説明

グロメットのためのシールリップ保護部材、およびシールリップ保護構造

【課題】簡素な構造のシールリップ保護部材を提供すること。
【解決手段】グロメットのシールリップ100のためのシールリップ保護部材10は、幅方向の中央部で二つ折り可能であり、二つ折りすることでグロメットのシールリップ100を挟み、挟んだとき、折り曲げ部の内側に、シールリップの先端部101を非接触または軽接触の状態で収容する、折り曲げ反発力でできた空間を確保可能な帯状のテープ基材11と、テープ基材11の片面に設けられ、該テープ基材11を二つ折りにして前記シールリップ100を挟んだとき、シールリップ100の両面に接着可能な粘着材13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメットのためのシールリップ保護部材、および該シールリップ保護部材を使用したシールリップ保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車体パネルを貫通してワイヤハーネスを配索するような場合、車体パネルに対するワイヤハーネスの貫通部にグロメットを装着して、ワイヤハーネスと車体パネルとの間をシールしている。その場合、グロメットにはシールリップを設け、そのシールリップの先端を車体パネルの板面に密着させることで、シール性を確保している。
【0003】
従って、シールリップの先端部が、搬送時や取り扱い時等に損傷を受けると、シール性能に影響を与えるおそれが大きいため、実際に車体に装着して使用するまでの間、シールリップを保護部材で保護することが行なわれている。
【0004】
その種の保護部材として、従来、特許文献1に記載のグロメットカバーが知られている。このグロメットカバーは、断面U字形の剛性壁材により環状空洞部を形成し、その環状空洞部にグロメットのシールリップを収容するようにしたものである。
【0005】
【特許文献1】特開2004−88931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された従来の保護部材は、一定の形状を維持するための剛性を保つ関係で、大きな外形で大きな重量のものとなっており、グロメットの保管時や運搬時の占有スペースが大きくなる上に、製作するための材料コストや成形コストも多くかかるという問題があった。また、コスト高なものである故に、使い捨てでは、グロメットの製品コストに大きな影響を及ぼす。そのため、回収して洗浄し再利用を試みているが、回収・洗浄に余分なコストがかかるという問題もあった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成で、省スペース化および軽量化を図ることができると共に、材料使用量を削減することができ、それにより、使い捨てできるほどに単純で低コスト化が可能であり、回収不要の、グロメットのためのシールリップ保護部材、および該シールリップ保護部材を使用したシールリップ保護構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るシールリップ保護部材は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 幅方向の中央部で二つ折り可能であり、二つ折りすることでグロメットのシールリップを挟み、挟んだとき、折り曲げ部の内側に、前記シールリップの先端部を非接触または軽接触の状態で収容する、折り曲げ反発力でできた空間を確保可能な帯状のテープ基材と、
前記テープ基材の片面に設けられ、該テープ基材を二つ折りにして前記シールリップを挟んだとき、該シールリップの両面に接着可能な粘着材と、
を備えること。
(2) 上記(1)の構成のシールリップ保護部材において、
前記テープ基材の折り曲げ部となる部分の内側の面に、粘着材を排除した非粘着部を設け、該非粘着部で前記空間を確保するようにしたこと。
(3) 上記(2)の構成のシールリップ保護部材において、
前記テープ基材の折り曲げ部となる部分の内側の面に凹部を設け、その凹部を前記非粘着部としたこと。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの構成のシールリップ保護部材において、
前記テープ基材の折り曲げ部となる部分の外側に、折り曲げ反発力を高めるためのリブを設けたこと。
【0009】
上記(1)の構成のシールリップ保護部材によれば、二つ折りにしてシールリップへ貼り付けるだけで、テープ基材の折り曲げ反発力でできた空間にシールリップの先端部を収容することができ、シール性能に重要な影響を及ぼすシールリップの先端部を安全に保護することができる。また、グロメットを、例えば自動車等の車両の車体パネルに装着する場合は、保護部材を剥がせば、そのまま使用することができる。また、この保護部材は、テープ基材に粘着材を貼り付けただけの単純な構成のものであるから、省スペース化および軽量化を図ることができるし、保護部材を作るための材料の使用量も従来品に比べて僅かですむため、省資源化および低コスト化を図ることもできる。更に、再利用する程の高価なものとはならないので、回収・洗浄費用が不要であり、洗浄に使用した排出物の抑制化にも寄与することができる。
上記(2)の構成のシールリップ保護部材によれば、前記テープ基材の折り曲げ部となる部分の内側の面に、粘着材を排除した非粘着部を設けたので、シールリップの先端部を、粘着材が付かないようにした状態で保護することができる。
上記(3)の構成のシールリップ保護部材によれば、前記テープ基材の折り目となる部分の内側の面に凹部を設け、その凹部を非粘着部としたので、より確実にシールリップの先端部を、粘着材が付かないようにした状態で保護することができる。
上記(4)の構成のシールリップ保護部材によれば、テープ基材の折り曲げ部となる部分の外側にリブを設けることで、テープ基材の折り曲げ反発力を高めたので、シールリップの先端部を収容する空間を大きく確保することができ、より確実にシールリップの先端部を、粘着材が付かないようにした状態で保護することができる。
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係るシールリップ保護構造は、
上記(1)〜(4)のいずれかの構成のシールリップ保護部材を使用したシールリップ保護構造であって、前記テープ基材を二つ折りすることで、前記グロメットのシールリップを挟み、その状態で前記粘着材でシールリップの両面にテープ基材を貼り付け、該テープ基材の折り曲げ部の内側にできた空間に、前記シールリップの先端部を収容したことを特徴としている。
【0011】
このシールリップ保護構造によれば、テープ基材の折り曲げ反発力でできた空間にシールリップの先端部を収容しているので、シール性能に重要な影響を及ぼすシールリップの先端部を安全に保護することができる。また、グロメットを、例えば自動車等の車両の車体パネルに装着する場合は、保護部材を剥がせば、そのまま使用することができる。また、使用する保護部材は、テープ基材に粘着材を貼り付けただけの単純な構成のものでよい、省スペース化および軽量化を図ることができるし、保護部材を作るための材料の使用量も従来品に比べて僅かですむため、省資源化および低コスト化を図ることもできる。更に、再利用する程の高価なものとはならないので、回収・洗浄費用が不要であり、洗浄に使用した排出物の抑制化にも寄与することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡素な構成で、省スペース化および軽量化を図ることができると共に、材料使用量を削減することができ、それにより、使い捨てできるほどに単純で低コスト化が可能であり、回収不要の、グロメットのためのシールリップ保護部材、および該シールリップ保護部材を使用したシールリップ保護構造を提供できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1(a)〜(c)は第1実施形態のシールリップ保護部材およびシールリップ保護構造の構成図であって、図1(a)はシールリップに貼り付ける前の保護部材の斜視図、図1(b)はシールリップに保護部材を貼り付けようとしている状態を示す断面図、そして図1(c)はシールリップに保護部材を貼り付けた状態を示す断面図である。
【0016】
このシールリップ保護部材10は、幅方向の中央部で二つ折り可能であり、二つ折りすることでグロメットのシールリップ100を挟み、挟んだとき、折り曲げ部の内側に、シールリップ100の先端部101を非接触または軽接触の状態で収容する、折り曲げ反発力でできた空間Sを確保可能な帯状のテープ基材11と、このテープ基材11の片面に設けられ、該テープ基材11を二つ折りにしてシールリップ100を挟んだとき、シールリップ100の両面に接着可能な粘着材13と、を備えている。
【0017】
そして、テープ基材11の折り曲げ部となる部分の内側の面には、粘着材13を排除した非粘着部12が設けられており、この非粘着部12で前記空間Sを確保するようになっている。
【0018】
この保護部材10でシールリップ100の先端部101を保護する場合は、図1(b)および(c)に示すように、テープ基材11を二つ折りすることで、グロメットのシールリップ100を挟み込み、その状態で、粘着材13でシールリップ100の両面にテープ基材11を貼り付ける。そして、テープ基材11の折り曲げ部の内側の折り曲げ反発力によりできた空間Sに、シールリップ100の先端部101を収容する。これにより、シールリップ保護構造ができあがる。
【0019】
上記シールリップ保護部材10によれば、二つ折りにしてシールリップ100へ貼り付けるだけで、テープ基材11の折り曲げ反発力でできた空間Sにシールリップ100の先端部101を収容することができるので、シール性能に重要な影響を及ぼすシールリップ100の先端部101を、簡単な作業により安全に保護することができる。また、グロメットを、例えば自動車等の車両の車体パネルに装着する場合は、シールリップ保護部材10をシールリップ100から剥がせば、そのまま使用することができる。
【0020】
また、このシールリップ保護部材10は、テープ基材11に粘着材13を貼り付けただけの単純な構成のものであるから、省スペース化および軽量化を図ることができるし、保護部材10を作るための材料の使用量も従来品に比べて僅かですむため、省資源化および低コスト化を図ることもできる。更に、再利用する程の高価なものとはならないので、回収・洗浄費用が不要であり、洗浄に使用した排出物の抑制化にも寄与することができる。
【0021】
また、テープ基材11の折り曲げ部となる部分の内側の面に、粘着材13を排除した非粘着部12を設けているので、シールリップ100の先端部101を、粘着材13が付かないようにした状態で確実に保護することができる。
【0022】
また、テープ基材11の折り曲げ部となる部分の内側の面に、断面が矩形状、三角形状、半円状等の凹部を設けておき、その凹部を非粘着部12として構成してもよい。そのようにすれば、より大きな空間Sを確保できるので、確実にシールリップ100の先端部101を、粘着材13が付かないようにした状態で保護することができる。
【0023】
(第2実施形態)
図2(a)〜(c)は第2実施形態のシールリップ保護部材およびシールリップ保護構造の構成図であって、図2(a)はシールリップに貼り付ける前の保護部材の斜視図、図2(b)はシールリップに保護部材を貼り付けようとしている状態を示す断面図、そして図2(c)はシールリップに保護部材を貼り付けた状態を示す断面図である。
【0024】
このシールリップ保護部材20は、幅方向の中央部で二つ折り可能であり、二つ折りすることでグロメットのシールリップ100を挟み、挟んだとき、折り曲げ部の内側に、シールリップ100の先端部101を非接触または軽接触の状態で収容する、折り曲げ反発力でできた空間Sを確保可能な帯状のテープ基材21と、このテープ基材21の片面に設けられ、該テープ基材21を二つ折りにしてシールリップ100を挟んだとき、シールリップ100の両面に接着可能な粘着材23と、を備えている。
【0025】
そして、テープ基材21の折り曲げ部となる部分の外側に、折り曲げ反発力を高めるためのリブ22が設けられており、このリブ22があることによる曲げにくさにより、前記空間Sを確保するようになっている。尚、リブ22の断面は、矩形状、三角形状、半円状等のいずれであってもよい。
【0026】
上記シールリップ保護部材20によれば、二つ折りにしてシールリップ100へ貼り付けるだけで、テープ基材21の折り曲げ反発力でできた空間Sにシールリップ100の先端部101を収容することができるので、シール性能に重要な影響を及ぼすシールリップ100の先端部101を、簡単な作業により安全に保護することができる。また、グロメットを、例えば自動車等の車両の車体パネルに装着する場合は、シールリップ保護部材20をシールリップ100から剥がせば、そのまま使用することができる。
【0027】
また、このシールリップ保護部材20は、テープ基材21に粘着材23を貼り付けただけの単純な構成のものであるから、省スペース化および軽量化を図ることができるし、保護部材20を作るための材料の使用量も従来品に比べて僅かですむため、省資源化および低コスト化を図ることもできる。更に、再利用する程の高価なものとはならないので、回収・洗浄費用が不要であり、洗浄に使用した排出物の抑制化にも寄与することができる。
【0028】
また、テープ基材21の折り曲げ部となる部分の外側にリブ22を設け、リブ22を設けたことによる折り曲げ反発力の増大により、前記空間Sを確保するようにしているので、シールリップ100の先端部101を、粘着材23が付かないようにした状態で確実に保護することができる。
【0029】
尚、図2に示した例では粘着材23をテープ基材21の片面全域に設けているが、第1実施形態のように、幅方向の中央部だけ粘着材23を排除した非粘着部を設けてもよい。
【0030】
また、上述の第1実施形態および第2実施形態の保護部材10、20においては、テープ基材11、21は外力に耐え得る板厚を持っており、粘着材13、23は外力に耐えるだけの粘着力を持っている。また、保護部材10、20の粘着材13、23の表面に剥離フィルムを付けておき、使用時に剥離フィルムを剥がしてから粘着材13、23をシールリップ100の先端部101貼り付けるようにしてもよい。
【0031】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0032】
例えば、上記第1実施形態においては、テープ基材11の幅方向の中央部に非粘着部12を設けているが、前記の空間Sが十分に確保できれば、非粘着部12を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態のシールリップ保護部材および保護構造の構成図であって、(a)はシールリップに貼り付ける前の保護部材の斜視図、(b)はシールリップに保護部材を貼り付けようとしている状態を示す断面図、そして(c)はシールリップに保護部材を貼り付けた状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態のシールリップ保護部材および保護構造の構成図であって、(a)はシールリップに貼り付ける前の保護部材の斜視図、(b)はシールリップに保護部材を貼り付けようとしている状態を示す断面図、そして(c)はシールリップに保護部材を貼り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10,20:シールリップ保護部材
11,21:テープ基材
12:非粘着部
13,23:粘着材
22:リブ
100:シールリップ
101:先端部
S:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の中央部で二つ折り可能であり、二つ折りすることでグロメットのシールリップを挟み、挟んだとき、折り曲げ部の内側に、前記シールリップの先端部を非接触または軽接触の状態で収容する、折り曲げ反発力でできた空間を確保可能な帯状のテープ基材と、
前記テープ基材の片面に設けられ、該テープ基材を二つ折りにして前記シールリップを挟んだとき、該シールリップの両面に接着可能な粘着材と、
を備えることを特徴とするシールリップ保護部材。
【請求項2】
前記テープ基材の折り曲げ部となる部分の内側の面に、粘着材を排除した非粘着部を設け、該非粘着部で前記空間を確保するようにしたことを特徴とする請求項1に記載したシールリップ保護部材。
【請求項3】
前記テープ基材の折り曲げ部となる部分の内側の面に凹部を設け、その凹部を前記非粘着部としたことを特徴とする請求項2に記載したシールリップ保護部材。
【請求項4】
前記テープ基材の折り曲げ部となる部分の外側に、折り曲げ反発力を高めるためのリブを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載したシールリップ保護部材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のシールリップ保護部材を使用したシールリップ保護構造であって、
前記テープ基材を二つ折りすることで、前記グロメットのシールリップを挟み、その状態で前記粘着材でシールリップの両面にテープ基材を貼り付け、該テープ基材の折り曲げ部の内側にできた空間に、前記シールリップの先端部を収容したことを特徴とするシールリップ保護構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−38931(P2009−38931A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202753(P2007−202753)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】