説明

グルコース利用を刺激する化合物および使用方法

本発明は、心筋細胞においてグルコース酸化速度を刺激する式(I)の新規化合物を提供する。式(I)、式中、W、Cyc、p、Y、X、Z、R、R1、R2、R3、R4、I、mおよびnは、本明細書において式(I)について定義の通りである。本発明はまた、グルコース酸化を刺激できる化合物を含む薬学的組成物、心筋細胞においてグルコース酸化速度を高める方法および心筋虚血の治療方法に関する。本発明はさらに、本発明の薬学的組成物を含むキットに関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の情報
本願は、2005年2月23日に出願された米国一部継続出願番号11/064,713からの優先権を主張する。この一部継続出願の全体は、参考として本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、心筋細胞においてグルコース酸化速度を刺激する新規化合物に関する。本発明はまた、グルコース酸化を刺激できる化合物を含む薬学的組成物、心筋細胞においてグルコース酸化速度を高める方法および心筋虚血の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
心筋虚血は、狭心症、急性心筋梗塞または心臓手術の間という環境において生じる、一般的な臨床病理である。心筋虚血は、その合併症が西欧社会における死亡および罹患の主要な原因である大きな臨床上の問題である。
【0004】
虚血の間および虚血後の双方でグルコース酸化を刺激することが、虚血心に利益をもたらし得るということが報告されている。Br J Pharmacol 128:197−205,1999、Am J Physiol 275:H1533−41,1998、Biochimica et Biophysica Acta 1225:191−9,1994、Pediatric Research 34:735−41,1993、Journal of Biological Chemistry 270:17513−20,1995、Biochimica et Biophysica Acta 1301:67−75,1996、Am J Cardiol 80:11A−16A,1997、Molecular & Cellular Biochemistry 88:175−9,1989、Circ Res 65:378−87,1989、Circ Res 66:546−53,1990、American Journal of Physiology 259:H1079−85,1990、American Journal of Physiology 261:H1053−9,1991、Am J Physiol Heart Circ Physiol 280:H1762−9.,2001、J Am Coll Cardiol 36:1378−85.,2000。
【0005】
心臓は、収縮筋の高いエネルギー需要に応じるために、一定で、かつ、豊富な自由エネルギー担体、アデノシン三リン酸(ATP)の供給を実現しなくてはならない。このエネルギーは、種々の炭素基質、例えば、グルコースなどの炭水化物の代謝によって産生される。脂肪酸の代謝が、心臓のためのエネルギーのその他の主要な供給源である。
【0006】
心臓におけるグルコース代謝は、2つの重要な経路、すわわち、解糖およびグルコース酸化からなる。
【0007】
虚血(例えば、狭心症、心筋梗塞または心臓手術によって引き起こされるもの)の間、血漿における循環脂肪酸のレベルが劇的に高まり得ることがわかっている。Am Heart J 128:61−7,1994。結果として、心臓は、虚血および再潅流の間、高レベルの脂肪酸にさらされ、このことが、酸化基質として、グルコースを上回る脂肪酸の優先的使用をもたらす。この、ATPの主要な供給源としての脂肪酸への過度の依存が、脂肪酸誘導性虚血性障害の一因となることがさらに報告されている。この知見が、心臓を脂肪酸誘導性虚血性障害から保護するために、基質利用を切り替えてグルコースに戻すことに向けられた多数のアプローチの口火となった。J Cardiovasc Pharmacol 31:336−44.,1998、Am Heart J 134:841−55.,1997、Am J Physiol 273:H2170−7.,1997,Cardiovasc Drugs Ther 14:615−23.,2000、Cardiovasc Res 39:381−92.,1998,Am Heart J 139:S115−9.,2000、Coron Artery Dis 12:S8−11.,2001、Am J Cardiol 82:14K−17K.,1998、Molecular & Cellular Biochemistry 172:137−47,1997、Circulation 95:313−5.,1997、Gen Pharmacol 30:639−45.,1998、Am J Cardiol 82:42K− 49K.,1998、Coron Artery Dis 12:S29−33.,2001、Coron Artery Dis 12:S3−7.,2001、J Nucl Med 38:1515−21.,1997。心筋エネルギー代謝を操作するために用いられる現在のアプローチは、グルコース代謝を直接的または間接的(すなわち、脂肪酸代謝を阻害すること)のいずれかで刺激することに関係している。
【0008】
高い脂肪酸酸化速度はグルコース酸化を著しく減少させるので、グルコース酸化の増大への1つのアプローチは、脂肪酸酸化を阻害することである。これは虚血の間および虚血後の双方で有効であることが証明されており、この薬理学的アプローチは臨床用途がわかり始めている。脂肪酸酸化を阻害するよう設計された、いくつかの薬理学的物質が最近開発されたが、直接β酸化阻害剤、トリメタジジンが最初の広く用いられた抗狭心症薬であり、これはエネルギー代謝の最適化によるものであり得る作用機序を有している(非特許文献1)。
【0009】
トリメタジジンは、心臓において、主として、脂肪酸酸化を阻害し、それによって、グルコース酸化を刺激することによって作用すると報告されている。
【0010】
脂肪酸からグルコース酸化にエネルギー代謝を切り替えると報告されている第2の臨床上有効な物質として、ラノラジンがある。この物質は、脂肪酸酸化の阻害に続発してグルコース酸化を刺激すると報告されている(非特許文献2)。
【0011】
また、虚血の間および虚血後の機械的機能に対する脂肪酸の有害な作用は、グルコース酸化を直接高める物質によって弱めることができる。多数の実験的研究によって、虚血後(脂肪酸の支出時)にジクロロアセテート(DCA)を用いることによるグルコース酸化の刺激が、虚血心に利益をもたらし得ると報告されている。非特許文献3。DCAはグルコース酸化を刺激するよう設計された有効な化合物であるが、生物学的半減期が短い。
【非特許文献1】Circulation Research.86:580−8,2000
【非特許文献2】Circulation93:135−42.,1996
【非特許文献3】Am Heart J 134:841−55,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、新しい種類の化合物を開発し、グルコース酸化を刺激でき、長い生物学的寿命を有し、心筋虚血の治療または予防において有効である化合物を同定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
一態様では、本発明は次式(I)によって表される新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグを対象とする
【0014】
【化28】

[式中、
(a)WはC〜Cアルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されるアリール、必要に応じて置換されるアラルキルまたは必要に応じて置換されるアラルケニルであり、
(b)CycはCまたはCシクロアルキルであり、
(c)pは0〜4の整数であり、
(d)mは1または2であり、
(e)YはO、SまたはNRであり、
(f)mが1である場合で、pが0であり、YがOであり、かつ、nが0でない場合は、Zは(シクロ)アルキカルボニル(alkycarbonyl)であり、または、mが1である場合で、pが0であり、YがOであり、かつ、nが0である場合は、Zは複素環アルキルであり、
(g)XはO、S、NRまたはCRであり、
(h)RはH、アルキル、アリールまたは
【0015】
【化29】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
(i)ZはH、アルキル、複素環アルキル、シクロアルキル、アリールまたは必要に応じて置換されるC〜Cアルキルカルボニルまたは
【0016】
【化30】

であり、
XがNRである場合には、Rは
【0017】
【化31】

であり、またはXがNRである場合には、RおよびZはNと一緒になって窒素含有複素環式環を形成し得、
(j)RはH、アルキルまたはアリールであり、
(k)RはH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
(l)RおよびRは、独立に、H、アルキルもしくはアリールであるか、または、XがCRである場合には、RおよびRは炭素原子と一緒になって、複素環式環を形成し得、
(m)nは1〜10の整数である]。
【0018】
代替の好ましい一態様では、本発明は、次式(IIS)によって表される新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグを対象とする:
【0019】
【化32】

[式中、(a)WはC〜Cアルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されるアリール、必要に応じて置換されるアラルキルまたは必要に応じて置換されるアラルケニルであり、(b)CycはCまたはCシクロアルキルであり、(c)pは1〜4の整数である]。いずれか特定の作用機序によって拘束されたいとは思わないが、式(IIS)の化合物は、インビボでCoAでエステル化されると考えられる。
【0020】
一実施形態によれば、次式(IIIa)によって表される新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される
【0021】
【化33】

[式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【0022】
【化34】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0023】
【化35】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【0024】
【化36】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0025】
代替実施形態によれば、次式(IIIb)によって表される新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される
【0026】
【化37】

[式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキルまたはアリールであり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルであり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0027】
さらなる実施形態では、次式(IIIc)によって表される新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される
【0028】
【化38】

[式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはO、SまたはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【0029】
【化39】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
Zは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0030】
【化40】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【0031】
【化41】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0032】
もう1つの実施形態は、次式(IIId)によって表される化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグを提供する
【0033】
【化42】

[式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはOであり、
XはNRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【0034】
【化43】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0035】
【化44】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【0036】
【化45】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0037】
さらなる実施形態は、次式(IIIe)によって表される新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグを対象とする
【0038】
【化46】

[式中、
Wはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
pは1であり、
YはO、SまたはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【0039】
【化47】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0040】
【化48】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【0041】
【化49】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0042】
一態様によれば、本発明はさらに、温血動物の心筋またはその他の種類の細胞、組織または器官、特に高グルコース代謝できるもの(例えば、心臓およびその他の筋肉)におけるグルコース利用を増大させるか、または改善する方法を対象とする。本方法は、細胞、組織または器官を、次式(IIS)によって表される、置換または非置換シクロプロパンカルボン酸もしくはシクロブタンカルボチオ酸
【0043】
【化50】

[式中、W、Cycおよびpは式(IIS)に関連して定義されるとおりである]または式(I)のシクロプロパンカルボン酸もしくはシクロブタンカルボン酸誘導体または式(IIIa)〜(IIIe)のいずれかで処理するステップを含む。
【0044】
代替態様によれば、本発明はまた、式(IIS)、式(I)または式(IIIa)〜(IIIe)のいずれかの化合物と、適した薬剤担体、賦形剤もしくは増量剤とを含む薬学的組成物を対象とする。
【0045】
さらなる態様によれば、本発明は、細胞グルコース利用を増大させることによって効果的に治療できる生理学的状態または障害を治療する方法を対象とする。一実施形態によれば、このような方法は、このような治療を必要とする患者に、式(IIS)の置換または非置換シクロプロパンカルボン酸もしくはシクロブタンカルボチオ酸または式(I)および式(IIIa)〜(IIIe)のいずれかのシクロプロパンカルボン酸もしくはシクロブタンカルボン酸誘導体を含む薬学的組成物の有効量を投与するステップを含む。
【0046】
本発明はさらに、本発明の薬学的組成物を含むキットを対象とする。
【0047】
本発明の方法は、温血動物被験体、例えば、哺乳類、例えば、ヒト、霊長類などを治療するために適用できる。
【0048】
さらなる実施形態は、詳細な説明から、また特許請求の範囲から明らかとなる。
定義
本発明に従って、また、本明細書において、以下の用語は、別に明記されない限り、以下の意味を有するよう定義される。
【0049】
用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの二重結合を有する不飽和脂肪族基を指す。
【0050】
用語「アルキル」とは、直鎖、分岐鎖および環状(例えば、シクロアルキルおよび多環式アルキル)基を含む飽和脂肪族基を指す。
【0051】
用語「アルコキシ」および「アルコキシル」とは、式、R−O−(式中、Rはアルキル基である)を有する基を指す。
【0052】
用語「アルコキシカルボニル」とは、−C(O)OR(式中、Rはアルキルである)を指す。
【0053】
用語「アラルケニル」とは、アリール基で置換されたアルケニル基を指す。アルケニル基は2〜約6個の炭素原子を有することが好ましい。
【0054】
用語「アラルキル」とは、アリール基で置換されたアルキル基を指す。適したアラルキル基としては、ベンジル、フェネチルなどが挙げられ、そのすべては必要に応じて置換される。アルキル基は1〜約6個の炭素原子を有することが好ましい。
【0055】
用語「アリール」とは、共役π電子系を有する少なくとも1つの環を有する芳香族基を指し、これとしては、炭素環式アリール、複素環式アリールおよびビアリール基が挙げられ、そのすべては必要に応じて、置換され得る。
【0056】
用語「アリールオキシ」とは、式、R−O−(式中、Rはアリール基である)を有する基を指す。
【0057】
用語「アラルコキシ」とは、式、R−O−(式中、Rはアラルキル基である)を有する基を指す。
【0058】
「ビアリール」とは、フェニル環の接着点にオルト、メタまたはパラで、本明細書において定義される炭素環式または複素環式アリールによって置換されたフェニルを指す。
【0059】
「ブライン」とは、塩化ナトリウムの飽和水溶液を指す。
【0060】
「炭素環式アリール」とは、芳香環上の環原子が炭素原子である芳香族基を指す。炭素環式アリール基としては、単環式炭素環式アリール基およびナフチル基が挙げられ、そのすべては必要に応じて置換される。適した炭素環式アリール基としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。適した置換炭素環式アリール基としては、1個〜2個の置換基によって置換されたインデンおよびフェニルが挙げられ、このようなものとしては、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ニトロおよびシアノが有利である。置換ナフチルとは、上記の式(I)に関連して定義されるY1、Y2および/またはY3によって置換された、ナフチル、より好ましくは、1−または2−ナフチルを指す。
【0061】
「シクロアルケニル」とは、環状アルケニル基を指す。適したシクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。
【0062】
「シクロアルキル」とは、少なくとも1個の環を有する環状アルキル基を指し、これとしては多環式基、例えば、縮合環環状アルキル基および架橋シクロアルキル基が挙げられる。適したシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘプチルおよびアダマンチルが挙げられる。
【0063】
「シクロヘキシルメチル」とは、CHと結合しているシクロヘキシル基を指す。
【0064】
「ジオール」とは、少なくとも2個のヒドロキシ(−OH)官能基を有する化学種を指す。ジオールは3個以上のヒドロキシ基を含み得る。「隣接ジオール」とは、例えば、ピナンジオール中に見られる、2個のヒドロキシ基が隣接する炭素上にあるものである。
【0065】
「縮合炭素環式」とは、芳香環および非芳香環の両方を有する多環式縮合炭素環式環を指す。適した縮合炭素環式環としては、フルオレニル、テトラリンなどが挙げられる。
【0066】
「縮合炭素環式アルキル」とは、縮合炭素環式環部分で置換されたアルキル基を指し、芳香環および非芳香環の両方を含む多環式縮合炭素環式環が好ましい。適した縮合炭素環式アルキル基としては、フルオレニルメチルなどが挙げられる。
【0067】
用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指す。
【0068】
「へテロアラルケニル」とは、ヘテロアリールで置換されたアルケニル基を指し、これとしては、「Handbook of Chemistry and Physics」,49th edition,1968,R.C.Weast,editor; The Chemical Rubber Co.,Cleveland,OHに記載される複素環式系のものが挙げられる。特に、Section C、Rules for Naming Organic Compounds,B.Fundamental Heterocyclic Systems参照のこと。アルケニル基は2〜約6個の炭素原子を有することが好ましい。
【0069】
「へテロアラルキル」とは、ピコリルなどのヘテロアリールで置換されたアルキル基を指し、これとしては、「Handbook of Chemistry and Physics」,49th edition,1968,R.C.Weast,editor; The Chemical Rubber Co.,Cleveland,OHに記載される複素環式系のものが挙げられる。特に、Section C,Rules for Naming Organic Compounds,B.Fundamental Heterocyclic Systems参照のこと。アルキル基は1〜約6個の炭素原子を有することが好ましい。
【0070】
「ヘテロアリール」とは、1〜14個の炭素原子を有し、環原子の残りがヘテロ原子である芳香族基を指し、これとしては、「Handbook of Chemistry and Physics」,49th edition,1968,R.C.Weast,editor; The Chemical Rubber Co.,Cleveland,OHに記載される複素環式系のものが挙げられる。特に、Section C,Rules for Naming Organic Compounds,B.Fundamental Heterocyclic Systems参照のこと。適したヘテロ原子としては、酸素、窒素およびS(O)i(ここで、iは0、1または2である)が挙げられ、適した複素環式アリールとしては、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリルなどが挙げられる。
【0071】
「複素環」または「複素環式」とは、ヘテロアリールおよびヘテルシクロ(hetercyclo)基の両方を指す。
【0072】
「複素環アルキル」とは、複素環基で置換されたアルキル基を指す。
【0073】
「複素環式オキシ」とは、基−OR(式中、Rは複素環基である)を指す。
【0074】
「ヘテロシクロ」とは、炭素、窒素、酸素および/または硫黄原子を含む還元された複素環式環系を指し、これとしては、「Handbook of Chemistry and Physics」,49th edition,1968,R.C.Weast,editor; The Chemical Rubber Co.,Cleveland,OHに記載される複素環式系のものが挙げられる。特に、Section C,Rules for Naming Organic Compounds,B.Fundamental Heterocyclic Systems参照のこと。
【0075】
「ヘテロシクロアルキル」とは、ヘテロシクロ基で置換されたアルキル基を指し、「Handbook of Chemistry and Physics」,49th edition,1968,R.C.Weast,editor; The Chemical Rubber Co.,Cleveland,OHに記載される複素環式系のものが挙げられる。特に、Section C,Rules for Naming Organic Compounds,B.Fundamental Heterocyclic Systems参照のこと。アルキル基は約1〜約6個の炭素原子を有することが好ましい。
【0076】
有機ラジカルまたは基と関連して本明細書において記載される用語「低級」とは、1〜最大5個(5個を含む)の炭素原子、好ましくは、最大4個(4個を含む)の炭素原子を含むようなラジカルまたは基を定義し、1個または2個の炭素原子が有利である。このようなラジカルまたは基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0077】
「薬学的に受容可能な塩」としては、本発明の化合物と有機酸または無機酸とを組み合わせることから導かれる本発明の化合物の塩が挙げられる。実際には、塩の形の使用は塩基の形の使用に相当する。本発明の化合物は、遊離塩基および塩の形の双方で有用であり、両方の形とも本発明の範囲内にあると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
発明の詳細な説明
一態様では、本発明は、グルコース利用を増大させる治療方法およびグルコース利用の増大によって恩恵を受ける症状を改善する治療方法における特定の化合物の使用を対象とする。温血動物の細胞、組織または器官においてグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、本明細書に示される式によって表される少なくとも1種の化合物のグルコース利用を増大させる有効量で処理するステップを含む方法が含まれる。グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、本明細書に記載される少なくとも1種の化合物を含む薬学的組成物のグルコース利用を増大させるのに有効な量を投与するステップを含む方法も含まれる。このような化合物としては、式(I)、(IIS)、IIIおよび(IIIa)〜(IIIe)によって表される化合物が挙げられる。
【0079】
いずれか特定の作用機序に拘束されようとは思わないが、本発明者らは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)の阻害剤としての活性を有する化合物がグルコース酸化の刺激において有益な活性を示すことを観察した。本発明者らは、作動している心臓モデルにおいてエネルギー代謝を直接測定する方法を用いることにより、本明細書に記載される化合物(例えば、表1、2Aおよび2Bに記載されるものおよびMM001およびMM013)を、そのグルコース酸化を刺激する能力についてスクリーニングした。MM001およびMM013の構造および分子量を以下に表す。
【0080】
【化51】

本発明者らは、正の対照としてDCAを3mMという濃度で用いた。本発明者らは、100μMでグルコース酸化を刺激する化合物を同定できた。本発明者らは、続いて、これらの化合物の効力を調べるために濃度曲線を作製した。データは図6に示されている。
【0081】
このアプローチを用いて、無傷の心臓におけるグルコース酸化の刺激で本明細書に記載される化合物の有効性を試験した。MM001はシクロプロパンカルボン酸であり、本発明者らが、心臓におけるグルコース酸化の刺激因子として同定した。MM013は本発明者らがグルコース酸化を刺激すると実証した化合物である。
【0082】
MM001およびMM013の濃度曲線は、それぞれ、図7および図8に示されている。
【0083】
本発明者らは、グルコース酸化の刺激における活性が、実際に、PDHKの阻害における活性と関連していたかどうかを調べるために、グルコース酸化刺激活性を有すると同定した化合物(MM001)を、インビトロ PDHKアッセイに付した。PDHK活性は実施例Cに記載されるように測定した。
【0084】
本発明者らの最初の結果から、試験した化合物はインビトロでPDHKを直接阻害しないことが実証された。しかし、本発明者らは、エキソビボ心臓においてはPDHK活性が阻害されるということを証明する証拠を有していた(図9)。
【0085】
本明細書に記載される化合物は、PDHKの阻害においてプロドラッグ機構によって作用するということ、すなわち、インビボに投与された場合に、本化合物が細胞内修飾を受け、PDHKを阻害する生成物が生じるということが考えられる。(図11参照のこと)したがって、本明細書に記載される化合物がプロドラッグとして作用するということが考えられる。本発明者らは、これを実証するために、化合物のうち1種(MM001)を、細胞内で修飾されると考えられる方法で修飾した。この化合物(MM053)は以下に表されている。
【0086】
MM053は、インビトロ PDHKアッセイにおいて試験すると、活性であったがPDHK活性を阻害した。
【0087】
【化52】

したがって、MM053は、PDHKを直接阻害する化合物(MM001)の活性型であると思われる(図10参照のこと)。グルコース酸化を刺激する、本明細書に記載される化合物は、インビボで同様に修飾され得、対応するCoAエステルのプロドラッグであり得ると考えられる。
【0088】
一態様によれば、グルコース酸化の刺激において活性である式(III)の化合物が提供される。特に、式(III)によって表される化合物は、以下またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグである
【0089】
【化53】

[式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはO、SまたはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0090】
【化54】

であり、XがNRである場合は、Rが
【0091】
【化55】

であり、
RはH、アルキルまたはアリールまたは
【0092】
【化56】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0093】
式(III)の特定の化合物は、式(IIIa)〜(IIIe)によって表される。
【0094】
一態様によれば、本発明は、シクロプロパンカルボン酸またはシクロブタンカルボン酸の誘導体である新規化合物を提供する。これらの化合物は、心筋細胞およびその他の種類の細胞においてグルコース酸化刺激活性を示す。本発明の化合物は、次式(I)またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグによって表される
【0095】
【化57】

[式中、
(a)WはC〜Cアルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されるアリール、必要に応じて置換されるアラルキルまたは必要に応じて置換されるアラルケニルであり、
(b)CycはCまたはCシクロアルキルであり、
(c)pは0〜4の整数であり、
(d)mは1または2であり、
(e)YはO、SまたはNRであり、
(f)mが1である場合で、pが0であり、YがOであり、かつ、nが0でない場合は、Zは(シクロ)アルキカルボニル(alkycarbonyl)であり、または、mが1である場合で、pが0であり、YがOであり、かつ、nが0である場合は、Zは複素環アルキルであり、
(g)XはO、S、NRまたはCRであり、
(h)RはH、アルキル、アリールまたは
【0096】
【化58】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
(i)ZはH、アルキル、複素環アルキル、シクロアルキル、アリールまたは必要に応じて置換されるC〜Cアルキルカルボニルまたは
【0097】
【化59】

であり、
XがNRである場合には、Rは
【0098】
【化60】

であり、またはXがNRである場合には、RおよびZはNと一緒になって窒素含有複素環式環を形成し得、
(j)RはH、アルキルまたはアリールであり、
(k)RはH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
(l)RおよびRは、独立に、H、アルキルもしくはアリールであるか、または、XがCRである場合には、RおよびRは炭素原子と一緒になって、複素環式環を形成し得、
(m)nは1〜10の整数である]。
【0099】
代替態様によれば、本発明は次式(IIS)によって表される本発明の新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグを提供する
【0100】
【化61】

[式中、(a)WはC〜Cアルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されるアリール、必要に応じて置換されるアラルキルまたは必要に応じて置換されるアラルケニルであり、(b)CycはCまたはCシクロアルキルであり、(c)pは1〜4の整数である]。
【0101】
一実施形態によれば、次式(IIIa)によって表される新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される
【0102】
【化62】

[式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合はpは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり
RはH、アルキル、アリールまたは
【0103】
【化63】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0104】
【化64】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【0105】
【化65】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0106】
代替実施形態によれば、次式(IIIb)によって表される新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される
【0107】
【化66】

[式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキルまたはアリールであり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルであり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0108】
さらなる実施形態では、次式(IIIc)によって表される新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される
【0109】
【化67】

[式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはO、SまたはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【0110】
【化68】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
Zは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0111】
【化69】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【0112】
【化70】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0113】
もう1つの実施形態は、次式(IIId)によって表される化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグを提供する
【0114】
【化71】

[式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはOであり、
XはNRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【0115】
【化72】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0116】
【化73】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【0117】
【化74】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0118】
さらなる実施形態は、次式(IIIe)によって表される新規化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグを対象とする
【0119】
【化75】

[式中、
Wはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
pは1であり、
YはO、SまたはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【0120】
【化76】

(式中、iは2〜4の整数である)
であり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0121】
【化77】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【0122】
【化78】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である]。
【0123】
本発明の特定の化合物は、以下の反応スキームに従って、適当に置換されたまたは非置換のシクロプロパンカルボニルクロリドまたはシクロブタンカルボニルクロリドから調製できることが好都合である
【0124】
【化79】

[式中、W、Cycおよびpは、式(I)に関連して定義される通りであり、YはOであり、その結果、R’YHはアルコールであり、かつ、R’は
【0125】
【化80】

(式中、R、R、Xおよびnは式(I)に関連して定義される通りであり、ZはH、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アリールまたはアルキカルボニル(alkycarbonyl)である)である]。
【0126】
式(I)の、または式(IIIa)〜(IIIe)のその他の化合物、例えば、表1A、2Aおよび2Bに表されるものは、実施例1〜27において記載されるものと同様の方法によって、また適当な出発物質を用いて調製できる。
【0127】
適した溶媒としては、不活性有機溶媒、例えば、ジクロロメタンが挙げられ、また適した塩基触媒としては、トリエチルアミンおよびピリジンが挙げられる。
【0128】
反応条件は、出発物質および所望の最終生成物に応じて変えられる。反応条件の最適化は、当業者には明らかである。
【0129】
本発明はさらに、ヒトおよび動物の心筋およびその他の細胞、組織または器官においてグルコース酸化の速度を増大させ、グルコース利用を改善する方法を提供する。式(IIS)によって、式(I)および式(IIIa)〜(IIIe)のいずれかによって表される、特定の置換シクロプロパンカルボチオ酸およびシクロブタンカルボチオ酸誘導体および特定の置換または非置換シクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体が、温血動物、例えば、ヒトの心筋およびその他の種類の細胞、組織または器官においてグルコース利用を増大させることができるということを発見した。
【0130】
次式(IIS)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグは以下の構造を有する
【0131】
【化81】

[式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されるアリール、必要に応じて置換されるアラルキルまたは必要に応じて置換されるアラルケニルであり、CycはCまたはCシクロアルキルであり、pは1〜4の整数である]。
【0132】
一実施形態によれば、本発明の方法は、動物の細胞、組織または器官を、グルコース利用を刺激するのに有効な量の、式(I)、式(IIIa)〜(IIIe)のいずれかまたは式(IIS)によって表される、少なくとも1種の化合物で処理するステップを含む。式(I)、式(IIIa)〜(IIIe)または式(IIS)の化合物は、薬学的組成物を投与する従来の手段、例えば、動物への式(I)、式(IIIa)〜(IIIe)または式(IIS)の化合物の経口投与、注射または注入などによって細胞、組織または器官に送達できる。
【0133】
本発明はさらに、その活性成分として、式(I)、(IIIa)〜(IIIe)または(IIS)の少なくとも1種の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグを含む薬学的組成物を提供する。式(I)、(IIIa)〜(IIIe)または(IIS)の2種以上の化合物、それらの種々の混合物および組合せを含む薬学的組成物も、本発明の範囲内にあると考慮される。
【0134】
薬学的組成物または製剤としては、製薬の技術分野において従来用いられている組成物および薬剤が挙げられ、経口投与、静脈内投与、筋内投与、動脈内投与、頭蓋内投与および/または腔内投与と適合する担体および賦形剤を含み得る。適した薬学的組成物および/または製剤はさらに、コロイド分散系または脂質製剤(例えば、陽イオン脂質または陰イオン脂質)、ミセル、マイクロビーズからなる場合がある。
【0135】
記載したように、本発明の薬学的組成物は、製薬上許容され、かつ、生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含み得る。適した担体、希釈剤および賦形剤の例としては、薬剤投与に適合した、溶媒(水性または非水性)、溶液、エマルション、分散媒、被膜、等張剤および吸収促進または遅延剤、ならびに当技術分野で公知のその他のよく用いられる担体が挙げられる。
【0136】
薬学的組成物はまた、組成物を迅速な分解または身体からの排除から保護するための担体を含む場合があり、したがって、制御放出製剤、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含み得る。例えば、時間遅延物質、例えば、単独のまたはワックスと組合せた、モノステアリン酸グリセリルまたはステアリン酸グリセリルを使用できる。
【0137】
薬学的組成物は、特定の投与経路に適合するよう製剤できる。経口投与には、組成物を賦形剤と組み合せ、錠剤、丸剤またはカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセルの形で用いることができる。経口製剤には、製薬上適合する結合剤、および/またはアジュバント物質を含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤などは、以下の成分または類似化合物のうちのいずれかを含み得る:結合剤、例えば、微晶質セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン、賦形剤、例えば、デンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterotes)、磨砕剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素または矯味剤または甘味剤。
【0138】
非経口、皮内または皮下投与用の薬学的組成物は、滅菌希釈液、例えば、水、生理食塩水溶液、硬化油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶剤、抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン、抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム、キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および張度を調節するための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースを含み得る。
【0139】
注射用薬学的組成物は、滅菌注射用溶液または分散物の即時調製のための滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散物と滅菌散剤とを含む。静脈内投与には、適した担体としては、生理食塩水、静菌水、クレモフォアEL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。抗菌剤および抗真菌剤としては、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸およびチメロサールが挙げられる。組成物中には、等張剤、例えば、糖、マニトール(manitol)、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムが含まれ得る。吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによって、注射用組成物の吸収を延長することができる。
【0140】
薬剤製剤は、投与を容易にし、投与量を均一にするために投与単位形にパッケージングできる。本明細書において投与単位形とは、治療される被験体のための単位投与量として適した物理的に分離した単位を指し、各単位は、薬剤担体または賦形剤と共同して所望の治療効果を生じるよう算出された所定量の活性化合物を含む。
【0141】
本組成物は、所望の成果に適合する経路であればいずれによって投与してもよい。したがって、投与経路としては、経口(例えば、経口摂取または吸入)、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、動脈内、腔内、頭蓋内および非経口が挙げられる。本組成物はまた、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を用いて投与できる。
【0142】
薬剤製剤をはじめとする組成物はさらに、粒子またはポリマー物質、例えば、ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、エチレン−ビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミンまたはラクチド/グリコリド共重合体、ポリラクチド/グリコリド共重合体またはエチレンビニルアセテート共重合体を含み得る。シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸ならびにそれらの誘導体および修飾形を、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセルもしくはポリ(メチルメタクロレート(methylmethacrolate)マイクロカプセルを用いて、マイクロカプセル中に、またはコロイド薬物送達システム中に封入できる。
【0143】
細胞、組織または器官ターゲッティングが望まれる場合には、もちろん、注射または注入などによって本発明の組成物を標的細胞、器官または組織に送達できる。ターゲッティングは、本発明の方法の実施における注射または注入によって達成できる。また、ターゲッティングは、細胞上に存在する細胞表面タンパク質と結合するタンパク質(例えば、受容体またはマトリックスタンパク質)または細胞種の集団を用いることによっても達成できる。例えば、細胞表面タンパク質と結合する抗体または抗体断片(例えば、Fab領域)を、送達システムに含め、細胞、組織または器官ターゲッティングを容易にすることができる。特定の細胞表面タンパク質と結合するウイルスコートタンパク質をターゲッティングに用いることができる。例えば、公知の細胞表面タンパク質結合特異性を有する、天然に存在する、または合成(例えば、組換え)レトロウイルスエンベロープタンパク質を、リポソーム中に用い、シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸ならびにそれらの誘導体および修飾形を、標的細胞、組織または器官に細胞質内送達することができる。したがって、送達ビヒクル、例えば、コロイド分散系を、タンパク質コートを有するよう作製し、シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸ならびにそれらの誘導体および修飾形のターゲッティングまたは細胞質内送達を容易にすることができる。
【0144】
本発明はさらに、患者の細胞、組織または器官におけるグルコース利用を増大させることまたは改善することによって治療可能な、種々の生理学的状態または障害の予防的および治療的処置を必要とする患者に、式(I)、(IIIa)〜(IIIe)および(IIS)によって表される、置換または非置換シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体化合物を含む薬学的組成物の有効量を投与することによって、このような処置を行う方法を提供する。
【0145】
本発明の方法で治療され得る障害または状態としては、例えば、虚血/再潅流損傷、心筋梗塞後、狭心症、心不全、心筋症、末梢血管疾患、糖尿病および乳酸アシドーシスまたは心臓手術(例えば、開心術、バイパス手術、心臓移植)に伴って起こる症状または副作用が挙げられる。
【0146】
本発明の方法は、式(I)、(IIIa)〜(IIIe)および(IIS)によって表される、置換または非置換シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体化合物の有効量を含む薬学的組成物を、単回1日用量で投与するステップを含むか、または総1日投与量を、分割用量で1日数回投与してもよい。さらに、本薬学的組成物は単回用量としてまたは一定期間かけて投与してもよい。
【0147】
本発明の方法で治療され得る患者としては、すべての公知の哺乳類種、例えば、非ヒト霊長類(サル、テナガザル、チンパンジー、オラウータン、マカク)、コンパニオンアニマル(イヌおよびネコ)、家畜(ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)およびヒトが挙げられる。
【0148】
本発明の薬学的組成物を利用する投与計画は、治療される生理学的状態の種類、患者の年齢、体重、性別、治療される状態の重篤度、投与経路および薬学的組成物中に含まれる特定の化合物などの種々の因子に基づいて選択する。当業者の医師または獣医ならば、指定の生理学的状態を予防するまたは治療するための薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0149】
1日投与量は、広い範囲にわたって変わることができ、式(I)、(IIS)および(IIIa)〜(IIIe)のいずれかによって表される、置換シクロプロパンカルボチオ酸もしくはシクロブタンカルボチオ酸、または置換または非置換シクロプロパンカルボン酸もしくはシクロブタンカルボン酸誘導体化合物から選択される活性化合物の量が、温血動物の細胞、組織または器官においてグルコース利用を増大させるのに、また脂肪酸誘導性虚血性障害を軽減または予防するという所望の効果を達成するのに十分であるようなものであり得る。
【0150】
本発明は、適したセットにパッケージングされた、式(I)、(IIIa)〜(IIIe)および式(IIS)によって表される、置換または非置換シクロプロパンカルボン酸またはシクロブタンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸またはシクロブタンカルボン酸、置換シクロプロパンカルボチオ酸またはシクロブタンカルボチオ酸ならびにそれらの誘導体および修飾形、例えば、薬剤製剤を含むキットを提供する。キットは、通常、その中に、インビトロ、インビボまたはエキソビボにおいて構成要素を使用するための使用説明書を含む、ラベルまたは添付文書を含む。
【0151】
用語「パッケージング材料」とは、キットの構成要素、例えば、シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸またはその誘導体もしくは修飾形を収容している物理的構造を指す。パッケージング材料は、構成要素を無菌的に維持でき、このような目的によく用いられる材料(例えば、紙、ダンボール、ガラス、プラスチック、アルミホイル、アンプルなど)からなるものであり得る。ラベルまたは添付文書としては、例えば、本発明の方法を実施するための適当な書面の使用説明書を挙げることができる。
【0152】
したがって、本発明のキットはさらに、本発明の方法においてキット構成要素を用いるための使用説明書を含み得る。使用説明書は本明細書に記載される本発明の方法のいずれかを実施するための使用説明書を含み得る。したがって、例えば、キットは、容器、パックまたはディスペンサー中の薬剤製剤中にシクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸またはその誘導体もしくは修飾形を、ヒト被験体に投与するための使用説明書とともに含み得る。使用説明書はさらに、満足のいく臨床エンドポイントの指標または起こり得る何らかの有害な症状、またはヒトにおいて使用するために食品医薬品局によって定められた何らかのさらなる情報を含み得る。
【0153】
キットは、インビトロ、エキソビボまたはインビボグルコース利用を増大させるまたは改善するための使用説明書を含み得る。その他の実施形態では、キットは、不十分なまたは非効率的なグルコース利用に伴って起こる障害を治療するための使用説明書を含む。一態様では、使用説明書は、虚血/再潅流損傷、心筋梗塞後、狭心症、心不全、心筋症、末梢血管疾患、糖尿病および乳酸アシドーシスを有するか、有する危険のある被験体を治療するための使用説明書を含む。もう1つの態様では、使用説明書は、心臓手術(例えば、開心術、バイパス手術、心臓移植および血管形成術)を有するか、有する危険のある被験体を治療するための使用説明書を含む。
【0154】
使用説明書は「印刷物」上、例えば、キット内の紙またはボール紙上、キットまたはパッケージング材料に貼られた、またはキットの構成要素を含有するバイアルもしくはチューブに取り付けられたラベル上にある場合もある。使用説明書はさらに、コンピューターによって読み取り可能な媒体、例えば、ディスク(フロッピー(登録商標)ディスケットまたはハードディスク)、光学CD、例えば、CD−またはDVD−ROM/RAM、磁気テープ、電子記憶媒体、例えば、RAMおよびROMならびにこれらのハイブリッド、例えば、磁気/光学記憶媒体上に含まれる場合もある。
【0155】
キットはさらに、緩衝剤、防腐剤または分解防止剤を含み得る。キットの各構成要素は個々の容器内に入れることができ、種々の容器のすべては単一のパッケージ内にあり得る。
【0156】
本発明を、以下の実施例においてさらに示すが、これでは、特に断りのない限り、すべての部、パーセンテージおよび割合は当量においてであり、すべての温度は℃であり、すべての圧力は大気圧である。
【実施例】
【0157】
実施例1
シクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの調製
【0158】
【化82】

10ml丸底フラスコに、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.1当量、5.26mmol、0.84ml)およびトリエチルアミン(1.1当量、5.26mmol、0.73ml)を入れ、ジクロロメタン(3ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、シクロプロパンカルボニルクロリド(4.78mmol、0.5g、0.43ml)を、温度を0℃に維持しながら、一定に撹拌しながら、滴下法で加えた。
【0159】
しばらくすると黄色を帯びた橙色の固体が観察された。0℃で1時間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、5%重炭酸ナトリウム(2×5ml)、1:1塩酸(2×5ml)で、次いで、ブライン(5ml)で洗浄した。ジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が淡黄色の液体として得られた。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(b.p.=144℃、3.0mmHg)による精製によって、純粋生成物が無色の液体(527.0mg、48%)として得られた。
【0160】
得られた化合物は、Hおよび13C NMR、IRおよび質量分析によって特性決定した。
【0161】
【化83】

実施例2
シクロブタノイルグリシン(シクロブタンカルボニル−アミノ)−酢酸)の調整
【0162】
【化84】

ジクロロメタン(5ml)中に、メチルエステルグリシンヒドロクロリド(1当量、2.39mmol、300mg)およびピリジン(2当量、4.78mmol、0.39ml)を懸濁し、続いて、DMAP(1.5当量、218.5mg)を一度に加えた。この反応混合物を室温で30分間撹拌した。30分後、シクロブタンカルボニルクロリド(2当量、4.77mmol、0.54ml)をゆっくりと加え、反応混合物を室温で4時間撹拌した。溶媒を真空蒸発させ、残渣を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を乾燥させ、濃縮乾固した。得られた粗物質をフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、純粋な化合物(358mg、87%)が得られた。
【0163】
THF(6ml)中、の溶液に、水酸化リチウム(1.1当量、2.3mmol、2.3ml、1M)を室温で加え、反応混合物を1.5時間撹拌した。次いで、反応混合物を真空濃縮し、2N HClを用いてpH=3に酸性化した。次いで、粗生成物を酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル/ヘキサン混合物を用いる再結晶化によって精製した。再結晶化後に得られた生成物を、フラッシュクロマトグラフィーおよび再度の再結晶化によってさらに精製すると、標題化合物が白色固体(196mg、59%)として得られた。
【0164】
得られた化合物は、Hおよび13C NMR、IRおよび質量分析によって特性決定した。
【0165】
【化84A】

実施例3
シクロブタンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの調製
【0166】
【化85】

25ml丸底フラスコに、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.1当量、4.64mmol、0.74ml)およびトリエチルアミン(1.1当量、4.64mmol、0.65ml)を入れ、ジクロロメタン(3ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、シクロブタンカルボニルクロリド(4.22mmol、0.5g、0.48ml)を、温度を0℃に維持しながら、一定に撹拌しながら、滴下法で加えた(激しい反応)。
【0167】
しばらくすると淡紅色の溶液が観察された。適切な撹拌を維持するために、さらに4mlのジクロロメタンを加えた(反応混合物は粘度が高くなった)。0℃で1時間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、5%重炭酸ナトリウム(2×5ml)、1:1塩酸(2×5ml)で、次いで、ブライン(5ml)で洗浄した。ジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が淡黄色を帯びた淡紅色の液体として得られた。この液体をフラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(b.p.=189℃、3.0mmのHg)によって精製すると、純粋生成物が無色の液体(679.6mg、65.34%)として得られた。
【0168】
生成物は、Hおよび13C NMR、IRおよび質量分析によって特性決定した。
【0169】
【化86】

実施例4、6〜14、18および19
特定のシクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体の調製のための一般手順
【0170】
【化87】

[式中、W、Cycおよびpは式(I)について定義の通りであり、YはOであり、その結果、R’−YHはアルコールであり、R’は
【0171】
【化88】

であり、
(式中、R、R、Xおよびnは式(I)に関連して定義され、ZはH、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アリールまたはアルキルカルボニルである)]。適した塩基としては、トリエチルアミンまたはピリジンが挙げられる。適した溶媒としては、ジクロロメタンまたはその他の不活性有機溶媒が挙げられる。
【0172】
実施例1および実施例3に記載される手順に従い、適当な出発アルコールおよびシクロアルキルシクロプロパンカルボン酸クロリド物質を用い(トリエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりに適当な出発アルコールを用いた)、記載したシクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体をそれぞれ調製した(表I参照のこと)。調製した化合物、シクロアルキルカルボニルクロリドおよびそれらの調製に用いたアルコール出発物質およびそれらの分子量は表1に要約されている。
【0173】
化合物は、H NMR、13C NMR、IRおよび質量分析によって特性決定した。
【0174】
実施例5
シクロプロパノイルアラニンの調製
【0175】
【化89】

2当量の代わりに2.5当量のピリジンを用い、シクロブタンカルボニルクロリドの代わりにシクロプロパンカルボニルクロリドを用い、メチルエステルグリシンヒドロクロリドの代わりにメチルエステルアラニンヒドロクロリドを用いた以外は実施例2の手順に従った。
【0176】
精製した化合物(321mg、87%)は、Hおよび13C NMR、IRおよび質量分析によって特性決定した。
【0177】
【化90】

実施例15
シクロプロパンカルボン酸2−エトキシ−エチルエステルの調製
【0178】
【化91】

25ml丸底フラスコに、2−エトキシ−エタノール(1.1当量、5.26mmol、0.47g、0.51ml)およびピリジン(1.1当量、5.26mmol、0.42g、0.43ml)を入れ、ジクロロメタン(6ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、シクロプロパンカルボニルクロリド(4.78mmol、0.5g、0.43ml)を、温度を0℃に維持しながら、一定に撹拌しながら、滴下法で加えた。
【0179】
しばらくすると橙−黄色の溶液が観察された。0℃で1時間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、5%重炭酸ナトリウム(2×5ml)、1:1塩酸(2×5ml)で、次いで、ブライン(5ml)で洗浄した。ジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が淡黄色を帯びた橙色の液体として得られた。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(b.p.=43℃、2.8mmのHg)による精製によって、純粋生成物が無色の液体(515.8mg、55.4%)として得られた。
【0180】
特性決定はNMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析によって行った。
【0181】
【化92】

実施例16
シクロブタンカルボン酸2−エトキシ−エチルエステルの調製
【0182】
【化93】

25ml丸底フラスコに、2−エトキシ−エタノール(1.1当量、4.64mmol、0.42g、0.45ml)およびトリエチルアミン(1.1当量、4.64mmol、0.47g、0.65ml)を入れ、ジクロロメタン(6ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、シクロブタンカルボニルクロリド(4.22mmol、0.5g、0.48ml)を、温度を0℃に維持しながら、一定に撹拌しながら、滴下法で加えた。
【0183】
しばらくすると橙−黄色の溶液が観察された。0℃で1時間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、5%重炭酸ナトリウム(2×5ml)、1:1塩酸(2×5ml)で、次いで、ブライン(5ml)で洗浄した。ジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が淡黄色の液体として得られた。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(b.p.=48℃、2.8mmのHg)によって精製を試みると、純粋生成物が無色の液体(421.3mg、57.7%)として得られた。
【0184】
特性決定は、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析によって行った。
【0185】
【化94】

実施例17
シクロプロパンカルボン酸2−イソプロポキシ−エチルエステルの調製
【0186】
【化95】

25ml丸底フラスコに、2−イソプロポキシ−エタノール(l.l当量、5.26mmol 0.55g、0.61ml)およびピリジン(1.1当量、5.26mmol、0.42g、0.43ml)を入れ、ジクロロメタン(6ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、シクロプロパンカルボニルクロリド(4.78mmol、0.5g、0.43ml)を、温度を0℃に維持しながら、一定に撹拌しながら、滴下法で加えた。
【0187】
しばらくすると橙−黄色の溶液が観察された。適切な撹拌を維持するために、さらに2mlのジクロロメタンを加えた(反応混合物は粘度が高くなった)。0℃で1時間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、5%重炭酸ナトリウム(2×5ml)、1:1塩酸(2×5ml)で、次いで、ブライン(5ml)で洗浄した。ジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が淡黄色を帯びた橙色の液体として得られた。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(b.p.=33℃、2.9mmのHg)による精製によって、純粋生成物が無色の液体(630.2mg、76.40%)として得られた。
【0188】
得られた化合物の特性決定は、Hおよび13C NMR、IRおよび質量分析によって行った。
【0189】
【化96】

実施例20
シクロブタンカルボン酸,2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エチルエステルの調製
【0190】
【化97】

10ml丸底フラスコに、ジエチレングリコール(0.5当量、1mmol、0.11g)およびピリジン(2.2当量、2.2mmol、0.174g、0.18ml)を入れ、ジクロロメタン(4ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、シクロブタンカルボニルクロリド(2.0mmol、0.24g、0.23ml)を、温度を0℃に維持しながら、一定に撹拌しながら、滴下法で加えた。
【0191】
しばらくすると白色の粘性の高い懸濁液が観察された。0℃で1時間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、5%重炭酸ナトリウム(2×5ml)、1:1塩酸(2×5ml)で、次いで、ブライン(5ml)で洗浄した。ジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が淡黄色を帯びた液体として得られた。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(b.p.=113℃、2.8mmのHg)による精製によって、純粋生成物が無色の液体(130.0mg、46.42%)として得られた。
【0192】
特性決定は、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析によって行った。
【0193】
【化98】

実施例21
シクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの調製
【0194】
【化99】

10ml丸底フラスコに、トリエチレングリコール(1.6mmol、0.24g)およびピリジン(2.2当量、3.52mmol、0.28g、0.28ml)を入れ、ジクロロメタン(5ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、シクロプロパンカルボニルクロリド(3.4mmol、0.36g、0.31ml)を、温度を0℃に維持しながら、一定に撹拌しながら、滴下法で加えた。
【0195】
しばらくすると白色の粘性の高い懸濁液が観察された。0℃で1時間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、5%重炭酸ナトリウム(2×5ml)、1:1塩酸(2×5ml)で、次いで、ブライン(5ml)で洗浄した。ジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が淡黄色を帯びた液体として得られた。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(b.p.=127℃、2.8mmのHg)による精製によって、純粋生成物が無色の液体(234.5mg、50.97%)として得られた。
【0196】
特性決定はNMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析によって行った。
【0197】
【化100】

実施例22
シクロブタンカルボン酸,2−[2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの調製
【0198】
【化101】

以下の量のこれらの試薬を用い、実施例21に記載の手順に従った:トリエチレングリコール(1.6mmol、0.24g)、ピリジン(2.2当量、3.52mmol、0.28g、0.28ml)およびシクロブタンカルボニルクロリド(3.4mmol、0.40g、0.39ml)。
【0199】
化合物は、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析によって特性決定した。
【0200】
【化102】

実施例23
シクロプロパンカルボン酸,2−[{2−[ビス(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エチル)−アミノ]−エチル}−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エチル)−アミノ]エチルエステルの調製
【0201】
【化103】

25ml丸底フラスコに、ジアミンテトラ−オール(1当量、4.23mmol、1.0g)、ピリジン(1.0当量、4.23mmol、0.33g、0.34ml)およびトリエチルアミン(5.0当量、0.021mol、2.12g、2.90ml)の溶液を入れ、トルエン(10ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、シクロプロパンカルボニルクロリド(0.019mmol、1.98g、1.72ml)を、温度を0℃に維持しながら、激しく撹拌しながら、一度に加えた。
【0202】
しばらくすると黄色を帯びた白色の粘性の高い懸濁液が観察された。0℃で15分間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、酢酸エチル(2×25ml)で抽出した。酢酸エチル層をブライン(1×20ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が淡黄色を帯びた液体として得られた。フラッシュクロマトグラフィーによる精製によって、純粋生成物が無色の液体(900.0mg、42.0%)として得られた。
【0203】
特性決定はNMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析によって行った。
【0204】
【化104】

実施例24
シクロプロパンカルボン酸(2−イソプロポキシ−エチル)−アミドの調製
【0205】
【化105】

10ml丸底フラスコに、アミノエーテル(1.1当量、5.26mmol、0.54g、0.64ml)、ピリジン(0.5当量、2.39mmol、0.19g、0.19ml)、トリエチルアミン(1.1当量、5.26mmol、0.53g、0.73ml)の溶液を入れ、ジクロロメタン(6ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、シクロプロパンカルボニルクロリド(4.78mmol、0.5g、0.43ml)を、温度を0℃に維持しながら滴下法で加えた。
【0206】
しばらくすると白色の沈殿が観察された。0℃で30分間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、水(1×10ml)、ブライン(2×10ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が無色の液体として得られた。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(b.p.=106℃、1.4mmのHg)による精製によって、純粋生成物が無色の液体(493.8mg、60.22%)として得られた。
【0207】
特性決定はNMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析によって行った。
【0208】
【化106】

実施例25
(+)−トランス−2−フェニル−シクロプロパンカルボン酸2−イソプロポキシ−エチルエステルの調製
【0209】
【化107】

10ml丸底フラスコに、2−イソプロポキシ−エタノール(1.1当量、3.04mmol、0.32g、0.35ml)、ピリジン(0.5当量、1.38mmol、0.11g、0.11ml)、トリエチルアミン(1.1当量、3.04mmol、0.31g、0.43ml)を入れ、ジクロロメタン(6 ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、(±)−トランス−2−フェニル−シクロプロパンカルボニルクロリド(2.76mmol、0.5g、0.43ml)を、温度を0℃に維持しながら滴下法で加えた。
【0210】
しばらくすると白色の沈殿が観察された。0℃で30分間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、5%重炭酸ナトリウム(2×5ml)、1:1塩酸(2×5ml)で、次いで、ブライン(5ml)で洗浄した。ジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が淡黄色を帯びた液体として得られた。フラッシュクロマトグラフィーによる精製によって、純粋生成物が無色の液体(450.0mg、65.0%)として得られた。上記化合物はラセミ化合物であることがキラルHPLC(キラルセルOJカラム)ヘキサン中2%イソプロパノールによって決定された。UV λmaχ=278nm(フロー=1ml/分)。
【0211】
特性決定はNMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析によって行った。
【0212】
【化108】

実施例26
(±)−トランス−2−フェニル−シクロプロパンカルボン酸2の調製
【0213】
【化109】

この化合物は、実施例25に記載される手順を用い、以下の試薬を用いて調製した:2−エトキシ−エタノール(1.1当量、3.05mmol、0.27g、0.30ml)ピリジン(0.5当量、1.39mmol、0.11g、0.11ml)、トリエチルアミン(1.1当量、3.05mmol、0.31g、0.43ml)および(±)−トランス−2−フェニル−シクロプロパンカルボニルクロリド(2.77mmol、0.5g、0.43ml)。
【0214】
この化合物は、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析によって特性決定した。
【0215】
【化110】

実施例27
1−フェニル−シクロプロパンカルボン酸2−エトキシ−エチルエステルの調製
【0216】
【化111】

塩化チオニル(10当量、0.031mol、3.68g、2.3ml)に、1−フェニル−シクロプロパンカルボン酸(0.5g、3.1mmol)を溶解し、80℃で1.5時間還流した。次いで、ロータリーエバポレーターで過剰の塩化チオニルを蒸発させると、暗黄色を帯びた液体(1−フェニル−シクロプロパンカルボニルクロリドA)が得られ、次いで、これをアルゴン下0℃に冷却した。
【0217】
25ml丸底フラスコに、2−エトキシ−エタノール(1.1当量、3.41mmol、0.31g、0.33 ml)およびピリジン(1.2当量、3.41mmol、0.27g、0.28ml)を入れ、ジクロロメタン(10ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、次いで、Aを、温度を0℃に維持しながら滴下法で加えた。0℃で30分間撹拌を続けた。反応を薄層クロマトグラフィーによってモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、この混合物を分液漏斗に移し、5%重炭酸ナトリウム(2×5ml)、1:1塩酸(2×5ml)で、次いで、ブライン(5ml)で洗浄した。ジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空蒸発させると、標題生成物が淡黄色を帯びた液体として得られた。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(b.p.=93℃、2.4mmのHg)による精製によって、純粋生成物が無色の液体(437.7mg、60.62%)として得られた。
【0218】
特性決定はNMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析によって行った。
【0219】
【化112】

注記:
実施例1〜27の化合物については、フラッシュクロマトグラフィーに用いた溶媒系は、特に断りのない限り、酢酸エチル/ヘキサンとした。
【0220】
【化113】

【0221】
【化114】

【0222】
【化115】

【0223】
【化116】

【0224】
【化117】

【0225】
【化118】

表2Bの化合物は、当業者の範囲内の方法を用いて、例えば、実施例1〜27に、また本発明の詳細な説明に記載されるものと同様および/または類似の方法を用い、また適当な出発物質を用いて調製できる。
【0226】
実施例A
未処理心臓およびシクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルで処理した心筋細胞におけるグルコース酸化刺激
参照によりその全開示内容が本明細書に組み込まれるJ Pharmacol Exp Ther.1993; 264:135−144に記載されるように、ラット心臓を、単離された作動している心臓の60分間の好気的灌流のためにカニューレ処置した。
【0227】
雄のSprague−Dawleyラット(0.3〜0.35kg)に、ペントバルビタールナトリウム(60mg/kg IP)を用いて麻酔し、心臓を迅速に摘出し、大動脈をカニューレ処置し、37℃で逆行性灌流を、静水圧60mmHgで開始した。心臓の過剰な組織を取り除き、次いで、肺動脈および左心房への開口部をカニューレ処置した。15分Langendorff灌流した後、Langendorffリザーバーからの大動脈流入ラインをクランプし、左心房流入ラインを開くことによって心臓を作動モードに切り替えた。灌流液を人工肺から左心房に、一定前負荷圧11mmHgで送達した。灌流液は、自発的に拍動している心臓からコンプライアンスチャンバー(1mlの空気を含む)中に、また大動脈流出ライン中に排出された。後負荷は静水圧80mmHgで設定した。すべての作動している心臓を、カルシウム2.5mmol/L、グルコース5.5mmol/L、3%ウシ血清アルブミン(脂肪酸を含まない、熱ショックによる最初の分画、Sigma)を含有するKrebs’−Henseleit溶液を用い、および1.2mmol/Lパルミテートを用いて灌流した。全開示内容が参照により本明細書に組み込まれるJ Bio Chem.1992; 267:3825−3831に記載されるように、パルミテートはアルブミンと結合した。
【0228】
灌流液を再循環させ、95%Oおよび5%COを含む混合物でバブリングすることによってpHを7.4に調整した。
【0229】
すべての灌流において自発的に鼓動する心臓を用いた。心拍数および大動脈圧は、大動脈流出ラインに連結したBiopac Systems Inc.の血圧トランスデューサーで測定した。心拍出量および大動脈流は、それぞれ、前負荷および後負荷ラインにおいて、Transonic T206超音波フロープローブで測定した。冠血流は、心拍出量と大動脈流間の差異として算出した。心仕事量は、収縮期圧と心拍出量の積として算出した。
グルコース酸化の測定:グルコース酸化は、Saddik M,et al.,J Bio Chem.1992; 267:3825−3831に論じられた手順に従って、心臓を[U−14C]グルコースを用い、灌流することによって同時に測定した。この参照文献の全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。全心筋14CO生成は、60分の好気性期間から10分間隔で調べた。グルコース酸化速度は、Barbour RL,et al.,Biochemistry.1984; 1923:6503−6062に記載のとおり、14CO生成の定量的測定によって調べた。この参照文献の全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。対照群の14CO生成を、シクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルで処理した群の14CO生成と比較した。結果は図1および表2Aに示されている。
【0230】
実施例B
(1)未処理の心臓およびシクロブタンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルで処理した心筋細胞におけるグルコース酸化刺激
シクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの代わりに、1μM、10μM、100μMおよび1000μM量のシクロブタンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルを緩衝液に加えた以外は、実施例Aの手順に従った。結果は図2および表2Aに示されている。
【0231】
(2)未処理の心臓およびシクロプロパンカルボン酸,2−イソプロポキシエチルエステルで処理した心筋細胞におけるグルコース酸化刺激
シクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの代わりに、1μM、10μM、100μMおよび1000μM量のシクロプロパンカルボン酸,2−イソプロポキシ−エチルエステルを緩衝液に加えた以外は実施例Aの手順に従った。結果は図3および表2Aに示されている。
【0232】
(3)未処理心臓および種々のシクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体で処理した心筋細胞におけるグルコース酸化刺激
シクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの代わりに、100μMまたは1000μMという量の、種々のシクロブタンカルボン酸誘導体、シクロプロパンカルボン酸誘導体およびシクロブタンカルボン酸を緩衝液に加えた以外は、実施例Aの手順に従った。結果は表2Aおよび表2Bに示されている。
【0233】
(4)未処理の心臓およびシクロプロパンカルボン酸で処理した心筋細胞におけるグルコース酸化刺激
シクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの代わりに、0.001μM、0.01μM、01μM、1μM、10μMおよび100μMという量、シクロブタンカルボン酸を緩衝液に加えた以外は実施例Aの手順にしたがった。 結果は図4に示されている。
【0234】
【化119】

【0235】
【化120】

【0236】
【化121】

【0237】
【化122】

【0238】
【化123】

【0239】
【化124】

【0240】
【化125】

【0241】
【化126】

【0242】
【化127】

【0243】
【化128】

【0244】
【化129】

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ キナーゼ(PDHK)阻害アッセイ
このアッセイは、Jackson,et al.Biochem J.334:203−711(1998)の方法に基づいている。ピルビン酸がアセチルCoAに変換される場合に形成されるNADH(@340nm)を測定するピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)アッセイの適応である。PDHK活性は、PDHKのATP活性化後に残存するPDH活性量として測定し、次いで、PDHを不活化する。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ酵素複合体(PDC)はSigmaから購入する。内在するピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)活性を含む。
【0245】
1)PDCは緩衝液A(40mM MOPS、pH7.2、0.5mM EDTA、30mM KCl。1.5mM MgC12、0.25mM アセチルCoA,、0.05mM NADH、2mMジチオトレイトール、10mM NaF)中、37℃で40分間プレインキュベートする。このステップにより総PDH活性が高まる。
【0246】
2)54.5μlのPDK反応溶液(1.8×緩衝液A、55μM ADP+100μM ATP、±薬物)に45.5μlのプレインキュベートした酵素(ステップ1)を加えることによってPDK反応を開始する。反応は37℃で3分間実施し、次いで、10μlの停止溶液(55mM ADP、55mM ピルビン酸)を加えることによって停止する。
【0247】
3)次いで、90μlの緩衝液B(120mM トリス−HCl、pH7.8、0.61mM EDTA、0.73mM MgC12、2.2mMコカルボキシラーゼ、11mM β−メルカプトエタノール、2.2mM NAD、2.2mM ピルビン酸、1.1mM補酵素A)を加え、340nmで2分間動力学的に読み取ることによってPDH活性をアッセイする。
【0248】
4)薬物阻害レベルを、100%キナーゼ活性を有すると考えられる対照反応(薬物を加えていない)と比較する。
(a)ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼアッセイ溶液
緩衝液A(10×)
・40ml 1M MOPS
・1mlの0.5M EDTA
・10mlの3M KCl
・10mlの150ml MgC12
・10mlの200mM DTT
この緩衝液は4℃で作製し維持する。アッセイの当日、1mlの2.5mMアセチルCoAに7.1mlの緩衝液A(10×)を加える。1mlの0.5mM NADHおよび0.9mlの水を加えて緩衝液A(1×)とする。
【0249】
新しく作製した溶液:
・2.5mM アセチルCoA
・0.5mM NADH
・550mM ADP
・1mM ATP
・22mM コカルボキシラーゼ
・22mM NAD
・11mM 補酵素A
(b)PDK反応溶液
【0250】
【化130】

()は、総PDH活性を調べるために用いたキナーゼ陰性反応の容積を示す。
【0251】
(c)PDK停止溶液
【0252】
【化131】

本発明のいくつかの実施形態が記載されている。それにかかわらず、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の改変を行うことができるということは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0253】
【図1】対照と比較した、示された濃度のシクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル(MM054)での、単離され灌流された作動しているラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を表すグラフである。
【図2】対照と比較した、示された濃度のシクロブタンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチル−エステル(MM056)での、単離され灌流された作動しているラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を表すグラフである。
【図3】対照と比較した、漸増濃度のシクロプロパンカルボン酸,2−イソプロポキシ−エチルエステル(MM070)での、単離され灌流された作動しているラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を表すグラフである。
【図4】対照と比較した、漸増濃度のシクロプロパンカルボン酸(MM00l)での、単離され灌流された作動しているラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を表すグラフである。
【図5】対照と比較した、示された濃度のジクロロアセテート(DCA)、化合物15(MM068)、化合物41(MM094)および化合物45(MM098)での、単離され灌流された作動しているラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を表すグラフである。
【図6】対照と比較した、示された濃度のDCA、シクロプロパンカルボン酸(MM001)およびシクロブタンカルボン酸(MM013)での、単離され灌流されたラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を表すグラフである。
【図7】対照と比較した、シクロプロパンカルボン酸(MM001)の濃度の、単離され灌流されたラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を表すグラフである。
【図8】対照と比較した、漸増濃度のシクロブタンカルボン酸(MM013)の、単離され灌流されたラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を表すグラフである。
【図9】実施例Cに記載されるPDHKアッセイを用いて、対照のパーセントとして、1mMのDCAまたはシクロプロパンカルボン酸(MM001)でのピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)活性を表すグラフである。
【図10】実施例Cに記載されるPDHKアッセイを用いて、対照のパーセントとして、1mMのDCA、シクロプロパンカルボン酸(MM001)またはシクロプロパンカルボン酸のCoAエステル(MM053)でのPDHK活性を表すグラフである。
【図11】対応するCoAエステル(MM053)を生じるシクロプロパンカルボン酸(MM001)の細胞内活性化機構の概略を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)によって表される化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグであって、
【化1】

式中、
(a)WはC〜Cアルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されるアリール、必要に応じて置換されるアラルキルまたは必要に応じて置換されるアラルケニルであり、
(b)CycはCまたはCシクロアルキルであり、
(c)pは0〜4の整数であり、
(d)mは1または2であり、
(e)YはO、SまたはNRであり、
(f)mが1である場合で、pが0であり、YがOであり、かつ、nが0でない場合は、Zは(シクロ)アルキカルボニルであり、または、mが1である場合で、pが0であり、YがOであり、かつ、nが0である場合は、Zは複素環アルキルであり、
(g)XはO、S、NRまたはCRであり、
(h)RはH、アルキル、アリールまたは
【化2】

であり、式中、iは2〜4の整数であり、
(i)ZはH、アルキル、複素環アルキル、シクロアルキル、アリールまたは必要に応じて置換されるC〜Cアルキルカルボニルまたは
【化3】

であり、
XがNRである場合には、Rは
【化4】

であり、またはXがNRである場合には、RおよびZはNと一緒になって窒素含有複素環式環を形成し得、
(j)RはH、アルキルまたはアリールであり、
(k)RはH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
(l)RおよびRは、独立に、H、アルキルもしくはアリールであるか、または、XがCRである場合には、RおよびRは炭素原子と一緒になって、複素環式環を形成し得、
(m)nは1〜10の整数である、
化合物。
【請求項2】
mが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
pが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
YがOであり、XがNRまたはOであり、R、R、RおよびRがHであり、nが1〜4であり、Zがシクロアルキルカルボニルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
nが1である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
YがSである、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
YがNRである、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
YがOであり、nが0である、請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
Zが複素環アルキルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
nが0であり、Zが複素環アルキルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項11】
mが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
CycがCシクロアルキルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
YがOである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
XがOであり、Zがアルキルである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
pが0である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
およびRがHである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
pが1、2、3または4である、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
CycがCシクロアルキルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
Wがメチルまたはハロゲンである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
Wが必要に応じて置換されるフェニルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
mが1であり、pが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
YがSである、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
が=Oである、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
XがOである、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
XがNRである、請求項22に記載の化合物。
【請求項26】
nが0であり、Zが複素環アルキルである、請求項22に記載の化合物。
【請求項27】
Zがヘテロアリールアルキルである、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
CoAでエステル化されている、請求項22に記載の化合物。
【請求項29】
nが0であり、Zが複素環アルキルである、請求項21に記載の化合物。
【請求項30】
次式(IIS)で表される化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、
【化5】

式中、(a)WはC〜Cアルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されるアリール、必要に応じて置換されるアラルキルまたは必要に応じて置換されるアラルケニルであり、(b)CycはCまたはCシクロアルキルであり、(c)pは1〜4の整数である、
化合物。
【請求項31】
CycがCシクロアルキルである、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
Wがメチルまたはハロゲンである、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
Wがメチルである、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
次式で表される化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグであって、
【化6】

式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【化7】

であり、式中、iは2〜4の整数であり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【化8】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【化9】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である、
化合物。
【請求項35】
次式によって表される請求項34に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグであって、
【化10】

式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキルまたはアリールであり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルであり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である、
化合物。
【請求項36】
pが0である、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
XがNRまたはOであり、
およびRがHであり、
nが1〜4であり
Zが低級アルキル、シクロアルキルまたはフェニルである、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
XがOであり、
およびRがHであり、
nが1または2であり、
ZがHまたは低級アルキルである、請求項36に記載の化合物。
【請求項39】
XがOであり、
がメチルであり、かつ、RがHであり、
nが1または2であり、
ZがHである、請求項36に記載の化合物。
【請求項40】
(シクロブタンカルボニル−アミノ)−酢酸、
2−(シクロプロパンカルボニル−アミノ)−プロピオン酸、および
シクロプロパンカルボン酸(2−イソプロポキシ−エチル)−アミドからなる群から選択される、請求項34に記載の化合物。
【請求項41】
次式で表される化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグであって、
【化11】

式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはO、SまたはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【化12】

であり、式中、iは2〜4の整数であり、
Zは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【化13】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【化14】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である、
化合物。
【請求項42】
次式によって表される請求項41に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグであって、
【化15】

式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはO、SまたはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキルまたはアリールであり、
Zは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【化16】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である、
化合物。
【請求項43】
pが0である、請求項41に記載の化合物。
【請求項44】
YがOであり、
XがNRまたはOであり、
、R、RおよびRがHであり、
nが1〜4である、請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
YがNRであり、
XがOであり、
、R、RおよびRがHであり、
nが1または2である、請求項43に記載の化合物。
【請求項46】
シクロプロパンカルボン酸,2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エチルエステル、
シクロブタンカルボン酸,(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エチルエステル、
シクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル、
シクロブタンカルボン酸,2−[2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルおよび
シクロプロパンカルボン酸2−[{2−[ビス−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エチル)−アミノ]−エチル}(2シクロプロパンカルボニルオキシ−エチル)−アミノ]エチルエステルからなる群から選択される、請求項41に記載の化合物。
【請求項47】
次式で表される化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグであって、
【化17】

式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはOであり、
XはNRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【化18】

であり、式中、iは2〜4の整数であり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【化19】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【化20】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である、
化合物。
【請求項48】
次式によって表される、請求項47に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグであって、
【化21】

式中、
WはC〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜3の整数であり、CycがCシクロアルキルである場合は、pは0〜2の整数であり、
YはOであり、
XはNRであり、
RはH、アルキルまたはアリールであり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルであり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である、
化合物。
【請求項49】
pが0である、請求項47に記載の化合物。
【請求項50】
、R、RおよびRがHであり、
nが1〜4であり、
ZがH、低級アルキル、シクロアルキルまたはフェニルである、請求項49に記載の化合物。
【請求項51】
RがHまたは低級アルキルであり、
、R、RおよびRがHであり、
nが1または2であり、
ZがHまたは低級アルキルである、請求項48に記載の化合物。
【請求項52】
シクロプロパンカルボン酸2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステルおよび
シクロブタンカルボン酸2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステルからなる群から選択される、請求項47に記載の化合物。
【請求項53】
次式で表される化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグであって、
【化22】

式中、
Wはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
pは1であり、
YはO、SまたはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキル、アリールまたは
【化23】

であり、式中、iは2〜4の整数であり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【化24】

であり、
XがNRである場合は、Rは
【化25】

であり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である、
化合物。
【請求項54】
次式によって表される、請求項53に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグであって、
【化26】

式中、
Wはアリールであり、
CycはCまたはCシクロアルキルであり、
pは1であり、
YはO、SまたはNRであり、
XはO、S、NRまたはCRであり、
RはH、アルキルまたはアリールであり、
ZはH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルであり、
はH、アルキルまたはアリールであり、
はH、アルキル、アリールまたは=Oであり、
およびRは独立に、H、アルキルまたはアリールであり、
nは1〜10の整数である、
化合物。
【請求項55】
YがOであり、
XがNRまたはOであり、
、R、RおよびRがHであり、
nが1〜4であり、
Zが低級アルキル、シクロアルキルまたはフェニルである、請求項53に記載の化合物。
【請求項56】
XがOであり、
、R、RおよびRがHであり、
nが1または2であり、
ZがHまたは低級アルキルである、請求項53に記載の化合物。
【請求項57】
トランス−2−フェニル−シクロプロパンカルボン酸2−イソプロポキシエチルエステル、
トランス−2−フェニル−シクロプロパンカルボン酸2−エトキシ−エチルエステルおよび
1−フェニル−シクロプロパンカルボン酸2−エトキシ−エチルエステルからなる群から選択される、請求項53に記載の化合物。
【請求項58】
1−フェニル−シクロプロパンカルボン酸,2−エトキシ−エチルエステル、
1−メチル−シクロプロパンカルボン酸,2−エトキシ−エチルエステル、
2,2,3,3,テトラメチル−シクロプロパンカルボン酸,2−エトキシ−エチルエステル、
トランス−2−メチル−シクロプロパンカルボン酸,2−エトキシ−エチルエステル、
2,2−ジクロロ−l−メチル−シクロプロパンカルボン酸,2−エトキシ−エチルエステル、
(1S,2S)−2−フェニル−スチリル−シクロプロパンカルボン酸,2−エトキシ−エチルエステル、
1−(4−メトキシ−フェニル)−シクロプロパンカルボン酸,2−エトキシ−エチルエステル、
1−フェニル−シクロプロパンカルボン酸,2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルおよび
1−(1−フェニル−l−シクロプロパンカルボン酸)−2−(1−フェニル−シクロプロパンカルボニルオキシ)−エチルエステルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項59】
シクロプロパンカルボン酸,2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エチルエステルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項60】
シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸,ビス−(2−エトキシ−エチル)エステルおよび
シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸,ビス−(2−メトキシ−エチル)エステルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項61】
シクロプロパンカルボン酸,2−(4−メチル−チアゾール−5−イル)−エチルエステル、
シクロプロパンカルボン酸−2−モルホリン−4−イル−エチルエステル、
シクロプロパンカルボン酸,5−エチル−[1,3]−ジオキサン−5−イルメチルエステルおよび
シクロプロパンカルボン酸,2,3−ジヒドロ−ベンゾ(1,4)−ジオキシン−2−イルメチルエステルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項62】
シクロプロパンカルボニルスルファニル−酢酸メチルエステル、
シクロプロパンカルボチオ酸,S−(2−アセチルアミノ−エチル)エステルおよび
シクロプロパンカルボチオ酸,S−フラン−2−イルメチルエステルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項63】
化合物1,2,3,5,6−ペンタ−O−(シクロプロパンカルボニル)−D−グルコピラノース。
【請求項64】
請求項1に記載の少なくとも1種の化合物の、グルコース利用を増大させる量を含む薬学的組成物。
【請求項65】
請求項30に記載の少なくとも1種の化合物の、グルコース利用を増大させる量を含む薬学的組成物。
【請求項66】
請求項34に記載の少なくとも1種の化合物の、グルコース利用を増大させる量を含む薬学的組成物。
【請求項67】
請求項35に記載の少なくとも1種の化合物の、グルコース利用を増大させる量を含む薬学的組成物。
【請求項68】
請求項41に記載の少なくとも1種の化合物の、グルコース利用を増大させる量を含む薬学的組成物。
【請求項69】
請求項47に記載の少なくとも1種の化合物の、グルコース利用を増大させる量を含む薬学的組成物。
【請求項70】
請求項53に記載の少なくとも1種の化合物の、グルコース利用を増大させる量を含む薬学的組成物。
【請求項71】
温血動物の細胞、組織または器官におけるグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、請求項1に記載の少なくとも1種の化合物のグルコース利用に効果的な量で処理するステップを含む、方法。
【請求項72】
温血動物の細胞、組織または器官におけるグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、請求項30に記載の少なくとも1種の化合物のグルコース利用に効果的な量で処理するステップを含む、方法。
【請求項73】
温血動物の細胞、組織または器官におけるグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、請求項34に記載の少なくとも1種の化合物のグルコース利用に効果的な量で処理するステップを含む、方法。
【請求項74】
温血動物の細胞、組織または器官におけるグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、請求項35に記載の少なくとも1種の化合物のグルコース利用に効果的な量で処理するステップを含む、方法。
【請求項75】
温血動物の細胞、組織または器官におけるグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、請求項41に記載の少なくとも1種の化合物のグルコース利用に効果的な量で処理するステップを含む、方法。
【請求項76】
温血動物の細胞、組織または器官におけるグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、請求項47に記載の少なくとも1種の化合物のグルコース利用に効果的な量で処理するステップを含む、方法。
【請求項77】
温血動物の細胞、組織または器官におけるグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、請求項53に記載の少なくとも1種の化合物のグルコース利用に効果的な量で処理するステップを含む、方法。
【請求項78】
前記器官が心臓である、請求項71に記載の方法。
【請求項79】
前記細胞が心筋細胞である、請求項71に記載の方法。
【請求項80】
グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、
このような治療を必要とする患者に、請求項1に記載の少なくとも1種の化合物を含む薬学的組成物のグルコース利用を増大させるのに有効な量を投与するステップを含む、方法。
【請求項81】
グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、
このような治療を必要とする患者に、請求項30に記載の少なくとも1種の化合物を含む薬学的組成物のグルコース利用を増大させるのに有効な量を投与するステップを含む、方法。
【請求項82】
グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、
このような治療を必要とする患者に、請求項34に記載の少なくとも1種の化合物を含む薬学的組成物のグルコース利用を増大させるのに有効な量を投与するステップを含む、方法。
【請求項83】
グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、
このような治療を必要とする患者に、請求項35に記載の少なくとも1種の化合物を含む薬学的組成物のグルコース利用を増大させるのに有効な量を投与するステップを含む、方法。
【請求項84】
グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、
このような治療を必要とする患者に、請求項41に記載の少なくとも1種の化合物を含む薬学的組成物のグルコース利用を増大させるのに有効な量を投与するステップを含む、方法。
【請求項85】
グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、
このような治療を必要とする患者に、請求項47に記載の少なくとも1種の化合物を含む薬学的組成物のグルコース利用を増大させるのに有効な量を投与するステップを含む、方法。
【請求項86】
グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、
このような治療を必要とする患者に、請求項53に記載の少なくとも1種の化合物を含む薬学的組成物のグルコース利用を増大させるのに有効な量を投与するステップを含む、方法。
【請求項87】
前記障害または状態が、虚血/再潅流損傷、心筋梗塞後、狭心症、心不全、心筋症、末梢血管疾患、糖尿病および乳酸アシドーシスまたは開心術、バイパス手術または心臓移植に伴って起こる症状もしくは副作用である、請求項80に記載の方法。
【請求項88】
前記障害または状態が虚血/再潅流損傷である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
請求項64に記載の薬学的組成物を含むキット。
【請求項90】
前記キットが、インビトロ、インビボまたはエキソビボにおいて前記キットの構成要素を使用するための指示を含むラベルまたは添付文書を含む、請求項89に記載のキット。
【請求項91】
温血動物の細胞、組織または器官においてグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、以下
【化27】

シクロプロパンチオカルボニルCoAのプロドラッグまたはシクロプロパンカルボチオン酸のチオエステルからなる群から選択される化合物のグルコース利用に有効な量で処理するステップを含む、方法。
【請求項92】
温血動物の細胞、組織または器官においてグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、インビボでCoAエステルを形成する請求項1に記載の化合物のグルコース利用に有効な量で処理するステップを含む、方法。
【請求項93】
温血動物の細胞、組織または器官においてグルコース利用を増大させる方法であって、前記細胞、組織または器官を、インビボでCoAエステルを形成する請求項30に記載の化合物のグルコース利用に有効な量で処理するステップを含む、方法。
【請求項94】
グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、グルコース利用を増大させるのに有効な量のPDHK阻害剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項95】
グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、グルコース利用を増大させるのに有効な量のPDHK阻害剤を投与するステップを含み、前記PDHK阻害剤が、インビボでCoAエステルを形成する請求項1に記載の化合物を含む、方法。
【請求項96】
グルコース利用を増大させることによって治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、グルコース利用を増大させるのに有効な量のPDHK阻害剤を投与するステップを含み、前記PDHK阻害剤が、インビボでCoAエステルを形成する請求項30に記載の化合物を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−531545(P2008−531545A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556688(P2007−556688)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001587
【国際公開番号】WO2006/117686
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(504368697)ザ ガバナーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アルバータ (6)
【Fターム(参考)】