説明

グルカゴン受容体抗体に関する組成物および方法

本開示は、抗原結合タンパク質、具体的には、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する抗体に関する、組成物および方法を提供する。本開示は、このような抗原結合タンパク質および抗体をコードする核酸、ならびに、2型糖尿病および関連する障害を治療および予防するような治療を必要とする対象に、このような抗体を投与することによって2型糖尿病および関連する障害を治療および予防する方法を含む、このような抗体を作製および使用する方法を、提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2006年9月20日に出願された米国仮出願第60/846,202、および2007年8月30日に出願された米国仮出願第60/968,977の利益を請求する。該出願全体の開示は、信頼されるものであり、かつ、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明の分野は、グルカゴン受容体抗体に関する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
グルカゴンは、プロホルモン転換酵素2の細胞特異的発現によって膵アルファ細胞においてその前駆体からプロセシングされた、29アミノ酸のホルモンである(Furutaら、J. Biol. Chem. 276:27197-27202 (2001年))。空腹時に、グルカゴン分泌は、糖値の低下に応答して増加する。グルカゴン分泌の増加は、肝グリコーゲン分解および糖新生を促進することによってグルコース産生を刺激する。このように、グルカゴンは、動物における糖の正常値維持において、インスリンの効果との均衡を保っている。
【0004】
グルカゴン受容体(GCGR)は、Gタンパク質共役受容体(GCGR)のセレクチンサブファミリー(ファミリーB)に属する。グルカゴン受容体は、主として肝臓、そして腎臓に発現して、糖新生におけるその役割を表しており、肝臓においては、肝グルコース産生量を制御する。肝臓におけるグルカゴン受容体の活性化は、アデニルシクラーゼの活性およびホスホイノシトールの代謝回転を刺激し、続いて、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(FBPase-1)およびグルコース-6-ホスファターゼ(G-6-Pase)を含む糖新生酵素の発現増加をもたらす。加えて、グルカゴンのシグナル伝達は、グリコーゲンホスホリラーゼを活性化し、かつ、グリコーゲンシンターゼを阻害する。
【0005】
試験により、より高い基礎グルカゴン値、および食後のグルカゴン分泌抑制の欠如が、ヒトにおいて糖尿病状態に寄与することが、示されている(Mullerら、N Eng J Med 283:109-115 (1970年))。グルカゴンの産生もしくは機能を標的とすることが、血糖を調節および低下させる一つの方法である可能性がある。2型糖尿病に対して有効な治療を提供する需要が、継続して存在する。本発明は、2型糖尿病および関連する疾患の治療に対する新規の組成物および方法を提供することによって、この需要に対処する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Furutaら、J. Biol. Chem. 276:27197-27202 (2001年)
【非特許文献2】Mullerら、N Eng J Med 283:109-115 (1970年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面において、本発明は、a.以下からなる群より選択される配列を含んでなる軽鎖CDR3:i.L1〜L23の軽鎖CDR3配列(配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97、100)からなる群より選択されるCDR3配列と合計3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR3配列;ii.L Q X21 N S X22 P L T(配列番号208);iii.Q A W D S X23 T V X24(配列番号209);ならびに、b.以下からなる群より選択される配列を含んでなる重鎖CDR3配列:i.H1〜H23の重鎖CDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199)からなる群より選択されるCDR3配列と合計4を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR3配列;ii.E X252627 Y D I L T G Y X2829 Y Y G X30 D V(配列番号210);iii.X31 G G G F D Y(配列番号211);あるいは、c.(a)の軽鎖CDR配列および(b)の重鎖CDR配列;(ここで、X21はヒスチジン残基またはグルタミン残基であり、X22はアスパラギン残基、アスパラギン酸残基またはチロシン残基であり、X23はアスパラギン残基またはセリン残基であり、X24はイソロイシン残基またはバリン残基であり、X25はリジン残基、グルタミン酸残基またはプロリン残基であり、X26はアスパラギン酸残基、スレオニン残基、グルタミン残基またはプロリン残基であり、X27はヒスチジン残基またはチロシン残基であり、X28はアスパラギン残基、ヒスチジン残基、アスパラギン酸残基またはフェニルアラニン残基であり、X29はチロシン残基、ヒスチジン残基またはアスパラギン残基であり、X30はロイシン残基またはメチオニン残基であり、X31はロイシン残基またはメチオニン残基である)のいずれかを含んでなる単離された抗原結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質を、提供する。
【0008】
別の側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.以下からなる群より選択される軽鎖CDR1配列:i.L1〜L23のCDR1配列(配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR1;ii.R S XQ S L L D XD G T Y T L D(配列番号200);iii.R A S Q XI R N D XG(配列番号201);およびiv.S G D K L G D K Y XC(配列番号202)(ここで、Xはセリン残基またはスレオニン残基であり、Xはアルギニン残基またはセリン残基であり、Xはアスパラギン酸残基またはアラニン残基であり、Xはグリシン残基またはアスパラギン酸残基であり、Xはロイシン残基またはフェニルアラニン残基であり、Xはバリン残基またはアラニン残基である);b.以下からなる群より選択される軽鎖CDR2配列:i.L1〜L23のCDR2配列(配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR2配列;ii.A A S S L X S(配列番号204);およびiii.Q X1011 K R P S(配列番号205)(ここで、Xはグルタミン残基またはグルタミン酸残基であり、X10はセリン残基またはスレオニン残基であり、X11はスレオニン残基またはセリン残基である);c.以下からなる群より選択される重鎖CDR1配列:i.H1〜H23のCDR1配列(配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR1;ii.XY XM H(配列番号203)(式中、Xはセリン残基またはスレオニン残基であり、Xはグリシン残基またはアスパラギン酸残基である);ならびに、d.以下からなる群より選択される重鎖CDR2:i.H1〜H23のCDR2配列(配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖配列;ii.X12 I W X13 D G S X14 K Y Y X15 D S V K G(配列番号206);およびiii.X16 I S X17 D G S X18 K Y X19 20 D S V K G(配列番号207)(ここで、X12はセリン残基、フェニルアラニン残基、バリン残基またはグルタミン酸残基であり、X13はチロシン残基またはアスパラギン残基であり、X14はアスパラギン残基またはグルタミン酸残基であり、X15はバリン残基またはアラニン残基であり、X16はバリン残基またはフェニルアラニン残基であり、X17はヒスチジン残基、アスパラギン酸残基またはチロシン残基であり、X18はアスパラギン酸残基、アスパラギン残基またはヒスチジン残基であり、X19はチロシン残基またはセリン残基であり、X20はアラニン残基またはグリシン残基である);からなる群より選択される一つのアミノ酸配列をさらに含んでなる。
【0009】
さらなる側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.L1〜L23のCDR1配列(配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR1配列;b.L1〜L23のCDR2配列(配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70)と1を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR2配列;c.L1〜L23のCDR3配列(配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97および100)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR3配列;ならびに、d.H1〜H23のCDR1配列(配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122)と1を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR1配列;e.H1〜H23のCDR2配列(配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR2配列;ならびに、f.H1〜H23のCDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR3配列;からなる群より選択される一つのアミノ酸配列を含んでなる。
【0010】
さらなる側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.L1〜L23のCDR1配列(配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41)と1を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR1配列;b.L1〜L23の軽鎖CDR2配列(配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70);c.L1〜L23のCDR3配列(配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97および100)と1を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR3配列;d.H1〜H23の重鎖CDR1配列(配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122);e.H1〜H23のCDR2配列(配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163)と1を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR2配列;ならびに、f.H1〜H23のCDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR3配列;からなる群より選択される一つのアミノ酸配列を含んでなる。
【0011】
さらなる側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.L1〜L23の軽鎖CDR1配列(配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41);b.L1〜L23の軽鎖CDR3配列(配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97および100);c.H1〜H23の重鎖CDR2配列(配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163);ならびに、d.H1〜H23のCDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199)と1を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR3配列;からなる群より選択される一つのアミノ酸配列を含んでなる。
【0012】
よりさらなる側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.H1〜H23の重鎖CDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199);からなる群より選択される一つのアミノ酸配列を含んでなる。
【0013】
別の側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.L1〜L23のCDR1配列(配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR1配列;b.L1〜L23のCDR2配列(配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR2配列;c.L1〜L23のCDR3配列(配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97および100)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR3配列;d.H1〜H23のCDR1配列(配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR1配列;e.H1〜H23のCDR2配列(配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR2配列;ならびに、f.H1〜H23のCDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199)と4を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR3配列;からなる群より選択される二つのアミノ酸配列を含んでなる。
【0014】
別の側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.L1〜L23のCDR1配列(配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR1配列;b.L1〜L23のCDR2配列(配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR2配列;c.L1〜L23のCDR3配列(配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97および100)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR3配列;d.H1〜H23のCDR1配列(配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR1配列;e.H1〜H23のCDR2配列(配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR2配列;ならびに、f.H1〜H23のCDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199)と4を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR3配列;からなる群より選択される三つのアミノ酸配列を含んでなる。
【0015】
別の側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.L1〜L23のCDR1配列(配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR1配列;b.L1〜L23のCDR2配列(配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR2配列;c.L1〜L23のCDR3配列(配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97および100)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR3配列;d.H1〜H23のCDR1配列(配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR1配列;e.H1〜H23のCDR2配列(配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR2配列;ならびに、f.H1〜H23のCDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199)と4を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR3配列;からなる群より選択される四つのアミノ酸配列を含んでなる。別の側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.L1〜L23のCDR1配列(配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR1配列;b.L1〜L23のCDR2配列(配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR2配列;c.L1〜L23のCDR3配列(配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97および100)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR3配列;d.H1〜H23のCDR1配列(配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR1配列;e.H1〜H23のCDR2配列(配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR2配列;ならびに、f.H1〜H23のCDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199)と4を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR3配列;からなる群より選択される五つのアミノ酸配列を含んでなる。
【0016】
別の側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.L1〜L23のCDR1配列(配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR1配列;b.L1〜L23のCDR2配列(配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR2配列;c.L1〜L23のCDR3配列(配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97および100)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR3配列;d.H1〜H23のCDR1配列(配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR1配列;e.H1〜H23のCDR2配列(配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR2配列;ならびに、f.H1〜H23のCDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199)と4を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR3配列;を含んでなる。
【0017】
別の側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.以下を含んでなる軽鎖可変ドメイン:i.配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41から選択される軽鎖CDR1配列;ii.配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70から選択される軽鎖CDR2配列;ならびにiii.配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97および100から選択される軽鎖CDR3配列;b.以下を含んでなる重鎖可変ドメイン:i.配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122から選択される重鎖CDR1配列;ii.配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163から選択される重鎖CDR2配列;ならびにiii.配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199から選択される重鎖CDR3配列;あるいは、c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン;のいずれかを含んでなる。
【0018】
別の側面において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.以下からなる群より選択される軽鎖可変ドメイン配列:i.L1〜L23から選択される軽鎖可変ドメイン配列(配列番号213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255および257)と少なくとも80%同一の配列を有するアミノ酸;ii.L1〜L23の軽鎖可変ドメイン配列をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254および256)と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;iii.L1〜L23の軽鎖可変ドメイン配列からなるポリヌクレオチドである配列番号212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254および256の相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;b.以下からなる群より選択される重鎖可変ドメイン配列:i.配列番号259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301および303のH1〜H23の重鎖可変ドメイン配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸の配列;ii.H1〜H23の重鎖可変ドメイン配列をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300および302)と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;iii.H1〜H23の重鎖可変ドメイン配列からなるポリヌクレオチド(配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300および302)の相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;あるいは、c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン;のいずれかを含んでなる。
【0019】
一実施態様において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、a.配列番号213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255および257のL1〜L23からなる群より選択される軽鎖可変ドメイン配列;b.配列番号259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301および303のH1〜H23からなる群より選択される重鎖可変ドメイン配列;あるいは、c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン;のいずれかを含んでなる。
【0020】
別の実施態様において、単離された結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22およびL23H23からなる組み合わせの群より選択される、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの組み合わせを含んでなる。一実施態様において、単離された抗原結合タンパク質は、配列番号305の軽鎖定常配列;配列番号307の軽鎖定常配列;配列番号309の重鎖定常配列;配列番号305の軽鎖定常配列および配列番号309の重鎖定常配列;あるいは、配列番号307の軽鎖定常配列および配列番号309の重鎖定常配列;をさらに含んでなる。
【0021】
一側面において、単離された抗原結合タンパク質は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体フラグメント、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fabフラグメント、F(fa')xフラグメント、ドメイン抗体、IgD抗体、IgE抗体およびIgM抗体およびIgG1抗体およびIgG2抗体およびIgG3抗体およびIgG4抗体、およびH鎖間ジスルフィド結合を形成する傾向を弱める少なくとも一つのヒンジ領域内変異を有するIgG4抗体からなる群より選択される。一実施態様において、抗原結合タンパク質は、ヒト抗体である。
【0022】
別の側面において、単離された抗体結合タンパク質は、ヒトグルカゴン受容体に結合するときに:a.参照抗体と実質的に同じKdでヒトグルカゴン受容体に結合するか;b.前記参照抗体と実質的に同じIC50でヒトグルカゴン受容体のグルカゴン刺激を阻害するか;または、c.前記参照抗体と結合に関して競合し、ここで、前記参照抗体は、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L11H11、L12H12、L13H13、L15H15、L21H21およびL22H22からなる群より選択される軽鎖および重鎖可変ドメイン配列の組み合わせを含んでなる。
【0023】
別の側面において提供されるのは、ヒトグルカゴン受容体に結合するときに:a.参照抗体と実質的に同じKdでヒトグルカゴン受容体に結合するか;b.前記参照抗体と実質的に同じIC50でヒトグルカゴン受容体のグルカゴン刺激を阻害するか;または、c.前記参照抗体と結合に関して競合する、単離されたヒト抗体であり、ここで、前記参照抗体は、A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7、A−8、A−9、A−11、A−12、A−13、A−15、A−21およびA−22からなる群より選択される軽鎖および重鎖可変ドメイン配列の組み合わせを含んでなる。
【0024】
別の側面において提供されるのは、ヒトグルカゴン受容体に結合するときに:a.ヒトグルカゴン受容体のSer80〜Ser119に特異的に結合するか;b.90nM以下のIC50値でグルカゴンのシグナル伝達を低減させるか;c.動物モデルにおいて血糖を低下させるか;d.aおよびbの両方;または、e.a、bおよびcの両方;である、単離されたヒト抗体である。一実施態様において、動物モデルは、ob/ob動物モデルである。
【0025】
別の側面において提供されるのは、抗原結合タンパク質を医薬的に許容可能なキャリアーとの混合物中に含んでなる医薬組成物である。別の実施態様において、医薬組成物は、単離されたヒト抗体を医薬的に許容可能なキャリアーとの混合物中に含んでなる。
【0026】
別の側面において提供されるのは、本発明の抗原結合タンパク質の軽鎖可変ドメイン、重鎖可変ドメイン、またはその両方をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子である。一実施態様において、ポリヌクレオチドは、軽鎖可変ドメインポリヌクレオチド配列L1〜L23(配列番号212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254および256)、重鎖可変ドメインポリヌクレオチド配列H1〜H23(配列番号258、260、262、264、266、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302)、またはその両方を含んでなる。
【0027】
さらに提供されるのは、本発明のポリヌクレオチドを含んでなるベクターである。一実施態様において、ベクターは発現ベクターである。さらに提供されるのは、ベクターを含んでなる宿主細胞である。さらに提供されるのは、本発明の抗原結合タンパク質を産生可能なハイブリドーマである。さらに提供されるのは、本発明の抗原結合タンパク質の作製方法であって、本発明の抗原結合タンパク質を細胞に発現させる条件下で宿主細胞を培養することを含んでなる方法である。
【0028】
さらに提供されるのは、それを必要とする対象において血糖を低下させる方法であって、治療有効量の医薬組成物を対象に投与することを含んでなる方法である。さらに提供されるのは、それを必要とする対象において耐糖能を改善する方法であって、治療有効投与量の医薬組成物を対象に投与することを含んでなる方法である。さらに提供されるのは、治療有効量の医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象において2型糖尿病もしくは関連する障害を予防または治療する方法である。一実施態様において、対象はヒト対象である。別の実施態様において、関連する障害は、高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能障害、脂質代謝異常およびメタボリック症候群から選択される。さらに提供されるのは、血糖を低下させ、2型糖尿病および関連する障害(高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能障害、脂質代謝異常およびメタボリック症候群を含む)を予防または治療するのに有用な薬剤の製造における、本発明の医薬組成物の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、バッファーと比較して抗体A−3または抗体A−4を1または3mg/kgの用量にて単回注射後の、14週齢の雄性ob/obマウスの血糖値を示す(n=10動物/群)。血糖は、0時点、ならびに注射後24、48、96、120、144、192および240時間に測定した。
【図2】図2は、バッファーと比較して抗体A−3または抗体A−9を1または3mg/kgの用量にて単回注射後の、14週齢の雄性ob/obマウスの血糖値を示す(n=10動物/群)。血糖は、0時点、ならびに注射後24、72、120、192および240時間に測定した。
【図3】図3は、ビヒクルまたは抗体9(A9)の単回皮下注射前(GTT1およびGTT2)および後(GTT3、4および5)の曲線下糖値(AUC)を示す、経口耐糖能試験(GTT)の結果を示す。
【図4】図4は、標識抗体A−3と結合に関して競合可能な非標識抗体(克服性抗体)を示す。
【図5】図5は、標識抗体A−3と結合に関して部分的に競合可能な非標識抗体(部分的克服性抗体)を示す。
【図6】図6は、標識抗体A−3と結合に関して競合可能でない非標識抗体(非克服性抗体)を示す。
【図7】図7は、四つの抗GCGR抗体について、ここに示したヒトGCGRおよびヒトGLP−1受容体から構築されたキメラ受容体との結合試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、ヒトグルカゴン受容体(GCGR)に特異的に結合する抗体などの抗原結合タンパク質に関する。これらには、グルカゴンとヒトGCGRとの結合を阻害または遮断し、そして受容体を介したグルカゴンのシグナル伝達を低減させる、抗原結合タンパク質が含まれる。一実施態様において提供されるのは、動物モデルにおいて血糖を低下させることが可能なアンタゴニスト抗体を含む、ヒト抗体である。抗原結合タンパク質は、糖尿病および関連する疾患の治療に有用である。
【0031】
本発明は、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する抗原結合タンパク質に関する、組成物、キットおよび方法をさらに提供する。さらに提供されるのは、抗グルカゴン受容体抗体、抗体フラグメントまたは抗体誘導体の全部もしくは一部をコードする核酸などの、グルカゴン受容体に結合するポリペプチドの全部もしくは一部分をコードするポリヌクレオチドの配列を含んでなる、核酸分子、その誘導体およびフラグメントである。本発明は、このような核酸を含んでなるベクターおよびプラスミド、ならびに、このような核酸ならびに/またはベクターおよびプラスミドを含んでなる細胞または細胞株を、さらに提供する。提供される方法には、例えば、抗GCGR抗体などのヒトGCGRに結合する抗原結合タンパク質を作製、同定および単離する方法、抗原結合タンパク質がGCGRに結合するかどうかを決定する方法、ヒトGCGRに結合する抗原結合タンパク質を含んでなる医薬組成物などの組成物を作製する方法、ならびに、GCGRと結合する抗原結合タンパク質を対象に投与するための方法であって、例えば、GCGRが介在する状態を治療するための方法、およびグルカゴンのシグナル伝達に伴う生物活性をin vivoまたはin vitroで調節するための方法が、含まれる。
【0032】
定義
ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、標準的な1もしくは3文字略号を用いて示す。特段に示さない限り、ポリペプチド配列は、左にそのアミノ末端、および右にそのカルボキシ末端を有し、そして、一本鎖核酸配列、および二本鎖核酸配列の上部の鎖は左にその5'末端、および右にその3'末端を有する。ポリペプチドの特定の区域は、アミノ酸80〜119などのアミノ酸残基番号によって、またはSer80〜Ser119などのその部位での実際の残基によって、指定可能である。特定のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を、参照配列とどのように異なるのかを説明することにより記載することもまた可能である。特定の軽鎖および重鎖可変ドメインのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、L1(「軽鎖可変ドメイン1」)、H1(「重鎖可変ドメイン1」)と指定される。軽鎖および重鎖を含んでなる抗原結合タンパク質または抗体は、軽鎖の名称と重鎖の名称とを組み合わせることによって示される。例えば、「L4H7」は、L4の軽鎖可変ドメインおよびH7の重鎖可変ドメインを含んでなる抗体である。
【0033】
本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって特段に必要とされない限り、単数形の語は複数形を含み、そして、複数形の語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子およびタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションに関連して用いられる命名法、ならびにそれらの技術は、当該技術分野において周知かつ一般的に用いられるものである。本発明の方法および技術は、一般には、当該技術分野において周知の慣用の方法にしたがって、かつ特段に示さない限り本明細書全体にわたって引用され、そして論じられる種々の一般的かつより具体的な参考文献に記載されるとおりに、遂行される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州 (1989) ;および、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992年);および、 Harlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州 (1990年)を参照されたい。該文献は、参照によって本明細書に援用される。酵素反応および精製技術は、当該技術分野において一般的に行われるとおりに、または本明細書に記載されるとおりに、製造業者の仕様書にしたがって行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医化学および薬化学に関連して用いられる用語、ならびにそれらの実験室手順および技術は、当該技術分野において周知であり、かつ一般的に用いられるものである。標準的な技術を、化学合成、化学分析、医薬品の製造、処方物化および送達、ならびに患者の治療に用いることが可能である。
【0034】
以下の語は、特段に示されない限り、以下の意味を有することが理解されよう:「単離された分子」(分子とは、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体である)の語は、その由来または起源によって、(1)その天然状態では付随している、自然界では随伴している構成成分を伴わないか、(2)同種由来の他分子を実質的に含まないか、(3)異なる種に由来する細胞によって発現されるか、あるいは(4)自然界に生じない、分子である。このように、化学合成されるか、または自然界において由来する細胞とは異なる細胞系において発現される分子は、自然界で随伴しているその構成成分から「単離され」ていることになる。また、分子を、当該技術分野において周知の精製技術を用いて単離することによって、自然界では随伴している構成成分を実質的に含まないようにしてもよい。分子の純度または均一性を、当該技術分野において周知の多数の手段によってアッセイしてもよい。例えば、ポリペプチド試料の純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、およびポリペプチドを可視化するためのゲル染色を用いて、当該技術分野において周知の技術を用いてアッセイしてもよい。特定の目的に対しては、HPLC、または精製技術分野において周知の他手段を用いて、高分解能を供してもよい。
【0035】
「グルカゴン阻害剤」および「グルカゴンアンタゴニスト」の語は、同義的に用いられる。それぞれは、グルカゴンのシグナル伝達を検出可能な程度に阻害する分子である。阻害剤によって引き起こされる阻害は、それがアッセイを用いて検出可能である限り、完全である必要がない。例えば、以下の実施例4に記載した細胞系アッセイは、グルカゴンのシグナル伝達の阻害を測定するのに有用なアッセイを示す。
【0036】
「ペプチド」「ポリペプチド」および「タンパク質」の語は、それぞれ、ペプチド結合によって互いに連結している2またはそれより多くのアミノ酸残基を含んでなる分子を指す。これらの語は、例えば、天然および人工のタンパク質、タンパク質フラグメント、およびタンパク質配列のポリペプチドアナログ(ムテイン、バリアントおよび融合タンパク質など)、ならびに、翻訳後に、あるいは共有結合的もしくは非共有結合的に修飾されたタンパク質を、包含する。ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、単量体であっても、または多量体であってもよい。
【0037】
「ポリペプチドフラグメント」の語は、本明細書では、対応する完全長タンパク質と比較してアミノ末端および/またはカルボキシ末端に欠失があるポリペプチドを指す。フラグメントは、例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、50、70、80、90、100、150または200アミノ酸長であることが可能である。フラグメントはまた、例えば、最長で1,000、750、500、250、200、175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、14、13、12、11または10アミノ酸長であることが可能である。フラグメントは、その一方または両方の末端に、1またはそれより多くのさらなるアミノ酸、例えば、自然界に存在する別のタンパク質(例えば、Fcまたはロイシンジッパードメイン)に由来するアミノ酸の配列または人工アミノ酸配列(例えば、人工リンカー配列)を、さらに含んでなることが可能である。
【0038】
本発明のポリペプチドには、例えば、(1)タンパク質分解に対する感受性を低減させ、(2)酸化に対する感受性を低減させ、(3)タンパク質複合物の形成に向けて結合親和性を変え、(4)結合親和性を変え、そして(4)他の物理化学的もしくは機能的特性を与えるかまたは修飾する、任意の方法および任意の理由によって修飾されているポリペプチドが含まれる。アナログには、ポリペプチドのムテインが含まれる。例えば、1または複数のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を、自然界に存在する配列(例えば、分子内接触を形成するドメインの外にあるポリペプチドの一部分)において行ってもよい。「保存的アミノ酸置換」は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させないものである(例えば、置換アミノ酸は、親配列に生じるヘリックスを壊すか、あるいは親配列を特徴付けるかもしくはその機能性に必要な他のタイプの二次構造を破壊する傾向にあってはならない)。当該技術分野により認められているポリペプチドの二次および三次構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton編集、W. H. Freeman and Company, ニューヨーク州 (1984年)); Introduction to Protein Structure (C. BrandenおよびJ. Tooze編集、ガーランド・パブリッシング、ニューヨーク、ニューヨーク州 (1991年));ならびに、Thorntonら、Nature 354:105 (1991年) に記載されている。該文献は、それぞれ、参照によって本明細書に援用される。
【0039】
本発明はまた、GCGR抗原結合タンパク質の非ペプチドアナログも提供する。非ペプチドアナログは、鋳型となるペプチドと相似する特性を伴う薬物を提供するために、一般的に用いられる。これらのタイプの非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣体(peptide mimeticまたはpeptidemimetic)」と称される。Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15:29 (1986年); VeberおよびFreidinger TINS 392ページ (1985年);ならびに、Evansら、J. Med. Chem. 30:1229 (1987年)。該文献は、参照によって本明細書に援用される。治療に有用なペプチドと構造的に類似するペプチド模倣体を、同等の治療もしくは予防効果を得るために用いてもよい。一般に、ペプチド模倣体は、ヒト抗体などのパラダイムポリペプチド(すなわち、所望の生化学的特性または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似するが、ただし、当該技術分野において周知の方法によって以下からなる群より選択される結合により置換されていてもよい、1またはそれより多くのペプチド結合を有する:−−CHNH−−、−−CHS−−、−−CH-CH−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−−、および-CHSO−−。コンセンサス配列の1またはそれより多くのアミノ酸の、同じタイプのD-アミノ酸への系統的な置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)を、より安定なペプチドを作出するために用いてもよい。加えて、コンセンサス配列、または実質的に同一であるコンセンサス配列の変形形態を含んでなる、限定されたペプチドを、例えば、ペプチドを環化させる分子内ジスルフィド架橋を形成可能な内部システイン残基を付加することによって、当該技術分野において周知の方法により(RizoおよびGierasch Ann. Rev. Biochem. 61:387 (1992年)、参照によって本明細書に援用される)作出してもよい。
【0040】
ポリペプチドの「バリアント」(例えば、抗体)は、1またはそれより多くのアミノ酸残基が、別のポリペプチド配列と比較してアミノ酸配列に挿入、欠失および/または置換されている、アミノ酸配列を含んでなる。本発明のバリアントには、融合タンパク質が含まれる。
【0041】
ポリペプチドの「誘導体」は、例えば、例としてポリエチレングリコール、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)などの別の化学部分との複合体化、リン酸化およびグリコシル化によって化学修飾されている、ポリペプチド(例えば、抗体)である。特段に示されない限り、「抗体」の語には、二つの完全長重鎖および二つの完全長軽鎖を含んでなる抗体に加えて、その誘導体、バリアント、フラグメントおよびムテインが含まれ、その例を以下に記載する。
【0042】
「抗原結合タンパク質」は、抗原に結合する部分、および所望により、抗原結合部分が抗原結合タンパク質と抗原との結合を促進するコンフォメーションを取ることを可能にさせるスキャフォールドもしくはフレームワーク部分を含んでなる、タンパク質である。抗原結合タンパク質の例には、抗体、抗体フラグメント(例えば、抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体および抗体アナログが含まれる。抗原結合タンパク質は、例えば、代替のタンパク質スキャフォールド、またはCDRもしくはCDR誘導体が移植された人工スキャフォールドを含んでなることが可能である。このようなスキャフォールドには、これに限定されないが、例えば抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化させるために導入された変異を含んでなる、抗体由来スキャフォールド、ならびに、例えば生体適合性ポリマーを含んでなる、完全合成スキャフォールドが含まれる。例えば、Korndorferら、2003年、Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics、第53巻、第1号:121-129;Roqueら、2004年、Biotechnol. Prog. 20:639-654を参照されたい。加えて、フィブロネクチン構成成分をスキャフォールドとして利用する抗体模倣体に基づいたスキャフォールドと同様に、抗体模倣体(「PAM」)を用いることが可能である。
【0043】
抗原結合タンパク質は、例えば、自然界に存在する免疫グロブリンの構造を有することが可能である。「免疫グロブリン」は、四量体分子である。自然界に存在する免疫グロブリンでは、各四量体は、二つの同一ポリペプチド鎖対から構成され、各対は、一つの「軽」鎖(約25kDa)および一つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分には、抗原認識に主として関与する、約100〜110またはそれより多くのアミノ酸の可変領域が含まれる。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主として関与する定常領域を定義する。ヒト軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンとして分類され、そして、抗体のアイソタイプは、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして定義される。軽鎖および重鎖内では、可変領域と定常領域が約12またはそれより多くのアミノ酸の「J」領域によって連結し、重鎖にはまた、約10のアミノ酸の「D」領域も含まれる。概して、Fundamental Immunology、第7章(Paul, W.編集、第2版、レーベン・プレス、ニューヨーク州(1989))を参照されたい(あらゆる目的上、その全体が参照によって援用される)。各軽/重鎖対の可変領域は、無傷の免疫グロブリンが二つの結合部位を有するように、抗体結合部位を形成する。
【0044】
自然界に存在する免疫グロブリン鎖は、比較的保存性のフレームワーク領域(FR)が相補性決定領域またはCDRとも称される三つの超可変領域によって連結されているという、同じ一般構造を呈する。軽鎖および重鎖の双方は、N末端からC末端に向かって、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。各ドメインへのアミノ酸の配置は、Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健社会福祉省、PHS, NIH, NIH公開番号91-3242、1991年)の定義にしたがう。
【0045】
「抗体」は、特段に定めない限り、無傷の免疫グロブリン、または特異的結合に関して無傷抗体と競合するその抗原結合部分を指す。抗原結合部分は、組換えDNA技術、または無傷抗体の酵素的もしくは化学的切断によって、作り出してもよい。抗原結合部分には、とりわけ、Fab、Fab'、F(ab')、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)を含むフラグメント、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、および、ポリペプチドとの特異的な抗原結合を付与するのに十分である、免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するポリペプチドが含まれる。
【0046】
Fabフラグメントは、V、V、CおよびC1ドメインを有する一価のフラグメントであり;F(ab')フラグメントは、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された二つのFabフラグメントを有する二価のフラグメントであり;Fdフラグメントは、VおよびC1ドメインを有し;Fvフラグメントは、抗体の1本のアームのVおよびVドメインを有し;そして、dAbフラグメントは、Vドメイン、Vドメイン、またはVもしくはVドメインの抗原結合フラグメントを有する(米国特許第6,846,634、第6,696,245、米国出願公報第05/0202512、第04/0202995、第04/0038291、第04/0009507、第03/0039958、Wardら、Nature 341:544-546, 1989年)。
【0047】
一本鎖抗体(scFv)は、VおよびV領域がリンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)を介して連結して、連続したタンパク質鎖を形成した抗体であり、ここで、リンカーは、タンパク質鎖を折り重ね、そして一価の抗原結合部位を形成させるのに十分な長さである(例えば、Birdら、1988年, Science 242:423-26、およびHustonら、1988年, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-83を参照されたい)。ダイアボディは、各ポリペプチド鎖がリンカーによって連結されているVおよびVドメインを含んでなる、二本のポリペプチド鎖を含んでなる二価抗体であって、ここで、当該リンカーは、同じ鎖上の二つのドメイン間で対合させるには短すぎるため、各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補的なドメインと対合することを可能にする(例えば、Holligerら、1993年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-48、およびPoljakら、1994年、Structure 2:1121-23を参照されたい)。ダイアボディの二本のポリペプチド鎖が同一であるならば、その対合により生じるダイアボディは、二つの同一抗原結合部位を有するであろう。二つの異なる抗原結合部位を有するダイアボディを作製するためには、異なる配列を有するポリペプチド鎖を用いることが可能である。同様に、トリアボディおよびテトラボディは、それぞれ3本および4本のポリペプチド鎖を含んでなり、かつ、それぞれ3および4の抗原結合部位を形成する抗体であり、該結合部位は、同一であるかまたは異なることが可能である。
【0048】
所与の抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)は、Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健社会福祉省、PHS, NIH, NIH公開番号91-3242、1991年)によって記載されたシステムを用いて同定可能である。1またはそれより多くのCDRを、共有結合的あるいは非共有結合的に分子内に組み入れて、それを抗原結合タンパク質にしてもよい。抗原結合タンパク質は、CDRをより大きなポリペプチド鎖の一部として組み入れてもよく、CDRを別のポリペプチド鎖と共有結合的に連結させてもよく、あるいは、CDRを非共有結合的に組み入れてもよい。CDRは、抗原結合タンパク質が目的とする特定の抗原に特異的に結合することを可能にする。
【0049】
抗原結合タンパク質は、1またはそれより多くの結合部位を有してもよい。1より多くの結合部位があるならば、結合部位は、互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。例えば、自然界に存在するヒト免疫グロブリンは、典型的には、二つの同一結合部位を有するが、「二重特異性」または「二機能性」抗体は、二つの異なる結合部位を有する。
【0050】
「ヒト抗体」の語には、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1またはそれより多くの可変および定常領域を有する、すべての抗体が含まれる。一実施態様において、すべての可変および定常ドメインは、ヒト免疫グロブリン配列(完全ヒト抗体)に由来する。これらの抗体は、様々な方法で調製されてもよく、ヒト重鎖および/または軽鎖をコードする遺伝子に由来する抗体を発現するよう遺伝子修飾されているマウスを、目的とする抗原で免疫することによる方法を含む、該方法の例を、以下に記載する。
【0051】
ヒト化抗体は、それがヒト対象に投与されるときに、非ヒト種抗体と比較して免疫応答を誘導しにくく、かつ/または重篤な免疫応答をあまり誘導しないように、非ヒト種由来の抗体の配列と1またはそれより多くのアミノ酸置換、欠失および/または付加により異なる配列を有する。一実施態様では、非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークおよび定常ドメイン内の特定のアミノ酸を変異させて、ヒト化抗体を作り出す。別の実施態様では、ヒト抗体由来の定常ドメインを、非ヒト種の可変ドメインと融合させる。別の実施態様では、非ヒト抗体の1またはそれより多くのCDR配列内の1またはそれより多くのアミノ酸残基を、それがヒト対象に投与されるときに非ヒト抗体で生じ得る免疫原性を低減するように変更し、ここで、変更されるアミノ酸残基は、抗体とその抗原との免疫特異的結合に重要でないか、あるいは、行われるアミノ酸配列への変更は、ヒト化抗体と抗原との結合を非ヒト抗体と抗原との結合よりも有意に悪化させないような保存的変更である。ヒト化抗体の作製方法の例を、米国特許第6,054,297、第5,886,152および第5,877,293に見いだしてもよい。
【0052】
「キメラ抗体」の語は、ある抗体に由来する1またはそれより多くの領域と、1またはそれより多くの他の抗体に由来する1またはそれより多くの領域とを含有する抗体を指す。一実施態様では、CDRの1またはそれより多くが、ヒト抗GCGR抗体に由来する。別の実施態様では、すべてのCDRが、ヒト抗GCGR抗体に由来する。別の実施態様では、1より多くのヒト抗GCGR抗体に由来するCDRが、キメラ抗体内で混合され調和されている。例えば、キメラ抗体は、第一のヒト抗GCGR抗体の軽鎖に由来するCDR1、第二のヒト抗GCGR抗体の軽鎖に由来するCDR2およびCDR3、ならびに第三の抗GCGR抗体の重鎖に由来するCDRを含んでなってもよい。さらに、フレームワーク領域は、同抗GCGR抗体のうちの一つ、ヒト抗体などの1またはそれより多くの別の抗体、またはヒト化抗体に由来してもよい。キメラ抗体の一例として、重鎖および/または軽鎖の部分は、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体と、同一であるか、相同であるか、またはそれに由来するが、鎖の残りの部分は、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体(単数もしくは複数)と、同一であるか、相同であるか、またはそれに由来する。所望の生物活性(すなわち、ヒトグルカン受容体と特異的に結合する能)を呈するこのような抗体のフラグメントもまた、含まれる。
【0053】
「中和抗体」または「阻害抗体」は、例えば、以下の実施例4に記載した細胞系アッセイにより測定されたように、グルカゴンとヒトグルカゴン受容体との結合を阻害し、かつ/または、グルカゴンのシグナル伝達を阻害もしくは低減させる抗体を指す。阻害は、完全である必要がなく、かつ、一実施態様において、結合またはシグナル伝達を少なくとも20%低減してもよい。さらなる実施態様において、結合またはシグナル伝達の低減は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%および99.9%である。
【0054】
抗体のフラグメントまたはアナログは、本明細書の教示にしたがい、かつ当該技術分野において周知の技術を用いて、当業者により容易に調製可能である。フラグメントまたはアナログの好ましいアミノおよびカルボキシ末端は、機能ドメインの境界付近に生じる。構造および機能ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列のデータを公共もしくは私有の配列データベースと比較することによって、同定可能である。公知の構造および/または機能の他のタンパク質内に生じている配列モチーフまたは予測されるタンパク質コンフォメーションドメインを同定するために、コンピューターによる比較方法を用いることが可能である。公知の三次元構造に折り畳まれるタンパク質配列を同定するための方法は、公知である。例えば、Bowieら、1991年、Science 253:164を参照されたい。
【0055】
「CDR移植抗体」は、特定の種もしくはアイソタイプの抗体に由来する1またはそれより多くのCDRと、同じかもしくは異なる種またはアイソタイプの別の抗体のフレームワークとを含んでなる抗体である。
【0056】
「多特異性抗体」は、1またはそれより多くの抗原上にある1より多くのエピトープを認識する抗体である。このタイプの抗体のサブクラスは、同じかもしくは異なる抗原上にある二つの異なるエピトープを認識する「二重特異性抗体」である。
【0057】
抗体を含む抗原結合タンパク質は、10−7M以下(100nM以下)の解離定数(以下に定義される、Kd、または対応するKb)値によって決定されるような高結合親和性で抗原に結合するならば、ヒトグルカゴン受容体などの抗原に「特異的に結合する」。ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、同じかまたは異なる親和性にて、他種由来のグルカゴン受容体にも同様に結合可能であってもよい。
【0058】
「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」または「抗原結合部位」は、抗原と相互作用し、かつ抗原に対する抗原結合タンパク質の特異性および親和性に寄与するアミノ酸残基(または他の部分)を含有する、抗原結合タンパク質の一部分である。その抗原と特異的に結合する抗体に関して、これは、そのCDRドメインうちの少なくとも一つの少なくとも一部を含むであろう。
【0059】
「エピトープ」は、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)が結合する分子の一部分である。エピトープは、分子の連続していない一部分(例えば、ポリペプチドにおいて、ポリペプチドの一次配列では連続的でないが、しかし、ポリペプチドの三次および四次構造の構成においては、抗原結合タンパク質と結合するのに互いに十分な程度に近接している、アミノ酸残基)を含んでなることが可能である。
【0060】
二つのポリヌクレオチドまたは二つのポリペプチド配列の「パーセント同一性」は、GAPコンピュータープログラム(GCGウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.3(アクセルリス、サンディエゴ、カリフォルニア州)の一部)を用いて、その初期設定パラメータを用いて配列を比較することにより、決定される。
【0061】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」の語は、全体にわたって同義的に用いられ、そして、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチドアナログを用いて作出されたDNAもしくはRNAのアナログ(例えば、ペプチド核酸および自然界に存在しないヌクレオチドアナログ)、およびそれらのハイブリッドを含む。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であることが可能である。一実施態様において、本発明の核酸分子は、本発明の抗体、あるいはそのフラグメント、誘導体、ムテインまたはバリアントをコードする連続的なオープンリーディングフレームを含んでなる。
【0062】
二つの一本鎖ポリヌクレオチドは、ギャップの導入を伴わず、かつ、いずれの配列の5'もしくは3'末端にも不対ヌクレオチドを伴わずに、一方のポリヌクレオチド中の全ヌクレオチドが、もう一方のポリヌクレオチド中のその相補的なヌクレオチドと向かい合うよう、その配列を逆平行の配向で並べることが可能であるならば、互いに「相補体」である。ポリヌクレオチドは、二つのポリヌクレオチドが中程度にストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることが可能であるならば、別のポリヌクレオチドと「相補的」である。このように、ポリヌクレオチドは、その相補体でなくても、別のポリヌクレオチドに相補的であることが可能である。
【0063】
「ベクター」は、それに連結させた別の核酸を細胞内に導入するために用いることが可能な核酸である。あるベクターのタイプは、「プラスミド」であり、これは、その中に追加の核酸セグメントを連結可能な、直線状もしくは環状の二本鎖DNA分子を指す。別のベクターのタイプは、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)であって、該ベクターでは、ウイルスゲノム内に追加のDNAセグメントを導入可能である。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内で自己複製が可能である(例えば、細菌複製起点を含んでなる細菌ベクターおよび哺乳動物エピソームベクター)。他のベクター(例えば、哺乳動物非エピソームベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノム内に組み込まれことによって、宿主ゲノムとともに複製される。「発現ベクター」は、選択されたポリヌクレオチドの発現を導くことが可能なベクターのタイプである。
【0064】
制御配列がヌクレオチド配列の発現(例えば、発現のレベル、タイミングまたは位置)に影響を及ぼす場合、ヌクレオチド配列は、制御配列と「機能可能なように連結され」ている。「制御配列」とは、それと機能可能なように連結されている核酸の発現(例えば、発現のレベル、タイミングまたは位置)に影響を及ぼす核酸である。例えば、制御配列は、制御される核酸に対して、直接的に、あるいは、1またはそれより多くの他分子(例えば、制御配列および/または核酸に結合するポリペプチド)の作用を介して、その効果を発揮することが可能である。制御配列の例には、プロモーター、エンハンサーおよびその他の発現調節エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。制御配列のさらなる例については、例えば、Goeddel, 1990年、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, アカデミック・プレス、サンディエゴ、カリフォルニア州;および、Baronら、1995年、Nucleic Acids Res. 23:3605-06に記載されている。
【0065】
「宿主細胞」は、核酸(例えば、本発明の核酸)を発現させるために用いることが可能な細胞である。宿主細胞は、例えば大腸菌(E.coli)などの原核生物であることが可能であり、あるいは、例えば単細胞真核生物(例えば、酵母またはその他の真菌)、植物細胞(例えば、タバコまたはトマト植物細胞)、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞または昆虫細胞)またはハイブリドーマなどの、真核生物であることが可能である。典型的には、宿主細胞は、ポリペプチドをコードする核酸によって形質転換もしくはトランスフェクトされることが可能であって、次いで、宿主細胞内でそれを発現することが可能な、培養細胞である。「組換え宿主細胞」の語句は、発現させる核酸によって形質転換もしくはトランスフェクトされている宿主細胞を示すために用いることが可能である。宿主細胞はまた、核酸を含んでなるが、ただし、核酸と機能可能なように連結されるように制御配列が宿主細胞内に導入されなければ、それを所望のレベルで発現しない細胞であることも可能である。宿主細胞の語が、特定の対象細胞のみならず、このような細胞の子孫もしくは潜在的な子孫をも指すことが、理解されよう。一定の修飾が、例えば変異または環境的影響によって、後続の世代に生じる可能性があるため、実際には、このような子孫は、親細胞と同一でない可能性があるが、それでも、本明細書で用いられる語の範囲内に含まれる。
【0066】
グルカゴン受容体
グルカゴン受容体(GCGR)は、ヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を介して1またはそれより多くの細胞内シグナル経路に連関している、7回膜貫通型受容体ファミリーに属する((Jelinekら、Science 259:1614-1616 (1993年);Segreら、Trends Endocrinol. Metab 4:309-314 (1993年))。本明細書では、「グルカゴン受容体」および「GCGR」は同義的に用いられる。この群に属する他のものには、セレクチン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、血管活性腸管ペプチド(VIP)および成長ホルモン放出因子の受容体が含まれる。これらの受容体は、比較的大きな細胞外N末端ドメインならびに一連の膜貫通、細胞内および細胞外ドメインを含む、高度に相同性の構造的特徴を有する。
【0067】
一実施態様において、本発明の抗原結合剤は、細胞表面に発現している膜結合型グルカゴン受容体に結合し、そしてグルカゴン受容体を介したグルカゴンのシグナル伝達を阻害もしくは遮断するように、選択されてもよい。一実施態様において、本発明の抗原結合剤は、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する。さらなる実施態様において、ヒトグルカゴン受容体に結合する抗原結合タンパク質はまた、他種のグルカゴン受容体にも結合してよい。以下の実施例では、ヒト膜結合型グルカゴン受容体に結合し、そして、さらなる実施態様においては他種のグルカゴン受容体に結合する完全ヒト抗体を作出する一方法を、提供する。
【0068】
複数の種でのグルカゴン受容体のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列が、公知である。表1は、ヒト、マウスおよびラットでの配列を示す。カニクイザルのグルカゴン受容体配列は、本明細書にて同定され、そして以下に示される。
【0069】
【表1−1】

【0070】
【表1−2】

【0071】
【表1−3】

【0072】
【表1−4】

【0073】
【表1−5】

【0074】
抗原結合タンパク質
一側面において、本発明は、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体、抗体フラグメント、抗体誘導体、抗体ムテインおよび抗体バリアント)を提供する。一実施態様において、抗原結合タンパク質は、ヒト抗体である。
【0075】
本発明にしたがった抗原結合タンパク質には、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合し、そしてグルカゴン受容体を介したグルカゴンのシグナル伝達を阻害する抗原結合タンパク質が含まれる。一実施態様において、抗原結合タンパク質のIC50値は、90nM以下である。別の側面において、抗原結合タンパク質は、グルカゴン受容体と特異的に結合し、シグナル伝達を阻害し、そして、動物モデルにおいて血糖を低下させるか、または動物モデルにおいて糖クリアランス(耐糖能)を改善するなどの、生物学的治療効果を呈する。一実施態様において、抗原結合タンパク質は、グルカゴン受容体と特異的に結合し、そしてグルカゴン受容体を介したシグナル伝達を阻害する、ヒト抗体である。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合し、グルカゴン受容体を介したシグナル伝達を阻害し、そして動物モデルにおいて血糖を低下させるかまたは糖クリアランス(耐糖能)を改善することが可能な、ヒト抗体である。
【0076】
一実施態様において、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)は、以下の表2におけるA1〜A23のCDR配列と、それぞれ独立して5、4、3、2、1もしくは0の単一アミノ酸の付加、置換および/または欠失により異なる配列を含んでなる。本明細書では、以下の表2に示したCDR配列と、例えば合計して4を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なるCDR配列とは、表2に示した配列と比較して4、3、2、1もしくは0の単一アミノ酸の付加、置換および/または欠失を伴う配列を指す。
【0077】
別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、以下に示す1またはそれより多くのCDRコンセンサス配列を含んでなる。コンセンサス配列は、以下の軽鎖CDR1、CDR2、CDR3、ならびに重鎖CDR1、CDR2およびCDR3について供される。
【0078】
抗原結合タンパク質(抗体)A1〜A23の軽鎖CDR、および典型的な抗原結合タンパク質(抗体)A1〜A23の重鎖CDRを、以下の表2に示す。CDRのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列もまた示す。
【0079】
【表2−1】

【0080】
【表2−2】

【0081】
【表2−3】

【0082】
【表2−4】

【0083】
【表2−5】

【0084】
【表2−6】

【0085】
【表2−7】

【0086】
【表2−8】

【0087】
【表2−9】

【0088】
【表2−10】

【0089】
【表2−11】

【0090】
【表2−12】

【0091】
別の側面において、本発明は、L1〜L23からなる群より選択される軽鎖可変領域、またはH1〜H23からなる群より選択される重鎖可変領域、ならびに、そのフラグメント、誘導体、ムテインおよびバリアントを含んでなる、抗原結合タンパク質を提供する。このような抗原結合タンパク質は、命名法「LxHy」を用いて示すことが可能であり、「x」は軽鎖可変領域の番号に対応し、そして「y」は重鎖可変領域の番号に対応する。例えば、L2H1は、以下の表3に示した、L2のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域、およびH1のアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域を伴う、抗原結合タンパク質を指す。これらの可変ドメイン配列のそれぞれのCDRおよびフレームワーク領域もまた、以下の表3において特定される。本発明の抗原結合タンパク質には、例えば、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、H17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22およびL23H23からなる組み合わせの群から選択される軽鎖および重鎖可変ドメインの組み合わせを持つ抗体が、含まれる。一実施態様において、抗体は、ヒト抗体である。
【0092】
以下の表3は、典型的なGCGR抗体の可変軽鎖および可変重鎖ドメインのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド(DNA)配列もまた提供する。
【0093】
【表3−1】

【0094】
【表3−2】

【0095】
【表3−3】

【0096】
【表3−4】

【0097】
【表3−5】

【0098】
【表3−6】

【0099】
【表3−7】

【0100】
【表3−8】

【0101】
【表3−9】

【0102】
【表3−10】

【0103】
【表3−11】

【0104】
【表3−12】

【0105】
本発明の抗原結合タンパク質の特定の実施態様は、上記に示したCDRおよび/またはFR(フレームワーク領域)のうちの1またはそれより多くのアミノ酸配列と同一である、1またはそれより多くのアミノ酸配列を含んでなる。一実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した軽鎖CDR1配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した軽鎖CDR2配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した軽鎖CDR3配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した重鎖CDR1配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した重鎖CDR2配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した重鎖CDR3配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した軽鎖FR1配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した軽鎖FR2配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した軽鎖FR3配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した軽鎖FR4配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した重鎖FR1配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した重鎖FR2配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した重鎖FR3配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した重鎖FR4配列を含んでなる。
【0106】
別の実施態様において、抗原結合タンパク質のCDR3配列のうちの少なくとも一つは、上記の表2および3に示したA1〜A23のCDR3配列と、6、5、4、3、2、1もしくは0を超えない単一アミノ酸の付加、置換および/または欠失により異なる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質の軽鎖CDR3配列は、上記に示したA1〜A23の軽鎖CDR3配列と、6、5、4、3、2、1もしくは0を超えない単一アミノ酸の付加、置換および/または欠失により異なり、かつ、抗原結合タンパク質の重鎖CDR3配列は、上記に示したA1〜A23の重鎖CDR3配列と、6、5、4、3、2、1もしくは0を超えない単一アミノ酸の付加、置換および/または欠失により異なる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質はさらに、A1〜A23のCDR配列と6、5、4、3、2、1もしくは0の単一のアミノ酸の付加、置換および/または欠失によりそれぞれ独立して異なる1、2、3、4または5のCDR配列を含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に記載した軽鎖可変領域のCDRおよび重鎖可変領域のCDRを含んでなる。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記に示した1、2、3、4、5および/または6のコンセンサスCDR配列を含んでなる。さらなる実施態様において、抗原結合タンパク質は、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、H17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22およびL23H23のいずれか一つのCDRを含んでなる。一実施態様において、抗原結合タンパク質は、ヒト抗体である。
【0107】
一実施態様において、抗原結合タンパク質(抗体または抗体フラグメントなど)は、L1〜L23からなる群より選択される軽鎖可変ドメインの配列と15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1または0の残基においてのみ異なるアミノ酸の配列を含んでなる、軽鎖可変ドメインを含んでなり、ここで、このような配列の違いは、それぞれ独立して1アミノ酸残基の欠失、挿入または置換である。別の実施態様において、軽鎖可変ドメインは、L1〜L23からなる群より選択される軽鎖可変ドメインの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%同一である、アミノ酸の配列を含んでなる。別の実施態様において、軽鎖可変ドメインは、以下に掲載するL1〜L23ポリヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%同一であるヌクレオチド配列によってコードされる、アミノ酸の配列を含んでなる。別の実施態様において、軽鎖可変ドメインは、L1〜L23からなる群より選択される軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸の配列を含んでなる。別の実施態様において、軽鎖可変ドメインは、L1〜L23からなる群より選択される軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸の配列を含んでなる。
【0108】
別の実施態様において、本発明は、重鎖可変ドメインを含んでなる抗原結合タンパク質であって、重鎖可変ドメインが、H1〜H23からなる群より選択される重鎖可変ドメインの配列と15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1または0の残基においてのみ異なるアミノ酸の配列を含んでなる、抗原結合タンパク質を提供し、ここで、このような配列の違いは、それぞれ独立して1アミノ酸残基の欠失、挿入または置換である。別の実施態様において、重鎖可変ドメインは、H1〜H23からなる群より選択される重鎖可変ドメインの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%同一である、アミノ酸の配列を含んでなる。別の実施態様において、重鎖可変ドメインは、H1〜H23からなる群より選択される重鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%同一であるヌクレオチド配列によってコードされる、アミノ酸の配列を含んでなる。別の実施態様において、重鎖可変ドメインは、H1〜H23からなる群より選択される重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸の配列を含んでなる。別の実施態様において、重鎖可変ドメインは、H1〜H23からなる群より選択される重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸配列を含んでなる。
【0109】
さらなる実施態様には、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、H17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22およびL23H23の組み合わせを含んでなる抗原結合タンパク質が含まれる。
【0110】
本発明の抗原結合タンパク質(例えば、抗体、抗体フラグメントおよび抗体誘導体)は、当該技術分野において公知の任意の定常領域を含んでなることが可能である。軽鎖定常領域は、例えば、カッパもしくはラムダ型軽鎖定常領域(例えば、ヒト カッパもしくはラムダ型軽鎖定常領域)であることが可能である。重鎖定常領域は、例えば、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマもしくはミュー型重鎖定常領域(例えば、ヒト アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマもしくはミュー型重鎖定常領域)であることが可能である。一実施態様において、軽鎖もしくは重鎖定常領域は、自然界に存在する定常領域のフラグメント、誘導体、バリアントまたはムテインである。
【0111】
目的とする抗体とは異なるサブクラスもしくはアイソタイプの抗体の誘導体化、すなわち、サブクラススイッチングの技術は、公知である。このように、IgG抗体を、例えばIgM抗体から誘導体化してもよく、逆もまた同様である。このような技術は、所与の抗体(親抗体)の抗原結合特性を有するが、ただし、親抗体のものとは異なる抗体アイソタイプもしくはサブクラスに付随した生物学的特性もまた呈する、新たな抗体の調製を可能にする。組換えDNA技術を使用してもよい。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローン化DNA(例えば、所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNA)を、このような手順において使用してもよい。Lanittoら、Methods Mol. Biol. 178:303-16 (2002年)もまた参照されたい。
【0112】
一実施態様において、本発明の抗原結合タンパク質は、定常軽鎖カッパもしくはラムダドメインまたはこれらのフラグメントをさらに含んでなる。軽鎖定常領域の配列およびそれらをコードするポリヌクレオチドを、以下の表4に供する。別の実施態様において、本発明の抗原結合タンパク質は、表4に供したIgG2重鎖定常領域などの、重鎖定常ドメインまたはそのフラグメントをさらに含んでなる。
【0113】
一実施態様において、抗体A−9およびA−3のIgG2型のヒト軽鎖および重鎖アミノ酸配列は、以下の配列番号310、配列番号311、配列番号312および配列番号311に示される。
【0114】
【表4−1】

【0115】
【表4−2】

【0116】
【表4−3】

【0117】
本発明の抗原結合タンパク質(例えば、抗体)には、所望のアイソタイプ(例えば、IgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgEおよびIgD)を有する、例えば、可変ドメインの組み合わせL1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、H17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22およびL23H23を含んでなるもの、ならびにそれらのFabまたはF(ab')フラグメントが含まれる。さらに、IgG4を所望する場合は、IgG4抗体における不均一性をもたらす可能性のあるH鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を弱めるために、Bloomら、1997年、Protein Science 6:407(参照によって本明細書に援用される)に記載されるように、ヒンジ領域に点変異を導入することが望ましい場合もある。
【0118】
抗体および抗体フラグメント
一実施態様において、抗原結合タンパク質は抗体である。「抗体」の語は、定義の項にて十分に記載したように、無傷の抗体、またはその抗原結合フラグメントを指す。抗体は、完全な抗体分子(完全長の重鎖および/もしくは軽鎖を有するポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化またはヒト版を含む)を含んでなってもよく、あるいはその抗原結合フラグメントを含んでなってもよい。抗体フラグメントには、F(ab')、Fab、Fab'、Fv、FcおよびFdフラグメントが含まれ、かつ、これを単ドメイン抗体、一本鎖抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v−NARおよびビス−scFvに組み入れることが可能である(例えば、HollingerおよびHudson、2005年、Nature Biotechnology, 23, 9, 1126-1136を参照されたい)。さらに含まれるのは、米国特許第6,703,199に開示されるものなどの、フィブロネクチンポリペプチド・モノボディを含む、抗体ポリペプチドである。その他の抗体のポリペプチドは、米国特許公報2005/0238646に開示されており、それらは一本鎖ポリペプチドである。一実施態様において、本発明の抗体は、上記の表2に示した、少なくとも一つのCDRもしくはコンセンサスCDRを含んでなる。
【0119】
キメラ抗体およびヒト化抗体は、定義の項に定義されており、かつ、それらを公知の技術によって調製してもよい。一実施態様において、ヒト化モノクローナル抗体は、ネズミ抗体の可変ドメイン(またはその抗原結合部位の全部もしくは一部)およびヒト抗体に由来する定常ドメインを含んでなる。あるいは、ヒト化抗体フラグメントは、ネズミモノクローナル抗体の抗原結合部位およびヒト抗体に由来する可変ドメインフラグメント(抗原結合部位を欠損)を含んでなってもよい。操作されたモノクローナル抗体の産生手順には、Riechmannら、1988年、Nature 332:323;Liuら、1987年、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 84:3439;Larrickら、1989年、Bio/Technology 7:934;および、Winterら、1993年、TIPS 14:139に記載されるものが含まれる。一実施態様において、キメラ抗体は、CDR移植抗体である。抗体をヒト化する技術は、例えば、米国特許第5,869,619;第5,225,539;第5,821,337;第5,859,205;第6,881,557;Padlanら、1995年、FASEB J. 9:133-39;Tamuraら、2000年、J. Immunol. 164:1432-41;Zhang, W.ら、Molecular Immunology. 42(12):1445-1451, 2005年;Hwang W.ら、Methods. 36(1):35-42, 2005年;Dall’Acqua WFら、Methods 36(1):43-60, 2005年;および、Clark, M., Immunology Today. 21(8):397-402, 2000年において論じられている。
【0120】
本発明の抗体はまた、完全ヒトモノクローナル抗体であってもよい。完全ヒトモノクローナル抗体は、当業者が精通しているであろう任意の多数の技術により作出されてもよい。このような方法には、これに限定されないが、ヒト末梢血細胞(例えば、Bリンパ球を含有)のエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)形質転換、ヒトB細胞のin vitro免疫、挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を保有する免疫されたトランスジェニックマウスから得た脾臓細胞の融合、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリからの単離、あるいは、当該技術分野において公知であり、かつ本明細書における開示に基づくその他の手順が含まれる。
【0121】
非ヒト動物においてヒトモノクローナル抗体を作出するための手順が、開発されている。例えば、1またはそれより多くの内因性免疫グロブリン遺伝子が種々の手段により不活化されているマウスが、作製されている。ヒト免疫グロブリン遺伝子が、不活化されたマウス遺伝子を置換するために、マウスに導入されている。この技術では、ヒト重鎖および軽鎖の遺伝子座のエレメントが、内因性重鎖および軽鎖の遺伝子座の標的化破壊を含有する胚性幹細胞株に由来するマウスの系に導入される(例えば、Bruggemannら、Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58 (1997年)もまた参照されたい)。例えば、ヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、マウスリンパ組織においてB細胞特異的なDNA再構成および超変異を起こす、ミニ遺伝子コンストラクト、または酵母人工染色体上の導入遺伝子座であってもよい。
【0122】
動物において産生される抗体は、動物に導入されたヒト遺伝物質によりコードされるヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を組み入れている。一実施態様において、トランスジェニックマウスなどの非ヒト動物を、適切なGCGR免疫原で免疫する。適切なGCGR免疫原の一例は、以下の実施例に記載するものなどの、受容体を多く含む細胞膜画分である。別の例は、配列番号2の細胞外ドメインである。
【0123】
ヒト抗体もしくは部分的ヒト抗体を産生するためのトランスジェニックマウスの作製技術および使用の例は、米国特許第5,814,318、第5,569,825および第5,545,806;Davisら、Production of human antibodies from transgenic mice in Lo編集、Antibody Engineering: Methods and Protocols, ヒューマナ・プレス、ニュージャージー州:191-200 (2003年);Kellermannら、2002年、Curr Opin Biotechnol. 13:593-97;Russelら、2000年、Infect Immun. 68:1820-26;Galloら、2000年、Eur J Immun. 30:534-40;Davisら、1999年、Cancer Metastasis Rev. 18:421-25;Green, 1999年、J Immunol Methods. 231:11-23;Jakobovits, 1998年、Advanced Drug Delivery Reviews 31:33-42;Greenら、1998年、J Exp Med. 188:483-95;Jakobovits A, 1998年、Exp. Opin. Invest. Drugs. 7:607-14;Tsudaら、1997年、Genomics. 42:413-21;Mendezら、1997, Nat Genet. 15:146-56;Jakobovits, 1994年、Curr Biol. 4:761-63;Arbonesら、1994, Immunity. 1:247-60;Greenら、1994, Nat Genet. 7:13-21;Jakobovitsら、1993年、Nature. 362:255-58;Jakobovitsら、1993年、Proc Natl Acad Sci U S A. 90:2551-55;Chen, J., M. Trounstine, F. W. Alt, F. Young, C. Kurahara, J. Loring, D. Huszar “Immunoglobulin gene rearrangement in B-cell deficient mice generated by targeted deletion of the JH locus.” International Immunology 5 (1993年): 647-656;Choiら、1993年、Nature Genetics 4: 117-23;Fishwildら、1996年、Nature Biotechnology 14: 845-51;Hardingら、1995年、Annals of the New York Academy of Sciences;Lonbergら、1994年、Nature 368: 856-59;Lonberg, 1994年、Transgenic Approaches to Human Monoclonal Antibodies in Handbook of Experimental Pharmacology 113: 49-101;Lonbergら、1995年、Internal Review of Immunology 13: 65-93;Neuberger, 1996年、Nature Biotechnology 14: 826;Taylorら、1992年、Nucleic Acids Research 20: 6287-95;Taylorら、1994年、International Immunology 6: 579-91;Tomizukaら、1997年、Nature Genetics 16: 133-43;Tomizukaら、2000年、Proceedings of the National Academy of Sciences USA 97: 722-27;Tuaillonら、1993年、Proceedings of the National Academy of Sciences USA 90: 3720-24;および、Tuaillonら、1994年、Journal of Immunology 152: 2912-20;Lonbergら、Nature 368:856, 1994年;Taylorら、Int. Immun. 6:579, 1994年;米国特許第5,877,397;Bruggemannら、1997年、Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58;Jakobovitsら、1995年、Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:525-35に記載されている。加えて、ゼノマウス(登録商標)(XenoMouse)(アブジェニクス社、現在はアムジェンInc.)を伴うプロトコールは、例えば、米国05/0118643およびWO 05/694879、WO 98/24838、WO 00/76310、ならびに米国特許7,064,244に記載されている。
【0124】
免疫されたトランスジェニックマウスから得たリンパ球細胞を、例えば、ハイブリドーマを作り出すために、骨髄腫細胞と融合させる。ハイブリドーマを作り出す融合手順における使用のための骨髄腫細胞は、好ましくは、抗体を産生せず、高い融合効率、ならびに、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの生育を補助する一定の選択培地中でそれらを生育不可能にさせる酵素欠損を有する。このような融合における使用に適した細胞株の例には、Sp-20、P3-X63/Ag8、P3-X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulが含まれ;ラット融合に用いられる細胞株の例には、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210が含まれる。細胞融合に有用なその他の細胞株は、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2およびUC729-6である。
【0125】
リンパ球(例えば、脾臓)細胞と骨髄腫細胞とを、ポリエチレングリコールまたは非イオン性界面活性剤などの膜融合促進剤とともに数分間合わせ、次いで、ハイブリドーマ細胞の生育は補助するが、しかし融合していない骨髄腫細胞の生育は補助しない選択培地上に、低密度で蒔いてもよい。一つの選択培地は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)である。十分な時間(通常は、約1〜2週間)の後、細胞のコロニーを観察する。単一コロニーを単離し、そして、細胞によって産生される抗体を、当該技術分野において公知であって、かつ本明細書に記載される多様な免疫アッセイのいずれか一つを用いて、ヒトGCGRとの結合活性につき試験してもよい。ハイブリドーマをクローニングし(例えば、限界希釈クローニングまたは軟寒天プラーク単離による)、そして、ヒトGCGRに特異的な抗体を産生する陽性コロニーを選択し、そして培養する。ハイブリドーマ培養物から得たモノクローナル抗体を、ハイブリドーマ培養物の上清から単離してもよい。
【0126】
本発明のヒト抗体を作出するための別の方法には、EBV形質転換によるヒト末梢血細胞の不死化が含まれる。例えば、米国特許第4,464,456を参照されたい。ヒトGCGRに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するこのような不死化B細胞株(またはリンパ芽球様細胞株)を、例えばELISAなどの、本明細書にて供する免疫検出法によって同定し、次いで、標準的なクローニング技術により単離することが可能である。抗GCGR抗体を産生するリンパ芽球様細胞株の安定性を、当該技術分野において公知の方法にしたがって、形質転換した細胞株をネズミ骨髄腫と融合させてマウス−ヒトハイブリッド細胞株を作り出すことにより、改善してもよい(例えば、Glaskyら、Hybridoma 8:377-89 (1989年)を参照されたい)。ヒトモノクローナル抗体を作出するためのさらに別の方法は、in vitro免疫であって、該方法は、ヒト脾臓B細胞をヒトGCGRで抗原刺激し、続いて、抗原刺激されたB細胞をヘテロハイブリッド融合パートナーと融合させることを含む。例えば、Boernerら、1991 J. Immunol. 147:86-95を参照されたい。
【0127】
特定の実施態様では、抗ヒトGCGR抗体を産生しているB細胞を選択し、そして、軽鎖および重鎖可変領域を、当該技術分野において公知の分子生物学的技術(WO 92/02551;米国特許5,627,052;Babcookら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843-48 (1996年))および本明細書に記載される該技術によって、B細胞からクローニングする。免疫した動物から得たB細胞を、GCGRに特異的に結合する抗体を産生している細胞を選択することによって、脾臓、リンパ節または末梢血試料から単離してもよい。B細胞を、ヒトから、例えば末梢血試料からも、単離してよい。例えば、プラーク形成、蛍光活性化細胞選別、特異抗体の検出に続くin vitro刺激等による、所望の特異性を持つ抗体を産生している単一B細胞を検出するための方法は、当該技術分野において周知である。特異抗体を産生するB細胞の選択方法には、例えば、ヒトGCGRを含有する軟寒天中でのB細胞の一細胞懸濁液の調製が含まれる。B細胞により産生される特異抗体と抗原との結合は、複合物の形成をもたらし、これを免疫沈降として見ることのできる可能性がある。所望の抗体を産生するB細胞を選択した後、特異抗体の遺伝子を、当該技術分野において公知の方法および本明細書に記載した方法によってDNAまたはmRNAを単離および増幅することにより、クローニングしてもよい。
【0128】
本発明の抗体を得るためのさらなる方法は、ファージディスプレイによる。例えば、Winterら、1994年、Annu. Rev. Immunol. 12:433-55;Burtonら、1994年、Adv. Immunol. 57:191-280を参照されたい。ヒトまたはネズミの免疫グロブリン可変領域遺伝子コンビナトリアルライブラリを、TGF−β結合タンパク質またはそのバリアントもしくはフラグメントに特異的に結合するIgフラグメント(Fab、Fv、sFvまたはその多量体)を選択するためにスクリーニングすることが可能なファージベクターにおいて、創出することが可能である。例えば、米国特許第5,223,409; Huseら、1989年、Science 246:1275-81;Sastryら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5728-32 (1989年);Alting-Meesら、Strategies in Molecular Biology 3:1-9 (1990年);Kangら、1991年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4363-66;Hoogenboomら、1992年、J. Molec. Biol. 227:381-388;Schlebuschら、1997年、Hybridoma 16:47-52、およびそれらに引用されている参考文献を参照されたい。例えば、Ig可変領域フラグメントをコードする多数のポリヌクレオチド配列を含有するライブラリを、M13またはそのバリアントなどの線維状バクテリオファージのゲノム内に、ファージコートタンパク質をコードする配列にインフレームで挿入してもよい。融合タンパク質は、コートタンパク質と軽鎖可変領域ドメインおよび/または重鎖可変領域ドメインとの融合であってもよい。特定の実施態様によると、免疫グロブリンFabフラグメントも、ファージ粒子上に提示することが可能である(例えば、米国特許第5,698,426を参照されたい)。
【0129】
また、重鎖および軽鎖免疫グロブリンのcDNA発現ライブラリを、例えば、λImmunoZap(商標)(H)およびλImmunoZap(商標)(L)ベクター(ストラタジーン社、ラホヤ、カリフォルニア州)を用いて、ラムダファージにおいて調製してもよい。簡潔には、mRNAを、B細胞集団から単離し、そして、これを用いて、重鎖および軽鎖免疫グロブリンのcDNA発現ライブラリをλImmunoZap(商標)(H)およびλImmunoZap(商標)(L)ベクターにおいて創出する。これらのベクターを、個々にスクリーニングするか、または同時発現させて、Fabフラグメントまたは抗体を形成してもよい(Huseら、同上を参照されたい; Sastryら、同上もまた参照されたい)。続いて、陽性プラークを、大腸菌からのモノクローナル抗体フラグメントの高レベル発現を可能にする非溶解性プラスミドに変換してもよい。
【0130】
一実施態様では、ハイブリドーマにおいて、目的とするモノクローナル抗体を発現する遺伝子の可変領域を、ヌクレオチドプライマーを用いて増幅させる。これらのプライマーは、当業者が合成してもよいし、または、市販元から購入してもよい(例えば、とりわけVHa、VHb、VHc、VHd、CH1、VおよびC領域のプライマーを含む、マウスおよびヒト可変領域のプライマーを販売する、ストラタジーン社(ラホヤ、カリフォルニア州)を参照されたい)。これらのプライマーを用いて、重鎖もしくは軽鎖可変領域を増幅させてもよく、次いで、それをImmunoZAP(商標)HまたはImmunoZAP(商標)L(ストラタジーン社)などのベクター内に、それぞれ挿入してもよい。次いで、これらのベクターを、発現させるために、大腸菌、酵母または哺乳動物に基づく系に導入してもよい。VおよびVドメインの融合を含有する大量の一本鎖タンパク質を、これらの方法を用いて調製してもよい(Birdら、Science 242:423-426, 1988年を参照されたい)。
【0131】
本発明に記載の抗体を産生する細胞を、上述の免疫および他の技術のいずれかを用いて得たならば、本明細書に記載の標準的な手順にしたがって、そこからDNAまたはmRNAを単離および増幅することによって、特異抗体の遺伝子をクローニングしてもよい。そこから産生された抗体を配列決定してもよく、そして、同定されたCDRおよび当該CDRをコードするDNAを前述のように操作して、本発明に記載の他の抗体を作出してもよい。
【0132】
本発明の抗原結合タンパク質は、好ましくは、本明細書に記載した細胞系アッセイおよび/または本明細書に記載したin vivoアッセイにおいて、グルカゴンのシグナル伝達を調節し、かつ/または、本出願に記載した抗体の一つの結合を交差遮断し、かつ/または、本出願に記載した抗体の一つによってGCGRとの結合を交差遮断される。したがって、このような結合剤を、本明細書に記載したアッセイを用いて同定することが可能である。
【0133】
特定の実施態様において、抗体は、GCGRを過剰発現している細胞に結合する抗体をまず同定することによって作出され、かつ/または、本明細書に記載した細胞系アッセイおよび/もしくはin vivoアッセイにおいて中和し、かつ/または、本出願に記載した抗体を交差遮断し、かつ/または、本出願に記載した抗体の一つによってGCGRとの結合を交差遮断される。
【0134】
抗体などのいくつかのタンパク質は、様々な翻訳後修飾を受けてもよいことが、当業者によって理解されよう。これらの修飾のタイプおよび程度は、タンパク質を発現させるために用いられる宿主細胞株、ならびに培養条件によって決まる場合が多い。このような修飾には、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペリジン形成、アスパラギン酸異性化およびアスパラギン脱アミドにおける変形形態が含まれてもよい。頻度の高い修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端の塩基残基(リジンまたはアルギニンなど)の欠失である(Harris, R.J. Journal of Chromatography 705:129-134, 1995年に記載される)。
【0135】
ネズミモノクローナル抗体産生のための別の方法は、同系のマウス、例えば、モノクローナル抗体を含有する腹腔液の形成を促進するように処置されている(例えば、プリスタンで抗原刺激された)マウスの腹腔内にハイブリドーマ細胞を注射することである。モノクローナル抗体は、多様な確立された技術によって、単離および精製することが可能である。このような単離技術には、プロテインA セファロースを用いたアフィニティ・クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィおよびイオン交換クロマトグラフィが含まれる(例えば、Coligan、2.7.1-2.7.12ページおよび2.9.1-2.9.3ページ;Bainesら、「Purification of Immunoglobulin G (IgG)」、Methods in Molecular Biology, 第10巻、79-104ページ(ヒューマナ・プレスInc.1992年)を参照されたい)。モノクローナル抗体を、抗体の特有の特性(例えば、重鎖もしくは軽鎖のアイソタイプ、結合特異性等)に基づいて選択された適切なリガンドを用いて、アフィニティ・クロマトグラフィにより精製してもよい。固相担体上に固定された適切なリガンドの例には、プロテインA、プロテインG、抗定常領域(軽鎖もしくは重鎖)抗体、抗イデオタイプ抗体およびTGF−β結合タンパク質、あるいはそれらのフラグメントまたはバリアントが含まれる。
【0136】
Schierら、1996年、J. Mol. Biol. 263:551に記載のように、抗体結合部位の中心にある相補性決定領域(CDR)の分子進化もまた、親和性が増加している抗体、例えば、c−erbB−2に対する親和性が増加している抗体を単離するために用いられている。したがって、このような技術は、ヒトグルカゴン受容体に対する抗体の調製において有用である。
【0137】
ヒトグルカゴン受容体指向性の抗原結合タンパク質を、例えば、in vitroまたはin vivoのいずれかでの、グルカゴン受容体の存在を検出するためのアッセイにおいて、用いることが可能である。
【0138】
ヒト、部分的ヒトもしくはヒト化抗体は、多くの適用、特に、ヒト対象へ抗体を投与することを伴うものに適するであろうが、特定の適用に関しては、他のタイプの抗原結合タンパク質が適するであろう。本発明の非ヒト抗体は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ロバまたは非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルもしくはアカゲザルなどのサル、または類人猿(例えば、チンパンジー))などの任意の抗体産生動物に由来することが可能である。本発明の非ヒト抗体を、例えば、in vitroおよび細胞培養に基づく適用に、あるいは、本発明の抗体に対する免疫応答が起こらないか、有意でないか、阻止可能であるか、問題とならないか、または所望される、任意の他の適用に用いることが可能である。以下の実施例2に、マウス抗体の作出について記載する。一実施態様では、本発明の非ヒト抗体を、非ヒト対象に投与する。別の実施態様では、非ヒト抗体は、非ヒト対象において免疫応答を誘発しない。別の実施態様では、非ヒト抗体は、非ヒト対象と同じ種に由来し、例えば、本発明のマウス抗体は、マウスに投与される。例えば、その種の動物を所望の免疫原で免疫するか、またはその種の抗体を作出するための人工の系(例えば、特定の種の抗体を作出するための、細菌もしくはファージディスプレイに基づく系)を用いることによるか、あるいは、例えば、抗体の定常領域を他種に由来する定常領域に置換するか、または、抗体の1またはそれより多くのアミノ酸残基を、他種に由来する抗体の配列により類似するように置換することによって、ある種に由来する抗体を別の種に由来する抗体に変換することにより、特定の種に由来する抗体を作製することが可能である。一実施態様において、抗体は、2またはそれより多くの異なる種に由来する抗体に由来するアミノ酸配列を含んでなる、キメラ抗体である。
【0139】
また、抗体を、多数の慣用の技術のいずれかによって調製してもよい。例えば、それらを、当該技術分野において公知の任意の技術を用いて、自然にそれらを発現する細胞から精製してもよいし(例えば、抗体を、それを産生するハイブリドーマから精製することが可能である)、あるいは、組換え発現系において産生させてもよい。例えば、Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Kennetら(編集)、プレナム・プレス、ニューヨーク州(1980年);および、Antibodies: A Laboratory Manual, HarlowおよびLand(編集)、コールドスプリングハーバー研究所プレス、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州(1988年)を参照されたい。これに関しては、以下の核酸の項に論じる。
【0140】
抗原結合タンパク質を、多数の公知の技術のいずれかによって、調製し、そして所望の特性に関してスクリーニングしてもよい。該技術のいくつかは、目的とする抗原結合タンパク質(例えば、抗グルカゴン受容体抗体)のポリペプチド鎖(またはその一部分)をコードする核酸を単離し、そして組換えDNA技術により核酸を操作することを、伴う。核酸を、目的とする別の核酸と融合させてもよく、あるいは、例えば、1またはそれより多くのアミノ酸残基を付加、欠失もしくは置換するように(例えば、変異誘発または他の慣用の技術により)変えてもよい。
【0141】
上記のCDRの1またはそれより多くを含有する、本発明に記載の抗体の親和性を改善することが望ましい場合、CDRの維持(Yangら、J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995年)、鎖シャフリング(Marksら、Bio/Technology, 10, 779-783, 1992年)、大腸菌変異株の使用(Lowら、J. Mol. Biol., 250, 350-368, 1996年)、DNAシャフリング(Pattenら、Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997年)、ファージディスプレイ(Thompsonら、J. Mol. Biol., 256, 7-88, 1996年)およびさらなるPCR技術(Crameriら、Nature, 391, 288-291, 1998年)を含む、多数の親和性成熟プロトコールによって得ることが可能である。親和性成熟のこれらの方法はすべて、Vaughanら(Nature Biotechnology, 16, 535-539, 1998年)により論じられている。
【0142】
抗体フラグメント
別の側面において、本発明は、本発明の抗グルカゴン受容体抗体のフラグメントを提供する。このようなフラグメントは、完全に抗体由来配列からなることが可能であるか、または、追加の配列を含んでなることが可能である。抗原結合フラグメントの例には、Fab、F(ab')2、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびドメイン抗体が含まれる。他の例は、Lundeら、2002年、Biochem. Soc. Trans. 30:500-06に提供されている。
【0143】
重鎖および軽鎖の可変ドメイン(Fv領域)フラグメントをアミノ酸架橋(短いペプチドリンカー)を介して連結して、一本のポリペプチド鎖を得ることによって、一本鎖抗体を形成してもよい。このような一本鎖Fv(scFv)は、二つの可変ドメインポリペプチド(VおよびV)をコードするDNA間にペプチドリンカーをコードするDNAを融合させることによって、調製されている。得られたポリペプチドは、それ自体で折り畳まれて、抗原結合単量体を形成可能であり、あるいは、それらは、二つの可変ドメイン間の可動性リンカーの長さに応じて、多量体(例えば、二量体、三量体または四量体)を形成可能である(Korttら、1997年、Prot. Eng. 10:423;Korttら、2001年、Biomol. Eng. 18:95-108)。異なるVおよびVを含んでなるポリペプチドを組み合わせることによって、異なるエピトープに結合する多量体のscFvを形成することが可能である(Kriangkumら、2001年、Biomol. Eng. 18:31-40)。一本鎖抗体の作製に向けて開発された技術には、米国特許第4,946,778;Bird, 1988年、Science 242:423;Hustonら、1988年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879;Wardら、1989年、Nature 334:544;de Graafら、2002年、Methods Mol Biol. 178:379-87に記載されるものが含まれる。本明細書に提供される抗体に由来する一本鎖抗体には、これに限定されないが、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22およびL23H23の可変ドメイン組み合わせを含んでなるscFvが含まれ、本明細書に包含される。
【0144】
抗体に由来する抗原結合フラグメントはまた、例えば慣用の方法による全抗体のペプシンもしくはパパイン消化などの、例えば、抗体のタンパク質分解性加水分解によっても、得ることが可能である。一例として、抗体フラグメントを、ペプシンを用いた抗体の酵素的切断により作り出して、F(ab')と称される5Sフラグメントを得ることが可能である。このフラグメントを、チオール還元剤を用いてさらに切断して、3.5S Fab'一価フラグメントを作り出すことが可能である。所望により、切断反応を、ジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基に対する封鎖基を用いて行うことが可能である。あるいは、パパインを用いた酵素的切断により、二つの一価Fabフラグメントおよび一つのFcフラグメントを直接的に作り出す。これらの方法は、例えば、Goldenberg, 米国特許第4,331,647;Nisonoffら、Arch. Biochem. Biophys. 89:230, 1960年;Porter, Biochem. J. 73:119, 1959年;Edelmanら、Methods in Enzymology 1:422(アカデミック・プレス、1967年);および、Andrews, S.M.およびTitus, J.A.、Current Protocols in Immunology(Coligan J.E.ら編集)、ジョンワイリー&サンズ、ニューヨーク州(2003年)、2.8.1-2.8.10ページおよび2.10A.1-2.10A.5ページに記載されている。一価軽鎖−重鎖フラグメント(Fd)を形成するための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、またはその他の酵素的、化学的もしくは遺伝学的技術などの、抗体を切断するための他の方法も、フラグメントが無傷の抗体によって認識される抗原に結合する限りにおいては、用いてもよい。
【0145】
抗体フラグメントの別の形態は、抗体の1またはそれより多くの相補性決定領域(CDR)を含んでなるペプチドである。CDRは、目的とするCDRをコードするポリヌクレオチドを構築することによって得ることが可能である。このようなポリヌクレオチドを、例えば、抗体産生細胞のmRNAを鋳型として用いて、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて可変領域を合成することにより、調製することが可能である(例えば、Larrickら、Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106, 1991年;Courtenay-Luck、「Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies」Monoclonal Antibodies: Production, Engineering and Clinical Application, Ritterら(編集)、166ページ(ケンブリッジ大学プレス、1995年);および、Wardら、「Genetic Manipulation and Expression of Antibodies」、Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Birchら(編集)、137ページ(ワイリー−リスInc.1995年)を参照されたい)。抗体フラグメントは、本明細書に記載した抗体の少なくとも一つの可変領域ドメインをさらに含んでなってもよい。このように、例えば、V領域ドメインは、単量体であってもよく、かつ、以下に記載のように少なくとも1x10−7M以下での親和性で、独立してヒトグルカゴン受容体と結合可能な、VもしくはVドメインであってもよい。
【0146】
可変領域ドメインは、自然界に存在する可変ドメインであっても、またはその操作されたものであってもよい。操作されたものとは、組換えDNA操作技術を用いて創出された可変領域ドメインを意味する。このような操作されたものには、例えば、特異抗体のアミノ酸配列内での、もしくは当該配列への挿入、欠失または変更によって、特異抗体の可変領域から創出されたものが含まれる。特定の例には、少なくとも一つのCDR、および、所望により、第一抗体に由来する1またはそれより多くのフレームワークアミノ酸、そして、残りの部分に第二抗体に由来する可変領域ドメインを含有する、操作された可変領域ドメインが含まれる。
【0147】
可変領域ドメインは、C末端アミノ酸において、少なくとも一つの他の抗体ドメインもしくはそのフラグメントと共有結合的に結び付いてもよい。このように、例えば、可変領域ドメイン内に存在するVHドメインは、免疫グロブリンCH1ドメインまたはそのフラグメントと連結してもよい。同様に、Vドメインは、Cドメインまたはそのフラグメントと連結してもよい。このように、例えば、抗体は、抗原結合ドメインが付随するVおよびVドメインを含有し、そのC末端においてCH1およびCドメインとそれぞれ共有結合的に連結している、Fabフラグメントであってもよい。CH1ドメインを、さらなるアミノ酸により伸長して、Fab'フラグメントにおいて認められるようにヒンジ領域またはヒンジ領域ドメインの一部分を供するか、あるいは、抗体CH2およびCH3ドメインなどのさらなるドメインを供してもよい。
【0148】
抗原結合タンパク質の誘導体およびバリアント
A1〜A23の対応するアミノ酸配列をコードする、L1〜L23およびH1〜H23のヌクレオチド配列を、例えば、ランダム変異誘発または部位指向性変異誘発(例えば、オリゴヌクレオチドにより導かれる部位特異的変異誘発)によって変え、非変異ポリヌクレオチドと比較して1またはそれより多くの特定のヌクレオチド置換、欠失または挿入を含んでなる改変ポリヌクレオチドを創出することが可能である。このような改変を行うための技術の例は、Walderら、1986年、Gene 42:133;Bauerら、1985年、Gene 37:73;Craik, BioTechniques, 1985年1月、12-19;Smithら、1981年、Genetic Engineering: Principles and Methods、プレナム・プレス;および、米国特許第4,518,584および第4,737,462に記載されている。これらおよびその他の方法を、例えば、所望の特性を有する抗グルカゴン受容体抗体の誘導体を作製するために用いることが可能であり、ここで、所望の特性とは、例えば、誘導体化されていない抗体と比較した場合の、グルカゴン受容体に対する親和性、アビディティまたは特異性の増加、あるいはin vivoもしくはin vitroでの活性または安定性の増加、あるいはin vivo副作用の低減である。
【0149】
本発明の範囲内にある抗グルカゴン受容体抗体の他の誘導体には、抗グルカゴン受容体抗体ポリペプチドのN末端もしくはC末端と融合している異種ポリペプチドを含んでなる組換え融合タンパク質の発現によるなどの、抗グルカゴン受容体抗体もしくはそのフラグメントと他のタンパク質もしくはポリペプチドとの共有結合または凝集による複合体が含まれる。例えば、複合体化されたペプチドは、例えば酵母アルファ因子リーダーなどの異種シグナル(もしくはリーダー)ポリペプチド、あるいは、エピトープタグなどのペプチドであってもよい。抗原結合タンパク質を含有する融合タンパク質は、抗原結合タンパク質の精製および同定を容易にするために付加されるペプチド(例えば、ポリHis)を含んでなることが可能である。抗原結合タンパク質を、Hoppら、Bio/Technology 6:1204, 1988年および米国特許5,011,912に記載のFLAGペプチドと連結させることもまた可能である。FLAGペプチドは、高抗原性で、かつ、特異的モノクローナル抗体(mAb)に可逆的に結合するエピトープを供し、発現した組換えタンパク質の迅速アッセイおよび容易な精製を可能にする。FLAGペプチドが所与のポリペプチドと融合している融合タンパク質を調製するのに有用な試薬は、市販されている(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)。別の実施態様において、1またはそれより多くの抗原結合タンパク質を含有するオリゴマーを、グルカゴン受容体アンタゴニストとして使用してもよい。オリゴマーは、共有結合的もしくは非共有結合的に連結している二量体、三量体またはそれより高次のオリゴマーの形態であってもよい。2またはそれより多くの抗原結合タンパク質を含んでなるオリゴマーは、一例として、ホモ二量体での使用が企図される。他のオリゴマーには、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体等が含まれる。
【0150】
一実施態様は、抗原結合タンパク質と融合しているペプチド部分間が共有結合的もしくは非共有結合的相互作用によって連結している、複数の抗原結合タンパク質を含んでなるオリゴマーに関する。このようなペプチドは、ペプチドリンカー(スペーサー)、またはオリゴマー化を促す特性を有するペプチドであってもよい。ロイシンジッパーおよび特定の抗体由来ポリペプチドは、以下により詳細に記載するように、それと結び付いている抗原結合タンパク質のオリゴマー化を促すことが可能なペプチドの一つである。
【0151】
特定の実施態様において、オリゴマーは、2〜4の抗原結合タンパク質を含んでなる。オリゴマーの抗原結合タンパク質は、例えばバリアントまたはフラグメントといった上述の形態のいずれかなどの、任意の形態であってもよい。好ましくは、オリゴマーは、グルカゴン受容体結合活性を有する抗原結合タンパク質を含んでなる。
【0152】
一実施態様において、オリゴマーを、免疫グロブリン由来ポリペプチドを用いて調製する。抗体由来ポリペプチド(Fcドメインを含む)の種々の部分と融合している特定の異種ポリペプチドを含んでなる融合タンパク質の調製については、例えば、Ashkenaziら、1991年、PNAS USA 88:10535;Byrnら、1990年、Nature 344:677;および、Hollenbaughら、1992年「Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins」、Current Protocols in Immunology, Suppl.4, 10.19.1 - 10.19.11ページにより記載されている。本発明の一実施態様は、抗グルカゴン受容体抗体のグルカゴン受容体結合フラグメントと抗体のFc領域とを融合させることによって創出された、二つの融合タンパク質を含んでなる二量体に関する。該二量体は、例えば、融合タンパク質をコードする遺伝子融合体を適切な発現ベクター内に挿入し、組換え発現ベクターにより形質転換された宿主細胞内で遺伝子融合体を発現させ、そして、発現した融合タンパク質を、鎖間ジスルフィド結合をFc部分間に形成して二量体を生じる抗体分子に酷似するように会合させることによって、作製することが可能である。
【0153】
「Fcポリペプチド」の語には、本明細書では、抗体のFc領域に由来するポリペプチドの天然およびムテイン形態が含まれる。二量体化を促すヒンジ領域を含有するこのようなポリペプチドの切断型もまた含まれる。Fc部分を含んでなる融合タンパク質(およびそれから形成されるオリゴマー)は、プロテインAもしくはプロテインGカラムでのアフィニティ・クロマトグラフィにより容易に精製できるという利点を供する。
【0154】
PCT出願WO 93/10151(参照によって本明細書に援用される)に記載されたある適切なFcポリペプチドは、ヒトIgG1抗体のFc領域のN末端ヒンジ領域から天然のC末端へと伸長している一本鎖ポリペプチドである。別の有用なFcポリペプチドは、米国特許5,457,035およびBaumら、1994年、EMBO J. 13:3992-4001に記載されているFcムテインである。このムテインのアミノ酸配列は、WO 93/10151に示されている天然Fc配列のものと、アミノ酸19がLeuからAlaに変更され、アミノ酸20がLeuからGluに変更され、そしてアミノ酸22がGlyからAlaに変更されていることを除けば、同一である。該ムテインは、Fc受容体に対する親和性の低減を呈する。他の実施態様において、抗体重鎖および/もしくは軽鎖の可変部分を、抗グルカゴン受容体抗体の重鎖および/もしくは軽鎖の可変部分に置き換えてもよい。
【0155】
あるいは、オリゴマーは、ペプチドリンカー(スペーサーペプチド)を伴うか、または伴わない、複数の抗原結合タンパク質を含んでなる融合タンパク質である。適切なペプチドリンカーには、米国特許4,751,180および4,935,233に記載されているものがある。
【0156】
オリゴマー抗原結合タンパク質を調製するための別の方法は、ロイシンジッパーの使用を伴う。ロイシンジッパードメインは、それらが内部に認められるタンパク質のオリゴマー化を促すペプチドである。ロイシンジッパーは、いくつかのDNA結合タンパク質において最初に同定され(Landschulzら、1988, Science 240:1759)、そしてそれ以降、多様な異なるタンパク質内に発見されている。公知のロイシンジッパーには、二量体化および三量体化させる、自然界に存在するペプチドおよびその誘導体がある。可溶性オリゴマータンパク質を作り出すための適切なロイシンジッパードメインの例は、PCT出願WO 94/10308に記載されており、そして、肺サーファクタントタンパク質D(SPD)由来ロイシンジッパーについては、Hoppeら、1994年、FEBS Letters 344:191に記載されており、該文献は、参照によって本明細書に援用される。融合している異種タンパク質の安定な三量体化を可能にする修飾されたロイシンジッパーの使用については、Fanslowら、1994年、Semin. Immunol. 6:267-78に記載されている。あるアプローチにおいては、ロイシンジッパーペプチドと融合している抗グルカゴン受容体抗体フラグメントまたは誘導体を含んでなる組換え融合タンパク質を、適切な宿主細胞において発現させ、そして、形成する可溶性オリゴマーの抗グルカゴン受容体抗体フラグメントまたは誘導体を、培養上清から回収する。
【0157】
別の実施態様において、抗体誘導体は、本明細書に開示したCDRの少なくとも一つを含んでなることが可能である。例えば、1またはそれより多くのCDRを、公知の抗体フレームワーク領域(IgG1、IgG2等)内に組み入れるか、または適切なビヒクルと複合体化させて、その半減期を増強してもよい。適切なビヒクルには、これに限定されないが、Fc、アルブミン、トランスフェリン等が含まれる。これらおよびその他の適切なビヒクルは、当該技術分野において公知である。このような複合体化されたCDRペプチドは、単量体、二量体、四量体またはその他の形態であってもよい。一実施態様では、1またはそれより多くの水溶性ポリマーが、結合剤の1またはそれより多くの特定の位置、例えばアミノ末端に結合している。例として、抗体誘導体は、これに限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む、1またはそれより多くの水溶性ポリマーの連結を含んでなる。例えば、米国特許第4,640,835、第4,496,689、第4,301,144、第4,670,417、第4,791,192および第4,179,337を参照されたい。特定の実施態様において、誘導体は、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロースまたは他の炭水化物系ポリマー類、ポリ-(N-ビニルピロリドン)-ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール・ホモポリマー類、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド・コポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコールの1またはそれより多く、ならびにこのようなポリマーの混合物を含んでなる。特定の実施態様において、1またはそれより多くの水溶性ポリマーは、1またはそれより多くの側鎖とランダムに結び付いている。特定の実施態様において、PEGは、抗体などの結合剤の治療能力を改善するように作用することが可能である。特定のこのような方法は、例えば、米国特許第6,133,426に論じられ、該文献は、任意の目的で、参照によって本明細書に援用される。
【0158】
本発明の抗体は、抗体が結合特異性を保持するならば、少なくとも一つのアミノ酸置換を有してもよいことが理解されよう。したがって、抗体構造に対する修飾は、本発明の範囲に包含される。これらには、抗体のヒトグルカゴン受容体結合能力を破壊しないアミノ酸置換が含まれてもよく、該置換は、保存的であっても、または非保存的であってもよい。保存的アミノ酸置換は、自然界に存在しないアミノ酸残基を包含してもよく、該アミノ酸残基は、生体系での合成よりもむしろ化学ペプチド合成によって、典型的には組み入れられる。これらには、ペプチド模倣体、およびアミノ酸部分の他の逆転もしくは反転形態が含まれる。保存的アミノ酸置換はまた、その位置のアミノ酸残基の極性または電荷にほとんどもしくは全く影響がないような、規範的な残基への天然アミノ酸残基の置換を伴ってもよい。非保存的置換は、ある分類に属するアミノ酸またはアミノ酸模倣体のメンバーの、異なる物理学的特性(例えば、サイズ、極性、疎水性、電荷)を伴う別の分類に属するメンバーへの交換を伴ってもよい。このような置換される残基は、非ヒト抗体と相同であるヒト抗体の領域内、または、分子の非相同領域内に挿入されてもよい。
【0159】
さらに、当業者は、所望の各アミノ酸残基に単アミノ酸置換を含有する試験バリアントを作出してもよい。次いで、該バリアントを、当業者に公知の活性アッセイを用いてスクリーニングすることが可能である。このようなバリアントは、適切なバリアントに関する情報を集めるために用いることが可能である。例えば、特定のアミノ酸残基への変更により、活性が破壊されるか、望ましくないことに低減するか、または不適当となることが発見された場合、このような変更を伴うバリアントは避けてもよい。言い換えれば、このようなルーチンの実験から集められた情報に基づいて、当業者は、さらなる置換を単独で、または他の変異と組み合わせて避けるべきであるアミノ酸を、容易に決定することが可能である。
【0160】
当業者は、周知の技術を用いて、本明細書に記載のポリペプチドの適切なバリアントを決定することが可能であろう。特定の実施態様において、当業者は、活性に重要であると考えられていない領域を標的とすることによって、活性を破壊せずに変更し得る分子の適切な区域を同定してもよい。特定の実施態様において、類似するポリペプチドの間で保存されている分子の残基および部分を同定することが可能である。特定の実施態様において、生物活性または構造に重要な可能性のある区域であっても、生物活性を破壊しなければ、あるいはポリペプチド構造に悪影響を及ぼさなければ、保存的アミノ酸置換を受けてもよい。加えて、当業者は、活性または構造に重要である類似するポリペプチド中の残基を同定する構造−機能試験を、再検討することが可能である。このような比較を考慮して、類似するタンパク質において活性または構造に重要であるアミノ酸残基に対応する、タンパク質中のアミノ酸残基の重要性を、予測することが可能である。当業者は、このような予測された重要なアミノ酸残基を、化学的に類似するアミノ酸へ置換することを選んでもよい。
【0161】
当業者はまた、三次元構造およびアミノ酸配列を、類似するポリペプチドにおけるその構造に関連して解析することも可能である。このような情報を考慮して、当業者は、抗体のアミノ酸残基のアラインメントを、その三次元構造に関して予測してもよい。特定の実施態様において、当業者は、タンパク質表面にあることが予測されるアミノ酸残基への抜本的な変更を行わないことを、このような残基が他分子との重要な相互作用に関与する可能性があることから、選択してもよい。多数の科学出版物が、二次構造の予測に供されている。Moult J., Curr. Op. in Biotech., 7(4):422-427 (1996年);Chouら、Biochemistry, 13(2):222-245 (1974年);Chouら、Biochemistry, 113(2):211-222 (1974年);Chouら、Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol., 47:45-148 (1978年);Chouら、Ann. Rev. Biochem., 47:251-276;および、Chouら、Biophys. J., 26:367-384 (1979年)を参照されたい。さらに、コンピュータープログラムが、二次構造の予測を支援するために、現在利用可能である。二次構造を予測するある方法は、相同性モデリングに基づく。例えば、配列同一性が30%を超えるか、または類似性が40%を超える二つのポリペプチドまたはタンパク質は、類似する構造トポロジーを有する場合が多い。タンパク質構造データベース(PDB)の近年の成長によって、ポリペプチドもしくはタンパク質の構造内での潜在的な折り畳み数を含む、増強された二次構造の予測性が供されている。Holmら、Nucl. Acid. Res., 27(1):244-247 (1999年)を参照されたい。所与のポリペプチドもしくはタンパク質における折り畳み数は限られており、そして、臨界数の構造が決定されているならば、構造予測は劇的により正確となるであろうと、示唆されている(Brennerら、Curr. Op. Struct. Biol., 7(3):369-376 (1997年))。
【0162】
二次構造を予測するさらなる方法には、「スレッディング」((Jones, D., Curr. Opin. Struct. Biol., 7(3):377-87 (1997年);Sipplら、Structure, 4(1):15-19 (1996年))、「プロファイル解析」(Bowieら、Science, 253:164-170 (1991年);Gribskovら、Meth. Enzym., 183:146-159 (1990年);Gribskovら、Proc. Nat. Acad. Sci., 84(13):4355-4358 (1987年))、および「進化的連鎖」(Holm, 同上、(1999年)、およびBrenner, 同上、(1997年)を参照されたい)が含まれる。特定の実施態様において、抗体のバリアントには、グリコシル化部位の数および/またはタイプが、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して変わっている、グリコシル化バリアントが含まれる。特定の実施態様において、バリアントは、天然タンパク質よりも多いかもしくは少ない数のN結合型グリコシル化部位を含んでなる。あるいは、この配列を排除する置換は、既存のN結合型炭水化物鎖を除去するであろう。さらに提供されるのは、1またはそれより多くのN結合型グリコシル化部位(典型的には、自然界に存在するもの)が排除され、そして1またはそれより多くの新たなN結合型部位が創出される、N結合型炭水化物鎖の再配列である。さらなる好ましい抗体バリアントには、親アミノ酸配列と比較して、1またはそれより多くのシステイン残基が欠失しているか、または別のアミノ酸(例えば、セリン)を置換している、システインバリアントが含まれる。システインバリアントは、不溶性封入体の単離後のような、生物学的に活性なコンフォメーションにリフォールディングされなければならない場合に、有用な場合がある。システインバリアントは、一般に、天然のタンパク質よりもシステイン残基が少なく、かつ、典型的には、対合していないシステインから生じる相互作用を最小にするために偶数を有する。
【0163】
所望のアミノ酸置換(保存的または非保存的のいずれも)は、このような置換が所望されるときに、当業者によって決定されることが可能である。特定の実施態様において、アミノ酸置換を、ヒトグルカゴン受容体に対する抗体の重要な残基を同定するために、あるいは本明細書に記載したヒトグルカゴン受容体に対する抗体の親和性を増加もしくは減少させるために、用いることが可能である。
【0164】
特定の実施態様によると、好ましいアミノ酸置換とは、(1)タンパク質分解に対する感受性を低減させ、(2)酸化に対する感受性を低減させ、(3)タンパク質複合物を形成するために結合親和性を変え、(4)結合親和性を変え、かつ/あるいは、(5)このようなポリペプチドに他の生理化学的もしくは機能的特性を付与するかまたは修飾するものである。特定の実施態様によると、1または複数のアミノ酸置換(特定の実施態様では、保存的アミノ酸置換)を、自然界に存在する配列内にて(特定の実施態様では、分子間接触を形成するドメイン外にあるポリペプチドの一部分にて)行ってもよい。特定の実施態様において、保存的アミノ酸置換は、典型的には、親配列の構造的特徴を実質的には変更してはならない(例えば、置換アミノ酸は、親配列に生じているヘリックスを壊すか、または、親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造を破壊する傾向があってはならない)。当該技術分野において承認されているポリペプチドの二次および三次構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton編集、W. H. Freeman and Company, ニューヨーク州(1984年));Introduction to Protein Structure (C. BrandenおよびJ. Tooze編集、ガーランド・パブリッシング、ニューヨーク、ニューヨーク州(1991年));および、Thorntonら、Nature 354:105 (1991年)に記載されており、該文献のそれぞれは、参照によって本明細書に援用される。
【0165】
特定の実施態様において、本発明の抗体は、ポリマー、脂質またはその他の部分と化学的に結合していてもよい。
抗原結合剤は、本明細書に記載したCDRの少なくとも一つを、生体適合性のフレームワーク構造に組み入れて、含んでなってもよい。一例において、生体適合性のフレームワーク構造は、局在する表面領域において抗原に結合する1またはそれより多くのアミノ酸の配列(例えば、CDR、可変領域等)を提示可能な、配座的に安定な構造担体またはフレームワークまたはスキャフォールドを形成するのに十分であるポリペプチドまたはその一部分を含んでなる。このような構造は、自然界に存在するポリペプチドまたはポリペプチド「フォールド」(構造モチーフ)であることが可能であり、あるいは、自然界に存在するポリペプチドもしくはフォールドと比較して、アミノ酸の付加、欠失または置換などの、1またはそれより多くの修飾を有することが可能である。これらのスキャフォールドは、ヒト、他の哺乳動物、他の脊椎動物、無脊椎動物、植物、細菌またはウイルスなどの、任意の種の(または1より多くの種の)ポリペプチドに由来することが可能である。
【0166】
典型的には、生体適合性のフレームワーク構造は、免疫グロブリンドメイン以外のタンパク質スキャフォールドもしくは骨格に基づく。例えば、フィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルチノスタチン(neocarzinostain)、シトクロムb、CP1ジンクフィンガー、PST1、コイルドコイル、LACI−D1、Zドメインおよびテンダミスタットドメインに基づくものを、用いてもよい(例えば、NygrenおよびUhlen、1997年、Current Opinion in Structural Biology, 7, 463-469を参照されたい)。
【0167】
加えて、適切な結合剤には、本明細書に具体的に開示した重鎖CDR1、CDR2、CDR3、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3の1またはそれより多くなどの、これらの抗体の一部分が含まれることを、当業者は認識するであろう。重鎖CDR1、CDR2、CDR3、CDR1、CDR2およびCDR3の領域の少なくとも一つは、抗体が非置換CDRの結合特異性を保持するならば、少なくとも一つのアミノ酸置換を有してもよい。抗体の非CDR部分は、結合剤が本明細書に開示した抗体とヒトGCGRとの結合を交差遮断し、かつ/または、受容体を介したグルカゴンのシグナル伝達活性を阻害する、非タンパク質分子であってもよい。抗体の非CDR部分は、抗体が、競合的結合アッセイにおいて、抗体A1〜A23の少なくとも一つが呈するものに類似する、ヒトGCGRペプチドとの結合パターンを呈し、かつ/または、グルカゴンの活性を中和する、非タンパク質分子であってもよい。抗体の非CDR部分は、抗体が組換え結合タンパク質または合成ペプチドであり、そして、組換え結合タンパク質が、本明細書に開示した抗体とヒトGCGRとの結合を交差遮断し、かつ/または、in vitroまたはin vivoにおいてグルカゴン活性を中和する、アミノ酸から構成されてもよい。抗体の非CDR部分は、抗体が組換え抗体であり、そして、組換え抗体が、競合的結合アッセイにおいて、抗体A1〜A23の少なくとも一つが呈するものに類似する、ヒトGCGRペプチドとの結合パターンを呈し、かつ/または、グルカゴンのシグナル伝達を中和する、アミノ酸から構成されてもよい。
【0168】
核酸
一側面において、本発明は、単離された核酸分子を提供する。核酸分子は、例えば、抗原結合タンパク質(例えば、本発明の抗体の一方もしくは両方の鎖、またはそのフラグメント、誘導体、ムテインもしくはバリアント)の全部もしくは一部をコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定、解析、変異もしくは増幅させるためのハイブリダイゼーション・プローブ、PCRプライマーまたはシークエンシング・プライマーとしての使用に十分なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンス核酸、ならびに、前述のものの相補的配列を含んでなる。核酸は、任意の長さであることが可能である。それらは、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000またはそれより多くのヌクレオチド長であることが可能であり、かつ/あるいは、1またはそれより多くのさらなる配列(例えば、制御配列)を含んでなることが可能であり、かつ/あるいは、より大きな核酸(例えば、ベクター)の一部であることが可能である。核酸は、一本鎖または二本鎖であることが可能であり、そして、RNAおよび/またはDNAヌクレオチド、ならびにその人工バリアント(例えば、ペプチド核酸)を含んでなることが可能である。
【0169】
抗体ポリペプチド(例えば、重鎖もしくは軽鎖、可変ドメインのみ、または完全長)をコードする核酸を、GCGR抗原で免疫されているマウスのB細胞から単離してもよい。該核酸を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの慣用の手順により単離してもよい。
【0170】
重鎖および軽鎖可変領域の可変領域をコードする核酸配列を、上記に示す。当業者は、遺伝コードの縮重によって、本明細書に開示したポリペプチド配列のそれぞれが、多数の他の核酸配列によりコードされることを、理解するであろう。本発明は、本発明の各抗原結合タンパク質をコードする、各縮重ヌクレオチド配列を提供する。
【0171】
本発明は、特定のハイブリダイゼーション条件下で他の核酸(例えば、A1〜A14のいずれかのヌクレオチド配列を含んでなる核酸)とハイブリダイズする核酸を、さらに提供する。核酸をハイブリダイズするための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology, ジョンワイリー&サンズ、ニューヨーク州(1989年), 6.3.1-6.3.6を参照されたい。本明細書に定義したように、例えば、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、5X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)を含有する前洗浄溶液、約50%ホルムアミド、6X SSCのハイブリダイゼーション・バッファーおよび55℃のハイブリダイゼーション温度(または、42℃のハイブリダイゼーション温度で、約50%ホルムアミドを含有するものなどの、他の同様なハイブリダイゼーション溶液)、ならびに0.5X SSC、0.1% SDS中での60℃の洗浄条件を、用いる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6X SSC中で45℃にてハイブリダイズさせ、続いて、0.1X SSC、0.2% SDS中で68℃にて、1回またはそれより多く洗浄する。さらに、当業者は、少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98または99%互いに同一であるヌクレオチド配列を含んでなる核酸が、典型的には、互いにハイブリダイズしたままとなるよう、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を操作して、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加もしくは減少させることが可能である。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響を及ぼす基本的なパラメータ、および適切な条件を考案するためのガイダンスは、例えば、Sambrook, FritschおよびManiatis (1989年、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, コールドスプリングハーバー研究所プレス、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、第9および11章;および、Current Protocols in Molecular Biology, 1995年、Ausubelら編集、ジョンワイリー&サンズInc. 2.10および6.3-6.4項)に記載されており、そして、例えばDNAの長さおよび/または塩基組成に基づいて、当業者により容易に決定されることが可能である。変更を、変異によって核酸に導入することにより、それがコードするポリペプチド(例えば、抗原結合タンパク質)のアミノ酸配列内での変更をもたらすことが可能である。変異は、当該技術分野において公知の任意の技術を用いて導入可能である。一実施態様では、1またはそれより多くの特定のアミノ酸残基を、例えば、部位指向性変異誘発プロトコールを用いて、変更する。別の実施態様では、1またはそれより多くのランダムに選択された残基を、例えば、ランダム変異誘発プロトコールを用いて、変更する。どのように作製されるにせよ、変異ポリペプチドを、所望の特性に関して発現させ、そしてスクリーニングすることが可能である。
【0172】
変異を、核酸に、それがコードするポリペプチドの生物活性を有意に変えずに導入することが可能である。例えば、本質的でないアミノ酸残基におけるアミノ酸置換をもたらす、ヌクレオチド置換を行うことが可能である。一実施態様では、L−1〜L−23およびH−1〜H−23、またはその所望のフラグメント、バリアントもしくは誘導体に関して本明細書に供されるヌクレオチド配列を、それが、L−1〜L−23およびH−1〜H−23に関して本明細書に示すアミノ酸残基の1もしくはそれより多くの欠失または置換を含んでなるアミノ酸配列をコードするように変異させ、2またはそれより多くの配列が異なっている残基にする。別の実施態様では、変異誘発により、L−1〜L−23およびH−1〜H−23に関して本明細書に示す1またはそれより多くのアミノ酸残基に隣接してアミノ酸を挿入し、2またはそれより多くの配列が異なっている残基にする。あるいは、1またはそれより多くの変異を、コードするポリペプチドの生物活性(例えば、GCGRとの結合)を選択的に変える核酸に導入することが可能である。例えば、変異は、量的および質的に生物活性を変えることが可能である。量的な変更の例には、活性を増加、低減もしくは排除することが含まれる。質的な変更の例には、抗原結合タンパク質の抗原特異性を変えることが含まれる。
【0173】
別の側面において、本発明は、本発明の核酸配列を検出するためのプライマーまたはハイブリダイゼーション・プローブとしての使用に適している核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、本発明の完全長ポリペプチドをコードする核酸配列のほんの一部分を含んでなることが可能であって、例えば、プローブまたはプライマーとして用いることが可能なフラグメント、あるいは、本発明のポリペプチドの活性部分(例えば、GCGR結合部分)をコードするフラグメントである。
【0174】
本発明の核酸の配列に基づくプローブを、核酸または類似核酸、例えば、本発明のポリペプチドをコードする転写物を検出するために、用いることが可能である。プローブは、例えば、ラジオアイソトープ、蛍光化合物、酵素または酵素補助因子などの、標識基を含んでなることが可能である。このようなプローブを、ポリペプチドを発現する細胞を同定するために用いることが可能である。
【0175】
別の側面において、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその一部分をコードする核酸を含んでなるベクターを提供する。ベクターの例には、これに限定されないが、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクターおよび発現ベクター(例えば、組換え発現ベクター)が含まれる。
【0176】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内での核酸の発現に適した形態で、本発明の核酸を含んでなることが可能である。組換え発現ベクターは、発現に用いられる宿主細胞に基づいて選択され、発現させる核酸配列に機能可能なように連結されている、1またはそれより多くの制御配列を含む。制御配列には、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を導くもの(例えば、SV40初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスプロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーター)、特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば、組織特異的な制御配列、Vossら、1986年、Trends Biochem. Sci. 11:287;Maniatisら、1987年、Science 236:1237を参照されたい。該文献の全体は、参照によって本明細書に援用される)、ならびに、特定の処理または条件に応答してヌクレオチド配列の誘導的発現を導くもの(例えば、哺乳動物細胞におけるメタロチオニンプロモーター、ならびに、原核生物および真核生物系の両方におけるtet応答性および/またはストレプトマイシン応答性プロモーター)が含まれる(同上を参照されたい)。発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等などの要因に応じて決まり得ることが、当業者によって理解されるであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞内に導入することによって、本明細書に記載の核酸によりコードされるタンパク質またはペプチド(融合タンパク質もしくはペプチドを含む)を産生することが可能である。
【0177】
別の側面において、本発明は、本発明の組換え発現ベクターが導入されている宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であることが可能である。原核宿主細胞には、例えば大腸菌または桿菌などの、グラム陰性もしくはグラム陽性生物が含まれる。より高次の真核細胞には、昆虫細胞、酵母細胞、および哺乳動物由来の確立された細胞株が含まれる。適切な哺乳動物宿主細胞株の例には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または、血清非含有培地で生育するベジーCHOおよび関連する細胞株などのその誘導体(Rasmussenら、1998年、Cytotechnology 28:31を参照されたい)、あるいは、DHFRが欠損しているCHO系DXB−11(Urlaubら、1980年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-20を参照されたい)が含まれる。CHO細胞株には、さらに、CHO−K1(ATCC# CCL−61)、 EM9(ATCC# CRL−1861)およびUV20(ATCC# CRL−1862)が含まれる。宿主細胞には、さらに、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら、1981年、Cell 23:175を参照されたい)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、AM−1/D細胞(米国特許第6,210,924に記載)、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、アフリカミドリザル腎臓細胞株CV1(ATCC CCL 70)由来のCV1/EBNA細胞株(McMahanら、1991年、EMBO J. 10:2821を参照されたい)、293、293EBNAもしくはMSR293などのヒト胚性腎細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、その他の形質転換された霊長類細胞株、正常二倍体細胞、in vitro初代組織培養由来の細胞系、初代外植体、HL−60、U937、HaKまたはジャーカット細胞が含まれる。細菌、真菌、酵母および哺乳動物細胞宿主での使用に適したクローニングベクターおよび発現ベクターについては、Pouwelsら(Cloning Vectors: A Laboratory Manual, エルゼビア社、ニューヨーク州、1985年)に記載されている。
【0178】
ベクターDNAを、慣用の形質転換もしくはトランスフェクション技術によって、原核もしくは真核細胞内に導入することが可能である。哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションに関しては、用いる発現ベクターおよびトランスフェクション技術に応じて、ほんのわずかの細胞が外来DNAをそのゲノム内に組み込む可能性のあることが、知られている。これらの組み込み体を同定および選択するために、一般には、選択マーカーをコードする遺伝子(例えば、抗生物質への耐性に対する)を、目的とする遺伝子とともに宿主細胞内に導入する。好ましい選択マーカーには、G418、ヒグロマイシンおよびメトトレキサートなどの、薬物に耐性を付与するものが含まれる。導入した核酸を安定にトランスフェクトされている細胞を、いくつかの方法の中でも特に薬物選択(例えば、選択マーカー遺伝子を組み入れた細胞は生存するが、他の細胞は死滅する)によって、同定することが可能である。
【0179】
形質転換された細胞を、ポリペプチドの発現を促す条件下で培養し、そして、該ポリペプチドを慣用のタンパク質精製手順によって回収することが可能である。一つのこのような精製手順を、以下の実施例に記載する。本明細書における使用を企図されるポリペプチドには、実質的に内因性物質の混入を伴わない、実質的に均一な組換え哺乳動物抗グルカゴン受容体抗体ポリペプチドが含まれる。
【0180】
抗原結合タンパク質の活性
一側面において、本発明は、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する、抗原結合タンパク質、具体的にはヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体を提供する。このような抗体には、例えば、実施例4に記載した細胞系機能アッセイによって測定されるように、グルカゴンのシグナル伝達を低減もしくは中和可能な、拮抗もしくは中和抗体が含まれる。一実施態様において、本発明のヒト抗体などの抗原結合タンパク質のIC50値は90nM以下であり、別の実施態様においてはIC50値は80nM以下であり、別の実施態様においては70nM以下、別の実施態様においては60nM以下、別の実施態様においては50nM以下、別の実施態様においては40nM以下、別の実施態様においては30nM以下、別の実施態様においては25nM以下である。別の実施態様において、本発明のヒト抗体などの抗原結合タンパク質は、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合可能であり、そして、参照抗体と実質的に類似するIC50値を有する。別の実施態様において、抗原結合タンパク質は、以下の実施例に記載したアッセイ(または類似のアッセイ)によって測定されるように、参照抗体と実質的に類似するKb(もしくはKd)を有する。本明細書では、「実質的に類似する」の語は、参照抗体のIC50またはKb(もしくはKd)値と同等であるか、あるいは約100%、99%、98%、97%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%または50%同一であることを、意味する。参照抗体には、例えば、重鎖および軽鎖の組み合わせL1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L11H11、L12H12、L13H13、L15H15、L21H21およびL22H22を有する抗体が含まれる。一実施態様において、参照抗体には、A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7、A−8、A−9、A−11、A−12、A−13、A−15、A−21およびA−22が含まれる。別の実施態様において、本発明のヒト抗体などの抗原結合タンパク質は、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合可能であって、かつ、動物モデルにおいて血糖を低下させることが可能である。一実施態様において血糖は非処理動物と比較して2%低下し、別の実施態様において血糖は非処理動物と比較して5%低下し、別の実施態様において血糖は非処理動物と比較して10%低下し、別の実施態様においては15%、別の実施態様においては20%、別の実施態様においては25%以上、非処理動物と比較して血糖が低下する。血糖の低減量は、投与量によって調節される。治療有効投与量は、動物もしくはヒト患者に対して血糖を正常範囲内に低減させるために必要とされる投与量である。典型的な動物モデルは、以下の実施例6に記載のように、ob/obマウスである。別の実施態様において、本発明のヒト抗体は、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合可能であって、かつ、動物モデルにおいて糖クリアランスを改善することが可能である。典型的な動物モデルは、以下の実施例7に記載のように、カニクイザルである。糖クリアランスの改善は、経口グルコースの負荷を動物もしくはヒト患者に行った後、血糖を低減させるのにかかる時間量を指し、かつ、耐糖能の尺度である。これは、以下の実施例に記載のように、経口耐糖能試験(OGTT)などの標準的な試験によって測定される。本発明の抗原結合タンパク質は、動物モデルにおいて耐糖能を改善することが可能である。加えて、該抗原結合タンパク質は、これに限定されないが、空腹時耐糖能、脂質代謝異常およびメタボリック症候群を含む、2型糖尿病および高血糖に付随する他のin vivo指標を改善することが可能である。
【0181】
ヒトグルカゴン受容体との結合
一実施態様において、本発明は、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L11H11、L12H12、L13H13、L15H15、L21H21およびL22H22からなる群より選択される、軽鎖および重鎖可変ドメイン配列の組み合わせを含んでなる参照抗体と、結合に関して交差競合する抗原結合タンパク質を提供する。別の実施態様において、本発明は、A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7、A−8、A−9、A−11、A−12、A−13、A−15、A−21およびA−22である参照抗体と、結合に関して交差競合するヒト抗体を、提供する。別の側面において、本発明は、ヒトグルカゴン受容体のSer80〜Ser119領域に結合するヒト抗体を提供する。別の実施態様において、本発明は、ヒトグルカゴン受容体のSer80〜Ser119領域に結合する参照抗体と、結合に関して交差競合するヒト抗体を、提供する。別の実施態様において、本発明は、グルカゴン受容体のSer80〜Ser119領域に結合するヒト抗体であって、かつ、IC50値が、例えば実施例4に記載したアッセイにおいて測定されたように、90nM以下、別の実施態様では80nM以下、別の実施態様では70nM以下、別の実施態様では60nM以下、別の実施態様では50nM以下、別の実施態様では40nM以下、別の実施態様では30nM以下、別の実施態様では25nM以下であるヒト抗体を、提供する。別の実施態様において、本発明は、A−3である参照抗体と、ヒトグルカゴン受容体への結合に関して交差競合するヒト抗体を、提供する。
【0182】
さらなる実施態様において、ヒトグルカゴン受容体に結合するときに、参照抗体と実質的に同じKdにてヒトグルカゴン受容体に結合し;前記参照抗体と実質的に同じIC50にてヒトグルカゴン受容体のグルカゴン刺激を阻害し;かつ/または、ヒトグルカゴン受容体上で結合に関して前記参照抗体と交差競合する、抗原結合タンパク質が提供され、ここで、前記参照抗体はL1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L11H11、L12H12、L13H13、L15H15、L21H21およびL22H22からなる群より選択される、軽鎖および重鎖可変ドメイン配列の組み合わせを含んでなる。
【0183】
さらなる実施態様において、単離されたヒト抗体は、ヒトグルカゴン受容体に結合するときに、参照抗体と実質的に同じKdにてヒトグルカゴン受容体に結合し;前記参照抗体と実質的に同じIC50にてヒトグルカゴン受容体のグルカゴン刺激を阻害し;かつ/または、ヒトグルカゴン受容体上で結合に関して前記参照抗体と交差競合し、ここで、前記参照抗体は、A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7、A−8、A−9、A−11、A−12、A−13、A−15、A−21およびA−22からなる群より選択される。
【0184】
さらなる実施態様において、ヒトグルカゴン受容体に結合するときに、a.ヒトグルカゴン受容体のアミノ酸Ser80〜Ser119部分に特異的に結合するか;b.90nM以下のIC50値でグルカゴンのシグナル伝達を低減するか;c.動物モデルにおいて血糖を低下させるか;または、(a)および(b)、もしくは(a)、(b)および(c)である、単離された抗体が提供される。
【0185】
抗体との交差競合能を、以下のように測定する。以下の実施例8に、A−3を参照抗体として用いた、典型的な競合的結合アッセイについて記載する。試験された抗体は、結合に関してA−3と競合可能であった克服性抗体、結合に関して部分的にのみ競合可能であった部分的克服性抗体、および、結合に関してA−3と競合しなかった非克服性抗体であった。結果は、図4〜6に示す。
【0186】
加えて、以下の実施例9に記載のように、ヒト抗体A−3および他のヒト抗体が結合する部位を、ヒトGCGRとヒトGLP−1受容体とのキメラ受容体を構築することにより、決定した。以下に記載し、かつ図7に示すようにキメラ受容体を用いて、抗体A−3に関しては、ヒトグルカゴン受容体のアミノ酸Ser80〜Ser117の領域が、結合に必要かつ十分であることが、決定された。加えて、ヒトGCGRは、三対のシステインを含有する。抗体A−3に関して、第二および第三のシステイン対が結合に必要であったが、しかし、第一の対は必要でなかった。このことは、三対のシステインが無傷である場合にのみ結合する抗体A−18、A−21およびA−10とは、対照的であった。
【0187】
適応症
糖尿病(特に、2型糖尿病)およびその合併症は、世界中の人々にとってますます大きな問題となっている。一般には、この疾患は、膵β細胞からのインスリン産生障害に起因する。最も一般的な疾患形態である2型糖尿病では、遺伝要因と環境要因とが組み合わさって、β細胞の障害がもたらされると考えられており、結果として、多くの個体において、インスリンの分泌および活性の障害、ならびにインスリン抵抗性が生じる。肥満は、成人において、そして子供においてさえも、2型糖尿病の増加に寄与すると考えられている一状態である。脂質代謝異常、または異常なHDL(高密度リポタンパク質)およびLDL(低密度リポタンパク質)が2型糖尿病に関連することもまた、公知である。
【0188】
2型糖尿病は、筋肉および他器官が正常のインスリン循環濃度に応答できないことを、特徴とする。これに続いて、高インスリン血症として公知の状態である、膵ベータ細胞からのインスリン分泌増加が起こる。最終的には、ベータ細胞は、もはや代償することができず、耐糖能障害、空腹時血糖値障害、慢性高血糖および組織損傷をもたらす。加えて、2型糖尿病前症は、脂質代謝異常、または異常なHDL(高密度リポタンパク質)およびLDL(低密度リポタンパク質)に関連することが公知である。脂質代謝異常と高血糖の双方は、メタボリック症候群を患う患者に存在する。
【0189】
本発明は、抗原結合タンパク質、具体的には、in vivoにおいてグルカゴン受容体と結合し、かつ動物モデルにおいて血糖値を低減することが可能なヒト抗体を、提供する。抗原結合タンパク質は、耐糖能を改善することも可能である。一実施態様において、本発明は、in vivoにおいて有効である完全ヒト抗体を提供する。ob/obマウスにおける単回抗体注射の効果は、例えば、注射後の数日間、血糖を低下させ、高血糖、2型糖尿病および関連する障害に対して、有効で長期間持続する治療を提供する。単回抗体注射はまた、以下に記載のカニクイザルに行った耐糖能試験(GTT)において、血液からの糖クリアランスも改善(耐糖能を改善)した。抗原結合タンパク質、および具体的には本発明のヒト抗体は、血中もしくは血清中グルコースを低下させ、耐糖能障害を改善し、空腹時血糖値を改善し、そして脂質代謝異常を改善するのに有用である。このように、抗原結合タンパク質、特に発明のヒト抗体は、高血糖、2型糖尿病、メタボリック症候群、および脂質代謝異常を含む他の関連する状態の治療に有用である。加えて、Richardsonら、Nature Clin Pract Oncol 2: 48-53 (2005年);Giovannucciら、Gastroenterology 132: 2208-2225 (2007年);Kroneら、Integrative Cancer Ther 4(1): 25-31 (2005年);Changら、Diabetologia 46(5): 595-607 (2003);Jeeら、Yonsei Med J 46(4): 449-55 (2005年)において論じられるように、血糖を低下させることが、結腸直腸癌などの特定の癌の予防および治療において、状況次第では有用なことが示されている。
【0190】
治療の方法
別の側面において、対象を治療する方法であって、治療投与量の本発明の抗原結合タンパク質を投与することを含んでなる方法が、提供される。一実施態様において、抗原結合タンパク質は、ヒト抗体である。本明細書では、「対象」の語は、ヒトを含む哺乳動物を指し、そして、「患者」の語と同義的に用いられる。ヒト抗体を、対象における過剰レベルのグルカゴンおよび/もしくは血糖を特徴とする障害または状態を治療、調節または予防し、そして、耐糖能を改善するために、用いることが可能である。これらの障害には、高血糖、メタボリック症候群および2型糖尿病が含まれる。「治療」の語は、少なくとも一つの症状、もしくは疾患の他の側面の軽減または予防、あるいは疾患重症度の低減等を、包含する。抗原結合タンパク質、特に本発明によるヒト抗体は、役に立ち得る治療剤であるためには、完全な治癒をもたらすか、または疾患の症状もしくは兆候を根絶する必要はない。適切な分野において認識されているように、治療剤として使用される薬物は、所与の疾患状態の重症度を低減してもよいが、ただし、有用な治療剤と見なされるために、疾患の全兆候を消滅させる必要はない。同様に、予防的投与治療は、役に立ち得る予防剤であるためには、状態の発現の阻止において完全に有効である必要はない。疾患のインパクトを低減させるか(例えば、その症状の数もしくは重症度を低減させるか、または別の治療の有効性を増加させるか、または別の有益な効果を作り出すことによる)、あるいは、対象において疾患が生じるかもしくは悪化する可能性を低減させるだけで、十分である。本発明の一実施態様は、ヒト抗体などの抗原結合タンパク質を、特定の障害の重症度を反映する指標のベースラインを超える、持続した改善を誘導するのに十分な量および期間、患者に投与することを含んでなる方法に関する。
【0191】
適切な分野において理解されるように、本発明の抗原結合タンパク質を含んでなる医薬組成物は、適応症に対して適切なように、対象に投与される。一実施態様において、医薬組成物は、本発明のヒト抗体を含んでなる。医薬組成物は、これに限定されないが、非経口、局所または吸入を含む任意の適切な技術によって、投与されてもよい。注射される場合、医薬組成物は、例えば、動脈内、静脈内、筋肉内、病巣内、腹腔内または皮下経路、ボーラス注射、あるいは持続注入によって、投与されることが可能である。経皮送達および移植物からの持続放出のような、例えば疾患もしくは傷害部位における限局投与が、考えられる。吸入による送達には、例えば、経鼻もしくは経口吸入、噴霧器の使用、エアロゾル形態での抗原結合タンパク質の吸入等が含まれる。他の代替方法には、丸薬、シロップまたはロゼンジを含む経口用調製物が含まれる。
【0192】
有利には、本発明の抗原結合タンパク質は、生理学的に許容可能なキャリアー、賦形剤または希釈剤などの1またはそれより多くのさらなる構成成分を含んでなる組成物の形態にて、投与される。所望により、該組成物は、例えば以下に記載のように、1またはそれより多くの生理学的に活性な剤をさらに含んでなる。種々の特定の実施態様において、該組成物は、1またはそれより多くの本発明の抗原結合タンパク質(例えば、ヒト抗体)に加えて、1、2、3、4、5または6の生理学的に活性な剤を含んでなる。
【0193】
一実施態様において、医薬組成物は、本発明のヒト抗体を、抗体に適した適切なpHのバッファー、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量ポリペプチド(10アミノ酸未満のものなど)、タンパク質、アミノ酸、デキストリンなどの炭水化物、EDTAなどのキレート剤、グルタチオン、安定剤および賦形剤からなる群より選択される、1またはそれより多くの物質とともに含んでなる。適切な工業規格にしたがって、保存剤もまた加えてよい。組成物は、適切な賦形剤溶液を希釈剤として用いて、凍結乾燥物として処方物化されてもよい。適切な構成成分は、使用される投与量および濃度において、レシピエントに対し非毒性である。医薬処方物において使用されてもよい構成成分のさらなる例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第16版(1980年) および第20版(2000年), マック・パブリッシング・カンパニー、イーストン、ペンシルバニア州に示されている。
【0194】
1またはそれより多くの本発明の抗原結合タンパク質、および本明細書に論じた状態のいずれかの治療における使用のための表示または他の取扱説明書を含む、医学専門家による使用のためのキットが、提供されている。一実施態様において、該キットは、1またはそれより多くのヒト抗体の無菌調製物を含み、これは、上記に開示の組成物の形態であってもよく、そして、1またはそれより多くのバイアルに入っていてもよい。
【0195】
投与量および投与頻度は、投与経路、使用される特定の抗体、治療される疾患の性質および重症度、状態が急性であるかまたは慢性であるか、ならびに対象の大きさおよび一般状態などの要因に応じて、異なってもよい。適切な投与量は、例えば、用量漸増試験を伴うことのある臨床試験などの、適切な技術分野において公知の手順によって、決定可能である。
【0196】
本発明の抗原結合タンパク質、特にヒト抗体は、例えば通常の間隔である期間にわたって、例えば1回または1回より多く、投与されてもよい。特定の実施態様において、ヒト抗体は、少なくとも1ヶ月に1回またはそれより多くの回、ある期間にわたって、例えば1、2もしくは3ヶ月間または無制限に、投与されてもよい。慢性状態を治療するには、長期治療が、一般には最も効果的である。しかしながら、急性状態を治療するには、例えば1〜6週間などのより短期の投与で、十分な可能性がある。一般に、ヒト抗体は、患者が、選択された指標(単数もしくは複数)に対して医学的に関連する程度のベースラインを超える改善を現すまで、投与される。
【0197】
本明細書に提供した治療レジメンの一例は、血糖値が関与する状態を治療するための、ヒト抗体などの抗原結合タンパク質の週1回の適切な投与量での皮下注射を含んでなる。このような状態の例は、本明細書において供され、かつ、例えば、高血糖、2型糖尿病、空腹時耐糖能障害、耐糖能障害および脂質代謝異常を含む。抗原結合タンパク質の週毎もしくは月毎の投与は、所望の結果を達成するまで(例えば、対象の症状が鎮静するまで)継続されるであろう。治療は必要に応じて再開されてもよいし、あるいは、維持用量が投与されてもよい。
【0198】
対象の血糖値を、その値の変化をあるとすれば検出するために、ヒト抗体などの抗原結合タンパク質による治療の前、間および/または後にモニターしてもよい。いくつかの障害に関しては、血糖上昇の発生率が、病期などの要因に応じて異なる可能性がある。公知の技術を、糖値を測定するために使用してもよい。患者の血中におけるグルカゴン値もまた、例えばELISAなどの公知の技術を用いて測定してよい。
【0199】
本発明の方法および組成物の特定の実施態様は、例えば、ヒト抗体などの抗原結合タンパク質および1またはそれより多くのグルカゴンアンタゴニスト、2またはそれより多くの本発明の抗原結合タンパク質、あるいは、本発明の抗原結合タンパク質および1またはそれより多くの他のグルカゴンアンタゴニストの使用を伴う。さらなる実施態様において、抗原結合タンパク質は、単独で、または患者が患っている状態の治療に有用な他剤と併用して、投与される。このような剤の例には、タンパク質性と非タンパク質性の両方の薬剤が含まれる。複数の治療剤を投与する場合、投与量を、適切な技術分野において認識されているように、適宜に調整してもよい。「同時投与」および併用療法は、同時の投与に限定されるばかりでなく、少なくとも一つの他の治療剤を患者に投与することを伴う治療コース中に、抗原結合タンパク質を少なくとも一回投与する治療レジメンも含む。
【0200】
別の側面において、本発明は、2型糖尿病、高血糖、メタボリック症候群、脂質代謝異常および関連する障害の治療のための薬剤であって、2型糖尿病および関連する障害の治療のために、本発明の抗原結合タンパク質(例えば、ヒト抗体)の医薬的に許容可能な賦形剤中の混合物を含んでなる、前記薬剤の調製方法を、提供する。薬剤の製造方法は、上記に記載している。
【0201】
併用療法
別の側面において、本発明は、本明細書に記載した完全ヒト治療用抗体などの本発明の治療用抗原結合タンパク質を用いて、1またはそれより多くの他の治療と併せて、糖尿病に関して対象を治療する方法を、提供する。一実施態様において、このような併用療法は、相乗効果を達成する。抗原結合タンパク質を、現在利用可能な以下の2型糖尿病治療の1またはそれより多くと併用してもよい。これらには、ビグアナイド(メタフォルミン)およびスルホニル尿素(グリブリド、グリビジドなど)が含まれる。グルコース恒常性の維持に向けたさらなる治療には、PPARガンマアンタゴニスト(ピオグリタゾン、ロシグリタゾン);およびアルファグルコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ボグリボース)が含まれる。さらなる治療には、エクセナチド(登録商標)(グルカゴン様ペプチド)およびシムリン(登録商標)(プラムリンチド)などの注射治療が含まれる。
【0202】
本発明に関して記載してきたが、以下の実施例を、限定でなく例示の目的で提供する。
【実施例】
【0203】
実施例1:抗原の調製
完全長の477アミノ酸グルカゴン受容体(配列番号2)をコードするヒトGCGR cDNAを、pDC312発現ベクター内にサブクローニングし、そしてAM1D細胞内にトランスフェクトした。選択および単細胞クローニング後に、一つのクローン(クローン1004)を、受容体の細胞表面での発現に基づいてさらに特徴付けるために選択した。飽和結合解析によって測定された受容体発現レベル(Bmax)は、11.4pmoleグルカゴン受容体/mg膜タンパク質であった。
【0204】
加えて、N末端GCGR(配列番号2のアミノ酸1〜142)をコードするcDNA配列を、ヒトIgG1 FcのcDNAとインフレームで融合させ、そしてpDsRa21ベクター(米国2005/0118643に記載)内にサブクローニングした。安定な細胞プールを、AM1D細胞へのトランスフェクション後に選択した。GCGR N末端Fcを、組換えプロテインA高流速カラム(GEヘルスケア社)に続き、ソース30Q陰イオン交換カラム(GEヘルスケア社)によって、濃縮条件培地から精製した。
【0205】
実施例2:マウス抗ヒトハイブリドーマの作出
上述のクローン1004から得た粗細胞膜画分を、C57BL/6もしくはDBF1マウス(ジャクソン・ラボラトリーズ、バーハーバー、メイン州)の慣用の免疫およびRIMMS免疫(複数部位注射による急速免疫)双方のための抗原として用いた。数巡の免疫後に、リンパ球をリンパ節(RIMMS免疫)または脾臓(慣用の免疫)から放出させ、そして、マウス骨髄腫細胞Sp2/0−Ag14(ATCC)と電気融合によって融合させた。融合細胞を、96ウェルプレートに、10%FBS、5%オリジーン・クローニングファクター(バイオベリス(商標))、1xペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン(ギブコ社)および1xOPI(オキサロ酢酸、ピルビン酸およびインスリン、シグマ社)を添加されたBD培地100μl中に2x10細胞/ウェルの密度で蒔いた。24時間培養した後に、100μlの2xHAT(0.1mMヒポキサンチン、0.16mMチミジン、4mMアミノプテリン、シグマ社)を各ウェルに加えた。培地を、融合後7日および10日にそれぞれ変え、そして、条件培地を二回目の培地交換後2日に回収し、そして、以下に記載の第一スクリーニングのために送った。
【0206】
ハイブリドーマ上清を、1004細胞、および並列して親AM1D細胞を用いた、細胞系ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)またはFMAT(蛍光微量アッセイテクノロジー)にかけた。GCGR特異抗体を含有するハイブリドーマクローンを、1004に特異的結合するが、しかしAM1Dには特異的結合しないことに基づいて、選択した。
【0207】
モノクローナル抗体を、以下に記載の増殖させたハイブリドーマ培養物から部分的に精製し、そして、以下に記載のように、結合(ELISAもしくはFMAT)アッセイおよび機能細胞系アッセイを用いて、グルカゴンにより誘導されるcAMP産生の中和についてアッセイした。陽性クローンを増殖させ、単細胞クローニングし、そして多数のアッセイによりさらに確認した。
【0208】
実施例3:完全ヒト抗体の作出
粗細胞膜調製物由来である、ヒトGCGRを高発現する細胞株1004を、例えば米国05/0118643およびWO 05/694879、WO 98/24838、WO 00/76310および米国特許7,064,244(該文献はすべて、参照によって本明細書に援用される)に記載されているプロトコールにしたがって、IgG2およびIgG4ゼノマウス(登録商標)(アブジェニクス社、現在はアムジェンInc.)を免疫するための抗原として用いた。合計2回のキャンペーンを行った。最初の免疫後に、それに続く数巡の追加免疫を、適切な抗体価に到達するまで施行した。適切な力価を呈した動物を同定し、そして、リンパ球を流入領域リンパ節から得て、そして必要ならば、各コホートからプールした。場合によっては、リンパ球を、適切な培地(例えば、DMEM、インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)とともに粉砕して、組織から細胞を放出させることによって、リンパ系組織から解離させた。B細胞を選択し、そして、例えば、上記の参考文献に記載のように、非分泌性骨髄腫P3X63Ag8.653細胞(アメリカン・カルチャー・タイプ・コレクション CRL1580、Kerneyら、J. Immunol. 123, 1548-1550 (1979年))などの、適切な融合パートナーと融合させた。その他の適切な融合パートナーには、Sp2/0−Ag14(ATCC)細胞が含まれる。融合細胞をペレット状にし、そして選択培地(典型的には、アザセリンおよびヒポキサンチン(hypozanthine)および他の添加物質を含有するDMEM)中に再懸濁し、20〜30分間インキュベートし、そして次いで、選択培地中に再懸濁し、そしてプレーティングする前に培養した。次いで、細胞を、クロナリティを最大限にするようにウェルに分配し、そして、標準的な技術を用いて培養した。培養後に、ハイブリドーマ上清を、FMATを用いて、豊富に含まれるグルカゴン受容体細胞クローン1004および親細胞株AM1Dに対してスクリーニングした。続いて、GCGR特異的結合剤を、FITC標識(フルオレセイン・イソチオシアネートと複合体化)抗ヒトIgG抗体を用いたFACS解析によって確認した。受容体特異的モノクローナル抗体を含有するハイブリドーマクローンを、米国2005/0118643および上記に引用した他の参考文献に記載されているプロトコールにしたがって、増殖させた。上清を、以下に記載のように、グルカゴンにより誘導されるcAMP産生の阻害について試験した。拮抗性抗体を含有するハイブリドーマクローンを、単細胞クローニングし、そしてさらなる試験に向けて増殖させた。次いで、抗体を以下に記載のように精製し、そして次いで、これらの単クローンから得た精製抗体を、中和活性について再び試験した。
【0209】
抗体を、Mabセレクト(GEヘルスケア社)樹脂を用いて、ハイブリドーマの条件培地から精製した。PBS中で平衡化した100μlのMabセレクト樹脂の1:2スラリーを、7〜10mlの条件培地(CM)に加えた。チューブを、4〜8℃にて一晩、回転器に載せた。チューブを、1000Xgにて5分間遠心分離し、そして、非結合画分をデカントした。樹脂を5mlのPBSで洗浄し、そして上記のように遠心およびデカントした。次いで、樹脂をSPIN−X、0.45μm、2mlチューブに移した。樹脂を、0.5mlのPBSでさらに二回洗浄し、そして遠心分離した。モノクローナル抗体を、0.2mlの0.1M酢酸を用いて、時折混合しながら室温で10分間インキュベートすることにより、溶出させた。チューブを遠心分離し、そして、30μlの1Mトリスバッファー Ph8.0を溶出液に加えた。精製された抗体を、4〜8℃に保管した。
【0210】
実施例4:抗体のin vitro性状解析
抗体/受容体結合アッセイ:全細胞に基づくELISA
GCGRを過剰発現しているCHO細胞(クローン1004)および親細胞(AMID)を、90%までのコンフルエンスでマイクロプレート上に蒔いた。細胞をBSAによりブロッキングし、そして、ハイブリドーマの上清とともに4℃にて90分間インキュベートした。徹底的に洗浄した後、細胞を、検出抗体であるヤギ抗ネズミIgG Fc−HRP(ピアス社)とともにインキュベートし、そして三回洗浄した。50μl/ウェルのTMB基質(KPL社)を加え、そして、室温にて5〜10分間インキュベートした。反応を、50μlの0.5N H2SO4を加えることで停止させ、そして、プレートを、スペクトラ・マックス(モレキュラー・デバイシズ社)において450nmで読み取った。GCGR膜で免疫したマウスの血清を陽性対照として用い、そして、培地のみをバックグラウンド対照として用いた。
【0211】
抗体/受容体結合アッセイ:FMAT
GCGRを過剰発現しているCHO細胞(クローン1004)を、96ウェル透明底黒色壁マイクロプレート(アプライド・バイオシステムズ社)に、サブコンフルエントな密度(50〜60%)で蒔き、そして、室温にて60分間、ハイブリドーマ上清とともにインキュベートした。細胞像および細胞に結合している蛍光の量を、8200細胞検出システム(アプライド・バイオシステムズ社)を用いて、FMAT青色標識二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG、アプライド・バイオシステムズ社)とともにインキュベートした後に、記録した。
【0212】
細胞に基づく機能アッセイ
抗グルカゴン受容体抗体を、細胞系機能アッセイにおいて、その中和活性について、安定な機能細胞株を用いて試験した。ヒト、マウス、ラット、カニクイザルまたはラット由来のGCGR cDNA(配列番号2、4、6、8をそれぞれコードするcDNA)を含有する発現コンストラクト(pcDNA3.1、インビトロジェン社)を、安定な細胞株を確立しているCHO K1細胞に、それぞれトランスフェクトした。上記の種に由来するGCGRを発現している最終的な機能細胞株を、トランスフェクトされたプールから単細胞クローニングし、そして、グルカゴンにより刺激されるcAMP産生について試験した。各個々の株のEC50に基づいて最終的なアッセイ用細胞株を選択し、そして、将来的な使用のために預託した。
【0213】
以下のプロトコールを、競合的結合アッセイにおいて、アンタゴニスト存在下での用量反応曲線のシフトに基づくSchild解析によって計算される、抗体結合のKbまたは解離定数を決定するために、用いた。Schild解析の使用については、Lazaenoら、Br. J. Pharmacol. 109(4):1110-9 (1993年)に記載されており、該文献は、参照によって本明細書に援用される。本アッセイは、小分子に向けた使用を、本明細書の抗体を用いた使用へと適応させている。ハイブリドーマ上清および精製抗体の双方を、以下のプロコールを用いて試験した。
【0214】
シスバイオ社のHTRF(均一時間分解蛍光)−cAMPダイナミックキットを、機能アッセイに用いた。結合アッセイにおいてヒトGCGRへの特異的結合が示されたクローンから得たハイブリドーマ上清を、まず、機能アッセイを用いてスクリーニングした。次いで、抗体を、ハイブリドーマ条件培地から精製し、そして、KbおよびIC50値について再試験した。グルカゴン刺激によるcAMP産生を阻害可能な、グルカゴンアンタゴニストである抗体は、本過程を用いて同定可能である。
【0215】
上述の選択された安定な機能的細胞株を、96半ウェルプレート内に蒔いた。GCGR抗体を、ウェル内に加え、そして37℃にて20分間インキュベートし、続いて、グルカゴン(カルビオケム社)を加え、そして37℃にてさらに15分間インキュベートした。溶解バッファー中のcAMP複合体を加え、そして次いで、抗cAMP−クリプテート(クリプテートと複合体化しているcAMPに対する抗体)をウェル内に加えた後、プレートを、ルビースター(BMGラボテック社の蛍光マイクロプレートリーダー)で読み取る前に、室温にて1時間インキュベートした。
【0216】
精製抗体を、機能的ヒトGCGR細胞株を用いて、最初に、2μMの濃度で試験した。細胞を50pMグルカゴンで刺激し、そして、強い阻害活性を示した抗体を、ベースラインを超える最大応答の半分を阻害するのに必要な抗体濃度として定義されるIC50を決定するために、選択した。該抗体を、1μMの濃度から試験し、そして、順次の2倍段階希釈を続いて行った。用量反応曲線をプロットし、そして、IC50を、グラフパッド・プリズム・ソフトウエアを用いて決定した。ヒトGCGRに対するIC50が低い抗体を選択し、そして、異種間の受容体活性について、適切な細胞株を用いてさらに試験した。
【0217】
【表5】

【0218】
異なる種間のヒト抗GCGR抗体の相対力価を決定するために、Schild解析を、選択されたヒト抗体のそれぞれについて行った。簡潔には、異なる濃度の抗体を、100nM〜10fMのグルカゴンの段階希釈の存在下で試験した。異なる抗体濃度でのグルカゴンの用量反応曲線を、グラフパッド・プリズム・ソフトウエアを用いてプロットした。グルカゴンの用量反応曲線の2倍右方向へのシフトを生じるのに必要な抗体濃度の負の対数であるpA2を、抗体について計算した。Schild勾配が1に等しいとき、pA2は、抗体結合の解離定数であるpKbに等しい。次いで、Kbを、pKbの逆対数によって得て、そして、種間で個々の抗体の相対力価を比較するために直接用いることが可能である。
【0219】
さらなる抗体を、ヒトGCGRに対する活性について試験した。
【0220】
【表6】

【0221】
【表7】

【0222】
実施例5:抗体の組換え発現および精製
抗体を発現する安定な細胞株の開発
PCRプライマーを、アブジェニクス社により提供された各抗体のDNA配列に基づいて、完全な軽鎖オープンリーディングフレーム、ならびに重鎖のシグナルペプチドおよび可変領域オープンリーディングフレームを捕らえるように、設計した。完全な軽鎖、ならびに重鎖のシグナルペプチドおよび可変領域に加えて、ヒトIgG2定常領域を、発現ベクターpDC323およびpDC324に、それぞれライゲーションした。
【0223】
PCRプライマーセットの例として、5'A−9軽鎖プライマーは、SalI制限酵素部位、インフレームの終止コドン、コザック配列を含有し、かつアミノ酸MDMRVPAQLL(配列番号314)をコードする、4337-12(5’-AAG CTC GAG GTC GAC TAG ACC ACC ATG GAC ATG AGG GTC CCC GCT CAG CTC CTG-3’)(配列番号313)であり、そして、3'プライマーは、NotI制限酵素部位、終止コドンを含有し、かつアミノ酸FNRGEC(配列番号316)をコードする、3250−80(5'-AAC CGT TTA AAC GCG GCC GCT CAA CAC TCT CCC CTG TTG AA-3')(配列番号315)であった。5'A−9重鎖プライマーは、SalI制限酵素部位、インフレームの終止コドン、コザック配列を含有し、かつアミノ酸MEFGLSWVF(配列番号318)をコードする、3444-34(5'-AAG CTC GAG GTC GAC TAG ACC ACC ATG GAG TTT GGG CTG AGC TGG GTT TTC-3')(配列番号317)であり、A−9重鎖可変領域/IgG2(+)鎖接合プライマー 4341-29(5'-GAC CAC GGT CAC CGT CTC CTC AGC CTC CAC CAA GGG CCC ATC GGT CTT-3')(配列番号319)、およびその相補的(−)鎖プライマー 4341-30(5'-AAG ACC GAT GGG CCC TTG GTG GAG GCT GAG GAG ACG GTG ACC GTG GTC-3’)(配列番号320)であって、アミノ酸GTTVTVSSASTKGPSVF(配列番号321)をコードし、そして、NotI制限酵素部位、終止コドンを含有し、かつアミノ酸SLSPGK(配列番号323)をコードする、3'プライマー 3250-79(5'-AAC CGT TTA AAC GCG GCC GCT CAT TTA CCC GGA GAC AGG GA-3’)(配列番号322)であった。
【0224】
抗GCGR発現プラスミドのトランスフェクションに用いられるCHO宿主細胞は、無血清培地への適応によってDXB−11細胞(Urlaubら、PNAS US 77:4126-4220,(1980年))から得られたCHO細胞株である(Rasmussenら、Cytotechnology 28:31-42, 1998年)。
【0225】
抗GCGR細胞株を、発現プラスミドpDC323−抗GCGRκおよびpDC324−[抗GCGR−IgG2]を、標準的な電気穿孔手順を用いて宿主細胞にトランスフェクトすることによって、創出した。宿主細胞株に発現プラスミドをトランスフェクトした後、プラスミドの選択および細胞の回収を可能にするため、細胞を、4%透析ウシ胎仔血清(dsもしくはdfFBS)含有選択培地中(GHTを含まない)で、2〜3週間生育させた。次いで、血清を培地から除去し、そして、細胞を−GHT選択培地中で、>85%生存率に達するまで生育させた。次いで、このトランスフェクトされた細胞プールを、150nM MTXを含有する培地中で培養した。
【0226】
細胞株クローニング
細胞バンクを、以下の手順にしたがって、選択されたクローンから作製した。クローニング工程は、クローン集団および細胞バンクが作出されたことを確実にし、商業的製造における再現性能を可能にする。増幅された抗体発現細胞プールを、96ウェルプレートにおいて限界希釈下で蒔き、そして、小規模な試験において、候補のクローンを、生育および産生性能に関して評価した。
【0227】
実施例6:ob/obマウスにおけるin vivo活性
12週齢の雄性ob/obマウス(ジャクソン・ラボラトリーズ、バーハーバー、メーン州)に、バッファーまたは抗体3もしくは4を1または3mg/kgの用量で、IP注射した(n=8〜10/群)。血糖を、0時点、ならびに抗体の単回注射後24、48、72、96、120、144、192および240時間に測定した。図1に示すように、3mg/kgの抗体用量の抗体3によって、血糖は、8日間低下した。
【0228】
同様に、12週齢の雄性ob/obマウス(ジャクソン・ラボラトリーズ、バーハーバー、メーン州)に、バッファーまたは抗体3もしくは9を1または3mg/kgの用量で、IP注射した(n=8〜10/群)。血糖を、0時点、ならびに抗体の単回注射後24、72、120、192および240時間に測定した。図2に示すように、3mg/kgの抗体用量の抗体3および9によって、血糖は、8日間低下した。
【0229】
実施例7:正常な雄カニクイザルにおけるin vivo有効性
雲南霊長類センター(雲南、中国)において、抗体A−9の単回皮下(SC)投与の有効性を、雄カニクイザルで評価した。耐糖能試験(GTT)を、サルにおいて、グルコースの経口投与による負荷後の血液からの糖クリアランスについて試験することにより、行った。GTTデータを、図3にみられるように、負荷後0、30および90分における血糖量を測定することによる糖クリアランスを表すAUC(曲線下面積)として、示す。図3に示すように、投与前GTT1を、抗体投与前24日に開始して順次施行し、投与前GTT2を、単回投与前17日に開始して順次施行した。抗体を、合計3もしくは30mg/kgの抗体A−9または対照の単回皮下(SC)注射として、30例の雄性カニクイザルに投与した。GTT3を、注射後3日にサルに施行し、GTT4を注射後8日に施行し、そして、GTT5を注射後17日に施行した。その結果、図3に示すように、抗体9の3または30mg/kgいずれかの単回SC注射は、耐糖能試験中の糖クリアランスを改善した。
【0230】
実施例8:競合的結合アッセイ
本発明の抗体のいくつかを、どの抗体が標識参照抗GCGR抗体との結合に関して交差競合するかを決定するために、競合的結合アッセイを用いて群分けした。A−3抗体を、トレーサーとしてアレクサ蛍光色素(モレキュラー・プローブス/インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)を用いて標識し、製造業者の取扱説明書にしたがって調製した。CHO細胞上に発現しているヒトGCGR受容体との結合に関して、各抗体を、1nM濃度に固定された標識A−3抗体とのその競合能について、用量範囲にわたりアッセイした(上述のように)。蛍光強度を、実施例4に記載のようにFMATによって測定し、そして、アレクサA−3と受容体との結合を阻害する程度を計算した。これらの解析に基づいて、三群の抗体に分類することが可能である。それらは、アレクサ−A−3と競合する場合における克服性、部分的克服性または非克服性抗体である。克服性抗体は、A−3と結合について競合可能であるが、非克服性抗体は、交差競合できず、そしてヒトGCGR上に異なる結合部位を有するようである。部分的克服性抗体は、A−3とある程度、結合部位が重複している。これらを、図4〜6に示す。試験され、そしてアレクサA−3と結合について競合可能であることが見いだされた抗体(克服性)は、A−11、A−2、A−7、A−12、A−17、A−6、A−8、A−15およびA−5である。試験され、そしてアレクサA−3と結合について部分的にのみ競合可能であることが見いだされた抗体(部分的克服性)は、A−16、A−14、A−20およびA−23である。試験され、そしてアレクサA−3と結合について競合できないことが見いだされた抗体(非克服性)は、A−19およびA−10である。克服性抗体の全部もしくはほとんどは、細胞系アッセイにおける阻害活性(IC50)を示すが、部分的克服性および非克服性抗体は、このアッセイを用いて活性を示さなかったことが、注目される。
【0231】
実施例9:キメラ受容体の構築
ヒトGCGRは、ヒトGLP−1受容体に最も相同であり、そして、その双方は、受容体のN末端区域に三つのシステイン対を有する、ファミリーB GPCRに属する。試験されるヒト抗体が結合するであろうヒトGCGR上の領域もしくは部位を決定し、そして、ジスルフィド結合を互いに形成する三つのシステイン対によって維持されるコンフォメーションの重要性を決定するために、ヒトGCGRとヒトGLP−1R(GLP−1R、アクセッション番号NP 002053)との複数のキメラ受容体コンストラクトを作出し、そして細胞内で発現させた。これらを、図7に示す。ヒトGCGR由来のキメラの配列を、図7に示す。例えば、図の最上部に示したキメラ4では、アミノ酸1〜142がヒトGCGR由来で、そして残りの部分がGLP−1受容体由来である。キメラ4は、三つの無傷のシステイン対を含有する。システイン対における点変異(Cys1−3、Cys2−5またはCys4−6)を、その後の三つのキメラであるキメラ−4 1CA、3CA;4 2CA、5CA、および4 4CA、6CAのそれぞれが、システイン対の一つを破壊されているように、キメラ4に導入した。キメラ−7は、ヒトGCGR由来のアミノ酸1〜79を有し;キメラ−8は、ヒトGCGR由来のアミノ酸80〜477を有し;キメラ−10は、ヒトGCGR由来のアミノ酸80〜142を有し;キメラ−15は、ヒトGCGR由来のアミノ酸80〜119を有し;キメラ−19は、ヒトGCGR由来のアミノ酸1〜119および143〜477を有する。細胞表面の受容体発現を、蛍光タンパク質のインフレームC末端融合によりモニターした。抗体と特定のキメラ受容体との結合を、アレクサ標識参照抗体A−3を用いて、FMATにより直接測定した。図7に示すように、ここで試験したすべての抗体は、結合するために、ヒトGCGRのN末端(アミノ酸1〜142)を必要とする。抗体A−18、A−21およびA−10は、すべての三つのシステイン対が無傷のキメラ−4のみとの結合を呈した点において、同様に挙動した。これは、これらの抗体に対するコンフォメーショナルエピトープを示している。抗体A−3に関しては、ヒトGCGRのアミノ酸配列80〜119が、抗体の結合に必要かつ十分である。加えて、ヒトGCGRのアミノ酸120〜142は、A−3の結合に必要とされないことが示された。さらに、抗体A−3に関しては、コンフォメーションは、第一のシステイン対によってではなく、第二および第三のシステイン対(Cys2−5、Cys4−6)によって維持される。したがって、抗体A−3、およびA−3と交差反応するすべての抗体がヒトGCGRと結合する受容体の区域は、ヒトGCGRのアミノ酸Ser80〜Ser119の内にある。
【0232】
本明細書に引用される各参考文献の全体は、それが教示するすべてのものに関して、およびすべての目的に関して、参照によって援用される。
本発明は、本明細書に記載した特定の実施態様によって範囲を限定されず、本発明の個々の側面の単なる例示として意図され、かつ、機能的に同等の方法および構成成分は発明である。実際に、本明細書に示し、かつ記載したものに加えて、本発明の種々の修飾は、前述の記載および付随する図面から、当業者に明白となるであろう。このような修飾は、添付した特許請求の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
a.以下からなる群より選択される配列を含んでなる軽鎖CDR3:
i.L1〜L23の軽鎖CDR3配列(配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97、100)からなる群より選択されるCDR3配列と合計3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR3配列;
ii.L Q X21 N S X22 P L T(配列番号208);
iii.Q A W D S X23 T V X24(配列番号209);
b.以下からなる群より選択される配列を含んでなる重鎖CDR3配列:
i.H1〜H23の重鎖CDR3配列(配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199)からなる群より選択されるCDR3配列と合計4を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR3配列;
ii.E X252627 Y D I L T G Y X2829 Y Y G X30 D V(配列番号210);
iii.X31 G G G F D Y(配列番号211);あるいは、
c.(a)の軽鎖CDR配列および(b)の重鎖CDR配列;
(ここで、X21はヒスチジン残基またはグルタミン残基であり、
22はアスパラギン残基、アスパラギン酸残基またはチロシン残基であり、
23はアスパラギン残基またはセリン残基であり、
24はイソロイシン残基またはバリン残基であり、
25はリジン残基、グルタミン酸残基またはプロリン残基であり、
26はアスパラギン酸残基、スレオニン残基、グルタミン残基またはプロリン残基であり、
27はヒスチジン残基またはチロシン残基であり、
28はアスパラギン残基、ヒスチジン残基、アスパラギン酸残基またはフェニルアラニン残基であり、
29はチロシン残基、ヒスチジン残基またはアスパラギン残基であり、
30はロイシン残基またはメチオニン残基であり、
31はロイシン残基またはメチオニン残基である)
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなる単離された抗原結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質であって、以下:
a.以下からなる群より選択される配列を含んでなる軽鎖CDR1配列:
i.L1〜L23のCDR1配列(配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR1;
ii.R S XQ S L L D XD G T Y T L D(配列番号200);
iii.R A S Q XI R N D XG(配列番号201);および、
iv.S G D K L G D K Y XC(配列番号202);
(ここで、Xはセリン残基またはスレオニン残基であり、
はアルギニン残基またはセリン残基であり、
はアスパラギン酸残基またはアラニン残基であり、
はグリシン残基またはアスパラギン酸残基であり、
はロイシン残基またはフェニルアラニン残基であり、
はバリン残基またはアラニン残基である)
b.以下からなる群より選択される軽鎖CDR2配列:
i.L1〜L23のCDR2配列(配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる軽鎖CDR2;
ii.A A S S L X S(配列番号204);および、
iii.Q X1011 K R P S(配列番号205);
(ここで、Xはグルタミン残基またはグルタミン酸残基であり、
10はセリン残基またはスレオニン残基であり、
11はスレオニン残基またはセリン残基である)
c.以下からなる群より選択される重鎖CDR1配列:
i.H1〜H23のCDR1配列(配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122)と2を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖CDR1;
ii.XY XM H(配列番号203)(ここで、Xはセリン残基またはスレオニン残基であり、Xはグリシン残基またはアスパラギン酸残基である);ならびに、
d.以下からなる群より選択される重鎖CDR2:
i.H1〜H23のCDR2配列(配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163)と3を超えないアミノ酸付加、置換および/または欠失により異なる重鎖配列;
ii.X12 I W X13 D G S X14 K Y Y X15 D S V K G(配列番号206);
iii.X16 I S X17 D G S X18 K Y X19 20 D S V K G(配列番号207);
(ここで、X12はセリン残基、フェニルアラニン残基、バリン残基またはグルタミン酸残基であり、
13はチロシン残基またはアスパラギン残基であり、
14はアスパラギン残基またはグルタミン酸残基であり、
15はバリン残基またはアラニン残基であり、
16はバリン残基またはフェニルアラニン残基であり、
17はヒスチジン残基、アスパラギン酸残基またはチロシン残基であり、
18はアスパラギン酸残基、アスパラギン残基またはヒスチジン残基であり、
19はチロシン残基またはセリン残基であり、
20はアラニン残基またはグリシン残基である)
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなり、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する、前記抗原結合タンパク質。
【請求項3】
請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質であって、以下:
a.以下を含んでなる軽鎖可変ドメイン:
i.配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および41から選択される軽鎖CDR1配列;
ii.配列番号43、45、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70から選択される軽鎖CDR2配列;
iii.配列番号72、74、76、78、80、83、85、87、89、91、93、95、97および100から選択される軽鎖CDR3配列;ならびに、
b.以下を含んでなる重鎖可変ドメイン:
i.配列番号102、104、106、108、111、113、115、117、118、120および122から選択される重鎖CDR1配列;
ii.配列番号124、126、128、130、132、134、136、138、140、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161および163から選択される重鎖CDR2配列;ならびに
iii.配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197および199から選択される重鎖CDR3配列;あるいは、
c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン;
のいずれかを含んでなり、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する、前記抗原結合タンパク質。
【請求項4】
以下:
a.以下からなる群より選択される軽鎖可変ドメイン配列:
i.L1〜L23から選択される軽鎖可変ドメイン配列(配列番号213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255および257)と少なくとも80%同一の配列を有するアミノ酸;
ii.L1〜L23の軽鎖可変ドメイン配列をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254および256)と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;
iii.L1〜L23の軽鎖可変ドメイン配列からなるポリヌクレオチドである、配列番号212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254および256の相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;
b.以下からなる群より選択される重鎖可変ドメイン配列:
i.配列番号259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301および303のH1〜H23の重鎖可変ドメイン配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸の配列;
ii.H1〜H23の重鎖可変ドメイン配列をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300および302)と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;
iii.H1〜H23の重鎖可変ドメイン配列からなるポリヌクレオチド(配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300および302)の相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;あるいは、
c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン;
のいずれかを含んでなる,単離された抗原結合タンパク質であって、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質。
【請求項5】
請求項4に記載の単離された抗原結合タンパク質であって、以下:
a.配列番号213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255および257のL1〜L23からなる群より選択される軽鎖可変ドメイン配列;
b.配列番号259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301および303のH1〜H23からなる群より選択される重鎖可変ドメイン配列;あるいは、
c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン;
のいずれかを含んでなり、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する、前記抗原結合タンパク質。
【請求項6】
請求項5に記載の抗原結合タンパク質であって、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインが、L1H1、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22およびL23H23からなる組み合わせの群より選択され、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する、前記抗原結合タンパク質。
【請求項7】
以下:
a.配列番号305の軽鎖定常配列;
b.配列番号307の軽鎖定常配列;
c.配列番号309の重鎖定常配列;
d.配列番号305の軽鎖定常配列および配列番号309の重鎖定常配列;あるいは、
e.配列番号307の軽鎖定常配列および配列番号309の重鎖定常配列;
をさらに含んでなる、請求項6に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項8】
抗原結合タンパク質が、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体フラグメント、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fabフラグメント、F(fa')xフラグメント、ドメイン抗体、IgD抗体、IgE抗体、およびIgM抗体、およびIgG1抗体、およびIgG2抗体、およびIgG3抗体、およびIgG4抗体、および少なくとも一つのヒンジ領域内変異を有するIgG4抗体からなる群より選択される、請求項1または4に記載の単離された結合タンパク質。
【請求項9】
結合タンパク質がヒト抗体である、請求項8に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項10】
ヒトグルカゴン受容体に結合するときに:
a.参照抗体と実質的に同じKdでヒトグルカゴン受容体に結合するか;
b.前記参照抗体と実質的に同じIC50でヒトグルカゴン受容体のグルカゴン刺激を阻害するか;または、
c.ヒトグルカゴン受容体上で、前記参照抗体と結合に関して競合し;
ここで、前記参照抗体が、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L11H11、L12H12、L13H13、L15H15、L21H21およびL22H22からなる群より選択される軽鎖および重鎖可変ドメイン配列の組み合わせを含んでなる、請求項1または4に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項11】
ヒトグルカゴン受容体に結合するときに:
a.参照抗体と実質的に同じKdでヒトグルカゴン受容体に結合するか;
b.前記参照抗体と実質的に同じIC50でヒトグルカゴン受容体のグルカゴン刺激を阻害するか;または、
c.ヒトグルカゴン受容体上で、前記参照抗体と結合に関して競合し;
ここで、前記参照抗体が、A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7、A−8、A−9、A−11、A−12、A−13、A−15、A−21およびA−22からなる群より選択される、単離されたヒト抗体。
【請求項12】
ヒトグルカゴン受容体に結合するときに:
a.ヒトグルカゴン受容体のSer80〜Ser119に特異的に結合するか;
b.90nM以下のIC50値でグルカゴンのシグナル伝達を低減させるか;
c.動物モデルにおいて血糖を低下させるか;または、
d.(a)および(b)の両方;または、
e.(a)、(b)および(c)の両方である;
請求項11に記載の単離されたヒト抗体。
【請求項13】
動物がob/obマウスモデルである、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
請求項1または4に記載の抗原結合タンパク質をその医薬的に許容可能なキャリアーとの混合物中に含んでなる、医薬組成物。
【請求項15】
請求項11または12に記載のヒト抗体をその医薬的に許容可能なキャリアーとの混合物中に含んでなる、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1または5に記載の抗原結合剤の軽鎖可変ドメイン、重鎖可変ドメインまたはその両方をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸。
【請求項17】
配列が、配列番号212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254および256のL1〜L23;配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300および302のH1〜H23;または、その両方;から選択される、請求項16に記載の単離された核酸。
【請求項18】
請求項16に記載の核酸を含んでなる、組換え発現ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項20】
請求項9に記載の抗体を産生可能な、ハイブリドーマ。
【請求項21】
ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する抗原結合タンパク質の産生方法であって、請求項19に記載の宿主細胞を、抗原結合タンパク質をそれに発現させる条件下でインキュベートすることを含んでなる、前記方法。
【請求項22】
血糖を低下させるような治療を必要とする対象において血糖を低下させる方法であって、治療有効量の請求項14に記載の組成物を対象に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項23】
耐糖能を改善するような治療を必要とする対象において耐糖能を改善する方法であって、治療有効量の請求項14に記載の組成物を対象に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項24】
2型糖尿病または関連する障害を予防または治療するような治療を必要とする対象において2型糖尿病または関連する障害を予防または治療する方法であって、治療有効量の請求項14に記載の組成物を対象に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項25】
対象がヒト対象である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
関連する障害が、高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能障害、脂質代謝異常およびメタボリック症候群である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
血糖を低下させるような治療を必要とする対象において血糖を低下させる方法であって、治療有効量の請求項15に記載の組成物を対象に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項28】
耐糖能を改善するような治療を必要とする対象において耐糖能を改善する方法であって、治療有効量の請求項15に記載の組成物を対象に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項29】
2型糖尿病または関連する障害を予防または治療するような治療を必要とする対象において2型糖尿病または関連する障害を予防または治療する方法であって、治療有効量の請求項15に記載の組成物を対象に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項30】
対象がヒト対象である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
関連する障害が、高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能障害、脂質代謝異常およびメタボリック症候群である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
請求項14に記載の組成物を含んでなる、2型糖尿病の治療用キット。
【請求項33】
請求項15に記載の組成物を含んでなる、2型糖尿病の治療用キット。
【請求項34】
血糖の低減が有益である障害を治療するための薬剤の製造における、請求項14および15に記載の医薬組成物の使用。
【請求項35】
障害が、2型糖尿病、高血糖、空腹時血糖異常、耐糖能障害、脂質代謝異常およびメタボリック症候群から選択される、請求項32に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−504331(P2010−504331A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529233(P2009−529233)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/020349
【国際公開番号】WO2008/036341
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(500203709)アムジェン インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】