説明

グルタコネートの製造方法

本発明は、グルタコネートCoA-トランスフェラーゼおよび2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ系を共発現する組み換え微生物を培養することによる、不飽和ジカルボン酸の生体触媒的製造のための新規な方法に関する。本発明はまた、対応する組み換え宿主、そのような宿主を作製するために好適な組み換えベクター、発現カセットおよび核酸、ならびに該生体触媒的製造法により取得される前記ジカルボン酸を利用するポリアミドまたはポリエステルコポリマーの作製方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタコネートCoA-トランスフェラーゼおよび2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ系を共発現する組み換え微生物を培養することによる、不飽和ジカルボン酸の生体触媒的製造のための新規な方法に関する。本発明はまた、対応する組み換え宿主、そのような宿主の作製のために好適な組み換えベクター、発現カセットおよび核酸、ならびに、前記生体触媒的製造方法により取得される前記ジカルボン酸を利用する、例えばポリアミドまたはポリエステルコポリマーなどのポリマーの作製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
グルタコン酸は、グルタル酸血症I型を有する個体で蓄積されるα,β-不飽和C5-ジカルボン酸(2-ペンテンジオン酸)である(Hoffmann GF, Zschocke J (1999) Glutaric aciduria type I: from clinical, biochemical and molecular diversity to successful therapy. J Inherit Metab Dis 22:381-391)。グルタコン酸は、ジアミンと共に、ポリアミド(ナイロン(登録商標)に関連する)に重合化することができる。グルタコン酸のバイオテクノロジー的製造に理想的な材料は、グルタミン酸であり、これは糖発酵により製造することができる。α-アミノ酸からα,β-不飽和酸への化学的脱アミノ化は、非常に困難である。逆に、偏性嫌気性細菌であるアシダミノコッカス・フェルメンタンス(Acidaminococcus fermentans)およびクロストリジウム・シンビオスム(Clostridium symbiosum)は、α-ケトグルタレート、(R)-2-ヒドロキシグルタレート、(R)-2-ヒドロキシグルタリル-CoA、およびグルタコニル-CoAを介して、グルタメートを(E)-グルタコネートに容易に脱アミノ化することができる(Buckel W (2001b) Unusual enzymes involved in five pathways of glutamate fermentation. Appl Microbiol Biotechnol 57:263-273)。A.フェルメンタンス(A. fermentans)およびC.シンビオスム(C. symbiosum)は、グルタコニル-CoAからカルボキシル基を除去してクロトニル-CoAに変換するので、グルタコン酸製造に好適でない。これらの生物の遺伝的改変は、未だ行なわれていない。したがって、グルタコニル-CoAデカルボキシラーゼをコードする遺伝子を低レベルに弱化することはできず、一方で、この酵素の完全な欠失は、これらの生物からATP産生能を奪うであろう。さらに、最終的な目標は、グルタメートからではなくグルコースからのグルタコネートの製造であるが、A.フェルメンタンス(A. fermentans)およびC.シンビオスム(C. symbiosum)はグルコースを使って増殖することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、グルタコン酸および関連するジカルボン酸または対応するその塩の、発酵的生体触媒的製造のための好適な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、グルタコネートまたは構造的に類似のグルタコネート化合物(式I)などの不飽和ジカルボン酸化合物の製造のための生体触媒的方法を教示する本発明により解決され、該方法は、グルタコネートCoA-トランスフェラーゼおよび2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ系を共発現する組み換え微生物中で、対応する2-ヒドロキシ置換ジカルボン酸を変換して、前記不飽和ジカルボン酸を形成させるステップを含む。
【0005】
例えば、大腸菌をグルタコネート産生菌に変換するために、本発明者らは、2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ(HgdA、図1中の1)、グルタコネートCoA-トランスフェラーゼ(GcdAB、2)、2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ(HgdAB、3)およびそのアクチベーター(HgdC、3)をコードする6種類の遺伝子を発現させた。新規経路は、エムデン-マイヤーホフ経路およびクエン酸回路を介して、グルコース由来のα-ケトグルタレートで迂回することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】グルタコネート製造経路を示す図である。最終ステップの酵素は、1、2および3と番号付けされている。1:2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ;2:グルタコネートCoA-トランスフェラーゼ;3:2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ。
【図2】組み換えプラスミドpACYCDuet-1(図2A)の構築を模式的に示す図である。このベクターには、2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ(hgdH)およびグルタコネートCoA-トランスフェラーゼ(gctAB)(サブユニットAおよびB)のコード配列が挿入されている(図2B)。
【図3】組み換えプラスミドpASK-IBA3plus(図3A)の構築を模式的に示す図である。このプラスミドには、2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ(サブユニットhdgAおよびhgdB)およびそのアクチベーター(hdgC)のコード配列が挿入されている(図3B)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1. 好ましい実施形態
最初の実施形態では、本発明は、一般式I:
HOOC-CH=CH-X-COOH (I)
の不飽和ジカルボン酸化合物、特にそのような化合物のE型(式中、Xは、直鎖または分岐鎖であり、任意により不飽和であり、任意により置換されている炭化水素基(好ましくは、1、2、3または4個の炭素原子を有する)を表す)の製造のための生体触媒的方法を提供し、該方法は、以下のステップ:
・グルタコネートCoA-トランスフェラーゼ(E.C. 2.8.3.12)および2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ系を共発現する組み換え微生物中で、所望の生成物の形成を可能にする条件下で、特に、または任意により、式Iの前記化合物が形成されるように、補酵素A(CoA)供給源(C2-C6-アシル-CoAなどのアシル-CoAなど、特にアセチル-補酵素A)の存在下で(CoA供給源はいずれの起源によるものでもよく、該微生物に内在性のもの、すなわち該微生物により産生されるもの、または外因性のもの、すなわち該微生物もしくは産生培地に添加されたものでもよい)、かつ/または任意により式Iの化合物の形成に必要とされるかもしくはこれをを改善するいずれかの他の外因性または内因性因子の存在下で、2-ヒドロキシ置換ジカルボン酸III化合物:
HOOC-C(OH)H-CH2-X-COOH (III)
(式中、Xは上記で定義した通り)
を変換するステップ;
・任意により、実質的に純粋な立体異性体の形態で、例えば、Z型もしくは特にE型として、またはそれぞれその塩もしくは遊離酸の形態のいずれかである立体異性体の混合物として、式Iの該化合物を単離するステップ
を含む。
【0008】
式Iの化合物において、基Xは、好ましくは、(CH2)n(nは1〜4の整数)、CH=CH、CH2-C(=O)、またはCH=C(OH)から選択することができる。特に、Xは、CH2、C2H4、CH=CHおよびCH=C(OH)から選択される。
【0009】
本発明に従えば、前記2-ヒドロキシ置換ジカルボン酸IIIは、好ましくは、式II:
HOOC-C(=O)-CH2-X-COOH (II)
(式中、Xは上記で定義した通り)
の2-オキソ-ジカルボン酸化合物の、2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ(E.C. 1.1.1.-)により触媒される変換において、前記組み換え微生物により形成される。特に、前記2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼは、同様に、前記組み換え微生物により共発現させることができる。
【0010】
本発明の前記方法では、前記式IIのオキソ-ジカルボン酸化合物は、前記組み換え微生物に添加するか、または該微生物により発酵的に産生される。
【0011】
特に、本発明の方法は、少なくとも1種の組み換え微生物の培養を含み、該微生物は、代謝経路の中間生成物として前記式IIの2-オキソ-ジカルボン酸化合物を生成する能力を有し、かつ、さらに、上記酵素およびタンパク質のうち少なくとも1種を異種的に発現する能力を有する親微生物に由来する。例えば、前記微生物は、グルタメートおよび/もしくはグルコース代謝好気性または嫌気性組み換え微生物であり、前記式IIの化合物は、グルタメート(例えば、グルタメートデヒドロゲナーゼの作用により)および/またはグルコース(例えば、エムデン-マイヤーホフ経路およびクレブス回路またはクエン酸回路を介して)の生体分解により形成される2-オキソグルタレートである。適切であれば、前記グルタメートまたはグルコース代謝に関与する1以上、例えば、2、3、4または5種類の個々の酵素を脱調節して、所望の生成物の形成をさらに補助するか、もしくは改善させ、かつ/または望ましくない副産物もしくは二次生成物(所望の生成物の代謝により形成される)の形成(そうでなければ微生物により形成される所望の生成物の実際量もしくは濃度を低下または減少させるであろう)を低下または回避させることができる。
【0012】
特に、前記グルタメートおよび/またはグルコース代謝組み換え細菌は、エシェリキア属の細菌、例えば大腸菌、大腸菌BL21-CodonPlus(登録商標)(DE3)-RIL株(Stratagene)などから選択される。クロラムフェニコール耐性に寄与するCodonPlusプラスミドは、除去することもできる。
【0013】
本発明の方法の特定の実施形態では、前記2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ系は、2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ(E.C. 4.2.1.)および、所望のデヒドラターゼ活性を誘導および/または維持するために必要な場合、任意により、該酵素に対するアクチベータータンパク質を含む。前記アクチベータータンパク質は、デヒドラターゼ活性を確立するために必要である場合がある。
【0014】
本発明に従えば、前記酵素およびタンパク質(グルタコネートCoA-トランスフェラーゼ、2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ、アクチベーター、2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ)は、原核生物または真核生物起源のものである。特に、それらは、異なる微生物属または株に由来する場合がある。例えば、生体変換反応で用いられる場合に、アクチベーターが、デヒドラターゼ酵素と協働する(それを活性化する)限り、デヒドラターゼとデヒドラターゼ活性を確立するためのアクチベーターとが、同じ微生物属または株に由来することは、絶対的必要条件ではない。
【0015】
特定の実施形態では、前記酵素およびアクチベーターは、グルタメートをグルタコネートに変換することができる、同じかまたは異なる嫌気性細菌に由来する。例えば、前記嫌気性細菌は、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)またはペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)の細菌、特に、アシダミノコッカス・フェルメンタンス(Acidaminococcus fermentans)、クロストリジウム・シンビオスム(Clostridium symbiosum)、クロストリジウム・スポロスフェアロイデス(Clostridium sporosphaeroides)、フソバクテリウム・ヌクレアツム(Fusobacterium nucleatum)(全ての亜種を含む)、またはペプトストレプトコッカス・アサッカロリティクス(Peptostreptococcus asaccharolyticus)から選択される。
【0016】
特に、前記2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ(HgdH)は、配列番号16(FN0487、D-ラクテートデヒドロゲナーゼとの注釈がついている。フソバクテリウム・ヌクレアツム亜種ヌクレアツム(Fusobacterium nucleatum subsp. nucleatum)ATCC 25586;GeneID:991766)または配列番号2(1XDW_A(A.フェルメンタンス(A. fermentans)));または前記配列の少なくとも1種に対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有し、かつ所望の酵素活性(または機能)を保持している(すなわち、HgdH酵素として適用可能である)配列のうち少なくとも1つのアミノ酸配列を含み、例えば、該酵素はホモ二量体であり得、例えば、A.フェルメンタンス(A. fermentans)酵素であり得、例えば、F.ヌクレアツム(F. nucleatum)由来の酵素に対して61%の配列同一性を示すA.フェルメンタンス(A. fermentans)酵素であり得る。
【0017】
特に、ヘテロ八量体(α4β4)であり得る前記グルタコネートCoAトランスフェラーゼ(GctAB)は、
(a)少なくとも1個のα(A)サブユニットおよび少なくとも1個のβ(B)サブユニットを含み、前記αサブユニットは、配列番号4のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、前記βサブユニットは、配列番号6のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、かつ所望の酵素活性を保持している、すなわちGctAB酵素として適用可能であるか;または
(b)少なくとも1個のαサブユニットおよび少なくとも1個のβサブユニットを含み、前記αサブユニットは、配列番号22のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、前記βサブユニットは、配列番号24のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、かつ所望の酵素活性を保持している、すなわちGctAB酵素として適用可能であるか;または
(c)少なくとも1個のαサブユニットおよび少なくとも1個のβサブユニットを含み、前記αサブユニットは、配列番号18のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、前記βサブユニットは、配列番号20のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、かつ所望の酵素活性を保持している、すなわちGctAB酵素として適用可能である。
【0018】
特に、各Aサブユニットおよび各Bサブユニット中に1個の[4Fe-4S]クラスターを有するヘテロ二量体(AB)または三量体(ABD)であり得る、前記2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼは、
(a)少なくとも1個のα(A)サブユニットおよび少なくとも1個のβ(B)サブユニットを含み、前記αサブユニットは、配列番号26のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、前記βサブユニットは、配列番号28のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、かつ所望の酵素活性を保持している、すなわちデヒドラターゼ酵素として適用可能であるか;または
(b)少なくとも1個のα(A)サブユニット、少なくとも1個のβ(B)サブユニットおよび少なくとも1個のδ(D)サブユニットを含み、前記αサブユニットは、配列番号30のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、前記βサブユニットは、配列番号32のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、前記γサブユニットは、配列番号34のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、かつ所望の酵素活性を保持している、すなわちデヒドラターゼ酵素として適用可能であるか;または
(c)少なくとも1個のαサブユニットおよび少なくとも1個のβサブユニットを含み、前記αサブユニットは、配列番号8のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、前記βサブユニットは、配列番号10のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、かつ所望の酵素活性を保持している、すなわちデヒドラターゼ酵素として適用可能である。
【0019】
特に、前記アクチベータータンパク質は、配列番号12、36もしくは38の少なくとも1種のアミノ酸配列、または該配列のうち少なくとも1種に対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有する配列を含み、かつ所望の活性を保持している、すなわち、デヒドラターゼアクチベーターとして適用可能であり、2個のサブユニットの間に1個の[4Fe-4S]クラスターを有するホモ二量体であり得る。
【0020】
さらなる特定の実施形態では、前記2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼは、C.シンビオスム(C. symbiosum)由来であり(配列番号8および/または10);前記2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ(配列番号2);前記グルタコネートCoAトランスフェラーゼ(配列番号4および/または6)および前記アクチベータータンパク質(配列番号12)はA.フェルメンタンス(A. fermentans)由来であるか;または、互いに独立にそれらから誘導され、かつ親配列に対して少なくとも50%の同一性(例えば、少なくとも60、70、80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性)を有し、かつ、所望の酵素もしくはアクチベーター活性を保持している。前記タンパク質は、活性な四次構造の形態で存在するか、またはその活性な断片もしくはサブユニットの形態で存在し得る。
【0021】
さらに、前記タンパク質および酵素は、前記式IIの2-オキソ-ジカルボン酸を産生する能力を有する前記微生物のコドン使用頻度に適合させた核酸配列により、それぞれコードすることができる。
【0022】
また、前記タンパク質および酵素は、1以上の発現ベクター中に含まれる核酸配列によりコードされていてもよく、単一コピーまたは複数コピーとしてコードされていてよい。
【0023】
さらに、前記共発現タンパク質のうち少なくとも1種が、前記組み換え微生物にとって異種である。
【0024】
本発明はまた、
・上記で規定した酵素またはタンパク質をコードする少なくとも2種類の異なる核酸配列の組み合わせ(すなわち、式IIIの化合物を介して式Iの化合物を産生するのに必要な酵素/タンパク質の必要セット(またはサブセット)をコードする配列の必要セット(またはサブセット))(それらの配列は、少なくとも1つの調節核酸配列に機能的に連結されている)を含む発現カセット;
・前記発現カセットの少なくとも1つを含む組み換えベクター;
・少なくとも1つのそのようなベクターで形質転換された組み換え原核生物または真核生物宿主
にも関する。
【0025】
特に、そのような組み換え宿主は、式(II)の2-オキソ-ジカルボン酸化合物を産生する能力を有し、この化合物は、前記少なくとも1つのベクターによりコードされる前記発現産物の発現に際して、式(I)の化合物に変換される。例えば、前記宿主は、エシェリキア属の細菌の組み換え株であり得る。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、ポリアミドまたはポリエステルの作製方法に関し、該方法は、以下のステップ:
(a)本明細書中に記載された方法により、上記で規定された一般式(I)のモノ不飽和ジカルボン酸化合物を作製するステップ;
(b)該化合物を単離し、任意によりC=C-二重結合を除去するために水素化するステップ;および
(c)ステップ(b)に従い取得した該化合物を、少なくとも1種の好適な多価重合性アミンモノマーまたは多価重合性ヒドロキシル化合物と重合させるステップ
を含む。
【0027】
特に、前記ポリアミンは、ジアミン、トリアミンまたはそれらの混合物であり、前記多価ヒドロキシル化合物は、ジオールもしくはトリオールまたはそれらの混合物である。例えば、前記重合反応は、好適な触媒、例えば、酸または塩基触媒の存在下で行なうことができる。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、ポリマーの作製方法に関し、該方法は、以下のステップ:
(a)上記で規定した方法により、上記で規定した一般式(I)のモノ不飽和ジカルボン酸化合物を作製するステップ;
(b)該化合物を単離するステップ;および
(c)ステップ(b)に従い取得した該化合物を、少なくとも1種の好適な不飽和重合性モノマーと重合するステップ
を含む。
【0029】
例えば、前記重合は、好適なラジカル開始剤の存在下で行なうことができる。好適なコモノマーは、ラジカル開始重合に適用することができるもの、例えば、少なくとも1箇所の重合性C=C-結合を含むモノマー(ビニル、アクリルおよびメタクリルなど)である。
【0030】
本発明に記載される方法の別の実施形態では、式(I)、(II)または(III)の少なくとも1種の化合物の形成および/もしくは分解に直接的または間接的に影響する前記組み換え微生物中の生合成経路の少なくとも1種の遺伝子(例えば、1、2、3または4種の遺伝子)を、本発明の方法をさらに最適化するために脱調節(アップレギュレートまたはダウンレギュレート)することができる。
【0031】
2. 特定の用語の説明
特に明記しない限り、「グルタコネート」および「グルタコン酸」との表現または「グルタコネート化合物」および「グルタコン酸化合物」との表現または「不飽和ジカルボン酸」または「不飽和ジカルボン酸化合物」との表現は、同義であるとみなされる。本発明に従い取得される(式Iの)グルタコネートまたはジカルボン酸化合物は、遊離酸の形態、該酸の部分塩もしくは完全塩の形態または酸とその塩との混合物の形態であり得る。
【0032】
ジカルボン酸「塩」は、例えば、金属塩(例えば、グルタコン酸亜鉛)、該酸のモノまたはジアルカリ金属塩(一ナトリウム塩、二ナトリウム塩、一カリウム塩または二カリウム塩など)ならびにアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩またはマグネシウム塩)を含む。
【0033】
「生体触媒法(生体触媒的方法)」との用語は、本明細書中で規定される酵素の触媒活性の存在下で、すなわち、単離された純粋な酵素もしくは粗精製酵素またはそのような酵素活性を含有するかもしくは発現している微生物細胞全体の存在下で行なわれるいずれかの方法を指す。
【0034】
「立体特異的」との用語は、数種類の立体異性体またはエナンチオマーのうちの1種類が、高エナンチオマー含量または純度で(少なくとも90%ee、好ましくは少なくとも95%ee、特に少なくとも98%ee、または少なくとも99%ee)、酵素により形成されることを意味する。ee%値は、以下の式に従い算出される:
ee% = [XA-XB]/[XA+XB]*100
[式中、XAおよびXBは、それぞれ、エナンチオマーAおよびBのモル分率を指す]。
【0035】
「立体異性体」の例は、E異性体およびZ異性体またはRエナンチオマーおよびSエナンチオマーである。
【0036】
「脱調節」は、その最も広い意味で理解されるべきであり、当業者に周知の種々の手段による酵素(標的酵素)活性の増大または減少または完全な遮断を含む。好適な方法は、例えば、生物中の遺伝子のコピー数および/もしくは酵素分子の増加または減少、あるいはその酵素活性に影響を与える酵素の別の特徴の改変(これが次に対象となる代謝経路またはそれと組み合わさっているいずれかの経路もしくは酵素反応に所望の作用をもたらす)を含む。好適な遺伝的操作としてはまた、限定するものではないが、特定の遺伝子の発現と関連する調節配列もしくは部位を変化させることまたは改変すること(例えば、強力なプロモーター、誘導性プロモーターまたは多重プロモーターを除去すること)、特定の遺伝子の染色体上の位置を改変すること、特定の遺伝子に隣接する核酸配列(リボソーム結合部位または転写終結配列など)を変化させること、特定の遺伝子のコピー数を減少させること、特定の遺伝子の転写および/もしくは特定の遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば、調節タンパク質、抑制因子、エンハンサー、転写活性化因子など)を改変すること、あるいは当技術分野で日常的な特定の遺伝子の発現を脱調節する他の慣用の手段(限定するものではないが、アンチセンス核酸分子の使用が挙げられる)、あるいは標的タンパク質の発現をノックアウトまたはブロックする他の方法が挙げられる。
【0037】
「増幅」の好ましい方法は、遺伝子活性を増大させる「アップ」突然変異(例えば、強力な発現シグナルおよび/または酵素活性を増強する点突然変異を用いる遺伝子増幅による)である。
【0038】
「減弱」の好ましい方法は、遺伝子活性を低下させる「ダウン」突然変異(例えば、弱い発現シグナルおよび/または酵素活性を破壊するかもしくは減少させる点突然変異を用いる遺伝子欠失または失調による)である。
【0039】
「異種」または「外因性」との用語は、本明細書中で規定される遺伝的に操作された微生物に導入されたかまたは該微生物により産生(転写または翻訳)される本明細書中に記載された配列(該操作以前には、この微生物は該配列を含有しておらず、または産生していなかった)を指す。特に、該操作以前の該微生物は、該異種酵素活性を含有もしくは発現していない場合があり、または対応する活性もしくは特異性の内因性酵素(異なるコード配列により、または異なるアミノ酸配列の酵素によりコードされる)を含有もしくは発現しており、かつ、該内因性酵素は、該外因性酵素と同じ基質を変換する場合がある。
【0040】
本発明の「親」微生物は、中間生成物として式(II)の化合物を産生する能力を有するいずれかの微生物である。
【0041】
「中間生成物」は、必ずしも分析上直接的に検出可能な濃度でなく、化学的もしくは生化学的プロセスの間に一時的または継続的に形成される生成物と理解される。該「中間生成物」は、第2の化学的または生化学的反応により、該生化学的プロセスから除去される場合がある。
【0042】
「組み換え宿主」は、クローニングベクターもしくは発現ベクターを含有するいずれかの原核生物または真核生物細胞であり得る。この用語はまた、宿主細胞の染色体もしくはゲノムにクローニングした遺伝子を含有するように遺伝的に操作された原核生物または真核生物細胞も含むことを意味する。好適な宿主の例に関して、Sambrook et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照されたい。
【0043】
「組み換え微生物」との用語は、それが由来する天然に存在する微生物または「親」微生物と比較して、変化したか、改変されたかもしくは異なる遺伝子型および/または表現型を示す(例えば、遺伝的改変が微生物のコード核酸配列に影響する場合)ように遺伝的に変化させたか、改変されたかまたは操作された(例えば、遺伝的に操作された)微生物(例えば、細菌、酵母細胞、真菌細胞など)を含む。
【0044】
本明細書中で用いられる場合、「実質的に純粋」なタンパク質または酵素とは、所望の精製タンパク質が、ポリアクリルアミドドデシル硫酸ナトリウムゲル電気泳動(SDS-PAGE)に従う単一バンドにより証明されるように、混入細胞成分を本質的に含まないことを意味する。「実質的に純粋」との用語は、さらに、当業者により用いられる1以上の純度または均質性特性により均質である分子を説明することを意味する。例えば、実質的に純粋な酵素またはタンパク質は、以下のようなパラメータに関して、標準的な実験上の偏差の範囲内で、一定で再現可能な特性を示すであろう:分子量、クロマトグラフィーでの移動、アミノ酸組成、アミノ酸配列、ブロックされたかまたはされていないN末端、HPLC溶出プロフィール、生物学的活性、および他のそのようなパラメータ。しかしながら、この用語は、前記酵素もしくはタンパク質と他の化合物との人工的または合成的混合物を排除することを意味するものではない。さらに、この用語は、任意により組み換え宿主から単離された融合タンパク質を排除することを意味するものではない。
【0045】
3. 本発明のさらなる実施形態
3.1 本発明のタンパク質
本発明は、具体的に言及された酵素/タンパク質に限定されるものではなく、それらの機能的等価物にも及ぶ。
【0046】
具体的に開示された酵素の「機能的等価物」または「類似体」または「機能的突然変異」は、本発明の範囲内において、さらに所望の生物学的機能または活性(例えば、酵素活性)を有するその種々のポリペプチドである。
【0047】
例えば、「機能的等価物」は、酵素活性に関して用いられる試験において、本明細書中で規定される酵素の少なくとも1〜10%、または少なくとも20%、または少なくとも50%、または少なくとも75%、または少なくとも90%高いかまたは低い活性を示す。
【0048】
本発明に従う「機能的等価物」は、上記のアミノ酸配列の少なくとも1箇所の配列位置で、具体的に記載されたものとは異なるアミノ酸を有するが、それにもかかわらず、上記の生物学的活性のうち1つを有する、特に、突然変異体も意味する。したがって、「機能的等価物」は、1以上のアミノ酸付加、置換、欠失および/または逆位により取得可能な突然変異体を含み、それらが本発明に従う特性のプロフィールを有する突然変異体をもたらす限り、記載した変化はいずれの配列位置でも生じ得る。機能的等価物はまた、特に、突然変異体と変化していないポリペプチドとの間で、反応性パターンが定性的に一致する場合、すなわち、例えば、同じ基質が異なる速度で変換される場合にも、もたらされる。好適なアミノ酸置換の例を、以下の表に示す:
元の残基 置換の例
Ala Ser
Arg Lys
Asn Gln;His
Asp Glu
Cys Ser
Gln Asn
Glu Asp
Gly Pro
His Asn;Gln
Ile Leu;Val
Leu Ile;Val
Lys Arg;Gln;Glu
Met Leu;Ile
Phe Met;Leu;Tyr
Ser Thr
Thr Ser
Trp Tyr
Tyr Trp;Phe
Val Ile;Leu
【0049】
上記の意味での「機能的等価物」はまた、記載されたポリペプチドの「前駆体」、ならびにポリペプチドの「機能的誘導体」および「塩」でもある。
【0050】
この場合、「前駆体」は、所望の生物学的活性を有するかもしくは有しない、ポリペプチドの天然または合成の前駆体である。
【0051】
「塩」との表現は、本発明のタンパク質分子のカルボキシル基の塩ならびにアミノ基の酸付加塩を意味する。カルボキシル基の塩は、公知の方法で生成することができ、無機塩(例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄および亜鉛塩)および有機塩基との塩(例えば、アミン、例えば、トリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジンなど)を含む。酸付加塩、例えば、無機酸(塩酸または硫酸など)との塩および有機酸(酢酸およびシュウ酸など)との塩も、本発明の範囲に入る。
【0052】
本発明のポリペプチドの「機能的誘導体」もまた、公知の技術を用いて、官能性アミノ酸側基に、またはそのN末端もしくはC末端で、生成することができる。そのような誘導体は例えば、カルボン酸基の脂肪族エステル、カルボン酸基のアミド(アンモニアまたは第1級もしくは第2級アミンとの反応により取得することができる);遊離アミノ基のN-アシル誘導体(アシル基との反応により生成される);または遊離ヒドロキシ基のO-アシル誘導体(アシル基との反応により生成される)を含む。
【0053】
「機能的等価物」はまた、自然に、他の生物から取得することができるポリペプチド、ならびに天然に存在する変異体も含む。例えば、相同配列領域の範囲を配列比較により確かめることができ、等価的酵素を、本発明の具体的なパラメータに基づいて決定することができる。
【0054】
「機能的等価物」はまた、本発明のポリペプチドの断片、好ましくは個々のドメインまたは配列モチーフ(例えばこれらは、所望の生物学的機能を示す)も含む。
【0055】
さらに、「機能的等価物」は融合タンパク質であり、これは、上記のポリペプチド配列またはそこから誘導される機能的等価物と、少なくとも1つのさらなる機能的に異なる異種配列とを、機能的N末端またはC末端結合により有する(すなわち、融合タンパク質部分の実質的な相互の機能的不具合を含まない)。これらの異種配列の非限定的な例は、例えば、シグナルペプチド、ヒスチジンアンカーまたは酵素である。
【0056】
これもまた本発明に含められる「機能的等価物」は、具体的に開示されたタンパク質のホモログである。これらは、上記の同一性パーセント値を有する。該値は、具体的に開示されたアミノ酸配列との同一性を指し、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad, Sci. (USA) 85(8), 1988, 2444-2448のアルゴリズムに従って算出することができる。
【0057】
同一性%値はまた、BLASTアライメントのblastpアルゴリズム(protein-protein BLAST)から、または以下に提示するClustal設定を適用することによっても算出することができる。
【0058】
本発明の相同ポリペプチドの同一性パーセントは、特に、本明細書中に具体的に記載されたアミノ酸配列のうちの1つの全長に対するアミノ酸残基の同一性パーセントを意味する。
【0059】
考えられるタンパク質グリコシル化の場合、本発明の「機能的等価物」は、脱グリコシル化されたかまたはグリコシル化された形態での、ならびにグリコシル化パターンを変化させることにより取得することができる修飾型での、上記のタイプのタンパク質を含む。
【0060】
本発明のタンパク質もしくはポリペプチドのそのような機能的等価物またはホモログは、突然変異誘発により、例えば、点突然変異、タンパク質の伸長または短縮により、生成することができる。
【0061】
本発明のタンパク質のそのような機能的等価物またはホモログは、突然変異体(例えば、短縮突然変異体)のコンビナトリアルデータベースをスクリーニングすることにより、特定することができる。例えば、タンパク質変異体の変化に富んだデータベースを、核酸レベルでのコンビナトリアルな突然変異誘発により、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的ライゲーションにより、作製することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列からのあり得るホモログのデータベースの作製に用いることができる、非常に多数の方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動化DNA合成機で行なうことができ、続いて合成遺伝子を好適な発現ベクターにライゲーションすることができる。縮重ゲノムの使用は、可能性のあるタンパク質配列の所望のセットをコードする全ての配列を、混合物中に提供することを可能にする。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は、当業者に公知である(例えば、Narang, S.A. (1983) Tetrahedron 39:3; Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakura et al. (1984) Science 198:1056; Ike et al. (1983) Nucleic Acids Res. 11:477)。
【0062】
先行技術では、点突然変異または短縮により作製されたコンビナトリアルデータベースの遺伝子産物のスクリーニングのための、および選択された特性を有する遺伝子産物についてのcDNAライブラリーのスクリーニングのための、数種類の技術が知られている。これらの技術は、本発明のホモログのコンビナトリアルな突然変異誘発により作製された遺伝子バンクの迅速スクリーニングに適合させることができる。ハイスループット解析に基づく、大型の遺伝子バンクのスクリーニングのために最も頻繁に用いられる技術は、複製可能な発現ベクター中の遺伝子バンクのクローニング、結果として得られるベクターデータベースでの好適な細胞の形質転換、および所望の活性の検出がその産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を促進する条件でのコンビナトリアルな遺伝子の発現を含む。ホモログを特定するために、再帰的アンサンブル突然変異誘発(REM)(データベース中の機能的突然変異体の頻度を上昇させる技術)を、スクリーニング試験と組み合わせて用いることができる(Arkin and Yourvan (1992) PNAS 89:7811-7815; Delgrave et al. (1993) Protein Engineering 6(3):327-331)。
【0063】
3.2 コード核酸配列
本発明はまた、本明細書中に規定される酵素/タンパク質をコードする核酸配列にも関する。
【0064】
本発明はまた、本明細書中に具体的に開示された配列に対して一定の程度の「同一性」を有する核酸にも関する。2つの核酸の間の「同一性」は、各場合で核酸の全長にわたる、ヌクレオチドの同一性を意味する。
【0065】
例えば、同一性は、以下の設定でClustal法(Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 Apr; 5(2):151-1)を利用して、Infomax社(USA)のVector NTI Suite 7.1プログラムを用いて算出することができる:
多重アライメントパラメータ
Gap opening penalty 10
Gap extension penalty 10
Gap separation penalty range 8
Gap separation penalty off
% identity for alignment delay 40
Residue specific gaps off
Hydrophilic residue gap off
Transition weighing 0
ペアワイズアライメントパラメータ
FAST algorithm on
K-tuple size 1
Gap penalty 3
Window size 5
Number of best diagonals 5
【0066】
あるいは、同一性は、Chenna, Ramu, Sugawara, Hideaki, Koike,Tadashi, Lopez, Rodrigo, Gibson, Toby J, Higgins, Desmond G, Thompson, Julie D. Multiple sequence alignment with the Clustal series of programs. (2003) Nucleic Acids Res 31 (13):3497-500(ウェブページ:http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.html#)および以下の設定に従って決定することができる:
DNA Gap Open Penalty 15.0
DNA Gap Extension Penalty 6.66
DNA Matrix Identity
Protein Gap Open Penalty 10.0
Protein Gap Extension Penalty 0.2
Protein matrix Gonnet
Protein/DNA ENDGAP -1
Protein/DNA GAPDIST 4
【0067】
本明細書中で言及する全ての核酸配列(一本鎖および二本鎖DNAならびにRNA配列、例えば、cDNAおよびmRNA)は、ヌクレオチドビルディングブロックから、化学合成により、公知の方法で(例えば、二重らせんの個々の重複した相補的核酸ビルディングブロックの断片縮合によって)作製することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、公知の方法で、ホスホルアミダイト法により、行なうことができる(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press, New York, 第896-897頁)。合成オリゴヌクレオチドの蓄積およびDNAポリメラーゼのクレノーフラグメントを用いたギャップの充填およびライゲーション反応ならびに一般的なクローニング技術は、Sambrook et al. (1989)(下記)に記載されている。
【0068】
本発明はまた、上記のポリペプチドのうちの1つをコードする核酸配列(一本鎖および二本鎖DNAならびにRNA配列、例えば、cDNAおよびmRNA)およびそれらの機能的等価物(例えば、人工的ヌクレオチドアナログを用いて取得することができる)にも関する。
【0069】
本発明は、本発明のポリペプチドもしくはタンパク質またはその生物学的に活性なセグメントをコードする単離された核酸分子と、核酸断片(例えば、本発明のコード核酸を同定もしくは増幅するためにハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして用いることができる)の両方に関する。
【0070】
本発明の核酸分子はさらに、コード遺伝的領域の3’および/または5’末端からの非翻訳配列を保持することができる。
【0071】
本発明はさらに、具体的に記載されたヌクレオチド配列またはそのセグメントに相補的な核酸分子に関する。
【0072】
本発明のヌクレオチド配列は、他の細胞タイプおよび生物中の相同配列を同定および/またはクローニングするために用いることができるプローブおよびプライマーの作製を可能にする。そのようなプローブまたはプライマーは、一般的に、本発明の核酸配列のセンス鎖または対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12個、好ましくは約25個、例えば約40、50または75個の連続するヌクレオチドで、「ストリンジェント」な条件下で(下記参照)ハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含む。
【0073】
「単離された」核酸分子は、該核酸の天然の供給源に存在する他の核酸分子から分離されており、さらに、細胞性物質もしくは培養培地を実質的に含まないか(組み換え技術により作製される場合)、または化学的前駆体もしくは他の化学物質を含まない(化学的に合成される場合)ことができる。
【0074】
本発明の核酸分子は、分子生物学の標準的技術および本発明に従い供給される配列情報を用いて単離することができる。例えば、cDNAは、具体的に開示された完全配列のうちの1つまたはそのセグメント(ハイブリダイゼーションプローブとして)および標準的なハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている)を用いて、好適なcDNAライブラリーから単離することができる。さらに、開示された配列のうちの1つまたはそのセグメントを含む核酸分子は、この配列に基づいて構築されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により単離することができる。このようにして増幅された核酸は、好適なベクター中にクローニングすることができ、DNA配列決定により特性決定することができる。本発明のオリゴヌクレオチドはまた、例えば、自動化DNA合成機を用いて、標準的な合成方法によっても作製することができる。
【0075】
本発明の核酸配列またはその誘導体、ホモログもしくはそれらの配列の一部分は、例えば、他の細菌から、例えば、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーを介して、通常のハイブリダイゼーション技術またはPCR技術により単離することができる。これらのDNA配列は、標準的な条件で本発明の配列とハイブリダイズする。
【0076】
「ハイブリダイズする」とは、標準的な条件でほとんど相補的な配列に結合するポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの能力を意味するが、これらの条件では非相補的なパートナーとの間では非特異的な結合は生じない。これに関して、配列は90〜100%相補的であり得る。互いに特異的に結合することができるという相補配列の特性は、例えば、ノザンブロッティングもしくはサザンブロッティングで、またはPCRもしくはRT-PCRでのプライマー結合で利用される。
【0077】
保存領域の、短いオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションのために有利に用いることができる。しかしながら、ハイブリダイゼーションのために、本発明の核酸のより長い断片または完全配列を用いることも可能である。これらの標準的な条件は、用いる核酸(オリゴヌクレオチド、より長い断片または完全配列)に依存して、または核酸のどのタイプ(DNAまたはRNA)をハイブリダイゼーションに用いるかに依存して変わる。例えば、DNA:DNAハイブリッドのための融解温度は、同じ長さのDNA:RNAハイブリッドのものより約10℃低い。
【0078】
例えば、対象となる核酸に応じて、標準的な条件は、0.1〜5×SSC(1×SSC=0.15M NaCl、15mMクエン酸ナトリウム、pH7.2)の濃度を有するバッファー水溶液中で、または追加的に50%ホルムアミドの存在下で、42〜58℃の温度を意味する(例えば、5×SSC、50%ホルムアミド中、42℃)。有利には、DNA:DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、0.1×SSCおよび約20℃〜45℃、好ましくは約30℃〜45℃の温度である。DNA:RNAハイブリッドのためには、ハイブリダイゼーション条件は、有利には、0.1×SSCおよび約30℃〜55℃、好ましくは約45℃〜55℃の温度である。ハイブリダイゼーションのためのこれらの記載された温度は、ホルムアミドの非存在下で、約100ヌクレオチド長およびG+C含量50%の核酸についての計算上の融解温度の例である。DNAハイブリダイゼーションのための実験条件は、関連する遺伝学の教科書、例えば、Sambrook et al., 1989に記載されており、例えば、核酸の長さ、ハイブリッドの種類またはG+C含量に依存して、当業者に公知の数式を用いて算出することができる。当業者は、以下の教科書から、ハイブリダイゼーションについてのさらなる情報を取得することができる:Ausubel et al. (eds), 1985, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York; Hames and Higgins (eds), 1985, Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (ed), 1991, Essential Molecular Biology: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford。
【0079】
「ハイブリダイゼーション」は、特に、ストリンジェントな条件下で行なうことができる。そのようなハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T.: Molecular Cloning (A Laboratory Manual), 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, pages 9.31-9.57またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
【0080】
「ストリンジェント」なハイブリダイゼーション条件とは、特に:50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストランおよび20g/ml変性断片化サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で一晩のインキュベーション、続いて0.1×SSC、65℃でのフィルターの洗浄を意味する。
【0081】
本発明はまた、具体的に開示されたかまたは誘導可能な核酸配列の誘導体にも関する。
【0082】
したがって、本発明のさらなる核酸配列は、本明細書中に具体的に開示された配列から誘導することができ、かつ1個または数個のヌクレオチドの付加、置換、挿入または欠失によりそれとは異なることができ、かつさらに、所望の特性プロフィールを有するポリペプチドをコードする。
【0083】
本発明はまた、いわゆるサイレント突然変異を含むか、または具体的に記載された配列と比較して、特別な由来生物もしくは宿主生物のコドン使用頻度に従って変化させられた核酸配列、ならびにその天然に存在する変異体(例えば、スプライシング変異体または対立遺伝子変異体)を包含する。
【0084】
本発明はまた、保存的ヌクレオチド置換(すなわち、対象となるアミノ酸が、同じ電荷、サイズ、極性および/または溶解度のアミノ酸で置換されている)により取得することができる配列にも関する。
【0085】
本発明はまた、配列多型により、具体的に開示された核酸から誘導された分子にも関する。これらの遺伝的多型は、天然の変異により、集団内の個体間に存在し得る。これらの天然の変異は、通常、遺伝子のヌクレオチド配列中に1〜5%の変化をもたらす。
【0086】
本発明の核酸配列の誘導体は、例えば、誘導されたアミノ酸のレベルで、配列範囲全体にわたって、少なくとも60%の相同性、好ましくは少なくとも80%の相同性、非常に特に好ましくは少なくとも90%の相同性を有する対立遺伝子変異体を意味する(アミノ酸レベルでの相同性に関して、ポリペプチドに関して上記で提供した詳細を参照されたい)。有利には、相同性は、配列の部分的領域にわたって、より高い場合がある。
【0087】
さらに、誘導体は、本発明の核酸配列のホモログ(例えば、動物、植物、真菌または細菌ホモログ)、短縮配列、コードDNA配列および非コードDNA配列の一本鎖DNAまたはRNAであるとも理解されるべきである。例えば、DNAレベルでは、ホモログは、本明細書中に具体的に開示された配列中に提示されたDNA領域全体にわたって、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%、非常に特に好ましくは少なくとも80%の相同性を有する。
【0088】
さらに、誘導体は、例えば、プロモーターとの融合体であると理解されるべきである。記載されたヌクレオチド配列に追加されるプロモーターは、少なくとも1箇所のヌクレオチド交換、少なくとも1箇所の挿入、転位および/または欠失により、しかしプロモーターの機能性または効率は損なわれることなく、改変することができる。さらに、プロモーターの効率は、それらの配列を変化させることにより増大させることができ、または異なる属の生物のものであっても、さらに効率のよいプロモーターと完全に交換することができる。
【0089】
3.3 機能的突然変異体の作製
当業者であれば、機能的突然変異体を作製する方法も承知している。
【0090】
用いる技術に応じて、当業者は、遺伝子もしくは非コード核酸領域(これは、例えば、遺伝子発現を調節するために重要なものであり得る)中に無作為的なまたは目的を定めた突然変異をもたらすことができ、その後、好適な遺伝子ライブラリーを作製することができる。したがって、必要とされる分子生物学的方法は、全て当技術分野で周知であり、例えば、Sambrook and Russell, Molecular Cloning. 3. Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001に記載されている。
【0091】
遺伝子を改変し、結果としてコードされたタンパク質を改変する方法は、当業者には周知であり、例えば、以下のものなどがある:
・部位特異的突然変異誘発:遺伝子の1個または複数のヌクレオチドを特異的に置換する(Trower MK (Ed.) 1996; In vitro mutagenesis protocols. Humana Press, New Jersey)、
・飽和突然変異誘発:遺伝子のいずれかの位置で、いずれかのアミノ酸のコドンを交換または付加することができる(Kegler-Ebo DM, Docktor CM, DiMaio D (1994) Nucleic Acids Res 22:1593; Barettino D, Feigenbutz M, Valcarel R, Stunnenberg HG (1994) Nucleic Acids Res 22:541; Barik S (1995) Mol Biotechnol 3:1)、
・エラープローン(error-prone)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR):正常に機能しないDNAポリメラーゼの作用を介して、ヌクレオチド配列に突然変異を起こさせる(Eckert KA, Kunkel TA (1990) Nucleic Acids Res 18:3739);
・SeSaM法(配列飽和法):好ましい置換をポリメラーゼにより回避する(Schenk et al., Biospektrum, Vol. 3, 2006, 277-279)、
・突然変異誘発株(mutator strain)に遺伝子を通過させること:例えば、不完全なDNA修復機構により、ヌクレオチド配列の突然変異の発生率を増大させる(Greener A, Callahan M, Jerpseth B (1996) An efficient random mutagenesis technique using an E.coli mutator strain. In: Trower MK (Hrsg.) In vitro mutagenesis protocols. Humana Press, New Jersey)、または
・DNAシャッフリング:密接に関連した遺伝子のプールを形成させ、消化し、かつ断片をPCR反応のための鋳型として用い、そして、全長モザイク遺伝子を形成させる(Stemmer WPC (1994) Nature 370:389; Stemmer WPC (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91:10747)。
【0092】
いわゆる定方向進化技術(例えば、Reetz MT und Jaeger K-E (1999), Topics Curr Chem 200:31; Zhao H, Moore JC, Volkov AA, Arnold FH (1999), Methods for optimizing industrial enzymes by directed evolution, In: Demain AL, Davies JE (Hrsg.) Manual of industrial microbiology and biotechnology. American Society for Microbiology)を用いることにより、当業者であれば、大規模に機能的突然変異体を特異的に作製することができるであろう。最初のステップでは、例えば、上記の方法のうちいずれか1つを適用することにより、特異的タンパク質のライブラリーを作製する。その後、該ライブラリーを、例えば細菌またはファージディスプレイ系を用いることにより、発現させる。
【0093】
所望の特性プロフィールを示す機能的突然変異体を発現するそれらの遺伝子を選択し、さらなる突然変異に供することができる。突然変異および選択またはスクリーニングのステップは、得られた突然変異体のうちの1つが所望の特性プロフィールを示すまで、反復して繰り返すことができる。
【0094】
反復的アプローチにより、限られた数の突然変異(例えば1〜5箇所の突然変異)を行なうことができ、対象となる酵素特性へのそれらの影響を評価することができ、さらに改善された突然変異体を段階的に選択することができる。該選択された突然変異体を、続いて、実質的に同様のさらなる突然変異に供することができる。このようにして、評価対象の単一突然変異体の数を、著明に減少させることができる。
【0095】
本発明の教示は、対象となる酵素/タンパク質の構造および配列に関して重要な情報を提供し、そのような情報に基づいて、所望の改変された特性プロフィールを有するさらなる酵素/タンパク質を作製することが可能となるはずである。特に、いわゆるホットスポット(すなわち、配列領域)を規定することができ、これは潜在的には、酵素/タンパク質の所望の特性を改変または生成するためのさらなる突然変異に適している可能性がある。
【0096】
3.4 本発明の構築物
本発明はまた、調節核酸配列の遺伝学的制御下に、本発明のポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸配列を保持する発現構築物;ならびにそのような発現構築物のうち少なくとも1つを含むベクターにも関する。
【0097】
「発現ユニット」は、本発明に従えば、発現活性を有する核酸を意味し、これは、本明細書中で規定されるプロモーターを含み、発現される対象の核酸または遺伝子との機能的結合の後に、発現(すなわち、この核酸またはこの遺伝子の転写および翻訳)を調節する。したがって、この文脈において、これは「調節核酸配列」とも呼ばれる。プロモーターに加えて、他の調節エレメント(例えば、エンハンサー)が存在する場合がある。
【0098】
「発現カセット」または「発現構築物」は、本発明に従えば、発現される対象の核酸または発現される対象の遺伝子と機能的に結合している発現ユニットを意味する。したがって、発現ユニットとは対照的に、発現カセットは、転写および翻訳を調節する核酸配列のみならず、転写および翻訳の結果、タンパク質として発現されるべき核酸配列も含む。
【0099】
本発明の文脈においては、「発現」または「過剰発現」との用語は、微生物中での1種以上の酵素の細胞内活性の生成または増大を説明し、この酵素は対応するDNAによってコードされている。これに関して、例えば、生物に遺伝子を挿入すること、既存の遺伝子を別の遺伝子で置き換えること、遺伝子(群)のコピー数を増加させること、強力なプロモーターを用いることまたは高活性を有する対応する酵素をコードする遺伝子を用いることが可能であり、また任意によりこれらの尺度を組み合わせることができる。
【0100】
好ましくは、そのような本発明の構築物は、それぞれのコード配列の5’側上流にプロモーターを、また3’側下流にターミネーター配列を、また任意によりさらなる通常用いられる調節エレメントを含み、これらはそれぞれの場合でコード配列と機能的に結合している。
【0101】
「プロモーター」、「プロモーター活性を有する核酸」または「プロモーター配列」は、本発明に従えば、転写される対象の核酸と機能的に結合して、この核酸の転写を調節する核酸を意味する。
【0102】
「機能的」または「作動的」結合は、この文脈においては、例えば、調節エレメントのそれぞれが、核酸配列の転写においてその機能を発揮することができるような様式での、プロモーター活性を有する核酸の1つと、転写される対象の核酸配列および任意によりさらなる調節エレメント(例えば、核酸の転写を可能にする核酸配列、および、例えば、ターミネーター)との、連続的配置を意味する。これは、化学的な意味での直接的な結合を必ずしも必要とするものではない。遺伝学的制御配列(エンハンサー配列など)は、もっと離れた位置からも、または他のDNA分子からでさえも、標的配列に対してその機能を発揮することができる。転写される対象の核酸配列がプロモーター配列の後ろ側に(すなわち、3’末端に)位置し、それにより2つの配列が互いに共有結合している配置が好ましい。プロモーター配列と、トランスジェニックに発現される対象の核酸配列との距離は、200bp(塩基対)未満、100bp未満または50bp未満であり得る。
【0103】
プロモーターおよびターミネーターとは別に、言及することができる他の調節エレメントの例は、標的化配列、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、選択マーカー、増幅シグナル、複製起点などである。好適な調節配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
【0104】
本発明の核酸構築物は、特に、本明細書中で具体的に言及したものまたはその誘導体およびホモログ、ならびに本明細書中で具体的に言及したアミノ酸配列から誘導することができる核酸配列から選択される配列を含み、これは、有利には、遺伝子発現を制御する(例えば、増大させる)ための1以上の調節シグナルと作動的または機能的に結合している。
【0105】
これらの調節配列に加えて、これらの配列の天然の調節が、実際の構造遺伝子の前に存在することができ、任意により、天然の調節が遮断され、遺伝子の発現が増大しているように、天然の調節を遺伝的に改変しておくことができる。核酸構築物はまた、より簡素な設計である、すなわち、コード配列の前に挿入される追加の調節シグナルを含まず、その調節を行なう天然のプロモーターを除去することがないものであることもできる。その代わりに、調節が行われず、遺伝子発現が増大するように、天然の調節配列をサイレンシングする。
【0106】
好ましい核酸構築物は、有利には、1以上の上記のエンハンサー配列(プロモーターと機能的に結合している)も含み、これは、核酸配列の発現の増大を可能にする。他の調節エレメントまたはターミネーターなどの追加の有利な配列を、DNA配列の3’末端に挿入することもできる。本発明の核酸の1以上のコピーを、構築物中に含めることができる。構築物は、任意により構築物に対する選択のために、他のマーカー(抗生物質耐性または栄養要求性補完遺伝子など)を含むこともできる。
【0107】
好適な調節配列の例を、cos-、tac-、trp-、tet-、trp-tet-、lpp-、lac-、lpp-lac-、lacIq-、 T7-、T5-、T3-、gal-、trc-、ara-、rhaP(rhaPBAD)SP6-、λ-PR-またはλ-PLプロモーターなどのプロモーター(これらは、グラム陰性細菌で有利に用いられる)中に含める。他の有利な調節配列を、例えば、グラム陽性プロモーターであるace、amyおよびSPO2中に、酵母または真菌プロモーターであるADC1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADH中に含める。調節のために人工的なプロモーターを用いることもできる。
【0108】
発現のために、核酸構築物を、有利には、宿主での遺伝子の最適な発現を可能にするベクター(例えば、プラスミドまたはファージ)中で、宿主生物に挿入する。プラスミドおよびファージに加えて、ベクターは、当業者に公知の全ての他のベクター(例えば、ウイルス(SV40、CMV、バキュロウイルスおよびアデノウイルスなど)、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミド、および線状または環状DNA)を意味するとも理解されるべきである。これらのベクターは、宿主生物中で自立的に複製されることができるか、または染色体上で複製されることができる。これらのベクターは、本発明のさらなる実施形態を代表する。
【0109】
好適なプラスミドは、例えば、大腸菌では、pLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223-3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11もしくはpBdCIであり;ノカルジア型放線菌(nocardioform actinomycetes)ではpJAM2であり;ストレプトミセスではpIJ101、pIJ364、pIJ702もしくはpIJ361であり;桿菌ではpUB110、pC194またはpBD214であり;コリネバクテリウムではpSA77もしくはpAJ667であり;真菌ではpALS1、pIL2もしくはpBB116であり;酵母では2αM、pAG-1、YEp6、YEp13もしくはpEMBLYe23であり、または植物ではpLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004もしくはpDH51である。上記のプラスミドは、考えられるプラスミドの少数の選択を代表する。他のプラスミドが当業者に周知であり、例えば、書籍Cloning Vectors(Eds. Pouwels P.H. et al. Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)に見出されるであろう。さらなる好適なプラスミドは、実験パートにも言及されている。
【0110】
ベクターのさらなる実施形態では、本発明の核酸構築物または本発明の核酸を含有するベクターを、微生物中に線状DNAの形態で有利に挿入し、非相同または相同組み換えを通して宿主生物のゲノムに組み込ませることができる。線状DNAは、プラスミドなどの線状化ベクターまたは単に本発明の核酸構築物もしくは核酸を含むことができる。
【0111】
生物中での異種遺伝子の最適な発現のために、該生物で用いられる特異的なコドン使用頻度に従って、核酸配列を改変することが有利である。コドン使用頻度は、対象となる生物の他の既知の遺伝子のコンピュータ計算に基づいて、容易に決定することができる。
【0112】
本発明の発現カセットの作製は、好適なプロモーターと、好適なコードヌクレオチド配列およびターミネーターシグナルまたはポリアデニル化シグナルとの融合に基づく。このために、一般的な組み換えおよびクローニング技術が用いられ、そのようなものは、例えば、T. Maniatis, E.F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)ならびにT.J. Silhavy, M.L. Berman and L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)およびAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)に記載されている。
【0113】
組み換え核酸構築物または遺伝子構築物を、好適な宿主生物での発現のために、宿主特異的ベクターに有利に挿入して、宿主での遺伝子の最適な発現を可能にする。ベクターは当業者に周知であり、例えば、”Cloning Vectors” (Pouwels P.H. et al., Publ. Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985)に見出されるであろう。
【0114】
3.5 本発明に従い用いることができる宿主
文脈に応じて、「微生物」との用語は、出発微生物(野生型)もしくは本発明に従って遺伝的に改変された微生物、またはその両方を意味する。
【0115】
「野生型」との用語は、本発明に従えば、対応する出発微生物を意味し、必ずしも天然に存在する生物に対応する必要はない。
【0116】
本発明のベクターを用いて、組み換え微生物を作製することができ、これは、例えば本発明の少なくとも1種のベクターで形質転換されており、本発明の発酵的製造に用いることができる。
【0117】
有利には、上記の本発明の組み換え構築物を、好適な宿主系に挿入し、発現させる。好ましくは、それぞれの発現系における記載した核酸の発現を確実にするために、当業者によく知られている一般的なクローニング法およびトランスフェクション法を用い、そのようなものとしては、例えば、共沈殿、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクションなどがある。好適な系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubel et al., Publ. Wiley Interscience, New York 1997、またはSambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている。
【0118】
親微生物は、典型的には、グルコースおよび/またはグルタメートからグルタコネート、特に(E)-グルタコネートを生成する能力を有するものである。
【0119】
好ましくは、親微生物は細菌であり、特に、クロストリジウム目(Clostridiales)およびフソバクテリウム目(Fusobacteriales)の細菌である。特に、A.フェルメンタンス(A. fermentans)(DSM 20731)、C.シンビオスム(C. symbiosium)(DSM 934)、C.スポロスフェアロイデス(C. sporospaeroides)(DSM 1294)、P.アサッカロリティクス(P. assacharolyticus)(ATCC 14963)およびF.ヌクレアツム亜種ヌクレアツム(F. nucleatum subsp. nucleatum)(DSM 15643)には言及しなければならない。
【0120】
ATCCはAmerican type strain culture collectionを意味し、DSMはDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHを意味する。
【0121】
本発明の宿主生物は、好ましくは、本発明に記載された核酸配列、核酸構築物またはベクターのうちの少なくとも1種を保持し、これらは上記の定義にしたがう酵素活性をコードする。
【0122】
3.6 本発明のグルタコネート生成物の発酵的製造
本発明は、グルタコネートおよび式(I)の関連化合物の発酵的製造のための方法に関する。
【0123】
本発明に従って用いられる場合、組み換え微生物は、バッチ法でまたは供給バッチもしくは反復供給バッチ法で、継続的または非継続的に、培養することができる。公知の培養方法の総説は、Chmielによる教科書(Bioprozesstechnik 1. Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))またはStorhasによる教科書(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))に見出されるであろう。
【0124】
用いるべき培養培地は、適切な様式で、特定の菌株の要求をみたすものでなくてはならない。種々の微生物のための培養培地の説明は、教科書"Manual of Methods for General Bacteriology" of the American Society for Bacteriology (Washington D. C., USA, 1981)に提供されている。
【0125】
本発明に従って用いることができるこれらの培地は、一般的に、1種以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンおよび/または微量元素を含む。
【0126】
好ましい炭素源は、単糖、二糖または多糖などの糖である。非常によい炭素源は、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロースである。糖は、糖蜜、または他の糖精製の副産物などの複合化合物を介して培地に添加することもできる。種々の炭素源の混合物を添加することが有利である場合もある。他の考えられる炭素源は、ダイズ油、ヒマワリ油、ピーナッツ油およびココナッツ油などの油脂、パルミチン酸、ステアリン酸またはリノール酸などの脂肪酸、グリセロール、メタノールまたはエタノールなどのアルコールおよび酢酸または乳酸などの有機酸である。
【0127】
窒素源は、通常、有機もしくは無機窒素化合物またはそれらの化合物を含有する物質である。窒素源の例としては、アンモニアガスもしくはアンモニア塩(硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウムなど)、硝酸塩、尿素、アミノ酸または複合窒素源(コーンスティープリカー、ダイズ粉、ダイズタンパク質、酵母エキス、肉エキスなど)その他が挙げられる。窒素源は、別個に、または混合物として用いることができる。
【0128】
培地中に存在し得る無機塩化合物は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄の塩化物、リン酸塩または硫酸塩を含む。
【0129】
無機含硫化合物、例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩、チオ硫酸、硫化物、および有機硫黄化合物、例えばメルカプタンおよびチオールを、硫黄源として用いることができる。
【0130】
リン酸、リン酸二水素カリウムもしくはリン酸水素二カリウムまたは対応するナトリウム含有塩を、リン供給源として用いることができる。
【0131】
溶液中で金属イオンを維持するために、培地にキレート剤を添加することができる。特に好適なキレート剤は、カテコールもしくはプロトカテキュエート(protocatechuate)などのジヒドロキシフェノール、またはクエン酸などの有機酸を含む。
【0132】
本発明に従って用いられる発酵培地は、ビタミンまたは増殖促進因子などの他の増殖因子も含有することができ、そのようなものとしては、例えば、ビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸塩およびピリドキシンが挙げられる。増殖因子および塩は、多くの場合、酵母エキス、糖蜜、コーンスティープリカーなどの培地中の複合成分に由来する。さらに、好適な前駆体を培養培地に添加することができる。培地中の化合物の正確な組成は、実際の実験に強く依存し、それぞれの特定の場合について個別に決定されるべきである。培地の最適化についての情報は、教科書"Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach" (Publ. P.M. Rhodes, P.F. Stanbury, IRL Press (1997) p. 53-73, ISBN 0 19 963577 3)に見出すことができる。増殖培地は、商業的供給元からも取得することができ、Standard 1(Merck)またはBHI(Brain heart infusion、DIFCO)などがある。
【0133】
培地の全ての成分は、加熱により(2.0bar、121℃で20分)または滅菌ろ過により、滅菌する。成分は、一緒に、または必要であれば別々に、滅菌することができる。培地の全ての成分は、増殖の開始時に存在することができ、または任意により、継続的にもしくはバッチ供給により、添加することができる。
【0134】
培養温度は、通常、15℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃であり、一定に維持することができ、または実験中に変化させることができる。培地のpH値は、5〜8.5の範囲内、好ましくは7.0付近であるべきである。増殖のためのpH値は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアもしくはアンモニア水などの塩基性化合物またはリン酸もしくは硫酸などの酸性化合物を添加することにより、増殖中に制御することができる。脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を、泡立ちを制御するために用いることができる。プラスミドの安定性を維持するために、選択作用を有する好適な物質(例えば、抗生物質)を培地に添加することができる。好気性条件を維持するために、酸素または酸素含有ガス混合物(例えば、大気)を培養物に供給する。培養物の温度は、通常は20℃〜45℃である。培養は、最大限の所望の生成物が形成されるまで継続する。これは、通常は、10時間〜160時間以内に達成される。
【0135】
任意により高頻度超音波により、高圧により(例えば、フレンチプレス中で)、浸透圧溶解(osmolysis)により、界面活性剤、溶解酵素もしくは有機溶媒の作用により、ホモジナイザーを用いて、または列挙した方法のうち数種類の組み合わせにより、細胞を破砕することができる。
【0136】
3.7 生成物単離
本発明の方法はさらに、グルタコネートまたは関連化合物を回収するステップを含むことができる。「回収する」との用語は、培養培地から化合物を抽出すること、採取すること、単離することまたは精製することを含む。化合物の回収は、当技術分野で公知のいずれかの慣用の単離または精製法に従って行なうことができ、そのようなものとしては、限定するものではないが、慣用の樹脂(例えば、アニオンまたはカチオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂など)での処理、慣用の吸収剤(例えば、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナなど)での処理、pHの変化、溶媒抽出(例えば、アルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどの慣用の溶媒での)、蒸留、透析、ろ過、濃縮、結晶化、再結晶化、pH調整、凍結乾燥などが挙げられる。例えば、グルタコネートは、最初に微生物を除去することにより培地から回収することができる。残った培地を、続いて、カチオン交換樹脂に通して、望ましくないカチオンを除去し、続いて、アニオン交換樹脂を通して、望ましくない無機アニオンおよび有機酸を除去する。
【0137】
3.8 ポリマー
別の態様では、本発明は、ポリエステルまたはポリアミド(例えば、ナイロン(登録商標)または関連ポリマー)の製造方法を提供し、該方法は、グルタコネート化合物の生成のために上述したステップを含む。グルタコネート化合物を、公知の様式で、ジ、トリもしくはポリアミンと反応させてポリアミドを取得するか、またはジ、トリもしくはポリオールと反応させてポリエステルを取得する。例えば、グルタコネート型化合物を、4〜10個の炭素を含有するポリアミンまたはポリオールと反応させる。
【0138】
別の態様では、本発明は、ポリマー、特にコポリマーの作製方法を提供し、該方法は、本明細書中に記載した方法により、上記で規定した一般式(I)のモノ不飽和ジカルボン酸化合物を作製するステップ、該化合物を単離するステップ;および、好ましくは重合開始剤(例えば、ラジカル開始剤としての過酸化二硫酸ナトリウム(NAPS)の存在下で、該化合物を少なくとも1種の好適な不飽和重合性モノマーと重合させるステップを含む。
【0139】
上記の重合反応を行なうために好適なコ-モノマーの非限定的な例として、以下のものを挙げられる:
ポリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、2〜8グリセロール単位を有するポリグリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、およびソルビトール;
ポリアミン、例えば、ジアミン、トリアミンおよびテトラアミン、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ネオペンチルジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ジヘキサメチレントリアミン、アミノプロピルエチレンジアミンおよびビスアミノプロピルエチレンジアミン。好適なポリアミンはまた、ポリアルキレンポリアミンである。より高級なポリアミンが、ジアミンとの混合物中に存在してもよい。有用なジアミンとしては、例えば、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,8-ジアミノオクタンが挙げられる;
アルケン、特に、2〜12個の炭素原子を有するモノ不飽和直鎖または分岐鎖炭化水素であるC2〜C12-アルケン、例えば、エチレン、1-もしくは2-プロピレン、1-、2-および3-ブチレン、2-メチル-プロピレン、1-、2-、3-および4-ペンテニレン、1-、2-、3-、4-および5-ヘキシレン、1-、2-、3-、4-、5-および6-ヘプチレン、または1-、2-、3-、4-、5-、6-および7-オクチレン、1-デセン、1-ドデセン;およびまたそれらの構造異性体;
モノ不飽和C3〜C8-カルボン酸、例えば、アクリル酸または(C1〜C7-アルキル)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸;
モノエチレン性不飽和C3〜C8モノカルボン酸とC1〜C20アルカノール、C5〜C8シクロアルカノール、フェニル-C1〜C4アルカノールまたはフェノキシ-C1〜C4アルカノールとのエステル、例えば、アクリル酸とC1〜C20アルカノールとのエステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリルおよびアクリル酸ステアリル、アクリル酸とC5〜C10シクロアルカノールとのエステル、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸とフェニル-C1〜C4アルカノールとのエステル、例えば、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-フェニルエチルおよびアクリル酸1-フェニルエチル、アクリル酸とフェノキシ-C1〜C4アルカノールとのエステル、例えば、アクリル酸2-フェノキシエチル、メタクリル酸とC1〜C20アルカノール(好ましくはC1〜C10アルカノール)とのエステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリルおよびメタクリル酸ステアリル、メタクリル酸とC5〜C10シクロアルカノールとのエステル、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸とフェニル-C1〜C4アルカノールとのエステル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-フェニルエチルおよびメタクリル酸1-フェニルエチル、ならびにメタクリル酸とフェノキシ-C1〜C4アルカノールとのエステル、例えばメタクリル酸2-フェノキシエチル;
モノエチレン性不飽和C4〜C8ジカルボン酸とC1〜C20アルカノールとのジエステル、例えば、マレイン酸またはフマル酸とC1〜C20アルカノールとのジエステル、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ-n-ブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、およびフマル酸ジ-n-ブチル;
モノエチレン性不飽和C3〜C8モノカルボン酸のC1〜C20アルキルアミドおよびジ-C1〜C20アルキルアミド、特にアクリル酸およびメタクリル酸のC1〜C20アルキルアミドおよびジ-C1〜C20アルキルアミド、例えば、
モノエチレン性不飽和カルボン酸のアミド、例えばアクリルアミドまたはメタクリルアミド、
3〜8個のC原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸の無水物、例えば、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、マレイン酸無水物またはイタコン酸無水物、
3〜8個のC原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸のヒドロキシル-C2〜C4アルキルエステル、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシブチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、
モノエチレン性不飽和スルホン酸およびそれらの塩、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドエタンスルホン酸、2-メタクリルアミドエタンスルホン酸、2-アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2-メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3-アクリロイルオキシプロパンスルホン酸および2-メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、
3〜5個のC原子を有するモノエチレン性不飽和ニトリル、例えば、アクリルニトリルおよびメタクリロニトリル、
N-ビニル複素環、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、ならびに
少なくとも1個のポリ-C2〜C4アルキレンオキシド基を有するモノエチレン性不飽和化合物、例えば、ポリ-C2〜C4アルキレングリコールまたはC1〜C10アルキル-ポリ-C2〜C4アルキレングリコールのビニルエーテルおよびアリルエーテル、3〜8個のC原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とポリ-C2〜C4アルキレングリコールまたはC1〜C10アルキル-ポリ-C2〜C4アルキレングリコールとのエステル、3〜8個のC原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とポリ-C2〜C4アルキレングリコールアミンまたはC1〜C10アルキル-ポリ-C2〜C4アルキレングリコールアミンとのアミド、
少なくとも1個の塩基性窒素または四級化窒素原子を有するエチレン的不飽和化合物、例えば、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、塩化物、硫酸塩またはメト硫酸塩などのN-メチル-N-ビニルイミダゾリウム塩、N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)アクリルアミド、アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルアクリルアミド、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリルアミド、アクリル酸2-(N,N,N-トリメチルアンモニオ)エチル塩化物、メタクリル酸2-(N,N,N-トリメチルアンモニオ)エチル塩化物、2-(N,N,N-トリメチルアンモニオ)エチルメタクリルアミド塩化物、3-(N,N,N-トリメチルアンモニオ)プロピルアクリルアミド塩化物、3-(N,N,N-トリメチルアンモニオ)プロピルメタクリルアミド塩化物、2-(N,N,N-トリメチルアンモニオ)エチルアクリルアミド塩化物、ならびに対応する硫酸塩およびメチル硫酸塩、
ビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブチルスチレン、ビニルピリジン;
1〜20個のC原子を有する脂肪族カルボン酸のビニルおよびアリルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、およびステアリン酸ビニル;
共役ジオレフィン、例えば、ブタジエンおよびイソプレン、ならびに
ハロビニル化合物、例えば、クロロエテン(塩化ビニル)、1,1-ジクロロエテン(塩化ビニリデン)、フルオロエテン、1,1-ジフルオロエテン、およびテトラフルオロエテン。
【0140】
特に明記しない限り、アルキルは、C1〜C7-アルキルを指す可能性があり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2 メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、2-エチルペンチル、1-プロピルブチル、等であり得る。
【実施例】
【0141】
以下の実施例は、本発明を例示するためにのみ機能する。当業者には明らかな多数の可能な改変も、本発明の範囲内に入る。
【0142】
実験パート
特に明記しない限り、以下の実験は、遺伝的操作、微生物の培養による化合物の発酵的製造、ならびに生成物の分析および単離で用いられる標準的な設備、方法、化学物質、および生化学物質を用いることにより行われた。上記で引用したSambrookらおよびChmielらの文献も参照されたい。
【0143】
材料および方法
(a)材料
全ての化学物質および生化学物質は、Roche(Mannheim, Germany)、Sigma(Deisenhofen, Germany)、およびAppliChemから入手した。DNA操作のための酵素、DNAサイズマーカー、タンパク質分子量マーカーおよびSDS/PAGEのための分子量標準物質は、Fermentas GmbH(St. Leon-Rot, Germany)から入手した。大腸菌株BL21は、Stratageneから入手した。シークエンシングプライマーは、MWG-Biotech AG(Ebersberg, Germany)から購入した。補酵素Aは、MP Biomedicals由来のものである。グルタル酸および酢酸のCoAエステルは、対応する無水物から作製した(Simon, E.J & Shemin, D. (1953) J. Am. Chem. Soc. 75, 2530)。
【0144】
(b)生物および増殖
クローニングに用いた大腸菌DH5αおよび発現に用いた大腸菌BL21は、嫌気性条件下、室温で、50mM MOPS、3mMシステイン塩酸塩、10mMグルタミン酸ナトリウム、リボフラビンおよびFeCl2を種々の濃度で添加したStandard I培地(1.5%ペプトン、0.3%酵母エキス、100mM NaCl、5mMグルコース;Merck, Darmstadt)で増殖させた。
【0145】
(c)酵素活性アッセイ
2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ活性は、周囲温度で、0.1M Tris/HCl pH8.0、0.2mM NADHおよび2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼを含有する総量0.5mlのキュベット中で、室温で測定した。1mM α-ケトグルタレートの添加後、NADHの吸光度の低下を、340nmでモニタリングした(ε=6.3mM-1cm-1)(Bresser J (1997) (R)-2-Hydroxyglutarat-Dehydrogenase aus Acidaminococcus fermentans. PhD Thesis, Philipps-Universita t Marburg, Germany; Martins BM, Macedo-Ribeiro S, Bresser J, Buckel W, Messerschmidt A (2005) Structural basis for stereo-specific catalysis in NAD+-dependent (R)-2-hydroxyglutarate dehydrogenase from Acidaminococcus fermentans. Febs J 272:269-281)。
【0146】
グルタコネートCoA-トランスフェラーゼ活性アッセイは、室温で、好気性条件で行なった。吸光度の上昇を412nmで追跡した(Δε=14 mM-1cm-1)。アッセイで用いた試薬は、0.1Mリン酸カリウムpH7.0、0.2M酢酸ナトリウム、1mMオキサロ酢酸、1mM 5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、20μgクエン酸シンターゼ、0.1mMグルタリル-CoA、総量0.5mlである(Buckel W, Dorn U, Semmler R (1981) Glutaconate CoA-transferase from Acidaminococcus fermentans. Eur J Biochem 118:315-321; Jacob U, Mack M, Clausen T, Huber R, Buckel W, Messerschmidt A (1997) Glutaconate CoA-transferase from Acidaminococcus fermentans: the crystal structure reveals homology with other CoA-transferases. Structure 5:415-426)。
【0147】
2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ活性は、無酸素条件下、周囲温度で、50mM Mops/KOH pH7.0、10mMジチオスレイトール、5mM MgCl2、0.1mM亜ジチオン酸塩、0.4mM ATP、および2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼとアクチベーターを含有する総量0.5mlのキュベット中で測定した。10分のインキュベーション後、2mMアセチル-CoAおよび2mM (R)-2-ヒドロキシグルタレートを用いて反応を開始した。グルタコニル-CoAの形成による吸光度の上昇を、290nmで追跡した(ε=2.2 mM-1cm-1)(Kim J, Darley DJ, Buckel W, Pierik AJ (2008) An allylic ketyl radical intermediate in clostridial amino-acid fermentation. Nature 452:239-242)。
【0148】
グルタコネートは、2mMアセチル-CoA、50mMリン酸カリウムpH7.0、0.25mM NADPH、グルタコネートにより、かつ触媒量の酵素グルタコネート-CoAトランスフェラーゼ、グルタコニル-CoAデカルボキシラーゼ[3,5,6]およびクロトニル-CoAカルボキシラーゼ/レダクターゼ[9]を用いて、酵素的に測定した。NADP+の形成を、分光光度法で340nmで測定した。
【0149】
グルタコネートは、室温で、210nmでのUV検出を用いて、C18逆相カラムを用いて、20mM硫酸中でHPLCによっても測定した。
【0150】
(d)他の生化学法
タンパク質濃度は、標準としてウシ血清アルブミンを用いて、Bio-Radマイクロアッセイを用いて測定した。SDS-PAGEは、Mini Protein装置(Bio-Rad,Heidelberg, Germany)で行なった。タンパク質は、クーマシー・ブリリアント・ブルー(Serva, Heidelberg, Germany)を用いて染色した。
【0151】
実施例1:遺伝子のクローニング
クローニング法
DNAの通常の操作、PCRおよび組み換えプラスミドの構築は、Sambrook J & Russell DW (2001) Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 3rd edn. Cold Spring. Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されているように行なった。制限部位を含む以下のプライマー:
NdeI:5´-ATGGT ACATATGTGAGT AAAG TAATGACGTTAAAAGACGCAATCG-3´(配列番号39)およびXhoI:5´-ATGGTACTCGAGTTATTTTGCTTCC GTGGGGA CCTGG-3´(配列番号40)
を用いたgctABのPCR増幅のために、PfuUltra高フィデリティーDNAポリメラーゼ(Stratagene, USA)を用いた。
【0152】
A.フェルメンタンス由来の遺伝子hgdH(2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ)およびgctAB(グルタコネートCoA-トランスフェラーゼ)を、pET-Duet-1およびpJF118HE由来のpACYCDuet-1ベクター(Novagen)(配列番号13)にそれぞれサブクローニングした(図2)(Furste JP, Pansegrau W, Frank R, Blocker H, Scholz P, Bagdasarian M, Lanka E (1986) Molecular cloning of the plasmid RP4 primase region in a multi-host-range tacP expression vector)。
【0153】
C.シンビオスム由来のhgdAB(2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ)およびそのアクチベーターであるA.フェルメンタンス由来のhgdCのクローニングのために、pASK-IBA3plusベクター(IBA GmbH, Gottingen, Germany)(配列番号14)を用いた(図3)。
【0154】
pACYCDuet-1ベクター中のhgdHのためのライゲーションおよび形質転換条件
pASKIBA7+(研究室コレクション)中の遺伝子hgdHを、pETDuetにサブクローニングし(下記と同様の手順)、続いてpACYCDuet-1(8つまでの遺伝子(10kb)を発現することができる)に移した。ライゲーション前に、pETDuet_hgdHおよびpACYCDuet-1ベクターを、別々に、制限酵素BamHIおよびEcoNI(Fermentas)で37℃で1時間処理した(表1)。
【表1】

【0155】
【表2】

【0156】
ライゲーション反応(表2)は、23℃で行なった。1時間後、T4 DNAリガーゼ(Fermentas)を、65℃で10分間のインキュベーションにより不活化した。ライゲーション混合物からの塩を、周囲温度で30分間の、0.025μm Milliporeメンブレンを用いたドロップ透析(drop dialysis)により除去した。ライゲーション混合物を、50μlのDH5α大腸菌コンピテントセルに添加し、エレクトロポレーションキュベット(Molecular BioProducts)に移した。以下の設定を用いて、キュベットにパルスをかけた:25μF、1.8 kV、200 Ohm。キュベットを300μlのStandard I培地で洗浄し、滅菌1.5mlエッペンドルフ管に移した。形質転換混合物を、37℃で1時間インキュベートし、クロラムフェニコール含有(50μg・ml-1)LB寒天プレート上にプレーティングした。寒天プレートを、37℃で一晩インキュベートした。10個の白色コロニーをピックアップし、別々にStandard 培地中で37℃で一晩インキュベートした。そしてFermentasキットを用いてDNAを抽出し、BamHIおよびEcoNIを用いて消化した。3つの正しい断片のうちの1つの断片をゲルから抽出し、gctABとライゲーションした。
【0157】
hgdH遺伝子を保持するpACYCDuet-1ベクター中のgctABのためのライゲーションおよび形質転換条件
gctAB遺伝子を、PCR反応(表3および4)によりその認識部位を導入した2種類の制限酵素NdeIおよびXhoIで処理した。hgdH遺伝子を含有するpACYCDuet-1ベクターであるpACYCDuet-1_hgdHも、同じ制限酵素で処理した(表5)。ライゲーション反応および形質転換は、表6に説明されている条件下で行なった。
【表3】

【0158】
【表4】

【0159】
【表5】

【0160】
【表6】

【0161】
ベクターpASK-IBA 3中のhgdABおよびそのアクチベーター遺伝子hgdCのためのライゲーションおよび形質転換条件
アクチベーターhgdCを、hgdAB遺伝子を含有するpASK-IBA 3ベクターに導入した。両方のDNAを、別々に、制限酵素Eco47IIIおよびMlsI(Fermentas)で37℃にて1時間処理した(表7)。消化後、65℃にて20分間のインキュベーションにより、酵素を不活化した。周囲温度での30分間の上記の通りのドロップ透析により、塩を除去した。pASK-IBA 3_hgdABを含有する、塩を含まない反応溶液に、1μl(1u/μl)のShrimpアルカリホスファターゼ(Fermentas)、2μlの10×反応バッファーを添加し、37℃で1時間インキュベートした。65℃で15分間加熱することによって、反応を停止させた。ライゲーション反応(表8)および形質転換は、上記で説明した条件下で行なった。抗生物質として、クロラムフェニコールの代わりにカルベニシリン(100μg・ml-1)を用いた。
【表7】

【0162】
【表8】

【0163】
遺伝子発現
それら遺伝子を、改変型大腸菌BL21-CodonPlus(DE3)に形質転換した。新鮮な単一コロニーの一晩嫌気性条件前培養(100ml)を用いて、抗生物質(カルベニシリン、100μg・ml-1;クロラムフェニコール、50μg・ml-1)を含有する1リットルのStandard I培地(上記)に植菌し、同じ条件で増殖させた。培養物がOD578=0.2に達したら、イソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトシド(IPTG、240mg・リットル-1)およびアンヒドロテトラサイクリン(AHT、200μg・リットル-1)を用いて遺伝子発現を誘導した。誘導の3時間後(OD578=0.573の時点)に細胞を回収し、洗浄し、無酸素条件下で20mlのバッファー(50mM MOPS、5mM MgCl2、2mM DTT)に懸濁した。誘導された大腸菌細胞をフレンチプレスで溶解させ、細胞残渣を100,000g、4℃で1時間の超遠心により除去した。
【0164】
実施例2:グルタコネートの発酵的製造
第1ステップはプラスミドの構築であった。このプラスミドは、2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ(hgdH)、グルタコネートCoA-トランスフェラーゼ(gctAB)、およびA.フェルメンタンス由来の2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼのアクチベーター(hgdC)ならびにC.シンビオスム由来の2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ(hgdAB)の6種類の遺伝子を含む(実施例1を参照されたい)。
【0165】
酵素活性の測定
表9には、組み換え大腸菌株で測定した酵素活性を示してある。
【表9】

【0166】
グルタコネートの測定
増殖後、培地中のグルタコネート濃度は0.30±0.05mMであり;グルタメートを排除した場合、濃度は0.1mMに減少した(表10)。したがって、グルタコネートが実際に産生されており、このことは、酵素がin vivoでも機能していることを示している。しかしながら、グルタコネートの前駆体は、当初推察されていたようにグルコースではなく、グルタメート(それ自体が添加されたか、またはペプトン由来)である。
【表10】

【0167】
上記のStandard I培地へのリボフラビンおよび塩化鉄(II)の添加は、グルタコネート濃度を増加させた(表11、12)。
【表11】

【0168】
【表12】

【0169】
無細胞抽出物は、20mlの50mM MOPS pH7.4中の590mgの湿潤充填細胞(約118mgの乾燥細胞)から作製した。2.5ml/gの乾燥細胞の体積を仮定すれば(Brock M, Buckel W (2004) On the mechanism of action of the antifungal agent propionate. Eur J Biochem 271:3227-41)、グルタコネートの内部濃度は、0.23mMから16mMに上昇している。
【0170】
元の大腸菌株BL21を、組み換え株と同じ条件で増殖させ、分析すると、グルタコネートは検出されなかった。
【0171】
考察
データは、組み換え大腸菌株が、実際にグルタコネートを産生したことを示している。しかしながら、グルタメートがグルタコネート産生を3倍増強したため、基質は、グルコースではなくグルタメートである可能性が最も高い。アミノ酸の非存在下では、ペプトン中に存在するグルタメートがグルタコネートの前駆体である可能性が最も高い(表10)。前駆体としてのグルコースの使用は電子受容体を必要とし、電子受容体は、この物質に対するアクチベーターの極端な選択性のために、酸素ではあり得ない(Buckel W, Golding BT (2006) Radical enzymes in anaerobes. Annu Rev Microbiol 60:27-49; , Kim J, Darley DJ, Buckel W, Pierik AJ (2008) An allylic ketyl radical intermediate in clostridial amino-acid fermentation. Nature 452:239-242)。鉄要求性(表11)は、デヒドラターゼ(HgdAB)およびそのアクチベーター(HgdC)中の鉄硫黄クラスターに起因する。リボフラビンでの若干の改善は、おそらく、デヒドラターゼの補欠分子族としてのリボフラビン-5’-ホスフェート(FMN)によるものである(Hans M, Buckel W, Bill E (2000) The iron-sulfur clusters in 2-hydroxyglutaryl-CoA dehydratase from Acidaminococcus fermentans. Biochemical and spectroscopic investigations. Eur J Biochem 267:7082-93)。データはさらに、細胞内のグルタコネート濃度(16mM)が、細胞外(1.4mM)の約12倍であることを示している。したがって、おそらくコハク酸輸送体により媒介される(Janausch IG, Zientz E, Tran QH, Kroger A, Unden G. (2002) C4-dicarboxylate carriers and sensors in bacteria.Biochim Biophys Acta. 1553:39-56)、グルタコネートの細胞外輸送が、ジカルボン酸産生を制限しているようである。
【0172】
実施例3:グルタコネート産生経路の酵素に対する代替基質の評価
さらなる基質の非限定的な例を、以下に示す:
(a)クロストリジウム・シンビオスム由来の2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼおよびアシダミノコッカス・フェルメンタンス由来のアクチベーター
【表13】

【0173】
【化1】

【0174】
スキーム1. 2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼにより触媒される反応
この酵素が、(R)-2-ヒドロキシグルタリル-CoA以外の基質にも2R特異性を示すと仮定した(Anutthaman Parthasarathy and Wolfgang Buckel、未発表データ)。
【0175】
(b) A.フェルメンタンス由来の(R)-2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ
【化2】

【化3】

【0176】
スキーム2. (R)-2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ(NAD+)の代替基質
おそらく、両方の2-オキソ酸が2R-エナンチオマーに還元される。Km値およびkact値は測定していない。この酵素は、NAD+/NADHに特異的である。NADPH/2-オキソグルタレートまたはNADH/オキサロ酢酸では、活性は観察されなかった。
【0177】
(c) A.フェルメンタンス由来のグルタコネートCoA-トランスフェラーゼ
この酵素は、(E)-グルタコネート、グルタレート、(R)-2-ヒドロキシグルタレート、アジペート;アセテート、プロピオネート、アクリレートに作用する(Buckel, W., Dorn, U. & Semmler, R. 1981. Glutaconate CoA-transferase from Acidaminococcus fermentans. Eur. J. Biochem. 118, 315-321)。
【0178】
(R)-2-ヒドロキシグルタリル-CoA、(E)-グルタコニル-CoA、ムコニル-CoA、ブチンジオイル-CoA(アセチレンジカルボキシル-CoA)、4-オキソ-ヘクス-2-エンオイル-CoA、4-ニトロ-ブト-2-エノイル-CoAおよび(RS)-2-ヒドロキシアジポイル-CoAを、アセチル-CoAおよび過剰量の中和酸を用いて、この酵素によって作製した。R-エナンチオマーはS型よりも速く反応するので、生成物は主に(R)-2-ヒドロキシアジポイル-CoAであるはずである(Anutthaman Parthasarathy and Wolfgang Buckel、未発表データ)。
【0179】
結論:
グルタコネート産生経路の3種類の酵素全てが、C-6相同体も用いることができるので、2-オキソアジピン酸または2-アミノアジピン酸からのヘクス-2-エンジオン酸の生成も実行可能である。
【0180】
以下の実施例は、本発明の生体触媒法により取得可能なグルタコネート(式Iの化合物)の、有機ポリマーの作製への利用可能性を例示する。
【0181】
実施例4:グルタコン酸-アクリル酸コポリマーの作製
【化4】

【0182】
グルタコン酸とアクリル酸由来のコポリマー(モル比1:1〜1:3(グルタコン酸:アクリル酸))を、過酸化二硫酸ナトリウム(NAPS)をラジカル開始剤として用いる水溶液中でのラジカル重合法により合成した。
【0183】
(a)グルタコン酸-コ-アクリル酸(1:1mol)
500mlの反応器フラスコに、グルタコン酸(10.00g)および蒸留水(30.00g)を入れた。混合物を、窒素雰囲気下、98℃で15分間撹拌した。蒸留水(15.31g)中のNAPS(0.23g)の溶液を、5時間にわたって反応器に滴下した。開始剤の添加開始5分後に、蒸留水(25.00g)中のアクリル酸(5.54g)の溶液も、4時間にわたって反応器に滴下した。反応物の温度は、98℃に維持した。開始剤添加の終了時に、反応物をさらに2時間、98℃に保ち、その後、室温まで冷却した。
【0184】
淡黄色ポリマー溶液(固体含量18.71g)が得られた。K値=11.3g(脱イオン水中1重量%)。
【0185】
(b)グルタコン酸-コ-アクリル酸(1:2mol)
500mlの反応器フラスコに、グルタコン酸(10.00g)および蒸留水(30.00g)を入れた。混合物を、窒素雰囲気下、98℃で15分間撹拌した。蒸留水(20.76g)中のNAPS(0.32g)の溶液を、6時間にわたって反応器に滴下した。開始剤の添加開始5分後に、蒸留水(33.23g)中のアクリル酸(11.08g)の溶液も、5時間にわたって反応器に滴下した。反応物の温度は、98℃に維持した。開始剤添加の終了時に、反応物をさらに2時間、98℃に保ち、その後、室温まで冷却した。
【0186】
淡黄色ポリマー溶液(固体含量20.59g)が得られた。K値=14.7g(脱イオン水中1重量%)。
【0187】
(c)グルタコン酸-コ-アクリル酸(1:3mol)
500mlの反応器フラスコに、グルタコン酸(10.00g)および蒸留水(30.00g)を入れた。混合物を、窒素雰囲気下、98℃で15分間撹拌した。蒸留水(26.00g)中のNAPS(0.40g)の溶液を、6時間にわたって反応器に滴下した。開始剤の添加開始5分後に、蒸留水(49.86g)中のアクリル酸(16.62g)の溶液も、5時間にわたって反応器に滴下した。反応物の温度は、98℃に維持した。開始剤添加の終了時に、反応物をさらに2時間、98℃に保ち、その後、室温まで冷却した。
【0188】
淡黄色ポリマー溶液(固体含量20.90g)が得られた。K値=17.20g(脱イオン水中1重量%)。
【0189】
Mn=13.800Da;MW=55.000Da。
【0190】
K値測定:
コポリマー水溶液のK値は、脱イオン水溶液中、pH=7、T=25℃で、1重量%のポリマー濃度を用いて、H. Fikenscher(“Cellulose-Chemie” (1932), Band 13, 48-64, 71-74)により記載された手順に従って測定した。
【0191】
本明細書中で引用した文献は、参照により全て組み入れられる。
【表14】

【0192】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
HOOC-CH=CH-X-COOH (I)
[式中、Xは、直鎖または分岐鎖であり、任意により不飽和であり、任意により置換されている炭化水素基を表す]
の不飽和ジカルボン酸化合物の生体触媒的製造方法であって、該方法は、以下のステップ:
グルタコネートCoA-トランスフェラーゼ(E.C. 2.8.3.12)および2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ系をコードする遺伝子を共発現する組み換え微生物中で、任意により補酵素A供給源の存在下で、式Iの前記化合物が形成されるように、一般式III:
HOOC-C(OH)H-CH2-X-COOH (III)
[式中、Xは上記で定義した通り]
の2-ヒドロキシ置換ジカルボン酸化合物を変換するステップ;
および任意により、実質的に純粋な立体異性体の形態で、または立体異性体の混合物として、式Iの該化合物を単離するステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
Xが、(CH2)n [nは1〜4の整数である]、CH=CH、CH2-C(=O)、またはCH=C(OH)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2-ヒドロキシ置換ジカルボン酸IIIが、式II:
HOOC-C(=O)-CH2-X-COOH (II)
[式中、Xは上記で定義した通りである]
の2-オキソ-ジカルボン酸化合物の2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ(E.C. 1.1.1.-)触媒変換により前記組み換え微生物により形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼの遺伝子が、前記組み換え微生物により共発現される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式IIの前記オキソ-ジカルボン酸化合物が、添加されるか、または前記組み換え微生物により発酵的に産生される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物が、グルタメートおよび/もしくはグルコース代謝好気性または嫌気性組み換え細菌であり、式IIの前記化合物が、2-オキソグルタレートである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記グルタメートおよび/またはグルコース代謝組み換え細菌が、エシェリキア属から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ系が、2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼ(E.C. 4.2.1.-)および任意により該酵素に対するアクチベータータンパク質を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素およびアクチベータータンパク質が、原核生物起源または真核生物起源のものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素およびアクチベーターが、グルタメートをグルタコネートに変換する能力を有する、同じかまたは異なる嫌気性細菌に由来する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記嫌気性細菌が、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)の細菌から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記嫌気性細菌が、アシダミノコッカス・フェルメンタンス(Acidaminococcus fermentans)、クロストリジウム・シンビオスム(Clostridium symbiosum)、クロストリジウム・スポロスフェアロイデス(Clostridium sporosphaeroides)、全ての亜種を含むフソバクテリウム・ヌクレアツム(Fusobacterium nucleatum)、またはペプトストレプトコッカス・アサッカロリティクス(Peptostreptococcus asaccharolyticus)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a) 前記2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ(HgdH)が、配列番号2または16のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも50%の同一性を有する配列を含み;
(b) 前記グルタコネートCoAトランスフェラーゼ(GctAB)が、配列番号4および/もしくは6;配列番号18および/もしくは20;または配列番号22および/もしくは24のアミノ酸配列;あるいはそれに対して少なくとも50%の同一性を有する配列を含み;
(c) 前記2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼが、配列番号8および/もしくは10;配列番号26および/もしくは28;または配列番号30、32および/もしくは34のアミノ酸配列;あるいはそれに対して少なくとも50%の同一性を有する配列を含み;
(d)さらに、(c)のアクチベータータンパク質(HdgC)が、配列番号12、36もしくは38のアミノ酸配列;またはそれに対して少なくとも50%の同一性を有する配列を含む、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドラターゼがC.シンビオスム由来であり、前記2-ヒドロキシグルタレートデヒドロゲナーゼ、前記グルタコネートCoAトランスフェラーゼおよび前記アクチベータータンパク質がA.フェルメンタンス由来である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質が、式IIの前記2-オキソ-ジカルボン酸を産生する能力を有する前記微生物のコドン使用頻度に合わせた核酸配列によりそれぞれコードされる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質が、1以上の発現ベクター中に含まれる核酸配列によりコードされる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記共発現タンパク質のうち少なくとも1種が、前記組み換え微生物に対して異種である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
XがCH2、C2H4、CH=CH;CH=C(OH)から選択される式Iの化合物が製造される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項に規定される酵素またはタンパク質をそれぞれコードする少なくとも2種の異なる核酸配列の組み合わせを含み、該配列同士が少なくとも1つの調節核酸配列に機能的に連結している、発現カセット。
【請求項20】
請求項19に記載の少なくとも1つの発現カセットを含む、組み換えベクター。
【請求項21】
請求項20に記載の少なくとも1つのベクターで形質転換された、組み換え原核生物または真核生物宿主。
【請求項22】
前記少なくとも1つのベクターによりコードされる前記発現産物の発現に際して式(I)の化合物に変換される式(II)の2-オキソ-ジカルボン酸化合物を産生する能力を有する、請求項21に記載の組み換え宿主。
【請求項23】
エシェリキア属の細菌の組み換え株である、請求項22に記載の宿主。
【請求項24】
以下のステップ:
(a)請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法により、上記で規定された一般式(I)のモノ不飽和ジカルボン酸化合物を作製するステップ;
(b)該化合物を単離し、その後、任意によりC=C二重結合を除去するために水素化するステップ;および
(c)ステップ(b)に従い取得した該化合物を、少なくとも1種の好適な多価アミンモノマーと重合させるステップ
を含む、ポリアミドの作製方法。
【請求項25】
ポリアミンが、ジアミン、トリアミンまたはそれらの混合物である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
以下のステップ:
(a)請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法により、上記で規定された一般式(I)のモノ不飽和ジカルボン酸化合物を作製するステップ;
(b)該化合物を単離し、その後、任意によりC=C二重結合を除去するために水素化するステップ;および
(c)ステップ(b)に従い取得した該化合物を、少なくとも1種の好適な多価アルコールと重合させるステップ
を含む、ポリエステルの作製方法。
【請求項27】
以下のステップ:
(a)請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法により、上記で規定された一般式(I)のモノ不飽和ジカルボン酸化合物を作製するステップ;
(b)該化合物を単離するステップ;および
(c)ステップ(b)に従い取得した該化合物を、少なくとも1種の好適な不飽和重合性モノマーと重合させるステップ
を含む、ポリマーの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−514990(P2012−514990A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545748(P2011−545748)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050475
【国際公開番号】WO2010/081885
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】