説明

グルコースアッセイにおいてヘマトクリットの調整を行う方法、およびそのための装置

グルコース試験中に、グルコースモニタリング製品を使用してin situヘマトクリット調整を行うための方法および装置、そしてそれらの調整値を使用して血液サンプルのヘマトクリット値を推定し、血液サンプルの異なるヘマトクリットレベルにより引き起こされるアッセイバイアスを低減しまたは除去する方法および装置を提供する。一つの方法は、血液サンプルのグルコース値、Glumを測定する工程;バイオセンサ試薬を使用して血液サンプルの抵抗(Rcell)を測定する工程;バイオセンサ試薬を使用して血漿の抵抗(Rplasma)を測定する工程;関係式RRBC=Rcell-Rplasmaにしたがって血液サンプルの赤血球の計算抵抗値、RRBCを決定する工程;血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcを計算する工程;グルコース値、Glumを調整して調整グルコース値、Gluadjとするかどうかを決定する工程;そして%ヘマトクリット、%.Hctcおよびグルコース値、Glumまたはグルコース調整値、Gluadjのいずれかを使用して、バイオセンサ試薬のいずれかのバイアスを調整する工程;を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、グルコースモニタリング製品におけるグルコースバイアスを修正して血液サンプルのより正確なグルコース測定値をもたらすための、方法および装置に関するものである。特に、本発明は、グルコースモニタリング製品を使用してグルコース試験のあいだにin situヘマトクリット調整を行うための方法および装置、およびその様な調整値を使用して血液サンプルのヘマトクリット値を推定し、血液サンプルの異なるヘマトクリットレベルにより引き起こされるアッセイバイアスを低減しまたは除去するための方法および装置に関するものである。
【0002】
発明の背景
ヘマトクリットは、全血液サンプル中の赤血球(RBC)の容量の%として表現した、RBCの容量である。典型的なヒトについての正常なヘマトクリットの範囲は、約40容量%〜約45容量%である。極端な事例では、ヒトについてのヘマトクリットの範囲が、約20容量%〜約60容量%の範囲である場合もある。
【0003】
血液サンプルのヘマトクリット値を推定するための以前の方法は、全血液サンプル中の赤血球の量に基づいて、全血液サンプルの物理的特性および/または化学的特性に基づいていた。例えば、全血液サンプルのヘマトクリット値は、遠心分離後にRBC容量を測定することにより、伝導性、抵抗性、インピーダンス、および/または赤血球中のNa+カチオンやヘモグロビン中のヘム濃度等のマーカー濃度、および全血液サンプル中のRBC量に基づいて識別することができるその他の特性により、推定された。全血液サンプルのヘマトクリット値は、これまでも臨床的設定または研究室的設定において日常的に測定されてきたが、ヘマトクリット値は、家庭用測定器(home meters)等のグルコースモニタリング製品を用いて、一般的に測定されている訳ではない。
【0004】
グルコースモニタリング製品中での全血液サンプルのヘマトクリット値を測定するために使用することがd家イル装置は、バイオセンサまたはバイオセンサ試薬である。血液サンプルのヘマトクリットレベルが試験される血液サンプルのグルコースレベルに影響を与える可能性があるため、バイオセンサ試薬のヘマトクリットに対する依存性および感度は、グルコースモニタリング製品の正確さおよび品質を決定するために用いられる一つの要因である。
【0005】
現在のバイオセンサ試薬を使用してヘマトクリット値を決定し、そして結果的に全血液サンプルのグルコース値を決定する際の問題の一つは、RBC干渉に関するものである。赤血球は、血液サンプルのグルコースレベルを測定するというバイオセンサ試薬の能力を阻害する血液サンプル中の小粒子である。RBC干渉は、グルコースモニタリング製品のバイオセンサ試薬におけるバイアス測定値またはグルコースバイアスの原因となる。
【0006】
全血液の所定のサンプルについて、血液サンプル中の%グルコースの測定は、サンプルが、20容量%ヘマトクリットのレベルで試験されようがまたは60容量%ヘマトクリットのレベルで試験されようが、変化すべきではない。しかしながら、RBC干渉のため、サンプル中のヘマトクリットレベルに基づいて変化するバイオセンサ試薬により検出されるグルコース測定値において、%バイアスが存在する。血液サンプルのヘマトクリット含量により引き起こされるバイアス測定値は、“ヘマトクリット効果”と一般的に呼ばれている。
【0007】
グルコースモニタリング製品中でのグルコースバイオセンサ試薬がヘマトクリット効果を示すことは、一般的である。例えば、いくつかの現行のグルコースモニタリング製品においては、全血液中約20容量%RBC〜全血液中約60容量%RBCに関するグルコースアッセイバイアスが、一般的に約15容量%〜約20容量%の範囲にある。一般的には、グルコースバイアスが高くなればなるほど、グルコース測定値の正確性は低くなり、そしてグルコースモニタリング製品の性能は悪くなる。対照的に、グルコースバイアスが低くなればなるほど、グルコース測定値の正確さは高まり、そしてグルコースモニタリング製品の性能はよくなる。
【0008】
血液サンプルのヘマトクリット含量により引き起こされるバイアス測定値は、患者にとってよくない作用を有する可能性がある。低いヘマトクリットレベルを有する患者は、グルコースバイアスのために、彼らのグルコース値を非常に高いものとして誤って解釈する可能性があり、そして彼らの高いグルコースレベルを下げようとしてインスリンが必要であると考える。実際のグルコースレベルは、認識されたグルコースレベルほど高くはないため、不必要に多量のインスリンを摂取することにより、患者のグルコースレベルが低下する可能性がある。逆に、高いヘマトクリットレベルを有する患者は、グルコースバイアスのために、彼らのグルコース値を実際には高い場合にも正常として誤って解釈する可能性がある。実際のグルコースレベルは認識されたグルコースレベルほど低くはないため、患者は、必要とされる治療を差し控えるかまたは辞める可能性があり、それにより長期にわたる内科的な合併症が引き起こされる。
【0009】
グルコースモニタリング製品中のグルコースバイオセンサ試薬のグルコースバイアスを決定するための方法の一つは、グルコース測定器(glucometer)を使用して血液サンプルのグルコース値(Glum)を測定し、そしてグルコース含量の参照値(Gluref)を決定することである。Glum値は、家庭用測定器などのグルコースモニタリング製品で測定することができる。Gluref値は、参照方法および参照装置を使用してグルコースモニタリング製品とは独立に決定される。Glurefは、典型的には、臨床的設定および研究室的設定において測定される。グルコースバイアス%は、以下の式1:(Glum- Gluref)×100 / Gluref(式1)に示される関係式にしたがって決定することができる。この方法を使用してグルコースバイアスの%を決定することは、Gluref値がすべての血液サンプルについて測定することができる場合にのみ実用的であるが、しかしながらこのことは、グルコースモニタリング製品のユーザーには典型的にはふさわしいものではない。さらに、グルコースバイアスの%を決定するこの方法は、Gluref値が臨床的設定および研究室的設定において測定されるため、不便である。
【0010】
したがって、ヘマトクリット効果により引き起こされるグルコースモニタリング製品中でのグルコースバイアスを修正しそして最小化するための方法が必要とされている。グルコースバイアスが存在する場合に、患者のサンプルを臨床的設定および研究室的設定に持ち込むことを必要とすることなく、家庭用測定器などのグルコースモニタリング製品において、グルコースバイアスを修正するための方法もまた、必要とされている。バイオセンサ試薬のグルコースバイアスを決定するために、患者が血液サンプルを臨床家または研究室に持ち込む必要なく、その様な調整を行うことができる装置もまた、必要とされている。
【0011】
発明の概要
一般的に、本発明は、グルコースモニタリング製品中で、血液サンプルのグルコースバイアスが存在する場合に、グルコースバイアスを調整するための方法に関する。一つの方法は、血液サンプルのグルコース値、Glumを測定する工程;バイオセンサ試薬を使用して血液サンプルの抵抗性(Rcell)を測定する工程;バイオセンサ試薬を使用して血漿の抵抗(Rplasma)を測定する工程;血液サンプルの赤血球の抵抗計算値(RRBC)を、関係式RRBC = Rcell - Rplasmaにしたがって決定する工程;血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcを計算する工程;グルコース値、Glumを調整して調整グルコース値、Gluadjとするかどうかを決定する工程;そして%ヘマトクリット、%Hctcおよびグルコース値、Glumまたは調整グルコース値、Gluadjのいずれかを使用してバイオセンサ試薬のバイアスが存在する場合にそのバイアスを調整する工程;が関与する。
【0012】
本発明はさらに、グルコースモニタリング製品における血液サンプルのグルコースバイアスを修正する測定器に関する。一つの測定器は、血液サンプルのグルコース値、Glumを測定するための手段;バイオセンサ試薬を使用して血液サンプルの抵抗(Rplasma)を測定するための手段;バイオセンサ試薬を使用して血漿の抵抗(Rplasma)を測定するための手段;血液サンプルの赤血球の抵抗計算値、RRBCを、関係式RRBC = Rcell - Rplasmaにしたがって決定するための手段;血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcを計算するための手段;グルコース値、Glumを調整して調整グルコース値、Gluadjとするかどうかを決定するための手段;そして%ヘマトクリット、%Hctcおよびグルコース値、Glumまたは調整グルコース値、Gluadjのいずれかを使用してバイオセンサ試薬のバイアスが存在する場合にはそのバイアスを調製するための手段、を含む。
【0013】
発明の態様の説明
本発明の態様は、部分的には、グルコースモニタリング製品の性能が、グルコースモニタリング製品におけるバイオセンサ試薬測定のグルコースバイアスが存在する場合に、そのグルコースバイアスを低下させることにより改善される可能性があるという知見に基づくものである。本明細書中に記載される方法および装置を使用することにより、より正確なグルコース測定値をグルコースモニタリング製品中のバイオセンサ試薬測定から得ることが出来ることが見いだされた。より正確なグルコース測定値を得ることにより、患者の血糖状態(glycermic stage)のより正確な評価を得ることができ、そしてその評価を患者の医者に対して容易に報告することができる。
【0014】
本明細書中で使用する場合、用語“グルコースバイアス”は、血液サンプルの患者のグルコースレベルが患者の実際のグルコースレベルとは体系的に異なる、という結論を導く、グルコースアッセイから得たグルコースデータの回収、解析、解釈、または概観における傾向として定義される。
【0015】
本発明の方法および装置は一般的に、血液サンプルの異なるヘマトクリットレベルにより引き起こされるグルコースバイアスを減少させまたは除去させる。一般的に、血液サンプルが低いヘマトクリットレベルを有する場合、バイオセンサ試薬は、低グルコースレベルから高グルコースレベルへと移動するとますます陽性のバイアスを生じる。バイアス効果もまた、ヘマトクリットレベルに依存する。言い換えると、バイアス効果は、30容量%ヘマトクリットレベルでの効果と比較して、20容量%ヘマトクリットレベルにおいて、顕著に高い。逆に、血液サンプルが高いヘマトクリットレベルを有する場合、バイオセンサ試薬は一般的に、低グルコースレベルから高グルコースレベルへと移動するとますます陰性のバイアスを生じる。言い換えると、バイアス効果は、50容量%ヘマトクリットレベルでの効果と比較して、60容量%ヘマトクリットレベルにおいてより高い。本明細書中において記載する方法および装置は、サンプルが低ヘマトクリットレベルを有するかまたは高ヘマトクリットレベルを有するかに依存して、血液サンプルにおいて得られるグルコースバイアスの様々な程度に順応する。
【0016】
本発明は一般的に、血液サンプルのグルコースレベルを決定すること、血漿および血球のあいだの抵抗または抵抗における変化を使用して、血液サンプルのヘマトクリットレベルを決定すること、そしてその後グルコースバイアスが存在する場合には%ヘマトクリットレベル計算値を使用してグルコースバイアスを調整すること、が関与する。本明細書中において記載する方法および装置はまた、バイオセンサ試薬を使用して、血液サンプルのヘマトクリット値を推定する方法を提供する。
【0017】
より具体的には、本発明は、(1)血液サンプルのグルコース値、Glumを測定する工程;(2)バイオセンサ試薬を使用して血液サンプルの抵抗(Rcell)を測定する工程;(3)バイオセンサ試薬を使用して血漿の抵抗(Rplasma)を測定する工程;(4)血液サンプルの抵抗(Rcell)から血漿の抵抗(Rplasma)を差し引くことにより、赤血球の抵抗計算値(RRBC)を決定する工程;(5)%ヘマトクリット、%Hctcを計算する工程;(6)グルコース値、Glumを調整して、血液サンプルの調整グルコース値、Gluadjにするかどうかを決定する工程;そして(7)%ヘマトクリット計算値、%Hctcおよびグルコース値、Glumまたは調整グルコース値、Gluadjのいずれかを使用して、グルコースバイアスにより生じるバイオセンサ試薬のバイアスが存在する場合にそのバイアスについて調整する工程、が含まれる。
【0018】
別の態様において、本発明は、(1)血液サンプルのグルコース値、Glumを測定する工程;(2)バイオセンサ試薬を使用して、血液サンプルのセル抵抗、Rcellを測定する工程;(3)バイオセンサ試薬を使用して、血液サンプルの血漿抵抗、Rplasmaを測定する工程;(4)関係式:RRBC= Rcell - Rplasmaにしたがって、血液サンプルの赤血球の抵抗計算値、RRBCを決定する工程;(5)関係式:%Hctc= -k1×(RRBC2 + k2×RRBC + k3〔ここで、k1は、約+100〜約-100の範囲であり、k2は、約+100〜約-100の範囲であり、そしてk3は、約+100〜約-100の範囲である〕にしたがって、血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcを計算する工程;そして(6)グルコース値、Glumを調整するかどうかを決定する工程;そして(7)必要な場合には、関係式:Gluadj = Glum+ k5にしたがって、%ヘマトクリット、%Hctcおよびグルコース値、Glumを使用して、グルコース値、Glumを調整する工程;を含む。
【0019】
本発明を使用することにより、ヘマトクリットバイアスまたはヘマトクリット効果を伴うことなく血液サンプルのグルコースレベルを得ることができ、そしてその結果、患者の血糖状態(glycermic stage)のより正確な評価を得ることができる。
【0020】
本明細書中に記載される方法および装置を使用することにより、グルコース試験中にin situヘマトクリット調整を行うことができる。電気化学的装置または測定器により使用されるソフトウェア中に本明細書中に記載される式をプログラミングすることにより、in situヘマトクリット調整を行うことができる。あるいは、本明細書中において記載される式から得られた1またはそれ以上のデータを、手動で計算しおよび/または電気化学的装置により使用されるソフトウェア中に手動で入力し、それによりin situヘマトクリット調整を行うことができる。
【0021】
本発明の方法および装置を使用して、グルコースレベルおよびヘマトクリットレベルを同時に測定することができるため、ヘマトクリット効果をグルコース値から推定しそして調整することができる。グルコース調整値は、真のグルコース値をより正確に反映し、そしてしたがって、患者の真の血糖状態(glycermic stage)をより正確に反映する。
【0022】
典型的なバイオセンサ試薬は、電気化学的セルを使用して操作する。電気化学的セルに関して、作用電極(WE)の電位は、開放回路(I=0)での平衡値(E0)である。外部電圧を適用することにより、電流は電気化学的セルを強制的に通過し、そして作用電極の電位は、新しい値(En)にシフトする。参照電極(RE)が外部電流レベルでその電位を変化させないことを考慮すると、平衡値および新しい値(E0およびEn)とのあいだの電位差は、被検溶液中の電位低下、すなわち、iR低下である。この電位低下は、電気化学的セル中の溶液全体の特徴である。
【0023】
本明細書中で使用する場合、用語“バイオセンサ試薬”には、電気化学的反応またはバイオセンサの光学的特性を変化させることによる反応を介して、血液試料中のグルコースを検出することができるいずれの試薬でも含まれる。本発明の態様において使用するための適切なバイオセンサ試薬の例には、DEX(登録商標)、Espirit(登録商標)、およびElite(登録商標)バイオセンサ試薬(Elkhart, IndianaのBayer Corporationから入手可能);Precision(登録商標)バイオセンサ試薬(Abbott Park, IllinoisのMediSenseから入手可能);Accucheck(登録商標)バイオセンサ試薬(Indianapolis, IndianaのRocheから入手可能);およびOneTouch(登録商標)バイオセンサ試薬(Milpitas, CaliforniaのLifescanから入手可能)が含まれるが、これらには限定されない。
【0024】
本発明の方法は、バイオセンサ試薬(たとえば、DEX(登録商標)バイオセンサ試薬)における参照電極と作用電極とのあいだの、血液サンプルの溶液抵抗またはセル抵抗(Rcell)を測定する工程を含む。これは、電位パルス、たとえば、50 mVパルスを適用することにより達成される。電流は、パルス後の2つの時点で測定し、そして初期電流は、パルスを適用した時点に対する指数的外挿により計算される。Rcellは、血漿および血球により与えられる血液抵抗である。血漿および血球の物理的特性における差異のため、血漿および血球は、抵抗における差異を示す。血球が増加する場合(そして血漿が減少する場合)、Rcell値は増加する。血球が減少する場合(そして血漿が増加する場合)、Rcell値は減少する。
【0025】
本発明の方法はさらに、バイオセンサ試薬における参照電極と作用電極とのあいだの血漿抵抗(Rplasma)を測定する工程をさらに含む。これは、電位パルス、たとえば50 mVを適用することにより達成される。この電流は、パルス後の2つの時点で測定され、そして初期電流は、パルスを適用した時点に対する指数的外挿により計算される。Rcellは、初期電流およびパルス振幅からオームの法則を使用して計算される。Rplasmaは、血漿の構成成分(すなわち、タンパク質および電解質)に依存する。Rplasmaは、血漿中には細胞が存在しないため、血液サンプル中のヘマトクリットレベルが変化することによっては変化しない。Rplasma値におけるわずかな変化は、試薬のロットが異なることにより生じる。
【0026】
Rplasma値は、電気化学的装置または測定器により使用されるソフトウェア中に、電気的にプログラミングすることができる。Rplasma値は、バイオセンサ試薬とともに提供される検定チップ上に含まれるかあるいはバイオセンサ試薬上に位置する標識上に含まれていてもよい。あるいは、Rplasma値は、試薬の各ロットについて、製造段階であらかじめ決定することができ、そして電気化学的装置または商業的に利用可能な光学ストリップ(strip)中にユーザーまたは患者により手動で入力されるようにユーザーまたは患者に対して提供することができる。
【0027】
電気化学的装置は、バイオセンサ試薬を読みとる装置である。本発明にしたがってバイオセンサ試薬を読みとるために使用することができる適切な電気化学的装置の例としては、BAS 100B Analyzer(West Lafayette, IndianaのBAS Instrumentsから入手可能);CH Instrument Analyzer(Austin, TexasのCH Instrumentsから入手可能);Cypress Biochemical Workstation(Cypress Systems in Lawrence, Kansasから入手可能);そしてEG&G Biochemical Instrument(Princeton, New Jersey のPrinceton Research Instrumentsから入手可能)が含まれるが、これらには限定されない。
【0028】
本発明の方法は、式2:RRBC= Rcell - Rplasma(式2)に示される関係式にしたがって、バイオセンサ試薬の赤血球の抵抗計算値、RRBCを決定する工程をさらに含む。RRBCは、全血液および血漿のあいだの抵抗差である。RRBCの典型的な値は、約1000であり、そして約0〜約500,000の範囲であっても良い。式2を、電気化学的装置または測定器により使用されるソフトウェア中に電気的にプログラミングし、それによりRRBC値をソフトウェアにより計算することができる。あるいは、RRBC値は、ユーザーまたは患者により計算されてもよく、そして電気化学的装置または商業的に利用可能な光学的ストリップ中に手動で入力することができる。
【0029】
本発明の方法は、式3:%Hctc= -k1×(RRBC2 + k2×RRBC + k3(式3)に示される関係式にしたがって、血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcを計算する工程をさらに含む。全血液のヘマトクリットは、%ヘマトクリット計算値、%Hctcを伴う多項式の関係を有することが見いだされた。具体的には、%Hctcは、第1の定数、k1、に対して式2に由来するRRBCの二乗を掛け、第2の定数、k2、にRRBCを掛けたものを足し、そして第3の定数、k3を足したものと等しい。
【0030】
第1、第2、そして第3の定数、k1、k2、およびk3、は、約+100〜約-100の範囲であってもよい。いくつかの態様において、k1は約+5〜約-5の範囲である。いくつかの態様において、k2は約+10〜約-10の範囲である。いくつかの態様において、k3は約+50〜約-50の範囲である。第1、第2、そして第3の定数、k1、k2、およびk3、は、バイオセンサ試薬の各ロットについて決定することができる。k1値、k2値、およびk3値は、標準曲線-当てはめソフトウェアを使用して決定することができる。具体的には、RRBC値および%Hctc値は、二次多項式数式変換(math conversation)を使用して曲線-当てはめをし、k1値、k2値、およびk3値を決定することができる。
【0031】
k1値、k2値、およびk3値は、製造段階で試薬の各ロットについてあらかじめ決定することができる。k1値、k2値、およびk3値は、電気化学的装置により使用されるソフトウェア中に電気的にプログラミングすることができる。k1値、k2値、およびk3値は、k1値、k2値、およびk3値を電気化学的装置に手動で入力することができるユーザーまたは患者に対しても提供することができる。
【0032】
式3は、電気化学的装置により使用されるソフトウェア中に電気的にプログラミングすることができ、それにより%Hctc値をソフトウェアにより計算させることができる。あるいは、%Hctc値は、ユーザーまたは患者に対して提供されそして電気化学的装置中に手動で入力されるk1値、k2値、およびk3値を使用してユーザーまたは患者により計算させることができる。
【0033】
理想的には、バイオセンサ試薬は、ヘマトクリット効果を何も示さず、そして結果的にグルコースバイアスを何も示さない。バイオセンサ試薬がヘマトクリット効果を何も示さずそしてグルコースバイアスを何も示さない理想的な状況においては、%グルコースバイアス対%ヘマトクリット計算値、%Hctcのプロットは、傾きが0の水平線をなし、そしてデータ点は、線に近接する。しかしながら、一般的には、RBC干渉のため、典型的なバイオセンサ試薬についての%グルコースバイアス対%ヘマトクリット計算値、%Hctcのプロットは、直線ではない曲線をなす。
【0034】
本発明の方法は、全血液サンプルのグルコースレベル、Glumを測定する工程をさらに含む。グルコースレベル測定値、Glumは、当該技術分野において認識される従来法、たとえば、グルコース解析装置、たとえば、YSI 2300 Glucose & Lactate AnalyzerまたはSTAT Plus Glucose & Lactate Analyzer(Yellow Springs, OhioのYSI Incorporatedから入手可能)を使用する方法により決定することができる。
【0035】
本発明の方法は、グルコース測定値、Glumを調整するかどうかを決定する工程、そしてグルコース測定値のマトクリットバイアスを修正してヘマトクリット効果を調整し、そして結果としてグルコースバイアスが存在する場合にグルコースバイアスを調整する工程、をさらに含む。式3から得られる%Hctc値および当該技術分野において認識される従来法により決定されるグルコースレベル測定値、Glumを使用して、調整係数または修正係数(function)を決定する。
【0036】
具体的には、必要であれば、対応する調整をGlumとなるように行い、バイオセンサ試薬のグルコースバイアスについて調整することができる。調整は、式4:Gluadj= Glum + k5(式4)〔ここで、Glumは当該技術分野において認識される従来法を使用して得られるものであり、そしてk5は調整係数である〕において示される関係式を使用して、行う。k5値は、バイオセンサ試薬とともに提供される検定チップ上に含まれるか、またはバイオセンサ試薬上に位置する標識上に含まれてもよい。あるいは、k5値は、家庭用グルコースモニター中にプログラミングするためにユーザーに対して提供することができる。バイオセンサ試薬のグルコースバイアスを調整するために使用される調整係数は、約-50%〜約50%の範囲であってよい。調整は、%ヘマトクリット計算値、%Hctcレベルが40%に等しくない場合にのみ、バイオセンサ試薬のグルコースバイアスについて調整するためにGlumに対して行われる。ヒトについての正常なヘマトクリット範囲は、一般的には、約20%〜約60%の範囲であり、そして40%あたりが中心である。その結果、グルコースセンサを全血液の40%で較正し、そして40%ヘマトクリットでの傾きおよび切片を使用して、グルコース濃度を計算する。したがって、%ヘマトクリット計算値、%Hctcレベルが40%に等しくない場合に、バイオセンサ試薬のグルコースバイアスについて、調整がGlumに対して行われる。
【0037】
Gluadjは、調整を行った際に得られるグルコース調整値またはグルコース修正値を示す。グルコース調整値、Gluadjは、患者の真のグルコース値をより正確に反映し、そしてしたがって、患者の血糖状態(glycermic stage)をより正確に反映する。式4は、電気化学的装置により使用されるソフトウェア中に電気的にプログラミングすることができる。
【0038】
本明細書中に記載される方法および装置により、グルコース測定レベルおよびヘマトクリット測定レベルを、同時に決定することができる。具体的には、コンピュータを、Rcell値およびGlum値を計算するようにプログラミングすることができる。コンピュータを、Rcell値およびGlum値を同時に計算するようにプログラミングすることができる。これらの値から、グルコース調整値、Gluadjを計算することができる。
【0039】
本明細書中に記載される方法および装置により、%ヘマトクリット計算値、%Hctcおよびグルコース値、Glumおよび/またはグルコース調整値、Gluadjを使用して、グルコースバイアスにより生じるバイオセンサ試薬のバイアスが存在する場合、そのバイアスを調整する。
【0040】
本明細書中において記載する方法および装置により、血糖測定器(glucometer)のエンドユーザーが、血液サンプルの真のグルコース値を、臨床的設定または研究室的設定外において、そして臨床的装置または研究室的装置を使用することなく、好都合にそして容易に、決定することができる。本明細書中において記載する方法および装置は、臨床的設定および研究室的設定において血液サンプルの%ヘマトクリットを測定する必要性を不用にする。本発明の方法および装置のエンドユーザーは、患者、医師、または他のヘルスケアの専門家であってもよい。本明細書中に記載された方法により、患者が研究室または医院からの試験結果を待つことなく家庭からグルコース調整値を決定することができるため、患者は、医師に対して、その患者の真のグルコース値をすぐに伝えることができる。
【0041】
本明細書中において記載される方法を、血液サンプルのグルコースレベルを測定するための電気化学的装置またはセルを使用するいずれかのシステムにより使用することができることが企図される。例えば、本発明の方法を、家庭用グルコースモニタリング製品、研究室設定において使用されるグルコース-モニタリング製品、または電気化学的回路設計を利用するいずれかのその他の装置により使用することができることを企図される。
【0042】
本明細書中において記載される本発明により、本発明を実施する際に使用するためのシステムもまた企図される。対象システムは、バイオセンサ試薬および測定器から構成される。測定器は、典型的には、(a)血液サンプルのグルコース値、Glumを測定するための手段;(b)バイオセンサ試薬を使用して血液サンプルの抵抗(Rcell)を測定するための手段;(c)バイオセンサ試薬を使用して血漿の抵抗(Rplasma)を測定するための手段;(d)血液サンプルの抵抗(Rcell)から血漿の抵抗(Rplasma)を差し引くことにより赤血球の計算抵抗値(RRBC)を決定するための手段;(e)血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcを計算するための手段;(f)グルコース値、Glumを調整して調整グルコース値、Gluadjとするかどうかを決定するための手段;そして(g)%ヘマトクリット計算値、%Hctcおよびグルコース値、Glumまたはグルコース調整値、Gluadjを使用してグルコースバイアスにより引き起こされるバイオセンサ試薬のバイアスが存在する場合に、そのバイアスを調整するための手段;が含まれる。
【0043】
測定器にはまた、(a)血液サンプルのグルコース値、Glumを測定するための手段;(b)バイオセンサ試薬を使用して、血液サンプルのセル抵抗、Rcellを測定するための手段;(c)バイオセンサ試薬を使用して、血液サンプルの血漿抵抗、Rplasmaを測定するための手段;(d)血液サンプルの赤血球の計算抵抗値、RRBCを、関係式:RRBC = Rcell - Rplasmaにしたがって決定するための手段;(e)関係式:%Hctc = k1×(RRBC2 + k2×RRBC + k3〔ここで、k1は約+100〜約-100の範囲であり、k2は約+100〜約- 100の範囲であり、そしてk3は約+100〜約-100の範囲である〕にしたがって、血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcを測定するための手段;(f)グルコース値、Glumを調整するかどうかを決定するための手段;そして(g)必要な場合には、関係式:Gluadj = Glum+ k5にしたがって、%ヘマトクリット、%Hctcおよびグルコース値、Glumを使用して、グルコース値、Glumを調整するための手段;を含んでもよい。
【0044】
以下の実施例は、本発明の態様を例示するために提供される。これらの実施例は、本明細書中でそれとは違って記載されたり請求の範囲に記載された場合に、本発明を限定するように解釈されてはならない。
【実施例】
【0045】
実施例1:グルコース測定に対するヘマトクリット効果
本実施例は、グルコースバイオセンサ試薬において観察される、ヘマトクリット効果(すなわち、ヘマトクリット含量に由来するバイアス測定値)を説明する。異なるヘマトクリット含量を有する全血液サンプルにより観察されるグルコース測定レベル中での変化を説明するため、4つに分けた全血液のサンプル(サンプル1〜4)を得、そして一緒に保存した。
【0046】
以下に記載するヘマトクリット調整プロトコルを使用して、サンプル1〜4のヘマトクリット含量をそれぞれ、20容量%、30容量%、50容量%、そして60容量%Hct、に調整した。標的ヘマトクリット含量(すなわち、20容量%、30容量%、50容量%、および60容量%Hct)を得るために、4つに分けた全血液のサンプル(すなわち、サンプル1〜4)のそれぞれに対して添加すべき血漿の容量は、式5:
【0047】
【数1】

【0048】
〔ここで、
P =添加されるか、または全血液サンプルの容量(V)から差し引かれる血漿の容量、
V =全血液サンプルの容量、
Hcto=全血液サンプルの実測ヘマトクリット、
Hctt=全血液サンプルの標的ヘマトクリット
を、それぞれ示す〕に示される関係式を使用して計算された。サンプル1〜4のヘマトクリット含量をそれぞれ20容量%、30容量%、50容量%、そして60容量%Hcttに調整するため、以下の表Aに列挙するP、V、Hcttの容量を使用した。すべてのレベルについての最終容量は、15 mLであった。
【0049】
【表1】

【0050】
したがって、サンプル1に対しては、20容量%の標的ヘマトクリットレベルとするために、7.5 mLの血漿を添加しなければならない;サンプル2に対しては、30容量%の標的ヘマトクリットレベルとするために、5.0 mLの血漿を添加しなければならない;サンプル3からは、50容量%の標的ヘマトクリットレベルとするために、3.0 mLの血漿を除去しなければならない;そして、サンプル4からは、60容量%の標的ヘマトクリットレベルとするために、5.0 mLの血漿を除去しなければならない。
【0051】
グルコースはまた、以下に記載したグルコース添加または強化プロトコルを使用して、4つに分けた全血液のサンプル(サンプル1〜4)のそれぞれに対して、添加された。サンプル1〜4のぞれぞれに対して、標的全血液グルコース濃度を、20 mg/dL、50 mg/dL、100 mg/dL、200 mg/dL、および600 mg/dLに設定した。サンプル1〜4のぞれぞれを等分し、それぞれを20 mg/dL、50 mg/dL、100 mg/dL、200 mg/dL、および600 mg/dLの血中グルコース濃度に調整した。
【0052】
所望の血中グルコース濃度を得るために添加する適切な容量の25%グルコースストックを決定するため、以下の式(式6):D = A(Glut - Glui / Glustock(式6)〔ここで、
A =グルコースで強化されまたは増加されるべき血液サンプルの容量(mL)、
Glut= グルコースストック溶液の添加により達成されるべき標的血中グルコース濃度(mg/dL)、
Glui= 初期血中グルコース濃度(mg/dL)、
Glustock= ストック溶液の血中グルコース濃度(25 g/dL)、
D = 標的血中グルコース濃度を得るためにサンプルに添加される25%グルコースストック溶液の容量(μL)
を、それぞれ示す〕を使用した。
【0053】
標的全血液グルコース濃度のそれぞれでのA値、Glut値、Glui値、Glustock値、およびD値は、以下の表Bにおいて記載する。
【0054】
【表2】

【0055】
25%グルコースストック溶液の適切な容量をサンプル1〜4のそれぞれにピペットで入れ、標的血中グルコース濃度を得た。したがって、サンプルAに対しては、20 mg/dLの標的血中グルコース濃度とするために、1.2μLの25%グルコースストック溶液を添加しなければならない;サンプルBに対しては、50 mg/dLの標的血中グルコース濃度とするために、4.2μLの25%グルコースストック溶液を添加しなければならない;サンプルCに対しては、100 mg/dLの標的血中グルコース濃度とするために、10.0μLの25%グルコースストック溶液を添加しなければならない;サンプルDに対しては、200 mg/dLの標的血中グルコース濃度とするために、19.2μLの25%グルコースストック溶液を添加しなければならない;そしてサンプルEに対しては、600 mg/dLの標的血中グルコース濃度とするために、59.2μLの25%グルコースストック溶液を添加しなければならない。
【0056】
標的全血液グルコース濃度(すなわち、上述したグルコース添加プロトコルにより得られる20 mg/dL、50 mg/dL、100 mg/dL、200 mg/dL、および600 mg/dLの標的グルコースレベル(Glut))のそれぞれにおけるサンプル1〜4のグルコースレベル(mg/dL)は、2ロットのDEX(登録商標)バイオセンサ試薬、ロットAおよびロットBを使用して測定した。上述したグルコース添加プロトコルを使用して得られた標的全血液グルコース濃度(Glut)を、以下の表Cに示す。様々な%ヘマトクリット測定レベル(%Hctm)でのDEX(登録商標)バイオセンサ試薬のロットAおよびロットBから得られたサンプル1〜4のグルコース測定値(Glum)もまた、以下の表Cに示される。%Hctm値は、ソフトウェアにより、またはユーザーまたは患者により計算することができ、そして電気化学的装置に手動で入力することができる。
【0057】
DEX(登録商標)バイオセンサ試薬のロットは、40容量%Hctがヒトの血液サンプルについて%ヘマトクリット予想値(容量%Hct)であるため、40容量%Hctに対して調整した標準曲線を使用してプログラミングされた。
【0058】
【表3】

【0059】
グルコース測定レベル、Glumは、理論的にはグルコース添加プロトコルを使用して得られた標的添加グルコースレベル、Glutと同一でなければならないが、グルコース測定レベル、Glumは、所定サンプルのヘマトクリット測定レベル、%Hctmに依存して、表Cにおいて示されるように変化した。サンプル1〜4についてロットAおよびロットBから得られた様々な%ヘマトクリット測定値(%Hctm)レベルで得られた%グルコースバイアス測定値(すなわち、グルコース測定値レベル、Glumと標的添加グルコースレベル、Glutとのあいだの差異)を、以下の表Dに示す。
【0060】
【表4】

【0061】
表Cおよび表Dに示されるように、より低いヘマトクリットレベルを含有するサンプルは、一般的に、添加されるグルコースレベルが上昇するにつれて、ますます陽性のバイアスをもたらした。この効果は、例えば、30容量%Hctの場合と比較して、20容量%Hctではより顕著であった。表Cおよび表Dにおいて示されるように、より高いヘマトクリットレベルを含有するサンプルは、一般的に添加されるグルコースレベルが上昇するにつれて、ますます陰性のグルコースバイアスをもたらした。この効果は、例えば、50容量%Hctの場合と比較して、60容量%Hctではより顕著であった。
【0062】
%グルコースバイアスを、上述の表Dから得られた平均化ヘマトクリットレベルでの600 mg/dLグルコース濃度で、平均%ヘマトクリット測定値、%Hctmに対してプロットした。言い換えると、表Eにおいて示される値を、図1においてプロットした。
【0063】
【表5】

【0064】
実施例2:グルコースに対する、ヘマトクリット調整係数の誘導
この実施例は、上述した式3の一態様についての、誘導プロセスを説明する。6種類の全血液サンプルを得て、サンプル5〜10に分割した。上述の実施例1において示されるヘマトクリット調整プロトコルを使用して、サンプル5〜10のヘマトクリット含量を、それぞれ20容量%、30容量%、40容量%、45容量%、50容量%、および60容量%Hctに調整した(すなわち、%ヘマトクリット測定値、%Hctmレベル)。%ヘマトクリット測定値、%Hctmレベル(すなわち、20容量%、30容量%、40容量%、45容量%、50容量%、および60容量%Hctmレベル)を、Compur Ml 100マイクロ遠心器上での測定により得た。
【0065】
3種のロットのDEX(登録商標)バイオセンサ試薬(ロットC、ロットD、およびロットE)およびBAS 100B Analyzer 電気化学的装置を使用して、サンプル5〜10の血液サンプルの抵抗(Rcell)および血漿の抵抗(Rplasma)を測定した。作用電極の試験電位は400 mVであり、そしてグルコース濃度は各実行について約ゼロであった。様々な%ヘマトクリット測定値(%Hctm)レベルでのロットC〜ロットEに関するRcell値は、以下の表Fに示される。
【0066】
【表6】

【0067】
ロットC〜ロットEの4つの複製物についてのRplasma値は、以下の表Gに示す。Rplasma値は、Rcell値によって観察された様に、様々な%ヘマトクリット測定値(%Hctm)レベルによっては変化しなかった。
【0068】
【表7】

【0069】
ロットC〜ロットEのそれぞれの4つの複製物についてのRplasmaの平均値は、939で計算された。
表Fに由来するRcell値および表Gにおける複製物に由来する939の平均Rplasma値を使用して、ロットC〜ロットEについてのサンプル5〜10についてのRRBC値は、式2:RRBC=Rcell-Rplasma(式2)を使用して計算した。式2の計算から得られた様々な%ヘマトクリット測定値(%Hctm)レベルでのRRBC値を、以下の表Hに示す。
【0070】
【表8】

【0071】
RRBC値、%ヘマトクリット測定値(%Hctm)レベル(すなわち、それぞれ、20容量%、30容量%、40容量%、45容量%、50容量%、および60容量%Hct)、および曲線-当てはめソフトウェアを使用して、式3におけるk1値、k2値、およびk3値を決定した。具体的には、RRBC値および%Hctmを、Advances Graphics Software, Inc.により製造されたSlide Write Proソフトウェアを介して、二次多項式数式変換(math conversion)を使用して曲線に当てはめた。RRBC値を、X軸上にプロットし、%Hctm値をY軸上にプロットした。曲線当てはめソフトウェアにより得たk1値、k2値、およびk3値を、以下の表Iに示す。
【0072】
【表9】

【0073】
次いで、ロットC〜ロットEについてのサンプル5〜10に関する%ヘマトクリット計算値、%Hctc、レベルを、式7:%Hctc = -0-000397・(RRBC2 + 0.285・RRBC + 9.63(式7)を使用して計算した。式7を使用して様々な%ヘマトクリット測定レベルで得た%ヘマトクリット計算値、%Hctレベルは、以下の表Jに示す。
【0074】
【表10】

【0075】
%ヘマトクリットレベル測定値(%Hctm)とヘマトクリット計算値レベル(%Hctc))との間の相関曲線を調製し、そして図2に示す。図2において示されるように、傾きは1.72で、切片は26.3であり、一方R2は0.08311であった。R2は、プロットした曲線の直線性の程度を反映する相関係数である。
【0076】
実施例3:調整係数の決定
この実施例は、ヘマトクリット修正係数を決定する際、そしてヘマトクリット修正を行う際の、ヘマトクリット修正についての必要性を決定することに関する方法を説明する。この方法は、家庭用グルコースモニターのユーザーが電気化学的センサに対して血液を適用することから始める。家庭用グルコースモニターは、バイオセンサ試薬を使用して、血液サンプルの抵抗、Rcellを電気化学的に決定する。具体的なセンサロットについての血漿の抵抗、Rplasmaは、家庭用グルコースモニターの出荷前に、製造者がバイオセンサ試薬を使用することにより、電気化学的に決定される。Rplasma値は、検定チップまたは標識中で保存され、ユーザーに対して家庭用グルコースモニターにプログラミングするために提供される。
【0077】
Rcell値およびRplasma値を使用して、赤血球の抵抗計算値、RRBCは家庭用グルコースモニター中で数学的に決定される。いったんRRBCが決定されれば、血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcは、上述した式3を使用する家庭用グルコースモニター中で決定される。k1値、k2値、およびk3値は、標準曲線-当てはめソフトウェアを使用して、製造者により決定される。k1値、k2値、およびk3値は、家庭用グルコースモニターにより使用されるソフトウェア中に製造者により電気的にプログラミングされるか、または家庭用グルコースモニター中にプログラミングするためまたは手動で入力するためにユーザーに対して提供される。
【0078】
グルコース測定レベル、Glumは、当該技術分野において認識される従来法、例えばグルコース解析装置を使用する方法、により決定される。いったん%Hctcが決定されると、k5値を図1のグラフから決定することができる。図1から得た値を、バイオセンサ試薬により提供される検定チップ上に保存してもよく、またはバイオセンサ試薬上に位置する標識上に保存してもよく、または家庭用グルコースモニター中にプログラミングするためにユーザーに対して提供してもよい。
【0079】
%グルコースバイアス計算値もまた、検定チップまたは標識中に予め決定しそしてプログラミングされる。この%グルコースバイアスの例をグラフ化し、図1に示す。以下は、計算の例である。
【0080】
【表11】

【0081】
RRBC値は式2から得て、一方Gluadj値は上述した式4から得た。これは、様々なグルコースレベルおよびヘマトクリットレベルでの%グルコースバイアスを決定することにより、研究室内で決定される。この決定の例は、表C(実際のグルコース値、Glum)および表D(予測値から得た%グルコースバイアス)に示される。これらの%グルコースバイアス値を図1に示す様にプロットする。図1から生成されたより高いヘマトクリットのために添加される必要があるかまたはより低いヘマトクリットのために差し引かれる必要があるこれらの値は、それぞれの試薬ロットについて、検定チップまたは標識中に電気的に保存される。
【0082】
いったん%ヘマトクリット計算値、%Hctcレベルが決定されると、そして%ヘマトクリット計算値、%Hctcレベルが40%に等しくない場合、保存された%グルコースバイアス値(図1由来)が電気的に取り出され、そして家庭用グルコースモニターのディスプレイスクリーン上に正しいグルコース値を表示するために使用される。ヘマトクリット修正の必要性を決定すること、ヘマトクリット修正係数を決定すること、そしてヘマトクリット修正を行うことが含まれる方法は、家庭用グルコース測定器のユーザーの目には触れない。
【0083】
本発明は、多数の態様により記載されるが、本発明の範囲は、具体的な態様により限定されることを意図しない。様々な修正、変更、および変化は、添付された請求の範囲に定義される本発明の精神および範囲からはずれることなく、上述した記載から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0084】
本発明の上述のおよびその他の利点は、以下の詳細な説明を読むことにより、そして図面を参照することにより、明らかになろう。
【図1】図1は、血液サンプルについて計算した、%グルコースバイアス対%ヘマトクリットを示すプロットである。
【図2】図2は、一連の全血液サンプルについての。%ヘマトクリット計算値(%Hctc)対%ヘマトクリット測定値(%Hctm)を示すプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコースモニタリング製品中の血液サンプルのグルコースバイアスが存在する場合に、グルコースバイアスを調整する方法であって:
(a)血液サンプルのグルコース値、Glumを測定する工程;
(b)バイオセンサ試薬を使用して、血液サンプルの抵抗(Rcell)を測定する工程;
(c)バイオセンサ試薬を使用して、血漿の抵抗(Rplasma)を測定する工程;
(d)血液サンプルの赤血球の抵抗計算値、RRBCを、関係式:RRBC = Rcell- Rplasmaにしたがって、決定する工程;
(e)血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcを計算する工程;
(f)グルコース値、Glumを調整して、調整グルコース値、Gluadjにするかどうかを決定する工程;そして
(g)工程(a)または工程(f)のいずれかに由来する%ヘマトクリット、%Hctcそしてグルコース値を使用して、バイオセンサ試薬のバイアスが存在する場合にそのバイオセンサ試薬のバイアスに合わせて調整する工程;
を含む、前記方法。
【請求項2】
血液サンプルのグルコース値、Glumを測定する工程が、研究室用グルコース解析装置を使用することに関する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
RRBC値および%Hctc値を手動で計算する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
RRBC値および%Hctc値をグルコースモニタリング製品により使用されるソフトウェアにより決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Rcellを測定する工程が、バイオセンサ試薬における参照電極と作用電極とのあいだの血液サンプルのセル抵抗を測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Rplasma値は、グルコースモニタリング製品により使用されるソフトウェア中に電気的にプログラミングされている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Rplasma値が、バイオセンサ試薬が提供される検定チップ(calibration chip)上に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Rplasma値が、バイオセンサ試薬上に位置する標識上に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
Rplasmaを測定する工程が、グルコースモニタリング製品中にユーザーが予め測定された値を入力する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
RRBC値が、グルコースモニタリング製品により使用されるソフトウェアにより計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
RRBC値が、手動で計算されそしてグルコースモニタリング製品中に入力される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
%Hctc値が、グルコースモニタリング製品により使用されるソフトウェアにより計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
%Hctc値が、手動で計算されそしてグルコースモニタリング製品中に入力される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
サンプルが全血液サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
グルコースモニタリング製品中の血液サンプルのグルコースバイアスが存在する場合に、グルコースバイアスを調整する方法であって:
血液サンプルのグルコース値、Glumを測定する工程;バイオセンサ試薬を使用して血液サンプルのセル抵抗、Rcellを測定する工程;
バイオセンサ試薬を使用して血液サンプルの血漿抵抗、Rplasmaを測定する工程;
血液サンプルの赤血球の抵抗計算値、RRBCを、関係式:RRBC = Rcell - Rplasmaにしたがって決定する工程;
関係式:%Hctc=-k1×(RRBc2 + k2×RRBc + k3〔ここで、k1は、約+100〜約-100の範囲であり、k2は約+100〜約-100の範囲であり、そしてk3は約+100〜約-100の範囲である〕にしたがって、血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctを計算する工程;
グルコース値、Glumを調整するかどうかを決定する工程;そして、
必要である場合、グルコース値、Glumを%ヘマトクリット、%Hctcおよびグルコース値Glumを使用して、関係式:Gluadj = Glum + k5にしたがって調整する工程;
を含む、前記方法。
【請求項16】
血液サンプルのグルコース値、Glumを測定する工程が、研究室用グルコース解析装置を使用することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
RRBC値および%Hctc値が、手動で計算される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
RRBC値および%Hctc値が、グルコースモニタリング製品により使用されるソフトウェアにより計算される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
Rcellを測定する工程が、バイオセンサ試薬における参照電極と作用電極との間での血液サンプルのセル抵抗を測定する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
Rplasma値が、グルコースモニタリング製品により使用されるソフトウェア中に電気的にプログラミングされている、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
Rplasma値が、バイオセンサ試薬が提供される検定チップ(calibration chip)上に含まれる、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
Rplasma値が、バイオセンサ試薬上に位置する標識上に含まれる、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
Rplasmaを測定する工程が、グルコースモニタリング製品中にユーザーが予め測定された値を入力する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
RRBC値が、グルコースモニタリング製品により使用されるソフトウェアにより計算される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
RRBC値が、手動で計算されそしてグルコースモニタリング製品中に入力される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
%Hctc値が、グルコースモニタリング製品により使用されるソフトウェアにより計算される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
%Hctc値が、手動で計算されそしてグルコースモニタリング製品中に入力される、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
サンプルが全血液サンプルである、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
グルコースモニタリング製品中の血液サンプルのグルコースバイアスを修正するための測定器であって、以下の手段:
血液サンプルのグルコース値、Glumを測定するための手段;
バイオセンサ試薬を使用して血液サンプルの抵抗(Rcell)を測定するための手段;
バイオセンサ試薬を使用して血漿の抵抗(Rplasma)を測定するための手段;
血液サンプルの赤血球の抵抗計算値、RRBCを、関係式:RRBC = Rcell - Rplasmaにしたがって決定するための手段;
血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcを計算するための手段;
グルコース値、Glumを調整して調整グルコース値、Gluadjとするかどうかを決定するための手段;そして
%ヘマトクリット、%Hctcおよびグルコース値、Glumまたは調整グルコース値、Gluadjのいずれかを使用して、バイオセンサ試薬のバイアスが存在する場合にバイアスを調整するための手段;
を含む、前記測定器。
【請求項30】
グルコースモニタリング製品中の血液サンプルのグルコースバイアスを修正するための測定器であって、以下の手段:
血液サンプルのグルコース値、Glumを測定するための手段;
バイオセンサ試薬を使用して血液サンプルのセル抵抗、Rcellを測定するための手段;
バイオセンサ試薬を使用して血液サンプルの血漿抵抗、Rplasmaを測定するための手段;
血液サンプルの赤血球の抵抗計算値、RRBCを、関係式:RRBC = Rcell - Rplasmaにしたがって決定するための手段;
関係式:%Hctc= -k1×(RRBC2 + k2×RRBC + k3〔ここで、k1は約+100〜約-100の範囲であり、k2は約+100〜約- 100の範囲であり、そしてk3は約+ 100〜約- 100の範囲である〕にしたがって、血液サンプルの%ヘマトクリット、%Hctcを計算するための手段;
グルコース値、Glumを調整するかどうかを決定するための手段;そして、
必要な場合、関係式:Gluadj= Glum + k5にしたがって%ヘマトクリット、%Hctcおよびグルコース値Glumを使用して、グルコース値、Glumを調整する手段;
を含む測定器。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−537457(P2007−537457A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513448(P2007−513448)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/017014
【国際公開番号】WO2005/114163
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】