グルカンベースのワクチン
【課題】哺乳動物レシピエントに投与される場合、組成物が保護的抗グルカン抗体を誘発するが、抗グルカン抗体の保護的抗力を阻害する抗体を誘発しない点において特徴付けられる、グルカンおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む免疫原性組成物の提供。
【解決手段】グルカンは、プロテアーゼ処理された微生物細胞の表面に表され得、またはタンパク質−グルカン結合体として表され得る。グルカンは、グルカンミモトープ、グルカンミモトープのペプチド模倣物、ミモトープをコードする核酸により置換され得る。
【解決手段】グルカンは、プロテアーゼ処理された微生物細胞の表面に表され得、またはタンパク質−グルカン結合体として表され得る。グルカンは、グルカンミモトープ、グルカンミモトープのペプチド模倣物、ミモトープをコードする核酸により置換され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用される全ての文献は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、ワクチンに関し、より具体的には、真菌感染および疾患に対するワクチンに関する。
【背景技術】
【0003】
真菌感染は、いくつかの臨床設定、特に、免疫無防備の患者において一般的である。抗真菌薬、特にアゾールに対する耐性の発生は、これらの真菌に対する治療的および予防的免疫において関心が増加している[1](非特許文献1)。真菌病原体のうち、Candida albicansは、最も一般的なものの1つである。この生物は、ヒトにおける広まった日和見性感染の主要な因子の1つであり、カンジダ症を引き起こし、この状態は、正常な患者および免疫無防備な患者の両方において見出される。抗カンジダワクチンを提供するための幾つかの試みが存在する。
【0004】
細胞性免疫が真菌に対する宿主の首尾よい防御に重要である医学的菌学の分野で広く認知されているが[2](非特許文献2)、2つの主要な真菌病原体(C.albicansおよびC.neoformans)に対する保護における体液性免疫の潜在的な有効性は、魅力がある[2,3](非特許文献2、3)。C.neoformansについて、被膜状グルクロオキシロマンナンに対する抗体は、感染の動物モデルにおいて保護を媒介することが示されている。C.albicansについて、細胞表面マンノタンパク質は、C.albicansの主要な抗原成分であり[1](非特許文献1)、そしてマンナンに対する抗体であり、プロテアーゼおよび熱ショックタンパク質は、感染に対する保護に関連している。他のワクチン候補としては、以下が挙げられる:アスパルチルプロテイナーゼ(Sap2)ファミリーのメンバー;65kDaマンノタンパク質(MP65)[4](非特許文献4);ホスホマンナン細胞壁複合体から単離される接着分子[5](特許文献1);Candidaのホスホマンナン複合体のマンナン部分からのエピトープを模倣するペプチド[6](特許文献2);およびヘモリシン様タンパク質[7](特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許5,578,309 (W095/31998をまた参照のこと).[5]
【特許文献2】米国特許6,309,642 (W098/23287をまた参照のこと).[6]
【特許文献3】WO01/51517[7]
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Deepe (1997) Clin. Microbiol. Rev. 10: 585-596. [1]
【非特許文献2】Polonelli et al. (2000) Med Mycol 38 Suppl 1: 281-292.[2]
【非特許文献3】Casadevall (1995) Infect. Immun. 63: 4211-4218.[3]
【非特許文献4】Cassone (2000) Nippon Ishinkin Gakkai Zasshi 41 (4): 219.[4]
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、感染、特に、真菌感染に対する保護的免疫応答および/または治療的免疫応答を誘導するためのさらなるより良い抗原を提供することである。
【0008】
(発明の開示)
Candida細胞は、全ての非分泌型候補保護抗原を含むが、これらが種々の抗原に対する高レベルの体液性かつ細胞媒介性の免疫応答を惹起する場合でさえも、全細胞ワクチンは、有効でない。驚くべきことに、この低い保護効果が、特定の抗原に対する免疫応答が存在しないことに起因するのではなく、インタクトな真菌細胞表面と相互作用し得る動物血清におけるブロッキング抗体の存在に起因するということが見出されている。このようなブロッキング抗体の非存在下において、抗グルカン抗体は、全身性真菌感染に対して保護的であることが見出されているが、保護効果は、ブロッキング抗体が存在する場合に阻害される。真菌グルカンは、天然では少ない免疫原であり、以前には保護を惹起するとは考えられなかった。
【0009】
従って、本発明は、免疫原性組成物を提供し、この組成物は、グルカンおよび薬学的に受容可能なキャリアを含み、ここで、これは、哺乳動物に投与され、この組成物は、保護抗グルカン抗体を惹起するが、抗グルカン抗体の保護効果を阻害する抗体は惹起しない。
【0010】
(グルカン)
グルカンは、特に真菌細胞壁において見出されるグルコース含有多糖類である。α−グルカンは、グルコースサブユニット間に1つ以上のα−結合を含み、β−グルカンは、グルコースサブユニット間に1つ以上のβ−結合を含む。
【0011】
α−グルカンは、種々の生物(S.mutans(これは、α−1,3−グルカンおよびα―1,6−グルカンの両方を含む細胞壁を有する)を含む)において見出されている。
【0012】
β−1,6−グルカンは、真菌において頻繁に発生するが、まれに真菌の外側ある[8]。代表的な真菌細胞壁内で、β−1,3−グルカン微小繊維は、キチン微小繊維と織り合わされ、そして架橋され、内側骨格層を形成し、一方、この外側層は、β−1,6−グルカンおよびマンノタンパク質からなり、キチンおよびβ−1,3−グルカンを介して内側層に結合されている。C.albicansにおいて、細胞壁の50〜70%は、β−1,3−グルカンおよびβ−1,6−グルカンから構成される。C.albicansは、β−1,2−グルカンもβ−1,4−グルカンも含まない。全長ネイティブβ−グルカンは、不溶性であり、一般的に分枝している。
【0013】
本発明に従って使用されるグルカンは、αおよび/またはβ結合を含み得る。α結合が存在する場合、グルカンにおけるβ結合:α結合の比は、代表的に、少なくとも2:1(例えば、3:1、4:1、5:1、10:1、20:1以上)である。しかし、好ましい実施形態において、グルカンは、β結合のみを含む。
【0014】
βグルカンが好ましい。βグルカンは、1つ以上のβ−1,3−結合および/または1つ以上のβ−1,6−結合を含み得る。それはまた、1つ以上のβ−1,2−結合および/またはβ−1,4−結合を含み得る。特に好ましいのは、1つ以上のβ−1,6−結合を含むグルカンである。
【0015】
グルカンは分枝し得る。
【0016】
好ましいグルカンは、Candida(例えば、C.albicans)の細胞壁由来のβグルカンである。βグルカンが使用され得る他の生物としては、以下が挙げられる:Coccidioides immitis,Trichophyton verrucosum,Blastomyces dermatidis,Cryptococcus neoformans,Histoplasma capsulatum,Saccharomyces cerevisiae,Paracoccidioides brasiliensis,およびPythiumn insidiosum。
【0017】
好ましいグルカンは、真菌グルカン(すなわち、真菌において見出されるグルカン)である。「真菌」グルカンは、一般に、真菌から得られるが、ここで、特定のグルカン構造は、真菌および非真菌(例えば、細菌、下等植物または藻類)の両方において見出され、次いで、非真菌生物は、代替的な供給源として使用され得る。
【0018】
全長ネイティブβグルカンは不溶性であり、メガダルトン範囲の分子量を有する。本発明の免疫原性組成物において可溶性グルカンを使用することが好ましい。可溶化は、長い不溶性グルカンを断片化することによって達成され得る。これは、加水分解、より簡便には、グルカナーゼ(例えば、β−1,3−グルカナーゼまたはβ−1,6−グルカナーゼ)による消化によって達成され得る。代替としては、短いグルカンが、単糖類構造ブロックを結合して合成することによって調製され得る。
【0019】
低分子量グルカンが好ましく、特に、100kDa未満(例えば、80、70、60、50、40、30,25、20または15kDa未満)の分子量を有するグルカンが好ましい。60または60未満(例えば、59,58,57,56,55,54,53,52,51,50,49,48,47,46,45,44,43,42,41,40,39,38,37,36,35,34,33,32,31,30,29,28,27,26,25,24,23,22,21,20,19,18,17,16,15,14,13,12,11,10,9,8,7,6,5,4)のグルコース単糖単位を含む少糖類を使用することもまた可能である。この範囲内で、10〜50、または20〜40の単糖類単位を有する少糖が、好ましい。
【0020】
真菌βグルカンの種々の供給源が存在する。例えば、純粋なβ−グルカンは、市販されており、例えば、プスチュラン(pustulan)(Calibiochem)は、Umbilicaria papullosaから精製されるβ−1,6−グルカンである。β−グルカンは、種々の方法で真菌細胞壁から精製され得る。参考文献9は、例えば、細胞壁マンナンから遊離している、Candidaから抽出された水溶性β−グルカンを調製するための2工程手順を開示し、この手順は、NaClO酸化およびDMSO抽出を含む。得られる生成物(「Candida可溶性β−D−グルカン」または「CSBG」)は、主に、直鎖β−1,6−グルカン部分を有するβ−1,3−グルカンから構成される。β−グルカンを精製するためのさらなる方法は、本明細書中の実施例において開示されており、そして「グルカンゴースト」は、高純度のβ−グルカンを含む。β−1,3−グルカンは、健康補助食品としての使用で公知である[10]。
【0021】
実施例において開示されるように、好ましいグルカンは、C.albicansから得られるグルカンであり、特に、(a)β−1,3−グルカン側鎖を有するβ−1,6−グルカンおよび約30の平均重合度を有するグルカン、ならびに(b)β−1,6−グルカン側鎖を有するβ−1,3−グルカンおよび約4の平均重合度を有するグルカンが好ましい。
【0022】
純粋なβ−グルカンは、しかし、免疫原性が乏しい。それゆえに、保護的効果については、β−グルカンは、免疫原性形態で免疫系に提示されることが望ましい。これは、種々の方法で達成され得る。本発明の2つの好ましい実施形態において、本発明の組成物に含まれるβ−グルカンは、(a)表面β−グルカンを呈するプロテアーゼ処理され、そして/またはマンノタンパク質を欠失した真菌細胞;または(b)グルカンキャリア結合体のいずれかである。
【0023】
(プロテアーゼ処理された真菌細胞)
β−グルカンは、真菌細胞の表面上で、免疫系に提示され得る。しかし、β−グルカンは、通常、真菌細胞の表面上では十分に免疫原性形態で露出されないので、これらの細胞は、プロテアーゼ(例えば、非特異性プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK))により処理されるべきである。このように真菌をプロテアーゼに露出することにより、マンノタンパク質を枯渇させ得、ブロッキング抗体を惹起する分子を除去し得る。
【0024】
従って、本発明は、表面に露出したβ−グルカンを有するプロテアーゼ処理された真菌細胞を提供する。好ましくは、真菌細胞の細胞壁は、マンノタンパク質を含まないか、実質的に含まない。
【0025】
本発明はまた、真菌β−グルカンおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む免疫原性組成物を提供し、ここで、この真菌β−グルカンは、プロテアーゼ処理された真菌細胞の成分である。好ましくは、真菌細胞の細胞壁は、マンノタンパク質を含まないか、実質的に含まない。より好ましくは、組成物全体として、マンノタンパク質を含まないか、実質的に含まない。
【0026】
真菌細胞は、好ましくは、Candidaであり、より好ましくは、C.albicansである。
【0027】
(グルカンキャリア結合体)
グルカンは、グルカンキャリア結合体の形態で免疫系に提示され得る。キャリアタンパク質に対して結合体を使用して糖類抗原の免疫原性を増強させることは、周知であり[例えば、参考文献11〜19などに概説される]、特に、小児科ワクチンに使用される[20]。
【0028】
本発明は、(i)キャリアタンパク質および(ii)グルカンの結合体を提供する。このグルカンは、好ましくは、上記で定義されるβ−グルカンであり、より好ましくは、例えば、β−1,6−結合を含む真菌β−グルカンである。
【0029】
キャリアタンパク質は、グルカンに直接共有結合で結合体化されても、リンカーを使用しても良い。
【0030】
タンパク質に対する直接結合は、例えば、参考文献21および22に記載されるように、グルカンの酸化、その後のタンパク質との還元的アミノ化を包含し得る。
【0031】
リンカー基を介する連結は、任意の公知の手順(例えば、参考文献23および24に記載される手順)を用いて行われ得る。好ましい型の連結は、アジピン酸リンカーであり、このリンカーは、アミノ化グルカン上の遊離NH2基をアジピン酸と(例えば、ジイミド活性化を使用して)カップリングし、次いで、得られた糖類−アジピン酸中間体[15、25、26]にタンパク質を連結することによって形成され得る。別の好ましい型の連結は、カルボニルリンカーであり、このリンカーは、改変グルカンの遊離のヒドロキシル基をCDIと反応させ[27、28]、続いてタンパク質と反応させて、カルバメート連結を形成することによって形成され得る。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド[29]、ニトロフェニル−エチルアミン[30]、ハロアシルハライド[31]、グルコシド連結[32]、6−アミノカプロン酸[33]、ADH[34]、C4〜C12部分[35]などが挙げられる。
【0032】
好ましいキャリアタンパク質は、細菌毒素またはトキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。これらは、結合体化ワクチンにおいて一般的に使用される。CRM197ジフテリアトキソイドが、特に好ましい[36]。他の適切なキャリアタンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質[37]、合成ペプチド[38、39]、熱ショックタンパク質[40、41]、百日咳タンパク質[42、43]、H.influenzae[44]由来のプロテインD、サイトカイン[45]、リンホカイン[45]、ホルモン[45]、増殖因子[45]、C.difficile由来のトキシンAまたはトキシンB[46]、鉄取り込みタンパク質[47]などが挙げられる。キャリアタンパク質の混合物を使用することが可能である。
【0033】
単一のキャリアタンパク質が、複数の異なるグルカンを有し得る[48]。
【0034】
結合体が、本発明の免疫原性組成物においてグルカン成分を形成する場合、その組成物はまた、遊離のキャリアタンパク質を含み得る[49]。
【0035】
結合体化の後、遊離のおよび結合体化グルカンが、分離され得る。例えば、疎水性クロマトグラフィー、接線限外濾過(tangential ultrafiltration)、ダイアフィルトレーションなどの多くの適切な方法がある[参考文献50、51なども参照のこと]。接線流限外濾過が好ましい。
【0036】
結合体中のグルカン部分は、好ましくは、上記で規定されるように、低分子量グルカンまたは少糖類である。少糖類は、代表的には、結合体化の前にサイズが合わせられる。
【0037】
タンパク質−グルカン結合体は、好ましくは、水および/または生理学的緩衝液中で溶解性である。
【0038】
(抗体)
本発明は、(1)グルカンを認識する抗体および(2)薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を提供する。このグルカンは、上記で規定されるように、好ましくは、β−グルカンであり、より好ましくは、真菌β−グルカン(例えば、β−1,6連結を含む)である。
【0039】
この抗体は、好ましくは、微生物感染および/または疾患に対する保護を付与する保護抗体である。この微生物は、真菌または細菌であり得、例えば、その真菌または細菌は、以下に示される。
【0040】
組成物は、好ましくは、抗グルカン抗体の保護効力を阻害する抗体を含まないか、または実質的に含まない。例えば、このグルカンが真菌β−1,6−グルカンである場合、この組成物は、好ましくは、非グルカン細胞壁成分に対する抗体(例えば、抗マンノタンパク質抗体)を含まないか、または実質的に含まない。
【0041】
用語「抗体」は、任意の、種々の天然および人工の抗体および抗体由来タンパク質を含み、これらの抗体および抗体由来タンパク質は、入手可能である。従って、用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、単鎖Fv(scFv)抗体、オリゴボディー(oligobody)などを含む。
【0042】
本発明の抗体含有組成物は、受動免疫のために使用され得る。
【0043】
ヒト免疫系との適合性を増大させるために、ヒト抗体を使用することが好ましい。代わりに、本発明の抗体は、非ヒト抗体のキメラバージョンまたはヒト化バージョンであってもよい[例えば、参考文献52および53]。
【0044】
キメラ抗体において、非ヒト定常領域は、ヒト定常領域で置換されるが、可変領域は、非ヒトのままである。
【0045】
ヒト化抗体は、種々の方法によって達成され得、これらの方法としては、例えば、以下が挙げられる:(1)非ヒト抗体由来の1つ以上のフレームワーク残基の最適なさらなる移入(「ヒト化」)による、非ヒト可変領域からヒトフレームワークへの相補性決定領域(CDR)のグラフト化(「CDR−グラフト化」);(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換により、このドメインをヒト様表面で覆うこと(「上張り(veneering)」)。本発明において、ヒト化抗体は、可変領域のCDR−グラフト化、ヒト化、および上張りによって得られる抗体を含む[例えば、参考文献54〜60]。
【0046】
ヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。その重鎖定常領域は、5つのアイソタイプ:α、δ、ε、γまたはμのいずれかから選択され得る。
【0047】
ヒト化抗体または完全なヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されているトランスジェニック動物を使用して生成され得る。例えば、参考文献61は、ヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示する。この文献において、この動物は、内因性重鎖および軽鎖の遺伝子座の不活性化に起因して、機能的な内因性免疫グロブリンを生成しない。参考文献62はまた、免疫原に対する免疫応答を上昇させ得るトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示する。この文献において、その抗体は、霊長類の定常領域および/または可変領域を有し、その内因性免疫グロブリンコード遺伝子座は、置換または不活性化される。参考文献63は、Cre/Lox系を使用して、哺乳動物における免疫グロブリン遺伝子座を改変する(例えば、定常領域または可変領域の全てまたは一部を置換して、改変抗体分子を形成する)ことを開示する。参考文献64は、内因性Ig遺伝子座および機能的ヒトIg遺伝子座が不活性化された非ヒト哺乳動物宿主を開示する。参考文献65は、トランスジェニックマウスを作出する方法を開示する。この方法において、マウスは、内因性重鎖を欠き、1以上の異種定常領域を含む外因性免疫グロブリン遺伝子座を発現する。
【0048】
本発明の抗体は、任意の適切な手段(例えば、組換え発現によって)生成され得る。
【0049】
(ミモトープ)
抗原性炭水化物は、ポリペプチド(「ミモトープ」)によって模倣され得る[例えば、6、66、67、68]。本発明はまた、グルカンのミモトープを含むポリペプチドを提供する。グルカンは、好ましくは、上記で規定されるβ−グルカンであり、より好ましくは、真菌のβグルカン(例えば、β−1,6連結を含む)である。
【0050】
このミモトープは、好ましくは、少なくとも3つのアミノ酸(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30またはそれ以上のアミノ酸)からなる。
【0051】
このポリペプチドは、好ましくは、少なくとも3つのアミノ酸(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、125、150、175、または少なくとも200のアミノ酸)からなる。
【0052】
このポリペプチドは、好ましくは、250以下のアミノ酸(例えば、225以下、200以下、190以下、180以下、170以下、160以下、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、95以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、19以下、18以下、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下または5個のアミノ酸すら)からなる。
【0053】
6〜20個の間のアミノ酸からなるポリペプチドが好ましい。
【0054】
目的のグルカンのミモトープは、種々の様式において同定され得る。ミモトープを同定するための好ましい技術は、ポリペプチド配列のライブラリーのディスプレイ(例えば、ファージディスプレイ)、続いて、目的のグルカンに特異的な抗体に結合するポリペプチドの選択を包含する。この選択手順は、最もよいミモトープに焦点を当てるために、反復され得る。
【0055】
本発明のポリペプチドは、種々の手段によって調製され得る。
【0056】
生成のために好ましい方法は、インビトロ化学合成を包含する[69、70]。固相ペプチド合成(例えば、t−BocまたはFmoc[71]化学に基づく方法)が特に好ましい。酵素的合成[72]もまた、一部でまたは全体で使用され得る。
【0057】
化学合成に代わりとして、生物学的合成が使用され得、例えば、このポリペプチドは、翻訳によって生成され得る。これは、インビトロまたはインビボで行われ得る。生物学的方法は、一般に、L−アミノ酸に基づくポリペプチドの生成に制限されるが、翻訳機構の操作(例えば、アミノアシル−tRNA分子の操作)が使用されて、D−アミノ酸または他の非天然アミノ酸(例えば、ヨード−Tyrまたはメチル−Phe、アジドホモ−Alaなど)の導入を可能にし得る[73]。
【0058】
生物学的ペプチド合成を容易にするために、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供する。この核酸は、DNAもしくRNA(またはそのハイブリッド)、またはそれらのアナログ(例えば、改変骨格(例えば、ホスホロチオエート)を含むもの)またはペプチド核酸(PNA)であり得る。この核酸は、一本鎖(例えば、mRNA)であっても二本鎖であってもよく、本発明は、二本鎖核酸の個々の鎖の両方を含む(例えば、アンチセンス、プライミングまたはプロービング目的で)。この核酸は、直鎖状であっても環状であってもよい。この核酸は標識されていてもよい。この核酸は、固体支持体に結合されていてもよい。
【0059】
本発明に従う核酸は、当然のことながら、多くの様式で(例えば、完全にまたは部分的に、化学合成(例えば、DNAのホスホルアミダイト合成)により、より長い分子のヌクレアーゼ消化により、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、ポリメラーゼの使用などにより)調製され得る。
【0060】
本発明は、本発明の核酸を含むベクター(例えば、プラスミド)(例えば、発現ベクターおよびクローニングベクター)およびこのようなベクターで形質転換された宿主細胞(原核生物細胞または真核生物細胞)を提供する。
【0061】
これらのベクターはまた、核酸免疫のために使用され得る[例えば、参考文献74〜85など]。ペプチドは、治療的抗体であり得るので、このように、インビボで発現され得る。炭水化物抗原のポリペプチドミモトープのインビボ発現のためのDNAワクチン接種は公知である[例えば、86]。
【0062】
本発明の核酸を含み、本発明のポリペプチドまたは抗体を発現する宿主細胞は、送達ビヒクル(例えば、片利共生細菌)として使用され得る[87]。これは、粘膜表面への送達のために特に有用である。
【0063】
ミモトープは、それら自体が有用な免疫原であり得る。しかし、それらは、免疫原性を改善するために、または薬理学的に重要な特徴(例えば、バイオアベイラビリティー、毒物学、代謝、薬物動態など)を改善するために、改良され得る。本発明のミモトープは、免疫原性を有するペプチド模倣分子を設計するために有用であり得る[例えば、参考文献88〜93]。これらは、代表的には、本発明のミモトープに関して等配電子的であるが、それらのペプチド結合のうちの1以上を欠いている。例えば、このペプチド骨格は、非ペプチド骨格で置換され得ると同時に、重要なアミノ酸側鎖は保持される。
【0064】
(医学的処置および使用)
本発明の薬学的組成物は、(a)グルカン(例えば、プロテアーゼ処理細胞またはキャリア−グルカン結合体の形態で)、抗グルカン抗体、グルカンのミモトープを含有するポリペプチド、ミモトープのペプチド模倣物、および/またはミモトープをコードする核酸ベクター、ならびに(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含み得る。
【0065】
本発明は、医薬品として使用するための、グルカン、抗グルカン抗体、グルカンのミモトープ、ミモトープのペプチド模倣物、および/またはミモトープをコードする核酸ベクター、を提供する。
【0066】
本発明はまた、哺乳動物において抗体応答を惹起する方法を提供し、この方法は、本発明の薬学的組成物をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。この抗体応答は、好ましくは、IgA応答またはIgG応答である。
【0067】
本発明はまた、微生物感染に罹患した哺乳動物を処置する方法を提供し、この方法は、本発明の薬学的組成物をこの患者に投与する工程を包含する。感染性疾患は、全身性または粘膜性であり得る。
【0068】
本発明はまた、微生物感染から哺乳動物を保護する方法を提供し、この方法は、本発明の薬学的組成物をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0069】
本発明はまた、グルカン、抗グルカン抗体、グルカンのミモトープ、ミモトープのペプチド模倣物、および/またはミモトープをコードする核酸ベクターの、哺乳動物における微生物感染の予防または処置のための医薬の製造における使用を提供する。
【0070】
哺乳動物は、好ましくはヒトである。ヒトは、成人であるか、または好ましくは子供であり得る。ヒトは、免疫無防備状態であり得る。
【0071】
本発明は、能動免疫化および受動免疫化を同時に提供するために、(i)免疫原(例えば、グルカン、グルカンミモトープ、ミモトープのペプチド模倣物、および/またはミモトープをコードする核酸ベクター)、および(ii)抗グルカン抗体、またはこの抗体をコードする核酸、の両方を使用し得る。これらは、別々にかまたは組み合わせて投与され得る。別々に投与される場合、これらは、代表的に、交互に7日以内に投与される。これらは、共に、キットにパッケージングされ得る。
【0072】
グルカン(特に、βグルカン)は、ほとんど全ての病原性真菌、特に、免疫無防備状態の被験体において、また細菌病原体または原性動物における感染に関与する真菌の必須かつ主要な多糖構築物であるため、抗グルカン免疫は、広範な病原体および疾患に対する効力を有し得る。例えば、S.cerevisiaeでの免疫後に惹起された抗グルカン血清は、C.albicansと交差反応性である。広いスペクトルの免疫は、特に有用である。なぜなら、これらのヒト感染性真菌因子について、化学治療は不十分であり、抗真菌剤耐性が現れ、そして予防ワクチンおよび治療ワクチンの必要性がますます認識されているからである。
【0073】
本発明の使用および方法は、以下の感染に対する処置/保護のために特に有用である:Candida種(例えば、C.albicans);Cryptococcus種(例えば、C.neoformans);Enterococcus種(例えば、E.faecalis);Streptococcus種(例えば、S.pneumoniae、S.mutans、S.agalactiaeおよびS.pyogenes);Leishmania種(例えば、L.major);Acanthamoeba種(例えば、A.castellani);Aspergillus種(例えば、A.funigatusおよびA.flavus);Pneumocystis種(例えば、P.carinii);Mycobacterium種(例えば、M.tuberculosis);Pseudomonas種(例えば、P.aeruginosa);Staphylococcus種(例えば、S.aureus);Salmonella種(例えば、S.typhimurium);Coccidioides種(例えば、C.immitis);Trichophyton種(例えば、T.verrucosum);Blastomyces種(例えば、B.dermatidis);Histoplasma種(例えば、H.capsulatum);Paracoccidioides種(例えば、P.brasiliensis);Pythiumn種(例えば、P.insidiosum);およびEscherichia種(例えば、E.coli)。
【0074】
これらの使用および方法は、以下を含むがこれらに限定されない疾患を予防/処置するために特に有用である:カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、皮膚真菌症、スポロトリクム症および他の皮下真菌症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症、コクシジオイデス真菌症、パラコクシジオイデス症、ニューモシスティス症、鵞口瘡、結核、ミコバクテリア症、呼吸性感染、猩紅熱、肺炎、膿痂疹、リウマチ熱、敗血症(sepsisまたはsepticaemia)、皮膚リーシュマニア症および内臓リーシュマニア症、角膜棘細胞症(corneal acanthamoebiasis)、嚢胞性線維症、腸チフス、胃腸炎および溶血性尿毒症症候群。抗C.albicans活性は、特に、AIDS患者における感染を処置するために有用である。
【0075】
治療的処置の効果は、本発明の組成物の投与後に微生物感染をモニタリングすることによって、試験され得る。予防的処置の効果は、この組成物の投与後に、βグルカンに対する免疫応答(例えば、抗βグルカン抗体)をモニタリングすることによって試験され得る。
【0076】
本発明の組成物は、一般に、患者に直接投与され得る。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内または組織の間質空間へ)によって、または経直腸、経口、経膣、局所、経皮、経眼球、経鼻腔、経耳または経肺投与によって達成され得る。注射または鼻腔内投与が好ましい。
【0077】
本発明は、全身および/または粘膜免疫を惹起するために使用され得る。
【0078】
投薬処置は、単回用量スケジュールまたは多回用量スケジュールであり得る。
【0079】
(薬学的に受容可能なキャリア)
薬学的に受容可能なキャリアは、それ自体ではこの組成物を投与された患者に対して有害な抗体の産生を引き起こさず、かつ過度な毒性を伴うことなく投与され得る任意の物質であり得る。適切なキャリアは、ゆっくりと代謝される大きな高分子(例えば、タンパク質、多糖類、高分子ポリ酪酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子)であり得る。このようなキャリアは、当業者に周知である。薬学的に受容可能なキャリアとしては、液体(例えば、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノール)が挙げられ得る。補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質など)もまた、このようなビヒクル中に存在し得る。リポソームは適切なキャリアである。薬学的キャリアの詳細な考察は、参考文献94で入手可能である。
【0080】
微生物感染は、身体の種々の領域に影響を与え、従って、本発明の組成物は、種々の形態で調製され得る。例えば、この組成物は、溶液または懸濁液のいずれかとしての注射液として調製される。この組成物は、局所投与のために、例えば、軟膏、クロームまたは粉末として調製され得る。注射の前に、液体ビヒクル中の溶液または懸濁液にするために適切な固体形態もまた調製され得る。この組成物は、経口投与のために、例えば、錠剤またはカプセル剤、あるいはシロップ(必要に応じて香味付けされている)として調製される。この組成物は、経肺投与のために、例えば、微細な粉末またはスプレーを使用する吸入器のようにして調製され得る。この組成物は、坐剤または膣座剤として調製され得る。この組成物は、経鼻腔、経耳または経眼球投与のために、例えば、ドロップとして、スプレーとして、または粉末として調製され得る(例えば、95)。この組成物は、うがい薬中に含まれ得る。この組成物は、凍結乾燥され得る。
【0081】
この薬学的組成物は、好ましくは、滅菌性である。この組成物は、好ましくは、発熱物質を含まない。この組成物は、好ましくは、例えば、pH6とpH8との間、一般的には、約pH7に緩衝化される。
【0082】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物を含む送達デバイスを提供する。このデバイスは、例えば、シリンジまたは吸入器であり得る。
【0083】
(免疫原性組成物)
免疫原性組成物は、免疫学的有効量の免疫原、および必要に応じて、任意の他の特定の化合物を含む。「免疫学的有効量」とは、個体に投与される量(単回用量または一連の一部として)が処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康状態および生理学的状態、処置される個体の年齢、分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望の保護の程度、ワクチンの処方、医療現場の処置している医師の評価、および他の関連の要因に依存して変化する。この量は、慣用的な試験によって決定され得る比較的広い範囲に入ることが予想され得る。投薬処置は、単回用量スケジュールまたは多回用量スケジュール(例えば、ブースター投与)であり得る。この組成物は、他の免疫調節剤と共に投与され得る。
【0084】
β−グルカンは、それ自体アジュバントであるものの、免疫原性組成物は、さらにアジュバントを含み得る。この組成物の効力を高める好ましいアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(A)アルミニウム化合物(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウム、アルミニウムオキシヒドロキシド、オルトリン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等(例えば、参考文献96の第8章および第9章を参照のこと))、または異なるアルミニウム化合物の混合物であって、ここでこれらの化合物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、アモルファスなど)をとり、そして吸着が好ましい;(B)MF59(5% スクアレン、0.5% Tween 80、および0.5% Span 85、マイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に処方される)(参考文献96の第10章を参照のこと、参考文献97もまた参照のこと);(C)リポソーム(参考文献96の第13章および第14章を参照のこと);(D)ISCOM(参考文献96の第23章を参照のこと)これは、さらなる界面活性剤を含まなくてもよい(98);(E)SAF(10% スクアレン、0.4% Tween 80、5% プルロニックブロックポリマー L121およびthr−MDPを含み、サブミクロンエマルジョンにマイクロフルイダイズされるか、またはより大きな粒子サイズのエマルジョンを生成するためにボルテックスされるかのいずれかである)(参考文献96の第12章を参照のこと);(F)RibiTMアジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem)(2% スクアレン、0.2%Tween 80、および1種以上の細菌細胞壁成分を含み、この細菌細胞壁成分は、モノリン脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群から選択され、好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM)である);(G)サポニンアジュバント(例えば、QuilAまたはQS21)(参考文献96の第22章を参照のこと)、StimulonTMとしても公知;(H)キトサン(例えば、99);(I)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(J)サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロンγ)、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子など)(参考文献96の第27章および第28章を参照のこと);(K)微粒子(すなわち、約100nmから約150μmの直径、より好ましくは約200nm〜約30μmの直径、最も好ましくは約500nm〜約10μmの直径の粒子)であって、生分解性かつ非毒性の材料(例えば、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなどのようなポリ(α−ヒドロキシ酸)から形成される粒子;(L)モノホスホリルリピドA(MPL)または3−O−デアシル化MPL(3dMPL)(例えば、参考文献96の第21章を参照のこと);(M)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型エマルジョンとの組合せ(100);(N)CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(101)、すなわち、少なくとも1つのCGジヌクレオチドを含み、5−メチルシトシンが、必要に応じて、シトシンの代わりに使用される;(O)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル(102);(P)オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(103)、または少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤(104);(Q)免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)およびサポニン(105);(R)免疫刺激剤および金属塩の粒子(106);(S)サポニンおよび水中油型エマルジョン(107);(T)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール)(108);(U)E.coli熱不安定エンテロトキシン(「LT」)、またはその解毒変異体(例えば、K63変異体またはR72変異体)(例えば、参考文献109の第5章);(V)コレラ毒素(「CT」)またはその解毒変異体(例えば、参考文献109の第5章);(W)二本鎖RNA;(X)モノホスホリルリピドA模倣物(例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC−529))(110);(Y)ポリホスファゼン(PCPP);または(Z)生体接着剤(111)(例えば、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア(112)またはポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体からなる群から選択される粘膜付着剤)。この組成物の効力を増大する免疫刺激剤として作用する他の物質(例えば、参考文献96の第7章を参照のこと)もまた使用され得る。アルミニウム塩(特に、リン酸アルミニウムおよび/または水酸化アルミニウム)が、非経口免疫化のために好ましいアジュバントである。変異体毒素は、好ましい粘膜アジュバントである。
【0085】
ムラミルペプチドとしては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)などが挙げられる。
【0086】
一旦処方されると、本発明の組成物は、被験体に直接投与され得る。処置される被験体は、動物であり得、特に、ヒト被験体が処置され得る。ワクチンは、子供または若者にワクチン接種するために特に好ましい。
【0087】
本発明の免疫原性組成物は、治療的に(すなわち、存在する感染を処置するために)使用され得るか、または予防的に(すなわち、将来の感染を防ぐために)使用され得る。治療的免疫化は、免疫無防備状態の被験体において、Candida感染を処置するために、特に有用である。
【0088】
この組成物は、β−グルカンと同様に、さらなる抗原性成分を含有し得る。例えば、この組成物は、1つ以上のさらなる糖類を含み得る。例えば、この組成物は、Neisseria.meningitidisのA、C、W135および/またはYの血清型由来の糖類を、含有し得る。これらは、代表的に、キャリアタンパク質と結合し得、そしてN.meningitidisの異なった血清型由来の糖類は、同一または異なったキャリアタンパク質と結合され得る。混合物が、A血清型に由来するカプセル糖類およびC血清型に由来するカプセル糖類の両方を含有する場合、MenA糖類:MenC糖類の比率(w/w)は、1より大きいことが好ましい(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1以上)。MenC成分に対し過剰に存在する(質量/用量)場合、MenA成分の改善された免疫原性が、観察されている。
【0089】
この組成物はまた、タンパク質抗原も含有し得る。
【0090】
本発明の組成物に含まれ得る抗原としては、以下が挙げられる:
−Helicobacter pyloriに由来する抗原(例えば、CagA[113〜116]、VacA[117、118]、NAP[119、120、121]、HopX[例えば、122]、HopY[例えば、122]および/またはウレアーゼ)。
−N.meningitidisのB血清型に由来するタンパク質抗原(参考文献123〜129中のタンパク質「287」(下記参照)、および誘導体(例えば、「ΔG287」)が、特に好ましい)。
−N.meningitidisのB血清型から調製される外膜小胞(OMV)(例えば、参考文献130、131、132、133、などにおいて開示される)。
−N.meningitidisのC血清型に由来する糖類抗原(例えば、参考文献134において開示されるC血清型由来少糖類[参考文献135も参照]。
−Streptococcus pneumoniaeに由来する糖類抗原[例えば、136、137、138]。
−A型肝炎ウイルスに由来する抗原(例えば、不活性化ウイルス[例えば、139、140])。
−B型肝炎ウイルスに由来する抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原[例えば、140、141])。
−C型肝炎ウイルスに由来する抗原[例えば、142]。
−Bordetella pertussisに由来する抗原(例えば、B.pertussis由来の、百日咳ホロ毒素(PT)および線維状赤血球凝集素(FHA)、必要に応じて、ペルタクチンおよび/または細胞凝集原2および細胞凝集原3と併用する[例えば、参考文献143&144]。
−ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド[例えば、参考文献145の第3章]例えば、CRM197変異体[例えば、146])。
−破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド[例えば、参考文献145の第4章]。
−Haemophilus influenzae Bに由来する糖類抗原[例えば、135]。
−N.gonorrhoeaeに由来する抗原[例えば、123,124、125]。
−Chlamydia pneumoniaeに由来する抗原[例えば、147,148、149,150、151,152、153]。
−Chlamydia trachomatisに由来する抗原[例えば、154]。
−Porphyromonas gingivalisに由来する抗原[例えば、155]。
−ポリオ抗原[例えば、156、157](例えば、IPVまたはOPV)。
−狂犬病抗原[例えば、158](例えば、凍結乾燥不活性化ウイルス[例えば、159、RabAvertTM)。
−麻疹抗原、おたふく風邪抗原および/または風疹抗原[例えば、参考文献145の第9章、第10章&第11章]。
−インフルエンザウイルス由来の抗原[例えば、参考文献145の第19章](例えば、赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質)
−RSウイルス(RSV[160、161])および/またはパラインフルエンザウイルス(PIV3[162])のようなパラミクソウイルス(paarmyxovirus)由来の抗原。
−Moraxella catarrhalisに由来する抗原[例えば、163]。
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)に由来する抗原[例えば、164,165]。
−Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)に由来する抗原[例えば、165,166、167]。
−Staphylococcus aureusに由来する抗原[例えば、168]。
−Bacillus anthracisに由来する抗原[例えば、169、170、171]。
−フラビウイルス科(フラビウイルス属)のウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルスの4つの血清型、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイル熱ウイルス)に由来する抗原。
−ペスチウイルス抗原(例えば、古典的豚コレラウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルスおよび/またはボーダー病ウイルス)。
−パルボウイルス抗原(例えば、パルボウイルスB19由来)。
【0091】
この組成物は、1つ以上の、これらのさらなる抗原を含み得る。
【0092】
毒性タンパク質抗原は、必要な場合、無毒化され得る(例えば、化学的手段および/または遺伝的手段による、百日咳毒素の無毒化[144])。
【0093】
ジフテリア抗原が組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含まれることが、好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含まれることが望ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含まれることが望ましい。
【0094】
抗原は、好ましくは、アルミニウム塩に吸着されることが望ましい。
【0095】
組成物中の抗原は、代表的に、少なくとも各1μg/mlの濃度で存在する。一般に、任意の所定の抗原の濃度は、この抗原に対して免疫応答を誘発するために十分である。
【0096】
本発明の組成物におけるタンパク質抗原の使用の代替として、抗原をコードする核酸が、使用され得る。本発明の組成物のタンパク質成分は、従って、このタンパク質をコードする核酸に、置換され得る(好ましくは、DNA(例えば、プラスミド形態))。
【0097】
本発明の組成物は、特に、患者が既に感染している場合、抗真菌剤と併用して使用され得る。抗真菌剤は、即効の治療効果を提供するが、免疫原性組成物は、より長く持続する効果を提供する。適切な抗真菌剤としては、アゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール)、ポリエン(例えば、アンホテリシンB)、フルシトシン、およびスクアレンエポキシダーゼインヒビター(例えば、テルビナフィン)が挙げられる[参考文献172も、参照]が、これらに限定はされない。抗真菌剤および免疫原生組成物は、別々に投与されても、組み合わせて投与されてもよい。別々に投与される場合、代表的には、互いに7日以内に投与される。最初の免疫原性組成物の投与後、抗真菌剤が、1回以上投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、免疫蛍光のデータを示す。細胞は、無処理真菌「Y」細胞(1A、1C、1E)またはプロテアーゼ処理「YDP」細胞(1B、1D、1F)のどちらかである。標識化抗体は、抗Y血清(1A,1B)、抗YDP血清(1C、1D)または抗マンノタンパク質抗体AF1(1E、1F)である。
【図2】図2は、非刺激コントロール培養に対する、測定した実験群の平均刺激指標値(±SD)である。アスタリスクは、コントロールに対する有意差を示す(*p<0.05または**p<0.001、ANOVAおよびBonferroniの倍数t検定により評価した)。増殖応答における他の相違の全ては、有意でなかった。
【図3−1】図3は、致死性誘発実験の結果を示す。図3Aおよび図3Bは、誘発後に生存していた動物を示す。
【図3−2】図3は、致死性誘発実験の結果を示す。図3Cは、腎臓感染データを示す。
【図4】図4は、受動的免疫転移における、血清の前吸着の効果を示す。
【図5】図5は、受動的免疫転移における、血清の前吸着の効果を示す。
【図6】図6は、以下の種々の層を示す、代表的C.albicans細胞壁の図解である:原形質膜(PM)、マンノタンパク質領域(M1)、グルカン−キチン(GC)、グルカン(G)、マンノタンパク質(M2)および外原繊維層(F)。
【図7】図7は、グルカン−CRM197結合体の、溶出プロファイルを示す。
【図8】図8は、グルカン−CRM197結合体の分析を示す。図8は、限外濾過前の結合体のSDS−PAGEゲルである。
【図9】図9は、グルカン−CRM197結合体の分析を示す。図9は、限外濾過前の結合体の免疫ブロットである。
【図10】図10は、グルカン−CRM197結合体の分析を示す。図10は、限外濾過後の結合体のSDS−PAGEゲルである。
【図11】図11は、グルカン−CRM197結合体の分析を示す。図11は、限外濾過後の結合体の免疫ブロットである。
【図12】図12は、Bio−Gel P−2カラムの溶出プロファイルを示す。画分番号は、X軸上に示され、OD214nmは、Y軸に示される。
【図13】図13は、ラミナリン−CRM197結合体のSDS−PAGE分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
(定義)
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「含む(consisting)」を意味する。例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXから構成されても、さらなる何かを含んでもよい(例えば、X+Y)。
【0100】
(発明を実行するための形態)
(マンノタンパク質枯渇酵母細胞の調製)
C.albicans BP株、血清型A(Istituto Superiore di Sanita (Rome,Italy)の寄託当局から)を、サブロー寒天斜面上で慣用的に維持した。全ての実験について、真菌を、液体Winge培地内で、28℃において、酵母形態で培養し、生理食塩水中で2回洗浄し、血球計算器で計数し、そして滅菌生理食塩水中に所望の濃度で再懸濁した。
【0101】
正常細胞(「Y細胞」)の調製について、酵母細胞懸濁液(108細胞/ml)を、80℃で30分不活性化し、洗浄し、1週間を超えない間、4℃で保存した。
【0102】
マンノタンパク質枯渇細胞(「YDP細胞」)を調製するため、上述のような熱不活性化Y細胞(108/ml)を、5 mM EDTANa2中の50 mM DTTで処理した(1時間、37℃)。500μg/mlプロテイナーゼK(Sigma)を、消化混合物に加え、そして細胞を、さらに1時間、37℃で処理した。真菌細胞を、生理食塩水で過剰に洗浄して酵素を除去し、食塩水中に再懸濁し、そして直後に使用した。
【0103】
C.albicansの芽管(GT)形態または菌糸形態を、Leeの培地中37℃で培養することによって、得た。
【0104】
(Y細胞またはYDP細胞による免疫化)
雌の4週齢のCD2F1マウスおよびSCIDマウス(Charles River Laboratory、Calco、Italy)を、Y細胞またはYDP細胞で免疫した。マウスを、フロイント完全アジュバント(Sigma)中のY細胞またはYDP細胞(106細胞/100μl/マウス)を用いて一週間間隔で2回皮下注射し、そして腹腔内経路で同じ数の免疫化細胞を用いてアジュバントなしで5回注射した。コントロール動物は、フロイントアジュバントおよび生理食塩水のみで注射した。
【0105】
(免疫応答の分析)
Y細胞は、C.albicansの全ての抗原性細胞壁と抗原性細胞質成分を含み、そしてこれらは、全てのこのような抗原に対し、マウスを免疫化し得るはずである。しかし、プロテアーゼ処理に起因して、YDP細胞は、細胞表面成分に対し、一貫した免疫応答を誘導し得ないはずである。
【0106】
抗体応答を評価するために、免疫化動物を後部眼窩(retroorbital)穿刺により出血させ、各免疫化グループから集めた血清を免疫蛍光アッセイによって抗体含有量について試験した。Y細胞およびYDP細胞を顕微鏡スライド上にスポットし、0.01M PBS中の種々の希釈のマウス抗Y血清または抗YDP血清あるいはモノクローナル抗体AF1(C.albicans酵母細胞の表面上に高度に発現されるβ−1,2マンノ少糖類性の(mannooligosaccharidic)エピトーブに対して特異的)と反応させた。広範囲に洗浄した後、スライドをFITC結合体化抗マウスIgM抗体で処理し、Leitz Diaplan蛍光顕微鏡で観察した。
【0107】
抗YDP血清は、YDP細胞との免疫蛍光において強く反応性であった(図1B)が、Y細胞については非常に弱かった(図1D)。逆に、抗マンノタンパク抗体AF1は、Y細胞とは反応した(図1E)が、YDP細胞とは反応しなかった(図1F)。従って、YDP細胞の表面プロフィールは、Y細胞とは非常に異なる。
【0108】
血清をまた、ELISAによっても分析した。ポリスチレンマイクロタイタープレートを炭酸緩衝液(pH9.6)中の50μl/mlの抗原でコーティングした。プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の3%スキムミルクでブロッキングし、PBS−0.05% Tween20中の2倍希釈のマウス血清と反応させ、そして二次抗体としてアルカリホスファターゼ結合体化ウサギ抗マウスIgGまたはIgM、および酵素基質としてp−ニトロフェニルホスフェートジソディウムを使用して展開した。アジュバントで免疫したマウスから集めた血清をネガティブコントロールとして使用した。プレートを405nmで読み取り、抗体力価をネガティブコントロールの少なくとも2倍のOD読み取り値を与える最も高い希釈のマウス血清として定義した。
【0109】
7つの抗原を使用した:
− C.albicans Y細胞(106/ウェル);
− C.albicans 芽管細胞(106/ウェル);
− ラミナリン(β−1,3−グルカン、Sigma);
− プスツラン(pustulan)(β−1,6−グルカン、CalbioChem);
− 真菌性マンノタンパク(「Secr−MP」)(28℃でのリー培地における24時間の真菌培養物の上澄み液から調製した);
− マンノタンパク画分MP−F2(C.albicansの細胞壁から精製した);および
− C.albicansの可溶性グルカン抗原(GG−zym)((i)精製したβ−1,3−グルカンおよびβ−1,6−グルカンを得るために、真菌の細胞壁の繰り返しの熱アルカリ−酸抽出によってグルカンゴーストを調製する工程、そして(ii)このゴーストをβ−1,3グルカナーゼ(Zymoliase 100T,Seikagaku)で37℃で1時間消化する工程によって得た)。
【0110】
結果は以下の通りであった。値は、類似の結果を有して行われた3回うちの1回の代表的実験に由来する:
【0111】
【表1】
【0112】
従って、抗Y細胞血清は、Y形態およびGT形態(β−1,6−グルカンおよびβ−1,3−グルカンを含む)の両方で存在する全ての主要な細胞壁構成物、ならびに主要な細胞質抗原に対する抗体を含んでいた。
【0113】
対照的に、そして予想を確認するように、抗YDP細胞血清は、抗グルカン抗体としての高い力価を有していたが、酵母または芽管細胞の全体、および細胞表面に位置するマンノタンパクまたは分泌性マンノタンパクに対しては低い抗体力価であった。
【0114】
Y細胞免疫またはYDP細胞免疫の後の細胞媒介性免疫の誘導をアッセイするために、コントロールまたは免疫化マウスの脾臓細胞をY細胞またはYDP細胞の存在下で、およびβ−グルカン調製物と共に、インビトロで増殖するように誘導した。
【0115】
簡潔には、0.16M Tris緩衝NH4Cl(pH7.2)の3ml中の脾臓細胞懸濁液に9mlの完全培地(5% 胎児性仔ウシ血清、100U/ml ペニシリン、100mg/ml ストレプトマイシン、1mM ナトリウムピルベート(sodium piruvate)、2mM L−グルタミン、MEM−非必須アミノ酸、10-5M 2−メルカプトエタノールを補充された、RPMI 1640)を添加した。脾臓細胞を遠心分離で洗浄し、マルチウェルプレートにプレートし(106/ml、200ml/ウェル)、そしてY細胞またはYDP細胞(105/ml)、GG−Zym画分(50mg/ml)あるいはコンカナバリンA(2mg/ml=コントロール)で刺激した。各状態を3連でアッセイした。脾臓細胞培養物を5%CO2大気中37℃でインキュベートした。抗原刺激については4日後、およびポリクローナル性コントロール刺激薬についてはインキュベーションの2日後の3H−チミジンの取り込みとして、増殖を評価した。刺激した脾臓細胞培養物の平均c.p.m値を刺激していないコントロール培養物の平均c.p.m値で割ることにより、刺激指数を計算した。
【0116】
図2に示されるように、Y細胞またはYDP細胞での免疫化は、一定の程度の脾臓細胞の増殖を刺激する場合に大きく交差反応性であったが、特定の免疫される抗原調製物によってインビトロで刺激された脾臓細胞において、より強い応答が見られた。全ての動物(非免疫化コントロールを含む)の脾臓細胞が、ConAによるポリクローナル性の刺激に対して応答した。C.albicansのβ−グルカンによってインビトロデで刺激された脾臓細胞培養物においては、増殖が検出されなかった。
【0117】
そのため、総じて、Y細胞またはYDP細胞による免疫は、両方の細胞調製物に存在する抗原に対して、大きな交差反応性の体液性応答およびCMI応答を誘導した。しかし、抗MP指向性抗体および抗Y細胞表面指向性抗体は、Y細胞全体で免疫したマウスにおいてのみ存在した。
【0118】
(致命的チャレンジに対する保護)
Y細胞による免疫が、真菌の主要な抗原構成成分に対する一定の体液性免疫応答および細胞媒介性免疫応答を誘導することが実証されたので、細胞の保護能力を急性致死性マウスカンジダ症モデルにおいて試験した。
【0119】
致死用量のC.albicansによる静脈内チャレンジの後の60日間の動物の生存(1グループあたり15)をモニタリングすることで、保護を評価した。用量は、0.1ml中に1×106(図3A)細胞または2×106(図3B)細胞、あるいはアジュバントのみのコントロールのいずれかであった。
【0120】
非免疫化コントロールグループのマウスは、より高い用量で1〜2日の中央生存時間を有していた。Y細胞で免疫化したマウスは、真菌チャレンジに対して中央生存時間の増大を示したが、チャレンジ後15〜17日目で全てが死に、全体的な生存率は、コントロールとは統計学的に異ならなかった。
【0121】
対照的に、YDPで免疫化した動物は、ずっとより耐性であり、中央生存は>60日であった。アジュバント処置した動物およびY細胞免疫化動物と比較した場合のYDP免疫化動物の生存率の相違は、両方の用量において統計学的に有意であった(p<0.05、フィッシャーの直接確率検定)。
【0122】
106細胞で感染させられた動物の腎臓でのCandidaの増殖(outgrowth)の程度を定量することでも、保護を評価した。これは、チャレンジ後7日目で屠殺したマウスの左の腎臓を無菌的に取り出し、その後、0.1% Triton−X100(Sigma)を含む滅菌生理食塩水中でホモジナイズすることを含んだ。1つの器官あたりのコロニー形成単位(CFU)の数をサブローデキストロース寒天上でのプレート希釈法によって決定した。各腎臓を別々に試験し、各サンプルの少なくとも3つの異なる希釈を3連でアッセイした。
【0123】
図3Cに見られるように、腎臓における平均真菌負荷は、Y細胞免疫化グループ(15.4±0.6 ×103;p<0.05(Kruskal−Wallis ANOVAそしてBonferroni型の非パラメトリック多重比較による))およびコントロールグループ(約60×103;p<0.05)よりもYDP細胞免疫化マウス(CFU<103)においてずっと低かった。Y細胞グループとコントロールグループとの間の相違は、統計的に有意ではなかった。
【0124】
この実験はまた、免疫応答性の動物と同じワクチン接種スケジュールで、SCIDマウスについても行った。保護は観察されず、適応性免疫応答が保護に必須であることを実証した。そのため、C.neoformansについての参考文献173での報告とは異なり、CD4+細胞は、抗体媒介性保護には含まれない。
【0125】
(受動的免疫化)
Y細胞またはYDP細胞に対する免疫応答の主要な相違は、細胞壁構成成分に対する抗体の特異性にあるので、非免疫化動物に保護を移す免疫血清の能力を試験した。これらの試験はまた、受動的に投与された血清によって与えられる保護に対する受容者マウスの免疫系の潜在的寄与を評価した。
【0126】
CD2F1マウスまたはSCIDマウスを0.5mlの抗Y細胞血清または抗YDP細胞血清の1度の腹腔内注射により受動的に免疫化した。コントロール動物は、アジュバントで免疫化したマウス由来の血清を受容した。各血清を移植の前に加熱処理(56℃、30分)して、熱不安定性の非抗体構成成分を不活性化した。血清の移植から2時間後に、マウスを致死量以下の用量のC.albicans(5×105細胞)で静脈内チャレンジし、2日後に上記の腎臓モデルを使用して保護を評価した。これらの実験は、YDP細胞ワクチンまたはY細胞ワクチンで独立して免疫化された動物に由来する血清の種々のバッチを使用して行った。
【0127】
チャレンジ後2日目での結果は、以下の通りであった。データは、マウスの各グループから列挙された個々のCFU数の加重平均を示す。統計的分析は、Kruskal−Wallis ANOVAそして、その後の非パラメトリックBonferroni型多重比較試験による:
【0128】
【表2】
【0129】
従って、抗Y細胞血清を受容した動物は、コントロールの非免疫化血清を受容した動物と同じ腎臓における真菌負荷の増大を有していた。対照的に、抗YDP細胞血清を受容した動物は、コントロール血清を受容した動物よりも腎臓において有意に少ない真菌細胞を有していた。これは、それぞれの免疫化血清の異なるバッチ、ならびに免疫応答性マウスおよびSCIDマウスの両方において観察された。
【0130】
これらのデータは、抗体が保護において重要な役割を果たしていることを示唆したので、YDP免疫化マウス由来の血清のIgM画分を精製し、受動的免疫化のために使用した。アジュバントのみを与えられた動物の血清から精製した同じ画分をコントロールとして使用した。1度の試験において、106細胞のC.albiciansが静脈内注射された4匹のマウスのチャレンジ後2日目の真菌の腎臓負荷は、コントロールマウスの腎臓における1359±18(×103)細胞に対して、290±8(×103)であった(p<0.01)。YDP血清のIgM画分は、C.albiciansのグルカン抽出物に対して高度に反応性であった。
【0131】
(受動的免疫効力の除去)
YDP細胞での免疫化によって産生された血清抗体は、β−グルカン構成成分を認識した(上記を参照のこと)。これらの抗体を除去して、免疫の受動的移動を再試験した。
【0132】
抗Y細胞血清または抗YDP細胞血清を選択的に吸着させて、グルカン特異的抗体または抗表面マンノタンパク抗体を除去した。血清(2ml)を10mgの粒状グルカン(グルカンゴースト)または2×108のC.albiciansの生きている酵母細胞で処理した(1時間、0℃)。吸着物を遠心分離で除去し、この手順を3回繰り返した。吸着手順の効力を、コーティング抗原として酵母細胞またはGG−zymを使用してELISAによって評価した。
【0133】
この手順は、代表的には、抗YDP血清の抗βグルカン力価および抗Y血清の抗MP力価を2〜3対数低下させた。βグルカンに対する抗体は、インタクトなY細胞での吸着により除去されなかった。
【0134】
YDP血清上の予備吸着の効果もまた、腎臓負荷モデルで評価された(図4)。非吸着および予備吸着血清(0.5ml/マウス)を、C.albicansでの静脈内致死量以下の抗原投与(5×105細胞/マウス)の2時間前に、マウス(1群あたり3匹)に腹腔内投与した。腎臓侵襲は、個々のCFUカウントにより抗原投与後48時間で評価された。
【0135】
YDP血清は、コントロール血清よりかなり良好であったが(p<0.05)、βグルカンでの予備吸収は、この効果を取り除き(p<0.05)、コントール血清と吸着血清との間に統計的有意差はなかった。
【0136】
従って、適切なレベルの保護が、YDP細胞レシピエント動物の血清によってネイティブ動物に移入され得、この保護血清因子は熱安定性であり、そしてこの血清の免疫グロブリン画分もまた保護的である。この保護血清は、抗βグルカン抗体が豊富であり、そして抗MP抗体に乏しい。純粋なβグルカン上に吸収されるとき、この血清は、その保護能力のかなりを失う。さらに、抗Y細胞血清は、抗βグルカン抗体ではなく抗マンノタンパク質抗体が失われたとき、保護的であった。結局、この証拠は、保護IgMは、βグルカンを認識するIgMを含むことを示唆している。
【0137】
(保護アンタゴニスト抗体および非保護アンタゴニスト抗体)
先のデータは、抗βグルカン抗体がYDP細胞ワクチンにより与えられる保護における役割を演じていることを示唆している。しかし、Yワクチンで免疫化された動物の血清はまた、高力価の抗βグルカン抗体を含む(上記を参照のこと)。従って、このY血清は、抗βグルカン抗体の活性を阻害するYDP血清には存在しない物質を含み得る。
【0138】
Y細胞とYDP細胞との間の差異、およびそれらの血清間の差異を考慮して、この物質は、真菌細胞表面成分に対する抗体であるようであった。この仮説を試験するために、Y細胞免疫化動物からの血清をY細胞に吸着し、そして得られる血清をSCIDマウスに投与した。このY細胞吸着血清は、抗MP抗体の実質的減少を有していたが、増加した抗βグルカン抗体レベルを維持していた。図5に示されるように、予備吸着されたY血清を受けた動物(カラム5)は、非吸着Y血清を与えた動物(カラム4)より約2対数低い腎臓負荷を有し、そしてこれは、保護YDP血清を与えた動物のそれに匹敵した(カラム2)。
【0139】
従って、このY血清は、酵母細胞表面に対する抗体を含み、これらは、下にある細胞壁抗原(βグルカン)に対する抗体により与えられる保護に対し阻害的である。
【0140】
これらのデータは、抗Candida血清が移入する保護に一致して見出されなかった理由、およびC.albicansの完全不活性化細胞での免疫化が、高められたDTH、細胞媒介免疫および豊富な抗Candia抗体を常に刺激するが、変動的に保護的である理由を説明し得る。このデータは、C.albicansに対する抗体媒介保護が、完全抗体の存在を要求するのみならず、特定のその他の抗体の不在をまた要求することを強く示唆している。
【0141】
豊富に発現された細胞表面成分に対する抗体が、C.albicansがコロニーを形成した健常な人々で優勢であるので、アンタゴニスト抗体またはブロッキング抗体の生成は、それによってこの真菌が、それ自身をその他の抗体の根絶能力から防御する機構であり得る。
【0142】
βグルカンに対する抗体が、正常なヒト血清で先に観察されている[例えば、174]。それらは、しかし、細胞表面成分と反応せず、真菌細胞を明らかにオプソニン化しないので、保護の機構における役割は却下されている。参考文献174の抗βグルカンIgG2は、非カプセル化βグルカンを剥き出すC.neoformans細胞のオプソニン活性に不必要であると詳細に述べられた。本明細書中のデータは、この考えの再考慮を招聘する。なぜなら、抗βグルカン抗体は、少なくともブロッキング抗体が不在であるとき、保護における役割を演じることが示されるからである。
【0143】
ブロッキング抗体が存在するときでさえ、抗マンノタンパク質抗体のレベルは、自然感染およびコロニー形成の間の抗グルカン抗体のレベルより高いが、免疫原性グルカンの投与は、保護に有利に阻害抗体および保護抗体のバランスを傾け得る。さらに抗C.albicansブロッキング抗体は、(例えば、その細胞壁がグルカンを含むがマンノタンパク質を含まないような)その他の病原体に対する抗グルカン抗体の活性を阻害しないかもしれない。
【0144】
(グルカンキャリア結合体の調製)
上記のように、GG−zymは、C.albicans細胞のグルカンゴースト調製物のグルカナーゼ消化により調製される。GG−zymは、純粋(>99%)のβグルカンである。GG−zym糖類を、CRM197キャリアタンパク質に結合体化し、「CRM−GG」を得た。
【0145】
CRM−GGを調製するために用いた結合体化プロセスは、鎖あたり1つの末端アミノ基が付加される還元アミノ化で開始する。このアミノ基は、アジピン酸のジ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応し易く、活性化リンカーを与える。この活性化された糖類は、CRM197タンパク質に結合体化され、そしてこの結合中間体は限外濾過によって生成される。
【0146】
還元アミノ化を、水性βグルカン糖溶液(2mg/mlGG−zym)を、ナトリウムシアノボロハイドライド(28.9g/l)の存在下で、酢酸アンモニウム(300g/l)と反応することよって実施した。この酢酸塩およびシアノボロハイドライドは、漏斗によって糖溶液に添加され、そしてこの混合物を、これら成分が溶解するまで攪拌した。次いで、pHを7.2に調整し、そしてこの混合物を、ガラス瓶に移し、それをシールし、50±1℃の水浴中で5日間インキュベートした。この反応は、末端アミノ基をもつ糖類を与えた。
【0147】
次いで、このアミノ化糖類を、Sephadex G−10カラム上のクロマトグラフィーにより精製した。すべてのクロマトグラフィーは、室温で24cm/時の流速を用いて実施し、そして進行は、伝導度によって、および214nmにおける吸光度によってモニタリングした。カラムは、最初、20%エタノール貯蔵溶液を除去するために2リットル(5カラム容量)の蒸留水で洗浄した。次いで、このカラムを、2リットルの0.2M NaClで平衡化した。サンプルをこのカラムにロードし、そして画分を集めた(図7)。上記糖類は、214nmで吸光度をもたないので、画分は、グルコース分析(フェノール硫酸法[175])で分析し、そしてこの糖類を含む画分を合わせた。この糖類は、カラムから、0.2M NaClの1.5カラム容量の後溶出された。
【0148】
精製された産物を濃縮し、そしてNaClを除去して精製した。膜(1K マイクロセップ、PALLFILTRON)を蒸留水で、微小遠心分離T上4℃で1時間3000rpmにおける遠心分離により洗浄した。糖類をこの膜に添加し、そして4000rpmで3時間遠心分離し0.5ml容量を得た。1.5mlの蒸留水を添加し、そしてこの混合物を以前のように遠心分離した。このサイクルを、NaCl濃度が0.02Mより低くなるまで繰り返した。サンプルを照合した。さらに、この膜を、蒸留水で最終洗浄し、そして洗浄溶液をこの照合したサンプルに添加した。精製糖類を、グルコースについて[175]、およびアミン基について[176]分析した。
【0149】
次いで、この糖類を、KNF Neuberger Laboport減圧ポンプ、Buchi461水浴(37℃)およびPharmacia Biotech multitempIII再循環コンデンサー冷却器(4℃)と組み合わせたBuchi回転エバポレーター(Model EL 131;90rpm)を用いる回転エバポレーションにより乾燥した。減圧圧力を、沸騰を避けるためにゆっくりと増加した。蒸発液体の最初の相は目に見えた。この相の端の近傍で、生成物の大部分は乾燥したようであり、その中にいくつかの泡が移動して見ることができた。この最初の相は、明白な移動して見える液体がないときに終了した。乾燥の第2の相は、物質がガラス状および割れて見えるまでの同じ条件下でさらなる時間であった。
【0150】
次に、乾燥した糖類を、その遊離のアミノ基を、アジピン酸のジ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(bis−NHSエステル)と反応することにより活性化した。この糖類をDMSO中に溶解して40mmol/Lのアミン濃度を得た。トリエチルアミン(TEA)を、1.113のTEA:アミン容量比で添加し、そしてこの混合物を攪拌して均一にした。
【0151】
コハク酸ジエステルを、DMSO中に、この糖類を溶解するために用いたDMSOの5倍容量を用いて溶解した。コハク酸ジエステルの量は、コハク酸ジステル:アミン基の12:1モル比を与えるように計算した。
【0152】
このコハク酸ジエステル溶液を攪拌しながら、糖混合物をゆっくりと添加し、そして次に1.5〜2時間攪拌しながら室温でインキュベートし、その後、この反応混合物を、活性化糖を沈殿させ、そしてそれをDMSO、bis−NHSエステルおよびTEAから分離するために、攪拌しながら室温のジオキサン(ポリプロピレン遠心分離ボトル中の4倍容量)にゆっくりと添加した。沈殿のための75分の後、ボトルにキャップをし、そして10分間攪拌した。次にこの混合物を、15℃において、7000gで20分間遠心分離した。上清液をデカントし、そしてこのジオキサン洗浄を合計5回の洗浄について繰り返した。この混合物を次に減圧ドライヤー(Lyovac GT2)を用いて乾燥した。乾燥した糖類を活性エステルについて分析した[177]。
【0153】
結合体化のために、活性化糖エステルおよびCRM197を、0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2中、mmolCRM197当たり20mmolの活性化糖類比で混合した。タンパク質溶液を調節して45g/lのCRM197濃度を得、そしてマグネチック攪拌棒を用いガラス瓶中でゆっくりと攪拌した。活性化糖類をこの瓶にゆっくりと添加し、次いでそれにキャップをした。攪拌速度は、過剰な発泡なしに小ボルテックスが形成されるように調節した。結合体化を、14〜22時間進行させた。最終産物をSDS−PAGE(図8;1:MWマーカー;2:CRM197;3:結合体;4:上清結合体)によって、および抗CRM抗体を用いるウェスタンブロット(図9;1:上清結合体;2:結合体;3:CRM197)によって分析した。
【0154】
最後に、結合体を、免疫原性研究のために、公証100KDaカットオフの限外濾過膜(Membranes 100K Microcon SK、Amicon)を用いて精製した。膜は、0.5mlの蒸留水で、2500rpmにおける10分間の遠心分離(Biofuge Picot)により洗浄した。次いで結合体を添加し、そして13000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、膜に再添加し、そして2500rpmで25分間遠心分離した。0.3mlの0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)を添加し、そして2500rpmで25分間遠心分離した。これを合計7回繰り返した。最終の精製産物を、タンパク質について[178]、グルコースについて(パルス化電流測定検出を備えた高圧アニオン交換クロマトグラフィー)、SDS−PAGEにより(図10;1:CRM197;2:精製結合体)、および抗グルカン抗体を用いるウェスタンブロットにより(図11)分析した。
【0155】
(GG−zymの分析)
GG−zymβグルカン調製物を、ゲル濾過クロマトグラフィーにより、ならびに1H NMRおよび13C NMRにより調査した。それは、各々が約50%のGG−zym抗原重量を示す以下の2つのβグルカン画分を含むことが見出された:
− プール1は、β−1,3−鎖の分岐をもつ基本のβ−1,6−グルカン鎖を含む。このβ−1,6−鎖の重合化のおよその程度は36グルコース単糖単位であり、その一方、β−1,3−鎖のそれは、およそ9〜10単糖単位である。分岐の程度(DB)は約0.6である。
− プール2は、少数のβ−1,6結合をもつ短いβ−1,3グルカン鎖を含む。DPは、約3.9であり、約0.03のDBである。
【0156】
(結合体の免疫原性)
CRM−GGを、YDP細胞で免疫したマウス由来の免疫血清に対するELISAによって試験した。この結合体は、全てのアッセイされた血清と高い反応性であり、C.albicans細胞において発現されるグルカンとCRM−GGの抗原的等価性を示した。
【0157】
結合体の免疫原性を試験するために、以下の3つのスケジュールに従ってCD2F1マウスにその結合体を投与した:
スケジュールA)7匹のマウスを各々、CRM−GG結合体(20μgタンパク質)で腹腔内に接種した。21日後、全ての免疫した動物から得られた血清のプールを、間接的ELISAによって試験した。免疫の間、苦しみまたは疾病の徴候をマウスは示さなかった。
【0158】
スケジュールB)7匹のマウスを、不完全フロイントアジュバント中のCRM−GG結合体(タンパク質として10μg)で、0日目および7日目に皮下的に接種した。アジュバント無しで、10μgの結合体を使用して、28日目に、腹腔内ブーストを与えた。血清を7日後にプールし、そしてスケジュールAのように試験した。スケジュールBの間、いくらかの動物は、苦しみ、そして1匹は、死亡した。
【0159】
スケジュールC)12匹のマウスを、完全フロイントアジュバント中のCRM−GG結合体(タンパク質として10μg)で、0日目に皮下的に接種した。アジュバント無しで、10μgの結合体を使用して、28日目に、腹腔内ブーストを与えた。血清を3日後に収集し、上記のように分析のためにプールした。免疫の間、苦しみまたは疾病の徴候をマウスは示さなかった。
【0160】
ネガティブコントロールとして、非結合体化CRM197を、スケジュールBに従って投与した。複数の攻撃的免疫を使用して、マウスの非結合体化GG−zymに対して惹起された血清を、抗体応答を誘発するためのポジティブコントロールとして使用した(1μgのコレラ毒素アジュバントの2×10μg鼻内点滴、続く、50μgの抗原の5週間の腹腔内感染)。
【0161】
免疫化動物からの血清のIgMおよびIgG力価を、特定のアルカリホスファターゼ結合体抗マウスIgMまたは抗マウスIgG二次抗体を使用して、間接的ELSIAによって決定した。スケジュールAおよびBについての結果(OD読み値)は、以下の通りであった:
【0162】
【表3】
【0163】
スケジュールCについて、抗体ELISA力価(少なくとも2×コントロールでのOD405nm値を与える最高希釈)およびアイソタイプは、以下の通りであった:
【0164】
【表4】
【0165】
このように、評価可能な抗CRM抗体力価(特に、IgG)は、結合体を用いた免疫後に得られた。より重要なことに、免疫はまた、上昇した抗GG−zym抗体力価を誘導した。スケジュールAおよびBを使用して、抗体は、排他的に、IgMアイソタイプであった。しかし、スケジュールCを使用して、動物は、GGに対して、特に、プール1のβ−1−6グルカンに対するIgG抗体の一定の産生を示した。このように、結合体は、乏しい免疫原を強力な免疫原に転換し、アイソタイプ切り換えおよび記憶応答を与えた。
【0166】
(免疫応答の分析)
GG−CRM結合体(スケジュールB)に対して得られた血清を、いずれが優性であるかを知るために、各プールに対して試験した。同じポジティブコントロールを、以前のように使用した。
【0167】
間接的ELISA結果は、抗−GG−CRM血清力価(IgM)を示す値とともに、以下の通りであった:
【0168】
【表5】
【0169】
ELISA阻害結果は、以下の通りであった:
【0170】
【表6】
【0171】
従って、結合体CRM−GGは、プール1に存在するβ−グルカン鎖(すなわち、より高い分子量の主にβ−1,6−グルカン)に対する抗体を主に誘導する。
【0172】
全体的に、CRM−GG結合体を用いたマウス免疫化によって得られるデータは、この結合体が、高度に免疫原性であること、およびこの抗体応答が、GG−Zym多糖類単独で得られたものよりも、抗体力価の点で非常に優れていることを示す。重要なことに、CRM−GG結合体免疫化後に得られた抗体が、保護的抗β−グルカン抗体と同じ抗原特異性を有する。
【0173】
(交差反応性免疫応答)
GG−zymは、C.albicans由来である。マウスを、YDP細胞について上記されたスケジュールと同じスケジュールを使用して、C.albicansまたはS.cerevisiaeのいずれかのYDP細胞で免疫し、そして得られた血清を、GG−zymに対する反応性についてELISAによって試験した。力価は、コーティング抗原無しで、ウェルの2倍の読み値を有する最も高い血清希釈である。二次抗体は、ウサギ抗マウスIgMであった。
【0174】
【表7】
【0175】
このように、S.cerevisiaeYDP細胞に対して惹起された抗体は、C.albicans GG−zym抗原と交差反応する。しかし、S.cerevisiaeおよびC.albicansに対する免疫応答は、同一ではない。なぜなら、抗C.albicans血清は、抗S.cerevisiae血清よりも、ラミナリンとかなり反応性ではないからである。
【0176】
(代替的結合プロセス)
上記グルカン精製および結合体化プロセスは、以下の変化のうちの一方または両方で繰り返された:
還元的アミノ化後の少糖精製のために0.2M NaClを使用するよりも、20mM NaClを使用した。代替的プロセスは、ゲル濾過後の減少した塩濃度を含み、そして下流少糖活性を改善する。アミノ化糖類は、1.5カラム容積の20mM NaCl後、Sephadex G−10カラムから溶出する。
【0177】
結合体精製について、第1の結合体は、名目上100kDaのカットオフを有する膜を使用する限外濾過によって(以前のように)精製された。他の結合体は、結合体の特徴に依存して、名目上30kDaまたは名目上50kDaのカットオフのいずれかでの膜を使用する限外濾過によって精製した(架橋した高いMWの結合体について、50kDa膜を使用した;架橋の無い結合体について、30kDaの膜を使用した)。30kDa膜および50kDa膜を、CentriconTM(遠心分離フィルターユニット)技術または接線流技術のいずれかとともに使用した。
【0178】
CentriconTM技術について、30kDa膜または50kDa膜を、Minifuge T(Heraeus Sepatech)とともに使用するためのMilliporeTMから得られた。デバイスを、3500rpmで10分間、3mlの蒸留水を遠心分離することによって洗浄した。次いで、結合体を、3分間、3500rpmで遠心分離した。
【0179】
上清を除去し、デバイスに添加し、3500rpmで25分の遠心分離を行った。次いで、1.5mlの0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)を添加し、そして25分間、3500rpmで遠心分離した。この手順を、全体で8回実施した。
【0180】
接線流限外濾過について、Holder Labscale(Millipore)装置を、505U Pumps(W.Marlow)およびPLCIC−C 30kDaカットオフ50cm2膜(Millipore)とともに使用した。このシステムを、浸透物のpHが7.00未満になるまで、蒸留水で洗浄した。次いで、このシステムを、100mlの0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)で平衡化した。次いで、サンプルをホルダー内にロードし、そして以下の限外濾過条件を適用した:25.7psiの内圧{1psi=6894.757Pa};18.4psiの外圧{1psi=6894.757Pa};流速7.6ml/分。0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)の40ダイアフィルトレーション容量を使用した。最後に、サンプルを別の容器に配置し、そしてこのシステムを最初に0.1M NaOHで洗浄し、次いで、水、最後に、0.05M NaOHで洗浄した。
【0181】
(プール1およびプール2の分離)
上に述べたように、GG−zym βグルカン調製物は、2つの主要画分(プール1およびプール2)を含む。これら2つのプールは、ゲル濾過によって分離され得る。
【0182】
室温および0.37cm/時間の流速で作動するPharmaciaTMFPLCシステムを使用して、Bio−Gel P−2 Fineカラム(Bio Rad)を、450mlの0.02M PBS(pH7.4)で平衡化した。混合GG−zymサンプルをカラム上にロードし、そして1.0カラム容量の0.02M PBS(pH7.4)を用いて溶出した。画分を収集した後に、カラムを、1.5カラム容量の同じ緩衝液でストリッピングし、次いで、保存溶液としての3カラム容量の蒸留水および3カラム容量の20%エタノールで洗浄した。カラムからの出力物を、上記のように、伝導率および214nmでの吸収によってモニタリングした。図12に示されるように、プール1および2は、別々に溶出する。
【0183】
2つの異なるグルカン集団を、上記手順を使用して、結合体を作製するために、別々に使用し得る。
【0184】
(ラミナリン結合体)
比較の目的のために、CRM197キャリアおよびラミナリンを使用してさらなる結合体を作製した。ラミナリンは、GG−zymのプール2(すなわち、1,3−β−グルカン)と類似のグルカン構造を有するが、約30のより高い平均の重合度を有する。
【0185】
ラミナリン結合体を作製するための方法は、還元的アミノ化後の少糖精製を除いて、GG−Zymに使用される方法と同じである。ラミナリンについて、このプロセスは、505U Pumps(W.Marlow)およびPLCBC−C 3KDカットオフ50cm2膜(Millipore)を使用して、Holder Labscale装置(Millipore)を使用した。この装置を、浸透物のpHが7.00未満になるまで、蒸留水で洗浄した。次いで、この装置を、100mlの0.5M NaClで平衡化し、次いで、サンプルを、ホルダー内にロードし、そして以下の限外濾過条件を適用した:19psiの内圧{1psi=6894.757Pa};13psiの外圧{1psi=6894.757Pa};流速0.6ml/分。13ダイアフィルトレーション容量の0.5M NaClを使用し、続いて、6ダイアフィルトレーション容量のH2Oを使用した。最後に、サンプルを別の容器に配置し、そしてこのシステムを、最初に、0.1M NaOHで洗浄し、次いで、水そして最後に0.05M NaOHで洗浄した。
【0186】
図13は、ラミナリン結合体のSDS−PAGEを示す。左の2つのスポットは、未結合CRM197キャリアを示し、そして右の2つのスポットは、結合体を示す。
【0187】
(要約)
インタクトなC.albicans酵母細胞全体は、C.albicansに対する保護免疫を与えないが、一方、プロテアーゼ処理された細胞は、保護免疫を与え得る。
【0188】
プロテアーゼ処理細胞によって誘導される抗Candida保護は、一部、抗体によって媒介され、抗β−グルカン抗体が重要な役割を果たす。
【0189】
C.albicansに対する、保護性血清移入可能抗体媒介保護は、細胞表面に位置する免疫優性真菌抗原に対する免疫応答によって、打ち消され得る。従って、インタクトな細胞全体を用いる免疫は、細胞表面反応性アンタゴニスト抗体またはブロッキング抗体を誘発する。
【0190】
タンパク質グルカン結合体は、効果的な免疫原である。
【0191】
1つの生物に対して惹起された抗グルカン抗体は、別の生物由来のグルカンと交差反応し得る。
【0192】
本発明が、単なる例として記載され、そして本発明の範囲および精神を維持しながら、改変がなされ得ることが理解される。
【0193】
(参考文献(その内容が本明細書中で参考として援用される))
【0194】
【数1】
【0195】
【数2】
【0196】
【数3】
【0197】
【数4】
【0198】
【数5】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用される全ての文献は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、ワクチンに関し、より具体的には、真菌感染および疾患に対するワクチンに関する。
【背景技術】
【0003】
真菌感染は、いくつかの臨床設定、特に、免疫無防備の患者において一般的である。抗真菌薬、特にアゾールに対する耐性の発生は、これらの真菌に対する治療的および予防的免疫において関心が増加している[1](非特許文献1)。真菌病原体のうち、Candida albicansは、最も一般的なものの1つである。この生物は、ヒトにおける広まった日和見性感染の主要な因子の1つであり、カンジダ症を引き起こし、この状態は、正常な患者および免疫無防備な患者の両方において見出される。抗カンジダワクチンを提供するための幾つかの試みが存在する。
【0004】
細胞性免疫が真菌に対する宿主の首尾よい防御に重要である医学的菌学の分野で広く認知されているが[2](非特許文献2)、2つの主要な真菌病原体(C.albicansおよびC.neoformans)に対する保護における体液性免疫の潜在的な有効性は、魅力がある[2,3](非特許文献2、3)。C.neoformansについて、被膜状グルクロオキシロマンナンに対する抗体は、感染の動物モデルにおいて保護を媒介することが示されている。C.albicansについて、細胞表面マンノタンパク質は、C.albicansの主要な抗原成分であり[1](非特許文献1)、そしてマンナンに対する抗体であり、プロテアーゼおよび熱ショックタンパク質は、感染に対する保護に関連している。他のワクチン候補としては、以下が挙げられる:アスパルチルプロテイナーゼ(Sap2)ファミリーのメンバー;65kDaマンノタンパク質(MP65)[4](非特許文献4);ホスホマンナン細胞壁複合体から単離される接着分子[5](特許文献1);Candidaのホスホマンナン複合体のマンナン部分からのエピトープを模倣するペプチド[6](特許文献2);およびヘモリシン様タンパク質[7](特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許5,578,309 (W095/31998をまた参照のこと).[5]
【特許文献2】米国特許6,309,642 (W098/23287をまた参照のこと).[6]
【特許文献3】WO01/51517[7]
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Deepe (1997) Clin. Microbiol. Rev. 10: 585-596. [1]
【非特許文献2】Polonelli et al. (2000) Med Mycol 38 Suppl 1: 281-292.[2]
【非特許文献3】Casadevall (1995) Infect. Immun. 63: 4211-4218.[3]
【非特許文献4】Cassone (2000) Nippon Ishinkin Gakkai Zasshi 41 (4): 219.[4]
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、感染、特に、真菌感染に対する保護的免疫応答および/または治療的免疫応答を誘導するためのさらなるより良い抗原を提供することである。
【0008】
(発明の開示)
Candida細胞は、全ての非分泌型候補保護抗原を含むが、これらが種々の抗原に対する高レベルの体液性かつ細胞媒介性の免疫応答を惹起する場合でさえも、全細胞ワクチンは、有効でない。驚くべきことに、この低い保護効果が、特定の抗原に対する免疫応答が存在しないことに起因するのではなく、インタクトな真菌細胞表面と相互作用し得る動物血清におけるブロッキング抗体の存在に起因するということが見出されている。このようなブロッキング抗体の非存在下において、抗グルカン抗体は、全身性真菌感染に対して保護的であることが見出されているが、保護効果は、ブロッキング抗体が存在する場合に阻害される。真菌グルカンは、天然では少ない免疫原であり、以前には保護を惹起するとは考えられなかった。
【0009】
従って、本発明は、免疫原性組成物を提供し、この組成物は、グルカンおよび薬学的に受容可能なキャリアを含み、ここで、これは、哺乳動物に投与され、この組成物は、保護抗グルカン抗体を惹起するが、抗グルカン抗体の保護効果を阻害する抗体は惹起しない。
【0010】
(グルカン)
グルカンは、特に真菌細胞壁において見出されるグルコース含有多糖類である。α−グルカンは、グルコースサブユニット間に1つ以上のα−結合を含み、β−グルカンは、グルコースサブユニット間に1つ以上のβ−結合を含む。
【0011】
α−グルカンは、種々の生物(S.mutans(これは、α−1,3−グルカンおよびα―1,6−グルカンの両方を含む細胞壁を有する)を含む)において見出されている。
【0012】
β−1,6−グルカンは、真菌において頻繁に発生するが、まれに真菌の外側ある[8]。代表的な真菌細胞壁内で、β−1,3−グルカン微小繊維は、キチン微小繊維と織り合わされ、そして架橋され、内側骨格層を形成し、一方、この外側層は、β−1,6−グルカンおよびマンノタンパク質からなり、キチンおよびβ−1,3−グルカンを介して内側層に結合されている。C.albicansにおいて、細胞壁の50〜70%は、β−1,3−グルカンおよびβ−1,6−グルカンから構成される。C.albicansは、β−1,2−グルカンもβ−1,4−グルカンも含まない。全長ネイティブβ−グルカンは、不溶性であり、一般的に分枝している。
【0013】
本発明に従って使用されるグルカンは、αおよび/またはβ結合を含み得る。α結合が存在する場合、グルカンにおけるβ結合:α結合の比は、代表的に、少なくとも2:1(例えば、3:1、4:1、5:1、10:1、20:1以上)である。しかし、好ましい実施形態において、グルカンは、β結合のみを含む。
【0014】
βグルカンが好ましい。βグルカンは、1つ以上のβ−1,3−結合および/または1つ以上のβ−1,6−結合を含み得る。それはまた、1つ以上のβ−1,2−結合および/またはβ−1,4−結合を含み得る。特に好ましいのは、1つ以上のβ−1,6−結合を含むグルカンである。
【0015】
グルカンは分枝し得る。
【0016】
好ましいグルカンは、Candida(例えば、C.albicans)の細胞壁由来のβグルカンである。βグルカンが使用され得る他の生物としては、以下が挙げられる:Coccidioides immitis,Trichophyton verrucosum,Blastomyces dermatidis,Cryptococcus neoformans,Histoplasma capsulatum,Saccharomyces cerevisiae,Paracoccidioides brasiliensis,およびPythiumn insidiosum。
【0017】
好ましいグルカンは、真菌グルカン(すなわち、真菌において見出されるグルカン)である。「真菌」グルカンは、一般に、真菌から得られるが、ここで、特定のグルカン構造は、真菌および非真菌(例えば、細菌、下等植物または藻類)の両方において見出され、次いで、非真菌生物は、代替的な供給源として使用され得る。
【0018】
全長ネイティブβグルカンは不溶性であり、メガダルトン範囲の分子量を有する。本発明の免疫原性組成物において可溶性グルカンを使用することが好ましい。可溶化は、長い不溶性グルカンを断片化することによって達成され得る。これは、加水分解、より簡便には、グルカナーゼ(例えば、β−1,3−グルカナーゼまたはβ−1,6−グルカナーゼ)による消化によって達成され得る。代替としては、短いグルカンが、単糖類構造ブロックを結合して合成することによって調製され得る。
【0019】
低分子量グルカンが好ましく、特に、100kDa未満(例えば、80、70、60、50、40、30,25、20または15kDa未満)の分子量を有するグルカンが好ましい。60または60未満(例えば、59,58,57,56,55,54,53,52,51,50,49,48,47,46,45,44,43,42,41,40,39,38,37,36,35,34,33,32,31,30,29,28,27,26,25,24,23,22,21,20,19,18,17,16,15,14,13,12,11,10,9,8,7,6,5,4)のグルコース単糖単位を含む少糖類を使用することもまた可能である。この範囲内で、10〜50、または20〜40の単糖類単位を有する少糖が、好ましい。
【0020】
真菌βグルカンの種々の供給源が存在する。例えば、純粋なβ−グルカンは、市販されており、例えば、プスチュラン(pustulan)(Calibiochem)は、Umbilicaria papullosaから精製されるβ−1,6−グルカンである。β−グルカンは、種々の方法で真菌細胞壁から精製され得る。参考文献9は、例えば、細胞壁マンナンから遊離している、Candidaから抽出された水溶性β−グルカンを調製するための2工程手順を開示し、この手順は、NaClO酸化およびDMSO抽出を含む。得られる生成物(「Candida可溶性β−D−グルカン」または「CSBG」)は、主に、直鎖β−1,6−グルカン部分を有するβ−1,3−グルカンから構成される。β−グルカンを精製するためのさらなる方法は、本明細書中の実施例において開示されており、そして「グルカンゴースト」は、高純度のβ−グルカンを含む。β−1,3−グルカンは、健康補助食品としての使用で公知である[10]。
【0021】
実施例において開示されるように、好ましいグルカンは、C.albicansから得られるグルカンであり、特に、(a)β−1,3−グルカン側鎖を有するβ−1,6−グルカンおよび約30の平均重合度を有するグルカン、ならびに(b)β−1,6−グルカン側鎖を有するβ−1,3−グルカンおよび約4の平均重合度を有するグルカンが好ましい。
【0022】
純粋なβ−グルカンは、しかし、免疫原性が乏しい。それゆえに、保護的効果については、β−グルカンは、免疫原性形態で免疫系に提示されることが望ましい。これは、種々の方法で達成され得る。本発明の2つの好ましい実施形態において、本発明の組成物に含まれるβ−グルカンは、(a)表面β−グルカンを呈するプロテアーゼ処理され、そして/またはマンノタンパク質を欠失した真菌細胞;または(b)グルカンキャリア結合体のいずれかである。
【0023】
(プロテアーゼ処理された真菌細胞)
β−グルカンは、真菌細胞の表面上で、免疫系に提示され得る。しかし、β−グルカンは、通常、真菌細胞の表面上では十分に免疫原性形態で露出されないので、これらの細胞は、プロテアーゼ(例えば、非特異性プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK))により処理されるべきである。このように真菌をプロテアーゼに露出することにより、マンノタンパク質を枯渇させ得、ブロッキング抗体を惹起する分子を除去し得る。
【0024】
従って、本発明は、表面に露出したβ−グルカンを有するプロテアーゼ処理された真菌細胞を提供する。好ましくは、真菌細胞の細胞壁は、マンノタンパク質を含まないか、実質的に含まない。
【0025】
本発明はまた、真菌β−グルカンおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む免疫原性組成物を提供し、ここで、この真菌β−グルカンは、プロテアーゼ処理された真菌細胞の成分である。好ましくは、真菌細胞の細胞壁は、マンノタンパク質を含まないか、実質的に含まない。より好ましくは、組成物全体として、マンノタンパク質を含まないか、実質的に含まない。
【0026】
真菌細胞は、好ましくは、Candidaであり、より好ましくは、C.albicansである。
【0027】
(グルカンキャリア結合体)
グルカンは、グルカンキャリア結合体の形態で免疫系に提示され得る。キャリアタンパク質に対して結合体を使用して糖類抗原の免疫原性を増強させることは、周知であり[例えば、参考文献11〜19などに概説される]、特に、小児科ワクチンに使用される[20]。
【0028】
本発明は、(i)キャリアタンパク質および(ii)グルカンの結合体を提供する。このグルカンは、好ましくは、上記で定義されるβ−グルカンであり、より好ましくは、例えば、β−1,6−結合を含む真菌β−グルカンである。
【0029】
キャリアタンパク質は、グルカンに直接共有結合で結合体化されても、リンカーを使用しても良い。
【0030】
タンパク質に対する直接結合は、例えば、参考文献21および22に記載されるように、グルカンの酸化、その後のタンパク質との還元的アミノ化を包含し得る。
【0031】
リンカー基を介する連結は、任意の公知の手順(例えば、参考文献23および24に記載される手順)を用いて行われ得る。好ましい型の連結は、アジピン酸リンカーであり、このリンカーは、アミノ化グルカン上の遊離NH2基をアジピン酸と(例えば、ジイミド活性化を使用して)カップリングし、次いで、得られた糖類−アジピン酸中間体[15、25、26]にタンパク質を連結することによって形成され得る。別の好ましい型の連結は、カルボニルリンカーであり、このリンカーは、改変グルカンの遊離のヒドロキシル基をCDIと反応させ[27、28]、続いてタンパク質と反応させて、カルバメート連結を形成することによって形成され得る。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド[29]、ニトロフェニル−エチルアミン[30]、ハロアシルハライド[31]、グルコシド連結[32]、6−アミノカプロン酸[33]、ADH[34]、C4〜C12部分[35]などが挙げられる。
【0032】
好ましいキャリアタンパク質は、細菌毒素またはトキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。これらは、結合体化ワクチンにおいて一般的に使用される。CRM197ジフテリアトキソイドが、特に好ましい[36]。他の適切なキャリアタンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質[37]、合成ペプチド[38、39]、熱ショックタンパク質[40、41]、百日咳タンパク質[42、43]、H.influenzae[44]由来のプロテインD、サイトカイン[45]、リンホカイン[45]、ホルモン[45]、増殖因子[45]、C.difficile由来のトキシンAまたはトキシンB[46]、鉄取り込みタンパク質[47]などが挙げられる。キャリアタンパク質の混合物を使用することが可能である。
【0033】
単一のキャリアタンパク質が、複数の異なるグルカンを有し得る[48]。
【0034】
結合体が、本発明の免疫原性組成物においてグルカン成分を形成する場合、その組成物はまた、遊離のキャリアタンパク質を含み得る[49]。
【0035】
結合体化の後、遊離のおよび結合体化グルカンが、分離され得る。例えば、疎水性クロマトグラフィー、接線限外濾過(tangential ultrafiltration)、ダイアフィルトレーションなどの多くの適切な方法がある[参考文献50、51なども参照のこと]。接線流限外濾過が好ましい。
【0036】
結合体中のグルカン部分は、好ましくは、上記で規定されるように、低分子量グルカンまたは少糖類である。少糖類は、代表的には、結合体化の前にサイズが合わせられる。
【0037】
タンパク質−グルカン結合体は、好ましくは、水および/または生理学的緩衝液中で溶解性である。
【0038】
(抗体)
本発明は、(1)グルカンを認識する抗体および(2)薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を提供する。このグルカンは、上記で規定されるように、好ましくは、β−グルカンであり、より好ましくは、真菌β−グルカン(例えば、β−1,6連結を含む)である。
【0039】
この抗体は、好ましくは、微生物感染および/または疾患に対する保護を付与する保護抗体である。この微生物は、真菌または細菌であり得、例えば、その真菌または細菌は、以下に示される。
【0040】
組成物は、好ましくは、抗グルカン抗体の保護効力を阻害する抗体を含まないか、または実質的に含まない。例えば、このグルカンが真菌β−1,6−グルカンである場合、この組成物は、好ましくは、非グルカン細胞壁成分に対する抗体(例えば、抗マンノタンパク質抗体)を含まないか、または実質的に含まない。
【0041】
用語「抗体」は、任意の、種々の天然および人工の抗体および抗体由来タンパク質を含み、これらの抗体および抗体由来タンパク質は、入手可能である。従って、用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、単鎖Fv(scFv)抗体、オリゴボディー(oligobody)などを含む。
【0042】
本発明の抗体含有組成物は、受動免疫のために使用され得る。
【0043】
ヒト免疫系との適合性を増大させるために、ヒト抗体を使用することが好ましい。代わりに、本発明の抗体は、非ヒト抗体のキメラバージョンまたはヒト化バージョンであってもよい[例えば、参考文献52および53]。
【0044】
キメラ抗体において、非ヒト定常領域は、ヒト定常領域で置換されるが、可変領域は、非ヒトのままである。
【0045】
ヒト化抗体は、種々の方法によって達成され得、これらの方法としては、例えば、以下が挙げられる:(1)非ヒト抗体由来の1つ以上のフレームワーク残基の最適なさらなる移入(「ヒト化」)による、非ヒト可変領域からヒトフレームワークへの相補性決定領域(CDR)のグラフト化(「CDR−グラフト化」);(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換により、このドメインをヒト様表面で覆うこと(「上張り(veneering)」)。本発明において、ヒト化抗体は、可変領域のCDR−グラフト化、ヒト化、および上張りによって得られる抗体を含む[例えば、参考文献54〜60]。
【0046】
ヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。その重鎖定常領域は、5つのアイソタイプ:α、δ、ε、γまたはμのいずれかから選択され得る。
【0047】
ヒト化抗体または完全なヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されているトランスジェニック動物を使用して生成され得る。例えば、参考文献61は、ヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示する。この文献において、この動物は、内因性重鎖および軽鎖の遺伝子座の不活性化に起因して、機能的な内因性免疫グロブリンを生成しない。参考文献62はまた、免疫原に対する免疫応答を上昇させ得るトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示する。この文献において、その抗体は、霊長類の定常領域および/または可変領域を有し、その内因性免疫グロブリンコード遺伝子座は、置換または不活性化される。参考文献63は、Cre/Lox系を使用して、哺乳動物における免疫グロブリン遺伝子座を改変する(例えば、定常領域または可変領域の全てまたは一部を置換して、改変抗体分子を形成する)ことを開示する。参考文献64は、内因性Ig遺伝子座および機能的ヒトIg遺伝子座が不活性化された非ヒト哺乳動物宿主を開示する。参考文献65は、トランスジェニックマウスを作出する方法を開示する。この方法において、マウスは、内因性重鎖を欠き、1以上の異種定常領域を含む外因性免疫グロブリン遺伝子座を発現する。
【0048】
本発明の抗体は、任意の適切な手段(例えば、組換え発現によって)生成され得る。
【0049】
(ミモトープ)
抗原性炭水化物は、ポリペプチド(「ミモトープ」)によって模倣され得る[例えば、6、66、67、68]。本発明はまた、グルカンのミモトープを含むポリペプチドを提供する。グルカンは、好ましくは、上記で規定されるβ−グルカンであり、より好ましくは、真菌のβグルカン(例えば、β−1,6連結を含む)である。
【0050】
このミモトープは、好ましくは、少なくとも3つのアミノ酸(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30またはそれ以上のアミノ酸)からなる。
【0051】
このポリペプチドは、好ましくは、少なくとも3つのアミノ酸(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、125、150、175、または少なくとも200のアミノ酸)からなる。
【0052】
このポリペプチドは、好ましくは、250以下のアミノ酸(例えば、225以下、200以下、190以下、180以下、170以下、160以下、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、95以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、19以下、18以下、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下または5個のアミノ酸すら)からなる。
【0053】
6〜20個の間のアミノ酸からなるポリペプチドが好ましい。
【0054】
目的のグルカンのミモトープは、種々の様式において同定され得る。ミモトープを同定するための好ましい技術は、ポリペプチド配列のライブラリーのディスプレイ(例えば、ファージディスプレイ)、続いて、目的のグルカンに特異的な抗体に結合するポリペプチドの選択を包含する。この選択手順は、最もよいミモトープに焦点を当てるために、反復され得る。
【0055】
本発明のポリペプチドは、種々の手段によって調製され得る。
【0056】
生成のために好ましい方法は、インビトロ化学合成を包含する[69、70]。固相ペプチド合成(例えば、t−BocまたはFmoc[71]化学に基づく方法)が特に好ましい。酵素的合成[72]もまた、一部でまたは全体で使用され得る。
【0057】
化学合成に代わりとして、生物学的合成が使用され得、例えば、このポリペプチドは、翻訳によって生成され得る。これは、インビトロまたはインビボで行われ得る。生物学的方法は、一般に、L−アミノ酸に基づくポリペプチドの生成に制限されるが、翻訳機構の操作(例えば、アミノアシル−tRNA分子の操作)が使用されて、D−アミノ酸または他の非天然アミノ酸(例えば、ヨード−Tyrまたはメチル−Phe、アジドホモ−Alaなど)の導入を可能にし得る[73]。
【0058】
生物学的ペプチド合成を容易にするために、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供する。この核酸は、DNAもしくRNA(またはそのハイブリッド)、またはそれらのアナログ(例えば、改変骨格(例えば、ホスホロチオエート)を含むもの)またはペプチド核酸(PNA)であり得る。この核酸は、一本鎖(例えば、mRNA)であっても二本鎖であってもよく、本発明は、二本鎖核酸の個々の鎖の両方を含む(例えば、アンチセンス、プライミングまたはプロービング目的で)。この核酸は、直鎖状であっても環状であってもよい。この核酸は標識されていてもよい。この核酸は、固体支持体に結合されていてもよい。
【0059】
本発明に従う核酸は、当然のことながら、多くの様式で(例えば、完全にまたは部分的に、化学合成(例えば、DNAのホスホルアミダイト合成)により、より長い分子のヌクレアーゼ消化により、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、ポリメラーゼの使用などにより)調製され得る。
【0060】
本発明は、本発明の核酸を含むベクター(例えば、プラスミド)(例えば、発現ベクターおよびクローニングベクター)およびこのようなベクターで形質転換された宿主細胞(原核生物細胞または真核生物細胞)を提供する。
【0061】
これらのベクターはまた、核酸免疫のために使用され得る[例えば、参考文献74〜85など]。ペプチドは、治療的抗体であり得るので、このように、インビボで発現され得る。炭水化物抗原のポリペプチドミモトープのインビボ発現のためのDNAワクチン接種は公知である[例えば、86]。
【0062】
本発明の核酸を含み、本発明のポリペプチドまたは抗体を発現する宿主細胞は、送達ビヒクル(例えば、片利共生細菌)として使用され得る[87]。これは、粘膜表面への送達のために特に有用である。
【0063】
ミモトープは、それら自体が有用な免疫原であり得る。しかし、それらは、免疫原性を改善するために、または薬理学的に重要な特徴(例えば、バイオアベイラビリティー、毒物学、代謝、薬物動態など)を改善するために、改良され得る。本発明のミモトープは、免疫原性を有するペプチド模倣分子を設計するために有用であり得る[例えば、参考文献88〜93]。これらは、代表的には、本発明のミモトープに関して等配電子的であるが、それらのペプチド結合のうちの1以上を欠いている。例えば、このペプチド骨格は、非ペプチド骨格で置換され得ると同時に、重要なアミノ酸側鎖は保持される。
【0064】
(医学的処置および使用)
本発明の薬学的組成物は、(a)グルカン(例えば、プロテアーゼ処理細胞またはキャリア−グルカン結合体の形態で)、抗グルカン抗体、グルカンのミモトープを含有するポリペプチド、ミモトープのペプチド模倣物、および/またはミモトープをコードする核酸ベクター、ならびに(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含み得る。
【0065】
本発明は、医薬品として使用するための、グルカン、抗グルカン抗体、グルカンのミモトープ、ミモトープのペプチド模倣物、および/またはミモトープをコードする核酸ベクター、を提供する。
【0066】
本発明はまた、哺乳動物において抗体応答を惹起する方法を提供し、この方法は、本発明の薬学的組成物をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。この抗体応答は、好ましくは、IgA応答またはIgG応答である。
【0067】
本発明はまた、微生物感染に罹患した哺乳動物を処置する方法を提供し、この方法は、本発明の薬学的組成物をこの患者に投与する工程を包含する。感染性疾患は、全身性または粘膜性であり得る。
【0068】
本発明はまた、微生物感染から哺乳動物を保護する方法を提供し、この方法は、本発明の薬学的組成物をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0069】
本発明はまた、グルカン、抗グルカン抗体、グルカンのミモトープ、ミモトープのペプチド模倣物、および/またはミモトープをコードする核酸ベクターの、哺乳動物における微生物感染の予防または処置のための医薬の製造における使用を提供する。
【0070】
哺乳動物は、好ましくはヒトである。ヒトは、成人であるか、または好ましくは子供であり得る。ヒトは、免疫無防備状態であり得る。
【0071】
本発明は、能動免疫化および受動免疫化を同時に提供するために、(i)免疫原(例えば、グルカン、グルカンミモトープ、ミモトープのペプチド模倣物、および/またはミモトープをコードする核酸ベクター)、および(ii)抗グルカン抗体、またはこの抗体をコードする核酸、の両方を使用し得る。これらは、別々にかまたは組み合わせて投与され得る。別々に投与される場合、これらは、代表的に、交互に7日以内に投与される。これらは、共に、キットにパッケージングされ得る。
【0072】
グルカン(特に、βグルカン)は、ほとんど全ての病原性真菌、特に、免疫無防備状態の被験体において、また細菌病原体または原性動物における感染に関与する真菌の必須かつ主要な多糖構築物であるため、抗グルカン免疫は、広範な病原体および疾患に対する効力を有し得る。例えば、S.cerevisiaeでの免疫後に惹起された抗グルカン血清は、C.albicansと交差反応性である。広いスペクトルの免疫は、特に有用である。なぜなら、これらのヒト感染性真菌因子について、化学治療は不十分であり、抗真菌剤耐性が現れ、そして予防ワクチンおよび治療ワクチンの必要性がますます認識されているからである。
【0073】
本発明の使用および方法は、以下の感染に対する処置/保護のために特に有用である:Candida種(例えば、C.albicans);Cryptococcus種(例えば、C.neoformans);Enterococcus種(例えば、E.faecalis);Streptococcus種(例えば、S.pneumoniae、S.mutans、S.agalactiaeおよびS.pyogenes);Leishmania種(例えば、L.major);Acanthamoeba種(例えば、A.castellani);Aspergillus種(例えば、A.funigatusおよびA.flavus);Pneumocystis種(例えば、P.carinii);Mycobacterium種(例えば、M.tuberculosis);Pseudomonas種(例えば、P.aeruginosa);Staphylococcus種(例えば、S.aureus);Salmonella種(例えば、S.typhimurium);Coccidioides種(例えば、C.immitis);Trichophyton種(例えば、T.verrucosum);Blastomyces種(例えば、B.dermatidis);Histoplasma種(例えば、H.capsulatum);Paracoccidioides種(例えば、P.brasiliensis);Pythiumn種(例えば、P.insidiosum);およびEscherichia種(例えば、E.coli)。
【0074】
これらの使用および方法は、以下を含むがこれらに限定されない疾患を予防/処置するために特に有用である:カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、皮膚真菌症、スポロトリクム症および他の皮下真菌症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症、コクシジオイデス真菌症、パラコクシジオイデス症、ニューモシスティス症、鵞口瘡、結核、ミコバクテリア症、呼吸性感染、猩紅熱、肺炎、膿痂疹、リウマチ熱、敗血症(sepsisまたはsepticaemia)、皮膚リーシュマニア症および内臓リーシュマニア症、角膜棘細胞症(corneal acanthamoebiasis)、嚢胞性線維症、腸チフス、胃腸炎および溶血性尿毒症症候群。抗C.albicans活性は、特に、AIDS患者における感染を処置するために有用である。
【0075】
治療的処置の効果は、本発明の組成物の投与後に微生物感染をモニタリングすることによって、試験され得る。予防的処置の効果は、この組成物の投与後に、βグルカンに対する免疫応答(例えば、抗βグルカン抗体)をモニタリングすることによって試験され得る。
【0076】
本発明の組成物は、一般に、患者に直接投与され得る。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内または組織の間質空間へ)によって、または経直腸、経口、経膣、局所、経皮、経眼球、経鼻腔、経耳または経肺投与によって達成され得る。注射または鼻腔内投与が好ましい。
【0077】
本発明は、全身および/または粘膜免疫を惹起するために使用され得る。
【0078】
投薬処置は、単回用量スケジュールまたは多回用量スケジュールであり得る。
【0079】
(薬学的に受容可能なキャリア)
薬学的に受容可能なキャリアは、それ自体ではこの組成物を投与された患者に対して有害な抗体の産生を引き起こさず、かつ過度な毒性を伴うことなく投与され得る任意の物質であり得る。適切なキャリアは、ゆっくりと代謝される大きな高分子(例えば、タンパク質、多糖類、高分子ポリ酪酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子)であり得る。このようなキャリアは、当業者に周知である。薬学的に受容可能なキャリアとしては、液体(例えば、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノール)が挙げられ得る。補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質など)もまた、このようなビヒクル中に存在し得る。リポソームは適切なキャリアである。薬学的キャリアの詳細な考察は、参考文献94で入手可能である。
【0080】
微生物感染は、身体の種々の領域に影響を与え、従って、本発明の組成物は、種々の形態で調製され得る。例えば、この組成物は、溶液または懸濁液のいずれかとしての注射液として調製される。この組成物は、局所投与のために、例えば、軟膏、クロームまたは粉末として調製され得る。注射の前に、液体ビヒクル中の溶液または懸濁液にするために適切な固体形態もまた調製され得る。この組成物は、経口投与のために、例えば、錠剤またはカプセル剤、あるいはシロップ(必要に応じて香味付けされている)として調製される。この組成物は、経肺投与のために、例えば、微細な粉末またはスプレーを使用する吸入器のようにして調製され得る。この組成物は、坐剤または膣座剤として調製され得る。この組成物は、経鼻腔、経耳または経眼球投与のために、例えば、ドロップとして、スプレーとして、または粉末として調製され得る(例えば、95)。この組成物は、うがい薬中に含まれ得る。この組成物は、凍結乾燥され得る。
【0081】
この薬学的組成物は、好ましくは、滅菌性である。この組成物は、好ましくは、発熱物質を含まない。この組成物は、好ましくは、例えば、pH6とpH8との間、一般的には、約pH7に緩衝化される。
【0082】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物を含む送達デバイスを提供する。このデバイスは、例えば、シリンジまたは吸入器であり得る。
【0083】
(免疫原性組成物)
免疫原性組成物は、免疫学的有効量の免疫原、および必要に応じて、任意の他の特定の化合物を含む。「免疫学的有効量」とは、個体に投与される量(単回用量または一連の一部として)が処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康状態および生理学的状態、処置される個体の年齢、分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望の保護の程度、ワクチンの処方、医療現場の処置している医師の評価、および他の関連の要因に依存して変化する。この量は、慣用的な試験によって決定され得る比較的広い範囲に入ることが予想され得る。投薬処置は、単回用量スケジュールまたは多回用量スケジュール(例えば、ブースター投与)であり得る。この組成物は、他の免疫調節剤と共に投与され得る。
【0084】
β−グルカンは、それ自体アジュバントであるものの、免疫原性組成物は、さらにアジュバントを含み得る。この組成物の効力を高める好ましいアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(A)アルミニウム化合物(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウム、アルミニウムオキシヒドロキシド、オルトリン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等(例えば、参考文献96の第8章および第9章を参照のこと))、または異なるアルミニウム化合物の混合物であって、ここでこれらの化合物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、アモルファスなど)をとり、そして吸着が好ましい;(B)MF59(5% スクアレン、0.5% Tween 80、および0.5% Span 85、マイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に処方される)(参考文献96の第10章を参照のこと、参考文献97もまた参照のこと);(C)リポソーム(参考文献96の第13章および第14章を参照のこと);(D)ISCOM(参考文献96の第23章を参照のこと)これは、さらなる界面活性剤を含まなくてもよい(98);(E)SAF(10% スクアレン、0.4% Tween 80、5% プルロニックブロックポリマー L121およびthr−MDPを含み、サブミクロンエマルジョンにマイクロフルイダイズされるか、またはより大きな粒子サイズのエマルジョンを生成するためにボルテックスされるかのいずれかである)(参考文献96の第12章を参照のこと);(F)RibiTMアジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem)(2% スクアレン、0.2%Tween 80、および1種以上の細菌細胞壁成分を含み、この細菌細胞壁成分は、モノリン脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群から選択され、好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM)である);(G)サポニンアジュバント(例えば、QuilAまたはQS21)(参考文献96の第22章を参照のこと)、StimulonTMとしても公知;(H)キトサン(例えば、99);(I)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(J)サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロンγ)、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子など)(参考文献96の第27章および第28章を参照のこと);(K)微粒子(すなわち、約100nmから約150μmの直径、より好ましくは約200nm〜約30μmの直径、最も好ましくは約500nm〜約10μmの直径の粒子)であって、生分解性かつ非毒性の材料(例えば、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなどのようなポリ(α−ヒドロキシ酸)から形成される粒子;(L)モノホスホリルリピドA(MPL)または3−O−デアシル化MPL(3dMPL)(例えば、参考文献96の第21章を参照のこと);(M)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型エマルジョンとの組合せ(100);(N)CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(101)、すなわち、少なくとも1つのCGジヌクレオチドを含み、5−メチルシトシンが、必要に応じて、シトシンの代わりに使用される;(O)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル(102);(P)オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(103)、または少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤(104);(Q)免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)およびサポニン(105);(R)免疫刺激剤および金属塩の粒子(106);(S)サポニンおよび水中油型エマルジョン(107);(T)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール)(108);(U)E.coli熱不安定エンテロトキシン(「LT」)、またはその解毒変異体(例えば、K63変異体またはR72変異体)(例えば、参考文献109の第5章);(V)コレラ毒素(「CT」)またはその解毒変異体(例えば、参考文献109の第5章);(W)二本鎖RNA;(X)モノホスホリルリピドA模倣物(例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC−529))(110);(Y)ポリホスファゼン(PCPP);または(Z)生体接着剤(111)(例えば、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア(112)またはポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体からなる群から選択される粘膜付着剤)。この組成物の効力を増大する免疫刺激剤として作用する他の物質(例えば、参考文献96の第7章を参照のこと)もまた使用され得る。アルミニウム塩(特に、リン酸アルミニウムおよび/または水酸化アルミニウム)が、非経口免疫化のために好ましいアジュバントである。変異体毒素は、好ましい粘膜アジュバントである。
【0085】
ムラミルペプチドとしては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)などが挙げられる。
【0086】
一旦処方されると、本発明の組成物は、被験体に直接投与され得る。処置される被験体は、動物であり得、特に、ヒト被験体が処置され得る。ワクチンは、子供または若者にワクチン接種するために特に好ましい。
【0087】
本発明の免疫原性組成物は、治療的に(すなわち、存在する感染を処置するために)使用され得るか、または予防的に(すなわち、将来の感染を防ぐために)使用され得る。治療的免疫化は、免疫無防備状態の被験体において、Candida感染を処置するために、特に有用である。
【0088】
この組成物は、β−グルカンと同様に、さらなる抗原性成分を含有し得る。例えば、この組成物は、1つ以上のさらなる糖類を含み得る。例えば、この組成物は、Neisseria.meningitidisのA、C、W135および/またはYの血清型由来の糖類を、含有し得る。これらは、代表的に、キャリアタンパク質と結合し得、そしてN.meningitidisの異なった血清型由来の糖類は、同一または異なったキャリアタンパク質と結合され得る。混合物が、A血清型に由来するカプセル糖類およびC血清型に由来するカプセル糖類の両方を含有する場合、MenA糖類:MenC糖類の比率(w/w)は、1より大きいことが好ましい(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1以上)。MenC成分に対し過剰に存在する(質量/用量)場合、MenA成分の改善された免疫原性が、観察されている。
【0089】
この組成物はまた、タンパク質抗原も含有し得る。
【0090】
本発明の組成物に含まれ得る抗原としては、以下が挙げられる:
−Helicobacter pyloriに由来する抗原(例えば、CagA[113〜116]、VacA[117、118]、NAP[119、120、121]、HopX[例えば、122]、HopY[例えば、122]および/またはウレアーゼ)。
−N.meningitidisのB血清型に由来するタンパク質抗原(参考文献123〜129中のタンパク質「287」(下記参照)、および誘導体(例えば、「ΔG287」)が、特に好ましい)。
−N.meningitidisのB血清型から調製される外膜小胞(OMV)(例えば、参考文献130、131、132、133、などにおいて開示される)。
−N.meningitidisのC血清型に由来する糖類抗原(例えば、参考文献134において開示されるC血清型由来少糖類[参考文献135も参照]。
−Streptococcus pneumoniaeに由来する糖類抗原[例えば、136、137、138]。
−A型肝炎ウイルスに由来する抗原(例えば、不活性化ウイルス[例えば、139、140])。
−B型肝炎ウイルスに由来する抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原[例えば、140、141])。
−C型肝炎ウイルスに由来する抗原[例えば、142]。
−Bordetella pertussisに由来する抗原(例えば、B.pertussis由来の、百日咳ホロ毒素(PT)および線維状赤血球凝集素(FHA)、必要に応じて、ペルタクチンおよび/または細胞凝集原2および細胞凝集原3と併用する[例えば、参考文献143&144]。
−ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド[例えば、参考文献145の第3章]例えば、CRM197変異体[例えば、146])。
−破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド[例えば、参考文献145の第4章]。
−Haemophilus influenzae Bに由来する糖類抗原[例えば、135]。
−N.gonorrhoeaeに由来する抗原[例えば、123,124、125]。
−Chlamydia pneumoniaeに由来する抗原[例えば、147,148、149,150、151,152、153]。
−Chlamydia trachomatisに由来する抗原[例えば、154]。
−Porphyromonas gingivalisに由来する抗原[例えば、155]。
−ポリオ抗原[例えば、156、157](例えば、IPVまたはOPV)。
−狂犬病抗原[例えば、158](例えば、凍結乾燥不活性化ウイルス[例えば、159、RabAvertTM)。
−麻疹抗原、おたふく風邪抗原および/または風疹抗原[例えば、参考文献145の第9章、第10章&第11章]。
−インフルエンザウイルス由来の抗原[例えば、参考文献145の第19章](例えば、赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質)
−RSウイルス(RSV[160、161])および/またはパラインフルエンザウイルス(PIV3[162])のようなパラミクソウイルス(paarmyxovirus)由来の抗原。
−Moraxella catarrhalisに由来する抗原[例えば、163]。
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)に由来する抗原[例えば、164,165]。
−Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)に由来する抗原[例えば、165,166、167]。
−Staphylococcus aureusに由来する抗原[例えば、168]。
−Bacillus anthracisに由来する抗原[例えば、169、170、171]。
−フラビウイルス科(フラビウイルス属)のウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルスの4つの血清型、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイル熱ウイルス)に由来する抗原。
−ペスチウイルス抗原(例えば、古典的豚コレラウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルスおよび/またはボーダー病ウイルス)。
−パルボウイルス抗原(例えば、パルボウイルスB19由来)。
【0091】
この組成物は、1つ以上の、これらのさらなる抗原を含み得る。
【0092】
毒性タンパク質抗原は、必要な場合、無毒化され得る(例えば、化学的手段および/または遺伝的手段による、百日咳毒素の無毒化[144])。
【0093】
ジフテリア抗原が組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含まれることが、好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含まれることが望ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含まれることが望ましい。
【0094】
抗原は、好ましくは、アルミニウム塩に吸着されることが望ましい。
【0095】
組成物中の抗原は、代表的に、少なくとも各1μg/mlの濃度で存在する。一般に、任意の所定の抗原の濃度は、この抗原に対して免疫応答を誘発するために十分である。
【0096】
本発明の組成物におけるタンパク質抗原の使用の代替として、抗原をコードする核酸が、使用され得る。本発明の組成物のタンパク質成分は、従って、このタンパク質をコードする核酸に、置換され得る(好ましくは、DNA(例えば、プラスミド形態))。
【0097】
本発明の組成物は、特に、患者が既に感染している場合、抗真菌剤と併用して使用され得る。抗真菌剤は、即効の治療効果を提供するが、免疫原性組成物は、より長く持続する効果を提供する。適切な抗真菌剤としては、アゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール)、ポリエン(例えば、アンホテリシンB)、フルシトシン、およびスクアレンエポキシダーゼインヒビター(例えば、テルビナフィン)が挙げられる[参考文献172も、参照]が、これらに限定はされない。抗真菌剤および免疫原生組成物は、別々に投与されても、組み合わせて投与されてもよい。別々に投与される場合、代表的には、互いに7日以内に投与される。最初の免疫原性組成物の投与後、抗真菌剤が、1回以上投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、免疫蛍光のデータを示す。細胞は、無処理真菌「Y」細胞(1A、1C、1E)またはプロテアーゼ処理「YDP」細胞(1B、1D、1F)のどちらかである。標識化抗体は、抗Y血清(1A,1B)、抗YDP血清(1C、1D)または抗マンノタンパク質抗体AF1(1E、1F)である。
【図2】図2は、非刺激コントロール培養に対する、測定した実験群の平均刺激指標値(±SD)である。アスタリスクは、コントロールに対する有意差を示す(*p<0.05または**p<0.001、ANOVAおよびBonferroniの倍数t検定により評価した)。増殖応答における他の相違の全ては、有意でなかった。
【図3−1】図3は、致死性誘発実験の結果を示す。図3Aおよび図3Bは、誘発後に生存していた動物を示す。
【図3−2】図3は、致死性誘発実験の結果を示す。図3Cは、腎臓感染データを示す。
【図4】図4は、受動的免疫転移における、血清の前吸着の効果を示す。
【図5】図5は、受動的免疫転移における、血清の前吸着の効果を示す。
【図6】図6は、以下の種々の層を示す、代表的C.albicans細胞壁の図解である:原形質膜(PM)、マンノタンパク質領域(M1)、グルカン−キチン(GC)、グルカン(G)、マンノタンパク質(M2)および外原繊維層(F)。
【図7】図7は、グルカン−CRM197結合体の、溶出プロファイルを示す。
【図8】図8は、グルカン−CRM197結合体の分析を示す。図8は、限外濾過前の結合体のSDS−PAGEゲルである。
【図9】図9は、グルカン−CRM197結合体の分析を示す。図9は、限外濾過前の結合体の免疫ブロットである。
【図10】図10は、グルカン−CRM197結合体の分析を示す。図10は、限外濾過後の結合体のSDS−PAGEゲルである。
【図11】図11は、グルカン−CRM197結合体の分析を示す。図11は、限外濾過後の結合体の免疫ブロットである。
【図12】図12は、Bio−Gel P−2カラムの溶出プロファイルを示す。画分番号は、X軸上に示され、OD214nmは、Y軸に示される。
【図13】図13は、ラミナリン−CRM197結合体のSDS−PAGE分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
(定義)
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「含む(consisting)」を意味する。例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXから構成されても、さらなる何かを含んでもよい(例えば、X+Y)。
【0100】
(発明を実行するための形態)
(マンノタンパク質枯渇酵母細胞の調製)
C.albicans BP株、血清型A(Istituto Superiore di Sanita (Rome,Italy)の寄託当局から)を、サブロー寒天斜面上で慣用的に維持した。全ての実験について、真菌を、液体Winge培地内で、28℃において、酵母形態で培養し、生理食塩水中で2回洗浄し、血球計算器で計数し、そして滅菌生理食塩水中に所望の濃度で再懸濁した。
【0101】
正常細胞(「Y細胞」)の調製について、酵母細胞懸濁液(108細胞/ml)を、80℃で30分不活性化し、洗浄し、1週間を超えない間、4℃で保存した。
【0102】
マンノタンパク質枯渇細胞(「YDP細胞」)を調製するため、上述のような熱不活性化Y細胞(108/ml)を、5 mM EDTANa2中の50 mM DTTで処理した(1時間、37℃)。500μg/mlプロテイナーゼK(Sigma)を、消化混合物に加え、そして細胞を、さらに1時間、37℃で処理した。真菌細胞を、生理食塩水で過剰に洗浄して酵素を除去し、食塩水中に再懸濁し、そして直後に使用した。
【0103】
C.albicansの芽管(GT)形態または菌糸形態を、Leeの培地中37℃で培養することによって、得た。
【0104】
(Y細胞またはYDP細胞による免疫化)
雌の4週齢のCD2F1マウスおよびSCIDマウス(Charles River Laboratory、Calco、Italy)を、Y細胞またはYDP細胞で免疫した。マウスを、フロイント完全アジュバント(Sigma)中のY細胞またはYDP細胞(106細胞/100μl/マウス)を用いて一週間間隔で2回皮下注射し、そして腹腔内経路で同じ数の免疫化細胞を用いてアジュバントなしで5回注射した。コントロール動物は、フロイントアジュバントおよび生理食塩水のみで注射した。
【0105】
(免疫応答の分析)
Y細胞は、C.albicansの全ての抗原性細胞壁と抗原性細胞質成分を含み、そしてこれらは、全てのこのような抗原に対し、マウスを免疫化し得るはずである。しかし、プロテアーゼ処理に起因して、YDP細胞は、細胞表面成分に対し、一貫した免疫応答を誘導し得ないはずである。
【0106】
抗体応答を評価するために、免疫化動物を後部眼窩(retroorbital)穿刺により出血させ、各免疫化グループから集めた血清を免疫蛍光アッセイによって抗体含有量について試験した。Y細胞およびYDP細胞を顕微鏡スライド上にスポットし、0.01M PBS中の種々の希釈のマウス抗Y血清または抗YDP血清あるいはモノクローナル抗体AF1(C.albicans酵母細胞の表面上に高度に発現されるβ−1,2マンノ少糖類性の(mannooligosaccharidic)エピトーブに対して特異的)と反応させた。広範囲に洗浄した後、スライドをFITC結合体化抗マウスIgM抗体で処理し、Leitz Diaplan蛍光顕微鏡で観察した。
【0107】
抗YDP血清は、YDP細胞との免疫蛍光において強く反応性であった(図1B)が、Y細胞については非常に弱かった(図1D)。逆に、抗マンノタンパク抗体AF1は、Y細胞とは反応した(図1E)が、YDP細胞とは反応しなかった(図1F)。従って、YDP細胞の表面プロフィールは、Y細胞とは非常に異なる。
【0108】
血清をまた、ELISAによっても分析した。ポリスチレンマイクロタイタープレートを炭酸緩衝液(pH9.6)中の50μl/mlの抗原でコーティングした。プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の3%スキムミルクでブロッキングし、PBS−0.05% Tween20中の2倍希釈のマウス血清と反応させ、そして二次抗体としてアルカリホスファターゼ結合体化ウサギ抗マウスIgGまたはIgM、および酵素基質としてp−ニトロフェニルホスフェートジソディウムを使用して展開した。アジュバントで免疫したマウスから集めた血清をネガティブコントロールとして使用した。プレートを405nmで読み取り、抗体力価をネガティブコントロールの少なくとも2倍のOD読み取り値を与える最も高い希釈のマウス血清として定義した。
【0109】
7つの抗原を使用した:
− C.albicans Y細胞(106/ウェル);
− C.albicans 芽管細胞(106/ウェル);
− ラミナリン(β−1,3−グルカン、Sigma);
− プスツラン(pustulan)(β−1,6−グルカン、CalbioChem);
− 真菌性マンノタンパク(「Secr−MP」)(28℃でのリー培地における24時間の真菌培養物の上澄み液から調製した);
− マンノタンパク画分MP−F2(C.albicansの細胞壁から精製した);および
− C.albicansの可溶性グルカン抗原(GG−zym)((i)精製したβ−1,3−グルカンおよびβ−1,6−グルカンを得るために、真菌の細胞壁の繰り返しの熱アルカリ−酸抽出によってグルカンゴーストを調製する工程、そして(ii)このゴーストをβ−1,3グルカナーゼ(Zymoliase 100T,Seikagaku)で37℃で1時間消化する工程によって得た)。
【0110】
結果は以下の通りであった。値は、類似の結果を有して行われた3回うちの1回の代表的実験に由来する:
【0111】
【表1】
【0112】
従って、抗Y細胞血清は、Y形態およびGT形態(β−1,6−グルカンおよびβ−1,3−グルカンを含む)の両方で存在する全ての主要な細胞壁構成物、ならびに主要な細胞質抗原に対する抗体を含んでいた。
【0113】
対照的に、そして予想を確認するように、抗YDP細胞血清は、抗グルカン抗体としての高い力価を有していたが、酵母または芽管細胞の全体、および細胞表面に位置するマンノタンパクまたは分泌性マンノタンパクに対しては低い抗体力価であった。
【0114】
Y細胞免疫またはYDP細胞免疫の後の細胞媒介性免疫の誘導をアッセイするために、コントロールまたは免疫化マウスの脾臓細胞をY細胞またはYDP細胞の存在下で、およびβ−グルカン調製物と共に、インビトロで増殖するように誘導した。
【0115】
簡潔には、0.16M Tris緩衝NH4Cl(pH7.2)の3ml中の脾臓細胞懸濁液に9mlの完全培地(5% 胎児性仔ウシ血清、100U/ml ペニシリン、100mg/ml ストレプトマイシン、1mM ナトリウムピルベート(sodium piruvate)、2mM L−グルタミン、MEM−非必須アミノ酸、10-5M 2−メルカプトエタノールを補充された、RPMI 1640)を添加した。脾臓細胞を遠心分離で洗浄し、マルチウェルプレートにプレートし(106/ml、200ml/ウェル)、そしてY細胞またはYDP細胞(105/ml)、GG−Zym画分(50mg/ml)あるいはコンカナバリンA(2mg/ml=コントロール)で刺激した。各状態を3連でアッセイした。脾臓細胞培養物を5%CO2大気中37℃でインキュベートした。抗原刺激については4日後、およびポリクローナル性コントロール刺激薬についてはインキュベーションの2日後の3H−チミジンの取り込みとして、増殖を評価した。刺激した脾臓細胞培養物の平均c.p.m値を刺激していないコントロール培養物の平均c.p.m値で割ることにより、刺激指数を計算した。
【0116】
図2に示されるように、Y細胞またはYDP細胞での免疫化は、一定の程度の脾臓細胞の増殖を刺激する場合に大きく交差反応性であったが、特定の免疫される抗原調製物によってインビトロで刺激された脾臓細胞において、より強い応答が見られた。全ての動物(非免疫化コントロールを含む)の脾臓細胞が、ConAによるポリクローナル性の刺激に対して応答した。C.albicansのβ−グルカンによってインビトロデで刺激された脾臓細胞培養物においては、増殖が検出されなかった。
【0117】
そのため、総じて、Y細胞またはYDP細胞による免疫は、両方の細胞調製物に存在する抗原に対して、大きな交差反応性の体液性応答およびCMI応答を誘導した。しかし、抗MP指向性抗体および抗Y細胞表面指向性抗体は、Y細胞全体で免疫したマウスにおいてのみ存在した。
【0118】
(致命的チャレンジに対する保護)
Y細胞による免疫が、真菌の主要な抗原構成成分に対する一定の体液性免疫応答および細胞媒介性免疫応答を誘導することが実証されたので、細胞の保護能力を急性致死性マウスカンジダ症モデルにおいて試験した。
【0119】
致死用量のC.albicansによる静脈内チャレンジの後の60日間の動物の生存(1グループあたり15)をモニタリングすることで、保護を評価した。用量は、0.1ml中に1×106(図3A)細胞または2×106(図3B)細胞、あるいはアジュバントのみのコントロールのいずれかであった。
【0120】
非免疫化コントロールグループのマウスは、より高い用量で1〜2日の中央生存時間を有していた。Y細胞で免疫化したマウスは、真菌チャレンジに対して中央生存時間の増大を示したが、チャレンジ後15〜17日目で全てが死に、全体的な生存率は、コントロールとは統計学的に異ならなかった。
【0121】
対照的に、YDPで免疫化した動物は、ずっとより耐性であり、中央生存は>60日であった。アジュバント処置した動物およびY細胞免疫化動物と比較した場合のYDP免疫化動物の生存率の相違は、両方の用量において統計学的に有意であった(p<0.05、フィッシャーの直接確率検定)。
【0122】
106細胞で感染させられた動物の腎臓でのCandidaの増殖(outgrowth)の程度を定量することでも、保護を評価した。これは、チャレンジ後7日目で屠殺したマウスの左の腎臓を無菌的に取り出し、その後、0.1% Triton−X100(Sigma)を含む滅菌生理食塩水中でホモジナイズすることを含んだ。1つの器官あたりのコロニー形成単位(CFU)の数をサブローデキストロース寒天上でのプレート希釈法によって決定した。各腎臓を別々に試験し、各サンプルの少なくとも3つの異なる希釈を3連でアッセイした。
【0123】
図3Cに見られるように、腎臓における平均真菌負荷は、Y細胞免疫化グループ(15.4±0.6 ×103;p<0.05(Kruskal−Wallis ANOVAそしてBonferroni型の非パラメトリック多重比較による))およびコントロールグループ(約60×103;p<0.05)よりもYDP細胞免疫化マウス(CFU<103)においてずっと低かった。Y細胞グループとコントロールグループとの間の相違は、統計的に有意ではなかった。
【0124】
この実験はまた、免疫応答性の動物と同じワクチン接種スケジュールで、SCIDマウスについても行った。保護は観察されず、適応性免疫応答が保護に必須であることを実証した。そのため、C.neoformansについての参考文献173での報告とは異なり、CD4+細胞は、抗体媒介性保護には含まれない。
【0125】
(受動的免疫化)
Y細胞またはYDP細胞に対する免疫応答の主要な相違は、細胞壁構成成分に対する抗体の特異性にあるので、非免疫化動物に保護を移す免疫血清の能力を試験した。これらの試験はまた、受動的に投与された血清によって与えられる保護に対する受容者マウスの免疫系の潜在的寄与を評価した。
【0126】
CD2F1マウスまたはSCIDマウスを0.5mlの抗Y細胞血清または抗YDP細胞血清の1度の腹腔内注射により受動的に免疫化した。コントロール動物は、アジュバントで免疫化したマウス由来の血清を受容した。各血清を移植の前に加熱処理(56℃、30分)して、熱不安定性の非抗体構成成分を不活性化した。血清の移植から2時間後に、マウスを致死量以下の用量のC.albicans(5×105細胞)で静脈内チャレンジし、2日後に上記の腎臓モデルを使用して保護を評価した。これらの実験は、YDP細胞ワクチンまたはY細胞ワクチンで独立して免疫化された動物に由来する血清の種々のバッチを使用して行った。
【0127】
チャレンジ後2日目での結果は、以下の通りであった。データは、マウスの各グループから列挙された個々のCFU数の加重平均を示す。統計的分析は、Kruskal−Wallis ANOVAそして、その後の非パラメトリックBonferroni型多重比較試験による:
【0128】
【表2】
【0129】
従って、抗Y細胞血清を受容した動物は、コントロールの非免疫化血清を受容した動物と同じ腎臓における真菌負荷の増大を有していた。対照的に、抗YDP細胞血清を受容した動物は、コントロール血清を受容した動物よりも腎臓において有意に少ない真菌細胞を有していた。これは、それぞれの免疫化血清の異なるバッチ、ならびに免疫応答性マウスおよびSCIDマウスの両方において観察された。
【0130】
これらのデータは、抗体が保護において重要な役割を果たしていることを示唆したので、YDP免疫化マウス由来の血清のIgM画分を精製し、受動的免疫化のために使用した。アジュバントのみを与えられた動物の血清から精製した同じ画分をコントロールとして使用した。1度の試験において、106細胞のC.albiciansが静脈内注射された4匹のマウスのチャレンジ後2日目の真菌の腎臓負荷は、コントロールマウスの腎臓における1359±18(×103)細胞に対して、290±8(×103)であった(p<0.01)。YDP血清のIgM画分は、C.albiciansのグルカン抽出物に対して高度に反応性であった。
【0131】
(受動的免疫効力の除去)
YDP細胞での免疫化によって産生された血清抗体は、β−グルカン構成成分を認識した(上記を参照のこと)。これらの抗体を除去して、免疫の受動的移動を再試験した。
【0132】
抗Y細胞血清または抗YDP細胞血清を選択的に吸着させて、グルカン特異的抗体または抗表面マンノタンパク抗体を除去した。血清(2ml)を10mgの粒状グルカン(グルカンゴースト)または2×108のC.albiciansの生きている酵母細胞で処理した(1時間、0℃)。吸着物を遠心分離で除去し、この手順を3回繰り返した。吸着手順の効力を、コーティング抗原として酵母細胞またはGG−zymを使用してELISAによって評価した。
【0133】
この手順は、代表的には、抗YDP血清の抗βグルカン力価および抗Y血清の抗MP力価を2〜3対数低下させた。βグルカンに対する抗体は、インタクトなY細胞での吸着により除去されなかった。
【0134】
YDP血清上の予備吸着の効果もまた、腎臓負荷モデルで評価された(図4)。非吸着および予備吸着血清(0.5ml/マウス)を、C.albicansでの静脈内致死量以下の抗原投与(5×105細胞/マウス)の2時間前に、マウス(1群あたり3匹)に腹腔内投与した。腎臓侵襲は、個々のCFUカウントにより抗原投与後48時間で評価された。
【0135】
YDP血清は、コントロール血清よりかなり良好であったが(p<0.05)、βグルカンでの予備吸収は、この効果を取り除き(p<0.05)、コントール血清と吸着血清との間に統計的有意差はなかった。
【0136】
従って、適切なレベルの保護が、YDP細胞レシピエント動物の血清によってネイティブ動物に移入され得、この保護血清因子は熱安定性であり、そしてこの血清の免疫グロブリン画分もまた保護的である。この保護血清は、抗βグルカン抗体が豊富であり、そして抗MP抗体に乏しい。純粋なβグルカン上に吸収されるとき、この血清は、その保護能力のかなりを失う。さらに、抗Y細胞血清は、抗βグルカン抗体ではなく抗マンノタンパク質抗体が失われたとき、保護的であった。結局、この証拠は、保護IgMは、βグルカンを認識するIgMを含むことを示唆している。
【0137】
(保護アンタゴニスト抗体および非保護アンタゴニスト抗体)
先のデータは、抗βグルカン抗体がYDP細胞ワクチンにより与えられる保護における役割を演じていることを示唆している。しかし、Yワクチンで免疫化された動物の血清はまた、高力価の抗βグルカン抗体を含む(上記を参照のこと)。従って、このY血清は、抗βグルカン抗体の活性を阻害するYDP血清には存在しない物質を含み得る。
【0138】
Y細胞とYDP細胞との間の差異、およびそれらの血清間の差異を考慮して、この物質は、真菌細胞表面成分に対する抗体であるようであった。この仮説を試験するために、Y細胞免疫化動物からの血清をY細胞に吸着し、そして得られる血清をSCIDマウスに投与した。このY細胞吸着血清は、抗MP抗体の実質的減少を有していたが、増加した抗βグルカン抗体レベルを維持していた。図5に示されるように、予備吸着されたY血清を受けた動物(カラム5)は、非吸着Y血清を与えた動物(カラム4)より約2対数低い腎臓負荷を有し、そしてこれは、保護YDP血清を与えた動物のそれに匹敵した(カラム2)。
【0139】
従って、このY血清は、酵母細胞表面に対する抗体を含み、これらは、下にある細胞壁抗原(βグルカン)に対する抗体により与えられる保護に対し阻害的である。
【0140】
これらのデータは、抗Candida血清が移入する保護に一致して見出されなかった理由、およびC.albicansの完全不活性化細胞での免疫化が、高められたDTH、細胞媒介免疫および豊富な抗Candia抗体を常に刺激するが、変動的に保護的である理由を説明し得る。このデータは、C.albicansに対する抗体媒介保護が、完全抗体の存在を要求するのみならず、特定のその他の抗体の不在をまた要求することを強く示唆している。
【0141】
豊富に発現された細胞表面成分に対する抗体が、C.albicansがコロニーを形成した健常な人々で優勢であるので、アンタゴニスト抗体またはブロッキング抗体の生成は、それによってこの真菌が、それ自身をその他の抗体の根絶能力から防御する機構であり得る。
【0142】
βグルカンに対する抗体が、正常なヒト血清で先に観察されている[例えば、174]。それらは、しかし、細胞表面成分と反応せず、真菌細胞を明らかにオプソニン化しないので、保護の機構における役割は却下されている。参考文献174の抗βグルカンIgG2は、非カプセル化βグルカンを剥き出すC.neoformans細胞のオプソニン活性に不必要であると詳細に述べられた。本明細書中のデータは、この考えの再考慮を招聘する。なぜなら、抗βグルカン抗体は、少なくともブロッキング抗体が不在であるとき、保護における役割を演じることが示されるからである。
【0143】
ブロッキング抗体が存在するときでさえ、抗マンノタンパク質抗体のレベルは、自然感染およびコロニー形成の間の抗グルカン抗体のレベルより高いが、免疫原性グルカンの投与は、保護に有利に阻害抗体および保護抗体のバランスを傾け得る。さらに抗C.albicansブロッキング抗体は、(例えば、その細胞壁がグルカンを含むがマンノタンパク質を含まないような)その他の病原体に対する抗グルカン抗体の活性を阻害しないかもしれない。
【0144】
(グルカンキャリア結合体の調製)
上記のように、GG−zymは、C.albicans細胞のグルカンゴースト調製物のグルカナーゼ消化により調製される。GG−zymは、純粋(>99%)のβグルカンである。GG−zym糖類を、CRM197キャリアタンパク質に結合体化し、「CRM−GG」を得た。
【0145】
CRM−GGを調製するために用いた結合体化プロセスは、鎖あたり1つの末端アミノ基が付加される還元アミノ化で開始する。このアミノ基は、アジピン酸のジ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応し易く、活性化リンカーを与える。この活性化された糖類は、CRM197タンパク質に結合体化され、そしてこの結合中間体は限外濾過によって生成される。
【0146】
還元アミノ化を、水性βグルカン糖溶液(2mg/mlGG−zym)を、ナトリウムシアノボロハイドライド(28.9g/l)の存在下で、酢酸アンモニウム(300g/l)と反応することよって実施した。この酢酸塩およびシアノボロハイドライドは、漏斗によって糖溶液に添加され、そしてこの混合物を、これら成分が溶解するまで攪拌した。次いで、pHを7.2に調整し、そしてこの混合物を、ガラス瓶に移し、それをシールし、50±1℃の水浴中で5日間インキュベートした。この反応は、末端アミノ基をもつ糖類を与えた。
【0147】
次いで、このアミノ化糖類を、Sephadex G−10カラム上のクロマトグラフィーにより精製した。すべてのクロマトグラフィーは、室温で24cm/時の流速を用いて実施し、そして進行は、伝導度によって、および214nmにおける吸光度によってモニタリングした。カラムは、最初、20%エタノール貯蔵溶液を除去するために2リットル(5カラム容量)の蒸留水で洗浄した。次いで、このカラムを、2リットルの0.2M NaClで平衡化した。サンプルをこのカラムにロードし、そして画分を集めた(図7)。上記糖類は、214nmで吸光度をもたないので、画分は、グルコース分析(フェノール硫酸法[175])で分析し、そしてこの糖類を含む画分を合わせた。この糖類は、カラムから、0.2M NaClの1.5カラム容量の後溶出された。
【0148】
精製された産物を濃縮し、そしてNaClを除去して精製した。膜(1K マイクロセップ、PALLFILTRON)を蒸留水で、微小遠心分離T上4℃で1時間3000rpmにおける遠心分離により洗浄した。糖類をこの膜に添加し、そして4000rpmで3時間遠心分離し0.5ml容量を得た。1.5mlの蒸留水を添加し、そしてこの混合物を以前のように遠心分離した。このサイクルを、NaCl濃度が0.02Mより低くなるまで繰り返した。サンプルを照合した。さらに、この膜を、蒸留水で最終洗浄し、そして洗浄溶液をこの照合したサンプルに添加した。精製糖類を、グルコースについて[175]、およびアミン基について[176]分析した。
【0149】
次いで、この糖類を、KNF Neuberger Laboport減圧ポンプ、Buchi461水浴(37℃)およびPharmacia Biotech multitempIII再循環コンデンサー冷却器(4℃)と組み合わせたBuchi回転エバポレーター(Model EL 131;90rpm)を用いる回転エバポレーションにより乾燥した。減圧圧力を、沸騰を避けるためにゆっくりと増加した。蒸発液体の最初の相は目に見えた。この相の端の近傍で、生成物の大部分は乾燥したようであり、その中にいくつかの泡が移動して見ることができた。この最初の相は、明白な移動して見える液体がないときに終了した。乾燥の第2の相は、物質がガラス状および割れて見えるまでの同じ条件下でさらなる時間であった。
【0150】
次に、乾燥した糖類を、その遊離のアミノ基を、アジピン酸のジ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(bis−NHSエステル)と反応することにより活性化した。この糖類をDMSO中に溶解して40mmol/Lのアミン濃度を得た。トリエチルアミン(TEA)を、1.113のTEA:アミン容量比で添加し、そしてこの混合物を攪拌して均一にした。
【0151】
コハク酸ジエステルを、DMSO中に、この糖類を溶解するために用いたDMSOの5倍容量を用いて溶解した。コハク酸ジエステルの量は、コハク酸ジステル:アミン基の12:1モル比を与えるように計算した。
【0152】
このコハク酸ジエステル溶液を攪拌しながら、糖混合物をゆっくりと添加し、そして次に1.5〜2時間攪拌しながら室温でインキュベートし、その後、この反応混合物を、活性化糖を沈殿させ、そしてそれをDMSO、bis−NHSエステルおよびTEAから分離するために、攪拌しながら室温のジオキサン(ポリプロピレン遠心分離ボトル中の4倍容量)にゆっくりと添加した。沈殿のための75分の後、ボトルにキャップをし、そして10分間攪拌した。次にこの混合物を、15℃において、7000gで20分間遠心分離した。上清液をデカントし、そしてこのジオキサン洗浄を合計5回の洗浄について繰り返した。この混合物を次に減圧ドライヤー(Lyovac GT2)を用いて乾燥した。乾燥した糖類を活性エステルについて分析した[177]。
【0153】
結合体化のために、活性化糖エステルおよびCRM197を、0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2中、mmolCRM197当たり20mmolの活性化糖類比で混合した。タンパク質溶液を調節して45g/lのCRM197濃度を得、そしてマグネチック攪拌棒を用いガラス瓶中でゆっくりと攪拌した。活性化糖類をこの瓶にゆっくりと添加し、次いでそれにキャップをした。攪拌速度は、過剰な発泡なしに小ボルテックスが形成されるように調節した。結合体化を、14〜22時間進行させた。最終産物をSDS−PAGE(図8;1:MWマーカー;2:CRM197;3:結合体;4:上清結合体)によって、および抗CRM抗体を用いるウェスタンブロット(図9;1:上清結合体;2:結合体;3:CRM197)によって分析した。
【0154】
最後に、結合体を、免疫原性研究のために、公証100KDaカットオフの限外濾過膜(Membranes 100K Microcon SK、Amicon)を用いて精製した。膜は、0.5mlの蒸留水で、2500rpmにおける10分間の遠心分離(Biofuge Picot)により洗浄した。次いで結合体を添加し、そして13000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、膜に再添加し、そして2500rpmで25分間遠心分離した。0.3mlの0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)を添加し、そして2500rpmで25分間遠心分離した。これを合計7回繰り返した。最終の精製産物を、タンパク質について[178]、グルコースについて(パルス化電流測定検出を備えた高圧アニオン交換クロマトグラフィー)、SDS−PAGEにより(図10;1:CRM197;2:精製結合体)、および抗グルカン抗体を用いるウェスタンブロットにより(図11)分析した。
【0155】
(GG−zymの分析)
GG−zymβグルカン調製物を、ゲル濾過クロマトグラフィーにより、ならびに1H NMRおよび13C NMRにより調査した。それは、各々が約50%のGG−zym抗原重量を示す以下の2つのβグルカン画分を含むことが見出された:
− プール1は、β−1,3−鎖の分岐をもつ基本のβ−1,6−グルカン鎖を含む。このβ−1,6−鎖の重合化のおよその程度は36グルコース単糖単位であり、その一方、β−1,3−鎖のそれは、およそ9〜10単糖単位である。分岐の程度(DB)は約0.6である。
− プール2は、少数のβ−1,6結合をもつ短いβ−1,3グルカン鎖を含む。DPは、約3.9であり、約0.03のDBである。
【0156】
(結合体の免疫原性)
CRM−GGを、YDP細胞で免疫したマウス由来の免疫血清に対するELISAによって試験した。この結合体は、全てのアッセイされた血清と高い反応性であり、C.albicans細胞において発現されるグルカンとCRM−GGの抗原的等価性を示した。
【0157】
結合体の免疫原性を試験するために、以下の3つのスケジュールに従ってCD2F1マウスにその結合体を投与した:
スケジュールA)7匹のマウスを各々、CRM−GG結合体(20μgタンパク質)で腹腔内に接種した。21日後、全ての免疫した動物から得られた血清のプールを、間接的ELISAによって試験した。免疫の間、苦しみまたは疾病の徴候をマウスは示さなかった。
【0158】
スケジュールB)7匹のマウスを、不完全フロイントアジュバント中のCRM−GG結合体(タンパク質として10μg)で、0日目および7日目に皮下的に接種した。アジュバント無しで、10μgの結合体を使用して、28日目に、腹腔内ブーストを与えた。血清を7日後にプールし、そしてスケジュールAのように試験した。スケジュールBの間、いくらかの動物は、苦しみ、そして1匹は、死亡した。
【0159】
スケジュールC)12匹のマウスを、完全フロイントアジュバント中のCRM−GG結合体(タンパク質として10μg)で、0日目に皮下的に接種した。アジュバント無しで、10μgの結合体を使用して、28日目に、腹腔内ブーストを与えた。血清を3日後に収集し、上記のように分析のためにプールした。免疫の間、苦しみまたは疾病の徴候をマウスは示さなかった。
【0160】
ネガティブコントロールとして、非結合体化CRM197を、スケジュールBに従って投与した。複数の攻撃的免疫を使用して、マウスの非結合体化GG−zymに対して惹起された血清を、抗体応答を誘発するためのポジティブコントロールとして使用した(1μgのコレラ毒素アジュバントの2×10μg鼻内点滴、続く、50μgの抗原の5週間の腹腔内感染)。
【0161】
免疫化動物からの血清のIgMおよびIgG力価を、特定のアルカリホスファターゼ結合体抗マウスIgMまたは抗マウスIgG二次抗体を使用して、間接的ELSIAによって決定した。スケジュールAおよびBについての結果(OD読み値)は、以下の通りであった:
【0162】
【表3】
【0163】
スケジュールCについて、抗体ELISA力価(少なくとも2×コントロールでのOD405nm値を与える最高希釈)およびアイソタイプは、以下の通りであった:
【0164】
【表4】
【0165】
このように、評価可能な抗CRM抗体力価(特に、IgG)は、結合体を用いた免疫後に得られた。より重要なことに、免疫はまた、上昇した抗GG−zym抗体力価を誘導した。スケジュールAおよびBを使用して、抗体は、排他的に、IgMアイソタイプであった。しかし、スケジュールCを使用して、動物は、GGに対して、特に、プール1のβ−1−6グルカンに対するIgG抗体の一定の産生を示した。このように、結合体は、乏しい免疫原を強力な免疫原に転換し、アイソタイプ切り換えおよび記憶応答を与えた。
【0166】
(免疫応答の分析)
GG−CRM結合体(スケジュールB)に対して得られた血清を、いずれが優性であるかを知るために、各プールに対して試験した。同じポジティブコントロールを、以前のように使用した。
【0167】
間接的ELISA結果は、抗−GG−CRM血清力価(IgM)を示す値とともに、以下の通りであった:
【0168】
【表5】
【0169】
ELISA阻害結果は、以下の通りであった:
【0170】
【表6】
【0171】
従って、結合体CRM−GGは、プール1に存在するβ−グルカン鎖(すなわち、より高い分子量の主にβ−1,6−グルカン)に対する抗体を主に誘導する。
【0172】
全体的に、CRM−GG結合体を用いたマウス免疫化によって得られるデータは、この結合体が、高度に免疫原性であること、およびこの抗体応答が、GG−Zym多糖類単独で得られたものよりも、抗体力価の点で非常に優れていることを示す。重要なことに、CRM−GG結合体免疫化後に得られた抗体が、保護的抗β−グルカン抗体と同じ抗原特異性を有する。
【0173】
(交差反応性免疫応答)
GG−zymは、C.albicans由来である。マウスを、YDP細胞について上記されたスケジュールと同じスケジュールを使用して、C.albicansまたはS.cerevisiaeのいずれかのYDP細胞で免疫し、そして得られた血清を、GG−zymに対する反応性についてELISAによって試験した。力価は、コーティング抗原無しで、ウェルの2倍の読み値を有する最も高い血清希釈である。二次抗体は、ウサギ抗マウスIgMであった。
【0174】
【表7】
【0175】
このように、S.cerevisiaeYDP細胞に対して惹起された抗体は、C.albicans GG−zym抗原と交差反応する。しかし、S.cerevisiaeおよびC.albicansに対する免疫応答は、同一ではない。なぜなら、抗C.albicans血清は、抗S.cerevisiae血清よりも、ラミナリンとかなり反応性ではないからである。
【0176】
(代替的結合プロセス)
上記グルカン精製および結合体化プロセスは、以下の変化のうちの一方または両方で繰り返された:
還元的アミノ化後の少糖精製のために0.2M NaClを使用するよりも、20mM NaClを使用した。代替的プロセスは、ゲル濾過後の減少した塩濃度を含み、そして下流少糖活性を改善する。アミノ化糖類は、1.5カラム容積の20mM NaCl後、Sephadex G−10カラムから溶出する。
【0177】
結合体精製について、第1の結合体は、名目上100kDaのカットオフを有する膜を使用する限外濾過によって(以前のように)精製された。他の結合体は、結合体の特徴に依存して、名目上30kDaまたは名目上50kDaのカットオフのいずれかでの膜を使用する限外濾過によって精製した(架橋した高いMWの結合体について、50kDa膜を使用した;架橋の無い結合体について、30kDaの膜を使用した)。30kDa膜および50kDa膜を、CentriconTM(遠心分離フィルターユニット)技術または接線流技術のいずれかとともに使用した。
【0178】
CentriconTM技術について、30kDa膜または50kDa膜を、Minifuge T(Heraeus Sepatech)とともに使用するためのMilliporeTMから得られた。デバイスを、3500rpmで10分間、3mlの蒸留水を遠心分離することによって洗浄した。次いで、結合体を、3分間、3500rpmで遠心分離した。
【0179】
上清を除去し、デバイスに添加し、3500rpmで25分の遠心分離を行った。次いで、1.5mlの0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)を添加し、そして25分間、3500rpmで遠心分離した。この手順を、全体で8回実施した。
【0180】
接線流限外濾過について、Holder Labscale(Millipore)装置を、505U Pumps(W.Marlow)およびPLCIC−C 30kDaカットオフ50cm2膜(Millipore)とともに使用した。このシステムを、浸透物のpHが7.00未満になるまで、蒸留水で洗浄した。次いで、このシステムを、100mlの0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)で平衡化した。次いで、サンプルをホルダー内にロードし、そして以下の限外濾過条件を適用した:25.7psiの内圧{1psi=6894.757Pa};18.4psiの外圧{1psi=6894.757Pa};流速7.6ml/分。0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)の40ダイアフィルトレーション容量を使用した。最後に、サンプルを別の容器に配置し、そしてこのシステムを最初に0.1M NaOHで洗浄し、次いで、水、最後に、0.05M NaOHで洗浄した。
【0181】
(プール1およびプール2の分離)
上に述べたように、GG−zym βグルカン調製物は、2つの主要画分(プール1およびプール2)を含む。これら2つのプールは、ゲル濾過によって分離され得る。
【0182】
室温および0.37cm/時間の流速で作動するPharmaciaTMFPLCシステムを使用して、Bio−Gel P−2 Fineカラム(Bio Rad)を、450mlの0.02M PBS(pH7.4)で平衡化した。混合GG−zymサンプルをカラム上にロードし、そして1.0カラム容量の0.02M PBS(pH7.4)を用いて溶出した。画分を収集した後に、カラムを、1.5カラム容量の同じ緩衝液でストリッピングし、次いで、保存溶液としての3カラム容量の蒸留水および3カラム容量の20%エタノールで洗浄した。カラムからの出力物を、上記のように、伝導率および214nmでの吸収によってモニタリングした。図12に示されるように、プール1および2は、別々に溶出する。
【0183】
2つの異なるグルカン集団を、上記手順を使用して、結合体を作製するために、別々に使用し得る。
【0184】
(ラミナリン結合体)
比較の目的のために、CRM197キャリアおよびラミナリンを使用してさらなる結合体を作製した。ラミナリンは、GG−zymのプール2(すなわち、1,3−β−グルカン)と類似のグルカン構造を有するが、約30のより高い平均の重合度を有する。
【0185】
ラミナリン結合体を作製するための方法は、還元的アミノ化後の少糖精製を除いて、GG−Zymに使用される方法と同じである。ラミナリンについて、このプロセスは、505U Pumps(W.Marlow)およびPLCBC−C 3KDカットオフ50cm2膜(Millipore)を使用して、Holder Labscale装置(Millipore)を使用した。この装置を、浸透物のpHが7.00未満になるまで、蒸留水で洗浄した。次いで、この装置を、100mlの0.5M NaClで平衡化し、次いで、サンプルを、ホルダー内にロードし、そして以下の限外濾過条件を適用した:19psiの内圧{1psi=6894.757Pa};13psiの外圧{1psi=6894.757Pa};流速0.6ml/分。13ダイアフィルトレーション容量の0.5M NaClを使用し、続いて、6ダイアフィルトレーション容量のH2Oを使用した。最後に、サンプルを別の容器に配置し、そしてこのシステムを、最初に、0.1M NaOHで洗浄し、次いで、水そして最後に0.05M NaOHで洗浄した。
【0186】
図13は、ラミナリン結合体のSDS−PAGEを示す。左の2つのスポットは、未結合CRM197キャリアを示し、そして右の2つのスポットは、結合体を示す。
【0187】
(要約)
インタクトなC.albicans酵母細胞全体は、C.albicansに対する保護免疫を与えないが、一方、プロテアーゼ処理された細胞は、保護免疫を与え得る。
【0188】
プロテアーゼ処理細胞によって誘導される抗Candida保護は、一部、抗体によって媒介され、抗β−グルカン抗体が重要な役割を果たす。
【0189】
C.albicansに対する、保護性血清移入可能抗体媒介保護は、細胞表面に位置する免疫優性真菌抗原に対する免疫応答によって、打ち消され得る。従って、インタクトな細胞全体を用いる免疫は、細胞表面反応性アンタゴニスト抗体またはブロッキング抗体を誘発する。
【0190】
タンパク質グルカン結合体は、効果的な免疫原である。
【0191】
1つの生物に対して惹起された抗グルカン抗体は、別の生物由来のグルカンと交差反応し得る。
【0192】
本発明が、単なる例として記載され、そして本発明の範囲および精神を維持しながら、改変がなされ得ることが理解される。
【0193】
(参考文献(その内容が本明細書中で参考として援用される))
【0194】
【数1】
【0195】
【数2】
【0196】
【数3】
【0197】
【数4】
【0198】
【数5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原性成分および薬学的に受容可能なキャリアを含む免疫原性組成物であって、(a)該免疫原性成分がグルカン、グルカンのミモトープ、グルカンミモトープのペプチド模倣物またはグルカンミモトープをコードする核酸であり、(b)該組成物が哺乳動物に投与される場合、該組成物は、保護抗グルカン抗体を誘発するが、抗グルカン抗体の保護効果を抑制する抗体を誘発しない、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記グルカンが、β−グルカンである、組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の組成物であって、前記グルカンが、1つ以上のβ−1,6−結合を含む、組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グルカンが、真菌類グルカンである、組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グルカンが、プロテアーゼ処理された真菌類細胞の形態である、組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グルカンが、タンパク質−グルカン結合体の形態である、組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グルカンが、C.albicansのようなCandidaの細胞壁から誘導される、β−グルカンである、組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グルカンが、100kDa未満の分子量を有する、組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物であって、前記組成物が、実質的にマンノタンパクを含まない、組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物が、さらにアジュバントを含む、組成物。
【請求項11】
(1)グルカンを認識する抗体および(2)薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物であって、前記グルカンが、真菌類β−グルカンである、組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物であって、前記真菌類β−グルカンが、1つ以上のβ−1,6−結合を含む、組成物。
【請求項14】
(i)キャリアタンパク質および(ii)グルカンの結合体。
【請求項15】
請求項14に記載の結合体であって、前記グルカンが、真菌類β−グルカンである、結合体。
【請求項16】
請求項15に記載の結合体であって、前記真菌類β−グルカンが、1つ以上のβ−1,6−結合を含む、結合体。
【請求項17】
請求項14または請求項15または請求項16に記載の結合体であって、前記キャリアタンパク質が、CRM197である、結合体。
【請求項18】
真菌類β−グルカンのミモトープを含むポリペプチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項20】
医薬としての使用のための、グルカン、抗グルカン抗体、グルカンミモトープおよび/またはグルカンミモトープをコードする核酸ベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のグルカン、抗体、ミモトープまたは核酸ベクターであって、該グルカンが、真菌類β−グルカンである、グルカン、抗体、ミモトープ、または核酸ベクター。
【請求項22】
請求項21に記載のグルカン、抗体、ミモトープまたは核酸ベクターであって、該真菌類β−グルカンが、1つ以上のβ−1,6−結合を含む、グルカン、抗体、ミモトープまたは核酸ベクター。
【請求項23】
哺乳動物中における抗体応答を高めるための方法であって、該方法が、該哺乳動物に対して請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項24】
微生物感染に罹患する哺乳動物を処置するための方法であって、該方法が、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項25】
微生物感染から哺乳動物を保護するための方法であって、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項26】
哺乳動物における微生物感染を予防または処置するための医薬の製造における、グルカン、抗グルカン抗体、グルカンのグルカンミモトープ、および/またはグルカンミモトープをコードする核酸ベクターの使用。
【請求項27】
請求項26に記載の使用であって、前記グルカンが、真菌類β−グルカンである、使用。
【請求項28】
請求項27に記載の使用であって、前記真菌類β−グルカンが、1つ以上のβ−1,6−結合を含む、使用。
【請求項29】
請求項23〜28のいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記哺乳動物が、ヒトである、方法または使用。
【請求項30】
Candida、Cryptococcus、Enterococcus、Streptococcus、Leishmania、Acanthamoeba、Aspergillus、Pneumocystis、Mycobacterium、Pseudomonas、Staphylococcus、Salmonella、Coccidioides、Trichophyton、Blastomyces、Histoplasma、Paracoccidioides、PythiumnおよびEscherichiaからなる群から選択される種の感染に対して処置または保護するための請求項23〜29のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項31】
カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、皮膚真菌症、スポロトリクス症、および他の皮下真菌症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ病、コクシジオイデス真菌症、パラコクシジオイデス症、ニューモシスティス症、鵞口瘡、結核、ミコバクテリア症、呼吸性感染、猩紅熱、肺炎、猩紅熱、リウマチ熱、敗血症、皮膚リーシュマニア症および内臓リーシュマニア症、角膜棘細胞症、嚢胞性線維症、腸チフス、胃腸炎、および溶血性尿毒症症候群に対して処置または保護するための請求項23〜29のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項32】
請求項1〜13に記載のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物が、以下:Nessieria meningitidisの血清群A、血清群C、血清群W135および/または血清群Y由来の糖類抗原;Helicobacter pylori由来の抗原;N.meningitidis血清群B由来のタンパク質抗原;N.meningitidis血清群B由来の外部膜小胞(OMV)調製物;Streptococcus pneumoniae由来の糖類抗原;A型肝炎ウイルス由来の抗原;B型肝炎ウイルス由来の抗原;C型肝炎ウイルス由来の抗原;Bordetella pertussis由来の抗原;ジフテリア抗原;破傷風抗原;Haemophilus influenzae B由来の糖類抗原;N.gonorrhoeae由来の抗原;Chlamydia pneumoniae由来の抗原;Chlamydia trachomatis由来の抗原;Porphyromonas gingivalis由来の抗原;ポリオ抗原;狂犬病抗原;麻疹;マンプスおよび/または風疹抗原;インフルエンザウイルス由来の抗原;RSウイルスまたはパラインフルエンザウイルスのようなパラミクソウイルス属由来の抗原;Moraxella catarrhalis由来の抗原;Streptococcus agalactiae由来の抗原;Streptococcus pyogenes由来の抗原;Staphylococcus aureus由来の抗原;Bacillus anthracis由来の抗原;フラビウイルスファミリーにおけるウイルス由来の抗原;ペスチウイルス属抗原;パルボウイルス属抗原;プリオンタンパク質;アミロイドタンパク質;および/または癌抗原をさらに含む、組成物。
【請求項33】
請求項1〜13または32のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物が、抗真菌剤をさらに含む、組成物。
【請求項34】
表面に曝されたβ−グルカンを有するプロテアーゼ処理された真菌類細胞。
【請求項35】
マンノタンパクを実質的に含まない細胞壁を有する、請求項34に記載の細胞。
【請求項1】
免疫原性成分および薬学的に受容可能なキャリアを含む免疫原性組成物であって、(a)該免疫原性成分がグルカン、グルカンのミモトープ、グルカンミモトープのペプチド模倣物またはグルカンミモトープをコードする核酸であり、(b)該組成物が哺乳動物に投与される場合、該組成物は、保護抗グルカン抗体を誘発するが、抗グルカン抗体の保護効果を抑制する抗体を誘発しない、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記グルカンが、β−グルカンである、組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の組成物であって、前記グルカンが、1つ以上のβ−1,6−結合を含む、組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グルカンが、真菌類グルカンである、組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グルカンが、プロテアーゼ処理された真菌類細胞の形態である、組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グルカンが、タンパク質−グルカン結合体の形態である、組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グルカンが、C.albicansのようなCandidaの細胞壁から誘導される、β−グルカンである、組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グルカンが、100kDa未満の分子量を有する、組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物であって、前記組成物が、実質的にマンノタンパクを含まない、組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物が、さらにアジュバントを含む、組成物。
【請求項11】
(1)グルカンを認識する抗体および(2)薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物であって、前記グルカンが、真菌類β−グルカンである、組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物であって、前記真菌類β−グルカンが、1つ以上のβ−1,6−結合を含む、組成物。
【請求項14】
(i)キャリアタンパク質および(ii)グルカンの結合体。
【請求項15】
請求項14に記載の結合体であって、前記グルカンが、真菌類β−グルカンである、結合体。
【請求項16】
請求項15に記載の結合体であって、前記真菌類β−グルカンが、1つ以上のβ−1,6−結合を含む、結合体。
【請求項17】
請求項14または請求項15または請求項16に記載の結合体であって、前記キャリアタンパク質が、CRM197である、結合体。
【請求項18】
真菌類β−グルカンのミモトープを含むポリペプチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項20】
医薬としての使用のための、グルカン、抗グルカン抗体、グルカンミモトープおよび/またはグルカンミモトープをコードする核酸ベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のグルカン、抗体、ミモトープまたは核酸ベクターであって、該グルカンが、真菌類β−グルカンである、グルカン、抗体、ミモトープ、または核酸ベクター。
【請求項22】
請求項21に記載のグルカン、抗体、ミモトープまたは核酸ベクターであって、該真菌類β−グルカンが、1つ以上のβ−1,6−結合を含む、グルカン、抗体、ミモトープまたは核酸ベクター。
【請求項23】
哺乳動物中における抗体応答を高めるための方法であって、該方法が、該哺乳動物に対して請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項24】
微生物感染に罹患する哺乳動物を処置するための方法であって、該方法が、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項25】
微生物感染から哺乳動物を保護するための方法であって、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項26】
哺乳動物における微生物感染を予防または処置するための医薬の製造における、グルカン、抗グルカン抗体、グルカンのグルカンミモトープ、および/またはグルカンミモトープをコードする核酸ベクターの使用。
【請求項27】
請求項26に記載の使用であって、前記グルカンが、真菌類β−グルカンである、使用。
【請求項28】
請求項27に記載の使用であって、前記真菌類β−グルカンが、1つ以上のβ−1,6−結合を含む、使用。
【請求項29】
請求項23〜28のいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記哺乳動物が、ヒトである、方法または使用。
【請求項30】
Candida、Cryptococcus、Enterococcus、Streptococcus、Leishmania、Acanthamoeba、Aspergillus、Pneumocystis、Mycobacterium、Pseudomonas、Staphylococcus、Salmonella、Coccidioides、Trichophyton、Blastomyces、Histoplasma、Paracoccidioides、PythiumnおよびEscherichiaからなる群から選択される種の感染に対して処置または保護するための請求項23〜29のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項31】
カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、皮膚真菌症、スポロトリクス症、および他の皮下真菌症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ病、コクシジオイデス真菌症、パラコクシジオイデス症、ニューモシスティス症、鵞口瘡、結核、ミコバクテリア症、呼吸性感染、猩紅熱、肺炎、猩紅熱、リウマチ熱、敗血症、皮膚リーシュマニア症および内臓リーシュマニア症、角膜棘細胞症、嚢胞性線維症、腸チフス、胃腸炎、および溶血性尿毒症症候群に対して処置または保護するための請求項23〜29のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項32】
請求項1〜13に記載のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物が、以下:Nessieria meningitidisの血清群A、血清群C、血清群W135および/または血清群Y由来の糖類抗原;Helicobacter pylori由来の抗原;N.meningitidis血清群B由来のタンパク質抗原;N.meningitidis血清群B由来の外部膜小胞(OMV)調製物;Streptococcus pneumoniae由来の糖類抗原;A型肝炎ウイルス由来の抗原;B型肝炎ウイルス由来の抗原;C型肝炎ウイルス由来の抗原;Bordetella pertussis由来の抗原;ジフテリア抗原;破傷風抗原;Haemophilus influenzae B由来の糖類抗原;N.gonorrhoeae由来の抗原;Chlamydia pneumoniae由来の抗原;Chlamydia trachomatis由来の抗原;Porphyromonas gingivalis由来の抗原;ポリオ抗原;狂犬病抗原;麻疹;マンプスおよび/または風疹抗原;インフルエンザウイルス由来の抗原;RSウイルスまたはパラインフルエンザウイルスのようなパラミクソウイルス属由来の抗原;Moraxella catarrhalis由来の抗原;Streptococcus agalactiae由来の抗原;Streptococcus pyogenes由来の抗原;Staphylococcus aureus由来の抗原;Bacillus anthracis由来の抗原;フラビウイルスファミリーにおけるウイルス由来の抗原;ペスチウイルス属抗原;パルボウイルス属抗原;プリオンタンパク質;アミロイドタンパク質;および/または癌抗原をさらに含む、組成物。
【請求項33】
請求項1〜13または32のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物が、抗真菌剤をさらに含む、組成物。
【請求項34】
表面に曝されたβ−グルカンを有するプロテアーゼ処理された真菌類細胞。
【請求項35】
マンノタンパクを実質的に含まない細胞壁を有する、請求項34に記載の細胞。
【図1】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−224636(P2012−224636A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166700(P2012−166700)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2009−294467(P2009−294467)の分割
【原出願日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【出願人】(504421648)
【出願人】(504421637)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2009−294467(P2009−294467)の分割
【原出願日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【出願人】(504421648)
【出願人】(504421637)
【Fターム(参考)】
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