説明

グルコシルセラミド合成酵素阻害剤

【課題】グルコシルセラミド合成酵素阻害活性を有するピロリジン型イミノ糖化合物を提供する。
【解決手段】
【化1】


上記一般式[1]において、R1がアルキル、R2〜R5が水素原子あることを特徴とするピロリジン型イミノ糖は、グルコシルトランスフェラーゼなどの糖脂質合成酵素の阻害作用を有し、グルコシルセラミドおよび/または他のスフィンゴ糖脂質の合成が関与する糖脂質蓄積症、リソソーム病など様々な疾患を予防・治療する薬剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコシルセラミド合成酵素阻害活性を有するピロリジン型イミノ糖化合物に関する。より詳細には、グルコシルセラミドおよび/または他のスフィンゴ糖脂質が役割を果たす様々な疾患を治療する薬物を調製するための、ピロリジン型イミノ糖誘導体およびその塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖転移酵素(グルコシルトランスフェラーゼ)および糖加水分解酵素(グルコシダーゼ)などに代表される糖鎖関連酵素は、タンパク質およびスフィンゴ脂質上の特定のオリゴ糖構造の合成に関与する重要な分子群である。中でもセラミドに働きグルコシルセラミドを作るグルコシルトランスフェラーゼは、400種以上の糖脂質合成の最初の段階を触媒する重要な転移酵素である。
【0003】
インスリン抵抗性は、組織でのインスリンの感受性が低下する病態で、特にII型糖尿病では、インスリン分泌不全に加え、糖尿病の発症や進展に関わる主な病因となっている。一般的にインスリン抵抗性は肥満と深く関わっていると考えられており、さらに、糖尿病のみならず動脈硬化等の脂質代謝異常に起因する疾病にもインスリン抵抗性が見られることが知られている。インスリン抵抗性の作用機序には未だ不明の点が多いが、インスリン抵抗性状態の細胞では、糖脂質の一種であるGM3の合成量が増加し、その結果、細胞膜内でのインスリン受容体が、本来存在するべきカベオラマイクロドメインと呼ばれる微小領域から遊離されることで、グルコースの取り込み能が損なわれていることが報告されている (非特許文献1)。グルコシルトランスフェラーゼは、このGM3生合成の初期段階を触媒する酵素であることから、本酵素を阻害し、GM3の合成量を抑制できれば、インスリン抵抗性を改善でき、糖尿病や動脈硬化等の脂質代謝異常に起因する疾病を予防または治療することが可能であると考えられる。
【0004】
ガングリオシドを始めとするスフィンゴ糖脂質は、病原性細菌や細菌毒素が細胞に結合する際のレセプターとして機能している。コレラ毒素のレセプターは宿主細胞膜上のGM1であり、コレラ毒素のBサブユニットがGM1に結合するとコレラ毒素の立体構造が変化して、Aサブユニットが細胞の膜から侵入する。また、毒素原性大腸菌(O-157)が産生する易熱性毒素も同様の機序でGM1をレセプターとして利用し、細胞内に侵入する。この他にもガングリオシドをレセプターとする細菌毒素として、破傷風毒素(GD1b)、ボツリヌス毒素(GT1bとGQ1b)、ウエルシュ菌のデルタ毒素(GM2)などが知られている。このように病原性細菌や細菌毒素の細胞膜表面に局在する糖脂質への結合により、毒作用が発揮される。従ってグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤を作用させ細胞膜表面に局在する糖脂質の構成量を変化させてやれば、病原性細菌や細菌毒素によって引き起こされる種々の疾患を予防または治療することが可能であると考えられる。
【0005】
リソソーム病は、リソソーム内のスフィンゴ糖脂質の異化に関与する加水分解酵素の欠損により特徴付けられる遺伝性疾患である。例えば、ゴーシェ病は、β−グルコセレブロシダーゼの触媒活性の変性から起こり、ファブリー病はα−ガラクトシダーゼAの機能障害に関連し、クラッベ病はβ−ガラクトセレブロシダーゼの機能障害に関連し、テイ−サックス病はβ−ヘキソサミニダーゼAの機能障害に関連し、サンドホフ病はβ−ヘキソサミニダーゼBに関連する。これらリソソーム分解酵素の1つもしくは、2つ以上の異常により組織・臓器内に糖脂質が蓄積し、結果的に神経病理学的な又は精神運動性の本質の深刻な機能障害を進行的にもたらす。現在、日本ではゴーシェ病、ファブリー病およびポンペ病に対して、欠損型酵素の活性を補うことを目的に、静脈経路により組換え型酵素を注入する酵素補充療法が行われている。しかし、酵素補充療法はアナフィラキシーショックを起こす危険性があり、また神経系異常を呈する患者に効果は認められないという問題を抱えている。第2の方法として糖脂質の生合成を阻害し、リソソーム内に蓄積してくる糖脂質の量を制限する基質排除法が考えられている。
【0006】
これまでに、グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤としては、セラミドに類似した構造を有しているD-threo-1-phenyl-2-decanoylamino-3-morpholino-1-propanol (D-PDMP)およびその類縁体 (非特許文献2) とピペリジン型イミノ糖であるN−ブチル−1−デオキシノジリマイシン (NB-DNJ)が報告されている。このうち、NB-DNJに関しては、1−デオキシノジリマイシン (DNJ)自体には阻害活性はなく、グルコシルセラミド合成酵素を阻害するためには、イミノ糖の窒素原子にアルキル鎖を導入することが必要であることが報告されている (非特許文献3)。
【0007】
一方、イミノ糖は、大きく分けてピロリジン型、ピペリジン型、インドリチジン型、ピロリチジン型およびノルトロパン型の5つのタイプに分類される。
ピロリジン型のイミノ糖化合物に関しては、例えば、グルコシダーゼ阻害作用を示す1,4-dioxy-1,4-imino-L-allitol(特許文献1)、ウイルス感染の治療に用いることができる2-アルキル-ヒドロキシメチル-3,4-ジヒドロキシピロリジンが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US4894388
【特許文献2】US2007/0088164
【特許文献3】特表2007-509926
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J. Biol. Chem. 277,3085-3092, 2002
【非特許文献2】J. Lipid Res. 38,565-571, 1987
【非特許文献3】J. Biol. Chem. 269,8362-8365, 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ピペリジン型のイミノ糖について、例えば、1-デオキシノジリマイシン類似体を、グルコシルセラミドおよび/または他のスフィンゴ糖脂質の合成が役割を果たす様々な疾患を治療する薬物として使用する検討がなされている(特許文献3)。しかし、ピロリジン型のイミノ糖化合物に関して検討はほとんどなされていない。
そこで本発明は、グルコシルセラミド合成酵素阻害活性を有するピロリジン型イミノ糖を新たに提供することを目的とする。本発明はさらに、上記したグルコシルセラミド合成酵素阻害剤を利用した医薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、まず上記課題を解決するために、代表的なピロリジン型イミノ糖である1,4-ジデオキシ-1,4-イミノ-D-アラビニトール (DAB)および1,4-ジデオキシ-1,4-イミノ-L-アラビニトール (LAB)の窒素原子にアルキル鎖を導入したが、これらN-アルキル体にはグルコシルセラミド合成酵素阻害は認められなかった。
従ってピロリジン型イミノ糖は、ピペリジン型イミノ糖と違い窒素原子にアルキル鎖を導入してもグルコシルセラミド合成酵素を阻害することが困難であることが判明した。そこで、発明者らは新たにピロリジン型イミノ糖に属する一連の化合物ライブラリーを作製し、これらがグルコシルセラミド合成酵素の阻害剤となるかどうかを評価した。その結果、意外なことに下記の一般式[1]で示される一連のL型化合物またはその塩にグルコシルセラミド合成酵素阻害剤活性があることを見いだし、本発明は完成するに至った。以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本明細書において、特に断らない限り、各用語は、次の意味を有する。ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を;
アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニル基などの直鎖状または分岐鎖状の炭素数が1〜12のアルキル基を;炭素数が2〜7のアルキル基とは、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチル基などの直鎖状または分岐鎖状の炭素数2〜7のアルキル基を;アリール基とは、フェニル、ナフチル、インダニルおよびインデニル基などを;
【0013】
ヒドロキシ保護基とは、通常のヒドロキシル基の保護基として使用し得るすべての基を含み、例えば、ベンジルオキシカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニル、4−ブロモベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、1,1−ジメチルプロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、ジフェニルメトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、2,2,2−トリブロモエトキシカルボニル、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、2−(フェニルスルホニル)エトキシカルボニル、2−(トリフェニルホスホニオ)エトキシカルボニル、2−フルフリルオキシカルボニル、1−アダマンチルオキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、S−ベンジルチオカルボニル、4−エトキシ−1−ナフチルオキシカルボニル、8−キノリルオキシカルボニル、アセチル、ホルミル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、フェノキシアセチル、ピバロイルおよびベンゾイルなどのアシル基;メチル、tert-ブチル、2,2,2−トリクロロエチルおよび2−トリメチルシリルエチルなどの低級アルキル基;アリルなどの低級アルケニル基;ベンジル、p-メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ジフェニルメチルおよびトリチルなどのアル低級アルキル基;テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニルおよびテトラヒドロチオピラニルなどの含酸素および含硫黄複素環式基;メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、1−エトキシエチルおよび1−メチル−1−メトキシエチルなどの低級アルコキシ−および低級アルキルチオ−低級アルキル基;メタンスルホニルおよびp−トルエンスルホニルなどの低級アルキル−およびアリール−スルホニル基;並びにトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、 tert-ブチルジフェニルシリル、ジフェニルメチルシリルおよびtert-ブチルメトキシフェニルシリルなどの置換シリル基など。
【0014】
イミノ保護基とは、通常のイミノ基の保護基として使用し得るすべての基を含み、例えば、(モノ、ジ、トリ)クロロアセチル、トリフルオロアセチル、フェニルアセチル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、フタロイル、スクシニルなどアシル基;メトキシカルボニル、ジフェニルメトキシカルボニ
ル、エトキシカルボニル、トリクロロエトキシカルボニル、トリブロモエトキシカルボニル、1,1−ジメチルプロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニ ル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルおよび1−アダマンチルオキシカルボニルなどのアルキルオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、o−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシ
カルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニルおよび4−(フェニルアゾ)ベンジルオキシカルボニルなどのアルアルキルオキシカルボニル基;フェニルオキシカルボニル、4−フルオロフェニルオキシカルボニル、4−メトキシフェニルオキシカルボニル、8−キノリルオキシカルボニルおよび2−フル
フリルオキシカルボニルなどのアリールオキシカルボニル基;ベンジル、ジフェニルメチルおよびトリチルなどのアルアルキル基;メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチルおよび1−エトキシエチルなど
のアルコキシアルキル基;2−ニトロフェニルチオおよび2,4−ジニトロフェニルチオなどのアリールチオ基;メタンスルホニルおよびp−トルエンスルホニルなどのアルキルスルホニルもしくはアリールスルホニル基;N,N−ジメチルアミノメチレンなどのジアルキルアミノアルキリデン基;ベンジリデン、2−ヒドロキシベンジリデン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンジリデンおよび2−ヒドロキシ−1−ナフチルメチレンなどのアルアルキリデン基;3−ヒドロキシ
−4−ピリジルメチレンなどの含窒素複素環式アルキリデン基;シクロヘキシリデン、2−エトキシカルボニルシクロヘキシリデン、2−エトキシカルボニルシ クロペンチリデン、2−アセチルシクロヘキシリデンおよび3,3−ジメチル−5−オキシシクロヘキシリデンなどのシクロアルキリデン基;ジフェニルホスホ
リルおよびジベンジルホスホリルなどのジアリールもしくはジアルアルキルホスホリル基;5−メチル−2−オキソ−2H−1,3−ジオキソール−4−イル−メチルなどの含酸素複素環式アルキル基;トリメチルシリル基などの置換シリル基など。
【0015】
本発明は、一般式[1]、
【化1】

【0016】
「式中、R1は、アリール基で置換されていてもよいアルキル基を; R2は、水素原子またはイミノ保護基を;R3、R4、R5は、同一または異なって、水素原子またはヒドロキシ保護基を、それぞれ示す。」で表されるピロリジン型イミノ糖またはその塩を含有するグルコシルセラミド合成酵素阻害剤である。
【0017】
一般式[1]のピロリジン型イミノ糖として好ましいものは、R1が、フェニル基が置換していてもよい炭素数1〜12のアルキル基;R2、R3、R4、R5が、水素原子のピロリジン型イミノ糖である。
【0018】
本発明は、一般式[1a]
【化2】

【0019】
「式中、R1aは、フェニル基または炭素数2〜7のアルキル基を;R2は、水素原子またはイミノ保護基を;R3、R4、R5は、同一または異なって、水素原子またはヒドロキシ保護基を、それぞれ示す。」で表される新規なピロリジン型イミノ糖またはその塩である。
【0020】
一般式[1a]のピロリジン型イミノ糖として好ましいものは、R1aが、フェニル基または炭素数12〜7のアルキル基;R2、R3、R4、R5が、水素原子であるピロリジン型イミノ糖またはその塩である。
【0021】
一般式[1]および一般式[1a]のピロリジン型イミノ糖の塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸および硫酸などの鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸との塩;並びにメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩など、通常知られているイミノ基などの塩基性基おける塩を挙げられる。上記した塩の中で、好ましい塩としては、薬理学的に許容される塩が挙げられる。
【0022】
一般式[1]および一般式[1a]のピロリジン型イミノ糖またはその塩において、異性体(例えば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、本発明は、それらすべての異性体を包含し、また水和物、溶媒和物およびすべての結晶形を包含するものである。
【発明の効果】
【0023】
一般式[1]および一般式[1a]のピロリジン型イミノ糖またはその塩は、グルコシルトランスフェラーゼなどのグルコシルセラミド合成酵素の阻害作用を有することから、糖脂質蓄積症、糖脂質蓄積に関連する疾患、糖脂質合成が異常である癌、インスリン抵抗性、糖尿病、細胞表面糖脂質を受容体として使用する微生物によって引き起こされる感染症、グルコシルセラミドおよび/または他のスフィンゴ糖脂質の合成が本質的又は重要である感染症、過剰の糖脂質合成が起こる疾患、神経細胞障害、神経細胞傷害の治療薬として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一般式[1]および一般式[1a]のピロリジン型イミノ糖は、例えば、以下の方法により製造することができる。
【化3】

【0025】
「式中、Xは、ハロゲン原子を、Rは、アリール基で置換されていてもよいアルキル基を、それぞれ意味する。」
【0026】
式[2]の化合物を、ハロゲン化反応に付すことにより一般式[3]の化合物を製造することができる。ハロゲン化反応はアルコールをハロゲン化アルキルとする公知の方法であればよいが、例えば、トリフェニルホスフィンとヨウ素を用いるアッペル反応などを利用すればよい。
なお、式[2]の化合物は、例えば、Chem. Eur. J. 2006,12,6607-6620に記載の方法に準じて製造することができる。
【0027】
一般式[3]の化合物を、例えば、ニッケル触媒によるCsp3-Csp3クロスカップリング反応に付すことにより、一般式[4]の化合物を製造することができる。具体的には、Ni(cod)2、2,6-bis(4-isopropyl-4,5-dihydrooxazol-2-yl)pyridine
(iPr-Pybox)の存在下で、一般式[3]の化合物とプロピル亜鉛試薬をN,N-ジメチルアセタミド中で反応すればよい。
【0028】
一般式[4]の化合物を、例えば、オキソン(Oxone:商品名)を用いたエポキシ化反応に付すことにより、一般式[5]の化合物を製造することができる。
【0029】
一般式[5]の化合物を、酸性条件下でエポキシの開裂を行うことにより、一般式[6]の化合物を製造することができる。
【0030】
一般式[6]の化合物をアルカリを用いた脱カルボニル化反応に付すことにより、一般式[1b]の化合物を製造することができる。
【0031】
一般式[1b]の化合物を、ブチルアルデヒドなどのアルキルアルデヒドとシアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素試薬を用いた還元的アミノ化反応に付すことにより環中の窒素原子にアルキル基が導入された一般式[1]の化合物を製造することができる。
【0032】
一般式[1]および
[6]の化合物において、ヒドロキシ保護基またはイミノ保護基の導入・脱離は、自体公知の方法で行えばよい
【0033】
式 [2]、一般式[3]〜[6]の化合物において、異性体(例えば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、これらすべての異性体を使用することができ、また水和物、溶媒和物およびすべての結晶形を使用することができる。また、一般式[3]〜[6]の化合物は、単離せずにそのまま次の反応に用いてもよい。
このようにして得られた一般式[1]の化合物は、抽出、晶出、蒸留およびカラムクロマトグラフィーなどの通常の方法によって単離精製することができる。
【0034】
本発明化合物は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、固結・付着防止剤、滑沢剤、吸収・吸着担体、溶剤、増量剤、等張化剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化剤、増粘剤、被覆剤、吸収促進剤、ゲル化・凝固促進剤、光安定化剤、保存剤、防湿剤、乳化・懸濁・分散安定化剤、着色防止剤、脱酸素・酸化防止剤、矯味・矯臭剤、着色剤、起泡剤、消泡剤、無痛化剤、帯電防止剤、緩衝・ pH調節剤などの各種医薬品添加物を配合して、経口剤(錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤など)、注射剤、坐剤、外用剤(軟膏剤、貼付剤など)、エアゾール剤などの医薬品製剤とすることができる。
【0035】
上記製剤の投与方法は、特に限定されないが、製剤の形態、患者の年齢、性別その他の条件、患者の症状の程度に応じて適宜決定される。本発明製剤の有効成分の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の形態、その他の条件などに応じて適宜選択されるが、通常成人に対して、1日0.1〜500mgを1回から数回に分割して投与すればよい。
【実施例】
【0036】
本発明の代表的化合物の薬理作用に係わる試験例および製造例を挙げて以下に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0037】
試験例1
・グルコシルトランスフェラーゼ(Glucosyltransferase)の活性測定
10mMトリス塩酸(pH7.4)、1mM
EDTA(pH8.0)、500μM UDP-グルコース2ナトリウム、100μg/mLレクチン、7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazole(NBD)で標識したセラミドを含む反応溶液に、HL-60細胞溶液を加え、阻害剤存在下もしくは阻害剤非存在下で2時間、37℃でインキュベートした。反応停止後に抽出物を、クロロホルム:メタノール(2:1)に溶解させ、TLC分析を行った。展開溶媒はクロロホルム:メタノール:塩化マグネシウム(65:25:4)を用いた。展開、風乾後、ルミノイメージアナライザーLAS-4000にてバンドの蛍光発色を測定し阻害活性を求めた。
結果を表1に示す。
【0038】
【化4】

【0039】
【表1】

【0040】
次に製造例で本発明を説明する。以下の製造例において、NMRスペクトルは、JEOL JNM-AL 400 spectrometer (1H-NMR;400MHz, 13C-NMR;100MHz)
を用いて測定した。化学シフトは重クロロホルム中の残存chloroform (CHCl3)およびtetramethylsilane (TMS) を内基準物質とし、ppmで示した。各シグナルの分裂パターンの略語として、s (singlet)、d (doublet)、dd (double doublet)、ddd (double double
doublet)、 t (triplet)、dt
(doublet triplet)、q (quartet)、quin
(quintet)、m (multiplet)、br
(broad) を用いた。赤外吸収スペクトル (IR) はPerkin-Elmer
1725 X series FT-IR spectrophotometer を用いて測定した。
カラムクロマトグラフィーは充填剤にKANTO Silica Gel 60 N (100-210 μm) を使用した。
各種溶媒(塩化メチレン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルアセタミド (DMA))は、市販の脱水されているものを使用した。また、湿気に敏感な反応はアルゴン気流下で行った。
【0041】
製造例1
【化5】

【0042】
(1) (3R,6aR)-1,2-Dehydro-3-iodemethyl-5-oxapyrrolizidin-4-one [3a]
(3R,6aR)-1,2-Dehydro-3-hydroxymethyl-5-oxapyrrolizidin-4-one
(2a;124mg),
イミダゾール(139mg)および トリフェニルホスフィン(541mg)をナスフラスコに入れ乾燥後、アルゴン置換し塩化メチレン(4.0mL) を加えた。氷冷し、ヨウ素(407mg)を加え、10分間攪拌した。その後、反応液が黄色から無色透明になるまで飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を滴下した。反応液を塩化メチレン(30 mL×3)で抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (Ether) に付し、3aを171 mgを得た。
【0043】
[α]D23= +141.61 (CHCl3, c=
1.0)
1H-NMR(400 MHz, CDCl3)δ: 3.28-3.37 (2H ,m), 4.23 (1H, dd,
J= 8.7, 6.3Hz), 4.64 (1H, t, J= 8.7Hz), 4..77-4.81 (1H, m),
4.85-4.91 (1H, m), 6.01-6.04 (2H,m)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)δ: 8.60, 64.51, 67.20, 68.84,
130.73, 13.28, 162.11.
IR (neat) cm-1 : 1749
【0044】
(2)(3R,6aR)-1,2-Dehydro-3-octyl-5-oxapyrrolizidin-4-one [4a]
Bis(1,5-cyclooctadiene)nickel(0)
(48.4 mg)、 [(R,R)-2,6-Bis(4-isopropyl-2oxazolin-2-yl)pyridine
(109.4mg) をナスフラスコに入れ乾燥後、アルゴン置換しDMA (7.0mL)を加えた。室温で20分間攪拌させた。そのとき混合液は深青色を示した。この混合液(7.0mL) を3a (291mg)と別途調整したヘプタジンク
イオダイド(n-heptylzinc iodide)DMA溶液(4.6mL)の混合溶液に加え、室温で20時間攪拌した。反応後、反応液にヨウ素(440mg)を加え、室温で10分間攪拌し、反応を停止させた。DMA、ヨウ素、無機塩を除くために、反応液を短いシリカゲルのパットに通した。パットを通した反応液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=10:1) に付し、4aを102mg 得た。
【0045】
[α]D26=
+130.57 (CHCl3, c= 0.7).
1H-NMR
(400 MHz, CDCl3)δ:
0.86-0.89 (3H, m), 1.26-1.46 (14H, m), 4.20 (1H, dd, J= 8.8, 5.9Hz),
4.53-4.60 (2H, m), 4.73 (1H, m), 5.83-5.85 (1H, m), 6.01-6.03 (1H, m).
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)δ: 14.10, 22.64, 26.21, 29.22, 29.44, 29.47, 31.84, 34.41,
63.86, 67.50, 68.74, 127.96, 135.34, 163.00.
【0046】
<n-Heptylzinc iodideのDMA溶液調整法>
亜鉛末(980mg)をナスフラスコに入れ減圧乾燥後、アルゴン置換し、DMA(10 mL)を加えた。室温でヨウ素(127mg)を加え、反応液が透明になるまで攪拌した。次に1-ヨードヘプタン (1.7mL)を加え、室温で3時間攪拌し、n-heptylzinc iodideのDMA溶液とした。
【0047】
(3)(1aR,1bS,6S,6aS)-6-Octyl-tetrahydro-6-oxa-3-aza-bicyclo[3.1.0]hex-1(5)-eno[3,2-c]oxazol-4(1aH)-one
[5a]
(3R,6aR)-1,2-Dehydro-3-octyl-5-oxapyrrolizidin-4-one
(4a) (93mg)をナスフラスコに入れ、アセトニトリル(2.9mL)を加えた。氷冷後、4.0×10-4M EDTA水溶液(2.0 mL)、トリフルオロアセトン(340 μL)を加えた。反応溶液を撹拌し、オキサン(商品名)(1.199 g)と炭酸水素ナトリウム(247mg)の混合物を2時間かけて加えた。反応後、反応液を塩化メチレン(30mL×3)で抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (溶離液;エーテル) に付し、5aを91mg得た。
【0048】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ: 0.88 (3H, t, J= 7.2Hz),
1.27-1.54 (14H, m), 3.58 (2H, dd, J= 26.6, 2.9Hz), 3.96(1H, dd, J=
8.7, 3.9 Hz), 4.02 (1H, dd, J= 9.7, 3.9Hz), 4.45-4.55 (2H, m).
【0049】
(4)(5S,6S,7S,7aS)-5-Octyl-tetrahydro-6,7-dihydroxypyrrolo[1,2-c]oxazol-3-(1H)-one
[6a]
(1aR,1bS,6S,6aS)-6-Octyl-tetrahydro-6-oxa-3-aza-bicyclo[3.1.0]hex-1(5)-eno[3,2-c]oxazol-4(1aH)-one
(5a)(91mg) をナスフラスコに入れ、室温でTHF (1.9mL)、水(1.3mL) 及びトリフルオロ酢酸(329μL)を加え、80℃で70時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (溶離液;エーテル) に付し、6aを58mg得た。
【0050】
[α]D25= +11.28
(CHCl3, c= 0.5),
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ: 0.88(3H, t, J= 6.8Hz), 1.27-1.68 (14H, m),
3.62-3.67 (1H, m), 3.83-3.87 (1H, m), 3.89-3.96 (2H, m), 4.31-4.37 (1H,
m), 4.46-4.54 (1H, m).
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)δ: 14.10, 22.66, 26.14, 29.29, 29.35, 29.43, 29.51, 29.56,
31.87, 33.08, 62.07, 65.36, 66.93, 162.58
IR (neat) cm-1 : 1731,
3343
【0051】
(5) (2S,3S,4S,5S)-2-Octyl-5-(hydroxymethyl)pyrrolidine-3,4-diol

[1e(表1中の化合物2のL体)]
(5S,6S,7S,7aS)-5-Octyl-tetrahydro-6,7-dihydroxypyrrolo[1,2-c]oxazol-3-(1H)-one
(6a)(54mg)をナスフラスコに入れ、室温でエタノール(1.8mL)、水(0.9mL) 及び水酸化ナトリウム(95.4mg)を加え、100℃で14時間加熱還流させた。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (溶離液;メタノール:水酸化アンモニウム=100:1) に付し、1eを31.7mg得た。
【0052】
[α]D28= -36.59
(CH3OH, c= 1.0)
1H-NMR (400MHz, CD3OD)δ : 0.87-0.91 (3H, m), 1.20-1.50 (14H, m), 1.67 (1H, brs),
2.86 (1H, dd, J= 12.6, 7.2Hz), 2.97 (1H, dd, J= 10.6, 6.3H),
3.56-3.60 (2H, m), 3.66 (dd, J= 11.6, 4.3Hz), 3.76 (1H, t, J= 6.8Hz)
13C-NMR (100MHz, CD3OD)δ : 14.45, 23.73, 27.74, 30,42, 30.66, 30.88, 33.06, 35.17,
62.74, 63.11, 64.46, 79.47, 83.48
IR
(KBr)cm-1 : 3288
【0053】
製造例2
【化6】

【0054】
(1)(3R,6aR)-1,2-Dehydro-3-butyl-5-oxapyrrolizidin-4-one [4b]
Bis(1,5-cyclooctadiene)nickel(0)
(48.4 mg)、 [(R,R)-2,6-Bis(4-isopropyl-2oxazolin-2-yl)pyridine
(109.4 mg) をナシフラスコに入れ乾燥後、アルゴン置換しDMA (7.0 mL)を加えた。室温で20分間攪拌させた。そのとき混合液は深青色を示した。この混合液 (7.0 mL) を3a (291 mg)と別途調整したプロピリジンク ブロマイド(n-propylzinc bromide)DMA溶液(4.6 mL)の混合溶液に加え、室温で20時間攪拌した。反応後、反応液にヨウ素(440 mg)を加え、室温で10分間攪拌し、反応を停止させた。反応液を短いシリカゲルのパットで濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=3:1) に付し、4bを156 mg 得た。
【0055】
1H-NMR(400 MHz, CDCl3)δ: 0.87-0.96 (3H, m), 1.26-1.46 (4H,
m), 1.52-1.6 (2H, m), 4.18-4.23 (1H, m), 4.54-4.61 (2H, m), 4.73-4.76
(1H, m), 5.83-5.85(1H, m), 6.01-6.03(1H, m)
【0056】
<n-Propylzinc bromideのDMA溶液調整法>
亜鉛末(980mg)をナスフラスコに入れ減圧乾燥後、アルゴン置換し、DMA(10 mL)を加えた。室温でヨウ素(127mg)を加え、反応液が透明になるまで攪拌した。次に1-ブロモプロパン (1.0mL)を加え、80 ℃で3時間攪拌し、n-propylzinc bromideのDMA溶液とした。
【0057】
(2)(1aR,1bS,6S,6aS)-6-Butyl-tetrahydro-6-oxa-3-aza-bicyclo[3.1.0]hex-1(5)-eno[3,2-c]oxazol-4(1aH)-one
[5b]
(3R,6aR)-1,2-Dehydro-3-butyl-5-oxapyrrolizidin-4-one
(4b) (64mg)をナスフラスコに入れ、アセトニトリル(6.4mL)を加えた。氷冷後、4.0×10-4M EDTA水溶液(4.4 mL)、トリフルオロアセトン(340 μL)を加えた。反応溶液を撹拌し、オキサン(商品名)(2.705 g)と炭酸水素ナトリウム(549mg)の混合物を2時間かけて加えた。反応後、反応液を塩化メチレン(30mL×3)で抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (溶離液;エーテル) に付し、5bを171mg得た。
【0058】
1H-NMR(400 MHz, CDCl3)δ: 0.9 (3H, t, J= 7.2Hz), 1.26-1.58 (6H, m),
3.58 (2H, dd, J= 26.7, 2.9Hz), 3.97 (1H, dd, J= 8.7, 3.9Hz), 4.03
(1H, dd, J= 9.2, 4.8Hz), 4.46 (1H, dd, J= 9.2, 4.3Hz), 4.53 (t, J=
8.7, 1H).
【0059】
(3)(5S,6S,7S,7aS)-5-Butyl-tetrahydro-6,7-dihydroxypyrrolo[1,2-c]oxazol-3-(1H)-one
[6b]
(1aR,1bS,6S,6aS)-6-Butyl-tetrahydro-6-oxa-3-aza-bicyclo[3.1.0]hex-1(5)-eno[3,2-c]oxazol-4(1aH)-one
(5b)(171mg) をナスフラスコに入れ、室温でTHF (4.6mL)、水(3.0mL) 及びトリフルオロ酢酸(781μL)を加え、80℃で71時間攪拌させた。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (溶離液;エーテル) に付し、6bを136mg得た。
【0060】
[α]D24= +20.31
(CHCl3, c= 1.0)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ: 0.90-0.95 (3H, m), 1.25-1.69 (6H, m), 3.65-3.67 (1H, m),
3.84-3.88 (1H, m), 3.90-3.98 (2H, m), 4.34 (1H, dd, J= 9.7, 3.9Hz), 4.52
(1H, dd, J= 9.2, 7.7Hz)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)δ: 13.99, 22.42, 28.20, 32.81, 61.99, 65.29, 66.85, 80.93,
83.74, 162.45
IR
(neat) cm-1 : 1731, 3377
【0061】
(4) (2S,3S,4S,5S)-2-Butyl-5-(hydroxymethyl)pyrrolidine-3,4-diol
[1f]
(5S,6S,7S,7aS)-5-Butyl-tetrahydro-6,7-dihydroxypyrrolo[1,2-c]oxazol-3-(1H)-one
(6a)(71 mg)をナスフラスコに入れ、室温でエタノール(2.7mL)、水(1.4mL) 及び水酸化ナトリウム(143mg)を加え、100℃で12時間加熱還流させた。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (溶離液;メタノール:水酸化アンモニウム=60:1) に付し、1f(化合物1のL体)を38mg得た。
【0062】
[α]D27= -47.73
(c= 1.0, CH3OH)
1H-NMR(400MHz, CD3OD)δ: 0.93 (3H, t, J= 6.8Hz), 1.36-1.45 (6H, m), 1.71
(1H, m), 2.91 (1H, dd, J= 13.0, 7.7Hz), 3.04 (1H, dd, J= 10.6,
6.3Hz), 3.58-3.63 (2H, m), 3.68 (1H, dd, J= 11.6, 4.3Hz), 3.77
(1H, t, J= 6.8Hz)
13C-NMR(100MHz, CD3OD)δ: 14.33, 23.77, 29.83, 34.45, 62.67, 62.87, 64.56, 79.13,
83.10
IR
(KBr)cm-1: 3285
【0063】
製造例3
製造例2の(1)〜(4)と同様にして以下の化合物を得た。
【化7】

【0064】
(2S,3S,4S,5S)-2-Decyl-5-(hydroxymethyl)pyrrolidine-3,4-diol
(化合物3のL体)
1H-NMR (400 MHz, CD3OD)δ : 0.87-0.91 (3H, m), 1.20-1.50 (18H, m), 1.70 (1H, m), 1.90
(1H, s), 2.91 (1H, m), 3.03 (1H, m), 3.56-3.60 (2H, m), 3.69 (dd, J= 11.6,
4.3Hz), 3.78 (1H, t, J= 6.8Hz)
13C-NMR (100 MHz, CD3OD)δ : 14.45, 23.73, 27.68, 30.47, 30.67, 30.74, 30.82, 33.07,
34.81, 62.71, 62.94, 64.60, 79.18, 83.15.
【0065】
【化8】

【0066】
(2S,3S,4S,5S)-2-(hydroxymethyl)-5-(4-methylpentyl)pyrrolidine-3,4-diol
(化合物4のL体)
1H-NMR (400 MHz, CD3OD)δ : 0.89 (6H, d, J= 6.3Hz), 1.21-1.25 (2H, m),
1.30-1.65 (5H, m), 2.86 (1H, m), 2.97 (1H, dt, J= 6.3, 5.3Hz),
3.56-3.60 (2H, m), 3.66 (dd, J= 11.6, 4.3 Hz), 3.75 (1H, t, J= 6.8Hz)
13C-NMR (100 MHz, CD3OD)δ : 22.99, 22.01, 25.59, 29,12, 35.51, 40.28, 62.74, 63.21,
64.44, 79.55, 83.57
【0067】
【化9】

【0068】
(2S,3S,4S,5S)-2-(hydroxymethyl)-5-(4-phenylbutyl)pyrrolidine-3,4-diol
(化合物5のL体)
1H-NMR (400 MHz, CD3OD)δ : 1.30-1.55 (3H, m), 1.60-1.75 (3H, m), 2,62 (2H, d, J=
7.7Hz), 2.87 (1H, m), 2.99 (1H, m), 3.55-3.61 (2H, m), 3.66 (dd, J= 11.1,
3.9Hz), 3.75 (1H, t, J= 6.8Hz), 7.10-7.17
(3H, m), 7.21-7.25 (2H, m)
13C-NMR (100 MHz, CD3OD)δ : 27.33, 32.81, 34,93, 36.80, 62.74, 63.01, 64.51, 79.38,
83.39, 126.68, 129.28, 129.42, 143.78
【産業上の利用可能性】
【0069】
一般式[1]および一般式[1a]のピロリジン型イミノ糖またはその塩は、グルコシルトランスフェラーゼなどの糖脂質合成酵素の阻害作用を有することから、糖脂質蓄積症、リソソーム病、糖脂質合成量異常に起因するインスリン抵抗性、糖脂質蓄積に関連する疾患、糖脂質合成が異常である癌、細胞表面糖脂質を受容体として使用する微生物によって引き起こされる感染症、グルコシルセラミドおよび/または他のスフィンゴ糖脂質の合成が本質的又は重要である感染症、過剰の糖脂質合成が起こる疾患、神経細胞障害、神経細胞傷害及びマクロファージ動員及び活性化に関連する炎症性疾患若しくは障害の治療または予防に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

「式中、R1は、アリール基で置換されていてもよいアルキル基を; R2は、水素原子、またはイミノ保護基を;R3、R4、R5は、同一または異なって、水素原子またはヒドロキシ保護基を、それぞれ示す。」で表されるピロリジン型イミノ糖またはその塩を含有するグルコシルセラミド合成酵素阻害剤。
【請求項2】
1が、フェニル基が置換していてもよい炭素数1〜12のアルキル基;R2、R3、R4、R5が、水素原子のピロリジン型イミノ糖である請求項1記載のグルコシルセラミド合成酵素阻害剤。
【請求項3】
一般式
【化2】

「式中、R1aは、アリール基または炭素数2〜7のアルキル基を;R2は、水素原子またはイミノ保護基を;R3、R4、R5は、同一または異なって、水素原子またはヒドロキシ保護基を、それぞれ示す。」で表されるピロリジン型イミノ糖またはその塩。
【請求項4】
1aが、フェニル基または炭素数2〜7のアルキル基;R2、R3、R4、R5が、水素原子である請求項3記載のピロリジン型イミノ糖またはその塩。

【公開番号】特開2011−102263(P2011−102263A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257692(P2009−257692)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【Fターム(参考)】