説明

グルタチオンレダクターゼ活性増強剤

【課題】本発明は、細胞内のグルタチオンレダクターゼの活性を増強させて、還元型のグルタチオンの生体濃度を高めるものであり、還元型のグルタチオンの欠乏により生じる過酸化物の皮膚障害を防止するグルタチオンレダクターゼ活性増強剤を提供することを目的とする。
【解決手段】メハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシン、コメ、センキュウ、ユリおよびシロキクラゲの中から選ばれる一種又は二種以上の抽出物を含有することを特徴とするグルタチオンレダクターゼ活性増強剤を提供する。
【効果】食品、化粧品、医薬部外品または医薬品等に配合してグルタチオンレダクターゼの活性を増強し、還元型グルタチオンの生成を促進することにより皮膚の酸化傷害や皮膚老化にその有効性を発揮する。詳しくは、細胞機能の低下により生じる皮膚細胞へのメラニンの沈着およびしわやハリの低下などの老化症状の改善に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタチオンレダクターゼ活性増強剤に関し、特に食品、化粧品、医薬部外品または医薬品等に配合してグルタチオンレダクターゼの活性を増強し、還元型グルタチオンの生成を促進することにより皮膚の酸化傷害や皮膚老化にその有効性を発揮する生体の酸化防止または予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は生体の最外層に位置し、紫外線等の影響により活性酸素が発生しやすい臓器であり、絶えずその酸素ストレスに曝されている。一方、皮膚細胞内にはグルタチオンに代表される還元物質が存在しており、その能力を超える過酸化物が発生しないかぎり過酸化物の傷害から皮膚細胞を防衛している。グルタチオンは細胞内で酸化型と還元型の2種類の構造で存在し、グルタチオンレダクターゼにより酸化型のグルタチオンは還元型に変換され、細胞内の還元能力が保持されている。したがって、細胞の還元能力を保持するためには、還元型のグルタチオンの濃度を上げることが重要であり、還元型のグルタチオンの生成を促進するグルタチオンレダクターゼは、細胞の還元能力を保持する重要な酵素である。
【0003】
ところが、紫外線などの酸化ストレスにより、皮膚中のグルタチオンレダクターゼ活性が低下することが知られている(非特許文献1)。グルタチオンレダクターゼ活性が低下すると、還元型グルタチオンの生成量が減少し、細胞の還元能力が低下する。したがって、過酸化物による傷害がその防御反応を凌駕したとき、皮膚は酸化され、細胞機能が劣化して老化してゆくと考えられる。
【非特許文献1】Jurgen Fuchs M.D.,J.Invest.Dermatol,93:769−773,1989.
【0004】
そこで、過酸化物による傷害からの防御を目的として、特許文献1〜4などのように抗酸化剤や活性酸素消去剤が検討され、SODやカタラーゼ等の活性酸素消去酵素、SOD様活性物質などの活性酸素消去剤や抗酸化剤、細胞内のグルタチオン濃度を増強させる組成物を配合した食品、化粧品、医薬部外品または医薬品等が開発されている。
【特許文献1】特開平9−118630
【特許文献2】特開平9−208484
【特許文献3】特開平2002−275079
【特許文献4】特開平2003−321463
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、SODやカタラーゼ等の活性酸素消去酵素は安定性に問題があり、活性酸素消去剤や抗酸化剤は、その効果が充分ではない。また、細胞内のグルタチオン濃度を増強させる組成物も還元型グルタチオンの量が保持されなければ、十分な過酸化物による傷害からの防御効果が期待されないため、不充分である。
【0006】
本発明は、細胞内のグルタチオンレダクターゼの活性を増強させて、還元型のグルタチオンの生体濃度を高めるものであり、還元型グルタチオンの欠乏により生じる過酸化物の皮膚障害を防止するグルタチオンレダクターゼ活性増強剤を提供することを目的とする。また、細胞機能の低下により生じる皮膚細胞へのメラニンの沈着およびしわやハリの低下などの老化症状の改善を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、過酸化物による傷害からの防御作用に優れた外用剤を得るために鋭意検討した結果、メハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシン、コメ、センキュウ、ユリおよびシロキクラゲの中から選ばれる一種または二種以上の抽出物が安定で、皮膚細胞のグルタチオンレダクターゼの活性を増強させて、還元型のグルタチオンの生体濃度を高めることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明のメハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシン、コメ、センキュウ、ユリおよびシロキクラゲの中から選ばれる一種又は二種以上の抽出物を含有することを特徴とするグルタチオンレダクターゼ活性増強剤は、グルタチオンレダクターゼの活性を増強させて、還元型のグルタチオンの生体濃度を高める作用を有する。詳しくは、細胞機能の低下により生じる皮膚細胞へのメラニンの沈着およびしわやハリの低下などの老化症状の改善に有効なグルタチオンレダクターゼ活性増強剤に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるメハジキ(学名:Leonurus sibiricus L.)は、シソ科メハジキ属に属する草本で、本州、四国、九州、朝鮮及び中国から東南アジアにかけて山野の日当りの良い場所に自生する。メハジキの地上部の全草は益母草(ヤクモソウ)の名称で、また、成熟果実がじゅう蔚子(ジュウイシ)の名称として流通しているので使用できる。
【0010】
本発明で用いられるカンゾウ(学名:Glycyrrhiza uralensis)はマメ科カンゾウ属に属する草本で、アフリカ、ヨーロッパからアジア、オーストラリア、北米西部に分布する。根や走出茎(ストロン)が漢方薬で甘草と呼ばれ利用することができる。近縁のスペインカンゾウ(学名:Glycyrrhiza glabra)を用いてもよい。
【0011】
本発明で用いられるエゾウコギ(学名:Acanthopanax senticosus)はウコギ科ウコギ属に属する低木で、東アジアから東南アジア、フィリピンに分布する。生薬として流通する根皮などを利用することができる。
【0012】
本発明で用いられるサイシンは、ウマノスズクサ科のケイリンサイシン(学名:Asiasarum heterotropoides F.)またはウスバサイシン(学名:Asiasarum sieboldi F.)であり、根茎および根、または根つき全草を乾燥したもの(細辛)などを利用することができる。
【0013】
本発明に用いるコメは、イネ科に属するOryza sativa Lの果実であり、玄米や米ヌカなどを利用することができる。
【0014】
本発明で用いられるセンキュウ(学名:Cnidium officinale M.またはLigusticum chuaxiong H.)は、セリ科に属する草本で中国、日本に分布する。生薬として用いられる根茎を乾燥したもの(川きゅう)などを利用することができる。
【0015】
本発明に用いるユリは、ユリ科ユリ属に属し、例えばマドンナリリー(学名:Lilium candidum)またはハカタユリ(学名:Lilium brownii F.E.B.)、ヒメユリ(学名:Lilium concolor S.)、オニユリ(Lilium lancifolium T.)、ヤマユリ(学名:Lilium auratum L.)の球根を乾燥したもの(生薬名:百合)などを利用することができる。
【0016】
本発明で用いるシロキクラゲ(学名:Tremella fuciformis B.)は、シロキクラゲ科に属するキノコで、子実体、菌体などを利用することができる。
【0017】
また、本発明で使用するメハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシン、コメ、センキュウ、ユリおよびシロキクラゲの抽出物は、例えば、植物を抽出溶媒と共に浸漬または加熱した後、濾過し、必要ならば濃縮して得られる。抽出溶媒としては、例えば、水、低級1価アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)、炭化水素(ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)、アセトニトリル等があげられる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、水あるいは水溶性溶媒(水と任意の割合で混合可能な溶媒。例えば、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)のうち1種または2種以上の溶媒を用いるのがよい。抽出物はそのまま用いてもよいし、溶媒を一部、または全部留去して用いてもよい。
【0018】
本発明のグルタチオンレダクターゼ活性増強剤には、上記メハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシン、コメ、センキュウ、ユリおよびシロキクラゲの抽出物をそのまま使用しても良く、効果を損なわない範囲内で、通常の外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を配合することもできる。
【0019】
本発明に用いるグルタチオンレダクターゼ活性増強剤は、食品、化粧品、医薬部外品または医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては、例えば、錠菓、飲料、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、散剤、丸剤、錠剤、注射剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流エキス剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤などを含む)等が挙げられる。
【0020】
本発明に用いるメハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシン、コメ、センキュウ、ユリおよびシロキクラゲの抽出物の配合量は特に限定されないが、乾燥物として0.0001〜75重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.001〜30重量%である。0.0001重量%以下では効果が低く、また75重量%を超えても効果に大きな増強はみられにくく、効率的でない。また、添加の方法については、予め加えておいても製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【実施例1】
【0021】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量は重量%を示す。
【0022】
製造例1 メハジキのエタノール抽出物
益母草100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、メハジキのエタノール抽出物を7.5g得た。
【0023】
製造例2 カンゾウのエタノール抽出物
甘草100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、カンゾウのエタノール抽出物を6.0g得た。
【0024】
製造例3 エゾウコギのエタノール抽出物
エゾウコギの根皮の乾燥物100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、エゾウコギのエタノール抽出物を6.0g得た。
【0025】
製造例4 サイシンのエタノール抽出物
細辛100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、サイシンのエタノール抽出物を4.9g得た。
【0026】
製造例5 コメのエタノール抽出物
米ヌカの乾燥物100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、コメのエタノール抽出物を7.5g得た。
【0027】
製造例6 センキュウのエタノール抽出物
川きゅう100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、センキュウのエタノール抽出物を6.3g得た。
【0028】
製造例7 ユリのエタノール抽出物
マドンナリリーの球根の乾燥物100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、ユリのエタノール抽出物を5.4g得た。
【0029】
製造例8 シロキクラゲのエタノール抽出物
シロキクラゲの子実体の乾燥物100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、シロキクラゲのエタノール抽出物を3.4g得た。
【0030】
製造例9 メハジキの熱水抽出物
益母草20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してメハジキの熱水抽出物を2.2g得た。
【0031】
製造例10 カンゾウの熱水抽出物
甘草20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してカンゾウの熱水抽出物を1.0g得た。
【0032】
製造例11 エゾウコギの熱水抽出物
エゾウコギの根皮の乾燥物20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してエゾウコギの熱水抽出物を1.8g得た。
【0033】
製造例12 サイシンの熱水抽出物
細辛20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してサイシンの熱水抽出物を1.5g得た。
【0034】
製造例13 コメの熱水抽出物
米ヌカの乾燥物20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してコメの熱水抽出物を3.3g得た。
【0035】
製造例14 センキュウの熱水抽出物
川きゅう20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してセンキュウの熱水抽出物を1.8g得た。
【0036】
製造例15 ユリの熱水抽出物
マドンナリリーの球根の乾燥物20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してユリの熱水抽出物を0.3g得た。
【0037】
製造例16 シロキクラゲの熱水抽出物
シロキクラゲの子実体の乾燥物20gに4Lの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してシロキクラゲの熱水抽出物を1.5g得た。
【0038】
製造例17 メハジキの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
メハジキの全草の乾燥物100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、メハジキの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0039】
製造例18 カンゾウの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
カンゾウの葉の乾燥物100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、カンゾウの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0040】
製造例19 エゾウコギの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
エゾウコギの全草の乾燥物100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、エゾウコギの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0041】
製造例20 サイシンの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
細辛100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、サイシンの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0042】
製造例21 コメの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
米ヌカの乾燥物100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、コメの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0043】
製造例22 センキュウの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
川きゅう100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、センキュウの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0044】
製造例23 ユリの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
オニユリの全草の乾燥物100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、ユリの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0045】
製造例24 シロキクラゲの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
シロキクラゲの子実体の乾燥物100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、シロキクラゲの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明に係る実施例の処方を示す。
【0047】
処方例1 クリーム
処方 配合量(重量%)
1.メハジキのエタノール抽出物(製造例1) 0.5
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.1,3−ブチレングリコール 8.5
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.精製水 67.65
[製造方法]成分1〜9を加熱して混合し、70℃に保ち油相とする。成分11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0048】
処方例2 クリーム2
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をカンゾウのエタノール抽出物(製造例2)に置き換えたものをクリーム2とした。
【0049】
処方例3 クリーム3
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をエゾウコギのエタノール抽出物(製造例3)に置き換えたものをクリーム3とした。
【0050】
処方例4 クリーム4
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をサイシンのエタノール抽出物(製造例4)に置き換えたものをクリーム4とした。
【0051】
処方例5 クリーム5
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をコメのエタノール抽出物(製造例5)に置き換えたものをクリーム5とした。
【0052】
処方例6 クリーム6
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をセンキュウのエタノール抽出物(製造例6)に置き換えたものをクリーム6とした。
【0053】
処方例7 クリーム7
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をユリのエタノール抽出物(製造例7)に置き換えたものをクリーム7とした。
【0054】
処方例8 クリーム8
処方例1において、シロキクラゲのエタノール抽出物をシロキクラゲのエタノール抽出物(製造例8)に置き換えたものをクリーム8とした。
【0055】
比較例1 従来のクリーム
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物を精製水に置き換えたものを従来のクリームとした。
【0056】
処方例9 化粧水
処方 配合量(重量%)
1.メハジキの1,3−ブチレン
グリコール水溶液抽出物(製造例17) 0.1
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 0.1
11.精製水 84.47
[製造方法]成分2〜6及び11と、成分1及び7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0057】
処方例10 乳液
処方 配合量(重量%)
1.カンゾウの熱水抽出物(製造例10) 0.05
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水 73.15
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0058】
処方例11 軟膏
処方 配合量(重量%)
1.エゾウコギの1,3−ブチレン
グリコール水溶液抽出物(製造例19) 1.0
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0
4.流動パラフィン 5.0
5.セタノール 6.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
7.プロピレングリコール 10.0
8.精製水 65.9
[製造方法]成分2〜5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び6〜8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0059】
処方例12 ファンデーション
処方 配合量(重量%)
1.サイシンの1,3−ブチレン
グリコール水溶液抽出物(製造例20) 1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 1.0
(20E.O.)
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
10.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
11.ベントナイト 0.5
12.プロピレングリコール 4.0
13.トリエタノールアミン 1.1
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.二酸化チタン 8.0
16.タルク 4.0
17.ベンガラ 1.0
18.黄酸化鉄 2.0
19.香料 0.1
20.精製水 60.0
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分20に成分10をよく膨潤させ、続いて、成分1及び11〜14を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分15〜18を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分19を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0060】
処方例13 浴用剤
処方 配合量(重量%)
1.コメの熱水抽出物(製造例13) 5.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号(1) 0.05
4.香料 0.25
5.無水硫酸ナトリウム 44.7
[製造方法]成分1〜5を均一に混合し製品とする。
【0061】
処方例14 錠菓
処方 配合量(重量%)
1.センキュウの熱水抽出物(製造例14) 2.0
2.乾燥コーンスターチ 50.0
3.エリスリトール 40.0
4.クエン酸 5.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
6.香料 適量
7.水 適量
[製造方法]成分1〜4及び7を混合し、顆粒成形する。成形した顆粒に成分5及び6を加えて打錠する。1粒1.0gとする。
【0062】
処方例15 飲料
処方 配合量(重量%)
1.ユリの熱水抽出物(製造例15) 1.0
2.ステビア 0.05
3.リンゴ酸 5.0
4.香料 0.1
5.水にて全量を100とする
[製造方法]成分2及び3を少量の水に溶解する。次いで、成分1及び4、5を加えて混合する。
【0063】
処方例16 錠剤
処方 配合量(重量%)
1.シロキクラゲの熱水抽出物(製造例16) 10.0
2.トウモロコシデンプン 10.0
3.精製白糖 20.0
4.カルボキシメチルセルロース 10.0
5.微結晶セルロース 35.0
6.ポリビニルピロリドン 5.0
7.タルク 10.0
[製造方法]成分1〜5を混合し、次いで成分6の水溶液を結合剤として加えて常法により顆粒化した。これに滑沢剤として成分7を加えて配合した後、1錠100mgの錠剤に打錠した。
【0064】
処方例17 散剤
処方 配合量(重量%)
1.メハジキの熱水抽出物(製造例9) 10.0
2.トウモロコシデンプン 40.0
3.微結晶セルロース 50.0
[製造方法]上記成分を混合し、常法により散剤とした。
【0065】
処方例18 注射剤
処方 配合量(重量%)
1.カンゾウの熱水抽出物(製造例10) 1.0
2.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 3.7
3.ゴマ油 0.2
4.塩化ナトリウム 0.9
5.プロピレングリコール 4.0
6.リン酸緩衝液(0.1M、pH6.0) 10.0
7.蒸留水 80.2
[製造方法]成分1、2、3および成分5の半量を混合して約80℃で加温溶解し、これに成分4、6と成分5を予め溶解した成分7を約80℃に加温して加え全量を1000mLの水溶液とした。この水溶液を1mLのアンプルに分注して熔閉した後、加熱滅菌した。
【実施例3】
【0066】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例をあげる。
【0067】
実験例1 細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化試験
細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化効果を下記の条件にて測定した。
【0068】
コンフルエントな状態のヒト表皮角化細胞を、1μg/mLの試料を含むDMEM培地でさらに24時間培養した後、細胞を剥離し、1mMEDTAを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.5)1mLを加えて超音波破砕し、15,000rpmで15分間遠心分離を行い、上澄を試料溶液とした。試料溶液900μLに、9.5mM酸化型グルタチオン/リン酸緩衝溶液100μL及び2mMNADPH/リン酸緩衝溶液120μLを加え、340nmの吸光度の時間変化(φA340nm/min、3分間)を測定し、標準のグルタチオンレダクターゼ0,5,10および20mU/mLから作成した検量線より試料溶液のグルタチオンレダクターゼ活性を算出した。同時に、試料溶液のタンパク濃度を測定し、単位タンパク当りのグルタチオンレダクターゼ活性を算出した。試料未添加の細胞のグルタチオンレダクターゼ活性をコントロールとし、コントロールを100としたときの試料添加のグルタチオンレダクターゼ活性の値を細胞内グルタチオンレダクターゼ活性として算出した。
【0069】
これらの試験結果を表1に示した。その結果、メハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシン、コメ、センキュウ、ユリおよびシロキクラゲの抽出物には優れた細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化作用が認められた。また、製造例9〜24の抽出物の試験を行ったところ、いずれも優れた細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化作用を示した。
【0070】
【表1】

【0071】
実験例2 細胞内還元型グルタチオン比の増加作用の評価
細胞内還元型グルタチオン比の増加作用を下記の条件にて測定した。
【0072】
コンフルエントな状態になった表皮角化細胞を1μg/mL濃度の試料を添加したEagle’s MEM培地にてさらに24時間培養した後、細胞を剥離し、1mMEDTAを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.5)0.5mLを加えて超音波破砕し、15,000rpmで15分間遠心分離を行い、上清を試料溶液とした。96wellプレートを用い試料溶液100μLに0.5mMNADPH/リン酸緩衝溶液と1U/mLグルタチオンレダクターゼ/リン酸緩衝溶液の1:1混合液25μLを添加し、室温で10分間反応させた。さらに10mM5,5’−dithiobis−2−nitrobenzoic acid/リン酸緩衝溶液25μLを添加し、室温で10分間反応させた後、405nmにおける吸光度を測定した。標準の還元型グルタチオン(GSH)から作成した検量線より試料溶液の総グルタチオン量を算出した。また、試料溶液150μLに1M2−vinylpyridine2.5μLを添加し、室温で1時間反応させGSHを除いた後、同様な反応により酸化型グルタチオン(GSSG)量を求めた。同時に、試料溶液のタンパク濃度を測定し、単位タンパク当りの総グルタチオン量とGSSG量からGSH量を算出し、GSH/GSSG比を求めた。試料未添加の細胞のGSH/GSSG比をコントロールとし、コントロールを100としたときの試料添加のGSH/GSSG比の値を細胞内還元型グルタチオン比として算出した。
【0073】
これらの試験結果を表2に示した。その結果、メハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシン、コメ、センキュウ、ユリおよびシロキクラゲの抽出物には優れた細胞内還元型グルタチオン比の増加作用が認められ、細胞の還元型グルタチオン割合を増加させる作用が認められた。また、製造例9〜24の抽出物の試験を行ったところ、いずれも優れた細胞内還元型グルタチオン比の増加作用を示した。
【0074】
【表2】

【0075】
実験例3 使用試験
処方例1〜8のクリーム及び比較例1の従来のクリームを用いて、しわ、シミに悩む女性30人(20〜45才)を対象に6ヶ月間の使用試験を行った。使用後、しわ、シミの改善についてのアンケート調査を行って、皮膚性状の改善効果を判定した。アンケートの評価基準は、有効なものを「優」、やや有効なものを「良」、わずかに有効なものを「可」、無効なものを「不可」として評価した。
【0076】
これらの結果を表3に示した。処方例1〜8のグルタチオンレダクターゼ活性増強剤を含む皮膚外用剤は優れたしわ、シミの改善効果を示した。なお、試験期間中皮膚トラブルは一人もなく、安全性においても問題なかった。
【0077】
【表3】

【0078】
処方例9〜17の化粧水、乳液、軟膏、ファンデーション、浴用剤、錠菓、飲料、錠剤および散剤の使用試験を行ったところ、いずれも安全で優れたしわ、シミの改善効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の活用例として、食品、化粧品、医薬部外品または医薬品のいずれにも用いることができる。その剤型としては、錠菓、飲料、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、散剤、丸剤、錠剤、注射剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流エキス剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤などを含む)等が挙げられ、皮膚細胞の還元能力の低下に由来する皮膚のしわ、シミの防止等の改善効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシン、コメ、センキュウ、ユリおよびシロキクラゲの中から選ばれる一種又は二種以上の抽出物を含有することを特徴とするグルタチオンレダクターゼの活性増強剤。
【請求項2】
メハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシン、コメ、センキュウ、ユリおよびシロキクラゲの中から選ばれる一種又は二種以上の抽出物を含有することを特徴とする還元型グルタチオン生成促進剤。
【請求項3】
請求項1記載のグルタチオンレダクターゼの活性増強剤を含む還元型グルタチオンの生成促進による抗酸化剤。
【請求項4】
請求項1記載のグルタチオンレダクターゼの活性増強剤を含む還元型グルタチオンの生成促進による美白用組成物。
【請求項5】
請求項1記載のグルタチオンレダクターゼの活性増強剤を含む還元型グルタチオンの生成促進による老化防止用組成物。

【公開番号】特開2006−111545(P2006−111545A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298514(P2004−298514)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】