説明

グルタミン酸のフッ素化シクロプロパン類似体

本発明は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、またはあらゆる割合の立体異性体の混合物、特にラセミ混合物等のエナンチオマーの混合物、並びにその使用、そのような化合物の製造方法、それを含む医薬組成物、および合成中間体に関する:


(式中、Rは、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルケニル基を表し、ハロゲン原子、OR、SR、NR、PO(OR)(OR)、CO、SO SO、P0(0H)(CH(0H)R)、CN、N、およびNH−C(=NH)NH2から選択される1または複数の基により置換されていてもよく、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、(C−C)アルキル基、またはCO−(C−C)アルキル基を表し、R、R、R、R、およびRlは、互いに独立して、水素原子または(C−C)アルキル基を表し、Rは、アリールまたはヘテロアリール基を表し、前記基は、ハロゲン原子およびNOから選択される1または複数の基により置換されていてもよい)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフッ素化シクロプロパンアミノ酸誘導体、特にアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん等の神経系疾患の治療における、その使用、およびそのような化合物の製造方法に関する。
【0002】
シクロプロパン部分は、酵素阻害、殺虫、抗真菌、抗菌、抗腫瘍等の種々の活性を有する多くの生物学的活性化合物中に存在する。実際、シクロプロパン部分が存在することで、関連分子の種々のラジカルの空間的組織化が変化するかブロックされることにより、分子の生物学的受容体への選択性および親和性が増大し得る可能性がある。
【0003】
シクロプロパン環上にフッ素原子を存在させることにより隣接基の酸性度および塩基性度、親油性(lipophily)、結合長、および電子分布を調節することで分子の反応性をさらに増大させることができ、これにより、薬理的パラメータ(吸収、分布、親和性等)を調節することができる。
【0004】
しかし、そのようなフルオロシクロプロパン誘導体の製造方法はほとんど存在せず、フッ素化シクロプロパンアミノ酸誘導体を製造する方法は存在しない。
【0005】
そこで、本発明者らは、フルオロシクロプロパン部分を有するそのようなアミノ酸誘導体の製造方法を開発した。
【0006】
この方法は、安定性等の種々の物理化学的特性を有するアミノ酸(例えばロイシン、メチオニン、ホモシステイン、ホモセリン、リジン、アルギニン等)の類似体として有用であり得る化合物へのアクセスを可能にする。さらに、それらの一部は、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)のリガンドとして、特に代謝型グルタミン酸受容体のアゴニストとして知られる化合物であるグルタミン酸類似体、L−(+)−2−アミノ−4−ホスホノ酪酸(L−AP4)または(1S,2S)−1−アミノ−2ホスホノメチルシクロプロパンカルボン酸((+)−(1S,2S)−APCPr)として、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん等の神経系疾患の治療に有用であり得る。
【0007】
したがって、本発明の第1の目的は、以下の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、またはあらゆる割合の立体異性体混合物、特にラセミ混合物等のエナンチオマー混合物である:
【0008】
【化1】

(式中、Rは、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルケニル基を表し、ハロゲン原子、OR、SR、NR、PO(OR)(OR)、CO、SO SO、PO(OH)(CH(OH)R)、CN、N3、およびNH−C(=NH)NHから選択される1または複数の基により置換されていてもよく、
、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、(C−C)アルキル基、またはCO−(C−C)アルキル基を表し、
、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子または(C−C)アルキル基を表し、
は、アリールまたはヘテロアリール基を表し、前記基は、ハロゲン原子およびNOから選択される1または複数の基により置換されていてもよい)。
【0009】
本発明において、「薬学的に許容可能な」という用語は、医薬組成物の製造に有用であることを意味することが意図され、これは一般的に医薬用途に安全であり且つ非毒性である。
【0010】
本発明において、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、上記で定義したように薬学的に許容され且つ対応する化合物の薬理活性を有する化合物の塩を意味することが意図される。そのような塩としては以下のものが含まれる:
(1)水和物および溶媒和物、
(2)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸と形成された酸付加塩もしくは酢酸、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、コハク酸、ジベンゾイル−L−酒石酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸と形成された酸付加塩、または
(3)化合物中に存在する酸部分が、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン等の金属イオンにより置換された時または有機塩基もしくは無機塩基に配位された時に形成される塩。許容される有機塩基としては、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミン等が含まれる。許容される無機塩基としては水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および水酸化ナトリウムが含まれる。
【0011】
本発明において、「立体異性体」という用語は、ジアステレオ異性体またはエナンチオマーを意味することが意図される。したがって、これは光学異性体に相当する。したがって、互いの鏡像でない立体異性体は「ジアステレオ異性体」と呼ばれ、互いの鏡像であるが重ね合わせることができない立体異性体は「エナンチオマー」と呼ばれる。
【0012】
本発明において、「ラセミ混合物」という用語は、2つのエナンチオマーの等量混合物を意味することが意図される。
【0013】
本発明において、「ハロゲン」という用語はフッ素、臭素、塩素、またはヨウ素原子を意味する。
【0014】
本発明において、「(C−C)アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の一価飽和炭化水素鎖を意味し、限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソープロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等が含まれる。この基は、さらに置換されている場合(二価基)、(C−C)アルカンジイル基と呼ぶこともできる。
【0015】
本発明において、「(C−C)アルケニル」という用語は、1〜6個の炭素原子を含み、少なくとも1つの二重結合を含む、直鎖または分岐鎖の二価不飽和炭化水素鎖を意味し、限定されるものではないが、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等が含まれる。この基は、さらに置換されている場合(二価基)、(C−C)アルケンジイル基と呼ぶこともできる。
【0016】
本発明において、「−CO−(C−C)アルキル」という用語は、カルボニル基(CO)を介して分子に結合している上記で定義した(C−C)アルキル基を意味する。これは例えばアセチル基であり得る。
【0017】
本発明において、「(C−C)アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して分子に結合している上記で定義した(C−C)アルキル基を意味する。これは例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、またはtert−ブトキシ基であり得る。
【0018】
本発明において、「アリール」という用語は、好ましくは5〜10個の炭素原子を含み、1または複数の縮合環を含む、芳香族基、例えばフェニル基、ナフチル基等を意味する。好ましくは、これはフェニル基である。
【0019】
本発明において、「ヘテロアリール」という用語は、1または複数の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子、より好ましくは1または2個の炭素原子がそれぞれ1または複数の異種原子、好ましくは1〜4個の異種原子、より好ましくは1または2個の異種原子、例えば窒素、酸素、または硫黄原子で置換されている上記で定義したアリール基を意味する。ヘテロアリール基は特にチエニル、フラニル、ピロリル等であり得る。
【0020】
したがって、そのような化合物は、アミノ酸誘導体の類似体として、特に新規なペプチドの合成においてまたは神経系疾患の治療において(グルタミン酸の類似体として)有用であり得る。
【0021】
本発明の特定の態様によれば、Rは、PO、COH、およびSOHから選択される基により置換されており且つハロゲン原子、OR、SR、およびNR(R、R、R、およびRは上記で定義した通りである)から選択される1または複数の基、好ましくはOH、SH、およびNHから選択される1または複数の基で置換されていてもよい、−CH−、−CH−CH−等の(C−C)アルキル基(この場合には、(C−C)アルカンジイルともいう)であり得る。
【0022】
特定の態様によれば、式(I)の化合物のフッ素原子およびNH基は、化合物(I)のシクロプロパン環の同じ側に存在する。
【0023】
別の特定の態様によれば、式(I)の化合物のフッ素原子およびNH基は、化合物(I)のシクロプロパン環の反対側に存在する。
【0024】
本発明の化合物は特に以下から選択され得る。
【0025】
【表1−1】

【表1−2】

【0026】
本発明の第2の目的は、特にアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん等の神経系疾患の治療における、医薬品として使用するための上記で定義した式(I)の化合物である。
【0027】
本発明の特定の態様によれば、Rは、PO、COH、およびSOHから選択される基により置換されており且つハロゲン原子、OR、SR、およびNR(R、R、R、およびRは上記で定義した通りである)から選択される1または複数の基、好ましくはOH、SH、およびNHから選択される1または複数の基で置換されていてもよい、−CH−、−CH−CH−等の(C−C)アルキル基(この場合には(C−C)アルカンジイル基ともいう)であり得る。
【0028】
特定の態様によれば、式(I)の化合物のフッ素原子およびNH基は、化合物(I)のシクロプロパン環の同じ側に存在する。
【0029】
別の特定の態様によれば、式(I)の化合物のフッ素原子およびNH基は、化合物(I)のシクロプロパン環の反対側に存在する。
【0030】
特に、式(I)の化合物は以下から選択され得る。
【0031】
【表2】

【0032】
本発明はさらに、医薬品の製造における、特にアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん等の神経系疾患の治療を意図した医薬品の製造における、上記で定義した式(I)の化合物の使用に関する。
【0033】
本発明はさらに、有効量の上記で定義した式(I)の化合物をそれを必要とする患者に投与することによりアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん等の神経系疾患を治療する方法に関する。
【0034】
本発明の第3の目的は、上記で定義した少なくとも1つの式(I)の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容可能な補形剤(excipient)を含む医薬組成物である。
【0035】
本発明の医薬組成物は、経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所、または直腸投与が意図され得る。活性成分は、従来の薬学的キャリアと混合された、投与のための単位形態(unit form)で、動物またはヒトに投与され得る。投与に適した単位形態としては、錠剤、ゼラチンカプセル剤、散剤、顆粒剤、経口用の溶液または懸濁液等の経口投与用の形態;舌下投与および頬側投与用の形態;皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内、または眼内投与用の形態;および直腸投与用の形態が含まれる。
【0036】
固体組成物が錠剤の形態で調製される場合、主要活性成分は、ゼラチン、でんぷん、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴム等の薬学的賦形剤(vehicle)と混合される。錠剤は、スクロースまたはその他の好適な材料でコーティングされてもよく、長期のまたは遅延性の活性を有して所定の量の有効成分を連続的に放出するように処理されてもよい。
【0037】
ゼラチンカプセル剤の形態の製剤は、活性成分を希釈剤と混合し、得られた混合物を軟質または硬質ゼラチンカプセル中に注ぐことで得られる。
【0038】
シロップ剤またはエリクシル剤の形態の製剤は、甘味剤、防腐剤、味増強剤、または好適な着色剤と共に活性成分を含み得る。
【0039】
水分散性の散剤または顆粒剤は、分散剤もしくは湿潤剤、または懸濁剤、および矯味剤または甘味剤と混合された活性成分を含み得る。
【0040】
直腸投与では、直腸温度で融解する結合剤、例えばカカオ脂またはポリエチレングリコールを用いて調製された坐剤が使用される。
【0041】
非経口的な鼻腔内投与または眼内投与では、薬理学的に適合する分散剤および/または湿潤剤を含む水性懸濁液、等張生理食塩水、または無菌注射剤が使用される。
【0042】
有効成分は、所望により1または複数のキャリア添加物と共に、マイクロカプセルの形態でも製剤化され得る。
【0043】
本発明の化合物は、1日に0.01〜1000mgの用量で、1日1回投与または1日複数回投与(例えば1日2回投与)される医薬組成物中に使用することができる。1日用量は、好ましくは5〜500mg、より好ましくは10〜200mgである。しかし、これらの範囲外の用量を使用することが必要になることもあり得、当業者であればそれに気づくことができる。
【0044】
本発明の医薬組成物は、特に神経系疾患の治療に有用な別の活性化合物、例えばドネゼピル(donezepil)、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、タクリンのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;セレギリンのようなモノアミンオキシダーゼ阻害剤;エンタカポンのようなカテコールアミン−O−メチル転移酵素阻害剤;アマンタジン、バクロフェンのようなグルタミン酸作動薬阻害剤;サブコメリンのようなコリン作動薬;ペルゴリド、カベルゴリン、ロピリノール、プラミペキソールのようなドパミン作動薬;L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンのような神経伝達物質(neuromediator)の類似体または前駆体;およびトリヘキシフェニジル、トロパテピンのような抗コリン作動薬をさらに含み得る。
【0045】
本発明の第4の目的は、
(i)少なくとも1つの上記で定義した式(I)の化合物および
(ii)少なくとも1つの別の活性化合物
を含む、同時使用もしくは別個使用のためまたは時間をかけて拡散させるための配合剤としての医薬組成物である。
【0046】
活性化合物は、特に神経系疾患の治療に有用であり得、好ましくは、ドネゼピル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、タクリンのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;セレギリンのようなモノアミンオキシダーゼ阻害剤;エンタカポンのようなカテコールアミン−O−メチル転移酵素阻害剤;アマンタジン、バクロフェンのようなグルタミン酸作動薬阻害剤;サブコメリンのようなコリン作動薬;ペルゴリド、カベルゴリン、ロピリノール、プラミペキソールのようなドパミン作動薬;L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンのような神経伝達物質類似体または前駆体;およびトリヘキシフェニジル、トロパテピンのような抗コリン作動薬から選択される。
【0047】
本発明の第5の目的は、医薬品として使用するための、特にアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん等の神経系疾患の治療における医薬品として使用するための、本発明の第3および第4の目的に係る上記で定義した医薬組成物である。
【0048】
本発明の第6の目的は、上記で定義した式(I)の化合物に対応する式(Ib)の化合物の製造方法であり、式中、Rは、−CHCHR1(R1は直接結合または(C−C)アルキルを表す)を表し、フッ素原子等のハロゲン原子、OR、SR、NR、PO(OR)(OR)、CO、SO、SO、PO(OH)(CH(OH)R)、CN、N、またはNH−C(=NH)NHから選択される1または複数の基で置換されていてもよく、
、R、R、R、R、R、R、R、R、およびRは上記で定義した通りであり、
以下の連続工程を含む、方法である:
(a)式(IIa)の化合物と
【化2】

(式中、GPはO保護基を表し、GPおよびGPは、互いに独立して、N保護基を表す)式(III)の化合物のホーナー・ワズワース・エモンズ反応により、
【化3】

(式中、AlkおよびAlkは、互いに独立して、エチル基等の(C−C)アルキル基を表し、R1は上記で定義した通りである)
式(IV)の化合物を得る工程
【化4】

(式中、R1、GP、GP、およびGPは上記で定義した通りである);
(b)上記工程(a)で得られた式(IV)の化合物を水素化して式(V)の化合物を得る工程
【化5】

(式中、R1、GP、GP、およびGPは上記で定義した通りである);
(c)上記工程(b)で得られた式(V)の化合物のCO−GPおよびN(GP)(GP)基を加水分解して式(Ib)の化合物を得る工程
【化6】

(式中、R1は上記で定義した通りである);
(d)反応混合物から化合物(Ib)を分離する工程。
【0049】
工程a:
本発明において、「O保護基」という用語は、Greene, "Protective Groups In Organic synthesis", (John Wiley & Sons, New York (1981)に開示されている保護基のような、合成手順中に望ましくない反応からカルボン酸官能基のヒドロキシル基を保護する置換基を意味する。O保護基としては、メチル、エチルtert−ブチル等の(C−C)アルキル基;置換されたメチルエーテル、例えばメトキシメチル(MOM)、ベンジルオキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、およびベンジル;およびヒドロキシル基をカルボン酸と反応させることにより製造されるエステル、例えば、アセタート、プロピオナート、ベンゾアート等が含まれる。好ましくは、O保護基は(C−C)アルキル基、特にメチルまたはエチル基である。
【0050】
本発明において、「N保護基」という用語は、合成手順中に望ましくない反応からアミノ基を保護することを意図する基を意味する。一般的に使用されているN保護基はGreene, "Protective Groups In Organic Synthesis," (John Wiley & Sons, New York (1981))に開示されている。N保護基としては、カルバマート、アミド、N−アルキル誘導体、アミノアセタール誘導体、N−ベンジル誘導体、イミン誘導体、エナミン誘導体、およびN−異種原子誘導体が含まれる。特に、N保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、ピバロイル、フェニルスルホニル、ベンジル、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、トリクロロエトキシカルボニル(TROC)、9−フルオロエニルメトキシカルボニル(Fmoc)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、アセチル、フタルイミド、スクシンイミド等が含まれる。好ましくは、N保護基はBoc基である。
【0051】
したがって、工程(a)は、好ましくは、N(GP)(GP)=NBocを用いて行われる。
さらに、GPは、好ましくは、エチル基等の(C−C)アルキル基である。
【0052】
そのようなホーナー・ワズワース・エモンズ反応は当業者に周知であり、トリエチルアミン等の塩基存在下、特にテトラヒドロフラン(THF)等の溶媒中で、臭化リチウムを用いて行うことができる。
【0053】
工程b:
この水素化工程は、当業者に周知の古典的手順により行うことができる。特に、この反応は、水素雰囲気下、パラジウム炭素等の触媒の存在下、THF等の溶媒中で行うことができる。
【0054】
工程c:
加水分解反応は当業者に周知であり、GP、GP、およびGP基の性質に依存する。これらの2つの加水分解反応の順序は重要ではない。
【0055】
さらに、これらの反応は、同じ条件で2つの基を加水分解できる場合、同時に行うことができる。したがって、GP=(C−C)アルキルであり且つN(GP)(GP)=N(Boc)である場合、酸処理によりCO−GPおよびN(GP)(GP)基を同時に加水分解してそれぞれCOHおよびNHを得ることができる。この反応に使用される酸は、酢酸、塩酸、またはその混合物、特に1:1混合物であり得る。
【0056】
工程d:
この工程は、抽出、蒸発、または沈殿および濾過等の当業者に周知の方法により行うことができる
【0057】
必要であれば、得られた化合物を古典的方法、例えば、化合物が結晶性であれば結晶化により、あるいは蒸留、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、さらに精製してもよい。
【0058】
感受性基を保護および脱保護する補足的工程が必要になることもあり、当業者はそのような感受性基並びにそれらを保護および脱保護する方法を特定することができる。
【0059】
式(Ib)の化合物の合成における出発物質として用いられる式(IIa)の化合物は以下の連続工程により製造することができる:
(a1)式(VI)の化合物と、
【化7】

(式中、GP、GP、およびGPは上記で定義した通りである)
式(VII)の化合物とを、
【化8】

(式中、Zは、OまたはNR2(式中、R2は、水素原子、(C−C)アルキル基、または(C−C)アルコキシ基を表す)を表し、Alkは、エチル基等の(C−C)アルキル基を表す)
ZnY(式中、Yは、(C−C)アルキル基を表し、Yは、臭素もしくはヨウ素基または(C−C)アルキル基を表す)の存在下で反応させて、式(IIb)の化合物を得る工程
【化9】

(式中、GP、GP、GP、Z、およびAlkは上記で定義した通りである);
(b1)上記工程(a1)で得られた式(IIb)の化合物のC(O)Z−Alk基を加水分解して式(IIc)の化合物を得る工程
【化10】

(式中、GP、GP、およびGPは上記で定義した通りである);および
(c1)上記工程(b1)得られた式(IIc)の化合物の遊離カルボン酸基をアルデヒドに還元して式(IIa)で表される化合物を得る工程。
【0060】
工程a1:
好ましくは、N(GP)(GP)はNBocを表し、GPは好ましくは(C−C)アルキル基を表す。
【0061】
特に、Zは、酸素原子であり得、ZnYは、ZnEt、ZnMe、ZniPr、ZniBu、EtZnBr、EtZnCl、またはEtZnI、特にZnEt、ZnMe、EtZnBr、またはEtZnI、好ましくはZnEtであり得る。
【0062】
工程bl:
この加水分解反応は、塩基処理(けん化反応)により行うことができ、特にZ=Oの時、特にLiOH等のアルカリ金属の水酸化物を用いた塩基処理により、行うことができる。
【0063】
工程c1:
還元は、アルデヒドへのカルボン酸の古典的還元方法により行うことができ、特にジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL−H)を用いた処理により行うことができる。
【0064】
カルボン酸誘導体を、特にBHを用いた処理により、対応するアルコールに還元し、このアルコールをさらに、そのような反応に用いる2−ヨードキシ安息香酸(IBX)のような古典的な酸化剤を用いて、アルデヒドへと酸化することも可能である。
【0065】
本発明の第7の目的は、以下の式(II)の化合物である:
【化11】

[式中、
−R3は、水素原子または上記で定義したGP基を表し、
−Zは、CHO、COOH、C(O)Z−Alk、またはR基(R、Z、およびAlkは上記で定義した通りである)を表し、
−Xは、NH、NHGP、またはN(GP)(GP)基(GPおよびGPは上記で定義した通りである)を表し、
但し、XがNH基を表す場合、R3は水素原子を表さない]。
【0066】
このような化合物は、式(I)の化合物の製造における合成中間体として特に有用である。実際、式(I)の化合物は、これらの中間体から、特に式(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、および(IIe)で表される化合物から、古典的カップリング反応により製造することができ、その後所望により、シクロプロパン部分の遊離のカルボン酸およびアミノ基を得るために古典的加水分解反応を行ってもよい。カップリング反応は、ウィティッヒ反応または既に示したホーナー・ワズワース・エモンズ反応、光延反応、アルブゾフ反応等であり得る。
【0067】
さらにR3=HであるかX=NHである場合、これらの化合物は、その遊離のカルボン酸またはアミン基からのペプチドカップリングにより、ペプチド合成に使用することができ、保護されているカルボン酸またはアミン基は、求めるペプチド合成のための新規なペプチドカップリングに関与させるためにさらに脱保護される。
【0068】
第1の態様によれば、Zは、PO、COH、およびSOHから選択される基で置換されており且つハロゲン原子、OR、SR、およびNR(R、R、R、およびRは上記で定義した通りである)から選択される1または複数の基で置換されていてもよい、−CH−、−CH−CH−等の上記で定義したラジカルR、特に(C−C)アルキル基(この場合には(C−C)アルカンジイル基ともいう)を表す。したがって、この種類の化合物は、式(I)の化合物の製造における進んだ合成中間体に相当する。
【0069】
さらに、Xは、好ましくは、N(GP)(GP)基、特にNBoc基を表し、R3は、好ましくは、(C−C)アルキル基等のGP基である。
【0070】
第2の態様によれば、化合物は、R3=HであるかX=NHである式(II)の化合物である。前述の通り、この種類の化合物は、新規な合成アミノ酸として、ペプチド合成に有用である。この場合、Zは、好ましくは、上記で定義した通りのラジカルRである。
【0071】
第3の態様によれば、Zは、CHO、COOH、または上記で定義したC(O)Z−Alk基を表す。したがって、この種類の化合物は、式(I)の化合物の製造における初期合成中間体に相当する。
【0072】
この場合、Xは、好ましくは、N(GP)(GP)基、特にNBoc基を表し、R3は、好ましくは(C−C)アルキル基等のGP基である。
【0073】
式(II)の化合物は特に以下から選択され得る。
【0074】
【表3−1】

【0075】
【表3−2】

【0076】
【表3−3】

【0077】
本発明の第8の目的は、上記で定義した式(II)の化合物の製造方法であって、Zが、CHO、COOH、C(O)Z−Alk、CHOH、またはCHHal基を表し、R3が水素原子を表し、Xが上記で定義したN(GP)(GP)基を表し(Alkは上記で定義した通りであり、Halはハロゲン原子を表す)、以下の連続工程を含む、方法:
(a2)上記で定義した式(VI)の化合物と、
上記で定義した式(VII)の化合物とを、
ZnY(式中、YおよびYは上記で定義した通りである)の存在下で反応させて、上記で定義した式(IIb)の化合物を得る工程;
(b2)所望により、上記工程(a2)で得られた式(IIb)の化合物のC(O)Z−Alk基を加水分解して、上記で定義した式(IIc)の化合物を得る工程;
(c2)所望により、上記工程(b2)で得られた式(IIc)の化合物の遊離カルボン酸官能基をアルデヒドまたはアルコールに還元して、上記で定義した式(IIa)の化合物または以下の式(IId)の化合物を得る工程:
【化12】

(式中、GP、GPおよび、GPは上記で定義した通りである);
(d2)所望により、上記工程(c2)で得られた式(IId)の化合物のアルコール部分をハロゲン化して、以下の式(IIe)の化合物を得る工程
【化13】

(式中、Hal、GP、GP、およびGPは上記で定義した通りである);および
(e2)反応混合物から式(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、または(IIe)の化合物を分離する工程。
【0078】
工程a2およびb2:
工程(a2)および(b2)は、それぞれ工程(a1)および(b1)と同一である。したがって、工程(a1)および(b1)について前述した内容がそれぞれ工程(a2)および(b2)にも適用される。
【0079】
工程c2:
アルコールまたはアルデヒドへのカルボン酸の還元は、古典的還元方法により行うことができ、特に、アルデヒドを得るためのジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL−H)を用いた処理またはアルコールを得るためのBHを用いた処理により行うことができる。
【0080】
そのような反応に用いる2−ヨードキシ安息香酸(IBX)のような古典的酸化剤を用いてアルコールを酸化することでアルデヒド誘導体を得ることもできる。
【0081】
工程d2:
この工程は、周知のハロゲン化剤を用いてアルコール誘導体を直接ハロゲン化することにより行うことができ、あるいは、好ましくは、式(IId)の化合物のアルコール部分を脱離基(例えばメタンスルホニルオキシまたはp−トルエンスルホニルオキシ)に変換し、さらにアルカリ金属ハロゲン化物(例えばLiBrまたはNaI)等のハロゲン化誘導体を用いた求核置換を行うことにより行うことができる。
【0082】
工程e2:
この工程は、抽出、蒸発、または沈殿および濾過等の当業者に周知の方法により行うことができる。
【0083】
必要であれば、得られた化合物を古典的方法、例えば、化合物が結晶性であれば結晶化により、あるいは蒸留、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりさらに精製してもよい。
【0084】
保護および脱保護する補足的工程が必要になることもあり、必要な場合には当業者はそのような方法を同定することができる。
【実施例】
【0085】
1.本発明の化合物の化学合成
1.1.全般に関する情報
・有機金属を含む実験はアルゴン雰囲気下で行った。湿気の影響を受けやすい(moisture−sensitive)反応物質は全てアルゴン雰囲気下で扱った。
・低温実験は、ドライアイスで凍結したアセトン浴を用いてフラスコを冷却することにより行った。フラスコにはセプタムキャップを取り付けた。
・特に断りのない限り、全ての化合物はラセミ混合物として製造した。
【0086】
1.2.式(II)の化合物の合成
●Boc−Ser−OMe(1)
【0087】
【化14】

文献:J. Chem.Soc. Perkin Trans I 1999, 3697
【0088】
0℃に冷却されたセリンメチルエステル塩酸塩(4.4g、28mmol、1当量)のジクロロメタン(20mL)懸濁液に、トリエチルアミン(7.73mL、61.6mmol、2.2当量)を添加し、次いで、予めジクロロメタン(20mL)に可溶化させたBocO(6.86g、30.8mmol、1.1当量)を添加した。この混合物を室温に温めて一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、油状粗生成物を酢酸エチル(25mL)中に取り、1N KHSO(2×20ml)、1N NaHCO(20mL)、ブライン(20mL)で続けて洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、所望の生成物6.0g(収率98%、黄色油状物)を得た。これはさらに精製することなく使用した。
【0089】
得られたH NMRおよび13C NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・IR(フィルム):3390、2978、1744、1697、1514、1368、1165cm−1
【0090】
●Boc−ΔAla(N−Boc)−OMe(2)
【0091】
【化15】

文献:J. Chem.Soc. Perkin Trans I 1999, 3697
【0092】
0℃に冷却したBoc−Ser−OMe 1(36.6g、167mmol、1当量)のアセトニトリル(160mL)溶液に、DMAP(4.08g、33.4mmol、0.2当量)を添加し、次いで、BocO(82.7g、367mmol、2当量)を何回かに分けて(portionwise)添加した。この混合物を室温で15分間撹拌し、その後、出発物質が完全に消費されるまで(TLCモニタリング)60℃に加熱した。溶媒を真空下で除去し、得られた油状粗精製物を酢酸エチル(100mL)中に取り、1N KHSO(2×100mL)、1N NaHCO(100mL)、ブライン(100mL)で続けて洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた油状物を約−20℃で一晩保存し、48.8gの所望の生成物(収率97%、白色固体)を白色固体として得た。これはさらに精製せずに用いた。
【0093】
注:大規模の合成では、大量の二酸化炭素が形成されるため、最初の何回分かのBocOは非常にゆっくりとDMAPに添加する必要がある。
【0094】
得られたH NMRおよび13C NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・IR(フィルム):1795、1755、1732cm−1
・元素分析
計算値:C 55.80%;H 7.69%;N 4.65%
実測値:C 55.87%;H 7.47%;N 4.68%
【0095】
●メチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)アミノ−2−フルオロ−2−メトキシカルボニルシクロプロピルカルボキシラート(II−1)
【0096】
【化16】

【0097】
窒素下、Boc−ΔAla(N−Boc)−OMe 2(20.5g、68.2mmol、1当量)およびジブロモフルオロ酢酸エチル(19.6mL、136.4mmol、2当量)の乾燥THF(60mL)溶液を50℃に加熱した。シリンジポンプを用いて、1Nのジエチル亜鉛を含むヘキサン(137mL、137mmol、2当量)を2時間かけて滴下し、得られた混合物をこの温度で3時間撹拌した。室温に冷却した後、混合物を、水(150mL)とジエチルエーテル(150mL)の撹拌混合物に注いだ。この異種混合物を、セライトパッドで濾過し、有機層を分離し、ジエチルエーテルで水層を抽出した。有機層を集め、100mLのブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒を除去して33gの粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製し、シスおよびトランスジアステレオ異性体の混合物(67:33)として17.4g(63%、黄色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0098】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルはシスおよびトランスジアステレオ異性体の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);428.20[M+Na](45)、833.20[2M+Na](100)
・IR(フィルム):3445、1799、1748、1371、1278、1255、1159、1122、1101、1027、855、785cm−1
・元素分析
計算値:C 53.33%;H 6.96%;N 3.45%
実測値:C 52.95%;H 6.64%;N 3.71%
【0099】
●メチル1−(N−terブチルオキシカルボニル)アミノ−2−エチルオキシカルボニルシクロプロピル−カルボキシラート(II−2)
【0100】
【化17】

文献:J. Org. Chem. 1988, 53, 3843
【0101】
II−1(824mg、2.0mmol、1当量)をアルゴン下で乾燥ジクロロメタン(2mL)に可溶化した。トリフルオロ酢酸(226μL、3.0mmol、1.5当量)を添加し、混合物を室温で22時間撹拌した。次いで、混合物をEtO(60mL)に注ぎ、10%水酸化ナトリウム水溶液(10mL)、ブライン(10mL)で続けて洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒を除去して、シスおよびトランスジアステレオ異性体の混合物(67:33)として610mg(98%、黄色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0102】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルはシスおよびトランスジアステレオ異性体の構造と一致する。
・MS(CI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);206(20)、250(100)、306[M+H](38)
・IR(フィルム):3366、746、1504、1440、1371、1282、1253、1218、1163、1095、915、860、778、734
【0103】
●メヒル1−アミノ−2−エチルオキシカルボニルシクロプロピル−カルボキシラート(II−3)
【0104】
【化18】

文献:J. Org. Chem. 1988, 53, 3843
【0105】
生成物II−2から
0℃に冷却した、II−2(600mg、1.96mmol、1当量)を含むメタノール(13mL)の溶液に、5〜6MのHClのイソプロパノール溶液(3.6mL、約10当量)を添加した。混合物をこの温度で5時間撹拌した。溶媒の除去により油状の粗生成物を得、これをEtO(5mL)中に取った。得られた沈殿固体を濾過し、EtO(2×2mL)で洗浄し、シスおよびトランス異性体の混合物(76:24)として331mg(70%)の所望の生成物を得た。
【0106】
生成物II−1から
II−1(147mg、0.36mmol、1当量)を、0℃に冷却したHCl飽和EtOAc溶液(5mL)に可溶化した。混合物をこの温度で2時間撹拌した。溶媒を除去し、得られた油状粗生成物をEtO(5mL)中に取った。得られた沈殿固体を濾過し、EtO(2×2mL)で洗浄して、シスおよびトランス異性体の混合物(82:18)として49mg(57%、白色固体)の所望の生成物を得た。
【0107】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルはシスおよびトランスジアステレオ異性体の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);185.93(35)、205.93[M+H](100)
・IR(KBr):3138、3008、2674、1766、1544、1407、1279、1196、1172、1023、968、747cm−1
・元素分析
計算値:C 39.76%;H 5.42%;N 5.80%
実測値:C 39.64%;H 5.76%;N 5.76%
【0108】
●シス型の2−(N,N−ジ−tert−ブトキシカルボニル)アミノ−1−フルオロ−2−メトキシカルボニルシクロプロピルメタン酸(cis−II−4)
【0109】
【化19】

文献:Bioorg. Med. Chem. 2006, 4193
【0110】
II−I(19.83g、48.9mmol、1当量)を、THF:水(10:1)の溶液(300mL)に可溶化し、0℃に冷却した。水酸化リチウムのモル溶液(73mL、73mmol、1.5当量)を滴下し、混合物をこの温度で2時間撹拌した。次いで、1NのHCl溶液を添加することで溶液をpH=2に酸性化し、EtOAcで抽出した(3×200mL)。溶媒を除去し、油状混合物をEtO中に取った。ナトリウム塩の形態の所望の酸cis−II−4を0.5NのNaCOを用いて抽出し(3×100mL)、有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、7.05g(36%)のトランス−II−1を得た。水層を、4NのHClを添加して0℃で再度pH=2に酸性化し、ジエチルエーテルで抽出し(4×100)、MgSOで乾燥させ、濃縮し、11.43g(62%、黄色油状物)のcis−II−4を得た。
【0111】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI)、ポジティブモード:m/z 400.20[M+Na];ネガティブモード:m/z 376.73[M−H]
・IR(フィルム):3500、2981、2927、1748、1371、1283、1156、1112、852、772cm−1
・元素分析
計算値:C 50.92%;H 6.41%;N 3.71%
実測値:C 51.13%;H 6.65%;N 3.76%
【0112】
さらに、2つの光学異性体(cis−II−4aおよびcis−II−4b)の一方だけが濃縮された(すなわち、ほとんど純粋な形態の)cis−II−4バッチを非常に高い再現性で得るために、以下に記載する標準的な手法に従い、ラセミ体cis−II−4のキラル分割を行った。
【0113】
そこで、最初の結晶化は以下の量に基づく:
−1.00gの結晶化ラセミ体cis−II−4(2.65mmol)
−0.438gのエナンチオピュアな(−)−エフェドリン(2.65mmol)
−この結晶化が(−)−エフェドリン半水和物を用いて行われる場合、最初に導入する質量は0.462gである。最小限の酢酸エチルに溶解させた後、真空下で溶媒を除去(T=50℃、P#6〜8mbar)することにより、水を取り除いて乾燥固体を得ることができる。
【0114】
(−)−エフェドリン塩が形成されると1.438gの固体になるはずである。一方の結晶化した塩だけが形成されるように、導入される酢酸エチルの量は全混合物の96.2重量%でなければならない。
【0115】
【表4】

【0116】
反応物質を室温で一緒に混合する。数分間激しく撹拌(マグネチックスターラーを使用)した後、最初の固体粒子が見られる。混合物をこれらの条件下で少なくとも24時間撹拌し、焼結ガラス漏斗を用いて結晶を濾過する。次いで、換気された40℃のオーブン中にて数時間、固体を濾紙上で乾燥させる。この結晶化の収率は、最初のcis−II−4バッチの純度に大きく依存する。この特定の例では、収率は11.1%であり、これは得られた塩160mgに相当し、鏡像体過剰率は100%に近い。酸加水分解(後述)後に純粋なエナンチオマー(α)−cis−II−4が得られる。
【0117】
結晶化されない化合物のロスを避けるために、焼結漏斗を酢酸エチルで洗浄する。液相を、風袋の重さを量った(tared)丸底フラスコ中で母液と混ぜ、真空中で溶媒を除去する。化合物のロスがなければ、回収される固体の総質量は1.278gに近くなければならない。次いで、cis−II−4放出手順を実施し、粘性固体を得る。各エナンチオマーの割合を評価するために、この相の鏡像体過剰率をクロマトグラフィー(HPLCまたはGC)で測定してもよい。一般的に液相から回収された生成物で測定されるeeは15〜20%に含まれ、この特定の例では、15%eeである(すなわち、回収された混合物は42.5重量%の(α)−cis−II−4および57.5重量%の(β)−cis−II−4から構成される)。
【0118】
この固体に、無水(+)−エフェドリンを添加する:
−0.889gの、鏡像体過剰率が15〜20%のcis−II−4、
−0.389gの(+)−エフェドリン、
−(+)−エフェドリン半水和物の場合、導入する質量は0.410gであり、上記と同じ手順を用いる。
【0119】
(+)−エフェドリン塩が形成されると1.278gの固体が得られるはずである。一方の結晶化した塩だけが形成されるように、導入される酢酸エチルの量は全混合物の95.56重量%でなければならない。
【0120】
【表5】

【0121】
前述の手順を用いて、酢酸エチル中で化合物を24時間結晶化し、焼結ガラス漏斗を用いて濾過する。得られる塩は、(β)−cis−II−4が濃縮されており、鏡像体過剰率は100%に近い。
【0122】
上記と同様に母液を処理すると、15%eeのcis−II−4の両エナンチオマー混合物が得られる。したがって、混合物が完全に分離されるまで、同じ重量パーセントの割合を次の結晶化にも適用することができ、これは一般的ではない。
【0123】
cis−II−4エフェドリン塩の酸加水分解を介したcis−II−4の放出手順は以下の通りである:
cis−II−4は固体結晶化塩または液相(母液)のいずれかから放出させることができる。後者の場合、固体を得るまで、真空下での溶媒の除去が必要である。どちらの場合も、以下の表に記載の割合を用いて、0.1Mの塩酸溶液を添加した後に遊離の酸が放出される。
【0124】
【表6】

(a)エフェドリン塩の分子量:540.60g・mol−1
【0125】
遊離酸形態のcis−II−4を放出させるために、1.2×18.4mlの0.1M HCl(すなわち22.08mL)を、マグネチックスターラ−で激しく撹拌しながらcis−II−4エフェドリン塩に添加する。非常に粘性の高い固体が沈殿し、これにジエチルエーテル(18.4mL)を添加して溶解および抽出する。相を分離し、さらに3×18.4mlのEtOを用いて水相を抽出する。有機層を合わせ、撹拌しながら30分間MgSOで乾燥させ、真空中で濾過および蒸発を行い、cis−II−4を得る。
【0126】
●トランス型の2−(N,N−ジ−tert−ブトキシカルボニル)アミノ−1−フルオロ−2−メトキシカルボニルシクロプロピルメタン酸(trans−II−4)
【0127】
【化20】

文献:Bioorg. Med. Chem. 2006, 4193
【0128】
ジエステルtrans−II−1(1.64g、4.04mmol、1当量)をTHF:水(5:2)溶液(70mL)に可溶化し、0℃に冷却した。水酸化リチウムのモル溶液(4.45mL、4.45mmol、1.1当量)を滴下し、混合物を室温に温め、20時間撹拌した。次いで、1N HCl溶液を添加して溶液をpH3に酸性化し、ジエチルエーテル(200mL)で抽出した。有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮し、1.31g(86%、黄色油状物)のtrans−II−4を得た。
【0129】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI、ネガティブモード):m/z 376.36[M−H]
・IR(フィルム):3438、2981、1747、1371、1289、1158、1108、855、772cm−1
【0130】
2つの光学異性体(trans−II−4aおよびtrans−II−4b)の一方だけが濃縮された(すなわち、ほとんど純粋な形態の)trans−II−4バッチを非常に高い再現性で得るために、上記のcis−II−4の場合と同様に、ラセミ体trans−II−4のキラル分割を行った。
【0131】
●シス型のメチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)−2−(N、O−ジメチルヒドロキシルアミノカルボニル)−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(cis−II−5)
【0132】
【化21】

【0133】
cis−II−4(140mg、0.34mmol、1当量)およびN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(53mg、0.54mmol、1.6当量)の乾燥ジクロロメタン(1mL)溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(72mg、0.34mmol、1当量)を添加した。混合物を室温で10分間撹拌し、トリエチルアミン(192μL、1.38mmol、4当量)を添加した。出発物質の消費は19F NMRにより調節した。溶媒を真空下で除去し、粗混合物をアセトン中に取り、濾過および濃縮した。油状の残渣をジクロロメタン(10mL)に溶解し、1Nの炭酸ナトリウム(10mL)およびブライン(10mL)で続けて洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮し、90mg(62%、黄色油状物)の所望の生成物cis−II−5を得た。
【0134】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);264.93(7)、343.00(12)、443.07[M+Na](100)
・IR(フィルム):3445、1799、1748、1371、1278、1255、1223、1159、1101、1027、855、785cm−1
【0135】
●トランス型のメチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)−2−(N,O−ジメチルヒドロキシルアミノカルボニル)−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(trans−II−5)
【0136】
【化22】

【0137】
化合物trans−II−4(54mg、0.14mmol、1当量)、アラニンメチルエステル塩酸塩(31mg、0.16mmol、1.1当量)、HOBT(21mg、0.15mmol、1.05当量)、およびN−メチルモルホリン(48μL、0.44mmol、3.05当量)を乾燥ジクロロメタン(5mL)に可溶化した。EDCI(29mg、0.15mmol、1.05当量)を添加し、混合物を室温で36時間撹拌した。水(10mL)を用いて反応を停止させ、ジクロロメタン(3×10mL)で抽出し、有機層をブライン(10mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。油状の粗生成物をシリカゲル(10%EtOAcを含むシクロヘキサン)上で精製し、ジアステレオ異性体の混合物(1:1)として51mg(77%、白色固体)のtrans−140を得た。
【0138】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);443.07[M+Na](39)、420.40[M+H](20)、320.87(38)、264.93(100)、200.93(26)
・IR(フィルム):3400、2924、1745、1667、1434、1368、1278、1167、1122、1028、863、771cm−1
・元素分析
計算値:C 51.42%;H 6.95%;N 6.66%
実測値:C 51.69%;H 6.98%;N 6.49%
【0139】
●シス型のメチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)−2−(ヒドロキシメチル)−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(cis−II−6)
【0140】
【化23】

【0141】
カルボン酸cis−II−4(16.0g、42.5mmol、1当量)を0℃、アルゴン下で無水THF(250mL)に溶解した。BH・THFの1M溶液(130mL、130mmol、3当量)を30分間かけて滴下した。反応液を室温まで温め、一晩撹拌した。完了後(TLCおよび19F NMRによりモニタリング)、水(150mL)を滴下することで反応停止させ、EtO(100mL)、酢酸ジエチル(2×100mL)で抽出し、ブライン(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒の除去およびカラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)による精製により、15.07g(97%、黄色油状物)の純粋な所望のアルコールcis−II−6が得られた。
【0142】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);207.87(83)、286.00(22)、385.93[M+Na](92)、748.93[2M+Na]
・IR(フィルム):3436、2924、2854、1736、1456、1370、1281、1157、1121、1042、762cm−1
【0143】
●トランス型のtrans−メチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)−2−(ヒドロキシメチル)−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(trans−II−6)
【0144】
【化24】

【0145】
カルボン酸trans−II−4(3.40g、9.0mmol、1当量)をアルゴン下で無水THF(30mL)に可溶化した。BH・THF複合体(63mL、63mmol、7当量)の1M溶液を20分間かけて滴下した。反応液を室温に温めて一晩撹拌した。完了後(TLCおよび19F NMRによりモニタリング)、2M HCl(20mL)で反応を停止させた。水を添加し(50mL)、混合物をEtOで抽出した。有機相を合わせ、NHCl、水、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。得られた油状粗油を、カラムクロマトグラフィー(9%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製し、3.16g(97%、無色油状物)の純粋な所望のアルコールを得た。
【0146】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);363.80[M+H](34)、381.00[M+H0](48)、386.07[M+Na](36)、743.60[2M+HO](100)、748.93[2M+Na]
・IR(フィルム):3418、2930、2359、1746、1435、1370、1248、1157、1123、1046、849、771cm−1
【0147】
●シス型のメチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)−2−(オキソメチル)−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(cis−II−7)
【0148】
【化25】

【0149】
還元的手順
冷却した(−78℃)cis−II−5(150mg、0.35mmol、1当量)の乾燥THF(2.5mL)溶液に、1N ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL−H)のジクロロメタン(0.53mL、0.53mmol、1.5当量)溶液を−78℃で滴下した。得られた混合物を同じ温度で3時間撹拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液(1mL)を添加することにより反応を停止させた。室温まで温めた後、1N HCl(2mL)を添加し、有機層をジエチルエーテルで抽出し(3×5mL)、飽和炭酸水素ナトリウム(sodium hydrogenocarbonate)水溶液(2mL)およびブライン(2mL)で続けて洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、溶媒を除去し、油状粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチルを含むシクロヘキサン)により精製し、60mg(47%、黄色油状物)の純粋な所望のアルデヒドを得た。
【0150】
酸化的手順
cis−II−6(1当量)を含む非留出物EtOAc(0.5M)の溶液に、IBX(3当量)を添加した。得られた懸濁液を環流しながら撹拌下で加熱した。反応の終りをTLCでモニタリングした。溶媒を除去し、得られた白色の異成分からなる(heterogeneous)油状物をジエチルエーテル中に取り、濾過した。ろ液を減圧下で濃縮し、量的に所望のアルデヒドを得た。これは、さらに精製することなく用いてもよく、カラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチルを含むシクロヘキサン)により精製してもよい。
【0151】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);162.13(10)、316.33(6)、384.27(11)、416.27[M+MeOH+Na](100)、609.80(15)、745.33[2M+Na]
・IR(フィルム):3426、1799、1736、1458、1369、1276、1254、1156、1121、829、784cm−1
・元素分析
計算値:C 53.18%;H 6.69%;N 3.88%
実測値:C 53.34%;H 6.78%;N 3.77%
【0152】
●トランス型のtrans−メチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)−2−カルボニル−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(trans−II−7)
【0153】
【化26】

【0154】
上記cis−II−7の調製と同じ手順をtrans−II−5またはtrans−II−6に用いて、化合物trans−II−7を黄色油状物として得た。
【0155】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・IR(フィルム):3393、2980、1737、1439、1370、1253、1159、1123、850、773cm−1
・元素分析
計算値:C 53.18%;H 6.69%;N 3.88%
実測値:C 53.47%;H 6.76%;N 4.06%
【0156】
●シス型のメチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)アミノ−2−ビニル−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(cis−II−8)
【0157】
【化27】

【0158】
アルゴン下、0℃に冷却されたメチルホスホニウムブロミド(222mg、0.62mmol、1.5当量)の乾燥THF(2mL)溶液に、nBuLi(0.27mL、0.62mmol、1.5当量)を添加した。15分間撹拌した後、混合物を−78℃に冷却した。別の反応器中で、アルデヒドcis−II−7(150mg、0.41mmol、1当量)を乾燥THFに可溶化し、4Åのモレキュラーシーブと共に撹拌した。アルデヒド溶液を−78℃に冷却し、イリドを含む反応器に、カニューレを用いて液滴により移した。得られた混合物をゆっくりと−60℃に温め(4h)、THF/水(9:1)溶液(10mL)を添加することで反応を停止させ、室温に温めた。得られた異成分からなる混合物にジエチルエーテルを用いて抽出を行い(3×10mL)、ブラインで洗浄し(10mL)、MgSOで乾燥させた。溶媒を除去し、180mgの粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製することで、42mg(19%、無色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0159】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);741.07[2M+Na](100)、735.87[2M+HO](52)、359.47[M+H](10)
・IR(フィルム):3436、2926、1799、1736、1369、1282、1157、1121、1100、772cm−1
・元素分析
計算値:C 56.81%;H 7.29%;N 3.90%
実測値:C 56.90%;H 7.30%;N 3.73%
【0160】
●シス型のメチル1−アミノ−2−ビニル−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(cis−II−9)
【0161】
【化28】

【0162】
0℃のcis−II−8(252mg、0.7mmol、1当量)のEtOAc(30mL)溶液をHCl(g)で飽和させた。出発物質の消費をTLCでモニタリングした。溶媒を蒸発させ、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄して、88mgの所望の生成物(65%、無色の固体)を得た。これはさらに精製することなく用いた。
【0163】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
【0164】
●シス型のメチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)アミノ−2−(2’−エトキシカルボニル)ビニル−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(cis−II−10)
【0165】
【化29】

【0166】
アルデヒドcis−II−7(380mg、1.05mmol、1当量)、臭化リチウム(184mg、2.1mmol、2当量)、およびホスホノ酢酸トリエチル(0.425mL、2.1mmol、2当量)のTHF(5mL)溶液を、臭化リチウムが完全に溶解するまで室温で撹拌した。トリエチルアミン(0.293mL、2.1mmol、2当量)を滴下し、混合物を一晩撹拌した。次いで、セライトパッドで濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製し、414mg(91%、無色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0167】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);885.07[2M+Na](100)、879.93[2M+HO](54)、454.07[M+Na](20)、432.27[M+H](16)
・IR(フィルム):3440、2981、2933、1800、1732、1369、1278、1157、1120、1099、853、766cm−1
【0168】
●トランス型のtrans−メチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)−2−(2’−エトキシカルボニル)ビニル−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(trans−II−10)
【0169】
【化30】

【0170】
アルデヒドtrans−II−7(639mg、1.77mmol、1当量)、臭化リチウム(308mg、3.55mmol、2当量)、およびホスホノ酢酸トリエチル(0.705mL、3.55mmol、2当量)のTHF溶液(10mL)を臭化リチウムが完全に可溶化するまで室温で撹拌した。トリエチルアミン(0.495mL、3.55mmol、2当量)を添加し、混合物を3日間撹拌した。次いで、セライトパッドで濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製して、211mg(91%、無色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0171】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);470.03[M+K](39)、454.06[M+Na](100)
・IR(フィルム):3437、2980、2930、1747、1722、1370、1279、1164、1123、1033、854、786cm−1
・元素分析
計算値:C 55.68%;H 7.01%;N 3.25%
実測値:C 55.73%;H 6.75%;N 3.33%
【0172】
●シス型のメチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)アミノ−2−(2’−ヒドロキシカルボニル)ビニル−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(cis−II−11)
【0173】
【化31】

【0174】
cis−II−10(414mg、0.96mmol、1当量)のTHF:HO(3:4)溶液に1.2N 水酸化リチウム水溶液(16mL)を添加し、得られた混合物を、出発物質が消費されるまで(NMRモニタリング)室温で撹拌した。0℃で混合物に4Nの塩酸溶液をpH=2になるまで滴下することにより反応を停止させた。有機層を分離し、水層をEtOAc(3×10mL)で抽出した。有機層を集め、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒を除去し、純粋な所望の生成物を大量に(無色油状物)得た。
【0175】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);801.00[2M+Na](48)、795.87[2M+HO](100)
・IR(KBr):3216、3112、2982、1791、1730、1708、1693、1365、1304、1264、1161、1113、991、936、854、826、783、676cm−1
・元素分析
計算値:C 52.44%;H 6.21%;N 3.60%
実測値:C 52.41%;H 6.32%;N 3.58%
【0176】
●シス型のメチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)アミノ−2−(2’−エトキシカルボニル)エチル−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(cis−II−12)
【0177】
【化32】

【0178】
cis−II−10(1.9g、4.4mmol)および触媒量のパラジウム炭素のTHF(20mL)懸濁液を水素で飽和させた。この懸濁液を出発物質が消費されるまで室温で撹拌し、濾過した。溶媒を除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製して、1.62g(86%、無色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0179】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);889.07[2M+Na](83)、456.00[M+Na](100)
・IR(フィルム):3437、2981、1736、1368、1278、1254、1158、1119、1028、855、785cm−1
・元素分析
計算値:C 55.42%;H 7.44%;N 3.23%
実測値:C 55.69%;H 7.72%;N 3.14%
【0180】
●トランス型のメチル1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)アミノ−2−(2’−エトキシカルボニル)エチル−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(trans−II−12)
【0181】
【化33】

【0182】
上記cis−II−12の製造と同じ手順をtrans−II−10に行い、化合物trans−II−12を無色油状物として収率87%で得た。
【0183】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);471.96[M+K](29)、455.99[M+Na](100)、451.00[M+HO](46)
・元素分析
計算値:C 55.42%;H 7.44%;N 3.23%
実測値:C 55.59%;H 7.69%;N 3.53%
【0184】
●シス型の1−(N,N−ジterブチルオキシカルボニル)アミノ−2−(2’−ヒドロキシカルボニル)エチル−2−フルオロシクロプロピルカルボン酸(cis−II−13)
【0185】
【化34】

【0186】
cis−II−12(1.48g、3.4mmol、1当量)および水酸化リチウム(1.63g、68mmol、20当量)のTHF:HO=2:1溶液(40mL)を環流しながら一晩加熱した。有機溶媒を真空下で除去した。得られた水溶液をジエチルエーテルで洗浄し、pH=1に酸性化した。次いで、水層をジエチルエーテルで5時間連続的に抽出した。溶媒を除去し、得られた黄色油状固体をEtO/ペンタンから再結晶化し、純粋な所望の生成物(白色固体)を得た。
【0187】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);390.93[M+H](100)
・IR(KBr):3407、2987、2936、1728、1651、1415、1286、1223、1164、1060、903、834、797、678、630cm−1
・元素分析
計算値:C 52.17%;H 6.70%;N 3.58%
実測値:C 51.82%;H 6.75%;N 3.36%
【0188】
●cis−II−14
【0189】
【化35】

【0190】
アルデヒドcis−II−7(2.48g、6.86mmol、1当量)、臭化リチウム(1.2g、13.7mmol、2当量)、およびテトラエチルメチレンジホスホナート(Aboujaoude, E.E. et al. Tetrahedron Lett. 1985, 26, 4435に従って調製)(3.4mL、13.7mmol、2当量)のTHF(12mL)溶液を臭化リチウムが完全に可溶化するまで室温で撹拌した。トリエチルアミン(1.91mL、13.7mmol、2当量)を滴下し、混合物を一晩撹拌した。次いで、セライトパッドで濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製して、2.67g(79%、無色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0191】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);518.07[M+Na](19)、512.93[M+HO](100)、495.80[M+H](17)
・IR(フィルム):3421、2983、2930、1732、1644、1229、1161、1045、959、814cm−1
・元素分析
計算値:C 50.91%;H 7.12%;N 2.83%
実測値:C 51.31%;H 6.85%;N 3.12%
【0192】
●trans−II−14
【0193】
【化36】

【0194】
上記と同じ手順をアルデヒドtrans−II−7に用いて、化合物trans−II−14を無色油状物として収率59%で得た。
【0195】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);533.90[M+K](19)、518.00[M+Na](40)、512.81[M+HO](100)
・IR(フィルム):3439、2983、2932、1797、1746、1370、1280、1250、1158、1124、1027、970、854、787cm−1
【0196】
●cis−II−15
【0197】
【化37】

【0198】
cis−II−14(2.2g、4.4mmol)および触媒量のパラジウム炭素のTHF(20mL)懸濁液を水素で飽和させた。この懸濁液を、出発物質が消費されるまで室温で撹拌し、パラジウム炭素を濾別した。溶媒を除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製し、1.12g(51%、無色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0199】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);498.04[M+H(100)
・IR(フィルム):3452、2982、2935、1798、1735、1439、1368、1277、1253、1219、1162、1120、1097、1057、1028、965、853、822、787cm−1
【0200】
●trans−II−15
【0201】
【化38】

【0202】
上記cis−II−15の製造と同じ手順をtrans−II−14に用いて、化合物Trans−II−15を無色油状物として収率83%で得た。
【0203】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);536.03[M+K](30)、520.13[M+Na](86)、514.94[M+HO](100)
【0204】
●cis−II−16
【0205】
【化39】

【0206】
アルゴン化、アルデヒドcis−II−7(1当量)およびトリエチルアミン(0.25当量)の乾燥THF(0.6M)溶液にホスホン酸ジエチルを滴下した(1.1当量)。混合物を、出発物質が消費されるまで(TLCモニタリング)室温で撹拌した。溶媒を除去し、得られた油状生成物をジエチルエーテル/酢酸エチルの1:1混合物中に取り、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製し、単一のジアステレオ異性体として純粋な所望の生成物を得た。
【0207】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);538.00[M+K](33)、521.87[M+Na](41)、500.07[M+H] (100)
・IR(フィルム):3439、2982、2934、1794、1734、1439、1369、1280、1251、1162、1125、1103、1051、1025、972、785、733cm−1
・元素分析
計算値:C 48.09%;H 7.06%;N 2.80%
実測値:C 47.86%;H 7.15%;N 2.77%
【0208】
●trans−II−16
【0209】
【化40】

【0210】
上記cis−II−16の製造と同じ手順をtrans−II−7に用いて、化合物trans−II−16を無色油状物として収率83%で得た。
【0211】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);522.06[M+Na](77)、516.87[M+HO](41)、499.77[M+H](100)
・IR(フィルム):3342、2989、1748、1456、1370、1251、1161、1099、1026、762、668cm−1
・元素分析
計算値:C 48.09%;H 7.06%;N 2.80%
実測値:C 48.12%;H 7.12%;N 2.81%
【0212】
●cis−II−17
【0213】
【化41】

【0214】
撹拌した0℃のアルコールcis−II−6(644mg、1.77mmol、1当量)およびトリエチルアミン(0.21mL、3.63mmol、2.05当量)のEtO(10mL)溶液に、メタンスルホニルクロリド(0.50mL、2.66mmol、1.5当量)を滴下した。得られた懸濁液を、完了まで(TLCモニタリング)、撹拌しながら室温に温めた。次いで、水(5mL)を添加することにより反応を停止させ、ブラインを添加した(5mL)。有機層をEtO(3×10mL)で抽出し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(5〜10%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製し、752mg(96%、無色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0215】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);904.93[2M+Na](74)、479.87[M+K](38)、463.93[M+Na](83)、458.87[M+HO](100)、329.73(96)、285.80(54)、241.93(72)
・IR:3422、2981、2934、1797、1734、1368、1279、1255、1176、1121、1102、965、851、824、771、528cm−1
・元素分析
計算値:C 46.25%;H 6.39%;N 3.17%
実測値:C 46.16%;H 6.26%;N 3.22%
【0216】
●trans−II−17
【0217】
【化42】

【0218】
上記と同じ手順をtrans−II−6に用いて、化合物trans−II−17を収率45%で得た。
【0219】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ネガティブモード):m/z(相対的存在量);(ESI/ポジティブモード):904.88[2M+Na](68)、479.65[M+K](22)、463.78[M+Na](93)
・元素分析
計算値:C 46.25%;H 6.39%;N 3.17%
実測値:C 46.49%;H 6.54%;N 3.18%
【0220】
●メチル1−(N−terブチルオキシカルボニル)−2−ブロモメチル−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(II−18)
【0221】
【化43】

【0222】
マイクロウェーブ反応器中で、メシル化アルコールII−17(シスとトランスの混合物)(457mg、1.03mmol、1当量)および臭化リチウム(359mg、4.14mmol、4当量)の乾燥THF(5mL)溶液を、臭化リチウムが完全に可溶化するまで撹拌した。次いで、混合物にマイクロウェーブ(220ワット、2.0バール、100℃)を30分間照射した。得られた混合物をカラムクロマトグラフィー(5〜10%酢酸エチルを含むシクロヘキサン)により直接精製し、211mg(65%、茶色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0223】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(CI):m/z(相対的存在量);326.00[M](53)、270.00(100)
・IR(フィルム):3370、2925、1726、1504、1438、1368、1327、1250、1166、1076、1049、773cm−1
【0224】
●メチル1−(N−トリフルオロメチルカルボニル)−2−(メチルスルホニルオキシメチル)−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(II−19)
【0225】
【化44】

文献:J. Org. Chem. 2007, 50, 3585
【0226】
II−17(シスとトランスの混合物)(1当量)を含む塩酸飽和酢酸エチル溶液を2時間(TLCモニタリング)室温で撹拌した。溶媒を除去し、得られた固体をジクロロメタンに懸濁した。トリフルオロ無水酢酸(1当量)を滴下し、混合物を室温で1時間撹拌した。ジクロロメタンを蒸発させ、残ったトリフルオロ酢酸をトルエンと共蒸発させた。得られた生成物は、さらに精製することなく用いた。
【0227】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・IR(フィルム):3419、2923、1732、1441、1357、1173、1094、1047、962、811cm−1
【0228】
●メチル1−(N−トリフルオロメチルカルボニル)−2−ブロモメチル−2−フルオロシクロプロピルカルボキシラート(II−20)
【0229】
【化45】

【0230】
上記II−19の製造と同じ手順をII−18に用いて、化合物II−20を無色油状物として収率83%で得た。
【0231】
得られたH NMRおよび19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
【0232】
●cis−II−21
【0233】
【化46】

【0234】
メシル化アルコールcis−II−17(4.30g、9.74mmol、1当量)の乾燥アセトン(200mL)溶液にヨウ化ナトリウム(11.6g、77.92mmol、8当量)およびテトラn−ブチルヨウ化アンモニウム(1.80g、4.87mmol、0.5当量)を添加した。得られた混合物を撹拌し、環流しながら完了まで(19F NMRおよびTLCによりモニタリング)加熱した。溶媒を除去し、得られた油状粗生成物を酢酸エチル中に取り、Naの10%水溶液、水、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒の除去により、5.17gの粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製し、3.18g(68%、橙色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0235】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);968.73[2M+Na](100)、496.07[M+Na](27)
・IR(フィルム):3412、2979、1799、1731、1436、1368、1279、1254、1156、1116、853、785cm−1
・元素分析
計算値:C 40.60%;H 5.32%;N 2.96%
実測値:C 40.62%;H 5.34%;N 2.88%
【0236】
●trans−II−21
【0237】
【化47】

【0238】
上記と同様な手順(カラムクロマトグラフィーによる精製を除く)をtrans−II−17に用いて、化合物trans−II−21(粗収率40%)を得た。
【0239】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ネガティブモード):m/z(相対的存在量);(ESI/ポジティブモード):968.45[2M+Na](95)、496.37[M+Na](58)
・IR(フィルム):3410、2979、1778、1734、1456、1368、1110、859cm−1
【0240】
●cis−II−22
【0241】
【化48】

【0242】
アルゴン下、cis−II−21(238mg、0.50mmol、1当量)を含む蒸留された亜リン酸トリエチル(3mL)混合物を、密封したチューブ中で変換完了まで(19NMRおよびTLCによりモニタリング)120℃に加熱した。次いで、過剰な亜リン酸塩を加熱せずに真空下で除去し、得られた油状粗生成物をカラムクロマトグラフィー(30%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製し、91mg(37%、無色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0243】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);988.73[2M+Na](100)、983.80[2M+HO](76)、585.13[M+TEA+H](48)、506.27[M+Na](32)、484.13[M+H](46)
・IR(フィルム):3438、2982、2924、1723、1444、1369、1247、1217、1024、964、795cm−1
・元素分析
計算値:C 49.69%;H 7.30%;N 2.90%
実測値:C 49.85%;H 7.32%;N 2.63%
【0244】
●trans−II−22
【0245】
【化49】

【0246】
上記と同様な手順をtrans−II−21に用いて、化合物trans−II−22を収率40%で得た。
【0247】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ネガティブモード):m/z(相対的存在量);(ESI/ポジティブモード):988.55[2M+Na](100)
【0248】
●cis−II−23
【0249】
【化50】

【0250】
アルゴン下、ヨウ化物II−21(74mg、0.16mmol、1当量)を含む蒸留された亜リン酸トリイソプロピル(1mL)混合物を、密封チューブ中で変換完了まで(19NMRおよびTLCによりモニタリング)150℃に加熱した。次いで、過剰な亜リン酸塩を加熱せずに真空下で除去し、得られた油状粗生成物をカラムクロマトグラフィー(30%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製し、23mg(37%、無色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0251】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);534.13[M+Na](37)、512.13[M+H](100)
・元素分析
計算値:C 51.66%;H 7.68%;N 2.74%
実測値:C 51.79%;H 7.63%;N 2.84%
【0252】
●L−Ala−OMeとcis−II−4のカップリング生成物(cis−II−24)
【0253】
【化51】

【0254】
化合物cis−II−4(146mg、0.38mmol、1当量)、アラニンメチルエステル塩酸塩(83mg、0.43mmol、1.1当量)、HOBT(78mg、0.56mmol、1.5当量)、およびN−メチルモルホリン(130μL、1.18mmol、3.05当量)を乾燥ジクロロメタン(10mL)に可溶化した。EDCI(78mg、0.41mmol、1.05当量)を添加し、混合物を室温で36時間撹拌した。水(10mL)を用いて反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出し(3×10mL)、有機層をブライン(10mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。油状粗生成物をシリカゲル(10%EtOAcを含むシクロヘキサン)を用いて精製し、158mg(90%)のcis−II−24(黄色油状物)をジアステレオ異性体の混合物(1:1)として得た。
【0255】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);302.27(13)、485.27[M+Na](100)、947.07[2M+Na](60)
・IR(フィルム):3348、2982、1796、1746、1714、1538、1455、1369、1315、1276、1221、1127、1026、865、835、759、667、465cm−1
【0256】
●L−Ala−OMeとtrans−II−4のカップリング生成物(trans−II−24)
【0257】
【化52】

【0258】
化合物trans−II−4(54mg、0.14mmol、1当量)、アラニンメチルエステル塩酸塩(31mg、0.16mmol、1.1当量)、HOBT(21mg、0.15mmol、1.05当量)、およびN−メチルモルホリン(48μL、0.44mmol、3.05当量)を乾燥ジクロロメタン(5mL)に可溶化した。EDCI(29mg、0.15mmol、1.05当量)を添加し、混合物を室温で36時間撹拌した。水(10mL)を用いて反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出し(3×10mL)、有機層をブライン(10mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。油状粗生成物をシリカゲル(10%EtOAcを含むシクロヘキサン)上で精製し、51mg(77%)のtrans−II−24(黄色油状物)をジアステレオ異性体の混合物(1:1)として得た。
【0259】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);485.40[M+Na](57);947.27[2M+Na](100)
【0260】
●cis−II−25
【0261】
【化53】

【0262】
アルコールcis−II−6(554mg、1.52mmol)をアルゴン雰囲気下で無水THF(5mL)に溶解させた。混合物を0℃に冷却し、PPh(786mg、3.0mmol)を一度に添加した。DBAD(702mg、3.0mmol)の無水THF(2mL)溶液を滴下し、混合物を30分間撹拌した。α−ヒドロキシイソブチロニトリル(275μL、3.0mmol)の無水THF(500μL)溶液を滴下した。混合物をこの温度で30分間撹拌し、次いで、室温に到達させ、さらに12時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、EtO/石油エーテル(50:50)から再結晶化してホスフィンオキシドを除去した。固体を捨て、濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/シクロヘキサン=15/85)により精製した。還元されたDBAD残渣から化合物を完全に分離することはできず、不純物のまま黄色油状残渣として脱保護工程に移した。
【0263】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z(ES):395.07[M+Na]
【0264】
●cis−II−26(光延反応により得た)
【0265】
【化54】

【0266】
撹拌されているPPh(431mg、1.64mmol)の無水THF(5mL)溶液に、0℃、アルゴン下で、DIAD(324μL、1.64mmol)を滴下した。混合物を、光延反応によるベタインの白色沈殿が形成されるまで、この温度で30分間撹拌し、チオ酢酸(120μL、1.64mmol)およびアルコールcis−II−6(299mg、0.82mmol)の無水THF(3mL)溶液をゆっくりと添加した。反応液を0℃で1時間撹拌し、室温に到達させ、さらに1時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をジエチルエーテルとシクロヘキサンの混合物(50:50(v/v))中に取り、0℃で粉末化した。得られた白色固体を濾過し、EtO/シクロヘキサンで洗浄した。ろ液を蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン=20/80(v/v))により精製し、無色油状物(130mg、収率38%)を得た。
【0267】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z 444.20[M+Na]
・微量分析
計算値:C 51.29%;H 6.70%;N 3.32%;S 7.61%
実測値:C 51.26%;H 6.80%;N 2.09%;S 7.41%
【0268】
●trans−II−26(光延反応により得た)
【0269】
【化55】

【0270】
DBAD(1.113g、4.83mmol)の無水THF(5mL)溶液を、撹拌されているPPh(1.268g、4.83mmol)の無水THF(5mL)溶液に0℃、アルゴン下で滴下した。混合物を、光延反応によるベタインの白色沈殿が形成されるまでこの温度で30分間撹拌し、チオ酢酸(346μL、4.83mmol)およびアルコールtrans−II−6(879mg、2.42mmol)の無水THF(3mL)溶液をゆっくり添加した。反応液を0℃で1時間撹拌し、室温に到達させ、さらに1時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をジエチルエーテルとシクロヘキサンの混合物(50:50(v/v))中に取り、0℃で粉末化した。得られた白色固体を濾別し、EtO/シクロヘキサンで洗浄した。ろ液を蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン/EtN=5:94.5:0.5(v/v))により精製し、無色油状物(130mg、収率38%)を得た。
【0271】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z(ES):444.40[M+Na]、865.07[2M+Na]
【0272】
●cis−II−27
【0273】
【化56】

【0274】
チオアセタートcis−II−26(219mg、0.5mmol)をギ酸(3mL)に溶解させ、過酸化水素の30%水溶液(1.5mL)をゆっくり添加した。混合物を室温で14時間撹拌し、19F nmrでモニタリングした。完了後、溶媒を真空下で除去し、ギ酸塩としての表題化合物を白色粉末として得た(132mg、収率95%)。
【0275】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z(ES):228.07[M+H]、454.93[2M+H]
・微量分析
計算値:C 30.77%;H 4.43%;N 5.13%;S 11.73%
実測値:C 28.78%;H 4.19%;N 3.79%;S 11.49%
【0276】
●trans−II−27
【0277】
【化57】

【0278】
チオアセタートtrans−II−26(588mg、1.40mmol)をギ酸(6mL)に溶解させ、過酸化水素の30%水溶液(3mL)をゆっくり添加した。混合物を室温で72時間撹拌し、19F NMRによりモニタリングした。完了後、溶媒を真空中で除去し、白色残渣をEtOAc/MeOH(60:40)から再結晶化し、ギ酸塩としての表題化合物を白色固体として得た(99mg、収率26%)。
【0279】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z(ES):226.27[M−H]、453.07[2M−H]
・微量分析
計算値:C 30.77%;H 4.43%;N 5.13%;S 11.73%
実測値:C 29.76%;H 4.17%;N 5.27%;S 11.84%
【0280】
●trans−II−28
【0281】
【化58】

【0282】
撹拌されているアルコールtrans−II−6(349mg、0.96mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液に、LiBr(250mg、2.9mmol)を少量ずつ添加した。反応液を60℃に加熱し、19F NMRおよびTLC(シクロヘキサン/EtOAC=50:50)により注意深くモニタリングした。7時間後、混合物を室温に冷却し、さらに16時間撹拌した。次いで、溶媒を除去し、残渣をEtOAc(10mL)中に取り出した。溶液を水(3×5mL)およびブライン(2×5mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、蒸発させた。黄色油状残渣をカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc=60:40)により精製し、純粋な無色油状物(162mg、収率64%)を得た。
【0283】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z(ES):263.93[M+H]、281.13[M+HO]
【0284】
●trans−II−29
【0285】
【化59】

【0286】
アルコールtrans−II−28(44mg、0.16mmol)をアルゴン雰囲気下で無水THF(0.7mL)に溶解させた。混合物を0℃に冷却し、PPh(84mg、0.32mmol)を一度に添加した。DBAD(74mg、0.32mmol)の無水THF(0.4mL)溶液を滴下し、混合物を30分間撹拌した。α−ヒドロキシイソブチロニトリル(30μL、0.32mmol)を含む無水THF(0.5mL)を滴下した。混合物をこの温度で30分間撹拌し、その後、室温に到達させ、さらに4時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、EtO/石油エーテル(50:50)から再結晶化してホスフィンオキシドを除いた。固体を捨て、ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc:シクロヘキサン=15:85)により精製して、無色油状物(22mg、収率51%)を得た。
【0287】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z(ES):295.07[M+Na]、311.17[M+K]
【0288】
1.3.式(I)で表される本発明の化合物の合成
●シス型の1−アミノ−2−(2’−ヒドロキシカルボニル)エチル−2−フルオロシクロプロピルカルボン酸(cis−I−1)
【0289】
【化60】

【0290】
cis−II−13(135mg、0.345mmol)を含む、濃HClと酢酸の1:1溶液を、室温で24時間撹拌した。溶媒を除去し、得られた茶色の固体を水中に取り、酢酸エチルで洗浄し、凍結乾燥して、56mg(71%、白色固体)の純粋なcis−FAC5 168を白色固体として得た。
【0291】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);889.07[2M+Na](83)、456.00[M+Na](100)
・元素分析
計算値:C 55.42%;H 7.44%;N 3.23%
実測値:C 55.43%;H 7.28%;N 3.32%
【0292】
●cis−I−2
【0293】
【化61】

【0294】
酢酸と塩酸の1:1混合物中で、cis−II−15(538mg、1.08mmol)を変換が完了するまで(19NMRおよびTLCによりモニタリング)80℃に加熱した。溶媒を除去し、粗固体生成物を1N HCl溶液(10mL)中に取り、ジエチルエーテル(5mL)、ジクロロメタン(5mL)で洗浄し、凍結乾燥し、Dowexカラムで精製して140mg(53%、無色油状物)の純粋な所望の生成物を得た。
【0295】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ネガティブモード):m/z(相対的存在量);679.93[3M−H](61)、[2M−H](65)、226.20[M−H](100)
・元素分析
計算値:C 27.34%;H 4.59%;N 5.31%
実測値:C 27.18%;H 4.95%;N 5.16%
【0296】
●trans−I−2
【0297】
【化62】

【0298】
上記と同じ手順をtrans−II−15に用いて、化合物trans−I−2を収率15%で白色固体として得た。
【0299】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ネガティブモード):m/z(相対的存在量);226.27[M−H](37)、453.20[2M−H](100)、679.87[3M−H](27)
・元素分析
計算値:C 27.34%;H 4.59%;N 5.31%
実測値:C 27.16%;H 4.95%;N 5.01%
【0300】
●cis−I−3
【0301】
【化63】

【0302】
cis−II−16(1当量)を含む、酢酸と濃塩酸(0.05M)の1:1混合物の溶液を、完了まで(NMRおよびTLCによりモニタリング)環流しながら加熱した。溶媒を除去し、得られた油状生成物をジエチルエーテル/酢酸エチルの1:1混合物中に取り、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル、1%トリエチルアミンを含むシクロヘキサン)により精製し、純粋な所望の生成物を単一のジアステレオ異性体として得た。
【0303】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ネガティブモード):m/z(相対的存在量);227.93[M−H](100)
・元素分析
計算値:C 22.61%;H 3.80%;N 5.27%
実測値:C 22.56%;H 4.02%;N 5.31%
【0304】
●trans−I−3
【0305】
【化64】

【0306】
上記と同じ手順をtrans−II−16に用いて、化合物trans−I−3を収率15%で白色固体として得た。
【0307】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ポジティブモード):m/z(相対的存在量);230.10[M+H](100)
・元素分析
計算値:C 22.61%;H 3.80%;N 5.27%
実測値:C 22.58%;H 3.47%;N 4.94%
【0308】
●cis−1−4
【0309】
【化65】

【0310】
酢酸と塩酸の1:1混合物中で、前駆体cis−II−22(90mg、0.19mmol)を変換が完了するまで(19NMRおよびTLCによりモニタリング)80℃に加熱した。溶媒を除去し、粗固体生成物を1N HCl溶液(10mL)中に取り、ジエチルエーテル(5mL)、ジクロロメタン(5mL)で洗浄し、凍結乾燥し、Dowexカラムで精製して、41mg(88%、茶色の固体)の純粋な所望の生成物を得た。
【0311】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMR、および31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ネガティブモード):m/z(相対的存在量);212.13[M−H](100);(ESI/ポジティブモード):213.93[M+H](88)、230.93[M+HO](100)
・元素分析
計算値:C 28.18%;H 4.26%;N 6.57%
実測値:C 28.34%;H 4.34%;N 6.32%
【0312】
cis−II−4aおよびcis−II−4bと同じプロトコールに従い、cis−I−4の2つのエナンチオマー(cis−I−4aおよびcis−I−4b)を製造した。
【0313】
●trans−I−4
【0314】
【化66】

【0315】
上記と同じ手順をtrans−II−22に用いて、化合物trans−I−4を得た(収率50%)。
【0316】
得られたH NMR、13C NMR、19F NMRおよび31P NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・MS(ESI/ネガティブモード):m/z(相対的存在量);(ESI/ポジティブモード):212.48[M−H](100);(ESI/ポジティブモード):214.13[M+H](68)
・元素分析
計算値:C 28.18%;H 4.26%;N 6.57%
実測値:C 27.93%;H 4.44%;N 6.38%
【0317】
trans−II−4aおよびTrans−II−4bと同じプロトコールに従い、trans−I−4の2つのエナンチオマー(trans−I−4aおよびtrans−I−4a)を製造した。
【0318】
●cis−I−5
【0319】
【化67】

【0320】
不純なニトリルcis−II−25(92mg、0.25mmol)を6N HCl(4mL)に溶解させた。反応液を80℃に加熱し、24時間撹拌した。次いで、溶媒を真空中で除去し、塩酸塩(chlorhydrate)残渣をDowex 1×4−400陰イオン交換樹脂カラムで精製した(溶出:AcOH 0.05M〜0.5Mのグラジエント)。ニンヒドリン反応を示す画分を合わせ、凍結乾燥し、白色固体を得た(14mg)。
【0321】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z(ES):178.13[M+H]、354.96[2M+H]
・微量分析:
計算値:C 33.74%;H 4.25%;N 6.56%
実測値:C 33.59%;H 4.31%;N 6.58%
【0322】
●trans−I−5
【0323】
【化68】

【0324】
ニトリルtrans−II−29(20mg、0.073mmol)を1N HCl(2mL)に溶解させた。反応液を80℃に加熱し、24時間撹拌した。次いで、溶媒を真空中で除去し、残渣をEtO中で粉末化し、濾過した。白色粉末を水に取り、凍結乾燥して、白色固体を得た(8mg、収率52%)。
【0325】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z(ES):159.13[M+H−F]
・微量分析
計算値:C 33.74%;H 4.25%;N 6.56%
実測値:C 33.44%;H 3.95%;N 6.60%
【0326】
●cis−1−6
【0327】
【化69】

【0328】
エステルcis−II−27(96mg、0.35mmol)を6N HCl(5mL)に溶解させた。反応液を80℃に加熱し、18時間撹拌した。次いで、溶媒を真空中で除去し、塩酸塩(chlorhydrate)残基を、Dowex 50WX4−50陽イオン交換樹脂カラムを用いて水で溶出することにより精製した。ニンヒドリン反応を示す画分を合わせ、凍結乾燥して、黄色固体を得た。EtO中での粉末化および濾過により、表題化合物を得た(74mg、収率93%)。
【0329】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z(ES):212.33[M−H]、425.07[2M−H]
・微量分析
計算値:C 24.06%;H 3.63%;N 5.61%;S 12.84%
実測値:C 24.26%;H 3.45%;N 5.36%;S 14.03%
【0330】
●trans−I−6
【0331】
【化70】

【0332】
エステルtrans−II−27(85mg、0.3mmol)を6N HCl(6mL)に溶解させた。反応液を70℃に加熱し、48時間撹拌した。次いで、溶媒を真空中で除去し、塩酸塩(chlorhydrate)残渣を熱水から再結晶化して、白色固体を得た(58mg、収率77%)。
【0333】
得られたH NMR、13C NMR、および19F NMRのスペクトルは化合物の構造と一致する。
・m/z(ES):212.26[M−H]
・微量分析
計算値:C 24.06%;H 3.63%;N 5.61%;S 12.84%
実測値:C 24.47%;H 3.46%;N 5.65%;S 12.88%
【0334】
2.薬理学的結果
本発明に係る化合物を、EC50値を決定するために、種々の用量(1nM〜1mM)でmGlu4受容体に対して試験した。この試験は、C. Selvam, C.Goudet, N. Oueslati, J.-P. Pin, F. Acher J. Med. Chem. 2007, 50, 4656-4664に記載されているプロトコールに従って行った。
【0335】
得られた結果を以下の表に示す。
【0336】
【表7】

【0337】
略語
Ala アラニン
Boc tert−ブチルオキシカルボニル
DBAD ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシラート
DIAD ジイソブチルアゾジカルボキシラート
DIBAL−H 水素化ジイソブチルアルミニウム
DMAP ジメチルアミノピリジン
EDCI 3−エチル−1(N,N−ジメチル)アミノプロピルカルボジイミド
ESI エレクトロスプレーイオン化
HOBT 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
IBX 2−ヨードキシ安息香酸
IR 赤外
MS 質量スペクトル
NMR 核磁気共鳴
Ser セリン
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、または立体異性体のあらゆる割合の混合物、特にラセミ混合物等のエナンチオマーの混合物:
【化1】

(式中、Rは、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルケニル基を表し、ハロゲン原子、OR、SR、NR、PO(OR)(OR)、CO、SO SO、PO(OH)(CH(OH)R)、CN、N、およびNH−C(=NH)NHから選択される1または複数の基で置換されていてもよく、
、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、(C−C)アルキル基、またはCO−(C−C)アルキル基を表し、
、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子または(C−C)アルキル基を表し、
は、アリールまたはヘテロアリール基を表し、該基は、ハロゲン原子およびNOから選択される1または複数の基で置換されていてもよい)。
【請求項2】
前記Rが、PO、COH、およびSOHから選択される基で置換されており且つハロゲン原子、OR、SR、およびNR(ここで、R、R、R、およびRは請求項1に定義した通りである)から選択される1または複数の基、好ましくはOH、SH、およびNHから選択される1または複数の基で置換されていてもよい、−CH−、−CH−CH−等の(C−C)アルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
以下から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【表1−1】

【表1−2】

【請求項4】
特にアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん等の神経系疾患の治療において、医薬品として使用するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の少なくとも1つの式(I)の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項6】
特に神経系疾患の治療に有用な別の活性化合物、例えばドネゼピル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、またはタクリンのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;セレギリンのようなモノアミンオキシダーゼ阻害剤;エンタカポンのようなカテコールアミン−O−メチル転移酵素阻害剤;アマンタジンまたはバクロフェンのようなグルタミン酸作動薬阻害剤;サブコメリンのようなコリン作動薬;ペルゴリド、カベルゴリン、ロピリノール、またはプラミペキソールのようなドパミン作動薬;L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンのような神経伝達物質の類似体または前駆体;およびトリヘキシフェニジルまたはトロパテピンのような抗コリン作動薬をさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
(i)請求項1〜3のいずれか一項に記載の少なくとも1つの式(I)の化合物、および
(ii)少なくとも1つの別の活性化合物
を含む、同時もしくは別個に使用するためまたは時間をかけて拡散させるための配合剤としての、医薬組成物。
【請求項8】
前記活性化合物が、神経系疾患の治療に有用であり、好ましくは、ドネゼピル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、またはタクリンのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;セレギリンのようなモノアミンオキシダーゼ阻害剤;エンタカポンのようなカテコールアミン−O−メチル転移酵素阻害剤;アマンタジンまたはバクロフェンのようなグルタミン酸作動薬阻害剤;サブコメリンのようなコリン作動薬;ペルゴリド、カベルゴリン、ロピリノール、またはプラミペキソールのようなドパミン作動薬;L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンのような神経伝達物質の類似体または前駆体;およびトリヘキシフェニジルまたはトロパテピンのような抗コリン作動薬から選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
特にアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん等の神経系疾患の治療において、医薬品として使用するための、請求項5〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の式(I)の化合物に対応する式(Ib)の化合物を製造する方法であって、Rが、−CHCHR1(R1は直接結合または(C−C)アルキルを表す)を表し、フッ素原子等のハロゲン原子、OR、SR、NR、PO(OR)(OR)、CO、SO、SO、PO(OH)(CH(OH)R)、CN、N、またはNH−C(=NH)NHから選択される1または複数の基により置換されていてもよく、
、R、R、R、R、R、R、R、R、およびRは請求項1に記載の通りであり、
以下の連続工程を含む、方法:
(a)式(IIa)の化合物と、
【化2】

(式中、GPはO保護基を表し、GPおよびGPは互いに独立してN保護基を表す)
式(III)の化合物とのホーナー・ワズワース・エモンズ反応により、
【化3】

(式中、AlkおよびAlkは、互いに独立して、エチル基等の(C−C)アルキル基を表し、R1は上記で定義した通りである)
式(IV)の化合物を得る工程
【化4】

(式中、R1、GP、GP、およびGPは上記で定義した通りである);
(b)前記工程(a)で得られた式(IV)の化合物の水素化により、式(V)の化合物を得る工程
【化5】

(式中、R1、GP、GP、およびGPは上記で定義した通りである);
(c)前記工程(b)で得られた式(V)の化合物のCO−GPおよびN(GP)(GP)基の加水分解により、式(Ib)の化合物を得る工程
【化6】

(式中、R1は上記で定義した通りである);および
(d)前記反応混合物から化合物(Ib)を分離する工程。
【請求項11】
前記式(IIa)の化合物が以下の連続工程により製造される、請求項10に記載の方法:
(a1)式(VI)の化合物と、
【化7】

(式中、GP、GP、およびGPは請求項10で定義した通りである)
式(VII)の化合物とを、
【化8】

(式中、ZはOまたはNRを表し、Rは、水素原子、(C−C)アルキル基、または(C−C)アルコキシ基を表し、Alkはエチル基等の(C−C)アルキル基を表す)
ZnY(式中、Yは(C−C)アルキル基を表し、Yは臭素もしくはヨウ素基または(C−C)アルキル基を表す)の存在下で反応させて、式(IIb)の化合物を得る工程
【化9】

(式中、ZおよびAlkは上記で定義した通りであり、GP、GP、およびGPは請求項10で定義した通りである);
(b1)前記工程(a1)で得られた式(IIb)の化合物のC(O)Z−Alk基の加水分解により、式(IIc)の化合物を得る工程
【化10】

(式中、GP、GP、およびGPは請求項10で定義した通りである);および
(c1)前記工程(b1)で得られた前記式(IIc)の化合物の遊離カルボン酸官能基をアルデヒドに還元して式(IIa)の化合物を得る工程。
【請求項12】
以下の式(II)の化合物:
【化11】

[式中、
−R3は、水素原子または請求項10で定義したGP基を表し、
−Zは、CHO、COOH、C(O)Z−Alk、またはR基を表し(Rは請求項1で定義した通りであり、ZおよびAlkは請求項11で定義した通りである)、
−Xは、NH、NHGP、またはN(GP)(GP)基を表し(GPおよびGPは請求項10で定義した通りである)、
但し、XがNH基を表す場合、R3は水素原子を表さない]。
【請求項13】
以下から選択される、請求項12に記載の化合物:
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【請求項14】
請求項12に記載の式(II)の化合物を製造する方法であって、
が、CHO、COOH、C(O)Z−Alk、CHOH、またはCHHal基を表し、R3が、水素原子を表し、Xが、N(GP)(GP)基を表し(GPおよびGPは請求項10で定義した通りであり、Alkは請求項11で定義した通りであり、Halはハロゲン原子を表す)、以下の連続工程を含む、方法:
(a2)請求項11で定義した式(VI)の化合物と、
請求項11で定義した式(VII)の化合物とを、
ZnY(ここで、YおよびYは請求項11で定義した通りである)存在下で反応させて、請求項11で定義した式(IIb)の化合物を得る工程;
(b2)所望により、前記工程(a2)で得られた式(IIb)の化合物のC(O)Z−Alk基を加水分解して、請求項11で定義した式(IIc)の化合物を得る工程;
(c2)所望により、前記工程(b2)で得られた式(IIc)の化合物の遊離カルボン酸官能基をアルデヒドまたはアルコールに還元して、請求項10で定義した式(IIa)の化合物または以下の式(IId)の化合物を得る工程
【化12】

(式中、GP、GP、およびGPは請求項10で定義した通りである);
(d2)所望により、前記工程(c2)で得られた式(IId)の化合物のアルコール部分をハロゲン化して、以下の式(IIe)の化合物を得る工程
【化13】

(式中、GP、GP、およびGPは請求項10で定義した通りであり、Halは上記で定義した通りである);および
(e2)前記反応混合物から、式(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、または(IIe)の化合物を分離する工程。

【公表番号】特表2012−533604(P2012−533604A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521054(P2012−521054)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060726
【国際公開番号】WO2011/009947
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(510178024)アンスティテュ・ナショナル・デ・シアンス・アプリケ・ドゥ・ルーアン (2)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DES SCIENCES APPLIQUEES DE ROUEN
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【Fターム(参考)】