説明

グルココルチコイドレセプター(GCR)遺伝子の発現を阻害するための組成物及び方法

本発明は、GCR遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)に関する。本発明は、また、dsRNA又はそれをコードする核酸分子もしくはベクターを医薬的に許容可能な担体と一緒に含む医薬組成物;GCR遺伝子の発現により起こされる疾患を、前記医薬組成物を使用して処置するための方法;及び細胞中でのGCRの発現を阻害するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、及びGCR遺伝子の発現を阻害するためにRNA干渉を媒介する際でのそれらの使用に関する。さらに、GCR遺伝子の発現に関連する広範囲の疾患/障害(糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧、心臓血管疾患、又はうつ病など)を処置/防止するための前記dsRNAの使用が、本発明の一部である。
【0002】
グルココルチコイドは、いくつかの生理学的機能(ストレス、免疫、及び炎症反応に対する応答を含む)ならびに肝臓糖新生の刺激及び末梢でのグルコース利用に関与する。グルココルチコイドは、核ステロイドレセプターのファミリーに属する細胞内グルココルチコイドレセプター(GCR)を介して作用する。非活性化GCRは、細胞の細胞質中に位置し、いくつかのシャペロンタンパク質に会合する。リガンドがレセプターを活性化する場合、複合体は細胞核において転位置され、いくつかの遺伝子プロモーター中に位置するグルココルチコイド応答エレメントと相互作用する。レセプターは、ホモ二量体又はヘテロ二量体として細胞核において作用しうる。さらに、いくつかの関連するコアクチベーター又はコレプレッサーも複合体と相互作用しうる。可能な組み合わせのこの大きな範囲は、いくつかのGCR立体構造及びいくつかの可能な生理学的応答に導き、完全な特異的GCR阻害剤として作用することができる小さな化学成分を同定することを困難にする。
【0003】
病態(糖尿病、クッシング症候群、又はうつ病など)は、中程度から重度のコルチゾン過剰症と関連づけられてきた(Chiodini et al, Eur. J. Endocrinol. 2005, Vol. 153, pp 837-844; Young, Stress 2004, Vol. 7 (4), pp 205-208)。GCRアンタゴニスト投与は、うつ病(Flores et al, Neuropsychopharmacology 2006, Vol. 31, pp 628-636)において又はクッシング症候群(Chu et al, J. Clin. Endocrinol. Metab. 2001, Vol. 86, pp 3568-3573)において臨床的に活性であることが証明されている。これらの臨床上の証拠は、多くの適応症(糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧、心臓血管疾患、又はうつ病など)における強力で選択的なGCRアンタゴニストの潜在的な臨床的価値を例証する(Von Geldern et al, J. Med. Chem. 2004, Vol 47 (17), pp 4213-4230; Hu et al, Drug Develop. Res. 2006, Vol. 67, pp 871-883; Andrews, Handbook of the stress and the brain 2005, Vol. 15, pp 437-450)。このアプローチは、また、末梢のインスリン感受性(Zinker et al, Meta. Clin. Exp. 2007, Vol. 57, pp 380-387)を改善し、膵臓ベータ細胞を保護しうる(Delauney et al, J. Clin. Invest. 1997, Vol. (100, pp 2094-2098)。
【0004】
糖尿病患者は、空腹時血中グルコースの増加レベルを有し、それは臨床において糖新生制御障害と相互に関連づけられてきた(DeFronzo, Med. Clin. N. Am. 2004, Vol. 88 pp 787-835)。肝臓糖新生プロセスは、グルココルチコイドの制御下にある。非特異的GCRアンタゴニスト(RU486/ミフェプリストン)の臨床投与は、健常ボランティアにおいて急性的に空腹時血漿グルコースの減少(Garrel et al, J. Clin. Endocrinol. Metab. 1995, Vol. 80 (2), pp 379-385)及びクッシング患者において慢性的に血漿HbA1cの減少(Nieman et al, J. Clin. Endocrinol. Metab. 1985, Vol. 61 (3), pp 536-540)に導く。さらに、レプチン欠損動物に与えられたこの薬物は、空腹時血漿グルコース(ob/obマウス、Gettys et al, Int. J. Obes. 1997, Vol. 21, pp 865-873)ならびに糖新生酵素の活性(db/dbマウス、Friedman et al, J. Biol. Chem. 1997, Vol. 272 (50) pp 31475-31481)を正常化する。肝臓特異的ノックアウトマウスが、産生されており、これらの動物は、それらを48時間にわたり絶食させた場合に中程度の低血糖を呈し、重度の低血糖のリスクを最小限にする(Opherk et al, Mol. Endocrinol. 2004, Vol. 18 (6), pp 1346-1353)。さらに、糖尿病マウス(db/dbマウス)におけるアンチセンスアプローチを用いた肝臓及び脂肪組織GCR発現抑制は、血中グルコースの有意な低下に導く(Watts et al, Diabetes, 2005, Vol 54, pp 1846-1853)。
【0005】
副腎のレベルでの内因性コルチコステロイド分泌を、視床下部−下垂体−副腎軸(HPA)により調節することができる。内因性コルチコステロイドの低い血漿レベルによって、この軸を、フィードバック機構を介して活性化することができ、血液中に循環する内因性コルチコステロイドの増加に導く。ミフェプリストンは、血液脳関門を通過し、HPA軸を刺激することが公知であり、究極的には血液中に循環する内因性コルチコステロイドの増加に導く(Gaillard et al, Pro. Natl. Acad. Sci. 1984, Vol. 81, pp 3879-3882)。ミフェプリストンは、また、長期処置(1年まで、概説については以下を参照のこと:Sitruk-Ware et al, 2003, Contraception, Vol. 68, pp 409-420)後に一部の副腎不全症状を誘導する。さらに、組織選択性のその欠如のため、ミフェプリストンは、前臨床モデルにおいてならびにヒトにおいて末梢でグルココルチコイドの効果を阻害する(Jacobson et al, 2005 J. Pharm. Exp.Ther. Vol 314 (1) pp 191-200; Gaillard et al, 1985 J. Clin. Endo. Met., Vol. 61 (6), pp 1009-1011)。
【0006】
GCR調節因子を適応症(例えば糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧、及び心臓血管疾患など)において使用するために、リスクを限定し、HPA軸を活性化又は阻害し、肝臓より他の臓器において末梢でGCRを阻害することが必要である。肝細胞において直接的にGCRを発現抑制することが、肝臓糖新生を調節/正常化するためのアプローチでありうる(最近実証された通り)。しかし、この効果は、かなり高濃度でだけ見られてきた(25nMの範囲におけるin vitroでのIC50/Watts et al, Diabetes, 2005, Vol 54, pp 1846-1853)。オフターゲットの効果のリスクを最小限にし、ならびに肝臓より他の臓器における末梢での薬理学的活性を限定するために、より強力なGCR発現抑制薬剤を得ることが必要であろう。
【0007】
二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子は、RNA干渉(RNAi)として公知である高度に保存された調節機構において遺伝子発現を遮断することが示されている。本発明は、GCRの発現を選択的及び効率的に減少させることができる二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。GCR RNAiの使用は、グルココルチコイド経路の任意の調節不全に関連する疾患/障害の治療的及び/又は予防的処置のための方法を提供する。これらの疾患/障害は、内因性グルココルチコイドの全身的又は局所的な過剰産生のため又は合成グルココルチコイドを用いた処置のために生じうる(例えば、高用量のグルココルチコイドを用いて処置された患者における糖尿病様症候群)。特定の疾患/障害状態は、2型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性アテローム性動脈硬化症、高血圧、及びうつ病の治療的及び/又は予防的処置を含み、その方法は、人間又は動物へのGCR標的化dsRNAの投与を含む。さらに、本発明は、メタボリックシンドロームX、クッシング症候群、アディソン病、炎症疾患(例えば喘息、鼻炎、及び関節炎など)、アレルギー、自己免疫疾患、免疫不全、食欲不振、悪液質、骨喪失又は骨脆弱性、及び創傷治癒の治療的及び/又は予防的処置のための方法を提供する。メタボリックシンドロームXは、肥満、脂質異常症、特に高トリグリセリド、グルコース不耐性、高血糖、及び高血圧を含むリスク因子のクラスターを指す。
【0008】
1つの好ましい実施態様において、記載したdsRNA分子は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%GCR遺伝子の発現を阻害することが可能である。本発明は、また、GCR dsRNAを用いて肝臓を特異的に標的化するための、上に記載したものを含むGCR遺伝子の発現により起こされる病理学的状態及び疾患を処置するための組成物及び方法を提供する。他の実施態様において、本発明は、罹患した他の組織又は臓器(限定はされないが、脂肪組織、視床下部、腎臓、又は膵臓を含む)を特異的に標的化するための組成物及び方法を提供する。
【0009】
一実施態様において、本発明は、GCR遺伝子の発現、特に哺乳動物又はヒトGCR遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。dsRNAは、互いに相補的である少なくとも2つの配列を含む。dsRNAは、第1配列を含むセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、第2配列を含みうる。配列リストに提供する配列及び、また、添付の表1及び4における特定のdsRNA対の提供を参照のこと。一実施態様において、センス鎖は、GCRをコードするmRNAの少なくとも部分と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。前記配列が、アンチセンス鎖に対するセンス鎖の相補性の領域中に、好ましくはアンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチド2〜7内に位置する。1つの好ましい実施態様において、dsRNAは、特に、ヒトGCR遺伝子を標的化する。さらに別の好ましい実施態様において、dsRNAは、マウス(Mus musculus)及びラット(Rattus norvegicus)GCR遺伝子を標的化する。
【0010】
一実施態様において、アンチセンス鎖は、前記GCR遺伝子をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的であるヌクレオチド配列を含み、相補性の領域は、最も好ましくは、30未満のヌクレオチド長である。さらに、本明細書に記載する発明のdsRNA分子(二本鎖長)の長さは、約16〜30ヌクレオチドの範囲中、特に約18〜28ヌクレオチドの範囲中であることが好ましい。本発明に関連して特に有用であるのは、約19、20、21、22、23、又は24ヌクレオチドの二本鎖長である。最も好ましいのは、19、21、又は23ヌクレオチドの二本鎖ストレッチである。dsRNAは、GCR遺伝子を発現する細胞との接触時に、GCR遺伝子の発現をin vitroで少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは90%阻害する。
【0011】
添付の表13は、本発明に従ってdsRNAとして使用される好ましい分子に関する。また、修飾dsRNA分子を、本明細書において提供し、特に添付の表1及び4において開示し、本発明の修飾dsRNA分子の例証的な例を提供する。本明細書において上で指摘する通り、表1は、本発明の修飾dsRNAの例証的な例を提供する(それにより、対応するセンス鎖及びアンチセンス鎖をこの表中に提供する)。表13に示す未修飾の好ましい分子と表1の修飾dsRNAとの関係を、表14に例証する。さらに、発明のdsRNAのこれらの構成物の例証的な修飾を、修飾の例として本明細書に提供する。
【0012】
表2及び3は、本発明の特定のdsRNA分子の選択的な、生物学的、臨床的、及び医薬的に関連するパラメーターを提供する。
【0013】
最も好ましいdsRNA分子を、添付の表13に提供し、とりわけ及び好ましくは、それにおいて、センス鎖が、配列番号873、929、1021、1023、967、及び905に描写される核酸配列からなる群より選択され、アンチセンス鎖が、配列番号874、930、1022、1024、968、及び906に描写される核酸配列からなる群より選択される。したがって、発明のdsRNA分子は、とりわけ、配列番号873/874、929/930、1021/1022、1023/1024、967/968、及び905/906からなる群より選択される配列対を含みうる。本明細書において提供する特定のdsRNA分子に関連して、配列番号の対は、対応するセンス及びアンチセンス鎖配列(5’から3’)(また、添付の含まれる表に示す通り)に関連する。
【0014】
一実施態様において、前記dsRNA分子は、1〜5ヌクレオチド長の、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを伴うアンチセンス鎖を含む。好ましくは、アンチセンス鎖の前記オーバーハングが、ウラシル又は、GCRをコードするmRNAと相補的であるヌクレオチドを含む。
【0015】
別の好ましい実施態様において、前記dsRNA分子は、1〜5ヌクレオチド長の、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを伴うセンス鎖を含む。好ましくは、センス鎖の前記オーバーハングが、ウラシル又は、GCRをコードするmRNAと同一であるヌクレオチドを含む。
【0016】
別の好ましい実施態様において、前記dsRNA分子は、1〜5ヌクレオチド長の、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを伴うセンス鎖、及び1〜5ヌクレオチド長の、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを伴うアンチセンス鎖を含む。好ましくは、センス鎖の前記オーバーハングが、ウラシル又は、GCRをコードするmRNAと少なくとも90%同一であるヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖の前記オーバーハングが、ウラシル又は、GCRをコードするmRNAと少なくとも90%相補的であるヌクレオチドを含む。
【0017】
最も好ましいdsRNA分子を、以下の表1及び4に提供し、とりわけ及び好ましくは、それにおいて、センス鎖が、配列番号7、31、3、25、33、55、83、747、及び764に描写される核酸配列からなる群より選択され、アンチセンス鎖が、配列番号8、32、4、26、34、56、84、753、及び772に描写される核酸配列からなる群より選択される。したがって、発明のdsRNA分子は、とりわけ、配列番号7/8、31/32、3/4、25/26、33/34、55/56、83/84、747/753、及び764/772からなる群より選択される配列対を含みうる。本明細書に提供する特定のdsRNA分子に関連して、配列番号の対は、対応するセンス及びアンチセンス鎖配列(5’から3’)(また、添付の含まれる表に示す)に関連する。
【0018】
本発明のdsRNA分子は、天然ヌクレオチドからなりうる、又は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド(例えば2’−O−メチル修飾ヌクレオチドなど)、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、逆位デオキシチミジン、及びコレステリル誘導体又はドデカン酸ビスデシルアミド基(dodecanoic acid bisdecylamide group)に連結された末端ヌクレオチドからなりうる。2’修飾ヌクレオチドは、特定の免疫刺激因子又はサイトカインが、発明のdsRNA分子をin vivoで、例えば医療の場で用いた場合に抑制されるという追加の利点を有しうる。あるいは及び非限定的に、修飾ヌクレオチドを、以下の群より選んでもよい:2’−デオキシ−2’−フルオロ修飾ヌクレオチド、2’−デオキシ−修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’−アミノ−修飾ヌクレオチド、2’−アルキル−修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミド酸、及びヌクレオチドを含む非天然塩基。1つの好ましい実施態様において、dsRNA分子は、以下の修飾ヌクレオチドの少なくとも1つを含む:2’−O−メチル修飾ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、及びデオキシチミジン。別の好ましい実施態様において、センス鎖の全てのピリミジンが、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖の全てのピリミジンが、2’−デオキシ−2’−フルオロ修飾ヌクレオチドである。1つの好ましい実施態様において、2つのデオキシチミジンヌクレオチドが、dsRNA分子の両鎖の3’に見出される。別の実施態様において、dsRNA分子の両鎖の3’のこれらのデオキシチミジンヌクレオチドの少なくとも1つが、5’−ホスホロチオエート基を含む。別の実施態様において、センス鎖中のアデニンが続く全てのシトシン、及びアデニン、グアニン、又はウラシルのいずれかが続く全てのウラシルが、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖のアデニンが続く全てのシトシン及びウラシルが、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドである。修飾ヌクレオチドを含む好ましいdsRNA分子を、表1及び4に与える。
【0019】
好ましい実施態様において、発明のdsRNA分子は、表1及び4に与えられる配列において詳述される修飾ヌクレオチドを含む。1つの好ましい実施態様において、発明のdsRNA分子は、配列番号7/8、31/32、3/4、25/26、33/34、55/56、及び83/84からなる群より選択される配列対を含み、表1に詳述される修飾を含む。
【0020】
別の実施態様において、発明のdsRNAは、表1及び4に開示されるものとは異なる位置に修飾ヌクレオチドを含む。1つの好ましい実施態様において、2つのデオキシチミジンヌクレオチドが、dsRNA分子の両鎖の3’に見出される。別の好ましい実施態様において、両鎖の3’のデオキシチミジンヌクレオチドの1つが、逆位デオキシチミジンである。
【0021】
一実施態様において、本発明のdsRNA分子は、センス及びアンチセンス鎖からなり、それにおいて、両鎖が少なくとも9時間の半減期を有する。1つの好ましい実施態様において、本発明のdsRNA分子は、センス及びアンチセンス鎖からなり、それにおいて、両鎖がヒト血清中で少なくとも9時間の半減期を有する。別の実施態様において、本発明のdsRNA分子は、センス及びアンチセンス鎖からなり、それにおいて、両鎖がヒト血清中で少なくとも24時間の半減期を有する。
【0022】
別の実施態様において、本発明のdsRNA分子は、非免疫刺激性であって、例えば、INF−アルファ及びTNF−アルファをin vitroで刺激しない。
【0023】
本発明は、また、本発明のdsRNAの少なくとも1つを含む細胞を提供する。細胞は、好ましくは、哺乳動物細胞(例えばヒト細胞など)である。さらに、また、本明細書で定義するdsRNA分子を含む組織及び/又は非ヒト生物が本発明に含まれ、それにより、前記の非ヒト生物が、研究目的のため又は研究ツールとして、例えば、また、薬物テストにおいて特に有用である。
【0024】
さらに、本発明は、GCR遺伝子、特に哺乳動物又はヒトのGCR遺伝子の発現を、細胞、組織、又は生物において阻害するための方法に関し、以下の工程:
(a)細胞、組織、又は生物中に、本明細書で定義する二本鎖リボ核酸(dsRNA)を導入すること;
(b)工程(a)において産生された前記の細胞、組織、又は生物を、GCR遺伝子のmRNA転写物の分解が得られるために十分な時間にわたり維持し、それにより、GCR遺伝子の発現を所与の細胞において阻害すること
を含む。
【0025】
本発明は、また、本発明の発明のdsRNAを含む医薬組成物に関する。これらの医薬的組成物は、細胞、組織、又は生物におけるGCR遺伝子の発現の阻害において特に有用である。本発明のdsRNAの1つ又は複数を含む医薬的組成物は、また、(a)医薬的に許容可能な担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含んでもよい。
【0026】
別の実施態様において、本発明は、2型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性アテローム性動脈硬化症、高血圧、及びうつ病に関連する障害を処置、予防、又は管理するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置、予防、又は管理を必要とする被験体に、治療的又は予防的に効果的な量の本発明のdsRNAの1つ又は複数を投与することを含む。好ましくは、前記の被験体は、哺乳動物、最も好ましくはヒトの患者である。
【0027】
一実施態様において、本発明は、GCR遺伝子の発現により媒介される病理学的状態を有する被験体を処置するための方法を提供する。そのような状態は、上に記載する糖尿病及び肥満に関連する障害を含む。この実施態様において、dsRNAは、GCR遺伝子の発現を制御するための治療用薬剤として作用する。方法は、本発明の医薬的組成物を患者(例えば、ヒト)に投与し、GCR遺伝子の発現を発現抑制することを含む。その高い特異性のため、本発明のdsRNAは、GCR遺伝子のmRNAを特異的に標的化する。1つの好ましい実施態様において、記載するdsRNAは、GCR mRNAレベルを特異的に減少させ、細胞中でのオフターゲット遺伝子の発現及び/又はmRNAレベルに直接的に影響を与えない。別の好ましい実施態様において、記載するdsRNAは、GCR mRNAレベル、ならびに、GCRにより通常活性化される遺伝子のmRNAレベルを特異的に減少させる。別の実施態様において、発明のdsRNAはグルコースレベルをin vivoで減少させる。
【0028】
1つの好ましい実施態様において、記載するdsRNAは、肝臓中のGCR mRNAレベルを、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%in vivoで減少させる。好ましくは、本発明のdsRNAは、肝臓トランスアミナーゼにおける変化を伴わずに糖血症を減少させる。別の実施態様において、記載するdsRNAは、GCR mRNAレベルを、in vivoで少なくとも4日間にわたり減少させる。別の実施態様において、記載するdsRNAは、GCR mRNAレベルをin vivoで、少なくとも60%、少なくとも4日間にわたり減少させる。
【0029】
治療用dsRNAに関して特に有用なのは、マウス及びラットGCRを標的化するdsRNAの組であって、それらを使用し、動物又は細胞培養モデルにおいて個々のdsRNAについての毒性、治療効力及び効果的な投与量、ならびにin vivoでの半減期を推定することができる。
【0030】
別の実施態様において、本発明は、細胞中のGCR遺伝子、特に、本発明のdsRNAの1つの少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含むGCR遺伝子の発現を阻害するためのベクターを提供する。
【0031】
別の実施態様において、本発明は、細胞中のGCR遺伝子の発現を阻害するためのベクターを含む細胞を提供する。前記ベクターは、本発明のdsRNAの1つの少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む。さらに、前記ベクターは、前記調節配列の他に、発明のdsRNAの少なくとも1つの「センス鎖」及び前記dsRNAの少なくとも1つの「アンチセンス鎖」をコードする配列を含むことが好ましい。また、主張する細胞が、前記調節配列の他に、本発明のdsRNAの1つの少なくとも1つの鎖をコードする、本明細書において定義する配列を含む2つ又は複数のベクターを含むことが想定される。
【0032】
一実施態様において、方法は、dsRNAを含む組成物を投与することを含み、それにおいて、dsRNAは、処置される哺乳動物のGCR遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と相補的であるヌクレオチド配列を含む。上で指摘した通り、本明細書で定義するdsRNA分子の少なくとも1つの鎖をコードする核酸分子を含むベクター及び細胞も、医薬的組成物として使用することができ、従って、医学的介入の必要がある被験体を処置する、本明細書に開示する方法において用いることもできる。また、医薬的組成物及び(ヒト)被験体を処置する対応する方法に関連するこれらの実施態様も、アプローチ(遺伝子治療アプローチなど)に関連することに注目すべきである。本明細書に提供するGCR特異的dsRNA分子又はこれらの発明のdsRNA分子の個々の鎖をコードする核酸分子を、また、ベクター中に挿入してもよく、ヒト患者のための遺伝子治療ベクターとして使用してもよい。遺伝子治療ベクターを、被験体に、例えば、静脈内注射、局所投与により(米国特許第5,328,470号を参照のこと)又は定位注射により(例えば、Chen et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 3054-3057を参照のこと)送達することができる。遺伝子治療ベクターの医薬的調製物は、遺伝子治療ベクターを許容可能な希釈剤中に含むことができる、又は、遺伝子送達媒体が包埋される徐放マトリクスを含むことができる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターを、組換え細胞からインタクトで産生することができる場合(例えば、レトロウイルスベクター)、医薬的調製物は、遺伝子送達システムを産生する1つ又は複数の細胞を含むことができる。
【0033】
本発明の別の局面において、GCR遺伝子発現活性を調節するGCR特異的dsRNA分子が、DNA又はRNAベクター中に挿入された転写単位から発現される(例えば、Skillern, A., et al.,国際PCT公開第WO 00/22113を参照のこと)。これらのトランスジーンを、線形コンストラクト、環状プラスミド、又はウイルスベクターとして導入することができ、それを、宿主ゲノム中に組み込まれたトランスジーンとして取り込ませ、遺伝させることができる。トランスジーンを構築し、それを染色体外プラスミドとして遺伝させることを許容することもできる(Gassmann, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92: 1292)。
【0034】
dsRNAの個々の鎖を、プロモーターにより、2つの別々の発現ベクター上で転写させ、標的細胞中にコトランスフェクトすることができる。あるいは、dsRNAの各々の個々の鎖を、プロモーターにより転写させることができ、その両方が同じ発現プラスミド上に位置する。好ましい実施態様において、dsRNAを、リンカーポリヌクレオチド配列により連結された逆位反復として発現させ、dsRNAがステムループ構造を有するようにする。
【0035】
組換えdsRNA発現ベクターは、好ましくは、DNAプラスミド又はウイルスベクターである。dsRNA発現ウイルスベクターを、限定はされないが、アデノ関連ウイルス(概説については、Muzyczka, et al., Curr. Topics Micro. Immunol. (1992) 158: 97-129を参照のこと);アデノウイルス(例えば、Berkner, et al., BioTechniques (1998) 6: 616、Rosenfeld et al. (1991, Science 252: 431-434)、及びRosenfeld et al.(1992), Cell 68:143-155を参照のこと);又はアルファウイルスならびに当技術分野において公知の他のものに基づき構築することができる。レトロウイルスを使用し、種々の遺伝子が多くの異なる細胞型(上皮細胞を含む)中にin vitro及び/又はin vivoで導入されてきた(例えば、Danos and Mulligan, Proc. NatI. Acad. Sci. USA (1998) 85: 6460-6464を参照のこと)。細胞のゲノム中に挿入された遺伝子を伝達及び発現することが可能である組換えレトロウイルスベクターを、組換えレトロウイルスゲノムを適したパッケージング細胞株(例えばPA317及びPsi−CRIPなど)中にトランスフェクトすることにより産生することができる(Comette et al., 1991, Human Gene Therapy 2: 5-10; Cone et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6349)。組換えアデノウイルスベクターを使用し、感受性宿主(例えば、ラット、ハムスター、イヌ、及びチンパンジー)において多種多様な細胞及び組織に感染させることができ(Hsu et al., 1992, J. Infectious Disease, 166:769)、また、感染のために有糸分裂的に活性な細胞を要求しないという利点を有する。
【0036】
本発明のDNAプラスミド又はウイルスベクターのいずれかにおいてdsRNA発現を駆動するプロモーターは、真核生物RNAポリメラーゼI(例えば、リボソームRNAプロモーター)、RNAポリメラーゼII(例えば、CMV初期プロモーター又はアクチンプロモーター又はU1 snRNAプロモーター)、又は、好ましくはRNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えば、U6 snRNA又は7SK RNAプロモーター)あるいは原核生物プロモーター、例えば、T7プロモーター(発現プラスミドが、T7プロモーターからの転写のために要求されるT7 RNAポリメラーゼもコードするという条件で)でありうる。プロモーターは、また、トランスジーン発現を膵臓に向けることができる(例えば、膵臓についてのインシュリン調節配列を参照のこと(Bucchini et al., 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 2511-2515)。
【0037】
また、トランスジーンの発現は、例えば、誘導性の調節配列及び発現システム、例えば、特定の生理学的レギュレーター(例えば、循環グルコースレベル、又はホルモン)に感受性である調節配列などを使用することにより正確に調節することができる(Docherty et al., 1994, FASEB J. 8: 20-24)。そのような誘導性発現システムは、細胞における又は哺乳動物におけるトランスジーン発現の制御のために適しており、エクジソンにより、エストロジェン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量体化の化学的インデューサー、及びイソプロピル−ベータ−D1−チオガラクトピラノシド(EPTG)による調節を含む。当業者は、dsRNAトランスジーンの意図される使用に基づき、適切な調節/プロモーター配列を選ぶことができうる。
【0038】
好ましくは、dsRNA分子を発現することが可能である組換えベクターを、以下に記載する通りに送達し、標的細胞において持続させる。あるいは、dsRNA分子の一過性発現を提供するウイルスベクターを、使用することができる。そのようなベクターを、必要な場合、反復して投与することができる。一旦、発現されると、dsRNAは、標的RNAに結合し、その機能又は発現を調節する。dsRNA発現ベクターの送達は、全身的に、例えば、静脈内又は筋肉内投与により、患者から外植された標的細胞への投与、それに続く患者中への再導入により、又は所望の標的細胞中への導入を可能にする任意の他の手段によりことができる。
【0039】
dsRNA発現DNAプラスミドは、典型的には、標的細胞中に、陽イオン性の脂質担体(例えば、Oligofectamine)又は非陽イオン性の脂質ベース担体(例えば、Transit-TKO(商標))との複合体としてトランスフェクションされる。単一のGCR遺伝子又は複数のGCR遺伝子の異なる領域を1週間又はそれ以上の期間にわたり標的化するdsRNA媒介性ノックダウンのための複数の脂質トランスフェクションも、本発明により熟慮される。宿主細胞中への本発明のベクターの成功裏の導入を、種々の公知の方法を使用してモニターすることができる。例えば、一過性トランスフェクションを、レポーター、例えば蛍光マーカーなど、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)などを用いてシグナル化することができる。エクスビボ細胞の安定トランスフェクションは、特定の環境因子(例えば、抗生物質及び薬物)に対する耐性、例えばハイグロマイシンB耐性などを伴うトランスフェクション細胞を提供するマーカーを使用して確実にすることができる。
【0040】
以下の詳細な記載は、dsRNA及びdsRNAを含む組成物をどのように作製及び使用し、標的GCR遺伝子の発現を阻害するか、ならびに前記GCR遺伝子の発現により起こされる疾患及び障害を処置するための組成物及び方法を開示する。
【0041】
定義
利便性のために、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲において使用する特定の用語及び語句の意味を以下に提供する。本明細書の他の部分における用語の使用法とこのセクションに提供するその定義の間に明白な矛盾がある場合、このセクションの定義を優先すべきである。
【0042】
「G」、「C」、「A」、「U」、及び「T」又は「dT」は、それぞれ、各々が、一般的に、グアニン、シトシン、アデニン、ウラシル、及びデオキシチミジンを塩基としてそれぞれ含むヌクレオチドを表す。しかし、用語「リボヌクレオチド」又は「ヌクレオチド」は、また、修飾ヌクレオチド(以下でさらに詳述する)、又は代替置換成分を指しうる。そのような置換成分を含む配列は、本発明の実施態様である。以下に詳述する通り、本明細書に記載するdsRNA分子は、また、「オーバーハング」、即ち、「センス鎖」及び「アンチセンス鎖」の本明細書で定義する対により通常形成されるRNA二重らせん構造に直接的に関与しない不対オーバーハングヌクレオチドを含みうる。しばしば、そのようなオーバーハングストレッチは、デオキシチミジンヌクレオチド、大半の実施態様において、2デオキシチミジンを3’末端中に含む。そのようなオーバーハングを以下に記載及び例証する。
【0043】
用語「GCR」は、本明細書で使用する通り、特に、細胞内グルココルチコイドレセプター(GCR)に関連し、前記用語は、対応する遺伝子(NR3C1遺伝子としても公知である)、コードされるmRNA、コードされるタンパク質/ポリペプチドならびに同の機能的フラグメントに関連する。好ましいのは、ヒトGCR遺伝子である。その好ましい実施態様において、本発明のdsRNAは、ラット(Rattus norvegicus)及びマウス(Mus musculus)のGCR遺伝子を標的化し、さらに別の好ましい実施態様において、本発明のdsRNAは、ヒト(H. sapiens)及びカニクイザル(Macaca fascicularis)GCR遺伝子を標的化する。用語「GCR遺伝子/配列」は、野生型配列だけでなく、また、前記遺伝子/配列に含まれうる突然変異及び変化に関する。したがって、本発明は、本明細書に提供する特定のdsRNA分子に限定されない。本発明は、また、そのような突然変異/変化を含むGCR遺伝子のRNA転写物の対応するヌクレオチドストレッチと少なくとも85%相補的であるアンチセンス鎖を含むdsRNA分子に関する。
【0044】
本明細書で使用する「標的配列」は、GCR遺伝子の転写の間に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の隣接部分を指し、一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAを含む。
【0045】
本明細書で使用する用語「配列を含む鎖」は、標準的なヌクレオチド命名法を使用して指す配列により記載されるヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを指す。しかし、本明細書で詳述する通り、そのような「配列を含む鎖」は、また、修飾(修飾ヌクレオチドなど)を含みうる。
【0046】
本明細書に記載する通り、及び、別に示さない場合、用語「相補的」は、第2のヌクレオチド配列に関連して第1のヌクレオチド配列を記載するために使用される場合、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが、特定の条件下で、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションし、二本鎖構造を形成する能力を指す。「相補的」配列は、本明細書で使用する通り、非Watson−Crick塩基対及び/又は非天然の修飾ヌクレオチドから形成される塩基対を含みうるか、あるいはそれらから完全に形成されうる(ハイブリダイゼーションするそれらの能力に関する上の要求が満たされる限り)。
【0047】
「完全に相補的」と言及される配列は、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドへの、第1及び第2のヌクレオチド配列の全長にわたる塩基対合を含む。
【0048】
しかし、第1の配列が、本明細書における第2の配列に関して「実質的に相補的」として言及される場合、2つの配列は完全に相補的でありうるか、又はそれらは、1つ又は複数の、しかし、好ましくは、多くて13のミスマッチ塩基対をハイブリダイゼーション時に形成しうる。
【0049】
本明細書における用語「相補的」、「完全に相補的」、及び「実質的に相補的」は、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の間での、又はdsRNAのアンチセンス鎖と標的配列の間での塩基マッチングに関して使用してもよい(それらの使用の関連から理解されうる通り)。
【0050】
用語「二本鎖RNA」、「dsRNA分子」、又は「dsRNA」は、本明細書で使用する通り、リボ核酸分子、又はリボ核酸分子の複合体(2つの逆平行の実質的に相補的な核酸鎖を含む二本鎖構造を有する)を指す。二本鎖構造を形成する2つの鎖は、1つのより大きなRNA分子の異なる部分でありうる。又は、それらは、別々のRNA分子でありうる。2つの鎖が、1つのより大きな分子の一部であり、従って、二本鎖構造を形成する1つの鎖の3’末端とそれぞれの他の鎖の5’末端との間が、中断のないヌクレオチド鎖により連結される場合、連結RNA鎖は「ヘアピンループ」と言及される。2つの鎖が、二本鎖構造を形成する1つの鎖の3’末端とそれぞれの他の鎖の5’末端との間が中断のないヌクレオチド鎖以外の手段により共有結合的に連結される場合、連結構造は「リンカー」と言及される。RNA鎖は、同じ又は異なる数のヌクレオチドを有しうる。二本鎖構造に加えて、dsRNAは、1つ又は複数のヌクレオチドオーバーハングを含みうる。前記「オーバーハング」中のヌクレオチドは、0〜5の間のヌクレオチドを含みうるが、それにより、「0」は、「オーバーハング」を形成する追加のヌクレオチドがないことを意味するのに対し、「5」は、dsRNA二本鎖の個々の鎖上の5つの追加のヌクレオチドを意味する。これらの任意の「オーバーハング」は、個々の鎖の3’末端中に位置する。以下で詳述される通り、2つの鎖の1つにおいてだけ「オーバーハング」を含むdsRNA分子も、本発明に関連して有用であり、さらには有利でありうる。「オーバーハング」は、好ましくは0〜2の間のヌクレオチドを含む。最も好ましくは、2つの「dT」(デオキシチミジン)ヌクレオチドが、dsRNAの両鎖の3’末端で見出される。また、2つの「U」(ウラシル)ヌクレオチドを、オーバーハングとして、dsRNAの両鎖の3’末端で使用することができる。したがって、「ヌクレオチドオーバーハング」は、dsRNAの1つの鎖の3’末端が他の鎖の5’末端を越えて伸長する(又はその逆の)場合、dsRNAの二本鎖構造から突出する不対ヌクレオチド又はヌクレオチド群を指す。例えば、アンチセンス鎖は23ヌクレオチドを含み、センス鎖は21ヌクレオチドを含み、2つのヌクレオチドのオーバーハングをアンチセンス鎖の3’末端に形成する。好ましくは、2つのヌクレオチドのオーバーハングは、標的遺伝子のmRNAと完全に相補的である。「平滑」又は「平滑末端」は、不対ヌクレオチドがdsRNAのその末端にない、即ち、ヌクレオチドのオーバーハングがないことを意味する。「平滑末端」dsRNAは、その全長にわたり二本鎖である、即ち、分子のいずれかの末端にヌクレオチドのオーバーハングがないdsRNAである。
【0051】
用語「アンチセンス鎖」は、標的配列と実質的に相補的である領域を含むdsRNAの鎖を指す。本明細書で使用する用語「相補性の領域」は、配列、例えば、標的配列と実質的に相補的であるアンチセンス鎖上の領域を指す。相補性の領域が標的配列と完全に相補的ではない場合、ミスマッチは、アンチセンス鎖の5’末端の外側のヌクレオチド2〜7で最も耐容性がある。
【0052】
用語「センス鎖」は、本明細書で使用する通り、アンチセンス鎖の領域と実質的に相補的である領域を含むdsRNAの鎖を指す。「実質的に相補的」は、センス及びアンチセンス鎖中のオーバーラップするヌクレオチドの好ましくは少なくとも85%が相補的であることを意味する。
【0053】
「細胞中に導入する」は、dsRNAを指す場合、細胞中への取り込み又は吸収を促進することを意味し、当業者により理解される通りである。dsRNAの吸収又は取り込みは、自発的な拡散又は能動的な細胞プロセスを通じて、又は補助薬剤又はデバイスにより生じうる。この用語の意味は、in vitroの細胞に限定されない;dsRNAは、また、「細胞中に導入」してもよいが、それにおいて細胞は生きた生物の一部である。そのような例において、細胞中への導入は、生物への送達を含む。例えば、in vivo送達のために、dsRNAを組織部位中に注射することができるか、又は、全身的に投与することができる。例えば、本発明のdsRNA分子が、医学的介入を必要とする被験体に投与されることが想定される。そのような投与は、前記の被験体における罹患側中への、例えば、肝臓組織/細胞中への、又は癌性組織/細胞(肝臓癌組織など)中への本発明のdsRNA、ベクター、又は細胞の注射を含みうる。しかし、また、罹患組織の近傍における注射が想定される。細胞中へのin vitro導入は、当技術分野において公知の方法(例えばエレクトロポレーション及びリポフェクションなど)を含む。
【0054】
用語「発現抑制する」、「の発現を阻害する」、及び「ノックダウンする」は、それらがGCR遺伝子に言及する限り、本明細書において、GCR遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制を指し、第1の細胞又は細胞の群(それにおいてGCR遺伝子が転写され、GCR遺伝子の発現が阻害されるように処置されている)より単離されうるGCR遺伝子から転写されるmRNAの量の低下により明らかにされる(第1の細胞又は細胞の群と実質的に同一であり、そのように処置されていない第2の細胞又は細胞の群(コントロール細胞)と比較して)。阻害の程度は、通常、
【数1】


の観点から表される。
【0055】
あるいは、阻害の程度は、GCR遺伝子転写に機能的に関連するパラメーター(例えば、細胞により分泌されるGCR遺伝子によりコードされるタンパク質の量、又は特定の表現型を呈する細胞の数)の低下の観点から与えてもよい。
【0056】
本明細書において提供される添付の実施例において及び添付の表において例証する通り、発明のdsRNA分子は、ヒトGCRの発現を、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、in vitroアッセイ、即ち、in vitroで阻害することが可能である。用語「in vitro」は、本明細書で使用する通り、しかし、限定はされないが、細胞培養アッセイを含む。別の実施態様において、発明のdsRNA分子は、マウス又はラットGCRの発現を、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%阻害することが可能である。当業者は、そのような阻害率及び関連する効果を、特に、本明細書に提供するアッセイに照らして容易に決定することができる。
【0057】
用語「オフターゲット」は、本明細書で使用する通り、in silicoの方法により、配列相補性に基づき、記載するdsRNAにハイブリダイゼーションすることが予測されるトランスクリプトームの全ての非標的mRNAを指す。本発明のdsRNAは、好ましくは、GCRの発現を特異的に阻害する、即ち、任意のオフターゲットの発現を阻害しない。
【0058】
特に好ましいdsRNAを、例えば、添付の表1及び2に提供する(センス鎖及びアンチセンス鎖配列がそれにおいて5’から3’方向で提供される)。最も好ましいdsRNAは表2中にある。
【0059】
用語「半減期」は、本明細書で使用する通り、化合物又は分子の安定性の測定値であり、当業者に公知の方法により、特に、本明細書に提供するアッセイに照らして評価することができる。
【0060】
用語「非免疫刺激性」は、本明細書で使用する通り、発明されたdsRNA分子による免疫応答の任意の誘導の非存在を指す。免疫応答を決定するための方法は、当業者に周知であり、例えば、実施例のセクションにおいて記載される通りにサイトカインの放出を評価することによる。
【0061】
用語「処置する」、「処置」などは、本発明に関連して、GCR発現に関連する障害(糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧、心臓血管疾患、又はうつ病など)からの解放又はその軽減を意味する。
【0062】
本明細書で使用する「医薬的組成物」は、薬理学的に効果的な量のdsRNA及び医薬的に許容可能な担体を含む。しかし、そのような「医薬的組成物」は、また、そのようなdsRNA分子の個々の鎖、又は、本発明のdsRNA中に含まれるセンス又はアンチセンス鎖の少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む本明細書に記載するベクターを含みうる。また、本明細書で定義するdsRNAを発現する又は含む細胞、組織、又は単離臓器を「医薬的組成物」として使用してもよいことが想定される。本明細書で使用する「薬理学的に効果的な量」、「治療的に効果的な量」、又は単に「効果的な量」は、意図される薬理学的、治療的、又は予防的な結果を産生するために効果的なRNAの量を指す。
【0063】
用語「医薬的に許容可能な担体」は、治療用薬剤の投与のための担体を指す。そのような担体は、しかし、限定はされないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びその組み合わせを含む。この用語は、具体的には、細胞培養液を除外する。経口投与される薬物について、医薬的に許容可能な担体は、しかし、限定はされないが、医薬的に許容可能な賦形剤、例えば、当業者に公知の不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、着色剤、及び保存剤などを含む。
【0064】
医薬的に許容可能な担体は、本発明のdsRNA、ベクター、又は細胞の全身投与を可能にすることが特に想定される。腸内投与も想定されるのに対し、非経口投与及び、また、経皮又は経粘膜(例えば、吹送、バッカル、腟内、肛門)投与ならびに薬物の吸入が、医学的介入を必要とする患者に、本発明の化合物を投与する実行可能な方法である。非経口投与を用いる場合、これは、罹患組織中又は少なくとも近傍における本発明の化合物の直接注射を含みうる。しかし、また、本発明の化合物の静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、皮内、くも膜下腔内、及び他の投与が、当業者、例えば担当医師の技術の範囲内にある。
【0065】
筋肉内、皮下、及び静脈内使用のために、本発明の医薬的組成物は、一般的に、適切なpH及び等張性に緩衝化された無菌水溶液又は懸濁液中で提供される。好ましい実施態様において、担体は、排他的に、水性緩衝液からなる。これに関連して、「排他的に」は、補助薬剤又はカプセル化物質(GCR遺伝子を発現する細胞中でdsRNAの取り込みに影響を与える又はそれを媒介しうる)が存在しないことを意味する。本発明の水性懸濁剤は、懸濁剤(例えばセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、及びゴムトラガカントなど)及び湿潤剤(例えばレシチンなど)を含みうる。水性懸濁剤のための適した保存剤は、エチル及びn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸を含む。本発明の有用な医薬的組成物は、また、身体からの迅速な除去に対してdsRNAを保護するためのカプセル化製剤、例えば制御放出製剤(インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む)などを含む。生物分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる(例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸など)。そのような製剤の調製のための方法は、当業者には明かであろう。リポソーム懸濁剤も医薬的に許容可能な担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従って、例えば、PCT公開WO91/06309(参照により本明細書に組み入れられる)に記載される通りに調製することができる。
【0066】
本明細書で使用する「形質転換細胞」は、少なくとも1つのベクターが導入されている細胞であって、そこからdsRNA分子又はそのようなdsRNA分子の少なくとも1つの鎖が発現されうる。そのようなベクターは、好ましくは、本発明のdsRNA中に含まれるセンス鎖又はアンチセンス鎖の少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含むベクターである。
【0067】
表1及び4の配列の1つから、一方又は両方の末端上においてわずか数個のヌクレオチドを差し引いたものを含む、より短いdsRNAが、上に記載するdsRNAと比較して、同様に効果的でありうることを合理的に予測することができる。上で指摘する通り、本発明の大半の実施態様において、本明細書で提供するdsRNA分子は、約16〜約30ヌクレオチドの二本鎖長(即ち、「オーバーハング」を伴わない)を含む。特定の有用なdsRNA二本鎖長は、約19〜約25ヌクレオチドである。最も好ましいのは、19ヌクレオチドの長さを伴う二本鎖構造である。発明のdsRNA分子において、アンチセンス鎖は、少なくとも部分的に、センス鎖と相補的である。
【0068】
1つの好ましい実施態様において、発明のdsRNA分子は、表13に与える配列のヌクレオチド1〜19を含む。
【0069】
本発明のdsRNAは、標的配列に対する1つ又は複数のミスマッチを含むことができる。好ましい実施態様において、本発明のdsRNAは、わずか13のミスマッチを含む。dsRNAのアンチセンス鎖が標的配列に対するミスマッチを含む場合、ミスマッチの領域が、アンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチド2〜7内に位置しないことが好ましい。別の実施態様において、ミスマッチの領域が、アンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチド2〜9内に位置しないことが好ましい。
【0070】
上で言及する通り、dsRNAの少なくとも1つの末端/鎖が、1〜5、好ましくは1又は2のヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを有しうる。少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを有するdsRNAは、予想外に、それらの平滑末端の対応物よりも優れた阻害特性を有する。さらに、本発明者らは、わずか1つのヌクレオチドオーバーハングの存在によって、dsRNAの干渉活性が、その全体的な安定性に影響を与えることなく強化されることを発見している。わずか1つのオーバーハングを有するdsRNAが、in vivoで、ならびに種々の細胞、細胞培養液、血液、及び血清中で特に安定で効果的であることが証明されている。好ましくは、一本鎖オーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端側末端に又は、あるいは、センス鎖の3’末端側末端に位置する。dsRNAは、また、平滑末端(好ましくはアンチセンス鎖の5’末端に位置する)を有しうる。好ましくは、dsRNAのアンチセンス鎖はヌクレオチドオーバーハングを3’末端に有し、5’末端は平滑である。別の実施態様において、オーバーハング中のヌクレオチドの1つ又は複数は、ヌクレオシドチオリン酸を用いて置換される。
【0071】
本発明のdsRNAを、また、化学的に修飾し、安定性を増強してもよい。本発明の核酸は、当技術分野において十分に確立された方法、例えば“Current protocols in nucleic acid chemistry”, Beaucage, S. L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USA(本明細書により、参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるものなどにより合成及び/又は修飾してもよい。化学的修飾は、しかし、限定はされないが、2’修飾、非天然塩基の導入、リガンドへの共有結合性の付着、及びチオリン酸結合を用いたリン酸結合の置換を含みうる。この実施態様において、二本鎖構造の完全性は、少なくとも1つ、好ましくは2つの化学結合により強化される。化学結合は、種々の周知の技術のいずれか、例えば、共有結合、イオン結合、又は水素結合の導入により;疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、又はスタッキング相互作用;金属イオン配位を用いて、又はプリン類似体の使用を通じて達成されうる。好ましくは、dsRNAを修飾するために使用することができる化学基は、限定なしに、メチレンブルー;二官能基、好ましくは、ビス−(2−クロロエチル)アミン;N−アセチル−N’−(p−グリオキシルベンゾイル)シスタミン;4−チオウラシル;及びソラレンを含む。1つの好ましい実施態様において、リンカーは、ヘキサ−エチレングリコールリンカーである。この場合において、dsRNAは、固相合成により産生され、ヘキサ−エチレングリコールリンカーが標準的な方法に従って取り込まれる(例えば、Williams, D. J., and K. B. Hall, Biochem. (1996) 35: 14665-14670)。特定の実施態様において、アンチセンス鎖の5’末端及びセンス鎖の3’末端が、ヘキサエチレングリコールリンカーを介して化学的に連結される。別の実施態様において、dsRNAの少なくとも1つのヌクレオチドは、ホスホロチオエート基又はホスホロジチオエート基を含む。dsRNAの末端での化学結合は、好ましくは、三重らせん結合により形成される。
【0072】
特定の実施態様において、化学結合は1つ又はいくつかの結合基を用いて形成されうる。それにおいて、そのような結合基は、好ましくは、ポリ−(オキシホスフィニコオキシ−1,3−プロパンジオール)鎖及び/又はポリエチレングリコール鎖である。他の実施態様において、化学結合は、また、プリンの代わりに二本鎖構造中に導入されたプリン類似体を用いて形成されうる。さらなる実施態様において、化学結合は、二本鎖構造中に導入されたアザベンゼン単位により形成されうる。さらなる実施態様において、化学結合は、二本鎖構造中に導入されたヌクレオチドの代わりに、分岐ヌクレオチド類似体により形成されうる。特定の実施態様において、化学結合は、紫外線光により誘導されうる。
【0073】
さらに別の実施態様において、2つの単鎖の1つ又は両方のヌクレオチドを修飾し、細胞酵素、例えば、特定のヌクレアーゼの活性化を予防又は阻害してもよい。細胞酵素の活性化を阻害するための技術が、当技術分野において公知であり、しかし、限定はされないが、2’−アミノ修飾、2’−アミノ糖修飾、2’−F糖修飾、2’−F修飾、2’−アルキル糖修飾、非荷電骨格修飾、モルホリノ修飾、2’−O−メチル修飾、逆位チミジン、及びホスホロアミド酸を含む(例えば、Wagner, Nat. Med. (1995) 1:1116-8を参照のこと)。このように、dsRNA上のヌクレオチドの少なくとも1つの2’ヒドロキシル基を、化学基により、好ましくは2’アミノ基又は2’メチル基により置換する。また、少なくとも1つのヌクレオチドを修飾し、ロックドヌクレオチドを形成してもよい。そのようなロックドヌクレオチドは、リボースの2’酸素をリボースの4’炭素と結合させるメチレン架橋を含む。オリゴヌクレオチド中へのロックドヌクレオチドの導入によって、相補配列についての親和性が改善され、融解温度が数度だけ増加する。
【0074】
本発明の化合物を、1つ又は複数の逆位ヌクレオチド、例えば、逆位チミジン又は逆位アデニンを使用して合成することができる(例えば、Takei, et al., 2002, JBC 277(26): 23800-06を参照のこと)。
【0075】
本明細書に提供するdsRNA分子の修飾は、in vivoならびにin vitroでそれらの安定性にポジティブに影響し、また、(罹患)標的側へのそれらの送達を改善する。さらに、そのような構造的及び化学的修飾は、投与時でのdsRNA分子に対する生理学的反応にポジティブに影響しうる(例えば、サイトカイン放出が、好ましくは、抑制される)。そのような化学的及び構造的修飾は、当技術分野において公知であり、とりわけ、Nawrot (2006) Current Topics in Med Chem, 6, 913-925に例証される。
【0076】
リガンドをdsRNAにコンジュゲーションすることによって、その細胞吸収ならびに特定組織への標的化を増強することができる。特定の例において、疎水性リガンドをdsRNAにコンジュゲーションさせ、細胞膜の直接的な浸透を促進する。あるいは、dsRNAにコンジュゲーションされたリガンドは、レセプター媒介性エンドサイトーシスのための基質である。これらのアプローチを使用し、アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞浸透が促進されてきた。例えば、コレステロールを種々のアンチセンスオリゴヌクレオチドにコンジュゲーションし、その非コンジュゲーション類似体と比較して実質的により活性である化合物がもたらされてきた。M. Manoharan Antisense & Nucleic Acid Drug Development 2002, 12, 103を参照のこと。オリゴヌクレオチドにコンジュゲーションされている他の親油性化合物は、1−ピレン酪酸、1,3−ビス−O−(ヘキサデシル)グリセロール、及びメントールを含む。レセプター媒介性エンドサイトーシスのためのリガンドの1つの例は、葉酸である。葉酸は、葉酸レセプター媒介性エンドサイトーシスにより細胞に入る。葉酸を持つdsRNA化合物は、細胞中に、葉酸レセプター媒介性エンドサイトーシスを介して効率的に輸送されうる。オリゴヌクレオチドの3’末端への葉酸の付着は、オリゴヌクレオチドの増加した細胞取り込みをもたらす(Li, S.; Deshmukh, H. M.; Huang, L. Pharm. Res. 1998, 15, 1540)。オリゴヌクレオチドにコンジュゲーションされている他のリガンドは、ポリエチレングリコール、炭水化物クラスター、架橋薬剤、ポルフィリンコンジュゲーション、及び送達ペプチドを含む。
【0077】
特定の例において、オリゴヌクレオチドへの陽イオンリガンドのコンジュゲーションは、しばしば、ヌクレアーゼに対する改善された耐性をもたらす。陽イオンリガンドの代表的な例は、プロピルアンモニウム及びジメチルプロピルアンモニウムである。興味深いことに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、陽イオンリガンドがオリゴヌクレオチド全体に分散した場合、mRNAに対するそれらの高い結合親和性を保持することが報告された。M. Manoharan Antisense & Nucleic Acid Drug Development 2002, 12, 103及び本明細書中の参考文献を参照のこと。
【0078】
本発明のリガンドにコンジュゲーションされているdsRNAは、ペンダント反応性の官能性を持つdsRNA(例えば、dsRNA上への連結分子の付着に由来するものなど)の使用により合成されうる。この反応性オリゴヌクレオチドは、商業的に利用可能なリガンド、種々の保護基のいずれかを持つ合成されたリガンド、又はそれに付着した連結成分を有するリガンドと直接的に反応しうる。本発明の方法は、リガンドにコンジュゲーションされているdsRNAの合成を、一部の実施態様において、リガンドに適切にコンジュゲーションされている、及び、固体支持体材料にさらに付着させてもよいヌクレオシド単量体の使用により促進する。そのようなリガンド−ヌクレオシドコンジュゲートは、場合により固体支持体材料に付着させ、本発明の方法の一部の好ましい実施態様に従って、選択された血清結合リガンドとヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの5’末端上に位置する連結成分との反応を介して調製される。特定の例において、dsRNAの3’末端に付着されたアルキルリガンドを持つdsRNAが、最初に、モノマービルディングブロックを、制御されたポアガラス支持体に、長鎖アミノアルキル基を介して共有結合的に付着させることにより調製する。次に、ヌクレオチドを、標準的な固相合成技術を介して、固体支持体に結合されたモノマービルディングブロックに結合させる。モノマービルディングブロックは、ヌクレオシド、又は固相合成と適合する他の有機化合物でありうる。
【0079】
本発明のコンジュゲートにおいて使用されるdsRNAは、便利に及びルーチン的には、固相合成の周知の技術を通じて作製されうる。また、他のオリゴヌクレオチド(例えばホスホロチオエート及びアルキル化誘導体など)を調製するための同様の方法を使用することが公知である。
【0080】
特定の修飾オリゴヌクレオチドの合成に関する教示が、以下の米国特許において見出されうる:米国特許第5,218,105号(ポリアミンにコンジュゲーションされているオリゴヌクレオチドを引用する);米国特許第5,541,307号(修飾骨格を有するオリゴヌクレオチドを引用する);米国特許第5,521,302号(キラルリン連結を有するオリゴヌクレオチドを調製するためのプロセスを引用する);米国特許第5,539,082号(ペプチド核酸を引用する);米国特許第5,554,746号(βラクタム骨格を有するオリゴヌクレオチドを引用する);米国特許第5,571,902号(オリゴヌクレオチドの合成のための方法及び材料を引用する);米国特許第5,578,718号(アルキルチオ基を有するヌクレオシドを引用し、それにおいて、そのような基を、ヌクレオシドの種々の位置のいずれかに付着された他の成分に対するリンカーとして使用してもよい);米国特許第5,587,361号(高いキラル純度のホスホロチオエート連結を有するオリゴヌクレオチドを引用する);米国特許第5,506,351号(2’−O−アルキルグアノシン及び関連化合物(2,6−ジアミノプリン化合物を含む)の調製のためのプロセスを引用する);米国特許第5,587,469号(N−2置換プリンを有するオリゴヌクレオチドを引用する);米国特許第5,587,470号(3−デアザプリンを有するオリゴヌクレオチドを引用する);米国特許第5,608,046号(両方とも、コンジュゲーションされている4’−デスメチルヌクレオシド類似体を引用する);米国特許第.5,610,289号(骨格修飾オリゴヌクレオチド類似体を引用する);米国特許第6,262,241号(とりわけ、2’−フルオロ−オリゴヌクレオチドを合成する方法を引用する)。
【0081】
本発明の配列特異的な連結ヌクレオシドを持つリガンドにコンジュゲーションされているdsRNA及びリガンド分子において、オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオシドを、適したDNAシンセサイザーで、標準的ヌクレオチド又はヌクレオシド前駆体、あるいはヌクレオチド又はヌクレオシドにコンジュゲーションされている体の前駆体(連結成分を既に持つ)、リガンドヌクレオチド又はヌクレオシドコンジュゲートの前駆体(リガンド分子を既に持つ)、又は非ヌクレオシドリガンドを持つ構築ブロックを利用して組み立ててもよい。
【0082】
ヌクレオチドコンジュゲートの前駆体(連結成分を既に持つ)を使用する場合、配列特異的な連結ヌクレオシドの合成が典型的に完了し、リガンド分子を、次に、連結成分と反応させ、リガンドにコンジュゲーションされているオリゴヌクレオチドを形成する。種々の分子(例えばステロイド、ビタミン、脂質、及びレポーター分子など)を持つオリゴヌクレオチドコンジュゲートが、以前に記載されている(Manoharan et al.,PCT出願WO93/07883を参照のこと)。好ましい実施態様において、本発明のオリゴヌクレオチド又は連結ヌクレオシドを、自動シンセサイザーにより、商業的に利用可能なホスホラミダイトに加えて、リガンド−ヌクレオシドコンジュゲートに由来するホスホラミダイトを使用して合成する。
【0083】
オリゴヌクレオチドのヌクレオシドにおける2’−O−メチル基、2’−O−エチル基、2’−O−プロピル基、2’−O−アリル基、2’−O−アミノアルキル基、又は2’−デオキシ−2’−フルオロ基の取り込みは、増強されたハイブリダイゼーション特性をオリゴヌクレオチドに与える。さらに、ホスホロチオエート骨格を含むオリゴヌクレオチドは、増強したヌクレアーゼ安定性を有する。このように、本発明の官能性を持たせた連結ヌクレオシドを強化し、ホスホロチオエート骨格又は2’−O−メチル基、2’−O−エチル基、2’−O−プロピル基、2’−O−アミノアルキル基、2’−O−アリル基、もしくは2’−デオキシ−2’−フルオロ基のいずれか又は両方を含むことができる。
【0084】
一部の好ましい実施態様において、5’末端にアミノ基を持つ本発明の官能性を持たせたヌクレオシド配列を、DNAシンセサイザーを使用して調製し、次に、選択されたリガンドの活性エステル誘導体と反応させる。活性エステル誘導体は、当業者に周知である。代表的な活性エステルは、N−ヒドロスクシンイミドエステル、テトラフルオロフェノールエステル、ペンタフルオロフェノールエステル、及びペンタクロロフェノールエステルを含む。アミノ基及び活性エステルの反応は、オリゴヌクレオチドを産生し、それにおいて、選択されたリガンドを、5’位置に、連結基を通じて付着させる。5’末端のアミノ基を、5'-Amino-Modifier C6試薬を利用して調製することができる。好ましい実施態様において、リガンド分子を、オリゴヌクレオチドに、5’位置に、リガンド−ヌクレオシドホスホラミダイトの使用によりコンジュゲーションさせてもよく、それにおいて、リガンドを、5’−ヒドロキシ基に、直接的に又はリンカーを介して間接的に連結する。そのようなリガンド−ヌクレオシドホスホラミダイトは、典型的には、自動合成手順の終わりに使用し、リガンドを5’末端に持つリガンドコンジュゲーションオリゴヌクレオチドを提供する。
【0085】
本発明の方法の1つの好ましい実施態様において、リガンドにコンジュゲーションされているオリゴヌクレオチドの調製は、適切な前駆体分子の選択で始め、この上でリガンド分子を構築する。典型的には、前駆体は、一般的に使用されるヌクレオシドの適切に保護された誘導体である。例えば、本発明のリガンドにコンジュゲーションされているオリゴヌクレオチドの合成のための合成前駆体は、しかし、限定はされないが、2’−アミノアルコキシ−5’−ODMT−ヌクレオシド、2’−6−アミノアルキルアミノ−5’−ODMT−ヌクレオシド、5’−6−アミノアルコキシ−2’−デオキシ−ヌクレオシド、5’−6−アミノアルコキシ−2−保護−ヌクレオシド、3’−6−アミノアルコキシ−5’−ODMT−ヌクレオシド、及び3’−アミノアルキルアミノ−5’−ODMT−ヌクレオシド(分子の核酸塩基部分において保護されうる)を含む。そのようなアミノ連結保護ヌクレオシド前駆体の合成のための方法が、当業者に公知である。
【0086】
多くの場合において、保護基が、本発明の化合物の調製の間に使用される。本明細書で使用する用語「保護」は、示した成分が、それに付加される保護基を有することを意味する。本発明の一部の好ましい実施態様において、化合物は、1つ又は複数の保護基を含む。多種多様な保護基を、本発明の方法において用いることができる。一般的に、保護基は、化学的官能性を特定の反応条件に対して不活性にし、分子の残りに実質的に損傷を与えることなく分子中のそのような官能性に付加する又はそれから除去することができる。
【0087】
代表的なヒドロキシル保護基、ならびに他の代表的な保護基が、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Chapter 2, 2d ed., John Wiley & Sons, New York, 1991及びOligonucleotides And Analogues A Practical Approach, Ekstein, F. Ed., IRL Press, N.Y, 1991に開示される。
【0088】
酸処理に対して安定であるアミノ保護基を、塩基処理を用いて選択的に除去し、置換のために選択的に利用可能な反応性アミノ基を作製するために使用する。そのような基の例は、Fmoc(E. Atherton and R. C. Sheppard in The Peptides, S. Udenfriend, J. Meienhofer, Eds., Academic Press, Orlando, 1987, volume 9, p.1)及び種々の置換スルホニルエチルカルバメートNsc基により例示される(Samukov et al., Tetrahedron Lett., 1994, 35: 7821))である。
【0089】
追加のアミノ保護基は、しかし、限定はされないが、カルバメート保護基、例えば2−トリメチルシリルエトキシカルボニル(Teoc)、1−メチル−1−(4−ビフェニルイル)エトキシカルボニル(Bpoc)、t−ブトキシカルボニル(BOC)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、及びベンジルオキシカルボニル(Cbz)など;アミド保護基、例えばホルミル、アセチル、トリハロアセチル、ベンゾイル、及びニトロフェニルアセチルなど;スルホンアミド保護基、例えば2−ニトロベンゼンスルホニルなど;ならびにイミン及び環状イミド保護基、例えばフタルイミド及びジチアスクシノイルなどを含む。これらのアミノ保護基の等価物は、また、本発明の化合物及び方法により包含される。
【0090】
多くの固形支持体が、商業的に利用可能であり、当業者は、固相合成工程において使用するための固形支持体を容易に選択することができる。特定の実施態様において、ユニバーサル支持体を使用する。ユニバーサル支持体によって、オリゴヌクレオチドの3’末端に位置する異常な又は修飾ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドの調製が可能になる。ユニバーサル支持体についてのさらなる詳細については、Scott et al., Innovations and Perspectives in solid-phase Synthesis, 3rd International Symposium, 1994, Ed. Roger Epton, Mayflower Worldwide, 115-124を参照のこと。また、オリゴヌクレオチドを、固体支持体に、Syn−1,2−アセトキシリン酸基(より容易に塩基性加水分解を受ける)を介して結合させると、オリゴヌクレオチドを、ユニバーサル支持体から、より穏やかな反応条件下で切断することができることが報告されている。Guzaev, A. I.; Manoharan, M. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 2380を参照のこと。
【0091】
ヌクレオシドが、リン含有又は非リン含有の共有結合的なヌクレオシド間連結により連結される。同定の目的のために、そのようなコンジュゲーションされたヌクレオシドを、リガンドを持つヌクレオシド又はリガンド−ヌクレオシドコンジュゲートとして特徴付けることができる。その配列内にヌクレオシドにコンジュゲーションされたアラルキルリガンドを有する連結ヌクレオシドによって、コンジュゲーションされていない類似のdsRNA化合物と比較した場合、増強されたdsRNA活性が実証される。
【0092】
本発明のアラルキルリガンドにコンジュゲーションされたオリゴヌクレオチドは、また、オリゴヌクレオチド及び連結ヌクレオシドのコンジュゲートを含み、それにおいて、リガンドは、リンカー基の仲介を伴わず、ヌクレオシド又はヌクレオチドに直接的に付着される。リガンドは、好ましくは、連結基を介して、リガンドのカルボキシル基、アミノ基、又はオキソ基に付着させてもよい。典型的な連結基は、エステル基、アミド基、又はカルバメート基でありうる。
【0093】
本発明のリガンドにコンジュゲーションされたオリゴヌクレオチドにおける使用のために想定される好ましい修飾オリゴヌクレオチドの特定の例は、修飾骨格又は非天然ヌクレオシド間連結を含むオリゴヌクレオチドを含む。本明細書で定義する通り、修飾骨格又はヌクレオシド間連結を有するオリゴヌクレオチドは、リン原子を骨格中に保持するもの及びリン原子を骨格中に有さないものを含む。本発明の目的のために、リン原子をその糖間骨格中に有さない修飾オリゴヌクレオチドは、また、オリゴヌクレオシドと考えることができる。
【0094】
特定のオリゴヌクレオチド化学修飾が、以下に記載される。所与の化合物中の全ての位置について均一に修飾されることは必要ではない。逆に、1を上回る修飾を、単一のdsRNA化合物中に又はさらにはその単一ヌクレオチド中に取り込んでもよい。
【0095】
好ましい修飾ヌクレオシド間連結又は骨格は、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル及び他のアルキルホスホネート(3’−アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含む)、ホスフィネート、ホスホロアミド酸(3’−アミノホスホロアミド酸及びアミノアルキルホスホロアミド酸を含む)、チオノホスホロアミド酸、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及び通常の3’−5’連結を有するボラノリン酸、これらの2’−5’連結類似体、ならびに逆極性を有するもの(ヌクレオシド単位の隣接対が3’−5’から5’−3’又は2’−5’から5’−2’で連結されている)を含む。種々の塩、混合塩、及び遊離酸形態も含まれる。
【0096】
上のリン原子含有連結の調製に関連する代表的な米国特許は、しかし、限定はされないが、米国特許第4,469,863号;第5,023,243号;第5,264,423号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号及び第5,466,677号を含み、その各々が本明細書において参照により組み入れられる。
【0097】
それにおいてリン原子を含まない好ましい修飾ヌクレオシド間連結又は骨格(即ち、オリゴヌクレオシド)は、短鎖アルキル又はシクロアルキル糖間連結、混合ヘテロ原子及びアルキル又はシクロアルキル糖間連結、あるいは1つ又は複数の短鎖ヘテロ原子又はヘテロ環状糖間連結により形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ連結(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファミン酸骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホネート及びスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合N、O、S、及びCH成分部分を有する他を含む。
【0098】
上のオリゴヌクレオシドの調製に関連する代表的な米国特許は、しかし、限定はされないが、米国特許第5,034,506号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,264,562号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,602,240号及び第5,663,312号を含み、その各々が本明細書において参照により組み入れられる。
【0099】
他の好ましいオリゴヌクレオチド模倣体において、糖及びヌクレオシド単位のヌクレオシド間連結(即ち、骨格)の両方を新たな基を用いて置換する。核酸塩基単位が、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つのそのようなオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド模倣体は、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されており、ペプチド核酸(PNA)として言及される。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格を、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格を用いて置換する。核酸塩基が保持され、直接的に又は間接的に、骨格のアミド部分の原子に結合される。PNA化合物の教示は、例えば、米国特許第5,539,082号に見出すことができる。
【0100】
本発明の一部の好ましい実施態様では、ホスホロチオエート連結を伴うオリゴヌクレオチド及びヘテロ原子骨格を伴うオリゴヌクレオシド、特に、上で参照する米国特許第5,489,677号の−−CH−−NH−−O−−CH−−、−−CH−−N(CH)−−O−−CH−−[メチレン(メチルイミノ)又はMMI骨格]、−−CH−−O−−N(CH)−−CH−−、−−CH−−N(CH)−−N(CH)−−CH−−、及び−−O−−N(CH)−−CH−−CH−−[それにおいて、ネイティブなホスホジエステル骨格は−−O−−P−−O−−CH−−として表される]、及び上で参照する米国特許第5,602,240号のアミド骨格を用いる。また、好ましいのは、上で参照する米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドである。
【0101】
本発明のリガンドにコンジュゲーションされたオリゴヌクレオチドにおいて用いられるオリゴヌクレオチドは、追加で又は代わりに、核酸塩基(しばしば、当技術分野において「塩基」と言及される)修飾又は置換を含みうる。本明細書で使用する「未修飾」又は「天然」核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)及びグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)を含む。修飾された核酸塩基は、他の合成及び天然核酸塩基、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6−メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2−プロピル及び他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミン及び2−チオシトシン、5−ハロウラシル及びシトシン、5−プロピニルウラシル及びシトシン、6−アゾウラシル、シトシン及びチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシならびに他の8−置換アデニン及びグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルならびに他の5−置換ウラシル及びシトシン、7−メチルグアニン及び7−メチルアデニン、8−アザグアニン及び8−アザアデニン、7−デアザグアニン及び7−デアザアデニン及び3−デアザグアニン及び3−デアザアデニンを含む。
【0102】
さらなる核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されるもの、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に開示されるもの、及びSanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press, 1993に開示されるものを含む。これらの核酸塩基のいくつかが、本発明のオリゴヌクレオチドの結合親和性を増加させるために特に有用である。これらは、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンならびにN−2、N−6、及びO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、及び5−プロピニルシトシンを含む)を含む。5−メチルシトシン置換は、核酸二本鎖安定性を0.6〜1.2℃だけ増加させることが示されており(同上、ページ276−278)、本発明では好ましい塩基置換である(さらに特に2’−メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合)。
【0103】
上記の修飾された核酸塩基ならびに他の修飾された核酸塩基の特定のものの調製に関する代表的な米国特許は、しかし、限定はされないが、上記の米国特許第3,687,808号、ならびに米国特許第5,134,066号;第5,459,255号;第5,552,540号;第5,594,121号、及び第5,596,091号を含み、その全てが本明細書により参照により組み入れられる。
【0104】
特定の実施態様において、本発明のリガンドにコンジュゲーションされたオリゴヌクレオチドにおいて用いられるオリゴヌクレオチドは、追加で又は代わりに、1つ又は複数の置換糖成分を含みうる。好ましいオリゴヌクレオチドは、以下の1つを2’位置に含む:OH;F;O−、S−、又はN−アルキル、O−、S−、又はN−アルケニル、又はO、S−、もしくはN−アルキニル。それにおいて、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは置換又は非置換C〜C10アルキル又はC〜C10アルケニル及びアルキニルでありうる。特に好ましいのはO[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONH、及びO(CHON[(CHCH)]であり、そこでn及びmは1から約10である。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、以下の1つを2’位置に含む:C〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリル、又はO−アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SO、CH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレータ、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、又はオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善するための基、及び類似の特性を有する他の置換基。好ましい修飾は、2’−メトキシエトキシ[2’−O−−CHCHOCH、2’−O−(2−メトキシエチル)又は2’−MOEとしても公知である]、即ち、アルコキシアルコキシ基を含む。さらに好ましい修飾は、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、即ち、O(CHON(CH基(2’−DMAOEとしても公知である)を含み、米国特許第6,127,533号(1998年1月30日出願)に記載される通りであり、その内容は参照により組み入れられる。
【0105】
他の好ましい修飾は、2’−メトキシ(2’−O−−CH)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCHCHCHNH)、及び2’−フルオロ(2’−F)を含む。類似の修飾を、また、オリゴヌクレオチド上の他の位置に、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位置に、又は、2’−5’連結オリゴヌクレオチド中に作製してもよい。
【0106】
本明細書で使用する用語「糖置換基」又は「2’−置換基」は、リボフラノシル成分の2’位置に付着した基(酸素原子を伴う又は伴わない)を含む。糖置換基は、しかし、限定はされないが、フルオロ、O−アルキル、O−アルキルアミノ、O−アルキルアルコキシ、保護O−アルキルアミノ、O−アルキルアミノアルキル、O−アルキルイミダゾール、及び化学式(O−アルキル)のポリエーテル(式中、mは1から約10である)を含む。これらのポリエーテルの内で好ましいのは、線状及び環状ポリエチレングリコール(PEG)、及び(PEG)含有基(例えばクラウンエーテルなど)、及びとりわけ、Delgardo et. al.(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 1992, 9:249)(本明細書により、参照によりその全体が組み入れられる)により開示されるものである。さらなる糖修飾が、Cook(Anti-fibrosis Drug Design, 1991, 6: 585-607)により開示される。フルオロ、O−アルキル、O−アルキルアミノ、O−アルキルイミダゾール、O−アルキルアミノアルキル、及びアルキルアミノ置換が、米国特許第6,166,197号(表題「Oligomeric Compounds having Pyrimidine Nucleotide(s) with 2' and 5' Substitutions」)(本明細書により、参照によりその全体が組み入れられる)に記載される)に記載される。
【0107】
本発明に受け入れることができる追加の糖置換基は、2’−SR基及び2’−NR2基を含み、それにおいて各々のRは、非依存的に、水素、保護基、又は置換もしくは非置換アルキル、アルケニル、もしくはアルキニルを含む。2’−SRヌクレオシドが米国特許第5,670,633号に開示され、本明細書により、参照によりその全体が組み入れられる。2’−SR単量体シントンの組み入れは、Hamm et al.(J. Org. Chem., 1997, 62: 3415-3420)により開示される。2’−NRヌクレオシドが、Goettingen, M., J. Org. Chem., 1996, 61, 6273-6281;及びPolushin et al., Tetrahedron Lett., 1996, 37, 3227-3230に開示される。本発明に受け入れることができる代表的な2’−置換基は、化学式I又はII:
【化1】


(式中、EはC−C10アルキル、N(Q)(Q)、又はN=C(Q)(Q)であり;各々のQ及びQは、非依存的に、H、C−C10アルキル、ジアルキルアミノアルキル、窒素保護基、テザー又は非テザーコンジュゲート基、固体支持体へのリンカーであり;又はQ及びQは、一緒に、窒素保護基又は環構造(場合により、N及びOより選択される少なくとも1つの追加のヘテロ原子を含む)を形成し;
は1から10の整数であり;
は1から10の整数であり;
は0又は1であり;
は0、1、又は2であり;
各々のZ、Z、及びZは、非依存的に、C−Cシクロアルキル、C−C14アリール、又はC−C15ヘテロシクリルであり、それにおいて、前記ヘテロシクリル基中のヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄より選択され;
は、OM、SM、又はN(Mであり;各々のMは、非依存的に、H、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C(=NH)N(H)M、C(=O)N(H)M、又はOC(=O)N(H)Mである;Mは、H又はC−Cアルキルであり;及び
は、C−C10アルキル、C−C10ハロアルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、C−C14アリール、N(Q)(Q)、OQ、ハロ、SQ、又はCNである)
の1つを有するものを含む。
【0108】
化学式Iの代表的な2’−O−糖置換基が、米国特許第6,172,209号(表題「Capped 2'-Oxyethoxy Oligonucleotides」)(本明細書により、参照によりその全体が組み入れられる)に開示される。化学式IIの代表的な環状2’−O−糖置換基が、米国特許第6,271,358号(表題「RNA Targeted 2'-Modified Oligonucleotides that are Conformationally Preorganized」)(本明細書により、参照によりその全体が組み入れられる)に開示される。
【0109】
リボシル環上にO−置換を有する糖も、本発明に受け入れることができる。環Oについての代表的な置換は、しかし、限定はされないが、S、CH、CHF、及びCFを含む。
【0110】
オリゴヌクレオチドは、また、糖模倣体(例えばシクロブチル成分など)を、ペントフラノシル糖の代わりに有しうる。そのような修飾された糖の調製に関する代表的な米国特許は、しかし、限定はされないが、米国特許第5,359,044号;第5,466,786号;第5,519,134号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,646,265号、及び第5,700,920号を含み、その全てが、本明細書により、参照により組み入れられる。
【0111】
追加の修飾を、また、オリゴヌクレオチドの他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位置に作製してもよい。例えば、本発明のリガンドにコンジュゲーションされたオリゴヌクレオチドの1つの追加の修飾は、オリゴヌクレオチドに、1つ又は複数の追加の非リガンド成分又はコンジュゲートを化学的に連結することを含み、それによって、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、又は細胞取り込みが増強される。そのような成分は、しかし、限定はされないが、脂質成分、例えばコレステロール成分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4, 1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991,10,111; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49)、リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651; Shea et al., Nucl.Acids Res., 1990, 18, 3777)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651)、パルミチル成分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229)、又はオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール成分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923)を含む。
【0112】
本発明は、また、オリゴヌクレオチド内の特定の位置に関して実質的にキラルに純粋であるオリゴヌクレオチドを用いた組成物を含む。実質的にキラルに純粋であるオリゴヌクレオチドの例は、しかし、限定はされないが、少なくとも75%Sp又はRpであるホスホロチオエート連結を有するもの(Cook et al.、米国特許第5,587,361号)及び実質的にキラルに純粋(Sp又はRp)であるアルキルホスホネート、ホスホロアミド酸、又はホスホトリエステル連結(Cook、米国特許第5,212,295号及び第5,521,302号)を有するものを含む。
【0113】
特定の例において、オリゴヌクレオチドを、非リガンド基により修飾してもよい。多くの非リガンド分子が、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、又は細胞取り込みを増強するために、オリゴヌクレオチドにコンジュゲーションされてきた。そのようなコンジュゲーションを実施するための手順が、科学文献において利用可能である。そのような非リガンド成分は、脂質成分、例えばコレステロール(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4, 1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991,10,111; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327;Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49)、リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651; Shea et al., Nucl.Acids Res., 1990, 18, 3777)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651)、パルミチル成分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229)、又はオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール成分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923)を含む。典型的なコンジュゲーションプロトコールは、配列の1つ又は複数の位置にアミノリンカーを持つオリゴヌクレオチドの合成を含む。アミノ基を次に反応させ、分子を適切な共役試薬又は活性化試薬を使用してコンジュゲーションする。コンジュゲーション反応を、依然として固体支持体に結合されているオリゴヌクレオチドを用いて、又は、溶液相中でのオリゴヌクレオチドの切断の後にのいずれかで実施してよい。HPLCによるオリゴヌクレオチドコンジュゲートの精製は、典型的に、純粋なコンジュゲートを与える。コレステロールコンジュゲートの使用が、特に好ましい。なぜなら、そのような成分によって、肝臓(GCRタンパク質産生の部位)中の組織への標的化を増加することができるからである。
【0114】
あるいは、コンジュゲーションされる分子を、ビルディングブロック(例えばホスホラミダイトなど)に、分子中に存在するアルコール基を介して又はリン酸化されうるアルコール基を持つリンカーの付着により変換してもよい。
【0115】
重要なことに、これらのアプローチの各々を、リガンドにコンジュゲーションされたオリゴヌクレオチドの合成のために使用してもよい。アミノ連結オリゴヌクレオチドを、リガンドと、共役試薬の使用を介して又はNHSもしくはペントフルオロフェノレート(pentfluorophenolate)エステルとしてのリガンドの活性化に続いて直接的に共役してもよい。リガンドホスホラミダイトを、カルボキシル基の1つへのアミノヘキサノールリンカーの付着、それに続く末端アルコール官能性のホスフィチル化を介して合成してもよい。他のリンカー(例えばシステアミンなど)も、合成されたオリゴヌクレオチド上に存在するクロロアセチルリンカーへのコンジュゲーションのために利用してもよい。
【0116】
別に定義しない場合、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似の又は等価の方法及び材料を、本発明の実行又はテストにおいて使用することができるが、適した方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献が、参照により、その全体が組み入れられる。矛盾する場合、本明細書(定義を含む)により制御されうる。また、材料、方法、及び実施例は、例証的だけであり、限定する意図はない。
【0117】
上に提供する本発明の実施態様及び項目を、本明細書では、以下の非限定的な実施例を用いて例証する。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図の説明及び添付の表:
【図1】オフターゲット配列の発現抑制に対する配列番号対55/56を含むGCR dsRNAの効果。GCR mRNAの19mer標的部位(「on」)又はin silicoで予測されたオフターゲット配列(「off 1」から「off 15」;「off 1」− 「off 12」がアンチセンス鎖オフターゲットであり、及び「off 13」から「off 15」がセンス鎖オフターゲットである)のいずれかについて示す、二重ルシフェラーゼコンストラクトを発現するCOS7細胞の、50nMのGCR dsRNAを用いたトランスフェクション後でのウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の発現。完全にマッチするオフターゲットdsRNAがコントロールである。
【図2】オフターゲット配列の発現抑制に対する配列番号対83/84を含むGCR dsRNAの効果。GCR mRNAの19mer標的部位(「on」)又はin silicoで予測されたオフターゲット配列(「off 1」から「off 14」;「off 1」− 「off 11」がアンチセンス鎖オフターゲットであり、及び「off 12」及び「off 14」がセンス鎖オフターゲットである)のいずれかについて示す、二重ルシフェラーゼコンストラクトを発現するCOS7細胞の、50nMのGCR dsRNAを用いたトランスフェクション後でのウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の発現。完全にマッチするオフターゲットdsRNAがコントロールである。
【図3】オフターゲット配列の発現抑制に対する配列番号対7/8を含むGCR dsRNAの効果。GCR mRNAの19mer標的部位(「on」)又はin silicoで予測されたオフターゲット配列(「off 1」から「off 14」;「off 1」− 「off 11」がアンチセンス鎖オフターゲットであり、及び「off 12」から「off 14」がセンス鎖オフターゲットである)のいずれかについて示す、二重ルシフェラーゼコンストラクトを発現するCOS7細胞の、50nMのGCR dsRNAを用いたトランスフェクション後でのウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の発現。完全にマッチするオフターゲットdsRNAがコントロールである。
【図4】ヒト初代肝細胞において、GCR(NR3C1)遺伝子について、又はハウスキーピング遺伝子GUSBについて、GCR dsRNA又はルシフェラーゼdsRNAコントロールを用いたトランスフェクション後96時間に、DharmaFECT−1トランスフェクション試薬単独に曝露されたコントロール細胞と比較した、Quantigene 2.0単位/細胞で表すmRNAレベル。
【図5a】LNP01製剤化dsRNAに48時間曝露されたヒト初代肝細胞における、GCR(NR3C1)遺伝子(a)、GUSBハウスキーピング遺伝子(b)ならびにGCR標的遺伝子PCK1(c)、G6Pc(d)及びTAT(e)について、Quantigene 2.0単位/細胞で表すmRNAレベル。
【図5b】LNP01製剤化dsRNAに48時間曝露されたヒト初代肝細胞における、GCR(NR3C1)遺伝子(a)、GUSBハウスキーピング遺伝子(b)ならびにGCR標的遺伝子PCK1(c)、G6Pc(d)及びTAT(e)について、Quantigene 2.0単位/細胞で表すmRNAレベル。
【図5c】LNP01製剤化dsRNAに48時間曝露されたヒト初代肝細胞における、GCR(NR3C1)遺伝子(a)、GUSBハウスキーピング遺伝子(b)ならびにGCR標的遺伝子PCK1(c)、G6Pc(d)及びTAT(e)について、Quantigene 2.0単位/細胞で表すmRNAレベル。
【図5d】LNP01製剤化dsRNAに48時間曝露されたヒト初代肝細胞における、GCR(NR3C1)遺伝子(a)、GUSBハウスキーピング遺伝子(b)ならびにGCR標的遺伝子PCK1(c)、G6Pc(d)及びTAT(e)について、Quantigene 2.0単位/細胞で表すmRNAレベル。
【図5e】LNP01製剤化dsRNAに48時間曝露されたヒト初代肝細胞における、GCR(NR3C1)遺伝子(a)、GUSBハウスキーピング遺伝子(b)ならびにGCR標的遺伝子PCK1(c)、G6Pc(d)及びTAT(e)について、Quantigene 2.0単位/細胞で表すmRNAレベル。
【図6a】LNP01−dsRNA(a)ルシフェラーゼdsRNAコントロール、b)配列番号対55/56を含むGCR dsRNA、c)配列番号対83/84を含むGCR dsRNAに48時間にわたり曝露され、糖新生前駆体(乳酸及びピルビン酸)の存在における5時間にわたるインキュベーション前に96時間にわたり飢餓させた初代ヒト肝細胞において測定されたグルコースアウトプット。
【図6b】LNP01−dsRNA(a)ルシフェラーゼdsRNAコントロール、b)配列番号対55/56を含むGCR dsRNA、c)配列番号対83/84を含むGCR dsRNAに48時間にわたり曝露され、糖新生前駆体(乳酸及びピルビン酸)の存在における5時間にわたるインキュベーション前に96時間にわたり飢餓させた初代ヒト肝細胞において測定されたグルコースアウトプット。
【図6c】LNP01−dsRNA(a)ルシフェラーゼdsRNAコントロール、b)配列番号対55/56を含むGCR dsRNA、c)配列番号対83/84を含むGCR dsRNAに48時間にわたり曝露され、糖新生前駆体(乳酸及びピルビン酸)の存在における5時間にわたるインキュベーション前に96時間にわたり飢餓させた初代ヒト肝細胞において測定されたグルコースアウトプット。
【図7a】LNP01−dsRNA(a)ルシフェラーゼdsRNAコントロール、b)配列番号対55/56を含むGCR dsRNA、c)配列番号対83/84を含むGCR dsRNAに48時間にわたり曝露され、糖新生前駆体(乳酸及びピルビン酸)の存在における5時間にわたるインキュベーション前に96時間にわたり飢餓させた初代ヒト肝細胞において測定された細胞ATP含量。
【図7b】LNP01−dsRNA(a)ルシフェラーゼdsRNAコントロール、b)配列番号対55/56を含むGCR dsRNA、c)配列番号対83/84を含むGCR dsRNAに48時間にわたり曝露され、糖新生前駆体(乳酸及びピルビン酸)の存在における5時間にわたるインキュベーション前に96時間にわたり飢餓させた初代ヒト肝細胞において測定された細胞ATP含量。
【図7c】LNP01−dsRNA(a)ルシフェラーゼdsRNAコントロール、b)配列番号対55/56を含むGCR dsRNA、c)配列番号対83/84を含むGCR dsRNAに48時間にわたり曝露され、糖新生前駆体(乳酸及びピルビン酸)の存在における5時間にわたるインキュベーション前に96時間にわたり飢餓させた初代ヒト肝細胞において測定された細胞ATP含量。
【図8a】GCR(NR3C1遺伝子、図8a)ならびにGCRによりアップレギュレーションされる遺伝子TAT(図8a)、PCK1(図8b)、G6Pc(図8b)、及びHES1(GCRによりダウンレギュレーションされる、図8c)について得られた、高血糖及び糖尿病の14週齢の雄db/dbマウスにおける配列番号対517/518又はルシフェラーゼコントロール配列番号対681/682を含むGCRについての、LPNO1製剤化dsRNAの単回静脈内投与後103時間での、GUSBハウスキーピングmRNAレベルと比べた肝臓mRNAレベル。
【図8b】GCR(NR3C1遺伝子、図8a)ならびにGCRによりアップレギュレーションされる遺伝子TAT(図8a)、PCK1(図8b)、G6Pc(図8b)、及びHES1(GCRによりダウンレギュレーションされる、図8c)について得られた、高血糖及び糖尿病の14週齢の雄db/dbマウスにおける配列番号対517/518又はルシフェラーゼコントロール配列番号対681/682を含むGCRについての、LPNO1製剤化dsRNAの単回静脈内投与後103時間での、GUSBハウスキーピングmRNAレベルと比べた肝臓mRNAレベル。
【図8c】GCR(NR3C1遺伝子、図8a)ならびにGCRによりアップレギュレーションされる遺伝子TAT(図8a)、PCK1(図8b)、G6Pc(図8b)、及びHES1(GCRによりダウンレギュレーションされる、図8c)について得られた、高血糖及び糖尿病の14週齢の雄db/dbマウスにおける配列番号対517/518又はルシフェラーゼコントロール配列番号対681/682を含むGCRについての、LPNO1製剤化dsRNAの単回静脈内投与後103時間での、GUSBハウスキーピングmRNAレベルと比べた肝臓mRNAレベル。
【図9】高血糖及び糖尿病の14週齢の雄db/dbマウスにおけるLPNO1−dsRNAの単回静脈内投与後での血中グルコースレベルに対する経時的効力(*:p<0.05対ビヒクル)。+55、+79、+103時間に観察された減少するグルコースレベルにおける配列番号対517/518を含むGCRについてのLPNO1−dsRNAの効力は、プラセボ(LNP01ルシフェラーゼdsRNA配列番号対681/682)と比較して、それぞれ−13%、−31%、及び−29%であった(n=4、平均値+/−SEM、各日についての等分散を仮定したt検定)。
【図10】配列番号対517/518を含むGCRについてのLPNO1−dsRNA又はルシフェラーゼコントロールdsRNA(配列番号対681/682)の単回静脈内投与後55、79、及び103時間での、高血糖及び糖尿病の14週齢の雄db/dbマウスにおけるALT及びASTにおける経時的血漿レベル。
【図11a】ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対681/682)又はGCR dsRNA(配列番号対747/753又は配列番号対764/772)の単回静脈内ボーラス注射後3日での、bDNAアッセイにより測定された、カニクイザルの肝臓生検におけるGCR mRNAレベル。各群について与えられたdsRNAに関する用量(mg/kg)。N=2雌及び雄のカニクイザル。値を、個々のサル毎でのGAPDH値の平均値に対して(a)、又はルシフェラーゼdsRNA(配列番号対681/682)と比べて(エラーバーはサル間での変動を示す)(b)標準化する。
【図11b】ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対681/682)又はGCR dsRNA(配列番号対747/753又は配列番号対764/772)の単回静脈内ボーラス注射後3日での、bDNAアッセイにより測定された、カニクイザルの肝臓生検におけるGCR mRNAレベル。各群について与えられたdsRNAに関する用量(mg/kg)。N=2雌及び雄のカニクイザル。値を、個々のサル毎でのGAPDH値の平均値に対して(a)、又はルシフェラーゼdsRNA(配列番号対681/682)と比べて(エラーバーはサル間での変動を示す)(b)標準化する。
【0119】
表1−ヒトGCR遺伝子を標的化するdsRNA。大文字の文字は、RNAヌクレオチドを示し、小文字「c」、「g」、「a」、及び「u」は、2’O−メチル修飾ヌクレオチドを示し、「s」は、ホスホロチオエートを、「dT」は、デオキシチミジンを、「invdT」は、逆位デオキシチミジンを、「f」は、先行するヌクレオチドの2’フルオロ修飾を示す。
【0120】
表2−ヒトGCRを標的化するdsRNAの特徴付け:HepG2及びHeLaS3細胞における用量反応についての活性テスト。IC50:50%阻害濃度。
【0121】
表3−ヒトGCRを標的化するdsRNAの特徴付け:安定性及びサイトカイン誘導。t1/2:実施例において定義される鎖の半減期。PBMC:ヒト末梢血単核細胞。
【0122】
表4−マウス及びラットGCR遺伝子を標的化するdsRNA。大文字の文字は、RNAヌクレオチドを示し、小文字「c」、「g」、「a」、及び「u」は、2’O−メチル修飾ヌクレオチドを示し、「s」は、ホスホロチオエートを、「dT」は、デオキシチミジンを示す。「f」は、先行するヌクレオチドの2’フルオロ修飾を示す。
【0123】
表5−マウス及びラットGCR遺伝子を標的化するdsRNAの特徴付け:安定性及びサイトカイン誘導。t1/2:実施例において定義される鎖の半減期。PBMC:ヒト末梢血単核細胞。
【0124】
表6−配列番号対55/56を含むヒトGCRを標的化するdsRNAの選択されたオフターゲット。
【0125】
表7−配列番号対83/84を含むヒトGCRを標的化するdsRNAの選択されたオフターゲット。
【0126】
表8−配列番号対7/8を含むヒトGCRを標的化するdsRNAの選択されたオフターゲット。
【0127】
表9−ヒトGAPDHの決定のためのbDNAプローブの配列;LE=標識エクステンダー、CE=捕捉エクステンダー、BL=遮断プローブ。
【0128】
表10−ヒトGCRの決定のためのbDNAプローブの配列;LE=標識エクステンダー、CE=捕捉エクステンダー、BL=遮断プローブ。
【0129】
表11−マウスGCRの決定のためのbDNAプローブの配列;LE=標識エクステンダー、CE=捕捉エクステンダー、BL=遮断プローブ。
【0130】
表12−マウスGAPDHの決定のためのbDNAプローブの配列;LE=標識エクステンダー、CE=捕捉エクステンダー、BL=遮断プローブ。
【0131】
表13−ヒトGCR遺伝子を標的化するdsRNA。大文字の文字は、RNAヌクレオチドを示す。
【0132】
表14−修飾を伴わないヒトGCR遺伝子を標的化するdsRNA及びそれらの修飾された対応物。大文字の文字は、RNAヌクレオチドを示し、小文字「c」、「g」、「a」、及び「u」は、2’O−メチル修飾ヌクレオチドを示し、「s」は、ホスホロチオエートを、「dT」は、デオキシチミジンを、「invdT」は、逆位デオキシチミジンを示す。
【0133】
実施例
治療的使用のためのdsRNAの同定
dsRNA設計を行い、治療的使用のためにヒトGCRを特異的に標的化するdsRNAを同定した。最初に、ヒト(Homo sapiens)GCRの公知のmRNA配列(NM_000176.2、NM_001018074.1、NM_001018075.1、NM_001018076.1、NM_001018077.1、 NM_001020825.1、NM_001024094.1、配列番号659、配列番号660、配列番号661、配列番号662、配列番号663、配列番号664、及び配列番号665として列挙する)が、NCBI Genbankからダウンロードされた。
【0134】
アカゲザル(Macaca mulatta)GCRのmRNA(XM_001097015.1、XM_001097126.1、XM_001097238.1、XM_001097341.1、XM_001097444.1、XM_001097542.1、XM_001097640.1、XM_001097749.1、XM_001097846.1 and XM_001097942.1)が、NCBI Genbankからダウンロードされた(配列番号666、配列番号667、配列番号668、配列番号669、配列番号670、配列番号671、配列番号672、配列番号673、配列番号674、及び配列番号675)。
【0135】
カニクイザル(Macaca fascicularis)GCR(BB878843.1)のESTが、NCBI Genbankからダウンロードされた(配列番号676)。
【0136】
サル配列を、ヒトGCR mRNA配列(配列番号677)と一緒に、コンピュータ解析により検証し、ヒト及びアカゲザル又はヒト及びカニクイザル配列と交差反応性のあるRNA干渉(RNAi)薬剤をもたらす19ヌクレオチドの相同配列を同定した。
【0137】
RNAi薬剤を同定する際、選択は、独自アルゴリズムを使用することにより、ヒトRefSeqデータベース(リリース27)(それを、本発明者らは、包括的ヒトトランスクリプトームを示すと仮定した)中の任意の他の配列に対するアンチセンス鎖において少なくとも2つのミスマッチを有する19mer配列に限定された。
【0138】
カニクイザルGCR遺伝子を、配列決定し(配列番号678を参照のこと)、RNAi薬剤の標的領域について検証した。
【0139】
ヒトならびにカニクイザルGCRに交差反応性のあるdsRNAは、治療的使用のために最も好ましいとして定義された。4つ又はそれ以上の連続G(ポリG配列)を含む全ての配列が、合成から除外された。
【0140】
このようにして同定された配列は、添付の表1及び14中のRNAi薬剤の合成のための基礎を形成した。
【0141】
in vivoでの概念実証試験のためのdsRNAの同定
dsRNA設計を行い、in vivoでの概念実証実験のためにマウス(Mus musculus)及びラット(Rattus norvegicus)を標的化するdsRNAを同定した。最初に、マウスGCR(NM_008173.3、配列番号679)及びラットGCR(NM_012576.2、配列番号680)についての転写物を、コンピュータ解析により検証し、これらの配列の間で交差反応性のあるRNAi薬剤をもたらす19ヌクレオチドの相同配列を同定した。
【0142】
RNAi薬剤を同定する際、選択は、独自アルゴリズムを使用することにより、マウス及びラットRefSeqデータベース(リリース27)(それを、包括的マウス及びラットトランスクリプトームを示すと仮定した)中の任意の他の配列に対するアンチセンス鎖において少なくとも2つのミスマッチを有する19mer配列に限定された。
【0143】
4つ又はそれ以上の連続G(ポリG配列)を含む全ての配列が、合成から除外された。このようにして同定された配列は、添付の表4中のRNAi薬剤の合成のための基礎を形成した。
【0144】
dsRNA合成
試薬の供給源が、本明細書に具体的に与えられない場合、そのような試薬は、分子生物学用の試薬の任意の供給業者から、分子生物学における適用のための品質及び/純度基準で得てもよい。
【0145】
一本鎖RNAを、1μモルのスケールでの固相合成により、Expedite 8909シンセサイザー(Applied Biosystems, Applera Deutschland GmbH, Darmstadt, Germany)及び固体支持体としての制御されたポアガラス(CPG, 500A, Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)を使用して産生した。RNA及び2’−O−メチルヌクレオチドを含むRNAを、固相合成により、対応するホスホラミダイト及び2’−O−メチルホスホラミダイト(Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)をそれぞれ用いて生成した。これらのビルディングブロックを、オリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択部位に、標準的なヌクレオシドホスホラミダイト化学、例えばCurrent protocols in nucleic acid chemistry, Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載するものなどを使用して取り込ませた。ホスホロチオエート連結を、ヨード酸化剤溶液とアセトニトリル中のBeaucage試薬(Chruachem Ltd, Glasgow, UK)の溶液(1%)との置換により導入した。さらなる補助試薬をMallinckrodt Baker(Griesheim, Germany)から得た。
【0146】
陰イオン交換HPLCによる粗オリゴリボヌクレオチドの脱保護及び精製を、確立された手順に従って行った。産出量及び濃度を、分光光度計
【化2】


を使用した波長260nmでのそれぞれのRNAの溶液のUV吸光度により決定した。二本鎖RNAを、アニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH 6.8;100mM塩化ナトリウム)中の相補鎖の等モル溶液を混合することにより生成し、85〜90℃の水浴中で3分間にわたり加熱し、室温まで3〜4時間の期間にわたり冷却した。アニーリングしたRNA溶液を、−20℃で使用まで保存した。
【0147】
活性テスト
ヒトGCRを標的化するdsRNAの活性
上に記載する治療的使用のためのGCR−dsRNAの活性を、HeLaS3細胞でテストした。培養中の細胞を、GCR特異的dsRNAを用いてインキュベーションした細胞に由来する全mRNA中の分岐DNAによるGCR mRNAの定量化のために使用した。
【0148】
HeLaS3細胞を、American Type Culture Collection(Rockville, Md., cat. No.CCL-2.2)から得て、10%ウシ胎児血清(FCS)(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.S0115)、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100mg/ml(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.A2213)を含むように添加されたHam’s F12(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.FG 0815)中で、37℃で、5%COを伴う大気中で加湿インキュベータ(Heraeus HERAAcell, Kendro Laboratory Products, Langenselbold, Germany)において培養した。
【0149】
細胞播種及びdsRNAのトランスフェクションを、同時に実施した。dsRNAを用いたトランスフェクションのために、HeLaS3細胞を、密度2.0.times.10.sup.4細胞/ウェルで96ウェルプレート中に播種した。dsRNAのトランスフェクションを、リポフェクタミン2000(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany, cat.No.11668-019)を用いて製造業者により記載される通りに行った。最初の単回投与実験において、dsRNAを、濃度30nMでトランスフェクションした。2つの独立した実験を、実施した。30nMでの最初の単回投与スクリーンから80%超のmRNAノックダウンを示す最も効果的なdsRNAを、用量反応曲線によりさらに特徴付けた。用量反応曲線のために、トランスフェクションを、上の単回投与スクリーンについて記載される通りに、HeLaS3細胞において実施したが、しかし、以下のdsRNAの濃度を用いた(nM):24、6、1.5、0.375、0.0938、0.0234、0.0059、0.0015、0.0004、及び0.0001nM。トランスフェクション後、細胞を、24時間にわたり37℃及び5%COで加湿インキュベータ(Heraeus GmbH, Hanau, Germany)においてインキュベーションした。GCR mRNAの測定のために、細胞を収集し、mRNAのbDNA定量化のためのQuantigene 1.0 Assay Kit(Panomics, Fremont, Calif., USA, cat. No.QG-0004)の製造業者により推奨される手順に従って53℃で溶解した。その後、50μlのライセートを、ヒトGCR及びヒトGAPDHに特異的なプローブセット(プローブセットの配列、表9及び10を参照のこと)を用いてインキュベーションし、QuantiGeneのための製造業者のプロトコールに従って加工した。化学発光を、Victor2-Light(Perkin Elmer, Wiesbaden, Germany)においてRLU(相対光単位)として測定し、ヒトGCRプローブセットを用いて得られた値を、それぞれのヒトGAPDH値に対して、各ウェルついて標準化した。無関係のコントロールdsRNAを、ネガティブコントロールとして使用した。
【0150】
阻害データを、添付の表1及び2に与える。
【0151】
齧歯類GCRを標的化するdsRNAの活性
齧歯類モデルにおける使用のためのGCR−siRNAの活性を、Hepa1−6細胞においてテストした。培養中のHepa1−6細胞は、GCR特異的siRNAを用いてトランスフェクションされた細胞に由来する全細胞ライセートからの分岐DNAアッセイによるGCR mRNAの定量化のために使用した。
【0152】
Hepa1−6細胞を、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Braunschweig Germany, cat. No.ACC 175)から得て、10%ウシ胎児血清(FCS)(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.S0115)、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100mg/ml(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.A2213)、Lグルタミン4mM(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.K0283)を含むように添加されたDMEM(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.FG 0815)中で、37℃で、5%COを伴う大気中で加湿インキュベータ(Heraeus HERAAcell, Kendro Laboratory Products, Langenselbold, Germany)において培養した。
【0153】
細胞播種及びsiRNAのトランスフェクションを、同時に実施した。siRNAを用いたトランスフェクションのために、Hepa1−6細胞を密度15000細胞/ウェルで96ウェルプレート中に播種した。siRNAのトランスフェクションを、リポフェクタミン2000(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany, cat.No.11668-019)を用いて製造業者により記載される通りに行った。siRNAの2つの化学的に異なるスクリーニングセットを、濃度50nMでトランスフェクションした。GCR mRNAの測定のために、細胞をトランスフェクション後24時間で収集し、mRNAのbDNA定量化のためのQuantigene 1.0 Assay Kit(Panomics, Fremont, Calif., USA, cat. No.QG-0004)の製造業者により推奨される手順に従って53℃で溶解した。その後、50μlのライセートを、マウスGCR及びマウスGAPDHに特異的なプローブセット(プローブセットの配列、以下を参照のこと)を用いてインキュベーションし、QuantiGeneのための製造業者のプロトコールに従って加工した。化学発光を、Victor2-Light(Perkin Elmer, Wiesbaden, Germany)においてRLU(相対光単位)として測定し、マウスGCRプローブセットを用いて得られた値を、それぞれのマウスGAPDH値に対して、各ウェルついて標準化した。無関係のコントロールsiRNAを、ネガティブコントロールとして使用した。最も有効な3つのsiRNAを、齧歯類in vivo実験における薬理学的な概念実証試験のために使用した。
【0154】
阻害データを、添付の表4に与える。
【0155】
dsRNAの安定性
dsRNAの安定性を、in vitroアッセイにおいて、ヒトGCRを標的化するdsRNAについてのヒト血清又はカニクイザルからの血漿のいずれかを用いて、及び、マウス/ラットPTB1Bを標的化するdsRNAについてのマウス血清を用いて、各々の一本鎖の半減期を測定することにより決定した。
【0156】
測定を、3通りに、各時間点について、30μlのヒト血清又はカニクイザル血漿(Sigma Aldrich)と混合した3μlの50μM dsRNAサンプルを使用して行った。混合物を、0分、30分、1時間、3時間、6時間、24時間、又は48時間のいずれかにわたり37℃でインキュベーションした。非特異的分解についてのコントロールとして、dsRNAを30μlの1x PBS pH 6.8と48時間にわたりインキュベーションした。反応を、4μlのプロテイナーゼK(20mg/ml)、25μlの「Tissue and Cell Lysis Solution」(Epicentre)、及び38μlのMillipore水の添加により30分間にわたり65℃で停止した。サンプルを、その後、0.2μmの96ウェルフィルタープレートを通じて、1400rpmで8分間にわたりスピンろ過し、55μlのMillipore水を用いて2回洗浄し、再びスピンろ過した。
【0157】
一本鎖の分離及び残りの完全長産物(FLP)の分析のために、サンプルを、イオン交換Dionex Summit HPLCを通じて、変性条件下で、溶出液Aとして20mM NaPO(10% ACN pH=11中)及び溶出液Bとして1M NaBr(溶出液A中)を使用して流した。
【0158】
以下の勾配を、適用した:
【0159】
【表1】

【0160】
すべての注射について、クロマトグラムを、Dionex Chromeleon 6.60 HPLCソフトウェアにより自動的に統合し、必要な場合、手動で調整した。全てのピーク面積を、内部標準(IS)ピークに対して補正し、t=0分でのインキュベーションに対して標準化した。ピーク下面積及び結果として得られる残りのFLPを、各々の一本鎖について、3通りに別々に算出した。鎖の半減期(t1/2)を、FLPの半分が分解した時間点の3通りについての平均時間点[時間]により定義した。
【0161】
結果を、添付の表3及び5に与える。
【0162】
サイトカイン誘導
dsRNAの潜在的なサイトカイン誘導を、INF−a及びTNF−aの放出を測定することにより、in vitroでのPBMCアッセイにおいて決定した。
【0163】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、2つのドナーの軟膜血液から、Ficoll遠心分離により、トランスフェクションの日に単離した。細胞を、4通りに、dsRNAを用いてトランスフェクションし、24時間にわたり37℃で、Opti−MEM中の最終濃度130nMで、Gene Porter 2(GP2)又はDOTAPのいずれかを使用して培養した。INF−a及びTNF−aをこのアッセイにおいて誘導することが公知であるdsRNA配列、ならびにCpGオリゴを、ポジティブコントロールとして使用した。トランスフェクション試薬をサイトカイン誘導のために必要としない化学的なコンジュゲーションされたdsRNA又はCpGオリゴヌクレオチドを、濃度500nMで、培養液中でインキュベーションした。インキュベーションの終了時、4通りの培養上清を、プールした。
【0164】
INF−a及びTNF−aを、次に、これらのプールした上清中で、標準的なサンドイッチELISAにより、1プール当たり2つのデータポイントを用いて測定した。サイトカイン誘導の程度を、ポジティブコントロールと比べて、スコア0〜5(5が最高誘導を示す)を使用して表した。
【0165】
結果を、添付の表3及び5に与える。
【0166】
ヒトGCRを標的化するdsRNAのin vitroでのオフターゲット分析
psiCHECK(商標)ベクター(Promega)は、RNAi活性をモニターするための2つのレポーター遺伝子を含む:合成バージョンのウミシイタケルシフェラーゼ(hRluc)遺伝子及び合成ホタルルシフェラーゼ遺伝子(hluc+)。ホタルルシフェラーゼ遺伝子によって、ホタルルシフェラーゼ発現に対するウミシイタケルシフェラーゼ発現における変化の標準化が可能になる。ウミシイタケ及びホタルルシフェラーゼ活性を、Dual-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(Promega)を使用して測定した。発明のdsRNAのオフターゲットの効果を分析するためのpsiCHECK(商標)を使用するために、予測されたオフターゲット配列を、合成ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子及びその翻訳停止コドンの3’に位置するマルチプルクローニング領域中にクローニングした。クローニング後、ベクターを哺乳動物細胞株中にトランスフェクションし、続いて、GCRを標的化するdsRNAを用いてコトランスフェクションする。dsRNAが、予測されたオフターゲットの標的RNA上でRNAiプロセスを効果的に開始する場合、融合されたウミシイタケ標的遺伝子mRNA配列が分解され、低下したウミシイタケルシフェラーゼ活性をもたらす。
【0167】
in silicoでのオフターゲット予測
ヒトゲノムを、コンピュータ解析により、発明のdsRNAと相同な配列について探索した。発明のdsRNAと6未満のミスマッチを呈する相同配列を、可能なオフターゲットとして定義した。in vitroでのオフターゲット解析のために選択されたオフターゲットを、添付の表6、7、及び8に与える。
【0168】
予測されたオフターゲット配列を含むpsiCHECKベクターの生成
dsRNAリード候補についてのオフターゲットの効果を分析するための戦略は、予測されたオフターゲット部位の、psiCHECK2ベクターシステム(Dual Glo(登録商標)system, Promega, Braunschweig, Germany cat.No C8021)中への、XhoI及びNotI制限部位を介したクローニングを含む。従って、オフターゲット部位を、10ヌクレオチドを用いて、dsRNA標的部位の上流及び下流で伸長する。加えて、NheI制限部位を組み込み、制限分析によりフラグメントの挿入を証明する。一本鎖オリゴヌクレオチドを、標準的プロトコール(例えば、Metabionによるプロトコール)に従ってMastercycler(Eppendorf)中でアニーリングし、次に、XhoI及びNotIを用いて先に消化したpsiCHECK(Promega)中にクローニングした。成功裏の挿入を、NheIを用いた制限分析及び続く陽性クローンの配列決定により立証した。配列決定のための選択されたプライマー(配列番号677)は、ベクターpsiCHECKの位置1401に結合する。クローン産生後、プラスミドを配列決定により分析し、次に、細胞培養実験において使用した。
【0169】
dsRNAオフターゲット効果の分析
細胞培養:
Cos7細胞をDeutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ, Braunschweig, Germany, cat. No.ACC-60)から得て、10%ウシ胎児血清(FCS)(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.S0115)、ペニシリン100U/ml、及びストレプトマイシン100μg/ml(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.A2213)及び2mM Lグルタミン(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.K0283)ならびに12μg/ml重炭酸ナトリウムを含むように添加されたDMEM(Biochrom AG, Berlin, Germany, cat. No.F0435)中で、37℃で、5%COを伴う大気中で加湿インキュベータ(Heraeus HERAcell, Kendro Laboratory Products, Langenselbold, Germany)において培養した。
【0170】
トランスフェクション及びルシフェラーゼ定量化:
プラスミドを用いたトランスフェクションのために、Cos−7細胞を密度2.25x104個細胞/ウェルで96ウェルプレート中に播種し、直接的にトランスフェクションした。プラスミドのトランスフェクションは、リポフェクタミン2000(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany, cat. No.11668-019)を用いて、製造業者により記載される通りに、濃度50ng/ウェルで行った。トランスフェクション後4時間で、培地を捨てて、新鮮培地を加えた。ここで、dsRNAを、濃度50nMで、リポフェクタミン2000を使用し、上に記載する通りにトランスフェクションした。dsRNAトランスフェクション後24時間に、細胞を、製造業者により記載されるルシフェラーゼ試薬(Dual-GloTM Luciferase Assay system, Promega, Mannheim, Germany, cat. No.E2980)を使用して溶解し、ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼを製造業者のプロトコールに従って定量化した。ウミシイタケルシフェラーゼタンパク質レベルを、ホタルルシフェラーゼレベルに対して標準化した。各々のdsRNAについて、8つの個々のデータポイントを、2つの独立した実験において回収した。全ての標的部位と無関係のdsRNAを、コントロールとして使用し、dsRNA処理細胞中の相対的なウミシイタケルシフェラーゼタンパク質レベルを決定した。
【0171】
結果を、図1、2、及び3に示す。
【0172】
ヒト初代肝細胞におけるGCRを標的化するdsRNAの効力
dsRNAのトランスフェクション後でのGCR標的遺伝子ノックダウン
外科手術切除物から単離されたヒト初代肝細胞の新鮮な懸濁液を、HepaCult GmbHから購入し、12ウェルコラーゲンコートプレート中に、密度325 000個細胞/ウェルで、10%ウシ胎児血清(FCS)、1% GlutaMAX 200mM(Invitrogen GmbH, cat. No 35050-038)、及び抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン、及びゲンタマイシン)を添加したWilliam's E培地(Sigma-Aldrich Inc, cat. No W1878)中に蒔いた。一晩培養後(37℃で、5% COを伴う大気中で加湿インキュベータにおいて)、培地を、同様に添加したDMEM培地(Invitrogen GmbH, cat. No 21885)を用いて交換し、dsRNAトランスフェクションを、最終濃度15nMで、DharmaFECT-1トランスフェクション試薬(ThermoFisher Scientific Inc, cat. No T2001)を使用して実施した。72時間後、培地を、2uM cAMP(Sigma-Aldrich Inc, cat. No S3912)を添加した新鮮培地を用いて交換し、細胞をさらに一晩培養し、遺伝子発現の誘導を可能にした。細胞を、次に、デキサメタゾン500nM(Sigma-Aldrich Inc, cat. No D4902)に6時間にわたり曝露させ、GCRの活性化及び核への転位置を誘発し、Quantigene 2.0技術のためのPanomics/Affymetrix Incプロトコール(http://www.panomics.com/index.php?id=product_1)に従った分岐DNA技術による遺伝子発現解析のために回収した。これらの条件において、GCRについてのdsRNAへのヒト初代肝細胞の曝露は、GCR遺伝子発現の最高90%KDに導いた。
【0173】
結果を、図4に示す。
【0174】
GCR及びGCR制御遺伝子発現に対するGCRについてのLNP01製剤化dsRNAの効果
ヒト初代肝細胞を蒔き、上に記載する通り(450 000個の細胞を1ウェル当たりに播種したことを除き)に培養した。一晩培養後、細胞を、48時間にわたり、陽イオンリポソーム製剤LNP01中に1〜100nMの範囲の用量でパッケージされたdsRNAに曝露させた。dsRNAへの32時間の暴露後、cAMPを、2uMの最終濃度で加えた。培地に、さらに、デキサメサゾンを500nMの最終濃度で、遺伝子発現解析のための細胞回収前6時間に添加した。これらの条件において、GCRについてのLNP01製剤化dsRNAへの細胞曝露は、GCR遺伝子発現の用量反応阻害に導き、GCR遺伝子発現の80% KDに、GUSBハウスキーピング遺伝子の発現における変化を伴わず、100nM曝露で達した。GCR KDは、TAT及びPCK1遺伝子の発現の強い阻害に、及び、より少ない範囲で、G6Pc遺伝子阻害に変換した(それらの発現は、活性化時のGCRレセプターにより、誘導される)。
【0175】
結果を、図5に示す。
【0176】
グルコースアウトプットに対するGCRについてのLNP01製剤化dsRNAの効果
グルコースアウトプットアッセイを、播種し、LNP01製剤化dsRNAに曝露された初代ヒト肝細胞で実施し、以下を除いて上に記載する通りである:96ウェルプレートフォーマットを35 000個播種/ウェルと使用したこと、及び、LNP01製剤化dsRNAへの48時間の暴露後、細胞を、飢餓条件において、1% FCS及び抗生物質を添加したグルコース不含RPMI 1640培地(Invitrogen GmbH, cat. No 11879)中で72時間にわたり培養し、その後培地を新しくし、2uM cAMP及び30nMデキサメタゾンを添加して一晩培養したこと。コントロール細胞をcAMP単独を用いて、又はcAMP、デキサメタゾン、及びミフェプリストン1uM(GCRアンタゴニスト)を用いて処理することも実施した。細胞を、次に、糖新生前駆体(乳酸及びピルビン酸)の存在においてさらにインキュベーションし、グルコース産生を、5時間にわたり、0.1%脂肪酸フリー(free-fatty acid)BSA、20mMピルビン酸ナトリウム、及び2mM乳酸を含むDPBS(Invitrogen GmbH, cat. No 1404)中で誘導した。産生されたグルコースを、Amplex-Red Glucose/Glucoseオキシダーゼアッセイキット(Invitrogen GmbH, cat. No A22189)を用いて、培養上清中で評価した。細胞生存の指標として、細胞ATP含量も、Cell-titer Glo発光細胞生存アッセイ(Promega Corporation, cat. No G7571)を使用して測定した。GCRについてのLNP01製剤化dsRNAへの細胞曝露は、ミフェプリストンにより達成されるGCR活性の完全アンタゴニズムから予測される最高レベルまでのグルコース産生の用量反応阻害に導いた。
【0177】
結果を、図6及び7に示す。
【0178】
マウス及びラットGCRを標的化するdsRNAのin vivoでの効果
肝臓におけるRNAi媒介性GCR KD、及び単回静脈内注射後でのdb/dbマウスにおける血中グルコースに対する効力
30匹の雄db/dbマウス(Jackson laboratories)の群に、通常の固形飼料食(Kliba 3436)を与えた。各々4匹のマウスの均質群を、摂食条件下で実験の日に測定されたそれらのBW及び血中グルコースに従って組織化し、2時間後に食物を除去した。
【0179】
マウスを、ルシフェラーゼコントロールについてのLNP01製剤化dsRNA(配列番号対681/682)又はGCRについてのLNP01製剤化dsRNA(配列番号対517/518)のいずれかの単回静脈内注射(5.76mg/kgで、最大103時間にわたり)を用いて処置した。
【0180】
血中グルコースレベルを、Accu-Chek(Aviva)を用いて、午後(食物を除去した後10時間に相当する)の静脈内注射後2日目、3日目、及び4日目(処置後+55時間、+79時間、及び+103時間)に測定した。マウスを次に屠殺した。血漿中ALT及びASTをHitachiにより分析した。肝臓を、分岐DNAによるGCR及びGCR調節遺伝子(TAT、PCK1、G6Pc、及びHES1遺伝子)のmRNA発現解析のために収集し、液体窒素中に瞬間凍結し、動物組織用のPanomics/Quantigene 2.0サンプルプロセシングプロトコール(Panomics-Affymetrix Inc, cat. No QS0106)に従い最大葉(左側葉)を加工した。GCR dsRNAを用いたdb/dbマウス処置は、マウス肝臓におけるGCR遺伝子発現の有意なKD及び肝臓トランスアミナーゼにおける変化を伴わない減少した糖血症を招いた。
【0181】
結果を、図8、9、及び10に示す。
【0182】
GCR(Macaca fascicularis)を標的化するdsRNAのin vivoでの効果
以下の試験のために、等張緩衝液中のdsRNA脂質粒子の滅菌製剤(例えば、Semple SC et al., Nat Biotechnol. 2010 Feb; 28(2): 172-6. Epub 2010 Jan 17. Rational design of cationic lipids for siRNA delivery)を使用した。
【0183】
サル(Macaca fascicularis)における単回用量滴定試験
サルは、0.5、1.5、又は3mg/kgのいずれかのGCR dsRNA(配列番号対747/753)、又は用量1.5mg/kgのdsRNA(配列番号対764/772)の単回静脈内ボーラス注射を受けた。コントロール群は、脂質粒子により起こされる効果とRNAi媒介性の効果との間で区別するために、1.5mg/kgのルシフェラーゼdsRNA(配列番号対681/682)を受けた。全ての処理群を、1匹の雄サル及び1匹の雌サルを用いて実行した。肝臓生検サンプルを、注射後3日目に採取した。
【0184】
GCR mRNAレベルを、肝臓生検サンプルから、bDNAアッセイにより、上に記載する通りに測定した。
【0185】
GCR dsRNA処置群は、GCR mRNAレベルにおける用量依存的な減少を示し、1.5mg/kgのGCR dsRNAを用いて開始して、GCR dsRNA(配列番号対747/753)による約24%の減少及びGCR dsRNA(配列番号対764/772)による29%減少をもたらし、3mg/kgのGCR dsRNA(配列番号対747/753)を用いてGCR mRNAにおける45%減少に達した(図11)。
【0186】
【表2】



























【0187】
【表3】



【0188】
【表4】

【0189】
【表5】







【0190】
【表6】

【0191】
【表7】

【0192】
【表8】

【0193】
【表9】

【0194】
【表10】

【0195】
【表11】

【0196】
【表12】

【0197】
【表13】

【0198】
【表14】











【0199】
【表15】


















































【特許請求の範囲】
【請求項1】
GCR遺伝子の発現をin vitroで少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%阻害することが可能である二本鎖リボ核酸分子。
【請求項2】
前記二本鎖リボ核酸分子がセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖が少なくとも部分的にセンス鎖と相補的であり、それにより、センス鎖が、GCRをコードするmRNAの少なくとも部分と少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、それにおいて、前記配列が(i)前記センス鎖の前記アンチセンス鎖に対する相補性の領域中に位置し、そして(ii)それにおいて前記配列が30未満のヌクレオチド長である、請求項1記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項3】
前記センス鎖が、配列番号:873、929、1021、1023、967、及び905に描写されるヌクレオチド核酸配列を含み、そして前記アンチセンス鎖が、配列番号:874、930、1022、1024、968、及び906に描写される核酸配列を含み、それにおいて、前記二本鎖リボ核酸分子が、配列番号:873/874、929/930、1021/1022、1023/1024、967/968、及び905/906からなる群より選択される配列対を含む、請求項1〜2記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項4】
アンチセンス鎖が、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングをさらに含む、請求項3記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項5】
アンチセンス鎖のオーバーハングが、ウラシル又はGCRをコードするmRNAに相補的であるヌクレオチドを含む、請求項4記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項6】
センス鎖が、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングをさらに含む、請求項3〜5のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項7】
センス鎖のオーバーハングが、ウラシル又はGCRをコードするmRNAと同一であるヌクレオチドを含む、請求項6記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項8】
前記二本鎖リボ核酸分子が少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項9】
前記修飾ヌクレオチドが、2’−O−メチル修飾ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、及びコレステリル誘導体又はドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロ修飾ヌクレオチド、逆位デオキシチミジン、2’−デオキシ−修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’−アミノ−修飾ヌクレオチド、2’−アルキル−修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミド酸、及びヌクレオチドを含む非天然塩基からなる群より選択される、請求項8記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項10】
前記修飾ヌクレオチドが、2’−O−メチル修飾ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、逆位デオキシチミジン、及びデオキシチミジンである、請求項8及び9のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項11】
前記センス鎖及び/又は前記アンチセンス鎖が、1〜2のデオキシチミジンのオーバーハング及び/又は逆位デオキシチミジンを含む、請求項3〜10記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項12】
前記センス鎖が、配列番号:3、7、55、25、83、31、33、747、及び764に描写される核酸配列からなる群より選択され、そして前記アンチセンス鎖が、配列番号:4、8、56、26、84、32、34、753、及び772に描写される核酸配列からなる群より選択され、それにおいて、前記二本鎖リボ核酸分子が、配列番号:3/4、7/8、55/56、25/26、83/84、31/32、33/34、747/753、及び764/772からなる群より選択される配列対を含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に定義される二本鎖リボ核酸分子に含まれるセンス鎖及び/又はアンチセンス鎖をコードする核酸配列。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に定義される二本鎖リボ核酸分子に含まれるセンス鎖又はアンチセンス鎖の少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む又は請求項13記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に定義される二本鎖リボ核酸分子、請求項13記載の核酸分子、又は請求項14記載のベクターを含む細胞、組織、又は非ヒト生物。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に定義される二本鎖リボ核酸分子、請求項13記載の核酸分子、請求項14記載のベクター、又は請求項15記載の細胞もしくは組織を含む、医薬組成物。
【請求項17】
医薬的に許容可能な担体、安定剤、及び/又は希釈剤をさらに含む、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
以下の工程:
(a)細胞、組織、又は生物中に、請求項1〜12のいずれか一項に定義される二本鎖リボ核酸分子、請求項13記載の核酸分子、又は請求項14記載のベクターを導入すること;及び
(b)工程(a)において産生された細胞、組織、又は生物を、GCR遺伝子のmRNA転写物の分解を得るために十分な時間にわたり維持し、それにより細胞中でのGCR遺伝子の発現を阻害すること
を含む細胞、組織、又は生物においてGCR遺伝子の発現を阻害するための方法。
【請求項19】
GCR遺伝子の発現により起こされる病理学的状態及び疾患を処置、予防、又は管理する方法であって、そのような処置、予防、又は管理を必要とする被験体に、治療的又は予防的に効果的な量の請求項1〜12のいずれか一項に定義される二本鎖リボ核酸分子、請求項13記載の核酸分子、請求項14記載のベクター、及び/又は請求項16もしくは17に定義される医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項20】
前記の被験体がヒトである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
2型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性アテローム性動脈硬化症、高血圧、又はうつ病を処置する際での使用のための、請求項1〜12のいずれか一項に定義される二本鎖リボ核酸分子、請求項13記載の核酸分子、請求項14記載のベクター、及び/又は請求項16もしくは17に定義される医薬組成物。
【請求項22】
2型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性アテローム性動脈硬化症、高血圧、又はうつ病の処置のための医薬組成物の調製のための、請求項1〜12のいずれか一項に定義される二本鎖リボ核酸分子、請求項13記載の核酸分子、請求項14記載のベクター、及び/又は請求項15記載の細胞もしくは組織の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【公表番号】特表2012−526533(P2012−526533A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510285(P2012−510285)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056527
【国際公開番号】WO2010/130771
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】