説明

グルコース制御およびインスリン作用を栄養的に改善するための方法および組成物

【課題】
本発明は、個体におけるグルコースおよびインスリンバランスを栄養的に改善する方法および組成物を提供する。本発明はさらに、糖尿病の併存症の処置法を提供する。
【解決手段】
一態様として、本発明は、タンパク質源;脂肪源;および炭水化物源を含む栄養製剤(ここで、該タンパク質源、該脂肪源、および該炭水化物源が約1:1:1の比率であり、各々本組成物の総カロリーの約1/3を構成する)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
1.技術分野
本発明は一般に栄養およびより特に個体におけるグルコースおよびインスリンバランスを改善するための方法および栄養組成物に関する。一つの態様において、本発明は、心血管疾患またはメタボリック症候群のような糖尿病と関係する疾患または状態の処置に有用な約1:1:1の炭水化物:脂肪:タンパク質比率を有する栄養組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術
米国における肥満および2型糖尿病発病率は過去30年で、とりわけ過去10年で劇的に増加している。2型糖尿病、および心血管疾患のような併存症の発病率は肥満との直接の関係が増加している。これらの慢性疾患の疫学は肥満およびインスリン抵抗性の食事管理を強調している。計画的体重減少は2型糖尿病の危険性および心血管危険性を著しく減少させる。“Atkins”または“Ornish”のような代用食が最近20年で非常に一般的になってきている。これらの食事は極端な脂肪または炭水化物に焦点を絞る(高脂肪または高炭水化物食)。
【0003】
Atkinsのような非常に低い炭水化物食は体重減少食として現在一般的である。しかしながら、体重管理およびインスリン感受性に最適な食事中の炭水化物、タンパク質および脂肪の量の同意はない。最近のいくつかの研究は高脂肪/高タンパク質ケト原性食が顕著な体重減少に好都合であることを示唆する。しかし、これらの食事中の高タンパク質または高脂肪または低炭水化物、またはこれらの因子の組み合わせのいずれが、観察される代謝効果を担うかは明らかではない。故に、脂肪症およびインスリン抵抗性に対する食事の主要栄養素組成の効果はまだ不明瞭である。
【0004】
主要栄養素バランスは重要な因子であり得る。高脂肪食は、一般に、現在の文献に従うと、男性および女性における肥満および脂肪症を誘発する。女性における高脂肪食および高炭水化物自由食はインスリン感受性を障害することが示されている。また、高炭水化物食は肝臓重量、肝臓トリグリセリドおよび肝臓エステル化コレステロール(EC)を著しく増加させる。
【0005】
ヒトでの試験は、低脂肪食と比べて低炭水化物食でより大きな体重減少が報告されている。低炭水化物食は、高脂肪/高タンパク質含量をもたらす脂肪およびタンパク質が高い食事を含む。これは食事の脂肪対タンパク質比率がエネルギーバランス、脂肪量および体重増加の制御に重要な因子であり得ることを示唆する。高炭水化物食は、カロリー摂取が高脂肪/高タンパク質食のカロリーに限定されているときに、最も少ない体重増加をもたらす。グルコース代謝および酸化が、食事の炭水化物摂取に従いより効率的に上方制御されることが判明している。しかしながら、高炭水化物食は、恐らく炭水化物としての過剰なカロリー摂取のために、肝臓脂質生合成を増加させ、そして脂肪酸酸化および脂肪分解を減少させ、体重増加に至る。
【0006】
国民健康栄養調査(NHANES;1988−94)および肥満における炭水化物摂取(Yang et al. 2003, AJCN 77:1426)の図1−2は、高炭水化物摂取が低いインスリン分泌に至ることを示す。これはHbA1c、空腹時血清グルコースおよびインスリンのレベルに著しい変化なしで達成される。文献中では、インスリンが炭水化物の増加に連れてより効率的になると解釈されている。
【0007】
さらに、Yangは高脂肪+高タンパク質摂取がより高いエネルギー摂取、より大きなBMI、およびより大きなインスリン分泌をもたらし、主要なシフトがおおよそ>30%脂肪(負の影響)および>15%タンパク質(正の影響)で起こることを示している。
【0008】
Dansinger, M. et al(JAMA 2005;293:45-53)はAtkins食(低炭水化物)、Zone食(タンパク質、脂肪および炭水化物から30:30:40比率のカロリー)、Weight Watchers(低カロリー、低脂肪食)およびOrnish(高炭水化物、低脂肪)を比較した。結果は、12週目で、Ornish、ZoneおよびWeight Watchersが全て、Atkinsよりも大きな体重減少をもたらすことを示した(図3)。
【0009】
サンプルのAtkinsおよびOrnish比を図4に記載する。図5−6はこれらの食事の食事誘発肥満(DIO)マウスにおける体重増加および雄ApoEマウスにおけるインスリン耐性に対する効果を説明する。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
本発明は、タンパク質;脂肪;および炭水化物を含む、インスリン感受性の増加、インスリン抵抗性の減少、食後脂肪クリアランスの増加、血中へのグルコースの出現の遅延、および/または食後血漿インスリン濃度の減少のための組成物または食事レジメンに関する。本発明は、さらに、その正常血糖ならびに正常インスリン産生および機能からインスリン依存性および膵臓疲労までの範囲に有用な2型糖尿病およびその併存症の処置、予防および/または発症遅延のための組成物または食事レジメンに関する。本発明はさらに肥満の処置および/または予防に用い得る。
【0011】
以下に詳細に記載する実験中、タンパク質および脂肪が1:1の比率であり、各々組成物の総カロリーの約15%から約45%を構成するとき、対象動物のインスリン抵抗性が相当減少することが、驚くべきことに判明した。本組成物または食事レジメンは哺乳動物、および好ましくはヒトに投与できる。
【0012】
本組成物または食事レジメンにおいて、本タンパク質および脂肪各々は:本組成物の総カロリーの約20%から約45%;本組成物の総カロリー約20%から約40%;本組成物の総カロリーの約25%から約40%;本組成物の総カロリーの約25%から約35%;または本組成物の総カロリーの約30%から約35%である。
【0013】
本組成物または食事レジメンにおいて、本タンパク質および脂肪は好ましくは:本組成物の総カロリーの約15%;本組成物の総カロリーの約20%;本組成物の総カロリーの約25%;本組成物の総カロリーの約30%;本組成物の総カロリーの約35%;本組成物の総カロリーの約40%;または本組成物の総カロリーの約45%である。
【0014】
本組成物または食事レジメンは、本組成物の総カロリーの約2%以上のリノール酸(18:2)を含む。好ましくは、本組成物または食事レジメンは、総カロリーの約2%から約10%;総カロリーの約3%から約9%;総カロリーの約4%から約8%;総カロリーの約4%から約7%;または総カロリーの約5%から約6%のリノール酸(18:2)レベルを有する。
【0015】
好ましくは、本組成物または食事レジメンは、総カロリーの約2%;総カロリーの約3%;総カロリーの約4%;総カロリーの約5%;総カロリーの約6%;総カロリーの約7%;総カロリーの約8%;総カロリーの約9%;または総カロリーの約10%のリノール酸(18:2)レベルを有する。
【0016】
特に好ましい態様において、本組成物または食事レジメンは、脂肪およびタンパク質の各々の比率と実質的に等しい炭水化物の比率を有する。すなわち、脂肪、炭水化物およびタンパク質が実質的に1:1:1比率で提供される。
【0017】
本発明の組成物または食事レジメンは、血糖制御および/または心血管疾患、異脂肪血症、網膜症、コラーゲン組織の変化、炎症、およびインスリン抵抗性のような糖尿病に関連する併存症の改善が可能な1種以上の栄養製品を含み得る。適当な製品は、例えば、トウチ抽出物、一部加水分解されたグアーガム、イヌリン、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトース、スクロマルト(sucromalt)、トレハロース、リポ酸、4−ヒドロキシイソロイシン、カテキン、シナモン、バナバ抽出物、マデグルシル、アルギニン、分枝鎖アミノ酸(BCAA)(すなわち、ロイシン、イソロイシン、およびバリン)、グルタミン、グルタメート、魚油、クロロゲン酸、マンゴスチン、ヤシ油工場廃液、クロミウム、バナジウム、マンサク、オールスパイス、ローリエ、ナツメグ、丁子、キノコ、可溶性粘性繊維(ベータ−グルカンを含むが、これに限定されない)および出芽酵母を含む。
【0018】
本発明の説明的局面は、ここに記載の問題および当業者には発見可能なここに記載していない他の問題を解決するために設計する。
【0019】
詳細な記載
本明細書を通して使用する範囲は、その範囲内にある各々および各値を記載するための略語として使用する。該範囲内の全ての値を該範囲内の終末として選択できる。使用するとき、語句“少なくとも1個”は、何れか1つのメンバー個々のまたはメンバーのいずれかの組み合わせの選択を意味する。接続語“および”または“または”をメンバーのリストに使用してよいが、“少なくとも1個”の語句が支配的語句である。例えば、A、B、およびCの少なくとも1個は、A単独、B単独、C単独、AとB、BとC、AとCまたはAとBとCの略語である。
【0020】
特許請求の範囲を含む本明細書を通して含まれる全ての値は、特に正確であると記載していない限り“約”を使用していても使用していなくても、おおよそであると考える。
【0021】
食事レジメンは、一定のパラメータ内に入る食事および/または飲料の組み合わせを含むが、これに限定されない(すなわち、一緒に摂取したとき、1:1の脂肪対タンパク質比率を含む食事および/または飲料)。
【0022】
用語“哺乳動物”は、齧歯類、水生哺乳動物、イヌおよびネコのような家庭用動物、ヒツジ、ブタ、ウシおよびウマのような家畜、およびヒトを含むが、これらに限定されない。用語哺乳動物を使用するとき、哺乳動物により効果を示すことができるまたは示すことが意図される他の動物にも適用することを意図する。
【0023】
ここで使用する糖尿病は、1型および2型糖尿病を含み、耐糖能障害、インスリン抵抗性、減少したインスリン感受性、インスリン依存を含むがこれらに限定されない、正常血糖ならびに正常インスリン産生および機能からインスリン依存性および膵臓疲労の範囲に入る生理学的機能の状態を意味する。
【0024】
糖尿病の併存症は:心血管疾患、異脂肪血症、網膜症、コラーゲン組織の変更、炎症、およびインスリン抵抗性を含む。
【0025】
本発明は、タンパク質;脂肪;および炭水化物を含む、インスリン感受性の増加、インスリン抵抗性の減少、食後脂肪クリアランスの増加、血中へのグルコースの出現の遅延、および/または食後血漿インスリン濃度の減少のための組成物または食事レジメンに関する。本発明は、さらにその正常血糖ならびに正常インスリン産生および機能からインスリン依存性および膵臓疲労までの範囲に有用な、2型糖尿病およびその併存症の処置、予防および/または発症遅延のための組成物または食事レジメンに関する。
【0026】
以下に詳細に記載する実験中、タンパク質および脂肪が1:1の比率であり、各々組成物の総カロリーの約15%から約45%を構成するとき、対象動物のインスリン抵抗性が相当減少することが、驚くべきことに判明した。本組成物または食事レジメンは動物、好ましくは哺乳動物、および最も好ましくはヒトに投与できる。
【0027】
本組成物または食事レジメンにおいて、本タンパク質および脂肪各々は:本組成物の総カロリーの約20%から約45%;本組成物の総カロリー約20%から約40%;本組成物の総カロリーの約25%から約40%;本組成物の総カロリーの約25%から約35%;または本組成物の総カロリーの約30%から約35%である。
【0028】
本組成物または食事レジメンにおいて、本タンパク質および脂肪は好ましくは:本組成物の総カロリーの約15%;本組成物の総カロリーの約20%;本組成物の総カロリーの約25%;本組成物の総カロリーの約30%;本組成物の総カロリーの約35%;本組成物の総カロリーの約40%;または本組成物の総カロリーの約45%である。
【0029】
本組成物または食事レジメンは、本組成物の総カロリーの約2%以上のリノール酸(18:2)を含む。好ましくは、本組成物または食事レジメンは、総カロリーの約2%から約10%;総カロリーの約3%から約9%;総カロリーの約4%から約8%;総カロリーの約4%から約7%;または総カロリーの約5%から約6%のリノール酸(18:2)レベルを有する。
【0030】
好ましくは、本組成物または食事レジメンは、総カロリーの約2%;総カロリーの約3%;総カロリーの約4%;総カロリーの約5%;総カロリーの約6%;総カロリーの約7%;総カロリーの約8%;総カロリーの約9%;または総カロリーの約10%のリノール酸(18:2)レベルを有する。
【0031】
ヒト試験に基づいて、我々は、2種のマウスモデル、すなわち食事誘発肥満(DIO)C57BL/6およびApoE(−/−)マウスにおける異なる主要栄養素バランスの代謝効果を試験した。
【0032】
ApoE(−/−)マウスは、DIOマウスと比較して、より少ない体重増加であり、より少ない脂肪量を有した。制限されたおよび自由に摂取できる高炭水化物カロリーの差異は、ApoE(−/−)マウスで観察されなかった。これは恐らくApoE(−/−)マウスにおける障害されたトリグリセリド輸送/取り込みによる。
【0033】
食事のタンパク質含量を増やすと、中程度の脂肪摂取で肥満の危険性を減少させる。1.0の脂肪−対−タンパク質比率で、かつ総カロリーの40%(%en)が炭水化物に由来すると、少ない体重増加と少ない脂肪蓄積をもたらした。高炭水化物食においてタンパク質を炭水化物の代わりにすることは、肥満および心血管危険因子を著しく改善した。しかしながら、>30%enでのタンパク質摂取は、DIOマウスにおいてインスリン感受性を障害し、そして腎臓重量を増加する傾向にあった。炭水化物の脂肪置換は体重増加およびインスリン抵抗性の増加に至った。
【0034】
これらの試験は、食事における主要栄養素バランスが肥満、インスリン抵抗性および心血管疾患の危険性の減少に重要であり得ることを示唆する。脂肪およびタンパク質の全体量に加えて、脂肪−対−タンパク質比率が減量食において重要な問題であるように見える。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、先行文献の記載を示す。
【図2】図2は、先行文献の記載を示す。
【図3】図3は、先行文献の記載を示す。
【図4】図4は、先行文献の記載を示す。
【図5】図5は、先行文献の記載を示す。
【図6】図6は、先行文献の記載を示す。
【図7】図7は、雄および雌マウスのITTデータを示す。
【図8】図8は、雄および雌マウスのITTデータを示す。
【図9】図9は、試験を通して使用した種々の食事中の炭水化物、脂肪、およびタンパク質の比率を示す。
【図10】図10は、試験を通して使用した種々の食事中の炭水化物、脂肪、およびタンパク質の比率を示す。
【図11】図11は、C57BL/6J雄および雌マウスにおける、体重増加の結果を示す。
【図12】図12は、C57BL/6J雄および雌マウスにおける、腎周囲脂肪重量増加の結果を示す。
【図13】図13は、C57BL/6J雄および雌マウスにおける、肝臓重量増加の結果を示す。
【図14】図14は、C57BL/6J雄および雌マウスにおける、血漿総コレステロールの増加の結果を示す。
【図15】図15は、C57BL/6J雄および雌マウスにおける、血漿総グリセリド濃度の結果を示す。
【図16】図16は、試験12の結果を示す。
【図17】図17は、試験13の結果を示す。
【図18】図18は、試験13の結果を示す。
【図19】図19は、試験13の結果を示す。
【図20】図20は、試験13の結果を示す。
【図21】図21は、試験13の結果を示す。
【図22】図22は、試験13の結果を示す。
【図23】図23は、試験13の結果を示す。
【図24】図24は、試験13の結果を示す。
【図25】図25は、試験13の結果を示す。
【図26】図26は、試験13の結果を示す。
【図27】図27は、試験13の結果を示す。
【図28】図28は、試験13の結果を示す。
【図29】図29は、試験13の結果を示す。
【図30】図30は、試験13の結果を示す。
【図31】図31は、試験13の結果を示す。
【図32】図32は、試験15の結果を示す。
【図33】図33は、試験15の結果を示す。
【図34】図34は、試験15の結果を示す。
【実施例】
【0036】
試験
本発明を以下の実施例においてさらに記載する。これらの実施例は単に説明するものであり、記載のおよび請求された本発明の範囲をいかなる方法でも限定しない。
【0037】
合計17の試験を行っている。最初の5つの試験は、血中脂質プロファイルおよびインスリン耐性における、食事の脂肪タイプおよび量の効果を測定した。残りの12の試験の目的は、インスリン感受性および血中脂質プロファイルにおける食事の主要栄養素分布の操作の効果の測定であった。
【0038】
マウス2種を使用した:負荷食で高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、およびインスリン抵抗性を発症するApoE(−/−)、および、食事に応答して血漿および肝脂質の支持変化(supporting change)を伴うインスリン抵抗性および肥満になる野生型マウスである食事誘発肥満C57BL/6J。重要な発見は、総脂肪摂取と、定義によりまた脂肪/炭水化物比率にも影響する食事脂肪/タンパク質比率(エネルギー%として)の関係が肥満の発症の理解に重要であるように見えるとの観察である。
【0039】
総エネルギーの2%以上の量でのリノール酸(18:2)の包含が、インスリン感受性および食後脂肪クリアランスを改善することが驚くべきことに判明した。これらの発見は:1)魚油の添加がインスリン抵抗性を減少させるが、リノール酸要求を高めるように見える;2)トランス脂肪酸がインスリン抵抗性を増加させるが、またリノール酸の必要性も増加させ得る;3)トランス脂肪酸消費と共に観察される増加したインスリン抵抗性は、一部、リノール酸の誘発された欠損に二次的であり得ることを示す。
【0040】
インスリン感受性は、グルコース負荷後経時的にグルコースの出現をモニターするグルコース抵抗性試験の慣用の方法よりむしろインスリン注射後の血中グルコース濃度測定の技術を使用して測定した。本インスリン耐性試験は、現在の食事環境下でのインスリン機能/インスリン抵抗性の最良の指標であると考えられている。
【0041】
試験7のデータは、食事の脂肪対タンパク質の比率がインスリン感受性を調節することを初めて示した。脂肪摂取(30%)が一定で、タンパク質レベルをエネルギーの45%まで増加させると、インスリン感受性が減少した。フォローアップ試験(#17)からの発見は1:1の脂肪:タンパク質比率が、脂肪の増加により予測される通り、インスリン抵抗性に変化をもたらさないことを示した。インスリン抵抗性は、動物にタンパク質および脂肪の量が40%であるか33%であるかに係わらず、タンパク質および脂肪からのエネルギー1:1比率で食事を与えたとき、同じであった。インスリン抵抗性は、動物に1:1比率のタンパク質および脂肪(各40%)の食事を与えたとき、動物にタンパク質の量は同じ(45%)であるが、脂肪の量が少ない(30%)食事を与えたときよりも減少した。これらの発見は、タンパク質:脂肪の比率が、食事のタンパク質量単独よりもインスリン抵抗性の調節に重要であることを指示する。
【0042】
試験12の証拠は、脂肪蓄積、インスリン抵抗性、および血中グルコース濃度は、動物に1:1比率のタンパク質対脂肪を与えたとき、比率が1:2、1:3.5、および1:4であるときと比較して低いことを示した。再び、これらの発見は、インスリン感受性が、1:1比率のタンパク質対脂肪を消費したときに最適化され、そして1:1比率からのいずれかの方向への逸脱はインスリン抵抗性を増加させるとの証拠を提供する。
【0043】
これらの一連の実験の全体的な結論は、糖尿病の動物モデルにおいて:1)リノール酸(18:2)の高い摂取がインスリン抵抗性の減少に必要である;2)超長鎖n−3脂肪酸がインスリン抵抗性を減少させるが、リノール酸の必要性を増加させる;3)タンパク質要求は増加し、不適切なタンパク質栄養状態はインスリン抵抗性を増加させる;および4)タンパク質および脂肪からの1:1比率のエネルギー、好ましくはタンパク質、脂肪、および炭水化物からの1:1:1比率のエネルギーがインスリン感受性の改善に最適であるということである。
【0044】
試験1 − 脂肪タイプならびに脂質レベルおよびインスリン耐性に対する影響
最初はC57BLK/SJと戻し交配した我々がタイプAと呼んでいるものおよびその後C57BL/6Jと戻し交配したタイプBでの、Leptr(−/−)マウスを使用した食事の脂肪酸を試験するための試験。タイプAは極度に肥満であり、非常に高い血中グルコース濃度であった。それらは弱すぎて、食事の負荷の圧力下に代謝が破壊された。脂肪を全ての食事の脂肪酸を制御するために注意深く混ぜることにより、我々は、インスリン抵抗性結果に対するn−3脂肪酸に関する基本情報を集めるために、管理した。主に飽和脂肪として40%enを含み、18:2からは2%enのみである食事を、n−3脂肪酸の何らかの効果を増強するために設計した。魚油はインスリン感受性および血漿トリグリセリドの観点からそれらの環境を改善し、n−3長鎖脂肪酸はグルコースクリアランスを増加することを示唆した。しかしながら、これらのn−3補給タイプマウスはより体重(脂肪)が増加する傾向にあり、それらの経口脂肪負荷(OFTT)に対する応答は、恐らく中性油(オリーブ)が負荷強制飼養脂肪として働くとき、障害された。これは他の脂肪/油がより代表的な負荷を提示するかどうかの問題を提起した(WTマウスでの試験4参照)。
【0045】
n−3エイコサペンタエン酸(EPA)+ドコサヘキサエン酸(DHA)は糖尿病性グルコース代謝およびインスリン耐性試験(ITT)を助け、食後脂肪クリアランスおよび付加された体重増加に関するいくつかの問題が提起された。また、18:3 n−3は、n−3長鎖脂肪酸よりも僅かな18:2摂取を悪化させ得るように見える。要約すると、証拠は必須脂肪酸状態が糖尿病に重要であることを示唆する;すなわち高い18:2要求を有する可能性があり、それは利益を得るために何らかの食事介入に入れ込まなければならない。したがって、魚油の食事への添加はインスリン感受性および血漿トリグリセリドを改善し、n−3−多不飽和脂肪酸(PUFA)がグルコースクリアランスを改善することを示唆する。しかしながら、n−3補給を受けた全てのマウスがより脂肪重量を増加させる傾向にあり、オリーブ油を使用した経口脂肪負荷に対するマウスの応答は障害されていた。故に、グルコース制御は改善されるが、体重は増加した。証拠は、必須脂肪酸状態が糖尿病のために重要であり、そして多不飽和脂肪酸(18:2)要求を有し得て、それは何らかの食事介入に入れ込まなければならない。
【0046】
試験2
タイプB Leptr(−/−)(試験2)と、Leptr(−/−)、すなわち、C57BL/6Jのために戻し交配に使用した野生型マウス(試験5)を比較するとき、我々は試験2および5を組み合わせた(n=18)。ここで、我々はまたタイプB(これはタイプAと同様過食であり、いずれもレプチン受容体を有しないためである)における食事制限およびの項も試験し、インスリン感受性応答の評価中に漸増させる18:2 PUFA(2%、4%、6%enで増加)の設計を加えた。タイプBマウスは、タイプAよりも安定しており、より良い実験マウスであるが、維持が難しかった。それらはタイプAよりも低いグルコース、良好なインスリン試験結果(testing)を有するが、まだ肥満およびインスリン抵抗性、グルコース不耐性などになった。加えて、タイプBを通常食摂取に制限したとき、それらはWT正常マウスに近づくITTを有し、それらのインスリン/肥満問題が直接過食と関連していることを示した(2型ヒトと同様)。18:2のWTマウスへの添加は、数匹のマウスが、我々がグルコースが投与可能になる前にi.p.インスリンによりインスリン昏睡で死亡したため、インスリンへの感受性を増加させるように見えた。これは、脂肪酸摂取のタイプおよび質量がマウスインスリン動力学に大きな影響を有し得るとの第二の手掛かり(試験1におけるn−3 FA後)であった。また、Brandeis casual WTにおける18:2はそれらのOFTTを改善し、これらのWTはタイプBまたはDIO WTマウス、すなわち、2つの肥満モデルのいずれかよりも良いOFTTを有した。
【0047】
レプチン受容体がなく、通常可食であるために食事制限をしたマウスに、漸増量(エネルギーの2、4および6%)の多不飽和脂肪酸(18:2)を含む食事を与えると、制限しなかったマウスと比較して、減少したグルコースレベルおよび改善したインスリン感受性を有した。これは、本動物モデルでのインスリン/肥満問題が、2型糖尿病を有するヒトに非常に類似して過食と直接関係することを示した。
【0048】
試験3 − 糖尿病重症度のトランス脂肪試験
トランス脂肪酸(FA)が摂取とヒトの糖尿病リスクの間の強い相関関係を有するため、我々は3レベルのトランスFA(0、8、16%en)を、社内で利用可能なマウスの集団に与えた。9匹は遺伝的に変えられたIR/IRS−1+/−糖尿病マウスであり、1版は我々のコロニーからの一般的野生型であり、合計18匹のマウスで、1食事あたり6匹であった。トランスFA摂取は、コントロール食(トランス無し)と比較してITTを障害し、そして障害はトランス摂取と直接関係したが、LEPTr(−/−)マウスで見られる程度まではなかった。トランスについて血中脂質を下げる傾向があったが、トランスはまた食事摂取の減少ももたらした。
【0049】
トランス脂肪酸は18:2要求および糖尿病感受性を上げる一方、食欲を抑制し得る(インスリン感受性は食事摂取の減少に関係なく減少した)。トランス脂肪摂取は、エネルギーの8および16%をトランス脂肪として摂取したマウスにおけるインスリン耐性を、コントロール食(0%トランス脂肪)のマウスと比較して障害した。減少したインスリン感受性はトランス脂肪摂取と直接関係した。しかしながら、トランス脂肪について血中脂質を下げる傾向にあったが、トランス脂肪を含む食事はまた食事摂取の減少ももたらした。
【0050】
トランス脂肪は多不飽和脂肪酸(18:2)要求および糖尿病感受性を上げる一方、食欲を抑制し得、同様にインスリン感受性が食事摂取の減少に関係なく減少し、これは直感と逆であるように見える。
【0051】
試験4 − 脂肪耐性試験
ここで、我々はBrandeis casual WTマウスにおける脂肪タイプ、すなわち、飽和脂肪に富むコントロール(2%en 18:2)または+2%en EPA+DPAを魚油として補われた脂肪の長期摂取が、負荷脂肪(経口強制飼養)を変えたときに食後応答の差異を起こすがどうか調べた。我々は、飽和、多不飽和、および単不飽和に富む脂肪を代表するためにヘビー・クリーム、オリーブ油、およびコーン油で負荷した。
【0052】
応答は、驚くべきことに、長期脂肪の根底を成す影響および負荷脂肪特性の両方に関してであった。コントロールマウスは、FO補給マウスと同様にはOFTTに応答せず(n−3 PUFAが脂肪−インスリン代謝を改善するとのさらなる証拠)、およびOOがコントロールのためには最悪の負荷であり、一方全脂肪がFOマウスにおいてほとんど同様であった。これらのWTマウスにおいて、長期FOはOFTTを増加するように見え、試験1におけるタイプAマウスと対照的であることに注意すべきである。コーン油は、両方の長期食事群で独特の“遅延二重反発(late double-bounce)”をもたらした。マウス試験における脂肪負荷(OFTT)の結果の選択および解釈のときに注意深く選択しなければならないことが大切である(恐らくヒトおよび他の種にも同様に当てはまる)。これは、一部、我々が、我々の食事環境下でインスリン機能/インスリン抵抗性の単独の最良の指標としてITTに焦点を当てているためである。故に、脂肪負荷の結果の解釈は、使用したマウスモデルも考慮すべきである。野生型マウスにおいて、長期魚油補給は、レプチン受容体欠損マウスと比較して脂肪耐性を促進するように見える。
【0053】
試験5 − 試験2参照(野生型)
多不飽和脂肪酸(18:2)の野生型マウスの食事への添加は、インスリンへの感受性を高めた。加えて、18:2の野生型マウスの食事への添加は、肥満の他の2種のマウスモデルと比較して、経口脂肪負荷耐性を改善した。
【0054】
試験6 − apoE(−/−)マウスにおける高脂肪/高タンパク質と高炭水化物/低脂肪食のアテローム性動脈硬化症に対する影響
apoE欠損マウスを3群に分けた:1)制御食(AHA;60%CHO、19%タンパク質、21%脂肪);2)高脂肪/高タンパク質食(Atkins;11%CHO、30%タンパク質、59%脂肪);および3)高炭水化物/低脂肪食(Ornish;71%CHO、18%タンパク質、11%脂肪)。空腹時血漿脂質、コレステロール、経口グルコース耐性試験およびインスリン抵抗性試験を食事介入10および12週間後に行った。本試験は、現在ヒトで流行しており、我々の脂肪/インスリン仮説に概念的に直接働く、主要栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質)の食事シフトを適用した、アテローム性動脈硬化症感受性、apoE(−/−)マウスでの我々の初めての大きな実験を示す。設計は、5群で8匹マウス/群であり、コントロール群とAtkins食(高脂肪、高タンパク質)の2つの変形(2.4対6.5%en 18:2)、Ornish食(高炭水化物、低脂肪)の二つの変形(0.5対1.3%en 18:2)の食事を比較した。故に、Atkins/Ornish食群内で、18:2によるインスリン感受性に対する効果をさらに調べる(tease out)ために、変形は18:2としてのPUFAの高および低レベルであった。
【0055】
Atkinsマウス(高カロリー密度)はOrnishよりも少ない食事およびカロリー摂取であったが、驚くべきことに体重または脂肪は差がなかった。その結果、OrnishマウスはAtkinsマウスよりも多い食事を取り、多いコレステロールを摂取した。Ornish(雄および雌)マウスはAtkinsマウスと比較して顕著に高い血漿TC、肝臓ECおよびアテローム性動脈硬化症を有した。Ornishマウスにおける高PUFA摂取は雄でアテローム性動脈硬化症を減少させる傾向にあったが、雌ではなかった。Ornish雄は雌より高い血漿総コレステロールであったが、肝臓ECは雌で高く、アテローム性動脈硬化症は雄および雌で等しかった。雄アテローム性動脈硬化症は食事介入に感受性であり(Ornishが高く、Atkinsが低い)、一方雌はインスリン感受性(ITT)により応答性であり、Atkinsマウスがより抵抗性であった。故に、恐らく肝臓が炭水化物を直接代謝し、その後それをリポタンパク質中、コレステロールと共に脂肪として排泄することを強いられるため、炭水化物は一般に肝臓および血漿コレステロールを上げることにより不利な効果を発現する。これは、増加した肝臓および血中脂質、ならびにアテローム性動脈硬化症をもたらした。
【0056】
肝臓コレステロールはアテローム性動脈硬化症のよい予測であり、驚くべきことに血漿総コレステロールレベルよりも遙かに優れていた。Atkins雄はわずかに多い脂肪を有し、少ない食事量の傾向にもかかわらず大きい腎臓を有する傾向にあり、一方全てのOrnishは大きな肝臓を有した。加えて、全てのAtkinsマウスは悪いITTを有し、すなわち、よりインスリン抵抗性となった。
【0057】
このapoE(−/−)アテローム性動脈硬化症感受性モデルは、主要栄養素操作に良好な応答を示した(インスリン感受性、血液、大動脈および肝臓脂質、脂肪貯蔵)。高炭水化物/低脂肪食は、高脂肪/高タンパク質食と比較してより多い食事摂取および増加した総血漿コレステロール、ならびに動脈および肝臓コレステロール蓄積をもたらした。対照的に、高脂肪/高タンパク質食は、高炭水化物/低脂肪食と比較してインスリン抵抗性および障害されたグルコースクリアランスをもたらした。これらの結果は、高脂肪/高タンパク質食および高炭水化物/低脂肪食の特異的局面を、体重減少ならびに冠動脈心疾患および2型糖尿病の危険性の減少のために一般集団に処方する前に評価する必要があることを示す。
【0058】
試験7 − apoE(−/−)マウスにおける食事タンパク質(15、30および45%en)の血漿脂質およびインスリン感受性(ITT)に対する影響
本試験は、ATKINS食の内容物中のタンパク質のレベルを、その食事に感受性のApoEマウスを使用して試験した。3つの食事群は炭水化物の代わりに3レベルのタンパク質(15、30、45%en)を有し、一方脂肪は、最初は30%en(通常)で12週試験期間一定に維持した。その後16週間、脂肪を50%en(高脂肪、真Atkins)に増加させた。低タンパク質(通常)食が雌におけるインスリン感受性に最良であり、高タンパク質が両方の性別で最悪であった。非常に高タンパク質は脂肪組織を大きく減少させ、腎臓を大きくしたが、総コレステロールには影響しなかった。この減少した脂肪(高脂肪および最高タンパク質でのみ)は、幾分インスリン抵抗性を説明し、Atkins食がなぜヒトにおける体重減少のために作用するかの手掛かりも提供する。
【0059】
炭水化物のタンパク質への置換は脂肪および体重を減少させた。しかしながら、腎臓重量は増加する傾向にあり、機能低下を示す。加えて、最高タンパク質食(45%タンパク質)は血漿コレステロールレベルを増加させた。最低タンパク質食(15%タンパク質)は雄におけるインスリン感受性を改善し、最高タンパク質食(45%タンパク質)は雄および雌マウス両方におけるインスリン感受性を減少させた。
【0060】
ApoE欠損マウスを3群に分けた:1)通常タンパク質食(55%CHO、15%タンパク質、30%脂肪);2)高タンパク質食(40%CHO、30%タンパク質、30%脂肪);および3)最高タンパク質食(25%CHO、45%タンパク質、30%脂肪)。空腹時血漿脂質、コレステロール、経口グルコース耐性試験およびインスリン耐性試験を食事介入12週後に行った。
【0061】
試験8
この実験の目的は、我々のマウスモデルにおける食事のコレステロールの相対的重要性の決定であり、この場合、コレステロール感受性雄apoE(−/−)マウスで行った。すなわち、全体として他の食事の主要成分(macro ingredient)と比較して、どの程度までそのマウスの高コレステロール血症およびアテローム性動脈硬化症が、食事コレステロールに依存するのか?3食は飽和脂肪に富むおよび0、0.04%または0.08%コレステロールいずれかを含むもの、12週であった。これらのapoE(−/−)マウスはコレステロール摂取量に非常に感受性であることが確認されており、本質的にコントロールと最高摂取の間で総コレステロールは2倍であった。
【0062】
試験10 − C57BL/6Jマウスにおける食事の主要栄養素組成物および血漿脂質およびインスリン感受性
これは試験6および試験7のフォローアップであった。食事誘発肥満のマウスを4種の食事のいずれかに無作為に分けた:1)制御食(AHA;60%CHO、19%タンパク質、21%脂肪);2)高脂肪/高タンパク質食(11%CHO、31%タンパク質、58%脂肪);3)高脂肪/通常タンパク質(11%CHO、19%タンパク質、70%脂肪);および4)高炭水化物食を対給餌(pair fed)および自由に食事(70%CHO、19%タンパク質、11%脂肪)。空腹時血漿脂質、コレステロール、経口グルコース耐性試験およびインスリン耐性試験を食事介入12週後に行った。
【0063】
apoE(−/−)マウスにおける試験6および試験7のフォローアップとして、これはATKINS食が、試験6から考えられるようにORNISHよりも本当に良いか否かを決定するために、DIOモデルとして50匹の雄および雌WTマウス(C57BL/6J)で行った大きな仕事を代表する相補的実験であった。Atkins/Ornish群(試験6の例ではない)の間のカロリーおよびコレステロール摂取の差異をコントロールするために、1つのOrnish群(高CHO、低脂肪)をAtkins(高脂肪/高タンパク質)群と対給餌(kcals)させた。これらのC57BL/6Jマウスに、最初に典型的西洋食に類似した安定化食を2週間与え、その後、以下に示す通り炭水化物、脂肪、およびタンパク質組成が異なる5種の食事の一つ(n=9−10/群)を与えた:
群1。米国心臓協会(AHA)コントロール、修飾脂肪食:60%en 炭水化物、21%en 脂肪、および19%en タンパク質を提供。
群2。高脂肪/高タンパク質食:11%en 炭水化物、58%en 脂肪、および31%en タンパク質を提供。
群3。高脂肪/通常タンパク質食:11%en 炭水化物、70%en 脂肪、および19%en タンパク質を提供。
群4。高炭水化物食−対給餌:70%en 炭水化物、11%en 脂肪、および19%en タンパク質を提供。この群のマウスは高脂肪/高タンパク質群2と適合するようにカロリー的に対給餌した。
群5。高炭水化物食−自由:食事組成は高炭水化物−対給餌群4と同一であるが、この群のマウスは自由に食事を食べた。
【0064】
本試験の目的は、肥満の傾向がある野生型マウスモデルであるC57BL/6Jマウスにおける体重増加、血漿脂質、およびインスリン感受性に対する種々の食事の炭水化物、タンパク質、および脂肪組成の効果を調べるためであった。また、雄および雌C57BL/6Jマウスが食事の種々の主要栄養素組成物に異なって応答するか否かも試験した。
【0065】
動物および食事:雄および雌C57BL/6Jマウス(n=44)に、最初に典型的西洋食に類似した安定化食を2週間与えた。その後、マウスに表1に示す通り種々のCHO、タンパク質および脂肪組成の5種の食事の一つ(n=4−5雄および4−5雌/群)を与えた。
【0066】
【表1】

【0067】
要約すると、AHA制御食は60%en 炭水化物、19%en タンパク質および21%en 脂肪を提供し;高脂肪/高タンパク質食は11%en 炭水化物、31%en タンパク質および58%en 脂肪を提供し;高脂肪/通常タンパク質食は11%en 炭水化物、19%en タンパク質および70%en 脂肪を提供し;そして高炭水化物食−対給餌は70%en 炭水化物、19%en タンパク質および11%en 脂肪(この群のマウスは高脂肪/高タンパク質群と適合するようにカロリー的に対給餌した)を提供した。高炭水化物食−自由は、高炭水化物−対給餌群と同じであるが、この群のマウスは自由に食事を食べた。
【0068】
マウスに実験食を17週与えた。体重を本介入中毎週測定した。インスリン耐性試験を食事の介入12週後に行った。マウスをこの食事の17週後に殺した。殺したときに血液を採取し、血漿脂質を分析した。肝臓、腎臓および腎周囲脂肪組織を回収し、重量を決定した。
【0069】
種々の主要栄養素組成の食事を与えたマウスにおける毎日の概算されるカロリーおよびコレステロール摂取を表2に示す。AHA、高脂肪/高タンパク質、高脂肪/通常タンパク質与えたマウスおよび高炭水化物−対給餌マウスは、約13kcal/日/マウスの同等なカロリー摂取であったが、高炭水化物−自由給餌マウスは約18kcal/日/マウスを消費した。
【0070】
【表2】

【0071】
雄および雌C57BL/6Jマウスの体重および臓器重量を表3に示す。雄において、高脂肪食と対給餌の高炭水化物食を与えたマウス(すなわち、AHAおよび高脂肪給餌マウスと同様のカロリー摂取)は最も少ない体重増加であった。高脂肪食であるが、通常のタンパク質を与えたマウスは高炭水化物−対給餌マウスよりも2倍多い体重増加であり、高脂肪/通常タンパク質群よりも約5Kcal/日多く消費する高炭水化物自由給餌マウスは著しく体重が増加した。脂肪のタンパク質への交換(高脂肪/高タンパク質群)は少ない体重増加をもたらした。同様に雌でも類似の傾向が見られ、高炭水化物−対給餌マウスが最も少ない体重増加であり、高脂肪/通常タンパク質を与えたマウスが最も体重が増えた。雌において、脂肪のタンパク質への交換(高脂肪/高タンパク質群)は、雄ほど多い体重増加の減少がなかった。
【0072】
【表3】

【0073】
肝臓重量(体重%として)は高炭水化物対給餌ならびに自由給餌雄および雌マウスで最高であった。雄において、腎臓重量は、高脂肪/通常タンパク質群と比較して高脂肪/高タンパク質群および高CHO−対給餌群で高かった。腎周囲脂肪症は高脂肪/通常タンパク質食を与えた雄および雌マウスで最高であった。
【0074】
空腹時血漿総コレステロールおよびトリグリセリドを表4に示す。雄において、血漿総コレステロールは群間で有意な差は無かった。しかしながら、高脂肪/高タンパク質食を与えたマウスは、AHA、高脂肪、および高炭水化物食を与えたマウスと比較して、血漿総コレステロールのベースラインからの上昇が最低であった。雌において、高脂肪/高タンパク質食は、血漿総コレステロールのベースラインからの最大の減少をもたらした。高炭水化物食(対給餌および自由給餌両方)を与えたマウスは、高脂肪/高タンパク質および高脂肪/通常タンパク質食と比較して、17週の介入後血漿総コレステロールが有意に高かった。ベースラインからの血漿トリグリセリドの変化は全群で類似であった。雌において、驚くべきことに、高炭水化物−対給餌マウスは、高炭水化物自由給餌マウスよりも有意に高い血漿トリグリセリドを有した。
【0075】
【表4】

【0076】
雄マウスにおける肝臓脂質データを表5に示す。
【表5】

【0077】
雄および雌のITTデータを各々図7−8に示す。雄において、高脂肪/通常タンパク質給餌マウスは、他の食事、とりわけ高脂肪−高タンパク質食と比較して、インスリン投与30および60分後の血中グルコースが高い傾向にあった。雌において、高炭水化物−自由給餌マウスおよび高脂肪/通常タンパク質マウスは、インスリン投与30および60分後に高い血中グルコースであった。故に、本データは、高脂肪摂取またはより高いカロリー摂取がインスリン抵抗性を誘発し得ることを示唆する。
【0078】
比較を容易にするために、これらの試験を通して使用した種々の食事中の炭水化物、脂肪、およびタンパク質の比率を図9−10に示す。
【0079】
体重増加および脂肪症:食事の炭水化物、脂肪およびタンパク質組成物の体重増加およびインスリン感受性における効果をC57BL/6J雄および雌マウスで試験した。結果は図11−12に示す。
【0080】
高炭水化物食のマウスは、高脂肪食のマウスと比較して1日あたり顕著に高いカロリーを摂取した。カロリー摂取の差に由来し得る体重増加の差をコントロールするために、高炭水化物食のマウスの1群を、本試験で高脂肪食/高タンパク質と対給餌した。主要栄養素組成物の変化は、この野生型マウスモデル、とりわけ雄において体重増加および脂肪症に顕著な影響を有した。70%en 脂肪および19%en タンパク質を提供する高脂肪食は、AHA制御、高脂肪/高タンパク質および高炭水化物食と比較して、カロリー摂取が高炭水化物自由給餌マウスと比較して低いときでさえ、より大きな体重増加および脂肪症を誘発した。高脂肪摂取により高められた脂質生成は、増加した脂肪症および体重増加をもたらし得る。
【0081】
高脂肪摂取は、全て脂質合成および脂肪の貯蔵に関与するレプチン、ASP、およびアディポネクチンのような肝臓脂質生成酵素および/または脂肪ホルモンを変え得る。図13参照。低炭水化物摂取での高脂肪摂取は脂肪分解および脂肪酸酸化を増加することが報告されている。しかしながら、食事中の脂肪の脂肪酸酸化の上方制御は限度があることが報告されている。故に、増加した脂質合成/貯蔵および制限された脂肪分解および脂肪酸酸化に由来するエネルギーアンバランスが体重増加をもたらし得る。高脂肪/高タンパク質食給餌マウス(58%en 脂肪および31%en タンパク質)は、しかしながら高脂肪(70%en 脂肪)給餌マウスよりも体重増加が顕著に少なかった。故に、食事中の脂肪に変えたタンパク質含量の増加は、体重増加および脂肪症を予防する。しかし、カロリー摂取を制限したとき、高炭水化物食は、本試験の野生型マウスモデルにおいて体重増加が最も少なかった。
【0082】
血漿脂質:高炭水化物食は、とりわけ雌において血漿TCを増加させた。高炭水化物摂取は肝臓VLDL分泌を増加し得、それは増加した血漿TCに至り得る。血漿コレステロールクリアランスもまた高炭水化物食により障害され得た。高脂肪/高タンパク質食は、血漿総コレステロールのベースラインからの変化が最も好ましい傾向にあった。最近のヒト試験はまた、脂肪およびタンパク質のいずれかが高い非常に低い炭水化物食は、血漿TCを減らすか、または変化させないかのいずれかであることを報告している。故に、心血管疾患(CVD)危険性の観点から、脂肪およびタンパク質が高い食事は有害であるようには見えなかった。図14−15参照。
【0083】
インスリン感受性:高脂肪(70%en 脂肪)食給餌マウスおよび高炭水化物自由給餌マウスは、外因性インスリン投与に応答したグルコースクリアランスが障害されている傾向にあった。高脂肪給餌マウスのインスリン抵抗性は脂肪症および体重増加に二次的である可能性がある。高脂肪/高タンパク質マウスは、インスリンに対する血中グルコース応答はAHAコントロールと同等であった。故に、タンパク質の脂肪が高い食事への添加はインスリン感受性を改善するように見える。
【0084】
結論として、高脂肪食は野生型C57BL/6Jマウスにおいて体重増加、脂肪症、およびインスリン抵抗性を誘発した。故に、高脂肪食は、個体をメタボリック症候群に罹患しやすくする。高炭水化物食は体重増加を高めないが、高炭水化物食を与えたマウスはより高いカロリーを消費し、とりわけ雌において、血漿TCが高かった。脂肪がタンパク質に変わっている高脂肪/高タンパク質食は、高脂肪食と比較して少ない体重増加、少ない脂肪症、および改善されたインスリン感受性をもたらした。故に、本試験は、脂肪対タンパク質比率がエネルギーバランス、脂肪症、および肥満の制御に重要であり得ることを示唆する。
【0085】
これらの野生型C57BL/6Jマウス、いわゆる食事誘発肥満(DIO)モデルデータから、いくつかの点が得られた:
1. 群3(70%en 脂肪、19%en タンパク質)における高脂肪/通常タンパク質食は、AHAまたは高炭水化物、対給餌食のいずれかと比較して最高の体重増加および脂肪症をもたらした。食事の脂肪に変えてタンパク質の高脂肪食への添加(高脂肪/高タンパク質、群2)は、AHAおよび高炭水化物食と比較して、とりわけ雄において少ない体重増加および脂肪症をもたらした。これは、余分のタンパク質または減少した脂肪のいずれかが、脂肪が過多である環境で肥満に好ましい影響を有することを示唆する。恐らく全3種の主要栄養素が重要であり、繊細にバランスを取っている。恐らく各々の質も役割を有する。この脂肪/タンパク質比率は体重制御食のための重要な観察を示し得る。
【0086】
2. 肝臓ECは、雄において高脂肪/高タンパク質および高脂肪/通常タンパク質(Grp2+3)と比較して高炭水化物(Ornish)食で10倍高かった。故に、カロリーおよび食事のコレステロール摂取が同等でさえ(kcalおよびコレステロール摂取がほとんど制御されていない試験6と異なる)、高炭水化物食は、高脂肪/高タンパク質食と比較して肝臓ECを劇的に増加させた。
【0087】
3. 高脂肪/高タンパク質Atkins食は、他の食事と比較して血漿総コレステロールを減少させた。雌において、高炭水化物食は他の食事と比較して血漿総コレステロールを増加させた。
【0088】
4. 高脂肪/通常タンパク質食(群3雄および雌)マウスおよび高CHO−自由給餌雌マウス(群5)は、他の3種の食事(コントロール、高脂肪/高タンパク質、対給餌炭水化物)と比較して、インスリン感受性が障害された。故に、高脂肪摂取および/または高カロリー摂取は、一般に、インスリン作用を障害し、インスリン抵抗性を誘発し得る。これは、文献からヒトを含む全ての種で期待される。
【0089】
故に、70%enを脂肪として提供する高脂肪食(および通常タンパク質)は、雄および雌C57BL/6Jマウス両方で、肥満を誘発し、同時に脂肪症およびインスリン抵抗性を高める。これはアメリカの食事で一般的であり、このモデルが、メタボリック症候群の食事の局面を探索するための将来の試験に使用できることを示唆する。加えて、試験6と試験10の組み合わせたデータは、食事のコレステロール摂取の変動よりむしろ主要栄養素組成物の差異が、肝臓および血漿脂質の大きな変化の原因であることを示す(ヒトでの経験上からの現在の考えと非常に類似)。試験6のapoE(−/−)マウスにおいて、肝臓ECおよび動脈EC(アテローム性動脈硬化症)は、高炭水化物(Ornish)マウスが高脂肪/高タンパク質(Atkins)マウスと比較して高かったが、前者はまた食事およびコレステロール摂取も同様に高かった。しかし、カロリーおよびコレステロール摂取が同等であるWT C57BL/6Jマウスでの試験10において、高炭水化物食(Ornish対給餌、群4)は高脂肪/高タンパク質食(真のAtkins、群2)と比較してまだより多い肝臓ECを蓄積した。さらに、野生型C57BL/6Jマウスにおける高炭水化物食により誘発された肝臓ECの増加は、apoE(−/−)マウス(試験6)で見られるよりも劇的であった(試験10)。さらに、試験10において、高CHO、対給餌および自由給餌マウスは、自由給餌マウスのコレステロール摂取が高くてさえ(2.4対3.4mg/日/マウス)肝臓EC重量が非常に類似しており、コレステロール摂取ではなく食事中の高炭水化物含量が肝臓EC蓄積を誘発する主要因子であることを示した。炭水化物が肝臓における脂肪酸およびコレステロール合成を誘発するため、余分の炭水化物が、肝臓コレステロールのACAT依存性18:1エステル化の基質およびより多い肝臓コレステロール分泌を提供することが最も可能性がある。高タンパク質、高脂肪摂取は、脂肪が直接血液に輸送され、肝臓を迂回するため、この炭水化物効果を排除する。
【0090】
高脂肪/通常タンパク質食は、高炭水化物食と比較して体重増加および脂肪症を増加させる。しかしながら、タンパク質のレベルを食事の脂肪の代わりに増加させると、体重増加および脂肪症が食高炭水化物に比べて減少する。故に、増加したタンパク質および減少した脂肪は肥満の減少に好ましい影響を有した。タンパク質対脂肪の比率は、体重制御食に重要であり得る。インスリン感受性は高脂肪/通常タンパク質および高炭水化物食と比較して高脂肪/高タンパク質食で改善された。故に、高脂肪摂取は、インスリン感受性を障害し、インスリン抵抗性を誘発し得る。高脂肪および高炭水化物両方の食事は欠点を有し、重要な変数は同時のタンパク質摂取であり得る。肝臓コレステロールは、高脂肪/高タンパク質および高脂肪/通常タンパク質食と比較して高炭水化物食で高かった。血漿総コレステロールは、血漿総コレステロールを上昇させる高炭水化物食と比較して、高脂肪/高タンパク質食で減少した。
【0091】
試験11
本試験は、WT C57BL(DIO)マウスにおける脂質およびインスリン感受性応答に対する2つの脂肪摂取での可溶性繊維の影響を試験した。食事1は“半Ornish”、低脂肪制御でスクロース無し、そしてペクチンを広く6%で添加した。食事2は、40%enでのAM脂肪負荷であるが、そのS:M:P比率はバランスが取れた脂肪であり、同様にペクチンを6%添加したが、炭水化物としてコーンデンプンを添加し、スクロース無しであった。最後に、食事3はペクチンを除き炭水化物の半分をスクロースに変えた。ここでの結果は、食事3が中程度の“肥満”、中程度のコレステロール増加、および最低の魅力的(attractive)OGTTおよびITTであった。これはまた、(雄)DIOマウスが、炭水化物タイプ、脂肪負荷および脂肪:タンパク質比率、コレステロール負荷、および、本試験では、可溶性ペクチンの量のような食事のいくつかの微妙な差異への感受性を含む、食事誘発肥満の良いモデルを代表する。
【0092】
試験12
C57BL(肥満マウスモデル)マウスを、図9における5種の食事の一つに無作為化した:1)高脂肪/通常タンパク質食(比率4:1;25%CHO、15%タンパク質、60%脂肪);2)高脂肪/高タンパク質食(比率2:1;10%CHO、30%タンパク質、60%脂肪);3)非常に高脂肪/通常タンパク質(比率3.5:1;10%CHO、20%タンパク質、70%脂肪);4)通常脂肪/高タンパク質(比率1:1;40%CHO、30%タンパク質、30%脂肪);および5)中程度の高脂肪/通常タンパク質(比率2:1;40%CHO、20%タンパク質、40%脂肪)。各食事の組成の詳細は以下の表6に示す。
【0093】
【表6】

【0094】
空腹時血漿脂質、コレステロール、経口グルコース耐性試験、およびインスリン耐性試験を食事介入16週間後に行った。データは表7および図16に示す。
【0095】
【表7】

【0096】
脂肪対タンパク質比率の1:1を含む食事は、2:1、3.5:1および4:1の比率よりも良好に脂肪蓄積を減少させ、インスリン耐性を改善し、そして血中グルコース濃度を減少させた。タンパク質レベルをエネルギーの15%を超えて増加させると、インスリン感受性を改善し、良好なグルコース制御を可能にするようである。
【0097】
3.5:1比率は最高のインスリン抵抗性を有した。しかしながら、最低の総コレステロールレベルも有した。高タンパク質(30%タンパク質)の食事は腎臓重量を増加させ、安全性および腎臓損傷に関する問題を提起し得た。
【0098】
1:1比率(食事4、脂肪およびタンパク質両方とも30%en)が最良の結果、すなわち、少ない脂肪沈着、最良のITTグルコース代謝曲線、最低の空腹時血中グルコース、および最大の盲腸をもたらすようである。また、3.5:1比率がITTについては最悪であるが、タンパク質レベルが少なくとも20%enであるとき、最低TCをもたらすことが証明された。15%enからのタンパク質の増加はこのパラメータを改善するようであり、将来いつの日か利点が研究されるであろう。
【0099】
高タンパク質は腎臓重量を増加させるようであり、これは我々の試験で一貫した発見である。この観察は、長期間での安全性および腎臓損傷に関する多くの問題を提起し得、従って30%enを遙かに超えるタンパク質レベルは問題となる。最低タンパク質は最小腎臓サイズを提供し、タンパク質/腎臓関係を再確認した。
【0100】
脂肪:タンパク質比率が1.0を超えて増加すると、代謝応答は破壊する傾向にある。これは、恐らく、幾分タンパク質の絶対量により影響され、最良の性能は、恐らくタンパク質として各々最低から最高い側で20−35%enの範囲である。
【0101】
試験13 − 食事のタンパク質対炭水化物の比率の増加は、食事の脂肪対炭水化物の増加した比率と比較して、肥満、心血管疾患および糖尿病に関する危険因子を改善する
米国および他の先進国における肥満およびその関連健康結果(糖尿病およびアテローム性動脈硬化症を含む)の流行の増加が、体重減少およびその関連危険因子を軽減するために、食事中の主要栄養素組成物をどのように修飾し得るかの著しい関心に拍車をかけている。本質的に、どれが最適な炭水化物−対−脂肪−対−タンパク質比率であるべきかについて多くの議論がある。この議論の具体化はAtkins(高脂肪、高タンパク質)対Ornish(低脂肪、高炭水化物)食の討論である。
【0102】
C57BL/6J(肥満マウスモデル)マウスを6種の食事の一つに無作為化した:1)通常タンパク質/高炭水化物食(75%CHO、15%タンパク質、10%脂肪);2)中程度タンパク質/高炭水化物食(68%CHO、22%タンパク質、10%脂肪);3)高タンパク質/高炭水化物(60%CHO、30%タンパク質、10%脂肪);4)非常に高タンパク質/中程度炭水化物(45%CHO、45%タンパク質、10%脂肪);5)AHA食(55%CHO、15%タンパク質、30%脂肪);および6)中程度高脂肪/中程度炭水化物(40%CHO、15%タンパク質、45%脂肪)。これらの食事の各々の詳細を表8に示す。
【0103】
【表8】

【0104】
空腹時血漿脂質、コレステロール、経口グルコース耐性試験およびインスリン耐性試験を食事介入16週後に行った。文献に記載され、そしてHayes labで集められた証拠は、減少した体重増加、脂肪貯蔵、および心血管疾患の危険性の観点から、一般に許容されている低脂肪、高炭水化物食よりもはるかに脂肪およびタンパク質が高い食事が好ましいとの証拠を提供している。我々の最初の焦点は脂肪−対−炭水化物比率であったが、高脂肪食の内容での脂肪−対−タンパク質比率の重要性に対する認識が増えていった。最近のマウス試験において、高脂肪高タンパク質食の内容での減少した脂肪:タンパク質比率(最高タンパク質摂取)は、高脂肪で通常タンパク質摂取よりも少ない体重増加および低い血漿コレステロールをもたらした。これらの発見は、同じパターンが高炭水化物食における低い炭水化物:タンパク質比率にも当てはまるであろうとの仮説に至った。
【0105】
従って、試験13は、肥満、アテローム性動脈硬化症および糖尿病に関係して、炭水化物:タンパク質比率の重要性を解明するための高炭水化物食のないようでのこの比率に焦点を絞った。同じ試験で2つの概念を直接比較するために、タンパク質が一定で脂肪を炭水化物に変えるのを、低脂肪および一定脂肪でタンパク質を炭水化物に変えるのと同時に行った(食1−4)。雄C57BL/6Jマウス(食事誘発肥満に感受性であることが知られている種)を6種の異なる食事群に分けた。6種の異なる食事群のうち、1−4は、タンパク質の15%en to 45%enの3倍の範囲をカバーするために、炭水化物をタンパク質に変え(脂肪からのエネルギーは10%で一定)、そして3種の食事を炭水化物を脂肪に10−45%enの4.5倍の範囲にわたり置換するために設計した(タンパク質からのエネルギーは15%で一定)。後者の比較はタンパク質−炭水化物マトリックスからの群を共有する。表8参照。
【0106】
本試験の結果を表9−26および図17−31に示す。これらの結果は、炭水化物のタンパク質での置換(タンパク質:炭水化物比率の増加)が、減少した血漿総コレステロールおよび肝臓エステル化コレステロール(EC)、幾分増加した血漿および筋肉トリグリセリド含量をもたらし、一方インスリン感受性を減少させ、すなわち、炭水化物のタンパク質での置換は、この低脂肪摂取でグルコース代謝を助けるようには見えなかった。よって、タンパク質は脂肪摂取が低ければ、良くはない。炭水化物の脂肪での置換(すなわち、最高炭水化物から最高脂肪食への置換)は肝臓エステル化コレステロールを減少させ、そしてインスリン感受性を減少させ、また炭水化物の代わりの脂肪の添加は、グルコース代謝に良くないようである。
【0107】
さらに、炭水化物のタンパク質置換と異なり、脂肪:炭水化物比率の増加は脂肪症および体重増加ならびに血漿、筋肉、および肝臓トリグリセリドを著しく増加させた。故に、高脂肪は良くない。この試験の焦点はタンパク質:炭水化物および脂肪:炭水化物比率であるが、これらの結果はまたタンパク質:脂肪比率に対する我々の知識に貢献する。後者の比率が増加すると、インスリン感受性が増加し、脂肪症が顕著に減少し、一方血漿および肝臓コレステロールならびに血漿、肝臓、および筋肉トリグリセリドが減少する。故に、Atkins食の減少したインスリン感受性は脂肪に由来するものとは別である。これは、高すぎる脂肪は悪いが、低すぎるタンパク質は幾分よく、従って炭水化物プールに変え、この全ては三角形の中央のどこかの集積を示唆する。
【0108】
要約すると、炭水化物をタンパク質で置き換えることは、タンパク質として30%enまでで肥満、糖尿病、および心血管疾患の危険性に有益な効果を有する。タンパク質:炭水化物比率の増加は、脂肪を炭水化物に変えた同等な食事を与えたマウスよりも高いインスリン感受性、顕著に低い脂肪貯蔵、および低い血漿、筋肉、および肝臓トリグリセリド含量をもたらした。従って、高炭水化物食の炭水化物含量を減らしたとき、タンパク質での置換は、このマウスモデルで脂肪での置換よりも肥満、糖尿病、およびアテローム性動脈硬化症の危険性を減らした。
【0109】
グルコース制御におけるより高いタンパク質の利点は、脂肪摂取が低すぎるときには起こらない。炭水化物のタンパク質での置換は血漿総コレステロールおよび肝臓エステル化コレステロールレベルを減少した。それはまた血漿および筋肉トリグリセリド含量レベルを増加させ、一方インスリン感受性を減少させた(図17参照)。従って、炭水化物のタンパク質での置換は、エネルギーの10%の脂肪摂取でグルコース代謝を助けるようには見えなかった。
【0110】
炭水化物の脂肪での置換は肝臓エステル化コレステロールを減少させ、インスリン感受性を減少させ(図18参照)、また炭水化物の代わりの脂肪の添加はグルコース代謝に好ましくないことを示唆した。さらに、炭水化物のタンパク質置換と異なり、脂肪:炭水化物比率の増加は、脂肪症および体重増加ならびに血漿、筋肉、および肝臓トリグリセリドを著しく増加させた。故に、高脂肪は良くない。
【0111】
炭水化物のタンパク質での置換はタンパク質としてエネルギーの30%までで肥満、糖尿病、および心血管疾患の危険性に有益な効果を有する。タンパク質対炭水化物比率の増加は、脂肪を炭水化物に変えた同等な食事を与えたマウスよりも高いインスリン感受性、顕著に低い脂肪貯蔵、および低い血漿、筋肉、および肝臓トリグリセリド含量をもたらした。従って、高炭水化物食の炭水化物含量をはらしたとき、タンパク質での置換はこのマウスモデルで脂肪での置換よりも肥満、糖尿病およびアテローム性動脈硬化症の危険性を減らした。
【0112】
【表9】

【0113】
【表10】

【0114】
【表11】

【0115】
【表12】

【0116】
【表13】

【0117】
【表14】

【0118】
【表15】

【0119】
【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【0120】
【表20】

【0121】
【表21】

【0122】
【表22】

【0123】
【表23】

【0124】
【表24】

【0125】
【表25】

【0126】
【表26】

【0127】
【表27】

【0128】
【表28】

【0129】
【表29】

【0130】
【表30】

【0131】
試験14
本試験の目的は、コレステロールレベルに対するスタチン(Mevacor)の効果を試験することであった。ApoE(−/−)マウスの3群各々に、3種の食事のいずれかを与え、各食事は異なるコレステロールレベル(すなわち、0、0.4、および0.8g/kg)を含んだ。第四の群は、0.8g/kgのコレステロールと共に0.5g/kgのスタチン(すなわち、Mevacor)をさらに含む食事を与えた。食事組成の詳細は表28に示す。
【0132】
【表31】

【0133】
食事投与14週後の肝臓、大動脈、および血漿コレステロールレベルを表29に示す。最高コレステロール成分を有する食事を与えられたがスタチンを投与されたマウスは、同じ食事を与えられたが、スタチンがないマウスと比較して肝臓、大動脈、および血漿コレステロールレベルが著しく低かった。精巣上体および合わせた腎周囲および精巣上体脂肪重量およびトコフェロールレベルの顕著な減少もまた観察された。
【0134】
【表32】

【0135】
試験15
本試験の目的は、先の試験、特に試験1の、C57BLjマウスにおける肥満/インスリンデータを利用するための、ApoEマウスにおけるアテローム性動脈硬化症のより明確なデータを得ることであった。その目的のために、我々は、類似のAtkins/Ornish比較を、これらのapoE(−/−)マウスで18週間にわたり与え、十分なアテローム性動脈硬化症を発症させた。効果について、我々は脂肪:タンパク質比率を、それがどの程度アテローム発生に影響するかを見るために試験した。我々はまた雄および雌両方を使用し、試験した結果値に大きな差異があるかどうかを見た。
【0136】
ApoE欠損マウスを4群に分けた:1)高脂肪/通常タンパク質食(25%CHO、15%タンパク質、60%脂肪);2)高脂肪/高タンパク質食(10%CHO、30%タンパク質、60%脂肪);3)非常に高脂肪/通常タンパク質(70%CHO、20%タンパク質、10%脂肪);および4)高炭水化物/通常タンパク質(70%CHO、20%タンパク質、10%脂肪)。各食事の組成の詳細は表31に示す。
【0137】
【表33】

【0138】
【表34】

【0139】
【表35】

【0140】
空腹時血漿脂質、コレステロール、経口グルコース耐性試験およびインスリン耐性試験を食事介入16週後に行った。脂質、コレステロール、および血中グルコースデータを雄および雌マウスについて各々図30A−Bに示す。インスリン耐性試験データを図32−34に示す。
【0141】
高脂肪は、高炭水化物摂取に関連してC57BLマウス(とりわけ雌において)における通り、明確に体重増加を高めた。高タンパク質は雄において体重増加を補正しなかったが、雌においては補正した。また体重増加の観点で雌は雄よりも高脂肪の影響を受けない。
【0142】
非常に高脂肪は、ヒト大腸機能で行われていると思われているように、盲腸に悪影響を与え、そのサイズを減少させた。
【0143】
血中グルコースは雌においてより影響し、一方低タンパク質または非常に高脂肪(増加した脂肪:タンパク質比率)はグルコースを高めた。高脂肪食は、グルコースに関して高炭水化物食より悪く、すなわち、食物炭水化物負荷は、C57BLマウスにおいて行われたようにグルコース代謝系を助けた。
【0144】
血漿総コレステロールは、とりわけ雌において高炭水化物食で高いが、トリグリセリドは高炭水化物は両方の性別で低かった。雌総コレステロールは同じ食事の雄より約100mg/dl低かった。
【0145】
ITTは、とりわけ雌において高炭水化物で最良であり、一方高脂肪、高タンパク質および高脂肪、通常タンパク質はとりわけ雄において悪く、これは、最悪の脂肪に対する脂肪応答を有した。本質において、高脂肪:タンパク質比率はITTに有害な効果を有する。
【0146】
高脂肪食は、C57BL(試験12)を摸倣する傾向にあるapoE(−/−)マウスに置いてさえ、明確に問題である。肥満は脂肪を添加すると大きく、一方グルコース代謝は高い炭水化物で良好である。肥満は雌apoEマウスで良好に証明された。血中総コレステロールはこれらの試験で高炭水化物で一貫して高いが(血液プールへの前駆体として肝臓中でECにより誘発)、幾分与えた脂肪のタイプに依存し、まだ明らかになっていない点である(しかしこれはapoEマウスで進行中である)。
【0147】
高脂肪食は、高炭水化物食と比較して体重増加を増した。低タンパク質食および高脂肪食は血中グルコース濃度を増加させ、高脂肪食は高炭水化物食よりも高いグルコースレベルであった。インスリン耐性は高炭水化物食で最良であったが、高脂肪/高タンパク質および高脂肪/通常タンパク質は脂肪重量を増加させた。本質において、高脂肪:タンパク質比率はインスリン耐性に有害な効果を有する。
【0148】
血漿総コレステロールは、とりわけ雌において高炭水化物食で高い傾向にあるが、トリグリセリドは両方の性別で高炭水化物食で低かった。肥満は脂肪を添加すると大きく、一方グルコース代謝は高い炭水化物食で良好である。血中総コレステロールはこれらの試験で高炭水化物食で一貫して最高であった。
【0149】
試験17
C57BL/6J(肥満マウスモデル)マウスを3種の食事に無作為化した:1)低炭水化物(20%CHO、40%タンパク質、40%脂肪);2)バランスを取った食事(33%CHO、33%タンパク質、33%脂肪);および3)高炭水化物(60%CHO、20%タンパク質、20%脂肪)。各食事の詳細を表32−33に示す。
【0150】
【表36】

【0151】
【表37】

【0152】
空腹時血漿脂質、コレステロール、経口グルコース耐性試験およびインスリン耐性試験を食事介入16週後に行った。体重および臓器重量データを表34に示す。コレステロール、トリグリセリド、およびグルコースデータを表35−39に示す。
【0153】
インスリン耐性は1:1のタンパク質:脂肪比率で改善した。炭水化物含量が減少すると、血中グルコース制御は増加した。しかしながら、低炭水化物食(タンパク質40%)は腎臓重量を増加させ、腎臓機能の低下を示唆した。従って、炭水化物含量と共にタンパク質および脂肪の1:1:1比率でバランスを取ったタンパク質:脂肪比率の1:1が最良であった。
【0154】
高炭水化物食は低炭水化物およびバランスを取った食事と比較して肝臓トリグリセリドおよび総コレステロールレベルを増加させた。筋肉トリグリセリドレベルで差は見られなかった(表36参照)。
【0155】
【表38】

【0156】
【表39】

【0157】
【表40】

【0158】
【表41】

【0159】
【表42】

【0160】
【表43】

【0161】
心血管疾患についての糖尿病と危険因子の関係
糖尿病および心血管疾患(CVD)および/または冠動脈心疾患(CHD)は多くの危険因子を共有する。例えば、既知CVD危険因子である高血圧(すなわち、>140/90mmHg)の個体は、正常血圧の個体よりも2型糖尿病を発症する危険性が高い。同様に、35mg/dL以下の高密度リポタンパク質コレステロール(HDLC)レベルまたは250mg/dL以上のトリグリセリド(TG)レベルの個体(両方ともCVDの既知危険因子である)もまた2型糖尿病の発症の危険性が増加している。
【0162】
加えて、糖尿病それ自体が、2型糖尿病を有するヒトが急性心筋梗塞時の高い死亡率を有し、心筋梗塞後の相対的に悪い予後を有することが示されているため、CVDの危険因子であると見なされ得る。上記のデータは、従って、糖尿病を有する個体は、他のCVD危険因子を有していなくてさえ、CVDの増加した危険性を有するとして処置することが推奨されることが示唆される。
【0163】
補足された集中的インスリン治療
厳しい血糖制御および特異的栄養素の補足の使用は、いずれか単独の使用に由来し得るものを超えて利点を有する。上記試験の結果は、糖尿病およびその併存症の予防および/または処置だけでなく、血糖制御が有益であり得る他の適応症についての価値ある上方を提供する。例えば、肉体的外傷(例えば、手術、熱傷など)、癌、肥満、および慢性疾患(例えば、慢性呼吸器疾患、潰瘍など)からの回復は“厳しい”血糖制御により改善することが示されている。典型的に、このような血糖制御は低血糖炭水化物源の投与を含む。しばしば、血糖制御は集中的インスリン治療を含む。
【0164】
驚くべきことに、集中的インスリン治療の補足はグルタミン合成を促進するが、1種以上の分枝鎖アミノ酸(BCAA)および/またはグルタミン/グルタメートと組み合わせて使用したとき、それはタンパク質合成を促進することが判明し、恐らく、肉体的外傷、癌、肥満、および慢性疾患を含む多くの状態からの回復を助ける。好ましくは、栄養補給は、ゆっくり消化されるおよび/または代謝される糖をさらに含む。適当な糖は、例えば、イソマルト(isomalt)、イソマルトース、トレハロース、D−タガトース、タピオカ・デキストリン、およびスクロマルトを含む。
【0165】
上記のような補給はインスリン感受性を改善し、血中および/または血漿グルコース濃度を減少させ、改善された窒素バランスおよび内因性タンパク質合成を含む良好な代謝応答を可能にする。実験的に、アミノ酸補足を含む集中的インスリン治療が:ロイシン(129対112μmol/L)およびグルタミン(381対248μmol/L)の血漿濃度の増加;グルコース(109対173mg/dL)の循環濃度の減少;タンパク質正味バランス(−3対−11nmol Phe/分/100mL leg容量)およびタンパク質合成(42対21nmol Phe/分/100mL leg容量)の改善;ロイシン酸化(15対32nmol/分/100mL leg容量)の減少;およびデノボグルタミン合成(94対41nmol/分/100mL leg容量)の増加を示した。
【0166】
筋肉グルタミンは手術後患者および慢性疾患を有する患者で抑制されることが報告されている。それ自体、患者でのグルタミン含量の増加は、彼らの状態を改善することが期待される。より広くは、血糖制御が肉体的外傷または受けた手術からの回復に有益な目的であるため、低血糖炭水化物源、BCAA、およびグルタミンおよび/またはグルタメートを含む経腸またはすする(sip-fed)栄養組成物は、このような患者のタンパク質合成の増加を介した回復を改善させる可能性を有する。
【0167】
1:1:1炭水化物:タンパク質:脂肪比率での栄養製剤の補足
上記の通り、1:1:1炭水化物:タンパク質:脂肪比率を有する栄養製剤は糖尿病および/またはその併存症(例えば、心血管疾患、腎臓疾患など)の処置または管理に有利である。より高いタンパク質含量はより速いインスリン放出を助ける。加えて、より高いタンパク質含量およびより低い炭水化物含量の両方が、血中グルコース濃度の管理を助ける。
【0168】
しかしながら、1:1タンパク質:脂肪比率を有する栄養製剤も、血糖制御の改善、糖尿病その併存症、またはそれらの症状の処置に有用な1種以上の成分をさらに補足し得る。そのような成分は、トウチ抽出物、一部加水分解されたグアーガム、イヌリン、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトース、ゆっくり消化可能な炭水化物、リポ酸、コロハ、4−ヒドロキシイソロイシン、緑茶葉および抽出物、シナモン、バナバ抽出物、ムラサキフトモモ種子、アルギニン、魚油、クロロゲン酸、マンゴスチン、ヤシ果汁、クロミウム、およびバナジウムを含む。2種以上のこのような成分を、1:1タンパク質:脂肪比率を有する栄養製剤と共に、または無しで使用することは、血中へのグルコースの出現の遅延、食後血漿インスリン濃度の減少、グルコース抵抗性の減少、および/またはグルコース感受性の増加に相加的または相乗的結果をもたらすと考えられる。このような成分の生理学的および他の特性は以下に記載する。さらに2種以上のこのような成分を、1:1タンパク質:脂肪比率を有する栄養製剤と共に、または無しで使用することは心血管疾患または事故(incident)の処置または予防に相加的または相乗的結果をもたらすと考えられる。このような成分の生理学的および他の特性は以下に記載する。
【0169】
トウチ抽出物
トウチ抽出物(TE)は、醗酵大豆の水−抽出粉末である。TEは、コウジカビで醗酵させた大豆に由来する。TEはα−グルコシダーゼ活性を阻害することが示されており、アカルボースおよびボグリボースと同様、2型糖尿病を有する個体の血中グルコース濃度およびHbA1c値の減少をもたらす。TEはα−グルコシダーゼを排他的に阻害し、アミラーゼ、ペプシン、トリプシン、キモトリプシンまたはリパーゼのような他の消化酵素は阻害しない。炭水化物吸収を阻害するその能力のため、TEはグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)およびグルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)の血漿濃度を増加させるように作用することが可能である。
【0170】
GLP−1は、遠位小腸および結腸に位置する内分泌L細胞から分泌されるホルモンである。GLP−1はグルコース依存性インスリン分泌、およびベータ細胞増殖および新生を刺激するように働く。GLP−1は栄養、ホルモンおよび神経刺激に応答して分泌され、一次刺激は経腸栄養である。TEは炭水化物の破壊を阻害し、炭水化物が腸に存在する時間を延長させる、天然α−グルコシダーゼ阻害剤である。従って、より多い量の炭水化物が遠位小腸に届き、L細胞と相互作用してGLP−1分泌を刺激し得る。GLP−1の増加した血漿濃度は、血中へのグルコースの出現の遅延におけるTEの効果に加えて、血糖制御を改善する。
【0171】
GLP−2は、遠位小腸および結腸に位置する内分泌L細胞から分泌されるホルモンである。GLP−2は、腸構造および機能を、陰窩−絨毛構造を改善し、酵素およびトランスポーター活性を増加させることにより増進するように働く。GLP−2栄養、ホルモンおよび神経刺激に応答して分泌され、一次刺激は経腸栄養である。TEは炭水化物の破壊を阻害し、炭水化物が腸に存在する時間を延長させる、天然α−グルコシダーゼ阻害剤である。従って、より多い量の炭水化物が遠位小腸に届き、L細胞と相互作用してGLP−2分泌を刺激し得る。GLP−2の増加した血漿濃度は腸構造および機能を改善し、そして腸炎症を減少させる。
【0172】
ベネファイバー
ベネファイバー(一部加水分解されたグアーガム)は、グアーガムから抽出された独特な機能性繊維である。グアーガムの元々の高粘性は加水分解後にほとんどなくなり、液体食事および栄養製剤への添加に理想的となる。ベネファイバーの鎖長は、高いに結合した600ガラクトマンナン(galactomannon)単位ほど大きくてよいが、大半のベネファイバーは80から200の平均鎖長を有する。ベネファイバーの利点の多くは、結腸で完全に醗酵され、他の可溶性繊維よりも顕著に多いブチレートを産生するその能力にほとんど依存する。ブチレートはL細胞上で作用して、GLP−1およびGLP−2をコードする遺伝子であるプログルカゴンの発現を増加させ、故に、経腸栄養素により刺激されたときに、分泌されるためのより多いGLP−1およびGLP−2を提供し得る。TEとベネファイバーの組み合わせは、GLP−1およびGLP−2の血漿濃度の増加に相加的効果を有する。
【0173】
TEとベネファイバー一緒の栄養製剤への取り込みはGLP−1およびGLP−2血漿濃度を増加させ、そして血糖制御および腸構造および機能を改善し、腸炎症を減少する。さらに、この効果は、GLP−1およびGLP−2を分解するプロテイナーゼであるジペプチジルペプチダーゼ−IVを阻害する薬剤の潜在的作用を増加する。ジペプチジルペプチダーゼ−IVの阻害と共にGLP−1およびGLP−2の血漿濃度を増加させるためのTEおよびベネファイバーの付加的効果は、血糖制御および腸構造および機能をさらに改善する。
【0174】
加えて、多くの試験が、とりわけ経腸栄養を受けている患者および腸不耐性に感受性の他の集団において、ベネファイバーが腸機能の維持に有益であり、下痢および便秘の両方の管理を助けることを示している。
【0175】
ベネファイバーの使用は、それが完全に醗酵され、相当量のブチレートを産生できるため、さらに有利な効果を有する。ベネファイバーは製剤内に1から10g/サービング(240ml/サービングに基づく)の範囲で入れるべきである。
【0176】
提供/サービング(240ml/サービングに基づく)するTEの総量は0.1から10gである。これは、最小有効量から、有益な効果がプラトーに到達するまでの量を含む範囲を可能にする。
【0177】
血糖指数が低い食事は、インシュリン様増殖因子−1(IGF−1)の減少をもたらし得て、それは癌の発病率および進行の減少をもたらし得る。TEは利用可能な炭水化物を減少させ、したがって、インスリン応答を減少させ、そして血糖応答を減少させる。従って、TEは、炭水化物含有食事の消費後の血糖応答を減少させるため、癌の発病率および進行を減少させる。
【0178】
可溶性繊維混合物 − イヌリンおよびベネファイバー
イヌリンは、β−2−1結合により結合したβ−Dフルクタンの中鎖から成る。それは、チコリー、アーティチョーク、アスパラガスおよびタマネギを含む食事ならびにチコリー根からの抽出物に一般的に見られる天然食事成分である。イヌリンは容易に水に溶け、甘みを示し、これは鎖長が長くなるに連れて減少する。イヌリンは、チコリー根の熱水抽出により製造でき、60までの重合度を有し、平均鎖長12から25である。イヌリンは非常に醗酵性の繊維であり、強いプレバイオティク活性を有する。多くのインビトロおよびヒト試験が、イヌリンが特異的ビフィズス菌(bifidogenic)効果を有することを示している。ベネファイバーと同様、いくつかの試験がイヌリンが下痢の危険性を減少できることを示している。
【0179】
イヌリンとベネファイバーの組み合わせは、いずれか単独よりも腸の健康に大きな効果を有し得る。各繊維は異なる腸分解速度、および特異的腸活性領域を有する。イヌリンのプレバイオティク能はベネファイバーより高い。しかしながら、ベネファイバーはより多くのブチレートを産生する。イヌリンとベネファイバーの混合物が消費されたとき、腸管での醗酵時間は長くなり、より多種の短鎖脂肪酸(SCFA;アセテート、プロピオネートおよびブチレート)を産生し、2種の繊維の混合物は、有益な細菌種、ビフィズス菌および乳酸菌の増殖を、いずれかの繊維単独よりも良好にまたは同等に促進し得る。
【0180】
可溶性繊維混合物 − FOSおよびGOS
フルクトオリゴ糖は、β−2−1結合により結合している短および中鎖β−Dフルクタンである。イヌリンおよびオリゴフルクトースはフルクトオリゴ糖として分類される。それらは、チコリー、アーティチョーク、アスパラガスおよびタマネギを含む食事に一般的に見られる天然食事成分であり、そしてスクロースから合成され、またはチコリー根から抽出される。
【0181】
イヌリンおよびオリゴフルクトースは容易に水に溶け、甘みを示し、これは鎖長が長くなるに連れて減少する。イヌリンは、チコリー根の熱水抽出により製造でき、そしてオリゴフルクトースはイヌリンの部分的酵素加水分解により得られる。故に、イヌリンおよびオリゴフルクトースは互いに鎖長または重合度により区別される。FOSと一般に呼ばれるオリゴフルクトースは、9より低い重合度と3から5の平均鎖長を有し、そしてイヌリンは60を超える重合度と12から25の平均鎖長を有する。FOSはプレバイオティク活性を有する非常に醗酵性の繊維であり、それはビフィズス菌および乳酸菌の増殖を刺激する。ベネファイバーと同様、試験は、FOSが便秘および下痢を予防または軽減できることを示している。
【0182】
ガラクトオリゴ糖(GOS)は、ラクトースから酵素反応により製造される消化されない炭水化物である。それらは結腸内細菌の基質として作用し、結腸で非常に醗酵性である。GOSは腸ビフィズス菌および乳酸菌の増殖を刺激し、SCFA濃度を増加させ、結腸pHを減少させ;従って、それらは強いプレバイオティクスであり、消化器環境に有益であると考えられる。
【0183】
FOSとGOSの組み合わせが、いずれか一つを単独で使用したときよりも、有益な細菌の増殖の促進におけるそれらの相乗作用のために、腸の健康により大きなプレバイオティク効果を有することが報告されている。FOSとGOSの混合物は、いずれか単独よりもビフィズス菌および乳酸菌の増殖を顕著に増加させる。加えて、SCFA産生および基質同化作用がまた混合により増加される。
【0184】
多くの試験が、腸内細菌の増加および幼児における排便特性の改善に対する、FOSおよびGOS混合物の効果を試験している。結果は、混合物が、種々の種、とりわけビフィズス菌および乳酸菌の最大数が増加するような相乗的な方法で有益な腸内細菌の増加を促進することを示す。加えて、FOSとGOSの混合物はまたSCFAの産生および排便頻度を増加し、そして便秘の便を顕著に柔らかくすることが報告されている。
【0185】
加えて、ブチレートがL細胞に働き、GLP−1およびGLP−2をコードする遺伝子であるプログルカゴンの発現を増加させ、故に、経腸栄養素により刺激されたときに、分泌されるためのより多いGLP−1およびGLP−2を提供し得る。
【0186】
食後血糖症(血糖)の減少
粘性の食物繊維および単離された粘性の繊維の炭水化物含有食への添加は、多くの管理された臨床試験で、血中グルコースおよびインスリン応答に顕著な改善をもたらすことが判明している。血中グルコース濃度の大きな、急速な増加が、膵臓のベータ細胞がインスリン分泌を増加させるためのシグナルである。長期の、血中グルコースの再発する増加および過剰なインスリン分泌が2型糖尿病(DM)ならびに心血管疾患の危険性を増加させると考えられる(下記疾患予防参照)。
【0187】
2つの食事の炭水化物含量が等しいとき、繊維、特に粘性の繊維の存在が、一般に、より低い、しかしより持続した血中グルコースの増加および顕著に低いインスリン濃度をもたらす。
【0188】
2型糖尿病
米国における精製した炭水化物摂取の増加および繊維摂取の減少が、疫学的比率近くまでの、2型糖尿病(DM)の罹病率の増加と並行している。多くの前向きコホート試験は、繊維、特に全粒穀物からの穀物繊維に富む食事が、2型DMの減少と顕著に関係することを発見している。食物繊維摂取の増加単独による2型DM予防における効果を評価する介入試験はないが、2つの重要な介入試験が、繊維摂取の増加を含むライフスタイルの変更の組み合わせが、耐糖能障害の成人の2型DMの発症の危険性に有効であることを発見している。肥満、不活動性および遺伝因子を含む多くの因子が2型DM発症の危険性を高めるが、観察試験および介入試験の結果は、繊維に富む食事が、特に高危険性個体においてグルコース耐性を改善し、2型DMの危険性を減少させることを示す。
【0189】
イソマルトース
イソマルトースは、スクロースと類似した物理特性を有し、故にスクロースの代替物の可能性がある、天然に存在するジサッカライドである。イソマルトースとスクロースの最も重要な差異は、イソマルトースが腸酵素によりスクロースよりも遅い速度で加水分解されることである。これは健康なおよび糖尿病の対象の両方で血中グルコース、フルクトース、およびインスリンレベルのゆっくりした上昇を導く。一つの試験は健康対象において、血中グルコースは、50gのイソマルトース投与後60分の110.9±4.9mg/dlのピークまで徐々に増加し、一方50gのスクロースは、60分で143.3±8.8mg/dlのピークをもたらし、空腹時レベルまで急速に減少すると報告している。同様の応答が糖尿病対象でも示された。血漿グルコースレベルは、イソマルトース摂取120分後のそのピーク(195±14mg/dl)まで徐々に増加した。対照的に、スクロース摂取後、237±12mg/dlのピークレベルに60分以内に到達した。加えて、インスリン濃度の変化は、スクロース摂取(59.3±12.0μU/ml)と比較してイソマルトース(41.1±7.4μU/ml)で顕著に小さかった。
【0190】
他の試験は、ラットにおける炭水化物および脂質代謝に対するイソマルトース含有製剤の短期および長期効果を試験した。短期効果は、投与15分および30分後、血漿グルコースレベルが、デキストリン含有標準製剤と比較して、イソマルトース含有製剤を投与したラットで低いことを確認した。加えて、曲線下面積は、デキストリン含有標準製剤(279.5±28.5mmol×分/L)と比較して、イソマルトース含有製剤(162.0±14.2mmol×分/L)で小さかった。インスリン分泌指数は群間で差はなく、イソマルトース含有製剤が初期相インスリン応答に影響し得ないことを示す。イソマルトース含有製剤投与2ヶ月後、体重は変わらなかったが、血清トリグリセリド(0.54±0.04対1.31±0.12mmol/L)およびインスリン(50.2±3.7対74.2±2.0pmol/L)レベルは、末梢組織における改善されたインスリン感受性(0.94±0.03対0.76±0.03mmol/kg/分)と共に減少した。精巣上体、腸間膜および後腹膜脂肪組織重量は、イソマルトース含有製剤を投与された群で低かったが、肝臓および膵臓の重量は増加していた。著者らは、これらの結果はイソマルトースによる低血糖指数および改善された血糖制御に主によるものであると結論付けている。
【0191】
興味深いことに、近年の報告は、イソマルトースが成体における精神集中を高め得ることを示す。著者らは、イソマルトースがスクロースと同じ方法で成体における精神集中を高めるが、イソマルトースの効果は長く続く傾向にあると結論付けている。最小有効量は5g以上であると概算された。さらなる試験がイソマルトース効果の機構を調べるために行われている。
【0192】
イソマルトースは小腸でゆっくりそして完全に消化され、ゆっくりした血中グルコースおよびインスリン応答を提供する。イソマルトースのこの特性は有益な可能性があり、糖尿病用製品におけるその使用を支持し得る。
【0193】
ゆっくり消化可能な炭水化物源

ゆっくり消化可能な炭水化物を含む栄養製剤は、血中グルコースを管理するために糖尿病の個体を助けるために重要であるが、また小腸の遠位部分に到達する炭水化物の量を増やし、L細胞と炭水化物の接触を増加し、そして恐らくGLP−1およびGLP−2の産生を増加する。スクロマルトおよびトレハロースはイソマルトースと類似の特性を有し、糖尿病患者におけるグルコース管理改善のために同じ可能性を有する。スクロマルトはスクロースおよびマルトース由来である。トレハロースは2個のグルコース単位から成り、1個のグルコース分子は他方に対して上下逆である。加えて、ゆっくり吸収される他の炭水化物を栄養製剤内に包含し得る。
【0194】
加えて、ブチレートはL細胞上で作用し、GLP−1およびGLP−2をコードする遺伝子であるプログルカゴンの発現を増加させ、故に、経腸栄養素により刺激されたときに、分泌されるためのより多いGLP−1およびGLP−2を提供し得る。
【0195】
リポ酸
リポ酸(LA)は、糖尿病の血液からのグルコースの除去を改善し、そしてまた抗酸化作用を介して組織損傷を予防することが報告されている。LAの使用が、糖尿病が末梢神経損傷の最も一般的な原因であるやっかいな状態であるポリニューロパチーに関連する疼痛を減少できることも主張されている。
【0196】
LAはR−およびS−立体異性体のラセミ混合物であり得る。(R)−LAのバイオアベイラビリティは(S)−LAより大きいことが報告されている。加えて、動物実験は、LAのR−立体異性体がS−またはラセミ混合物よりもインスリン感受性の改善についてより有効あることを示している。600mg LAの全多岐的アベイラビリティは食事摂取により減少することが示されており、低用量LAの最大効果のために、胃が空であるときに投与すべきであることが示唆される
【0197】
本態性高血圧ラットの食事へのLA(500mg LA/kg食)の補足は、血中グルコースおよびインスリンレベル、収縮期血圧、および細胞質[Ca2+]iを減少させる。ストレプトゾトシン誘発(STZ)糖尿病ラットの食事に、LA(400mg LA/kg)を補い、4から7ヶ月後、血中グルコースは非処置コントロールに対してLAラットで顕著に減少したが、LAまたはインスリンで処置したラットの間では差異はなかった。結果として、STZ−糖尿病ラットへのLAの長期間の補給は高血糖の減少に必要であった。さらに、LAのSTZ誘発糖尿病ラットへの補給は、静脈内インスリン耐性試験後のグルコースの曲線下面積の13%減少により証明される通り、末梢インスリン感作効果をもたらした。STZ誘発糖尿病ラットの食事へのLA(30mg LA/体重kg)補給は、腎臓皮質グルタチオン含量を他の抗酸化剤よりも増加させた。LAは糸球体糖尿病性傷害の予防において有効なツールであると報告された。
【0198】
20名の2型糖尿病での非対照試験で、4週間1200mg LA(経口)がグルコース代謝の指標を改善することが示された。LA処置後、ラクテートおよびピルベートは、経口グルコース負荷後45%減少した。経口で、LA酸は、600mg LA3回で1800mg/日の用量まで安全であることが報告されている。20名の2型糖尿病での他のパイロット試験で、600、1200および1800mg/日 LA経口投与が、プラセボ対照と比較して、インスリンが刺激するグルコース処分を改善した。インスリン感受性はLA処置で17%改善されることが報告されている。LAの3つの濃度間で差異は観察されなかった。これは、600mg LA/日を超えてさらなる利点はないことを示し得る。
【0199】
LA(600mg/日)の錠剤を3ヶ月与えた糖尿病患者は、血漿脂質ペルオキサイド/(ビタミンE/コレステロール)の比率により測定して酸化的ストレスが少ないことが報告された。血糖制御と脂質ペルオキサイドまたは脂質ペルオキサイド対(ビタミンE/コレステロール)の間に相関は観察されなかった。
【0200】
ここに示す証拠は、リポ酸補足が、グルコース代謝の指標の改善を介してさらなる利点を提供し得、そしてまた血中グルコース制御を改善することを示唆する。
【0201】
4−ヒドロキシイソロイシン(コロハ種子)
以前のコロハ(Trigonella foenum-graecum)種子での研究は、その可溶性繊維フラクション(本質的にガラクトマンナン)の、糖尿病に関連する血中グルコース上昇の制御における効果を試験した。しかしながら、アミノ−酸(4−ヒドロキシイソロイシン;aka ID-1101)は、インスリン非依存性糖尿病のグルコース制御における有益な効果を有する可能性があるコロハ種子の他の生物活性成分である。
【0202】
コロハ種子は、20から30%タンパク質および約50%の炭水化物を、食物繊維の形で含むことが報告されている。コロハ種子(ID-1101)から抽出されたアミノ酸は、それが唯一コロハ種子によって産生され、そして非タンパク質新生分子鎖アミノ酸であるため、特に興味深い。
【0203】
ID-1101は、2型糖尿病の2つの別々のそして必須の機能不全を介して働くと考えられ得。これらの機構は(1)膵臓ベータ細胞におけるグルコースに対するインスリン応答の改善および(2)膵外性組織におけるインスリン受容体基質(IRS)およびホスホイノシトール(PI)3−キナーゼのインスリン活性化の増強を含む。
【0204】
いくつかの動物実験は、コロハおよびその抽出物の血糖制御効果を調査している。最近の試験では、100mg/kg ID-110を3週間投与された肥満、インスリン抵抗性Zucker fa/faラットが、コントロール肥満ラットでの漸進的な進行と比較して、高インスリン血症が減少した(P<0.05)。著者らは、ID-1101が、そのインスリン分泌性効果と無関係にインスリン感作効果を発揮すると結論付けている。
【0205】
コロハ全種子粉末(食事中5%)を、アロキサン誘発糖尿病Wistarラットに3週間投与し、空腹時血中グルコースがコントロール濃度まで回復した。1型糖尿病におけるコロハの治療的役割は、グルコースおよび脂質代謝酵素活性のより正常な値への変更に起因するものであり得て、故に肝臓および腎臓グルコースホメオスタシスを安定化する。
【0206】
イヌモデルにおける糖尿病に対するコロハの効果を、以下の2つのサブフラクションを使用して検討した:サブフラクション−A:種皮および内乳フラクション;繊維に富む(79.6%)およびサブフラクション−B:子葉および軸;サポニン(7.2%)およびタンパク質(52.8%)に富む。各サブフラクションをイヌに1日2回の餌に混ぜて与えた。サブフラクション−aおよびインスリン処置は高血糖、糖尿、高血漿グルカゴンおよびソマトスタチンレベルを減少させた。サブフラクション−Aはまた経口グルコース耐性試験に対する高血糖性応答を減少させた。対照的に、サブフラクション−Bは糖尿病イヌの高血糖または膵臓ホルモンに効果を有しなかった。コロハ種子の抗糖尿病特性は、種皮および内乳に存在すると考えられるが、このサブフラクションはまた繊維(高粘性;115cP)に冨み、種子のこのサブフラクション中の1種以上の未知の薬理学的化合物の存在を除くことは不可能であった(Ribes et al. 1986)。
【0207】
経口で2および8g/kg用量で正常およびアロキサン誘発糖尿病ラットに投与したコロハは、正常および糖尿病ラットの両方で血中グルコースの顕著な減少(P<0.05)をもたらし、血糖減少効果は用量相関であった(Khosla et al. 1995)。
【0208】
正常およびアロキサン糖尿病マウスの血清グルコースレベルに対するTrigenolla foenum graceum種子の煎出およびエタノール抽出物の効果を試験した。正常およびアロキサン処理マウスへの40−80%煎出物の1回0.5ml 経口投与は、その後6時間にわたり低血糖を発症させた。血中グルコース濃度の減少は非常に顕著であり、6時間で最大であり、用量依存的であった。アロキサン処理マウスにおけるエタノール抽出物(200−400mg/kg)によりもたらされる低血糖も用量依存的であり、200mg/kgが200mg/kg トルブタミドと同等の効果であった。
【0209】
コロハ種子抽出物を糖尿病予備軍(sub-diabatic)および軽度糖尿病ウサギ(n=5)に、50mg/体重kgで15日投与した。処置はグルコース耐性曲線を顕著に減弱し、グルコース誘発インスリン応答を改善し、血糖減少効果がインスリン合成および/またはベータ細胞からの分泌の刺激を介することを示唆する。重症糖尿病ウサギ(n=5)への50mg/体重kgで30日の長期投与は空腹時血中グルコースを顕著に減少させたが、空腹時血清インスリンレベルをかなり低い程度でしか上昇させず、これは活性原理の膵臓該モードの作用機序を示唆する。この効果はまた利用可能なインスリンへの組織感受性の増加によるものでもあり得る。血糖減少効果は、重篤な低血糖症発症の危険性は何もなくゆっくりであるが持続した。
【0210】
4−ヒドロキシイソロイシンおよびイソロイシンが同じ作用機序を有し得るため、グルコース取り込みに対するイソロイシン経口投与の非常に簡単な外観を提示する。経口イソロイシン(0.3g/体重kg)は、ロイシンおよびバリン処置と比較して7週齢ラットの血漿グルコースを減少させることが報告されている。分枝鎖アミノ酸はインスリン分泌を刺激することが示されている。生理学的濃度(各0.25mmol/l)で一緒に使用したロイシンおよびイソロイシンは、膵臓からのインスリン分泌を倍増することが報告されている。分枝鎖アミノ酸(BCAA)によるインスリン放出の刺激は、O消費の増加と比例し、島NADPH/NADP+比率の増加、45Caの正味の取り込み、およびサイクリックAMP濃度の増加と一致した。従って、BCAAを介するインスリン放出は、原因としての、燃料(グルタミン)または酵素アクティベーターとして島細胞で作用する異化流束および分泌促進物質作用の増加と関連する。コロハは、要約すると、動物実験データのレビューにより決定されるとおり、血糖制御に中程度であるが、顕著な効果を発揮するように見える。故に、コロハおよびその成分は、糖尿病関連機能不全を扱うために設計した栄養レジメンに包含させたとき、利益を提供し得る。
【0211】
糖尿病に対するカテキン(EGCG)/緑茶
緑茶はポリフェノール化合物に冨、それは乾燥茶重量の30%を構成し得て、フラボノールまたは“カテキン”を含む。赤血球からのグルコース輸送について試験した種々のカテキンの効果の比較は、エピガロカテキン(EGC)からエピガロカテキンガレート(EGCG)へのガレート化(gallation)が、グルコース輸送体に対するその親和性を2から4倍の強度で増加させることを示す。故に、EGCGは、カテキンの最大生物活性能を有すると考えられる。ほとんどの実験データが特異的カテキン(EGCG)に焦点を絞っているが、インビボで見られる主要な効果は、茶中に見られる数種の化合物の複合作用を必要とし、一つのみではないことを示唆する。
【0212】
茶カテキンがどのように糖尿病に作用するかについて数種の機構が提案されている。腸からのグルコース取り込みの阻害が血中グルコースを減少させる提案される一つの機構である。グルコース輸送に対するカテキンの阻害活性を支持する証拠は、緑茶抽出物による粘膜グルコース取り込みおよび門脈血漿グルコース濃度の減少を含む。加えて、茶抽出物はまたNa−KATPase活性を減少させる。従って、グルコース輸送が阻害され、Na補助グルコース輸送に必要な勾配を排除することにより腸細胞からのNa放出が減少すると考えられる。‘ガレート化’ポリフェノール(EGCG対EGC)は、両方の没食子酸およびEGC単独が、グルコース輸送にわずかな阻害活性を有するため、活性形であると考えられる。従って、本化合物のカテキン成分が、ガロイル残基のグルコース輸送体の結合部位への接近を増加し、阻害を促進し得ると考えられる。
【0213】
他の提案される機構は、EGCGがインスリン受容体チロシンリン酸化および受容体基質−1(IRS−1)を増加させ、PI 3−キナーゼ依存的方法でPEPCK遺伝子発現を減少させることが示されているため、EGCGのインスリン様作用である。EGCGはまたPI 3−キナーゼを増加させることによりインスリンを摸倣する。
【0214】
血漿EGCGを1mMまで増加させるのに十分である高用量の緑茶カテキンは、2g グルコース/体重kgの強制喫食により負荷した正常ラットにおける血清グルコース濃度を減少させた。加えて、カテキン(20−50μM)はまたアロキサン処置ラットの血漿グルコースを減少させた。
【0215】
ラットにTeavigoTM(>90%結晶EGCG)添加食(1%)を5週間与えると、満腹時および空腹時両方の血中グルコース濃度を各々−57および−50%減少させた。Teavigo(30および100mg/kg/日)の強制飼養を使用した11日試験は、空腹時血中グルコースを各々−16%から−32%減少させた。経口グルコース耐性は7%および19%改善した。血漿インスリンは増加し、また糖新生酵素(PEPCKおよびG6Pase)についての肝臓mRNAも減少した。
【0216】
緑茶抽出物は、空腹時STZ誘発糖尿病マウスに300mg/kgで抗高血糖効果を有するが、30または150mg/kgではないことが観察された。血中グルコース濃度減少中に血中インスリン濃度の変化はなかった。著者らは、緑茶化合物の血中グルコース濃度に対する効果は、末梢組織におけるインスリン作用の促進によると推測している。
【0217】
インスリン抵抗性を示すフルクトース給餌ラットへの水と緑茶(0.5g 凍結乾燥茶/100ml)の補給は、インスリン刺激グルコース取り込みを改善し、また脂肪細胞のGLUT4の存在を増加させた。著者らは、緑茶が、恐らくGLUT4発現増加を介してインスリン抵抗性を改善すると要約している。
【0218】
“エピカテキン”(30mg/kg i.p.− 2×/日)を4−5日間投与されたアロキサン誘発糖尿病ラットは、血糖濃度が正常まで下がり、アロキサンにより壊死したβ細胞の再生が組織学的に示された。免疫反応性インスリン試験は、該細胞が機能的であることを示した。
【0219】
Sheehan et al. (1983)はまたアロキサン処置ラットに30mg/kg エピカテキンを投与し、エピカテキンがβ細胞に対するアロキサン毒性の保護に有用であり得るが、既存の糖尿病の回復には有用ではないことを報告している。Sheehan et al., Bone et al. (1985)と一致して、また、エピカテキンがラットのアロキサン誘発糖尿病を改善し、発症を中止するまたは確立された糖尿病の回復ができるとの徴候は見つからなかったと主張した調査があった。結果の差異は、エピカテキンの乏しい安定性に関連すると考えら得たが、分析はそれが溶液中で少なくとも5日間安定であることを示した。
【0220】
前臨床発見は、EGCGおよび茶カテキンの抗糖尿病性効果が腸グルコース輸送(Na−グルコース輸送体)の阻害の結果であることを示唆する。さらなる視点は、高EGCG(>10μM)が、糖新生(例えばPEP−キナーゼ)の阻害により高血糖を予防することである。しかしながら、これらの前臨床試験で使用されたカテキン濃度はヒトで達成可能であるより恐らく高く、経口補給のみで得ることは困難であることに注意することは重要である。
【0221】
10名の健常ボランティアが1.5mmole EGCGを摂取した。EGCGは、3.9時間の排出T1/2を有した。24時間で、EGCGは基本レベルに戻った。EGCGの最大ピークは1.3μmol.l−1であった。非常に限定された相互変換(EGCGからEGC)が起こり、脱ガレート化が取り込みに必要でないことを示した。EGCGは尿で検出されなかった。血漿抗酸化活性の統計学的に有意な増加はEGCGで見られなかった。
【0222】
シナモン
シナモンは熱帯常緑樹の内皮に由来する。2つの主要な種類はCinnamomum cassiaおよびCinnamomum zeylanicumである。C. cassiaは芳香族性樹皮であり、C. zeylanicuに類似するが、強度および質が異なる。C. cassia樹皮は暗く、厚く、そして脆い。コルク状外皮がしばしばこの種類にはある。C. zeylanicumはまたセイロンシナモンまたは‘真シナモン’として既知であり、それはC. cassiaより明るい色であり、甘く、より繊細な香りを有する。
【0223】
シナモンはメチルヒドロキシカルコンポリマー(MHCP)を含むことが示されている。このポリマーはタンパク質チロシンホスファターゼ−1Bを阻害し、それはTyr−1150またはTyr−1151上のインスリン受容体βサブユニットの自己リン酸化ドメインを包含するホスホペプチドを脱ホスホリル化する。従って、MHCPは、インスリン受容体のリン酸化を可能にすることによりインスリンの作用を摸倣し、血中グルコース濃度を下げる。シナモンは、シナモンがグルコース取り込みを増加させるために必要なカスケードを刺激し得るため、インスリン抵抗性の個体に有益であり得る。
【0224】
バナバ抽出物
バナバとしても知られているLagerstremia speciosa L.は、フィリピン、インド、マレーシア、中国およびオーストラリアを含む熱帯国で育つ植物である。この熱帯植物の葉は、糖尿病および腎臓疾患の処置のための民間薬として使用されている。この葉は大量のコロソリン酸を含み、それは抗糖尿病性特性を有し、タンニンの相当量である。
【0225】
バナバ葉の煎出による血中グルコースレベルに対する効果は、Garciaにより早くも1940年には調査されていた。後に、Lagerstremia speciosa L.抽出物の血糖低下効果が1996年に糖尿病性マウスモデル(2型)において、Kakudaらにより評価された。動物に5週間Lagerstremia speciosa L.抽出物を含む食事を与えた。結果は、糖尿病マウスにおける血漿グルコースレベルの増加が、コントロール食へのHWE(熱水抽出物)またはHPME(メタノール溶離剤フラクション)の添加により抑制され、水摂取の減少を伴った。さらに、給餌期間の5週目に測定した血清インスリンレベルはHWE食群で減少していた。
【0226】
他の試験において、バナバ抽出物(BE)はその抗肥満効果の試験のために使用されている。5週齢雌KK−Ayマウスに、セルロースの代わりにバナバ葉からの5%の熱水抽出物を含む試験食を12週間与えたとき、それらの血中グルコース濃度は抑制されないが、総肝臓脂質含量の顕著な、コントロールレベルの65%までの減少を示した。この減少は、トリグリセリドの蓄積の減少によるものであった。
【0227】
2003年に、Judyらは、2型糖尿病患者(インスリン非依存性糖尿病、NIDDM)が関与する無作為臨床試験を行った。対象は、毎日軟ゲルまたは硬ゼラチンカプセル中のGlucosolTM(1%コロソリン酸に標準化したLagerstroemia speciosaの葉からの抽出物)を2週間経口で摂取した。血中グルコースレベルの統計学的に有意な減少が、軟または硬ゲル形で提供されたGlucosolを1日48mg投与した2型糖尿病性患者で観察された。それにも係わらず、軟ゲル形は血中グルコースの抑制により有効であり、それは血中グルコースの30%減少を示し、対して硬ゲル形は20%であった。
【0228】
最近のインビトロ試験において、BEの3T3−L1細胞におけるグルコース輸送および脂肪細胞分化に対する効果が試験された。彼らは蒸留水で抽出したものではなく、熱水およびメタノール抽出物の両方が3T3−L1細胞におけるグルコース取り込みを促進することを示し、BE中の有効成分(複数もある)が水溶性であり、熱安定性であることを示唆する(沸騰および熱蒸発させることが必要な抽出物調製中に試験)。最大グルコース取り込みは、0.1から0.25g/LのBEで観察された(240nmol/Lのインスリンがグルコースの最大取り込みを誘発し、それはBEで観察された最大取り込みより2.7倍大きい)。インスリンと同様、BEは最大グルコース取り込みを誘発するまで、最大15分必要とする。本試験で彼らはBEおよびインスリンの間に相加または相乗作用が存在するか否かを確認したが、グルコース取り込みはインスリン単独のときと変わらず、相加または相乗効果が存在しないことを示唆する。
【0229】
インスリンは、前脂肪細胞から脂肪細胞への分化を誘発する適性を有する。この効果は、BEの存在下で確認された。結果は、インスリンとは対照的に、1−100mgのBEがIBMX−またはDEX−(前脂肪細胞から脂肪細胞への分化を誘発するインスリンを含むカクテル)前脂肪細胞の時間および用量依存性阻害を誘発することを示した。さらに、Liuらは分化経路の阻害を試験し、BEがPPARγ2のmRNA発現を用量依存的方法で大きく阻害し、そしてGLUT4の産生を減少することを観察した(PPARγ2およびGLUT4は分化のマーカーである)。
【0230】
この研究グループは、3T3−L1細胞におけるグルコース輸送刺激脂肪細胞阻害を担うBEの成分の同定について研究を続けた。彼らは、BEの目的の2つの活性はBEのタンニンフラクションに存在すると報告した。
【0231】
彼らはSigmaから購入した数種の構造的に関連したガロタンニン化合物の混合物であるタンニン酸(TA)でさらに実験を行い、TAが、インスリンと類似のプロファイルでグルコース輸送を阻害することを観察し、類似経路の可能性を示唆した。インスリン経路の阻害剤を使用して、彼らはTA誘発グルコース輸送が、インスリン受容体が阻害されたときに遮断されることを示した。最後に、彼らはTAが、PPARγのような脂肪生成過程、およびc−fos、c−junおよびc−mycのような分化過程に関与する遺伝子に影響することにより脂肪細胞分化を阻害することを証明した。
【0232】
タンニンは、植物、果実および飲料のような食事に見られるポリフェノール化合物である。それらは、抗癌、抗酸化、および抗微生物活性を含む多数の生物学的活性を有することが報告されている。一般に、タンニンは消費されたときに負の応答を誘発する。これらの効果は、渋み(astrigency)または苦みもしくは不快な味のような即時のもので有り得て、または、抗栄養/毒性効果に関連する遅延応答を有し得る。
【0233】
TAはタンニン化合物の混合物であり、グルコース輸送刺激および脂肪細胞分化の阻害に関与する最も有効な化合物(複数もある)はまだ同定されていない。
【0234】
マデグルシルTM
マデグルシルTMは、Syzygium cumini synonyms Eugenia jambolanaおよびSyzygium jambolanumであって、一般にジャウム、ムラサキフトモモ、ブラック・プラムおよびインディアン・ブラックベリーと呼ばれる種子からの抽出物である。ジャウム樹はインド原産であり、熱帯環境で成長する大きな常緑樹である。Syzygium cumini植物の種子、葉および果実は。その血糖低下特性のために伝統的薬剤として使用されている。
【0235】
Syzygium cuminiに関連して行われている研究の大半が、その葉、果実、種子、および仁における血糖低下、脂質低下、および抗酸化効果を評価している。Syzygium cuminiの種子および仁において行われた試験のみが正の効果を報告している。興味深いことに、これらの試験の全てがインドで成長した植物を使用して行われているが、効果がないことを報告した試験は、植物の果実または葉を使用しており、そしてブラジルで成長した植物を使用して行われた。
【0236】
Sridharおよび同僚らは、Syzygium cumini種子粉末(250、500および1000mg/kg)の、ストレプトゾトシン糖尿病ラットにおける血糖制御の改善に対する効果を15日間試験した。彼らは、糖尿病コントロールと比較して、空腹時血中グルコース(−13、−30および−46mg/dl)の減少およびグルコース耐性試験(−20、−36および−46mg/dl)におけるピークレベルの減少を報告した。ムラサキフトモモ種子抽出物はまた血糖制御および脂質プロファイルに有益な結果を示している。Syzygium cumini種子水性抽出物(2.5および5.0g/kg)をアロキサン糖尿病ラットに6週間与え、結果は、血中グルコース(−108および118mg/dl)の顕著な減少およびフリーラジカル形成の減少であった。しかしながら、7.5g/kg用量は顕著な効果はなかった。
【0237】
Princeおよび同僚らは、アロキサン糖尿病ラットで6週間後に、アルコール抽出物(100mg/kg)がインスリン(−183.1mg/dl)と同じ効果で空腹時血中グルコース(−180mg/dl)レベルを低下させることを報告した。コレステロールおよび遊離脂肪酸レベルも、糖尿病ラットと比較して、正常ラットおよびインスリン処置糖尿病ラットに類似であった。糖尿病予備軍、軽度糖尿病および重度アロキサン糖尿病ウサギの血中グルコースにおけるSyzygium cumini種子のアルコール抽出物での急性結果も報告されている。Syzygium cumini種子のアルコール抽出物(50、100および200mg/kg)消費90分以内に、グルコースレベルが軽度糖尿病ウサギ(−20、−29および−28mg/dl)および重度糖尿病ウサギ(−50.4、−74.2および−77.9mg/dl)で低下した。Syzygium cumini種子アルコール抽出物(100mg/kg)消費15日後、軽度糖尿病(−64mg/dl)および重度糖尿病(−84mg/dl)ウサギのグルコースレベルは顕著に減少した。同様の結果が総コレステロール、HDL、LDL、VLDLおよびトリグリセリドでも報告されている。Syzygium cumini種子抽出物の効果は、糖尿病ラット脳における組織損傷の減少でも示されている。6週間の水性抽出物(5g/kg)脂質の後に、アロキサン糖尿病ラットの脳においてチオバルビツール酸反応物質(TBARS)が減少し、カタラーゼおよびスーパーオキシドディスムターゼが増加することが報告されている。しかしながら、アルコール抽出物の投与は、これらのパラメータ全てを正常レベル近くまで持っていった。ムラサキフトモモ種子のアルコール抽出物は水性抽出物より良いと結論付けられた。これらのデータに基づき、ムラサキフトモモ種子のアルコール抽出物は抗糖尿病、抗高脂血症および抗酸化効果を有するように見える。
【0238】
研究の大半は、Syzygium cumini仁の効果の試験を、抗糖尿病、抗酸化および抗高脂血症剤としてレビューした。Groverおよび同僚らは、Syzygium cumini仁の水性抽出物(200mg/kg)が、ストレプトゾトシン糖尿病ラットで40日後に、グルコース濃度(−94.7mg/dl)を低下させ、多尿症を予防し、正常尿アルブミンレベルに維持することを報告した。Syzygium cumini仁の水性、水性凍結乾燥およびアルコール抽出物はGroverおよび同僚らによって試験された。彼らは、各抽出物の200mg/kg用量が、アロキサン糖尿病ラットで3週間後にグルコースレベルを低下させる類似の結果となることを発見した。さらに、ラットの中程度および重度糖尿病における水性凍結乾燥抽出物(4ヶ月)の効果の実験は、血漿グルコースレベルが中程度糖尿病(−194mg/dl)で部分的に正常化され、重度糖尿病(−78mg/dl)ではわずかにしか減少しないことを確認した。故に、Syzygium cumini仁の効果は、本疾患の重症度に依存する。Vikrantおよび同僚らは、Syzygium cumini仁の水性およびアルコール抽出物(100、200および400mg/日)両方の、フルクトース給餌ラットに対する効果を試験し、400mg/日での水性抽出物のみが食事中の高フルクトース(66.46対75.46mg/dl)により誘発された高血糖および高インスリン血症を予防したと報告した。対照的に、Raviおよび同僚らによる4つの別々の試験は、Syzygium cumini仁アルコール抽出物の抗酸化、抗高脂血症および高糖尿病剤としての利益を報告しており、そしてまたその効果が経口糖尿病剤であるグリベンクラミドを摸倣することを報告した。2004年に、彼らは、Syzygium cumini仁アルコール抽出物(100mg/kg)が、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおいて30日後に、血中グルコースを減少させ、インスリン濃度を増加させ、体重を正常化し、酸化的ストレスのマーカーを改善し、そして肝臓、腎臓および膵臓生理学を改善するとの2つの別々の試験を公開した。彼らはまたSyzygium cumini仁抽出物(100mg/kg)が、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおいて30日後に総コレステロール、リン脂質、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸をコントロールレベルまで正常化することも報告している。
【0239】
Syzygium cumini種子の異なる部分の効果を決定するために、Raviおよび同僚らは、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおけるSyzygium cuminiの全種子、仁および種皮のアルコール抽出物の血糖低下活性を評価した。彼らは、各調製物100mg/kgの30日後に、全種子はグルコースレベルに対して中程度の効果を有し、仁はグルコースレベルをグリベンクラミドのレベルまで正常化し、そして種皮はグルコースレベルに効果がないことを報告した。彼らは仁およびグリベンクラミド処置のみがコレステロールおよび肝臓グリコーゲンレベルをコントロールレベルまで正常化することも発見した。これらのデータに基づき、Syzygium cumini仁はグルコースおよび脂質レベル、および酸化的ストレスに対する正の効果を有するようである。しかしながら、水性またはアルコール抽出物のいずれがより有益であるのかの決定的証拠はない。
【0240】
Syzygium cuminiの水性抽出物がエラグ酸およびアルカロイドジャンボシン(jambosine)を含み、アルコール抽出物が没食子酸、エラグ酸、コリラジンおよびケルセチンを含むことが報告されている。Syzygium cuminiの活性成分は、それが両方の抽出物に含まれ、多くの試験で水性およびアルコール性抽出物両方の利益が報告されているため、エラグ酸であり得る。しかしながら、Syzygium cumini中の実際の活性成分を決定する試験は行われていない。
【0241】
Syzygium cuminiの作用機構を調査する試験はない。しかしながら、Ravi、PrinceおよびGroverは、血糖低下作用は、生存しているβ細胞によりインスリンを放出するよう刺激するためであり得ることを示唆している。この仮説は、血糖低下効果が重度糖尿病性モデルと比較して軽度から中程度糖尿病性モデルにおいてより顕著であり、インスリンレベルが増加することが報告されているとの事実により支持される。これらのモデルにおいて、糖尿病は、本質的にβ細胞の破壊を標的とするアロキサンおよびストレプトゾトシンにより誘発された。加えて、Raviおよび同僚らにより行われた実験はグリベンクラミドを投与された動物の群を含み、そして一貫して、Syzygium cumini群の動物はグリベンクラミドを投与された動物と類似の結果であった。グリベンクラミドはスルホニルウレアであり、その作用機序はβ細胞からのインスリン分泌を刺激することである。故に、Syzygium cuminiの作用機序はインスリン分泌の刺激であり得る。具体的機構的試験がこの仮説の確認のために必要である。
【0242】
アルギニン
特異的アミノ酸が、インスリン分泌の刺激によりグルコース制御を改善できるであろうことが仮説立てられている。インスリン抵抗性のマウスモデルを使用した先の試験は、この仮説を支持する。アルギニン(1.75g)、フェニルアラニン(0.40g)およびロイシン(1.20g)を含むアミノ酸混合物は、慢性アミノ酸給餌後に食後グルコース応答を改善した。これらの観察は、アルギニン単独(2g)またはアルギニン(4.7g)およびロイシン(3.3g)のいずれかでヒトにおいて急性に確認されている。両方の調製物が、標準製剤と比較して血糖応答を改善した。
【0243】
加えて、van Loonおよび同僚らは、8名の健康な男性における、小麦タンパク質加水分解物/アミノ酸(アルギニン、フェニルアラニンおよびロイシン)混合物のインスリン応答に対して報告している。一晩絶食後、対象は炭水化物単独または炭水化物とタンパク質加水分解物/アミノ酸混合物を消費した。両方の処置は血漿グルコースおよびインスリンの増加をもたらした。しかしながら、インスリン応答は、炭水化物を単独で消費したのと比べて、アミノ酸混合物を炭水化物と共に消費したときに大きかった。これは、特異的アミノ酸がインスリン血漿濃度の上昇により血糖制御に関係するとの仮説を支持するさらなる証拠を提供する。
【0244】
研究は、アルギニンのインスリン感受性の増加に対する効果および血糖制御を改善するその能力について本質的に試験した。これは、アルギニン補足(9g/日)を1ヶ月消費した糖尿病の6名のヒトで本質的に試験した。プラセボと比較して、アルギニンは前腕血流およびグルコース処分を顕著に増加させ、そして収縮期血圧および内因性グルコース産生を減少させた。加えて、アルギニンはインスリン感受性を改善させた。Sianiおよび同僚らは、経口サプリメント(10g/日)およびアルギニンに富む食事(10g/日)からとしてアルギニンの効果を試験した。彼らは、アルギニンサプリメントおよび食事からのアルギニンの両方が、コントロール食(〜4g アルギニン/日)と比較して6名の健康対象で収縮期および拡張期血圧を減少させると報告した。血中グルコースはアルギニンサプリメントにより顕著に減少し、アルギニンに富む食事でわずかに減少した。
【0245】
対照的に、Gannonおよび同僚らにより9名の健康男性での試験は、25gのグルコース摂取2時間後のインスリン濃度における経口アルギニン(1mmol/kg 除脂肪体重、〜10g平均)に顕著な効果がないことを示した。しかしながら、研究者らは、血漿グルコース増加の減弱を記していた。故に、アルギニンがインスリン感受性および血糖制御を改善する能力は、糖尿病の人々で障害されていることが既知のインスリン分泌の増加を刺激するため、糖尿病のヒト達でより有効であり得る。
【0246】
インスリン感受性および血糖制御を改善するその能力に加えて、アルギニンは酸化的ストレスおよび組織損傷を減少し、そして血管機能を改善することが報告されている。Lubecおよび同僚らによるクロスオーバー試験で、脂質過酸化が、糖尿病の30名の患者におけるマロンジアルデヒドの尿レベルで評価して、アルギニン(1g/日)の毎日の補給により顕著に減少した。本患者は、3ヶ月間アルギニン、その後プラセボまたはその逆に無作為に割り振られた。興味深いことに、マロンジアルデヒドは、患者がアルギニン処置を受けているときに顕著に増加し、そしてマロンジアルデヒドの尿排泄は、アルギニン処置を受けた群がプラセボに変わったときに顕著に増加し、アルギニンの、それが酸化的ストレスを減少できる保護効果を示す。
【0247】
加えて、アルギニンは腎臓の酸化的損傷を減少することができ得る。アルギニンが酸化的ストレスおよび腎臓組織損傷を減少できる能力は、糖尿病マウスモデルで試験された。アルギニン投与に続き、酸化的ストレスの指標である脂質過酸化および糖酸化は顕著に減少した。加えて、腎臓コラーゲン蓄積、腎臓重量およびアルブミン尿も、アルギニンにより顕著に増加した。これらの発見は、腎臓組織損傷が増加した糸球体コラーゲン蓄積に一部関与すると考えられているため、糖尿病に関連する腎症への重要な暗示である。
【0248】
長期アルギニン補足はまた、糖尿病の併存症の一つである内皮機能不全も軽減し得る。健康ボランティアの群で、6ヶ月のアルギニン補足(9g/日)は、プラセボ群と比較して、アセチルコリンに応答した小血管冠動脈血流を顕著に増加させた。同様に、4ヶ月のアルギニン補足(21g/日)は、内皮機能不全を伴う高コレステロール血症対象における内皮依存性拡張を増加させた。しかしながら、アルギニンはリポタンパク質レベルに影響を有しなかった。アルギニンの食事での補足(3週間12g/日)は、高コレステロール血症の男性における拡張期血圧の少ない低下および血漿ホモシステインの中程度減少に関係すると報告されている。疫学的試験は、多すぎるホモシステイン(血中アミノ酸である)が、冠動脈心疾患、卒中および末梢血管疾患の高い危険性に関連することを示している。故に、アルギニンは、糖尿病に関連する長期合併症の管理を助けるために顕著な役割を有し得る。
【0249】
アルギニンは、効率的な創傷治癒に重要な多くの代謝的および生理学的身体機能を制御する。それは条件的に必須であり、それが、身体がストレス下にあるかまたは損傷状態にあるときに必要であることを意味する。アルギニンは、リンパ球免疫応答の刺激により、創傷の感染性合併症の危険性を減少する。それはプロリンの前駆体であり、それはヒドロキシプロリン、次にコラーゲンに変換し、それは創傷治癒に重要である。加えて、アルギニンは、創傷治癒に必要な細胞増殖に重要であるポリアミンの合成に重要な要素である。最後に、アルギニンは傷への増加した血液供給を促進し、それにより循環系を改善することが報告されている。
【0250】
2つの試験が、創傷治癒における有益な効果を示している。Barbulおよび同僚らは、36名の健康な、非喫煙ボランティアを、30gのアルギニンヒドロクロライド(24.8gの遊離アルギニン)、30gのアルギニンアスパルテート(17gの遊離アルギニン)、またはプラセボの毎日の補給に無作為化した。人工的に傷を付け、治癒をヒドロキシプロリン、新規コラーゲン合成および沈着の指数の測定により2週間の期間モニターした。アルギニンサプリメントは、存在するヒドロキシプロリンの量により評価して、標準的な傷におけるコラーゲン沈着の量を顕著に増加した。加えて、アルギニンを受けたボランティアの免疫応答は増加していた。
【0251】
類似の試験で、Kirkおよび同僚らは、65歳より上の30名の人々を30gのアルギニンアスパルテート(17gの遊離アルギニン)および65歳より上の15名の人々をプラセボに無作為に割り当てた。彼らはアルギニン補足が、存在するヒドロキシプロリンの量により評価して、標準的な傷におけるコラーゲンの量を顕著に増加させることを報告した。加えて、免疫応答はアルギニン補足群で大きかった。
【0252】
アルギニンの創傷治癒における利益はまた動物モデルでも試験されている。アルギニン補足ラットは、切開の破壊の強度により判断して、ならびにスポンジ肉芽腫における増加したヒドロキシプロリンレベルにより判断して、アルギニン欠損ラットよりも改善された創傷治癒を示した。加えて、アルギニンは糖尿病および正常ラットの両方で創傷治癒を加速した。Witteおよび同僚らは、コントロールおよび糖尿病ラットでアルギニン補足ありまたは無しで創傷治癒速度を比較する試験を36匹のラットで行った。彼らは、10日後の破壊の強度が、アルギニン補足を受けたラットで、受けていないものより改善されていることを発見した。この差異は、コントロールと比較したとき、糖尿病ラットで顕著であった。同様に、Shiおよび同僚らは、コントロールおよび糖尿病ラットでアルギニン補足ありまたは無しで創傷治癒速度を比較する試験を56匹のラットで行った。彼らは、10日後の破壊の強度が、アルギニン補足を受けたコントロールおよび糖尿病ラットの両方で顕著に改善することを発見した。
【0253】
米国で糖尿病と診断された人の約12%が、糖尿病性足潰瘍の病歴を有し、それはさらなる足潰瘍ならびに下肢切断の危険因子を増加させる。加えて、欧州では、糖尿病を有する約660,000名が足潰瘍を有し、これらの個体の10%が最終的に下肢切断を受けると概算される。故に、糖尿病用製剤へのアルギニンの添加は、糖尿病関連創傷の予防および処置のために重要である。
【0254】
多不飽和脂肪酸比率
さらなる成分を構成しないが、数名の研究者らが、低比率のオメガ−6:オメガ−3脂肪酸が、異脂肪血症、炎症、およびインスリン抵抗性を含む糖尿病に関連する状態を改善し得ると仮説立てている。オメガ−3脂肪酸は、抗血栓症効果に関連する代謝物の前駆体であるが、オメガ−6脂肪酸は血栓症、凝集、血液粘性、および炎症を増加するエイコサノイド産生のための基質である。従って、オメガ−3脂肪酸に比して大量のオメガ−6脂肪酸の食事消費は、炎症促進、アテローム生成促進生理学的環境に適するように代謝をシフトし得る。これらの生理学的観察は、適切なエイコサノイドバランスに維持することがが、多不飽和脂肪酸の負の効果を最小にし、そして可能性のある健康利点を最大にするために必須であることを示唆する。
【0255】
魚油:エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸
異常リポタンパク質代謝に大きく関係する心血管疾患は、糖尿病の主要な合併症の一つである。魚油は、血清トリグリセリドのようなあるリポタンパク質フラクションに有益な効果を有することが示されている。加えて、疫学的試験は、海魚からのオメガ−3脂肪酸の中程度の消費が、高齢個体における心血管疾患死亡率を減少させ得、そしてグルコース不耐性発症の危険性を減少させることを示唆する。従って、米国糖尿病協会は、オメガ−3を含む魚を週に2皿以上食べることが、糖尿病の個体に推奨されるはずであると述べる。同様に、米国心臓協会は、冠動脈心疾患を有する個体は、毎日約1gエイコサペンタエン酸+ドコサヘキサエン酸(EPA+DHA)を、好ましくは脂肪に富む魚からそして医師の監視下ならばサプリメントとして消費することを推奨している。高トリグリセリド血症の個体については、米国医師会は医師の監視下の1日2から4gのEPA+DHAの毎日の補給を示唆している。
【0256】
メタアナリシスは、糖尿病を有する患者のトリグリセリド濃度における魚油(用量範囲:3から18g/日)の著しい強化を証明した(〜0.56mmol/Lの減少)。しかしながら、LDLコレステロールにおける正味の効果は〜0.21mmol/Lの増加であり、試験で最も顕著な効果は高トリグリセリド血症の対象を含んだ。同様の結果が、以前のメタアナリシスにおいても示されており、それは、血清トリグリセリドの〜0.60mmol/Lの平均減少、LDLコレステロールの〜0.18mmol/L増加、およびヘモグロビンA1cへの有害な効果がないことを報告した。このアナリシスは、血漿トリグリセリド濃度における魚油補給の効果が、糖尿病を有する個体でもっと顕著であることを発見した。
【0257】
魚油補給は、糖尿病または高トリグリセリド血症の個体で行ったほとんどの試験において血漿トリグリセリドの減少が一貫して観察されている。魚油は、肝臓トリグリセリド産生の減少により、トリグリセリド濃度を減少させるようである。これらのデータは、魚油補給が、インスリン抵抗性の増加した肝臓トリグリセリド合成特性を補正する手段であり得ることを示す。さらに、動物試験は、魚油が肝臓および骨格筋トリグリセリドを減少させ得ることを示している。
【0258】
いくつかの試験が、魚油補給でLDLコレステロールの増加を報告しているが、その他は、濃度の顕著な変化を報告していないか、または効果は用量により変わった。LDLコレステロール濃度の魚油誘発増加は、恐らく、肝臓由来VLDLからLDLコレステロール粒子への変換の増加による。観察される増加したLDLコレステロールの臨床的意義は不確かであり、LDLコレステロール濃度に対する魚油の効果に関連する文献には多くの変動が存在し、これは、一部、投与した量の広範さ、補給期間、試験設計および対象数によるものであろう。
【0259】
糖尿病を有する患者における魚油の心臓保護効果は、一部、増加した動脈コンプライアンスおよび血小板機能、および減少した酸化的ストレス(Mori TA 2000)および炎症により仲介され得る。大規模、無作為プラセボ対照試験の結果は、魚油消費(〜1.08g EPA/日)が、リポタンパク質を変化させることなく心血管疾患事象を減少させることを示した。この観察は、魚油群におけるコンジュゲートしたジエン形成の減少と組み合わさって、心臓保護は酸化的ストレスの減少によるものであるとの仮説を研究者らにもたらした。
【0260】
血糖制御における魚油の効果を報告した介入試験は多様な結論に達しており、いくつかは空腹時グルコース、ヘモグロビンA1c、および/またはグルコース消失速度により測定して、改善された、影響を受けないまたは減少した血糖制御を示した。Hendraおよび同僚らの結果は、補給期間が結果に影響し得ることを示唆する。10g/日の魚油補給で3週間後、研究者らは、糖尿病の40名の患者において空腹時血中グルコースの有意な増加を観察したが、6週間介入後、ベースラインからの差異はもはや統計学的に有意ではなかった。補給のレベルは、Schectmanおよび同僚らの試験に影響し、彼らは空腹時血中グルコースおよび糖化ヘモグロビンが、1ヶ月7.5g/日 魚油補給で顕著に増加するが、4g/日補給ではしないことを報告した。全体として、3つのかなり大規模なメタアナリシスがこのデータをよく分析し、血糖制御に魚油が顕著な効果がないことを発見した。
【0261】
魚油の血糖制御に対する効果と同様、インスリン感受性に対する影響も雑多であった。動物試験は、インスリン感受性が魚油含有食により増大され得ることを示唆した。糖尿病の個体で、インスリンが刺激するグルコース消失により評価して、エクスビボ インスリン感受性は3g 魚油/日で一つの試験で改善されたが、他の試験では(10g/日)感受性は障害を受けた。他の試験は、糖尿病の個体のインスリン感受性に良い効果も悪い効果もないことを発見している。
【0262】
他の成分
上記のような1:1:1炭水化物:脂肪:タンパク質比率を有する栄養製剤に包含するのに適する他の成分は、クロロゲン酸(ナトリウム依存性グルコース輸送を阻害)、マンゴスチン(IKK阻害に関連する抗酸化および抗炎症)、ヤシ油工場廃液(抗酸化活性を増加し、アテローム性動脈硬化症病巣を減少させるフェノール成分(phenolics))、クロミウム(インスリン感受性増加および血糖制御改善)、バナジウム(インスリン様活性を示し、グルコース取り込みを刺激し、そしてタンパク質チロシンホスファターゼおよび糖新生を阻害)、および脂肪細胞におけるインスリン依存性グルコース代謝を増加できる化合物(例えば、マンサク、オールスパイス、ローリエ、ナツメグ、丁子、キノコ、および出芽酵母)を含む。
【0263】
本発明は、上記の具体的な態様に限定されず、添付の特許請求の範囲により定義される変化した、修飾されたおよび同等な対象を含むことは認識されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン感受性を増加させるため、インスリン抵抗性を減少させるため、血中へのグルコースの出現を遅延させるため、食後血漿インスリン濃度を減少させるため、食後脂肪クリアランスを増加させるため、または心血管疾患もしくは事故(incident)を処置もしくは予防するための、a. タンパク質源、b. 脂肪源およびc. 炭水化物源を含む栄養製剤であって、タンパク質源および脂肪源が1:1の比率であり、各々が該製剤の総カロリーの15%から45%を構成する製剤;ただし、タンパク質源、脂肪源および炭水化物源が30:30:40の比率ではない。
【請求項2】
脂肪源がリノール酸(18:2)の形で該製剤の総カロリーの2%以上を構成する、請求項1記載の栄養製剤。
【請求項3】
以下の少なくとも1つをさらに含む、請求項1または2に記載の栄養製剤:トウチ抽出物、一部加水分解されたグアーガム、イヌリン、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトース、スクロマルト(sucromalt)、トレハロース、リポ酸、4−ヒドロキシイソロイシン、カテキン、シナモン、バナバ抽出物、マデグルシル、アルギニン、分枝鎖アミノ酸、グルタミン、グルタメート、魚油、クロロゲン酸、マンゴスチン、ヤシ油工場廃液、クロミウム、バナジウム、マンサク、オールスパイス、ローリエ、ナツメグ、丁子、キノコ、出芽酵母、およびそれらの組み合わせ。
【請求項4】
インスリン感受性を増加させるため、インスリン抵抗性を減少させるため、血中へのグルコースの出現を遅延させるため、食後血漿インスリン濃度を減少させるため、食後脂肪クリアランスを増加させるため、または心血管疾患もしくは事故を処置もしくは予防するための、a. タンパク質源、b. 脂肪源およびc. 炭水化物源を含む栄養製剤であって、タンパク質源、脂肪源および炭水化物源が1:1:1の比率であり、各々が該製剤の総カロリーの1/3を構成する製剤。
【請求項5】
以下の少なくとも1つをさらに含む、請求項4記載の栄養製剤:トウチ抽出物、一部加水分解されたグアーガム、イヌリン、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトース、スクロマルト、トレハロース、リポ酸、4−ヒドロキシイソロイシン、カテキン、シナモン、バナバ抽出物、マデグルシル、アルギニン、分枝鎖アミノ酸、グルタミン、グルタメート、魚油、クロロゲン酸、マンゴスチン、ヤシ油工場廃液、クロミウム、バナジウム、マンサク、オールスパイス、ローリエ、ナツメグ、丁子、キノコ、出芽酵母、およびそれらの組み合わせ。
【請求項6】
脂肪源がリノール酸(18:2)を含む、請求項4または5記載の栄養製剤。
【請求項7】
リノール酸(18:2)が該製剤の総カロリーの2%以上を構成する、請求項6記載の栄養製剤。
【請求項8】
インスリン感受性を増加させるための組成物の製造を目的とする、請求項1から7のいずれかに記載の栄養製剤の使用。
【請求項9】
インスリン抵抗性を減少させるための組成物の製造を目的とする、請求項1から7のいずれかに記載の栄養製剤の使用。
【請求項10】
血中へのグルコースの出現を遅延させるための組成物の製造を目的とする、請求項1から7のいずれかに記載の栄養製剤の使用。
【請求項11】
食後血漿インスリン濃度を減少させるための組成物の製造を目的とする、請求項1から7のいずれかに記載の栄養製剤の使用。
【請求項12】
食後脂肪クリアランスを増加させるための組成物の製造を目的とする、請求項1から7のいずれかに記載の栄養製剤の使用。
【請求項13】
心血管疾患または事故(incident)を処置または予防するための組成物の製造を目的とする、請求項1から7のいずれかに記載の栄養製剤の使用。
【請求項14】
インスリン抵抗性を減少させるための組成物であって、
i.タンパク質源;
ii. 脂肪源;および
iii. 炭水化物源
を含んでおり、タンパク質源および脂肪源が1:1の比率であって、各々が該組成物の総カロリーの15%から45%を構成する組成物;ただし、タンパク質源、脂肪源および炭水化物源が30:30:40の比率ではない。
【請求項15】
血中へのグルコースの出現を遅延させるための組成物であって、
i. タンパク質源;
ii. 脂肪源;および
iii. 炭水化物源
を含んでおり、タンパク質源および脂肪源が1:1の比率であって、各々が該組成物の総カロリーの15%から45%を構成する組成物;ただし、タンパク質源、脂肪源および炭水化物源が30:30:40の比率ではない。
【請求項16】
食後血漿インスリン濃度を減少させるための組成物であって、
i. タンパク質源;
ii. 脂肪源;および
iii. 炭水化物源
を含んでおり、タンパク質源および脂肪源が1:1の比率であって、各々が該組成物の総カロリーの15%から45%を構成する組成物;ただし、タンパク質源、脂肪源および炭水化物源が30:30:40の比率ではない。
【請求項17】
食後脂肪クリアランスを増加させるための組成物であって、
i. タンパク質源;
ii. 脂肪源;および
iii. 炭水化物源
を含んでおり、タンパク質源および脂肪源が1:1の比率であって、各々が該組成物の総カロリーの15%から45%を構成する組成物;ただし、タンパク質源、脂肪源および炭水化物源が30:30:40の比率ではない。
【請求項18】
心血管疾患または事故を処置または予防するための組成物であって、
i. タンパク質源;
ii. 脂肪源;および
iii. 炭水化物源
を含んでおり、タンパク質源および脂肪源が1:1の比率であって、各々が該組成物の総カロリーの15%から45%を構成する組成物;ただし、タンパク質源、脂肪源および炭水化物源が30:30:40の比率ではない。
【請求項19】
哺乳動物に投与するための、請求項14から18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
哺乳動物がヒトである、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
タンパク質源、脂肪源および炭水化物源が1:1:1の比率であって、各々が該組成物の総カロリーの1/3を構成する、請求項14から20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
以下の少なくとも1つをさらに含む、請求項14から21のいずれかに記載の組成物:トウチ抽出物、一部加水分解されたグアーガム、イヌリン、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトース、スクロマルト、トレハロース、リポ酸、4−ヒドロキシイソロイシン、カテキン、シナモン、バナバ抽出物、マデグルシル、アルギニン、分枝鎖アミノ酸、グルタミン、グルタメート、魚油、クロロゲン酸、マンゴスチン、ヤシ油工場廃液、クロミウム、バナジウム、マンサク、オールスパイス、ローリエ、ナツメグ、丁子、キノコ、出芽酵母、およびそれらの組み合わせ。
【請求項23】
脂肪源がリノール酸(18:2)を含む、請求項14から22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
リノール酸(18:2)が該組成物の総カロリーの2%以上を構成する、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
心血管疾患または事故が糖尿病の併存症である、請求項18記載の組成物。
【請求項26】
心血管疾患または事故が心血管疾患、冠動脈心疾患、虚血性心疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、脳血管疾患、卒中、メタボリック症候群、網膜症、失明、高血圧、血栓症および炎症からなる群から選択される、請求項18記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2013−100353(P2013−100353A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−28114(P2013−28114)
【出願日】平成25年2月15日(2013.2.15)
【分割の表示】特願2008−505477(P2008−505477)の分割
【原出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】