説明

グルタミンフルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)インヒビター

1及びR2が明細書で示されている、式(I)の化合物が提供される。化合物は、II型真性糖尿病の処置において有用性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
糖尿病は、末梢インスリン抵抗性、グルコース産生の増加及びインスリン分泌濃度の減少により特徴付けられる。一般に、血清中のグルコース濃度は上昇する。更に、血清グルコース濃度は、食事の摂取後に長時間上昇し、ゆっくりと正常に戻る。グルコース濃度の増加の結果は良く知られているが、これらの現象の基礎となる生化学的及び分子構造的機構は、依然として明確に定義されていない。遊離脂肪酸、トリグリセリド及び他の要因も直接的にグルコース濃度の増加をもたらすことができる。
【0002】
ヘキソサミン経路は、インスリン抵抗性、グルコース産生の増加及びインスリン分泌の減少に寄与することができる、生化学的な経路の一つとして連結している。ヘキソサミン経路は、UDP−GlcNAcの合成に関与する。グルコースは、順次、フルクトース−6−リン酸、グルコサミン−6−リン酸に変換され、そして最後にUDP−GlcNAcに変換される。いったん、UDP−GlcNAcが合成されると、その多くが主要な細胞構成成分である、多様なグルコ含有高分子に組み込まれる。加えて、UDP−GlcNAcは、細胞質タンパク質、核タンパク質、膜タンパク質及び転写因子を含む、細胞中の多様なタンパク質へのGlcNAc残基の移動を触媒する、酵素OGT、O連結GlcNAcトランスフェラーゼ(O-linked GlcNAc transferase)のための基質である。その際、これらのタンパク質の活性は、有意に調節される。この経路の御律速酵素は、グルタミンフルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)であり、これは、フルクトース−6−リン酸の、グルコサミン−6−リン酸へのアミド移動及び異性化を触媒する。GFATトランスジェニックマウスがインスリン抵抗性であるので、GFATは、糖尿病の症状の進展の原因であると指摘されている。インスリン抵抗性をもたらす生化学的経路は、PKCの活性化、膜構成成分の変質、変質される転写活性、その外に、未だに解明されていない他の生化学的機序を含む。
【0003】
GFAT濃度は、II型真性糖尿(diabetes mellitus:T2DM)及びげっ歯類T2DMモデルで上昇する。GFATトランスジェニックマウス(筋肉、肝臓及び膵臓に特異性)は、インスリン抵抗性及び高インシュリン性の両方である。グルコサミンとヘキソサミン経路の生成物は、インスリン抵抗性、肝臓糖産生の増加及びインスリン分泌の減少を引き起こす。GFATは、T2DM腎臓合併症に主要な役割を果たし得る。GFATはヘキソサミン経路の律速酵素であり、GFAT酵素活性の減少は、グルコースの低下をもたらし、糖尿病の処置に有益であるはずである。
【0004】
GFATインヒビターの既知の部類は、基質様又は非基質様であり、可逆的又は非可逆的(共有結合的)機序のいずれかにより阻害すると考えられる。GFATの2つの基質は、糖類、フルクトース−6−リン酸及びアミノ酸、グルタミンである。フルクトース−6−リン酸様インヒビターは、:N−ヨードアセチルグルコサミン−6−リン酸(S.L. Bearne, J. Biol. Chem., 271, 3052-3057 (1996))及び2−アミノ−2−デオキシグルシトール−6−リン酸(M. -A. Badet-Denisot, C. Leriche, F. Massiere, and B. Badet, Bioorg. Med. Chem. Letters, 5, 815-820 (1995))を含む。グルタミン様又はグルタミン系インヒビターは:グルタメート−γ−セミアルデヒド(S. L. Bearne and R. Wolfenden, Biochem., 34, 11515-11520 (1995))、L−γ−グルタミル−2−〔((p−ジフルオロメチル)フェニル)チオ〕−グリシン(F. Massiere, M. -A. Badet-Denisot, L. Rene, and B. Badet, J. Amer. Chem. Soc., 119, 5748-5749 (1997))、アンチカプシン(anticapsin)(H. Chmara, J. Gen. Microbiol., 131, 265-271 (1985))、6−ジアゾ−5−オキソ−ノルロイシン(DON)、アゼセリン及びN3−ハロアセチル−L−2,3−ジアミノプロパン酸(ここで、ハロ=I、Br、及びCl)(S. Milewski, H. Chmara, R. Andruszkiewicz, and E. Borowski, Biochim. Biophys. Acta, 1115, 225-229 (1992))。
【0005】
パパベラルジン(CAインデックス名称:メタノン(6,7−ジメトキシ−1−イソキノリニル)(3,4−ジメトキシフェニル)−(9C1))は、心臓病の処置における潜在的な有用性を示唆する特性を示す。
(Anselmi, Elsa, et al., "Selective inhibition of calcium entry induced by benzylisoquinolines in rat smooth muscle", J. Pharm. Pharmacol. (1992) 44(4), 337-43; Markwardt, Fritz, et al., "Influence of 6,7-dimethoxyisoquinoline derivatives on the function of thrombocytes", Acta Biologica et Medica Germanica (1969) 23(2), 295-306)。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、式(I):
【0007】
【化11】

【0008】
〔式中、R1は、−COOH、低級アルキル−COOH、−低級アルコール、−CH2OCH3、−CH2NH2、−CH2NHSO27、−C(=O)R8、−CNHCH2CH2−R8、−C(=NH)−R8、−(CH2nNHC(=O)R9、−(CH2mC(=O)N(R11)(R12)、−C(=NH)−R13又は−(CH2n−R14であり;
2は、下記式:
【0009】
【化12】

【0010】
であり、
ここで、
Xは、−CH又は−Nであり;
3、R4、R5及びR6は、それぞれ、−H、−低級アルキル、−N(CH32、−N(CH3)CH2CH3、−N(CH2CH3)CH2CH3、−ハロ、−O−低級アルケン、−低級アルコキシ、−O−低級アルコール及び−O(CH2n−シクロアルキルからなる群より選択されるか;または
ここで、R5及びR6は、隣接する環炭素原子の置換基であり、場合により、R5及びR6は、それらが結合しているC原子と一緒になって、5員又は6員飽和炭素環を形成し;
7は、−CF3、−低級アルキル、−CH2Cl、−CH2CF3又は−R8であり;
8は、N、O、及びSから選択される1個のヘテロ原子を含有する、5員又は6員の、飽和の、置換又は非置換の複素環であり、ここで、置換環は、−OH又は−フェニルで置換されている複素環であり;
9は、−低級アルキル、−低級アルコキシ又は−(CH2n10であり;
10は、N及びOから選択される1又は2個のヘテロ原子を含有する、5員又は6員の、飽和又は不飽和の複素環であり;
11は、−H又は−CH3であり;
12は、−H、−低級アルキル、−C≡N、−OH、−低級アルコキシ又は−CH2COOCH2CH3であり;
13は、−低級アルコキシ−NH2又は−N−低級アルキルであり;
14は、ヘテロ原子がN、O及びSから選択される、1〜4個のヘテロ原子を含有する、飽和又は不飽和の、5員の、置換又は非置換の複素環であり、ここで、置換環は、=Oにより1又は2個の環炭素において置換されているか、又は−低級アルコール若しくは−低級アルキルにより環Nにおいて置換されている複素環であり;
mは、0、1又は2であり;
nは、0又は1である〕
で示される化合物、又は
薬学的に許容されうる、その塩又はそのエステルを提供する。
【0011】
本発明の化合物は、II型糖尿病を処置するために使用され得るGFATインヒビターである。
【0012】
[発明の詳細な説明]
本発明は、式(I):
【0013】
【化13】

【0014】
〔式中、R1は、−COOH、低級アルキル−COOH、−低級アルコール、−CH2OCH3、−CH2NH2、−CH2NHSO27、−C(=O)R8、−CNHCH2CH2−R8、−C(=NH)−R8、−(CH2nNHC(=O)R9、−(CH2mC(=O)N(R11)(R12)、−C(=NH)−R13又は−(CH2n−R14であり;
2は、下記式:
【0015】
【化14】

【0016】
であり、
ここで、
Xは、−CH又は−Nであり;
3、R4、R5及びR6は、それぞれ、−H、−低級アルキル、−N(CH32、−N(CH3)CH2CH3、−N(CH2CH3)CH2CH3、−ハロ、−O−低級アルケン、−低級アルコキシ、−O−低級アルコール及び−O(CH2n−シクロアルキルからなる群より選択されるか;又は
ここで、R5及びR6は、隣接する環炭素原子の置換基であり、場合により、R5及びR6は、それらが結合しているC原子と一緒になって、5員又は6員飽和炭素環を形成し;
7は、−CF3、−低級アルキル、−CH2Cl、−CH2CF3又は−R8であり;
8は、N、O、及びSから選択される1個のヘテロ原子を含有する5員又は6員の、飽和の、置換又は非置換の複素環であり、ここで、置換環は、−OH又は−フェニルで置換されている複素環であり;
9は、−低級アルキル、−低級アルコキシ又は−(CH2n10であり;
10は、N及びOから選択される、1又は2個のヘテロ原子を含有する、5員又は6員の、飽和又は不飽和の複素環であり;
11は、−H又は−CH3であり;
12は、−H、−低級アルキル、−C≡N、−OH、−低級アルコキシ又は−CH2COOCH2CH3であり;
13は、−低級アルコキシ、−NH2又は−N−低級アルキルであり;
14は、ヘテロ原子がN、O及びSから選択される、1〜4個のヘテロ原子を含有する飽和又は不飽和の、5員の、置換又は非置換の複素環であり、ここで、置換環は、=Oにより1又は2個の環炭素において置換されているか、又は−低級アルコール若しくは−低級アルキルにより環Nにおいて置換されている複素環であり;
mは、0、1又は2であり;
nは、0又は1である〕
で示される化合物、又は
薬学的に許容されうる、その塩又はそのエステルを提供する。
【0017】
本発明の化合物は、II型糖尿病を処置するために使用され得るGFATインヒビターである。
【0018】
本明細書で使用される時、下記の用語は、本発明を記述するために使用される、種々の用語の範囲及び意味を示す。用語「低級」は1〜6個の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子からなる基を意味するために使用される。
【0019】
「シクロアルキル」は、3〜7個の炭素原子を含む、非芳香族の、部分的又は完全に飽和される環状炭化水素基を意味する。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含む。
【0020】
用語「ハロゲン」及び用語「ハロ」又は「ヘテロ原子」は、特に記述のない限り、全4種のハロゲン、すなわち、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を示す。
【0021】
「低級アルキル」は、1〜7個の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有する、直鎖と分岐鎖の両方のアルキル基を含む。典型的な低級アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、2−ブチル、ペンチル及びヘキシルを含む。別の官能基に結合している場合、本明細書で使用される低級アルキルは、二価、例えば、−低級アルキル−COOHであり得る。
【0022】
「低級アルコキシ」は、式:−O−低級アルキルの基を意味し、ここで、用語「低級アルキル」は、前に与えられる意味を有する。典型的な低級アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ及びtert−ブトキシを含む。
【0023】
「低級アルコール」は、−低級アルキルを意味し、ここで、水素のうちの少なくとも1つが、末端を含む任意の部位でヒドロキシにより置換されている。典型的な低級アルコール基は、エタノール、イソプロパノール及びn−プロパノールを含む。
【0024】
「低級アルケン」は、少なくとも3個のC原子を有する、−低級アルキルを意味し、ここで、−低級アルキルの少なくとも第2の炭素から出発する、2個の炭素原子の間の結合のうちの少なくとも1つは、二重結合を有し、これらのCのそれぞれの上の、少なくとも1個のH原子は、存在しない。したがって、低級アルケンは、少なくとも部分的に不飽和である。典型的な低級アルケンは、2−プロペン、3−メチル−2−ブテン及び2,3−ジメチル−2−ブテンを含む。
【0025】
「アリール」は、フェニル基を意味する。本明細書で示されるように、アリールは、1つ以上の位置で指定される置換基又は置換基類で置換され得る。 より詳細には、用語「アリール」は、単独で又は組み合わせで、フェニル基又は1個以上の置換基、好ましくは、1〜3個の置換基を場合により有するフェニル基を意味し、各該置換基は、独立に、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、シアノ、カルバモイル、アルコキシカルバモイル、メチレンジオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、ヒドロキシ、ニトロ、アルキル−SO2−、アミノ−SO2−、シクロアルキルなどから選択される。特に好ましいものはフェニルである。
【0026】
「ヘテロアリール」は、N、O及びSから選択される、少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、5員又は6員の、不飽和の、特に芳香族の複素環を意味する。本明細書で示されるように、ヘテロアリールは、1つ以上の位置で、指定される、置換基又は置換基類で置換され得る。
【0027】
「IC50」は、本明細書で示されるようにして測定される、インビトロGFAT活性を、50%阻害するために必要な、本発明の特定の化合物の濃度に言及する。
【0028】
「薬学的に許容されうる塩」は、式Iの化合物の、生物学的効果及び特性を保持する、慣用の酸付加塩又は塩基付加塩を意味し、適切な非毒性の、有機若しくは無機酸又は有機若しくは無機塩基から形成される。酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミド酸、リン酸及び硝酸のような無機酸から誘導されるもの、及びp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸などのような有機酸から誘導されるものを含む。塩基付加塩の例は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、及び例えば水酸化テトラメチルアンモニウムのような第四級水酸化アンモニウムから誘導されるものを含む。医薬化合物(例えば、医薬)の塩への化学的修飾は、物理的及び化学的安定性、例えば、化合物の吸湿性、流動性又は可溶性に関係する特性を改良しようと試みるのに使用される、周知の技術である。例えば、H. Ansel et. al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (6th Ed. 1995) at pp. 196 and 1456-1457を参照すること。
【0029】
薬学的に許容されうる担体、賦形剤などのような「薬学的に許容されうる」は、薬理学的に許容され、特定の化合物が投与される対象者に対して実質的に非毒性であることを意味する。
【0030】
「薬学的に許容されうるエステル」は、カルボキシル基を有する式Iの化合物の、慣用的にエステル化されるものを意味し、そのエステルは、式Iの化合物の、生物学的効果及び特性を保持し、インビボ(生体中)で開裂され、対応する活性カルボン酸になる。本発明において、例えば、R1が−COOH又は−低級アルキル−COOHである場合に、エステルが存在し得る。インビボで開裂して(この場合は、加水分解されて)、対応するカルボン酸となるエステル基の例は、開裂される水素が、場合により、複素環、シクロアルキルなどで置換されている、−低級アルキルにより置換されているものである。置換低級アルキルエステルの例は、−低級アルキルがピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピペラジンなどで置換されているものである。
【0031】
医薬化合物を送達するエステルの例及び使用に関する更なる情報は、Design of Prodrugs. Bundgaard H. ed. (Elsevier, 1985)において、入手可能である。また、H. Ansel et. al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (6th Ed. 1995) at pp. 108-109; Krogsgaard-Larsen, et. al., Textbook of Drug Design and Development (2d Ed. 1996) at pp. 152-191も参照すること。
【0032】
本出願は、2003年5月19日に出願される米国仮出願60/471,690、表題:グルタミンフルクトース−y−ホスフェート アミドトランスフェラーゼ(GFAT)インヒビター全体を参照として組み込む。
【0033】
本発明は、また、少なくとも1つの、式Iの化合物又は薬学的に許容されうるその塩、及び薬学的に許容されうる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0034】
医薬組成物は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質若しくは軟質ゼラチンカプセル剤、液剤、乳濁剤又は懸濁剤の形態で、経口的に投与され得る。これらは、また、例えば、坐剤の剤形で直腸的に、又は、例えば、注射用液剤の形態で非経口的に投与され得る。
【0035】
式Iの化合物及び/又はその塩若しくはそのエステルを含む、本発明の医薬組成物は、当該技術に既知である方法で、例えば、慣用の混合し、封入し、溶解し、造粒し、乳化し、閉じ込めし、糖衣錠化し、又は凍結乾燥する法により製造され得る。これらの医薬製剤は、治療上、不活性な無機又は有機担体を用いて製剤化され得る。乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩が、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬質ゼラチンカプセル剤用のそのような担体として使用され得る。軟質ゼラチンカプセル剤に適切な担体は、植物油、ロウ及び脂肪を含む。活性物質の性質に応じて、軟質ゼラチンカプセル剤の場合には、担体は、一般に必要とされない。そのような場合は、薬学的に許容されうる担体は軟質ゼラチンカプセル剤であると見なされる。液剤及びシロップ剤の製造に適切な担体は、水、ポリオール、サッカローズ、転化糖及びグルコースである。注射剤に適切な担体は、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、植物油、リン脂質及び界面活性剤である。坐剤に適切な担体は、天然油又は硬化油、ロウ、脂肪及び半液体ポリオールである。
【0036】
医薬製剤は、また、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、風味剤、浸透圧を変化させる塩、緩衝剤、コーティング剤又は酸化防止剤を含有し得る。これらは、また、式Iのもの以外の、追加の活性成分を含む、他の治療上価値ある物質を含有し得る。
【0037】
本発明の化合物は、II型糖尿病の処置のための医薬として有用である。治療的有効量の決定は、当該技術の範囲内にある。
【0038】
本発明の化合物の治療的有効量又は投与量は、広範囲で変わり得、当該技術に既知である方法で決定され得る。そのような投与量は、投与される特定の化合物、投与経路、処置される状態、その外に処置される患者を含む、それぞれ特定の事例における個別の要件に適合される。一般に、体重約70kgの成人に経口又は非経口投与する場合は、1日当たり約10mg〜約1,000mgの、日々の投与量が適切であろうが、指示されるときは、上限が超えられ得る。日々の投与量は、単回用量としてか、又は分割される用量で投与され得、また、非経口投与では、連続点滴として与えられ得る。
【0039】
好ましくは、R1が、−COOH、低級アルキル−COOH、(CH2nNHC(=O)R9、−CH2NHSO27又は−(CH2n−R14である、式Iの化合物である。
【0040】
更に好ましくは、R1が、−COOH、−低級アルキル−COOH(ここで、−低級アルキル−COOHは、−CH2COOHである)又は−(CH2n−R14である、式Iの化合物である。
【0041】
本発明の別の好ましい態様は、R1が、−COOH又は−(CH2n−R14であり、そしてR14が、非置換の複素環である、式Iの化合物である。
【0042】
また、好ましくは、R1がテトラゾールである、式Iの化合物である。
【0043】
更に好ましくは、R1が、−(CH2nNHC(=O)R9又は−CH2NHSO27である、式Iの化合物である。
【0044】
本発明の更に好ましい実施態様は、R9が低級アルキルである、式Iの化合物である。
【0045】
また、好ましくは、R7が−CF3である、式Iの化合物である。
【0046】
本発明の別の好ましい態様は、R2が、下記式:
【0047】
【化15】

【0048】
である、式Iの化合物である。
【0049】
更に好ましいものは、Xが−CHである、式Iの化合物である。
【0050】
本発明の別の好ましい態様は、Xが−Nである、式Iの化合物である。
【0051】
更に好ましいものは、
1が、−(CH2n14であり、ここで、R14は、非置換の環、−COOH、−CH2COOH、−低級アルコール、−CH2OCH3又は−CH2NH2であり;
2が、下記式:
【0052】
【化16】

【0053】
であり;
ここで、
Xが、−CH又は−Nであり;
3、R4、R5及びR6が、それぞれ、
−H、−低級アルコキシ、−N(CH3)CH3、−低級アルキル及び−O−低級アルケンからなる群より選択されるか;または
ここで、R5及びR6が、隣接する環炭素原子の置換基であり、場合により、R5及びR6が、それらが結合しているC原子と一緒になって、5員又は6員の飽和炭素環を形成する式Iの化合物である。
【0054】
更に好ましくは、−低級アルキルが、メチルであり、−低級アルコールが、−メタノールであり、−低級アルコキシが、−メトキシであり、そして−低級アルキル−COOHが、−CH2−COOHである、式Iの化合物である。
【0055】
本発明の別の好ましい態様は、
3、R4、R5及びR6が、それぞれ、
−H、1〜4個の炭素原子を含有する−低級アルキル、−N(CH32、1〜4個の炭素原子を含有する−低級アルコキシ、−ハロ、及び1〜4個の炭素原子を含有する−O−低級アルケンからなる群より選択されるか;または
ここで、R5及びR6が、隣接する環炭素原子の置換基であり、場合により、R5及びR6が、それらが結合しているC原子と一緒になって、6員の飽和炭素環を形成する、式Iの化合物である。
【0056】
更に好ましくは、
(ナフタレン−2−イル)−〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−メタノン及び
(ナフタレン−1−イル)−〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−メタノン、又は
薬学的に許容されうるその塩
からなる群より選択される、式Iの化合物である。
【0057】
好ましくは、
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−キノリン−3−イル−メタノン及び
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−キノリン−8−イル−メタノン、又は
薬学的に許容されうるその塩
からなる群より選択される、式Iの化合物である。
【0058】
好ましくは、また、
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(4−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−メタノン、
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(4−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−イル)−メタノン、
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(4−メチル−ナフタレン−1−イル)−メタノン、
(2−アリルオキシ−ナフタレン−1−イル)−〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−メタノン、
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(7−メチル−ナフタレン−2−イル)−メタノン、
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(1,2,3,4−テトラヒドロ−フェナントレン−9−イル)−メタノン及び
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(2−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−メタノン、又は
薬学的に許容されうるその塩
からなる群より選択される、式Iの化合物である。
【0059】
更に好ましくは、
1−(4−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−カルボニル)−6,7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボン酸、及び
1−(4−メトキシ−ナフタレン−1−カルボニル)−6.7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボン酸及び6,7−ジメトキシ−1−(1,2,3,4−テトラヒドロ−フェナントレン−9−カルボニル)−イソキノリン−4−カルボン酸、又は
薬学的に許容されうるその塩
からなる群より選択される、式Iの化合物である。
【0060】
その上好ましくは、式Iの下記の化合物:
6,7−ジメトキシ−1−(ナフタレン−1−カルボニル)−イソキノリン−4−カルボン酸又は薬学的に許容されうるその塩である。
【0061】
更に好ましくは、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
a)下記式:
【0062】
【化17】

【0063】
で示される化合物の、NaN3及びNH4Cl及び好ましくはDMFの存在下での反応によって、下記式:
【0064】
【化18】

【0065】
〔式中、
2′は、下記式:
【0066】
【化19】

【0067】
であり;
Xは、CH又はNであり;
3′はH又はCH3であり;
5′は、H、OCH3又はOCH2CH=CH2であり;
6′は、H、OCH3、N(CH32又はCH3である〕で示される化合物を得ること、
又は
b)下記式:
【0068】
【化20】

【0069】
で示される化合物の、塩基、好ましくは、NaOHの存在下、特に、EtOH及びH2Oの存在下での反応によって、下記式:
【0070】
【化21】

【0071】
〔式中、R2″は、下記式:
【0072】
【化22】

【0073】
であり、そして
4″は、H、OCH3又はN(CH32である〕
で示される化合物を得ること
を含む方法である。
【0074】
また、好ましくは、上記の方法により製造される、式Iの化合物である。
【0075】
更に好ましくは、治療的に活性な物質としての使用のための、式Iの化合物である。
【0076】
また、好ましくは、II型糖尿病の予防及び治療のための医薬の製造における、式Iの化合物である。
【0077】
本発明の別の好ましい態様は、式Iの化合物と治療的に不活性な担体を含む医薬組成物である。
【0078】
更に好ましくは、II型糖尿病の治療及び予防のための医薬の製造における、式Iの化合物の使用である。
【0079】
その上、好ましくは、II型糖尿病の処置を必要とする患者における、II型糖尿病の処置方法であって、式Iの化合物又は薬学的に許容されうるその塩の、治療的に有効な量を、1日当たり約10mg〜約1,000mgの量で、患者に投与することを含む方法である。
【0080】
本発明の化合物は、示されるように又は当業者に既知の方法論に従って、製造され得る。
【0081】
【化23】


【化24】


【化25】

【0082】
実施例1
(ナフタレン−2−イル)−〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0083】
【化26】

【0084】
エーテル(300mL)中の、ホモベラトロニトリル(17.7g、0.1mol)及びナトリウムメトキシド(7.7g、0.11mol)の混合物に、エーテル(100mL)中のギ酸エチル(8.2mL)の溶液を加えた。混合物を3日間激しく撹拌した。沈殿した固体を濾過し、エーテルで洗浄した。固体を水(100mL)に溶解した。10%酢酸を加えて、pH=3にした後、得られた沈殿物を濾過により収集し、水で洗浄し、乾燥して、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−オキソ−プロピオニトリルを白色の固体として得た(19g、93%)。LC−MS m/e C1111NO3(MH)の計算値:206、実測値:206。
【0085】
トルエン(400mL)中の、2−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−オキソ−プロピオニトリル(20.5g、0.1mol)とウレタン(8.9g、0.1mol)の混合物に、濃硫酸(0.5mL、10mmol)を加えた。混合物を還流し、ゆっくりと蒸留することにより、約50mLの容量に濃縮した。冷却した混合物を濾過し、沈殿物をベンゼンで洗浄し、乾燥した。フラッシュクロマトグラフィー(Merck Silicaゲル60、70〜230メッシュ、20%塩化メチレン)は、〔2−シアノ−2−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−ビニル〕−カルバミン酸エチルエステルを固体として与えた。LC−MS m/e C141624(MH)の計算値:277、実測値:277。1H NMR(300MHz):矛盾なし。
【0086】
濃硫酸(0.4mL)を、〔2−シアノ−2−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−ビニル〕−カルバミン酸エチルエステル(33.5g、121mmol)及びジフェニルエーテル(230mL)の混合物に加えた。混合物を230℃で6時間加熱した。冷却した後、エーテルを加えて固体を沈殿させた。得られた固体を濾過により収集し、エーテルで洗浄し、乾燥して、6,7−ジメトキシ−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−イソキノリン−4−カルボニトリル(20.7g、74.1%)を褐色の固体として得て、それを更に精製しないで使用した。LC−MS m/e C121023(MH)の計算値:231、実測値:231。
【0087】
アニソール(30mL)中の6,7−ジメトキシ−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−イソキノリン−4−カルボニトリル(8g、35mmol)とオキシ臭化リン(70g、244mmol)の混合物を、80℃で12時間加熱した。溶媒及び過剰量のPOBr3をロータリーエバポレーターにより除去した。得られた固体をヘキサンで洗浄し、乾燥した。固体をゆっくりと氷に加え、生成物をクロロホルムで抽出した。有機層を、飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮して、褐色の固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(Merck Silicaゲル60、70〜230メッシュ、塩化メチレン)により、1−ブロモ−6,7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボニトリル(7.5g、75%)を、褐色の固体として得た。
LC−MS m/e C129BrN22(MH)の計算値:293、実測値:293。
【0088】
水素化ナトリウム(11mg、0.26mmol)を、DMF(2mL)中の1−ブロモ-6,7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボニトリル(50mg、0.17mmol)、2−ナフトアルデヒド(40.6mg、0.26mmol)、1,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド(16mg、0.26mmol)の撹拌した溶液に加えた。反応混合物が暗色になった。1時間後、水(4mL)を上記混合物に加え、クロロホルム(6mL)で抽出した。抽出物を水(4mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮して、固体を得て、それを更に精製しないで使用した。
【0089】
DMF(2mL)中の上記固体(0.17mmol)、アジ化ナトリウム(34mg、0.51mmol)及び塩化アンモニウム(27mg、0.51mmol)の混合物を、100℃で24時間撹拌した。溶媒を除去した後、粗生成物をHPLC(逆相C18、水中の10%〜90%アセトニトリルで10分間)により直接精製して、所望の生成物を固体として得た。LC/MS m/e C221663(MH)の計算値:412、実測値:412。
【0090】
実施例2
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−キノリン−3−イル−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0091】
【化27】

【0092】
3−キノリンカルボキシアルデヒド(0.26mmol)を2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C221663(MH)の計算値:413、実測値:413。
【0093】
実施例3
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(4−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0094】
【化28】

【0095】
4−メトキシ−1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)を2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C241954(MH)の計算値:442、実測値:442。
【0096】
実施例4
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(4−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−イル)−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0097】
【化29】

【0098】
4−ジメチルアミノ−1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)を2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C252263(MH)の計算値:455、実測値:455。
【0099】
実施例5
(ナフタレン−1−イル)−〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0100】
【化30】

【0101】
1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)を2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C231753(MH)の計算値:412、実測値:412。
【0102】
実施例6
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(4−メチル−ナフタレン−1−イル)−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0103】
【化31】

【0104】
4−メチル−1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)を2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C241953(MH)の計算値:426、実測値:426。
【0105】
実施例7
(2−アリルオキシ−ナフタレン−1−イル)−〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0106】
【化32】

【0107】
2−アリルオキシ−1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)を2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C262154(MH)の計算値:468、実測値:468。
【0108】
実施例8
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(7−メチル−ナフタレン−2−イル)−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0109】
【化33】

【0110】
7−メチル−2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)を2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C241953(MH)の計算値:426、実測値:426。
【0111】
実施例9
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−キノリン−8−イル−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0112】
【化34】

【0113】
8−キノリンカルボキシアルデヒド(0.26mmol)を2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C221663(MH)の計算値:413、実測値:413。
【0114】
実施例10
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(1,2,3,4−テトラヒドロ−フェナントレン−9−イル)−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0115】
【化35】

【0116】
9−(1,2,3,4−テトラヒドロ−フェナントレン)カルボキシアルデヒド(0.26mmol)を2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C272353(MH)の計算値:466、実測値:466。
【0117】
実施例11
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(2−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−メタノン、トリフルオロ酢酸塩
【0118】
【化36】

【0119】
2−メトキシ−1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)を2−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C241954(MH)の計算値:442、実測値:442。
【0120】
実施例12
1−(4−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−カルボニル)−6,7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボン酸、トリフルオロ酢酸塩
【0121】
【化37】

【0122】
水素化ナトリウム(11mg、0.26mmol)を、DMF(2mL)中の、1−ブロモ−6,7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボニトリル(実施例1を参照)(50mg、0.17mmol)、4−ジメチルアミノ−1−ナフトアルデヒド(51.8mg、0.26mmol)、1,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド(16mg、0.26mmol)の、撹拌している溶液に加えた。反応混合物が暗色になった。1時間後、水(4mL)を上記混合物に加え、クロロホルム(6mL)で抽出した。抽出液を水(4mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮して、固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(Merck Silicaゲル60、70〜230メッシュ、塩化メチレン中0〜40%EtOAc、30分間)は、1−(4−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−カルボニル)−6,7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボニトリル(31mg、41%)を白色の固体として与えた(31mg、41%)。LC−MS m/e C211825(MH)の計算値:379、実測値:379。
【0123】
メタノール(2mL)中の1−(4−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−カルボニル)−6,7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボニトリル(31mg、0.082mmol)の懸濁液に、25%水酸化ナトリウム水溶液(0.27mL、1.68mmol)を加えた。混合物を90℃で12時間撹拌した。室温に冷却した後、反応を2N HCl溶液でpH=2に調整した。生成物をクロロホルム(2×200mL)で抽出した。合わせた有機層を水(3×50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。粗生成物をHPLC(逆相C18、水中の10%〜90%アセトニトリル、10分間)により直接精製して、所望の生成物、1−(4−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−カルボニル)−6,7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボン酸(9mg)を、固体として得た。LC/MS m/e C252225(MH)の計算値:431、実測値:431。
【0124】
実施例13
1−(4−メトキシ−ナフタレン−1−カルボニル)−6,7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボン酸、トリフルオロ酢酸塩
【0125】
【化38】

【0126】
4−メトキシ−1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)を4−ジメチルアミノ−1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例12と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C2419NO6(MH)の計算値:418、実測値:418。
【0127】
実施例14
6,7−ジメトキシ−1−(1,2,3,4−テトラヒドロ−フェナントレン−9−カルボニル)−イソキノリン−4−カルボン酸、トリフルオロ酢酸塩
【0128】
【化39】

【0129】
9−(1,2,3,4−テトラヒドロ−フェナントレン)カルボキシアルデヒド(0.26mmol)を4−ジメチルアミノ−1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例12と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C2723NO5(MH)の計算値:442、実測値:442。
【0130】
実施例15
6,7−ジメトキシ−1−(ナフタレン−1−カルボニル)−イソキノリン−4−カルボン酸
【0131】
【化40】

【0132】
1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)を4ジメチルアミノ−1−ナフトアルデヒド(0.26mmol)の代わりに使用する以外は、実施例12と同様にして、生成物を固体として得た。LC/MS m/e C2317NO5(MH)の計算値:388、実測値:388。
【0133】
実施例16
インビトロGFATアッセイ
酵素の製造:
GFAT−α又はGFAT−βによりトランスフェクションされ、90%コンフルエント状態になるまで成長したコス(COS)細胞を、PBS 100mM、KCl 50mM、EDTA 10mM及びプロテアーゼインヒビター ロイペプチン、アプロチニン、PMSF及びペプスタチンを含有する緩衝液に小片にして入れた(scraped)。最終濃度は、4×10−7細胞/mLであった。これは、マイクロチッププローブにより、設定4で、15秒間、3〜4mlの容量を氷上で超音波処理した。
【0134】
インキュベーション緩衝液:
緩衝液は、グルタミン(8mM、0.01ml)、フルクトース6−リン酸(100mM、0.01ml)、PBS10X(0.01ml)、EDTA(50mM、0.01ml)、±インヒビター(0.01ml)、酵素(0.005ml)及び水(0.10mlに希釈する)を含有するように調製された。
【0135】
手順:
インヒビターを100%DMSOで作成し、マイクロタイタープレート中で希釈した。次にインヒビターを、対照としてのDMSOと共にアッセイプレートに加えた。反応混合物を、標準曲線試料用に十分に含むように作成し、氷上で保持した。混合物90ulを96ウエルプレートに加えることにより、反応を開始した。プレートを接着プレートシーラーで覆い、37℃の水浴中に60分間置いた。プレートの下に空気泡が形成されないことを確実にするように気を付けた。インキュベーションの後、DMSOで作成されたグルコサミン6−リン酸標準液10uLを標準曲線ウエルに加えた。2.5〜30ナノモルの濃度範囲が曲線の直線部分にあり、生成されたグルコサミン6−リン酸の量を包含した。酵素を含有する冷インキュベーション混合物を対照及び標準曲線ウエルに加えた。次に、グルコサミン6−リン酸を、アセトン中の1.5%無水酢酸10uL、続いて四ホウ酸カリウム50uL(200mM)を加えることによりアセチル化した。プレートを新しい覆いで密封し、マイクロシェーカーで2分間振とうした。プレートを80℃の水浴中に25分間置いた。次にプレートを氷の上に5分間置いた。エールリッヒ試薬130uLをウエルに加え、プレートを37℃の水浴中に20分間置いた。次に、プレートを585nmで読み取った。生成されるナノモルを与えるため、標準曲線から、ODを補間するようにsoftmaxプログラムを設定した。
【0136】
本発明の化合物は、1nM〜100μM、好ましくは10nM〜20μMのIC50をもつGFAT阻害活性を有する。
【0137】
製造例13は、下記のIC50値を示す:
GFATαIC50=8μM及びGFATβIC50=3.25μM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


〔式中、R1は、−COOH、低級アルキル−COOH、−低級アルコール、−CH2OCH3、−CH2NH2、−CH2NHSO27、−C(=O)R8、−CNHCH2CH2−R8、−C(=NH)−R8、−(CH2nNHC(=O)R9、−(CH2mC(=O)N(R11)(R12)、−C(=NH)−R13又は−(CH2n−R14であり;
2は、下記式:
【化2】


であり、
ここで、
Xは、−CH又は−Nであり;
3、R4、R5及びR6は、それぞれ、−H、−低級アルキル、−N(CH32、−N(CH3)CH2CH3、−N(CH2CH3)CH2CH3、−ハロ、−O−低級アルケン、−低級アルコキシ、−O−低級アルコール及び−O(CH2n−シクロアルキルからなる群より選択され、またはここで、
5及びR6は、隣接する環炭素原子の置換基であり、場合により、R5及びR6は、それらが結合しているC原子と一緒になって、5員又は6員飽和炭素環を形成し;
7は、−CF3、−低級アルキル、−CH2Cl、−CH2CF3又は−R8であり;
8は、N、O、及びSから選択される1個のヘテロ原子を含有する、5員又は6員の飽和の、置換又は非置換の複素環であり、ここで、置換環は、−OH又は−フェニルで置換されている複素環であり;
9は、−低級アルキル、−低級アルコキシ又は−(CH2n10であり;
10は、N及びOから選択される1又は2個のヘテロ原子を含有する、5員又は6員の、飽和又は不飽和の複素環であり;
11は、−H又は−CH3であり;
12は、−H、−低級アルキル、−C≡N、−OH、−低級アルコキシ又は−CH2COOCH2CH3であり;
13は、−低級アルコキシ−NH2又は−N−低級アルキルであり;
14は、ヘテロ原子がN、O及びSから選択される、1〜4個のヘテロ原子を含有する飽和又は不飽和の5員の、置換又は非置換の複素環であり、ここで、置換環は、=Oにより1又は2個の環炭素において置換されているか、又は−低級アルコール若しくは−低級アルキルにより環Nにおいて置換されている複素環であり;
mは、0、1又は2であり;
nは、0又は1である〕
で示される化合物、又は薬学的に許容され得る、その塩又はそのエステル。
【請求項2】
1が、−COOH、低級アルキル−COOH、(CH2nNHC(=O)R9、−CH2NHSO27又は−(CH2n−R14である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1が、−COOH、−低級アルキル−COOH(ここで、−低級アルキル−COOHは−CH2COOHである)又は−(CH2n−R14である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
1が、−COOH又は−(CH2n−R14であり、そしてR14が、非置換の複素環である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
1がテトラゾールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
1が、−(CH2nNHC(=O)R9又は−CH2NHSO27である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
9が低級アルキルである、請求項1、2又は6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
7が−CF3である、請求項1、2、6又は7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
2が下記式:
【化3】


である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
Xが−CHである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
Xが−Nである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
1が、−(CH2n14であり、ここで、R14が、非置換の環、−COOH、−CH2COOH、−低級アルコール、−CH2OCH3又は−CH2NH2であり;
2が、下記式:
【化4】


であり;
ここで、
Xが、−CH又は−Nであり;
3、R4、R5及びR6が、それぞれ、−H、−低級アルコキシ、−N(CH3)CH3、−低級アルキル及び−O−低級アルケンからなる群より選択され、または、ここで、 R5及びR6は、隣接する環炭素原子の置換基であり、場合により、R5及びR6は、それらが結合しているC原子と一緒になって、5員又は6員の飽和炭素環を形成する
請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
−低級アルキルが、メチルであり、−低級アルコールが、−メタノールであり、−低級アルコキシが、−メトキシであり、そして−低級アルキル−COOHが、−CH2−COOHである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
3、R4、R5及びR6が、それぞれ、
−H、1〜4個の炭素原子を含有する−低級アルキル、−N(CH32、1〜4個の炭素原子を含有する−低級アルコキシ、−ハロ、及び1〜4個の炭素原子を含有する−O−低級アルケンからなる群より選択され、または、ここで、
5及びR6は、隣接する環炭素原子の置換基であり、場合により、R5及びR6は、それらが結合しているC原子と一緒になって、6員の飽和炭素環を形成する
請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
(ナフタレン−2−イル)−〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−メタノン及び
(ナフタレン−1−イル)−〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−メタノン、又は
薬学的に許容され得る、それらの塩
からなる群より選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−キノリン−3−イル−メタノン及び
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−キノリン−8−イル−メタノン、又は
薬学的に許容され得る、それらの塩
からなる群より選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(4−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−メタノン、
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(4−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−イル)−メタノン、
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(4−メチル−ナフタレン−1−イル)−メタノン、
(2−アリルオキシ−ナフタレン−1−イル)−〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−メタノン、
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(7−メチル−ナフタレン−2−イル)−メタノン、
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(1,2,3,4−テトラヒドロ−フェナントレン−9−イル)−メタノン及び
〔6,7−ジメトキシ−4−(1H−テトラゾール−5−イル)−イソキノリン−1−イル〕−(2−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−メタノン、又は
薬学的に許容され得る、それらの塩
からなる群より選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
1−(4−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−カルボニル)−6,7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボン酸、及び
1−(4−メトキシ−ナフタレン−1−カルボニル)−6.7−ジメトキシ−イソキノリン−4−カルボン酸及び6,7−ジメトキシ−1−(1,2,3,4−テトラヒドロ−フェナントレン−9−カルボニル)−イソキノリン−4−カルボン酸、又は
薬学的に許容され得る、それらの塩
からなる群より選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
化合物が、6,7−ジメトキシ−1−(ナフタレン−1−カルボニル)−イソキノリン−4−カルボン酸又は薬学的に許容され得るその塩である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
a)下記式:
【化5】


で示される化合物の、NaN3及びNH4Clの存在下での反応によって、下記式:
【化6】


〔式中、
2′は、下記式:
【化7】


であり;
Xは、CH又はNであり;
3′はH又はCH3であり;
5′は、H、OCH3又はOCH2CH=CH2であり;
6′は、H、OCH3、N(CH32又はCH3である〕で示される化合物を得ること、
或いは
b)下記式:
【化8】


で示される化合物の、塩基の存在下での反応によって、下記式:
【化9】


〔式中、R2″は、下記式:
【化10】


であり、そして
4″は、H、OCH3又はN(CH32である〕
で示される化合物を得ること
を含む方法。
【請求項21】
治療上活性な物質としての使用のための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
II型糖尿病の予防及び治療のための医薬の製造のための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物及び治療上不活性な担体を含む医薬組成物。
【請求項24】
II型糖尿病の処置及び予防のための医薬の製造のための、請求項1〜19のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項25】
請求項20記載の方法により製造される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
II型糖尿病の処置を必要とする患者における、II型糖尿病の処置方法であって、請求項1〜19のいずれか1項に記載の、化合物又は薬学的に許容され得るその塩の治療的に有効量を、1日当たり約10mg〜約1,000mgの量で、患者に投与することを含む方法。
【請求項27】
本明細書に記載される発明。

【公表番号】特表2007−508338(P2007−508338A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534646(P2006−534646)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011206
【国際公開番号】WO2005/040150
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】