説明

グルタミン酸作動性シナプス反応を増大するための二環式アミド

本発明は、基本的挙動及び高次挙動に関与する脳ネットワークにおけるシナプスでの受容体機能の強化を含む、脳不全の防止及び治療において使用するための化合物、医薬組成物、及び方法に関する。これらの脳ネットワークは、呼吸の調節、記憶障害に関連する認知能力に関与し、これらは、様々な認知症、異なる脳領域間のニューロン活動の不均衡において観察され、パーキンソン病、統合失調症、呼吸抑制、睡眠時無呼吸、注意欠陥多動性障害、及び情動若しくは気分障害のような障害、並びに神経栄養因子の欠乏が関与する障害、更にアルコール、アヘン剤、オピオイド、バルビツール剤、麻酔薬、若しくは神経毒素の過剰摂取のような呼吸障害において提言される。呼吸抑制は、中枢性睡眠時無呼吸、脳卒中による中枢性睡眠時無呼吸、閉塞性睡眠時無呼吸、先天性低換気症候群、肥満低換気症候群、乳幼児突然死症候群、レット症候群、脊髄損傷、外傷性脳損傷、チェイニー・ストークス呼吸、オンディーヌの呪い(先天性中枢性低換気症候群)、プラダー・ウィリー症候群、及び溺死のような病状を引き起こす。特定の態様においては、本発明は、こうした状態の治療に有用な二環式アミド化合物、及びこうした治療のためにこれらの化合物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な挙動に関与する脳ネットワークにおけるシナプスでの受容体機能の強化を含む、脳不全の防止及び治療において使用するための化合物、医薬組成物、及び方法に関する。これらの脳ネットワークは、呼吸のような基本的な機能、記憶及び認知のようなより複雑な機能に関与する。異なる脳領域間のニューロンの活動の不均衡は、記憶障害、パーキンソン病、統合失調症、注意欠陥及び情動又は気分障害、呼吸抑制、並びに神経栄養因子の欠乏が関係する障害などの精神及び神経障害を含む多くの障害をもたらす可能性がある。特定の態様においては、本発明は、こうした状態の治療に有用な化合物、及びこうした治療のためにこれらの化合物を使用する方法に関する。
【0002】
(関連出願)
本発明は、発明の名称が同一である2007年8月10日出願の米国仮特許出願番号60/964,362号の優先権の利益を主張し、その全内容は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
哺乳類の前脳の多くの部位におけるシナプスでのグルタミン酸の放出は、2種類のシナプス後イオンチャンネル型グルタミン酸受容体を刺激する。これらの種類は、通常、AMPA及びN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体である。AMPA受容体は、電位非依存性高速興奮性シナプス後電流(高速EPSC)を媒介し、一方で、NMDA受容体は、電位依存性低速興奮性電流を生み出す。海馬又は皮質の薄片で行われる研究は、AMPA受容体媒介高速EPSCが、一般に、ほとんどのグルタミン酸作動性シナプスにおいてはるかに優勢な主要要素であり、AMPA受容体の活性化が、通常、NMDA受容体活性化の必要条件であることを示唆する。
【0004】
AMPA受容体は、中枢神経系の至るところに発現する。これらの受容体は、非特許文献1で報告されるように、新皮質の表層、海馬の主要な各シナプス区域、及び線条体複合体において高濃度で見られる。動物及び人間における研究は、これらの構造が、複雑な知覚−運動プロセスを体系化し、高次挙動への基礎を提供することを示唆する。したがって、AMPA受容体は、多数の認識活動に関与するそれらの脳ネットワークにおいて伝達を媒介する。加えて、AMPA受容体は、呼吸の制御に関与する吸気運動を調節する脳領域で発現する(非特許文献2)。
【0005】
上記の理由のために、AMPA受容体の機能を調節して強化する薬剤は、オピオイド及びアヘン剤のような薬剤又は他の手段によって誘発される、知的能力及び呼吸抑制の好転に著しい利益を上げることができた。またこうした薬剤は、記憶の符号化も促進するはずである。非特許文献3において報告されるような実験的研究は、AMPA受容体媒介シナプス反応(単数又は複数)の大きさの増大が、長期増強(LTP)の誘導を強化することを示唆する。LTPは、学習の間に脳で生じることが知られている種類の反復性生理的活性に続く、シナプス接合の強度の安定した増大である。
【0006】
グルタミン酸受容体のAMPA亜型の機能を強化する化合物は、いくつものパラダイムで測定されるように、LTPの誘導及び学習タスクの獲得を促進する。例えば、非特許文献4〜16及び特許文献1を参照。LTPが記憶の基礎であることを示すかなり多数の証拠が存在する。例えば、非特許文献17において報告されるように、LTPを遮る化合物は、動物における記憶形成を妨げる。また、人間における学習を混乱させる特定の薬剤は、LTPの安定化に反対に作用する。単純な作業を学ぶことは、生成されたLTPを遮断する海馬において高周波刺激によってLTPを誘発し(非特許文献18)、LTPを維持する作用が空間記憶を持続する(非特許文献19)。学習の分野において非常に重要なのは、ポジティブAMPA型グルタミン酸受容体の調節因子による生体治療が、中年動物における基底樹状突起のLTPの安定を復元させることの発見である(非特許文献20)。
【0007】
AMPA受容体の機能を強化する薬剤は、鎮痛反応を無効にすることなく、オピオイド及びバルビツール酸が誘発する呼吸抑制を効果的に無効にすることができる(非特許文献21)。したがって、これらの薬剤は、オピオイドが誘発する呼吸抑制を防止又は無効にする際に、並びに鎮静剤使用及び睡眠時無呼吸を含む他の形態の呼吸抑制を軽減するために、有用である可能性がある。興奮性シナプス伝達は、神経栄養因子が特定の脳領域内で増大する主要経路を提供する。このように、調節因子によるAMPA受容体機能の増強作用は、神経栄養因子、特に脳由来神経栄養因子、すなわちBDNFのレベルを上昇させることが見出された。例えば、非特許文献22、特許文献2、非特許文献23及び非特許文献24を参照。他の研究は、BDNFレベルを、パーキンソン病、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症、脆弱性X症候群、及びレット症候群(RTT)のようないくつかの神経障害に関連付けた。例えば、非特許文献25〜28を参照。したがって、AMPA受容体増強剤は、他の神経系疾患と同様に、グルタミン酸作動性不均衡又は神経栄養因子の欠陥の結果であるこれらの神経系疾患の治療に有用である可能性がある。
【0008】
AMPA受容体を選択的に助長する化合物の試作品が、非特許文献29に記載された。これらの著者は、向知性薬剤アニラセタム(N−アニソイル−2−ピロリジノン)が、γ−アミノ酪酸(GABA)、カイニン酸(KA)、又はNMDA受容体による反応に影響を及ぼすことなく、アフリカツメガエル卵母細胞で発現される脳AMPA受容体によって媒介される電流を上昇させることを見出した。海馬の薄片へのアニラセタムの注入は、静止膜特性を変えることなく高速シナプス電位の大きさを実質的に増やすことも示された。その後、アニラセタムが、海馬のいくつかの部位でシナプス反応を増大すること、及びそれがNMDA受容体の媒介能力に影響を及ぼさないことが確認された(非特許文献30、及び非特許文献31)。
【0009】
アニラセタムは、極めて速やかな発現及び流出を有することが分かっている。そして、明らかな持続的影響がなく繰り返し用いることができる。これらは行動に関連した薬剤にとって望ましい特徴である。しかし、アニラセタムは、いくつかの欠点を示す。アニラセタムの末梢投与は、簡単に脳受容体には影響しない。薬剤は、高濃度(およそ1000μM)のみで効き目があり、薬剤の約80%が、人間では末梢投与後にアニソイル−GABAに変わる(非特許文献32)。代謝物質であるアニソイル−GABAは、アニラセタムよりシナプス活性が少ないことが分かっている。これらの問題に加えて、アニラセタムは、脳における多くの他の神経伝達物質及び標的酵素に推定される効果を及ぼし、それはいずれの主張された薬剤の治療効果の作用をも不確実にする。例えば、非特許文献33〜38を参照。
【0010】
アニラセタムに特有の低い効力と固有の不安定性を示さない、ある種類のAMPA受容体調整化合物が述べられている(特許文献1)。「アンパーキン」(登録商標)と呼ばれるこれらの化合物は、置換ベンズアミドであり、例えば、6−(ピペリジン−1−イルカルボニル)キノキサリン(CX516;アンパレックス(Ampalex)(登録商標))である。通常、それらはアニラセタムよりも化学的に安定であり、改善された生体への利用性を示す。CX516は、記憶障害、統合失調症、及び鬱病の治療に有効な薬剤を見つけるために用いられる動物試験において活性である。3つの別々の臨床試験において、CX516は、人の記憶の様々な状態を改善する有効性について証拠を示した(非特許文献12〜14)。
【0011】
アンパカインの別の種類、ベンズオキサジンでは、認知強化を生じさせる可能性を評価する生体外及び生体内モデルにおいて、非常に高い活性を有することが発見された(特許文献3)。置換ベンズオキサジンは、柔軟ベンズアミド、CX516とは異なる受容体調節特性を持つ、強固ベンズアミド類似体である。
【0012】
特定の置換2,1,3−ベンゾキサジアゾール化合物は、特許文献4及び特許文献5において以前に開示された化合物よりも、注意欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症、及び認知の動物モデルにおいて、著しく、驚くほど効果があることが見い出された。本明細書において詳細に記載されるこの新しい新規な種類の二環式アミド類(A)は、AMPA媒介グルタミン酸作動性シナプス反応を増大するために、著しい活性を示す。
【0013】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,747,492号:リンチ(Lynch)及びロジャス(Rogers)
【特許文献2】米国特許第6,030,968号;ガル(Gall)ら
【特許文献3】米国特許第5,736,543号:ロジャス(Rogers)及びリンチ(Lynch)
【特許文献4】米国特許出願2002/0055508
【特許文献5】米国特許出願2002/0099050
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】脳研究(Brain Research)324:160−164頁(1984年)、モナハン(Monaghan)ら
【非特許文献2】神経化学ジャーナル(Journal of Neurochemistry)、74:1335−1345頁(2000年)、パールマン(Paarmann)ら
【非特許文献3】脳研究(Brain Research)598:173−184頁(1992年)、アライ(Arai)及びリンチ(Lynch)
【非特許文献4】シナプス 15:326−329頁(1993年)、グランガー(Granger)ら
【非特許文献5】PNAS 91:777−781頁(1994年)、シュタウプ(Staubli)ら
【非特許文献6】脳研究(Brain Research)638:343−346頁(1994年)、アライ(Arai)ら
【非特許文献7】PNAS 91:11158−11162頁(1994年)、シュタウプ(Staubli)ら
【非特許文献8】神経科学論文(Neurosci. Let.)186:153−156頁(1995年)、ショル(Shors)ら
【非特許文献9】神経科学ジャーナル(Journal of Neurochemistry)15:8023−8030頁(1995年)、ラーソン(Larson)ら
【非特許文献10】シナプス 22:332−337頁(1996年)、グランガー(Granger)ら
【非特許文献11】JPET278:627−638頁(1996年)、アライ(Arai)ら
【非特許文献12】国際臨床精神薬理学(International clinical psychopharmacology)11:13−19頁(1996年)、リンチ(Lynch)ら
【非特許文献13】実験的神経学(Experimental Neurology)145:89−92頁(1997年)、リンチ(Lynch)ら
【非特許文献14】実験的神経学(Experimental Neurology)146:553−559頁(1997年)、イングバル(Ingvar)ら
【非特許文献15】神経科学ジャーナル(Journal of Neuroscience)18:2748−2763頁(1998年)、ハンプソン(Hampson)ら
【非特許文献16】プロス生物学(PLoS Biology)3(9):1−14頁(2006年)、ポリーノ(Porrino)ら
【非特許文献17】神経科学(Neuroscience)49:1−6頁(1992年)、デル・セロ(del Cerro)及びリンチ(Lynch)
【非特許文献18】サイエンス(Science)313:1093−1097頁(2006年)、ホイットロック(Whitlock)ら・
【非特許文献19】サイエンス(Science)313:1141−1144頁(2006年)、パスタルコバ(Pastalkova)ら
【非特許文献20】神経生理学ジャーナル(Journal of neurophysiology)96:677−685頁(2006年)、レックス(Rex)ら
【非特許文献21】アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピレートリー・アンド・クリティカル・ケア・メディスン(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine)174:1384−1391頁(2006年)、レン(Ren)ら
【非特許文献22】神経科学ジャーナル(J. Neurosci.)20:8−21頁(2000年)、ローターボーン(Lauterborn)ら
【非特許文献23】JPET 307:297−305頁(2003年)、ローターボーン(Lauterborn)ら
【非特許文献24】神経薬理学(Neuropharmacology)43:1−10頁(2002年)、マクオウィック(Mackowiak)ら
【非特許文献25】ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Eur. J. Pharmacol.)486:163−174頁(2004年)、オニール(O'Neill)ら
【非特許文献26】精神医学(MoI. Psychiatry)10:939−943頁(2005年)、ケント(Kent)ら
【非特許文献27】ジャーナル・オブ・チャイルド・ニューロロジー(J. Child Neurol.)18:693−697頁(2003年)、リイコネン(Riikonen)ら
【非特許文献28】ニューロン(Neuron)49:341−348頁(2006年)、チャング(Chang)ら
【非特許文献29】生理学ジャーナル(J.Physiol.)424、533−543頁(1990年)
【非特許文献30】精神生物学(Psychobiology)18:377−381頁(1990年)、(シュタウプ(Staubli))ら
【非特許文献31】海馬 1:373−380頁(1991年)、シャオ(Xiao)ら
【非特許文献32】ジャーナル・オブ・クロマトグラフ(J. Chromatogr.)530:397−406頁(1990年)、グエンジ(Guenzi)及びサネッティ(Zanetti)
【非特許文献33】ファーマコロジー・バイオケミストリー・アンド・ビヘイビアー(Pharmacology Biochemistry and Behavior)47:219−225頁(1994年)、ヒモリ(Himori)ら
【非特許文献34】神経化学ジャーナル(Journal of Neurochemistry)61:683−689頁(1993年)、ピーチ(Pizzi)ら
【非特許文献35】ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Eur. J. Pharmacol.)380:81−89頁(1999年)、ナカムラ(Nakamura)及びシラネ(Shirane)
【非特許文献36】ファーマコロジー・バイオケミストリー・アンド・ビヘイビアー(Pharmacology Biochemistry and Behavior)27:491−495頁(1987年)、スピグノリ(Spignoli)及びペペウ(Pepeu)
【非特許文献37】神経薬理学(Neuropharmacology)26:1573−1579頁(1987年)、ホール(Hall)及びボン・ボイトランダー(Von Voigtlander)
【非特許文献38】ジャーナル・オブ・ファーマコバイオダイナミック(J. Pharmacobiodyn.)10:730−735頁(1987年)、ヨシモト(Yoshimoto)ら
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明は、1つの態様では、構造A及び他の構造で示される化合物、及び以下の「発明を実施するための形態」のII節に記載される化合物を含む。この種類の化合物の投与は、AMPA媒介グルタミン酸作動性シナプス反応を増大すること、及びd−アンフェタミン刺激運動試験における齧歯類の挙動を著しく改善することが見出された。この挙動試験は、統合失調症及びADHDを治療する神経弛緩薬の有効性の評価において、有用であることを証明した。この化合物は、生体内でグルタミン酸作動性シナプス反応を増大させることにおいて、先に説明された化合物よりも、著しく、驚くほど効果がある。この活性は、先行技術の組成物と比較して著しく低い濃度の本化合物を利用する、医薬品及び治療方法などの対応する使用方法に転化される。加えて、本発明の化合物は、先に説明された化合物と比較して薬物速度論的特性の改善を示し、良好な経口の生物学的利用能を有する。
【0017】
AMPA受容体媒介反応を増大させる本発明の化合物の能力により、化合物は様々な用途に有用である。これらは、グルタミン酸受容体に依存する挙動の学習を促進すること、AMPA受容体又はこの受容体を利用するシナプスの数又は能力が低減した状態を治療すること、小区域間での不均衡を回復させ又は神経栄養因子のレベルを上昇させるために興奮性シナプス活性を増大することを含む。
【0018】
別の態様において、本発明は、低グルタミン酸作動性状態、又は興奮性シナプスの数若しくは強度の不足あるいはAMPA受容体の数の不足を患っており、記憶又は他の認知機能が損なわれている哺乳類の対象を治療する方法を含む。こうした状態は、皮質/線条体の不均衡も引き起こし、統合失調症又は統合失調症様作用をもたらす可能性がある。
【0019】
別の態様において、本発明は、呼吸抑制を有する対象における呼吸抑制を低減又は抑える方法を含む。この方法は、呼吸抑制を低減又は抑えるのに十分な量の本発明の化合物を対象に投与することを含む。本発明の一つの実施形態では、対象は人間であり、別の実施形態では、対象は哺乳類である。さらに、特許請求の範囲は、オピオイド鎮痛剤と組み合わせてある量の本発明の化合物を対象に投与することを含む、呼吸抑制を低減又は抑える方法である。こうしたオピオイドの例としては、アルフェンタニル及びフェンタニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
別の態様において、本発明は、睡眠時無呼吸を有する対象において呼吸関連睡眠障害又は睡眠時無呼吸を低減又は抑制する方法を含む。この方法は、呼吸関連睡眠障害を低減又は抑制するのに十分な量の本発明の化合物を対象に投与することを含む。
【0021】
これらの方法に従い、こうした対象を、薬理学的に許容可能なキャリア中で、構造Iに示されるような、そして以下の「発明を実施するための形態」のII節に記載されるような有効量の化合物で治療する。本発明のこれらの及び他の目的並びに特徴は、以下の「発明を実施するための形態」を添付の図面と併せて読むことで、より十分に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.定義
以下の用語は、別途示されない限り、次の意味を有する。本発明を記載するために使用される他の用語は、それらの用語が当業者によって一般的に使用されるのと同じ定義を有する。
【0023】
用語「アルキル」は、本明細書において、炭素及び水素を含有する完全飽和の一価ラジカルを指すのに使用され、直鎖状、分岐状又は環状であってもよい。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘプチル、イソプロピル、2−メチルプロピルである。
【0024】
本明細書において、用語「シクロアルキル」は、環内に8個以下の炭素及び水素を含有する完全飽和の一価ラジカルを指すのに使用される。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。
【0025】
本明細書において使用する用語「ビシクロアルキル」とは、二環に10個以下の炭素及び水素を含有する完全飽和の一価ラジカルを指す。ビシクロアルキル基の例は、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.3]ノニル、及びビシクロ[3.2.1]オクチルである。
【0026】
本明細書において使用する用語「アザビシクロアルキル」とは、二環に10個以下の炭素及び水素並びに1個の窒素原子を含有する完全飽和の一価ラジカルを指す。アザビシクロアルキル基の例としては、1−アザビシクロ[2.2.2]オクチル、2−アザビシクロ[2.2.2]オクチル、1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、及び1−アザビシクロ[3.2.1]オクチルが挙げられる。
【0027】
本明細書において使用する用語「アルケニル」とは、1つ又は2つの不飽和部分を含有する、炭素及び水素を含有する一価ラジカルを指すのに使用され、直鎖状、分岐状又は環状であってもよい。アルケニル基の例としては、エテニル、n−ブテニル、n−ヘプテニル、イソプロペニル、シクロペンテニル、シクロペンテニルエチル及びシクロヘキセニルが挙げられる。「アルキニル」とは、少なくとも1つの三重結合を含む、上記のような炭素及び水素を含んだ一価ラジカルを指す。
【0028】
用語「置換アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含有する低級アルキル、アリール、置換アリール、アシル、ハロゲン(すなわち、アルキルハロ、例えばCF3)、アミド、チオアミド、シアノ、ニトロ、アルキニル、アジド、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミノ、アルキル及びジアルキルアミノ、アシルアミノ、アシロキシ、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、カルボキシアルキル、カルボキシアミド、チオ、チオエーテル、飽和及び不飽和環状炭化水素、複素環等のような1つ以上の官能基を含む前述したようなアルキルを指す。
【0029】
用語「アリール」とは、単一環(例えばフェニル)又は複数の縮合環(例えばナフチル)を有する置換又は非置換一価芳香族ラジカルを指す。他の例としては、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリダジニル、ピリミジル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、フリル、ピロロリル、ピリジル、チエニル、及びインドリルなどの環内に1つ以上の窒素、酸素又は硫黄原子を有する複素環芳香族環基が挙げられる。
【0030】
本明細書において、用語「置換アリール、置換芳香族、置換ヘテロアリール、又は置換ヘテロ芳香族」において使用されるような用語「置換」は、1つ以上の置換基が存在してよいことを意味し、前記置換基は原子及び基から選択され、存在する場合、これは化合物がAMPA受容体機能の増強剤として機能するのを妨げない。置換芳香族又はヘテロ芳香族基に存在してよい置換基の例としては、(C1−C7)アルキル、(C1−C7)アシル、アリール、ヘテロアリール、置換アリール及びヘテロアリール、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミド(任意に1つ又は2つのC1−C7アルキル基で置換される)、チオアミド(任意に1つ又は2つのC1−C7アルキル基で置換される)、アジド、アルキニル、(C1−C7)アルキルハロ(例えば、CF3)、ヒドロキシ、(C1−C7)アルコキシ、(C2−C8)アルコキシアルキル、アミノ、(C1−C7)アルキル及びジアルキルアミノ、(C1−C7)アシルアミノ、(C1−C7)アシロキシ、アリールオキシ、(C1−C7)アリールオキシアルキル、(C1−C7)カルボキシアルキル、カルボキシアミド、チオ、(C1−C7)チオエーテル、飽和及び不飽和(C3−C8)環状炭化水素、(C3−C8)複素環等のような基が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で開示される各置換基は、それら自体が置換されていてもよい。
【0031】
「複素環」又は「複素環の」とは、1つ以上の炭素原子が、窒素、酸素又は硫黄のような1つ以上のヘテロ原子で置換された炭素環を指す。複素環の例としては、ピペリジン、ピロロリジン、モルフォリン、チオモルフォリン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−ピロロリジノン、σ−バレロラクタム、σ−バレロラクタム及び2−ケトピペラジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
用語「置換複素環」とは、本明細書には記載されない低級アルキル、アシル、アリール、シアノ、ハロゲン、アミド、チオアミド、アジド、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミノ、アルキル及びジアルキルアミノ、アシルアミノ、アシロキシ、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、カルボキシアルキル、カルボキシアミド、チオ、チオエーテル、飽和及び不飽和環状炭化水素、複素環等のような、1つ以上の官能基(本明細書には記載されない)を含有する、又は1つ以上の官能基で置換された前述の複素環を指す。
【0033】
本明細書で使用される用語「化合物」は、本明細書に開示される特定の化学物質を指す。文脈でのその使用の範囲内において、通常この用語は1つの化合物を指すが、場合によっては、開示された化合物の立体異性体及び/又は光学異性体(エナンチオピュアな化合物、鏡像異性的に強化された化合物、及びラセミ混合物を含む)も指す。
【0034】
用語「有効量」とは、意図した結果を生じるために、例えば、AMPA受容体活性を増大させることによってグルタミン酸作動性シナプス反応を増大するために、その意図した用途の中で使用される選択された式Iの化合物の量を指す。使用される正確な量は、選択された特定の化合物とその意図した用途、対象の年齢及び重量、投与経路等によって変化するが、ありふれた実験で簡単に決定されるであろう。状態又は病状の治療の場合、有効量は、特定の状態又は病状を効果的に治療するために使用される量である。
【0035】
用語「薬学的に許容可能なキャリア」は、投与される対象に容認し難いほど有毒でないキャリア又は賦形剤を指す。薬学的に許容可能な賦形剤は、E.W.マーチン(E.W. Martin)により、「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に詳細に記載されている。
【0036】
本発明において意図されるアミン化合物の「薬学的に許容可能な塩」は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩等の無機アニオン又は酢酸塩、マロン酸塩、ピルビン酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、ケイ皮酸塩、トシル酸塩等の有機アニオンを対イオンとして有するアンモニウム塩である。
【0037】
用語「患者」又は「対象」は、動物、通常は人間を含む哺乳類動物を表すために本明細書を通して使用され、それに対して本発明に従う化合物若しくは組成物での治療又は使用が提供される。特定の動物(特に、人間の対象又は患者など)に特有であるそれらの状態又は病状の治療又は使用に対しては、患者又は対象の用語は、その特定の動物を指す。
【0038】
用語「感覚運動問題」は、運動及び行動を含む直接の適した身体的応答を導くように5つの既知の感覚から得られる外部の情報を集積することができないことから起こる、患者又は対象における問題を表すのに使用される。
【0039】
用語「認知的作業」又は「認知機能」は、患者又は対象による思考又は認識を含んだ試み又は過程を表すのに使用される。全ての人間の脳組織のおよそ75%を占める頭頂葉、側頭葉及び前頭葉の連合皮質の多様な機能は、感覚入力と運動出力の間の情報処理の多くに関与する。連合皮質の多様な機能は、認知と呼ばれることが多く、それは文字通り私たちが外界を知るようになる過程を意味する。特定の刺激に選択的に注意を向けること、これに関連した刺激特徴を認識して識別すること、並びに反応を計画及び経験することは、認知に関与する人間の脳によって達成される一部の過程又は能力である。
【0040】
用語「脳ネットワーク」は、神経細胞のシナプス活性を通して互いに通信する脳の異なる解剖領域を表すのに使用される。
【0041】
用語「AMPA受容体」は、いくつかの膜で見つかるタンパク質の集合体を指し、これは、NMDAでなく、グルタミン酸塩又はAMPA(DL−α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸)と結合して、正イオンが膜を横切ることを可能にする。
【0042】
用語「興奮性シナプス」は、1つの細胞による化学伝達物質の放出が、他の細胞の外部膜の脱分極を引き起こす、細胞−細胞間結合を表すのに使用される。興奮性シナプスは、閾値電位より正である逆転電位を有するシナプス後ニューロンを表し、その結果、こうしたシナプスにおいて、神経伝達物質は、興奮性シナプス後電位が起こるであろう可能性を上昇させる(ニューロンは発火して活動電位を生じるであろう)。逆転電位及び閾値電位は、シナプス後の興奮及び抑制を決定する。シナプス後電位(「PSP」)での逆転電位が活動電位の閾値より正であるならば、伝達物質の影響は興奮性であり、興奮性シナプス後電位(「EPSP」)及びニューロンによる活動電位の発火を生じる。シナプス後電位での逆転電位が活動電位の閾値より負であるならば、伝達物質は抑制性であり、抑制性シナプス後電位(IPSP)を生じることがあり、したがってシナプスが活動電位を発火するであろう可能性が減る。シナプス後作用での一般的な法則は、逆転電位が閾値より正であるならば、興奮が起こり、逆転電位が閾値より負であるならば、抑制が起こる。例えば、デイル・パーベス(Dale Purves)編集、神経科学(NEUROSCIENCE)、7章、シナウア・アソシエイツ社(Sinauer Associates Inc.)、マサチューセッツ州、サンダーランド(Sunderland)、1997年を参照。
【0043】
用語「運動作業」は、患者又は対象によってなされる運動又は行動に関係する試みを表すために使用される。
【0044】
用語「知覚作業」は、感覚入力に注意を傾ける患者又は対象による行為を表すために使用される。
【0045】
用語「シナプス反応」は、密接関係にある細胞による化学伝達物質の放出の結果としての、別の細胞での生物物理学反応を表すのに使用される。
【0046】
用語「低グルタミン酸作動性状態」は、グルタミン酸塩(又は関連のある興奮性アミノ酸)によって媒介される伝達が正常レベル未満に低減される状況又は状態を表すために使用される。伝達は、グルタミン酸塩の放出、シナプス後受容体への結合、及びそれらの受容体に不可欠なチャネルの開口から成る。最終的に低グルタミン酸作動性状態は、興奮性シナプス後電流を低減する。それは、上記3つの伝達の段階のいずれにも起因し得る。低グルタミン酸作動性状態とみなされる、本発明に従う化合物、組成物及び方法を使用して治療され得る状態又は病状としては、例えば、記憶喪失、認知症、鬱病、注意障害、性機能障害、パーキンソン病を含む運動障害、統合失調症又は統合失調症様挙動、記憶及び学習障害、呼吸抑制及び睡眠時無呼吸であり、記憶及び学習障害は老化、精神的外傷、脳卒中及び神経変性障害による障害を含み、神経変性障害としては、薬剤誘発状態、神経毒剤、アルツハイマー病及び老化に関連するようなものなどである。これらの状態は、当業者によって容易に認知及び診断される。
【0047】
用語「皮質−線条体の不均衡」は、相互に連結した皮質とその下の線条体の複合体のニューロン活性のバランスが、通常見られるものから外れる状態を表すのに使用される。「活性」は、電気的記録又は分子生物学的手法によって評価できる。不均衡は、2つの構造に対してこれらの測定を適用することにより、又は機能(行動又は生理学的)基準により、規定され得る。
【0048】
用語「情動障害」又は「気分障害」は、悲しみ若しくは高揚感が過度に激しく、これらが、ストレスの多い生活上の出来事での予期される影響を超えて続く状態、又は内因的に起こる状態を示す。本明細書においては、用語「情動障害」は、例えば、精神障害診断統計便覧(Diagnostic and Statistical Manual of Mental disorder)、第4版(DSM IV)、317−391頁に記載される全ての種類の気分障害を含む。
【0049】
用語「統合失調症」は、妄想及び幻覚のような思考過程における障害、他の人々及び外界からの個人の関心の大きな消退、並びに自分の中でのそれの封鎖(引きこもり)を特徴とする一般的な種類の精神病の状態を表すのに使用される。統合失調症は、現在、単独でなくむしろ精神障害のグループとみなされ、反応統合失調症と過程統合失調症とで区別される。本明細書においては、用語「統合失調症」又は「統合失調症の」は、外来統合失調症、緊張型統合失調症、破瓜型統合失調症、潜在統合失調症、過程統合失調症、偽神経症性統合失調症、反応統合失調症、単純型統合失調症、及び統合失調症と類似しているがそれ自体が統合失調症と必ずしも診断されるわけではない関連した精神病的障害を含むあらゆる種類の統合失調症を包括する。統合失調症及び他の精神病的障害は、例えば、精神障害診断統計便覧(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)、第4版(DSM IV)節293.81,293.82,295.10,295.20,295.30,295.40,295.60,295.70,295.90,297.1,297.3,298.8において確立されるガイドラインを使用して診断される。
【0050】
用語「脳機能」は、外部刺激及び内部誘因過程の把握、統合、選別及び応答の組み合わされた作業を表すのに使用される。
【0051】
用語「損なわれている」は、通常に満たない程度で働いている機能を表すのに使用される。損なわれている機能は、機能がかろうじて実行されるか、事実上存在しないか、又は通常よりも著しく劣る方法で働いているように、著しく影響され得る。損なわれている機能はまた、最適でないこともある。機能の障害は、患者ごとに及び治療される状態で、重症度が異なるであろう。
【0052】
本明細書において、用語「呼吸抑制」は、減少した呼吸頻度並びに頭蓋及び脊髄運動ニューロンへの減少した吸気運動を特徴とする様々な状態を指す。具体的には、呼吸抑制は、活動を引き起こす呼吸リズムと関連する延髄ニューラルネットワークが、血液中の二酸化炭素分圧(PCO2)レベルの増加(又は酸素分圧(PO2)レベルの減少)に応答せず、引き続き肺の筋肉組織を制御する運動ニューロンを不十分な活性にする状態を指す。
【0053】
本明細書において、用語「睡眠時無呼吸」とは、呼吸関連睡眠障害を指し、中枢性及び閉塞性の2種類がある。中枢性睡眠時無呼吸は、通常、血液酸素飽和の減少を伴う、睡眠中の全ての呼吸努力の停止を引き起こす神経学的状態と定義され、呼吸を制御する脳幹中枢が活動停止すると、呼吸努力及び呼吸がなくなる。人は、自動呼吸反射によって睡眠から目覚め、結局、ごくわずかな睡眠しかとらないことになる可能性がある。閉塞性睡眠時無呼吸は、上気道の閉塞及び/又は潰れに起因する睡眠中の呼吸の反復的な中断を特徴とし、その後、呼吸するために目覚める。呼吸努力は、無呼吸の発作の間、続く。
【0054】
本明細書において、用語「プロドラッグ」は、元の形態において薬理学的に不活性であるが、人間又は動物血漿において迅速に代謝され薬理学的に活性な形態になる、代謝的に不安定な誘導体を指す。本明細書において用いられるプロドラッグの例としては、ヒドロキシル含有部分のエステル誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。こうしたエステルとしては、置換又は非置換天然又は非天然アミノ酸から形成されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
II.本発明の化合物
本発明は、AMPA受容体機能を強化する特性を有する化合物を対象とする。これらは、下の構造Aを有する化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体を含む。
【0056】
【化2】

式中、Wは酸素、硫黄又はCH=CHであり、
X、Y及びZは、−N、又は−CRからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、−Br、−Cl、−F、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
ここで、R1は、H、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
nは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
mは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
pは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
2及びR3は、それぞれ独立してH、ハロゲン(好ましくはF)、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、CF3、OH、C=O、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルケニル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルキニル、非置換若しくは置換のC3−C7シクロアルキル、非置換若しくは置換のアリール、非置換若しくは置換の複素環、非置換若しくは置換のカルボキシアルキル、非置換若しくは置換のカルボキシアリール、非置換若しくは置換のカルボキシヘテロアリール、非置換若しくは置換のスルホニルアルキル、非置換若しくは置換のスルホニルアリール、又は非置換若しくは置換のスルホニルヘテロアリールから選択され、
E及びFは、それぞれ独立してCH2m、CR23、A、CH2A、CR2=CR3から選択されるか又は存在せず、ただし、E及びFが両方存在しないことはなく、
Gは、CR23、A、CH2A、CR2=CR3、CH2C=O、CH2CR23であるか又は存在せず、
Aは、O、S、SO、SO2、C=O又はCR23である。
【0057】
本発明は、別の形態での、AMPA受容体機能を強化する特性を有する化合物を対象とする。これらは、下の構造Iを有する化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体を含む。
【0058】
【化3】

式中、Wは酸素、硫黄又はCH=CHであり、
X、Y及びZは、−N、又は−CRからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、−Br、−Cl、−F、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
ここで、R1は、H、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
nは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
mは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
pは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
2及びR3は、独立してH、ハロゲン(好ましくはF)、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、CF3、OH、C=O、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルケニル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルキニル、非置換若しくは置換のC3−C7シクロアルキル、非置換若しくは置換のアリール、非置換若しくは置換の複素環、非置換若しくは置換のカルボキシアルキル、非置換若しくは置換のカルボキシアリール、非置換若しくは置換のカルボキシヘテロアリール、非置換若しくは置換のスルホニルアルキル、非置換若しくは置換のスルホニルアリール、又は非置換若しくは置換のスルホニルヘテロアリールから選択される。
【0059】
または、構造式IIで示されるような不飽和のアザビシクロ環であるアザビシクロ環、、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体である。
【0060】
【化4】

式中、W、X、Y及びZは、上記の構造式Iについて記載されたとおりであり、
nは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
mは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
pは0〜4であり(0〜4個のメチレン基が存在する)、
2及びR3は、構造式Iについて記載されたとおりである。
【0061】
または、構造式IIIで示されるようなアザビシクロ環、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体である。
【0062】
【化5】

式中、W、X、Y及びZは、上記の構造式Iについて記載されたとおりであり、
Aは、O、S、SO、SO2、C=O又はCR23であり、
nは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
mは1〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
pは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
2及びR3は、構造式Iについて記載されたとおりである。
【0063】
本発明のさらに別の形態では、アザビシクロ環は、構造式IVの化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体を含む。
【0064】
【化6】

式中、W、X、Y及びZは、上記の構造式Iについて記載されたとおりであり、
Aは、O、S、SO、SO2、C=O又はCR23であり、
nは1〜5であり(1〜5個のメチレン基が存在する)、
mは1〜5であり(1〜5個のメチレン基が存在する)、
pは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
2及びR3は、構造式Iについて記載されたとおりである。
【0065】
更なる態様においては、本発明は、次から選択される式A及びI〜IVの化合物を提供する。
8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン、
8−([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イルカルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン、
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3,3−ジフルオロ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−フルオロ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
endo−[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
exo−[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル([2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−イル]メタノン
1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン
2−アザビシクロ[2.2.2]オクト−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(2−オキサ−5アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−イル)メタノン
2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(5,6−ジクロロ−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)メタノン
R−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン
S−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン。
【0066】
III.合成
本発明の化合物の合成は、好ましくは、次のスキームにより実行される。当技術に存在する手順により類推された代わりの合成もまた、使用されることができる。それぞれの化合物は、本明細書に示されるような提案された化学反応に従うことによって、又は当該分野で利用可能な周知の方法に依存する合成化学における僅かな変更を行うことによって、記載された合成を用いて作られ得る。合成方法はかなり容易であり、本明細書での教示の範囲内で容易に変更され得る。
【0067】
酸塩化物4は、4−アミノ−3−ニトロ安息香酸1から出発し、最初に漂白剤(bleach)を用いて酸化することで中間体2を得て、次に亜リン酸トリエチル(P(OEt)3)で還元してベンゾフラザンカルボン酸3を得ることによって合成される。そのカルボン酸3は、トルエン中の塩化チオニル及び触媒量のDMFで還流することによって、酸塩化物4に変えられた。カルボン酸3は、適切な溶媒中のCDI、EDCI、HBTUなどの標準的なカップリング条件を用いて、アミノ二環(aminobicycles)との反応によって二環式アミド5に変えられ得る。あるいは、酸塩化物4は、特にジクロロメタンなどの適切な溶媒中において、例えば、トリエチルアミン又は水酸化ナトリウム水溶液といった塩基の存在下で、標準的なカップリング条件において二環式アミンによって二環式アミド5に変えられてもよい。ベンゾチアジアゾールアミド6は、ジクロロメタンなどの適切な溶媒中で、トリエチルアミン又は水酸化ナトリウム水溶液などの塩基の存在下で、標準的なカップリング条件において市販のベンゾチアジアゾール酸塩化物から調製される。キノキサリン−6−カルボン酸塩化物は、標準的な手法を用いて、グリオキサールで市販の3,4−ジアミノ安息香酸を縮合し、続いてトルエン中の塩化チオニル及び触媒量のDMFで還流することによって調製される。キノキサリン−6−カルボン酸塩化物と二環式アミンとの反応によって、所望のキノキサリン二環式アミド(7)が得られた。構造式II〜IVによって示される別のアザビシクロは、カルボン酸塩化物4との結合に適切なアザビシクロを用いて同じ方式で作られる。
【0068】
【化7】

【0069】
IV.処置方法
本発明の態様に従うと、低グルタミン酸作動性状態、興奮性シナプスの数若しくは強度あるいはAMPA受容体の数の不足を患う哺乳類対象の治療方法が提供される。こうした対象においては、記憶若しくは他の認識機能が損なわれている可能性があり、又は皮質/線条体不均衡が生じている可能性があり、これらは記憶喪失、痴呆、鬱病、注意障害、性的不全、運動障害、統合失調症若しくは統合失調症様挙動をもたらす。本発明にしたがって治療できる記憶障害及び学習障害としては、老化、精神的外傷、脳卒中及び神経変性障害から起こる障害が挙げられる。神経変性障害の例としては、薬剤誘発状態、神経毒剤、アルツハイマー病、及び老化に関連するものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの状態は、当業者によって容易に認識及び診断され、有効量の本発明の1つ以上の化合物を患者に投与することによって治療される。
【0070】
別の態様において、本発明は、呼吸抑制を低減又は抑えるのに十分な量の本発明の化合物を対象に投与することを含む、こうした状態を有する対象における呼吸抑制を低減又は抑える方法を提供する。本発明の更なる態様においては、アヘン剤と組み合わせて、ある量の本発明の化合物を対象に投与することを含む、呼吸抑制を低減又は抑える方法を提供する。こうしたアヘン剤の例としては、アルフェンタニル及びフェンタニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
更なる態様においては、本発明は、呼吸関連睡眠障害を低減又は抑えるのに十分な量の本発明の化合物を対象に投与することを含む、睡眠時無呼吸を有する対象における呼吸関連睡眠障害又は睡眠時無呼吸を低減又は抑える方法を提供する。
【0072】
本発明においては、治療方法は、薬学的に許容できるキャリア中で、有効量の下の式Aを有する化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体を、治療が必要な対象に投与することを含む。
【0073】
【化8】

式中、Wは酸素、硫黄又はCH=CHであり、
X、Y及びZは、−N、又は−CRからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、−Br、−Cl、−F、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
ここで、R1は、H、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
nは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
mは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
pは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
2及びR3は、それぞれ独立してH、ハロゲン(好ましくはF)、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、CF3、OH、C=O、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルケニル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルキニル、非置換若しくは置換のC3−C7シクロアルキル、非置換若しくは置換のアリール、非置換若しくは置換の複素環、非置換若しくは置換のカルボキシアルキル、非置換若しくは置換のカルボキシアリール、非置換若しくは置換のカルボキシヘテロアリール、非置換若しくは置換のスルホニルアルキル、非置換若しくは置換のスルホニルアリール、又は非置換若しくは置換のスルホニルヘテロアリールから選択され、
E及びFは、それぞれ独立してCH2m、CR23、A、CH2A、CR2=CR3から選択されるか又は存在せず、ただし、E及びFが両方存在しないことはなく、
Gは、CR23、A、CH2A、CR2=CR3、CH2C=O、CH2CR23であるか又は存在せず、
Aは、O、S、SO、SO2、C=O又はCR23である。
【0074】
本発明の更なる態様においては、治療方法は、薬学的に許容できるキャリア中で、有効量の下の式Iを有する化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体を、治療が必要な対象に投与することを含む。
【0075】
【化9】

式中、Wは酸素、硫黄又はCH=CHであり、
X、Y及びZは、−N、又は−CRからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、−Br、−Cl、−F、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
ここで、R1は、H、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
nは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
mは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
pは0〜5であり(0〜5個のメチレン基が存在する)、
2及びR3は、独立してH、ハロゲン(好ましくはF)、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、CF3、OH、C=O、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルケニル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルキニル、非置換若しくは置換のC3−C7シクロアルキル、非置換若しくは置換のアリール、非置換若しくは置換の複素環、非置換若しくは置換のカルボキシアルキル、非置換若しくは置換のカルボキシアリール、非置換若しくは置換のカルボキシヘテロアリール、非置換若しくは置換のスルホニルアルキル、非置換若しくは置換のスルホニルアリール、又は非置換若しくは置換のスルホニルヘテロアリールから選択される。
【0076】
本発明の更なる方法の態様では、構造式IIで示されるアザビシクロ化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体が、方法の態様おいて使用されることが好ましい。
【0077】
【化10】

式中、W、X、Y及びZは、構造式Iについて記載されたとおりであり、
nは0〜5であり、
mは0〜5であり、
pは0〜4であり、
2及びR3は、構造式Iについて記載されたとおりである。
【0078】
本発明のまた更なる方法の態様では、好ましい実施形態は、構造式IIIで示される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体を含む。
【0079】
【化11】

式中、W、X、Y及びZは、構造式Iについて記載されたとおりであり、
Aは、O、S、SO、SO2、C=O又はCR23であり、
nは0〜5であり、
mは1〜5であり、
pは0〜5であり、
2及びR3は、構造式Iについて記載されたとおりである。
【0080】
本発明のまた更なる方法の態様では、好ましい実施形態は、構造式IVで示される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体を含む。
【0081】
【化12】

式中、W、X、Y及びZは、構造式Iについて記載されたとおりであり、
Aは、O、S、SO、SO2、C=O又はCR23であり、
nは1〜5であり、
mは1〜5であり、
pは0〜5であり、
2及びR3は、構造式Iについて記載されたとおりである。
【0082】
本発明の化合物は、本化合物によって示される薬物動態の増強の少なくとも一部に起因して、大抵の場合、生物学的利用能の増大を示す。したがって、本化合物は、様々な剤形、特に経口投薬形態で、医薬組成物に好ましいように形成されることができる。
【0083】
上記のように、本発明の方法による対象の治療は、AMPA受容体活性を増大するのに有用であるので、AMPA受容体に依存する挙動の学習を促進するため、並びにAMPA受容体又はこれらの受容体を利用するシナプスの数及び効率が低減する記憶障害などの状態を治療するために使用され得る。この方法は、興奮性シナプス活性を増大して、上記のようにそれ自体が統合失調症若しくは統合失調症様挙動又は他の挙動に現れる脳亜領域間の不均衡を回復させるためにも有用であり得る。この方法に従って投与される化合物は、下記の生体内試験に示されるように、AMPA受容体活性の増大において、前述の化合物よりも効果的であることが見出された。
【0084】
V.生物活性
A.生体内のAMPA受容体機能の強化
AMPA受容体により媒介されるシナプス応答は、本明細書の化合物を使用して、本発明の方法により増大する。
【0085】
本発明の化合物の電気生理学的効果を、以下の手順に従って、麻酔動物にて生体内で試験した。動物は、ハミルトン注射器ポンプを使用して投与されるフェノバルビタールによって麻酔下に維持される。刺激電極及び記録電極を、それぞれ海馬の有孔質路及び歯状回に挿入する。一旦、電極が埋め込まれたら、刺激電極に1分間当たり3回送達される一様の単相パルス(100μsパルス持続時間)を使用して、誘発反応の安定した基準値を導く。安定した基準値が得られるまで(約20−30分間)フィールドEPSPを監視し、その後、試験化合物の溶液を腹腔内に注入し、誘発電場電位を記録する。薬剤投与後のおよそ2時間、又はフィールドEPSPの振幅が基準値に戻るまで、誘発電位を記録した。後者の例では、点滴投与もまた、その試験化合物の適切な投与と一緒に行われることが一般的である。本発明の化合物を、上記の生体内電気生理学試験にて分析した。代表的な試験化合物のデータを表1の1列に示す。本発明の化合物は、腹腔内(i.p.)投与後のラット歯状回におけるフィールドEPSPの振幅の増大に関し、50mg/kg i.p.においてフィールドEPSPの振幅を9%増大したCX516(1−(キノキサリン−6−イルカルボニル)ピペリジン;米国特許第5,773,434号、米国特許出願2002/0055508)よりも著しく活性である。
【0086】
【表1】

【0087】
B.行動試験:d−アンフェタミン刺激運動の抑制
d−アンフェタミン刺激運動活性を抑制する本発明の化合物の能力を、次の手順に従って試験した。体重25〜30gmの雄CD1マウスを実験室に入れ、少なくとも30分間順応させた。各マウスを、動物の活動を自動的に監視する赤外線配列を持つ試験筐体に入れた。マウスを試験筐体で20分間慣らした後、ホームケージに戻した。マウスに、d−アンフェタミン注入(2mpk)の5分前に、適当な賦形剤中の試験化合物を腹腔内投与した。d−アンフェタミン注入の10分後、マウスの自発運動を合計15分間試験した。データをコンピュータで収集し、「任意運動ユニット」として表した。全てのデータを、試験化合物で治療される群を賦形剤対照群と比較することによって分析した。試験化合物のデータを、表1の2列に示す。示されるデータは、マウスにおける2mg/kgのd−アンフェタミンの急性投与によって誘発される多動性の抑制%である。試験される化合物は、統計的に著しいd−アンフェタミン刺激運動の抑制を生じた。
【0088】
VI.投与、用量、及び剤形
上記のように、本発明の化合物及び方法は、AMPA受容体に媒介されるグルタミン酸作動性シナプス反応を増大させ、低グルタミン酸作動性状態の治療に有用である。これらは、興奮性シナプスの数若しくは強度あるいはAMPA受容体の数の不足によってもたらされる、記憶又は他の認識機能の障害のような状態の治療にも有用である。これらはまた、皮質/線条体不均衡から生じる統合失調症又は統合失調症様挙動の治療において、及びAMPA受容体に依存する挙動の学習の促進においても使用できる。
【0089】
本化合物、医薬組成物及び方法で治療される対象においては、記憶喪失、痴呆、鬱病、注意障害、性的不全、運動障害、統合失調症若しくは統合失調症様挙動をもたらす、記憶若しくは他の認識機能が損なわれている可能性があり、又は皮質/線条体不均衡が起こっている可能性がある。本発明に従って治療可能な記憶障害及び学習障害は、老化、精神的外傷、脳卒中及び神経変性障害から生じる障害を含む。神経変性障害の例としては、薬剤誘発状態、神経毒剤、アルツハイマー病、及び老化に関連したものを含むが、これらに限定されない。これらの状態は、当技術者により容易に認識及び診断され、有効量の1つ以上の本発明の化合物を患者に投与することによって治療される。
【0090】
一般に、化合物の投与の用量及び経路は、標準薬務に従って、対象の大きさ及び状態に従って決定されるであろう。採用される投与レベルは広く異なり得り、当技術者により容易に決定され得る。一般的に、グラム量までのミリグラムの量が採用される。該組成物は、例えば、経口的に、経皮的に、周囲神経的に又は非経口的に、すなわち静脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内注射によって、とりわけ口腔、直腸、経皮投与を包含する様々な経路で対象に投与されてよい。本発明の方法の治療が意図される対象は、人間、ペット、実験動物等である。
【0091】
本発明の化合物を含有する製剤は、固体、半固体、凍結乾燥粉末、又は液体の剤形の形態をとることができ、例えば、錠剤、カプセル、粉末、持続放出性製剤、溶液、懸濁液、乳液、坐薬、クリーム、軟膏、ローション、エアゾール、パッチ等であり、好ましくは正確な用量の単純な投与に適した単位剤形である。
【0092】
本発明の医薬組成物は、有効量の本発明の1つ以上の化合物を含み、一般的には従来の医薬キャリア又は賦形剤を含み、さらに他の薬剤、キャリア、助剤、添加物等を含有できる。好ましくは、組成物は、約0.5〜75重量%又はそれ以上が本発明の化合物(単数又は複数)であり、残りは適した医薬賦形剤から原則的になる。経口投与用のこうした賦形剤としては、医薬品等級のマンニトール、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、ブドウ糖、ゼラチン、ショ糖、炭酸マグネシウム等が挙げられる。必要に応じて、組成物は、湿潤剤、乳化剤、又は緩衝剤のような少量の非中毒性補助物質を含有してもよい。
【0093】
液体組成物は、例えば、水性食塩水、水性デキストロース、グリセロール又はエタノールのようなキャリア中に、化合物(約0.5重量%〜約20重量%又はそれ以上)及び任意の補助薬を溶解又は分散させ、溶液又は懸濁液を形成することにより調製できる。経口液体製剤で使用するために、組成物は、溶液、懸濁液、乳液又はシロップとして調製されることができ、水又は生理食塩水への水和に適した液体状態又は乾燥形態で供給される。
【0094】
組成物が、経口投与のための固体製剤の形態で用いられる場合、製剤は、錠剤、顆粒、粉末、カプセル等にできる。錠剤の剤形では、組成物は、一般的に添加剤と共に形成される。添加剤は、例えば、糖類又はセルロース製剤のような賦形剤、澱粉ペースト又はメチルセルロースのような結合剤、増量剤、崩壊剤、及び調合薬剤の製造において一般的に使用される他の添加剤である。
【0095】
非経口投与のための注入可能な組成物は、一般的に、滅菌生理食塩水溶液のような適切な点滴溶液中に化合物を含有する。また組成物は、脂質又はリン脂質中、リポソーム型懸濁液中、又は水性乳液中の懸濁液として形成されてもよい。
【0096】
こうした剤形の調製方法は、既知であり又は当技術者に明らかであろう。例えば、レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical science)(17版、Mack Pub. Co.,1985年)を参照。投与される組成物は、対象においてAMPA受容体の電流を効果的に増大するための薬学的な有効量で、選択された化合物の量を含有する。
【0097】
以下の実施例において実例を示すが、これらは決して本発明を限定することを意図しない。特に明記しない限り、全ての温度は摂氏温度で与えられる。特に明記しない限り、全てのNMRスペクトルは、1H NMRスペクトルであり、内部標準としてテトラメチルシランを用いて、溶媒としての重水素化クロロホルム又は重水素化DMSOで得られた。実施例化合物の全ての名前は、エーシーディー・ラブズ(ACD Labs)によるコンピュータ・ソフトウェア・ケミスケッチ(ChemSketch)で提供されるような、IUPAC命名法に従う。
【0098】
I.化学的方法
中間体1
2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−カルボン酸
【0099】
【化13】

【0100】
機械的攪拌機、還流冷却器、温度計及び窒素入口を備えた3Lの反応装置において、KOH(72.46g)をエタノール(250ml)及び水(250ml)に溶解した。4−アミノ−3−ニトロ安息香酸(100g)を添加し、オレンジ色の懸濁液を30分以内に65〜70℃に加熱した。得られた懸濁液を同じ温度で45分間攪拌し、30分以内に0℃±5℃に冷却した。市販の次亜塩素酸ナトリウムの(13% W/W)溶液(448.93g)を0℃±5℃で1.5時間以内に滴下した。反応混合物を同じ温度で2時間攪拌し、TLC(CHCl3 100/アセトン 2/酢酸 1)で管理した。水(350ml)を0℃±5℃で15分以内に添加し、細かい黄色の懸濁液を得た。次に反応混合物を6N HCl溶液(239ml)で0.5<pH<1に達するまで酸性化した。NaCl(58.44g)を添加し、得られた懸濁液を窒素下において0℃±5℃で1.5時間攪拌した。濾過により固体を収集し、3×400mlの水で洗浄し、乾燥し(40℃、30ミリバール、12時間)、83.6gの2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−カルボン酸N−オキシド(収率88.8%)を得た。
【0101】
機械的攪拌機、温度計、添加漏斗、還流冷却器及び窒素入口を備えた2Lの反応装置において、2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−カルボン酸N−オキシド(80g)を無水エタノール(800ml)に溶解した。この溶液に亜リン酸トリエチル(114.05g)を70℃±2℃にて10分以内で添加した。得られた混合物を加熱し、還流し(76〜78℃)、2時間維持した。TLC(CHCl3 100/アセトン 2/酢酸 1)で観察し、反応の完了を確認した。溶媒を真空下(30ミリバール、40℃)で除去し、黒色油(180g)を得た。水(400ml)を添加し、混合物を酢酸エチル(400及び160ml)で抽出した。有機相を、NaOHを含有する水850ml(9.5<pH<10)で抽出した。水相を分離し、酢酸エチル(3×240ml)で抽出した。水相を5℃±2℃で1<pH<2に酸性化し(78ml 6N HCl)、黄色生成物の結晶を得て、これを濾過、乾燥し(40℃、30ミリバール、12時間)、65.56g(収率90%)の2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−カルボン酸を得た。mp=160−161℃,1H NMR(300MHz,DMSO)δ13.8(s,1H);8.57(s,1H);8.56(d,1H,J=0.6Hz);7.87ppm(d,1H,J=0.6Hz)。
【0102】
中間体2
2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−カルボニルクロライド
【0103】
【化14】

【0104】
機械的攪拌機、温度計、添加漏斗、還流冷却器及び窒素入口を備えた500mlの反応装置において、2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−カルボン酸(28g)をトルエン(245ml)に懸濁させた。この懸濁液に塩化チオニル(39.4g)及びDMF(0.35ml)を添加した。得られた混合物を加熱し、還流し、3時間維持した。ショートパスカラム(short pass column)を差し込み、トルエンを蒸留し(大気圧、124ml)、過剰な試薬を除去した。冷却後、残りのトルエンを蒸留し、濃厚油を得た。この油を蒸留し(90℃、2mmHg)、不純物を除去し、生成物を結晶化した(収率79.8%)。mp:55−58℃。
【0105】
実施例1
8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン
【0106】
【化15】

【0107】
トルエン(80ml)中のトロパン(2.5g、20mmol)の溶液に、[2,2,2]−トリクロロエチルクロロギ酸エチル(20ml、94.4mmol)及びNa2CO3(1.5g,14mmol)をゆっくり添加した。その混合物を110℃で一晩加熱した。その溶液を室温まで冷却し、酢酸エチル(150ml)、水(100ml)及びH2SO4(→pH2)を添加した。その有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して、9.3gの無色油を得た。前述の生成物(3.3g)を、THF(50ml)及びメタノール(50ml)中で溶解して、新たに用意されたZn/Cu(15g)を添加し、続いてギ酸(5ml)を添加した。その混合物を室温で20分間攪拌し、固体を濾過して、約10mlが残るまで溶媒を蒸発させた。濃縮した水酸化ナトリウム水溶液をpHが10になるまで添加し、その混合物をクロロホルム(100ml)で抽出して、その有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した。トリエチルアミン(2ml)を添加し、続いてクロロホルム(20ml)中の[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−カルボニルクロライド(0.5g,2.73mmol)の溶液をゆっくり添加した。混合物を20分間攪拌した後、水(100ml)及びH2SO4(→pH2)を添加し、その水相をクロロホルム(100ml)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空下で濃縮して油状物を得た。その物質をシリカゲルクロマトグラフィーによりヘキサン/酢酸エチル(3:2)で溶出して精製し、ジクロロメタン/MTBEからの結晶化後に133mgの白色固体を得た。mp=128〜130℃,LC−MS,MH+=258;1H NMR(300MHz、CDCl3)δ7.92(s,1H);7.90(d,1H,J=6.3Hz);7.52(d,1H,J=6.3Hz);4.84(s,1H);4.06(s,1H);2.06〜1.50ppm(m,10H)。
【0108】
実施例2
8−([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イルカルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン
【0109】
【化16】

【0110】
トルエン(120ml)中のトロピノン(10g,71.8mmol)の溶液に、[2,2,2]−トリクロロエチルクロロギ酸エステル(40ml,189mmol)及び炭酸ナトリウム(4.0g,37.7mmol)をゆっくり添加した。その混合物を110℃で42時間加熱し、溶媒を蒸発させ、水(100ml)及びH2SO4(→pH2)を添加して、その混合物を酢酸エチル(3×100ml)で抽出した。その有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮し、その残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによりヘキサン/酢酸エチル(4:1)で溶出して精製し、油状物(12.9g)を得て、これを静置して凝固させた。THF(40ml)及びメタノール(40ml)中のこの生成物(2.5g)の溶液に、新たに用意されたZn/Cu(12g)を添加して、その混合物を室温で1時間攪拌した。トリエチルアミン(3ml)を添加し、その固体を濾過してメタノール(10ml)で洗浄し、溶媒を蒸発させた。その残留物をクロロホルム(80ml)に溶解し、トリエチルアミン(3ml)を添加し、続いてクロロホルム(20ml)中の[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−カルボニルクロライド(1.5g,8.2mmol)の溶液をゆっくり添加した。この混合物を1時間攪拌した後、水(100ml)及びH2SO4ト(→pH2)を添加して、その水相をクロロホルム(100ml)で抽出した。一体となった有機相をNaHCO3溶液(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮した。その残留物を、シリカゲルクロマトグラフィーによりヘキサン/酢酸エチル(1:1)で溶出して精製し、ジクロロメタン/MTBE(1.04g)から結晶化した固体を得た。mp=164〜166℃,LC−MS,MH+=272;1H NMR(300MHz、CDCl3)δ8.02(s,1H);7.97(d,1H,J=9Hz);7.57(d,1H,J=9Hz);5.09(sb,1H);4.44(sb,1H);3.05〜1.80ppm(m,8H)。
【0111】
実施例3及び実施例4
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3,3−ジフルオロ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン及び[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−フルオロ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
【0112】
【化17】

【0113】
ジクロロメタン(25ml)中の8−([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イルカルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オンの溶液(0.67g,2.45mmol)に、ジエチルアミノサルファートリフルオリド,「DAST」(5g)をゆっくり添加した。その混合物を室温で3日間攪拌し、次いでNaHCO3溶液(100ml)とクロロホルム(100ml)との混合物中にゆっくり注いだ。その水相をクロロホルム(100ml)で抽出して、一体となった有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによりヘキサン/酢酸エチル(65:35)で溶出して精製し、ジクロロメタン/MTBEからの結晶化後に、2つの生成物の中の極性の小さい方として、[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3,3−ジフルオロ−δ−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン(0.37g)を得た。mp=165〜166℃,LC−MS,MH+=294;1H NMR(300MHz、CDCl3)δ7.96−7.93(m,2H);7.54−7.50(m,1H);5.00(sb,1H);4.26(sb,1H);2.60〜2.05ppm(m,8H)。
【0114】
もう1つの極性が大きい方の生成物は、[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−フルオロ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノンと特定され、ジクロロメタン/MTBEから結晶化されたものである(0.06g)。mp=133〜137℃,LC−MS,MH+=274;1H NMR(300MHz、CDCl3)δ8.00−7.87(m,2H);7.53(d,1H,J=8.7Hz);5.70−5.45(m,1H);5.05(sb,1H);4.31(sb,1H);3.23−1.45ppm(m,6H)。
【0115】
実施例5
endo−[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
【0116】
【化18】

【0117】
トルエン(50ml)中のトロピン(4.0g,28.3mmol)の溶液に、[2,2,2]−トリクロロエチルクロロギ酸エチル(16ml、75.5mmol)及びNa2CO3(4.0g、37.7mmol)をゆっくり添加した。その混合物を42時間、110℃に加熱し、トルエンを真空下で取り除き、水(150ml)及びH2SO4(→pH2)を添加し、その混合物を酢酸エチル(2×100ml)で抽出した。一体となった有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮し、その残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによりヘキサン/酢酸エチル(70:30)→(40:60)を用いて溶出し、白色の固体(6.0g)を得た。THF(50ml)及びメタノール(50ml)中における前述の生成物の溶液(2.5g、8.26mmol)に、新たに用意されたZn/Cu(15g)を添加して、その混合物を室温で18時間攪拌した。固体を濾過して除き、溶媒を蒸発させて残留物をDMF(60ml)に溶解し、DMAP(0.98g、8mmol)、HOBT(0.54g、4mmol)、トリエチルアミン(2ml)、[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−カルボン酸(1.31g、8mmol)及びEDCl(3g、15.6mmol)を添加して、その混合物を室温で2日間攪拌した。DMFを蒸発させて、水(100ml)及びH2SO4(→pH2)を添加した。その混合物をクロロホルム(2×100ml)で抽出し、一体となった有機相をNaHCO3溶液(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、真空下で濃縮した。その残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによりTHF/クロロホルム(15:85→25:75)で溶出して精製し、THF/クロロホルム/MTBEからの結晶化後に白色の固体(1.25g)を得た。mp=169〜171℃,LC−MS,MH+=274;1H NMR(300MHz、CDCl3)δ7.94−7.88(m,2H);7.54−7.47(m,1H);4.83(sb,1H);4.25(sb,1H);4.09(sb,1H);2.40−1.80ppm(m,8H)。
【0118】
実施例6
exo−[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
【0119】
【化19】

【0120】
無水THF(10ml)中のendo−8−([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イルカルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール(0.27g,0.98mmol)の溶液に、4−ニトロ安息香酸(0.33g,2mmol)、トリフェニルホスフィン(0.52g,2mmol)、及びTHF(1ml)中のジイソプロピルアゾジカルボキシレート(0.4g)の溶液を添加した。その混合物を室温で一晩攪拌し、NaHCO3溶液(50ml)を添加して、その混合物を酢酸エチル(2×100ml)で抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して、その残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによりヘキサン/酢酸エチル(1:1)で溶出して精製し、白色の固体(0.45g)を得た。前述の生成物を無水メタノール(70ml)中に懸濁し、無水メタノール(50ml)中のナトリウム(0.2g)の溶液(50ml)を添加して、その混合物を室温で0.75時間攪拌し、その後に濃HCl(0.5ml)(→pH3)を添加して、真空下で溶媒を蒸発させた。その粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーによりTHF/クロロホルム(30:70)で溶出して精製し、クロロホルム/MTBE(0.11g)からの結晶化後に、exo−[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノンを白色の固体として得た。mp=176〜177℃,LC−MS,MH+=274;1H NMR(300MHz、CDCl3)δ7.94−7.90(m,2H);7.21(dd,1H,J=9.3及び1.2Hz);4.88(sb,1H);4.30−4.10(m,2H);4.09(sb,1H);2.20〜1.50ppm(m,8H)。
【0121】
実施例7
2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン
【0122】
【化20】

【0123】
10%のPd/C(0.25g)を、THF(30ml)及びジクロロメタン(30ml)中の2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの溶液に添加し、その混合物を室温で18時間水素化した。固体を濾過して取り除き、溶媒を真空下で蒸発させ、その残留物をTHF(60ml)に溶解し、水素化アルミニウムリチウム(2g)をゆっくり添加した。その混合物を1時間還流し、+5℃に冷却し、その後にヘキサン(60ml)及び濃水酸化ナトリウム溶液(4ml)を添加した。セライト(2g)を添加し、その混合物を1時間攪拌し、その後に固体を濾過して取り除き、THF(10ml)で洗浄した。その混合物に、トリエチルアミン(3ml)及びジクロロメタン(10ml)中の[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−カルボニルクロライド(2g,11.0mmol)の溶液を添加して、その混合物を一晩攪拌した。水(100ml)を添加し、硫酸によりpH2まで酸性化し、酢酸エチル(2×100ml)で抽出した。一体となった有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100ml)で洗浄し、乾燥(NaSO4)及びシリカゲル(5g)上で蒸発させて、その残留物をシリカゲルクロマトグラフィーにより酢酸エチル/ヘキサン(1:1)→(3:1)→(1:0)で溶出し、MTBE/ヘキサンからの結晶化後に所望の生成物を白色結晶(0.28g)として得た。mp=92〜93℃,LC−MS,MH+=244;1H NMR(300MHz、CDCl3,回転異性体)δ7.93−7.87(m,2H)、7.59−7.54(m,1H)、4.79及び4.17(s,トータル1H),3.61及び3.48(m,トータル1H)、3.28及び3.08(dd,J=9.3及び1.5Hz,トータル1H),2.74及び2.64(s,トータル1H),1.90〜1.47ppm(m,6H)。
【0124】
実施例8
1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン
【0125】
【化21】

【0126】
実施例7に記載されたようにして、表題の化合物を1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(Org.Lett,2001,3(9),1371〜1374)及び[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−カルボニルクロライドから調製した。その化合物を白色の結晶固体として単離した。mp=143〜144℃,LC−MS,MH+=244;1H NMR(300MHz、CDCl3)δ8.00(dd,J=1.2及び1.2Hz,1H)、7.90(dd,J=9.3及び1.2Hz,1H)、7.59(dd,J=1.2及び9.3Hz,1H)、4.80(br s,1H)、4.16(br s,1H)、2.08〜1.80(m,4H)、1.64〜1.50ppm(m,4H)。
【0127】
実施例9
2−アザビシクロ[2.2.2]オクト−2−イル[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン
【0128】
【化22】

【0129】
Cis−4−アミノシクロヘキサンカルボン酸(2.0g 13.96mmol)を15分間、ヒートガンを用いてフラスコ中で加熱した。室温に冷却した後、THF(70ml)に続いて水酸化アルミニウムリチウム(4g)をゆっくり、かつ少しずつ添加して、その混合物を65℃で1時間加熱した。その混合物を冷却し、ヘキサン(70ml)及び水酸化ナトリウム溶液(5ml)を、急速に攪拌しながら添加した。セライト(5g)を添加して、その混合物を一晩攪拌した。固体を濾過によって除去し、THF(10ml)で洗浄した。トリエチルアミン(4ml)に続いてジクロロメタン(15ml)中の[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−カルボニルクロライド(2.0g、10.95mmol)の溶液を添加して、その混合物を室温で0.3時間攪拌した。水(100ml)を添加し、硫酸によりpH2まで酸性化し、酢酸エチル(2×100ml)で抽出した。一体となった有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100ml)で洗浄し、乾燥(NaSO4)及び真空下で蒸発させた。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーにより酢酸エチル/ジクロロメタン/ヘキサン(40:10:50)で溶出し、所望の生成物を白色の固体(2.14g)として得た。mp=138〜139℃,LC−MS,MH+=258;1H NMR(300MHz、CDCl3,回転異性体)δ7.91(dd,J=1.2及び9.3Hz,1H)、7.90及び7.83(dd,J=1.2及び1.2Hz,トータル1H)、7.51及び7.46(dd,J=1.2及び9.3Hz,トータル1H)、4.58及び3.42(br s,トータル1H)、3.68−2.64(m,2H)、2.12〜1.61ppm(m,9H)。
【0130】
実施例10
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(2−オキサ−5アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−イル)メタノン
【0131】
【化23】

【0132】
実施例7に記載されたようにして、表題の化合物を2−アザ−5−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン及び[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−カルボニルクロライドから調製した。mp=102〜104℃,LC−MS,MH+=246;1H NMR(300MHz、CDCl3)δ7.98〜7.90(m,2H)、7.58(dd,J=1.2及び9.3Hz,1H)、5.08及び4.78(s,トータル1H)、4.66及び4.47(s,トータル1H)、4.05(m,1H)、3.89(m,1H)、3.73−3.63(m,1H)、3.52(s,1H)、2.06〜1.95ppm(m,2H)。
【0133】
実施例11
2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル]メタノン
【0134】
【化24】

【0135】
実施例7に記載されたようにして、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンをLiAlH4を用いて還元し、次にそれによって調製された2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンを、[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−カルボニルクロライドと結合した。表題の生成物は、MTBE/ヘキサンからの結晶化後に白色の固体として単離した。mp=106〜108℃,LC−MS,MH+−242.25;1H NMR(300MHz、CDCl3,回転異性体)δ7.98−7.86(m,2H)、7.58−7.53(m,1H)、6.60−6.50(m,1H)、6.36−6.32(m,1H)、5.25及び4.57(s,トータル1H)、3.67−3.62(m,1H)、3.39及び3.32(s,トータル1H)、3.03及び2.70(d,J双方=それぞれ、10.2及び8.7Hz,トータル1H)、1.75ppm(s,2H)。
【0136】
実施例12及び実施例13
R−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン及びS−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン
【0137】
【化25】

【0138】
実施例11に記載の手順を用いて、表題の化合物を(R)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン及び(S)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンから調製した。
R−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン:mp=104〜106℃
S−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン:mp=104〜106℃
【0139】
実施例14
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(5,6−ジクロロ−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)メタノン
【0140】
【化26】

【0141】
濃HCl(3ml)を室温でジクロロメタン中の漂白剤(20ml)の急速攪拌混合物に添加した。その混合物を、ジクロロメタン(50ml)中の2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)(0.5g,2.07mmol)の攪拌溶液に添加した。その混合物を蒸発させ、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーにより酢酸エチル/ヘキサン(2:3)で溶出して精製し、ジクロロメタン/MTBEからの結晶化後に表題の化合物を白色の固体として得た。mp=156〜157℃,LC−MS,MH+=312.16;1H NMR(300MHz、CDCl3,回転異性体)δ8.02−7.95(m,2H)、7.52(dd,J=1.1及び9.2Hz,1H)、4.89及び4.29(s,トータル1H)、4.24−4.15(m,2H)、3.72−2.40 4.57ppm(m,5H)。
【0142】
II.生物学的方法
実施例15
生体内電気生理学
次の手順に従って、本発明の化合物の電気生理学的効果を、麻酔動物の生体内で試験した。
動物を、ハミルトン注射器ポンプを使用して投与されるフェノバルビタールにより麻酔下に維持する。刺激電極及び記録電極を海馬の有孔質路及び歯状回にそれぞれ挿入する。一旦、電極が埋め込まれたら、刺激電極に1分間当たり3回送達される一様の単相パルス(100μsパルス持続時間)を使用して、誘発反応の安定した基準値を導く。安定した基準値が得られるまで(約20−30分間)フィールドEPSPを監視した後、試験化合物の溶液を腹膜内に注入し、誘発電場電位を記録する。薬剤投与後およそ2時間、又はフィールドEPSPの振幅が基準値に戻るまで、誘発電位を記録する。後者の例では、点滴投与もまた、その試験化合物の適切な投与と一緒に行われることが一般的である。
【0143】
実施例2
d−アンフェタミン刺激運動の抑制
体重25〜30gmの雄CD1マウスを実験室に入れ、少なくとも30分間順応させた。各マウスを、動物の活動を自動的に監視する赤外線ビーム配列付の試験筐体に入れた。マウスを20分間試験筐体で慣らした後、ホームゲージに返した。d−アンフェタミン注入の5分前に、適当な賦形剤中の試験化合物をマウスの腹膜内に投与した。d−アンフェタミン注入の10分後、マウスの自発運動を合計15分間試験した。データをコンピュータで収集し、「任意運動ユニット」として表した。全てのデータを、試験化合物で治療される群を賦形剤対照群と比較することによって分析した。統計分析をANOVAにより実行し、続いてダネットのt−検定を行った。0.05未満のPは著しく異なると考えられた。
【0144】
本発明は、特定の方法及び実施形態に関して記載されたが、本発明を逸脱せずに様々な変更がされる可能性があることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式Aの化合物であって、
【化1】

式中、Wは酸素、硫黄又はCH=CHであり、
X、Y及びZは、−N、又は−CRからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、−Br、−Cl、−F、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
ここで、R1は、H、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
nは0、1、2、3、4、5であり、
mは0、1、2、3、4、5であり、
pは0、1、2、3、4、5であり、
2及びR3は、それぞれ独立してH、ハロゲン(好ましくはF)、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、CF3、OH、C=O、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルケニル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルキニル、非置換若しくは置換のC3−C7シクロアルキル、非置換若しくは置換のアリール、非置換若しくは置換の複素環、非置換若しくは置換のカルボキシアルキル、非置換若しくは置換のカルボキシアリール、非置換若しくは置換のカルボキシヘテロアリール、非置換若しくは置換のスルホニルアルキル、非置換若しくは置換のスルホニルアリール、又は非置換若しくは置換のスルホニルヘテロアリールから選択され、
E及びFは、それぞれ独立してCH2m、CR23、A、CH2A、CR2=CR3から選択されるか又は存在せず、ただし、E及びFが両方存在しないことはなく、
Gは、CR23、A、CH2A、CR2=CR3、CH2C=O、CH2CR23であるか又は存在せず、
Aは、O、S、SO、SO2、C=O又はCR23である、
化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体。
【請求項2】
次の式の化合物であって、
【化2】

式中、Wは酸素、硫黄又はCH=CHであり、
X、Y及びZは、−N、又は−CRからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、−Br、−Cl、−F、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
ここで、R1は、H、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキルであり、
nは0〜5であり、
mは0〜5であり、
pは0〜5であり、
2及びR3は、独立してH、ハロゲン(好ましくはF)、−CN、−NO2、−OR1、−SR1、−NR12、CF3、OH、C=O、非置換若しくは置換のC1−C6分岐状若しくは非分岐状アルキル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルケニル、非置換若しくは置換のC2−C6分岐状若しくは非分岐状アルキニル、非置換若しくは置換のC3−C7シクロアルキル、非置換若しくは置換のアリール、非置換若しくは置換の複素環、非置換若しくは置換のカルボキシアルキル、非置換若しくは置換のカルボキシアリール、非置換若しくは置換のカルボキシヘテロアリール、非置換若しくは置換のスルホニルアルキル、非置換若しくは置換のスルホニルアリール、又は非置換若しくは置換のスルホニルヘテロアリールから選択される、
請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体。
【請求項3】
次の式の化合物であって、
【化3】

式中、W、X、Y及びZは、請求項1の構造式Iについて記載されたとおりであり、
nは0〜5であり、
mは0〜5であり、
pは0〜4であり、
2及びR3は、請求項1の構造式Iについて記載されたとおりである、
請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体。
【請求項4】
次の式の化合物であって、
【化4】

式中、W、X、Y及びZは、構造式Iについて記載されたとおりであり、
Aは、O、S、SO、SO2、C=O又はCR23であり、
nは0〜5であり、
mは1〜5であり、
pは0〜5であり、
2及びR3は、構造式Iについて記載されたとおりである、
請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体。
【請求項5】
次の式の化合物であって、
【化5】

式中、W、X、Y及びZは、上記の構造式Iについて記載されたとおりであり、
Aは、O、S、SO、SO2、C=O又はCR23であり、
nは1〜5であり、
mは1〜5であり、
pは0〜5であり、
2及びR3は、構造式Iについて記載されたとおりである、
請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくは多形体。
【請求項6】
8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン、
8−([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イルカルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン、
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3,3−ジフルオロ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン、
endo−[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン、
exo−[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン、
2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル([2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン、
1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン、
2−アザビシクロ[2.2.2]オクト−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン、
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(5,6−ジクロロ−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)メタノン、
である請求項2の式Iによる化合物。
【請求項7】
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(3−フルオロ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン、
2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン、
R−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン、
S−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル([2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル)メタノン、
である請求項3の式IIによる化合物。
【請求項8】
[2,1,3]−ベンゾキサジアゾール−5−イル(2−オキサ−5アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−イル)メタノンである請求項5の式IVによる化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の有効量を薬学的に受容可能な担体、添加物又は賦形剤と組み合わせて含む薬学組成物。
【請求項10】
前記化合物は、前記薬学組成物の約0.5重量%〜約75重量%であり、前記担体、添加物又は賦形剤は、前記薬学組成物の約25%〜約95.5%である、請求項9に記載の薬学組成物。
【請求項11】
哺乳類対象の治療方法であって、前記哺乳類対象は、低グルタミン酸作動性状態又は興奮性シナプスの数若しくは強度あるいはAMPA受容体の数における欠乏を患って、記憶又は他の認知機能が損なわれており、前記治療方法が、薬理学的に許容可能なキャリア中で、有効量の請求項1〜8に記載の化合物を前記哺乳類対象に投与することを含む、哺乳類対象の治療方法。
【請求項12】
哺乳類対象の治療方法であって、前記哺乳類対象は、低グルタミン酸作動性状態又は興奮性シナプスの数若しくは強度あるいはAMPA受容体の数における欠乏を患って、統合失調症又は統合失調症様挙動をもたらす皮質/線条体不均衡が生じており、前記治療方法が、薬理学的に許容可能なキャリア中で、有効量の請求項1〜8に記載の化合物を前記哺乳類対象に投与することを含む、哺乳類対象の治療方法。
【請求項13】
症状が統合失調症である、請求項12に記載の治療方法。
【請求項14】
症状がパーキンソン病である、請求項11に記載の治療方法。
【請求項15】
治療が必要な患者におけるADHDの治療方法であり、前記治療方法が、有効量の請求項1〜8のいずれかに記載の化合物を前記患者に投与することを含む治療方法。
【請求項16】
治療が必要な患者におけるレット症候群の治療方法であり、前記治療方法が、有効量の請求項1〜8に記載の化合物を前記患者に投与することを含む治療方法。
【請求項17】
治療が必要な患者における脆弱性X症候群の治療方法であり、前記治療方法が、有効量の請求項1〜8に記載の化合物を前記患者に投与することを含む治療方法。
【請求項18】
治療が必要な患者における呼吸抑制の治療方法であり、前記治療方法が、有効量の請求項1〜8に記載の化合物を前記患者に投与することを含む治療方法。
【請求項19】
治療が必要な患者における呼吸抑制の治療方法であり、前記治療方法が、アヘン剤又はオピオイド鎮痛剤と組み合わせて、有効量の請求項1〜8に記載の化合物を前記患者に投与することを含む治療方法。
【請求項20】
治療が必要な患者における呼吸抑制の治療方法であり、前記治療方法が、麻酔薬と組み合わせて、有効量の請求項1〜8に記載の化合物を前記患者に投与することを含む治療方法。
【請求項21】
前記麻酔剤が、プロポフォール及びバルビツレート類からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
治療が必要な患者における呼吸関連睡眠障害又は睡眠時無呼吸の治療方法であり、前記治療方法が、有効量の請求項1〜8に記載の化合物を前記患者に投与することを含む治療方法。
【請求項23】
治療が必要な患者におけるアルツハイマー病の治療方法であり、前記治療方法が、有効量の請求項1〜8に記載の化合物を前記患者に投与することを含む治療方法。
【請求項24】
治療が必要な患者におけるアルツハイマー病の治療方法であり、前記治療方法が、少なくとも1つのアセチルコリンエステラーゼ抑制剤と組み合わせて、有効量の請求項1〜8に記載の化合物を前記患者に投与することを含む治療方法。
【請求項25】
低グルタミン酸作動性状態、又は興奮性シナプスの数若しくは強度あるいはAMPA受容体の数における欠乏を患って記憶若しくは他の認知機能が損なわれている哺乳類対象の治療に使用する薬剤の製造における、請求項1〜8に記載の化合物の使用。
【請求項26】
統合失調症の治療に使用する薬剤の製造における、請求項1〜8に記載の化合物の使用。
【請求項27】
パーキンソン病の治療に使用する薬剤の製造における、請求項1〜8に記載の化合物の使用。
【請求項28】
ADHDの治療に使用する薬剤の製造における、請求項1〜8に記載の化合物の使用。
【請求項29】
レット症候群の治療に使用する薬剤の製造における、請求項1〜8に記載の化合物の使用。
【請求項30】
認知障害の治療に使用する薬剤の製造における、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項31】
呼吸抑制の治療に使用する薬剤の製造における、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項32】
呼吸抑制の治療に使用する薬剤の製造における、アヘン剤と組み合わせた請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項33】
呼吸関連睡眠障害又は睡眠時無呼吸の治療に使用する薬剤の製造における、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項34】
脆弱性X症候群の治療に使用する薬剤の製造における、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項35】
アルツハイマー病の治療に使用する薬剤の製造における、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2010−535858(P2010−535858A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520992(P2010−520992)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/009508
【国際公開番号】WO2009/023126
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(500195208)コーテックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】