調製した。MS(ES):527.2[M+H]
【0114】
(実施例4)3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチル−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)
【化15】


開始材料として4−(3−メチル−ブチリル)−安息香酸 メチルエステル(調製4)及び4’−アミノ−ビフェニル−4−カルボニトリルを用い、実施例1に記載の一般法に従い、標題化合物を調製した。MS(ES):456.2[M+H]
【0115】
(実施例5)3−{4−[1−(4’−シアノ−ビフェニル−4−イルアミノ)−ヘキシル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)
【化16】


開始材料として3−(4−ヘキサノイル−ベンゾイルアミノ)−プロピオン酸 メチルエステル(調製5)及び4’−アミノ−ビフェニル−4−カルボニトリルを用い、実施例1で開示した一般法に従い、標題化合物を調製した。MS(ES):470.2[M+H]
【0116】
(実施例6)3−{4−[1−(2−メトキシ−ビフェニル−4−イルアミノ)−ヘキシル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)
【化17】


開始材料として3−(4−ヘキサノイル−ベンゾイル・アミンの)−プロピオン酸 メチルエステル(調製5)及び2−メトキシ−ビフェニル−4−イルアミンを用い、実施例1に記載の一般法に従い、標題化合物を調製した。MS(ES):475.2[M+H]
【0117】
(実施例7)3−{4−[1−(4’−シアノ−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチル−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体1)
【化18】


キラル分離:ラセミ体の3−{4−[1−(4’−シアノ−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸 メチルエステル(実施例4で調製)を、Chiralcel OJ−Hカラム(4.6×150mm)で分離した。メタノール(100)で溶出し、フラクションを濃縮し、純粋な鏡像異性体エステル(異性体1、ee>99%)を得た。エステルの純粋な鏡像異性体を、実施例1(工程D)に記載したのと同様の方法で加水分解し、標題化合物を得た。MS(ES):456.2[M+H]
【0118】
Chiralpak−Hカラム(4.6×150mm)又はChiralcel OJ−Hカラム(4.6×150mm)を使用して、実質的に実施例7に記載の方法と同様のエステルのキラル分離、更に実施例1(工程D)に記載の加水分解を行い、以下の鏡像異性的に純粋な化合物(実施例8〜12)を得た。
【0119】
(実施例8)3−{4−[1−(4’−シアノ−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチル−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体2)
【化19】


ラセミ体の3−{4−[1−(4’−シアノ−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸メチルエステル(実施例4で調製)をChiralcel OJ−Hカラム(4.6×150mm)で分離し、更に加水分解し、標題化合物を得た。MS(ES):456.2[M+H]
【0120】
(実施例9)3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチル−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体1)及び、
【0121】
(実施例10)3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチル−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体2)
【化20】


Chiralcel OJ−Hカラム(4.6×150mm)上でラセミ体としての3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸メチルエステル(実施例1、工程C)を分離させ、更に加水分解し、標題の化合物を得た。異性体1 MS(ES):487.3[M+H]。異性体2 MS(ES):487.3[M+H]
【0122】
(実施例11)3−{4−[3−メチル−1−(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体1)及び、
【0123】
(実施例12)3−{4−[3−メチル−1−(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体2)
【化21】

【0124】
ラセミ体の3−{4−[3−メチル−1−(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸 メチルエステル(実施例2で調製)をChiralcel OJ−H柱(4.6×150mm)で分離し、更に加水分解し、標題の化合物を得た。異性体1 MS(ES):499.2[M+H]。異性体2 MS(ES):499.2[M+H]
【0125】
上記化合物は好ましくは経口投与用である。上記医薬品は好ましくはユニットドーズ形態である。かかる形態では、製剤は適切な量(例えば所望の効果を得るための有効量)の有効成分を含む適切なサイズのユニットドーズに分割する。ゆえに、本発明の更に他の実施形態は、構造式Iの化合物、並びに1つ以上の薬理学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を含んでなる医薬組成物に関する。かかる医薬品組成物及びその調製方法は公知技術である。例えば「REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY」(A.Gennaroら編、19版、Mack Publishing Co.,1995)を参照のこと。本発明の有効量を構成するのに必要となる、式(I)の化合物又はその薬学的に受け入れられる塩の具体的な量は、治療しようとする症状の具体的な状況により変化される。投与量、投与経路及び投与頻度などは、最終的には主治医によって決定される。
【0126】
本発明の組成物を、患者への投与後、有効成分が迅速に放出されるか、徐放出されるか又は遅延放出される態様で調製してもよい。本発明の組成物を、徐放出型に製剤化して構成要素又は有効成分の何れか1つ以上の放出速度を制御し、治療効果を最適化してもよい。徐放出に適する剤形としては、異なる分解速度を有する層から形成される錠剤、有効成分を充填してタブレットとして形成した制御放出ポリマーマトリックスかかる充填若しくは封入された多孔質のポリマーマトリックスを含有するカプセルなどが包含される。
【0127】
上記医薬品は好ましくはユニットドーズ形態である。製剤のユニットドーズにおける有効成分の量は、具体的な投与にも依るが、一般に約0.01mg〜約1,000mg、好ましくは約0.01mg〜約950mg、好ましくは約0.01mg〜約500mg、典型的には約1mg〜約250mgで変化させ、若しくは調節してもよい。実際の用量は、患者の年齢、性別、体重及び症状の重症度に応じて変動させてもよい。かかる方法は当業者に周知である。通常、有効成分を含む経口投与剤形をヒトに投与する場合、一日当たり1〜2回投与とすることができる。
【0128】
グルカゴンがグルコースホメオスタシスにおいて、重要な役割を果たすことを裏付ける証拠が年々得られている。式Iの化合物は、グルカゴン受容体のアンタゴニスト又は逆アゴニストとして効果的であり、すなわちグルカゴン受容体の活性を阻害した。より具体的には、これらの化合物はグルカゴン受容体の選択的なアンタゴニスト又は逆アゴニストである。式Iの化合物は、選択的なアンタゴニスト又は逆アゴニストとして機能するため、糖尿病及び他のグルカゴン関連の障害など(これらに限定されない)、グルカゴン受容体の不活化に感受性の疾患、障害又は症状の治療に有用である。グルカゴン受容体の選択的なアンタゴニスト又は逆アゴニストの使用により、血漿中のグルコース濃度が低下し、それにより糖尿病及び他のグルカゴン関連の代謝障害などの予防若しくは治療が可能となる。
【0129】
薬理学的方法
以下に、本発明の化合物の効率の評価に有用な結合試験並びに機能試験について記載する。グルカゴン受容体への化合物の結合は、クローニングされたヒトのグルカゴン受容体に対する選択性を用いる競合結合アッセイにおいて、決定できる。拮抗作用は、5nMのグルカゴンの存在下にアッセイにおいて、形成されるcAMPの量を阻害する本発明の化合物の能力として決定してもよい。
【0130】
グルカゴン受容体(hGlucR)結合アッセイ
本受容体結合アッセイは、クローニングされた293HEK膜から分離されたヒトのグルカゴン受容体を使用した(Lok S,Kuijper JL,Jelinek LJ,Kramer JM,Whitmore TE,Sprecher CA,Mathewes S,Grant FJ,Biggs SH,Rosenberg GB,ら、Gene140、2),203−209、1994。このhGlucR cDNAを発現プラスミドphDにサブクローニングした(完全にγ−カルボキシル化された組換えヒトのプロテインCのトランス活性化発現、抗血液凝固性因子(Grinnell,B.W.,Berg,D.T.,Walls,J.及びYan,S.B.Bio/Technology5:1189−1192(1987)参照)にサブクローニングした。このプラスミドDNAを239HEK細胞にトランスフェクションし、200μg/mLのハイグロマイシンを用いて選抜した。
【0131】
懸濁培養した細胞を用いて粗原形質膜を調製した。上記細胞を25mM トリスHCl(pH7.5)、1mM MgCl、DNase1 20U/mL、及びComplete Inhibitors(EDTAフリー)(Roche社)を含有する低張バッファ中で氷上で溶解した。その細胞懸濁液をガラス製のダウンスのホモジナイザーによりテフロン棒を用いて25回上下してホモジナイズした。このホモジネートを4℃では、1800×gで15分間遠心した。上清を回収し、ペレットを低張バッファに再懸濁して再びホモジナイズした。混合物を1800×gで15分間遠心した。第2の上清を第1の上清と合わせた。混合した上清を1800×gで15分間再遠心して清澄化した。清澄化した上清を高速遠心管に移して4℃では、25000×gで30分間遠心した。ホモジネーションバッファに再懸濁して必要となるまで−80℃の冷凍室に凍結アリコートとして膜ペレットを貯蔵した。
【0132】
グルカゴンを、125I−ラクトペルオキシダーゼ法によって、放射性ヨードで標識し、Perkin−Elmer/NEN (NEX207)では、逆相HPLCによって、精製した。比活性は2200Ci/mmolであった。125I−グルカゴン物質中にプロパノールの含量が高いため、Kdの決定は飽和結合ではなく均一競合により実施した。Kdは3nMと推定され、全ての試験化合物についてKi値の計算に使用した。
【0133】
脂肪酸フリーの1%のBSA(ICN)で予めブロッキングしたWGAビーズによるシンチレーション近接アッセイ(Amersham)により結合アッセイを行った。結合バッファの組成は25mM Hepes(pH7.4)、2.5mM CaCl、1mM MgCl、0.1%の脂肪酸不含BSA(ICN)、0.003%のTween−20及びEDTAフリーのComplete Inhibitors(Roche社)とした。グルカゴンを0.01N HCl溶液中に1mg/mLの濃度で溶解させ、30μLのアリコートに分割して直ちに−80℃で凍結させた。上記グルカゴンのアリコートを希釈し、1時間以内に結合アッセイに使用した。試験化合物をDMSOに溶解し、DMSOによる希釈系列を調製した。10μLの希釈化合物、又はDMSOを、Corning3632(90μLのアッセイ用結合バッファ又は非放射性グルカゴン(NSB、最終濃度1μM)を含む、不透明で底が透明なアッセイプレート)中に移した。50μLの125Iグルカゴン(反応液中の最終濃度:0.15nM)、50μLのメンブレン(300μg/ウェル)の及び40μLのWGAビーズ(150mg/ウェル)を添加し、プレートの端から端までを被覆した。プレートを室温で14時間静置した後、MicroBetaで測定した。
【0134】
化合物の存在下における、125Iグルカゴンの特異的な結合パーセントとして算出した。化合物の絶対EC50用量を、添加した化合物の用量に対する125I−グルカゴンの特異的結合パーセントを非線形回帰することによって導出した。EC50用量をCheng−Prusoffの式(Cheng Y.,Prusoff W.H.,Biochem.Pharmacol.22,3099−3108,1973)を用いてKiに変換した。
【0135】
グルカゴン様ペプチド1(Glp1−R)受容体結合アッセイ
受容体結合アッセイでは、293HEK細胞膜から分離し、クローニングしたヒトグルカゴン様ペプチド1受容体(hGlp1−R)(Graziano,MP,Hey,PJ,Borkowski,D,Chicchi,GG,Strader,CD,Biochem Biophys Res Commun.1993 Oct 15、196(1):141−6)を使用した。hGlp1−R cDNAを、発現プラスミドphD(完全にγ−カルボキシル化された組換えヒトプロテインC(抗血液凝固性因子のトランス活性化因子)のトランス活性化発現、Grinnell,B.W.,Berg,D.T.,Walls,J.及びYan,S.B.Bio/Technology 5:1189−1192(1987)を参照)にサブクローニングした。このプラスミドDNAを239HEK細胞にトランスフェクションし、200μg/mLのハイグロマイシンを用いて選抜した。
【0136】
懸濁培養した細胞を使用して粗製の原形質膜を調製した。25mMのトリスHCl(pH7.5)、1mMのMgCl、DNAse 20μ/mL及びEDTAフリーのロシュ社製Complete Inhibitorsを含有する低張バッファ中で、氷上で細胞を溶解させた。その細胞懸濁液をガラス製のダウンスのホモジナイザーによりテフロン棒を用いて25回上下してホモジナイズした。このホモジネートを4℃で1800×gで15分間遠心分離した。上清を回収し、ペレットを低張バッファに再懸濁して再びホモジナイズした。混合物を1800×gで15分間遠心した。第2の上清を第1の上清と混合した。混合した上清を1800×gで15分間再度遠心分離して清澄化した。清澄化した上清を高速遠心管に移し、4℃で25000×gで30分間遠心分離した。ホモジネーションバッファに再懸濁し、使用直前まで−80℃の冷凍室に凍結アリコートとして膜ペレットを保存した。
【0137】
グルカゴン様ペプチド1(Glp−1)を、125I−ラクトペルオキシダーゼ法により放射性ヨードで標識し、Perkin−Elmer/NEN(NEX308)を用いた逆相HPLCで精製した。比活性は2200Ci/mmolであった。125I−グルカゴン物質中にプロパノールの含量が高いため、Kdの決定は飽和結合ではなく均一競合により実施した。Kdは3nMと推定され、全ての試験化合物についてKi値の計算に使用した。
【0138】
脂肪酸フリーの1%BSA(ICN)で予めブロッキングした小麦麦芽アグルチニン(WGA)ビーズによるシンチレーション近接アッセイ(Amersham)により結合アッセイを行った。結合バッファの組成は25mM Hepes(pH7.4)、2.5mM CaCl、1mM MgCl、0.1%の脂肪酸不含BSA(ICN)、0.003%のTween−20及びEDTAフリーのComplete Inhibitors(Roche社)とした。グルカゴン様ペプチド1(Glp−1)をPBS中に1mg/mLの濃度で溶解させ、30μLに分割して直ちに−80℃で凍結させた。上記グルカゴン様ペプチドのアリコートを希釈し、1時間以内に結合アッセイに使用した。試験化合物をDMSOに溶解し、DMSOによる希釈系列を調製した。10μLの希釈された化合物、又はDMSOを、Corning3632(90μLのアッセイ用結合バッファ又は非放射性グルカゴン様ペプチド1(NSB、最終濃度1μM)を含む、不透明で底が透明なアッセイプレート)中に移した。50μLの125Iグルカゴン様ペプチド1(反応液中の最終濃度:0.15nM)、50μLのメンブレン(300μg/ウェル)の及び40μLのWGAビーズ(150mg/ウェル)を添加し、プレートの端から端までを被覆した。プレートを室温で14時間静置した後、MicroBetaで測定した。
【0139】
化合物の存在下における、125Iグルカゴン様ペプチド1の特異的な結合パーセントとして算出した。化合物の絶対EC50用量を、添加した化合物の用量に対する125I−グルカゴン様ペプチド1の特異的結合パーセントを非線形回帰することによって導出した。EC50用量をCheng−Prusoffの式(Cheng Y.,Prusoff W.H.,Biochem.Pharmacol.22,3099−3108,1973)を用いてKiに変換した。
【0140】
グルカゴン刺激によるcAMP機能アンタゴニストアッセイ
cAMP機能アッセイでは、上記hGlucR結合アッセイ用に単離したヒトグルカゴン受容体細胞系と同一のクローンを使用した。化合物の存在下で、EC80用量のグルカゴン含有混合物を用い、細胞を刺激した。細胞内で生じたcAMPを、Perkin Elmer社製のAmplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay,Alpha Screen(6760625R)を用いて定量した。当該システムは簡潔には、細胞内のcAMPとキット由来のビオチン化cAMPとで、抗cAMP抗体被覆アクセプター側ビーズ及びストレプトアビジンコーティングされたドナー側ビーズとの結合を競合させるものである。細胞内のcAMP濃度の増加にしたがい、アクセプター側ビーズ−ビオチン化cAMP−ドナー側ビーズ複合体が減少するため、シグナルが減少した。
【0141】
グルカゴンを0.01N HClに1mg/mLの濃度で溶解させ、30μLのアリコートに分割し、直ちに−80℃で凍結した。グルカゴンのアリコートを希釈し、1時間以内に機能アッセイに使用した。コンフルエント状態前の組織培養ディッシュから、酵素フリーの細胞分離溶液(特製培地5−004−B)を用いて細胞を回収した。細胞を低速で沈殿させ、アッセイバッファ(Mg及びCa添加HBSS中、25mM Hepes(GIBCO、14025−092)、0.1%の脂肪酸フリーのBSA(ICN社製)を含む)で3回洗浄し、次いで希釈して1mL当たり250,000細胞の最終濃度にした。化合物をDMSO中に段階希釈し、次いで3倍濃度のグルカゴン及び3%DMSOを含むアッセイバッファで希釈した。グルカゴンのEC80を最大グルカゴン用量応答から決定し、グルカゴンが最大グルカゴン反応の80%を引き起こす用量として表した。Alphaスクリーンキットのビオチン化cAMP(最終量、ウエル当たり1単位)と3×IBMX(1500μM)のアッセイバッファ中混合液を調製した。
【0142】
96ウエル、低容量、白色、ポリスチレンのコスタープレート内で機能アッセイを行った。ビオチン化cAMP/IBMX混合物(0.02mL)を各ウエルに添加し、続いてグルカゴン用量応答cAMP標準曲線の、又は化合物/グルカゴン混合物の0.02mLを添加した。0.02mLの細胞懸濁液(最終5000個/ウエル)を添加して反応を開始させた。室温で60分後、0.03mLの溶解バッファ[10mMHepes(pH7.4)、1% NP40及びAlphaスクリーンキットのアクセプター及びドナービーズをウエル当たり各1ユニット含有する0.01%の脂肪酸フリーBSA(ICN)]を添加して反応を停止させた。溶解バッファの添加を緑色光下で行い、検出ビーズの退色を防止した。プレートを(アルミ)箔で包み、室温に一晩放置して平衡状態にした。Packard Fusion(商標)−αInstrumentでプレートを解析した。
【0143】
Alphaスクリーンにおける単位を、cAMP標準曲線に基づき、ウエル当たりで生じたcAMPのpモル値に変換した。化合物の存在下で生じたcAMPのpモル値を、EC80用量のグルカゴンのみによる最大反応に対するパーセンテージに変換した。各実験について、cAMPのpモル値の50%の反応を起こすのに必要なグルカゴン量を測定した。このEC50用量を使用して、改変Cheng−Prusoffの式(Cheng,Y.,Prusoff,W.H.,Biochem.Pharmacol.22,3099−3108,1973、
Kb=(化合物のEC50)/[1+(使用したグルカゴンのpM/pMで表したグルカゴン用量応答のEC50)]
を用いて結果をKbとして標準化した。
【0144】
本明細書に記載の化合物は好ましくは、本明細書に開示されるグルカゴン受容体(hGlucR)結合アッセイで測定した結果、50μM以下のKi値を有する。好ましくは、本明細書に記載の化合物は本明細書に開示されるグルカゴン受容体(hGlucR)結合アッセイで測定した結果、5μM以下、好ましくは500nM以下、更に好ましくは100nM以下のKi値を有した。本明細書に記載の化合物は通常、GLP−1受容体と比較してグルカゴン受容体に対してより高い親和性、好ましくはGLP−1受容体よりもグルカゴン受容体に対して10〜10,000倍高い結合親和性を示すことが好ましい。本願明細書に記載の全ての実施例は、1μM未満のKi値を有する。開示する化合物に関する結果を以下に記す。
【0145】
表1:
【表2】

【0146】
上記より、当事者であれば本発明の本質的な特徴を理解し、本発明の技術的思想と範囲から逸脱することなく本発明を種々変更及び修正し、多様な用途及び状況に適応させることができる。したがって、他の実施形態も又本発明の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される構造を有する化合物
【化1】


(I)
又はその薬理学的に許容できる塩。
(式中、R1及びR2は独立に水素又はハロゲンであり、
R3は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)シクロアルキル基、−(C−C)アルキル−(C−C)シクロアルキル基又は−(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R4及びR5は独立に水素、−ハロゲン、−ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、−CN、−(C−C)アルコキシ基、−(C−C)アルケニル基又は−(C−C)アルキル基(任意に、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R6は水素、ハロゲン、又は、
【化2】


であって、式中、ジグザク表記は親分子への結合位置を示し、
R7及びR8は独立に水素、−ハロゲン、−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)アルコキシル基、−(C−C)シクロアルキル基、−C(O)R10、−COOR10、−OC(O)R10、−OS(O)R10、−SR10、−S(O)R10、−S(O)R10又は−O(C−C)アルケニル基であり、
R9は独立に水素、ハロゲン、−CN−(C−C)シクロアルキル基、−C(O)R10、−COOR10、−OC(O)R10、−OS(O)R10、−SR10、−S(O)R10、−S(O)R10、又は−O(C−C)アルケニル基、−(C−C)アルコキシ基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)若しくは−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R10は各々独立に−水素又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)。)
【請求項2】
請求項1記載の化合物又は塩。
(式中、R1及びR2は水素であり、
R3は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)シクロアルキル基、−(C−C)アルキル−(C−C)シクロアルキル基、又は−(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
R4及びR5は独立に水素、−ハロゲン、又は−(C−C)アルキル基(任意に、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
R6は
【化3】


であって、式中、ジグザク表記は親分子への結合位置を示し、
R7及びR8は独立に水素、−ハロゲン、−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)アルコキシル基であり、
R9は独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)。)
【請求項3】
請求項1記載の化合物又は塩。
(式中R1及びR2は水素であり、
R3は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)シクロアルキル基、−(C−C)アルキル−(C−C)シクロアルキル基又は−(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R4及びR5は独立に水素、−ハロゲン又は−CH(任意に、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R6は
【化4】


であって、式中、ジグザク表記は親分子への結合位置を示し、
R7及びR8は独立に水素、又はハロゲンであり、
R9は独立に−(C−C)アルキル基(任意に、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)。)
【請求項4】
請求項1記載の化合物又は塩。
(式中、R1及びR2は水素であり、
R3は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)シクロアルキル基、−(C−C)アルキル−(C−C)シクロアルキル基又は−(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
R4及びR5は−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であって、その各々はR6が結合するフェニル環上のR6に隣接しする部位を占め、
R6は
【化5】


であって、式中、ジグザク表記は親分子への結合位置を示し、
R7及びR8は水素であり、
R9は独立に−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)。)
【請求項5】
請求項1記載の化合物又は塩。
(式中、R1及びR2は独立に水素又はハロゲンであり、
R3はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−メチルプロピル基、3−メチルブチル基、tert−ブチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、3−トリフルオロプロピル基、4−トリフルオロブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基であり、
R4及びR5は独立に水素、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、ペンチル基、イソプロポキシ基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、−CN、メトキシ基、ヒドロキシメチル基、4−メチルペンチルオキシ基又はペンチルオキシ基であり、
R7及びR8は独立に水素、フルオロ基、クロロ基、メチル基、エチル基、ペンチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、アセチル基、2−メチルプロピル基、メトキシ基、シクロヘキシル基又はトリフルオロメトキシ基であり、
R9は水素、ブロモ基、フルオロ基、メチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基又はイソプロピル基である。)
【請求項6】
以下の式Z1からZ6からなる群から選択される、請求項1記載の化合物
【化6】

Z1
【化7】

Z2
【化8】

Z3
【化9】

Z4
【化10】

Z5
【化11】

Z6
又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項7】
以下の群から選択される請求項1記載の化合物:
3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)、
3−{4−[3−メチル−1−(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)、
3−{4−[1−(2,6−ジメチル−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)、
3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)、
3−{4−[1−(4’−シアノ−ビフェニル−4−イルアミノ)−ヘキシル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)、
3−{4−[1−(2−メトキシ−ビフェニル−4−イルアミノ)−ヘキシル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(ラセミ体)、
3−{4−[1−(4’−シアノ−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体1)、
3−{4−[1−(4’−シアノ−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体2)、
3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体1)、
3−{4−[1−(4’−tert−ブチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−3−メチルブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体2)、
3−{4−[3−メチル−1−(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体1)及び
3−{4−[3−メチル−1−(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミノ)−ブチル]−ベンゾイルアミノ}−プロピオン酸(異性体2)、
又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項8】
請求項1から7記載のいずれか1項記載の化合物及び薬理学的に許容できる担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項9】
哺乳類のグルカゴン受容体を阻害する方法であって、かかる処置を必要とする哺乳類に、グルカゴン受容体を阻害するのに十分な量の請求項1から8のいずれか1項記載の式Iの化合物又はその塩を投与することを含んでなる方法。
【請求項10】
哺乳類の血糖レベルを選択的に低下させる方法であって、かかる処置を必要とする哺乳類に、グルカゴン受容体を阻害するのに十分な量の請求項1から8のいずれか1項記載の式Iの化合物又はその塩を投与することを含んでなる方法。
【請求項11】
2型糖尿病の治療方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類に、有効量の請求項1から8のいずれか1項記載の化合物を投与することを含んでなる方法。
【請求項12】
2型糖尿病の治療方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類に、有効量の請求項8記載の医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項13】
2型糖尿病の治療用の、請求項1から7のいずれか1項記載の式Iの化合物又はその塩。
【請求項14】
2型糖尿病の治療用薬剤の製造への、請求項1から8のいずれか1項記載の式Iの化合物又はその塩の使用。

【公表番号】特表2009−519226(P2009−519226A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541446(P2008−541446)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/060586
【国際公開番号】WO2007/106181
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】