説明

グルタチオン増加用組成物

【課題】食品、飼料、化粧品、医薬品に添加することにより、それを利用するヒトまたは動物の生体内グルタチオン濃度を増加させることができる経口摂取用の組成物を提供する。
【解決手段】乳酸菌含有物を有効成分とする経口摂取用組成物を提供するものであり、この組成物を摂取することにより、組織内/細胞内のグルタチオン濃度を維持あるいは増加させることができ、これによって生活習慣病やその前駆状態などに深く関わっている酸化ストレスを防御あるいは緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌含有物を有効成分とし、生体内グルタチオン濃度を増加させることが可能な経口摂取用組成物に関するものである。更に、詳細には、本発明の有効成分である乳酸菌を食品、飼料、化粧品、医薬品に添加することにより、それを利用するヒトまたは動物の生体内グルタチオン濃度を上昇させる作用を有する経口摂取用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会生活の急激な変化や高齢化が進む中、糖尿病およびその合併症、高血圧、動脈硬化性疾患、アルツハイマー病など、生活習慣病をはじめとする疾患の増加が危惧されている。これらの数多くの疾患の成立、発症、進展などのプロセスに、酸化ストレスが関与していることが明らかにされてきた。
【0003】
その他にも、生体内酸化により引き起こされると考えられている疾患としては、以下のものが知られている。すなわち、脳・神経系疾患としては、脳浮腫、外傷性てんかん、脳虚血、パーキンソン病、脊髄損傷等が、目の疾患としては、白内障、網膜変性、未熟児網膜症等が、呼吸器系疾患としては、気管支喘息、肺気腫、肺繊維症、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、未熟児呼吸窮迫症候群(IRDS)等が、循環器系疾患としては、心筋梗塞等が、消化器系疾患としては、潰瘍性大腸炎、ストレス性胃潰瘍、すい炎、消化管粘膜障害等が、皮膚疾患としては、紫外線障害、アトピー性皮膚炎、火傷、凍傷、床ずれ等が、腎臓疾患としては、腎炎、腎不全等が、その他の疾患としては、ガン、膠原病、リウマチ、自己免疫疾患、ベーチェット病等が挙げられる。また、老化、老化による皮膚のしわや痴呆症も、生体内酸化によると考えられている。
【0004】
そうした生体内酸化を防止又は低減する物質として、アスコルビン酸(ビタミンC)、α−トコフェロール(ビタミンE)等の天然抗酸化剤や、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)などのフェノール系合成抗酸化剤が知られている。また、乳酸菌抽出物にも抗酸化効果が見出されており、ストレプトコッカス・ラクチス・リスター菌体消化物の抗酸化作用(特許文献1)、ラクトバチルス・ガセリ菌体およびその培養物の抗酸化作用(特許文献2)として開示されている。
【0005】
しかしながら、これら抗酸化剤による疾患の治療の大きな問題は、有効性を示すことのできる投与量が多く、このような大量の投与では副作用がより高い確率で発生することである。これらの抗酸化剤は、酸化ストレスを低減することにより、疾患の発生、増悪が抑制できる事が期待されているが、上記のような副作用を生じることがあるので、安全性が高く、かつ汎用性の高い生体内酸化ストレス低減作用物質(抗酸化物質)の開発が望まれてきた。
【0006】
一方、酸化ストレス状態を評価する指標として生体内グルタチオン濃度低下の度合を測定することが知られている。グルタミン酸、システイン、グリシンからなるペプチドであるグルタチオンは、細胞内に1〜10mMと高濃度で含有される多機能性の生体成分であり、生体内の酸化還元系に関与し生体内で活性酸素種を捕捉する抗酸化作用を有している。さらに、グルタチオンはグルタチオンペルオキシダーゼの基質として過酸化水素や過酸化脂質の消去に重要な役割を果たし、グルタチオン−S−トランスフェラーゼの基質として解毒代謝にも関わっている。また、加齢に伴う老化においても、組織内/細胞内のグルタチオン濃度の低下が認められることから、生体内のグルタチオン濃度を高めることが、多くの酸化ストレスにより引き起こされる疾患の予防、治療や、老化の予防に有意義であると考えられる。
【0007】
生体内グルタチオン濃度を高める方法として、グルタチオンを経口摂取することが容易に考えられるが、消化管内や肝臓においてグルタチオン分解酵素(transpeptidase)により速やかに分解されてしまうことや、高用量のグルタチオンを摂取しても血中グルタチオン濃度の増加が認められないことなどから、経口摂取したグルタチオンが直接、生体組織内のグルタチオン増加には寄与しないことが知られている(非特許文献1)。
【0008】
このように、グルタチオンそのものを投与しても有効でないことが指摘されていることを受けて、これを解決することを目的として、次のような医薬品開発の試みが挙げられる。すなわち、内因性グルタチオンの生合成を促進する化合物であるγ−L−ピログルタミル−L−システインのアシル誘導体は、アルコール多飲、生体異物、放射線障害、肝疾患によって起こる細胞内の酸化状態、医薬やその他の化合物による中毒、ならびに、急性及び慢性の神経疾患、免疫機構の機能異常など、酸化的な組織障害、特に過剰なフリー・ラジカルによる障害の関わる病的状態のようなグルタチオンの低下・欠乏によって起こる様々な疾患の治療に有効である旨の開示がある(特許文献3)。
【0009】
また、特許文献4には、γ−L−グルタミル−L−システインメチルエステルが組織又は細胞内グルタチオン濃度を上昇させる化合物として、白内障、肝疾患および腎疾患をはじめとする各疾患の治療および予防に有効であることが開示されている。
【0010】
さらに、S−低級脂肪酸グルタチオン誘導体が抗炎症、抗アレルギー、肝障害抑制剤(特許文献5及び特許文献6)、糖含有グルタチオン誘導体が肝臓保護剤(特許文献7)として開示されているなど組織グルタチオンを増加させることにより広汎な疾患に対する治療および予防に有効であることが示されている。
【0011】
ただし、このような治療を主たる目的とする試みは、緊急を要する、あるいは重篤な場合の対処法である。生活の質(QOL)の向上を目指した日常的な健康管理の観点からみれば、身近な食品を素材として、低レベルとなった組織内グルタチオンの上昇をはかり、健康を維持できる、安全な経口摂取組成物を開発することが急務とされている。
【0012】
天然物由来の化合物で、細胞内グルタチオン濃度を増加させるものとしては、シリマリン(非特許文献2)、シアノヒドロキシブテン(非特許文献3)、アポシニン(非特許文献4)、ルブロフサリン配糖体(特許文献8)などがすでに知られている。
【0013】
これに対して、乳酸菌の抽出物にも抗酸化効果が見出されている。すなわち、ストレプトコッカス・ラクチス・リスター菌体消化物の抗酸化作用(特許文献9)、ラクトバチルス・ガセリ菌体およびその培養物の抗酸化作用(特許文献10)として開示されているが、このような乳酸菌の抽出物について、グルタチオン濃度上昇効果はこれまで知られていない。
【0014】
天然物由来の生体内グルタチオン増加剤に関しても、様々な問題が存在する。従来、漢方やハーブ又は民間薬として知られているような植物の抽出物は、グルタチオン増加以外の薬効を有し、その薬効による副作用が発現することがあった。このようなことから、従来より食品として利用されてきた安全なグルタチオン増加剤が望まれている。また、従来の天然グルタチオン増加剤は、抽出目的で栽培され、使用されるため、コストが高いという問題もあった。
【特許文献1】特開平3−4768号公報
【特許文献2】特開2003−253262号公報
【特許文献3】WO94/12527号パンフレット
【特許文献4】特開平1−26516号公報
【特許文献5】WO91/12262号パンフレット
【特許文献6】WO91/16337号パンフレット
【特許文献7】特開平9−25292号公報
【特許文献8】特開平2004−2231号公報
【特許文献9】特開平3−4768号公報
【特許文献10】特開2003−253262号公報
【非特許文献1】Eur. J. Clin. Pharmacol. 43, 667, 1992
【非特許文献2】Planta Med. 55, 420, 1989
【非特許文献3】Toxicol. Appl. Pharmacol. 123, 257, 1993
【非特許文献4】FEBS Lett. 443, 235, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、安全性の高い身近な食品素材を使用して、細胞内のグルタチオン濃度を増加させることにより、グルタチオンの欠乏によっておこる各種臓器の機能低下や種々の疾患に対する予防と治療に効果的であり、かつ、安全性が高く、しかも低コストで製造できる組織内又は細胞内グルタチオン増加用の経口摂取用組成物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の目的に適う細胞内グルタチオン濃度を増加させる有効成分を、食経験を有する素材を用いて広く探索していたところ、乳酸菌含有物が有効な効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、乳酸菌含有物を摂取することにより、組織内/細胞内のグルタチオン濃度を維持あるいは増加させることができ、これによって生活習慣病やその前駆状態などに深く関わっている酸化ストレスを防御あるいは緩和することができる。すなわち、この酸化ストレスに起因する各種の疾患の予防、治療に有効であり、かつ、老化防止にも有効である。
【発明の実施の形態】
【0018】
本発明のグルタチオン増加用経口摂取用組成物においては、乳酸菌含有物を有効成分として用いるものである。上記乳酸菌含有物には、乳酸菌菌体、乳酸菌懸濁液、乳酸菌培養物(菌体、培養上清、培地成分を含む)、乳酸菌培養液(菌培養物から固形分を除去したもの)、乳酸菌発酵物(乳酸菌飲料、酸乳、ヨーグルト、果菜発酵物、穀類発酵物等)を挙げることができる。また、上記乳酸菌は、任意の培地を用いて公知の条件で培養されたもので良く、特殊な培養法によるものである必要はない。また、この菌体としては、生菌体の他、死菌体、菌体破壊物、菌体抽出物等の何れでも使用できる。
【0019】
乳酸菌は、古来より食品の製造に広く利用されており、乳酸菌飲料、発酵乳、チーズ、発酵バター等の乳製品、漬物やキムチといった農産食品、発酵ソーセージや発酵サラミ等の畜肉製品を製造する際に用いられている。また、パンのスターターとしても利用されている。さらに最近では、乳酸菌の有する整腸効果等の生理効果が次々と明らかとなり、乳酸菌の菌体自体や乳酸菌培養物等を健康食品や医薬品等の素材として利用するための開発がなされている。このように、乳酸菌の利用は多岐にわたっており、特に、本発明の実施例で使用したラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)S−PT84株は、京都の伝統的な漬物の1つである「しば漬け」から分離した乳酸菌の一種で、免疫賦活作用、抗アレルギー作用等の免疫調節作用を有することが明らかとなっている。
【0020】
本発明で使用できる乳酸菌の一例としては、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ロイコノストック属(Leuconostoc)などを挙げることが出来る。
【0021】
本発明の有効成分は、グルタチオン増加作用を有する経口摂取用組成物として使用され、特に、薬学的に製剤化された組成物として用いることが好ましい。例えば、飲食品、医薬品等を挙げることができる。飲食品に用いる場合には、グルタチオン増加作用を有する健康食品、特定保健用食品、もしくは栄養補助食品として実施することが好適である。製剤化に際しては、公知の製薬上、通常使用される添加物を配合できる。これら添加物としては、甘味料、酸味料、安定化剤、保存料、着色料、香料、ビタミン等が含まれ、これら添加物を適宜配合し、混合し、定法により、錠剤、粒状、顆粒状、粉末状、カプセル状、液状、ゼリー状、クリーム状、飲料、調味料、加工食品等の形態で提供することが可能である。
【0022】
また、医薬品として用いる場合には、治療目的や投与経路等に応じて剤型を選択することができる。例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の経口製剤の他に、座剤、注射剤等を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、医薬品としての製剤化のために、必要に応じて充填剤、増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤等の通常使用される希釈剤あるいは賦形剤を用いることができる。また、この医薬製剤中に着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等の添加剤や、その他の有効成分である医薬品を医薬製剤中に含有させてもよい。本医薬品の投与経路としては、例えば、経口投与が簡便であるが、直腸投与、経腸投与等を挙げることもでき、特に限定されるものではない。
【0023】
本発明の組成物には、有効成分である乳酸菌含有物の他に、栄養素、ビタミン類、抗酸化剤、オリゴ糖、食物繊維、アミノ酸、脂肪酸、酵素、エネルギー供給物質、等を配合して、複合的な効果を図ることもできる。
【0024】
本発明の経口摂取用組成物は、食事前後、食中、食間のいずれに摂取しても良く、また摂取の頻度は特に制限はないが、通常、1日に1〜3回、好ましくは、1日に3回摂取する。摂取量は、特に制限はないが、通常、成人1日当り0.02mg〜50,000mg、好ましくは0.2〜200mgの有効成分を摂取できれば良い。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]イン・ビトロ刺激による細胞内還元型グルタチオン増加効果
乳酸菌3種類(ラクトバシラス・ペントーサス又はラクトバシラス・カゼイ又はラクトバシラス・パラカゼイ、うちラクトバシラス・ペントーサスは、独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに寄託されているFERM ABP−10028である(Lactobacillus pentosus SAM2336、S−PT84)。)をMRS培地で培養し、菌体を回収した。菌体を洗浄した後、蒸留水に懸濁して加熱殺菌(95℃、5分)し、凍結乾燥後の菌体を死菌体とした。
【0026】
細胞内還元型グルタチオン増加効果は、マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を用いて測定した。具体的には、BALB/Cマウス(10週齢・雄)より骨髄細胞を採取し、5%COインキュベーターで、10%FBSを含むRPMI培地を用いて5日間培養し、未成熟樹状細胞へ分化させた。培養開始時より、20ng/ml顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)と20ng/mlインターロイキン3(IL−3)とを添加して、必要に応じ培地の交換を行った。未成熟樹状細胞の1×10細胞(1mL)を12穴プレートに撒き込んだ後に、各ウェルに乳酸菌死菌体(0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/ml)を添加し、48時間後にラバーポリスマンを用いて細胞を回収した。PBSにて洗浄した細胞1×10個に対して、10mmol/lのHClを80μl添加し、凍結と溶解を2回繰り返し細胞膜を破壊した。さらに、5%スルホサリチル酸(SSA)を20μl添加し、8,000×gで10分間遠心して上清を採取し、グルタチオン濃度測定サンプルとした。還元型グルタチオン濃度は、Total Glutathione Quantification Kit(Dojindo社製)を用いた酵素リサイクリング法によって測定した。
【0027】
還元型グルタチオン濃度の測定結果を図1に示した。これにより、乳酸菌の細胞内還元型グルタチオン濃度を増加させる効果が認められた。
[実施例2]経口摂取による組織内/細胞内還元型グルタチオン増加効果
ラクトバシラス・ペントーサス S−PT84株(死菌体)を0.2mg/day相当、2mg/day相当、または、20mg/day相当となるように、飲水に懸濁し、それぞれC57BL/6マウス(7週齢・雄)5匹ずつに自由摂取させた。また、S−PT84株を摂取させない対照群(5匹)を設けた。摂取開始3日後に4.05%チオグリコレートを腹腔内投与し、さらに4日後に頚動脈より採血した後、腹腔マクロファージを回収し、さらに肝臓を摘出した。血液から遠心分離により血清(100μl)を採取し、5%SSAを50μl添加し、8,000×gで10分間遠心して上清を採取し、還元型グルタチオン濃度測定サンプルとした。肝臓は、10倍量の5%SSA中でホモジナイズし、8,000×gで10分間遠心して上清を採取し、還元型グルタチオン濃度測定サンプルとした。腹腔マクロファージは、PBSにて洗浄した後、1×10細胞に対して、10mmol/lのHClを80μl添加し、凍結と溶解を2回繰り返し細胞膜を破壊した。さらに、5%SSAを20μl添加し、8,000×gで10分間遠心して上清を採取し、還元型グルタチオン濃度測定サンプルとした。それぞれ、血清、肝臓、腹腔マクロファージ細胞内還元型グルタチオン濃度は、Total Glutathione Quantification Kit(Dojindo社製)を用いた酵素リサイクリング法によって測定した。
【0028】
還元型グルタチオン濃度の測定結果を図2、図3、図4に示した。これらの図から明らかなように、対照群と比較して、S−PT84摂取群において組織内/細胞内グルタチオン濃度が上昇し、その効果は、2mg/day相当摂取群において、最も顕著であった。
[実施例3]拘束ストレスに伴う組織内/細胞内還元型グルタチオン低下抑制効果
C57BL/6マウス(7週齢・雄)9匹を各群の平均体重がほぼ同じになるように4群に分けた。群構成は、対照群(3匹)、ストレス負荷群(3匹)、S−PT84株摂取+ストレス負荷群(3匹)とした。ラクトバシラス・ペントーサス S−PT84株S−PT84株摂取群にはS−PT84株(死菌体)を7日間飲水(2mg/day相当)にて自由に摂取させた。摂取開始4日目に4.05%チオグリコレートを腹腔内投与し、腹腔マクロファージを誘導した。摂取開始7日目に、ストレス負荷群およびS−PT84株摂取+ストレス負荷群を1度水浸させた後、先端に空気穴を施した50mLのポリエチレンチューブに入れ、24時間拘束した。対照群は24時間、絶水、絶食とした。その後、動物の頚動脈より採血し、腹腔マクロファージを回収した。血清、腹腔マクロファージ細胞内還元型グルタチオン濃度は、実施例2と同じ方法で測定した。
【0029】
結果を図5、6に示すように、拘束ストレスを与えると、血清中および腹腔マクロファージ細胞内いずれの還元型グルタチオン濃度も低下した。これに対して、S−PT84株摂取群+ストレス負荷群では対照群と同様の還元型グルタチオン濃度が維持され、ストレス負荷群に比較し有意に改善することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は乳酸菌含有物を有効成分とする経口摂取用組成物を提供するものであり、この組成物を摂取することにより、組織内/細胞内のグルタチオン濃度を維持あるいは増加させることができ、これによって生活習慣病やその前駆状態などに深く関わっている酸化ストレスを防御あるいは緩和することができる。すなわち、本発明の組成物は、飲食物、食品添加物、健康食品、または医薬品として、この酸化ストレスに起因する各種の疾患の予防、治療に有効で、かつ、老化防止にも有効である、安全性の高い組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】イン・ビトロ刺激によるマウス樹状細胞内グルタチオン濃度増加を示すグラフである。
【図2】S−PT84を経口摂取させた後の血清中グルタチオン含量を示すグラフである。
【図3】S−PT84を経口摂取させた後の肝臓グルタチオン含量を示すグラフである。
【図4】S−PT84を経口摂取させた後のマクロファージ細胞内グルタチオン含量を示すグラフである。
【図5】S−PT84経口摂取が、拘束ストレスによる血清中グルタチオンレベルの低下に対し、抑制的に作用することを示すグラフである。
【図6】S−PT84経口摂取が、拘束ストレスによるマクロファージ細胞内グルタチオンレベルの低下に対し、抑制的に作用することを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌含有物を有効成分とする生体内グルタチオン濃度を維持または増加させるための経口摂取用組成物。
【請求項2】
乳酸菌含有物が、乳酸菌菌体、乳酸菌懸濁液、乳酸菌培養物、乳酸菌培養液、又は乳酸菌発酵物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成人1日当たりの乳酸菌の摂取量が0.02mg〜50,000mgとなることを特徴とする請求項1又は2に記載の経口摂取用組成物。
【請求項4】
成人1日当たりの摂取量が0.2mg〜200mgとなることを特徴とする請求項3に記載の経口摂取用組成物。
【請求項5】
グルタチオンの欠乏によって起こる疾患の予防、又は治療用である請求項1〜4の何れかの項に記載の経口摂取用組成物。
【請求項6】
酸化的ストレスによって起こる疾患の予防、又は治療用である請求項1〜4の何れかの項に記載の経口摂取用組成物。
【請求項7】
老化の予防用である請求項1〜4の何れかの項に記載の経口摂取用組成物。
【請求項8】
飲食物、食品添加物、健康食品又は医薬品である請求項1〜7の何れかの項に記載の経口摂取用用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−126399(P2007−126399A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320472(P2005−320472)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】