説明

グロメット

【課題】取付時にネジを挿入して外側壁面を外方に拡開させる際のネジ孔の摩耗がなく、しかも、ネジが緩んだ場合でも異音を発生させることのないグロメットを提供すること。
【解決手段】金属部材110の底板部111には、ネジが螺合する孔部112が形成されている。底板部111の両端は、この底板部111に実質的に垂直な側板部113となっており、その上端が、ネジの螺合により押圧されて下端部が外側に押し広げられるバネ板部114の支点zとなっている。バネ板部114は「くの字」形状を有し、底板部111に形成された孔部112にネジが挿入されるとバネ板部114の略中央部にある屈曲部に当接し、当該屈曲部を外側に拡開する結果、バネ板部114の下端部が外側に拡開する。このバネ板部114の下端部の外側への拡開により弾性梁部122が押圧されて筐体部120の側面から外側に拡開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の天井裏の骨組みに当たるリーンフォースメントに天吊型ディスプレイなどを取り付ける際に用いられるグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車内の天井にディスプレイ等の車載用表示装置を取り付ける場合、車載用表示装置をネジやグロメットを用いて天井に固定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような用途に用いられるグロメットは、被取付部材に設けられた穴に挿入され、グロメット本体に形成されたネジ孔にネジを挿入してゆくことで外側壁面が外方に拡開され、これにより被取付部材に設けられた穴に係止することで取付部材を固定する部品である。
【0003】
例えば、自動車の天井裏の骨組みに当たるリーンフォースメントへの天吊型ディスプレイの取り付け治具としてグロメットを用いた場合には、ネジを用いた場合に比較して、グロメットのフランジ部分がリーンフォースメントに設けられた治具取付用の孔窓の周縁を覆って隙間を塞ぐことにより振動等による位置ズレや脱落が起こり難いだけではなく、グロメットの外側面が孔窓の縁部と直接接触するために振動に起因する音の発生が抑制されるといった利点がある。
【0004】
従来、このような取付治具としてのグロメットは、全体が樹脂材料で一体成形されたものや、板金を加工して成形されたものが一般的であった。また、樹脂材料で成型したグロメットとして、硬質樹脂材料製のインナー部材と、軟質樹脂材料製のアウター部材とで構成し、インナー部材にアウター部材を被せることで一体化するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
樹脂材料で一体成形された一般的な従来型のグロメットは、下部にフランジを有しており、側面には切れ込みによって外側に拡開可動な弾性梁部が対向して設けられており、下部に設けられたネジ孔部からネジを挿入してゆくと、その作用によって弾性梁部が外方に拡開され、被取付部材に設けられた穴に係止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−24922号公報
【特許文献2】特開2003−235131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、樹脂材料で成型したグロメットは、取付時にネジを挿入して外側壁面を外方に拡開させる際にネジ孔が摩耗し易く、その結果、外側壁面の外方への拡開量が本来の値からずれることとなるため、±0.1mm程度の公差の穴にしか対応することができない。また、板金を加工して成形されたグロメットは、被取付部材との接触部が金属であるために、僅かなネジの緩みによっても異音を発生させてしまい易い。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、取付時にネジを挿入して外側壁面を外方に拡開させる際のネジ孔の摩耗がなく、しかも、ネジが緩んだ場合でも異音を発生させることのないグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るグロメットは、樹脂材料で成形された筐体部と該筐体部に収容されて係合する金属部材とを備え、前記金属部材は、ネジが螺合する孔部を有する底板部と、該底板部の両端に位置し該底板部に実質的に垂直な側板部と、前記ネジの螺合により押圧されて下端部が外側に押し広げられるバネ板部を備え、前記筐体部は、底部を有する筒状であって、前記底部の内側に前記金属部材の底板部にネジを螺合させるための開口部が形成されるとともに外周部にフランジ部が設けられており、前記筒状の側面に前記バネ板部の下端部に押圧されて該筐体部の側面から外側に拡開される弾性梁部が対向して設けられている。
【0010】
好ましくは、前記バネ板部は、くの字形状を有し、前記金属部材の側板部の上端ではグロメットの内側に屈曲し、下端部が前記金属部材の側板部の下端側に向かう形状である。
【0011】
また、好ましくは、前記筒状の筐体部の側面に設けられた一対のスリットにより該側面の一部が外側に拡開可動な板バネ部とされ、該板バネ部が前記筒状の側面に対向して設けられており、該一対の板バネ部の下端部は前記金属部材の底板部と係合して係止するストッパである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、取付時にネジを挿入して外側壁面を外方に拡開させる際のネジ孔の摩耗がなく、しかも、ネジが緩んだ場合でも異音を発生させることのないグロメットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】筐体部に収容されて係合する金属部材110の射視図(A)および側面図(B)
【図2】樹脂材料で成形された筐体部120の射視図(A)および側面図(B)
【図3】金属部材が筐体部に収容されて係合した状態のグロメットの射視図
【図4】金属部材が筐体部に収容されて係合した状態のグロメットの射視図(A)、X方向から眺めた場合の断面図(B)、および、Y方向から眺めた場合の断面図(C)
【図5】本発明に係るグロメットをリーンフォースメントに固定する手順を説明するための斜視図
【図6】本発明に係るグロメットを用いて天吊型ディスプレイをリーンフォースメントに取り付けた状態の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の態様を例示により説明する。なお、以下の説明においては、グロメットを、天吊型ディスプレイを車内の室内天井裏の骨組みであるリーンフォースメントに取り付ける際に用いる固定部材として説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。取付部材は天吊型ディスプレイ以外の表示装置等であり得るし、被取付部材はリーンフォースメント以外のものであり得る。
【0015】
図1〜3は、本発明に係るグロメット100の一態様を説明するための図で、図1は筐体部120に収容されて係合する金属部材110の射視図(A)および側面図(B)、図2は樹脂材料で成形された筐体部120の射視図(A)および側面図(B)、そして、図3は金属部材110が筐体部120に収容されて係合した状態のグロメット100の射視図である。
【0016】
図1に図示したように、金属部材110の底板部111には、ネジが螺合する孔部112が形成されている。この金属部材110は、例えば、バネ性に優れる金属材料であるステンレスまたはリン青銅から成る。底板部111の両端は、この底板部111に実質的に垂直な側板部113となっており、その上端が、ネジの螺合により押圧されて下端部が外側に押し広げられるバネ板部114の支点zとなっている。
【0017】
この図に示した例では、バネ板部114の形状は、側板部113の上端でグロメットの内側に屈曲し、下端部が側板部113の下端側に向かう、「くの字」形状を有している。底板部111に形成された孔部112にネジが挿入されると、ネジはバネ板部114の略中央部にある屈曲部に当接し、挿入を続けると当該屈曲部を外側に拡開するようになる結果、バネ板部114の下端部は図中に示したxからyの位置へと外側に拡開してゆくことになる。このバネ板部114の下端部の外側への拡開により弾性梁部122が押圧されて筐体部120の側面から外側に拡開する。ここで図示したようにバネ板部114の形状を「くの字」形状とした場合には、ネジとバネ板部114の接点である略中央部の屈曲部の拡開量よりも、バネ板部114の下端部の拡開量を大きくすることができる。つまり、少ないネジの挿入量でも拡開量を大きくとることができる。
【0018】
図2に図示したように、筐体部120は底部を有する筒状である。この筐体部120は、例えば、樹脂材料であるポリアミド6(6ナイロン)で一体成型されている。この筐体部120の底部の内側には、金属部材110の孔部112にネジを螺合させるべく、開口部(不図示)が形成されている。また、外周部にはフランジ部121が設けられており、このフランジ部121が被取付部材に開けられた孔窓の周縁を覆って隙間を塞ぐことにより振動等による位置ズレや脱落が起こり難くする。筒状の筐体部120の側面には弾性梁部122が対向して設けられており、これら弾性梁部122がバネ板部114の下端部に押圧されて筐体部120の側面から外側に拡開することで、被取付部材に設けられた孔窓に係止する。
【0019】
図中に符号123で示したものは、金属部材110の底板部と係合して係止するためのストッパである。ストッパ123は、筒状の筐体部120の側面に設けられた一対のスリットにより該側面の一部が外側に拡開可動な板バネ部で、筐体部120の側面に設けられたスリットにより下端が拡開可動となっている。金属部材110が筐体部120の内部に収容されにつれて、金属部材110の底板部111の周縁がストッパ123を外方に拡開させ、金属部材110が完全に収容された状態ではストッパ123の下端部が金属部材110の底板部111と係合して係止する。
【0020】
図4は、グロメット100における、金属部材110と筐体部120の係合関係を説明するための図で、図4(A)は図3と同様の金属部材110が筐体部120に収容されて係合した状態のグロメット100の射視図、図4(B)はX方向から眺めた場合の断面図、そして、図4(C)はY方向から眺めた場合の断面図である。
【0021】
図4(B)に図示したように、金属部材110が樹脂材料で成形された筐体部120の内部に収容されて係合すると、金属部材110のバネ板部114は、その下端部が、筐体部120の側面に設けられた弾性梁部122の下端部を押圧するように位置する。
【0022】
筐体部120の側面に設けられた弾性梁部122の外面は、外側に突き出る突起部が形成されるようにテーパー形状とされている。この外面突起部は、被取付部材に設けられた孔窓に係止する張出肩として機能する。また、弾性梁部122の内面は、バネ板部114の下端部により押圧される部分が突起状とされている。この内面突起部は、金属部材110のバネ板部114からの押圧を確実に受け止めるためのものである。
【0023】
開口部124からネジを挿入しネジ孔112に螺合させて内部に押し込んでゆくと、金属部材110のバネ板部114はネジにより外側に拡開し、バネ板部114の下端部が上述の弾性梁部122の内面突起部を押圧する。その結果、弾性梁部122の外面突起部が筐体部120の側面から外側に拡開され、被取付部材に設けられた孔窓に確実に係止する。
【0024】
また、図4(C)に図示したように、筐体部120の側面に設けられたストッパ123の内面は、下方に向かって太るテーパー形状とされている。金属部材110を樹脂材料で成形された筐体部120の内部に収容される過程では、金属部材110の底板部111の外縁がこのテーパー部を外方に押し出し、完全に収容された状態になると、一旦は外方に押し出されたストッパ123がその弾性により内側に戻り、金属部材110の底板部111と係合する。その結果、金属部材110が筐体部120の内部に確実かつ強固に固定され、振動等によっても不用意にガタついたり脱落したりすることがなくなる。
【0025】
図5および図6はそれぞれ、本発明に係るグロメット100をリーンフォースメント200に固定する手順を説明するための斜視図、および、本発明に係るグロメット100を用いて天吊型ディスプレイ300をリーンフォースメント200に取り付けた状態の斜視図である。
【0026】
図5に示したように、リーンフォースメント200に予め設けられた孔窓210に、下側から、金属部材110と筐体部120をこの順で差し込み、更に、金属部材110の底板部111に設けられた孔部112にネジ130を挿入して螺合させる。上述したとおり、ネジ孔112からネジ130をグロメット内部に挿入すると、金属部材110のバネ板部114が外側に拡開し、その下端部が弾性梁部122の内面突起部を押圧する。その結果、弾性梁部122の外面突起部が筐体部120の側面から外側に拡開され、リーンフォースメント200に設けられた孔窓210に確実に係止する。
【0027】
本発明のグロメットは、ネジが螺合する部分が金属部材に設けられているために取付時にネジを挿入して外側壁面を外方に拡開させる際のネジ孔の摩耗がない。また、この金属部材は樹脂性の筐体部内に収容され、被取付部材と接触する部分の材質が樹脂であるため、仮にネジが緩んだ場合でも異音を発生させることがない。
【0028】
また、バネ板部114の形状を、側板部113の上端でグロメットの内側に屈曲し、下端部が側板部113の下端側に向かう「くの字」形状とすると、ネジとバネ板部114の接点である略中央部の屈曲部の拡開量よりも、バネ板部114の下端部の拡開量を大きくすることができる。つまり、少ないネジの挿入量でも拡開量を大きくとることができる。
【0029】
さらに、筒状の筐体部120の側面に設けられた一対のスリットにより該側面の一部が外側に拡開可動な板バネ部123とし、該板バネ部123を筒状の側面に対向して設け、該一対の板バネ部123の下端部を金属部材110の底板部111と係合して係止させるストッパを設ける態様とすれば、金属部材110が筐体部120の内部に確実かつ強固に固定され、振動等によっても不用意にガタついたり脱落したりすることがなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように、本発明は、取付時にネジを挿入して外側壁面を外方に拡開させる際のネジ孔の摩耗がなく、しかも、ネジが緩んだ場合でも異音を発生させることのないグロメットを提供する。このようなグロメットは、例えば自動車の車内の天井に車載用表示装置を取り付けるのに好適である。
【符号の説明】
【0031】
100 グロメット
110 金属部材
111 底板部
112 孔部
113 側板部
114 バネ板部
120 筐体部
121 フランジ部
122 弾性梁部
123 ストッパ
124 開口部
130 ネジ
200 リーンフォースメント
210 孔窓
300 天吊型ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料で成形された筐体部と該筐体部に収容されて係合する金属部材とを備え、
前記金属部材は、ネジが螺合する孔部を有する底板部と、該底板部の両端に位置し該底板部に実質的に垂直な側板部と、前記ネジの螺合により押圧されて下端部が外側に押し広げられるバネ板部を備え、
前記筐体部は、底部を有する筒状であって、前記底部の内側に前記金属部材の底板部にネジを螺合させるための開口部が形成されるとともに外周部にフランジ部が設けられており、前記筒状の側面には前記バネ板部の下端部に押圧されて該筐体部の側面から外側に拡開される弾性梁部を備えている、
ことを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記バネ板部は、くの字形状を有し、前記金属部材の側板部の上端ではグロメットの内側に屈曲し、下端部が前記金属部材の側板部の下端側に向かう形状である、請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記筐体部は、側面に、前記金属部材の底板部と係合して係止するスリット状のストッパを備えている、請求項1に記載のグロメット。
【請求項4】
前記金属部材は、ステンレスまたはリン青銅から成る、請求項1に記載のグロメット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−229762(P2012−229762A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98953(P2011−98953)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】