説明

グルカンを含む薬剤、医薬組成物、及びグルカンを使用する薬剤の製造方法。

【課題】グルカン含有細胞源からβ−(1,3)(1,6)グルカンを製造する方法及びグルカンを含有する治療組成物、および治療の用途/方法の提供。
【解決手段】本発明の方法は以下のプロセスからなる:(a)グルカンを含有する細胞からアルカリで可溶する成分を除去するためにアルカリ及び加熱で抽出し;(b)ステップ(a)の細胞を酸と加熱で酸抽出し懸濁液を作り;(c)ステップ(b)で得られた懸濁液若しくは回収された加水分解された細胞を、水と混ざらず、かつ、水よりも密度が大きい有機溶媒で抽出し、β−(1,3)(1,6)グルカン粒子を含有する水層と有機層と界面に分離し、実質的にβ−(1,3)(1,6)グルカン粒子を含有する水層のみを残す。該有機溶媒での抽出は分岐β−(1,3)(1,6)グルカンと残留している非グルカンのコンタミと会合している実質的に分岐していないβ−(1,3)グルカンとの分離を提供し;そして(d)ステップ(c)からのグルカン物質を乾燥しグルカン微粒子を作る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカンを含む薬剤、医薬組成物、及びグルカンを使用する薬剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカンは殆ど大部分、若しくは全部が単糖のD−グルコースからなるオリゴ糖、又は多糖の総称である。グルカンは、個々のグルコース単位が、親分子のあらゆる立体形と同様、非常に種々の方式で結合したり(グルコシド結合)、非常に多くの形で、自然界に広く分布している。
【0003】
本発明で代表的なグルカンというのは比較的短い多くの側鎖を有するグルコピラノース単位の直鎖多糖である。グルコシド結合の大部分(90%以上)がβ−1,3型で、一部(10%以下)がβ−1,6型の結合で;β−1,3結合は分子の骨格を形成し、β−1,6型の結合は主として側鎖にある。この型のグルカンの化学的名称はポリ−(1,3)−β−D−グルコピラノシル−(1,6)−D−グルコピラノースである。グルカンはよく知られている分子である。
【0004】
この型のグルカンは殆どの真菌(酵母や黴も含む)や一部の細菌の細胞壁に主に存在する。グルカンはマンナンやキチンのような他の多糖との組み合わせで細胞壁の形や機械的強度を保っている。これらの細胞の細胞壁の約40重量%から50重量%はグルカンから構成されている。
【0005】
真菌の細胞壁グルカンの化学構造は詳細に研究されており、参考文献に引用している以下のレビューがある−Bacon 等(1969)(非特許文献1);Manners 等(1973)(非特許文献2)。
【0006】
真菌細胞壁グルカンは産業、特に食品産業で、通常は半精製された形で、ずっと以前より用いられてきた。これらの用途には、安定剤、結合材、増量材、界面活性剤などがある。
約この40年で、グルカンは生物学的に活性で、動物の網内細胞系や免疫系に多くの作用を示すことが知られるようになってきた。これに関する著名な生物学的効果は一次的な生体防御細胞、マクロファージや好中球等の活性を非特異的に活性化する能力である。この効果はこれらの細胞の表面に提示されるβ- 1,3グルカンに対するレセプターによるものと考えられている(CzopとAusten、1985)(非特許文献3)。グルカンとレセプターとの相互作用でファゴサイトーシス(貧食作用)昂進(Riggi とDi Luzio、1961)(非特許文献4)、細胞サイズ増加(Patchen と Lotzova、1980)(非特許文献5)、細胞増殖昂進(Deimann とFahimi、1979)(非特許文献6)、接着性、化学走化性昂進(Niskanen等、1978)(非特許文献7)、及び広範囲のサイトカインやリューコトリエンの産生(Sherwood等、1986、1987)(非特許文献8,9)等の活性化効果を生じている。
【0007】
前述した真菌細胞壁グルカンに対する生物学的反応性は、以下のような多くの臨床的な効果に結びつくことが報告されている:全身性投与による真菌(Williams等、1978)(非特許文献10)、細菌(Williamsら、1983)(非特許文献11)、ウイルス(WilliamsとDi Luzio、1985)(非特許文献12)、原生動物(Cook等、1979)(非特許文献13)による感染に対する抵抗性の昂進:全身性投与、若しくは局所投与による抗腫瘍活性の昂進(Williams等、1985):全身性投与による免疫反応性の昂進(前田と千原、1973)(非特許文献14)。これらの臨床的な効果は非常に有用で、重要で真菌細胞壁グルカンを基礎にした新規な医薬品、動物及びヒト用の広い応用範囲を有する医薬品を開発する機会を提供することは容易に理解できる。
【0008】
試験した各種の真菌細胞壁グルカンの内、酵母 Saccharomyces cerevisiae が動物及びヒトの免疫活性化剤として効果及び安全性の面から受け入れられ得るものであることが証明された。以後、Saccharomyces cerevisiae(“Sc”)−グルカンという。Graminaceae 属からの他の真菌、細菌、植物由来の殆ど若しくは全部がβ−1,3結合であるグルカンは動物において免疫活性化能があることが判明したが、Sc−グルカンと比較して活性が高くはないか、若しくは匹敵する若しくはより強力な活性を有していても、通常、望ましくない高いレベルの副作用を有している。
【0009】
Sc−グルカンは動物において、いろいろな形で免疫活性化剤として生物学的に活性であることが判明している。これらには、(a)高分子量(一般に、3×106dより大)で、水に不溶性の微粒子型、若しくは(b)低分子量(一般に、500,000 dより小)で、水に分散しうるか、若しくは水に可溶なものがある。水可溶化は大きな微粒子グルカンを酵素分解や、過激なpH調製や、アミン、硫酸塩、リン酸塩等の塩とコンプレックスを作るかなどして、低分子に変える分解をすれば達成できることなどについて説明されている。高分子で微粒子型のものと比較して低分子で水溶性の型のものの主な有利な点は静注のように非経口投与経路で投与されるときにはより安全であることである。また、低分子量の方がモルベースで、生物学的利用性がより大きいともいえそうである。
【0010】
現在までに、商業ベースで、グルカンを合成することは技術的には可能ではなかった、若しくは経済的に実行しうるものではなかった。従って、治療用途の商業的な量のβ−1,3グルカンの製造には真菌、細菌、藻類、又は穀類からの抽出が必要であった。
【0011】
先行技術に関する説明
治療用のSc- グルカンの製造方法については多くの種々のプロセスが説明されている。これら種々のプロセスの共通する特徴は、第一段階での微粒子のグルカンの抽出である。グルカンが微粒子型で最終的な治療用製剤で使用されるか、又はさらに、プロセスを経て化学構造、および/若しくは立体構造の修飾により低分子量の物質(”可溶性グルカン”)にする。
【0012】
(i)微粒子型グルカン
酵母細胞全体からSc- グルカンの抽出は、細胞壁グルカンの塊が水、強アルカリ、強酸、有機溶媒に不溶で、一方、他の全ての細胞壁成分はこれらの溶液の一以上に可溶であるという事実に基づく。Sc- グルカン抽出の実質的な原理は(1)生の細胞壁をより希薄な細胞質成分から分離するようにする酵母細胞の溶解、(2)他の炭水化物(グリコーゲン、マンナン、グルコサミン)、脂質、蛋白質などの不必要な細胞壁成分を水、アルカリ、酸及び有機溶媒のいろいろな組み合わせを利用して、引き続き若しくは、付随的に行う溶解。細胞壁の3次元マトリックス構造が変化しないで、細胞壁骨格として(”細胞サック”として知られている)、そのまま残っていて、殆ど大部分がβ−(1,3)(1,6)−グルカンから構成されるようなプロセスが好ましい。細胞壁骨格は特徴的には球形で、直径約4から20μの空洞構造を有し、1,000,000から3,000,000ダルトンの分子量で水に不溶である。この最終生成物がここで云う微粒子Sc−グルカンである。
【0013】
実質的には一般的な方法のバリエーションであるが、多数の微粒子Sc−グルカンの抽出方法が知られている。
1.酵母細胞全体を強アルカリ(pH12から14)と接触させる。この効果は細胞を溶解し、脂質以外の非グルカン成分を溶解する。このステップは、開示された全プロセスでは一様に絶対的である。この接触は新鮮なバッチのアルカリが使用され、反応時間を速めるために通常は加熱して、通常2、3回繰り返される。
2.ついで、細胞は、残留している非グルカン成分を溶解するために、そしてグルコシド結合、主に側鎖のβ−1,6結合および僅かな程度グルカン骨格側鎖にあるβ−1,3結合を加水分解するために、加熱しながら酸(pH1から5)で処理される。
このステップの厳密性は、コンフォーメーション変化が極小で、側鎖の多くが保持される比較的穏和な酸処理と水溶性の形になる次のステップの間にグルカンのヘリックス構造を水和させ、全くと言ってよいほど側鎖の残らない徹底した酸処理の既知のプロセスの間で著しく異なる。
3.細胞残渣をアルコールと接触させ、さらなる溶媒、特にエーテルや石油エーテルを添加して、若しくは添加せずに脂質除去のため加熱する。
例えば、Hassid等(1941)(非特許文献15)、Manners 等(1973)(非特許文献2)、Di Luzio(1979)(非特許文献16)、および米国特許第4810694号(特許文献1)及び第4992540号(特許文献2)を参照。
微粒子グルカンの製造方法に関する先行技術の方法は一以上の点で不利なところがあると考えられる。これらには、収率が低い(例えば、約5重量%以下)、低純度(例えば、純度90%以下)、長時間かかる、著しい廃棄物の生成、及びコストが高いことなどが含まれる。
【0014】
(2)可溶性グルカン
微粒子Sc−グルカンは水和に抵抗性を示す炭水化物のしっかり結合した3重のヘリックス構造のために水に不溶である。
Sc−グルカンを溶解させることには主に2つの目的がある。最初の理由は、静注や、他の非経口投与により微粒子グルカンを注射するのと関連する栓塞の危険性である。2番目の理由はSc−グルカンの分子量を低下させることが、グルカン分子の生物学的利用性の増加による生物活性効率の上昇と関連することが合理的に期待される。
微粒子グルカンの可溶化は各種の方法で達成することができる。
【0015】
一つの方法は、グルカンを長い直鎖を短い長さに切断する特異的酵素、β−1,3−グルコシダーゼと接触させることである。この方法の不利な点は酵素分解プロセスを、制御するのが難しく、またグルカン分子を免疫増強活性を欠く単糖、若しくはオリゴ糖にまで加水分解することになることである。
他の方法としては、分子を水和させるリン酸(米国特許第4,739,046号;第4、761、402号)(特許文献3,4)、硫酸(Williams 等)、アミン(米国特許第4,707,471号)(特許文献5)等の電荷を有する基をつける方法がある。リン酸化(米国特許第4,707,471号)(特許文献5)されたSc−グルカンと、硫酸化されたSc−グルカンは免疫増強活性が保持されていて非常に水に良く溶ける。これらの方法の不利な点は、プロセス操作で複雑なステップを追加することで、それは製造コストを全体で著しくあげてしまう。
【0016】
可溶化の3番目のアプローチは順々にアルカリ/酸/アルカリ加水分解によるものである。これは、水酸化ナトリウム処理と酸洗浄を繰り返す伝統的な方法で抽出された微粒子Sc−グルカンが、引き続き75℃で3%水酸化ナトリウムで処理したときに殆ど完全に溶解したことを示した Bacon等によってはじめて示されたものである。この現象は再びPCT/米国出願第90−05041号に開示されており、それによると、微粒子Sc−グルカンはさらに酢酸か蟻酸で処理され80℃−100℃で1、2時間、1規定の水酸化ナトリウムで処理される。生成したグルカンは約5,000ダルトンから約800,000ダルトンまで大きさの異なるグルカン分子の存在と関連する高い多分散性指数を有する分子量の全く不均一なものである。その特許出願では、所望する分子量のグルカン分子を産生された不均一の分子量を有するものから単離するために、加水分解されたグルカンをダイアフィルトレーションでさらに精製すること、およびコンタミしている蛋白質様成分および脂質を除去するための各種の樹脂の利用について開示している。
【特許文献1】米国特許第4,810,694号
【特許文献2】米国特許第4,992,540号
【特許文献3】米国特許第4,739,046号
【特許文献4】米国特許第4,761,402号
【特許文献5】米国特許第4,707,471号
【特許文献6】PCT/米国特許出願90/05041号
【特許文献7】米国特許第5028703号
【特許文献8】米国特許第5250436号
【特許文献9】米国特許第5082936号
【非特許文献1】Bacon J S D, Farmer, V C, Jones D, Talylor I F, “The gulcancomponent of the cell wall of baker’yeast (Saccharomyces cerevisiae) considered in relation to its ultrastructure”, Biochem. J., 114, 557-567 (1969)
【非特許文献2】Manners D J, Masson A J, Patterson J C, “The structure of a beta-(1,3)-D-grucan from yeast cell walls”, Biochem J, 135, 19-30 (1973)
【非特許文献3】Czop J K, Austen K F, “Generation of leukotrienes by human monocytes upon stimulation of their beta-glucan receptor during phagocytosis”, Proceedings of the National Academy of Sciences (USA), 82, 2751-2755 (1985)
【非特許文献4】Riggi S, Di Luzio N R, “Indentification of a RE stimulating agent in zymosan”, American Journal of Physiology 200, 297-300 (1961)
【非特許文献5】Patchen, Lotzova, Experimental Haematology 8, 409-422 (1980)
【非特許文献6】Deimann, Fahimi, Journal of Experimental Medicine, 149, 883-897 (1979)
【非特許文献7】Niskanen, Cancer Reseach, 38, 1406-1409 (1978)
【非特許文献8】Sherwood E R, Williams D L, Di Luzio N R, “Glucan stimulates production of antitumor cytolytic/cytostatic Factor(s) by macrophages”, Journal of Bilogical Response Modifiers, 5, 504-526 (1986)
【非特許文献9】Sherwood E R, Williams D L, McNamee R B, Jones E L, Browder I W, Di Luzio N R, “Enhancement of interleukin-1 and interleukin-2 production by solble glucan”, International Juornal of Immunopharmacology, 9, 261-267 (1987)
【非特許文献10】Williams D L, Cook J A, Hoffmann E O, Di Luzio N R, “Protective effect of gulcan in experimentally induced candidiasis”, Journal of the Reticuloendothelial Sciety 23, 479-490 (1978)
【非特許文献11】Williams D L, BrouderI W, Di Luzio N R, “Immunotherapeutic modification of E. coli-induced experimental peritonitis and bacteremia by glucan”, Surgery, 93, 448-454 (1983)
【非特許文献12】Williams D L, Sherwood E R, McNamee R B, Jones E L, Di Luzio N R, “Therapeutic efficacy of glucan in a murine model of hepatic metastatic disease”, Hepatology, 5, 198-206 (1985)
【非特許文献13】Cook J A, Holbrook T W, Parker B W, “Viscerral leishmaniasis in mice: protective effect of glucan”. Journal of the Reticuloendothelial Society, 27, 567-573 (1980)
【非特許文献14】Maeda Y Y, Chihara G, “The effects of neonatal thymectomy on the antitumour activity of lentinan, carboxymethylpachymaran and zymosan, and their effects on various immune resonses”, International Journal of Cancer, 11, 153-161 (1973)
【非特許文献15】Hassid WZ, Joslyn MA, McCready RM, “The molecular constitution of an insoluble polysaccharide from yeast, Saccharomyces cerevisiae”, Journal of the American Chemical Society, 63, 295-298 (1941)
【非特許文献16】Di Luzio N R. Williams D L, McNamee R B, Edwards B F, Kitahama A, “Comparative tumor-inhibitory and antibacterial activity of soluble and particulate gulcan”, Int J Cancer, 24, 773-779 (1979)
【非特許文献17】Bak B, Jensen KS, “Standardization of Tibial Fractures in the Rat” Bone, 13,289-295 (1992)
【非特許文献18】Canfield PJ, Greenoak GE, Reeve VE, Gallagher CH, “Characterisationof UV induced keratoancanthonma-like lesion in HRA/Skh-1 mice and their comparison with keratoacanthomas in man”, Pathology, 17(4), 613-616 (1985)
【非特許文献19】Kelly G E, Lui. W, “Accelerated wound healing in normal and immunosuppressed animals”, Norvet Reseach Pty Ltd, 1994, Report G94003.
【非特許文献20】Mansell P W A. Ichinose H, Reed R J, Krementz E T, McNamee R, Di Luzio N R, “Macrophage-mediated destruction of human malignant cell in vivo”, Journal of the National Cancer Institute, 54, 571-580 (1980)
【非特許文献21】Sherwood E R, Williams D L, Di Luzio N R, “Glucan stimulates production of antitumor cytolytic/cytostatic Factor(s) by macrophages”, Journal of Bilogical Resonse Modifiers, 5, 504-526 (1986)
【非特許文献22】Williams D L, Pretus H A, McNamee R B, Jones E L, Ensley H E, Browder I W, Di Luzio N R, “Development, physicochemical characterization and preclinical efficacy evaluation of a water soluble glucan sulfate derived from Saccharomyces cerevisiae” Immunopharmacol, 22, 139-156 (1991)
【非特許文献23】Williams D L, McNamee R B, Pretus H A, Ensley H E, Browder I W, Di Luzio N R, “A method for the solublization of a (1,3)-beta-D-glucan isolated from Saccharomyces cerevisiae”, Carbohydrate Reseach, 219, 203-213 (1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、微粒子型であろうが、非粒子型(可溶性)であろうが、グルカンの製造に関する限り、従来技術のグルカン製造プロセスの問題/欠陥の一以上を克服すること追求した。
【0018】
さらに、後記するように、本発明は、本発明方法または従来の他の方法で生産されるグルカンの新規な治療用途にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の要約
本発明の第1の特徴によれば、以下のステップからなるグルカン含有の細胞源からβ−(1,3)(1,6)−グルカンの製造方法を提供する:
(a)グルカン含有細胞を、アルカリ可溶性成分を除去するためにアルカリ及び加熱で抽出し;
(b)ステップ(a)で得られた細胞を懸濁液になるよう、酸と加熱で酸抽出し;
(c)ステップ(b)で得られた懸濁液または加水分解され回収された細胞体を、水と混ざらないで水よりも密度の高い有機溶媒で抽出し、できた水層、溶媒含有層、界面を分離して、水に懸濁しているグルカン微粒子物質を含有する水層のみを実質的に残す。即ち、この有機溶媒での抽出は分岐したβ−(1,3)(1,6)−グルカンと、残渣の非グルカンコンタミと会合している実質的に非分岐のβ−(1、3)グルカンからなるグルカンサブグループを得る。
(d)ステップ(c)からのグルカン物質を乾燥し粒子型グルカンを作る。
【0020】
可溶性グルカンを製造するために、上記プロセス(d)は省略され、グルカン微粒子物質を含有する溶媒抽出された水層のpHを、グルカン粒子を可溶化するために酸性のpHから、塩基性のpHに上昇させる。このステップは約60℃以下の温度で、好ましくは約2℃から25℃の範囲で、さらに好ましくは、約2℃から約8℃の範囲でグルカン粒子の可溶化が達成されるのに十分な時間行う。また別の方法では、可溶性グルカンはステップ(d)のグルカン粒子を、グルカン粒子の可溶化ができるようにアルカリ水溶液中に懸濁させることによっても製造することができる。温度条件は上記と同じである。
【0021】
溶解したグルカンのpHは医薬品製剤を製造のために必要に応じて調製できる。
本発明の他の特徴は、皮膚潰瘍や骨折の治療、若しくは移植される整形外科具の固定強化のため、若しくは紫外線誘発の皮膚障害の予防/治療の医薬の製造にグルカンを用いることに向けられている。
【0022】
本発明のさらなる局面は皮膚潰瘍や骨折の治療、移植される整形外科具の固定強化、若しくは紫外線誘発の皮膚障害の予防/治療のための方法に関するもので、本発明のグルカンを薬理学的に、若しくは動物薬学的に許容できる担体、若しくは賦形剤とともに投与することからなる。
【0023】
本発明の他の特徴は、任意に一以上の薬理学的に許容できる担体若しくは賦形剤とともにグルカンからなる、皮膚潰瘍や骨折の治療、若しくは移植される整形外科具の固定強化、若しくは紫外線誘発皮膚障害の予防/治療の医薬品に関する。
【0024】
発明の詳細な説明 以下に詳細に説明するプロセスは細胞体グルカン源からβ−(1,3)(1,6)−グルカンの製造に関し、それは各種の医薬用目的に適切である。本発明の最初の特徴はグルカン含有細胞源からグルカンを製造するプロセスに関する。本プロセスは以下のステップよりなる:
(a)グルカン含有細胞をアルカリ可溶性成分を除去するためにアルカリ及び加熱で抽出し;
(b)ステップ(a)で得られた細胞を懸濁液になるよう、酸と加熱で酸抽出し;
(c)ステップ(b)で得られた懸濁液または加水分解され回収された細胞体を、水と混ざらないで、かつ、水よりも密度の高い有機溶媒で抽出し、できた水層、溶媒含有層、界面を分離して、水に懸濁しているグルカン微粒子物質を含有する水層のみを実質的に残す。即ち、この有機溶媒での抽出は分岐したβ−(1、3)(1、6)−グルカンと、残渣の非グルカンコンタミと会合している実質的に非分岐のβ−(1、3)グルカンからなるグルカンサブグループを得る。
(d)ステップ(c)からのグルカン物質を乾燥し粒子型グルカンを作る。
【0025】
一般に酵母細胞、特に酵母 Saccharomyces cerevisiae は、本発明の好ましいグルカン源であるが、本発明で開示している性質を有するグルカン含有の真菌、若しくは細菌も用いることができる。広範囲の他の酵母種や真菌種を本プロセスで用いることができ、以下のタイプも例として含まれる:Sclerotium spp,Shizophyllum spp,Pichia spp,Hansenula spp,Candida spp,Saccharomyces spp,Torulopsis.
Saccharomyces cerevisiaeの場合は、酵母は特にSc−グルカンの抽出目的に増殖することができ、パン製造業で製造される酵母や、醸造業界からの使用済みの酵母のような商業的な原料から入手できる。
【0026】
本発明のプロセスによる最初のステップは、細胞質成分やマンナン、キチン(グルコサミン)、蛋白質やグリコーゲンを含む主要な細胞壁成分の溶解や加水分解をさせるのに酵母細胞をアルカリと加熱で処理することが含まれる。この処理(抽出または加水分解とも呼ぶことがある)は、非グルカン成分が主にグルカンを含有する生の細胞壁から遠心分離などのプロセスで容易に分離できるように非グルカン成分を水層に放出する。非グルカン成分の除去の程度は、米国特許第4992540号(特許文献2)で開示されているような標準的な分析技術で容易に分析することができる。
【0027】
アルカリ抽出のステップは約2%から6%(w/v)の濃度、例えば3%から4%(w/v)の水酸化物水溶液中で行われる。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムは入手容易性と相対的低コストのために特に利用し易い。しかしながら、適切な溶解特性を有する他の強アルカリ溶液、例えば水酸化カルシウム、若しくは水酸化リチウムも用いることができる。酵母はアルカリに溶解する非グルカン成分を除去するために、十分な時間アルカリと接触させる。非グルカン成分は温度が高いほど速く除去される。15分から16時間の処理時間が必要であるが分解は約50℃から約120℃の温度で行うことができる。アルカリ処理の間、細胞溶解や非グルカン成分の溶解のプロセスは酵母懸濁液を適当な方法、例えば、撹拌装置や乳化ポンプなどを用いて激しく混合することにより容易にできる。
新鮮なバッチのアルカリ溶液で酵母細胞を繰り返し処理することは、破砕した酵母細胞から非グルカン成分、特に蛋白質を除去するのに役立つ。アルカリ処理の回数は本発明では制限されない。しかしながら、このプロセスは、細胞が溶解され非グルカンでアルカリに溶解する成分の殆どが抽出されるまで繰り返されるべきである。これは、可視的、若しくは化学分析(例えば、ガスクロマトグラフィー/質量スペクトロメトリーなど)で確認できる。低強度の水酸化物溶液や低温度のアルカリ処理を用いると、一般的には別々のアルカリ処理が、さらに回数多く必要とされる。例えば、アルカリ処理は1回から6回まで繰り返してもよい。
【0028】
本発明のアルカリ分解相に関連する一つの実施例では、乾燥された市販のSaccharomyces cerevisiae を、80℃から100℃の温度で、3%から4%の強度の水酸化ナトリウム溶液に10%(w/v)になるよう縣濁する。代表的には、3回のアルカリ処理が高純度の製品をつくるのに必要であることが分かった。各別々のアルカリ処理の後に、破砕した酵母細胞と上清溶液とを例えば濾過、遠心分離、クロマトグラフィーなどを含む当業者に既知の方法で分離する。これらの分離技術は単に例示されるのみで本発明のプロセスを限定するものではない。
【0029】
本プロセスの次のステップはアルカリ不溶の細胞壁サックを、一般にはpH2.0から6まで、好ましくは3.5から4.5の範囲での酸処理を含む。この手順はマンナンやキチン等の残留コンタミを溶解する。しかしながら、このステップの主要な理由はグルカン分子にコンフォーメーション変化を誘導することである(表1)。主要な変化はβ−1,6側鎖の分岐の数の減少である。そのままの細胞壁Sc−グルカンでは、グルコシド結合の割合が約90%のβ−1,3で10%のβ−1,6である。酸加水分解で酸処理の厳しさ;強力な酸処理(例えば、pH2以下、約100℃以上の温度のような低pH,高温)で全ての側鎖分岐を効果的に除去することができるが、一方、より激しくない処理ではβ−1,6結合が約1%から8%の割合で残る。
【0030】
【表1】

【0031】
β−1,3−グルカン分子の分岐の程度が生物学的機能に重要な影響を及ぼすことについては当業者には知られている。例えばレンチナンのように高度に分岐したグルカンは免疫増強効果に加えて、前炎症性効果を誘導しその前炎症性効果は臨床での副作用と関連する可能性があることは知られている;米国特許第4,739,046号、4,761,402号及び4,707,471号(特許文献3,4,5)に開示されているような分岐していないSc−グルカンや、PCT/米国特許出願90/05041号(特許文献6)に詳細に開示されている分岐が減少しているSc−グルカンは前炎症性効果がない、若しくは著しく減少することができ、従って、臨床的にはより望ましい治療薬であることは知られている。しかしながらこれまでに、特に免疫増強能力や組織修復の促進能力について構造と機能との相関は特定されていない。本発明者等は動物の外傷治癒モデルで分岐の異なるグルカン製剤の効果を比較して最適な分岐の程度を特定した。例えば、実験用ラットのような実験動物を用いて外科的な全厚さの皮膚切開を作ることができる。グルカンを傷ができた時、直ぐに傷口に適用し、その傷の治癒過程をみる。7日後、傷の治癒程度を付着してきている傷の端を分けるのに必要な力量(’傷破壊強度’ と呼ぶ)を測定することにより検査した。この実験結果は表2にまとめられている。分岐の程度はβ−1,3:β−1,6βの比率について測定し、生のグルカンの低割合(90%:10%)のものも、高割合(100%:0%)のものも、どちらも適度に分岐したグルカン(98%:2%、若しくは96%:4%)より、皮膚の傷の修復促進には効果が低かった。
【0032】
【表2】

【0033】
1mgのグルカンが手術時に5cm長さの全厚さの切開傷に対してオイルを基材として適用された。
酸処理ステップで用いられる酸の性質は一般的に重要ではない。好ましくは、酸は生成する酵母縣濁液のpHがpH約2からpH約6、好ましくはpH約3.5からpH約4.5の範囲になるように用いられる。適切な酸としては、塩酸、酢酸、蟻酸、リン酸等がある。酸加水分解のプロセスは加熱によって加速される。
酸処理の程度は、即ちpH,温度、時間はグルカン生成物に求められるβ−1,6含有量の程度に依存する。一般に2%から4%のβ−1,6結合を含有するグルカン生成物を製造するために溶液のpHは約2から6の範囲、温度は通常約50℃と100℃の間で、反応時間は約15分から約16時間の間で選択される。加水分解されたグルカン中のβ−1,6結合の程度は核磁気共鳴(NMR)分析のような標準的な分析技術で容易に定量することができる。
【0034】
酸処理工程の後では、酵母細胞が殆ど単離された細胞壁サックの形で存在するSc−グルカン製造の先行技術での方法では、酸抽出されたグルカンを含有する細胞(細胞サック)を、残留する非グルカン成分を選択的に溶解するためにアルコール、石油エーテルやジエチルエーテルで処理することが提案されている。反対に、酸性化されたグルカンを含有する細胞を水と混じらない、即ち、1g/cm3以上の密度を持つ有機溶媒で抽出すると特別に、思いがけず有利であることが本発明者らによって判明した。詳細に云うと、そのような溶媒での単回の抽出ステップでグルカンと非グルカン成分との精密な区別ができ、β−1,3とβ−1,6結合(水層に分配される)の両者を含み分岐したグルカンからなり、実質的に非グルカン成分のない(表3)グルカンサブグループと、実質的に非分岐のβ−1,3結合のみからなり、残留するキチンや蛋白質のように非グルカン膜成分と会合したグルカン(水層と有機層の界面に分配する)との分離が容易になる。
【0035】
【表3】

【0036】
水相に分配する分岐したβ−(1,3)(1,6)グルカンサブグループは非分岐β−1,3グルカンを、わずか、若しくは痕跡程度の量(約5%以下、通常約2%以下、より詳細には約0.5%以下(w/w))と痕跡程度の量の非グルカンを含有する。このように、他のグルカンや非グルカン成分を含まない実質的に分岐したβ−(1,3)(1,6)グルカンとみなされる。非グルカンコンタミと会合し、水層と有機層と界面に分配する非分岐のβ−(1,3)(1,6)グルカンサブグループは容易に除去できる。それは、非常に僅かの、若しくは痕跡程度の量の(一般的には約1.3%以下(w/w)以下)β−(1,3)(1,6)グルカンを含み実質的には非分岐と考えられる。
【0037】
非分岐β−(1,3)グルカンはアルカリ/酸/溶媒処理後には全グルカン量の20%(w/w)まで含有し、残りは分岐したβ−(1,3)(1,6)グルカンからなる。β−(1,3)(1,6)グルカンは表4に示されるように創傷治癒に関しては最も生物学的活性の高い型である。
【0038】
【表4】

【0039】
このように、特に皮膚創傷治癒の促進の効果および高純度のグルカン分子の生産に関して二つのグルカンサブグループをクロロフォルム(密度が1g/cm3以上の代表的な溶媒)抽出で分離するところに非常に高い潜在能力のある治療上の有用性があることが容易に理解できる。
【0040】
使用できる溶媒としてクロロフォルム(δ=1.48g/cm3)、メチルクロロフォルム(δ=1.33)、テトラクロロエタン(δ=1.5953g/cm3)、ジクロロメタン(δ=1.325)、四塩化炭素(δ=1.595g/cm3)がある。好ましくは、溶媒は残渣の除去が容易になるよう揮発性のものがよい。特にクロロフォルムが好ましい。
これ以降の説明の簡便さのため好ましい溶媒のクロロフォルムの使用について言及する。本発明はそれに限定されるわけでなく、望まれる密度を有する溶媒であれば本発明で使用できる。
【0041】
クロロフォルム抽出は以下のような方式で行うことができる。微粒子グルカン含有の酸性化された水性懸濁液を直接クロロフォルムと、クロロフォルム:水性の細胞懸濁液のおよその比率が1:10と5:1の間、好ましくは1:4で反応させることができる。酵母細胞は水性懸濁液中の約1%から約90%(容量で)、例えば約30%と約50%からなる。クロロフォルムでの抽出プロセスは加熱によっては容易にならず、好ましくは室温で行うのがよいことが判明した。クロロフォルム層と水層を撹拌装置や乳化ポンプ等を使用するの標準的な方法で、クロロフォルムミセルと酵母細胞が効率よく接触するように、激しく混合する。混合時間は懸濁液の容量と、撹拌、若しくは混合装置の撹拌、若しくは混合能力とで決まる。例えば、ポンプ容量が100L/分の乳化ポンプでは500Lの懸濁液を約10分間混合することが必要とされるであろう。
【0042】
クロロフォルム抽出ステップの注目すべき特徴は酵母物質の色(明灰色から白色へ転換する)、及び形(懸濁液中では、一般に、細胞の特性(細胞サック)を有する物質から柔毛のような粒子の物質に変換する)の両方の性質について変化するということである。クロロフォルム(及び上述したような要求される密度を有する他の有機溶媒)処理で観察される漂白化及び柔毛化の効果は1g/cm3より低い密度を有する他の有機溶媒では観察されない。これについて試験した溶媒はアセトン、ジエチルエーテル、石油エーテル、塩化メチレン、酢酸エチル、エタノール、メタノール及びブタノールである。
【0043】
クロロフォルム抽出に引き続き約5分から10分混合し、懸濁液を静置すると早く三つの明確な層、即ち、下の有機層、上の水層及びこれらの二つの層の間にある灰色の界面に分離するこれらの3層はよく区別され、容易に分離できる。有機層は少し不透明でグルカンは含んでいないが脂質を含んでいる。水相は水に懸濁したグルカン粒子を含んでいる。界面はグルカン、蛋白質、キチン及び脂質を含んだ混合物である。NMRで分析すると、水相中のグルカンはβ−1,3及びβ−1,6グルコシド結合を約95%から98%:2%から5%に比率で含有している混合物である。界面相のグルカンは非分岐β−1、3グルコシド結合が殆どである(一般に98から100%のβ−1,3:0%から2%のβ−1,6)。分岐β−1,3グルカン、非分岐グルカン及び非グルカンコンタミの分離は達成される。
【0044】
非グルカンコンタミのレベルを基礎にしたグルカン粒子の分離は、上述の密度を有する溶媒でのみでき、密度が1g/cm3より低い通常利用する有機溶媒ではできないことが分かった。特定の理論に拘るわけではないが、クロロフォルムによる例に示されるようなグルカン種の分離における精密な区別は溶媒の脂質的な性質とその特定の密度との組み合わせによるものかも知れない。これにより、他の炭水化物および非炭水化物と会合している細胞壁グルカンの重量による微分的な分離ができる可能性がある。この界面層にあるグルカン及び非グルカン分子はクロロフォルムを蒸発させ、引き続き残渣をエーテルおよびエタノール処理して非グルカン成分を溶解させ実質的に非分岐β−1,3グルカンになるように分離することができる。
【0045】
特定の溶媒処理ステップの後に集められた水性グルカン懸濁液は沸騰させることにより残留する溶媒を簡単に完全に除去でき、グルカン粒子は標準的な方法、例えば、凍結乾燥、加熱、空気乾燥、若しくはスプレー乾燥等で乾燥することができる。最終生成物は、代表的なものとして直径約1μから10μで、平均の直径が約3μのSc−グルカン粒子を含有し灰色がかった白色で、柔毛様の粉末である(そのような粒子を微粒子グルカンと呼ぶ)。その粉末を標準的な操作(ハンマーミル、若しくはボールミル)で所望のサイズの粒子に粉砕することができる。
【0046】
非グルカン成分と会合している比較的非分岐のグルカンから、殆どが分岐しコンタミされていないグルカンの分離は、グルカン粒子がクロロフォルムのような密度が1以上の溶媒と反応する前にアルコールと反応するのでできない。これは思いがけない発見である。
粒子グルカン調製物から脂質を除去するのに有機溶媒を使用する先行技術の開示からは、大部分が非分岐でコンタミしたグルカンから大部分が分岐しコンタミしていないグルカンを分離する時に密度1以上の溶媒を使用すれば区別できる効果を予想することができない。本発明は上述の如く著しい有用性を与える一選択枝であると考えることができる。
【0047】
このプロセスで製造された微粒子Sc−グルカンはこの形で治療用として使用することができる。利用のいくらかの例として、微粒子Sc−グルカンを粉剤、クリーム、ローション等に製剤し、あるいは包帯やヒドロコロイド包帯のような傷用包帯の形で使用でき、皮膚や、骨や腸の組織修復に適用できる。当業者によく知られ、後述する従来のような局所製剤として使用できる。
【0048】
上述の本発明のプロセスは、短期間で高収率ででき、高純度で高い生物学的活性を有する生成物を生産できる(それはβ−1,3及びβ−1,6結合のみのグルカンからなっている)。表5に本発明で製造したグルカンとHassid等(1941)(非特許文献15)、Di Luzio等(1979)(非特許文献16)、Manners 等(1973)(非特許文献2)及びJamas(米国特許第4992540号)(特許文献2)の操作に従って製造したグルカンを比較したものである。
【0049】
【表5】

【0050】
本発明のプロセスは、粒子グルカンを非経口全身性用の製剤として適切な溶液、分散、コロイド、ゲルの形の低分子量のグルカン分子に変換する方法を提供する。そのような物質は細胞親和性のグルカンレセプターに対するグルカンリガンドの高い利用性で生物活性を昂進することができる。これらのグルカン製剤は可溶性型でグルカンを提供するものであり、グルカン粒子は水層に溶けて肉眼で透明な溶液になり、そうでなければ、分散液やコロイドを形成する程度まで水和するか、若しくはゲルの形である。便宜のためこれらの形を可溶性グルカンと呼ぶ。
【0051】
先行技術では、粒子グルカンをアルカリの存在下で激しい加熱処理(一般的に75℃以上)で可溶性グルカンに変換することが提案されてきた(Bacon 等、1969)。他の提案には、粒子グルカンが、アルカリ、加熱処理の前に強酸(90%蟻酸)で処理される。これらの方法ではサイズの分画がなく医薬品用途には不適切な広範囲の多分散性の不均一なグルカンの製品であり、相対的に不便であるし、高コスト、無駄な物質の生産等の多くの不利な点があり問題である。
【0052】
本発明者らにより、上述のように精製されたグルカンは低温(特に約2℃と8℃の間)でアルカリに容易に溶解することが見だされた。本発明では、そこではグルカン分配が起こり、分岐グルカンの分離、単離が行われ、酸処理された細胞壁サックを密度1以上の溶媒で溶媒抽出することにより、低温でのアルカリに可溶化される。
【0053】
可溶性グルカンを製造するために、上述のプロセスのステップ(d)は省略される。また、グルカン粒子を可溶化できるように、グルカン粒子物質を含有する溶媒抽出の水層のpHを酸性のpHから塩基性のpHにあげることができる。このステップは60℃より低い温度、好ましくは約2℃から約25℃、さらに好ましくは約2℃から約8℃でグルカン粒子を溶解させるために充分な時間行う。
【0054】
別の方法では、可溶性グルカンは、上述のステップ(d)のグルカンからグルカンを可溶化させるように、粒子グルカンをアルカリ水溶液と反応させることにより製造することができる。温度条件は、前記で特定したようにやはり60℃以下である。
【0055】
本発明の思いがけない結果は、アルカリ可溶化の後に低多分散性指数(通常、約5以下、より好ましくは約3以下)を有するグルカン素材ができることである。これは、医薬品用途には非常に好ましいことである。更に、サイズの分画ステップを必要としない。これは、前記に引用された先行技術で云われていることと反対である。
【0056】
一つの実施例には、前記のように単離された微粒子グルカンを約2%から約10%の強度(pH10とpH14.5の間)の間、好ましくは5%の強度の水酸化ナトリウム溶液に懸濁する;懸濁液は約0.1と30%(w/w)の間、例えば5%のグルカンを含有する。前記したようなこの反応の特徴は、先行技術とは反対に強酸、加熱、激しい撹拌のような前処理は不溶であることである;反応は非常に有利なことに低温(好ましくは2℃と8℃の間)で、殆ど若しくは全くかき混ぜることを必要とせず起こる;反応は通常、約1から24時間、例えば2時間である。グルカン粒子の約90%から99%のものは反応時間の間に(アルカリ加水分解を通して)懸濁低分子量分子に変換される。反応の最後で、不溶性のグルカンは標準的な方法、例えば、遠心分離若しくは濾過しで除去され、HClを添加し懸濁液のpHを(例えばpH8からpH10まで)調整する。この可溶性グルカンは医薬品製剤として使用することができる。このグルカン溶液は標準的な方法、例えば透析や限外濾過などで等張化できる。
【0057】
この方法で製造できる約60、000から250、000の間の分子量分布、平均約140、000ダルトンで、平均多分散性指数が約2.4である。グルカン分子の約70%から85%は平均分子量の15%内にあり、この結果は、異なるバッチ間でも再現性が高いことが分かった。この低い多分散性指数は比較的高い均一性を有することを示している。そのことは医薬品用途に非常に適している。この物質は高い生物学的活性、例えば組織修復の促進などがあることがわかった。ラット創傷修復モデルでこの物質は微粒子Sc−グルカンと同じモルベースで比較したら約5倍活性が高かった(表6)。
【0058】
【表6】

【0059】
その実験でグルカンは脂溶性クリーム基材で投与されたが、本物質は各種の製剤の形で局所治療薬として使用しうるし、全身性治療薬として注射できる。
強アルカリ溶液中で可溶性グルカン分子は3重ヘリックスとして主に存在するが、独立したヘリックス構造の重合は殆ど若しくは全くない。グルカン溶液のpHを低下させることはグルカン分子をゲル化させる重合の素因を作ることになる。pH約9.0では、隣接するヘリックス構造の重合が進行する。グルカン分子の重合度はグルカン溶液の濃度に直接関係することが観察された。グルカン溶液が担体ビークルに希釈され、分散されるとグルカン溶液の濃度は、強アルカリ状態(約pH13)からのpH調整の前であるが、通常10mg/mL、好ましくは、5mg/mLを越えない、重合度を最小にする濃度であることが望ましい。
【0060】
他の例ではゲルとしての最終溶液をもつことが望ましく、pH調整の前にグルカン溶液の濃度が10mg/mL(10%、w/w)以上、好ましくは15mg/mL(15%w/w)、例えば30% w/w までであれば、これは達成できる。このゲルの状態は更なる製剤化が、殆ど若しくは全く不要なので、局所投与に便利である。
【0061】
本製造プロセスは当業者の現状より著しい有用性があることが分かる。他の既知の製造プロセスと比較して本プロセスは非常に純度の高い最終生成物ができ、より短期間で製造できるし、収率も非常によく、明確な化学構造をしたグルカン分子を製造し、高等な高価な分離技術を必要とせず、所望の均一性を有する生成物を製造することができる。
これらの利点があるため、著しくコスト低減をはかることができ、より安い物質を利用できるため、動物薬、人間用医薬分野の治療薬として現在入手できる物質より、Sc−グルカンを動物薬、人間用医薬分野の治療薬に広く応用できる。
【0062】
本発明のプロセスにより製造された微粒子Sc−グルカンに適切な投与方法には、特に物質が血流に直接にはいる危険性の最小のもの、これらには例えば、経口投与、局所投与、皮内注射、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射、くも膜下腔内注射、外傷内注射、腱内注射、靭帯内注射、関節内注射、および骨、軟骨の骨折部位への投与が含まれる。治療目的は、例えば(a)前記の組織の傷の修復過程の昂進、(b)前記組織での細菌、真菌、ウイルス、原生動物による感染に対する抵抗性の昂進、(c)発ガンに対する局所免疫反応の昂進がある。
【0063】
本発明のプロセスで製造される低分子量Sc−グルカンに適切な投与方法としては前記の微粒子Sc−グルカンに挙げられたものに限定されないが、例えば;本当にこのような事情では、可溶性Sc−グルカンの使用は、微粒子Sc−グルカンより、投与の容易さ、溶液剤投与の利点、若しくはこの製剤のより大きな生物学的利用性などを実用面でのいろいろな点について考慮をすると好ましい。しかしながら、低分子量Sc−グルカンは、生の組織への浸透(例えば生の皮膚の経上皮的な浸透など)が望まれていたり、物質が手違いで血流に入ったりしたような状況では特別な意味をもつ。
【0064】
本発明のプロセスで製造されるSc−グルカンは医薬品、化粧品工業で通常使用されている製剤、例えば、軟膏、ゲル、懸濁剤、乳化剤、クリーム、ローション、粉剤、水溶液がある。グルカンは医薬品分野で既知の、一以上の担体、若しくは賦形剤とともに製剤化することができる(例えば、RemingtonsPharmaceutical Sciences,17版、Mack 出版社,Easton PA,Ed Osol等、本明細書で引用している)。担体、賦形剤の例としては、経腸(例えば経口、経直腸)、非経口(例えば、静脈内注射)、局所(例えば、局所、経皮、眼内、経鼻)投与に適したグルカンと反応しない有機、無機物質、例えば、水、水性等張食塩水、低級アルコール、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、三酢酸グリセライド、及び他の脂肪酸グリセライド、ゼラチン、大豆レシチン、ラクトース、澱粉等の炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、セルロース、ワセリンがある。
製剤は一以上の保存剤、安定剤 及び/若しくは加湿剤、乳化剤、浸透圧を調節する塩、緩衝剤、着色剤、調味剤及び/若しくは香料を含有することができる。
【0065】
グルカンは、グルカンを時間をかけて放出し貯蔵庫と考えられるものを提供する徐放性マトリックスのなかに製剤化することができる。前記プロセスの実施例により製造されるように、ゲルの形のグルカンは、局所用医薬品として直接用いたり、適切な担体及び/若しくは賦形剤と製剤化することができる。
【0066】
別の実施例では、本発明は実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなり、非分岐β−(1,3)グルカン及び非グルカン成分はないか、実質的にないグルカン組成物を意図する。“実質的にない”ということは約2%以下の非分岐β−(1、3)グルカンで、より詳しく云うと、約0.5%以下の非分岐β−(1,3)グルカンを云っていると理解される。
【0067】
これらのグルカン製剤は微粒子形、可溶化形、若しくはゲルとしてグルカンを含有するが、任意に若しくは一以上の薬理学的に許容できる担体、賦形剤と一緒に製剤できる。
治療目的のグルカン含有製剤、若しくは組成物は約0.01%から約30%(w/w)、例えば、約0.1%から約0.5%、より好ましくは、約0.2%から約1%、さらに好ましくは、約0.25%から約0.5%含有する。これらの量は治療的に有効な量と考えられる。
【0068】
本発明者等により思いがけず、Sc−グルカンは、本発明、若しくは従来技術により製造されるいずれでもよいが、これまで思いも寄らない、また説明されていない一定範囲のの治療の適用に用いることができることが判明した。これらの適用は、潰瘍や骨折の治療、紫外光で誘発される皮膚障害の治療/予防が含まれる。
【0069】
他の面からは、本発明は皮膚潰瘍や骨折の治療、整形具の固定/強化、若しくは紫外光誘発皮膚障害の予防/処置のための医薬の製造にグルカンを利用することを意図する。
さらに他の面からは、本発明は方法は皮膚潰瘍や骨折の治療、整形具の固定/強化、若しくは紫外光誘発皮膚障害の予防/処置のため治療方法に関し、それは課題のグルカンを一以上の薬理学的に、若しくは動物薬として許容できる担体、若しくは賦形剤とともに投与することが含まれる。
【0070】
さらに他の面から本発明は皮膚潰瘍の治療、骨や結合組織の修復、整形具の固定/強化、若しくは紫外光誘発皮膚障害の予防/処置のための薬剤を提供し、この薬剤はグルカンを一以上の薬理学的に、若しくは動物薬として許容できる担体、若しくは賦形剤とともに含むものである。
【0071】
これらの新規なグルカンの治療用途には、有効量のグルカンが使用される。有効量を構成するものは治療される特定の状況、投与形態などの因子に依存する。
一般に、組成物若しくは医薬はグルカンを約0.05%から約30%(w/w)、例えば、約0.1%から約5%、より好ましくは、約0.3%から約1%、さらに好ましくは、約0.25%から約0.5%含有する。
【0072】
本発明によるグルカンの特に有用な治療の適用は(例えば、前記の方法で製造された、若しくは従来技術で製造された微粒子、可溶性、ゲルの形で)、皮膚潰瘍の治療である。β−1,3−グルカンは、動物及びヒトで、全厚さの皮膚の外科的切開傷の治癒を治癒機能不全無しで、促進することは知られている。即ち、局所的に、若しくは非経口的に適用できるグルカンは正常な治癒メカニズムで表面の傷の治癒反応を加速することができる。一般に、グルカンは傷のところのマクロファージを活性化してこれを達成していると考えられる。マクロファージは線維増殖、コラーゲン産生、血管新生、上皮形成、コラーゲン架橋等の治癒カスケードの各種のステップの引き金になる広範囲のサイトカインや成長因子を産生し、治癒プロセスでは重要な細胞である。マクロファージはこのプロセスで、プロセスを開始することと、プロセスが調整され、完全な態様で進行するのを確実にするのを支援することとでこのプロセスの中心的な調整的な役割を演じている。グルカンの主要な効果は治癒カスケードの一次的な加速をすることである。
【0073】
皮膚潰瘍は、一般に、急性の外科的外傷と比較して、傷の内部で作用している全く異なる一群の生理的性質を有する慢性の外傷である。治癒プロセスの生理は急性の外科的外傷ではよく説明されているが、慢性の潰瘍では特定されていない。潰瘍はコンスタントな刺激や圧迫(例えば、褥そう性潰瘍、若しくは床ずれ)、血流供給の制限(例えば、動脈虚血や静脈血栓の患者)、感染(例えば熱帯潰瘍)、神経障害(神経栄養性潰瘍)、若しくは糖尿病等で治癒が殆どみられない。潰瘍は病態変化し、もとになる原因は知られているところであるが全く別々である。本発明により治療できるいろいろな潰瘍としては、物理的外傷(放射線、火傷、床ずれ、虫刺され)、血流障害(動脈、静脈)、感染(骨、化膿性で相乗性壊そ、梅毒、肺炎、熱帯病、真菌性病気)、新生(初発皮膚癌、転移、白血病)や神経栄養性障害(脊髄、抹消神経障害)と関連するそれらを含む。
【0074】
機能障害治癒を伴う潰瘍は表面的な傷から真皮まで達するもの、約1−2cm2の表面積から真皮、皮下組織、筋肉まで達して約500cm3の陥没、空洞ができるものまで、激しさにおいてかなり異なる。特に大きな潰瘍は衰弱させるもので、制限的で直すのに強力で費用のかかる治療が必要である。創傷敗血症、通常の創傷壊死組織切除、通常の包帯、下位性の排膿、矯正手術の制御は標準的な現在の治療のほんの数例である。しかしながら、現在できる最良の創傷の治療の実体は一様にうまく行くとは限らないし、良い結果が得られるまでに患者のコンプライアンスが低くいのに伴い著しく長時間かかり、一般的に経費がかかり潰瘍の再発の頻度が高い。Margolis(J.Dermatological Surgery (1995) 21(2) 145−148)による“圧迫性潰瘍の治療用の局所剤の有効性に関して適切に論じる少量のデータ”が注目される。
【0075】
従って、共同体の中での潰瘍の発生頻度が高く、治療の共同体へのコストに関する点から改善された治療の開発が急務であることが分かる。理想的には、そのような治療は、成功の確率が高く、使うのが簡単で、患者のコンプライアンスを容易にするために臨床的な反応が早く出て、好ましくは経費のかからないことであるべきである。
【0076】
現在の治療態様の改善になるかもしれない一様に成功する治療を生み出すのに特に困難なことはもとになる疫学的病気のプロセスと創傷内の病態生理が著しく変化している、異なる型の潰瘍の不均一さである。この変化の多様性に混同させられて、治癒反応の異なる成分が機能障害であり、従って機能障害的な治癒反応の初発の病態に貢献しているという一般的な理解の乏しさである。そこで、一つの型の潰瘍の治癒カスケードの特定の部分の機能障害のうまくいく反対論は他の潰瘍の型については必ずしもうまく行くとは限らないことである。特に、局所的創傷免疫抑制、若しくはマクロファージの機能障害が病理的な特徴で、若しくはそのような創傷内の免疫メカニズムの昂進が、機能障害のない治癒反応の簡単な外科的皮膚創傷でみられるように治癒反応が昂進する結果となる。
【0077】
このように、グルカンを、床ずれ、静脈鬱血、動脈虚血潰瘍に局所投与するとそれらの創傷の早く有効な治癒反応を誘導することが、全く思いがけずにわかった。これは(a)これらの潰瘍の型の主な原因となる因子が血流供給障害でこれは免疫増強剤により拮抗的に反応するという証拠はないため、および(b)治癒反応を促進することが可能であったとしても、現在の治療態様で観察されるように創傷に対して障害のある血管新生が治癒反応を阻害することが期待されうるため予期できなかった。これらの潰瘍の型でのグルカンの有用な効果は、敗血症の制御、下位性の排膿、直接的な原因の是正等の他の支援的な治療無しで完全な治癒反応を達成できることは注目すべきである。
【0078】
褥そう性潰瘍及び静脈鬱血潰瘍の治療は、これらの潰瘍の治療に限定するものではないが、本発明によるのが特に好ましい。
褥そう性潰瘍は多発的なメカニズムで発症する。それらは不動の悲劇的な複雑さである。それらは、皮膚上の剪断力、皮膚の鈍い外傷、薬物、血液供給組織を損なう長期間の圧迫等の結果である。刺激的な、汚染された注射、湿気との長時間の接触、尿、便等も重要な役割を果たす。皮膚の血液循環の低下もまた実質的な危険因子である。潰瘍は深さもいろいろで、しばしば、皮膚から骨の圧覚点に及ぶときもある。治療は難しく、通常時間もかかる。外科的技術が、現在、最良の治癒を達成する最も重要な手段である。
【0079】
静脈潰瘍の約半分がくるぶしの領域の機能不全になった穴のあいた静脈と関連し、多数の不動の患者の長期間の問題になっている。潰瘍化まれに原発の静脈緊張の発症であるが実質的には、いつもひかがみの静脈弁の機能不全と関連する。
【0080】
静脈鬱血潰瘍は殆ど、内くるぶし(骨のくるぶし関節)に近位、若しくは遠位であり、しばしば小さい外傷、若しくは皮膚感染の部位に進展する。はん痕も2次性感染も治癒を傷害し、治癒しても通常再発させる。静脈潰瘍化の自然の経緯は治癒と再発の繰り返しである。
【0081】
褥そう性潰瘍の場合は、グルカンは好ましくは、粉剤(微粒子グルカン)の形で、若しくはクリームで、若しくは軟膏基材(グルカンの微粒子、可溶性、若しくはゲルの剤形)で投与される。投与は通常毎日で、例えば、7日から28日のように、潰瘍が治癒するのに十分な期間続けられる。グルカン治療に対する反応は2−3日以内に新しい肉芽化及び上皮の増殖が臨床的に明らかになることが観察される。潰瘍治癒に要する時間の長さは潰瘍のサイズ、創傷鬱血の程度、宿主の栄養状態などの多くの因子によっていろいろ変わる。典型的には、グルカン治療の開始からそう傷体積は2−3週間で50%に減少し、4−6週間で効果が完全か、殆ど完全に創傷がなくなる。グルカンが治癒反応に効果がある褥そう性潰瘍の殆どが広範囲の局所製剤で最長7年までの創傷包帯を含む標準的な治療に難治性であったものである。
【0082】
同様な方法で、グルカンの微粒子、可溶性、若しくはゲルの剤形で静脈鬱血や動脈虚血に適用すると潰瘍治癒を促進する。褥そう性潰瘍についてと同様に、これらの潰瘍をグルカンで治療すると、グルカン治療を開始して2−3日で創傷の臨床的な反応がみられ、新たな肉芽化及びデトリタスが少なくなり創傷がきれいな外観になる。粉剤、クリーム、ローション、軟膏、若しくはゲルの剤形のグルカンは治癒するまで毎日潰瘍部位に適用する。これらの場合の原因となっている血管系の病気の慢性的な性質はそのような潰瘍を形成する疾病素質は患者に残ることを意味する。従って、再発を防ぐために、長期間グルカン治療を継続する必要がある。
【0083】
従って、治癒プロセスの個々の因子は実質的には正常であるが、不十分な血液供給、不十分な排膿、過度の組織浮腫、感染、絶え間ない圧迫、若しくは他の多様な原因などの機能不全的な原因に拮抗することができない皮膚潰瘍の治癒をグルカンは促進することができることが全く思いがけず観察されることが分かった。
【0084】
前記の如くグルカンを潰瘍に適用すると高い率で治療効果が生じることがわかった。従来の創傷治療の実践に反応しない、若しくは殆ど反応しない皮膚潰瘍は、一般に、数日でグルカンの治療に反応し、かなりの場合数週間の治療で完全に治癒する。グルカンは例えば、粉剤、ゲル、クリーム、若しくはガーゼの包帯、コロイド物質、若しくは医薬品製剤の当業者に一般に既知の他の組成物の要に各種の剤形で創傷に局所的に投与すると潰瘍の治療には有効であることが分かった。
【0085】
関連する局面では、従来の治療(例えば通常の包帯や軟膏)に反応する潰瘍の治療はグルカンの投与によって促進される。
【0086】
本発明によれば、グルカン(例えば、前記のいずれかの方法、若しくは当業者に既知の方法で製造した微粒子、可溶性、ゲルの剤形で)の他の思いがけない治療の適用は骨折治療である。骨折した骨の修復は基本的には皮膚などの軟組織にみられるものと共通しているが、いくつかの重要な面で異なる修復プロセスで特徴的に達成される。骨では、修復プロセスで重要な初期の段階は修復プロセスの骨格を提供し骨折部位の固定化を確実にする骨折部位に架け橋をするカルスとして知られている繊維状構造の形成である。適正な過程では、カルスは石灰化し損傷していない骨とのつながりを提供し、骨のほぼもとの形へのある程度のリモデリングがおこる。本発明のこの局面によるとグルカンを損傷している部位に適用すると損傷している骨の修復速度を昂進し、このように骨折治療を容易にする。
そのような治療の効果はカルス形成の早期の誘導、及び強力な繊維性のマトリックスを提供するカルスの中で結合組織の早期の組織化であることがわかる。この結果、骨折した骨端の解離の危険性を減じる重要な臨床的な効果を出して早期にカルスを固定化するのを確立する。これは動物でも、ヒトでも非常に望ましい効果であるというのは、骨折部位でのどのような分裂でも、治癒を遅くする素地を作ってしまうからである。骨折部位での分裂は、たとえしっかりした副子(例えばギブス、包帯)のような機械的手段、若しくは移植(例えば留め針、スクリュー)などを通じて物理的固定化の方法が用いられたとしても問題が残る。石灰化の過程がグルカン治療により余り促進されないことが分かったが、カルス形成相を加速するグルカンの効果は完全な石灰化までの全体の時間を短くする効果をもっていることが分かる。
【0087】
グルカンは、好ましくは骨折部位にグルカンができる限り保持できるような剤形で骨の損傷部位に直接適用する。徐放性製剤が当業者でよく知られており、これらの適用には好ましい。本発明の開示されている実施例で作られる粘性のゲルは、それは15mg/mL以上(約15mg/mlから約500mg/ml、好ましくは約15mg/mlから約30mg/ml)の濃度の高度にアルカリに可溶なグルカン溶液が好ましい。この剤形は十分粘ちょうで血液や体液と混ざらないで適用部位に48時間までは残留する。このゲル剤の更なる有用性は細密な注射針を通して注射できる程、十分取り扱いやすいことである。この剤形でグルカンは骨の外科的手術の必要性がなくなるよう骨折を縮小できる骨折部位に注射することができる。別の方法では、ゲルは外科的整復の間骨折部位に投与することができる。
【0088】
ヒトの骨折に対するグルカン治療のもっている有用性は本発明者等による動物モデルで立証されている。ラットは骨折研究の医学実験で使用される標準的なモデルであり、一般に、ヒトの治療に直接的に外挿しうると考えられている(Bak等、1992)(非特許文献17)。この動物モデルでは15mg/mlの可溶性グルカンのゲル剤を2mL骨折した大腿骨の部位に注射すると無処置の骨折と比較すると治癒が促進され、12日目の部分的に治癒した骨の引っ張り強度が増加していることから説明される(実施例10)。
【0089】
このようにグルカンは、毒性もなく生理学的に許容でき、ヒト及び動物医薬での骨折治療に広く応用できることが容易に思い浮かべることができる。例えば、骨折部位へ、グルカンの単回の大量の注射、若しくは適用で治癒を促進し治癒した骨の引っ張り強度を増強する。更なる予期しなかった治療効果はグルカンは骨の中、若しくは上に固定、若しくは移植した留め針、スクリュー、人工関節や人工器官のような用具の定着性を昂進することである。用具の固定部位へのグルカンの適用(例えば粉剤、若しくはゲルの局所の適用により、若しくは注射により)は、骨と用具との接触に反応して起きる局所的な炎症プロセスを著しく促進し、一般に、骨と用具の間の結合の強度に重要な役割をしている。
本発明によれば、グルカン(前記した方法、若しくは従来の方法により製造した微粒子でも可溶性の製剤でも)の特別な治療の適応は、以前に開示も示唆もされていなかった例えば腱や靭帯等のような損傷した結合組織の治療である。そのような組織は比較的高いストレス負荷に曝されているので、一般に、密度の高い繊維状になっている。これらの損傷は、限定するわけではないが、例えば(a)スポーツによる損傷や反復性緊張障害として知られている症候群、若しくは過度の、若しくは異常なストレスと関連するそのような状態過度の使用、緊張、外傷と関連する急性若しくは慢性の炎症、および(b)手術、特に組織が切除され、もしくは切開される場合。そのような組織でのこの種の損傷は通常治るのが遅い。これは部分的には、機能を有する負荷のために障害組織を完全に休めるのが比較的難しいのであることによるが、大きくは軟組織でみられるものと比較すると組織治癒カスケードの全ての局面での特徴的な低い活性による。腱や靭帯でのこの比較的低いレベルの組織修復活性は殆どの軟組織と比較して血液供給がかなり限られている。手術や外傷の後の急性障害時、若しくは慢性炎症のような慢性損傷にグルカンを腱や靭帯に適用するとこれらの組織での治癒反応の開始及びレベルとも促進し手術の場合には正常な強度及び機能の早期の回復、及び炎症の場合は炎症プロセスの早期の消退がおこる。グルカンは損傷した腱、若しくは靭帯に直接注射できる。グルカンは健全な皮膚組織での創傷治癒の有能な促進剤であることが開示されているが、その知識からでは、正常な修復速度は比較的遅いことは知られているが、グルカンは慢性炎症のプロセスの消退を有効に昂進できるとか、限られた血液供給の組織の修復プロセスを昂進する能力があるかどうかは明らかではない。
【0090】
グルカンの更なる思いがけない治療の適応は、日光に曝すことからくる紫外光誘発の皮膚障害の予防/治療である。
紫外線暴露、特に日光に長時間曝すと、皮膚の障害の原因となる。これは、特に光老化やある種の皮膚癌の発症の素地を作る薄い皮膚の色をした白人の場合である。これら両方の問題とも殆どの西洋圏で重要である。
日光の有害な作用は主に紫外光スペクトル(UV−A、及びUV−B)によるものである。UV−Bは主に表皮内で作用し、皮膚の細表層部より深く浸透することは滅多になく、一方長波長のUV−Aは皮膚相を浸透する。紫外光の主な有害な作用は蛋白質や、特に2量体の形成になるDNAやRNAを傷害する。一部は修復されなかったり、間違って修復されたりして、これらの修復ミスの人生での蓄積が慢性的に日光に曝されているヒトで皮膚癌の発生する主な寄与因子になっているが、これらの2量体の殆どは数時間で修復される。
【0091】
皮膚の蛋白質へのこの障害の二つの主な結果は急性の細胞障害と変異原性である。細胞障害は、臨床的に紅斑(赤化)や浮腫を含む一般に日焼けと云われている徴候による急性相、長期化した相では皮膚肥厚化やしわを含む一般的には光老化と呼ばれる徴候があることが分かっている。また変異原性は皮膚癌の発症で立証されている。臨床的にはっきりしない紫外光の更なる作用は免疫抑制である。
【0092】
皮膚は他の皮膚細胞と同じように紫外光による有害な作用に感受性の豊富な免疫細胞のネットワークがあり、紫外光に曝されるとこれらの細胞が一時的な機能不全になってしまう。これらの機能不全は一般には2、3日で修復されるが、この時期に皮膚は抗原提示のような免疫能が低下している。日光に常時曝されているひとに予測できる繰り返し紫外光に曝されると、日光に曝された皮膚は慢性的に免疫機能を低下させている。皮膚内部での免疫監視能力の低下により皮膚癌の発生が起こりやすい素地を作っているようである。しかしながら、皮膚癌発生、及び光老化における紫外光の種々の作用(免疫抑制、慢性の皮膚及び上皮細胞障害、変異原性)の寄与についてはまだ不明である。
【0093】
驚くべきことに、紫外光に曝された後、若しくはその時に皮膚に局所的に投与されたグルカンにより紫外光誘発の皮膚障害から実質的に保護されることが本発明者等によって分かった。
【0094】
このことはヒトの皮膚に対する日光による障害の研究をするのに標準的な、無毛種のマウスを用いて行われた実験(例えば、Canfield等、1985)(非特許文献18)により分かった。このモデルでマウスは、日光の皮膚に及ぼす毒性効果を促進し、紅斑ができるほどの混合紫外光で10週間毎日暴露した。毎日の紫外光の暴露で、約24時間続き、ヒトの軽い日焼けをみかけ擬似している軽い紅斑、及び浮腫を誘発する。継続した照射処置でこの進行する障害は、病理学的にはヒト皮膚の慢性的な日光暴露の光老化と関連する角化症や弾力性線維症を擬似している進行性の皮膚の肥厚を反映している。前悪性腫瘍は紫外光処置が終了して数週間の内に出現し始める。6−12カ月続いた後、前悪性、及び悪性腫瘍の進行性発達がみられ、その病理や性質は日光に反応してヒトに発症するアクチン性角化症、前悪性及び非メラノーマの皮膚癌に非常に擬似している。
【0095】
紫外光照射後直ぐに可溶性グルカンを皮膚に毎日適用すると急性の毒性(前日に照射した翌朝には識別できる小さい皮膚の紅斑により分かる)や、慢性の光老化作用(著しい皮膚肥厚で分かる)から保護されることを本発明者等は発見した。この効果は、β−1,3−グルカンが以前に組織を直接的な細胞障害から保護することは知られていないこと、およびβ−1,3−グルカンが急性または慢性の紫外線照射による細胞化学的、病理学的な損傷に拮抗することを確証し若しくは示唆するデータが存在しないことより予期できるものではなかった。紫外線照射の急性毒性および慢性の光老化に拮抗するこのモデルでのグルカンの能力は日光の有害な作用から皮膚を保護する新規な重要な手段を提供する。
【0096】
また、日光に暴露直後に皮膚に局所的に可溶性のグルカンを適用することが、紫外光暴露による急性の紅斑が生ずることから保護することを本発明者等は発見した。
【0097】
さらに、無毛マウスのモデルではグルカンは皮膚癌の発症を著しく抑制していることも分かった(図1参照)。この早期の癌の殆どは、予想されたように、良性の無茎のパピローマで、後期にはこれらの一部が扁平上皮癌が盛んに増殖する、より悪性の中間体の形のものへの形質転換が予想される。
【0098】
従って、グルカンはヒトに対する日光の作用を改善することに広く適用できる。これに関して、グルカンの有用な効果はそれが日光に曝される前、その間、若しくはその後に適用されると得られる。この目的で、遮光剤の製剤、日光暴露後用製剤、若しくはローション、クリーム、ゲルなどのような一般化粧品製剤等に製剤化できる。Sc−グルカンを使用することによる有用性は以下のようなものがある。即ち、(a)皮膚の日光による急性有害作用(急性日焼け)を改善する、(b)光老化として知られており、また例えば角化症、皮膚の肥厚、弾力性線維症及びしわのような徴候も含む皮膚に対する日光の慢性的な作用も改善する、(c)日光誘発の皮膚癌の発症を改善する。
【0099】
本発明のグルカンの新規な治療用途は、限定するわけではないが、本発明のプロセスで製造されたグルカンが好ましい。Hassid等、Di Luzio等、Manners 等、及びJamas 等(米国特許第5028703号、第5250436号、第5082936号及び第4992540号)(特許文献7,8,9,2)に開示されているような従来のグルカン物質を用いることができる。好ましくは、グルカンはSc−グルカンがよい。本発明の各種の実施の態様を示す実施例により本発明を説明するが、これに限定されるものではない。
【0100】
図1は紫外線照射を6週間受けたマウスで、グルカンで治療されたもの(−□−)と非グルカン基材ローションで治療を受けたもの(−◇−)の背部皮膚ひだの厚さの測定を示す。
【実施例1】
【0101】
微粒子グルカンは以下のようにして製造できる:400gの市販の乾燥酵母Saccharomyces cerevisiaeを4Lの4%水酸化ナトリウム溶液に添加し100℃に加熱し1時間激しく撹拌する。懸濁液を45℃から50℃に冷却し、溶解した酵母細胞を10分間800gで遠心分離でアルカリ加水分解物から分離する。溶解酵母細胞を新しいバッチの3Lの3%(w/v)の水酸化ナトリウム溶液に再び懸濁させ15分間煮沸する。遠心分離したあと溶解酵母細胞をさらに新しいバッチの2Lの3%水酸化ナトリウム溶液に縣濁させ15分間煮沸し、16時間70℃に放置する。遠心分離した後、溶解酵母細胞を水に懸濁させ10分間煮沸する。後のステップを一度繰り返す。遠心分離後溶解酵母細胞を新たな2Lの水に再び懸濁し、pHをリン酸で4.5に調整し、懸濁液をその後30分間煮沸する。500mlのクロロフォルムを加え懸濁液を10分間激しく混合し、懸濁液を分液ロートに10分間静置する。懸濁液は3層、下層の有機層、上層の水層、及びこれら2層の間にある灰色をした界面に分離する。下のクロロフォルム層と灰色の中間層を廃棄し、水層を残し、それを前記の如く採取し新しいバッチの500mlのクロロフォルムで処理する。最終の水層を集め10分間煮沸して残留するクロロフォルムを除去して、スプレー乾燥機で乾燥する。水層の分析をすると、それは分岐したβ−(1,3)(1,6)グルカンのみを含み、95−98%のβ−1,3:2−5%のβ−1,6結合の比率であることが分かった。有機層は僅かに透明で脂質は含んでいるがグルカンはなかった。中間層(界面)はキチン、蛋白質など他のコンタミと結合している非分岐のβ−(1,3)−グルカン(98−100%のβ−1,3:0から2%のβ−1,6)生物学的試験の結果、分岐グルカンは創傷治癒の試験で非分岐のβ(1、3)グルカンより生物学的活性が強かった。本発明により製造されたグルカンの化学組成を表7に示す。
【0102】
【表7】

【0103】
この分析結果から最終生成物は実質的に純粋な分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンで不純物は痕跡程度しかなく、また約2から3%のβ−1,6結合を含有する。
【実施例2】
【0104】
微粒子Sc−グルカンは以下のように製造する: 400gの市販の乾燥酵母Saccharomyces cerevisiaeを4Lの4%水酸化ナトリウム溶液に添加し100℃に加熱し1時間激しく撹拌する。懸濁液を45℃から50℃に冷却し、溶解した酵母細胞を10分間800gで遠心分離でアルカリ加水分解物から分離する。溶解酵母細胞を新しいバッチの3Lの3%(w/v)の水酸化ナトリウムに再び懸濁させ15分間煮沸する。遠心分離したあと溶解酵母細胞をさらに新しいバッチの2Lの3%水酸化ナトリウムに縣濁させ15分間煮沸し、16時間70℃に放置する。遠心分離した後、溶解酵母細胞を水に懸濁させ10分間煮沸する。後のステップを一度繰り返す。遠心分離後溶解酵母細胞を新たな2Lの水に再び懸濁し、pHを塩酸で4.5に調整し、懸濁液をその後30分間煮沸する。500mlのクロロフォルムを加え懸濁液を10分間激しく混合し、懸濁液を分液ロートに10分間静置する。下層のクロロフォルム層と灰色の中間層を廃棄し、水層を残し、それを前記の如く採取し新しいバッチの500mlのクロロフォルムで処理する。最終の水層を集め10分間煮沸して残留するクロロフォルムを除去し、スプレー乾燥機で乾燥する。水層の分析をすると、それは分岐したβ−(1、3)(1、6)のみが95−98%のβ−1,3:2−5%のβ−1,6結合の比率で含んでいることが分かった。
本発明により製造されたグルカンの化学組成を表8に示す。
【0105】
【表8】

【0106】
実施例1の最終生成物と比較してこの物質は同じような純度を有しているが、β−1,6−グルカン結合が僅かに少なく側鎖分岐がより低いことを示していることが分かる。
【実施例3】
【0107】
本発明の余り重合していない可溶性のSc−グルカンの製造処方は以下の通りである: 実施例2で詳細に説明してあるように微粒子Sc−グルカンを製造する。10gのこの物質を100mLの滅菌した5%の水酸化ナトリウム溶液に懸濁し、5℃で2時間、穏やかに撹拌する(pHを約pH13にする)。懸濁液を滅菌した蒸留水と1:1で希釈し不溶性の粒子の物質を除去するのに1μの膜を通して濾過する。濾液のpHは5M HClの添加により10に調整し、10、000ダルトンカット用の膜を用いてペリコンシステムで2Lの蒸留水(pH10)で透析する。溶液を0.45μの膜を通過させ滅菌できる、また溶液のpHも望み通りに調整することができる。そのように製造される可溶性グルカンは医薬品として有用である。
【0108】
可溶性グルカンのゲルクロマトグラフィー(ウオターズ スティラゲル HR 5E カラム;有効な分子量範囲は10x104から4.0x106)物質は非常に狭い分子量分布で平均分子量が140、000ダルトンで多分散性指数が2.564で、実質的には均一である。この分析は溶媒にDMSOを使用し、カラムの流速は1ml/分である。
【実施例4】
【0109】
本発明の重合している可溶性のグルカンの製造処方は以下の通りである: 実施例2で詳細に説明してあるように微粒子Sc−グルカンを製造する。15gのこの物質を100mLの滅菌した5%の水酸化ナトリウム溶液に懸濁し、5℃で2時間、穏やかに撹拌する。懸濁液を不溶性の粒子の物質を除去するのに1000gで遠心分離する。溶液のpHは5M HClの添加により10に調整し、10、000ダルトンカット用の膜を用いてペリコンシステムで2Lの蒸留水(pH10)で透析する。さらに塩酸を加えてpHを7.5に調整し医薬品として有用な粘性のゲルができる。
ゲルクロマトグラフィーにより、物質は非常に狭い分子量分布で平均分子量が320、000ダルトンで多分散性指数が2.2で、実質的には均一である。
【実施例5】
【0110】
遅延性創傷治癒モデルが微粒子Sc−グルカンの機能不全的創傷での創傷治癒を促進する能力を試験するためにラットで開発された。近親交配した実験用の若い成人ラットの7日目の傷の破壊強度を前記に概説した方法で測定する。この場合ラットは治癒反応を抑制する薬物で処置されている。これは傷をつけた日から毎日プレドニソロン(1mg/kg)、サイクロスポリンA(5mg/kg)とアゾチオプリンの併用で作ることができる。この3重の薬物処置でマクロファージ、リンパ球、血管内皮に一定範囲の抑制効果を与える。
表9にこのモデルでSc−グルカンを用いたときの結果がまとめられている。3重の薬物処置は7日目の傷の破壊強度を有為に(p<0.01)減少させた。本発明のプロセスで製造された微粒子Sc−グルカンの単回、1mgの投与で3重薬物処置の抑制的な効果に、よく拮抗し、正常な免疫機能を有するラットにみられる傷の破壊強度まで回復させた。
【0111】
【表9】

【実施例6】
【0112】
グルカン製剤
ヒト及び動物に適用のための局所製剤を以下の成分で製剤化する。
【0113】

【0114】
この製剤を製剤#1とする。
局所投与用の粉剤を以下の成分で製剤化する。
【0115】

【0116】
この製剤を製剤#2とする。
局所用クリームを以下の成分で混合して製剤化する。
【0117】

【0118】
この製剤を製剤#3とする1g当たり5mgの可溶性グルカンを含有するクリームを提供する製剤#1から#3は、グルカンをゲル剤を入れることにより変化をもたせた。これらを#1Aから#3Aという。
【実施例7】
【0119】
ヒトの患者の褥そう性潰瘍を製剤#1でうまく治療できた。
患者は10年間入院し実質的に寝たきりの90歳の男性の卒中被害者である。
褥そう性潰瘍が1986年に右臀部に発症し、通常の医療及び看護にもかかわらず持続した。1988年までに、潰瘍は直径8cm、深さ4cmまでに大きくなった。通常の傷を清潔にすること、保護用包帯を適用し、体の位置を潰瘍に対する圧迫を最小にするようにすることからなる従来の治療では潰瘍の進行性の悪化を止めることができなかった。Sc−グルカンによる治療がはじめられ、製剤#1を用いて局所投与がなされた。1週間毎日局所治療を行い、その後中止した。治療後2週間で潰瘍は完全に治癒した。内皮化が完全で肉眼で見えるはん痕の形成はみられなかった。
【実施例8】
【0120】
持続的足の潰瘍を患っている患者(G W 氏)がグルカンで治療された(製剤#1)。
患者は、くるぶしが骨折しスポーツによる外傷を患っている53歳の男性であった。くるぶしの傷害の後2回手術した。2回目の手術の後、そう傷は治癒せず、全身性及び局所用の抗菌剤及び抗生物質の使用にもかかわらず、4つの静脈鬱血潰瘍が発症した。
実施例5の製剤#1のグルカン含有創傷治癒クリームを連続して5日間潰瘍の3つに適用した。一つは元々3.8cm×1.9cmであったが10日で完全に治癒した。また別の潰瘍は10.2cm×3.8cmであったが10日の治療期間の間に6.3cm×1.3cmに減少した。さらに別の潰瘍は3.8cm×1.9cmであったものが2.5cm×1.2cmに減少した。治療を10日目に再開し、7日間のクリーム適用からなる治療を2回行い、7日間治療を行わなかった後、後者の二つの潰瘍は4週間後完全に治癒していた。二つの暴露された腱と広範囲の組織の壊死を含む4つの潰瘍(10cm×9cm)の治療がその後直ぐに始められた。毎日治療して10日後、内皮の再増殖及び肉芽化組織がはっきりわかり、暴露されていた腱が肉芽化組織により覆われるようになり、創傷のサイズも8cm×7cmと減少した。
その患者には以前のどのような治療からそのような陽性の結果になることはなかった。
【実施例9】
【0121】
6歳サラブレッドの種馬の前腕の後側が他の種馬と喧嘩して激しい外傷を受け、外部に面積約40cm×20cmの穴のある深い空洞をつくてしまった。最初の治療は、消毒薬や抗生物質溶液で洗浄したが、数日後には外傷の激烈さははっきりしてきて、明らかに悪化していた。靭帯や腱や関連している筋肉を含む深い組織の壊死で広範囲で、深い脱落組織があった。腱の残りの部分は不健康なように見える線維として残っているが、動物は体重に耐えられなかった。その時点で悪いところに実施例5の製剤#1を局所に適用し処置した。
グルカン処置にすぐに深い反応を示した。
処置に対する臨床上の反応の順番が以下のようであった。
処置後24時間:壊死が化膿も減じながら減少した。
処置後36時間:組織の活性化を示しながらそう傷の外観が著しく改善された。
処置後72時間:全体が新組織にも含む靭帯や腱の残留物で迅速に充填されてきた。
処置後96時間:抹消の内皮形成でよい、そして早い健康的な治癒の全面的な外観であった。
創傷は治療12日後には完全に閉じており、はん痕も少なくなっている。
その時、動物は全ての足で体重に耐えることができた。
【実施例10】
【0122】
4匹の成人ラット(雄性、ウィスター、近親交配)を麻酔下、外的な力により左大腿骨を折った。骨折部位は外部からの触診によりつきとめ、21−ゲージ針を骨折部位の皮膚を通して導入し大腿骨の骨折端の間の位置を定めた。骨折はその後骨髄内針を膝関節を通して大腿骨頭から出すように挿入する標準的な方法で固定した。2匹のラットは実施例4で製造されたコロイドグルカン2mLを骨折部位に以前に位置させていた針を通して注入した。他の2匹のラットは2mLの食塩水をグルカンの代わりに注入した。
針をその後引く抜き、ラットを麻酔から回復させた。12日後にラットを殺し骨髄内針を抜き骨折部位を見れるように骨折した大腿骨を分離し治癒反応の強さを測定した。2匹の対照ラット(食塩水)は骨折部位が不完全な仮骨のなかに含まれており上下の大腿骨幹をねじることにより容易にとりだすことができた。グルカン処置した2匹のラットは仮骨がさらに進んでおり、しっかりしており、大腿骨の骨折端をとりだすのにかなりの力を要した。グルカンの効果は仮骨形成を促進し骨折後12日で骨折部位に強固な結合にしたことであった。
【実施例11】
【0123】
50歳の白人男性が両前腕の内側の約4cmx12cmの面積の皮膚を40分間直接日光に曝した。両域とも同じ条件で暴露し両前腕とも色素沈着は同じレベルであった。各々の暴露された領域を消えないインクで輪郭をかいて4つの等しい斑(4cm×3cm)に分けられた。各々の前腕に1mgの日焼け止めクリーム(SPF 10)を日光に暴露する前に端の斑一つに適用した;残りの斑はこのときには何も処置しなかった。2時間日光に暴露した後、Sc−グルカン(実施例6の製剤#3)を2番目の斑に適用し、3番目はまだ未処置のままにしておき、2mgのSc−グルカンのない製剤#3(実施例6)を4番目の斑に適用する。処置の順は各前腕で逆にした。
皮膚の斑は日光に暴露後24時間で試験された肉眼で見れる赤さの程度を0、+、++、+++、++++で評価した。結果は以下の通りであった:

無処置 ++++
SPF10 +
クリーム基材のみ ++++
グルカン+クリーム基材 ++

グルカンは皮膚発赤を著しく減少する効果があった。そこで、グルカンは日光による傷害の臨床的な反応を改善した。
【実施例12】
【0124】
アルビノ系Skh:HR−1無毛マウスが毎日紫外光で12週間照射された。
毎日の照射の後で、マウスは(製剤#3)のグルカンクリーム、若しくはクリーム基材のみを適用されるか、若しくは無処置であった。結果は表10に示す。
【0125】
【表10】

【0126】
Sc−グルカン+クリーム材、若しくはクリーム材のみを適用され、紫外線照射されたマウスのどちらもクリーム材のみを適用されたマウスのように腫瘍は多くはなかった。
【実施例13】
【0127】
日光の皮膚への有害作用を促進する紫外光を紅斑ができるような量を毎日、10週間、マウスに暴露した。各毎日の紫外光照射は25時間まで持続するヒトの日焼けを擬似する穏和な紅斑と浮腫を誘発する。マウスは紫外光暴露後製剤#3で処置されるか(第1群)、非グルカン含有のローション(第2群)で処置された。6週間で著しい皮膚の肥厚(及びその結果としてのしわ)が第2群のマウスで観察された。第1群のマウスはこれらの作用からしっかり保護されていた。
紅斑は第1群では治療期間中認められなかった。図1は試験で得られた結果を示す。6週間後、グルカン処置マウス(−□−)は無処置マウス(−◇−)より皮膚ひだの厚さが明らかに薄かった。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】試験結果を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に一以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、機能不全の治療を伴う皮膚潰瘍の治療のための薬剤を製造する方法。
【請求項2】
皮膚潰瘍が、継続的な刺激又は圧力によって引き起こされるものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
皮膚潰瘍が、褥瘡、静脈閉塞、床ずれの1種以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
皮膚潰瘍が、制限された血液供給によって引き起こされるものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
制限された血液供給が、動脈虚血又は静脈血栓の少なくとも1つによって引き起こされるものであることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
皮膚潰瘍が、感染症によって引き起こされるものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
感染症が、骨感染症、化膿性感染症、複合感染症、壊疽、梅毒、結核症、熱帯病、又は真菌病の少なくとも1つによって引き起こされるものであることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
皮膚潰瘍が、神経損傷によって引き起こされるものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
神経損傷が、脊髄損傷又は末梢神経傷害の少なくとも1つによって引き起こされるものであることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
皮膚潰瘍が、新生組織形成によって引き起こされるものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
新生組織形成が、初期皮膚腫瘍、転移癌、又は白血病の少なくとも1つによって引き起こされるものであることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に1種以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、皮膚潰瘍の治療、又は埋め込まれた矯正具の固定の強化、若しくは紫外線光によって引き起こされる皮膚ダメージの予防/治療のための薬剤を製造する方法。
【請求項13】
グルカンが、局所的に投与されることを特徴とする請求項1ないし12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
グルカンが、粉末、クリーム、ローション、軟膏の形態であることを特徴とする請求項1ないし12の何れかに記載の方法。
【請求項15】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に1種以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、骨折の治療のための薬剤を製造する方法。
【請求項16】
グルカンが、患者の骨折部分に投与されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
骨折部分のグルカンの保持が最大となるような形態で骨折部分に適用されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
グルカンが、遅効製剤の形態であることを特徴とする請求項15ないし17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
グルカンが、水溶性の微細粒子、又はゲル状であることを特徴とする請求項15ないし18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に1種以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、結合組織損傷の治療のための薬剤を製造する方法。
【請求項21】
結合組織損傷が、腱損傷又は靭帯損傷であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
結合組織損傷が、酷使、筋違い、又は外傷の少なくとも1つを伴うものであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
結合組織損傷が、スポーツによる損傷、反復的な筋の損傷、過剰の緊張、又は異常な緊張の少なくとも1つを伴うものであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
結合組織損傷が、外科的切開又は結合組織の離断の少なくとも1つを伴うものであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
グルカンが、損傷した結合組織の損傷部分に投与されることを特徴とする請求項20ないし24の何れかに記載の方法。
【請求項26】
グルカンが、水溶性の微細粉末、又はゲル状であることを特徴とする請求項20ないし25の何れかに記載の方法。
【請求項27】
β−(1,3)(1,6)−グルカンが、90〜98%のβ−(1,3)結合を有し、2〜10%のβ−(1,6)結合を有することを特徴とする請求項1ないし26の何れかに記載の方法。
【請求項28】
β−(1,3)(1,6)−グルカンが、96〜98%のβ−(1,3)結合を有し、2〜4%のβ−(1,6)結合を有することを特徴とする請求項1ないし26の何れかに記載の方法。
【請求項29】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に一以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、機能不全の治療を伴う皮膚潰瘍の治療のための薬剤。
【請求項30】
皮膚潰瘍が、継続的な刺激又は圧力によって引き起こされるものであることを特徴とする請求項29記載の薬剤。
【請求項31】
皮膚潰瘍が、褥瘡、静脈閉塞、床ずれの1種以上であることを特徴とする請求項29記載の薬剤。
【請求項32】
皮膚潰瘍が、制限された血液供給によって引き起こされるものであることを特徴とする請求項29記載の薬剤。
【請求項33】
制限された血液供給が、動脈虚血又は静脈血栓の少なくとも1つによって引き起こされるものであることを特徴とする請求項32記載の薬剤。
【請求項34】
皮膚潰瘍が、感染症によって引き起こされるものであることを特徴とする請求項29記載の薬剤。
【請求項35】
感染症が、骨感染症、化膿性感染症、複合感染症、壊疽、梅毒、結核症、熱帯病、又は真菌病の少なくとも1つによって引き起こされるものであることを特徴とする請求項34記載の薬剤。
【請求項36】
皮膚潰瘍が、神経損傷によって引き起こされるものであることを特徴とする請求項29記載の薬剤。
【請求項37】
神経損傷が、脊髄損傷又は末梢神経傷害の少なくとも1つによって引き起こされるものであることを特徴とする請求項36記載の薬剤。
【請求項38】
皮膚潰瘍が、新生組織形成によって引き起こされるものであることを特徴とする請求項29記載の薬剤。
【請求項39】
新生組織形成が、初期皮膚腫瘍、転移癌、又は白血病の少なくとも1つによって引き起こされるものであることを特徴とする請求項38記載の薬剤。
【請求項40】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に一以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、皮膚潰瘍の治療、又は埋め込まれた矯正具の固定の強化、若しくは紫外線光によって引き起こされる皮膚ダメージの予防/治療のための薬剤。
【請求項41】
グルカンが、局所的に投与されることを特徴とする請求項29ないし40の何れかに記載の薬剤。
【請求項42】
グルカンが、粉末、クリーム、ローション、軟膏の形態であることを特徴とする請求項29ないし40の何れかに記載の薬剤。
【請求項43】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に一以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、骨折の治療のための薬剤。
【請求項44】
グルカンが、患者の骨折部分に投与されることを特徴とする請求項43に記載の薬剤。
【請求項45】
骨折部分のグルカンの保持が最大となるような形態で骨折部分に適用されることを特徴とする請求項43に記載の薬剤。
【請求項46】
グルカンが、遅効製剤の形態であることを特徴とする請求項43ないし45の何れかに記載の薬剤。
【請求項47】
グルカンが、水溶性の微細粉末、又はゲル状であることを特徴とする請求項43ないし46の何れかに記載の薬剤。
【請求項48】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に1種以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、結合組織損傷の治療のための薬剤。
【請求項49】
結合組織損傷が、腱損傷又は靭帯損傷であることを特徴とする請求項48に記載の薬剤。
【請求項50】
結合組織損傷が、酷使、筋違い、又は外傷の少なくとも1つを伴うものであることを特徴とする請求項48に記載の薬剤。
【請求項51】
結合組織損傷が、スポーツによる損傷、反復的な筋の損傷、過剰の緊張、又は異常な緊張の少なくとも1つを伴うものであることを特徴とする請求項48に記載の薬剤。
【請求項52】
結合組織損傷が、外科的切開又は結合組織の離断の少なくとも1つを伴うものであることを特徴とする請求項48に記載の薬剤。
【請求項53】
グルカンが、損傷した結合組織の損傷部分に投与されることを特徴とする請求項48ないし52の何れかに記載の薬剤。
【請求項54】
グルカンが、水溶性の微細粉末、又はゲル状であることを特徴とする請求項48ないし53の何れかに記載の薬剤。
【請求項55】
β−(1,3)(1,6)−グルカンが、90〜98%のβ−(1,3)結合を有し、2〜10%のβ−(1,6)結合を有することを特徴とする請求項29ないし54の何れかに記載の薬剤。
【請求項56】
β−(1,3)(1,6)−グルカンが、96〜98%のβ−(1,3)結合を有し、2〜4%のβ−(1,6)結合を有することを特徴とする請求項29ないし54の何れかに記載の薬剤。
【請求項57】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に1種以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、皮膚潰瘍の治療、又は埋め込まれた矯正具の固定の強化、若しくは紫外線光によって引き起こされる皮膚ダメージの予防/治療のための医薬用組成物。
【請求項58】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に1種以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、機能不全の治療を伴う皮膚潰瘍の治療のための医薬用組成物。
【請求項59】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に1種以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、骨折の治療のための医薬用組成物。
【請求項60】
非分岐β(1,3)グルカンを含まず、実質的に分岐β−(1,3)(1,6)−グルカンからなるグルカン、及び任意に1種以上の薬理学的に許容できる担体、若しくは賦形剤と結合したグルカンを使用し、結合組織損傷の治療のための医薬組成物。
【請求項61】
β−(1,3)(1,6)−グルカンが、90〜98%のβ−(1,3)結合を有し、2〜10%のβ−(1,6)結合を有することを特徴とする請求項57ないし60の何れかに記載の医薬用組成物。
【請求項62】
β−(1,3)(1,6)−グルカンが、96〜98%のβ−(1,3)結合を有し、2〜4%のβ−(1,6)結合を有することを特徴とする請求項57ないし60の何れかに記載の医薬用組成物。
【請求項63】
グルカンが、水溶性の微細粉末、又はゲル状であることを特徴とする請求項57ないし62の何れかに記載の医薬用組成物。
【請求項64】
組成物が、骨折部分に直接適用するのに適した遅効製剤の形態であることを特徴とする請求項59に記載の医薬用組成物。
【請求項65】
結合組織損傷の患部に適用されることを特徴とする請求項60に記載される医薬用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−63349(P2008−63349A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309589(P2007−309589)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【分割の表示】特願平8−527114の分割
【原出願日】平成8年3月13日(1996.3.13)
【出願人】(500445789)ノボゲン リサーチ ピーティーワイ リミテッド (10)
【Fターム(参考)】